JP2014114944A - ボールねじ装置、移動体案内装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
外周面に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、内周面にねじ軸のねじ溝と対向するねじ溝が形成されたナットと、対向するねじ軸のねじ溝とナットのねじ溝とで形成される転動路に転動可能に装填された複数のボールと、ナットと一体的に設けられ、転動路を転動したボールを転動路の所定の位置まで戻すための循環路とを有するボールねじと、ナットまたは循環路を構成する部材に設けられ、循環路を転動するボールを検出するための非接触式のセンサとを有し、センサの検出信号に基づいて前記ボールねじの異常を検出することを特徴とするボールねじ装置。
【選択図】図4
Description
また、本発明に係るボールねじ装置は、外周面に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、前記ねじ軸に嵌合され内周面に前記ねじ軸のねじ溝と対向するねじ溝が形成されたナットと、対向する前記ねじ軸のねじ溝と前記ナットのねじ溝とで形成される転動路に転動可能に装填された複数のボールと、前記転動路に接続され前記転動路を転動した前記ボールを転動させて循環させるための循環路とでボールねじを構成し、さらに、転動する前記ボールを検出するための非接触式のセンサを備えたボールねじ装置において、前記複数のボールは、第1の金属材料で形成された第1の種類のボールと、第2の金属材料で形成された第2の種類のボールとからなり、前記センサは前記第1の種類のボールと第2の種類のボールとを識別することで前記ボールねじの異常を検出することを特徴とする。
また、本発明に係る移動体案内装置は、軸に外嵌すると共に、該軸に沿って該軸に相対的に直進移動する移動体と、該移動体の内面側に形成されたボール転動溝に保持され、該ボール転動溝と前記軸に形成されたボール転動溝との間で転動する多数のボールと、前記移動体に形成され、前記ボール転動溝の一端側から他端側に前記ボールを循環させる循環路と、転動する前記ボールを検出するための非接触式のセンサとを備えた移動体案内装置において、前記非接触式のセンサは、前記循環路内を転動する前記ボールを検出し、前記センサの検出信号に基づいて前記ボールの異常を検出することを特徴とする。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るボールねじ装置の構成を示す概略図である。図2(a)は図1の部分拡大断面図であり、(b)は循環コマの外観図である。図3(a)は循環コマの上面図であり、(b)は循環コマの側面図である。図4はボールねじの循環コマの部分をねじ軸の軸方向から見た概念図である。
図1に示すように第1実施形態に係るボールねじ装置1は、ボールねじ2と、ボールねじ2の異常を検出するための装置であるモニタ装置3とを有する。
ボールねじ2は、図1に示すように、ねじ軸4と、ねじ軸4に複数のボール5を介して螺合したナット6とを有する。
ねじ軸4は、円柱形状の部材からなり、その外周面には断面が略円弧形状のねじ溝4aが螺旋状に形成されている。なお、本明細書の各実施形態では、ねじ軸4を回転させるための不図示の駆動部(モータ)がねじ軸4に接続されている。
ねじ軸4はナット6の貫通口に挿貫されており、互いのねじ溝4a、6aが対向してボールの転動路を形成している。この転動路内には、磁性を持つ金属製の複数のボール5が装填されており、これによってねじ軸4とナット6は螺合している。
循環コマ10は、図2(a)に示すようにS字溝10aがねじ軸4の隣り合うねじ溝4aどうしを跨ぐようにナット6に配置されており、図4に示すようにS字溝10aとこれに対向するねじ軸4のねじ山部分4bによって上述の循環路が形成されている。
なお、詳細には、ナット6には図4に示すように径方向へ貫通しており、循環コマ10と嵌合する形状の開口部6bが形成されている。循環コマ10は、この開口部6bに嵌合することでナット6に取り付けられている。また、図2(b)に示すように循環コマ10の下部にはフランジ部10bが形成されており、これによって開口部6bに嵌合した循環コマ10のナット6の径方向における位置決めを行うことができる。
循環コマ10のセンサ取付穴10cには、図4に示すように円柱形状のセンサ11が循環コマ10の下面側から挿入されており、循環路内へ露出している。詳しくは、センサ11は循環路内のボール5との間にギャップが生じるようにセンサ取付穴10cに挿入されている。
センサ11の外周面には不図示の雄ねじ部が形成されており、循環コマ10のセンサ取付穴10cの雌ねじ部と螺合している。この構成により、センサ取付穴10c内でセンサ11を回転させることにより、センサ11を移動させ、センサ11とボール5のギャップを調整することができる。なお、センサ11の雄ねじ部は、後述する固定ナット13を取り付けるために、センサ取付穴10cの長さよりも長く形成されている。
なお、センサ11とモニタ装置3は図1に示すようにケーブル12を介して電気的に接続されており、センサ11から出力された検出信号はモニタ装置3に入力される。
アンプ18は、センサ11から出力された微弱な検出信号を増幅するものである。
演算処理部15は、アンプ18で増幅された検出信号の処理、ボールねじ2の異常の有無を判定するための後述する異常監視ルーチンの実行、及び出力部17の制御等を行う。
記憶部16には、後述するボール5の通過時間Tと通過周期Sのそれぞれの基準値が記憶されている。
出力部17は、ボールねじ2の異常が検出された際に警告を出力するものであり、不図示のディスプレイと不図示のスピーカとを備えている。
図5は渦電流式のセンサの種類と特徴を示す表である。図6は変位センサと近接センサの感知範囲を示す図である。
渦電流式のセンサは、鉄等の磁性を持つ金属に反応して電圧(又は電流)を検出信号として出力するセンサであって、近接センサと変位センサの2種類に分けられる。このうち近接センサは、図5及び図6に示すように、変位センサに比べてコストが低く感知範囲が広いという長所がある。また近接センサは、該近接センサと測定対象(ボール5)とのギャップの調整が易しいという長所もある。
図7に示すように近接センサは、該近接センサと測定対象との距離が大きいときに所定の電圧を出力し、当該距離が所定の距離を下回ると出力電圧がゼロに切り換わるものである。具体的には、図8に示すように、循環路内を転動するボール5が近接センサの感知範囲に入ったときに出力電圧がゼロに切り換わる。即ち、近接センサの出力電圧の波形はON/OFFの矩形状となり、これによって近接センサの感知範囲にボール5が存在するか否かを検出することができる。また、近接センサの出力が最大値より小さくなっている時間の半分の時刻がボールが最も近接センサに接近している、すなわち近接センサの正面に位置している時刻であるから、図8に示すように、循環路でボール8が一定の速度で転動している場合、現在検出しているボールが最も近接センサに接近している時刻から、現在検出しているボールの前のボールが最も近接センサに接近していた時刻を減じればボール通過周期Sが得られる。
したがって、図8に示すように近接センサの出力電圧に基づいて、ボール5の通過時間Tと通過周期Sを算出することができる。なお、本明細書において、ボール5の通過時間Tとは、循環路を転動するボール5がセンサの感知範囲に入ってから出るまでの時間をいう。また、ボール5の通過周期Sとは、循環路を転動するボール5がセンサの正面位置に到達してから、次のボール5が当該正面位置に到達するまでの時間をいう。
図9はボールまでの距離が異なる場合における変位センサと近接センサの出力を示す図である。図9に示すように、通過時間Tと通過周期Sは、ボール5が摩耗等して小さくなることにより近接センサとボール5との距離が遠くなった場合には、ボール5が正常の大きさで当該距離が近い場合に比べて短くなる。これは、図6に示すように近接センサの感知範囲が、近接センサの先端から離れるほど小さくなる、即ち図6のx方向における幅が小さくなるためである。
ステップS11:演算処理部15が、アンプ18を介して得られたセンサ11からの検出信号に基づき、ボール5の通過時間T及び通過周期Sを算出する。
ステップS13:演算処理部15が、出力部17の不図示のディスプレイに警告情報を表示させ、不図示のスピーカに警告音を出力させるとともに、不図示の駆動部を停止させ、本異常監視ルーチンが終了する。
また、本実施形態に係るボールねじ装置1は、上述のようにセンサ11として渦電流式の近接センサを採用している。しかしこれに限られず、センサ11としてその他の非接触式のセンサを採用することも可能である。なお、本実施形態で採用した近接センサは、上述のように安価であるため、ボールねじ装置1の低コスト化を実現することができる。また、本実施形態におけるモニタ装置3はアンプ18を備える構成であるが、アンプ18の代わりにアンプ内蔵型の近接センサをセンサ11として備える構成としてもよい。
図11に示す第2実施形態に係るボールねじ装置20について、上記第1実施形態と同様の構成については説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。なお、本実施形態におけるボールねじ2や循環コマ10の構成は上記第1実施形態と同様であるため、図2〜図4は本実施形態でも参照する。
図11は本発明の第2実施形態に係るボールねじ装置の構成を示す概略図である。本実施形態におけるモニタ装置3は、図11に示すようにA/D変換部(アナログ/デジタル変換部)19を有している。
A/D変換部19は、循環コマ10のセンサ11から出力されてアンプ18によって増幅された検出信号をデジタル信号に変換処理するものである。
記憶部16には、ボール5の通過時間Tと通過周期Sのそれぞれの基準値に加えて、後述するピーク出力Dの基準値が記憶されている。
本実施形態におけるセンサ11には、渦電流式の変位センサが用いられている。
図7に示すように変位センサは、出力電圧が変位センサと測定対象との距離に比例し、当該距離が所定の距離を上回ると一定の電圧を出力するものである。具体的には、図8に示すように、循環路内を転動するボール5が変位センサの感知範囲に入ったときに出力電圧が小さくなりはじめ、変位センサの正面位置にボール5が到達したときに出力電圧がピーク(最小)になる。即ち、変位センサの出力電圧の波形は谷形状となり、これによって変位センサの感知範囲にボール5が存在するか否かを検出することができる。
したがって、図8に示すように変位センサの出力電圧に基づいて、ボール5の通過時間T、通過周期S、及びピーク出力Dを算出することができる。なお、ピーク出力Dとは、変位センサの正面位置にボール5が到達したときの出力電圧であって、変位センサとボール5との距離に相当するものである。
図9に示すように、ピーク出力Dは、ボール5が摩耗等して小さくなることにより変位センサとボール5との距離が遠くなった場合には、ボール5が正常の大きさで当該距離が近い場合に比べて大きくなる。なお、通過時間Tと通過周期Sは、上述した近接センサと同様に変位センサとボール5との距離が大きくなった場合に短くなる。
ステップS21:演算処理部15が、アンプ18及びA/D変換部19を介して得られたセンサ11からの検出信号に基づき、ボール5の通過時間T、通過周期S、及びセンサ11のピーク出力Dを算出する。
ステップS23:上記第1実施形態で述べたステップS13と同様である。
特に、本実施形態に係るボールねじ装置20では、上述のように演算処理部15がボール5の通過時間Tと通過周期Sに加えてピーク出力Dも参照することにより、ボールねじ2の異常の有無をより正確に判定することができる。なお、これに限られず、演算処理部15がセンサ11からの検出信号に基づいてボール5の通過時間T、通過周期S、及びピーク出力Dのうちの1つ又は2つの情報のみを算出し、算出した当該情報を参照してボールねじ2の異常の有無を判定する構成とすることもできる。
次に、本発明のボールねじ装置の第3実施形態について図面を参照しながら説明する。図13は、本実施形態のボールねじ装置300の概略構成を示すブロック図である。ボールねじ装置300は、第1実施形態と同様に、ボールねじ320と、渦電流式センサ313と、異常を検出するためのモニタ装置330とを備えている。
図14は、第3実施形態のボールねじ320の縦断面図である。ねじ軸301の外周面には、第1実施形態と同様に、断面がほぼ半円形のねじ溝302が螺旋状に形成されており、円筒状部材で形成されたナット303の内周面にも、断面がほぼ半円形のねじ溝304がねじ軸301のねじ溝302に対向して螺旋状に形成されており、このねじ軸301のねじ溝302とナット303のねじ溝304との間にボールの転動路305が形成される。なお、ナット303の図示左方端部には、取り付け用フランジ306が形成されており、そのフランジ306に、例えばボルトなどを挿通するための貫通孔が開設されている。
図16(a)は、渦電流式センサ313の取り付け構造の他の例を示す縦断面図である。この例では、渦電流式センサ313の外周面に、ナット303の外周面に適合するフランジ315が固定されている。そして、ナット303の外周面からボール戻し路309に向けて、渦電流式センサ313の外径より少し大きい内径の貫通孔314を形成し、その貫通孔314内に渦電流式センサ313を挿入し、ナット303の外周面に渦電流式センサ313のフランジ315を接着したものである。
また、渦電流式センサ313が渦電流式変位センサである場合に、異常検出のために演算処理部323で行われる演算処理のフローチャートは、第2実施形態と同様で、図12に示す通りである。
また、本実施形態においても、第1および第2実施形態と同様に、渦電流式近接センサであればボール5の通過時間Tと通過周期Sのいずれか一方の情報のみを算出し、算出した当該情報を参照しての異常の有無を判定する構成とすることもできる。また、ボール5の通過時間T、通過周期S、及びピーク出力Dのうちの1つ又は2つの情報のみを算出し、算出した当該情報を参照して異常の有無を判定する構成とすることもできる。
次に、本発明のボールねじ装置の第4実施形態について図面を参照しながら説明する。図17は、本実施形態のボールねじ装置400の概略構成を示すブロック図である。ボールねじ装置400は、第1実施形態と同様に、ボールねじ420と、渦電流式センサ413と、異常を検出するためのモニタ装置430とを備えている。
図18(a)は、本実施形態のボールねじ装置400の縦断面図である。ねじ軸401の外周面には、断面がほぼ半円形のねじ溝402が螺旋状に形成されており、これに対向するナット403の内周面にも、断面がほぼ半円形のねじ溝404が螺旋状に形成されており、このねじ軸401のねじ溝402とナット403のねじ溝404との間にボールの転動路405が形成される。この転動路405には、ねじ軸401又はナット402の回転運動に伴って転動するボール408が多数配設されている。また、ナット403には、転動路405のボール408を掬い上げて再び転動路405に戻すためのボール戻しチューブ409が外部より差し込まれている。戻しチューブ409の内周面側がボール408を循環させるための循環路となっている。なお、転動路405ではねじ軸401とナット402によってボール408に負荷がかかっている。これに対し、ボール戻しチューブ409内ではボール408に負荷がかからない、ボール408は所謂フリー状態である。
また、本実施形態においても、第1および第2実施形態と同様に、渦電流式近接センサであればボール5の通過時間Tと通過周期Sのいずれか一方の情報のみを算出し、算出した当該情報を参照しての異常の有無を判定する構成とすることもできる。また、ボール5の通過時間T、通過周期S、及びピーク出力Dのうちの1つ又は2つの情報のみを算出し、算出した当該情報を参照して異常の有無を判定する構成とすることもできる。
次に、本発明のボールねじ装置の第5実施形態について図面を参照しながら説明する。図21は、本実施形態のボールねじ装置500の概略構成を示すブロック図である。ボールねじ装置500は、第1実施形態と同様に、ボールねじ520と、渦電流式センサ513と、異常を検出するためのモニタ装置530とを備えている。
渦電流式センサ513が渦電流式変位センサである場合に、異常検出のために演算処理部523で行われる演算処理のフローチャートは、第2実施形態と同様で、図12に示す通りである。
また、本実施形態においても、第1および第2実施形態と同様に、渦電流式近接センサであればボール508の通過時間Tと通過周期Sのいずれか一方の情報のみを算出し、算出した当該情報を参照しての異常の有無を判定する構成とすることもできる。また、ボール508の通過時間T、通過周期S、及びピーク出力Dのうちの1つ又は2つの情報のみを算出し、算出した当該情報を参照して異常の有無を判定する構成とすることもできる。
図30は、本発明の第6実施形態に係るボールねじ装置600を示す部分断面図である。本実施形態に係るボールねじ装置600は、上記各実施形態と同様に、ねじ軸601およびナット602を備えている。このうちの、ナット602は円筒状の部材で形成されており、このナット602の内周面には螺旋状のねじ溝604が形成されている。前記ナット602の内周面側を挿通するねじ軸601の外周面には、ボールの転走路として螺旋状のねじ溝603が、ねじ軸601の一端部から他端部にわたって形成されている。このねじ溝603は前記ナット602のねじ溝604と対向しており、ねじ溝603とねじ溝604との間に設けられた多数のボール605は、ねじ軸601またはナット602の回転運動に伴って、ねじ溝603とねじ溝604とで形成される転動路を転動するようになっている。ねじ溝603,604は、その断面がボール605とそれぞれ二点で接触する形状(例えばゴシックアーク状)に形成されている。
なお、通過時間Tはボール605の転走速度、すなわち、ねじ軸601とナット602との相対的な回転速度差に比例して変化する為、異常を判定する基準値を絶対値で設定することはできない。従って、通過時間Tの平均値に対する比率、或いは通過周期Sに対する比率により判定の基準値を設定する。なお、このことは、上記各実施形態および以下の各実施形態における通過時間Tについても同様である。
即ち、非接触式センサ609の検出部近傍を通過するボール605の有無をデジタル化された1/0の情報として検知しており、非接触式センサ609とボール605との変位(距離)を検出する必要がないので、安価な渦電流式近接センサを用いることができ、さらにAD変換器等の高価なアナログ信号処理装置を不要としている。また、非接触式センサ609の出力信号からは、ボール605が非接触式センサ609の検出部近傍を通過する際の通過周期S及び通過時間Tを計測することでボールねじの状態を検知する為、安価なモニタ装置610(演算処理装置)が使用可能である。
さらに、非接触式センサ609とボール605との間の距離を高精度に調整する必要がないので、非接触式センサ609のエンドデフレクタ607への組付け作業が容易である。また、非接触式センサ609はエンドデフレクタ607に固定された状態でナット602に組み込まれるので、ボールねじの組み立てが容易である。
図33は、本実施形態において非接触式センサの取り付け構造の他の例を示し、(a)は組み付け状態においてナットの中心から外径方向に見た状態を示し、(b)は組み付け状態においてナットの軸方向から見た状態を示している。本例におけるエンドデフレクタ607aの場合には、センサ挿入穴608aの内周面に雌ねじを形成すると共に、非接触式センサ609aの外周面に雄ねじを形成し、前記センサ挿入穴608aに前記非接触式センサ609aを螺合させることにより、ボール605と非接触式センサ609aとの距離を調整可能としている。調整完了後、固定ナット620を非接触式センサ609に螺合させ、さらにエンドデフレクタ607aに当接した状態で締め付けることにより、非接触式センサ609をエンドデフレクタ607aに固定している。その他の構成及び作用は、前述した第6実施形態と同様である。
また、本実施形態においても、第1および第2実施形態と同様に、渦電流式近接センサであればボール605の通過時間Tと通過周期Sのいずれか一方の情報のみを算出し、算出した当該情報を参照しての異常の有無を判定する構成とすることもできる。また、ボール605の通過時間T、通過周期S、及びピーク出力Dのうちの1つ又は2つの情報のみを算出し、算出した当該情報を参照して異常の有無を判定する構成とすることもできる。
図37は、本発明の第7実施形態に係るボールねじ装置700を示す部分断面図である。本実施形態に係るボールねじ装置700は、上記各実施形態と同様に、ねじ軸701およびナット702を備えている。このうちの、ナット702は円筒状部材で形成されており、このナット702の内周面には螺旋状のねじ溝704が形成されている。前記ナット702の内周面側を挿通するねじ軸701の外周面には、螺旋状のねじ溝703が、ねじ軸701の一端部から他端部にわたって形成されている。このねじ溝703は前記ナット702のねじ溝704と対向しており、ねじ溝703とねじ溝704との間に設けられた多数のボール705は、ねじ軸701またはナット702の回転運動に伴って、ねじ溝703とねじ溝704とによって形成される転動路716を転動するようになっている。ねじ溝703,704は、その断面がボール705とそれぞれ二点で接触する形状(例えばゴシックアーク状)に形成されている。なお、前記ボール705は、導電性を有する材料(例えば合金鋼等)により形成されている。
即ち、非接触式センサ709の検出部近傍を通過するボール705の有無をデジタル化された1/0の情報として検知しており、非接触式センサ709とボール705との変位(距離)を検出する必要がないので、安価な渦電流式近接センサを用いることができ、さらにAD変換器等の高価なアナログ信号処理装置を不要としている。また、非接触式センサ709の出力信号からは、ボール705が非接触式センサ709の検出部近傍を通過する際の通過周期S及び通過時間Tを計測することでボールねじの状態を検知する為、安価なモニタ装置710(演算処理装置)が使用可能である。
さらに、非接触式センサ709とボール705との間の距離を高精度に調整する必要がないので、非接触式センサ709のナット702への組付け作業が容易である。
図39は、本実施形態において非接触式センサの取り付け構造の他の例を示している。本例におけるナット702aの場合には、センサ挿入穴708aの内周面に雌ねじを形成すると共に、非接触式センサ709aの外周面に雄ねじを形成し、前記センサ挿入穴708aに前記非接触式センサ709aを螺合させることにより、ボール705と非接触式センサ709aとの距離を調整可能としている。調整完了後、固定ナット722を非接触式センサ709に螺合させ、さらにセンサ挿入孔708aの内部に形成した段部に当接した状態で締め付けることにより、非接触式センサ709をナット702aに固定している。その他の構成及び作用は、前述した第7実施形態と同様である。
また、本実施形態においても、第1および第2実施形態と同様に、渦電流式近接センサであればボール705の通過時間Tと通過周期Sのいずれか一方の情報のみを算出し、算出した当該情報を参照しての異常の有無を判定する構成とすることもできる。また、ボール705の通過時間T、通過周期S、及びピーク出力Dのうちの1つ又は2つの情報のみを算出し、算出した当該情報を参照して異常の有無を判定する構成とすることもできる。
図42(a)は、本発明の第8実施形態に係るボールねじ装置800の径方向から見た断面図を示している。本実施形態に係るボールねじ装置800は、図42(a)に示す様に、上記各実施形態と同様に、ねじ軸801およびナット802を備えている。このうちの、ナット802は円筒状部材で形成されており、このナット802の内周面には螺旋状のねじ溝804が形成されている。前記ナット802の内周面側を挿通するねじ軸801の外周面には、螺旋状のねじ溝803が、ねじ軸801の一端部から他端部にわたって形成されている。このねじ溝803は前記ナット802のねじ溝804と対向しており、ねじ溝803とねじ溝804との間に設けられた多数のボール805は、ねじ軸801またはナット802の回転運動に伴って、ねじ溝803とねじ溝804とで形成される転動路816を転動するようになっている。ねじ溝803,804は、その断面がボール805とそれぞれ二点で接触する形状(例えばゴシックアーチ状)に形成されている。なお、前記ボール805は、導電性を有する材料(例えば合金鋼等)により形成されている。
即ち、非接触式センサ809の検出部近傍を通過するボール805の有無をデジタル化された1/0の情報として検知しており、非接触式センサ809とボール805との距離(変位)を検出する必要がないので、安価な渦電流式近接センサを用いることができ、さらにAD変換器等の高価なアナログ信号処理装置を不要としている。また、非接触式センサ809の出力信号からは、ボール805が非接触式センサ809の検出部近傍を通過する際の通過周期S及び通過時間Tを計測するという単純な処理によりボールねじの状態を検知するために、高度な演算処理能力を必要とせず、安価なモニタ装置810(演算処理装置)が使用可能である。
さらに、非接触式センサ809とボール805との間の距離を高精度に調整する必要がないので、非接触式センサ809のナット802への組付け作業が容易である。
なお、本実施形態では、転動路816が2条であるボールねじに本発明を適用した例を示したが、これに限定されることなく、1条或いは3条以上のボール転動路を有するボールねじにも本発明を適用することができる。
図44(a)は、本実施形態において非接触式センサの取り付け構造の他の例を示している。本例におけるエンドキャップ807aの場合には、センサキャップ807aの軸方向側端面(連結路806aとは反対側の面)に非接触式センサ809aを保持固定するセンサ保持具821を装着し、このセンサ保持具821に、内周面に雌ねじが形成された固定ナット822を圧入等の方法により固定している。そして、非接触式センサ809aの外周面に雄ねじを形成し、前記固定ナット822に非接触式センサ809aを螺合させることにより、ボール805と非接触式センサ809aとの距離を調整可能としている。調整完了後、ナット823を非接触式センサ809aに螺合させ、さらに締め付けることにより、非接触式センサ809aをエンドキャップ807aに固定している。以上の様に、エンドキャップ807aの連結路806aを構成する曲路の頂点である変曲部806b付近が薄肉であり、センサ挿入孔808の形成が困難である場合に本例は好適である。
また、ナット823に代えて、非接触式センサ809aの雄ねじ部分に接着剤を塗布して緩み止めとすることもできる。接着剤としては、空気遮断で硬化する嫌気性接着剤を使用することができる。その他の構成及び作用は、前述した第8実施形態と同様である。
また、本実施形態においても、第1および第2実施形態と同様に、渦電流式近接センサであればボール805の通過時間Tと通過周期Sのいずれか一方の情報のみを算出し、算出した当該情報を参照しての異常の有無を判定する構成とすることもできる。また、ボール805の通過時間T、通過周期S、及びピーク出力Dのうちの1つ又は2つの情報のみを算出し、算出した当該情報を参照して異常の有無を判定する構成とすることもできる。
図46は、本発明の第9実施形態のボールねじ装置900の要部を示す斜視図であり、一部を断面で示す。本実施形態のボールねじ装置900は、第6実施形態と略同様の構成である。以下、第6実施形態と同様の構成については図30および図31を参照して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
本実施形態のボールねじ装置900は、ねじ軸901とナット902との間に介装された多数のボール905のうち、1個だけ他の全てのボール905を形成する金属材料と異なる金属材料で形成されている。また、エンドデフレクタ907に取り付けられている非接触式センサ909は、渦電流式変位センサとなっている。また、非接触式センサ909には第6実施形態と略同様のモニタ装置910(図32参照)が接続されているが、本実施形態のモニタ装置910は、渦電流式変位センサからのアナログ出力をデジタル信号(ON/OFF信号)に変換するためのA/D変換器(図示省略)が備えられている。
図47(a)は、鉄(Fe)および鉄以外の金属に対する渦電流式変位センサの出力特性を示す図である。ここでは鉄以外の金属として、銅(Cl)、アルミニウム(Al)、およびステンレス(sus304)について測定している。なお、図47(a)は、検出対象物を鉄として、鉄との距離に対して電圧が比例して出力されるように調整された渦電流式変位センサを用いて出力を測定した結果を示している。図47(a)に示すように、銅(Cl)、アルミニウム(Al)、およびステンレス(sus304)の各金属材に対する出力特性はそれぞれ固有の曲線を描き、渦電流式変位センサは金属材によって出力特性が異なることを示している。
次に第9実施形態の変形例について説明する。図49は、第9実施形態の変形例に係るボールねじ装置900aの要部を示す斜視図であり、一部を断面で示す。本変形例は第9実施形態と略同様の構成であり、同様の構成については説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
2 ボールねじ
3 モニタ装置
4 ねじ軸
4a ねじ溝
4b ねじ山部分
5 ボール
6 ナット
6a ねじ溝
6b 開口部
10 循環コマ
10a S字溝
10c センサ取付穴
11 センサ
13 固定ナット
15 演算処理部
16 記憶部
17 出力部
18 アンプ
19 A/D変換部
Claims (30)
- 外周面に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、
前記ねじ軸に嵌合され内周面に前記ねじ軸のねじ溝と対向するねじ溝が形成されたナットと、
対向する前記ねじ軸のねじ溝と前記ナットのねじ溝とで形成される転動路に転動可能に装填された複数のボールと、
前記転動路に接続され前記転動路を転動した前記ボールを転動させて循環させるための循環路とでボールねじを構成し、
さらに、転動する前記ボールを検出するための非接触式のセンサを備えたボールねじ装置において、
前記非接触式のセンサは、前記循環路内を転動する前記ボールを検出し、前記センサの検出信号に基づいて前記ボールねじの異常を検出することを特徴とするボールねじ装置。 - 前記循環路は、前記ナットに設けられ前記ナットの隣り合うねじ溝を連結する循環コマに形成され、前記センサは前記循環コマに固定配置されていることを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
- 前記循環コマに形成された前記循環路は、前記隣り合うねじ溝を連結するS字型の溝部であり、前記センサは該溝部の中央位置に設けられた取り付け穴に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のボールねじ装置。
- 前記循環コマの前記取り付け穴に取り付けられた前記センサは、固定ナットで前記循環コマに固定されていることを特徴とする請求項3に記載のボールねじ装置。
- 前記循環路は前記ナットの内部に形成され、前記センサは前記ナットに形成され前記循環路に開口するセンサ挿入穴に固定配置されていることを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
- 前記センサは、接着または圧入により前記センサ挿入穴に固定されていることを特徴とする請求項5に記載のボールねじ装置。
- 前記センサは外周面に雄ねじが形成され、前記センサ挿入穴に形成された雌ねじに螺合されており、前記センサと前記ボールとの距離を調整することが可能であることを特徴とする請求項5に記載のボールねじ装置。
- 前記循環路は前記ナットの外周側に設けられたチューブ状部材の内周側に設けられ、前記センサは該チューブ状部材に固定配置されていることを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
- 前記センサは前記チューブ状部材と前記転動路との境界部近傍に配置されており、該境界部近傍を転動する前記ボールを検出することを特徴とする請求項8に記載のボールねじ装置。
- 前記チューブ状部材は樹脂で形成されていることを特徴とする請求項9に記載のボールねじ装置。
- 前記循環路は前記ナットの外周側に設けられたチューブ状部材の内周部に設けられ、前記センサは、前記チューブ状部材と前記転動路との境界部近傍で前記ナットに配置されていることを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置
- 前記ねじ軸の回転方向または前記ナットの移動方向を検出するための検出手段と、該検出手段の検出結果に基づいて前記境界部近傍の前記循環路を転動する前記ボールの転動する方向を表示するための表示手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項11に記載のボールねじ装置。
- 前記転動路は前記ナットの両端部に亘って延在しており、前記循環路は、該循環路と前記転動路とを連結するための連結路を含み、前記連結路は、前記ボールを循環させるために前記ナットの両端部に設けられた循環部材に形成され、滑らかな曲路で構成されており、前記センサは前記循環部材に固定配置され、前記連結路を転動する前記ボールを検出することを特徴とする請求項1に記載のボールねじ装置。
- 前記循環部材はエンドデフレクタまたはエンドキャップであり、前記センサは、前記エンドデフレクタまたはエンドキャップの軸方向側端面から前記曲路の頂点に向けて軸方向に延在して形成されたセンサ取り付け穴に軸方向に沿う向きで取り付けられていることを特徴とする請求項13に記載のボールねじ装置。
- 前記循環部材はエンドデフレクタであり、前記センサは、前記曲路のR中心を通る直線上に、前記エンドデフレクタの軸方向側端面から該直線に沿う方向に延在して設けられたセンサ取り付け穴に該直線に沿う向きで取り付けられていることを特徴とする請求項13に記載のボールねじ装置。
- 前記センサは、接着、圧入、一体成形の何れかにより前記エンドデフレクタまたは前記エンドキャップに固定されていることを特徴とする請求項14または15に記載のボールねじ装置。
- 前記センサは外周面に雄ねじが形成され、前記エンドデフレクタまたは前記エンドキャップに形成された雌ねじに螺合されており、前記センサと前記ボールとの距離を調整することが可能であることを特徴とする請求項14または15の何れか一項に記載のボールねじ装置。
- 前記ボールねじの異常を検出した際に、警告を出力する出力部を有することを特徴とする請求項1から請求項17の何れか一項に記載のボールねじ装置。
- 前記非接触式のセンサは、渦電流式の近接センサであることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のボールねじ装置。
- 前記センサの検出信号から前記センサを通過する前記ボールの通過時間と通過周期の少なくとも1つの情報を算出し、算出した前記情報に基づいて前記ボールねじの異常の有無を判定するモニタ装置を有することを特徴とする請求項19に記載のボールねじ装置。
- 前記非接触式のセンサは、渦電流式の変位センサであることを特徴とする請求項1から請求項17の何れか一項に記載のボールねじ装置。
- 前記センサの検出信号から前記センサを通過する前記ボールの通過時間、通過周期、及び前記センサのピーク出力の少なくとも1つの情報を算出し、算出した前記情報に基づいて前記ボールねじの異常の有無を判定するモニタ装置を有することを特徴とする請求項20に記載のボールねじ装置。
- 前記モニタ装置は、前記ボールねじの異常を検出した際に、警告を出力する出力部を有することを特徴とする請求項20または22に記載のボールねじ装置。
- 外周面に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、
前記ねじ軸に嵌合され内周面に前記ねじ軸のねじ溝と対向するねじ溝が形成されたナットと、
対向する前記ねじ軸のねじ溝と前記ナットのねじ溝とで形成される転動路に転動可能に装填された複数のボールと、
前記転動路に接続され前記転動路を転動した前記ボールを転動させて循環させるための循環路とでボールねじを構成し、
さらに、転動する前記ボールを検出するための非接触式のセンサを備えたボールねじ装置において、
前記複数のボールは、第1の金属材料で形成された第1の種類のボールと、第2の金属材料で形成された第2の種類のボールとからなり、前記センサは前記第1の種類のボールと第2の種類のボールとを識別することで前記ボールねじの異常を検出することを特徴とするボールねじ装置。 - 前記装填された全てのボールのうち、前記第1の種類のボールの数は1個であることを特徴とする請求項24に記載のボールねじ装置。
- 前記装填された全てのボールのうち、前記第1の種類のボールの数は、前記ナットに形成されたねじ溝のリード数と同数であり、1リードにつき1個が配置されていることを特徴とする請求項24に記載のボールねじ装置。
- 前記非接触式のセンサは、渦電流式の変位センサであることを特徴とする請求項24から請求項26の何れか一項に記載のボールねじ装置。
- 前記センサの検出信号から前記センサを通過する前記第1の種類のボールの通過周期の情報を算出し、算出した前記情報に基づいて前記ボールねじの異常の有無を判定するモニタ装置を有することを特徴とする請求項27に記載のボールねじ装置。
- 前記モニタ装置は、前記ボールねじの異常を検出した際に、警告を出力する出力部を有することを特徴とする請求項28に記載のボールねじ装置。
- 軸に外嵌すると共に、該軸に沿って該軸に相対的に直進移動する移動体と、
該移動体の内面側に形成されたボール転動溝に保持され、該ボール転動溝と前記軸に形成されたボール転動溝との間で転動する多数のボールと、
前記移動体に形成され、前記ボール転動溝の一端側から他端側に前記ボールを循環させる循環路と、
転動する前記ボールを検出するための非接触式のセンサとを備えた移動体案内装置において、
前記非接触式のセンサは、前記循環路内を転動する前記ボールを検出し、前記センサの検出信号に基づいて前記ボールの異常を検出することを特徴とする移動体案内装置。
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