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JP2014063846A - 金属面の保護層とその形成方法 - Google Patents

金属面の保護層とその形成方法 Download PDF

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JP2014063846A JP2012207466A JP2012207466A JP2014063846A JP 2014063846 A JP2014063846 A JP 2014063846A JP 2012207466 A JP2012207466 A JP 2012207466A JP 2012207466 A JP2012207466 A JP 2012207466A JP 2014063846 A JP2014063846 A JP 2014063846A
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JP2012207466A
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Tomonori Kiyama
朋紀 木山
Kenzo Onizuka
賢三 鬼塚
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Asahi Kasei E Materials Corp
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Abstract

【課題】めっき浴を必要とする複雑な電解めっきプロセスを用いずに、耐熱・耐食性及び機械的な外部応力に対する耐性に優れた金属面保護層を形成すること。
【解決手段】金属面を有する材料に、Sn含有金属から成るマトリクス中に、該Sn含有金属より高い融点を有する金属粒子が分散している金属層;及び熱硬化性樹脂を含むバインダーから成る硬化層が積層されている構造体であって、該金属粒子の表面は、Snを含む金属間化合物によって被覆されており、そして該金属層及び該硬化層は、互いに層分離していることによって、該金属面、該金属層、該硬化層という積層順序を保持している、前記構造体。
【選択図】図3

Description

本発明は、金属面の保護層及びその形成方法に関する。
一般的なはんだペーストは、はんだ粒子の融点以上の温度で熱処理をすると、はんだ粒子が全て溶融し、表面張力によって融合しようとする。例えば、Cu面上に一般的なはんだペーストを均一な厚みでスクリーン印刷し、はんだ粒子の融点以上の温度で熱処理をした場合、溶融したはんだ粒子同士が、表面張力によってCu面上の各箇所でランダムに融合し、不均一な厚みのはんだ層がCu面上に形成する。そのため、一般的なはんだペーストを用いて、金属面上に均一な厚みのはんだ層を形成する手法は知られていない。
これとは別に、Snめっきは耐食性に優れており、人体への有害性が低く、安価であることから、缶詰用の缶又は食器をはじめとする幅広い用途で、古くから鋼板表面にSnめっきを施したブリキの利用がなされている。また、Cuは電気伝導性及び熱伝導特性に優れており、電気配線等に広く使われているが、酸化変色し易いため酸化皮膜は通電の抵抗となる。そのため、外気に触れるCu部分にSnめっきを付与した銅板材料が用いられる場合がある。さらに、SnはSnより酸化還元電位の高い金属(Cu、Ag、Au等)に対して一般的に犠牲防食性を有するため、例えば酸性溶液中においてもCu表面にSnめっきが存在するうちは、Cuの侵食を抑制することができるため、Snめっきは表面保護層として広く利用されている。この耐食性は、Snめっきを厚くすることで特性を向上させることができることが一般的に知られている。さらに近年では、配線材、特に銅又は銅合金の表面の配線材の酸化を防ぐために、Snのめっきが施される場合がある(特許文献1)。
また、熱硬化性樹脂組成物と、Cu粒子等の高融点金属粒子を50〜80質量部に対して、はんだ粒子を20〜50質量部混合した複合粒子とを混合した導電性ペーストを配線状にパターン印刷し熱処理をすることにより、合成樹脂基板の一面上に前記高融点金属粒子と前記はんだ粒子の金属間結合による導電層を形成すると同時に、前記導電層の表面を、前記樹脂から成る保護膜によって覆った配線パターンを形成する技術が知られている(特許文献2)。
特開2009−193771号公報 特開2011−142093号公報
しかしながら、特許文献1に記載のようなSnめっきを行った場合、Sn自体は硬度HV30程度で非常に柔らかいため、Snめっき層に強い外部応力が掛かった場合に、保護層としてのSnめっき層は容易に削れてしまう問題を抱えている。
また、上述したSnめっきの方法としては、電解めっきが広く利用されており、形成するSnめっきの硬度、光沢等の性質に応じて、アルカリ性浴、メタンスルホン酸浴、硫酸浴、中性浴等のめっき浴が使い分けられている。しかしながら、これらのめっきプロセスには、多数のめっき工程、洗浄工程又は乾燥工程を必要とし、めっき浴中の添加剤の種類、濃度及び温度管理等のノウハウが極めて複雑であり、さらにアルカリ又は酸を使用するため、環境・安全面の観点からも改善の余地がある。
また、特許文献2に記載の発明は、合成樹脂基板上に配線パターンを形成させるために改良されており、はんだ粒子に対して高融点金属粒子の割合を意図的に高くすることで、加熱時の溶融したはんだ粒子成分の表面張力による溶融流動を抑制しているため、熱処理後の導電層中に硬化した熱硬化性樹脂が多数介在し、導電層と保護膜による均一な層分離構造を得ることは困難である。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、めっき浴を必要とする複雑な電解めっきプロセスを用いずに、金属面上に、耐熱・耐食性及び機械的な外部応力に対する耐性に優れた保護層を形成することである。
本発明は上記課題に対して検討を重ねた結果、以下に示す手段を用いることによって、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 金属面を有する材料に、以下の層:
Sn含有金属から成るマトリクス中に、該Sn含有金属より高い融点を有する金属粒子が分散している金属層;及び
熱硬化性樹脂を含むバインダーから成る硬化層;
が積層されている構造体であって、該金属粒子の表面は、Snを含む金属間化合物によって被覆されており、そして該金属層及び該硬化層は、互いに層分離していることによって、該金属面、該金属層、該硬化層という積層順序を保持している、前記構造体。
[2] 前記金属面は、Ag、Cu、Ni、Au及びFeから成る群から選択される少なくとも1つの金属から形成されている、[1]に記載の構造体。
[3] 前記金属間化合物は、Cu−Sn、Cu−Sn−In、Cu−Sn−Ge、Cu−Sn−In−Ge、Ag−Sn、Ag−Sn−In、Ni−Sn、Ni−Sn−In、Ni−Sn−In−Cu、Ni−Sn−Cu及びAu−Snから成る群から選択される少なくとも1つを含む、[1]又は[2]に記載の構造体。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の構造体を有する金属面保護基板。
[5] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の構造体を有する部品実装基板。
[6] 下記成分;
Sn粒子(1)、又はSnとAg、Bi、Cu、Ge、In、Sb、Ni、Zn及びAuから成る群から選択される少なくとも1種の金属とを含み、かつ300℃未満の融点を有する合金粒子(1);
Ag、Bi、Cu、Ge、In、Sn、Sb、Ni、Zn及びAuから成る群から選択される少なくとも1種の金属を含み、かつ8μm以上の平均粒子径及び300℃以上の融点を有する金属粒子(2);並びに
25℃で液体の熱硬化性樹脂及び多価カルボン酸を含むバインダー(3);
を含むペーストであって、該金属粒子(2)は、100質量部の該Sn粒子(1)又は該合金粒子(1)に対して、8質量部〜67質量部含まれる、前記ペースト。
[7] 前記25℃で液体の熱硬化性樹脂100質量部に対して、25℃で固体の有機フィラーを5質量部〜120質量部含む、[6]に記載のペースト。
[8] 前記有機フィラーは、25℃で固体の熱硬化性樹脂を含む、[7]に記載のペースト。
[9] 前記ペースト100質量部中に含まれる、前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)と前記金属粒子(2)との合計量が60質量部〜96質量部である、[6]〜[8]のいずれか1項に記載のペースト。
[10] 前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)と前記金属粒子(2)との合計量を100質量部としたときに、前記多価カルボン酸は、前記ペースト中に0.1質量部〜7.0質量部含まれる、[6]〜[9]のいずれか1項に記載のペースト。
[11] 前記バインダー(3)は、アミン塩をさらに含む、[6]〜[10]のいずれか1項に記載のペースト。
[12] 前記25℃で液体の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である、[6]〜[11]のいずれか1項に記載のペースト。
[13] 前記合金粒子(1)又は前記金属粒子(2)は、少なくとも0.1質量%のIn及び/又は少なくとも0.1質量%のGeを含む、[6]〜[12]のいずれか1項に記載のペースト。
[14] 前記合金粒子(1)又は前記金属粒子(2)は、鉛(Pb)を含まない、[6]〜[13]のいずれか1項に記載のペースト。
[15] 以下の工程:
金属面を有する基板に、[6]〜[14]のいずれか1項に記載のペーストを塗布する工程;
前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)の融点より高く、かつ前記金属粒子(2)の融点より低い温度で、前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)から成るマトリクス中に前記金属粒子(2)が分散している金属層と、前記バインダー(3)から成る硬化層とを層分離させて、該金属面、該金属層、該硬化層の順に積層させる工程;
を含む、金属面保護基板の製造方法。
[16] 以下の工程:
金属面を有する回路基板に、[6]〜[14]のいずれか1項に記載のペーストを塗布する工程;
該ペーストの塗布部に電子部品又は金属ケースを搭載する工程;及び
前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)の融点より高く、かつ前記金属粒子(2)の融点より低い温度で、前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)から成るマトリクス中に前記金属粒子(2)が分散している金属層と、前記バインダー(3)から成る硬化層とを層分離させて、該金属面、該金属層、該硬化層の順に積層させる工程;
を含む、部品実装基板の製造方法。
[17] 前記金属面は、Ag、Cu、Ni、Au及びFeから成る群から選択される少なくとも1つの金属から形成されている、[15]又は[16]に記載の方法。
本発明の積層構造体は、金属面上に、耐熱・耐食性及び機械的な外部応力に対する耐性に優れた保護層を形成する効果を奏する。
高融点金属粒子に8μm未満の微粒子を使用したペーストを用いた場合の熱処理後基板断面図である。 高融点金属粒子を含まないペーストを用いた場合の熱処理後基板断面図である。 本実施の形態に係るペーストを用いた場合の熱処理後基板断面図である。 低融点金属粒子に対する高融点金属粒子の混合比率が高いペーストを用いた場合の熱処理後基板断面図である。 本実施の形態に係るペーストを用いて、電子部品(図5a)、金属ケース(図5b)、又は半導体ダイ(図5c)を接合した場合の構造体の断面図である。 層分離特性評価手法を説明するためのサンプルの上面図である。 実施例5の層分離特性評価時の断面光学顕微鏡観察写真である。 比較例2の層分離特性評価時の断面光学顕微鏡観察写真である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態と略記する)を詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
本実施の形態では、金属面上の積層構造体は、Sn含有金属(以下、「低融点金属」ともいう。)のマトリクス中に該マトリクスより融点の高い金属粒子(以下、「高融点金属粒子」ともいう。)が分散している金属層と、熱硬化性樹脂を含むバインダーの硬化層とが、金属面、該金属層、該硬化層の順に積層されるように層分離しており、そして該金属層に分散している高融点金属粒子の表面は、Snを含む金属間化合物によって被覆されている。
上記積層構造体は、本実施の形態のペーストを、金属面上で熱処理することよって、金属面上に連続的な金属層が形成されると同時に、該金属層表面に熱硬化性樹脂を含むバインダーの硬化層が被覆された層分離構造を形成されることで得られる。
上記ペーストは、下記成分;
(1)低融点金属を含む粒子(以下、「低融点金属粒子」といもいう。)として、Sn粒子、又は、SnとAg、Bi、Cu、Ge、In、Sb、Ni、Zn及びAuの群から成る群から選択される1種の金属とを含み、かつ300℃未満の融点を有する合金粒子;
(2)高融点金属粒子として、Ag、Bi、Cu、Ge、In、Sn、Sb、Ni、Zn及びAuから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属を含み、かつ8μm以上の平均粒子径及び300℃以上の融点を有する金属粒子;並びに
(3)室温(25℃)で液体の熱硬化性樹脂(以下、「液状熱硬化性樹脂」といもいう。)及び多価カルボン酸を含むバインダー;
を含み、そして前記ペーストは、前記低融点金属粒子100質量部に対して、8〜67質量部の前記高融点金属粒子を含むことが好ましい。
また、本実施の形態の積層構造体を形成する特性を損なわない範囲で、バインダーに、硬化剤、チクソ剤、消泡剤、酸化防止剤、溶剤、ハロゲン化合物等の活性剤、無機フィラー等の既知の添加剤を添加してもよい。また、本実施の形態の積層構造体を形成する特性を損なわない範囲で、上記金属粒子以外の金属粒子を含んでいても良い。尚、本明細書中のバインダーとは、ペーストに含まれる金属粒子以外の組成物とする。
<バインダー>
本実施の形態のペーストは、バインダーを含み、該バインダーは、室温(25℃)にて液体である液状熱硬化性樹脂、及び、フラックス成分として多価カルボン酸を含むことが好ましい。
(液状熱硬化性樹脂)
本実施の形態のバインダーは、ペースト化の観点から室温(25℃)にて液体である液状熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。液状熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアン酸エステル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等を使用することができるが、樹脂硬化特性と密着性の観点からエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダート型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びこれらをハロゲン化したエポキシ樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジグリシジルエーテル等を用いることができる。さらに、分子内にエポキシ基を3個以上有する多官能エポキシ樹脂から選ぶ場合には、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂などを使用することができる。中でも、ペースト化の観点から、比較的低粘度のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、又はビスフェノールF型液状エポキシ樹脂が好ましい。
(フラックス成分)
本実施の形態のペーストは、低融点金属粒子の溶融成分が、基材などの金属面、及び高融点金属粒子表面に対して良好に濡れることによって、良好な自発層分離特性を得ることができる。よって、本実施の形態のバインダーは、金属表面の酸加膜等の清浄化作用及び再酸化防止機能を有する添加剤(フラックス成分)として、多価カルボン酸を含むことが好ましい。多価カルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、及びそれ以上のカルボキシル基を1分子中に有する多価カルボン酸を含むものが好ましい。ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、シトラコン酸、α−ケトグルタル酸、ジグリコール酸、チオジグリコール酸、ジチオジグリコール酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等が例示でき、トリカルボン酸としては、トリメリット酸、クエン酸、イソクエン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸等が例示でき、そしてテトラカルボン酸としては、エチレンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の既知の多価カルボン酸を使用することができる。
また、本実施の形態のバインダーは、上記多価カルボン酸に加えて、フラックス成分として既知のモノカルボン酸を含んでいてもよい。モノカルボン酸は、多価カルボン酸に対して金属表面の酸加膜等の清浄化作用及び再酸化防止機能が低いため、該モノカルボン酸を使用する場合には、前記多価カルボン酸を含むことが好ましい。モノカルボン酸の具体例としては、安息香酸、ステアリン酸、レブリン酸、5−ケトヘキサン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−アミノ酪酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトイソブチル酸、3−メチルチオプロピオン酸、3−フェニルプロピオン酸、3−フェニルイソブチル酸、4−フェニル酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ノナン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ウンデシレン酸、2,2−ジメチル酪酸、α―リノレン酸、パルミトレイン酸、ドコサヘキサエン酸、ミリストレイン酸、CO−FA−S(伊藤製油社製)、ロジン及び変性ロジン等が例示できる。
本実施の形態のバインダーは、その他のフラックス成分を含んでいてもよく、アミン化合物、アミン塩、ハロゲン化合物等、酸無水物等の既知のものを使用することができる。
本実施の形態のバインダーに添加するアミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン等の既知のものが使用できる。本明細書におけるアミン化合物として、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコール性アミン類、又はブチルアミン、ジエチレントリアミン、キシリレンジジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、メタフェニレンジアミン、アミノ基を有するトリアジン系硬化剤、ジフェニルグアニジン等の非アルコール性アミン類が挙げられるが、アルコール性アミンであるトリエタノールアミン、ブチルアミン等が好ましい。
また、本実施の形態のバインダーに添加するアミン化合物は、アミン化合物と有機酸の塩、又は、アミン化合物と無機酸の塩(アミン臭化水素酸塩等)であるアミン塩が好ましく、ペーストの腐食性を低くする観点から、アミン有機酸塩が特に好ましい。また、該アミン有機酸塩は、常温における熱硬化性樹脂との反応性が低いため、ペーストの保存安定性に優れる。また、アミン有機酸塩は、有機酸と比較しフラックス特性が優れている。そのため、本実施の形態のペーストを加熱処理して低融点金属粒子を良好に溶融させ、高融点金属粒子を低融点金属粒子溶融成分中に取り込み金属層を形成させる観点から、特に好ましい。アミン有機酸塩の例としては、アミン化合物とカルボン酸の塩、アミン化合物とスルホン酸の塩等が例示できる。アミン化合物およびカルボン酸の種類は特に限定されるものでは無いが、具体的には、n−ブチルアミンアジピン酸塩、モノエチルアミンアジピン酸塩、ジメチルアミンアジピン酸塩、トリエタノールアミンアジピン酸塩、シクロへキシルアミンアジピン酸塩、1,3−ジフェニルグアニジンアジピン酸塩、2−エチルヘキシルアミンアジピン酸塩、2−フェニルイミダゾールメチルこはく酸塩、ジイソプロピルアミンコハク酸塩、ジシクロヘキシルアミンコハク酸塩、シクロへキシルアミンサリチル酸塩、tert−ブチルアミントリフェニル酢酸塩等が例示できる。上述したアミン有機酸塩の中でも、多価カルボン酸(例えば、アジピン酸、コハク酸等)とのアミン化合物の塩が、フラックス活性に優れるため好ましい。尚、本明細書では、アンモニアもアミンに含まれることとする。さらに、本明細書では、アミン多価カルボン酸塩は、上述した多価カルボン酸として扱うこととする。
尚、これらのフラックス成分は、金属表面の酸化皮膜の清浄化又は再酸化防止の目的で添加するが、熱硬化性樹脂の硬化作用も有するため、後に説明する硬化剤は必須ではない。
前記ペースト中に含まれる前記多価カルボン酸の含有量は、フラックス活性を付与する観点から、該ペースト中に含まれる総金属粒子100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。一方で、ペーストの保存安定性の観点から、該ペースト中に含まれる総金属粒子100質量部に対して前記多価カルボン酸の含有量は、7.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以下であることがより好ましい。
(有機フィラー)
本実施の形態のバインダーは、バインダー中に添加する金属粒子が、樹脂との比重の違いにより経時的に沈降する現象を抑制する観点から、液状熱硬化性樹脂100質量部に対して、室温(25℃)で固体である有機フィラー(例えば、有機酸、固形熱硬化性樹脂、硬化剤、チクソ剤、活性剤、その他の有機系添加剤等)を含むことが好ましい。
液状熱硬化性樹脂100質量部に対する有機フィラーの含有量は、金属粒子の沈降を効果的に抑制する観点から、5質量部以上が好ましく、11質量部以上がより好ましく、12質量部以上がさらに好ましく、一方で、ペースト粘度を適切に調整し、スクリーン印刷等に対するペースト特性を良好にする観点から、120質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
熱硬化性樹脂の硬化特性を維持しながら、金属粒子の沈降を抑制する観点から、有機フィラーとして、25℃において固体状態の熱硬化性樹脂(以下、「固形熱硬化性樹脂」という。)を一定量添加することが好ましい。前記液状熱硬化性樹脂100質量部に、固形熱硬化性樹脂を3質量部〜40質量部添加することが好ましく、より好ましくは、5質量部〜30質量部添加することが好ましく、さらに好ましくは、7質量部〜20質量部である。
また、有機フィラーとして、従来からクリームはんだに使用されているチクソ剤を使用することができ、例えば、ヒマシ油、水添ヒマシ油、ソルビトール系のチクソ剤が挙げられる。バインダー中に含まれるチクソ剤の割合は、液状熱硬化性樹脂100質量部に対し0.10質量部〜10質量部が好ましく、より好ましくは、0.20質量部〜8.0質量部であり、さらに好ましくは0.50質量部〜5.0質量部である。
(硬化剤)
前記フラックス成分は、バインダーの硬化作用を有するが、本実施の形態のバインダーには、熱処理時間又は熱処理温度を最適化するために、その他の既知の硬化剤を添加することができる。例えば、りん系化合物、フェノール樹脂、イミダゾール系、カチオン系、アニオン系硬化剤等の既知の硬化剤が使用できる。
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、四国化成社製の製品名(2MZ、C11Z、C17Z、2E4MZ、2PZ、2P4MZ、1B2MZ、1B2PZ、1.2DMZ、2MZ−A、C11Z−A、2E4MZ−A、2MA−OK、2PZ−OK、2MZ−OK、2PHZ、2P4MHZ、TBZ、2E4MZ・BIS、SFZ)等が挙げられ、そして添加する低融点金属粒子の融点付近で、バインダーが流動性を有する範囲で上記硬化剤を選定することができる。
(無機フィラー)
本実施の形態のバインダー中には、効果を損なわない範囲で、無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーとしては、例えば、シリカ粒子等のセラミック粒子が挙げられる。無機フィラーを添加することによって、リフロー後のバインダー硬化部の線膨張係数を下げることができるため、バインダー硬化部と金属層との界面間の線膨張係数の差異を調整することができる。
<金属粒子>
(低融点金属粒子)
本実施の形態のペーストに含まれる低融点金属粒子は、Sn粒子、又は、SnとAg、Bi、Cu、Ge、In、Sb、Ni、Zn及びAuから成る群より選択される少なくとも1種を含む金属粒子であり、かつ300℃未満の融点を有する合金粒子であることが好ましい。熱処理温度の低温化の観点から、融点240℃以下の低融点金属粒子がさらに好ましい。低融点金属粒子が溶融したマトリクス中に、前記高融点金属粒子を均一に分散させる観点から、低融点金属粒子はSnを40質量%以上含むことが好ましい。
具体的には、低融点金属粒子としては、例えば、Sn、Sn−Bi系、Sn−In系、Sn−Cu系、Sn−Zn系、Sn−Ag系、Sn−Au系、Sn−Sb系、Sn−Bi−Ag系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi−Cu系、Sn−Zn−Bi系、Sn−Bi−In系、Sn−Ag−In系、Sn−Ag−In−Bi系、Sn−Cu−Ni系、Sn−Cu−Ni−Ge系、Sn−Ag−Cu−Ni−Ge系が挙げられる。本実施の形態のペーストを、例えば240℃以上の熱処理温度で加熱する場合には、低融点金属粒子としてSn−Ag−Cu系粒子、Sn−Ag系粒子又はSn粒子を使用するのが好ましく、Sn合金粒子としては、Ag又はCuを0.3質量%〜4.0質量%含むことが好ましい。具体例としては、Sn−3.0Ag−0.5Cu粒子、Sn−3.5Ag粒子が例示できる。また、熱処理温度が200℃以下の場合は、低融点金属粒子として、SnとBi、In、Zn及び/又はAgとを含むSn合金粒子が好ましく、中でもSn−58Bi粒子、又はSn−57Bi−1Ag粒子が特に好ましい。
低融点金属粒子の平均粒子径は、溶融した低融点金属粒子成分の濡れ性、及び溶融特性の観点から5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは、15μm以上であり、特に好ましくは25μm以上であり、一方で、ペーストをスクリーン印刷等で印刷する観点から、100μm以下が好ましく、より好ましくは60μm以下である。
本実施の形態のペーストは、添加する低融点金属粒子の融点付近で、バインダーの流動性が確保されれば、溶融した低融点金属粒子が、金属面及び高融点金属粒子との界面で金属間化合物を形成しながら金属層の層分離構造を形成することができる。従って、低融点金属粒子は、特定の金属組成に限定されるものではない。
金属元素組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析等で確認することができる。また、粒子断面の元素組成に関しては、SEM−EDX(特性X線分析装置)を用いることによって解析することができる。また、本明細書中の金属組成に関して、不可避的不純物が含有されてもよい。
(高融点金属粒子)
本実施の形態に使用される高融点金属粒子は、Ag、Bi、Cu、Ge、In、Sn、Sb、Ni、Zn及びAuから成る群から選ばれる少なくとも1種の金属を含み、かつ8μm以上の平均粒子径及び300℃以上の融点を有する金属粒子であることが好ましい。溶融した低融点金属粒子同士が、表面張力によって金属面上の各箇所でランダムに融合するのを抑制し、金属面上に連続的な金属層を形成するために、高融点金属粒子を特定の比率で添加することが好ましい。すなわち、溶融した低融点金属粒子中のSn成分が、金属面及び高融点金属粒子との界面に濡れながら金属間化合物を僅かに形成させることで、溶融した低融点金属粒子同士が融合する際に働く表面張力及び凝集力を抑制し、金属面上に連続的な金属層を形成することが可能となる。従って、溶融した低融点金属粒子のSn成分と、高融点金属粒子との間にSnを含む金属間化合物を短時間の熱処理で形成させる観点から、前記高融点金属粒子は、Snと金属間化合物を形成する金属を含んでいることが好ましく、Cu粒子、Cu合金粒子、Ag粒子、Ag合金粒子、Ni粒子、Ni合金粒子、Au粒子、Au合金粒子であることがより好ましい。
例えば、低融点金属粒子としてSn粒子を用いるときには、高融点金属粒子としてCu粒子又はCu合金粒子を用いると、熱処理後に金属層中に分散する高融点金属粒子表面は、Cu−Sn系(例えば、Cu3Sn、Cu6Sn5、Cu5Sn、CuaSnbc(式中、a、b及びcは任意の比率であり、そしてXは、前記Cu合金粒子に含まれるその他の金属であり、例えばIn、Ni、Ge等が例示できる。)など)の金属間化合物が形成する。また、高融点金属粒子にAg粒子又はAg合金粒子を使用した場合には、Ag−Sn系(例えば、Ag3Sn、Ag5Sn、AgdSnef(式中、d、e及びfは任意の比率であり、そしてYは、前記Ag合金粒子に含まれるその他の金属であり、例えばIn等が例示できる。)など)の金属間化合物が形成する。さらに、高融点金属粒子にNi粒子又はNi合金粒子を使用した場合には、Ni−Sn系(例えば、Ni3Sn、Ni3Sn2、Ni3Sn4、NigSnhi(式中、g、h及びiは、任意の比率であり、そしてZは、前記Ni合金粒子に含まれるその他の金属であり、例えばIn、Cu等が例示できる。)など)の金属間化合物が形成する。さらに、高融点金属粒子としてAu粒子又はAu合金粒子を使用した場合には、Au−Sn系の金属間化合物が形成する。したがって、高融点金属粒子は、Cu粒子、Cu合金粒子、Ag粒子、Ag合金粒子、Ni粒子、Ni合金粒子、Au粒子又はAu合金粒子であることが特に好ましい。尚、上記金属間化合物は、4種以上の金属元素を含む金属間化合物も含む。
前記Cu合金粒子としては、Cuに、In、Ni、Sn、Bi、Ag、又はGeの金属のいずれかを添加することによって各種特性を付与することができる。例えば、Inは、溶融した低融点金属粒子成分とCu合金粒子との界面で形成するCu−Sn系の金属間化合物相の結晶粒を微細化する効果を有することから、Cu合金粒子にInが含まれることが好ましい。InのCu合金粒子中の成分比は、安定した合金相を金属層に形成させる観点から、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは、1質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上である。また、Cu合金粒子中のInの量を一定量以下にすることによって、熱処理後の金属層の耐熱性を高めることができるため、Inは30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは、15質量%以下であり、最も好ましくは10質量%以下である。Cu合金粒子にSnが添加されることで、溶融した低融点金属粒子成分との濡れ性が良くなるため、Cu合金粒子はSnを2質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上である。また、Cu合金粒子にBiが添加されることでも、溶融した低融点金属粒子成分との濡れ性が良くなるため、Cu合金粒子はBiを0.1質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは、2質量%以上である。また、Biの添加量を一定以下に抑えることによって、Cu合金粒子の脆性を改善することができるため、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。また、Agは、溶融したはんだのSn成分と融点の高い金属間化合物を形成し易いので、耐熱性を有する金属層を形成する。そのため、Cu合金粒子は、Agを0.1質量%以上含むことが好ましく、さらに好ましくは2質量%以上含むことが好ましい。また、コスト面からCu合金粒子に含まれるAgは20質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは10質量%以下である。Geは、低融点金属粒子溶融時に優先的に酸化して、Sn等の酸化を抑制する効果を有するため、Cu合金粒子中に0.1質量%以上含まれていることが好ましく、酸化物が低融点金属粒子の溶融流動を阻害し、接合性に悪影響を与えることを防ぐ観点から、5.0質量%以下が好ましい。
Ag合金粒子及びNi合金粒子としては、溶融した低融点金属粒子成分との濡れ性を向上させる観点から、Sn5質量%以上を含むことが好ましく、より好ましくは10質量%以上である。また、Ag合金粒子及びNi合金粒子中のSnの含有量を一定以下に抑えることによって、金属層に形成する金属間化合物の生成を確保することができるため、Ag合金粒子及びNi合金粒子中のSn含有量は80質量%以下が好ましく、より好ましくは、50質量%以下である。また、低温での金属の拡散を促進させる観点から、Ag合金粒子及びNi合金粒子は、In又はBiとの合金粒子であることが好ましい。
高融点金属粒子の平均粒子径は、溶融した低融点金属粒子の表面張力を抑制する観点と、ペースト印刷特性を向上させる観点から100μm以下であることが好ましく、より好ましくは60μm以下であり、最も好ましくは45μm以下である。また、金属粒子の平均粒子径を大きくすることによって、粒子一つ当たりの質量が大きくなるため、熱処理時にバインダー中高融点金属粒子が浮遊しにくくなり、かつ、単位質量当たりの金属粒子の酸素濃度を低くすることが可能となり、溶融した低融点金属粒子成分との濡れ性が良くなる。このことで、層分離特性が良好となる。該高融点金属粒子の粒子サイズが極めて小さい場合には、図1に示すように、金属層3中に取り込まれる高融点金属粒子6の割合が急激に減少し、金属間化合物の形成が阻害されることによって、本実施の形態における層分離構造が良好に形成されない恐れがある。これらの点から、高融点金属粒子の平均粒子径は8μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、14μm以上であることがさらに好ましく、20μm以上であることが特に好ましく、最も好ましくは25μm以上である。
(低融点金属粒子、及び、高融点金属粒子の複合金属粒子)
本実施の形態のペーストは、低融点金属粒子と高融点金属粒子を含む。仮に、ペーストが高融点金属粒子を含まない場合、図2に示すように、熱処理によって溶融した低融点金属粒子同士は、融合しながら金属面2上に濡れて金属層3を形成しようとするが、表面張力によって金属面2上の各箇所でランダムに融合しようとするため、一定以上の厚みを有する連続的な金属層3は形成しない。しかしながら、高融点金属粒子6を特定の範囲の比率で添加することによって、図3に示すように、熱処理によって溶融した低融点金属粒子中のSn成分と、金属面2および高融点金属粒子6との界面にSnを含む金属間化合物を僅かに形成させることができ、この金属間化合物の形成によって、金属面2上での、溶融した低融点金属粒子成分の表面張力による融合が抑制され、金属面2上に連続的な金属層3を形成することが可能となる。一方で、図4に示すように、低融点金属粒子に対する高融点金属粒子6の混合比が多すぎると、低融点金属粒子が溶融して金属面2上に濡れて金属層3を形成するために十分なSn溶融成分が無く、金属面2上に連続的な金属層3が形成しない。従って、低融点金属粒子と高融点金属粒子の混合比は、低融点金属粒子100質量部に対して、高融点金属粒子は8質量部〜67質量部であることが好ましく、10質量部〜55質量部であることがより好ましく、13質量部〜45質量部であることがさらに好ましく、15質量部〜35質量部であることが特に好ましい。
具体的な低融点金属粒子/高融点金属粒子の組み合わせは、Sn−Bi粒子/Cu粒子、Sn−Bi粒子/Cu合金粒子、Sn−Bi粒子/Ag粒子、Sn−Bi粒子/Ag合金粒子、Sn−Bi粒子/Ni粒子、Sn−Bi粒子/Ni合金粒子、Sn粒子/Cu粒子、Sn粒子/Cu合金粒子、Sn粒子/Ag粒子、Sn粒子/Ag合金粒子、Sn粒子/Ni粒子、Sn粒子/Ni合金粒子、Sn−Ag粒子/Cu粒子、Sn−Ag粒子/Cu合金粒子、Sn−Ag粒子/Ag粒子、Sn−Ag粒子/Ag合金粒子、Sn−Ag粒子/Ni粒子、Sn−Ag粒子/Ni合金粒子、Sn−Ag−Cu粒子/Cu粒子、Sn−Ag−Cu粒子/Cu合金粒子、Sn−Ag−Cu粒子/Ag粒子、Sn−Ag−Cu粒子/Ag合金粒子、Sn−Ag−Cu粒子/Ni粒子、Sn−Ag−Cu粒子/Ni合金粒子等が例示できる。また、上記Sn−Bi粒子は、さらに2質量%以下のAgを含んでいることが好ましい。
また、低融点金属粒子及び高融点金属粒子は、環境負荷の観点から、いずれも鉛(Pb)フリー組成であることが好ましく、各金属粒子は、鉛(Pb)を含まないか、又は鉛含有量が1000ppm以下であることが好ましい。
<ペースト>
本実施の形態のペースト100質量部に占める低融点金属粒子と高融点金属粒子の合計量は、ペーストの粘度を適正な範囲としてスクリーン印刷等での印刷性を良好とする観点から、96質量部以下であることが好ましく、92質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがさらに好ましい。金属粒子の沈降を防止し、一定かつ均一な厚みを有する金属層の形成を容易とする観点から、60質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。尚、ペースト全体に占める金属粒子の割合が少ない程、熱処理後に金属層表面に形成するバインダー硬化層の厚みを厚くすることができる。すなわち、ペースト中のバインダーと金属粒子の混合比率を調整することによって、金属層と熱硬化性樹脂硬化層の厚みの比を制御することができる。従来のめっき浴を用いた金属面上へのめっき方法では、厚みのあるめっき層を形成するためには、長時間を要するが、本実施の形態のペーストを用いることによって、短時間での金属層を形成することができる。
<金属面>
本実施の形態における金属面は、特定の材料又は基材中に包含されていてよい。例えば、部品を実装するための基板、バルク金属などの材料は、金属面を有することができるので、そのような材料の金属面に、本実施の形態の積層構造体を形成することができる。また、本実施の形態における金属面は、溶融した上記低融点金属粒子との濡れ性を考慮して、Cu、Ag、Au、Ni及びFeから成る群から選択される少なくとも1つの金属から形成されていることが好ましい。中でも、Cu、Ag、Au及びNiの少なくとも1つを含む金属面は、溶融した低融点金属粒子のSn成分と接合性および金属拡散性が良く、特にCuを含む金属面であることが好ましい。また、使用する金属面上には、プリフラックス処理、有機皮膜処理等の防錆処理が施されていてもよい。
<金属面保護基板及び部品実装基板の製造方法>
本実施の形態は、金属面上に、前記ペーストを塗布する工程と、その後の工程で、前記低融点金属粒子の融点より高い温度、かつ、前記高融点金属粒子の融点より低い温度にて熱処理する工程を含み、前記低融点金属粒子が融合したマトリクス中に前記高融点金属粒子が分散した金属層と、前記バインダーの硬化層とを、金属面、該金属層、該硬化層の順に積層されるように層分離させる、金属面保護基板の製造方法にも関する。
金属面上にペーストを塗布する方法としては、スクリーン印刷、ディスペンス、転写等の既知の技術を用いることができるが、塗布厚みに変動が多いと、金属面上に形成する金属層およびバインダー硬化層の厚みも変動するため、印刷マスクを用いたスクリーン印刷が好ましい。また、この時印刷マスクの厚みは、ペースト中の金属粒子サイズより厚いことが好ましい。
また、金属面上に形成させる金属層とバインダー硬化層から形成される保護層の厚みを、より厚くさせる観点から、金属粒子複合ペーストの塗布厚みは、50μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましく、200μm以上が特に好ましい。また、金属層とバインダー硬化層の層分離構造を良好に形成させる観点から、金属粒子複合ペーストの塗布厚みは、5mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。
また、図5(a)及び(b)に示すように、上記ペースト塗布後の工程で、電子部品9(例えば、抵抗、コンデンサー、コイル、圧電素子、振動子等の受動部品、又は半導体等の能動部品)又は金属ケース10をマウンター装置等で実装し、その後の工程で熱処理をすることによって、基板電極7と電子部品9との間を、金属層3によって電気的に接合させることが可能であり、かつ、接合部より外側に形成する金属層3は、バインダー硬化層4によって保護された層分離構造を有する部品実装基板を製造することが可能である。また、図5(c)に示すように、前記ペースト塗布部に、半導体ダイ11を静置し、その後熱処理をすることによって、半導体ダイと基板電極とを金属層3によって接合することも可能である。上記方法にて部品実装を行った場合、接合部表面が、バインダー硬化層4によって被覆された構造を形成するため、より接続信頼性の高い部品実装基板を製造することができる。
熱処理温度は、低融点金属粒子の融点以上かつ高融点金属粒子の融点以下が好ましく、低融点金属粒子の融点より10℃以上高い温度で熱処理することが、低融点金属粒子溶融時の濡れ性を向上させることができるため、より好ましい。また、熱処理方法としては、特に限定されないが、赤外線(IR)若しくは熱風を用いたリフロー炉、又はオーブン、ホットプレート等の既知の熱処理器を使用することができる。中でも低融点金属粒子の溶融特性を向上させるために窒素リフローを用いることが好ましい。
必要な熱処理時間は、バインダー中に添加するフラックス成分、又は硬化剤等の添加量によって異なるが、基板の熱ダメージを緩和する観点から、使用する低融点金属粒子の融点以上の温度、かつ、高融点金属粒子以下の温度にて、10分以内の熱処理であることが好ましい。熱処理後のはんだ層表面に形成するバインダー硬化層の硬化状態は、例えば、IRによる熱硬化性樹脂の硬化率測定、鉛筆引っかき試験等の既知の方法で確認することができる。
上記金属面は、溶融した上記低融点金属粒子との濡れ性を考慮して、Cu、Ag、Au、Ni及びFeから成る群から選択される少なくとも1つの金属から形成されていることが好ましい。中でも、Cu、Ag、Au、Niのいずれかを含む金属面は、溶融した低融点金属粒子のSn成分と接合性および金属拡散性が良く、特にCuを含む金属面であることが好ましい。
また、本製造方法は電解めっきプロセスを用いずに、ペースト塗布工程と熱処理工程で金属面保護層の形成が達成されるため、従来の電解めっき法と比較して製造プロセスの大幅な削減が可能となる。
<金属面上の積層構造体及び該構造体を有する基板>
本発明は、前記ペーストを塗布する工程と、その後の工程で、前記低融点金属粒子の融点より高い温度かつ前記高融点金属粒子の融点より低い温度にて熱処理する工程によって得られる積層構造体に関する。該積層構造体は、Snを含む低融点金属のマトリクス中に、該マトリクスより融点の高い高融点金属粒子が分散した金属層と、熱硬化性樹脂を含むバインダーの硬化層とが、金属面、該金属層、該硬化層の順に積層されるように層分離し、かつ、該金属層に分散した高融点金属粒子表面は、Snを含む金属間化合物によって被覆された積層構造体である。
前記金属間化合物は、低融点金属粒子に含まれるSn成分が熱処理時に溶融拡散し、金属面及び高融点金属粒子表面の金属と金属間化合物を形成する。金属間化合物を形成する金属の組み合わせの具体例としては、Cu−Sn、Cu−Sn−In、Cu−Sn−Ge、Cu−Sn−In−Ge、Ag−Sn、Ag−Sn−In、Ni−Sn、Ni−Sn−In、Ni−Sn−Cu、Ni−Sn−In−Cu、Au−Sn等が例示できる。一般的に金属間化合物は、耐熱性及び耐食性に優れていることから、金属層中に分散した高融点金属粒子表面に上記金属間化合物が形成することによって、優れた耐熱性及び耐食性を付与することができる。
また、上記金属層は、前記低融点金属粒子が溶融して形成するマトリクスが主成分であり、該マトリクスは、Snを含む低融点金属成分であることから、機械的な外部応力に対する耐性は低い。しかしながら、本実施形態の積層構造体では、金属層表面にバインダー硬化部が形成するため、機械的な外部応力に対しても高い耐性を付与することができる。
上記構造体を有する基板について以下に説明する。金属板、又は金属面を有する基板(例えば、ガラスエポキシ樹脂基板、紙フェノール樹脂基板、セラミック基板、ポリイミド系のフレキシブル基板、Si基板等)の金属面上に、本実施の形態のペーストを塗布し、その後の工程で熱処理することによって、基板金属面上に、連続的な金属層およびバインダー硬化層の層分離構造を、この順で形成させることが可能である。例えば、Cu面を有するガラスエポキシ樹脂基板上に、本実施の形態のペーストを均一な厚みでスクリーン印刷し、熱処理をすることによって、Cu面上に均一な厚みの金属層を形成し、かつ、金属層表面はバインダー硬化部によって均一な厚みで保護することができる。同様に、鋼板表面に本実施の形態のペーストを均一な厚みでスクリーン印刷し、その後の工程で熱処理をすることによって、鋼板上に均一な厚みの金属層を形成し、かつ、金属層表面は均一な厚みのバインダー硬化部によって保護することができるため、従来のブリキ等と比較して、容易に厚みのあるSn系の金属層を形成することができ、かつ、金属層表面はバインダー硬化部によって保護されているため、機械的な外部応力によって金属層が削れることを抑制することができる。
上記金属面は、溶融した上記低融点金属粒子との濡れ性を考慮して、Cu、Ag、Au、Ni及びFeの少なくとも1つを含むことが好ましい。中でも、Cu、Ag、Au及びNiの少なくとも1つ含む金属面は、溶融した低融点金属粒子のSn成分と接合性および金属拡散性が良く、特にCuであることが好ましい。
また、本発明は、図5に示すように、上記積層構造体を有する、電子部品9又は金属ケース10の接合基板にも関する。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、各金属粒子の平均粒径は、Sympatec社(ドイツ)製レーザー回折式粒子径分布測定装置「HELOS&RODOS」により体積積算平均値を測定し、平均粒径値として求めた。
金属粒子の融点は、島津製作所株式会社製「DSC−60」を用い、窒素雰囲気下、昇温10℃/分の条件で、測定温度範囲40〜300℃で測定し、最低温の吸熱ピークを融点とした。
[実施例1]
(1)低融点金属粒子
低融点金属粒子には、山石金属(株)社製の粒度25μm〜45μmの金属粒子Bi−42Sn(元素組成は、Bi:58質量%、Sn:42質量%)を用いた。該金属粒子の平均粒子径をレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS&RODOS)で測定したところ平均粒径は35.0μmであった。該金属粒子を金属粒子Aとする。また、上記金属粒子を、示差走査熱量計(島津製作所:DSC−60)で、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、40〜300℃の範囲において測定したところ、138℃に吸熱ピーク(融点)が検出された。尚、本明細書における融点とは、上記DSCによる吸熱ピークの測定結果に基づく。
(2)高融点金属粒子
Cu6.5kg(純度99質量%以上)、Sn1.5kg(純度99質量%以上)、Ag1.0kg(純度99質量%以上)、Bi0.5kg(純度99質量%以上)、及びIn0.5kg(純度99質量%以上)(すなわち目標元素組成が、Cu:65質量%、Sn:15質量%、Ag:10質量%、Bi:5質量%、及びIn:5質量%)を黒鉛坩堝に入れ、窒素雰囲気で加熱融解させた。次に、この溶融金属を、坩堝の先端より、窒素ガス雰囲気の噴霧槽内に導入した後、坩堝先端付近に設けられたガスノズルから、窒素ガスを噴出してアトマイズを行い、得られた粉体を気流式分級機(日清エンジニアリング:TC−15N)を用いて、30μm設定で分級し、大粒子側を回収後、もう一度75μm設定で分級し、小粒子側を回収して得られた金属粒子を金属粒子Bとして使用した。回収した合金粒子をレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS&RODOS)で測定したところ、平均粒径は、30.8μmであった。この金属粒子Bを示差走査熱量計(島津製作所:DSC−60)で、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、40〜300℃の範囲において測定したところ、融点に由来する吸熱ピークは検出されなかったことから、融点300℃以上の高融点金属粒子とみなした。
(3)混合粉体の作製
前記低融点金属粒子85質量部に対して、前記高融点金属粒子15質量部を混合して、複合金属粒子を作製した。
(4)バインダー
ビスフェノールA型エポキシ樹脂である旭化成エポキシ社製の液状エポキシ樹脂(AER260)5.5質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である三菱化学社製液状エポキシ樹脂(YL983U)37質量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である旭化成エポキシ社製の固形エポキシ樹脂(AER6002)3質量部を添加し、180℃で30分間攪拌・加熱処理をした。その後、室温まで冷却をし、硬化剤として四国化成社製のイミダゾール系硬化剤である2−フェニルイミダゾール イソシアヌル酸付加物(2PZ−OK)3質量部と、アミン化合物としてn−ブチルアミン0.5質量部(25℃にて液状)と、多価カルボン酸としてアジピン酸2.5質量部及びシクロへキシルアミンアジピン酸塩0.5質量部を加え、乳鉢にて30分間すり潰した後、自転・公転ミキサー(THINKY社製 あわとり練太郎)を用いて室温(25℃)で5分混練した後3分間脱泡し、バインダーを作製した。得られたバインダーをバインダーAとした。尚、本バインダーAに含まれる液状熱硬化性樹脂は、AER260とYL983Uであり、室温(25℃)で固体の有機フィラーは、AER6002、2PZ−OK、アジピン酸、シクロへキシルアミンアジピン酸塩である。
(5)ペーストの作製
上記混合粉体100質量部に対して(4)で作製したバインダーAを17.6質量部添加し、ソルダーソフナー(マルコム:SPS−1)にて混練し、脱泡混練機(松尾産業:SNB−350)に供して、ペーストを作製した。
(6)金属面上での層分離特性評価サンプルの作製
金属面として、最表面全面にCu面を有する、1インチ×1インチサイズのガラスエポキシ基板(厚み:1mm)のCu面上に、(5)にて作製したペーストを印刷した。ペースト印刷パターン形成には、スクリーン印刷機(マイクロテック:MT−320TV)を用いた。印刷マスク及びスキージはメタル製のものを採用した。印刷マスクは、開口サイズ2.0cm×2.0cm、厚み0.22mmのものを用いた。印刷条件は、速度10mm/秒、印圧0.1MPa、スキージ圧0.2MPa、背圧0.1MPa、アタック角度20°、クリアランス0mm、及び印刷回数1回とした。印刷後に得られた基板を、N雰囲気(O濃度:1000ppm以下)で熱処理をした。熱処理装置としては、リフローシミュレータ(マルコム:SRS−1C)を使用した。温度プロファイルは、熱処理開始(常温)から160℃までを2.0℃/秒で昇温し、160℃で360秒間保持した。
(7)金属面上での層分離特性評価
前記(6)にて作製した評価サンプルを、エポキシ包埋し、評価基板面に対して垂直方向に断面研磨を行うことによって、上記印刷後に熱処理して得られるペースト硬化部の断面構造を光学顕微鏡にて観察した。観察範囲は、図6に示すように(6)にて作製したサンプルの上面図の切断線L(ペースト塗布部13の中心部)の断面とした。その結果、前記Cu面上に、高融点金属粒子が分散した金属層と、バインダー硬化層が、それぞれ連続的にこの順で層分離構造を形成する能力を有することが確認できた。本明細書において、「層分離構特性を有する」とは、上記評価方法によってペースト硬化部の断面構造を観察した際に、図7に示すように、金属面上に15μm以上の厚みの連続的な金属層3が形成し、さらに該金属層3の表層は15μm以上厚みのバインダー硬化層4によって連続的に被覆された構造を有することとし、バインダー及び層分離特性評価結果は表1に記載する。尚、上記断面観察の結果、バインダー硬化層4中に金属粒子が浮遊していても、面積比率でバインダー硬化層中に5%未満であれば、層分離特性を有することとした。また、上記断面観察の結果、金属層3中にバインダーの硬化部又は空隙が一部ボイドとして存在していても、断面観察全域の金属層が連続していれば層分離特性を有することとした。
尚、本明細書における実施例および比較例のペーストは、熱処理後のバインダー硬化部は、ゲル状態ではなく、いずれも硬い硬質皮膜であることが確認できた。
[実施例2〜16、比較例1〜10]
実施例1で使用した金属粒子を、表1又は2記載の各種金属粒子及び混合比率に変更し、実施例1(3)〜(7)と同様の評価を行った。尚、使用した金属粒子a、C、D、E、F、G、H、I及びJに関しては以下に詳細を示す。比較例8には、バインダーとして、以下に説明するバインダーBを使用し、実施例15、16及び比較例9、10では、バインダーCを使用した。また、実施例15、16及び比較例9、10の層分離特性評価サンプルの作製では、熱処理装置として、リフローシミュレータ(マルコム:SRS−1C)を使用し、温度プロファイルは、熱処理開始(常温)から250℃までを2.0℃/秒で昇温し、250℃で60秒間保持した。
尚、層分離特性評価結果に関しては、表1又は2に記載した。
<金属粒子a>
山石金属(株)社製の粒度25μm〜38μmの金属粒子Sn−3Ag−0.5Cu(元素組成は、Sn:96.5質量%、Ag:3質量%、Cu:0.5質量部)を用いた。該金属粒子の平均粒子径をレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS&RODOS)で測定したところ平均粒径は30.3μmであった。該金属粒子を金属粒子aとする。また、上記金属粒子を、示差走査熱量計(島津製作所:DSC−60)で、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、40〜300℃の範囲において測定したところ、218℃に吸熱ピーク(融点)が検出された。尚、本明細書における融点とは、上記DSCによる吸熱ピークの測定結果に基づく。
<金属粒子C>
Cu6.5kg(純度99質量%以上)、Sn1.5kg(純度99質量%以上)、Ag1.0kg(純度99質量%以上)、Bi0.5kg(純度99質量%以上)、及びIn0.5kg(純度99質量%以上)(すなわち目標元素組成が、Cu:65質量%、Sn:15質量%、Ag:10質量%、Bi:5質量%、及びIn:5質量%)を黒鉛坩堝に入れ、99体積%以上のヘリウム雰囲気で、高周波誘導加熱装置により1400℃まで加熱、融解した。次に、この溶融金属を、坩堝の先端より、ヘリウムガス雰囲気の噴霧槽内に導入した後、坩堝先端付近に設けられたガスノズルから、窒素ガスを噴出してアトマイズを行い、得られた粉体を気流式分級機(日清エンジニアリング:TC−15N)を用いて、20μm設定で分級し、大粒子側を回収後、もう一度30μm設定で分級し、小粒子側を回収して得られた金属粒子を金属粒子Cとして使用した。回収した合金粒子をレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS&RODOS)で測定したところ、平均粒径は、15.1μmであった。この金属粒子Cを示差走査熱量計(島津製作所:DSC−60)で、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、40〜300℃の範囲において測定したところ、融点に由来する吸熱ピークは検出されなかった。
<金属粒子D>
Cu6.5kg(純度99質量%以上)、Sn1.5kg(純度99質量%以上)、Ag1.0kg(純度99質量%以上)、Bi0.5kg(純度99質量%以上)、及びIn0.5kg(純度99質量%以上)(すなわち目標元素組成が、Cu:65質量%、Sn:15質量%、Ag:10質量%、Bi:5質量%、及びIn:5質量%)を黒鉛坩堝に入れ、窒素雰囲気で加熱融解させた。次に、この溶融金属を、坩堝の先端より、窒素ガス雰囲気の噴霧槽内に導入した後、坩堝先端付近に設けられたガスノズルから、窒素ガスを噴出してアトマイズを行い、得られた粉体を気流式分級機(日清エンジニアリング:TC−15N)を用いて、5μm設定で分級し、大粒子側を回収後、もう一度30μm設定で分級し、小粒子側を回収して得られた金属粒子を金属粒子Dとして使用した。回収した合金粒子をレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS&RODOS)で測定したところ、平均粒径は、11.2μmであった。この金属粒子Dを示差走査熱量計(島津製作所:DSC−60)で、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、40〜300℃の範囲において測定したところ、融点に由来する吸熱ピークは検出されなかった。
<金属粒子E>
Cu6.5kg(純度99質量%以上)、Sn1.5kg(純度99質量%以上)、Ag1.0kg(純度99質量%以上)、Bi0.5kg(純度99質量%以上)、及びIn0.5kg(純度99質量%以上)(すなわち目標元素組成が、Cu:65質量%、Sn:15質量%、Ag:10質量%、Bi:5質量%、及びIn:5質量%)を黒鉛坩堝に入れ、99体積%以上のヘリウム雰囲気で、高周波誘導加熱装置により1400℃まで加熱、融解した。次に、この溶融金属を、坩堝の先端より、ヘリウムガス雰囲気の噴霧槽内に導入した後、坩堝先端付近に設けられたガスノズルから、窒素ガスを噴出してアトマイズを行い、得られた粉体を気流式分級機(日清エンジニアリング:TC−15N)を用いて、5μm設定で分級し、大粒子側を回収後、もう一度10μm設定で分級し、小粒子側を回収して得られた金属粒子を金属粒子Eとして使用した。回収した合金粒子をレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS&RODOS)で測定したところ、平均粒径は、4.0μmであった。この金属粒子Eを示差走査熱量計(島津製作所:DSC−60)で、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、40〜300℃の範囲において測定したところ、融点に由来する吸熱ピークは検出されなかった。
<金属粒子F>
Cu粉(福田金属箔粉工業社製、Cu−HWQ 15μm 平均粒径15μm)を使用した。該Cu粉を、金属粒子Fとした。
<金属粒子G>
Cu粉(福田金属箔粉工業社製、Cu−HWQ 3μm 平均粒径2.6μm)を使用した。該Cu粉を、金属粒子Gとした。
<金属粒子H>
Ag粉(高純度化学研究所社製、AGE06PB)を気流式分級機(日清エンジニアリング:TC−15N)を用いて、20μm設定で分級し、大粒子側を回収後、もう一度30μm設定で分級し、小粒子側を回収して得られた金属粒子を金属粒子Hとして使用した。回収した合金粒子をレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS&RODOS)で測定したところ、平均粒径は15μmであった。
<金属粒子I>
Ag粉(日本アトマイズ加工(株)社製、HXR−Ag 平均粒径5.3μm)を用いた。該Ag粉を、金属粒子Iとした。
<金属粒子J>
Ni6kg(純度99質量%以上)、Sn4kg(純度99質量%以上)を、黒鉛坩堝に入れ、窒素雰囲気で加熱融解させた。次に、この溶融金属を、坩堝の先端より、窒素ガス雰囲気の噴霧槽内に導入した後、坩堝先端付近に設けられたガスノズルから、窒素ガスを噴出してアトマイズを行い、得られた粉体を気流式分級機(日清エンジニアリング:TC−15N)を用いて30μm設定で分級し、大粒子側を回収後、もう一度75μm設定で分級し、小粒子側を回収して得られた金属粒子を金属粒子Jとして使用した。回収した合金粒子をレーザー回折式粒子径分布測定装置(HELOS&RODOS)で測定したところ、平均粒径は、27.5μmであった。この金属粒子Jを示差走査熱量計(島津製作所:DSC−60)で、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で、40〜300℃の範囲において測定したところ、融点に由来する吸熱ピークは検出されなかった。
<バインダーB>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂である旭化成エポキシ社製の液状エポキシ樹脂(AER260)5.5質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である三菱化学社製液状エポキシ樹脂(YL983U)37質量部に対して、旭化成エポキシ社製のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(AER6002)3質量部を添加し、180℃で30分間攪拌・加熱処理をした。その後、室温まで冷却をし、硬化剤として四国化成社製のイミダゾール系硬化剤である2−フェニルイミダゾール イソシアヌル酸付加物(2PZ−OK)3質量部と、アミン化合物としてn−ブチルアミン0.5質量部(25℃にて液状)と、有機酸としてリシノレイン酸を主成分とする液状(25℃にて)モノカルボン酸CO−FA S(伊藤製油社製)を3.0質量部加え、乳鉢にて30分間すり潰した後、自転・公転ミキサー(THINKY社製 あわとり練太郎)を用いて室温(25℃)で5分混練した後3分間脱泡し、バインダーを作製した。得られたバインダーをバインダーBとした。尚、バインダーB中の、液状熱硬化性樹脂は、AER260とYL983Uであり、室温(25℃)で固体の有機フィラーは、AER6002、2PZ−OKである。
<バインダーC>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂である旭化成エポキシ社製の液状エポキシ樹脂(AER260)14質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である三菱化学社製液状エポキシ樹脂(YL983U)57質量部に対して、三菱化学社製のビスフェノールF型固形エポキシ樹脂(4005P)8質量部を添加し、180℃で30分間攪拌・加熱処理をした。その後、多価カルボン酸としてシクロへキシルアミンアジピン酸塩4.9質量部及びn−ブチルアミンアジピン酸塩1.5質量部と、ソルビトール系チクソ剤を1質量部添加し、乳鉢にて30分間すり潰した後、自転・公転ミキサー(THINKY社製 あわとり練太郎)を用いて室温(25℃)で5分混練した後3分間脱泡し、バインダーを作製した。得られたバインダーをバインダーCとした。尚、バインダーC中の、液状熱硬化性樹脂は、AER260とYL983Uであり、室温(25℃)で固体の有機フィラーは、4005P、シクロへキシルアミンアジピン酸塩、n−ブチルアミンアジピン酸塩、及びソルビトール系チクソ剤である。
実施例1〜16では、ペーストはいずれも層分離特性を有することが分かった。実施例5の層分離特性評価時の断面写真を参考として図7に示す。一方で、比較例1では、低融点金属粒子に対する高融点金属粒子の混合比率が低いため、低融点金属粒子溶融時の溶融流動および凝集力を抑制することができず、金属面上で溶融した金属成分がランダムに融合し、層分離特性は観察されなかった。比較例2〜4では、低融点金属粒子に対する高融点金属粒子の混合比率が高く、層分離特性が得られない結果となった。参考として、比較例2の層分離特性評価で得られた断面図を図8に示す。
また、比較例5〜7において、高融点金属粒子の平均粒子径が8μm未満の微粒子を用いた場合には、図1に示したように高融点金属粒子が、金属層中に良好に取り込まれず、層分離特性が得られない結果となった。
さらに、比較例8において、フラックス成分としてモノカルボン酸を用いた場合には、フラックス活性が弱く、層分離特性が得られなかった。
比較例9及び比較例10において、低融点金属粒子としてSn96.5Ag3.0Cu0.5粒子を用いた場合においても、低融点金属粒子に対する高融点金属粒子の混合比率が低い場合には、金属面上で溶融した金属成分がランダムに融合し、層分離特性は観察されず、一方で、低融点金属粒子に対する高融点金属粒子の混合比率が高い場合には、連続的な金属層の形成が観察されず、層分離特性は観察されなかった。
本発明のペーストを金属面上で熱処理することよって、金属面上に連続的な金属層が形成されると同時に、該金属層表面にバインダーの硬化層が被覆された層分離構造を形成するため、金属層とバインダー硬化層による金属表面保護層を形成することができる。このことで、従来の電解めっきよりも簡易的なプロセスによって、耐熱性、耐食性、耐機械的応力に優れた金属層を形成でき、従来にない保護面の形成方法として活用できる。
1 基板
2 金属面
3 金属層
4 バインダー硬化層
5 溶融した低融点金属粒子によるマトリクス
6 高融点金属粒子
7 基板電極
8 熱硬化性樹脂組成物硬化層
9 電子部品
10 金属ケース
11 半導体ダイ
12 Cu面
13 熱処理後保護ペースト塗布部
14 バインダー硬化層上面境界

Claims (17)

  1. 金属面を有する材料に、以下の層:
    Sn含有金属から成るマトリクス中に、該Sn含有金属より高い融点を有する金属粒子が分散している金属層;及び
    熱硬化性樹脂を含むバインダーから成る硬化層;
    が積層されている構造体であって、該金属粒子の表面は、Snを含む金属間化合物によって被覆されており、そして該金属層及び該硬化層は、互いに層分離していることによって、該金属面、該金属層、該硬化層という積層順序を保持している、前記構造体。
  2. 前記金属面は、Ag、Cu、Ni、Au及びFeから成る群から選択される少なくとも1つの金属から形成されている、請求項1に記載の構造体。
  3. 前記金属間化合物は、Cu−Sn、Cu−Sn−In、Cu−Sn−Ge、Cu−Sn−In−Ge、Ag−Sn、Ag−Sn−In、Ni−Sn、Ni−Sn−In、Ni−Sn−In−Cu、Ni−Sn−Cu及びAu−Snから成る群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の構造体。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造体を有する金属面保護基板。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造体を有する部品実装基板。
  6. 下記成分;
    Sn粒子(1)、又はSnとAg、Bi、Cu、Ge、In、Sb、Ni、Zn及びAuから成る群から選択される少なくとも1種の金属とを含み、かつ300℃未満の融点を有する合金粒子(1);
    Ag、Bi、Cu、Ge、In、Sn、Sb、Ni、Zn及びAuから成る群から選択される少なくとも1種の金属を含み、かつ8μm以上の平均粒子径及び300℃以上の融点を有する金属粒子(2);並びに
    25℃で液体の熱硬化性樹脂及び多価カルボン酸を含むバインダー(3);
    を含むペーストであって、該金属粒子(2)は、100質量部の該Sn粒子(1)又は該合金粒子(1)に対して、8質量部〜67質量部含まれる、前記ペースト。
  7. 前記25℃で液体の熱硬化性樹脂100質量部に対して、25℃で固体の有機フィラーを5質量部〜120質量部含む、請求項6に記載のペースト。
  8. 前記有機フィラーは、25℃で固体の熱硬化性樹脂を含む、請求項7に記載のペースト。
  9. 前記ペースト100質量部中に含まれる、前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)と前記金属粒子(2)との合計量が60質量部〜96質量部である、請求項6〜8のいずれか1項に記載のペースト。
  10. 前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)と前記金属粒子(2)との合計量を100質量部としたときに、前記多価カルボン酸は、前記ペースト中に0.1質量部〜7.0質量部含まれる、請求項6〜9のいずれか1項に記載のペースト。
  11. 前記バインダー(3)は、アミン塩をさらに含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載のペースト。
  12. 前記25℃で液体の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である、請求項6〜11のいずれか1項に記載のペースト。
  13. 前記合金粒子(1)又は前記金属粒子(2)は、少なくとも0.1質量%のIn及び/又は少なくとも0.1質量%のGeを含む、請求項6〜12のいずれか1項に記載のペースト。
  14. 前記合金粒子(1)又は前記金属粒子(2)は、鉛(Pb)を含まない、請求項6〜13のいずれか1項に記載のペースト。
  15. 以下の工程:
    金属面を有する基板に、請求項6〜14のいずれか1項に記載のペーストを塗布する工程;
    前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)の融点より高く、かつ前記金属粒子(2)の融点より低い温度で、前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)から成るマトリクス中に前記金属粒子(2)が分散している金属層と、前記バインダー(3)から成る硬化層とを層分離させて、該金属面、該金属層、該硬化層の順に積層させる工程;
    を含む、金属面保護基板の製造方法。
  16. 以下の工程:
    金属面を有する回路基板に、請求項6〜14のいずれか1項に記載のペーストを塗布する工程;
    該ペーストの塗布部に電子部品又は金属ケースを搭載する工程;及び
    前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)の融点より高く、かつ前記金属粒子(2)の融点より低い温度で、前記Sn粒子(1)又は前記合金粒子(1)から成るマトリクス中に前記金属粒子(2)が分散している金属層と、前記バインダー(3)から成る硬化層とを層分離させて、該金属面、該金属層、該硬化層の順に積層させる工程;
    を含む、部品実装基板の製造方法。
  17. 前記金属面は、Ag、Cu、Ni、Au及びFeから成る群から選択される少なくとも1つの金属から形成されている、請求項15又は16に記載の方法。
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