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JP2014155331A - 交流電動機の制御装置 - Google Patents

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JP2014155331A JP2013023152A JP2013023152A JP2014155331A JP 2014155331 A JP2014155331 A JP 2014155331A JP 2013023152 A JP2013023152 A JP 2013023152A JP 2013023152 A JP2013023152 A JP 2013023152A JP 2014155331 A JP2014155331 A JP 2014155331A
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Abstract

【課題】交流電動機の回転数が小さい低回転域においても安定して駆動可能であり、出力トルクを監視可能な交流電動機の制御装置を提供する。
【解決手段】制御部15では、電流指令値id*、iq*およびフィードバックされる電流推定値id_est、iq_estに基づき、第1の電圧指令値vd*_1、vq*_1を演算する。また、電動機の理論式を用いて演算される電圧指令基準値vd_ref、vq_refを補正し、第2の電圧指令値vd*_2、vq*_2を演算する。回転数Nが切替判定閾値A以下である場合、第1の電圧指令値vd*_1、vq*_1に基づく第1の制御モードに替えて、第2の電圧指令値vd*_2、vq*_2に基づく第2の制御モードとし、W相電流検出値iw_snsに基づき、出力トルクを監視する。これにより、低回転域において、始動から駆動、停止までを安定して駆動可能でありつつ、出力トルクを監視することができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、交流電動機の制御装置に関する。
近年、低燃費、低排気エミッションの社会的要請から車両の動力源として交流電動機を搭載した電気自動車やハイブリッド自動車が注目されている。例えば、ハイブリッド自動車においては、二次電池等からなる直流電源と交流電動機とを、インバータ等で構成された電力変換装置を介して接続し、直流電源の直流電圧をインバータで交流電圧に変換して交流電動機を駆動するようにしたものがある。
このようなハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される交流電動機の制御装置において、相電流を検出する電流センサを1相に設けることで、電流センサの数を減らし、インバータの3相出力端子近傍の小型化や交流電動機の制御系統のコスト低減を図る技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2008−86139号公報
特許文献1では、1相の電流センサ値に加え、他相はd軸電流指令値およびq軸電流指令値と電気角とで逆dq変換することにより得られる3相交流電流指令値を電流推定値として用いることにより1相制御としている。d軸電流指令値およびq軸電流指令値を逆dq変換した3相交流電流指令値は、実際の交流電動機の電流を正確に反映した情報とはならず、制御が不安定になる虞がある。特に、交流電動機の回転数が小さい場合、サンプリング間隔あたりの電流センサ値の電流変化量や回転角移動量が小さくなるため、実機情報が更に乏しくなり、制御がより不安定となる虞がある。
ところで、電流センサを交流電動機のトルク検出器の一種であるとみなせば、電流センサ値および回転角センサ値に基づいて交流電動機を制御する場合、出力トルクに基づいて交流電動機を制御している、とみなすことができる。一方、交流電動機の駆動制御に電流センサ値を用いない制御(例えばフィードフォワード制御)とする場合、出力トルクに基づいて交流電動機を制御しているとは必ずしもいえない。このような制御を採用する場合、電流センサ値および回転角センサ値に基づいて交流電動機を制御する場合と同等の機能安全性を確保するためには、別途出力トルクを監視する必要がある。交流電動機からの出力トルクを監視する際、本来であれば例えば2相の電流センサ値から換算される値等に基づき、出力トルクを直接監視することが望ましい。しかしながら、1相制御とした場合、実際のd軸電流およびq軸電流を演算することができないため、トルク換算が困難であり、出力トルクを直接的に監視することができない。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、交流電動機の回転数が小さい低回転域においても安定して駆動可能であり、出力トルクを監視可能な交流電動機の制御装置を提供することにある。
本発明の交流電動機の制御装置は、インバータによって印加電圧が制御される3相の交流電動機の駆動を制御するものであって、センサ相電流取得手段と、回転角取得手段と、回転数演算手段と、電流推定手段と、第1の電圧指令値演算手段と、電圧指令基準値演算手段と、第2の電圧指令値演算手段と、制御モード切替手段と、トルク異常監視手段と、を備える。
センサ相電流取得手段は、交流電動機のいずれか1相であるセンサ相に設けられる第1の電流センサからセンサ相電流検出値を取得する。回転角取得手段は、交流電動機の回転角を検出する回転角センサから回転角検出値を取得する。回転数演算手段は、回転角検出値に基づき、交流電動機の回転数を演算する。
電流推定手段は、センサ相電流検出値および回転角検出値に基づき、電流推定値を演算する。なお、センサ相電流検出値および回転角検出値に加え、例えば電流指令値に基づいて電流推定値を演算してもよい。第1の電圧指令値演算手段は、交流電動機の駆動に係る電流指令値、および、フィードバックされる電流推定値に基づき、第1の電圧指令値を演算する。
電圧指令基準値演算手段は、電流指令値に基づき、電圧指令基準値を演算する。例えば、電圧指令基準値は、電動機の理論式を用いて演算することができる。また例えば、電圧指令基準値は、マップを参照して演算するようにしてもよい。
第2の電圧指令値演算手段は、電圧指令基準値を補正し、第2の電圧指令値を演算する。
制御モード切替手段は、回転数が所定の切替判定閾値より大きい場合、第1の電圧指令値に基づいてインバータの駆動に係る駆動信号を生成する第1の制御モードとし、回転数が切替判定閾値以下である場合、第2の電圧指令値に基づいて駆動信号を生成する第2の制御モードとする。
トルク異常監視手段は、制御モードが第2の制御モードである場合、センサ相電流検出値に基づき、交流電動機から出力される出力トルクを監視する。
本発明では、交流電動機の回転数が切替判定閾値以下である低回転域において、1相制御に替えて、電動機の理論式(例えば電圧方程式)や予め記憶されたマップ等を用い、電流指令値に基づいて電圧指令基準値を演算している。ただし、交流電動機や交流電動機の制御装置等に関する物理的な要因等により、理論上の電圧指令基準値と、指令通りのトルクが得られる交流電動機の実際の駆動に係る電圧指令値とが乖離することがある。特に交流電動機の始動時や停止時等の低回転域において、理論上の電圧指令基準値に基づいて交流電動機の駆動を制御すると、印加電圧が適切ではない可能性があるため、交流電動機を安定して駆動できない虞がある。
そこで本発明では、電圧指令基準値を補正して第2の電圧指令値を演算し、低回転域においては、第2の電圧指令値に基づく第2の制御モードにて交流電動機の駆動を制御している。これにより、低回転域において、始動から駆動、停止までを安定して制御することができる。
また、第1の電流センサを交流電動機のトルク検出器の一種であるとみなせば、センサ相電流検出値および回転角検出値に基づいて交流電動機を制御する第1の制御モードでは、出力トルクに基づいて交流電動機を制御している、とみなすことができる。一方、第2の制御モードでは、第2の電圧指令値の演算にセンサ相電流検出値を用いない場合があり、出力トルクに基づいて交流電動機を制御しているとは必ずしもいえない。そのため、第2の制御モードにおいて、第1の制御モード等と同等の機能安全性を確保するためには、別途出力トルクを監視する必要がある。交流電動機からの出力トルクを監視する際、例えば2相の電流センサ値等に基づいて実際のトルクを直接監視することが望ましい。しかしながら、本実施形態では、第1の電流センサが1相にしか設けられていないため、実際のd軸電流およびq軸電流を演算することができず、トルク換算が困難であり、出力トルクを直接的に監視することができない。
そこで本発明では、センサ相電流検出値に基づき、交流電動機から出力される出力トルクを監視している。これにより、交流電動機の回転数が小さい低回転域においても第2の制御モードにて安定して駆動可能でありつつ、出力トルクを監視し、機能安全性を確保することができる。
本発明の第1実施形態の交流電動機駆動システムの構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の電動機制御装置の構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態おける回転数による制御モードの切り替えを説明する説明図である。 高回転域における交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 中回転域における交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 低回転域における交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 本発明の第1実施形態による出力トルク異常判定を説明する説明図である。 本発明の第1実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第2実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態による出力トルク異常判定を説明する説明図である。 本発明の第4実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第5実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第6実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第6実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。
以下、本発明による交流電動機の制御装置を図面に基づいて説明する。なお、以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態による交流電動機2の制御装置としての電動機制御装置10は、電動車両を駆動する電動機駆動システム1に適用される。
電動機駆動システム1は、交流電動機2、直流電源8、および、電動機制御装置10等を備える。
交流電動機2は、例えば電動車両の駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機である。本実施形態の交流電動機2は、永久磁石式同期型の三相交流電動機である。
電動車両には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等、電気エネルギによって駆動輪6を駆動する車両が含まれるものとする。本実施形態の電動車両は、エンジン3を備えるハイブリッド車両であり、交流電動機2は、駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、および、エンジン3や駆動輪6から伝わる車両の運動エネルギにより駆動されて発電可能な発電機としての機能を有する、所謂モータジェネレータ(図中、「MG」と記す。)である。
交流電動機2は、例えば変速機等のギア4を介して車軸5に接続される。これにより、交流電動機2の駆動により生じるトルクは、ギア4を介して車軸5を回転させることにより、駆動輪6を駆動する。
直流電源8は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等、充放電可能な蓄電装置である。直流電源8は、電動機制御装置10のインバータ12(図2参照)と接続され、インバータ12を介して交流電動機2と電力の授受可能に構成されている。
車両制御回路9は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。車両制御回路9は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、電動車両全体を制御する。
車両制御回路9は、いずれも図示しないアクセルセンサからのアクセル信号、ブレーキスイッチからのブレーキ信号、および、シフトスイッチからのシフト信号等の各種センサやスイッチ等から信号を取得可能に構成されている。また、車両制御回路9では、取得されたこれらの信号等に基づいて車両の運転状態を検出し、運転状態に応じたトルク指令値trq*を電動機制御装置10に出力する。また、車両制御回路9は、エンジン3の運転を制御する図示しないエンジン制御回路に対し、指令信号を出力する。
図2に示すように、電動機制御装置10は、インバータ12および制御部15を備える。
インバータ12には、交流電動機2の駆動状態や車両要求等に応じて、直流電源8の直流電圧を図示しない昇圧コンバータにより昇圧したインバータ入力電圧VHが印加される。また、インバータ12は、ブリッジ接続される図示しない6つのスイッチング素子を有する。詳細には、スイッチング素子は、高電位側に設けられる上側スイッチング素子(以下、「上SW」という。)、および、低電位側に設けられる下側スイッチング素子(以下、「下SW」という。)からなる。直列に接続される上SWおよび下SWは、交流電動機2の各相に対応して設けられる。スイッチング素子には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子は、制御部15のPWM信号生成部28(図3参照)から出力されるPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてオン/オフが制御される。これにより、インバータ12は、交流電動機2に印加される3相交流電圧vu、vv、vwを制御する。交流電動機2は、インバータ12により生成された3相交流電圧vu、vv、vwが印加されることにより駆動が制御される。
第1の電流センサ13は、交流電動機2のいずれか1相に設けられる。本実施形態では、第1の電流センサ13は、W相に1つ設けられており、所謂「1相1チャンネル」の構成となっている。以下、第1の電流センサ13の設けられるW相を適宜「センサ相」という。第1の電流センサ13は、センサ相であるW相に通電されるW相電流検出値iw_snsを検出し、制御部15に出力する。制御部15では、W相電流検出値iw_snsを取得する。なお、本実施形態では、第1の電流センサ13はW相に設けられているが、どの相に設けてもよい。以下、本実施形態では、センサ相をW相とする構成について説明する。
回転角センサ14は、交流電動機2の図示しないロータ近傍に設けられ、電気角θeを検出し、制御部15に出力する。制御部15では、電気角θeを取得する。本実施形態の回転角センサ14は、レゾルバである。その他、回転角センサ14は、ロータリエンコーダ等、他種のセンサでもよい。本実施形態の電気角θeは、U相軸を基準とした角度とする。
ここで、交流電動機2の駆動制御について説明する。電動機制御装置10は、回転角センサ14が検出した電気角θeに基づく交流電動機2のロータの回転数N(以下適宜、単に「交流電動機2の回転数N」という。)および車両制御回路9からのトルク指令値trq*に応じて、交流電動機2を「電動機としての力行動作」により電力を消費し、または、「発電機としての回生動作」により電力を生成する。具体的には、回転数Nおよびトルク指令値trq*の正負によって、以下の4つのパターンで動作を切り替える。
<1.正転力行> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が正のとき、電力消費。
<2.正転回生> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が負のとき、発電。
<3.逆転力行> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が負のとき、電力消費。
<4.逆転回生> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が正のとき、発電。
回転数N>0(正転)でトルク指令値trq*>0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*<0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電源8側から供給される直流電力を交流電力に変換してトルクを出力する(力行動作する)ように、交流電動機2を駆動する。
一方、回転数N>0(正転)でトルク指令値trq*<0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*>0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、交流電動機2が発電した交流電力を直流電力に変換し、直流電源8側へ供給することにより、回生動作する。
次に、制御部15の詳細について、図3に基づいて説明する。図3に示すように、制御部15は、回転数演算部16、電流指令値演算部21、電圧指令基準値演算部22、電圧指令基準値補正部23、電流推定部24、電圧指令値演算部25、切替判定部26、3相電圧指令値演算部27、PWM信号生成部28、電圧指令補正値演算部30、トルク異常監視部41等を有する。
回転数演算部16は、電気角θeに基づき、交流電動機2の回転数Nを演算する。
電流指令値演算部21は、車両制御回路9から取得されるトルク指令値trq*に基づき、交流電動機2の回転座標として設定される回転座標系(d−q座標系)におけるd軸電流指令値id*、および、q軸電流指令値iq*を演算する。本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、予め記憶されているマップを参照することにより演算されるが、数式等から演算するように構成してもよい。
電圧指令基準値演算部22では、電動機の理論式である電圧方程式を用い、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを演算する。d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refは、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*から直接的に演算されるものであり、フィードフォワード(以下、「FF」という。)項であると捉えることもできる。
まず、電動機の電圧方程式は、一般に式(1)、(2)で表される。
vd=Ra×id+Ld×(d/dt)id−ω×Lq×iq ・・・(1)
vq=Ra×iq+Lq×(d/dt)iq+ω×Ld×id+ω×ψ
・・・(2)
また、過渡特性を表す時間微分(d/dt)項を無視し、式(1)中のvdとしてd軸電圧指令基準値vd_ref、idとしてd軸電圧指令値id*を用い、式(2)中のvqとしてq軸電圧指令基準値vq_ref、iqとしてq軸電圧指令値iq*を用いると、式(1)、(2)は、式(3)、(4)のように書き換えられる。
vd_ref=Ra×id*−ω×Lq×iq* ・・・(3)
vq_ref=Ra×iq*+ω×Ld×id*+ω×ψ ・・・(4)
式中の記号は以下の通りである。
Ra:電機子抵抗
Ld:d軸自己インダクタンス、Lq:q軸自己インダクタンス
ω:電気角速度
ψ:永久磁石の電機子鎖交磁束
なお、交流電動機2の機器定数である電機子抵抗Ra、d軸自己インダクタンスLd、q軸自己インダクタンスLq、および電機子鎖交磁束ψは、固定値としてもよいし、計算にて算出してもよい。また、実際の特性に近い値や実測値をマップ化しておき、トルク指令値trq*(またはd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*)に基づいて演算してもよい。
電気角速度ωは、電圧指令基準値演算部22にて、電気角θeに基づいて演算される。また、電気角速度ωは、回転数Nから演算してもよい。
ここで、回転数Nが0[rpm]の場合、電気角速度ωも0[rad/s]となるので、式(3)、(4)のω項がゼロとなり、抵抗項のみが残る。抵抗項は、電機子抵抗Raの値や電流指令値によってはゼロに近い小さい値となる。また、交流電動機2や電動機制御装置10等に関する物理的な要因等により、電圧方程式から算出される理論上の電圧指令基準値と、指令通りのトルクが得られる交流電動機2の実際の駆動に係る電圧指令値とが乖離することがある。そのため、交流電動機2が始動可能となるように、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを適宜補正することが望ましい。そこで本実施形態では、電圧指令基準値補正部23にてd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正している。
電圧指令基準値補正部23では、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。本実施形態では、後述の電圧指令補正値演算部30にて演算されるd軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpに基づき、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を、式(5)、(6)に示す。
vd*_2=vd_ref+vd_cmp ・・・(5)
vq*_2=vq_ref+vq_cmp ・・・(6)
電流推定部24では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。本実施形態では、電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。具体的には、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の逆dq変換により算出されるU相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*を、U相電流推定値iu_estおよびV相電流推定値iv_estとする。そして、U相電流推定値iu_est、V相電流推定値iv_est、および、W相電流検出値iw_snsのdq変換によりd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。
d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算方法は、これに限らず、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づいて算出されていれば、どのようであってもよい。また、U相電流推定値iu_estおよびV相電流推定値iv_estは、どのように演算してもよいし、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算に不要であれば、演算しなくてもよい。
電圧指令値演算部25では、電流推定部24からフィードバックされたd軸電流推定値id_estとd軸電流指令値id*との差であるd軸電流偏差Δidを演算し、d軸電流推定値id_estをd軸電流指令値id*に追従させるべく、d軸電流偏差Δidが0[A]に収束するように、第1のd軸電圧指令値vd*_1をPI演算により演算する。また、電流推定部24からフィードバックされたq軸電流推定値iq_estとq軸電流指令値iq*との差であるq軸電流偏差Δiqを演算し、q軸電流推定値iq_estをq軸電流指令値iq*に追従させるべく、q軸電流偏差Δiqが0[A]に収束するように、第1のq軸電圧指令値vq*_1をPI演算により演算する。
切替判定部26では、インバータ12の駆動に係る駆動信号(後述のPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WL)の演算に用いるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択するか、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択するか、を切り替える。本実施形態では、回転数Nが所定の切替判定閾値Aより大きい場合、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する。また、回転数Nが切替判定閾値A以下の場合、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択する。
3相電圧指令値演算部27では、回転角センサ14から取得される電気角θeに基づく逆dq変換により、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、および、W相電圧指令値vw*に変換する。
PWM信号生成部28では、インバータ12のスイッチング素子のオン/オフの切り替えに係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを、3相交流の電圧指令値vu*、vv*、vw*、および、インバータ12に印加される電圧であるインバータ入力電圧VHに基づいて演算する。
そして、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。なお、3相交流電圧vu、vv、vwが「印加電圧」に対応する。
電圧指令補正値演算部30では、電圧方程式から算出される理論上の電圧指令基準値と、指令通りのトルクが得られる交流電動機2の実際の駆動に係る電圧指令値との差分に対応するd軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpを演算する。d軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpは、例えば、電気角θe、W相電流検出値iw_sns、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*等に基づいて演算される。d軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpは、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正可能な値であれば、どのような値であってもよい。例えば、d軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpは、上下のスイッチング素子が同時オンとなることによる短絡防止のために設けられるデッドタイムに起因する電圧誤差に相当する値としてもよい。また例えば、d軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpを実機データに基づくマップ演算等により演算してもよい。
また、電圧指令補正値演算部30にて、式(5)、(6)に乗じる係数Kを演算してもよい。そして、電圧指令基準値補正部23では、式(5)、(6)に係数Kを乗じることにより、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正して、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算してもよい。係数Kは、どのような値であってもよく、例えば、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*のW相成分であるW相電流指令値iw*とW相電流検出値iw_snsとの比率としてもよい。
トルク異常監視部41では、回転数Nが切替判定閾値A以下である場合、すなわち、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択する後述のFF制御モードである場合、交流電動機2から出力される出力トルクに異常が生じているか否かを監視する。トルク異常監視部41における出力トルク異常監視については、後述する。
ここで、本実施形態における回転数Nによる制御モードの切り替えについて、図4に基づいて説明する。
回転数Nが切替判定閾値A以下である場合、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づいてインバータ12の駆動に係る駆動信号であるPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成し、交流電動機2の駆動を制御することを「FF電圧指令制御モード(以下適宜、「FF制御モード」という。)」とする。
回転数Nが切替判定閾値Aより大きい場合、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1に基づいてインバータ12の駆動に係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成し、交流電動機2の駆動を制御することを「推定電流フィードバック制御モード(以下、フィードバックを適宜「FB」と記載する。)」とする。推定電流FB制御は、1相の電流検出値(本実施形態ではW相電流検出値iw_sns)を用いた1相制御と捉えることもできる。なお、本実施形態では、電流センサが1相に設けられていることを鑑みれば、「推定電流FB制御」および「FF制御」を広義の1相制御」と捉えることもできる。
本実施形態では、「推定電流FB制御モード」が「第1の制御モード」に対応し、「FF電圧指令制御(FF制御)モード」が「第2の制御モード」に対応する。
ここで、推定電流FB制御について、図5〜図7に基づいて説明する。図5は高回転域、図6は中回転域、図7は低回転域の例である。ここでいう「高回転、中回転、低回転」は、相対的な意味でのみ用い、具体的な回転数を意味しない。すなわち、図5での回転数をN1、図6での回転数をN2、図7での回転数をN3とすると、単にN1≧N2≧N3である、ということである。また、図5〜図7において、サンプリング間隔Tsは、同じであるものとする。図5〜図7においては、(a)がd軸電流、(b)がq軸電流、(c)が電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwとサンプリング間隔Tsとの関係を説明する図である。また、(a)、(b)において、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqを実線で示し、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を破線で示した。さらにまた、(a)、(b)において、時間Tcよりも前段は、2相に電流センサを設け、2相の電流検出値に基づく2相制御を行った場合を示し、時間Tcにて1相の電流検出値(本実施形態ではW相電流検出値iw_sns)に基づく推定電流FB制御に切り替えた場合を示している。
図5(a)、(b)に示すように、回転数Nが高回転域にて2相制御から推定電流FB制御に切り替えた場合、推定電流FB制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、2相制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqと変動幅に大きな差はない。
これは、図5(c)に示すように、サンプリング間隔Tsが回転数Nによらず同じである場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが比較的大きな値となっており、推定電流FB制御においても実機情報を反映させやすいためである。
一方、図6(a)、(b)に示すように、回転数Nが中回転域にて2相制御から推定電流FB制御に切り替えた場合、推定電流FB制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、2相制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqよりも変動幅が大きく、制御が不安定になる。
これは、図6(c)に示すように、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが、回転数Nが高回転域のときよりも減少し、実機情報が乏しくなることに起因する。
さらに、図7(a)、(b)に示すように、低回転域にて2相制御から推定電流FB制御に切り替えた場合、推定電流FB制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、回転数Nが中回転域の場合よりもさらに変動幅が大きく、制御がさらに不安定になる。
図7(c)に示すように、回転数Nが小さい場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwがゼロに近くなる。本実施形態では、U相電流推定値iu_estとしてU相電流指令値iu*、V相電流推定値iv_estとしてV相電流指令値iv*を用いているため、指令に対して変化する値である電流変化量Δiwが略0[A]となると、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがほとんど変化しなくなるためである。
このように、回転数Nが低回転域である場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが小さくなる。換言すると、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに反映される実機情報が乏しくなる、ということである。そのため、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が低下するため、低回転域にて推定電流FB制御とすると、交流電動機2を安定して駆動できない虞がある。
そこで本実施形態では、回転数Nが所定の切替判定閾値A以下の場合、推定電流FB制御に替えて、FF項を補正した第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づくFF制御を行っている。
ところで、第1の電流センサ13を交流電動機2のトルク検出器の一種であるとみなせば、W相電流検出値iw_snsに基づいて交流電動機2を制御する推定電流FB制御モードでは、出力トルクに基づいて交流電動機2を制御している、とみなすことができる。換言すると、推定電流FB制御モードでは、出力トルクを監視しているとみなすことができる。
一方、FF制御モードでは、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2の演算にW相電流検出値iw_snsを用いないことがあり、この場合、出力トルクに基づいて交流電動機2を制御しているとは必ずしもいえない。そのため、FF制御モードにおいて、推定電流FB制御モードと同等の機能安全性を確保するためには、別途出力トルクを監視する必要がある。
そこで本実施形態では、回転数Nが切替判定閾値A以下である場合、すなわちFF制御モードである場合、トルク異常監視部41にて、出力トルク異常監視を行っている。本来、2相の電流検出値に基づき、トルク換算した値にて監視を行うことが望ましいが、本実施形態では、第1の電流センサ13が1相(本実施形態ではW相)にしか設けられておらず、d軸実電流idおよびq軸実電流iqを演算することができないため、トルク換算が困難であり、出力トルクを直接的に監視することができない。また、FF制御モードでは、W相電流検出値iw_snsと他相電流推定値(U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_est)とに基づいてトルク推定値trq_estを演算することもできない。
そのため、本実施形態では、出力トルクtrqが式(7)で表されることに鑑み、図8に示すように、W相電流検出値iw_snsが第1の正常判定範囲内である場合、出力トルクが正常であるとみなす。また、W相電流検出値iw_snsが第1の正常判定範囲外である場合、出力トルクに異常が生じている、より詳細には出力トルクが過大であるトルク超過異常が生じている、とみなす。なお、式(7)中のψは電機子鎖交磁束であり、Kは演算上で発生し得る係数を総じて表したものである。
trq=K×ψ×Ia ・・・(7)
図8に示す例では、第1の正常判定範囲を閾値E1以上閾値E2以下とし、W相電流検出値iw_snsが閾値E1以上閾値E2以下である場合、出力トルクは正常であるとみなす。また、W相電流検出値iw_snsが閾値E1より小さい場合、または、閾値E2より大きい場合、出力トルクに異常が生じているとみなす。本実施形態では、W相電流検出値iw_snsが閾値E1より小さい場合、または、閾値E2より大きい場合が、「W相電流検出値iw_snsが第1の正常判定範囲外である」とする。
また、W相電流検出値iw_snsの絶対値に基づき、出力トルク異常判定を行ってもよい。すなわち、W相電流検出値iw_snsの絶対値が閾値E3以下である場合、正常とみなし、閾値E3より大きい場合、出力トルクに異常が生じているとみなしてもよい。この場合、W相電流検出値iw_snsの絶対値が閾値E3より大きい場合が、「W相電流検出値iw_snsが第1の正常判定範囲外である」とする。
ここで、本実施形態による交流電動機2の駆動制御処理を図9に示すフローチャートに基づいて説明する。図9に示す処理は、制御部15にて実行されるものである。
図9に示すように、最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、回転角センサ14から電気角θeを取得し、回転数Nを演算する。また、第1の電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得する。
S102では、電流推定部24にて、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。本実施形態では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。本実施形態では、回転数Nによらず、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを常時演算している。
S103では、回転数Nが所定の切替判定閾値A以下か否かを判断する。回転数Nが切替判定閾値A以下であると判断された場合(S103:YES)、S106へ移行する。回転数Nが切替判定閾値Aより大きいと判断された場合(S103:NO)、S104へ移行する。
S104では、推定電流FB制御とし、電圧指令値演算部25にて、d軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに基づき、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。ここで、直前の処理にてS103にて肯定判断されていた場合、すなわち直前までFF制御であった場合、PI演算において、直前のd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*をPI積分項の初期値として設定することが望ましい。これにより、FF項補正処理から推定電流FB制御処理への切り替え時のd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制することができる。
S105では、切替判定部26にて、d軸電圧指令値vd*として第1のd軸電圧指令値vd*_1を選択し、q軸電圧指令値vq*として第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する。
回転数Nが切替判定閾値A以下であると判断された場合(S103:YES)に移行するS106では、推定電流FB制御に替えて、FF制御とし、電圧指令基準値演算部22および電圧指令基準値補正部23にて、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。
S107では、トルク異常監視部41にて、W相電流検出値iw_snsに基づき、出力トルクに異常が生じているか否かを判断する。本実施形態では、W相電流検出値iw_snsが第1の正常判定範囲内か否かに基づいて判断する。出力トルクに異常が生じていないと判断された場合(S107:NO)、すなわちW相電流検出値iw_snsが閾値E1以上閾値E2以下である場合、S109へ移行する。出力トルクに異常が生じていると判断された場合(S107:YES)、すなわちW相電流検出値iw_snsが閾値E1より小さい、または、閾値E2より大きい場合、S108へ移行する。
S108では、出力トルクに異常が生じている旨の情報を車両制御回路9へ出力し、電動機制御装置10による制御を停止する(システム停止)。なお、システム停止に限らず、バックアップ制御に移行する等の措置を講じるようにしてもよい。
出力トルクに異常が生じていないと判断された場合(S107:NO)に移行するS109では、切替判定部26にて、d軸電圧指令値vd*として第2のd軸電圧指令値vd*_2を選択し、q軸電圧指令値vq*として第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択する。
S110では、3相電圧指令値演算部27にて、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を電気角θeに基づいて逆dq変換し、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*を演算する。
S111では、PWM信号生成部28にて、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*をインバータ入力電圧VHに基づいてPWM変調してPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを算出し、インバータ12へ出力する。
そして、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることにより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力される。
以上詳述したように、本実施形態の電動機制御装置10は、インバータ12によって印加電圧vu、vv、vwが制御される3相の交流電動機2の駆動を制御する。
電動機制御装置10の制御部15では、以下の処理が実行される。交流電動機2のいずれか1相(本実施形態ではW相)であるセンサ相に設けられる第1の電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得する(図9中のS101)。また、交流電動機2の回転角を検出する回転角センサ14から電気角θeを取得する(S101)。
回転数演算部16では、電気角θeに基づき、交流電動機2の回転数Nを演算する(S101)。
電流推定部24では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する(S102)。本実施形態では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。また、電圧指令値演算部25では、交流電動機2の駆動に係るd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*、並びに、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに基づき、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する(S104)。
電圧指令基準値演算部22では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを演算する。本実施形態では、電動機の理論式を用い、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを演算する。また、電圧指令基準値補正部23では、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する(S106)。
切替判定部26では、回転数Nが所定の切替判定閾値Aより大きい場合(S103:NO)、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1に基づいてインバータ12の駆動に係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成する推定電流FB制御モードとし、回転数Nが切替判定閾値A以下である場合、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づいてPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成するFF制御モードとする。
トルク異常監視部41では、制御モードがFF制御モードである場合、すなわち回転数Nが切替判定閾値A以下である場合(S103:YES)、W相電流検出値iw_snsに基づき、交流電動機2から出力される出力トルクを監視する。
本実施形態では、W相に第1の電流センサ13を設け、U相およびV相の電流センサを省略しており、つまりは電流センサの数を減らすことができる。これにより、インバータ12の3相出力端子近傍の小型化や電動機制御装置10のコストを低減することができる。
1相(本実施形態ではW相)の電流検出値iw_snsを用いて推定されるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをフィードバックして交流電動機2の駆動を制御する推定電流FB制御とする場合、回転数Nが小さい低回転域では、サンプリング間隔Tsあたりの電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが小さくなり、実機情報が乏しくなるため、制御が不安定になる虞がある。
そのため、本実施形態では、回転数Nが切替判定閾値A以下である低回転域において、推定電流FB制御に替えて、電動機の理論式(例えば電圧方程式)や予め記憶されたマップ等を用い、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づいてd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを演算している。ただし、交流電動機2や電動機制御装置10等に関する物理的な要因等により、理論上の電圧指令基準値と、指令通りのトルクが得られる交流電動機2の実際の駆動に係る電圧指令値とが乖離することがある。特に交流電動機2の始動時や停止時等の低回転域において、理論上のd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refに基づいて交流電動機2の駆動を制御すると、交流電動機2に印加される印加電圧が適切ではない可能性があるため、交流電動機2を安定して駆動できない虞がある。
そこで本実施形態では、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正して第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算し、低回転域においては、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づいて交流電動機2の駆動を制御している。これにより、低回転域において、始動から駆動、停止までを安定して制御することができる。
また、第1の電流センサ13を交流電動機2のトルク検出器の一種であるとみなせば、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づいて交流電動機2を制御する推定電流FB制御モードでは、出力トルクに基づいて交流電動機2を制御している、とみなすことができる。一方、FF制御モードでは、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2の演算にW相電流検出値iw_snsを用いないことがあり、この場合、出力トルクに基づいて交流電動機2を制御しているとは必ずしもいえない。そのため、推定電流FB制御等と同等の機能安全性を確保するためには、別途出力トルクを監視する必要がある。交流電動機2の出力トルクを監視する際、例えば2相の電流センサ値等に基づいて実際のトルクを直接監視することが望ましい。しかしながら、本実施形態では、第1の電流センサ13が1相(本実施形態ではW相)にしか設けられていないため、実際のd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqを演算することができず、トルク換算が困難であり、出力トルクを直接的に監視することができない。
そこで本実施形態では、W相電流検出値iw_snsに基づいて、交流電動機2から出力される出力トルクを監視している。具体的には、本実施形態では、W相電流検出値iw_snsが正常判定範囲外である場合、出力トルクに異常が生じていると判定する。
これにより、交流電動機2の回転数Nが小さい低回転域においてもFF制御にて安定して駆動可能でありつつ、出力トルクを監視し、機能安全性を確保することができる。
本実施形態では、制御部15が「センサ相電流取得手段」、「回転角取得手段」、「回転数演算手段」、「電流推定手段」、「第1の電圧指令値演算手段」、「電圧指令基準値演算手段」、「第2の電圧指令値演算手段」、「制御モード切替手段」、「トルク異常監視手段」を構成する。より詳細には、回転数演算部16が「回転数演算手段」を構成し、電流推定部24が「電流推定手段」を構成し、電圧指令値演算部25が「第1の電圧指令値演算手段」を構成し、電圧指令基準値演算部22が「電圧指令基準値演算手段」を構成し、電圧指令基準値補正部23が「第2の電圧指令値演算手段」を構成し、切替判定部26が「制御モード切替手段」を構成し、トルク異常監視部41が「トルク異常監視手段」を構成する。
また、図9中のS101が「センサ相電流取得手段」、「回転角取得手段」および「回転数演算手段」の機能としての処理に相当し、S102が「電流推定手段」の機能としての処理に相当し、S104が「第1の電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、S106が「電圧指令基準値演算手段」および「第2の電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、S105およびS109が「制御モード切替手段」の機能としての処理に相当し、S107が「トルク異常監視手段」の機能としての処理に相当する。
W相が「センサ相」に対応し、W相電流検出値iw_snsが「センサ相電流検出値」に対応し、電気角θeが「回転角検出値」に対応する。d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが「電流推定値」に対応し、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が「電流指令値」に対応し、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1が「第1の電圧指令値」に対応する。d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refが「電圧指令基準値」に対応し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2が「第2の電圧指令値」に対応する。また、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLが「駆動信号」に対応する。
(第2実施形態)
第2実施形態〜第5実施形態は、トルク異常監視部が上記実施形態と異なっているので、この点を中心に説明する。
本発明の第2実施形態による制御部15を図10に示す。本実施形態のトルク異常監視部42では、W相電流検出値iw_snsの振幅Iaを演算する。そして、第2の正常判定範囲を閾値E11以上閾値E12以下である場合とし、振幅Iaが閾値E11以上閾値E12以下である場合、出力トルクは正常であるとみなす。また、振幅Iaが閾値E11より小さい場合、または、閾値E12より大きい場合、出力トルクに異常が生じていると判定する。本実施形態では、振幅Iaが閾値E11より小さい場合、または、閾値E12より大きい場合が、「振幅Iaが第2の正常判定範囲外である」とする。
振幅Iaは、どのような方法で演算してもよいが、例えば電気角θe、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、以下のように演算できる。まず、W相電流検出値iw_snsは、式(8.1)で表される。式中のφは、d−q座標におけるq軸を基準とする電流ベクトルiの電流位相である。
iw_sns=Ia×sin(θe+240°+φ) ・・・(8.1)
また、基準軸の取り方を特定せず、式(8.1)を一般化すると、式(8.2)のようになる。
iw_sns=Ia×sin(θe+C+φ) ・・・(8.2)
ただし、式中のCは電気角θeの基準軸とセンサ相軸との位相に応じた定数である。本実施形態では、電気角θeは、U相軸を基準としてU相軸と+d軸とがなす角度であり、0[°]から反時計回り方向に定義される。また、W相軸は、U相軸に対し、電気角として240[°]ずれているので、本実施形態の定数Cは240[°]である。
また、振幅が1の正弦波である基準正弦波iw_refは、式(9.1)で表される。式中のφ*は、d−q座標におけるq軸を基準とする電流指令ベクトルi*の電流位相であり、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*から演算可能である。
iw_ref=1×sin(θe+240°+φ*) ・・・(9.1)
式(8.2)と同様、基準軸の取り方を特定せず、式(9.1)を一般化すると、式(9.2)のようになる。
iw_ref=1×sin(θe+C+φ*) ・・・(9.2)
ここで、d−q座標における電流ベクトルiの電流位相φと電流指令ベクトルi*の電流位相φ*とが略等しいとみなせば、振幅Iaは、式(10)により演算される。
Ia=iw_sns/iw_ref ・・・(10)
なお、W相電流検出値iw_snsまたは基準正弦波iw_refがゼロクロスする場合には、ゼロで乗算する「ゼロ掛け」やゼロで除算する「ゼロ割り」により振幅Iaが正確に演算できない。そのため、W相電流検出値iw_snsまたは基準正弦波iw_refがゼロクロス範囲内である場合、誤検出を避けるべく、出力トルク異常監視を中止することが望ましい。ゼロクロス範囲内か否かの判定は、W相電流検出値iw_snsまたは基準正弦波iw_refに基づいて判定してもよいし、電気角θeに電流位相φまたは電流指令位相φ*を加算した位相角、または、電気角θe等に基づいて判定してもよい。
フローチャートについて言及すると、図9中のS107では、W相電流検出値iw_snsおよび基準正弦波iw_refがゼロクロス範囲内ではない場合、W相電流検出値iw_snsの振幅Iaを演算する。また、振幅Iaが閾値E11以上閾値E12以下である場合である場合、出力トルクに異常が生じていないとみなし、S107にて否定判断し、S109へ移行する。振幅Iaが閾値E11より小さい場合、または、閾値E12より大きい場合、出力トルクに異常が生じているとみなし、S107にて肯定判断し、S108へ移行する。なお、W相電流検出値iw_snsまたは基準正弦波iw_refがゼロクロス範囲内である場合には、S107にて否定判断し、S109へ移行する。
本実施形態では、W相電流検出値iw_snsの振幅Iaが、第2の正常判定範囲外である場合(S107:YES)、出力トルクに異常が生じていると判定する。
このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
また、上記実施形態では、実質的に、W相電流検出値iw_snsのピーク付近にて出力トルク異常を検出することになるが、本実施形態では、W相電流検出値iw_snsのゼロクロス範囲を除く角度範囲にて出力トルク異常を検出することができる。また、本実施形態では、出力トルクが過大である場合だけでなく、過小である場合についても判定可能である。
本実施形態では、トルク異常監視部42が「トルク異常監視手段」を構成する。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による制御部15を図11に示す。
本実施形態の制御部15は、上記実施形態に加え、3相電流指令値演算部35を有する。
3相電流指令値演算部35では、電気角θeに基づく逆dq変換により、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を、W相電流指令値iw*に変換する。W相電流指令値iw*は、トルク異常監視部43に出力される。
トルク異常監視部43では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*のW相成分であるW相電流指令値iw*とW相電流検出値iw_snsとの差であるW相誤差iw_errの絶対値に基づき、出力トルク異常を監視する(図12参照)。図12(a)は、W相電流検出値iw_snsの振幅がW相電流指令値i*の振幅より大きい場合、すなわちトルク過大側の例を示しており、図12(b)は、W相電流検出値iw_snsの振幅がW相電流指令値i*の振幅より小さい場合、すなわちトルク過小側の例を示している。
具体的には、W相誤差iw_errの絶対値が、第1の異常判定閾値E20より大きい場合、出力トルクに異常が生じていると判定する。
フローチャートについて言及すると、図9中のS107では、W相誤差iw_errの絶対値が第1の異常判定閾値E20以下である場合、出力トルクに異常が生じていないとみなし、S107にて否定判断し、S109へ移行する。W相誤差iw_errの絶対値が第1の異常判定閾値E20より大きい場合、出力トルクに異常が生じているとみなし、S107にて肯定判断し、S108へ移行する。
本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*のW相成分であるW相電流指令値iw*とW相電流検出値iw_snsとの差であるW相誤差iw_errの絶対値が第1の異常判定閾値E20より大きい場合(S107:YES)、出力トルクに異常が生じていると判定する。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*がトルク指令値trq*に対応し、W相電流検出値iw_snsが出力トルクに対応するので、W相電流指令値iw*に対してW相電流検出値iw_snsが乖離している場合、すなわちW相誤差iw_erの絶対値rが第1の異常判定閾値E20より大きい場合、出力トルクに異常が生じていると判定する。
このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、トルク異常監視部43が「トルク異常監視手段」を構成する。また、W相電流指令値iw*が「センサ相電流指令値」に対応する。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態は、第3実施形態の変形例である。本実施形態による制御部15を図13に示す。
本実施形態では、W相誤差iw_errの絶対値に基づく出力トルク異常判定に係る第1の異常判定閾値E21を可変としている。
図12に示すように、W相誤差iw_errの絶対値は、W相電流指令値iw*の位相(θe+C+φ*)またはW相電流検出値の位相(θe+C+φ)に応じて変化する。なお、位相を表す式中のCは、上記式(8.2)、(9.2)と同様である。
電流指令ベクトルi*の位相φ*と電流ベクトルiの位相φとが略等しいとすれば、W相誤差iw_errは、W相電流検出値iw_snsのピーク時に最大となり、ゼロクロス時にゼロとなる。この点を考慮し、本実施形態では、電流指令ベクトルの位相角(θe+C+φ*)に応じて、第1の異常判定閾値E21を可変としている。本実施形態における第1の異常判定閾値E21を式(11.1)に示す。式中のEpは、W相電流検出値iw_snsのピーク時における第2の異常判定閾値(最大値)であり、第3実施形態の第1の異常判定閾値E20に対応する値であるともいえる。
E21=Ep×|sin(θe+240°+φ*)| ・・・(11.1)
また、式(11.1)を定数Cを用いて一般化すると、式(11.2)のようになる。
E21=Ep×|sin(θe+C+φ*)| ・・・(11.2)
すなわち、本実施形態の例では、(θe+240[°]+φ*)が60[°]であれば、第1の異常判定閾値E21は、第1の異常判定閾値(最大値)Epの1/2とする、といった具合である。また、第1の異常判定閾値(最大値)Ep自体も、動作点等に応じて可変としてもよい。
なお、誤検出を防ぐために、第2実施形態同様、W相電流検出値iw_snsまたはW相電流指令値iw*がゼロクロス範囲内である場合、出力トルク異常監視を中止することが望ましい。また、第1の異常判定閾値E21の下限値を設けることにより、ゼロクロス範囲内における誤検出を防止するようにしてもよい。
また、W相電流指令値iw*の位相角(θe+C+φ*)に替えて、W相電流検出値iw_snsの位相角(θe+C+φ)に基づいて第1の異常判定閾値E21を可変としてもよい。
フローチャートについて言及すると、図9中のS107では、第1の異常判定閾値E21を演算し、W相誤差iw_errの絶対値が第1の異常判定閾値E21以下である場合、出力トルクに異常が生じていないとみなし、S107にて否定判断し、S109へ移行する。W相誤差iw_errの絶対値が第1の異常判定閾値E21より大きい場合、出力トルクに異常が生じているとみなし、S107にて肯定判断し、S108へ移行する。なお、W相電流検出値iw_snsがゼロクロス範囲内である場合には、S107にて否定判断し、S109へ移行することが望ましい。
本実施形態では、第1の異常判定閾値E21は、W相電流指令値iw*の位相(θe+C+φ*)またはW相電流検出値iw_snsの位相(θe+C+φ)に応じて可変である。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
また、上記第3実施形態では、実質的にW相電流検出値iw_snsのピーク付近にて出力トルク異常を検出することになるが、本実施形態では、W相電流検出値iw_snsのゼロクロス範囲を除く角度範囲にて出力トルク異常を検出することができる。
本実施形態では、トルク異常監視部44が「トルク異常監視手段」を構成する。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による制御部15を図14に示す。
本実施形態のトルク異常監視部45には、電圧指令基準値補正部23にて演算された第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2が入力される。
第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2は、d軸電流、q軸電流、および、電気角速度ωの関数であるといえる。そこで、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づき、例えば交流電動機の理論式を解くことにより、d軸電流換算値id_trnおよびq軸電流換算値iq_trnを演算する。また、d軸電流換算値id_trnおよびq軸電流換算値iq_trnを、電気角θeに基づく逆dq変換により、w相電流換算値iw_trnを演算する。そして、W相電流換算値iw_trnとW相電流検出値iw_snsとの差の絶対値が第2の異常判定閾値E30より大きい場合、出力トルクに異常が生じていると判定する。
なお、w相電流換算値iw_trnの演算方法は、どのようであってもよい。
フローチャートについて言及すると、図9中のS107では、W相電流換算値iw_trnとW相電流検出値iw_snsとの差の絶対値が第2の異常判定閾値E30以下である場合、出力トルクに異常が生じていないとみなし、S107にて否定判断し、S109へ移行する。W相電流換算値iw_trnとW相電流検出値iw_snsとの差の絶対値が第2の異常判定閾値E30より大きい場合、出力トルクに異常が生じているとみなし、S107にて肯定判断し、S108へ移行する。
本実施形態では、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に対応する電流値のW相の成分であるW相電流換算値iw_trnとW相電流検出値iw_snsとの差の絶対値が第2の異常判定閾値E30より大きい場合(S107:YES)、出力トルクに異常が生じていると判定する。
このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、トルク異常監視部45が「トルク異常監視手段」を構成する。また、W相電流換算値iw_trnが「センサ相電流換算値」に対応する。
(第6実施形態)
本実施形態の第6実施形態による制御部15を図15に示す。本実施形態のトルク異常監視部41は、第1実施形態と同様であるものとするが、他の実施形態のトルク異常監視部42〜45としてもよい。
本実施形態では、センサ相であるW相に、第1の電流センサ13に加え、第2の電流センサ53が設けられている。すなわち、本実施形態では、W相に電流センサが2つ設けられている、所謂「1相2チャンネル」の構成となっている。第2の電流センサ53は、第1の電流センサ13の異常を監視すべく、W相に通電される電流値である監視相電流検出値iw_mntを検出する。なお、監視相電流検出値iw_mntは、制御系からは独立しており、交流電動機2の駆動制御には用いられない。
また、制御部15は、上記実施形態の構成に加え、電流センサ異常監視部50が設けられている。
電流センサ異常監視部50は、W相電流検出値iw_snsおよび監視相電流検出値iw_mntに基づき、第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の少なくとも一方に異常が生じているか否かを監視する。本実施形態では、1相2チャンネルの構成となっているので、W相電流検出値iw_snsと監視相電流検出値iw_mntとの差の絶対値が、電流センサ異常判定閾値Eiより大きい場合、第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の少なくとも一方に異常が生じていると判定する。
本実施形態による駆動制御処理を図16に示すフローチャートに基づいて説明する。図16に示すフローチャートは、図9のS101に替えてS121であり、S121とS102との間にS122が設けられている以外は、図9に示すフローチャートと同様である。
最初のS121では、回転角センサ14から電気角θeを取得し、回転数Nを演算する。また、第1の電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得し、第2の電流センサ53から監視相電流検出値iw_mntを取得する。
S122では、第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の少なくとも一方に異常が生じているか否かを判断する。第1の電流センサ13および第2の電流センサ53が正常であると判断された場合(S122:NO)、すなわちW相電流検出値iw_snsと監視相電流検出値iw_mntとの差の絶対値が電流センサ異常判定閾値Ei以下である場合、S102へ移行する。第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の少なくとも一方に異常が生じていると判断された場合(S122:YES)、すなわちW相電流検出値iw_snsと監視相電流検出値iw_mntとの差の絶対値が電流センサ異常判定閾値Eiより大きい場合、S108へ移行する。S122にて肯定判断されてS108に移行した場合、第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の少なくとも一方に異常が生じている旨の情報を車両制御回路9へ出力し、異常に対する処置として例えば電動機制御装置10による制御を停止する。
本実施形態の制御部15では、交流電動機2のいずれか1相(本実施形態ではW相)である監視相に設けられる第2の電流センサ53から監視相電流検出値iw_mntを取得する(S121)。また、電流センサ異常監視部50では、W相電流検出値iw_snsおよび監視相電流検出値iw_mntに基づき、第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の少なくとも一方に異常が生じているか否かを監視する(S122)。
これにより、第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の異常を監視することができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、制御部15が、上記実施形態の各手段に加え、「監視相電流取得手段」および「電流センサ異常監視手段」を構成する。より詳細には、電流センサ異常監視部50が「電流センサ異常監視手段」を構成する。
また、図16中のS121が「センサ相電流取得手段」、「回転角取得手段」、「回転数演算手段」に加え、「監視相電流取得手段」を構成し、S122が「電流センサ異常監視手段」を構成する。
また、W相が「センサ相」および「監視相」に対応し、監視相電流検出値iw_mntが「監視相電流検出値」に対応する。
(他の実施形態)
(ア)トルク異常監視
(I)第1実施形態では、センサ相電流検出値が正常判定範囲内か否かに基づいて出力トルク異常を監視した。(II)第2実施形態では、センサ相電流検出値の振幅に基づいて出力トルク異常を監視した。(III)第3実施形態および第4実施形態では、センサ相電流指令値とセンサ相電流検出値との差に基づいて出力トルク異常を監視した。(IV)第5実施形態では、第2の電圧指令値に対応する電流値のセンサ相成分のセンサ相電流換算値に基づいて出力トルク異常を監視した。
他の実施形態では、(I)〜(IV)の一部または全部を組み合わせて出力トルク異常を監視してもよい。また、第6実施形態における出力トルク異常監視についても同様である。
また、出力トルクとみなせる値であれば、その他の値であってもよい。
(イ)出力トルク異常判定に係る各閾値は、実機データ等に基づいて予め設定してもよい。また例えば式(7)等を利用し、トルク閾値から換算した値として常時演算してもよい。換算に用いるトルク閾値は、演算誤差や検出遅れ時間、過渡変化に対する誤判定を避けるよう設定することが望ましい。例えばトルク指令値trq*が50[Nm]であるとすれば、換算に用いるトルク閾値を、50[Nm]±10[Nm]、に設定するといった具合である。また例えば、換算に用いるトルク閾値を、トルク指令値trq*×0.8〜トルク指令値trq*×1.2に設定するといった具合である。
なお、例えば第1実施形態にて、閾値に幅を持たせる場合には、例えばW相電流検出値iw_snsのピークにて異常判定を行う等、誤判定を避けるように構成することが望ましい。
(ウ)FF制御処理と推定電流FB制御処理との切り替えに係る回転数の判定閾値は、推定電流FB制御の演算精度等を考慮し、適宜設定することができる。また、上記実施形態では、1つの判定閾値によりFF項補正処理と推定電流FB制御処理とを切り替えていた。他の実施形態では、FF項補正処理と推定電流FB制御処理との切り替えハンチングを避けるため、回転数が上昇する側と下降する側とで回転数の判定閾値と異なる値としてもよい。すなわち、回転数が上昇する側と下降する側とで回転数の判定閾値にヒステリシス(ヒス)を設けてもよい、ということである。この場合、上昇側の判定閾値をAu、下降側の判定閾値をAdとした場合、例えばAu>Adとすることが好ましいが、Au<Adとしてもよい。
(エ)上記実施形態では、電流推定部において、センサ相以外の相については電流指令値を推定値とみなし、d軸電流推定値およびq軸電流推定値を演算していた。
電流推定部における演算方法は、これに限らず、電流検出値および電気角に基づいて演算されていれば、どのような方法であってもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。また、第1の電圧指令値は、電流指令値、および、フィードバックされた電流推定値に基づいて算出されていれば、どのような方法で算出してもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。
さらにまた、上記実施形態では、d軸電流推定値、q軸電流推定値、第1のd軸電圧指令値、および、第1のq軸電圧指令値は、回転数によらず、常時演算されていた。他の実施形態では、回転数が判定閾値より大きい場合にd軸電流推定値、q軸電流推定値、第1のd軸電圧指令値、および、第1のq軸電圧指令値を演算し、回転数が判定閾値以下の場合、d軸電流推定値、q軸電流推定値、第1のd軸電圧指令値、および、第1のq軸電圧指令値の演算を中止してもよい。
以下、電流推定部にて採用可能な電流推定方法を例示しておく。
(i)電流指令位相を用いた基準角と振幅に基づく演算
例えば、特開2004−159391号公報のように、電流指令位相角と電気角から生成したU相電流基準角(θ’)」で除して電流振幅(Ia)を算出し、この電流振幅を、U相電流基準角から±120[°]ずらした電気角におけるsin値に乗じて他の2相の電流推定値Iv、Iwを算出する(式12.1〜12.3)。
Ia=Iu/[√(1/3)×({−sin(θ’)}] ・・・(12.1)
Iv=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+120[°])}・・・(12.2)
Iw=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+240[°])}・・・(12.3)
以下、(ii)〜(iv)では、センサ相をW相として説明する。
(ii)電流指令値を用いたセンサ相基準位相に基づく演算
U相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*の少なくとも一方、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeを用い、センサ相に一致するα軸方向のα軸電流iαおよびセンサ相に直交するβ軸方向のβ軸電流iβを演算し、α軸電流iαおよびβ軸電流iβの逆正接関数(arctan)によりセンサ相基準電流位相θxを算出する。センサ相基準電流位相θxの演算式を式(13)に示す。
θx=tan-1(iβ/iα) ・・・(13)
また、センサ相基準電流位相θxおよびW相電流検出値iw_snsに基づき、U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_estを演算し、U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_est、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。なお、U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_estの演算において、ゼロで除算する「ゼロ割り」やゼロで乗算する「ゼロ掛け」を回避するような補正処理を行ってもよい。
(iii)α軸電流の微分による演算
α軸電流iαとβ軸電流iβが「sin波とcos波」の関係にあり、α軸電流iαとβ軸電流iβとの位相差が90[°]であることに着目し、α軸電流微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを演算する。ここで、制御部における演算が離散系である場合、α軸電流微分値Δiαは、実際のβ軸電流iβに対し、電気角移動量Δθeの半分だけ遅れる。この点を考慮し、α軸電流iαの前回値と今回値との平均値に電気角移動量Δθeの半分(Δθe/2)を乗じた補正量Hにて補正したβ軸電流推定値iβ_estとすることが好ましい。そして、α軸電流iαおよびβ軸電流推定値iβ_estを用いてセンサ相基準電流位相θxを演算する。以降の演算は(ii)と同様である。
(iv)漸化式による演算
回転座標系であるd−q座標上でW相軸が相対的に回転することを利用し、W相推定誤差Δiw_estを積算してd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqに漸近させる。
前回のd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_est、および今回の電気角θeに基づき、センサ相成分であるW相電流基準値iw_bfを演算し、W相電流基準値iw_bfとW相電流検出値iw_snsとの差であるW相推定誤差Δiw_estを算出する。W相推定誤差Δiw_estにフィルタ要素であるゲインKを乗じた補正後誤差KΔiw_estを算出し、Δiu=0、Δiv=0とし、dq変換によりセンサ相方向補正値id_crrおよびq軸補正値iq_crrを演算する。そして算出されたd軸補正値id_crrおよびq軸補正値iq_crrをセンサ相方向の補正ベクトルとし、当該補正ベクトルをd−q座標にて積算することにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。また、センサ相に直交する直交方向補正値をさらに演算し、センサ相方向補正値および直交方向補正値の合成ベクトルを補正ベクトルとし、当該補正ベクトルをd−q座標にて積算するようにしてもよい。
(オ)上記実施形態では、電圧指令基準値は、電動機の理論式である電圧方程式に基づいて演算された。他の実施形態では、電圧指令基準値は、予め記憶されたマップを参照することによるマップ演算等、電流指令値に基づいてどのように演算してもよい。
(カ)上記実施形態では、「電流推定値」、「電流指令値」、「第1の電圧指令値」、「電圧指令基準値」、および、「第2の電圧指令値」は、いずれもd−q座標のものについて説明したが、交流電動機の制御に利用可能な値であれば、各相の値や、その他の軸に基づくものであってもよい。
(キ)上記実施形態では、トルク異常監視部は電動機制御装置の制御部の一部として記載した。他の実施形態では、電流指令値や電流検出値など、必要な情報を他の制御部(例えば他の監視用マイコンや上位の車両制御回路など)に送り、他の制御部で演算するようにしてもよいし、電動機制御装置の制御部でも演算しておき、両者の結果を鑑みて判定してもよい。こうすることで、制御部が格納されているマイコン自体の異常も相互監視することができる。
(ク)交流電動機の印加電圧を制御するインバータは、どのような方法で制御されてもよい。例えば、正弦波PWM制御モード、および、過変調PWM制御モード等を適宜切り替えて制御されるように構成してもよい。
(ケ)上記実施形態では、第1の電流センサがW相に設けられ、W相がセンサ相である例について説明した。他の実施形態では、第1の電流センサがU相に設けられ、U相をセンサ相としてもよい。また、第1の電流センサがV相に設けられ、V相をセンサ相としてもよい。
(コ)第6実施形態では、第2の電流センサはW相に設けられ、W相が監視相である例について説明した。他の実施形態では、第2の電流センサがU相に設けられ、U相を監視相としてもよい。また、第2の電流センサがV相に設けられ、V相を監視相としてもよい。また、第6実施形態では、センサ相と監視相とが同一の相である所謂「1相2チャンネル」の構成である。他の実施形態では、センサ相と監視相とが異なる相である所謂「2相1チャンネル」の構成としてもよい。
(サ)上記実施形態では、回転角センサは電気角θeを検出し、制御部へ出力した。他の実施形態では、回転角センサは機械角θmを検出し、制御部へ出力し、制御部の内部にて電気角θeに換算してもよい。また、電気角θeに替えて、機械角θmを「回転角検出値」としてもよい。さらにまた、回転数Nは、機械角θmに基づいて算出してもよい。
(シ)上記実施形態では、交流電動機は、永久磁石式同期型の三相交流電動機であったが、他の実施形態では、誘導電動機やその他の同期電動機であってもよい。また、上記実施形態の交流電動機は、電動機としての機能および発電機としての機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであったが、他の実施形態では、発電機としての機能を持たない電動機であってもよい。
交流電動機は、エンジンに対して電動機として動作し、エンジンの始動を行うように構成されていてもよい。また、エンジンを設けなくてもよい。さらに、交流電動機を複数設けてもよいし、複数の交流電動機における動力を分割する動力分割機構等をさらに設けてもよい。
(ス)本発明による交流電動機の制御装置は、上記実施形態のようにインバータと交流電動機を1組設けたシステムに限らず、インバータと交流電動機を2組以上設けたシステムに適用してもよい。また、1台のインバータに複数台の交流電動機を並列接続させた電車等のシステムに適用してもよい。
また、交流電動機の制御装置は、電動車両に適用されていたが、電動車両以外に用いてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
2・・・交流電動機
10・・・電動機制御装置(交流電動機の制御装置)
12・・・インバータ
13・・・第1の電流センサ
14・・・回転角センサ
15・・・制御部(センサ相電流取得手段、回転角取得手段、回転数演算手段、電流推定手段、第1の電圧指令値演算手段、電圧指令基準値演算手段、第2の電圧指令値演算手段、制御モード切替手段、トルク異常監視手段、監視相電流取得手段、電流センサ異常監視手段)
53・・・第2の電流センサ

Claims (7)

  1. インバータ(12)によって印加電圧が制御される3相の交流電動機(2)の駆動を制御する交流電動機の制御装置(10)であって、
    前記交流電動機のいずれか1相であるセンサ相に設けられる第1の電流センサ(13)からセンサ相電流検出値を取得するセンサ相電流取得手段(15)と、
    前記交流電動機の回転角を検出する回転角センサ(14)から回転角検出値を取得する回転角取得手段(15)と、
    前記回転角検出値に基づき、前記交流電動機の回転数を演算する回転数演算手段(16)と、
    前記センサ相電流検出値および前記回転角検出値に基づき、電流推定値を演算する電流推定手段(24)と、
    前記交流電動機の駆動に係る電流指令値、および、フィードバックされる前記電流推定値に基づき、第1の電圧指令値を演算する第1の電圧指令値演算手段(25)と、
    前記電流指令値に基づき、電圧指令基準値を演算する電圧指令基準値演算手段(22)と、
    前記電圧指令基準値を補正し、第2の電圧指令値を演算する第2の電圧指令値演算手段(23)と、
    前記回転数が所定の切替判定閾値より大きい場合、前記第1の電圧指令値に基づいて前記インバータの駆動に係る駆動信号を生成する第1の制御モードとし、前記回転数が前記切替判定閾値以下である場合、前記第2の電圧指令値に基づいて前記駆動信号を生成する第2の制御モードとする制御モード切替手段(26)と、
    制御モードが前記第2の制御モードである場合、前記センサ相電流検出値に基づき、前記交流電動機から出力される出力トルクを監視するトルク異常監視手段(41〜45)と、
    を備えることを特徴とする交流電動機の制御装置。
  2. 前記トルク異常監視手段は、前記センサ相電流検出値が第1の正常判定範囲外である場合、前記出力トルクに異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
  3. 前記トルク異常監視手段は、前記センサ相電流検出値の振幅が第2の正常判定範囲外である場合、前記出力トルクに異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の交流電動機の制御装置。
  4. 前記トルク異常監視手段は、前記電流指令値の前記センサ相の成分であるセンサ相電流指令値と前記センサ相電流検出値との差の絶対値が第1の異常判定閾値より大きい場合、前記出力トルクに異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  5. 前記第1の異常判定閾値は、前記センサ相電流指令値の位相または前記センサ相電流検出値の位相に応じて可変であることを特徴とする請求項4に記載の交流電動機の制御装置。
  6. 前記トルク異常監視手段は、前記第2の電圧指令値に対応する電流値の前記センサ相の成分であるセンサ相電流換算値と前記センサ相電流検出値との差の絶対値が第2の異常判定閾値より大きい場合、前記出力トルクに異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  7. 前記交流電動機のいずれか1相である監視相に設けられる第2の電流センサ(53)から監視相電流検出値を取得する監視相電流取得手段(15)と、
    前記センサ相電流検出値および前記監視相電流検出値に基づき、前記第1の電流センサおよび前記第2の電流センサの少なくとも一方に異常が生じているか否かを監視する電流センサ異常監視手段(50)と、
    をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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