JP2014196230A - 窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ところで、表面がc面であるGaN結晶層では、c軸方向(層厚さ方向)に自発分極が発生する。また、GaN結晶層上に異種半導体層をヘテロエピタキシャル成長させた場合、両者の格子定数の違いによって、GaN結晶内でc軸方向に圧電分極(ピエゾ分極)が発生する(特許文献1及び2)。この結果、前記構成の半導体発光素子では、多重量子井戸層において、c軸方向に大きな内部分極電場が発生し、量子閉じ込めシュタルク効果(Quantum Confined Stark Effect:QCSE)により、発光効率の低下や必要な注入電流の増大に伴う発光のピーク波長シフトなどの問題が生じると考えられている。
しかしながら、現在、無極性面および半極性面を主面とするGaN結晶自立基板は流通しておらず、入手が困難である。その理由として以下の理由が挙げられる。無極性面および半極性面を主面とするGaN結晶自立基板の作製方法としては、バルクのGaN結晶から特定の面を主面として切り出す方法があるが、極めてコストが高くなる、また、大面積の基板が得られないなどの問題があり、工業的には受け入れられない。
一方、{1010}面を有するフラットなサファイア下地基板から形成される、{11−22}面GaN結晶表面をマスキングして、更にその上にGaN結晶層を形成する技術が開示されているが、形成するGaN結晶層の厚みは薄く、GaN結晶自立基板に関するものではない(非特許文献3)。
ところが、同様な方法で、半極性又は無極性のGaN結晶自立基板を製造したところ、クラックが発生して極端な場合は裂けが生じたり、割れない場合でも表面の平滑性が悪く、厚みのある高品質で大面積の自立基板が製造できなかった。前者のクラック発生の場合は、製造時或いは後工程処理時に裂けることが多く、大面積の自立基板が得られない。後者の場合、平滑な自立基板とするために表面研磨を行わねばならず、製造効率が悪い(ロスが大きい)だけでなく、品質の悪い(欠陥密度が大きい)薄い結晶層を有する自立基板しか得られないという問題が生じる。
前記サファイア下地基板上に有機金属気相成長(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE)法により、0.05〜5μm厚の半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶層を形成し、次いで当該結晶層の表面の一部をマスキングした後、当該結晶層表面上にハイドライド気相成長(Hydride Vapor Phase Epitaxy:HVPE)法により0.2〜5mm厚の半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶層を形成し、その後サファイア下地基板を分離せしめることを特徴とする窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法が提供される。
1)形成した窒化ガリウム結晶層が、サファイア下地基板の溝部からの結晶成長により形成される複数本の結晶会合部を有し、マスキングが、上記窒化ガリウム結晶層表面に存在する結晶会合部の一部をマスキングすることが特に好適であり、更に、
2)マスキングにより、MOVPEによって形成した窒化ガリウム結晶層の成長表面の10〜90%が覆われ、且つ、窒化ガリウム結晶層表面に存在する結晶会合部の20%〜80%が覆われていること
3)マスキングに使用するマスクが、ストライプ状の形状を有すること
4)マスキングに使用するマスクが、格子状の形状を有すること
5)マスキングに使用するマスクが、ドット状の形状を有すること
6)下地基板の窒化ガリウム結晶層を形成する側の全表面積に対して、結晶成長の起点となる側壁の総面積の割合が、1〜20%であること
7)半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶自立基板が、{0001}面が<10−10>軸方向に向かって1°〜90°傾いた面を主面とする窒化ガリウム結晶自立基板であること、
8)半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶自立基板が、{0001}面が<11−20>軸方向に向かって1°〜90°傾いた面を主面とする窒化ガリウム結晶自立基板であること、
9)窒化ガリウム結晶自立基板の暗点密度が、2×108個/cm2未満であること、
10)HVPE法による結晶形成後の結晶成長炉から取り出した時点における窒化ガリウム結晶表面のRMS(表面粗さ)が、300nm未満であること、が好適である。
即ち、本発明によれば、暗点密度が2×108個/cm2未満、厚みが0.2〜5mm、アズグロウンの結晶表面のRMSが300nm未満の平滑な面を持ち、半極性或いは無極性の面方位を有する大面積のGaN結晶自立基板を、低コストで、提供することができる。
該自立基板を用いてLEDやLDなどの半導体発光素子構造を形成した場合、サファイア基板上へのヘテロエピタキシャル成長とは異なり、下地基板と成長層との物質が同じであるため、基板と成長層との間での転位の発生を抑えることができ、高発光効率の半導体発光素子が作製できる。更に、GaN結晶層表面の面方位は無極性面または半極性面であるため、従来のc面を主面とするGaN結晶層基板に比べて、量子閉じ込めシュタルク効果による発光効率の低下の影響が小さい。
また、本発明の方法は、前記結晶成長層の面積が大きい場合であるほど有利であり、得られる結晶の面積が1cm2以上、好ましくは、5cm2以上、更に好ましくは、10cm2以上の大面積のGaN結晶自立基板の製造に好適である。
尚、上記暗点密度は、結晶の転位欠陥である貫通転位の密度を示すための指標となる物性値であり、走査型電子顕微鏡/カソードルミネッセンス(SEM・CL)装置を用いて測定される。測定時の加速電圧は5kVとし、観察範囲は20μm×20μmとする。このとき、観察範囲内に観察された暗点の総数より暗点密度を算出する。また、半極性と無極性を総称して非極性と言う場合がある。
サファイア上にGaN結晶を成長させる場合、主としてサファイアのc軸とGaN結晶のc軸が揃い、サファイアのm軸とGaN結晶のa軸が揃って成長することから、傾いた面を主面とするGaN結晶を得るには、対応した角度だけ傾斜したミスカット面を有するサファイアを使用する。
具体的には、無極性のa面({11−20}面)やm面({1−100}面)を表面に有するGaN結晶を成長させたい場合は、主面が、各々{1−100}面、{11−20}面であるサファイア下地基板を使用する。半極性の{11−22}面を表面に有するGaN結晶を成長させたい場合は、サファイア下地基板の主面はr面({10−12}面)とする。{10−11}面を表面に有するGaN結晶を成長させたい場合は、サファイア下地基板の主面はn面({11−23}面)とする。{20−21}面を表面に有するGaN結晶を成長させたい場合は、サファイア下地基板の主面は{22−43}面とする。その他、{20−21}面等を主面するサファイア下地基板を用いることができる。
該下地基板は、通常、厚みが0.3〜3.0mm、直径が50〜300mmの円盤状のものが使用されるが、特にこれに限定されるものではない。
例えば、下地基板主面が{10−12}面、溝部の延びる方向が{11−20}面の面方位、即ち、a軸方向である場合に、溝部の一方の側壁にc面が形成される。或いは、下地基板主面が{11−23}面、溝部の延びる方向が{10−10}面の面方位、即ち、m軸方向である場合に、溝部の一方の側壁にc面が形成される。
主面が上記何れの面方位であっても、成長起点となる側壁を起点として選択的横方向成長(Epitaxial Lateral Overgrowth:ELO)して結晶が成長する。前記剥離を容易にするためには、側壁は、その総面積が下地基板の窒化ガリウム結晶層を形成する側の全表面積に対して、1〜20%であることが好ましい。
このときの角度58.4度は、所望するGaN結晶の主面である{11−22}面と、成長方向であるGaN結晶のc軸に対して垂直となるGaN結晶のc面とがなす角度が、58.4度であることに依る。しかし、サファイア下地基板の主面である{10−12}面と、溝部の側壁に現れるサファイアc面とがなす角度は57.6度であるため、その上に成長したGaN結晶層の表面は、サファイア下地基板の主面に対し、約0.8度傾斜する。そこで、この角度を相殺するように、サファイア{10−12}面にオフ角をつけた面を主面とするミスカット基板を用いることにより、GaN結晶の{11−22}面がサファイア下地基板主面に対して平行となるように成長したGaN結晶層を得ることができる。
しかし、下地基板主面と溝部側壁とがなす角度(θ)が90度となる溝部を形成することはエッチング技術上困難であるが、下地基板主面と溝部側壁とがなす角度(θ)が90度に近い溝部を有するサファイア下地基板を用いることにより、{11−20}面を主面とするサファイア下地基板上に、GaN結晶の{10−10}面がサファイア下地基板主面に対して平行となるように成長したGaN結晶層を、或いは、{10−10}面を主面とするサファイア下地基板上に、GaN結晶の{11−20}面がサファイア下地基板主面に対して平行となるように成長したGaN結晶層を得ることができる。
結晶成長領域の幅(d)とは、図2に示す如く、側壁全てが結晶成長領域である場合は、下地基板主面と側壁が交わる辺と、側壁と溝部底面が交わる辺との間の、側壁上の最短距離(間隔)を云う。図3に示す如く、側壁の一部がマスキングされ結晶成長領域が制限されている場合は、上記最短距離(間隔)から、マスキング部分の幅を除いた距離(d)を云う。
更に、側壁の幅、溝部開口部幅、溝部間隔、底面幅などの制御手段としては、フォトレジストのパターニングを形成する段階において、フォトレジストの塗布量、ベーク温度、ベーク時間、UV照射量、UV照射する際のフォトマスクの形状などが挙げられる。また、エッチングの段階において、エッチングガス種、エッチングガス濃度、エッチングガス混合比、アンテナパワー、バイアスパワー、エッチング時間などによっても制御できる。
これら種々の条件を組み合わせることにより、所定の形状の溝部を有したサファイア下地基板を得ることができる。前記側壁の幅は、単位時間あたりにサファイアがエッチングされる速度であるエッチングレートを求め、エッチング時間を変更することで制御が可能である。
具体的には、下地基板主面が{10−12}面、溝部の延びる方向が{11−20}面の面方位、即ち、a軸方向である場合は、結晶成長面である側壁にはc面が露出する。下地基板主面が{11−23}面、溝部の延びる方向が{10−10}面の面方位、即ち、m軸方向である場合は、結晶成長面である側壁にはc面が露出する。下地基板主面が{11−20}面、溝部の延びる方向が{10−10}面の面方位、即ち、m軸方向である場合は、結晶成長面である側壁にはc面が露出する。下地基板主面が{10−10}面、溝部の延びる方向が{11−20}面の面方位、即ち、a軸方向である場合は、結晶成長面である側壁にはc面が露出する。下地基板主面が{22−43}面、溝部の延びる方向が{10−10}面の面方位、即ち、m軸方向である場合は、結晶成長面である側壁にはc面が露出する。
上記の通り、サファイア下地基板は、その主面の面方位並びに結晶成長の起点の面となる側壁の面方位を任意に設計することができる。種々の面方位を有する側壁の中で、c面側壁を起点とした横方向成長が優先的に起こり易いし制御し易い。従って、溝部を構成する側壁の少なくとも一部にc面からなる側壁を形成しておくことは、好ましい態様である。
具体的には、下地基板主面が{10−12}面、{11−23}面、或いは{22−43}面である場合、GaN結晶は下、地基板主面、サファイアc面が露出した溝部側壁、及びもう一方の溝部側壁から結晶成長する可能性がある。この場合、サファイアc面が露出した溝部側壁から優先的に成長が起こるように制御するには、上記種々の成長条件の最適化が必要である。また、下地基板主面からの成長は、結晶成長阻害層の形成付与によっても抑制が可能である。
下地基板主面が{11−20}面、或いは{10−10}面である場合、GaN結晶は下地基板主面、及び溝部側壁から結晶成長する可能性がある。このとき、両側の溝部側壁は同じ面方位を有しているため、どちらからも同じ面方位を有したGaN結晶が成長し、どちらか一方の溝部側壁から結晶が成長するように制御する必要はなく、下地基板主面からの成長を抑制すればよい。下地基板主面からの成長を抑制するには結晶成長阻害層の形成付与が効果的であるが、上記種々の成長条件の最適化のみでも制御は可能である。
本発明において、前記溝部形成サファイア下地基板上へのMOVPE法による半極性または無極性のGaN結晶層の形成後に、該GaN結晶層の成長表面の一部をマスキングし、次いでHVPE法でGaN結晶の成長を行うことが重要である。
マスキングは、溝部形成サファイア下地基板上に直接マスキング処理を施して結晶成長させても、クラック発生の抑制には効果がない。これは溝部形成により微小核形成や転位発生領域をすでに制御しているためである。そして、この方法では、HVPE法で成長を行って形成したGaN層のクラックの発生や表面平坦性の改善に寄与しない。
本願発明では、MOVPE法によって予め形成したGaN結晶層の上にマスキングを行うことにより、GaN結晶層の部分的な面ズレや軸ズレの影響を防止し、クラックの発生が抑制される。
上記抑制の機構としては、決められた開口部からのみELO成長することで成長方向を制御し、成長方向や方位の異なる異常成長を防止することも影響していると考えられる。また、マスキングにより、マスク部が溝部形成サファイア下地基板とGaN結晶との熱膨張差を吸収する緩衝層としても働き、上方に形成されるGaN結晶内のクラックの発生を抑制しているものと考えらえる。
ただし、上記マスキングは上記結晶会合部の全部に対して行わないことがより好ましい。結晶会合部の欠陥表面全部をマスキングすると、欠陥に溜った歪が分散、開放せず、その上に成長させるGaN結晶にクラックが発生し易くなる恐れがある。
前記MOVPE法により形成されるGaN結晶層表面のマスキングの割合(成長表面マスク被覆率)は、通常、基板上の結晶成長面の全表面積に対して、10〜90%が好ましい。成長表面マスク被覆率が10%未満では、クラックの防止並びに結晶表面の平滑性向上への効果が低減する恐れがある。成長表面マスク被覆率が90%を超えると、マスク上からの多結晶成長が起こるため単結晶を得ることが困難となる恐れがある。このような観点から、特に、成長表面マスク被覆率が20〜80%であることが好ましく、30%〜70%であることが更に好ましい。
また、前記GaN結晶層表面に存在する結晶会合部に対するマスク被覆率(会合部表面マスク被覆率=GaN結晶層表面に存在する会合部のマスク被覆面積/GaN結晶層表面に存在する会合部の全面積)は、20%〜80%とするのが効果的である。会合部表面マスク被覆率が20%未満では、歪の抑制に効果が低減する傾向がある。また、会合部表面マスク被覆率が80%を超えると、歪の分散効果が低減する傾向がある。
当該GaN結晶層表面に存在する会合部の面積は、前出のSEM・CL装置による観察範囲において存在する暗点の会合部の幅と長さの積の総和から算出される。
上記マスクを構成するユニット、例えば、前記ストライプ状マスクの場合は線、ドット状マスクの場合のドットは、相互に等間隔に存在することが好ましい。また、上記ユニットは単一であってもよいし、複数の集合体であってもよい。例えば、ストライプ状マスクを構成する線は1本でもよいし、複数本の線の組み合わせでもよい。
即ち、本発明で使用するサファイア下地基板は単結晶であり、目的とするGaN結晶の結晶方位に対応させた、前述の通りの様々に選択された結晶主面を持つ。それ故、当該基板は、直交する異なる2つの熱膨張係数を有している。したがって、ストライプ状のマスクを熱膨張の大きい方向と平行に形成することにより、GaN結晶層と溝部形成サファイア下地基板間にかかる歪を緩衝することができ、ひいてはHVPE法により形成されるGaN結晶の割れを防止できる。
結晶成長に用いられるHVPE装置は、大きくは反応管、加熱系、ガス供給系、及びガス排気系から構成される。ガス供給系はマスフローコントローラーによって、ガス供給量の精密な制御が可能である。加熱系は、石英製の反応管を抵抗加熱式のヒーターで覆い、反応管、及びその中に設置される基板やサセプタ、金属原料を加熱するホットウォール法が用いられている。ホットウォール法を用いることにより、原料ガスを充分に加熱して基板表面に供給することができ、供給原料の飽和蒸気圧を高くすることができる。その結果、多量の原料供給が可能となり高速成長を実現できる。
結晶成長には原料ガスとして窒素原料であるNH3ガス、Ga源であるGaClを生成するためのHClガスが用いられる。GaCl生成には、HClガスの代わりにCl2ガスを使用しても良い。またGa原料であるGa金属は装置内に設置される。原料ガスであるNH3とHClガスの他に、H2やN2などのキャリアガスが用いられる。
しかしながら、レーザー照射分離や研磨等の方法では、GaN結晶へのダメージが発生する恐れがあり、しかも、必ずしも効率的な分離方法ではない。
前記溝部形成サファイア下地基板を用いて膜厚が100μm以上、好適には300μm以上のGaN結晶を成長した後、基板の冷却を行うと、特別に機械的応力を印加することなく、冷却時の熱応力のみにてサファイア下地基板とGaN結晶層との界面において自然剥離が生じて分離できる。冷却は、例えば、低温ガス等を供給して強制的に行ってもよく、また、自然放冷によって行ってもよい。冷却によってサファイア下地基板、及びGaN結晶層の温度を20℃〜150℃まで低下させる。冷却速度は、例えば、1〜100℃/minである。
〔GaN結晶層の形成〕
{10−12}面サファイア基板上にストライプ状にレジストをパターニングし、次いで反応性イオンエッチング(RIE)によりドライエッチングすることで、サファイア基板上に複数本の溝部を形成した。溝部は溝開口幅が3μm、溝の深さが1μm、及び隣接する溝部までの基板主面部分の幅が3μmとなるように形成した。
ドライエッチングの後、レジストを洗浄除去することで溝部形成サファイア下地基板を得た。この溝部形成サファイア下地基板は、基板主面(2インチφ)、基板主面に複数本形成された溝部の側壁から構成される表面露出した結晶成長領域(C面)、及び溝部底面を有する。
作成した溝部形成サファイア下地基板を、MOVPE装置内に、基板上面が上向きになるように石英トレイをセットした後、基板を1150℃に加熱するとともに反応容器内の圧力を100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスとしてH2を10L/minで流通させ、その状態を10分間保持することにより基板をサーマルクリーニングした。
続いて、基板の温度を1075℃とすると共に反応容器内の圧力を20kPaとし、また、反応容器内を流通させるキャリアガスをH2として、それを5L/minの流量で流通させながら、そこにV族元素供給源(NH3)、及びIII族元素供給源(TMG)を、それぞれの供給量が2L/min及び30μmol/minとなるように300分間流し、GaNを成長させることにより、基板の主面に複数本形成された溝部の各側壁から成長したGaN結晶同士を会合し、基板主面に対して平行に表面が形成されるように{11−22}面GaN結晶層を形成した。
作成したGaN結晶層(成長表面)上にレジストをスピンコートした。次いでフォトリソグラフィー法にてサファイア基板の溝部に対して90°となる向きにストライプ状にレジストのパターニングを行った。次いでスパッタリングによりSiO2を100nm成膜した。成膜の後、レジストを洗浄除去することでGaN結晶層上に複数本のストライプを有するSiO2層を形成した。ストライプ幅は3μm、マスクの高さは100nm、開口幅は3μmであった。
GaN結晶成長表面に対するマスキングの割合、即ち、「成長表面マスク被覆率」、並びに「会合部表面マスク被覆率」は以下の通り定義され、各々次のようにして算出した。
「成長表面マスク被覆率」
=(マスク部分の総面積/GaN結晶表面の面積)×100
「会合部表面マスク被覆率」
=(GaN結晶層表面に存在する会合部のマスキング面積/GaN結晶層表面に存在する結晶会合部の結晶表面における総面積)×100
GaN結晶表面の面積は、下地基板の面積とし、その表面におけるマスク部部の総面積は、ストライプ幅と開口幅の間隔から求められる。「成長表面マスク被覆率」は50%である。
結晶会合部のGaN結晶表面における総面積は、1.01cm2であり、会合部表面のマスキング部の総面積は、0.50cm2となる。従って、「会合部表面マスク被覆率」は50%である。
作成したマスク付きGaN結晶を、HVPE装置内にマスクがガスの上流を向くように炭素製資料固定台にセットした後、反応管内にN2ガスを30min流通させ、反応管内をN2ガス雰囲気下とした。金属原料部が850℃、基板加熱部が1100℃となるように反応管を加熱し、設定温度到達後、25分間保持した。このとき、基板加熱部が500℃に達するまでは反応管内にはN2ガスを流通させ、500℃以上ではH2ガス、及び、NH3ガスを流通させた。
次いで、反応管内に設置されたGa金属にHClガスを1.2L/min流通させた。また、NH3ガスを36L/min、キャリアガスであるH2ガスを4.1L/min流通し、240分間GaN結晶を成長させた。GaN結晶の膜厚は2500μmであった。
その後、HClガスの流通を止めて、成長を終了させ、基板の冷却を行った。冷却はガスを流通させながら、自然放冷にて行った。冷却時、基板温度が600℃以下になるまではNH3ガスを5L/mind流通し、600℃以下ではN2ガスを37.7L/min流通した。
基板温度が150℃以下になった時点で、装置内から基板を取り出したところ、その時点においてすでにサファイア下地基板とGaN結晶層とは50%以上の面積で剥離しており、剥離していない部分についてもSUS製のピンセットで容易に剥離できた。
〔暗点密度評価〕
得られたGaN結晶自立基板について、走査型電子顕微鏡/カソードルミネッセンス(SEM/CL)装置(日本電子社製JSM―7600F/Gatan社製MonoCL4)を用いて、GaN結晶自立基板の表面の観察を行った。このときの加速電圧は5kV、観察範囲は20μm×20μmとし、観察範囲内に観察された暗点の総数から暗点密度を算出した。
〔クラック本数評価〕
得られたGaN結晶自立基板について、高強度ハロゲン光を照射し、結晶内に存在するクラックの本数を測定した。
〔表面凹凸〕
得られたGaN結晶自立基板について、ノギスを用いて結晶の全表面の最大高低差を評価し、200μm以上の高低差のものを表面凹凸有、200μm未満の高低差のものを表面凹凸無とし判別した。
〔RMS〕
得られたGaN結晶自立基板について、表面の観察を行った。このときの観察視野範囲は140μm×105μmとし、観察視野範囲内の表面粗さ(RMS)を算出した。
GaN結晶層は実施例1と同様にして形成した。続いて、GaN結晶成長表面上に平面視において1辺5μmの正三角形の各頂点に直径3μmの円が配列された高さ100nmのSiO2からなるドット状マスクを形成した。次いで、GaN厚膜を実施例1と同様にして形成して、{11−22}面を主面とする、同等の面積を有する、厚みが2500μmで、RMSが300nm未満の自立GaN基板を得た。表側には、1本のクラックが入っていた。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、自発分離してGaN結晶のみからなっていた。暗点密度は9.02×105個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例1と同様にして形成した。続いて、サファイア基板上の溝部に対して平行をなす角度でSiO2からなるストライプ状マスクを形成した。ストライプ幅、開口幅、マスク高さは実施例1と同じであった。次いで、GaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行い、{11−22}面を主面とする、厚みが2500μmで、RMSが300nm未満の自立GaN基板を得た。表側にはクラックは確認できなかった。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、割れることなく自発分離して、GaN結晶のみからなっていた。暗点密度は2.14×106個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例1と同様にして形成した。続いて、サファイア基板上の溝部に対して1°をなす交差角度でSiO2からなるストライプ状マスクを形成した。ストライプ幅、開口幅、マスク高さは実施例1と同じであった。次いで、GaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行い、{11−22}面を主面とする、厚みが2500μmで、RMSが300nm未満の自立GaN基板を得た。表側にはクラックは確認できなかった。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、割れることなく自発分離して、GaN結晶のみからなっていた。暗点密度は1.93×106個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例1と同様にして形成した。続いて、サファイア基板上の溝部に対して30°をなす交差角度でSiO2からなるストライプ状マスクを形成した。ストライプ幅、開口幅、マスク高さは実施例1と同じであった。次いで、GaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行い、{11−22}面を主面とする、厚みが2500μmで、RMSが300nm未満の自立GaN基板を得た。表側には、1本のクラックが入っていた。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、自発分離してGaN結晶のみからなっていた。暗点密度は4.60×105個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例1と同様にして形成した。続いて、サファイア基板上の溝部に対して45°をなす交差角度でSiO2からなるストライプ状マスクを形成した。ストライプ幅、開口幅、マスク高さは実施例1と同じであった。次いで、GaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行い、{11−22}面を主面とする、厚みが2500μmで、RMSが300nm未満の自立GaN基板を得た。表側にはクラックは確認できなかった。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、割れることなく自発分離して、GaN結晶のみからなっていた。暗点密度は6.17×105個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例1と同様にして形成した。続いて、サファイア基板上の溝部に対して60°をなす交差角度でSiO2からなるストライプ状マスクを形成した。ストライプ幅、開口幅、マスク高さは実施例1と同じであった。次いで、GaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行い、{11−22}面を主面とする、厚みが2500μmで、RMSが300nm未満の自立GaN基板を得た。表側には、1本のクラックが入っていた。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、自発分離してGaN結晶のみからなっていた。暗点密度は7.77×105個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例1と同様にして形成した。続いて、サファイア基板上の溝部に対して89°をなす交差角度でSiO2からなるストライプ状マスクを形成した。ストライプ幅、開口幅、マスク高さは実施例1と同じであった。次いで、GaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行い、{11−22}面を主面とする、厚みが2500μm、RMSが300nm未満の自立GaN基板を得た。表側にはクラックは確認できなかった。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、割れることなく自発分離して、GaN結晶のみからなっていた。暗点密度は4.24×105個/cm2であった。
〔GaN結晶層の形成〕
{11−23}面サファイア基板上にスパッタリングによりSiO2を成膜した。次いでストライプ状にレジストをパターニングし、次いで反応性イオンエッチング(RIE)によりドライエッチングすることで、サファイア基板上に複数本の溝部を形成した。溝部は溝開口幅が2μm、溝の深さが1μm、及び隣接する溝部までの基板主面部分の幅が2μmとなるように形成すると共に、基板主面部分をSiO2からなる結晶成長阻害層で被覆した下地基板を作製した。
ドライエッチングの後、レジストを洗浄除去することで溝部形成サファイア下地基板を得た。この溝部形成サファイア下地基板は、基板主面、複数本形成された溝部の側壁から構成される表面露出した結晶成長領域、及び溝部底面を有する。
作成した溝部形成サファイア下地基板を、MOVPE装置内に、基板上面が上向きになるように石英トレイをセットした後、基板を1150℃に加熱するとともに反応容器内の圧力を100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスとしてH2を10L/minで流通させ、その状態を10分間保持することにより基板をサーマルクリーニングした。
続いて、基板の温度を1050℃とすると共に反応容器内の圧力を20kPaとし、また、反応容器内を流通させるキャリアガスをH2として、それを5L/minの流量で流通させながら、そこにV族元素供給源(NH3)、及びIII族元素供給源(TMG)を、それぞれの供給量が2L/min及び30μmol/minとなるように180分間流し、GaNを成長させることにより、基板の主面に複数本形成された溝部の各側壁から成長したGaN結晶同士を会合し、基板主面に対して平行に表面が形成されるように{10−11}面GaN結晶層を形成した。
次いで、このGaN結晶成長表面上へのマスキング及びGaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行いった。「成長表面マスク被覆率」は50%であり、「会合部表面マスク被覆率」は50%であった。
{10−11}面を主面とする、下地基板と同等の面積を有する、厚みが2000μmで、RMSが11.1nmの自立GaN基板を得た。表側には、1本のクラックが入っていた。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、自発分離してGaN結晶のみからなっていた。暗点密度は3.61×107個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例9と同様にして形成した。続いて、マスクの形成を実施例2と同様にして行った。次いで、GaN厚膜の形成を実施例9と同様にして行い、{10−11}面を主面とする、厚みが2000μmで、RMSが16.1nmの自立GaN基板を得た。表側には、1本のクラックが入っていた。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、自発分離してGaN結晶のみからなっていた。暗点密度は3.90×107個/cm2であった。
〔GaN結晶層の形成〕
{22−43}面サファイア基板上にスパッタリングによりSiO2を成膜した。次いでストライプ状にレジストをパターニングし、次いで反応性イオンエッチング(RIE)によりドライエッチングすることで、サファイア基板上に複数本の溝部を形成した。溝部は溝開口幅が3μm、溝の深さが1μm、及び隣接する溝部までの基板主面部分の幅が3μmとなるように形成すると共に、基板主面部分をSiO2からなる結晶成長阻害層で被覆した下地基板を作製した。
ドライエッチングの後、レジストを洗浄除去することでサファイア下地基板を得た。このサファイア下地基板は、基板主面、複数本形成された溝部の側壁から構成される表面露出した結晶成長領域、及び溝部底面を有する。
作成したサファイア下地基板を、MOVPE装置内に、基板上面が上向きになるように石英トレイをセットした後、基板を1150℃に加熱するとともに反応容器内の圧力を100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスとしてH2を10L/minで流通させ、その状態を10分間保持することにより基板をサーマルクリーニングした。
続いて、基板の温度を1000℃とすると共に反応容器内の圧力を100kPaとし、また、反応容器内を流通させるキャリアガスをH2として、それを5L/minの流量で流通させながら、そこにV族元素供給源(NH3)、及びIII族元素供給源(TMG)を、それぞれの供給量が2L/min及び30μmol/minとなるように300分間流し、GaNを成長させることにより、基板の主面に複数本形成された溝部の各側壁から成長したGaN結晶同士を会合し、基板主面に対して平行に表面が形成されるように{20−21}面GaN結晶層を形成した。
次いで、このGaN結晶成長表面上へのマスキング及びGaN厚膜の形成を実施例1と同様に行った。「成長表面マスク被覆率」は50%であり、「会合部表面マスク被覆率」は50%であった。
{20−21}面を主面とする、下地基板と同等の面積で、厚みが2200μmで、RMSが280nmの自立GaN基板を得た。表側にはクラックは確認できなかった。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、割れることなく自発分離して、GaN結晶のみからなっていた。暗点密度は6.45×107個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例11と同様にして形成した。続いて、実施例2と同様にしてドット状のマスクを形成した。次いで、GaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行い、{20−21}面を主面とする、厚みが2200μm、RMSが237.8nmの自立GaN基板を得た。表側にはクラックは確認できなかった。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、自発分離してGaN結晶のみからなっていた。暗点密度は7.55×107個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例11と同様にして形成した。続いて、サファイア基板上の溝部に対して平行及び垂直をなす角度でSiO2からなる格子状マスクを形成した。ストライプ幅、開口幅、マスク高さは実施例3と同じであった。次いで、GaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行い、{20−21}面を主面とする、厚みが2200μm、RMSが257.2nmの自立GaN基板を得た。表側にはクラックは確認できなかった。裏側には下地基板のサファイアが一部付着していたが、自発分離してGaN結晶のみからなっていた。暗点密度は7.09×107個/cm2であった。
GaN結晶層は実施例1と同様にして形成した。次いで、マスク形成無しにGaN厚膜の形成を実施例1と同様にして行い、{11−22}面を主面とする、厚み2500μmの自立GaN基板を得た。表面は1500μmを超える凹凸があった。表側には25本のクラックが入っていた。暗点密度は1.18×108個/cm2であった。
特に{10−11}面GaN結晶(実施例10)では、HVPE法による結晶形成後の結晶成長炉から取り出した時点における窒化ガリウム結晶表面平坦性が、MOVPE法によるものと同等以上の表面平坦性を有する高品質のGaN結晶自立基板が得られることが認識できる。
11 下地基板主面
20 下地基板溝部
21 溝部側壁
22 溝部底面
23 側壁結晶成長領域
30 GaN結晶層
31 GaN結晶層表面
40 溝部側壁マスク部
50 マスク
Claims (11)
- 下地基板の主面に対して傾斜した側壁を有する複数本の溝部を形成したサファイア下地基板上に半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶層を成長させて、半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶自立基板を製造する方法において、
前記サファイア下地基板上に有機金属気相成長(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE)法により、0.05〜5μm厚の半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶層を形成し、次いで当該結晶層の表面の一部をマスキングした後、当該結晶層表面上にハイドライド気相成長(Hydride Vapor Phase Epitaxy:HVPE)法により0.2〜5mm厚の半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶層を形成し、その後サファイア下地基板を分離せしめることを特徴とする窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。 - 形成した窒化ガリウム結晶層が、サファイア下地基板の溝部からの結晶成長により形成される複数本の結晶会合部を有し、マスキングが、上記窒化ガリウム結晶層表面に存在する結晶会合部の一部をマスキングすることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
- マスキングにより、MOVPEによって形成した窒化ガリウム結晶層の成長表面の10〜90%が覆われ、且つ、窒化ガリウム結晶層表面に存在する結晶会合部の20%〜80%が覆われていることを特徴とする請求項2に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
- マスキングに使用するマスクが、ストライプ状の形状を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
- マスキングに使用するマスクが、格子状の形状を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
- マスキングに使用するマスクが、ドット状の形状を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
- 下地基板の窒化ガリウム結晶層を形成する側の全表面積に対して、結晶成長の起点となる側壁の総面積の割合が、1〜20%であることを特徴とする請求項1〜6に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
- 半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶自立基板が、{0001}面が<10−10>軸方向に向かって1°〜90°傾いた面を主面とする窒化ガリウム結晶自立基板であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
- 半極性又は無極性の主面を持つ窒化ガリウム結晶自立基板が、{0001}面が<11−20>軸方向に向かって1°〜90°傾いた面を主面とする窒化ガリウム結晶自立基板であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
- 窒化ガリウム結晶自立基板の暗点密度が、2×108個/cm2未満であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
- HVPE法による結晶形成後の結晶成長炉から取り出した時点における窒化ガリウム結晶表面のRMS(表面粗さ)が、300nm未満であることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の窒化ガリウム結晶自立基板の製造方法。
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