JP2014176006A - 静電型スピーカ - Google Patents
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Abstract
【課題】壁等の空気バネを生じる物体が背面に近接して配置されている場合に音圧が低下することを抑制する。
【解決手段】静電型スピーカ10は、振動膜11および固定電極膜12F,12Rを備える。固定電極膜12F,12Rは多数の通気孔120を有する多孔性の導体膜であり、駆動信号が印加される。振動膜11は、固定電極膜12F,12Rの間に配置されている。振動膜11には、所定パターンで多数の通気孔110が形成されており、第1通気領域LS1,LS2,LS3,LS4および第2通気領域LC1,LC2,LC3,LC4,LC5と、これらの通気領域によって区切られる複数の振動領域ARsを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】静電型スピーカ10は、振動膜11および固定電極膜12F,12Rを備える。固定電極膜12F,12Rは多数の通気孔120を有する多孔性の導体膜であり、駆動信号が印加される。振動膜11は、固定電極膜12F,12Rの間に配置されている。振動膜11には、所定パターンで多数の通気孔110が形成されており、第1通気領域LS1,LS2,LS3,LS4および第2通気領域LC1,LC2,LC3,LC4,LC5と、これらの通気領域によって区切られる複数の振動領域ARsを備える。
【選択図】 図1
Description
本発明は、外部から電界を印加することで平膜状の振動膜を振動させて放音する静電型スピーカに関する。
現在、放音面が広く厚みが薄い平面型スピーカが各種考案されている。このような平面型スピーカにおいて、静電力を利用した静電型スピーカがあり、例えば特許文献1に示すような構造からなる。
特許文献1に記載の静電型スピーカは、薄膜導体からなる振動膜を備え、当該振動膜の両側に所定間隔を空けて固定電極膜が配置されている。
このような静電型スピーカは、その形状的特徴から、壁に近接して配置したり壁面に装着したりして利用することが考えられる。この際、放音面と壁面とが平行になるようにするのが一般的である。
このように使用される静電型スピーカでは、静電型スピーカの背面と壁との間隔は、必然的に狭くなる。この場合、従来の構成の静電型スピーカでは、次に示すような問題が生じる。図8は、従来構成の静電型スピーカによって生じる問題を説明するための側面図である。図8(A)は自由空間に静電型スピーカを配置した状態を示し、図8(B)は壁に背面を近接させて静電型スピーカを配置した状態を示す。
従来の静電型スピーカ10Pは、振動膜11Pと固定電極膜12F,12Rを備える。振動膜11Pは、可撓性を有するフィルムにアルミニウム等の導体を蒸着もしくは塗布してなる。固定電極膜12F,12Rは、図示しない干渉膜等の表面に形成された導体からなる。固定電極膜12F,12Rは、振動膜11Pと同様に、例えばアルミニウム等からなる。固定電極膜12F,12Rは多孔性である。
図8(A)に示すように、静電型スピーカ10Pの背面が自由空間である場合、振動膜11Pの振動によって静電型スピーカ10Pの正面および背面に生じる空気の波は、両方の自由空間に伝搬する。この構成では、空気の波が自由空間に伝搬するため、図8(A)に示すように、空気バネは存在せず、振動膜11Pは、駆動信号の信号レベルに応じた振幅で、自由に振動する。すなわち、外部からの振動を抑制する力が加わらない。したがって、静電型スピーカ10Pの正面側に所望の音圧を得ることができる。
一方、図8(B)に示すように、静電型スピーカ10Pの背面に近接して壁900が存在すると、振動膜11Pの振動により、背面側に押し出された空気、すなわち背面側に生じる空気の波は、壁900によって背面に直交する方向への伝搬が阻止される。空気は、壁900の壁面に沿って、静電型スピーカ10Pの端辺へ押され、図8(B)の点線太矢印に示すように、静電型スピーカ10Pの端辺から外部へ伝搬される。
このような場合、振動膜11Pの振動によって発生し背面側に流れる空気は、静電型スピーカ10Pと壁900との間隔に応じた流量しか自由空間に伝搬されず、静電型スピーカ10Pの背面側の空気圧が上昇する。したがって、図8(B)に示すように、静電型スピーカ10Pと壁900との間に、この空気圧に応じた空気バネ910が介在した状態となる。このような空気バネ910が介在すると、振動膜11Pの振動が抑制され、音圧が低下してしまう。ここで、静電型スピーカ10Pと壁900との間隔が狭くなるほど、空気圧は上昇し、空気バネ910のスティフネスが大きくなる。これにより、さらに振動膜11Pの振動は抑制され、さらに音圧が低下してしまう。
ここで、音圧は空気の粒子速度に比例するので、低い周波数ほど変位が大きくないと音圧が得られない。したがって、空気バネ910のスティフネスが大きくなってしまうと、特に低音の音圧が得られなくなる。具体的な例としては、A0サイズの静電型スピーカ10Pから発する1kHzの音の場合では、壁900が無い状態を基準として、静電型スピーカ10Pと壁900との間隔が5cm以下になると音圧低下が始まり、1cm〜2cmになると大幅な音圧低下となってしまう。
したがって、本発明の目的は、壁等の空気バネを生じる物体が背面に近接して配置されている場合に音圧が低下することを抑制できる静電型スピーカを提供することにある。
この発明の静電型スピーカは、第1、第2固定電極膜と振動膜とを備える。第1、第2固定電極膜は、多孔性膜であり、駆動信号が印加される電極膜である。振動膜は、導電性を有し、第1固定電極膜と第2固定電極膜との間に配置され、第1固定電極膜および第2固定電極膜が駆動信号によって発生する静電界によって振動する膜である。さらに、振動膜は、該振動膜の厚み方向に通気する通気孔が複数設けられた通気領域と、孔が形成されていない振動領域とを備える。
この構成では、振動膜の振動によって静電型スピーカの背面側に空気が溜まっても、通気領域に形成された通気孔によって、溜まった空気が正面側に流出する。これにより、静電型スピーカの背面側の空気バネのスティフネスは、実質的に小さくなり、音圧の低下を抑制できる。
また、この発明の静電型スピーカでは、通気領域での通気度は、静電型スピーカの背面に生じる空気バネのスティフネスによって決定されている。
この構成では、静電型スピーカの背面側の空気の流れに関する環境に基づいて、通気領域を適切に形成することができる。
また、この発明の静電型スピーカでは、通気領域は格子状に形成されており、通気領域の幅は振動領域の幅よりも狭く、通気領域の幅および振動領域の幅は通気度と所望とする音圧とに基づいて決定されている。
この構成では、静電型スピーカのより具体的な形状を示しており、このような形状にすることで、所望とする放音特性を実現できる。
また、この発明の静電型スピーカは、第2固定電極膜における振動膜と反対側の面に平板状の吸音材を備える。吸音材の厚みは振動領域の幅の略1/2である。
この構成では、第2固定電極膜側すなわち背面側への音の少なくとも一部が吸音材によって吸音されるので、音圧の低下をさらに抑制することができる。
また、この発明の静電型スピーカは、平板面を有する部材における該平板面の正面側に配置するように使用するものであって、振動領域の幅は、静電型スピーカの背面と平板面との距離の略2倍である。
この構成では、静電型スピーカのさらに具体的な使用環境に応じた形状例を示している。このような形状にすることで、使用環境に応じて、所望とする放音特性を実現できる。
この発明によれば、壁等の空気バネを生じる物体が背面に近接して配置されている場合であっても音圧の低下が少なく、より自由空間での放音に近い放音特性を得ることができる。
本発明の第1の実施形態に係る静電型スピーカについて、図を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る静電型スピーカの側面断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る振動膜の平面図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る振動膜を部分拡大した平面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る固定電極膜の平面図である。なお、図1から図4では、通気孔110,120の全てに記号を付しているわけではなく、代表する通気孔110,120のみに記号を付している。
本実施形態の静電型スピーカ10は、振動膜11、固定電極膜12F(第1固定電極膜に相当する。)、固定電極膜12R(第2固定電極膜に相当する。)、緩衝膜13F,13R、ギャップ材14F,14R、保護膜15F,15Rを備える。
振動膜11は、導電性を有する平膜であり、所定の平面面積を有する。平面面積は、例えば、A0サイズ(841mm×1189mm)である。振動膜11は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)や、PP(ポリプロピレン)からなる基材膜に、アルミニウム等の金属を蒸着もしくは塗布することによって形成されている。振動膜11の厚みは、例えば数μmから数十μm程度である。
振動膜11は、多数の通気孔110を所定の配置パターンで備えている。通気孔110は、振動膜11の厚み方向に沿って通気する孔である。なお、振動膜11のより具体的な形状は、図2、図3を参照しながら後述する。
固定電極膜12F,12Rは、振動膜11と同様に、PETやPPからなる基材膜にアルミニウム等の金属を蒸着もしくは塗布することによって形成されている。固定電極膜12F,12Rの平面面積も振動膜11の平面面積と略同じである。固定電極膜12F,12Rは、多数の通気孔120を備える。通気孔120は、図4に示すように、固定電極膜12F,12Rの略全面に亘って、均等な間隔で形成されている。通気孔120の径および個数は、必要とする通気量と、駆動信号によって固定電極膜12F,12Rの電極部分が生じさせる静電界の電荷量に基づいて決定すればよい。
緩衝膜13Fは、振動膜11と固定電極膜12Fとの間に配置されている。緩衝膜13Fは、絶縁性および通気性を有する材料からなる。固定電極膜12Fは、緩衝膜13Fに装着されている。ギャップ材14Fは、緩衝膜13Fの振動膜11側に配置されている。ギャップ材14Fは、所定の弾性と絶縁性を有する材料からなる。ギャップ材14Fは、緩衝膜13Fに固着し、振動膜11には固着していない。ギャップ材14Fは、例えば、格子状やストライプ状からなり、緩衝膜13Fおよび振動膜11に対して局所的に接している。
緩衝膜13Rは、振動膜11と固定電極膜12Rとの間に配置されている。緩衝膜13Rは、絶縁性および通気性を有する材料からなる。固定電極膜12Rは、緩衝膜13Rに装着されている。ギャップ材14Rは、緩衝膜13Rの振動膜11側に配置されている。ギャップ材14Rは、所定の弾性と絶縁性を有する材料からなる。ギャップ材14Rは、緩衝膜13Rに固着し、振動膜11には固着していない。ギャップ材14Rは、例えば、格子状やストライプ状からなり、緩衝膜13Rおよび振動膜11に対して局所的に接している。
保護膜15Fは、固定電極膜12Fの緩衝膜13Fと反対側の面に配置されている。保護膜15Rは、固定電極膜12Rの緩衝膜13Rと反対側の面に配置されている。保護膜15F,15Rは、絶縁性および通気性を有する材料からなり、より好ましくは難燃性等の性質を有し、振動膜11および固定電極膜12F,12Rからなる放音機能部を外部環境から保護する材料であるとよい。
このような構成からなる静電型スピーカ10は、全体形状が平膜状であり、奥行き方向にスペースを取らない。したがって、例えば、図1に示すように壁900に近接して配置したり、壁900の壁面に掛けて使用することに好適である。
そして、このような構成からなる静電型スピーカ10の振動膜11に直流バイアスを与え、固定電極膜12F,12Rに駆動信号を印加すると、当該駆動信号によって生じる固定電極膜12F,12R間の静電界の変化によって、振動膜11が固定電極膜12Fもしくは固定電極膜12Rのいずれかに近づくように変位する。言い換えれば、振動膜11は、静電型スピーカ10の平膜面(正面および背面)に直交する方向を振動方向として振動する。この振動によって空気が振動し、正面方向に放音することができる(図1のSound参照)。
なお、この際、背面方向にも音が伝搬する、言い換えれば、空気の波が伝搬するが、本実施形態の構成を備えることで、この背面側への空気の流れによる放音特性の劣化を抑制することができる。具体的には、次に示すような構成および原理によって、放音特性の劣化を抑制できる。
図2、図3に示すように、振動膜11は、多数の通気孔110が所定のパターンで形成されている。より具体的には、多数の通気孔110は、第1通気領域LS1,LS2,LS3,LS4、および、第2通気領域LC1,LC2,LC3,LC4,LC5にのみ形成され、振動膜11におけるこれら第1、第2通気領域以外には形成されていない。
第1通気領域LS1,LS2,LS3,LS4は、振動膜11の縦方向に長尺な形状で横方向に沿った幅Wを有する領域である。第1通気領域LS1は、振動膜11の横方向の一方端近傍に形成されている。第1通気領域LS1,LS2は、振動膜11の横方向に沿って間隔P1sを空けて配置されている。第1通気領域LS2,LS3は、振動膜11の横方向に沿って間隔P2sを空けて配置されている。第1通気領域LS3,LS4は、振動膜11の横方向に沿って間隔P3sを空けて配置されている。第1通気領域LS4は、振動膜11の横方向の他方端近傍に形成されている。間隔P1s,P2s,P3sは同じ値である。
第2通気領域LC1,LC2,LC3,LC4,LC5は、振動膜11の横方向に長尺な形状で縦方向に沿った幅Wを有する領域である。第2通気領域LC1は、振動膜11の縦方向の一方端近傍に形成されている。第2通気領域LC1,LC2は、振動膜11の縦方向に沿って間隔P1cを空けて配置されている。第2通気領域LC2,LC3は、振動膜11の縦方向に沿って間隔P2cを空けて配置されている。第2通気領域LC3,LC4は、振動膜11の縦方向に沿って間隔P3cを空けて配置されている。第2通気領域LC4,LC5は、振動膜11の縦方向に沿って間隔P4cを空けて配置されている。第2通気領域LC5は、振動膜11の縦方向の他方端近傍に形成されている。間隔P1c,P2c,P3c,P4cは同じ値である。間隔P1c,P2c,P3c,P4cは、間隔P1s,P2s,P3sと同じ値であってもよく、異なっていてもよい。ただし、できる限り同じ値に近い方が好ましい。そして、これらの間隔P1c,P2c,P3c,P4c,P1s,P2s,P3sは、幅Wよりも短いことが好ましい。これにより、後述する振動領域をできる限り広く確保しやすい。
第1通気領域LS1,LS2,LS3,LS4および第2通気領域LC1,LC2,LC3,LC4,LC5を、このような構成とすることで、通気領域が振動膜11の平面上において格子状に形成される。そして、この構成により、振動膜11には、第1通気領域LS1,LS2,LS3,LS4および第2通気領域LC1,LC2,LC3,LC4,LC5によって区画化された、通気孔110が形成されていない矩形の振動領域ARsが形成される。したがって、上述の間隔P1s,P2s,P3sおよび間隔P1c,P2c,P3c,P4cは、本発明の振動領域の幅に相当する。
このような所定の面積の連続する導体膜を有する振動領域ARsを備えることにより、振動の発生に寄与しない通気孔110を備えていても、静電界により振動膜110を振動させることができる。
このような構成とすることで、通気孔110を形成しても振動可能な振動膜11を形成することができる。
さらに、通気孔110を備えることで、図5に示すような原理によって、音圧の低下を抑制することができる。図5は、本発明の第1の実施形態に係る静電型スピーカ10を用いた場合の音圧低下の抑制原理を示す側面図である。
静電型スピーカ10の振動膜11が振動し、固定電極膜12R側に変位する、すなわち、静電型スピーカ10の背面側に変位すると、振動膜11の背面側に空気が押し流される。ここで、上述の課題に示したように、静電型スピーカ10の背面近傍の壁900が存在すると、この距離に応じて、静電型スピーカ10の背面側の空気圧が上昇する。
しかしながら、本実施形態の構成からなる静電型スピーカ10は、振動膜11に多数の通気孔110が形成されているので、背面側に押し流された空気は、静電型スピーカ10と壁900と隙間における静電型スピーカ10の端辺の位置から、外部へ伝搬するだけでなく、固定電極膜12Rの通気孔120、振動膜11の通気孔110、固定電極膜12Fの通気孔120を介して、静電型スピーカ10の正面側にも押し流される。
これにより、静電型スピーカ10の背面側の空気圧は低下し、空気バネ911のスティフネスは低下する。したがって、振動膜11の振動が抑制されず、正面方向へ放音する音圧を稼ぐことができる。
以上のように、本実施形態の構成を用いれば、壁等の空気バネを生じる物体が背面に近接して配置されている場合であっても音圧の低下が少なく、より自由空間での放音に近い放音特性を得ることができる。
なお、振動領域の幅、すなわち、間隔P1s,P2s,P3sおよび間隔P1c,P2c,P3c,P4cを次のように設定するとよい。ここでは、説明を簡単にするため、間隔P1s,P2s,P3sおよび間隔P1c,P2c,P3c,P4cが同じ長さである場合を示す。また、振動膜11がA0サイズである場合を例に示す。
間隔P1sは、静電型スピーカ10の背面と壁900の壁面との距離DISの略1/2とするとよい。また、通気領域の開口率、すなわち振動膜11の全面積に対する通気孔110全体の面積を、約30%にするとよい。
このような構成とすることで、静電型スピーカ10を壁900に対して10mm〜20mm程度に近づけても、所望とする音圧を確保しやすい。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る静電型スピーカと、従来の静電型スピーカ(振動膜に通気孔が無い静電型スピーカ)の音圧周波数特性を示すグラフである。
図6に示すように、従来の構成の静電型スピーカは、自由空間内では、高域周波数成分の音圧を基準として、400Hzの周波数成分の音圧が10dB低下する特性となる(図6の点線参照)。そして、従来の構成の静電型スピーカは、壁の近傍に配置することで、10dB音圧が低下する周波数が2kHzまで上昇してしまい、400Hzの周波数成分は、さらに音圧が低下してしまう(図6の破線参照)。
しかしながら、本実施形態の構成を用いることで、壁の近傍に配置しても、400Hzから2kHzの周波数成分の音圧の低下量を小さく、従来の静電型スピーカを壁の近傍に配置した場合よりも、400Hzから2kHzの周波数成分の音圧を稼ぐことができ、従来の静電型スピーカを自由空間に配置した場合に近い音圧特性を得ることができる。
具体的には、開口率を上述の30%としたときには、従来の静電型スピーカを自由空間に配置した場合の音圧に対して、概ね3dBだけ音圧が低下した特性となる。これにより、所望の放音特性に極近い特性の放音が可能になる。さらに、この場合、駆動信号電圧を或程度上昇させれば、3dBの音圧の底上げは容易である。したがって、若干の駆動信号電圧の上昇だけで、所望の放音特性を確実に実現することができる。
なお、具体的には説明していないが、通気孔110の径はできる限り小さい方が良く、通気孔110の形成数により、所望の通気度を実現することが好ましい。また、通気領域は振動の発生に殆ど寄与しないので、通気領域内における開口率は、振動膜11の必要強度、導電率等に基づいて、2kHz以上の周波数帯域において所望のスピーカ出力(音圧)が得られる範囲で、できる限り開口率を高くする方がよい。
また、上述の説明では、格子状に通気領域を形成する例を示したが、ストライプ形状であってもよく、第1通気領域および第2通気領域の間隔は一定でなくてもよい。さらには、振動領域が矩形でなくてもよく、多角形や円形等になっていてもよい。
また、通気度は、所望とする放音特性に応じて適宜設定すればよく、この通気度と放音特性(音圧)基づいて通気孔110の径および個数を設定すればよい。
次に、第2の実施形態に係る静電型スピーカについて、図を参照して説明する。図7は本発明の第2の実施形態に係る静電型スピーカの側面断面図である。本実施形態の静電型スピーカ10Aは、第1の実施形態に示した静電型スピーカ10に対して吸音材16を追加したものである。したがって、第1の実施形態に示した静電型スピーカ10と異なる箇所のみを、具体的に説明する。
静電型スピーカ10Aは、上述の静電型スピーカ10の構成と、平板状の吸音材16とを備える。吸音材16は、保護膜15Rにおける固定電極膜12Rと反対側の面に配置されている。吸音材16は、静電型スピーカ10の裏面側に伝搬した音を吸収する。すなわち裏面側に伝搬した空気の波を減衰させる。
このような構成であっても、上述の第1の実施形態と同様に、振動膜11の通気孔110によって、音圧の低下を抑制することができる。さらに、本実施形態の構成では、吸音材16で吸音されるので、裏面側に伝搬した空気の波が正面側に回り込まず、さらに音圧特性を向上させることができる。
なお、この際、吸音材16の厚みDepを、裏面側の保護層15Rと壁900との間隔DIS以上にし、好ましくは間隔DISに一致させるとよい。これにより、静電型スピーカ10Aを壁900の壁面に当接して利用することができる。そして、このように静電型スピーカ10Aを壁900の壁面に当接しても、所望の放音特性を得ることができる。
10,10A,10P:静電型スピーカ、
11,11P:振動膜、
12F,12R:固定電極膜、
13F,13R:緩衝膜、
14F,14R:ギャップ材
15F,15R:保護膜、
16:吸音材、
110,120:通気孔、
900:壁、
910,911:空気バネ
11,11P:振動膜、
12F,12R:固定電極膜、
13F,13R:緩衝膜、
14F,14R:ギャップ材
15F,15R:保護膜、
16:吸音材、
110,120:通気孔、
900:壁、
910,911:空気バネ
Claims (5)
- 駆動信号が印加される多孔性の第1固定電極膜および第2固定電極膜と、
該第1固定電極膜と該第2固定電極膜との間に配置され、前記第1固定電極膜および前記第2固定電極膜が前記駆動信号によって発生する静電界によって振動する導電性の振動膜と、を備え、
前記振動膜は、該振動膜の厚み方向に通気する通気孔が複数設けられた通気領域と、前記通気孔が形成されていない振動領域とを備える、静電型スピーカ。 - 前記通気領域での通気度は、静電型スピーカの背面に生じる空気バネのスティフネスによって決定されている、請求項1に記載の静電型スピーカ。
- 前記通気領域は格子状に形成されており、
前記通気領域の幅は、前記振動領域の幅よりも狭く、
前記通気領域の幅および前記振動領域の幅は、前記通気度と所望とする音圧とに基づいて決定されている、請求項2に記載の静電型スピーカ。 - 前記第2固定電極膜における前記振動膜と反対側の面に平板状の吸音材を備え、
該吸音材の厚みは、前記振動領域の幅の略1/2である、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の静電型スピーカ。 - 平板面を有する部材における該平板面の正面側に配置するように使用する請求項3または請求項4の構成を備える静電型スピーカであって、
前記振動領域の幅は、静電型スピーカの背面と前記平板面との距離の略2倍である、静電型スピーカ。
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