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JP2014069983A - ガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置 - Google Patents

ガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置 Download PDF

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JP2014069983A
JP2014069983A JP2012216491A JP2012216491A JP2014069983A JP 2014069983 A JP2014069983 A JP 2014069983A JP 2012216491 A JP2012216491 A JP 2012216491A JP 2012216491 A JP2012216491 A JP 2012216491A JP 2014069983 A JP2014069983 A JP 2014069983A
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Tetsuro Kimishima
哲郎 君嶋
Noriyuki Hioki
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Abstract

【課題】ガラス基板を製造するとき、熔融ガラス中の気泡の生成を抑制する他、白金の揮発を抑制し、白金あるいは白金合金で構成された装置の熱による変形を抑制する。
【解決手段】ガラス基板の製造装置は、ガラス原料を加熱して熔融ガラスを生成する熔解炉と、前記熔融ガラスからガラス板を成形する成形装置と、前記熔解炉と前記成形装置との間に設けられ、前記熔融ガラスの移送または処理に用いる、白金又は白金合金から構成された管と、を備える。前記管には、前記熔融ガラスを漏洩させるための貫通孔が設けられ、前記管の外周には、前記管の外周面から離間した耐火煉瓦が設けられている。ガラス基板を製造するとき、前記ガラス基板の製造装置を用いる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、ガラス基板を製造するガラス基板の製造方法及び製造装置に関する。
今日、フラットパネルディスプレイ用ガラス板には、TFT(Thin Film Transistor)等の半導体素子が、ガラス板上に形成される。α-Si(アモルファスシリコン)・TFTやp-Si(低温ポリシリコン)・TFTや酸化物半導体がガラス基板に形成される。このために、半導体素子の特性に影響を与えないようにガラス組成としてLi,K等のアルカリ金属を全く含有しない無アルカリガラスか、含有したとしても微量含有するアルカリ微量含有ガラスが用いられる。また、清澄剤は従来Asが一般的であったが、近年の環境負荷の観点から、SnO等が用いられるようになってきている。
このようなガラス基板は、一般的に、ガラス原料から熔融ガラスを生成させた後、熔融ガラスをガラス基板へ成形する工程を経て製造される。上記の工程中には、熔融ガラスが内包する微小な気泡を除去する清澄処理が含まれる。また、清澄工程後の熔融ガラスに対して、スターラを用いて熔融ガラスを攪拌して、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減するために、ガラス成分の均質化を行う均質化処理が含まれる。
上記清澄処理を行う清澄管や均質化処理を行う攪拌槽、さらには、溶解炉から清澄管、攪拌槽を介して成形装置に到るガラス導管には、白金あるいは白金合金を構成部材とする管が用いられる。白金あるいは白金合金で構成された管では、管の内表面における水素濃度が管の外側表面における水素濃度に比べて高いと、水素が管の白金あるいは白金合金の内部を拡散して、管の外側表面に移動する。この結果、管の内部には、酸素がとり残され、熔融ガラス中において酸素の気泡が形成され易い。この気泡は、最終製品であるガラス基板にも残るため、歩留まりを低下させる。
このような状況下、コスト高を招来させることなく、白金容器近傍のガラス領域において泡の発生を防止し得るガラス製造装置及びガラス製造方法が知られている(特許文献1)。
当該製造装置及び製造方法では、溶解工程、清澄工程、供給工程、均質化工程、及び成形工程中の少なくとも一部に使用されるガラス製造装置において、白金又は白金合金からなる白金容器の外側に電鋳耐火物を備えると共に、白金容器と電鋳耐火物とをガラス層を介して密着させる。
すなわち、上記ガラス層により白金容器と電鋳耐火物を密着させることにより、水素の透過速度を確実に低下させることができるとともに、電鋳耐火物の目地を塞ぐこともできる、とされている。この場合、ガラス層の形成のために、予め白金容器と電鋳耐火物の間に隙間を設けた後、この隙間にガラス粉末が充填され、熱処理が施される。
特開平2012−111667号公報
しかし、上記特許文献1に記載されたガラス層の形成を利用した場合、別途ガラス粉末を充填する必要が有る為、装置構成自体が複雑となり易い。また、白金容器が昇温により熱膨張して変形することは防止できない。さらに、ガラス粉末を複雑な白金装置の隅々まで、確実に充填することは難しく、一旦、充填されていない空隙が形成されると、目的とする機能を発揮しないばかりか、その部分で、白金容器が変形し、最悪の場合、破断する。
そこで、本発明は、従来の方式とは異なる方式により、熔融ガラス中の気泡の生成を抑制する他、白金の揮発を抑制し、白金あるいは白金合金で構成された装置の熱による変形を抑制することができるガラス基板の製造装置及びガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、ガラス基板を製造するガラス基板の製造装置である。当該装置は、
ガラス原料を加熱して熔融ガラスを生成する熔解炉と、
前記熔融ガラスからガラス板を成形する成形装置と、
前記熔解炉と前記成形装置との間に設けられ、前記熔融ガラスの移送または処理に用いる、白金又は白金合金から構成された管と、
を備える。
前記管には、前記熔融ガラスを漏洩させるための貫通孔が設けられ、前記管の外周には、前記管の外周面から離間した耐火煉瓦が設けられている。
前記耐火煉瓦は、前記管の使用温度において、前記熔融ガラスに対して十分な耐食性を有した耐火物材料で構成されていることが好ましい。
前記ガラス基板の製造装置を用いて前記管に熔融ガラスを流してガラス基板を製造するとき、前記管の外周には、前記管の外周面から離間して前記耐火煉瓦が設けられているので、前記貫通孔から漏れ出した熔融ガラスは、前記管と前記耐火煉瓦との間に溜まり易い。熔融ガラスは、一般的に白金あるいは白金合金に比べて水素の透過速度が遅い。このため、従来問題となった熔融ガラス中の酸素の気泡も形成され難い。さらに、前記管の白金あるいは白金合金は熔融ガラスと接触するので酸素と触れる機会が極めて少なくなり、白金の揮発を防止することができる。しかも、前記管の内部と前記管の外周が前記貫通孔により略同一の圧力に維持されるので、前記管は変形せず、さらには、破損しない。また、従来のように、前記耐火煉瓦が前記管と直接接触して支持しないので、前記管の熱歪みに起因する破損もない。
前記管を前記熔融ガラスが流れて前記貫通孔から漏洩した熔融ガラスが、前記管と前記耐火煉瓦との間の少なくとも一部に保持されている、ことが好ましい。
熔融ガラスが前記前記管と耐火煉瓦との間に保持されているので、前記管の外周に溜まった熔融ガラスによる上述した効果を、ガラス基板の製造中、継続して発揮することができる。すなわち、ガラス基板の製造中、常時、熔融ガラス中の酸素の気泡は形成され難く、さらに、白金の揮発を継続して防止することができ、前記管の熱歪みに起因する破損もし難い。
前記耐火煉瓦は、ジルコニアを含む電鋳煉瓦である、ことが好ましい。
前記耐火煉瓦に関しては、前記耐火煉瓦の内面側の温度において、前記熔融ガラスに対して、十分な耐食性があれば、特に材質は問わない。例えば、前記耐火煉瓦の内面温度が、1580℃以上となる場合は、ジルコニア含有率が90質量%以上の高ジルコニア質電鋳煉瓦が適している。一方、前記耐火煉瓦の内面側の温度が、1580℃未満の場合、アルミナージルコニア系の電鋳煉瓦でも使用できる。さらに、前記耐火煉瓦の内面側の温度が、1500℃未満の場合、アルミナ含有率が60質量%以上のムライト質レンガや、アルミナ含有率が70質量%以上の電融ムライト質レンガを用いることができる。さらに、前記耐火煉瓦の内面側の温度が、1400℃未満の場合、アルミナ含有率が50質量%程度の高アルミナ質レンガを用いることもできる。勿論、前記管のすべての場所で、熔融ガラスに対する耐食性に最も優れた、高ジルコニア質電鋳煉瓦を使用しても構わないが、高ジルコニア質電鋳煉瓦は非常に高価で有り、且つ、異常熱膨張をする為、前記製造装置の昇温時、および降温時に昇温/降温プロセスに注意しないと破損してしまう。このため、前記耐火煉瓦の内側面の温度に合わせて、前記耐火煉瓦の材質を選択することが、設備投資の投資額の抑制とガラス基板の製造時の作業性の両面から、より好ましい。
前記耐火煉瓦の外側には、その必要に応じて、保温部材を設けることもできる。
前記管が、例えば前記熔融ガラスを急速に降温する工程に相当する管である場合、前記保温部材を設ける必要は無い。しかし、前記管が、前記熔融ガラスを昇温するか、もしくは、温度を保持するか、或いは徐冷する管である場合、前記保温部材が設けられる。このとき、前記保温部材を設けることにより、前記耐火煉瓦の熱伝導度が高くても、前記耐火煉瓦の外面からの放熱量が抑制され、前記管内の前記熔融ガラスの温度を、無駄にエネルギーを消費することなく、目的の温度に調整することができる。
前記耐火煉瓦の構成に関しては、特に限定しないが、前記電鋳煉瓦は、複数のブロックで組み上げられた構造体であり、前記ブロック間の目地以外の部分が、前記保温部材で覆われ、前記ブロック間の目地の部分は、前記保温部材で覆われず、前記目地の部分が露出している、ことが好ましい。前記ブロック間の目地以外の部分が、前記保温部材で覆われ、前記ブロック間の目地の部分は、前記保温部材で覆われることなく、外部に露出しているので、目地に熔融ガラスが進入しても、進入した熔融ガラスは、目地周りの前記耐火煉瓦による放熱により固化し、目地を塞ぐ。このため、熔融ガラスが前記耐火煉瓦の外周へ流出することを防止できる。
特に、ジルコニアを90質量%以上含む高ジルコニア質電鋳耐火物材を前記耐火煉瓦に用いる場合好適である。高ジルコニア質電鋳耐火物材の熱膨張は、高ジルコニア質電鋳耐火物材を1600℃以上の温度に昇温するとき、温度の上昇に従って線形的に大きくなるのではなく、1100〜1200℃の温度領域で一度急激に収縮した後、それより高い温度領域で、膨張を再開するといった異常熱膨張と呼ばれる挙動を示す。このため、一体的に形成された一つの部材で前記耐火煉瓦を構成した場合、熱歪みに起因する割れ目(クラック)が生じることがないように温度を上昇させる作業は極めて難しく、不適切な昇温を行うと、一体的に形成された電鋳耐火物材に熱歪みに起因する割れ目(クラック)が生じる場合がある。また、前記耐火煉瓦の形状に一体的に形成された高ジルコニア質電鋳耐火物材は非常に高価でコストがかかる。しかし、前記耐火煉瓦は、高ジルコニア質電鋳耐火物材で構成された複数のブロックを組み上げた構成を採用することにより、前記耐火煉瓦にかけるコストを抑制でき、高ジルコニア質電鋳耐火物材に割れ目(クラック)が生じ難くなる。
一方で、前記高アルミナ質レンガや、前記電融ムライト質レンガを使用する場合、異常膨張も無い。また、例えば、断面形状が樋型(U字型)のレンガを製作することも比較的容易かつ安価であるので、複数のブロックを積み重ねる替わりに、樋型レンガと蓋レンガの構成としてもよい。
前記熔融ガラスは、温度1500℃における粘度が102.5poise以上である。これにより、前記耐火煉瓦が複数のブロックの組立体であっても、前記ブロックの目地から滲み出しを効果的に抑制できる。
前記管と前記耐火煉瓦との間には、予め、中空空間が形成されている。前記中空間を形成することにより、前記中空空間に前記熔融ガラスが溜まり、保持することができる。
また、前記管と前記耐火煉瓦との間には、予め、キャスタブル耐火物が充填されていてもよい。前記キャスタブル耐火物は、高温では、容易に前記熔融ガラスに熔解され、液体状態となるので、酸素泡の形成を抑制し、前記管の白金の揮発を防止し、前記管の変形防止することができる。キャスタブル耐火物としては、例えば、アルミナセメントが使われるが、前記熔融ガラスとアルミナセメントが溶融して生じた熔融ガラスは、元の熔融ガラスのガラス組成よりも、アルミナの濃度が高く、粘性の高いガラスとなるので、前記耐火煉瓦に目地があったとしても、この目地から滲み出し難い。
また、前記管と、前記耐火煉瓦との間の少なくとも一部には、予め、前記熔融ガラス(熔融ガラスA)とは異なる組成である熔融ガラス(熔融ガラスB)が充填されていてもよい。
前記熔融ガラスBは、高温では容易に液体状態となり、前記熔融ガラスAと混合し、新たなガラス組成を有する熔融ガラスCとなるので、酸素泡の形成抑制、前記管の白金揮発防止、変形防止が達成できる。この新たな熔融ガラスCの組成は特に限定しないが、例えば、1500℃における粘度が、103.0poise以上となるように選定することで、前記耐火煉瓦に目地があったとしてもこの目地から熔融ガラスCの滲み出しを効果的に抑制できる。
更に、本発明の他の一態様は、前記ガラス基板の製造装置を用いてガラス基板を製造する、ガラス基板の製造方法である。当該製造方法においても、前記ガラス基板の製造装置を用いるので、熔融ガラス中の気泡の生成を抑制することができる。また、白金の揮発を抑制することができる。白金あるいは白金合金で構成された管の熱による変形を抑制することができる。
上述の態様のガラス基板の製造方法及び製造装置によれば、熔融ガラス中の気泡の生成を抑制することができる。また、上述の態様のガラス基板の製造方法及び製造装置によれば、白金あるいは白金合金を含む構成部材からなる管において、白金の揮発を抑制することができる。上述の態様のガラス基板の製造方法及び製造装置によれば、白金あるいは白金合金で構成された管の熱による変形を抑制することができる。
本発明のガラス基板の製造方法の工程の一例を示す図である。 本実施形態における熔解工程〜切断工程を行う装置の一例を模式的に示す図である。 本実施形態の装置に用いるガラス供給管とこの管を取り巻く、装置の準備処理前の構成を説明する図である。 本実施形態の装置に用いるガラス供給管とこの管を取り巻く、装置の準備処理後の状態を説明する図である。 本実施形態の変形例を説明する図である。
以下、本実施形態のガラス基板の製造方法及び製造装置について説明する。図1は、本発明のガラス基板の製造方法の工程の一例を示す図である。
ガラス基板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、準備処理・清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。準備処理・清澄工程(ST2)と均質化工程(ST3)は、白金または白金合金を少なくとも一部分に用いた管に熔融ガラスを流して、後述する熔解炉から、ガラス基板を成形する成形装置に熔融ガラスを供給する供給工程(ST4)を形成している。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス基板は、納入先の業者に搬送される。
本実施形態のガラス基板の製造方法及び製造装置では、熔解炉と清澄槽の管本体との間を接続するガラス供給管に熔融ガラスを流して、ガラス供給管の壁面に事前に設けた貫通孔から熔融ガラスの一部を外部に漏出させ、この漏出した熔融ガラスをガラス供給管と、ガラス供給管の外周に設けた耐火物支持体(耐火煉瓦)との間に予め形成されている中空空間に保持させる。また、供給工程において、漏出した熔融ガラスを、ガラス供給管と、ガラス供給管の外周に設けた耐火物支持体との間の中空空間に保持する状態を維持させる。
本実施形態では、熔融ガラスを漏出させ、耐火物支持体との間に形成される中空空間に熔融ガラスを保持させる対象は、ガラス供給管であるが、本発明においては、ガラス供給管に限定されない。例えば、熔解工程を行う熔解炉から成形工程を行う成形装置へ熔融ガラスを供給する途中の処理容器を構成する管、例えば清澄槽の容器(清澄管)や攪拌槽の容器を構成する管において、処理容器を構成する管の外部に熔融ガラスを漏出させ、耐火物支持体との間に形成されている中空空間に熔融ガラスを保持させ、更にこの状態を維持させることもできる。
また、ガラス供給管は、白金または白金合金を少なくとも一部分に用いた管であってもよく、この場合、白金あるいは白金合金を用いた一部の場所において、熔融ガラスを漏出させ、耐火物支持体との間に形成されている中空空間に熔融ガラスを保持させ、更にこの状態を維持させることができる。
また、本実施形態では、ガラス供給管と耐火物支持体の間に中空空間を予め形成しているが、ガラス供給管と耐火物支持体の間に、予め、キャスタブル耐火物、もしくは、熔融ガラスを充填しておくこともできる。
熔解工程(ST1)は熔解炉で行われる。熔解工程では、熔解炉に蓄えられた熔融ガラスの液面にガラス原料を投入しガラス原料を加熱することにより、熔融ガラスを作る。さらに、熔解炉内の熔融ガラスは所定の温度に加熱されて、溶解炉の底部に設けられた流出口から後工程に向けて熔融ガラスを流す。
熔解炉の熔融ガラスの加熱は、熔融ガラス自身に電気が流れて自ら発熱して加熱する方法に加えて、バーナーによる火焔を補助的に与えてガラス原料を熔解することもできる。なお、ガラス原料には清澄剤が添加される。清澄剤として、SnO2,As23,Sb23等が知られているが、特に制限されない。しかし、環境負荷低減の点から、清澄剤としてSnO2(酸化錫)を用いることが好ましい。
準備処理・清澄工程(ST2)は、少なくともガラス供給管及び清澄槽において行われる。準備処理・清澄工程は、後述する清澄処理を行う前の準備処理を行う工程と、清澄処理を行う工程とを含む。準備処理は、熔解炉と清澄槽の管本体との間を接続するガラス供給管に熔融ガラスを流すことにより行われる。準備処理については後述する。清澄工程では、清澄槽を用いて、熔融ガラスの清澄処理が行われる。清澄処理では、清澄槽内の熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれるO2、CO2あるいはSO2を含んだ泡が、清澄剤の還元反応により生じたO2を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に泡は浮上して泡に含まれるガスが清澄槽内の気相空間内に放出される。さらに、清澄工程では、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中のO2等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスの温度を制御することにより行われる。なお、清澄槽は、熔融ガラスから気相空間に放出されたガスを大気に放出するために、大気に連通した通気管を備える。
均質化工程(ST3)では、清澄槽から延びる配管を通って供給された攪拌槽内の熔融ガラスを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。
このように、後述する熔解炉から熔融ガラスを流し、清澄工程及び均質化工程を経て、ガラス基板を成形する成形装置に供給する。
成形装置では、成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。成形は、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置において、成形装置から供給されたシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。切断されたガラス板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。この後、ガラス基板の端面の研削、研磨が行われ、ガラス基板の洗浄が行われ、さらに、気泡等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
図2は、本実施形態における熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行うガラス基板の製造装置の一例を模式的に示す図である。当該装置は、図2に示すように、主に熔解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔解装置100は、熔解炉101と、清澄槽102と、攪拌槽103と、ガラス供給管104,105,106と、を有する。
図2に示す熔解炉101では、ガラス原料の投入がバケット101dを用いて行われ、熔融ガラスMGが生成される。清澄槽102では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスMGの清澄が行われる。さらに、攪拌槽103では、スターラ103aによって熔融ガラスMGが攪拌されて均質化される。成形装置200では、成形体210を用いたオーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスMGからシートガラスSGが成形される。
なお、本実施形態では、図2に示す熔解炉101から成形装置200にいたる熔融ガラスMGの流路、具体的には、ガラス供給管104、清澄槽102の後述する管本体、ガラス供給管105、攪拌槽103の容器、およびガラス供給管106の熔融ガラスMGの流路を形成する流路は、白金あるいは白金合金で構成されているが、少なくとも一部が白金あるいは白金合金で構成されていてもよい。
(ガラス供給管104)
ガラス供給管104は、熔解炉101と清澄槽102を接続するガラス供給管である。清澄槽102において脱泡処理を行うために、ガラス供給管104には、熔融ガラスMGを高温に加熱するための図示されない電極が設けられる。この電極からガラス供給管104に電流を流すことにより、ガラス供給管104が発熱することにより、ガラス供給管104が熔融ガラスMGの加熱源となっている。熔融ガラスMGは、清澄槽102に流れるときには、上記加熱源を用いて例えば1630℃以上に昇温される。ガラス供給管104には、例えば、耐熱性及び高温耐食性の高い白金または白金合金が用いられる。
ガラス供給管104の周りには、耐火煉瓦である耐火物支持体が設けられている。耐火物支持体とガラス供給管104との間には中空空間が設けられている。具体的には、耐火物支持体110aは、電鋳耐火物材で構成された直方体形状の複数のブロックにより組み立てられた組立体であり、ガラス供給管104を外周から支持する。耐火物支持体の構成については後述する。
一方、ガラス供給管104の略中央部の底部には、ガラス供給管104の外部に連通すし、熔融ガラスMGを外部に漏出させるための貫通孔104a(図3参照)が設けられている。貫通孔104aは、後述する準備処理を行うために利用される。貫通孔104aは、ガラス供給管104の強度の低下が極力ない位置に設けられることが好ましい。
貫通孔104aの形状に関しては、特に制限は無いが、貫通孔が起点となってクラックが生成することを防ぐために、或いは、ガラス供給管104を通電加熱している場合、電流密度の集中によるホットスポットの発生を防ぐために、円形、もしくは、通電方向に平行な楕円形状が望ましい。貫通孔104aの大きさについても、特に制限は無いが、貫通孔104aの形成目的を達成するために、5mm以下の直径であれば十分であり、不必要に大きな開口を設けることは、電流密度の集中によるホットスポットが生成することから好ましくなく、また、前述の耐火物支持体に目地があり、万一、この目地から熔融ガラスが漏れ出した時、漏れ出し量が増え易いことから、好ましくない。
貫通孔104aの位置は、後述するように、熔融ガラスMGが耐火物支持体110aとガラス供給管104との間の中空空間に効率よく流れ込むために、ガラス供給管104の底部に設けられることが好ましい。しかし、貫通孔104aの位置は特に制限されない。貫通孔104aの他にガラス供給管104には、他の貫通孔が設けられてもよい。例えば、熔融ガラスMGが均等に上記中空空間に流れ込むように、ガラス供給管104の側方部の両側の同じ高さ方向の位置に同じ大きさで設けられることが好ましい。
(ガラス供給管104の外周を取り巻く構成)
図3は、ガラス供給管104とガラス供給管104の外周を取り巻く、後述する準備処理前の構成を説明する断面図である。図4は、ガラス供給管104とガラス供給管104の外周を取り巻く、装置の準備処理後の状態を説明する図である。
図3に示すように、ガラス供給管104には、管の途中にガラス供給管104の外部に連通する貫通孔104aが予め設けられている。ガラス供給管104の外周には、ガラス供給管104の外周面から離間した耐火物支持体110aが設けられている。耐火物支持体110aの内側の面は、ガラス供給管104の外周面と接触しない。耐火物支持体110aは、本発明における耐火煉瓦に対応する。耐火物支持体110aの外周には、断熱煉瓦層110bと保温層110cとが設けられている。ガラス供給管104と耐火物支持体110aとの間には予め、中空空間120が形成されている。この中空空間120には、ガラス基板を製造するとき、ガラス供給管104から漏れ出た熔融ガラスが充填される。ガラス供給管104は、耐火物支持体110aで囲まれた中空空間120の所定の位置に、図示されない部材により固定されている。
耐火物支持体110aは、ガラス供給管104を支持する電鋳耐火物材で構成されている。具体的には、耐火物支持体110aは、電鋳耐火物材で構成された直方体形状の複数のブロックを組み上げた組立体である。図3に示す形態では、複数のブロックを井桁状に組み上げて耐火物支持体110aを構成している。複数のブロックを井桁状に組み上げる際、目地の隙間が大きくならないように組まれる。
耐火物支持体110aとガラス供給管104との間の中空空間120に、ガラス供給管104の底部に設けられた貫通孔104aから漏出する熔融ガラスMGを保持させるように、耐火物支持体110aが設けられている。電鋳耐火物材は、気孔率が小さく緻密であるため、熔融ガラスMGが沁み出すことはない。電鋳耐火物材としては、耐火物支持体110aの内面温度が1580℃以上となる場合は、ジルコニア含有率が90質量%以上の高ジルコニア質電鋳煉瓦が適している。一方、耐火物支持体110aの内面温度が1580℃未満の場合は、ジルコニア含有率が30〜40質量%程度の、アルミナージルコニア系の電鋳煉瓦でも使用できる。
なお、図3で説明する構成は、熔解炉101と清澄槽102を接続するガラス供給管104であるが、清澄槽102と攪拌槽103とを結ぶガラス供給管105、攪拌槽103、あるいは、攪拌槽103と成形装置200とを結ぶガラス供給管106についても、同様の構成を用いることができる。この場合、熔解炉101と清澄槽102を接続するガラス供給管104とは異なり、清澄槽102と攪拌槽103とを結ぶガラス供給管105、攪拌槽103、あるいは、攪拌槽103と成形装置200とを結ぶガラス供給管106については、耐火物支持体の内面温度が低くなるので、耐火物支持体の材質としては、ジルコニアを含有する電鋳煉瓦でなくてもよい。例えば、耐火物支持体の内面温度が1500℃未満の場合、アルミナ含有率が60質量%以上のムライト質レンガや、アルミナ含有率が70質量%以上の電融ムライト質レンガでもよい。例えば、耐火物支持体の内側表面の温度が1400℃未満の場合、アルミナ含有量が50質量%程度の高アルミナ質レンガでもよい。
なお、本実施形態の耐火物支持体110aは、電鋳耐火物材で構成された直方体形状の複数のブロックを組み上げた組立体で構成されるが、耐火物支持体110aを、このようなブロックによる組立体で構成するのは以下の理由に拠る。すなわち、熔融ガラスMGが耐火物支持体110aから流出するのを防止する観点から、ブロック間の継ぎ目である目地が無く、耐火物支持体110aの形状が一つの部材により一体的に形成されたものを用いることが好ましい。しかし、このような一体的に形成された電鋳耐火物材のサイズは極めて大きなものになり、図3に示すように井桁形状の断面を成しているので、精度良く作製することは難しく、さらに、作製コストは極めて高い。また、高ジルコニア質電鋳耐火物材の熱膨張率は比較的大きい。しかも、高ジルコニア質電鋳耐火物材の熱膨張は、高ジルコニア質電鋳耐火物材を1600℃以上の温度に昇温するとき、温度の上昇に従って線形的に大きくなるのではなく、1100〜1200℃の温度領域で一度急激に収縮した後、それより高い温度領域で、膨張を再開するといった異常熱膨張と呼ばれる挙動を示す。このため、一体的に形成された一つの部材で耐火物支持体110aを構成した場合、熱歪みに起因する割れ目(クラック)が生じることがないように温度を上昇させる作業は極めて難しく、不適切な昇温を行うと、一体的に形成された電鋳耐火物材の部材に熱歪みに起因する割れ目(クラック)が生じる場合がある。本実施形態の耐火物支持体110aは、電鋳耐火物材で構成された複数のブロックを組み上げた構成を採用するので、電鋳耐火物材、すなわち耐火物支持体110aに割れ目(クラック)が生じ難くなる。特に、保温機能を有する断熱煉瓦層110bと保温層110cを耐火物支持体110aの外周に設けることで、後述するように熱伝導度が高い電鋳耐火物材であっても、電鋳耐火物材で構成した耐火物支持体110aの温度分布が均一に近づき、熱歪みに起因した割れ目(クラック)が生じ難くなる。
なお、ガラス供給管104と同様に、ガラス供給管105、攪拌槽103、あるいは、ガラス供給管106の外周にも、耐火物支持体が設けられる場合、ガラス供給管104とは異なり、ガラス供給管105、攪拌槽103、あるいは、ガラス供給管106については、耐火物支持体の内面温度が低くなるので、耐火物支持体の材質としては、アルミナ含有率が60質量%以上のムライト質レンガや、アルミナ含有率が70質量%以上の電融ムライト質レンガ、アルミナ含有率が50質量%程度の高アルミナ質レンガが用いらることができる。これらのレンガを使用する場合、異常膨張も無く、また、例えば、断面形状が樋型(U字型)のレンガを製作することも比較的容易かつ安価であるので、複数のブロックを積み重ねる替わりに、樋型レンガと蓋レンガの構成としてもよい。
ところで、耐火物支持体110aを構成する電鋳耐火物材の熱伝導度は高いため、断熱煉瓦層110bと保温層110cが設けられない場合、ガラス供給管104の外側で耐火物支持体110a内に保持される熔融ガラスMGの熱は電鋳耐火物材に伝わり外部に放熱され、しかも、その放熱量は大きい。例えば、90質量%以上のジルコニアを含有する高ジルコニア質電鋳耐火物材の、1500℃における熱伝導度は、4[W/m/K]であり、アルミナ−ジルコニア−シリカ質電鋳耐火物材の、1400℃における熱伝導度は、6[W/m/K]であり、気孔率の高い耐火物材に比べて熱伝導度は大きい。このため、熔融ガラスMGの脱泡処理のために通電加熱して熔融ガラスMGを加熱するガラス供給管104においては、放熱量を考慮して通電加熱量を大きくしなければならず、エネルギー効率の点から好ましくない。
このため、耐火物支持体110a内に保持される熔融ガラスMGの熱が外部へ逃げる放熱量を抑制するために、耐火物支持体110aの外周には、保温部材として機能する断熱煉瓦層110bと保温層110cが設けられている。
また、耐火物支持体110aの外周に、断熱煉瓦層110bと保温層110cを設けることにより、清澄槽102の昇温時、耐火物支持体110aの電鋳耐火物材の場所による温度差が小さくなり、電鋳耐火物材の熱膨張に起因する割れ等を抑制することができる。断熱煉瓦層110bは、耐火物支持体110aと接触するように設けられるので、耐火物支持体110aを外側から補強する機能も有する。
断熱煉瓦層110bは、1層に断熱レンガにより構成されてもよいが、より好ましくは、耐火物支持体110aの次の層には、耐熱温度が高いレンガ、例えば、耐熱温度が1650℃、熱伝導度が0.4W/m/Kのレンガを配し、その外側に、耐熱温度は下がるが、熱伝導度のより小さいレンガ、例えば、耐熱温度が1300〜1500℃、熱伝導度が0.2〜0.3W/m/K、のレンガを配する、というように、外側に行くほど、耐熱温度は下がるが、熱伝導度が小さくなるレンガを配することができる。
保温層110cは、熱伝導度が0.05〜0.15W/m/K程度の、公知のセラミックスファイバ製ボードやブランケットで構成される。
なお、耐火物支持体110aは、電鋳耐火物材で構成された複数のブロックを組み上げた組立体であるので、ブロック間には必ず目地が存在する。熔融ガラスMGが、耐火物支持体110aのブロック間の目地に進入しないためには、ガラス供給管104内の熔融ガラスMGの温度1500℃における粘度が102.5以上であることが好ましい。なお、熔融ガラスMGが耐火物支持体110aから流出しないように、目地の幅は狭いことが好まく、目地の隙間は0.4mm以下であることが好ましく、0.3mm以下とすることがより好ましく、0.2mm以下とすることがさらに好ましい。このような目地の隙間を上記数値範囲に制限するためには、ブロックの組み上げを井桁状に精度高く行う必要がある。
また、本実施形態の断熱煉瓦層110bと保温層110cは、耐火物支持体110aのブロック間の目地の部分を覆わず、ブロック間の目地以外の部分を覆っている。目地の部分は、断熱煉瓦層110bと保温層110cの外部に露出している。したがって、耐火物支持体110aのブロック間の目地の部分の放熱量は高い。このような構成を採用することにより、耐火物支持体110a内に保持される熔融ガラスMGがブロック間の目地に進入しても、進入した熔融ガラスは、目地周りの耐火物支持体110aの高い熱伝導度による放熱により固化し、目地を塞ぐ役割を果たす。すなわち、放熱を利用して目地に進入した熔融ガラスを固化させて、熔融ガラスMGが耐火物支持体110aの外周へ流出することを防止できる。ここで、断熱煉瓦層110bと保温層110cにより覆われない目地の部分とは、5cm以下の幅の目地を含む領域であることが好ましく、より好ましくは4cm以下の幅の目地を含む領域であり、さらに好ましくは3cm以下の幅の目地を含む領域である。
以上のように、ガラス供給管104内の温度1500℃における粘度が102.5poise以上である場合、熔融ガラスMGは目地に進入し難いが、万が一進入したとしても、熔融ガラスMGは固化するので、目地を伝って耐火物支持体110aの外周に熔融ガラスMGが流出することを防止することができる。
なお、ここまで説明してきた、溶解炉101と清澄槽102を接続するガラス供給管104とは異なり、例えば、清澄槽102と攪拌槽103を結ぶガラス供給管105のように、積極的に内部を流れる溶有ガラスの温度を下げたい場合は、当然のことながら、断熱煉瓦層および/或いは、保温層を設置せず、或いは、その設置による断熱量を、熔融ガラスの温度が所定の温度となるように調節する。
なお、図3中に矢印で示すように、図3中の保温層110cは、図示されない押さえ金具で矢印方向に押圧して耐火物支持体110aが熔融ガラスMGの圧力によって外側に広がろうとする力に対向する。これにより、耐火物支持体110aの形状は保持される。
(ガラス供給管の準備処理)
このようなガラス供給管104を取り巻く構成部材により、ガラス基板を製造するとき、以下のガラス供給管104に準備処理が施される。準備処理とは、ガラス供給管104に設けられた貫通孔104aから熔融ガラスMGの一部をガラス供給管104の外部に漏出させ、ガラス供給管104と、耐火物支持体110aとの間の中空空間120に漏出した熔融ガラスMGを保持させる処理である。すなわち、ガラス基板の製造時、まず熔解炉101において、熔解工程(ステップST1)でガラス原料を熔解して熔融ガラスMGが生成される。このとき、図3に示すように、ガラス供給管104と耐火物支持体110aとの間には予め、中空空間120が形成されている。この後、生成された熔融ガラスMGをガラス供給管104に流し、ガラス供給管104に対して、熔融ガラスMGを用いて準備処理を行う。このとき、ガラス供給管104は、略1000℃以上に加熱された状態にある。
ガラス供給管104内を流れる熔融ガラスMGの量が増えるにつれて、ガラス供給管104内の液面が上昇する。これに合わせて、ガラス供給管104の外周に設けられた貫通孔104aから熔融ガラスMGは漏出し、耐火物支持体110aとガラス供給管104との間の中空空間に溜まる。このとき、この部分の熔融ガラスMGの液面はガラス供給管104の内の液面一致するように上がる。最終的に、熔融ガラスMGは、ガラス供給管104内に一杯に充填されて流れる。同様に、漏出した熔融ガラスMGは、ガラス供給管104と耐火物支持体110aとの間の中空空間120に充填される。このとき、耐火物支持体110aの外周には、断熱煉瓦層110bと保温層110cが設けられているので、耐火物支持体110aの熱伝導度が高くても、耐火物支持体110aの外面からの放熱量が抑制され、ガラス供給管104内の熔融ガラスMGの温度を、無駄にエネルギーを消費することなく、目的の温度に調整することができる。こうして、漏出した熔融ガラスMGは、ガラス供給管104と耐火物支持体110aとの間の中空空間120に保持される。
このような準備処理を施したガラス供給管104を用いて、図1に示す清澄工程、均質化工程を含むガラス基板の製造方法が開始される。すなわち、熔融ガラスMGを用いて準備処理を行った後、準備処理の行われたガラス供給管104を用いて、すなわち、貫通孔104aからガラス供給管104の外部に漏出した熔融ガラスMGの一部を中空空間120に保持させつつ、成形装置200に熔融ガラスMGを供給する。ガラス供給管104と、耐火物支持体110aとの間の中空空間120に漏出した熔融ガラスMGは、供給工程中、固化されること無く液体の状態が維持される。
なお、従来のガラス基板の製造法及び製造装置では、上述したように、ガラス供給管104の内部には、酸素がとり残され、熔融ガラス中において酸素の気泡が形成され易く、最終製品であるガラス基板の歩留まりを低下させる問題があった。
従来のガラス基板の製造法及び製造装置でも、本実施形態同様に、清澄槽や攪拌槽の処理容器を構成する管、さらにはガラス供給管に、白金あるいは白金合金が用いられる。このため、熔融ガラスの温度が例えば1600℃を超えるような高温の場合、白金あるいは白金合金は酸素の存在下、酸化しあるいは揮発することで、白金あるいは白金合金からなる構成部材の厚さが薄くなり、処理容器を構成する管やガラス供給管が破損するといった問題があった。
さらに、従来のガラス基板の製造法及び製造装置では、白金あるいは白金合金で構成された清澄槽、攪拌槽、あるいはガラス供給管等の管の高温時の強度を確保するために、強度の高い耐熱セラミックス等の素材からなる支持部が上記管の外周に配置され、上記管は強固に支持固定される。この耐熱セラミックス等の支持体は、ガラス基板の製造の操業開始のための昇温により高温状態になる。あるいは、場合によっては、支持部は、ガラス基板の製造の操業時の熔融ガラスの温度条件の変更により高温状態から温度の変更を受ける。このとき、上記清澄槽、攪拌槽あるいはガラス供給管の構成部材である白金あるいは白金合金の熱膨張率は、支持体の熱膨張率との間で差があるため、白金あるいは白金合金は、この熱膨張率の差に起因して熱応力を受け、場合によっては、熱変形し破断するという問題があった。
しかし、上述のように、本実施形態のガラス基板の製造方法および製造装置では、ガラス供給管104に設けられた貫通孔104aからガラス供給管104の外部に漏出した熔融ガラスMGの一部を、ガラス供給管104と、耐火物支持体110aとの間の中空空間120に保持させつつ、熔融ガラスMGを成形装置200に供給する。このため、ガラス供給管104の外周が水素の透過速度の遅い熔融ガラスで囲まれているので、従来問題となった熔融ガラスMG中の酸素の気泡も形成され難い。さらに、白金あるいは白金合金が酸素と触れる機会は極めて少なくなるので、従来問題であった白金の揮発を防止することができる。しかも、ガラス供給管104の内部と外周が前記管通孔の存在により、略同一の圧力に維持されるので、強度の高い支持部材によりガラス供給管104が機械的に支持されていなくても、ガラス供給管104が変形せず、さらには、破損しない。また、耐火物支持体が管本体を補強するために、従来のように、支持体が管本体を外周から支持固定する場合に生じる管本体の熱歪みに起因する破損もない。すなわち、従来問題となっていた問題を解消することができる。
本実施形態では、ガラス供給管104を中心に説明したが、耐火物支持体110a、断熱煉瓦層110b、及び保温層110cの配置を、清澄槽102の管本体、あるいは攪拌槽103の処理容器を構成する管やガラス供給管105,106にも適用できる。この場合においても、従来、熔融ガラスMGを高温化することにより清澄槽、攪拌槽、あるいはガラス供給管に生じていた上述した問題点を解消することができる。
耐火物支持体110aでは、ジルコニアを含有する電鋳耐火物材、好ましくは、高ジルコニア質電鋳耐火物材を用いるので、耐火物支持体110aの表面は、ガラス供給管104から漏出した熔融ガラスMGの浸食を受け難い。
耐火物支持体110aの外周には、保温部材として機能する断熱煉瓦層110bと保温層110cが設けられるので、熱伝導度が高い電鋳耐火物材からの放熱量を抑制することができ、耐火物支持体110aの熱伝導度が高くても、耐火物支持体110aの外面からの放熱量が抑制され、ガラス供給管110a内の熔融ガラスMGの温度を、無駄にエネルギーを消費することなく、目的の温度に調整することができる。
また、耐火物支持体110aは、電鋳耐火物材からなる複数のブロックで組み上げられた組立体であり、ブロック間の目地以外の部分が、断熱煉瓦層110bと保温層110c等の保温部材で覆われ、ブロック間の目地の部分は、保温部材で覆われず保温部材の外部に対して露出している。このため、目地に熔融ガラスMGが進入したとしても、電鋳耐火物材の放熱により目地に進入した熔融ガラスMGは固化され易い。このため、熔融ガラスMGが目地に進入し、耐火物支持体110aの外周に流出することを防止できる。
また、熔融ガラスMGの粘度は、温度1500℃における粘度が102.5poise温度以上であるので、ブロック間の目地に進入し難い。
(ガラス基板)
本実施形態の製造方法で製造されるガラス基板の一例として以下のものが挙げられる。
フラットパネルディスプレイ用ガラス基板として好適な無アルカリガラスは、
SiO2:50質量%〜70質量%、
Al23:0質量%〜25質量%、
23:1質量%〜15質量%、
MgO:0質量%〜10質量%、
CaO:0質量%〜20質量%、
SrO:0質量%〜20質量%、
BaO:0質量%〜10質量%、
を含有する。
ここで、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計の含有量は、5質量%〜30質量%である。
また、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板として、アルカリ金属を微量含むアルカリ微量含有ガラスを用いてもよい。アルカリ微量含有ガラスは、成分として、0.1質量%〜0.5質量%のR’ 2Oを含み、好ましくは、0.2質量%〜0.5質量%のR’Oを含む。ここで、R’は、Li、NaおよびKから選択される少なくとも1種である。なお、R’2Oの含有量の合計は、0.1質量%未満であってもよい。
なお、上記のガラス基板は、ヒ素を実質的に含まないことが好ましく、ヒ素およびアンチモンを実質的に含まないことがより好ましい。すなわち、これらの物質を含むとしても、それは不純物としてであり、具体的には、これらの物質は、As23、および、Sb23という酸化物のものも含め、0.1質量%以下であることが好ましい。
さらに、上述した成分に加え、本実施形態のガラス基板に用いるガラスは、ガラスの様々な物理的、熔融、清澄、および、成形の特性を調節するために、様々な他の酸化物を含有しても差し支えない。そのような他の酸化物の例としては、以下に限られないが、TiO2、MnO、ZnO、Nb25、MoO3、Ta25、WO3、Y23、および、La23が挙げられる。ここで、フラットパネルディスプレイ用ガラス板は、泡に対する要求が特に厳しいので、上記酸化物の中では清澄効果が大きいSnO2を少なくとも含有することが好ましい。
上記ROの供給源には、硝酸塩や炭酸塩を用いることができる。なお、熔融ガラスの酸化性を高めるには、ROの供給源として硝酸塩を工程に適した割合で用いることがより望ましい。
(変形例)
図5は、本実施形態の変形例を示す図である。本変形例では、耐火物支持体110aは、ガラス供給管104aの外周面から離間して設けられているが、耐火物支持体110aとガラス供給管104aとの間には、キャスタブル耐火物130が充填されている。キャスタブル耐火物130は、高温では、容易に貫通孔104aから漏れ出た熔融ガラスMGに熔解され、液体状態となる。このため、この液体が熔融ガラスの酸素泡の形成を抑制し、ガラス供給管104aの白金の揮発を防止し、ガラス供給管104aの変形防止することができる。キャスタブル耐火物130としては、例えば、アルミナセメントが使われる場合、熔融ガラスとアルミナセメントが溶融して生じた熔融ガラスの液体は、元の熔融ガラスのガラス組成よりも、アルミナ濃度が高く、粘性の高いガラスとなる。このため、耐火物支持体110aの目地から滲み出し難い。
また、耐火物支持体110aとガラス供給管104aとの間には、キャスタブル耐火物130の代わりに、ガラス基板を製造するために用いる熔融ガラスとは別のガラス組成を有する熔融ガラス(熔融ガラスBという)が充填されて保持されてもよい。この熔融ガラスBは、高温では容易に液体状態となり、ガラス基板の製造に用いる熔融ガラス(熔融ガラスAという)と混合し、新たなガラス組成を有する熔融ガラスCとなるので、酸素泡の形成抑制、ガラス供給管104の白金揮発防止、変形防止が達成できる。この新たな熔融ガラスCの組成は特に限定しないが、例えば、1500℃における粘度が、103.0poise以上となるように選定することで、耐火物支持体110aの目地から熔融ガラスCの滲み出しを効果的に抑制できる。
なお、上述した本実施形態及び変形例では、ガラス供給管104を通過した熔融ガラスMGを清澄槽102にて清澄処理するため、ガラス供給管104の準備処理は清澄工程の前に行われるが、ガラス供給管105や攪拌槽103の処理容器等の実施する管に応じて準備処理の順番は、変更される。
以上、本発明のガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
100 熔解装置
101 熔解炉
101a 流出口
102 清澄槽
103 攪拌槽
103a スターラ
104,105,106 ガラス供給管
104a 貫通孔
110a 耐火物支持体
110b 断熱煉瓦層
110c 保温層
120 中空空間
130 キャスタブル耐火物
200 成形装置
210 成形体
300 切断装置


Claims (11)

  1. ガラス原料を加熱して熔融ガラスを生成する熔解炉と、
    前記熔融ガラスからガラス板を成形する成形装置と、
    前記熔解炉と前記成形装置との間に設けられ、前記熔融ガラスの移送または処理に用いる、白金又は白金合金から構成された管と、
    を備えるガラス基板の製造装置であって、
    前記管には、前記熔融ガラスを漏洩させるための貫通孔が設けられ、
    前記管の外周には、前記管の外周面から離間した耐火煉瓦が設けられている、ことを特徴とするガラス基板の製造装置。
  2. 前記管を前記熔融ガラスが流れて前記貫通孔から漏洩した熔融ガラスが、前記管と前記耐火煉瓦との間の少なくとも一部に保持されている、請求項1に記載のガラス基板の製造装置。
  3. 前記耐火煉瓦は、ジルコニアを含む電鋳煉瓦である、請求項1または2に記載のガラス基板の製造装置。
  4. 前記耐火煉瓦は、高アルミナ質レンガ、ムライト質レンガ、あるいは、電融ムライト質レンガである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造装置。
  5. 前記耐火煉瓦の外側に、さらに、保温部材が設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス基板の製造装置。
  6. 前記耐火煉瓦は、ジルコニアを含む電鋳煉瓦であり、
    前記電鋳煉瓦は、複数のブロックで組み上げられた構造体であり、
    前記ブロック間の目地以外の部分が、前記保温材で覆われ、前記ブラック間の目地の部分は、前記保温部材で覆われていない、請求項5に記載のガラス基板の製造装置。
  7. 前記熔融ガラスは、温度1500℃における粘度が102.5poise以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス基板の製造装置。
  8. 前記管と前記耐火煉瓦との間には、予め、中空空間が形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス基板の製造装置。
  9. 前記管と前記耐火煉瓦との間には、予め、キャスタブル耐火物が充填されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス基板の製造装置。
  10. 前記管と、前記耐火煉瓦との間の少なくとも一部には、予め、前記熔融ガラスとは異なる組成である熔融ガラスが充填されている、請求項1〜7のいずれか1項または請求項9に記載のガラス基板の製造装置。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のガラス基板の製造装置を用いてガラス基板を製造する、ガラス基板の製造方法。

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