JP2014155331A - 交流電動機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制御部15では、電流指令値id*、iq*およびフィードバックされる電流推定値id_est、iq_estに基づき、第1の電圧指令値vd*_1、vq*_1を演算する。また、電動機の理論式を用いて演算される電圧指令基準値vd_ref、vq_refを補正し、第2の電圧指令値vd*_2、vq*_2を演算する。回転数Nが切替判定閾値A以下である場合、第1の電圧指令値vd*_1、vq*_1に基づく第1の制御モードに替えて、第2の電圧指令値vd*_2、vq*_2に基づく第2の制御モードとし、W相電流検出値iw_snsに基づき、出力トルクを監視する。これにより、低回転域において、始動から駆動、停止までを安定して駆動可能でありつつ、出力トルクを監視することができる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、交流電動機の回転数が小さい低回転域においても安定して駆動可能であり、出力トルクを監視可能な交流電動機の制御装置を提供することにある。
第2の電圧指令値演算手段は、電圧指令基準値を補正し、第2の電圧指令値を演算する。
トルク異常監視手段は、制御モードが第2の制御モードである場合、センサ相電流検出値に基づき、交流電動機から出力される出力トルクを監視する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態による交流電動機2の制御装置としての電動機制御装置10は、電動車両を駆動する電動機駆動システム1に適用される。
交流電動機2は、例えば電動車両の駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機である。本実施形態の交流電動機2は、永久磁石式同期型の三相交流電動機である。
電動車両には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等、電気エネルギによって駆動輪6を駆動する車両が含まれるものとする。本実施形態の電動車両は、エンジン3を備えるハイブリッド車両であり、交流電動機2は、駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、および、エンジン3や駆動輪6から伝わる車両の運動エネルギにより駆動されて発電可能な発電機としての機能を有する、所謂モータジェネレータ(図中、「MG」と記す。)である。
直流電源8は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等、充放電可能な蓄電装置である。直流電源8は、電動機制御装置10のインバータ12(図2参照)と接続され、インバータ12を介して交流電動機2と電力の授受可能に構成されている。
インバータ12には、交流電動機2の駆動状態や車両要求等に応じて、直流電源8の直流電圧を図示しない昇圧コンバータにより昇圧したインバータ入力電圧VHが印加される。また、インバータ12は、ブリッジ接続される図示しない6つのスイッチング素子を有する。詳細には、スイッチング素子は、高電位側に設けられる上側スイッチング素子(以下、「上SW」という。)、および、低電位側に設けられる下側スイッチング素子(以下、「下SW」という。)からなる。直列に接続される上SWおよび下SWは、交流電動機2の各相に対応して設けられる。スイッチング素子には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子は、制御部15のPWM信号生成部28(図3参照)から出力されるPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてオン/オフが制御される。これにより、インバータ12は、交流電動機2に印加される3相交流電圧vu、vv、vwを制御する。交流電動機2は、インバータ12により生成された3相交流電圧vu、vv、vwが印加されることにより駆動が制御される。
<1.正転力行> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が正のとき、電力消費。
<2.正転回生> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が負のとき、発電。
<3.逆転力行> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が負のとき、電力消費。
<4.逆転回生> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が正のとき、発電。
電流指令値演算部21は、車両制御回路9から取得されるトルク指令値trq*に基づき、交流電動機2の回転座標として設定される回転座標系(d−q座標系)におけるd軸電流指令値id*、および、q軸電流指令値iq*を演算する。本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、予め記憶されているマップを参照することにより演算されるが、数式等から演算するように構成してもよい。
vd=Ra×id+Ld×(d/dt)id−ω×Lq×iq ・・・(1)
vq=Ra×iq+Lq×(d/dt)iq+ω×Ld×id+ω×ψ
・・・(2)
vd_ref=Ra×id*−ω×Lq×iq* ・・・(3)
vq_ref=Ra×iq*+ω×Ld×id*+ω×ψ ・・・(4)
Ra:電機子抵抗
Ld:d軸自己インダクタンス、Lq:q軸自己インダクタンス
ω:電気角速度
ψ:永久磁石の電機子鎖交磁束
電気角速度ωは、電圧指令基準値演算部22にて、電気角θeに基づいて演算される。また、電気角速度ωは、回転数Nから演算してもよい。
vd*_2=vd_ref+vd_cmp ・・・(5)
vq*_2=vq_ref+vq_cmp ・・・(6)
PWM信号生成部28では、インバータ12のスイッチング素子のオン/オフの切り替えに係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを、3相交流の電圧指令値vu*、vv*、vw*、および、インバータ12に印加される電圧であるインバータ入力電圧VHに基づいて演算する。
回転数Nが切替判定閾値A以下である場合、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づいてインバータ12の駆動に係る駆動信号であるPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成し、交流電動機2の駆動を制御することを「FF電圧指令制御モード(以下適宜、「FF制御モード」という。)」とする。
本実施形態では、「推定電流FB制御モード」が「第1の制御モード」に対応し、「FF電圧指令制御(FF制御)モード」が「第2の制御モード」に対応する。
これは、図5(c)に示すように、サンプリング間隔Tsが回転数Nによらず同じである場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが比較的大きな値となっており、推定電流FB制御においても実機情報を反映させやすいためである。
これは、図6(c)に示すように、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが、回転数Nが高回転域のときよりも減少し、実機情報が乏しくなることに起因する。
図7(c)に示すように、回転数Nが小さい場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwがゼロに近くなる。本実施形態では、U相電流推定値iu_estとしてU相電流指令値iu*、V相電流推定値iv_estとしてV相電流指令値iv*を用いているため、指令に対して変化する値である電流変化量Δiwが略0[A]となると、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがほとんど変化しなくなるためである。
trq=K×ψ×Ia ・・・(7)
図9に示すように、最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、回転角センサ14から電気角θeを取得し、回転数Nを演算する。また、第1の電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得する。
S105では、切替判定部26にて、d軸電圧指令値vd*として第1のd軸電圧指令値vd*_1を選択し、q軸電圧指令値vq*として第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する。
S108では、出力トルクに異常が生じている旨の情報を車両制御回路9へ出力し、電動機制御装置10による制御を停止する(システム停止)。なお、システム停止に限らず、バックアップ制御に移行する等の措置を講じるようにしてもよい。
S111では、PWM信号生成部28にて、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*をインバータ入力電圧VHに基づいてPWM変調してPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを算出し、インバータ12へ出力する。
電動機制御装置10の制御部15では、以下の処理が実行される。交流電動機2のいずれか1相(本実施形態ではW相)であるセンサ相に設けられる第1の電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得する(図9中のS101)。また、交流電動機2の回転角を検出する回転角センサ14から電気角θeを取得する(S101)。
電流推定部24では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する(S102)。本実施形態では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。また、電圧指令値演算部25では、交流電動機2の駆動に係るd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*、並びに、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに基づき、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する(S104)。
トルク異常監視部41では、制御モードがFF制御モードである場合、すなわち回転数Nが切替判定閾値A以下である場合(S103:YES)、W相電流検出値iw_snsに基づき、交流電動機2から出力される出力トルクを監視する。
これにより、交流電動機2の回転数Nが小さい低回転域においてもFF制御にて安定して駆動可能でありつつ、出力トルクを監視し、機能安全性を確保することができる。
第2実施形態〜第5実施形態は、トルク異常監視部が上記実施形態と異なっているので、この点を中心に説明する。
本発明の第2実施形態による制御部15を図10に示す。本実施形態のトルク異常監視部42では、W相電流検出値iw_snsの振幅Iaを演算する。そして、第2の正常判定範囲を閾値E11以上閾値E12以下である場合とし、振幅Iaが閾値E11以上閾値E12以下である場合、出力トルクは正常であるとみなす。また、振幅Iaが閾値E11より小さい場合、または、閾値E12より大きい場合、出力トルクに異常が生じていると判定する。本実施形態では、振幅Iaが閾値E11より小さい場合、または、閾値E12より大きい場合が、「振幅Iaが第2の正常判定範囲外である」とする。
iw_sns=Ia×sin(θe+240°+φ) ・・・(8.1)
iw_sns=Ia×sin(θe+C+φ) ・・・(8.2)
ただし、式中のCは電気角θeの基準軸とセンサ相軸との位相に応じた定数である。本実施形態では、電気角θeは、U相軸を基準としてU相軸と+d軸とがなす角度であり、0[°]から反時計回り方向に定義される。また、W相軸は、U相軸に対し、電気角として240[°]ずれているので、本実施形態の定数Cは240[°]である。
iw_ref=1×sin(θe+240°+φ*) ・・・(9.1)
式(8.2)と同様、基準軸の取り方を特定せず、式(9.1)を一般化すると、式(9.2)のようになる。
iw_ref=1×sin(θe+C+φ*) ・・・(9.2)
Ia=iw_sns/iw_ref ・・・(10)
このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
また、上記実施形態では、実質的に、W相電流検出値iw_snsのピーク付近にて出力トルク異常を検出することになるが、本実施形態では、W相電流検出値iw_snsのゼロクロス範囲を除く角度範囲にて出力トルク異常を検出することができる。また、本実施形態では、出力トルクが過大である場合だけでなく、過小である場合についても判定可能である。
本実施形態では、トルク異常監視部42が「トルク異常監視手段」を構成する。
本発明の第3実施形態による制御部15を図11に示す。
本実施形態の制御部15は、上記実施形態に加え、3相電流指令値演算部35を有する。
3相電流指令値演算部35では、電気角θeに基づく逆dq変換により、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を、W相電流指令値iw*に変換する。W相電流指令値iw*は、トルク異常監視部43に出力される。
このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、トルク異常監視部43が「トルク異常監視手段」を構成する。また、W相電流指令値iw*が「センサ相電流指令値」に対応する。
本発明の第4実施形態は、第3実施形態の変形例である。本実施形態による制御部15を図13に示す。
本実施形態では、W相誤差iw_errの絶対値に基づく出力トルク異常判定に係る第1の異常判定閾値E21を可変としている。
電流指令ベクトルi*の位相φ*と電流ベクトルiの位相φとが略等しいとすれば、W相誤差iw_errは、W相電流検出値iw_snsのピーク時に最大となり、ゼロクロス時にゼロとなる。この点を考慮し、本実施形態では、電流指令ベクトルの位相角(θe+C+φ*)に応じて、第1の異常判定閾値E21を可変としている。本実施形態における第1の異常判定閾値E21を式(11.1)に示す。式中のEpは、W相電流検出値iw_snsのピーク時における第2の異常判定閾値(最大値)であり、第3実施形態の第1の異常判定閾値E20に対応する値であるともいえる。
E21=Ep×|sin(θe+240°+φ*)| ・・・(11.1)
E21=Ep×|sin(θe+C+φ*)| ・・・(11.2)
なお、誤検出を防ぐために、第2実施形態同様、W相電流検出値iw_snsまたはW相電流指令値iw*がゼロクロス範囲内である場合、出力トルク異常監視を中止することが望ましい。また、第1の異常判定閾値E21の下限値を設けることにより、ゼロクロス範囲内における誤検出を防止するようにしてもよい。
また、W相電流指令値iw*の位相角(θe+C+φ*)に替えて、W相電流検出値iw_snsの位相角(θe+C+φ)に基づいて第1の異常判定閾値E21を可変としてもよい。
また、上記第3実施形態では、実質的にW相電流検出値iw_snsのピーク付近にて出力トルク異常を検出することになるが、本実施形態では、W相電流検出値iw_snsのゼロクロス範囲を除く角度範囲にて出力トルク異常を検出することができる。
本実施形態では、トルク異常監視部44が「トルク異常監視手段」を構成する。
本発明の第5実施形態による制御部15を図14に示す。
本実施形態のトルク異常監視部45には、電圧指令基準値補正部23にて演算された第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2が入力される。
第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2は、d軸電流、q軸電流、および、電気角速度ωの関数であるといえる。そこで、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づき、例えば交流電動機の理論式を解くことにより、d軸電流換算値id_trnおよびq軸電流換算値iq_trnを演算する。また、d軸電流換算値id_trnおよびq軸電流換算値iq_trnを、電気角θeに基づく逆dq変換により、w相電流換算値iw_trnを演算する。そして、W相電流換算値iw_trnとW相電流検出値iw_snsとの差の絶対値が第2の異常判定閾値E30より大きい場合、出力トルクに異常が生じていると判定する。
なお、w相電流換算値iw_trnの演算方法は、どのようであってもよい。
このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、トルク異常監視部45が「トルク異常監視手段」を構成する。また、W相電流換算値iw_trnが「センサ相電流換算値」に対応する。
本実施形態の第6実施形態による制御部15を図15に示す。本実施形態のトルク異常監視部41は、第1実施形態と同様であるものとするが、他の実施形態のトルク異常監視部42〜45としてもよい。
本実施形態では、センサ相であるW相に、第1の電流センサ13に加え、第2の電流センサ53が設けられている。すなわち、本実施形態では、W相に電流センサが2つ設けられている、所謂「1相2チャンネル」の構成となっている。第2の電流センサ53は、第1の電流センサ13の異常を監視すべく、W相に通電される電流値である監視相電流検出値iw_mntを検出する。なお、監視相電流検出値iw_mntは、制御系からは独立しており、交流電動機2の駆動制御には用いられない。
電流センサ異常監視部50は、W相電流検出値iw_snsおよび監視相電流検出値iw_mntに基づき、第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の少なくとも一方に異常が生じているか否かを監視する。本実施形態では、1相2チャンネルの構成となっているので、W相電流検出値iw_snsと監視相電流検出値iw_mntとの差の絶対値が、電流センサ異常判定閾値Eiより大きい場合、第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の少なくとも一方に異常が生じていると判定する。
最初のS121では、回転角センサ14から電気角θeを取得し、回転数Nを演算する。また、第1の電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得し、第2の電流センサ53から監視相電流検出値iw_mntを取得する。
これにより、第1の電流センサ13および第2の電流センサ53の異常を監視することができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
また、図16中のS121が「センサ相電流取得手段」、「回転角取得手段」、「回転数演算手段」に加え、「監視相電流取得手段」を構成し、S122が「電流センサ異常監視手段」を構成する。
また、W相が「センサ相」および「監視相」に対応し、監視相電流検出値iw_mntが「監視相電流検出値」に対応する。
(ア)トルク異常監視
(I)第1実施形態では、センサ相電流検出値が正常判定範囲内か否かに基づいて出力トルク異常を監視した。(II)第2実施形態では、センサ相電流検出値の振幅に基づいて出力トルク異常を監視した。(III)第3実施形態および第4実施形態では、センサ相電流指令値とセンサ相電流検出値との差に基づいて出力トルク異常を監視した。(IV)第5実施形態では、第2の電圧指令値に対応する電流値のセンサ相成分のセンサ相電流換算値に基づいて出力トルク異常を監視した。
他の実施形態では、(I)〜(IV)の一部または全部を組み合わせて出力トルク異常を監視してもよい。また、第6実施形態における出力トルク異常監視についても同様である。
また、出力トルクとみなせる値であれば、その他の値であってもよい。
なお、例えば第1実施形態にて、閾値に幅を持たせる場合には、例えばW相電流検出値iw_snsのピークにて異常判定を行う等、誤判定を避けるように構成することが望ましい。
電流推定部における演算方法は、これに限らず、電流検出値および電気角に基づいて演算されていれば、どのような方法であってもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。また、第1の電圧指令値は、電流指令値、および、フィードバックされた電流推定値に基づいて算出されていれば、どのような方法で算出してもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。
(i)電流指令位相を用いた基準角と振幅に基づく演算
例えば、特開2004−159391号公報のように、電流指令位相角と電気角から生成したU相電流基準角(θ’)」で除して電流振幅(Ia)を算出し、この電流振幅を、U相電流基準角から±120[°]ずらした電気角におけるsin値に乗じて他の2相の電流推定値Iv、Iwを算出する(式12.1〜12.3)。
Ia=Iu/[√(1/3)×({−sin(θ’)}] ・・・(12.1)
Iv=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+120[°])}・・・(12.2)
Iw=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+240[°])}・・・(12.3)
(ii)電流指令値を用いたセンサ相基準位相に基づく演算
U相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*の少なくとも一方、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeを用い、センサ相に一致するα軸方向のα軸電流iαおよびセンサ相に直交するβ軸方向のβ軸電流iβを演算し、α軸電流iαおよびβ軸電流iβの逆正接関数(arctan)によりセンサ相基準電流位相θxを算出する。センサ相基準電流位相θxの演算式を式(13)に示す。
θx=tan-1(iβ/iα) ・・・(13)
α軸電流iαとβ軸電流iβが「sin波とcos波」の関係にあり、α軸電流iαとβ軸電流iβとの位相差が90[°]であることに着目し、α軸電流微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを演算する。ここで、制御部における演算が離散系である場合、α軸電流微分値Δiαは、実際のβ軸電流iβに対し、電気角移動量Δθeの半分だけ遅れる。この点を考慮し、α軸電流iαの前回値と今回値との平均値に電気角移動量Δθeの半分(Δθe/2)を乗じた補正量Hにて補正したβ軸電流推定値iβ_estとすることが好ましい。そして、α軸電流iαおよびβ軸電流推定値iβ_estを用いてセンサ相基準電流位相θxを演算する。以降の演算は(ii)と同様である。
回転座標系であるd−q座標上でW相軸が相対的に回転することを利用し、W相推定誤差Δiw_estを積算してd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqに漸近させる。
前回のd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_est、および今回の電気角θeに基づき、センサ相成分であるW相電流基準値iw_bfを演算し、W相電流基準値iw_bfとW相電流検出値iw_snsとの差であるW相推定誤差Δiw_estを算出する。W相推定誤差Δiw_estにフィルタ要素であるゲインKを乗じた補正後誤差KΔiw_estを算出し、Δiu=0、Δiv=0とし、dq変換によりセンサ相方向補正値id_crrおよびq軸補正値iq_crrを演算する。そして算出されたd軸補正値id_crrおよびq軸補正値iq_crrをセンサ相方向の補正ベクトルとし、当該補正ベクトルをd−q座標にて積算することにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。また、センサ相に直交する直交方向補正値をさらに演算し、センサ相方向補正値および直交方向補正値の合成ベクトルを補正ベクトルとし、当該補正ベクトルをd−q座標にて積算するようにしてもよい。
また、交流電動機の制御装置は、電動車両に適用されていたが、電動車両以外に用いてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
10・・・電動機制御装置(交流電動機の制御装置)
12・・・インバータ
13・・・第1の電流センサ
14・・・回転角センサ
15・・・制御部(センサ相電流取得手段、回転角取得手段、回転数演算手段、電流推定手段、第1の電圧指令値演算手段、電圧指令基準値演算手段、第2の電圧指令値演算手段、制御モード切替手段、トルク異常監視手段、監視相電流取得手段、電流センサ異常監視手段)
53・・・第2の電流センサ
Claims (7)
- インバータ(12)によって印加電圧が制御される3相の交流電動機(2)の駆動を制御する交流電動機の制御装置(10)であって、
前記交流電動機のいずれか1相であるセンサ相に設けられる第1の電流センサ(13)からセンサ相電流検出値を取得するセンサ相電流取得手段(15)と、
前記交流電動機の回転角を検出する回転角センサ(14)から回転角検出値を取得する回転角取得手段(15)と、
前記回転角検出値に基づき、前記交流電動機の回転数を演算する回転数演算手段(16)と、
前記センサ相電流検出値および前記回転角検出値に基づき、電流推定値を演算する電流推定手段(24)と、
前記交流電動機の駆動に係る電流指令値、および、フィードバックされる前記電流推定値に基づき、第1の電圧指令値を演算する第1の電圧指令値演算手段(25)と、
前記電流指令値に基づき、電圧指令基準値を演算する電圧指令基準値演算手段(22)と、
前記電圧指令基準値を補正し、第2の電圧指令値を演算する第2の電圧指令値演算手段(23)と、
前記回転数が所定の切替判定閾値より大きい場合、前記第1の電圧指令値に基づいて前記インバータの駆動に係る駆動信号を生成する第1の制御モードとし、前記回転数が前記切替判定閾値以下である場合、前記第2の電圧指令値に基づいて前記駆動信号を生成する第2の制御モードとする制御モード切替手段(26)と、
制御モードが前記第2の制御モードである場合、前記センサ相電流検出値に基づき、前記交流電動機から出力される出力トルクを監視するトルク異常監視手段(41〜45)と、
を備えることを特徴とする交流電動機の制御装置。 - 前記トルク異常監視手段は、前記センサ相電流検出値が第1の正常判定範囲外である場合、前記出力トルクに異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
- 前記トルク異常監視手段は、前記センサ相電流検出値の振幅が第2の正常判定範囲外である場合、前記出力トルクに異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の交流電動機の制御装置。
- 前記トルク異常監視手段は、前記電流指令値の前記センサ相の成分であるセンサ相電流指令値と前記センサ相電流検出値との差の絶対値が第1の異常判定閾値より大きい場合、前記出力トルクに異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
- 前記第1の異常判定閾値は、前記センサ相電流指令値の位相または前記センサ相電流検出値の位相に応じて可変であることを特徴とする請求項4に記載の交流電動機の制御装置。
- 前記トルク異常監視手段は、前記第2の電圧指令値に対応する電流値の前記センサ相の成分であるセンサ相電流換算値と前記センサ相電流検出値との差の絶対値が第2の異常判定閾値より大きい場合、前記出力トルクに異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
- 前記交流電動機のいずれか1相である監視相に設けられる第2の電流センサ(53)から監視相電流検出値を取得する監視相電流取得手段(15)と、
前記センサ相電流検出値および前記監視相電流検出値に基づき、前記第1の電流センサおよび前記第2の電流センサの少なくとも一方に異常が生じているか否かを監視する電流センサ異常監視手段(50)と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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