例示的実施形態は、磁気記憶装置などの磁気デバイスに使用することができる磁気接合、およびこのような磁気接合を使用したデバイスに関している。以下の説明は、当業者による本発明の構築および使用を可能にするために提供されたものであり、また、特許出願およびその要求事項の文脈で提供されている。本明細書において説明されている例示的実施形態および一般原理ならびに特徴に対する様々な変更態様が容易に明らかになるであろう。これらの例示的実施形態は、主として、特定の実施態様の中に提供されている特定の方法およびシステムに関して説明されている。しかしながら、これらの方法およびシステムは、他の実施態様においても完全に動作することができる。「例示的実施形態」、「一実施形態」および「他の実施形態」などの語句は、同じ実施形態または異なる実施形態、ならびに複数の実施形態を表すことができる。これらの実施形態は、特定のコンポーネントを有するシステムおよび/またはデバイスに関して説明されている。しかしながら、これらのシステムおよび/またはデバイスは、示されているコンポーネントより多い、あるいは少ないコンポーネントを含むことができ、また、本発明の範囲を逸脱することなく、これらのコンポーネントの配置およびタイプの変形形態を加えることができる。また、これらの例示的実施形態は、特定のステップを有する特定の方法の文脈で記述することも可能である。しかしながら、これらの方法およびシステムは、異なるステップおよび/または追加ステップを有する他の方法、およびこれらの例示的実施形態と矛盾しない異なる順序のステップを有する他の方法に対しても完全に動作する。したがって本発明は、示されている実施形態に限定されず、本明細書において説明されている原理および特徴と無矛盾の最も広義の範囲と一致することが意図されている。
磁気接合ならびに該磁気接合を利用した磁気記憶装置を提供するための方法およびシステムについて説明する。例示的実施形態によれば、磁気デバイスに使用することができる磁気接合を提供するための方法およびシステムが提供される。磁気接合は、ピンド層、非磁性スペーサ層、自由層、少なくとも1つのMgO層、および該少なくとも1つのMgO層に隣接する少なくとも1つの磁気挿入層を含む。非磁性スペーサ層は、ピンド層と自由層の間に位置している。少なくとも1つのMgO層は、自由層およびピンド層のうちの少なくとも1つと隣接している。少なくとも1つの磁気挿入層は、少なくとも1つのMgO層と隣接している。磁気接合は、書込み電流が磁気接合を通って流れると、自由層を複数の安定磁気状態の間で切り換えることができるように構成される。
例示的実施形態について、特定のコンポーネントを有する特定の磁気接合および磁気記憶装置の文脈で説明する。本発明は、本発明と矛盾しない他のコンポーネントおよび/または追加コンポーネント、および/または他の特徴を有する磁気接合および磁気記憶装置の使用と無矛盾であることは当業者には容易に認識されよう。また、これらの方法およびシステムは、スピントランスファ現象、磁気異方性および他の物理現象における電流理解の文脈でも説明されている。したがってこれらの方法およびシステムの挙動についての理論的説明は、スピントランスファ、磁気異方性および他の物理現象におけるこの電流理解に基づいてなされていることは当業者には容易に認識されよう。しかしながら、本明細書において説明されているこれらの方法およびシステムは、特定の物理的な説明には依存していない。これらの方法およびシステムは、基板に対する特定の関係を有する構造の文脈で記述されていることについても、当業者には容易に認識されよう。しかしながら、これらの方法およびシステムは他の構造と無矛盾であることは当業者には容易に認識されよう。さらに、これらの方法およびシステムは、合成および/または単純な特定の層の文脈で記述されている。しかしながら、これらの層は他の構造を有することも可能であることは当業者には容易に認識されよう。さらに、これらの方法およびシステムは、特定の層を有する磁気接合および/または下部構造の文脈で記述されている。しかしながら、これらの方法およびシステムと矛盾しない追加層および/または異なる層を有する磁気接合および/または下部構造を使用することも可能であることは当業者には容易に認識されよう。さらに、特定のコンポーネントは、磁気、強磁性およびフェリ磁性として記述されている。本明細書において使用されているように、磁気という用語には、強磁性、フェリ磁性または同様の構造を含むことができる。したがって本明細書において使用されているように、「磁気」または「強磁性」という用語は、それらに限定されないが、強磁石およびフェリ磁石を含む。また、これらの方法およびシステムは、単一の磁気接合および下部構造の文脈で記述されている。しかしながら、これらの方法およびシステムは、複数の磁気接合を有し、かつ、複数の下部構造を使用している磁気記憶装置の使用と無矛盾であることは当業者には容易に認識されよう。さらに、本明細書において使用されているように、「平面内」は、実質的に、磁気接合の複数の層のうちの1つまたは複数の層の平面内または平面に平行である。一方、「直角」は、磁気接合の複数の層のうちの1つまたは複数の層に対して実質的に直角の方向に対応している。
図2は、磁気デバイス、例えば磁気トンネル接合(MTJ)、スピンバルブまたは衝撃磁気抵抗構造あるいはそれらの何らかの組合せに使用することができる磁気挿入層100の一例示的実施形態を示したものである。この磁気下部構造100が使用される磁気デバイスは、様々な用途に使用することができる。例えばこの磁気デバイス、したがって磁気下部構造は、STT−RAMなどの磁気記憶装置に使用することができる。分かり易くするために、図2はスケール通りには描かれていない。図に示されている磁気挿入層100はMgO層120に隣接している。図に示されている実施形態では、MgO層120は磁気挿入層100の頂部に位置している。しかしながら他の実施形態では、MgO層120の上に磁気挿入層100を成長させることも可能である。したがって磁気挿入層100およびMgO層120に関しては、基板に対する仮定しなければならない特定の関係は存在していない。さらに、層120はMgO層として記述されている。しかしながら他の実施形態では、層120は、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ルテニウム、酸化チタンおよび酸化ニッケルのうちの少なくとも1つを含むことができる。
図2に示されている磁気挿入層100は、CoX、FeXおよび/またはCoFeXを含んだ少なくとも1つの磁気層であり、Xは、B、Ge、Hf、Zr、Ti、TaおよびTbを含む材料のグループから選択される。いくつかの実施形態では、磁気挿入層100は、CoX、FeXおよび/またはCoFeXからなっている。いくつかの実施形態では、磁気挿入層100はCoFeBで形成される。磁気挿入層100はMgO層120と隣接している。MgO層120は結晶構造であってもよく、また、好ましいテクスチャを有することができる。いくつかの実施形態では、磁気挿入層100は少なくとも3オングストロームであり、かつ、2ナノメートル以下である。いくつかの実施形態では、磁気挿入層100は、磁気材料でできているが非磁性であることが望ましい。このような実施形態では、磁気挿入層100は、場合によっては、使用される材料に対して5ナノメートル以下、または同様の厚さであることが望ましい。磁気挿入層100は、その厚さがこのように薄いと磁気的に死んでいる。したがって磁気挿入層100が非磁性であっても、CoFeBなどの磁気材料を磁気挿入層のために使用することができる。他の実施形態では、強磁性挿入層100が望ましいか、あるいは許容される場合、もっと分厚い厚さを使用することも可能である。磁気接合に使用される場合、磁気挿入層100は、磁気接合の磁気抵抗領域の外側に存在する。例えばMTJの場合、磁気挿入層100は、自由層とトンネル障壁層の間、あるいはトンネル障壁層とピンド層の間には存在しない。同様に、二重MTJの場合、磁気挿入層100は、自由層と2つのトンネル障壁層のいずれのトンネル障壁層との間にも存在せず、あるいは2つのピンド層と2つのトンネル障壁層の間には存在しない。したがって磁気挿入層100は、磁気挿入層100と共に使用される磁気接合の知覚部分の外側に存在すると見なすことができる。
磁気挿入層100を使用して、この磁気挿入層100が使用される磁気接合の特性を適合させることができる。例えば磁気挿入層100を図3に示されているMgO層120と組み合わせることにより、抵抗面積(RA)がより小さいMgO層120を得ることができる。磁気挿入層100を使用することにより、この磁気挿入層100が使用される磁気接合内の他の層に影響を及ぼすことができる。例えば、ピンド層と自由層の間にトンネル障壁層(図2には示されていない)を含む接合のRAを小さくすることができる。いくつかの実施形態では、MgO層120、磁気挿入層100および接合(図示せず)の組合せのRAを1/2以上小さくすることができる。いくつかのこのような実施形態では、接合RAを1/10以上小さくすることができる。RAのこの低減により、磁気接合のTMRを改善することができる。いくつかの実施形態では、磁気挿入層100を使用した磁気接合内の他の磁気層(図示せず)の直角異方性を改善することができる。したがってスピントランスファ書込みを改善することができる。また、平面に対して直角の磁化を使用して磁気接合を熱的により安定にすることも可能である。したがって磁気挿入層100を利用している磁気接合の性能を改善することができる。
したがって磁気挿入層100が使用される磁気デバイスの特性を必要に応じて構成することも可能である。例えば、自由層の結晶化が改善され、また、とりわけ2つの障壁を備えたトンネル接合の場合、トンネル接合との格子整合が改善されるため、磁気下部構造100が使用される磁気デバイスのTMRを改善することができる。WERおよびデータ転送速度などのスイッチング特性を、磁気下部構造100が使用される磁気デバイス内で改善することができる。
図3は、磁気デバイス、例えばMTJ、スピンバルブまたは衝撃磁気抵抗構造あるいはそれらの何らかの組合せに使用することができる磁気挿入層100’の一例示的実施形態を示したものである。この磁気挿入層100’が使用される磁気デバイスは、様々な用途に使用することができる。例えば磁気接合、したがって磁気挿入層は、STT−RAMなどの磁気記憶装置に使用することができる。分かり易くするために、図3はスケール通りには描かれていない。この磁気挿入層100’は磁気挿入層100に類似している。同様に、図に示されている磁気挿入層100’はMgO層120’を備えている。したがって同様のコンポーネントには同様のラベルが振られている。図に示されている磁気挿入層100’はMgO層120’に隣接している。図に示されている実施形態では、MgO層120’は磁気挿入層100’の頂部に位置している。しかしながら他の実施形態では、MgO層120’の上に磁気挿入層100’を成長させることも可能である。したがって磁気挿入層100’およびMgO層120’に関しては、基板に対する仮定しなければならない特定の関係は存在していない。図に示されている実施形態では、層120’はMgO層として記述されている。しかしながら他の実施形態では、層120’は、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ルテニウム、酸化チタンおよび酸化ニッケルのうちの少なくとも1つを含むことができる。
磁気挿入層100’は、磁気挿入層100と同様の方法で磁気接合に使用されている。したがって磁気接合に使用される場合、磁気挿入層100’は、磁気接合の磁気抵抗領域の外側に存在する。言い換えると、磁気挿入層100’は、磁気挿入層100’と共に使用される磁気接合の知覚部分の外側に存在すると見なすことができる。
図3に示されている磁気挿入層100’は、磁気層102および追加磁気層104を含んだ二分子層である。磁気層102は、CoX、FeXおよび/またはCoFeXを含み、Xは、B、Ge、Hf、Zr、Ti、TaおよびTbを含む材料のグループから選択される。いくつかの実施形態では、磁気層102は、CoX、FeXおよび/またはCoFeXからなっている。いくつかの実施形態では、磁気層102はCoFeBで形成される。したがって磁気層102は、磁気挿入層100の一実施形態に類似していると見なすことができる。磁気挿入層100’はMgO層120’と隣接している。図に示されている実施形態では、磁気層102はMgO層120’と隣接しており、かつ、MgO層120’と追加磁気層104の間に位置している。しかしながら他の実施形態では、追加磁気層104は、MgO層120’と磁気層102の間に存在させることも可能である。追加磁気層104は、Coおよび/またはFeを含むことができる。いくつかの実施形態では、磁気層104はFe層からなっていてもよく、あるいはCo層からなっていてもよい。
いくつかの実施形態では、磁気挿入層100’は少なくとも3オングストロームであり、かつ、2ナノメートル以下である。いくつかの実施形態では、磁気挿入層100’は、磁気材料でできているが非磁性であることが望ましい。このような実施形態では、磁気挿入層100’は、場合によっては、使用される材料に対して5ナノメートル以下、または同様の厚さであることが望ましい。磁気挿入層100’は、その厚さがこのように薄いと磁気的に死んでいる。したがって磁気挿入層100’が非磁性であっても、CoFeBなどの磁気材料を磁気層102のために使用することができ、また、CoまたはFeなどの磁気材料を追加磁気層104のために使用することができる。他の実施形態では、磁気挿入層100’が望ましいか、あるいは許容される場合、もっと分厚い厚さを使用することも可能である。
磁気挿入層100’を使用して、この磁気挿入層100’が使用される磁気接合の特性を適合させることができる。したがって磁気挿入層100’は、磁気挿入層100の利点を共有することができる。例えば、磁気挿入層100’が使用される磁気接合は、小さいRA、改善されたTMR、より大きい直角異方性、より高い熱安定性および/または他の利点を享受することができる。したがって磁気挿入層100’を利用している磁気接合の性能を改善することができる。
図4は、磁気デバイス、例えばMTJ、スピンバルブまたは衝撃磁気抵抗構造あるいはそれらの何らかの組合せに使用することができる磁気挿入層100”の一例示的実施形態を示したものである。この磁気挿入層100”が使用される磁気デバイスは、様々な用途に使用することができる。例えば磁気接合、したがって磁気挿入層は、STT−RAMなどの磁気記憶装置に使用することができる。分かり易くするために、図4はスケール通りには描かれていない。この磁気挿入層100”は磁気挿入層100および100’に類似している。同様に、図に示されている磁気挿入層100”はMgO層120”を備えている。したがって同様のコンポーネントには同様のラベルが振られている。図に示されている磁気挿入層100”はMgO層120”に隣接している。図に示されている実施形態では、MgO層120”は磁気挿入層100”の頂部に位置している。しかしながら他の実施形態では、MgO層120”の上に磁気挿入層100”を成長させることも可能である。したがって磁気挿入層100”およびMgO層120”に関しては、基板に対する仮定しなければならない特定の関係は存在していない。図に示されている実施形態では、層120”はMgO層として記述されている。しかしながら他の実施形態では、層120”は、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ルテニウム、酸化チタンおよび酸化ニッケルのうちの少なくとも1つを含むことができる。
磁気挿入層100”は、磁気挿入層100および100’と同様の方法で磁気接合に使用されている。したがって磁気接合に使用される場合、磁気挿入層100”は、磁気接合の磁気抵抗領域の外側に存在する。言い換えると、磁気挿入層100”は、磁気挿入層100”と共に使用される磁気接合の知覚部分の外側に存在すると見なすことができる。
図4に示されている磁気挿入層100”は、少なくとも第1の磁気層102’、非磁性層106および第2の磁気層108を含んだ多層である。いくつかの実施形態では、追加磁気層(図示せず)を追加非磁性層(図示せず)と交互に配置することができる。第1の磁気層102’は、CoX、FeXおよび/またはCoFeXを含み、Xは、B、Ge、Hf、Zr、Ti、TaおよびTbを含む材料のグループから選択される。いくつかの実施形態では、第1の磁気層102’は、CoX、FeXおよび/またはCoFeXからなっている。いくつかのこのような実施形態では、第1の磁気層102’はCoFeBで形成される。第2の磁気層108は、CoY、FeYおよび/またはCoFeYを含み、Yは、B、Ge、Hf、Zr、Ti、TaおよびTbを含む材料のグループから選択される。いくつかの実施形態では、第2の磁気層108は、CoY、FeYおよび/またはCoFeYからなっている。いくつかの実施形態では、第2の磁気層108はCoFeBで形成される。したがって第1の磁気層102’および第2の磁気層108は、それぞれ磁気挿入層100の一実施形態に類似していると見なすことができる。磁気挿入層100”はMgO層120”と隣接している。図に示されている実施形態では、磁気層102’はMgO層120”と隣接しており、かつ、MgO層120”と第2の磁気層108の間に位置している。しかしながら他の実施形態では、第2の磁気層108は、MgO層120”と磁気層102’の間に存在させることも可能である。図に示されている非磁性層106はTaからなっている。しかしながら他の実施形態では、他の非磁性材料または追加非磁性材料を使用することができる。例えば非磁性層は、Ru、Cr、Ti、W、Ru、V、Hf、ZrおよびTaのうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの実施形態では、非磁性層106は、Ru、Cr、Ti、W、Ru、V、Hf、ZrおよびTaのうちの少なくとも1つからなっていてもよい。
いくつかの実施形態では、磁気挿入層100”は少なくとも3オングストロームであり、かつ、2ナノメートル以下である。いくつかの実施形態では、磁気挿入層100”は、磁気材料でできているが非磁性であることが望ましい。このような実施形態では、磁気挿入層100”中の磁気層102’および108の各々は、場合によっては、使用される材料に対して5ナノメートル以下、または同様の厚さであることが望ましい。これらの磁気層102’および108は、その厚さがこのように薄いと、それぞれ磁気的に死んでいる。したがって磁気挿入層100”が非磁性であっても、CoFeBなどの磁気材料をこれらの磁気層102’および108のために使用することができる。他の実施形態では、磁気挿入層100’が望ましいか、あるいは許容される場合、もっと分厚い厚さをこれらの磁気層102’および108のうちのいずれか一方または両方のために使用することができる。
磁気挿入層100”を使用して、この磁気挿入層100”が使用される磁気接合の特性を適合させることができる。したがって磁気挿入層100”は、磁気挿入層100および/または100’の利点を共有することができる。例えば、磁気挿入層100”が使用される磁気接合は、小さいRA、改善されたTMR、より大きい直角異方性、より高い熱安定性および/または他の利点を享受することができる。したがって磁気挿入層100”を利用している磁気接合の性能を改善することができる。
図5は、100、100’および/または100”などの磁気挿入層を含んだ磁気接合200の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図5はスケール通りには描かれていない。磁気接合200は、MgOシード層204、自由層210、非磁性スペーサ層220およびピンド層230を含む。図には特定の配向の層210、220および230が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。例えばピンド層230は、磁気接合200の底部により近い位置に配置することができる(図には示されていない基板の最も近くに配置することができる)。また、図には任意選択のシード層202が示されている。ピンニング(pinning)層(図示せず)およびキャッピング層(図示せず)を使用することも可能である。通常、ピンド層230の磁気モーメントが平面内である場合はピンニング層が使用され、ピンド層230の磁気モーメントが平面に対して直角である場合はピンニング層は使用されない。このようなピンニング層は、ピンド層230の磁化(図示せず)を固定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、ピンニング層は、交換バイアス相互作用によってピンド層230の磁化(図示せず)をピン止め(pins)するAFM層または多層であってもよい。また、この磁気接合200は、書込み電流が磁気接合200を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層210を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層210を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層220は、その磁気抵抗が自由層210とピンド層230の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層220は結晶性MgOトンネル障壁層である。このような実施形態では、MgOシード層204を使用して磁気接合200のTMRおよび他の特性を改善することができる。MgOシード層が存在することによってトンネル障壁層220の結晶構造が改善されることが仮定されている。
図には単純な層として示されているが、自由層210および/またはピンド層230は複数の層を含むことができる。例えば自由層210および/またはピンド層230は、Ruなどの薄い層を介して反強磁性的または強磁性的に結合された磁気層を含んだSAFであってもよい。このようなSAFでは、Ruまたは他の材料の薄い層と交互に配置された複数の磁気層を使用することができる。また、自由層210および/またはピンド層230は、もう1つの多層であってもよい。磁化は図5には示されていないが、自由層210および/またはピンド層230は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層210および/またはピンド層230は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層210および/またはピンド層230の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層210および/またはピンド層230の磁気モーメントの他の配向も可能である。
磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合200は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合200を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合200は、層210および/または230に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。上で説明したように、磁気挿入層100、100’および/または100”は、MgOシード層204などの隣接するMgO層のRAを小さくすることができる。磁気接合200の総抵抗に対するMgOシード層204の寄生抵抗の寄与を小さくすることができる。したがって自由層210およびピンド層230の磁気配向によるTMRを、磁気接合200の総抵抗のうちのより大きい部分にすることができる。したがって磁気接合のTMRが効果的に改善される。さらに、改善されたMgOシード層204の存在、したがって磁気挿入層100/100’/100”の存在により、MgOトンネル障壁層220のRAを小さくすることができる。したがって磁気接合200のRAをさらに小さくすることができる。したがって磁気接合200の性能を改善することができる。
図6は、磁気挿入層100/100’/100”を含んだ磁気接合200’の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図6はスケール通りには描かれていない。この磁気接合200’は磁気接合200に類似している。したがって同様の層には同様のラベルが振られている。磁気接合200’は、それぞれ層210、220および230と同様の自由層210’、非磁性スペーサ層220’およびピンド層230’を含む。図には特定の配向の層210’、220’および230’が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。また、図にはMgOシード層204および磁気挿入層100/100’/100”が示されている。いくつかの実施形態では、任意選択のピンニング層(図示せず)および/または任意選択のキャッピング層(図示せず)を含むことができる。また、この磁気接合200’は、書込み電流が磁気接合200’を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層210’を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層210’を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層220’は、その磁気抵抗が自由層210’とピンド層230’の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層220’は結晶性MgOトンネル障壁層である。このような実施形態では、MgOシード層204’を使用して磁気接合200’のTMRおよび他の特性を改善することができる。MgOシード層204’が存在することによってトンネル障壁層220’の結晶構造(構造および/またはテクスチャ)が改善されることが仮定されている。
図には単純な層として示されているが、自由層210’は、上で説明したように複数の層を含むことができる。ピンド層230’は、基準層232、非磁性層234およびピンド層236を含むことが明確に示されている。したがってピンド層230’は、この実施形態ではSAFである。磁化は図6には示されていないが、自由層210’および/またはピンド層230’は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層210’および/またはピンド層230’は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層210’および/またはピンド層230’の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層210’および/またはピンド層230’の磁気モーメントの他の配向も可能である。
磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合200’は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合200’を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合200’は、層210’および/または230’に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。したがって磁気接合200’の性能を改善することができる。
図7は、磁気挿入層100、100’/100”を含んだ磁気接合200”の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図7はスケール通りには描かれていない。この磁気接合200”は、磁気接合200および/または200’に類似している。したがって同様の層には同様のラベルが振られている。磁気接合200”は、それぞれ層210/210’、220/220’および230/230’と同様の自由層210”、非磁性スペーサ層220”およびピンド層230”を含む。図には特定の配向の層210”、220”および230”が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。また、図にはMgOシード層204”および磁気挿入層100/100’/100”が示されている。いくつかの実施形態では、任意選択のピンニング層(図示せず)および/または任意選択のキャッピング層(図示せず)を含むことができる。また、この磁気接合200”は、書込み電流が磁気接合200”を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層210”を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層210”を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層220”は、その磁気抵抗が自由層210”とピンド層230”の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層220”は結晶性MgOトンネル障壁層である。このような実施形態では、MgOシード層204”を使用して磁気接合200”のTMRおよび他の特性を改善することができる。MgOシード層204”が存在することによってトンネル障壁層220”の結晶構造(構造および/またはテクスチャ)が改善されることが仮定されている。
図には単純な層として示されているが、自由層210”および/またはピンド層230”は、上で説明したように複数の層を含むことができる。磁化は図7には示されていないが、自由層210”および/またはピンド層230”は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層210”および/またはピンド層230”は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層210”および/またはピンド層230”の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層210”および/またはピンド層230”の磁気モーメントの他の配向も可能である。
磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合200”は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合200”を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合200”は、層210”および/または230”に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。したがって磁気接合200”の性能を改善することができる。
図8は、磁気挿入層100、100’/100”を含んだ磁気接合200’’’の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図8はスケール通りには描かれていない。この磁気接合200’’’は、磁気接合200、200’および/または200”に類似している。したがって同様の層には同様のラベルが振られている。磁気接合200’’’は、それぞれ層210/210’/210”、220/220’/220”および230/230’/230”と同様の自由層210’’’、非磁性スペーサ層220’’’およびピンド層230’’’を含む。図には特定の配向の層210’’’、220’’’および230’’’が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。また、図にはMgOシード層204’’’および磁気挿入層100/100’/100”が示されている。いくつかの実施形態では、任意選択のピンニング層(図示せず)および/または任意選択のキャッピング層(図示せず)を含むことができる。また、この磁気接合200’’’は、書込み電流が磁気接合200’’’を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層210’’’を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層210’’’を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層220’’’は、その磁気抵抗が自由層210’’’とピンド層230’’’の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層220’’’は結晶性MgOトンネル障壁層である。このような実施形態では、MgOシード層204’’’を使用して磁気接合200’’’のTMRおよび他の特性を改善することができる。MgOシード層204’’’が存在することによってトンネル障壁層220’’’の結晶構造(構造および/またはテクスチャ)が改善されることが仮定されている。
さらに、この磁気接合200’’’は二重構造である。したがって磁気接合200’’’は、同じく追加非磁性スペーサ層240および追加ピンド層250を含む。非磁性スペーサ層240は非磁性スペーサ層220’’’に類似していてもよい。したがって非磁性スペーサ層240は結晶性MgOトンネル障壁層であってもよい。他の実施形態では、非磁性スペーサ層240は層220’’’とは異なっていてもよい。同様に、ピンド層250はピンド層230”に類似していてもよい。
図には単純な層として示されているが、自由層210’’’および/またはピンド層230’’’および250は、上で説明したように複数の層を含むことができる。磁化は図8には示されていないが、自由層210’’’および/またはピンド層230’’’および250は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層210’’’および/またはピンド層230’’’および250は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層210’’’および/またはピンド層230’’’の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層210’’’および/またはピンド層230’’’の磁気モーメントの他の配向も可能である。
磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合200’’’は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合200’’’を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合200’’’は、層210’’’および/または230’’’に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。したがって磁気接合200’’’の性能を改善することができる。
図9は、100、100’および/または100”などの磁気挿入層を含んだ磁気接合300の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図9はスケール通りには描かれていない。磁気接合300は、自由層310、非磁性スペーサ層320、ピンド層330およびMgOキャッピング層304を含む。図には特定の配向の層310、320および330が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。例えばピンド層330は、磁気接合300の底部により近い位置に配置することができる(図には示されていない基板の最も近くに配置することができる)。また、図には任意選択のシード層302が示されている。ピンニング層(図示せず)およびMgOシード層(図示せず)を使用することも可能である。通常、ピンド層330の磁気モーメントが平面内である場合はピンニング層が使用され、ピンド層330の磁気モーメントが平面に対して直角である場合はピンニング層は使用されない。このようなピンニング層は、ピンド層330の磁化(図示せず)を固定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、ピンニング層は、交換バイアス相互作用によってピンド層330の磁化(図示せず)をピン止めするAFM層または多層であってもよい。また、この磁気接合300は、書込み電流が磁気接合300を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層310を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層310を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層320は、その磁気抵抗が自由層310とピンド層330の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層320は結晶性MgOトンネル障壁層である。このような実施形態では、MgOキャッピング層304を使用して磁気接合300のTMRおよび他の特性を改善することができる。結晶性MgOトンネル障壁層320は、その作用のなかでもとりわけ層の堆積および磁気接合300の焼きなましに影響を及ぼす可能性のある周囲の構造に敏感であるため、MgOキャッピング層304が存在することによってトンネル障壁層320の結晶構造(構造および/またはテクスチャ)が改善されることが仮定されている。
図には単純な層として示されているが、自由層310および/またはピンド層330は複数の層を含むことができる。例えば自由層310および/またはピンド層330は、Ruなどの薄い層を介して反強磁性的または強磁性的に結合された磁気層を含んだSAFであってもよい。このようなSAFでは、Ruまたは他の材料の薄い層と交互に配置された複数の磁気層を使用することができる。また、自由層310および/またはピンド層330は、もう1つの多層であってもよい。磁化は図9には示されていないが、自由層310および/またはピンド層330は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層310および/またはピンド層330は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層310および/またはピンド層330の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層310および/またはピンド層330の磁気モーメントの他の配向も可能である。
磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合300は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合300を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合300は、層310および/または330に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。上で説明したように、磁気挿入層100、100’および/または100”は、MgOシード層304などの隣接するMgO層のRAを小さくすることができる。MgOキャッピング層304の寄生抵抗が小さくなるため、磁気接合300のTMRを効果的に改善することができる。さらに、改善されたMgOキャッピング層304の存在、したがって磁気挿入層100/100’/100”の存在により、MgOトンネル障壁層320のRAを小さくすることができる。したがって磁気接合300のRAをさらに小さくすることができる。したがって磁気接合300の性能を改善することができる。
図10は、磁気挿入層100/100’/100”を含んだ磁気接合300’の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図10はスケール通りには描かれていない。この磁気接合300’は磁気接合300に類似している。したがって同様の層には同様のラベルが振られている。磁気接合300’は、それぞれ層310、320および330と同様の自由層310’、非磁性スペーサ層320’およびピンド層330’を含む。図には特定の配向の層310’、320’および330’が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。また、図にはMgOキャッピング層304’および磁気挿入層100/100’/100”が示されている。いくつかの実施形態では、任意選択のピンニング層(図示せず)および/または任意選択のMgOシード層(図示せず)を含むことができる。また、この磁気接合300’は、書込み電流が磁気接合300’を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層310’を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層310’を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層320’は、その磁気抵抗が自由層310’とピンド層330’の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層320’は結晶性MgOトンネル障壁層である。このような実施形態では、MgOキャッピング層304’を使用して磁気接合300’のTMRおよび他の特性を改善することができる。結晶性MgOトンネル障壁層320’は、その作用のなかでもとりわけ層の堆積および磁気接合300’の焼きなましに影響を及ぼす可能性のある周囲の構造に敏感であるため、MgOキャッピング層304’が存在することによってトンネル障壁層320’の結晶構造(構造および/またはテクスチャ)が改善されることが仮定されている。
図には単純な層として示されているが、自由層310’および/またはピンド層330’は、上で説明したように複数の層を含むことができる。磁化は図10には示されていないが、自由層310’および/またはピンド層330’は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層310’および/またはピンド層330’は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層310’および/またはピンド層330’の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層310’および/またはピンド層330’の磁気モーメントの他の配向も可能である。
磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合300’は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合300’を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合300’は、層310’および/または330’に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。したがって磁気接合300’の性能を改善することができる。
図11は、磁気挿入層100/100’/100”を含んだ磁気接合300”の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図11はスケール通りには描かれていない。この磁気接合300”は、磁気接合300および/または300’に類似している。したがって同様の層には同様のラベルが振られている。磁気接合300”は、それぞれ層310/310’、320/320’および330/330’と同様の自由層310”、非磁性スペーサ層320”およびピンド層330”を含む。図には特定の配向の層310”、320”および330”が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。また、図にはMgOキャッピング層304”および磁気挿入層100/100’/100”が示されている。いくつかの実施形態では、任意選択のピンニング層(図示せず)および/または任意選択のMgOシード層(図示せず)を含むことができる。また、この磁気接合300”は、書込み電流が磁気接合300”を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層310”を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層310”を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層320”は、その磁気抵抗が自由層310”とピンド層330”の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層320”は結晶性MgOトンネル障壁層である。上で説明したように、このような実施形態では、MgOキャッピング層304”を使用して磁気接合300”のTMRおよび他の特性を改善することができる。
さらに、この磁気接合300”は二重構造である。したがって磁気接合300”は、同じく追加非磁性スペーサ層340および追加ピンド層350を含む。非磁性スペーサ層340は非磁性スペーサ層320”に類似していてもよい。したがって非磁性スペーサ層340は結晶性MgOトンネル障壁層であってもよい。他の実施形態では、非磁性スペーサ層340は層320”とは異なっていてもよい。同様に、ピンド層350はピンド層330”に類似していてもよい。
図には単純な層として示されているが、自由層310”および/またはピンド層330”および350は、上で説明したように複数の層を含むことができる。磁化は図11には示されていないが、自由層310”および/またはピンド層330”および350は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層310”および/またはピンド層330”および350は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層310”および/またはピンド層330”の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層310”および/またはピンド層330”の磁気モーメントの他の配向も可能である。
磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合300”は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合300”を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合300”は、層310”および/または330”に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。したがって磁気接合300”の性能を改善することができる。
図12は、100、100’および/または100”などの2つの磁気挿入層を含んだ磁気接合400の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図12はスケール通りには描かれていない。磁気接合400は、自由層410、非磁性スペーサ層420、ピンド層430およびMgOシード層404ならびにMgOキャッピング層406を含む。図には特定の配向の層410、420および430が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。例えばピンド層430は、磁気接合400の底部により近い位置に配置することができる(図には示されていない基板の最も近くに配置することができる)。また、図には任意選択のシード層302が示されている。ピンニング層(図示せず)を使用することも可能である。通常、ピンド層430の磁気モーメントが平面内である場合はピンニング層が使用され、ピンド層430の磁気モーメントが平面に対して直角である場合はピンニング層は使用されない。このようなピンニング層は、ピンド層430の磁化(図示せず)を固定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、ピンニング層は、交換バイアス相互作用によってピンド層430の磁化(図示せず)をピン止めするAFM層または多層であってもよい。また、この磁気接合400は、書込み電流が磁気接合400を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層410を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層410を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層420は、その磁気抵抗が自由層410とピンド層430の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層420は結晶性MgOトンネル障壁層である。このような実施形態では、MgOシード層404およびMgOキャッピング層406を使用して磁気接合400のTMRおよび他の特性を改善することができる。結晶性MgOトンネル障壁層420は、その作用のなかでもとりわけ層の堆積および磁気接合400の焼きなましに影響を及ぼす可能性のある周囲の構造に敏感であるため、MgOシード層404およびMgOキャッピング層406が存在することによってトンネル障壁層420の結晶構造(構造および/またはテクスチャ)が改善されることが仮定されている。
図には単純な層として示されているが、自由層410および/またはピンド層430は複数の層を含むことができる。例えば自由層410および/またはピンド層430は、Ruなどの薄い層を介して反強磁性的または強磁性的に結合された磁気層を含んだSAFであってもよい。このようなSAFでは、Ruまたは他の材料の薄い層と交互に配置された複数の磁気層を使用することができる。また、自由層410および/またはピンド層430は、もう1つの多層であってもよい。磁化は図12には示されていないが、自由層410および/またはピンド層430は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層410および/またはピンド層430は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層410および/またはピンド層430の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層410および/またはピンド層430の磁気モーメントの他の配向も可能である。
2つの磁気挿入層100/100’/100”が使用されている。これらの磁気挿入層100/100’/100”は、それぞれMgO層404および406に隣接している。2つの磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合400は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合400を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合400は、層410および/または430に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。上で説明したように、磁気挿入層100、100’および/または100”は、MgOシード層404およびMgOキャッピング層406などの隣接するMgO層のRAを小さくすることができる。MgOシード層404およびMgOキャッピング層406の寄生抵抗が小さくなるため、磁気接合400のTMRを効果的に改善することができる。さらに、改善されたMgO層404および406の存在により、MgOトンネル障壁層420のRAを小さくすることができる。したがってMgOトンネル障壁層は、磁気挿入層100/100’/100”によって改善されたそのRAを有することができる。したがって磁気接合400のRAをさらに小さくすることができる。したがって磁気接合400の性能を改善することができる。
図13は、2つの磁気挿入層100/100’/100”を含んだ磁気接合400’の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図13はスケール通りには描かれていない。この磁気接合400’は磁気接合400に類似している。したがって同様の層には同様のラベルが振られている。磁気接合400’は、それぞれ層410、420および430と同様の自由層410’、非磁性スペーサ層420’およびピンド層430’を含む。図には特定の配向の層410’、420’および430’が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。また、図にはMgOシード層404’、MgOキャッピング層406’および磁気挿入層100/100’/100”が示されている。いくつかの実施形態では、任意選択のピンニング層(図示せず)を含むことができる。また、この磁気接合400’は、書込み電流が磁気接合400’を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層410’を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層410’を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層420’は、その磁気抵抗が自由層410’とピンド層430’の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層420’は結晶性MgOトンネル障壁層である。このような実施形態では、MgOシード層404’およびMgOキャッピング層406’を使用して磁気接合400’のTMRおよび他の特性を改善することができる。
図には単純な層として示されているが、自由層410’および/またはピンド層430’は、上で説明したように複数の層を含むことができる。磁化は図13には示されていないが、自由層410’および/またはピンド層430’は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層410’および/またはピンド層430’は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層410’および/またはピンド層430’の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層410’および/またはピンド層430’の磁気モーメントの他の配向も可能である。
磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合400’は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合400’を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合400’は、層410’および/または430’に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。したがって磁気接合400’の性能を改善することができる。
図14は、2つの磁気挿入層100/100’/100”を含んだ磁気接合400”の一例示的実施形態を示したものである。分かり易くするために、図14はスケール通りには描かれていない。この磁気接合400”は、磁気接合400および/または400’に類似している。したがって同様の層には同様のラベルが振られている。磁気接合400”は、それぞれ層410/410’、420/420’および430/430’と同様の自由層410”、非磁性スペーサ層420”およびピンド層430”を含む。図には特定の配向の層410”、420”および430”が示されているが、この配向は、他の実施形態では変更することができる。また、図にはMgOシード層404”、MgOキャッピング層406”および隣接する磁気挿入層100/100’/100”が示されている。いくつかの実施形態では、任意選択のピンニング層(図示せず)を含むことができる。また、この磁気接合400”は、書込み電流が磁気接合400”を通って流れると、複数の安定磁気状態の間で自由層410”を切り換えることができるように構成されている。したがってスピントランスファトルクを利用して自由層410”を切り換えることができる。
非磁性スペーサ層420”は、その磁気抵抗が自由層410”とピンド層430”の間であるトンネル障壁層、導体または他の構造であってもよい。いくつかの実施形態では、非磁性スペーサ層420”は結晶性MgOトンネル障壁層である。上で説明したように、このような実施形態では、MgOシード層404”およびMgOキャッピング層406”を使用して磁気接合400”のTMRおよび他の特性を改善することができる。
さらに、この磁気接合400”は二重構造である。したがって磁気接合400”は、同じく追加非磁性スペーサ層440および追加ピンド層450を含む。非磁性スペーサ層440は非磁性スペーサ層420”に類似していてもよい。したがって非磁性スペーサ層440は結晶性MgOトンネル障壁層であってもよい。他の実施形態では、非磁性スペーサ層440は層420”とは異なっていてもよい。同様に、ピンド層450はピンド層430”に類似していてもよい。
図には単純な層として示されているが、自由層410”および/またはピンド層430”および450は、上で説明したように複数の層を含むことができる。磁化は図14には示されていないが、自由層410”および/またはピンド層430”および450は、それぞれ、平面外減磁エネルギーを超える直角異方性エネルギーを有することができる。したがって自由層410”および/またはピンド層430”および450は、それぞれ、平面に対して直角に配向されたその磁気モーメントを有することができる。他の実施形態では、自由層410”および/またはピンド層430”の磁気モーメントは、それぞれ平面内である。自由層410”および/またはピンド層430”の磁気モーメントの他の配向も可能である。
磁気挿入層100、100’および/または100”が使用されているため、磁気接合400”は、磁気挿入層100、100’および/または100”の利点を共有することができる。詳細には、モーメントが直角に配向されると、磁気接合400”を熱的により安定にすることができ、また、磁気接合400”は、層410”および/または430”に対するより大きい直角異方性を有することができ、RAを小さくすることができ、および/または改善されたTMRを有することができる。したがって磁気接合400”の性能を改善することができる。
図15は、磁気下部構造を製造するための方法500の一例示的実施形態を示したものである。簡潔にするために、いくつかのステップを省略し、組み合わせ、および/または交互配置することができる。方法500は、磁気接合200の文脈で説明されている。しかしながら、方法500は、接合200’、200”、200’’’、300、300’、300”、400、400’および/または400”などの他の磁気接合に対しても使用することができる。さらに、方法500は、磁気記憶装置の製造に組み込むことができる。したがって方法500は、STT−RAMまたは他の磁気記憶装置の製造に使用することができる。また、方法500は、シード層202および任意選択のピンニング層(図示せず)を提供するステップを含むことも可能である。
自由層210はステップ502を介して提供される。ステップ502は、所望の材料の自由層210を所望の厚さで堆積させるステップを含むことができる。さらに、ステップ502は、SAFを提供するステップを含むことができる。非磁性層220はステップ504を介して提供される。ステップ504は、それには限定されないが結晶性MgOを始めとする所望の非磁性材料を堆積させるステップを含むことができる。さらに、ステップ504では所望の厚さ材料を堆積させることができる。
ピンド層230はステップ506を介して提供される。ステップ506は、所望の材料のピンド層230を所望の厚さで堆積させるステップを含むことができる。さらに、ステップ506は、SAFを提供するステップを含むことができる。ステップ508を介して、層240および250などの任意の追加層を任意選択で提供することができる。ステップ510を介して、層204などの任意のMgO層を提供することができる。同様に、ステップ510で、層304および406などのMgOキャッピング層を提供することも可能である。したがってステップ510の一部はステップ502の前に実行することができる。磁気挿入層100/100’/100”は、MgO層204の次に、ステップ512を介して提供することができる。磁気接合200の場合、磁気挿入層100/100’/100”は、ステップ502の前に提供することができる。しかしながら、MgOキャッピング層を使用した磁気接合の場合、ステップ512は、ステップ508および/または510が実行された後に磁気挿入層100/100’/100”を提供するステップを含むことができる。したがって方法500を使用して、磁気挿入層100/100’/100”および磁気接合200、200’、200”、200’’’、300、300’、300”、400、400’および/または400”の利点を達成することができる。
さらに、磁気接合200、200’、200”、200’’’、300、300’、300”、400、400’および/または400”は、磁気記憶装置に使用することができる。図16は、1つのこのような磁気記憶装置600の一例示的実施形態を示したものである。磁気記憶装置600は、読出し/書込み列選択ドライバ602および606、ならびに語線選択ドライバ604を含む。他のコンポーネントおよび/または異なるコンポーネントを提供することができることに留意されたい。磁気記憶装置600の記憶領域は磁気記憶セル610を含む。個々の磁気記憶セルは、少なくとも1つの磁気接合612および少なくとも1つの選択デバイス614を含む。いくつかの実施形態では、選択デバイス614はトランジスタである。磁気接合612は、磁気接合200、200’、200”、200’’’、300、300’、300”、400、400’および/または400”のうちの1つまたは複数を含むことができる。図には1つのセル610毎に1つの磁気接合612が示されているが、他の実施形態では、1つのセル毎に他の数の磁気接合612を提供することができる。
様々な磁気挿入層100、100’および100”、ならびに磁気接合200、200’、200”、200’’’、300、300’、300”、400、400’および/または400”を開示した。これらの磁気挿入層100、100’および/または100”、および磁気接合200、200’、200”、200’’’、300、300’、300”、400、400’および/または400”の様々な特徴は、組み合わせることができることに留意されたい。したがって磁気接合200、200’、200”、200’’’、300、300’、300”、400、400’および/または400”の複数の利点のうちの1つまたは複数を達成することができ、例えば小さいRA、改善された直角異方性、より高い熱安定性および/またはより大きいTMRを達成することができる。
以上、磁気挿入層、磁気接合および該磁気接合を使用して製造されたメモリを提供するための方法およびシステムについて説明した。これらの方法およびシステムは、図に示されている例示的実施形態に従って説明されており、これらの実施形態には複数の変形形態が可能であり、これらの変形形態は、すべて、これらの方法およびシステムの精神および範囲内であることは当業者には容易に認識されよう。したがって当業者は、特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱することなく、多くの変更態様を加えることができる。