JP2014067638A - 非水系二次電池用炭素材、及び負極並びに、非水系二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭素質物又は黒鉛質物で被覆した内部空隙率が1%以上23%未満である加圧処理された複合炭素材(A)と、内部空隙率が23%以上40%以下である炭素材(B)を含有することを特徴とする非水系二次電池用炭素材を製造する。
【選択図】なし
Description
リチウムイオン二次電池の負極材としては、コストと耐久性の面から、黒鉛材料や非晶質炭素が使用されることが多い。しかしながら、非晶質炭素材は、実用化可能な材料範囲での可逆容量の小ささ故、また黒鉛材料は、高容量化のために負極材料を含む活物質層を高密度化すると、材料破壊により初期サイクル時の充放電不可逆容量が増え、結果として、高容量化に至らないといった問題点があった。
また特許文献2では、天然黒鉛球状化粒子および天然黒鉛塊状化粒子のうち少なくとも一方が加圧処理された加圧黒鉛粒子の表面に、炭化物からなる被覆層が形成されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池用黒鉛材料が開示されている。
また、特許文献2では、天然黒鉛球状化粒子および天然黒鉛塊状化粒子のうち少なくとも一方が加圧処理された加圧黒鉛粒子の表面に、炭化物からなる被覆層が形成されているリチウムイオン二次電池用黒鉛材料が開示されているが、このような炭素材料では、市場の要求性能を満足できるものではない。
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、硬さの異なる材を混合することで、硬い材料の表面構造を破壊することなく、高い密度で負極を製造することができる。
これに対し、本発明に係る非水系二次電池用炭素材は、複合炭素材(A)と炭素材(B)とを含むことにより、複合炭素材(A)が本来持つと考えられる電池特性を損ねることなく、更に優れた電池特性を得る事ができると考えられる。
<複合炭素材(A)の原料である原料炭素材>
本発明の複合炭素材(A)の原料である原料炭素材は、一例として下記に示すが、特に制限されない。
原料炭素材の例としては、黒鉛から非晶質のものにいたるまで種々の黒鉛化度の原料炭素材が挙げられる。
また、商業的にも容易に入手可能であるという点で、黒鉛又は黒鉛化度の小さい原料炭素(非晶質炭素)材が特に好ましい。このような黒鉛又は黒鉛化度の小さい黒鉛(非晶質炭素)を原料炭素材として用いると、他の負極活物質を用いた場合よりも、高電流密度での充放電特性の改善効果が著しく大きいので好ましい。
天然黒鉛の具体例としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土壌黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては、ピッチ原料を高温熱処理して製造した、コークス、ニードルコークス、高密
度炭素材料等の黒鉛質粒子が挙げられる。好ましくは、低コストと電極作製のし易さの点で、球形化した天然黒鉛である
本発明における原料炭素材は以下の物性を示すものである。なお、本発明における測定方法は特に制限はないが、特段の事情がない限り実施例に記載の測定方法に準じる。
(1)原料炭素材のd002
学振法によるX線回折で求めた格子面(002)のd値(層間距離)は、通常0.335nm以上、0.340nm未満である。ここで、d値は好ましくは0.339nm以下、更に好ましくは0.337nm以下である。d値が大きすぎると結晶性が低下し、初期不可逆容量が増加する場合がある。一方、下限値である0.335nmは黒鉛の理論値である。
本発明の複合炭素材(A)の原料である原料炭素材は、下記式(1)で表される表面官能基量O/C値が通常1%以上4%以下であり、2%以上3.6%以下が好ましく、2.6%以上3%以下であるとより好ましい。
この表面官能基量O/C値が小さすぎると、バインダとの親和性が低下し、負極表面と被覆材の相互作用が弱くなり、被覆材がはがれやすくなる傾向がある。一方表面官能基量O/C値が大きすぎると、O/C値の調整が困難となり、製造処理を長時間行う必要が生じたり、工程数を増加させる必要が生じたりする傾向があり、生産性の低下やコストの上昇を招く虞がある。
O/C値(%)={X線光電子分光法(XPS)分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度/XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度}×100
本発明における表面官能基量O/C値はX線光電子分光法(XPS)を用いて以下のように測定することができる。
原料炭素材の粒径については特に制限が無いが、使用される範囲として、平均粒径(メジアン径)が通常50μm以下、好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。また、通常1μm以上、好ましくは4μm以上、更に好ましくは10μm以上である。 この粒径が大きすぎると極板化した際に、筋引きなどの工程上の不都合が出る傾向があり、また、粒径が小さすぎると、表面積が大きくなりすぎて、電解液に対する活性を抑制することが難しくなる傾向がある。
本発明の原料炭素材のBET法で測定した比表面積については、通常4m2/g以上、好ましくは5m2/g以上である。また、通常11m2/g以下、好ましくは9m2/g以下、より好ましくは8m2/g以下である。
比表面積が小さすぎると、Liが出入りする部位が少なく、高速充放電特性及び出力特性に劣り、一方、比表面積が大きすぎると、活物質の電解液に対する活性が過剰になり、初期不可逆容量が大きくなるため、高容量電池を製造できない傾向がある。
なおBET比表面積の測定方法は、比表面積測定装置を用いて、窒素ガス吸着流通法によりBET1点法にて測定する。
原料炭素材のX線回折構造解析(XRD)から得られる、Rhombohedral(菱面体晶)に対するHexagonal(六方晶)の結晶の存在比(3R/2H)は通常0.20以上、0.25以上が好ましく、0.30以上がより好ましい。3R/2Hが小さすぎると、高速充放電特性の低下を招く傾向がある。
本発明の原料炭素材のタップ密度は、通常0.7g/cm3以上、0.8g/cm3以上が好ましく、1g/cm3以上がより好ましい。また、通常1.3g/cm3以下、1.2g/cm3以下が好ましく、1.1g/cm3以下がより好ましい。タップ密度が低すぎると、高速充放電特性に劣り、タップ密度が高すぎると、粒子内炭素密度が上昇し、圧延性に欠け、高密度の負極シートを形成することが難しくなる場合がある。
原料炭素材のラマンR値は、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出して定義する。その値は通常0.15以上であり、0.4以下であることが好ましく、0.3以下がより好ましい。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、負荷特性の低下を招く傾向がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
原料炭素材の内部空隙率は通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましく5%以上、更に好ましくは7%以上である。また通常40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは23%未満である。この内部空隙率が小さすぎると粒子内の液量が少なくなり、充放電特性が悪化する傾向があり、内部空隙率が大きすぎると、電極にした場合に粒子間空隙が少なく、電解液の拡散が不十分になる傾向がある。
本発明の原料炭素材は、その原料として、黒鉛化されている炭素粒子であれば特に限定はないが、上述したように天然黒鉛、人造黒鉛、並びにコークス粉、ニードルコークス粉、及び樹脂等の黒鉛化物の粉体等を用いることができる。これらのうち、天然黒鉛が好ましく、中でも球形化処理を施した球形化天然黒鉛が加圧処理の効果が現れ易い点から特に好ましい。以下に、一例として球形化天然黒鉛の製造方法を記載する。
表面処理後の原料炭素材の表面官能基量O/C値が通常1%以上4%以下となるような
条件で、球形化処理を行うことにより製造することが好ましい。この際には、機械処理のエネルギーにより黒鉛表面の酸化反応を進行させ、黒鉛表面に酸性官能基を導入することができるよう、活性雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明の複合炭素材(A)のもう一方の原料である被覆用の炭素質物又は黒鉛質物の前駆体である有機化合物は、下記に示す物性を満たせば特に制限されない。
・有機化合物の種類
本発明における有機化合物とは、焼成を行うことによって炭素質物又は黒鉛質物となる原料である。ここで、炭素質物とはd値が通常0.340nm以上の炭素のことであり、炭素質物と非晶質炭素質物とは同義である。一方、黒鉛質物とはd値が0.340nm未満の黒鉛のことである。
(1)X線パラメータ(d002値)
<有機化合物を焼成した炭素質物における物性>
有機化合物のみを焼成処理して得られた炭素質物粉末のX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が通常0.340nm以上、好ましくは0.342nm以上である。また、通常0.380nm未満、好ましくは0.370nm以下、より好ましくは0.360nm以下である。d002値が大きすぎるということは結晶性が低いことを示し、複合炭素材(A)が結晶性の低い粒子となって不可逆容量が増加する場合があり、d002値が小さすぎると炭素質物を複合化させた効果が得られ難い。
有機化合物のみを黒鉛化処理して得られた黒鉛質物粉末のX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が通常0.3354nm以上、好ましくは0.3357nm以上、より好ましくは0.3359nm以上である。また、通常0.340nm未満、好ましくは0.338nm以下、より好ましくは0.337nm以下である。d002値が大きすぎるということは結晶性が低いことを示し、複合炭素材(A)が結晶性の低い粒子となって黒鉛質物を複合化させた効果が得られ難い場合があり、d002値が小さすぎると充放電反応性が低下して、高温保存時のガス発生増加や大電流充放電特性低下の虞がある。
<有機化合物を焼成した炭素質物における物性>
有機化合物を焼成処理して得られた炭素質物粉末の学振法によるX線回折法で求めた炭素材料の結晶子サイズ(Lc(002))は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。また通常300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。結晶子サイズが大きすぎると、複合炭素材(A)が結晶性の低い粒子となって不可逆容量が増加する傾向があり、結晶子サイズが小さすぎると、炭素質物を複合化させた効果が得られ難い。
有機化合物を黒鉛化処理して得られた黒鉛質物粉末の学振法によるX線回折法で求めた炭素材料の結晶子サイズ(Lc(002))は、通常300nm以上、好ましくは400nm以上、より好ましくは500nm以上である。また通常1000nm以下、好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下である。結晶子サイズが大きすぎると、複合炭素材(A)が結晶性の低い粒子となって黒鉛質物を複合化させた効果が得られ難い場合があり、結晶子サイズが小さすぎると、充放電反応性が低下して、高温保存時のガス発生増加や大電流充放電特性低下の傾向がある。
有機化合物の軟化点が通常400℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。軟化点が高すぎると、原料炭素材と混合又は捏合する際に、均一に混合又は捏合することが困難になり、且つ高温で取り扱う必要が生じるため生産性に欠ける場合がある。下限は特に制限されないが、通常40℃以上である。
複合炭素材(A)の製造方法は、炭素質物又は黒鉛質物で被覆した内部空隙率が1%以上23%未満である加圧処理された複合炭素材であれば、特に制限はないが、好ましくは、上述した原料炭素材を加圧処理した後、解砕し、炭素質物又は黒鉛質物被覆部分を得るための有機化合物と混合し、得られた混合物を焼成、粉砕処理を行う工程、もしくは、原料炭素材と非晶質、炭素質物又は黒鉛質物被覆部分を得るための有機化合物と混合し、加圧処理した後、得られた混合物を焼成、粉砕処理を行う工程にて本発明に用いられる炭素材を炭素質物又は黒鉛質物で被覆した複合炭素材(A)を製造することができる。より好ましくは、粉砕工程数が少ない後者となる。
原料炭素材と有機化合物との混合は常法により行うことができる。混合温度は通常は常温〜150℃であり、50〜150℃がより好ましく、100〜130℃が原料炭素材と有機化合物が均一に混合し易い点から更に好ましい。
原料炭素材と混合する際に、有機化合物は有機溶媒によって希釈することが好ましい。希釈する理由としては、有機溶媒で希釈することで混合する有機化合物の粘度を下げ、より効率良く、均一に原料炭素材を被覆できるからである。
ンゼン、テトラアミルベンゼン、ドデシルベンゼン、ジドデシルベンゼン、アミルトルエン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素等があるが、これらに限定されるものではない。
また、有機溶媒による希釈倍率は、有機溶媒の質量に対して、有機化合物が、通常5%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上であり、通常90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である。この希釈倍率が大きすぎると有機化合物の濃度が低下し、効率的に原料炭素材を被覆することができない傾向がある。希釈倍率が小さすぎると有機化合物濃度が充分に低下せず効率的に原料炭素材を被覆することができない傾向がある。
回分方式の混合装置としては、2本の枠型が自転しつつ公転する構造の混合機;高速高剪断ミキサーであるディゾルバーや高粘度用のバタフライミキサーの様な、一枚のブレートがタンク内で撹拌・分散を行う構造の装置;半円筒状混合槽の側面に沿ってシグマ型などの撹拌翼が回転する構造を有する、いわゆるニーダー形式の装置;撹拌翼を3軸にしたトリミックスタイプの装置;容器内に回転ディスクと分散媒体を有するいわゆるビーズミル型式の装置などが用いられる。
本発明における複合炭素材(A)の製造方法においては、有機化合物と原料炭素材を混合した後に、その混合物中の原料炭素材に対して加圧処理を行うことが好ましい。
加圧及び成型する方法は特に限定されず、ロールコンパクター、ロールプレス、プリケット機、冷間等方圧加圧装置(CIP)、一軸成形機及びタブレット機などを用いることができる。原料炭素材を加圧することにより原料炭素材の内部空隙が圧縮される。その結果、加圧処理をした後に解砕した原料炭素材の密度が増加する。
また、必要があればロールに彫り込まれたパターンどおりに原料炭素材を加圧と同時に成形することも可能である。また、原料炭素材粒子間に存在する空気を排気し、真空プレ
スする方法も適用できる。
原料炭素材を加圧する圧力は、特に限定されるものではないが、通常50kgf/cm2以上、好ましくは100kgf/cm2以上である。また、加圧処理の上限は特に限定されないが、通常2000kgf/cm2以下、好ましくは1500kgf/cm2以下である。圧力が低すぎると、強固な造粒が達成されず内部空隙が減少しない傾向があり、圧力が高すぎると工程上のコストの増加につながる傾向がある。特に、圧力が高すぎると、粒子内空隙率は減少する一方、成型体の解砕時に大きなエネルギーを必要とし、比表面積の増加に繋がる。上記より、低圧での加圧処理により粒子内空隙率の減少と、比表面積の増加抑制の両方が両立可能であると考えられる。
得られた混合物を非酸化性雰囲気下、好ましくは窒素、アルゴン、二酸化炭素などの流通下で加熱することにより、加圧処理された原料炭素材を被覆した有機化合物を炭化又は黒鉛化させ、複合炭素材(A)を製造する。
焼成温度は混合物の調製に用いた有機化合物により異なるが、(非晶質)炭素質物又は黒鉛質物が被覆された複合炭素材(A)を得る場合、通常は500℃以上、好ましくは800℃以上、より好ましくは900℃以上に加熱して有機化合物を十分に炭化させる。加熱温度の上限は有機化合物の炭化物が、混合物中の原料炭素材の結晶構造と同等の結晶構造に達しない温度であり、通常は高くても3000℃以下、好ましくは2000℃以下、1500℃以下がより好ましい。
焼成に使用する炉は上記要件を満たせば特に制約はないが、例えば、シャトル炉、トンネル炉、リードハンマー炉、ロータリーキルン、オートクレーブ等の反応槽、コーカー(コークス製造の熱処理槽)、タンマン炉、アチソン炉、高周波誘導加熱炉などを用いることができ、加熱方式も、直接式抵抗加熱、間接式抵抗加熱、直接燃焼加熱、輻射熱加熱等を用いることができる。熱処理時には、必要に応じて攪拌を行なってもよい。
再度の粉砕や解砕に用いる装置に特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはせん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられる。中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、さらに、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
沈降分級機、遠心式湿式分級機等も用いることができる。
上記製造方法で得られた複合炭素材(A)は、以下のような特性を持つことが好ましい。
(1)(002)面の面間隔(d002)
複合炭素材(A)のX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)は3.37Å以下、結晶子サイズLcが900Å以上である。X線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)が3.37Å以下、Lcが900Å以上であることは、複合炭素材(A)の粒子の表面を除く大部分の結晶性が高いということであり、非水系二次電池の負極材に用いた場合に、非晶質炭素材に見られるような不可逆容量の大きさゆえの低容量化を生じない、高容量電極となる複合炭素材であることを示す。
複合炭素材(A)のタップ密度は、通常0.8g/cm3以上であり、0.85g/cm3以上が好ましい。
複合炭素材(A)のタップ密度が0.8g/cm3以上であるということは、複合炭素材(A)が球状を呈していることを示す指標の一つである。タップ密度が0.8g/cm3より小さいというのは、複合炭素材(A)の原料である球形炭素材が充分な球形粒子となっていないことを示す指標の一つである。タップ密度が0.8g/cm3より小さいと、電極内で充分な連続空隙が確保されず、空隙に保持された電解液内のLiイオンの移動性が落ちることで、急速充放電特性が低下する傾向がある。
複合炭素材(A)のアルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値は通常0.45以下、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下であり、通常0.20以上、好ましくは0.23以上、より好ましくは0.25以上である。ラマン値がこの範囲であれば、負極活物質表面の結晶性が適度な範囲にあるため、高出力を得やすいことから好ましい。
複合炭素材(A)のBET法による比表面積は通常10m2/g以下、好ましくは9m2/g以下、より好ましくは8m2/g以下であり、通常0.1m2/g以上、好ましくは0.7m2/g以上、より好ましくは1m2/g以上である。比表面積が大きすぎると負極活物質として用いた時に電解液に露出した部分と電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい傾向がある。比表面積が小さすぎると負極活物質として用いた場合の充電時にリチウムイオンの受け入れ性が悪くなる傾向がある。
複合炭素材(A)の水銀圧入法による10nm〜100000nmの範囲の細孔容量は、通常1.0mL/g以下、好ましくは、0.9mL/g以下、より好ましくは0.8mL/g以下であり、通常、0.01mL/g以上、好ましくは、0.05mL/g以上、より好ましくは0.1mL/g以上である。細孔容積が大きすぎると極板化時にバインダを多量に必要とする傾向があり、細孔容積が小さすぎると高電流密度充放電特性が低下し、かつ充放電時の電極の膨張収縮の緩和効果が得られなくなる傾向がある。
複合炭素材(A)の平均粒径(メ・BR>Wアン径)は通常50μm以下、好ましくは40
μm以下、より好ましくは30μm以下であり、通常、1μm以上、好ましくは、3μm以上、より好ましくは5μm以上である。平均粒径が大きすぎると炭素1粒子あたりが必要とするバインダが多量となる傾向があり、平均粒径が小さすぎると高電流密度充放電特性が低下する傾向がある。
本発明の複合炭素材(A)は、炭素質物又は黒鉛質物で被覆されている。この中でも非晶質炭素質物で被覆されていることがリチウムイオンの受入性の点から好ましく、この被覆率は、通常0.5%以上10.0%以下、好ましくは1.0%以上9.0%以下、より好ましくは、2.0%以上8.0%以下である。この含有率が大きすぎると負極材の非晶質炭素部分が多くなり、電池を組んだ際の可逆容量が小さくなる傾向がある。含有率が小さすぎると、加圧処理された炭素材(a)に対して非晶質炭素部位が均一にコートされないとともに強固な造粒がなされず、焼成後に粉砕した際、粒径が小さくなりすぎる傾向がある。
式(2)
有機化合物由来の炭化物の被覆率(%)=(有機化合物の質量×残炭率×100)/{
原料炭素材の質量+(有機化合物の質量×残炭率)}
複合炭素材(A)の内部空隙率は1%以上、好ましくは3%以上、より好ましく5%以上、更に好ましくは7%以上である。また23%未満、好ましくは22.5%以下、より
好ましくは22%以下である。この内部空隙率が小さすぎると粒子内の液量が少なくなり、充放電特性が悪化する傾向があり、内部空隙率が大きすぎると、電極にした場合に粒子間空隙が少なく、電解液の拡散が不十分になる傾向がある。
内部空隙率は、例えば、図1に示す様に、公知の水銀圧入法により得られた細孔分布(積分曲線)(L)を元に傾きの最小値に対して接線(M)を引き、当該接線(M)と前記積分曲線(L)の分岐点(P)を求め、その分岐点よりも小さい細孔容積を粒子内細孔量(cm3/g)(V)として定義する。得られた粒子内細孔量と黒鉛の真密度から内部空隙率を算出できる。算出に用いる黒鉛の真密度は、一般的な黒鉛の真密度である2.26g/cm3を用いる。算出式を式(3)に示す。
内部空隙率(%)=[粒子内細孔量/{粒子内細孔量+(1/黒鉛の真密度)}]×100
<炭素材(B)>
炭素材(B)としては、内部空隙率が23%以上40%以下である炭素材であれば特に制限はないが、炭素材(B)は、以下のような特性を持つことが好ましい。
炭素材(B)の種類としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛、加圧処理されていない原料炭素材を炭素質物又は黒鉛質物で被覆した被覆黒鉛、有機化合物を焼成することで作製可能な炭素質物又は黒鉛質物が上げられる。この中でも、天然黒鉛や人造黒鉛が高結晶化由来の高容量の観点から好ましく、天然黒鉛が柔らかさの点でより好ましく、この中でも球形化した天然黒鉛は不純物が少なく、電池の安全性の点から更に好ましい。特に好ましくは、上述した炭素材であって、等方的加圧処理されていない炭素材である。
わせて行なうことにより、低純度天然黒鉛中に含まれる灰分や金属等を溶解除去できる(高純度化処理工程)。そして前記酸処理工程の後には通常、水洗処理等を行ない高純度化処理工程で用いた酸分を除去する。
ここで、高純度化を行なった天然黒鉛の純度は、通常98.0質量%以上、好ましくは99.0質量%以上、より好ましくは99.6質量%以上である。純度がこの範囲であれば、負極材料として用いた場合、電池容量が高くなるのでより好ましい。
ここで、体積基準平均粒径とはd50を意味し、上述の原料炭素材の体積基準平均粒径と同様の方法によって測定することができる。
また、炭素材(B)のタップ密度は、通常0.6g/cm3以上、0.7g/cm3以上が好ましく、0.8g/cm3以上がより好ましく、0.85g/cm3以上が更に好ましい。また、通常1.3g/cm3以下、1.2g/cm3以下が好ましく、1.1g/cm3以下がより好ましい。タップ密度が低すぎると、高速充放電特性に劣り、タップ密度が高すぎると、粒子内炭素密度が上昇し、圧延性に欠け、高密度の負極シートを形成することが難しくなる場合がある。
本発明の非水系二次電池用炭素材は、少なくとも本明細書で規定している複合炭素材(A)と炭素材(B)とを含むことを特徴としている。
上述の複合炭素材(A)に炭素材(B)を混合する場合、複合炭素材(A)と炭素材(B)の総量に対する複合炭素材(A)の混合割合は、特に制限はないが、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下の範囲である。炭素材(B)の混合割合が前記範囲を上回ると、負極を形成する(特に電極密度を所定の値にする)工程の際に、複合炭素材(A)の表面構造が破壊され、優れた電池特性が得られ難い傾向がある。一方、前記範囲を下回ると、複合炭素材(A)の特性が現れ難く、炭素材(B)が変形されすぎ、電極内への液拡散が悪くなる傾向がある。
複合炭素材(A)と炭素材(B)との混合に用いる装置としては、特に制限はないが、例えば、回転型混合機の場合:円筒型混合機、双子円筒型混合機、二重円錐型混合機、正
立方型混合機、鍬形混合機等を用いることができ、固定型混合機の場合:螺旋型混合機、リボン型混合機、Muller型混合機、Helical Flight型混合機、Pugmill型混合機、流動化型混合機等を用いることができる。
複合炭素材(A)と炭素材(B)との混合物(非水系二次電池用炭素材)の物性は以下のような物性であることが好ましい。
本発明の非水系二次電池用炭素材の体積基準平均粒径d50は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下の範囲である。上記範囲内であれば複合炭素材(A)を含む効果を得易い点から好ましい。
また、複合炭素材(A)/炭素材(B)の体積基準平均粒径の比率が0.02〜1であることが好ましく、0.1〜1であることがより好ましく、更には0.2〜1であることが好ましい。比率が0.02以下の場合は、炭素材(B)の粒径が大きくなる傾向があり、塗工時の工程性能が著しく悪化する。また、1を超える場合は、塗布後にプレスを施した際、炭素材(B)が複合炭素材(A)の表面構造を乱す傾向となる。
また、炭素材(B)/前記複合炭素材(A)の比表面積の比率が0.3〜50であることが好ましく、0.4〜30であることがより好ましく、更には0.5〜20であることが好ましい。比率が0.3以下の場合は、複合炭素材(A)の優れた電池特性を得がたい傾向があり、50を超える場合は、不可逆容量が大きくなる傾向がある。
錠剤化するということは、加圧した際、複合炭素材(A)よりも先に、炭素材(B)が優先的に形状変化を起こし、粒子間が結着することを意味する。
錠剤化する密度としては、好ましくは0.5g/cm3以上、好ましくは0.8g/cm3以上、より好ましくは1.0g/cm3以上である。また、通常1.9g/cm3以下で、好ましくは1.8g/cm3以下、より好ましくは1.7g/cm3以下、更に好ましくは1.6g/cm3以下である。
錠剤化の判断は、一般的な杵・臼型の錠剤成型機を利用して所定の密度まで加圧した際、錠剤化した材料の形状を維持したまま、成型機から取り出せるかで行うことができる。
等方的加圧処理された炭素材に黒鉛質物が複合化した複合炭素材(a)と、天然黒鉛(b)以外に、公知の炭素材を本発明の効果を損なわない範囲であれば、混合させてもよい。
本発明の非水系二次電池用負極(以下適宜「電極シート」ともいう。)は、集電体と、集電体上に形成された活物質層とを備え、当該活物質層は少なくとも本発明にかかる非水系二次電池用複合炭素材を含有することを特徴とする。更に好ましくは、当該活物質層にはバインダを含有する。
具体的に、分子量が大きいバインダの場合には、その重量平均分子量が通常1万以上、好ましくは5万以上、また、通常100万以下、好ましくは30万以下の範囲にあるものが望ましい。また、不飽和結合の割合が高いバインダの場合には、全バインダの1g当たりのオレフィン性不飽和結合のモル数が、通常2.5×10−7以上、好ましくは8×10−7以上、また、通常5×10−6以下、好ましくは1×10−6以下の範囲にあるものが望ましい。
本発明においては、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダも、本発明の効果が失われない範囲において、上述のオレフィン性不飽和結合を有するバインダと併用することができる。オレフィン性不飽和結合を有するバインダ量に対する、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの混合比率は、通常150質量%以下、好ましくは120質量%以下の範囲である。
オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉等の多糖類;カラギナン、プルラン、グアーガム、ザンサン
ガム(キサンタンガム)等の増粘多糖類;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニルアルコール類;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のポリ酸、或いはこれらポリマーの金属塩;ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルカン系ポリマー及びこれらの共重合体などが挙げられる。
バインダの割合が高過ぎると容量の減少や、抵抗増大を招きやすく、バインダの割合が少な過ぎると負極板強度が劣る。
このスラリーを、集電体である銅箔上に、負極材料が5〜15mg/cm2付着するように、ドクターブレードを用いて幅5cmに塗布し、室温で風乾を行う。更に110℃で30分乾燥後、ロールプレスで、活物質層の密度が1.7g/cm3になるよう調整することにより、好ましい電極シートを得ることができる。
スラリーを塗布、乾燥して得られる活物質層の厚さは、ロールプレスを行った後の状態において、通常5μm以上、好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、また、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、更に好ましくは75μm以下である。活物質層が薄すぎると、活物質の粒径との兼ね合いから負極としての実用性に欠け、厚すぎると、高密度の電流値に対する十分なLiイオンの吸蔵・放出の機能が得られにくい。
ましくは1.55g/cm3以上、とりわけ1.6g/cm3以上、更に1.65g/cm3以上、特に1.7g/cm3以上が好ましい。密度が低すぎると、単位体積あたりの電池の容量が必ずしも充分ではない。また、密度が高すぎるとレート特性が低下するので、1.9g/cm3以下が好ましい。
以下、本発明の負極材料を用いたリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池の詳細を例示するが、使用し得る材料や作製の方法等は以下の具体例に限定されるものではない。
本発明の非水系二次電池、特にリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える。負極としては、上述した本発明の負極を用いる。
正極は、正極活物質及びバインダを含有する正極活物質層を、集電体上に形成したものである。
正極板は、前記したような負極の製造と同様の手法で、正極活物質やバインダを溶剤でスラリー化し、集電体上に塗布、乾燥することにより形成する。正極の集電体としては、
アルミニウム、ニッケル、ステンレススチール(SUS)などが用いられるが、何ら限定されない。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は特に制限されず、従来から非水系電解液の溶媒として提案されている公知の非水系溶媒の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
また、上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状、ゴム状、或いは固体シート状にして電解質を使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−
フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
正極と負極との間には通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
上述のように作製した電池は以下の様な性能を示すものである。
出力は、通常1.0W以上、好ましくは1.5W以上、より好ましくは1.8W以上である。出力が低すぎると、電気自動車用電源としてリチウムイオン二次電池を使用する場合に発進、加速時に大きなエネルギーを取り出せず、また、減速時に発生する大きなエネルギーを効率よく回生することができない。
一定の温度下での充電状態の保存後の残存率は、通常50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上である。また、回復率は通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。残存率・回復率が低すぎると、長期の保存状態への適用が期待できない。
(測定方法)
(1)体積基準平均粒径(d50)
粒径の測定方法は、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標))の0.2質量%水溶液10mLに、炭素材0.01gを懸濁させ、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「HORIBA製LA−920」に導入し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、測定装置における体積基準のメジアン径として測定したものを、本発明における体積基準平均粒径d50と定義する。なお、複合炭素材(A)と炭素材(B)のd50の比率を算出する場合は、それぞれのd50を測定の後、d50(複合炭素材(A))/d50(炭素材(B))にて行った。
Hgポロシメトリー解析により内部空隙率を算出した。まず、Hgポロシメトリーの測定方法は粉体を正確に秤量し、真空下(50μm/Hgx10分)前処理した後、マイクロメリッテクス社製オートポアIV9520型を用いて、水銀圧入方により細孔分布を測定した。
式(3):内部空隙率=[粒子内細孔量/{粒子内細孔量+(1/黒鉛の真密度)}×100
BET比表面積の測定方法は、例えば大倉理研社製比表面積測定装置「AMS8000」を用いて、窒素ガス吸着流通法によりBET1点法にて測定する。具体的には、試料(炭素材)0.4gをセルに充填し、350℃に加熱して前処理を行った後、液体窒素温度まで冷却して、窒素30%、He70%のガスを飽和吸着させ、その後室温まで加熱して脱着したガス量を計測し、得られた結果から、通常のBET法により比表面積を算出した。
なお、複合炭素材(A)と炭素材(B)のSAの比率を算出する場合は、それぞれのSAを測定の後、SA(炭素材(B))/SA(複合炭素材(A))にて行った。
複合炭素材(A)と炭素材(B)の荷重の比率を算出する場合は、それぞれの負極活物質を電極シート化し、ロールプレス機で1.6g/ccの密度にした際の荷重を算出した後、荷重(複合炭素材(A))/荷重(炭素材(B))にて行った。
原料炭素材として高純度化した球形化黒鉛を用い、ナフサ熱分解時に得られる石油系重質油(易黒鉛化性有機化合物)とを2軸混練機にて混合した後、CIP成型機を用いて100kgf/cm2で2分間、等方的加圧処理を行った後、得られた混合物を不活性ガス中で700℃、2時間、更に1300℃で1時間の熱処理し、球形化天然炭素材表面に異なる結晶性を有する炭素質物が被覆した複層炭素構造物である複合炭素材(A)を得た。
ここで、複合炭素材(A)の体積基準平均粒径(d50)は11μm、BET比表面積(SA)が3.7m2/gであった。
炭素材(B)としてd50が17μm、SAが6.6m2/g、粒子内空隙率25%がである高純度化した球形化黒鉛を用いた。この時の各比率は、d50(複合炭素材(A))/d50(炭素材(B))=0.7、SA(炭素材(B))/SA(複合炭素材(A))=1.8、荷重(複合炭素材(A))/荷重(炭素材(B))=3.3であった。
複合炭素材(A)と炭素材(B)の総量に対する複合炭素材(A)の混合割合が70質量%とになるように秤量し、双子円筒型混合機を用いて20分間混合し非水系二次電池用炭素材を得た。得られた非水系二次電池用炭素材の粉体物性を表1に示す。
(負極の作製)
実施例1の負極材料を負極活物質とし、この負極活物質98質量%に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウム1質量%、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度40質量%)1質量%を加え、2軸混練で混合してスラリー化した。得られたスラリーを18μmの圧延銅箔に片面塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、活物質層のサイズとして幅32mm、長さ42mm及び集電部タブ溶接部として未塗工部を有する形状に切り出し、負極とした。この時の負極の活物質の密度は1.6g/cm3であった。
正極活物質は、以下に示す方法で合成したリチウム遷移金属複合酸化物であり、組成式LiMn0.33Ni0.33Co0.33O2で表される。マンガン原料としてMn3O4、ニッケル原料としてNiO、及びコバルト原料としてCo(OH)2を、Mn:Ni:Co=1:1:1のモル比となるように秤量し、これに純水を加えてスラリーとし、攪拌しながら、循環式媒体攪拌湿式ビーズミルを用いて、スラリー中の固形分を、体積基準平均粒径d50が0.2μmになるように湿式粉砕した。
不活性雰囲気下でエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比3:7)に、1mol/Lの濃度で、十分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた。さらに、その電解液にビニレンカーボネート(VC)を1質量%添加したものを用いた。
正極1枚と負極1枚は活物質面が対峙するように配置し、電極の間に多孔性ポリエチレンシートのセパレータ(厚さ25μm)が挟まれるようにした。この際、正極活物質面が負極活物質面内から外れないよう対面させた。この正極と負極それぞれについての未塗工部に集電タブを溶接し、電極体としたものをポリプロピレンフィルム、厚さ0.04mmのアルミニウム箔、及びナイロンフィルムをこの順に積層したラミネートシート(合計厚さ0.1mm)を用い、内面側にポリプロピレンフィルムがくるようにしてラミネートシートではさみ、電解液を注入するための一片を除いて、電極のない領域をヒートシールした。その後、活物質層に前記非水電解液を200μL注入して、電極に充分浸透させ、密閉して、ラミネートセルを作製した。この電池の定格容量は、40mAhである。
25℃環境下で、電圧範囲4.2〜3.0V、電流値0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)にて初期コンディショニングを行った。さらに、60℃でエージングを行った後、サイクル試験を行った。1サイクル目の放電容量を基準とし、500サイクル目の放電容量から次式にしたがってサイクル維持率を算出した。
(保存特性)
60℃環境下、4.2Vの状態で4週間保存をした後、残存している容量を保存前の容量で割った値を残存率とした。
残存率(%)=(保存後の放電容量÷保存前の放電容量)×100
得られた結果を表1に示す。
複合炭素材(A)と炭素材(B)の総量に対する複合炭素材(A)の混合割合が50質量%とした以外は、実施例1と同様の実験を行った。得られた炭素材の粉体物性と電池評価結果を表1に示す。
(実施例3)
複合炭素材(A)と炭素材(B)の総量に対する複合炭素材(A)の混合割合が30質量%とした以外は、実施例1と同様の実験を行った。得られた炭素材の粉体物性と電池評価結果を表1に示す。
複合炭素材(A)のみを負極材料として用い、得られ粉体物性と電池評価結果を表1に示す。
(比較例2)
炭素材(B)のみを負極材料として用い、得られた粉体物性と電池評価結果を表1に示す。
Claims (8)
- 炭素質物又は黒鉛質物で被覆した内部空隙率が1%以上23%未満である加圧処理された複合炭素材(A)と、内部空隙率が23%以上40%以下である炭素材(B)を含有することを特徴とする非水系二次電池用炭素材。
- 複合炭素材(A)/炭素材(B)の体積基準平均粒径の比率が0.02〜1であることを特徴する請求項1に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 炭素材(B)が球形化黒鉛である請求項1又は2に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 炭素材(B)/前記複合炭素材(A)の比表面積の比率が0.3〜50であることを特徴する請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 前記複合炭素材(A)/炭素材(B)のプレス荷重の比が1〜50であることを特徴する請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 非水系二次電池用炭素材の密度が0.5g/cm3以上1.9g/cm3以下であることを特徴する請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 集電体と、前記集電体上に形成された活物質層とを備える非水系二次電池用負極であって、前記活物質層が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水系二次電池用炭素材を含有する、非水系二次電池用負極。
- 正極及び負極、並びに、電解質を備える非水系二次電池であって、前記負極が請求項7に記載の非水系二次電池用負極である、非水系二次電池。
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