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JP2014017362A - 太陽電池を保護するための保護シートおよびその製造方法、ならびにそれを用いた太陽電池 - Google Patents

太陽電池を保護するための保護シートおよびその製造方法、ならびにそれを用いた太陽電池 Download PDF

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JP2014017362A JP2012153507A JP2012153507A JP2014017362A JP 2014017362 A JP2014017362 A JP 2014017362A JP 2012153507 A JP2012153507 A JP 2012153507A JP 2012153507 A JP2012153507 A JP 2012153507A JP 2014017362 A JP2014017362 A JP 2014017362A
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Noboru Higashida
昇 東田
Toshiyuki Ito
敏幸 伊藤
Masakazu Nakatani
正和 中谷
Takuya Tsujimoto
拓哉 辻本
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

【課題】高い耐候性と高い水蒸気バリア性とを有する新規な保護シートを提供する。
【解決手段】開示される製造方法は、太陽電池の保護シートの製造方法であり、(i)メタクリル樹脂層と熱可塑性エラストマー層との積層膜を共押出法によって形成する工程と、(ii)上記積層膜と水蒸気バリアフィルムとを積層する工程とを含む。熱可塑性エラストマーは、第1の重合体ブロックと、当該ブロックの両末端または片末端に結合した2つまたは1つの第2の重合体ブロックとを含む。第1の重合体ブロックはアクリル酸エステル単位を主体とし、第2の重合体ブロックはメタクリル酸エステル単位を主体とする。熱可塑性エラストマーにおいて(第1の重合体ブロック)/(第2の重合体ブロックの総計)の質量比は90/10〜50/50の範囲にある。熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は30,000〜200,000の範囲にある。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池を保護するための保護シートおよびその製造方法、ならびにそれを用いた太陽電池に関する。
フレキシブルな基板を用いたフレキシブルな太陽電池は、幅広い応用が期待される。太陽電池は、通常、光入射面を保護する透光性の保護部材を必要とする。フレキシブルな太陽電池の特性を生かすには、フレキシブルな保護部材を用いる必要がある。そのような保護部材として、太陽電池用のフレキシブルな保護部材が従来から提案されている(特許文献1および2)。特許文献1には、CVD法によって形成されたケイ素酸化物の蒸着膜と、反応性イオンクラスタービーム法によって形成されたケイ素酸化物の蒸着膜とを、フッ素系樹脂フィルム上に積層した保護フィルムが開示されている。また、特許文献2には、プラスチックフィルムと、その上に積層された第1の無機層、有機層、および第2の無機層とを含む保護シートが開示されている。
太陽電池を保護する際には、水蒸気のバリア性が重要である。水蒸気のバリア性を有するバリア層の一例が、特許文献3に開示されている。
特開2011−014559号公報 特開2012−015294号公報 国際公開WO2011/122036号
太陽電池を保護する保護シートには、高い耐候性と高い水蒸気バリア性とが求められる。しかし、それらの両方を実現するためには、性質が異なる複数の層を積層する必要があり、製造方法が煩雑になりやすい。このような状況において、本発明の目的の1つは、高い耐候性と高い水蒸気バリア性とを有する新規な保護シート、およびそれを容易に製造できる製造方法を提供することである。
上記目的を達成するため、太陽電池の表面を保護するための保護シートを製造するための本発明の方法は、(i)メタクリル樹脂層と熱可塑性エラストマー層との積層膜を共押出法によって形成する工程と、(ii)前記熱可塑性エラストマー層が水蒸気バリアフィルムと前記メタクリル樹脂層との間に配置されるように、前記積層膜と前記水蒸気バリアフィルムとを積層する工程とを含み、前記熱可塑性エラストマー層を構成する熱可塑性エラストマーが、第1の重合体ブロックと、前記第1の重合体ブロックの両末端または片末端に結合した2つまたは1つの第2の重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、前記第1の重合体ブロックが、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、前記第2の重合体ブロックが、メタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、前記熱可塑性エラストマーにおいて、(前記第1の重合体ブロック)/(前記第2の重合体ブロックの総計)の質量比が、10/90〜50/50の範囲にあり、前記熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が30,000〜200,000の範囲にある。
また、本発明の保護シートは、太陽電池の表面を保護するための保護シートであって、メタクリル樹脂層と熱可塑性エラストマー層とが積層された共押出フィルムと、水蒸気バリアフィルムとを含み、前記熱可塑性エラストマー層が前記水蒸気バリアフィルムと前記メタクリル樹脂層との間に配置されるように前記共押出フィルムと前記水蒸気バリアフィルムとが積層されており、前記熱可塑性エラストマー層を構成する熱可塑性エラストマーが、第1の重合体ブロックと、前記第1の重合体ブロックの両末端または片末端に結合した2つまたは1つの第2の重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、前記第1の重合体ブロックが、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、前記第2の重合体ブロックが、メタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、前記熱可塑性エラストマーにおいて、(前記第1の重合体ブロック)/(前記第2の重合体ブロックの総計)の質量比が、90/10〜50/50の範囲にあり、前記熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が30,000〜200,000の範囲にある。
また、本発明の太陽電池は、表面を保護する保護シートを備える太陽電池であって、前記保護シートが、本発明の保護シートであり、前記保護シートにおいて、前記メタクリル樹脂層が前記水蒸気バリアフィルムよりも外側に配置されている。
本発明によれば、高い耐候性と高い水蒸気バリア性とを有する保護シートが得られる。この保護シートを用いることによって、耐久性が高い太陽電池が得られる。本発明の保護シートはフレキシブルなものとすることができるため、フレキシブルな太陽電池を保護する保護シートとして好適に用いることができる。本発明の製造方法によれば、高い耐候性と高い水蒸気バリア性とを有する保護シートを容易に製造できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において具体的な材料や数値を例示する場合があるが、本発明はそのような材料や数値に限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、1種を単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。なお、この明細書において「ガスバリア性」とは、特に説明がない限り、水蒸気以外のガス(たとえば酸素ガス)をバリアする性能を意味する。また、この明細書において、水蒸気バリア性とガスバリア性を合わせて「バリア性」と称することがある。
[保護シート]
本発明の保護シートは、太陽電池の表面を保護するための保護シートである。この保護シートは、メタクリル樹脂層と熱可塑性エラストマー層とが積層された共押出フィルムと、水蒸気バリアフィルムとを含む。熱可塑性エラストマー層が水蒸気バリアフィルムとメタクリル樹脂層との間に配置されるように、共押出フィルムと水蒸気バリアフィルムとが積層されている。換言すれば、水蒸気バリアフィルム、熱可塑性エラストマー層、およびメタクリル樹脂層は、この順に積層されている。熱可塑性エラストマー層は、水蒸気バリアフィルムとメタクリル樹脂層とを接着する接着層としての機能を有する。以下では、当該水蒸気バリアフィルムを、水蒸気バリアフィルム(F)という場合がある。
共押出フィルムと水蒸気バリアフィルム(F)とは、熱ラミネート法によって積層されていてもよい。この方法によれば、広く行われているウレタン系接着剤を用いたドライラミネートに比べて、耐候性に優れる保護シートが得られる。
水蒸気バリアフィルム(F)は、太陽電池の保護シートに求められる水蒸気バリア性を達成できるものであればよい。水蒸気バリアフィルム(F)を含む保護シートによって達成できる水蒸気バリア性については後述する。
水蒸気バリアフィルム(F)は、基材と基材上に形成された水蒸気バリア層とを含む。以下では、当該基材を「基材(X)」という場合がある。水蒸気バリア層は、基材(X)の片面のみに積層されていてもよいし、基材(X)の両面に積層されていてもよい。
本発明の保護シートは、典型的には透光性を有する保護シートである。保護シートを構成する基材(X)および各層を、透光性を有する材料で形成することによって、透光性を有する保護シートが得られる。なお、光吸収が大きい材料からなる層であっても、層の厚さを薄くすることによって充分な透光性を達成できる場合がある。
水蒸気バリア層として、アルミニウムなどの金属のコーティング膜が知られている。しかし、太陽電池に適用する場合の水蒸気バリア層としては、電流がリークするなどの恐れがない点から、シリカやアルミナなどの絶縁性の無機酸化物のコーティング膜が好ましく用いられる。より具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素などが用いられる。このようなコーティング膜を形成するための公知の方法としては、蒸着法(たとえば物理気相蒸着法(PVD)や化学気相蒸着法(CVD)など)やウェットコーティング法などがあるが、いずれの方法を用いてもよい。
なお、共押出フィルム上に無機蒸着層を形成してもよい。その場合には、無機蒸着層が形成された共押出フィルムと基材(X)とを積層する。
また、水蒸気バリア層は、以下で説明する反応生成物(R)を含む層であってもよい。以下では、反応生成物(R)を含む水蒸気バリア層を、「層(Y)」という場合がある。また、基材(X)と基材(X)に積層された層(Y)とを含む水蒸気バリアフィルム(F)を、「多層構造体」という場合がある。この多層構造体について、以下に説明する。
[多層構造体(水蒸気バリアフィルム(F)の一例)]
本発明の多層構造体は、基材(X)と当該基材(X)に積層された層(Y)とを有する。層(Y)は、反応生成物(R)を含み、前記反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物であり、800〜1400cm-1の範囲における当該層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいて赤外線吸収が最大となる波数(n1)が1080〜1130cm-1の範囲にある。当該波数(n1)を、以下では、「最大吸収波数(n1)」という場合がある。金属酸化物(A)は、通常、金属酸化物(A)の粒子の形態でリン化合物(B)と反応する。
本発明において、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)は、実質的にアルミニウム原子である。ここで、「実質的にアルミニウム原子である」とは、アルミニウム以外の他の金属原子の含有率が、当該他の金属原子が層(Y)の特性に与える影響を無視できる程度の量であることを意味する。金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)に占めるアルミニウム金属原子の割合は、通常90モル%以上であり、たとえば95モル%以上や98モル%以上や99モル%以上や100モル%である。
また、層(Y)は、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子を介して結合された構造を有する。リン原子を介して結合している形態には、リン原子を含む原子団を介して結合している形態が含まれ、たとえば、リン原子を含み金属原子を含まない原子団を介して結合している形態が含まれる。
層(Y)において、金属酸化物(A)の粒子同士を結合させている金属原子であって金属酸化物(A)に由来しない金属原子のモル数は、金属酸化物(A)の粒子同士を結合させているリン原子のモル数の0〜1倍の範囲(たとえば0〜0.9倍の範囲)にあることが好ましく、たとえば、0.3倍以下、0.05倍以下、0.01倍以下、または0倍であってもよい。
本発明の多層構造体が有する層(Y)は、反応に関与していない金属酸化物(A)および/またはリン化合物(B)を、部分的に含んでいてもよい。
一般に、金属化合物とリン化合物とが反応して金属化合物を構成する金属原子(M)とリン化合物に由来するリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合したM−O−Pで表される結合が生成すると、赤外線吸収スペクトルにおいて特性ピークが生じる。ここで当該特性ピークはその結合の周囲の環境や構造などによって特定の波数に吸収ピークを示す。国際公開WO2011/122036号に開示されているように、M−O−Pの結合に基づく吸収ピークが1080〜1130cm-1の範囲に位置する場合には、得られる多層構造体において優れたバリア性が発現されることが分かった。特に、当該吸収ピークが、一般に各種の原子と酸素原子との結合に由来する吸収が見られる800〜1400cm-1の領域において最大吸収波数の吸収ピークとして現れる場合には、得られる多層構造体においてさらに優れたバリア性が発現されることが分かった。
なお本発明を何ら限定するものではないが、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子を介し、かつ、金属酸化物(A)に由来しない金属原子を介さずに結合され、そして金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)とリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合したM−O−Pで表される結合が生成すると、金属酸化物(A)の粒子の表面という比較的定まった環境に起因して、当該層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいて、M−O−Pの結合に基づく吸収ピークが、1080〜1130cm-1の範囲に800〜1400cm-1の領域における最大吸収波数の吸収ピークとして現れるものと考えられる。
これに対し、金属アルコキシドや金属塩等の金属酸化物を形成していない金属化合物とリン化合物(B)とを予め混合した後に加水分解縮合させた場合には、金属化合物に由来する金属原子とリン化合物(B)に由来するリン原子とがほぼ均一に混ざり合い反応した複合体が得られ、赤外線吸収スペクトルにおいて、800〜1400cm-1の範囲における最大吸収波数(n1)が1080〜1130cm-1の範囲から外れるようになる。
上記最大吸収波数(n1)は、バリア性により優れる多層構造体となることから、1085〜1120cm-1の範囲にあることが好ましく、1090〜1110cm-1の範囲にあることがより好ましい。
層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいては、2500〜4000cm-1の範囲に様々な原子に結合した水酸基の伸縮振動の吸収が見られることがある。この範囲に吸収が見られる水酸基の例としては、金属酸化物(A)部分の表面に存在しM−OHの形態を有する水酸基、リン化合物(B)に由来するリン原子(P)に結合してP−OHの形態を有する水酸基、後述する重合体(C)に由来するC−OHの形態を有する水酸基などが挙げられる。層(Y)中に存在する水酸基の量は、2500〜4000cm-1の範囲における水酸基の伸縮振動に基づく最大吸収の波数(n2)における吸光度(A2)と関連づけることができる。ここで、波数(n2)は、2500〜4000cm-1の範囲における層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいて水酸基の伸縮振動に基づく赤外線吸収が最大となる波数である。以下では、波数(n2)を、「最大吸収波数(n2)」という場合がある。
層(Y)中に存在する水酸基の量が多いほど、水酸基が水分子の透過経路となって水蒸気バリア性が低下する傾向がある。また、層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいて、上記最大吸収波数(n1)における吸光度(A1)と上記吸光度(A2)との比率[吸光度(A2)/吸光度(A1)]が小さいほど、金属酸化物(A)の粒子同士がリン化合物(B)に由来するリン原子を介して効果的に結合されていると考えられる。そのため当該比率[吸光度(A2)/吸光度(A1)]は、得られる多層構造体のガスバリア性および水蒸気バリア性を高度に発現させる観点から、0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。層(Y)が上記のような比率[吸光度(A2)/吸光度(A1)]を有する多層構造体は、後述する金属酸化物(A)を構成する金属原子のモル数(NM)とリン化合物(B)に由来するリン原子のモル数(NP)との比率や熱処理条件などを調整することによって得ることができる。なお、特に限定されるわけではないが、後述する層(Y)の前駆体層の赤外線吸収スペクトルにおいては、800〜1400cm-1の範囲における最大吸光度(A1’)と、2500〜4000cm-1の範囲における水酸基の伸縮振動に基づく最大吸光度(A2’)とが、吸光度(A2’)/吸光度(A1’)>0.2の関係を満たす場合がある。
層(Y)の赤外線吸収スペクトルにおいて、上記最大吸収波数(n1)に極大を有する吸収ピークの半値幅は、得られる多層構造体のガスバリア性および水蒸気バリア性の観点から200cm-1以下であることが好ましく、150cm-1以下であることがより好ましく、130cm-1以下であることがより好ましく、110cm-1以下であることがより好ましく、100cm-1以下であることがさらに好ましく、50cm-1以下であることが特に好ましい。本発明を何ら限定するものではないが、金属酸化物(A)の粒子同士がリン原子を介して結合する際、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子を介し、かつ金属酸化物(A)に由来しない金属原子を介さずに結合され、そして金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)とリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合したM−O−Pで表される結合が生成すると、金属酸化物(A)の粒子の表面という比較的定まった環境に起因して、最大吸収波数(n1)に極大を有する吸収ピークの半値幅が上記範囲になると考えられる。なお、本明細書において最大吸収波数(n1)の吸収ピークの半値幅は、当該吸収ピークにおいて吸光度(A1)の半分の吸光度(吸光度(A1)/2)を有する2点の波数を求めその差を算出することにより得ることができる。
上記した層(Y)の赤外線吸収スペクトルは、ATR法(全反射測定法)で測定するか、または、多層構造体から層(Y)をかきとり、その赤外線吸収スペクトルをKBr法で測定することによって得ることができる。
層(Y)は、一例において、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子を介し、かつ金属酸化物(A)に由来しない金属原子を介さずに結合された構造を、層(Y)は有する。すなわち、金属酸化物(A)の粒子同士は金属酸化物(A)に由来する金属原子を介して結合されていてもよいが、それ以外の金属原子を介さずに結合された構造を有する。ここで、「リン化合物(B)に由来するリン原子を介し、かつ金属酸化物(A)に由来しない金属原子を介さずに結合された構造」とは、結合される金属酸化物(A)の粒子間の結合の主鎖が、リン化合物(B)に由来するリン原子を有し、かつ金属酸化物(A)に由来しない金属原子を有さない構造を意味しており、当該結合の側鎖に金属原子を有する構造も包含する。ただし、層(Y)は、金属酸化物(A)の粒子同士が、リン化合物(B)に由来するリン原子と金属原子の両方を介して結合された構造(結合される金属酸化物(A)の粒子間の結合の主鎖が、リン化合物(B)に由来するリン原子と金属原子の両方を有する構造)を一部有していてもよい。
層(Y)において、金属酸化物(A)の各粒子とリン原子との結合形態としては、例えば、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)とリン原子(P)とが酸素原子(O)を介して結合された形態を挙げることができる。金属酸化物(A)の粒子同士は1分子のリン化合物(B)に由来するリン原子(P)を介して結合していてもよいが、2分子以上のリン化合物(B)に由来するリン原子(P)を介して結合していてもよい。結合している2つの金属酸化物(A)の粒子間の具体的な結合形態としては、結合している一方の金属酸化物(A)の粒子を構成する金属原子を(Mα)と表し、他方の金属酸化物(A)の粒子を構成する金属原子を(Mβ)と表すと、例えば、(Mα)−O−P−O−(Mβ)の結合形態;(Mα)−O−P−[O−P]n−O−(Mβ)の結合形態;(Mα)−O−P−Z−P−O−(Mβ)の結合形態;(Mα)−O−P−Z−P−[O−P−Z−P]n−O−(Mβ)の結合形態などが挙げられる。なお上記結合形態の例において、nは1以上の整数を表し、Zはリン化合物(B)が分子中に2つ以上のリン原子を有する場合における2つのリン原子間に存在する構成原子群を表し、リン原子に結合しているその他の置換基の記載は省略している。層(Y)において、1つの金属酸化物(A)の粒子は複数の他の金属酸化物(A)の粒子と結合していることが、得られる多層構造体のバリア性の観点から好ましい。
[金属酸化物(A)]
上述したように、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)は、実質的にアルミニウム原子である。アルミニウム以外の金属原子(M)の例には、マグネシウム、カルシウム等の周期表第2族の金属;亜鉛等の周期表第12族の金属;アルミニウム等の周期表第13族の金属;ケイ素等の周期表第14族の金属;チタン、ジルコニウム等の遷移金属などを挙げることができる。なおケイ素は半金属に分類される場合があるが、本明細書ではケイ素を金属に含めるものとする。金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。これらの中でも、アルミニウム原子以外の金属原子(M)としては、チタンおよびジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
金属酸化物(A)としては、液相合成法、気相合成法、固体粉砕法などの方法により製造されたものを使用することができるが、得られる金属酸化物(A)の形状や大きさの制御性や製造効率などを考慮すると、液相合成法により製造されたものが好ましい。
液相合成法においては、加水分解可能な特性基が結合した金属原子(M)を含有する化合物(L)を原料として用いてこれを加水分解縮合させることで、化合物(L)の加水分解縮合物として金属酸化物(A)を合成することができる。すなわち、金属酸化物(A)は、当該化合物(L)の加水分解縮合物であってもよい。また化合物(L)の加水分解縮合物を液相合成法で製造するにあたっては、原料として化合物(L)そのものを用いる方法以外にも、化合物(L)が部分的に加水分解してなる化合物(L)の部分加水分解物、化合物(L)が完全に加水分解してなる化合物(L)の完全加水分解物、化合物(L)が部分的に加水分解縮合してなる化合物(L)の部分加水分解縮合物、化合物(L)の完全加水分解物の一部が縮合したもの、あるいはこれらのうちの2種以上の混合物を原料として用いてこれを縮合または加水分解縮合させることによっても金属酸化物(A)を製造することができる。このようにして得られる金属酸化物(A)も、本明細書では「化合物(L)の加水分解縮合物」ということとする。上記の加水分解可能な特性基(官能基)の種類に特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、アルコキシ基、アシロキシ基、ジアシルメチル基、ニトロ基等が挙げられるが、反応の制御性に優れることから、ハロゲン原子またはアルコキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
化合物(L)は、反応の制御が容易で、得られる多層構造体のバリア性が優れることから、以下の式(I)で示される少なくとも1種の化合物(L1)を含むことが好ましい。
AlX1 m1 (3-m) (I)
[式(I)中、X1は、F、Cl、Br、I、R2O−、R3C(=O)O−、(R4C(=O))2CH−およびNO3からなる群より選ばれる。R1、R2、R3およびR4はそれぞれ、アルキル基、アラルキル基、アリール基およびアルケニル基からなる群より選ばれる。式(I)において、複数のX1が存在する場合には、それらのX1は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。式(I)において、複数のR1が存在する場合には、それらのR1は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。式(I)において、複数のR2が存在する場合には、それらのR2は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。式(I)において、複数のR3が存在する場合には、それらのR3は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。式(I)において、複数のR4が存在する場合には、それらのR4は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。mは1〜3の整数を表す。]
1、R2、R3およびR4が表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。R1、R2、R3およびR4が表すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基等が挙げられる。R1、R2、R3およびR4が表すアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等が挙げられる。R1、R2、R3およびR4が表すアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。R1は、例えば、炭素数が1〜10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基であることがより好ましい。X1は、F、Cl、Br、I、R2O−であることが好ましい。化合物(L1)の好ましい一例では、X1がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)または炭素数が1〜4のアルコキシ基(R2O−)であり、mは3である。化合物(L1)の一例では、X1がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)または炭素数が1〜4のアルコキシ基(R2O−)であり、mは3である。
化合物(L1)の具体例としては、例えば、塩化アルミニウム、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリノルマルプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリノルマルブトキシド、アルミニウムトリs−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトキシド、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムアセチルアセトネート、硝酸アルミニウム等のアルミニウム化合物が挙げられる。これらの中でも、化合物(L1)としては、アルミニウムトリイソプロポキシドおよびアルミニウムトリs−ブトキシドから選ばれる少なくとも1つの化合物が好ましい。化合物(L1)は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、化合物(L1)以外の化合物(L)としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、例えばチタン、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ケイ素等の金属原子に、上述の加水分解可能な特性基が結合した化合物などが挙げられる。なお、ケイ素は半金属に分類される場合があるが、本明細書ではケイ素を金属に含めるものとする。これらの中でも、得られる多層構造体がガスバリア性に優れることから、化合物(L1)以外の化合物(L)としては、金属原子としてチタンまたはジルコニウムを有する化合物が好ましい。化合物(L1)以外の化合物(L)の具体例としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ(2−エチルヘキソキシド)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンアセチルアセトネート等のチタン化合物;ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等のジルコニウム化合物が挙げられる。
本発明の効果が得られる限り、化合物(L)に占める化合物(L1)の割合に特に限定はない。化合物(L1)以外の化合物が化合物(L)に占める割合は、例えば、20モル%以下や10モル%以下や5モル%以下や0モル%である。一例では、化合物(L)は化合物(L1)のみからなる。
化合物(L)が加水分解されることによって、化合物(L)が有する加水分解可能な特性基の少なくとも一部が水酸基に置換される。さらに、その加水分解物が縮合することによって、金属原子(M)が酸素原子(O)を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物が形成される。なお、このようにして形成された金属酸化物(A)の表面には、通常、水酸基が存在する。この明細書では、化合物(L)の加水分解縮合物を「金属酸化物(A)」という場合がある。すなわち、この明細書において、「金属化合物(A)」を「化合物(L)の加水分解縮合物」と読み替えることが可能であり、「化合物(L)の加水分解縮合物」を「金属酸化物(A)」と読み替えることが可能である。
本明細書においては、金属原子(M)のモル数に対する、M−O−Mで表される構造における酸素原子(O)のように、金属原子(M)のみに結合している酸素原子(例えば、M−O−Hで表される構造における酸素原子(O)のように金属原子(M)と水素原子(H)に結合している酸素原子は除外する)のモル数の割合([金属原子(M)のみに結合している酸素原子(O)のモル数]/[金属原子(M)のモル数])が0.8以上となる化合物を金属酸化物(A)に含めるものとする。金属酸化物(A)は、上記割合が0.9以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.1以上であることがさらに好ましい。上記割合の上限は特に限定されないが、金属原子(M)の原子価をnとすると、通常、n/2で表される。
上記の加水分解縮合が起こるためには、化合物(L)が加水分解可能な特性基(官能基)を有していることが重要である。それらの基が結合していない場合、加水分解縮合反応が起こらないか極めて緩慢になるため、目的とする金属酸化物(A)の調製が困難になる。
加水分解縮合物は、例えば、公知のゾルゲル法で採用される手法により特定の原料から製造することができる。当該原料には、化合物(L)、化合物(L)の部分加水分解物、化合物(L)の完全加水分解物、化合物(L)の部分加水分解縮合物、および化合物(L)の完全加水分解物の一部が縮合したものからなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「化合物(L)系成分」と称する場合がある)を用いることができる。これらの原料は、公知の方法で製造してもよいし、市販されているものを用いてもよい。特に限定はないが、例えば、2〜10個程度の化合物(L)が加水分解縮合することによって得られる縮合物を原料として用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウムトリイソプロポキシドを加水分解縮合させて2〜10量体の縮合物としたものを原料の一部として用いることができる。
化合物(L)の加水分解縮合物において縮合される分子の数は、化合物(L)系成分を縮合または加水分解縮合する際の条件によって制御することができる。例えば、縮合される分子の数は、水の量、触媒の種類や濃度、縮合または加水分解縮合する際の温度や時間などによって制御することができる。
上記したように、層(Y)は、反応生成物(R)を含み、前記反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物である。このような反応生成物や構造は金属酸化物(A)とリン化合物(B)とを混合し反応させることにより形成することができる。リン化合物(B)との混合に供される(混合される直前の)金属酸化物(A)は、金属酸化物(A)そのものであってもよいし、金属酸化物(A)を含む組成物の形態であってもよい。好ましい一例では、金属酸化物(A)を溶媒に溶解または分散することによって得られた液体(溶液または分散液)の形態で、金属酸化物(A)がリン化合物(B)と混合される。
金属酸化物(A)の溶液または分散液を製造するための方法としては、国際公開WO2011/122036号に開示されている方法を適用することができる。金属酸化物(A)が酸化アルミニウム(アルミナ)である場合には、好ましいアルミナの分散液は、アルミニウムアルコキシドを必要に応じて酸触媒でpH調整した水溶液中で加水分解縮合してアルミナのスラリーとし、これを特定量の酸の存在下に解膠することにより得ることができる。
[リン化合物(B)]
リン化合物(B)は、金属酸化物(A)と反応可能な部位を含有し、典型的には、そのような部位を複数含有する。好ましい一例では、リン化合物(B)は、そのような部位(原子団または官能基)を2〜20個含有する。そのような部位の例には、金属酸化物(A)の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)と反応可能な部位が含まれる。たとえば、そのような部位の例には、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子が含まれる。それらのハロゲン原子や酸素原子は、金属酸化物(A)の表面に存在する水酸基と縮合反応(加水分解縮合反応)を起こすことができる。金属酸化物(A)の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)は、通常、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)に結合している。
リン化合物(B)としては、例えば、ハロゲン原子または酸素原子がリン原子に直接結合した構造を有するものを用いることができ、このようなリン化合物(B)を用いることにより金属酸化物(A)の表面に存在する水酸基と(加水分解)縮合することで結合することができる。リン化合物(B)は、1つのリン原子を有するものであってもよいし、2つ以上のリン原子を有するものであってもよい。
リン化合物(B)は、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。ポリリン酸の具体例としては、ピロリン酸、三リン酸、4つ以上のリン酸が縮合したポリリン酸などが挙げられる。上記の誘導体の例としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸の、塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物(塩化物等)、脱水物(五酸化ニリン等)などが挙げられる。また、ホスホン酸の誘導体の例には、ホスホン酸(H−P(=O)(OH)2)のリン原子に直接結合した水素原子が種々の官能基を有していてもよいアルキル基に置換されている化合物(例えば、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)等)や、その塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物および脱水物も含まれる。さらに、リン酸化でんぷんなど、リン原子を有する有機高分子も、前記リン化合物(B)として使用することができる。これらのリン化合物(B)は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのリン化合物(B)の中でも、後述するコーティング液(U)を用いて層(Y)を形成する場合におけるコーティング液(U)の安定性と得られる多層構造体のバリア性がより優れることから、リン酸を単独で使用するか、またはリン酸とそれ以外のリン化合物とを併用することが好ましい。
上記したように、前記層(Y)は反応生成物(R)を含み、前記反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物である。このような反応生成物や構造は金属酸化物(A)とリン化合物(B)とを混合し反応させることにより形成することができる。金属酸化物(A)との混合に供される(混合される直前の)リン化合物(B)は、リン化合物(B)そのものであってもよいしリン化合物(B)を含む組成物の形態であってもよく、リン化合物(B)を含む組成物の形態が好ましい。好ましい一例では、リン化合物(B)を溶媒に溶解することによって得られる溶液の形態で、リン化合物(B)が金属酸化物(A)と混合される。その際の溶媒は任意のものが使用できるが、水または水を含む混合溶媒が好ましい溶媒として挙げられる。
[反応生成物(R)]
反応生成物(R)には、金属酸化物(A)およびリン化合物(B)のみが反応することによって生成される反応生成物が含まれる。また、反応生成物(R)には、金属酸化物(A)とリン化合物(B)とさらに他の化合物とが反応することによって生成される反応生成物も含まれる。反応生成物(R)は、後述する製造方法で説明する方法によって形成できる。
[金属酸化物(A)とリン化合物(B)との比率]
層(Y)において、金属酸化物(A)を構成する金属原子(M)のモル数(NM)とリン化合物(B)に由来するリン原子のモル数(NP)との比率について、0.8≦モル数(NM)/モル数(NP)≦4.5の関係を満たすことが好ましく、1.0≦モル数(NM)/モル数(NP)≦3.6の関係を満たすことがより好ましく、1.1≦モル数(NM)/モル数(NP)≦3.0の関係を満たすことがさらに好ましい。モル数(NM)/モル数(NP)の値が4.5を超えると、金属酸化物(A)がリン化合物(B)に対して過剰となり、金属酸化物(A)の粒子同士の結合が不充分となり、また、金属酸化物(A)の表面に存在する水酸基の量が多くなるため、バリア性とその信頼性が低下する傾向がある。一方、モル数(NM)/モル数(NP)の値が0.8未満であると、リン化合物(B)が金属酸化物(A)に対して過剰となり、金属酸化物(A)との結合に関与しない余剰なリン化合物(B)が多くなり、また、リン化合物(B)由来の水酸基の量が多くなりやすく、やはりバリア性とその信頼性が低下する傾向がある。
なお、上記比は、層(Y)を形成するためのコーティング液における、金属酸化物(A)の量とリン化合物(B)の量との比によって調整できる。層(Y)におけるモル数(NM)とモル数(NP)との比は、通常、コーティング液における比であって金属酸化物(A)を構成する金属原子のモル数とリン化合物(B)を構成するリン原子のモル数との比と同じである。
[重合体(C)]
層(Y)は、特定の重合体(C)をさらに含んでもよい。重合体(C)は、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(f)を有する重合体である。なお、本明細書において、リン化合物(B)としての要件を満たす重合体であって官能基(f)を含む重合体は、重合体(C)には含めずにリン化合物(B)として扱う。
水酸基を有する重合体(C)の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷん等の多糖類、多糖類から誘導される多糖類誘導体などが挙げられる。カルボキシル基、カルボン酸無水物基またはカルボキシル基の塩を有する重合体(C)の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸/メタクリル酸)およびそれらの塩などを挙げることができる。また、官能基(f)を含有しない構成単位を含む重合体(C)の具体例としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のけん化物などが挙げられる。より優れたバリア性および耐熱水性を有する多層構造体を得るために、重合体(C)は、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸、およびポリメタクリル酸の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。
重合体(C)の分子量に特に制限はない。より優れたバリア性および力学的物性(落下衝撃強さ等)を有する多層構造体を得るために、重合体(C)の数平均分子量は、5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。重合体(C)の数平均分子量の上限は特に限定されず、例えば、1,500,000以下である。
バリア性をより向上させるために、層(Y)における重合体(C)の含有率は、層(Y)の質量を基準(100質量%)として、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であってもよい。重合体(C)は、層(Y)中の他の成分と反応していてもよいし、反応していなくてもよい。なお、本明細書では、重合体(C)が他の成分と反応している場合も、重合体(C)と表現する。たとえば、重合体(C)が、金属酸化物(A)、および/または、リン化合物(B)に由来するリン原子と結合している場合も、重合体(C)と表現する。この場合、上記の重合体(C)の含有率は、金属酸化物(A)および/またはリン原子と結合する前の重合体(C)の質量を層(Y)の質量で除して算出する。
層(Y)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物(R)(ただし、重合体(C)部分を有するものを含む)のみから構成されていてもよいし、当該反応生成物(R)と、反応していない重合体(C)のみから構成されていてもよいが、その他の成分をさらに含んでいてもよい。
上記の他の成分としては、例えば、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩等の無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸金属塩;アセチルアセトナート金属錯体(アルミニウムアセチルアセトナート等)、シクロペンタジエニル金属錯体(チタノセン等)、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物;架橋剤;重合体(C)以外の高分子化合物;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;難燃剤などが挙げられる。
層(Y)における上記の他の成分の含有率は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、0質量%(他の成分を含まない)であってもよい。
[層(Y)の厚さ]
本発明の多層構造体が有する層(Y)の厚さ(多層構造体が2層以上の層(Y)を有する場合には各層(Y)の厚さの合計)は、4.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましく、0.9μm以下であることが特に好ましい。層(Y)を薄くすることによって、印刷、ラミネート等の加工時における多層構造体の寸法変化を低く抑えることができ、さらに多層構造体の柔軟性が増し、その力学的特性を、基材自体の力学的特性に近づけることができる。
層(Y)の厚さ(多層構造体が2層以上の層(Y)を有する場合には各層(Y)の厚さの合計)は、0.1μm以上(例えば0.2μm以上)であることが好ましい。なお、層(Y)1層当たりの厚さは、本発明の多層構造体のバリア性がより良好になる観点から、0.05μm以上(例えば0.15μm以上)であることが好ましい。層(Y)の厚さは、層(Y)の形成に用いられる後述するコーティング液(U)の濃度や、その塗布方法によって制御することができる。
上記多層構造体を用いることによって、保護シートの水蒸気バリア性を高めることが可能である。上記多層構造体は、3%歪み時における張力が2000N/m以上の基材(X)を用いることによって、保護シートの水蒸気バリア性を特に高めることができる。具体的には、40℃、90/0%RHの条件下における透湿度を、0.05g/(m2・day)以下や0.01g/(m2・day)以下や0.005g/(m2・day)以下とすることが可能である。太陽電池の保護シートとして用いる場合、上記条件下における透湿度が0.05g/(m2・day)以下であることが好ましく、0.001g/(m2・day)以下であることがより好ましい。ここで「90/0%RH」とは多層構造体に対して一方の側の相対湿度が90%で他方の側の相対湿度が0%であることを意味する。
[基材(X)]
基材(X)は、フィルムなどの層状の基材である。基材(X)の材質に特に制限はなく、様々な材質からなる基材を用いることができる。基材(X)の材質の例には、透光性を有する熱可塑性樹脂が含まれ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネイト(PC)、ポリメタアクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリメタアクリル酸メチル/スチレン共重合体、シンジオタクチックポリスチレン、環状ポリオレフィン、環状オレフィン共重合体(COC)、ポリアセチルセルロース、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテンなどが含まれる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネイト(PC)および環状オレフィン共重合体(COC)は、高い透明性を有しながら耐熱性に優れるという点で好ましい。基材(X)は、複数の樹脂で構成されてもよい。また、基材(X)は、複数の層からなる多層膜であってもよい。
熱可塑性樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよいし無延伸フィルムであってもよい。得られる多層構造体の加工適性(印刷やラミネートなど)が優れることから、延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムは、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、およびチューブラ延伸法のいずれかの方法で製造された二軸延伸フィルムであってもよい。
基材(X)の厚さに限定はなく、たとえば10μm〜300μmの範囲にあってもよいし、20μm〜200μmの範囲にあってもよい。ただし、基材(X)が厚いと、基材(X)による光の吸収が大きくなったり、多層構造体の柔軟性が低下したりするため、通常、基材(X)の厚さは150μm以下であることが好ましい。
[多層構造体の構成]
本発明の多層構造体(積層体)は、基材(X)および層(Y)のみによって構成されてもよいし、基材(X)、層(Y)および接着剤層(H)のみによって構成されていてもよい。本発明の多層構造体は、複数の層(Y)を含んでもよい。また、本発明の多層構造体は、基材(X)、層(Y)および接着剤層(H)以外の他の層(例えば熱可塑性樹脂フィルム層、無機蒸着層等の他の層など)をさらに含んでもよい。そのような他の部材(他の層など)を有する本発明の多層構造体は、基材(X)に直接または接着剤層(H)を介して層(Y)を積層させた後に、さらに当該他の部材(他の層など)を直接または接着層を介して接着または形成することによって製造できる。このような他の部材(他の層など)を多層構造体に含ませることによって、多層構造体の特性を向上させたり、新たな特性を付与したりすることができる。例えば、本発明の多層構造体にヒートシール性を付与したり、バリア性や力学的物性をさらに向上させたりすることができる。
本発明で用いられる多層構造体は、2層以上の層(Y)を含んでもよく、基材(X)の一主面側および他主面側のそれぞれに、層(Y)が積層されていてもよい。
[共押出フィルム]
上述したように、本発明の保護シートは、メタクリル樹脂層と熱可塑性エラストマー層とが積層された共押出フィルムを含む。共押出フィルムの作製方法については後述する。
メタクリル樹脂層の厚さは、25μm〜500μmの範囲にあってもよく、たとえば30μm〜300μmや40μm〜200μmの範囲にあってもよい。熱可塑性エラストマー層の厚さは、1μm〜100μmの範囲にあってもよく、たとえば2μm〜50μmや5μm〜30μmの範囲にあってもよい。以下に、共押出フィルムを構成する熱可塑性エラストマー層およびメタクリル樹脂層について説明する。
[熱可塑性エラストマー層]
熱可塑性エラストマー層を構成する熱可塑性エラストマーは、第1の重合体ブロック(と、第1の重合体ブロックの両末端または片末端に結合した2つまたは1つの第2の重合体ブロックとを含むブロック共重合体である。以下では、当該熱可塑性エラストマーを「熱可塑性エラストマー(EL)」という場合があり、当該第1の重合体ブロックを「第1の重合体ブロック(a1)」という場合があり、当該第2の重合体ブロックを「第2の重合体ブロック(a2)」という場合がある。
第1の重合体ブロック(a1)は、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックである。また、第2の重合体ブロック(a2)は、メタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックである。ここで「主体とする」とは、それぞれアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル以外の単量体を20質量%以下の割合で共重合させてもよいことを意味する。
熱可塑性エラストマー(EL)において、(第1の重合体ブロック(a1))/(第2の重合体ブロック(a2)の総計)の質量比は、90/10〜50/50の範囲にある。また、熱可塑性エラストマー(EL)の重量平均分子量は、30,000〜200,000の範囲にある。このような熱可塑性エラストマー(EL)を用いることによって、柔軟で水蒸気バリアー層との接着性も良く、かつ溶融押出しが可能な組成物が得られる。
熱可塑性エラストマー(EL)において、(第1の重合体ブロック(a1))/(第2の重合体ブロック(a2)の総計)の質量比は、好ましくは85/15〜50/50の範囲にあり、75/25〜55/45の範囲にあってもよい。また、熱可塑性エラストマー(EL)の重量平均分子量は、好ましくは40,000〜160,0000の範囲にあり、50,000〜100,000の範囲にあってもよい。
アクリル酸エステル単位を主体とする第1の重合体ブロック(a1)を形成するためのアクリル酸エステルの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどが含まれる。これらの中でも、柔軟性を向上させる観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどのアクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。第1の重合体ブロック(a1)は、これらのアクリル酸エステルの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。
本発明の効果が得られる限り、第1の重合体ブロック(a1)は、反応基を有するアクリル酸エステル単位、たとえば、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、またはアクリル酸エステル単位以外の他の重合性単量体単位を共重合成分として含んでいてもよい。第1の重合体ブロック(a1)に占めるこれらの他の単量体単位の割合は少量であることが好ましく、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
メタクリル酸エステル単位を主体とする第2の重合体ブロック(a2)を形成するためのメタクリル酸エステルの例には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチルなどが含まれる。これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。第2の重合体ブロック(a2)は、これらのメタクリル酸エステルの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。
本発明の効果が得られる限り、第2の重合体ブロック(a2)は、反応基を有するメタクリル酸エステル単位、たとえば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、またはメタクリル酸エステル単位以外の他の重合性単量体単位、たとえば、上記アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィンなどのモノマーを共重合成分として含んでもよい。第2の重合体ブロック(a2)に占めるこれらの他の単量体単位の割合は少量であることが好ましく、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
典型的な一例では、第1の重合体ブロック(a1)がアクリル酸n−ブチル単位を主体とする重合体ブロックであり、第2の重合体ブロック(a2)がメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックである。
熱可塑性エラストマー(EL)は、1つの第1の重合体ブロック(a1)と、1つの第2の重合体ブロック(a2)からなる(a1)−(a2)構造を分子内に少なくとも含む。熱可塑性エラストマー(EL)の分子鎖の形態に、限定はなく、たとえば、線状、分枝状、放射状などのいずれでもよい。それらの中でも、第1の重合体ブロック(a1)とその両端に結合した第2の重合体ブロック(a2)とによって構成される重合体、すなわち、(a2)−(a1)−(a2)で表されるトリブロック体、または第1の重合体ブロック(a1)とその片末端に結合した第2の重合体ブロック(a2)とによって構成される重合体、すなわち、(a1)−(a2)で表されるジブロック体が好ましく、(a2)−(a1)−(a2)で表されるトリブロック体がより好ましい。ここで、第1の重合体ブロック(a1)の両端に結合した2つの第2の重合体ブロック(a2)の分子量や組成などは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明に用いる熱可塑性エラストマー(EL)は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
熱可塑性エラストマー(EL)の重量平均分子量は、30,000〜200,000であり、本発明の熱可塑性重合体組成物および該熱可塑性重合体組成物からなるシート状成形体の柔軟性、成形加工性などを向上させる観点から、40,000〜160,000であるのが好ましく、50,000〜100,000であるのがより好ましい。熱可塑性エラストマー(EL)の重量平均分子量が30,000よりも小さいと、溶融押出成形において充分な溶融張力を保持できず、良好なシート状成形体が得られにくく、また、得られるシート状成形体の破断強度などの力学物性が劣る。一方、200,000よりも大きいと、溶融樹脂が高粘度化し、溶融押出成形で得られるシート状成形体の表面に微細なシボ調の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因するブツが発生し、良好なシート状成形体が得られにくい傾向がある。
熱可塑性エラストマー(EL)における、アクリル酸エステル単位を主体とする第1の重合体ブロック(a1)の重量平均分子量は、2,000〜80,000であることが好ましく、5,000〜70,000であることがより好ましい。また、メタクリル酸エステル単位を主体とする第2の重合体ブロック(a2)の重量平均分子量は、2,000〜80,000であることが好ましく、5,000〜70,000であることがより好ましい。
また、熱可塑性エラストマー(EL)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、1.01以上1.50未満の範囲内にあるのがよく、1.01以上1.35以下の範囲内にあるのがより好ましい。このような範囲を取ることにより、本発明の熱可塑性重合体組成物からなるシート状成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
熱可塑性エラストマー(EL)の製造方法としては、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、熱可塑性エラストマー(EL)を得る方法としては、各ブロックを構成するモノマーをリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報参照)、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法(特開平6−93060号公報参照)、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下ラジカル重合する方法(マクロモレキュラケミカルフィジックス(Macromol. Chem. Phys.)201巻,1108〜1114頁(2000年)参照)などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明の熱可塑性エラストマー(EL)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法中、特に、アクリル系ブロック共重合体が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が推奨される。
[メタクリル樹脂層]
メタクリル樹脂層は、メタクリル樹脂を含む。以下では、メタクリル樹脂層に含まれるメタクリル樹脂を、「メタクリル樹脂(A)」という場合がある。本発明で用いられるメタクリル樹脂(A)は、アルキルメタクリレートを含有する単量体混合物を重合することによって得られる。
アルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどが挙げられる。これらのアルキルメタリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
単量体混合物にはアルキルメタクリレート以外に、アルキルアクリレートが含まれていてもよい。アルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレートが好ましい。これらのアルキルアクリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記の単量体混合物には、アルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートに共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体が含まれていてもよい。
アルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートと共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、ハロゲンで核置換されたスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどのビニル芳香族化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、モノメチルマレエート、ジメチルマレエートなどを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、アルキルメタクリレート単位の割合が、耐候性の観点から、50〜100質量%であることが好ましく、80〜99.9質量%であることがより好ましい。また、耐熱性の観点から0.1〜20質量%の範囲でアルキルアクリレート単位を含有することが好ましい。
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、強度特性および溶融性の点から、重量平均分子量(Mwと表記、以下同じ)が、好ましくは40,000以上、より好ましくは40,000〜10,000,000であり、特に好ましくは80,000〜1,000,000である。
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、単量体が線状に結合したものであってもよいし、分岐を有するものであってもよいし、環状構造を有するものであってもよい。
本発明に用いられるメタクリル樹脂(A)は、α,β−不飽和化合物を重合させることができる方法であれば特にその製法によって制限されないが、ラジカル重合によって製造されたものが好ましい。重合法としては、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などが挙げられる。
重合時に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスγ−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、オキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。重合開始剤は、全単量体100質量部に対して通常0.05〜0.5質量部用いられる。重合は、通常50〜140℃の温度で、通常2〜20時間行われる。
メタクリル樹脂(A)の分子量を制御するためには、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコエート、メルカプトエタノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、全単量体に対し通常0.005〜0.5質量%の範囲で使用される。
本発明で用いられるメタクリル樹脂(A)は、光学特性等の性能を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、艶消し剤などが配合されていてもよい。なお、熱可塑性樹脂組成物からなる成形体の力学物性および表面硬度保持の観点から軟化剤や可塑剤は多量には含まないことが好ましい。一方で、製膜時の安定性を確保するために、屈折率を調整したブチルアクリレートを主成分とする軟質ゴム等の公知のゴムを添加してもよい。
メタクリル樹脂層の耐久性を高めるために、メタクリル樹脂層に各種の添加剤(たとえば紫外線吸収剤)を添加してもよい。耐候性が高いメタクリル樹脂層の好ましい一例は、紫外線吸収剤が添加されたメタクリル樹脂層である。紫外線吸収剤の例には、公知の紫外線吸収剤が含まれ、たとえば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル系、トリアジン系紫外線吸収剤が含まれる。更に、他の安定剤、光安定剤、酸化防止材などを併用してもよい。
本発明の保護シートの構成の好ましい例を以下に示す。
(1)基材/水蒸気バリア層/熱可塑性エラストマー層/メタクリル樹脂層
(2)水蒸気バリア層/基材/水蒸気バリア層/熱可塑性エラストマー層/メタクリル樹脂層
[太陽電池およびその製造方法]
本発明の太陽電池は、本発明の保護シート(典型的には透光性の保護シート)を備える。当該保護シートにおいて、メタクリル樹脂層が水蒸気バリアフィルム(F)よりも外側に配置されている。すなわち、太陽電池素子と保護シートとは、太陽電池素子/水蒸気バリアフィルム/熱可塑性エラストマー層/メタクリル樹脂層という順序で配置される。メタクリル樹脂層は、太陽電池の表面を保護する保護層として機能する。なお、保護シート以外の部分の構成に限定はなく、公知の太陽電池の構成を適用できる。
本発明の保護シートは、ガスバリア性および水蒸気バリア性のいずれにも優れる。また、本発明によれば、透光性に優れる保護シートを得ることができる。そのため、本発明の保護シートは、太陽電池の保護シートとして好ましく用いることができ、太陽電池の光入射面の保護シートとして特に好ましく用いることができる。また、本発明の保護シートはフレキシブルとすることができるため、フレキシブルな太陽電池の保護シートとして特に好ましく用いることができる。なお、この明細書において、「フレキシブルな物体」の例には、直径が30cmの円筒の曲面に問題なく巻き付けることが可能である柔軟性を有する物体が含まれ、たとえば、直径が15cmの円筒の曲面に問題なく巻き付けることが可能である柔軟性を有する物体が含まれる。
本発明の保護シートは、太陽電池の表面を保護するガラスの代わりに用いることが可能である。すなわち、本発明の保護シートを用いることによって、可撓性を実質的に有さない厚いガラス基板の使用を避けることが可能である。ただし、厚いガラス基板を含む太陽電池に本発明の保護シートを用いてもよい。
太陽電池の所定の面に本発明の保護シートを固定することによって、本発明の太陽電池が得られる。保護シートを固定する方法に特に限定はない。保護シートは公知の方法で固定してもよく、たとえば、OCA(OPTICAL CLEAR ADHESIVE)などの接着層を用いて固定(接着)してもよい。具体的には、保護シートとは別の接着層を用いて積層してもよいし、接着層を含む保護シートを用いて積層してもよい。接着層に特に限定はなく、公知の接着層や、上述した接着層を用いてもよい。接着層の例には、接着層として機能するフィルムが含まれる。
本発明の保護シートが用いられる太陽電池に特に限定はない。太陽電池の例には、シリコン系太陽電池、化合物半導体太陽電池、有機太陽電池などが含まれる。シリコン系太陽電池の例には、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、非晶質シリコン太陽電池などが含まれる。化合物太陽電池の例には、III−V族化合物半導体太陽電池、II−VI族化合物半導体太陽電池、I−III−VI族化合物半導体太陽電池などが含まれる。また、太陽電池は、複数のユニットセルが直列接続された集積形の太陽電池であってもよいし、集積形の太陽電池でなくてもよい。
一部の太陽電池は、いわゆるロール・ツー・ロール方式で形成することが可能である。ール・ツー・ロール方式では、送り出しロールに巻かれたフレキシブルな基板(たとえばステンレス基板や樹脂基板など)を送り出し、基板上に太陽電池素子を形成した後、太陽電池素子が形成された基板を巻き取りロールで巻き取る。本発明の保護シートは、フレキシブルな長尺のシートの形態で形成することができるため、ロール・ツー・ロール方式で形成される太陽電池の保護シートに好適に用いることができる。たとえば、本発明の保護シートをロールに巻いておき、ロール・ツー・ロール方式で太陽電池素子を形成した後、巻き取りロールに巻き取る前に太陽電池素子上に保護シートを積層してもよい。また、ロール・ツー・ロール方式で形成されロールに巻かれた太陽電池と、ロールに巻かれた保護シートとを用いて両者を積層してもよい。
[保護シートの製造方法]
保護シートの製造するための本発明の方法を以下に説明する。なお、本発明の保護シートについて説明した事項は、本発明の製造方法に適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。また、本発明の製造方法について説明した事項は、本発明の保護シートに適用できる。本発明の製造方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む。
工程(i)では、メタクリル樹脂層と熱可塑性エラストマー層との積層膜を共押出法によって形成する。メタクリル樹脂層および熱可塑性エラストマー層については上述したため、重複する説明を省略する。この積層膜は、たとえば、複層ダイを有したTダイ成形で製造できる。このときの成形温度は、用いる樹脂の流動特性や製膜性等によって適時調整されるが、概ね180〜250℃、好ましくは200℃〜230℃である。酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの各種添加剤は、予め樹脂とともにドライブレンドしてからポッパーに供給してもよいし、予め全ての材料を溶融混合でペレットを作製してから供給してもよいし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製してから供給しても構わない。
工程(ii)では、熱可塑性エラストマー層が水蒸気バリアフィルム(F)とメタクリル樹脂層との間に配置されるように、積層膜(共押出フィルム)と水蒸気バリアフィルム(F)とを積層する。すなわち、水蒸気バリアフィルム(F)、熱可塑性エラストマー層、およびメタクリル樹脂層は、この順に積層される。
工程(ii)において、工程(i)で形成された積層膜と水蒸気バリアフィルム(F)との積層は公知の方法である熱ラミネート法、ドライラミネーション法などいずれの方法を用いてもよいが、熱ラミネート法によって積層することが好ましい。この場合、熱可塑性エラストマー層が接着層として機能するため、熱ラミネート法を用いることによって、本発明の保護シートを簡単に形成できる。なお、熱融着によらない接着層を用いて積層膜と水蒸気バリアフィルムとを積層することも可能であるが、その場合には工程が複雑になる。
熱ラミネートは、たとえば真空ラミネート法で行うことができる。真空ラミネートの条件は、用いるフィルムの熱特性によって適宜調整されるが、たとえば、160℃、0.03MPa、9分間の条件で行うことができる。
水蒸気バリア層が無機蒸着層である場合には、上述したように、基材(X)上に無機蒸着層を蒸着することによって水蒸気バリアフィルム(F)を形成できる。
本発明の製造方法は、工程(ii)の前に、熱可塑性エラストマーの表面および水蒸気バリアフィルムの表面(熱可塑性エラストマー層と接着される表面)から選ばれる少なくとも一方にコロナ放電処理を施す工程を含んでもよい。コロナ放電処理に特に限定はなく、プラズマ放電処理などの公知の方法および条件を適用できる。
[多層構造体(水蒸気バリアフィルム(F)の一例)の製造方法]
以下、本発明で用いられる多層構造体を製造する方法の一例について説明する。この方法によれば、本発明の多層構造体を容易に製造できる。本発明の多層構造体の製造方法に用いられる材料、および多層構造体の構成等は、上述したものと同様であるので、重複する部分については説明を省略する場合がある。たとえば、金属酸化物(A)、リン化合物(B)、および重合体(C)に対して、本発明の多層構造体の説明における記載を適用することが可能である。なお、この製造方法について説明した事項については、本発明の多層構造体に適用できる。また、本発明の多層構造体について説明した事項については、本発明の製造方法に適用できる。なお、層(Y)の形成方法については、国際公開WO2011/122036号に開示されている方法を適用することが可能である。
この一例の方法は、工程(I)、(II)および(III)を含む。工程(I)では、金属酸化物(A)と、金属酸化物(A)と反応可能な部位を含有する少なくとも1種の化合物と、溶媒とを混合することによって、金属酸化物(A)、当該少なくとも1種の化合物および当該溶媒を含むコーティング液(U)を調製する。工程(II)では、基材(X)上にコーティング液(U)を塗布することによって、基材(X)上に層(Y)の前駆体層を形成する。工程(III)では、その前駆体層を処理することによって、基材(X)上に層(Y)を形成する。
[工程(I)]
工程(I)で用いられる、金属酸化物(A)と反応可能な部位を含有する少なくとも1種の化合物は、リン化合物(B)を含む。前記少なくとも1種の化合物に含まれる金属原子のモル数は、リン化合物(B)に含まれるリン原子のモル数の0〜1倍の範囲にあることが好ましい。(前記少なくとも1種の化合物に含まれる金属原子のモル数)/(リン化合物(B)に含まれるリン原子のモル数)の比を0〜1の範囲(たとえば0〜0.9の範囲)とすることによって、より優れたバリア性を有する多層構造体が得られる。この比は、多層構造体のバリア性をさらに向上させるために、0.3以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.01以下であることがさらに好ましく、0であってもよい。典型的には、前記少なくとも1種の化合物は、リン化合物(B)のみからなる。
工程(I)は、以下の工程(Ia)〜(Ic)を含むことが好ましい。
工程(Ia):金属酸化物(A)を含む液体(S)を調製する工程。
工程(Ib):リン化合物(B)を含む溶液(T)を調製する工程。
工程(Ic):上記工程(Ia)および(Ib)で得られた液体(S)と溶液(T)とを混合する工程。
工程(Ib)は、工程(Ia)より先に行われてもよいし、工程(Ia)と同時に行われてもよいし、工程(Ia)の後に行われてもよい。以下、各工程について、より具体的に説明する。
工程(Ia)では、金属酸化物(A)を含む液体(S)を調製する。液体(S)は、溶液または分散液である。当該液体(S)は、例えば、公知のゾルゲル法で採用されている手法によって調製できる。例えば、上述した化合物(L)系成分、水、および必要に応じて酸触媒や有機溶媒を混合し、公知のゾルゲル法で採用されている手法によって化合物(L)系成分を縮合または加水分解縮合することによって調製できる。化合物(L)系成分を縮合または加水分解縮合することによって得られる、金属酸化物(A)の分散液は、そのまま金属酸化物(A)を含む液体(S)として使用することができる。しかし、必要に応じて、当該分散液に対して特定の処理(解膠や濃度制御のための溶媒の加減等)を行ってもよい。
液体(S)中における金属酸化物(A)の含有率は、0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、1〜20質量%の範囲内であることがより好ましく、2〜15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
工程(Ib)では、リン化合物(B)を含む溶液(T)を調製する。溶液(T)は、リン化合物(B)を溶媒に溶解することによって調製できる。リン化合物(B)の溶解性が低い場合には、加熱処理や超音波処理を施すことによって溶解を促進してもよい。
溶液(T)中におけるリン化合物(B)の含有率は、0.1〜99質量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜95質量%の範囲内であることがより好ましく、0.1〜90質量%の範囲内であることがさらに好ましい。また、溶液(T)中におけるリン化合物(B)の含有率は、0.1〜50質量%の範囲内にあってもよく、1〜40質量%の範囲内にあってもよく、2〜30質量%の範囲内にあってもよい。
工程(Ic)では、液体(S)と溶液(T)とを混合する。液体(S)と溶液(T)との混合時には、局所的な反応を抑制するため、添加速度を抑え、攪拌を強く行いながら混合することが好ましい。この際、攪拌している液体(S)に溶液(T)を添加してもよいし、攪拌している溶液(T)に液体(S)を添加してもよい。また、混合時の温度を30℃以下(例えば20℃以下)に維持することによって、保存安定性に優れたコーティング液(U)を得ることができる場合がある。さらに、混合完了時点からさらに30分程度攪拌を続けることによって、保存安定性に優れたコーティング液(U)を得ることができる場合がある。
コーティング液(U)は、必要に応じて、酢酸、塩酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸から選ばれる少なくとも1種の酸化合物を含んでもよい。コーティング液(U)が上記の酸化合物を含むことによって、工程(Ic)において液体(S)と溶液(T)とを混合する際に、金属酸化物(A)とリン化合物(B)との反応速度が緩和され、その結果、経時安定性に優れたコーティング液(U)が得られる場合がある。
コーティング液(U)における上記酸化合物の含有率は、0.1〜5.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜2.0質量%の範囲内であることがより好ましい。これらの範囲では、上記酸化合物の添加による効果が得られ、且つ、上記酸化合物の除去が容易である。液体(S)中に酸成分が残留している場合には、その残留量を考慮して、上記酸化合物の添加量を決定すればよい。
工程(Ic)における混合によって得られた液は、そのままコーティング液(U)として使用できる。この場合、通常、液体(S)や溶液(T)に含まれる溶媒が、コーティング液(U)の溶媒となる。また、工程(Ic)における混合によって得られた液に処理を行って、コーティング液(U)を調製してもよい。たとえば、有機溶媒の添加、pHの調製、粘度の調製、添加物の添加等の処理を行ってもよい。
本発明の効果が得られる限り、コーティング液(U)は、上述した物質以外の他の物質を含んでもよい。例えば、コーティング液(U)は、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩等の無機金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸金属塩;アセチルアセトナート金属錯体(アルミニウムアセチルアセトナート等)、シクロペンタジエニル金属錯体(チタノセン等)、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物;架橋剤;重合体(C)以外の高分子化合物;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;難燃剤などを含んでいてもよい。
[工程(II)]
工程(II)では、基材(X)上にコーティング液(U)を塗布することによって、基材(X)上に層(Y)の前駆体層を形成する。コーティング液(U)は、基材(X)の少なくとも一方の面の上に直接塗布してもよい。また、コーティング液(U)を塗布する前に、基材(X)の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理したり、基材(X)の表面に公知の接着剤を塗布したりするなどして、基材(X)の表面に接着剤層(H)を形成しておいてもよい。
コーティング液(U)を基材(X)上に塗布する方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。好ましい方法としては、例えば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キスコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法などが挙げられる。
通常、工程(II)において、コーティング液(U)中の溶媒を除去することによって、層(Y)の前駆体層が形成される。溶媒の除去方法に特に制限はなく、公知の乾燥方法を適用することができる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などの乾燥方法を、単独で、または組み合わせて適用することができる。乾燥温度は、基材(X)の流動開始温度よりも0〜15℃以上低いことが好ましい。コーティング液(U)が重合体(C)を含む場合には、乾燥温度は、重合体(C)の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低いことが好ましい。乾燥温度は70〜200℃の範囲にあることが好ましく、80〜180℃の範囲にあることがより好ましく、90〜160℃の範囲にあることがさらに好ましい。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。また、後述する工程(III)における熱処理によって、溶媒を除去してもよい。
層状の基材(X)の両面に層(Y)を積層する場合、コーティング液(U)を基材(X)の一方の面に塗布した後、溶媒を除去することによって第1の層(第1の層(Y)の前駆体層)を形成し、次いで、コーティング液(U)を基材(X)の他方の面に塗布した後、溶媒を除去することによって第2の層(第2の層(Y)の前駆体層)を形成してもよい。それぞれの面に塗布するコーティング液(U)の組成は同一であってもよいし、異なってもよい。
[工程(III)]
工程(III)では、工程(II)で形成された前駆体層(層(Y)の前駆体層)を、処理することによって層(Y)を形成する。前駆体層を処理する方法としては、熱処理、紫外線等の電磁波照射などが挙げられる。工程(III)で行われる処理は、金属酸化物(A)とリン化合物(B)とを反応させる処理であってもよい。たとえば、工程(III)で行われる処理は、金属酸化物(A)とリン化合物(B)とを反応させることによって、リン化合物(B)に由来するリン原子を介して金属酸化物(A)の粒子同士を結合させる処理であってもよい。通常、工程(III)は、前記前駆体層を110℃以上の温度で熱処理する工程である。なお、特に限定されるわけではないが、前記前駆体層の赤外線吸収スペクトルにおいては、800〜1400cm-1の範囲における最大吸光度(A1’)と、2500〜4000cm-1の範囲における水酸基の伸縮振動に基づく最大吸光度(A2’)とが、吸光度(A2’)/吸光度(A1’)>0.2の関係を満たす場合がある。
工程(III)では、金属酸化物(A)の粒子同士がリン原子(リン化合物(B)に由来するリン原子)を介して結合される反応が進行する。別の観点では、工程(III)では、反応生成物(R)が生成する反応が進行する。当該反応を充分に進行させるため、熱処理の温度は、110℃以上であり、120℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。熱処理温度が低いと、充分な反応度を得るのにかかる時間が長くなり、生産性が低下する原因となる。熱処理の温度の好ましい上限は、基材(X)の種類などによって異なる。例えば、ポリアミド系樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを基材(X)として用いる場合には、熱処理の温度は190℃以下であることが好ましい。また、ポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを基材(X)として用いる場合には、熱処理の温度は220℃以下であることが好ましい。熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、またはアルゴン雰囲気下などで実施することができる。
熱処理の時間は0.1秒〜1時間の範囲にあることが好ましく、1秒〜15分の範囲にあることがより好ましく、5〜300秒の範囲にあることがさらに好ましい。一例の熱処理は、110〜220℃の範囲で0.1秒〜1時間行われる。また、他の一例の熱処理では、120〜200℃の範囲で、5〜300秒間(たとえば60〜300秒間)行われる。
基材(X)と層(Y)との間に接着剤層(H)を配置するために、コーティング液(U)を塗布する前に、基材(X)の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理したり、基材(X)の表面に公知の接着剤を塗布したりする場合には、熟成処理を行うことが好ましい。具体的には、コーティング液(U)を塗布した後であって工程(III)の熱処理工程の前に、コーティング液(U)が塗布された基材(X)を比較的低温下に長時間放置することが好ましい。熟成処理の温度は、110℃未満であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることがさらに好ましい。また、熟成処理の温度は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。熟成処理の時間は、0.5〜10日の範囲にあることが好ましく、1〜7日の範囲にあることがより好ましく、1〜5日の範囲にあることがさらに好ましい。このような熟成処理を行うことによって、基材(X)と層(Y)との間の接着力がより強固になる。
上記工程によって、基材(X)と層(Y)とを含む水蒸気バリアフィルム(F)が得られる。本発明で用いられる多層構造体が水蒸気バリアフィルム(F)以外の他の層を含む場合には、水蒸気バリアフィルムと他の層とを積層する。それらの積層方法に限定はなく、接着層を用いて積層するドライラミネーション法や、熱ラミネート法によって積層する方法を用いてもよい。
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されない。なお、基材および水蒸気バリアフィルムの評価は、以下の方法によって実施した。
(1)基材の3%歪み時張力
ロール状の基材を、搬送方向(MD方向)が長辺となるように幅1.5cm×長さ15cmの短冊状に切り出して試験片を作製した。この試験片について、オートグラフ(島津製作所製「AGS−H」)を用いて、JIS K7127に準拠して23℃50%RHの条件で長辺方向に3%伸張した時の張力を測定し、幅方向を単位長さ(1m)に換算して3%歪み時張力(N/m)を算出した。
(2)透湿度
透湿度(水蒸気透過度;WVTR)は、ガスクロ法(JIS K7129−C)に従い、蒸気透過測定装置(GTRテック社製「GTR−WV」)を用いて測定した。具体的には、温度が40℃、水蒸気供給側の湿度が90%RH、キャリアガス側の湿度が0%RHの条件下で透湿度(単位:g/(m2・day))を測定した。
透湿度は、製造されたロール状の多層構造体の10箇所(巻き取りの初期、巻き取りの最後、およびそれらの中間点など)からサンプルを採取して測定した。そして、10箇所の測定値から、透湿度の平均値を算出した。
(熱可塑性エラストマーの製造)
後述する製造例で用いた熱可塑性エラストマーは、以下の方法で製造した。
(1)有機アルミニウム化合物(イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム)の調製
トルエンをナトリウムで乾燥した後、アルゴン雰囲気下において蒸留して乾燥トルエンを得た。その乾燥トルエン25mlと、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール11gとを、内部雰囲気をアルゴンで置換した内容積200mlのフラスコ内に添加し、室温で攪拌することによって溶液を得た。得られた溶液にトリイソブチルアルミニウム6.8mlを添加し、80℃で約18時間攪拌した。このようにして、有機アルミニウム化合物であるイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムを0.6mol/lの濃度で含有するトルエン溶液を調製した。
(2)熱可塑性エラストマー(EL1)の合成
2リットルの三口フラスコに三方コックを付け内部を脱気し、窒素で置換した。この三口フラスコに、室温において、乾燥トルエン1040g、1,2−ジメトキシエタン100g、上記イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム32mmolを含有するトルエン溶液48gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム8.1mmolを加えた。得られた溶液に、さらにメタクリル酸メチル72gを加え、室温で1時間反応させた後、反応液0.1gを採取した。これをサンプリング試料1とする。引き続き、重合液の内部温度を−25℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル307gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液0.1gを採取した。これをサンプリング試料2とする。続いて、メタクリル酸メチル72gを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌した。得られた反応液にメタノールを4g添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノールに注ぎ、析出した沈殿物を得た。これをサンプリング試料3とする。サンプリング試料1〜3を用いて1H−NMR測定、GPC測定を行ない、その結果に基づいて、Mw(重量平均分子量)、Mw/Mn(分子量分布)、メタクリル酸メチル重合体(PMMA)ブロックとアクリル酸n−ブチル重合体(PnBA)ブロックの質量比等を求めた。その結果、最終的に得られた上記沈殿物は、PMMAブロック−PnBAブロック−PMMAブロックのトリブロック共重合体(PMMA−PnBA−PMMA)であって、その第一番目に供給した単量体(MMA)の重合により得られた1st−PMMAブロック部のMwは9,900、Mw/Mnは1.08であり、また、トリブロック共重合体全体のMwは62,000、Mw/Mnは1.19であった。また、各重合体ブロックの割合はPMMA(16質量%)−PnBA(68質量%)−PMMA(16質量%)であった。
(3)熱可塑性エラストマー(EL2)〜(EL4)の合成
メタクリル酸メチルとアクリル酸n―ブチルの仕込み比を変えたことを除いて熱可塑性エラストマー(EL1)の合成と同様の方法で熱可塑性エラストマー(EL2)〜(EL4)を合成した。
(4)熱可塑性エラストマー(EL5)の合成
メタクリル酸メチルとアクリル酸n―ブチルの仕込み比を変更し、sec−ブチルリチウム2.1mmolとしたこと以外は、熱可塑性エラストマー(EL1)の合成と同様の方法で熱可塑性エラストマー(EL5)を合成した。
(5)熱可塑性エラストマー(EL6)の合成
メタクリル酸メチルとアクリル酸n―ブチルの仕込み比を変更し、sec−ブチルリチウム24.1mmolとしたこと以外は、熱可塑性エラストマー(EL1)の合成と同様の方法で熱可塑性エラストマー(EL6)を合成した。
合成された熱可塑性エラストマーの物性は、後掲する表1に示す。
(水蒸気バリアフィルム(F1)の製造)
製造例1等で用いた水蒸気バリアフィルム(F1)は、以下の方法で作製した。まず、蒸留水230質量部を撹拌しながら70℃に昇温した。その蒸留水に、アルミニウムイソプロポキシド88質量部を1時間かけて滴下し、液温を徐々に95℃まで上昇させ、発生するイソプロパノールを留出させることによって加水分解縮合を行った。次いで、60質量%の硝酸水溶液4.0質量部を添加し、95℃で3時間撹拌することによって加水分解縮合物の粒子の凝集体を解膠させた。こうして得られた分散液を、固形分濃度がアルミナ換算で10質量%になるように濃縮することによって、分散液(S1)を得た。
また、85質量%のリン酸水溶液1.76質量部に対して、蒸留水42.85質量部、メタノール19.00質量部およびトリフルオロ酢酸1.39質量部を加え、均一になるように攪拌することによって、溶液(T1)を得た。続いて、溶液(T1)を攪拌した状態で、分散液(S1)35.00質量部を滴下し、滴下完了後からさらに30分間攪拌を続けることによって、コーティング液(U1)を得た。
次に、基材として、ロール状の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下では、「PET」と略記する場合がある)を準備した。基材には、厚さが25μmで、MD方向の3%歪み時の張力が3600N/mであるものを用いた。その基材の一方の面上に、乾燥後の厚さが0.5μmとなるようにグラビアコート法によって連続的にコーティング液(U1)をコートし、100℃の熱風乾燥炉で乾燥した。次に、基材の他方の面上に、乾燥後の厚さが0.5μmとなるようにグラビアコート法によって連続的にコーティング液(U1)をコートし、100℃の熱風乾燥炉で乾燥した後、ロール状に巻き取った。このようにして、層(Y)の前駆体層を形成した。
なお、「3%歪み時の張力」とは、23℃50%RHの条件で測定したある方向の長さが単位長さ(1m)である基材を当該方向とは垂直な方向に3%延伸したときの張力を意味する。
得られた前駆体層に対して、熱風乾燥炉を通過させることにより200℃で1分間の熱処理を施し、層(Y)(0.5μm)/PET(25μm)/層(Y)(0.5μm)という構造を有する水蒸気バリアフィルム(F1)を得た。得られた水蒸気バリアフィルム(F1)について、上述した方法によって評価した。透湿度は0.0013g/(m2・day)であった。
(水蒸気バリアフィルム(F2)の製造)
製造例3で用いた水蒸気バリアフィルム(F2)は、以下の方法で作製した。25μmの延伸PETに真空蒸着を施すことによって、水蒸気バリアー性に優れるフィルムを得た。真空蒸着の条件は、蒸着材料:酸化ケイ素、反応ガス:酸素ガス、真空度4.5×10-2Paであった。
(実施例1)
まず、メタクリル酸メチル単位(97.8質量%)およびアクリル酸メチル単位(2.2質量%)からなるメタクリル樹脂100質量部に対して紫外線防止剤アデカスタブLA―31(アデカ製)2.0質量部を添加したメタクリル樹脂(A1)を準備した。次に、紫外線防止剤としてアデカスタブLA−31(アデカ製)2.0質量部を添加した上記熱可塑性エラストマー(EL1)とメタクリル樹脂(A1)とを用いて、共押出法によって、メタクリル樹脂(A1)層/熱可塑性エラストマー(EL1)層という構成を有する積層膜(1)を形成した。このときの共押出性は良好であった。共押出は、230℃の温度条件で行った(以下の実施例および比較例においても同様である)。
次に、積層膜(1)の熱可塑性エラストマー(EL1)層の表面をコロナ放電処理した。次に、積層膜(1)と上述した水蒸気バリアフィルム(F1)とを、170℃で熱ラミネートした。このようにして、メタクリル樹脂(A1)層/熱可塑性エラストマー(EL1)層/水蒸気バリアフィルム(F1)という構成を有する実施例1の保護シート(1)を作製した。この保護シート(1)において、積層膜(1)と水蒸気バリアフィルム(F1)との接着性は、良好であった。接着性については、積層膜(1)と水蒸気バリアフィルム(F1)との間の一部にテフロン(登録商標)の膜をはさんでおき、その部分を使って180度ピール試験を実施し、接着強度が10N/25mm以上であった場合には、接着性が良好と判断した。
(実施例2)
まず、実施例1で説明したメタクリル樹脂(A1)76質量部と、弾性体微粒子(ゴム微粒子)24質量部とを溶融・混練し、弾性体微粒子を含むメタクリル樹脂(A1’)のペレットを作製した。弾性体微粒子には、平均粒径が約300nmで、最内層がメタクリル酸メチル架橋重合体、中間層がブチルアクリル酸n−ブチルを主成分とする軟質ゴム弾性体、最外層がメタクリル酸メチル重合体からなるアクリル系重合体からなる微粒子を用いた。そして、メタクリル樹脂(A1’)と、上述した紫外線防止剤を含む熱可塑性エラストマー(EL2)とを用いて、共押出法によって、メタクリル樹脂(A1’)層/熱可塑性エラストマー(EL2)層という構成を有する積層膜(2)を形成した。このときの共押出性は良好であった。
次に、積層膜(2)の熱可塑性エラストマー(EL2)層の表面をコロナ放電処理した。次に、積層膜(2)と上述した水蒸気バリアフィルム(F1)とを、170℃で熱ラミネートした。このようにして、メタクリル樹脂(A1’)層/熱可塑性エラストマー(EL2)/水蒸気バリアフィルム(F1)という構成を有する実施例2の保護シート(2)を作製した。この保護シート(2)において、積層膜(2)と水蒸気バリアフィルム(F1)との接着性は、良好であった。
(実施例3)
実施例1で説明した積層膜(1)の熱可塑性エラストマー(EL1)層の表面をコロナ放電処理した。次に、当該積層膜(1)と水蒸気バリアフィルム(F2)とを、170℃で熱ラミネートした。このようにして、メタクリル樹脂(A1)層/熱可塑性エラストマー(EL1)/水蒸気バリアフィルム(F2)という構成を有する保護シート(3)を作製した。この保護シート(3)において、積層膜(1)と水蒸気バリアフィルムとの接着性は、良好であった。
(比較例1〜4)
メタクリル樹脂(A1)と表1に示した熱可塑性エラストマー(EL3)〜(EL6)とを用いて、共押出法によって、メタクリル樹脂(A1)層/熱可塑性エラストマー層という構成を有する積層膜の形成を行った。メタクリル樹脂(A1)と熱可塑性エラストマー(EL3)とを用いた場合には、積層膜(C1)が得られた。しかし、熱可塑性エラストマー(EL4)、(EL5)および(EL6)を用いた場合は共押出性が悪く、積層膜を形成することができなかった。
上記積層膜(C1)の熱可塑性エラストマー(EL3)の表面に対してコロナ放電処理を行った後、積層膜(C1)と上述した水蒸気バリアフィルム(F1)とを、170℃で熱ラミネートした。このようにして、メタクリル樹脂(A1)層/熱可塑性エラストマー(EL3)層/水蒸気バリアフィルム(F1)という構成を有する比較例1の保護シート(C1)を作製した。しかし、積層膜(C1)と水蒸気バリアフィルム(F1)との接着性は低かった。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2014017362
表1に示すように、所定の接着層を選択することによって、メタクリル樹脂層と、水蒸気バリアフィルムとを容易に熱ラミネートすることができた。
実施例1〜3で形成された保護シートについて、太陽電池の保護シートとしての評価を行った。具体的には、全光線透過率、水蒸気バリア性、耐光性、および密着性を評価した。評価の結果、実施例1〜3で形成された保護シートは、太陽電池の保護シートとして充分な特性を有することが分かった。
本発明は、太陽電池用の保護シートおよびそれを用いた太陽電池に利用できる。

Claims (9)

  1. 太陽電池の表面を保護するための保護シートの製造方法であって、
    (i)メタクリル樹脂層と熱可塑性エラストマー層との積層膜を共押出法によって形成する工程と、
    (ii)前記熱可塑性エラストマー層が水蒸気バリアフィルムと前記メタクリル樹脂層との間に配置されるように、前記積層膜と前記水蒸気バリアフィルムとを積層する工程とを含み、
    前記熱可塑性エラストマー層を構成する熱可塑性エラストマーが、第1の重合体ブロックと、前記第1の重合体ブロックの両末端または片末端に結合した2つまたは1つの第2の重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、
    前記第1の重合体ブロックが、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、
    前記第2の重合体ブロックが、メタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、
    前記熱可塑性エラストマーにおいて、(前記第1の重合体ブロック)/(前記第2の重合体ブロックの総計)の質量比が、90/10〜50/50の範囲にあり、
    前記熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が30,000〜200,000の範囲にある、製造方法。
  2. 前記(ii)の工程において、前記積層膜と前記水蒸気バリアフィルムとを熱ラミネート法によって積層する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記(ii)の工程の前に、前記熱可塑性エラストマーの表面および前記水蒸気バリアフィルムの表面から選ばれる少なくとも一方にコロナ放電処理を施す工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記アクリル酸エステル単位がアクリル酸n−ブチル単位であり、
    前記メタクリル酸エステル単位がメタクリル酸メチル単位である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 太陽電池の表面を保護するための保護シートであって、
    メタクリル樹脂層と熱可塑性エラストマー層とが積層された共押出フィルムと、水蒸気バリアフィルムとを含み、
    前記熱可塑性エラストマー層が前記水蒸気バリアフィルムと前記メタクリル樹脂層との間に配置されるように前記共押出フィルムと前記水蒸気バリアフィルムとが積層されており、
    前記熱可塑性エラストマー層を構成する熱可塑性エラストマーが、第1の重合体ブロックと、前記第1の重合体ブロックの両末端または片末端に結合した2つまたは1つの第2の重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、
    前記第1の重合体ブロックが、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、
    前記第2の重合体ブロックが、メタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックであり、
    前記熱可塑性エラストマーにおいて、(前記第1の重合体ブロック)/(前記第2の重合体ブロックの総計)の質量比が、90/10〜50/50の範囲にあり、
    前記熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が30,000〜200,000の範囲にある、保護シート。
  6. 前記共押出フィルムと前記水蒸気バリアフィルムとが熱ラミネート法によって積層されている、請求項5に記載の保護シート。
  7. 前記アクリル酸エステル単位がアクリル酸n−ブチル単位であり、
    前記メタクリル酸エステル単位がメタクリル酸メチル単位である、請求項5または6に記載の保護シート。
  8. 前記水蒸気バリアフィルムが、基材と、前記基材に積層された水蒸気バリア層とを含み、
    前記水蒸気バリア層は反応生成物(R)を含み、
    前記反応生成物(R)は、少なくとも金属酸化物(A)とリン化合物(B)とが反応してなる反応生成物であり、
    800〜1400cm-1の範囲における前記水蒸気バリア層の赤外線吸収スペクトルにおいて赤外線吸収が最大となる波数(n1)が1080〜1130cm-1の範囲にあり、
    前記金属酸化物(A)を構成する金属原子が、実質的にアルミニウム原子である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の保護シート。
  9. 表面を保護する保護シートを備える太陽電池であって、
    前記保護シートが、請求項5〜8のいずれか1項に記載の保護シートであり、
    前記保護シートにおいて、前記メタクリル樹脂層が前記水蒸気バリアフィルムよりも外側に配置されている、太陽電池。
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