JP2013234702A - プラネタリギヤ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】より長寿命なプラネタリギヤ装置を提供する。
【解決手段】プラネタリギヤ装置10のピニオンシャフト15は、浸炭窒化処理により硬化されてなる硬化層15aを転動面に備えており、硬化層15aの表面硬さはHv650以上で、残留オーステナイト量は20体積%以上50体積%以下である。ニードルローラ16は、浸炭窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面に備えており、この硬化層の表面硬さはHv750以上で、残留オーステナイト量は5体積%以上45体積%以下である。ニードルローラ16の硬化層にはSi−Mn系窒化物が析出しており、析出しているSi−Mn系窒化物の量は面積率で1%以上10%未満であるとともに、粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数が面積375μm2 あたり100個以上である。ニードルローラ16の硬化層の表面窒素濃度は、0.2質量%以上である。
【選択図】図2
【解決手段】プラネタリギヤ装置10のピニオンシャフト15は、浸炭窒化処理により硬化されてなる硬化層15aを転動面に備えており、硬化層15aの表面硬さはHv650以上で、残留オーステナイト量は20体積%以上50体積%以下である。ニードルローラ16は、浸炭窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面に備えており、この硬化層の表面硬さはHv750以上で、残留オーステナイト量は5体積%以上45体積%以下である。ニードルローラ16の硬化層にはSi−Mn系窒化物が析出しており、析出しているSi−Mn系窒化物の量は面積率で1%以上10%未満であるとともに、粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数が面積375μm2 あたり100個以上である。ニードルローラ16の硬化層の表面窒素濃度は、0.2質量%以上である。
【選択図】図2
Description
本発明はプラネタリギヤ装置に関する。
プラネタリギヤ装置は、減速機、変速機等の種々の用途に使用されている。例えば、自動車の自動変速機に用いられるプラネタリギヤ装置(例えば特許文献1を参照)は、サンギヤ、リングギヤ、及びキャリヤの回転要素を備えており、これらの回転要素は出力軸の周りに同心に配されている。また、キャリヤに固定されたピニオンシャフトが、サンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンギヤの中心穴に挿通され、ピニオンシャフトの外周面とピニオンギヤの中心穴の内面との間に複数のニードルローラが配されている。これにより、ピニオンギヤがピニオンシャフトにニードルローラを介して回転自在に支持されている。
これらピニオンギヤ、ピニオンシャフト、及びニードルローラで構成されるケージアンドローラは転がり軸受の一種であるが、プラネタリギヤ装置に用いられるケージアンドローラにおいては、内輪に相当するピニオンシャフトが固定輪となる。
一般に、転がり疲労に関しては、面圧の強さと繰り返し数とによって、その過酷さが決定される。プラネタリギヤ装置の場合は、面圧の高い内輪が固定輪となるため、ピニオンシャフトの剥離寿命がしばしば問題となる。
さらに、ピニオンギヤは転がり軸受の外輪に相当するが、ピニオンギヤの中心穴の内面は、通常の転がり軸受の外輪軌道面に比べて表面粗さが粗いため、一般にはニードルローラの摩耗や疲労が進行しやすい。その結果、ニードルローラの表面形状が崩れて、面圧の高い内輪(ピニオンシャフト)の疲労が急速に進行することとなるため、このことも、プラネタリギヤ装置の寿命低下の一因となっている。
さらに、ピニオンギヤは転がり軸受の外輪に相当するが、ピニオンギヤの中心穴の内面は、通常の転がり軸受の外輪軌道面に比べて表面粗さが粗いため、一般にはニードルローラの摩耗や疲労が進行しやすい。その結果、ニードルローラの表面形状が崩れて、面圧の高い内輪(ピニオンシャフト)の疲労が急速に進行することとなるため、このことも、プラネタリギヤ装置の寿命低下の一因となっている。
近年、プラネタリギヤ装置は、潤滑環境がより厳しくなる傾向にあることに加えて、小型化の要求も高まっていることから、さらなる長寿命化が求められていた。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、より長寿命なプラネタリギヤ装置を提供することを課題とする。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、より長寿命なプラネタリギヤ装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の態様は次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係るプラネタリギヤ装置は、中心に位置するサンギヤと、該サンギヤと同心に配されたリングギヤと、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛み合い前記サンギヤの周りを公転するピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの中心穴に挿通され前記ピニオンギヤを回転自在に支持するピニオンシャフトと、前記ピニオンギヤの中心穴の内面と前記ピニオンシャフトの外周面との間に転動自在に配された複数のころと、を備えるプラネタリギヤ装置であって、下記の6つの条件A〜Fを満足することを特徴とする。
条件A:前記ピニオンシャフトは、炭素の含有量が0.3質量%以上1.2質量%以下、クロムの含有量が0.5質量%以上2質量%以下の合金鋼で構成されている。
条件B:前記ピニオンシャフトは、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面に備えており、この硬化層の表面硬さはHv650以上で、残留オーステナイト量は20体積%以上50体積%以下である。
条件B:前記ピニオンシャフトは、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面に備えており、この硬化層の表面硬さはHv650以上で、残留オーステナイト量は20体積%以上50体積%以下である。
条件C:前記ころは、ケイ素の含有量が0.3質量%以上2.2質量%以下、マンガンの含有量が0.3質量%以上2質量%以下で、且つ、前記ケイ素の含有量と前記マンガンの含有量との比Si/Mnが5以下である合金鋼で構成されている。
条件D:前記ころは、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面に備えており、この硬化層の表面硬さはHv750以上で、残留オーステナイト量は5体積%以上45体積%以下である。
条件D:前記ころは、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面に備えており、この硬化層の表面硬さはHv750以上で、残留オーステナイト量は5体積%以上45体積%以下である。
条件E:前記ころの硬化層には、ケイ素及びマンガンを含有する窒化物が析出しており、この硬化層の表面に析出している前記窒化物の量は面積率で1%以上10%未満であるとともに、前記ころの硬化層の表面窒素濃度は0.2質量%以上である。
条件F:前記ころの硬化層の表面に析出している、粒径が0.05μm以上1μm以下の前記窒化物の個数が、面積375μm2 あたり100個以上である。
条件F:前記ころの硬化層の表面に析出している、粒径が0.05μm以上1μm以下の前記窒化物の個数が、面積375μm2 あたり100個以上である。
このプラネタリギヤ装置においては、粒径が0.05μm以上1μm以下の前記窒化物のうち、粒径が0.05μm以上0.5μm以下のものの個数の比率が20%以上であることが好ましい。
また、前記ピニオンシャフトを構成する合金鋼は、ケイ素及びマンガンの少なくとも一方をさらに含有することが好ましい。
また、前記ピニオンシャフトを構成する合金鋼は、ケイ素及びマンガンの少なくとも一方をさらに含有することが好ましい。
本発明のプラネタリギヤ装置は、前記6つの条件A〜Fを満足しているので、ピニオンシャフトが長寿命で且つころの表面形状が劣化しにくい。よって、本発明のプラネタリギヤ装置は、長寿命である。
本発明に係るプラネタリギヤ装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態であるプラネタリギヤ装置の分解斜視図である。
図1に示すプラネタリギヤ装置10は、図示しない軸が挿通されたサンギヤ11と、該サンギヤ11と同心に配されたリングギヤ12と、サンギヤ11及びリングギヤ12に噛み合いサンギヤ11の周りを公転する複数(図1においては3個)のピニオンギヤ13と、サンギヤ11及びリングギヤ12と同心に配されピニオンギヤ13を回転自在に支持するキャリヤ14と、を備えている。
図1に示すプラネタリギヤ装置10は、図示しない軸が挿通されたサンギヤ11と、該サンギヤ11と同心に配されたリングギヤ12と、サンギヤ11及びリングギヤ12に噛み合いサンギヤ11の周りを公転する複数(図1においては3個)のピニオンギヤ13と、サンギヤ11及びリングギヤ12と同心に配されピニオンギヤ13を回転自在に支持するキャリヤ14と、を備えている。
ピニオンギヤ13の中心には穴13aが形成されており、この中心穴13aに、キャリヤ14に固定されたピニオンシャフト15が挿通されている。また、ピニオンギヤ13の中心穴13aの内面とピニオンシャフト15の外周面との間には、複数のニードルローラ16が転動自在に配されていて、ピニオンギヤ13の中心穴13aの内面とピニオンシャフト15の外周面と複数のニードルローラ16とで構成される転がり軸受(ケージアンドローラ)により、ピニオンギヤ13がピニオンシャフト15を軸として回転自在とされている。
そして、ピニオンシャフト15とニードルローラ16は、下記の6つの条件A〜Fを満足する。
条件A:ピニオンシャフト15は、炭素の含有量が0.3質量%以上1.2質量%以下、クロムの含有量が0.5質量%以上2質量%以下の合金鋼で構成されている。
条件B:ピニオンシャフト15は、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層15aを転動面に備えており、この硬化層15aの表面硬さはHv650以上(好ましくはHv655以上)で、残留オーステナイト量は20体積%以上50体積%以下である。
条件A:ピニオンシャフト15は、炭素の含有量が0.3質量%以上1.2質量%以下、クロムの含有量が0.5質量%以上2質量%以下の合金鋼で構成されている。
条件B:ピニオンシャフト15は、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層15aを転動面に備えており、この硬化層15aの表面硬さはHv650以上(好ましくはHv655以上)で、残留オーステナイト量は20体積%以上50体積%以下である。
条件C:ニードルローラ16は、ケイ素の含有量が0.3質量%以上2.2質量%以下、マンガンの含有量が0.3質量%以上2質量%以下で、且つ、ケイ素の含有量とマンガンの含有量との比Si/Mnが5以下である合金鋼で構成されている。
条件D:ニードルローラ16は、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面(外周面)に備えており、この硬化層の表面硬さはHv750以上で、残留オーステナイト量は5体積%以上45体積%以下である。
条件D:ニードルローラ16は、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面(外周面)に備えており、この硬化層の表面硬さはHv750以上で、残留オーステナイト量は5体積%以上45体積%以下である。
条件E:ニードルローラ16の硬化層には、ケイ素及びマンガンを含有する窒化物(以下「Si−Mn系窒化物」と記す)が析出しており、この硬化層の表面に析出しているSi−Mn系窒化物の量は面積率で1%以上10%未満であるとともに、ニードルローラ16の硬化層の表面窒素濃度は0.2質量%以上である。
条件F:ニードルローラ16の硬化層の表面に析出している、粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数が、面積375μm2 あたり100個以上である。
条件F:ニードルローラ16の硬化層の表面に析出している、粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数が、面積375μm2 あたり100個以上である。
ピニオンシャフト15とニードルローラ16が上記6つの条件A〜Fを満足しているので、ピニオンシャフト15が長寿命で且つニードルローラ16の転動面の表面形状が劣化しにくい。よって、本実施形態のプラネタリギヤ装置10は長寿命である。
上記のような優れた性能を有していることから、本実施形態のプラネタリギヤ装置10は、例えば、自動車、工作機械、建設機械等の減速機や変速機(例えば、自動車の自動変速機や、建設機械のトランスミッション用旋回減速機又は走行減速機)に好適に使用可能であり、特に高温且つ高速回転条件下での使用に好適である。
上記のような優れた性能を有していることから、本実施形態のプラネタリギヤ装置10は、例えば、自動車、工作機械、建設機械等の減速機や変速機(例えば、自動車の自動変速機や、建設機械のトランスミッション用旋回減速機又は走行減速機)に好適に使用可能であり、特に高温且つ高速回転条件下での使用に好適である。
ケージアンドローラの寿命を大幅に向上させるためには、内輪に相当するピニオンシャフトをより長寿命化する必要がある。また、本発明者らは、さらなる長寿命化のために表面起点型剥離に関するメカニズムを検討した結果、転動体と軌道輪の間に発生する接線力が表面起点型剥離に大きく寄与していることを見出した。特に、異物の噛み込みや摩耗によって転動体の表面形状が劣化すると接線力が増大し、潤滑条件が良好な場合と比べて軌道輪の寿命が低下することを見出した。逆に、軌道輪の表面形状が劣化しても転動体の表面形状が劣化せず良好であれば、軌道輪の寿命はそれほど低下しないことも見出した。
すなわち、ピニオンシャフト自身を長寿命化し、それに加えて、過酷な潤滑条件下であっても転動体の表面形状が劣化しない対策を施せば、ピニオンギヤの中心穴の内面の表面粗さが粗くても、ピニオンシャフトと軌道輪の長寿命化を図ることができる。
そこで、本発明者らは、ピニオンシャフトの長寿命化を図るとともに、自部材(例えば転動体)の圧痕起点型剥離寿命を確保し且つ自部材の耐圧痕性及び耐摩耗性を向上させ表面粗さ及び表面形状の劣化を抑制し、2部材(転動体と軌道輪)の間に作用する接線力を抑制して、相手部材(例えば軌道輪)の寿命を向上させる材料因子がないか、鋭意検討を行った。
そこで、本発明者らは、ピニオンシャフトの長寿命化を図るとともに、自部材(例えば転動体)の圧痕起点型剥離寿命を確保し且つ自部材の耐圧痕性及び耐摩耗性を向上させ表面粗さ及び表面形状の劣化を抑制し、2部材(転動体と軌道輪)の間に作用する接線力を抑制して、相手部材(例えば軌道輪)の寿命を向上させる材料因子がないか、鋭意検討を行った。
その結果、本発明者らは、ピニオンシャフトの表面硬さと表面の残留オーステナイト量を調整することによりピニオンシャフトを長寿命化し、さらに、耐圧痕性及び耐摩耗性を向上させる材料因子である表面硬さ、残留オーステナイト量、表面の窒素濃度、表面に析出したSi−Mn系窒化物の量を調整した転動体を用いることにより、ケージアンドローラを長寿命化できることを見出した。
また、異物混入潤滑下において、負荷が多大なピニオンシャフトの寿命を向上させるためには、ピニオンシャフトの転動面の残留オーステナイト量を増加させて圧痕縁に作用する応力を緩和させることが有効である。
さらに、ケージアンドローラの長寿命化のために、異物混入潤滑下において寿命を支配する因子を鋭意検討した結果、以下のようなメカニズムによって転がり寿命に影響が出ることを見出した。異物混入潤滑下においては、潤滑剤に混入した異物の噛み込みによってピニオンシャフトの転動面に圧痕が形成される。この圧痕上をニードルローラが繰り返し通過すると、ニードルローラが脆弱な場合には形状劣化を起こす。そして、形状が劣化して崩れたニードルローラがピニオンシャフトの転動面にさらに大きなダメージを与えて、ピニオンシャフトの転動面に剥離が生じる。
さらに、ケージアンドローラの長寿命化のために、異物混入潤滑下において寿命を支配する因子を鋭意検討した結果、以下のようなメカニズムによって転がり寿命に影響が出ることを見出した。異物混入潤滑下においては、潤滑剤に混入した異物の噛み込みによってピニオンシャフトの転動面に圧痕が形成される。この圧痕上をニードルローラが繰り返し通過すると、ニードルローラが脆弱な場合には形状劣化を起こす。そして、形状が劣化して崩れたニードルローラがピニオンシャフトの転動面にさらに大きなダメージを与えて、ピニオンシャフトの転動面に剥離が生じる。
したがって、異物混入潤滑下において寿命を向上するためには、まず、ピニオンシャフトの転動面の残留オーステナイト量を増やし、適切な表面硬さにすることで、圧痕縁に作用する応力を緩和させ、ピニオンシャフトを長寿命化する。さらに、ニードルローラの表面硬さを高くするとともに、残留オーステナイト量を適正値に調整することによって、圧痕の形成を抑制すると、ピニオンシャフトの転動面へのダメージを低減することができる。よって、これら長寿命なピニオンシャフトと形状劣化を起こしにくいニードルローラとを組み合わせれば、ケージアンドローラの寿命を飛躍的に向上させることができる。
本発明においては、炭素の含有量とクロムの含有量とを規定した合金鋼製のピニオンシャフトに、浸炭窒化処理又は窒化処理を施し、少なくとも転動面に適切な量の残留オーステナイトと表面硬さを付与することで、ピニオンシャフトを長寿命化している。また、ケイ素及びマンガンを含有する硬質なSi−Mn系窒化物を、少なくとも転動面に析出させて、ニードルローラを強化して形状劣化を抑制することで、ピニオンシャフトを長寿命化している。その結果、ケージアンドローラの寿命が向上し、長寿命なプラネタリギヤ装置が得られる。
<ピニオンシャフトについて>
以下に、ピニオンシャフトに関して規定された各種の数値の臨界的意義について詳細に説明する。
〔残留オーステナイト量について〕
潤滑剤中に混入した異物によって、ニードルローラと転がり接触する転動面に圧痕が発生するが、圧痕縁に発生しやすいクラックは、残留オーステナイトと密接な関係を有する。残留オーステナイトは、鋼材の炭素含有量によっても異なるが、通常は柔らかく粘りがある。したがって、残留オーステナイト量を所定の割合で転動面の表層部に存在させれば、圧痕縁における応力集中を緩和することができ、クラックの発生を抑制することができる。
以下に、ピニオンシャフトに関して規定された各種の数値の臨界的意義について詳細に説明する。
〔残留オーステナイト量について〕
潤滑剤中に混入した異物によって、ニードルローラと転がり接触する転動面に圧痕が発生するが、圧痕縁に発生しやすいクラックは、残留オーステナイトと密接な関係を有する。残留オーステナイトは、鋼材の炭素含有量によっても異なるが、通常は柔らかく粘りがある。したがって、残留オーステナイト量を所定の割合で転動面の表層部に存在させれば、圧痕縁における応力集中を緩和することができ、クラックの発生を抑制することができる。
また、転動面の表層部における残留オーステナイトは、圧痕上を通過する部材(例えば転動体に対して軌道輪)の通過回数が所定数を超えると、表面に加わる変形エネルギーによりマルテンサイト変態し硬化するので、異物混入潤滑下での転がり軸受の寿命を向上させることができる。
これらの効果を最大限発揮させるためには、転動面の表層部(すなわち硬化層)における残留オーステナイト量は、20体積%以上50体積%以下とする必要がある。残留オーステナイト量が20体積%未満であると、圧痕縁における応力集中を十分に緩和することができないおそれがある。一方、50体積%超過であると、表面硬さが低下してしまうため、耐疲労性が不十分となるおそれがある。これらの不都合がより生じにくくするためには、転動面の表層部における残留オーステナイト量は、30体積%以上40体積%以下とすることが好ましい。
これらの効果を最大限発揮させるためには、転動面の表層部(すなわち硬化層)における残留オーステナイト量は、20体積%以上50体積%以下とする必要がある。残留オーステナイト量が20体積%未満であると、圧痕縁における応力集中を十分に緩和することができないおそれがある。一方、50体積%超過であると、表面硬さが低下してしまうため、耐疲労性が不十分となるおそれがある。これらの不都合がより生じにくくするためには、転動面の表層部における残留オーステナイト量は、30体積%以上40体積%以下とすることが好ましい。
〔クロムの含有量について〕
鋼材は、表層部に微細な炭化物や炭窒化物が分散していることにより、硬さが上昇する。そのため、微細な炭化物や炭窒化物の量が少ないと、残留オーステナイト量の増加により表面硬さが低下するおそれがある。一方、微細な炭化物や炭窒化物の量が多すぎると、炭化物が粗大化することに加えて、マトリックスに固溶する炭素量が低下し、必要な残留オーステナイト量を確保できないおそれがある。なお、炭化物や炭窒化物の量は、炭化物形成元素の量の調整や、焼戻し温度の調整などにより制御可能である。
鋼材は、表層部に微細な炭化物や炭窒化物が分散していることにより、硬さが上昇する。そのため、微細な炭化物や炭窒化物の量が少ないと、残留オーステナイト量の増加により表面硬さが低下するおそれがある。一方、微細な炭化物や炭窒化物の量が多すぎると、炭化物が粗大化することに加えて、マトリックスに固溶する炭素量が低下し、必要な残留オーステナイト量を確保できないおそれがある。なお、炭化物や炭窒化物の量は、炭化物形成元素の量の調整や、焼戻し温度の調整などにより制御可能である。
炭化物形成元素としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)等の元素があり、これら炭化物形成元素のうち1種以上を含有することにより各種炭化物が生成するが、特にクロムが好ましい。
クロムは、鋼の焼入れ性及び耐摩耗性を向上させるために必要な元素である。転動面の硬化層に析出する炭化物を微細化するために適したクロムの含有量は、0.5質量%以上2質量%以下である。クロムの含有量が0.5質量%未満であると、焼入れ性が低下して硬さが不十分となるおそれがある。また、浸炭等の熱処理により炭素濃度を高め、表面硬さのみを高めることは可能であるが、これでは炭化物の核の発生量が少なく、炭化物が成長しやすい巨大炭化物が発生する。
クロムは、鋼の焼入れ性及び耐摩耗性を向上させるために必要な元素である。転動面の硬化層に析出する炭化物を微細化するために適したクロムの含有量は、0.5質量%以上2質量%以下である。クロムの含有量が0.5質量%未満であると、焼入れ性が低下して硬さが不十分となるおそれがある。また、浸炭等の熱処理により炭素濃度を高め、表面硬さのみを高めることは可能であるが、これでは炭化物の核の発生量が少なく、炭化物が成長しやすい巨大炭化物が発生する。
一方、クロムの含有量が2質量%を超えると、浸炭窒化処理又は窒化処理時に表面にクロム酸化膜が形成されて、炭素及び窒素の拡散が阻害されるおそれがある。また、素材の段階で巨大炭化物が晶出してしまい、応力集中により寿命が低下するおそれがある。さらに、高価なクロムの含有量が多いことは、コスト面でマイナスである。さらに、巨大炭化物を微細化しようとすると、炭化物をマトリックス中に固溶して再度析出させるための熱処理及び高温焼入れ等が必要となるため、熱処理生産性が低下するおそれがある。
これらの不都合がより生じにくくするためには、クロムの含有量は1質量%以上1.4質量%以下とすることが好ましい。
これらの不都合がより生じにくくするためには、クロムの含有量は1質量%以上1.4質量%以下とすることが好ましい。
〔炭素の含有量について〕
合金鋼中の炭素(C)の含有量が0.3質量%未満であると、十分な表面硬さを得るために、浸炭窒化処理又は窒化処理により表面硬化を行う際に合金鋼に侵入する炭素量又は窒素量を多くする必要性が生じる。そのため、熱処理時間が長くなり、熱処理生産性が低下するおそれがある。また、ピニオンシャフトに必要な心部硬さを得るためには、炭素の含有量は0.3質量%以上とする必要がある。心部の硬さが不足すると、心部が塑性変形しやすくなるため、ピニオンシャフトの寿命が低下するおそれがある。
合金鋼中の炭素(C)の含有量が0.3質量%未満であると、十分な表面硬さを得るために、浸炭窒化処理又は窒化処理により表面硬化を行う際に合金鋼に侵入する炭素量又は窒素量を多くする必要性が生じる。そのため、熱処理時間が長くなり、熱処理生産性が低下するおそれがある。また、ピニオンシャフトに必要な心部硬さを得るためには、炭素の含有量は0.3質量%以上とする必要がある。心部の硬さが不足すると、心部が塑性変形しやすくなるため、ピニオンシャフトの寿命が低下するおそれがある。
一方、炭素の含有量が1.2質量%を超えると、浸炭窒化処理又は窒化処理により合金鋼に侵入する炭素量又は窒素量が少なくなるため、合金鋼に侵入し固溶する炭素と窒素の比率が低くなり不均一な固溶状態となる。その結果、不均一な固溶状態となった部分が応力集中源となってしまい、ピニオンシャフトの寿命が低下するおそれがある。また、セメンタイトの析出が過剰となり、浸炭窒化処理又は窒化処理によって粗大化し、靱性が低下するおそれがある。
これらの不都合がより生じにくくするためには、炭素の含有量は0.3質量%以上0.5質量%以下とすることが好ましい。
ピニオンシャフトを構成する合金鋼は、ケイ素及びマンガンの少なくとも一方を合金元素としてさらに含有することが好ましい。
ピニオンシャフトを構成する合金鋼は、ケイ素及びマンガンの少なくとも一方を合金元素としてさらに含有することが好ましい。
〔ケイ素の含有量について〕
合金鋼中のケイ素(Si)の含有量は、0.15質量%以上1.5質量%以下とすることが好ましい。ケイ素を0.15質量%以上1.5質量%以下の範囲内で含有させることにより、合金鋼の機械的性質及び熱処理特性が良好となる。合金鋼中のケイ素の含有量を0.15質量%以上とすれば、ピニオンシャフトの心部の靱性が低下しにくくなる。また、1.5質量%以下とすれば、炭素や窒素が表面から侵入しやすくなるため、浸炭特性や浸炭窒化特性が向上する。なお、合金鋼中のケイ素の含有量は、0.15質量%以上0.6質量%以下とすることがより好ましい。
合金鋼中のケイ素(Si)の含有量は、0.15質量%以上1.5質量%以下とすることが好ましい。ケイ素を0.15質量%以上1.5質量%以下の範囲内で含有させることにより、合金鋼の機械的性質及び熱処理特性が良好となる。合金鋼中のケイ素の含有量を0.15質量%以上とすれば、ピニオンシャフトの心部の靱性が低下しにくくなる。また、1.5質量%以下とすれば、炭素や窒素が表面から侵入しやすくなるため、浸炭特性や浸炭窒化特性が向上する。なお、合金鋼中のケイ素の含有量は、0.15質量%以上0.6質量%以下とすることがより好ましい。
〔マンガンの含有量について〕
合金鋼中のマンガン(Mn)の含有量は、0.1質量%以上1.5質量%以下とすることが好ましい。0.1質量%以上とすれば、焼入れ性が良好となり、焼入れ後のピニオンシャフトの靱性が高まる。また、1.5質量%以下とすれば、合金鋼の被削性と熱間加工性が良好となる。
合金鋼中のマンガン(Mn)の含有量は、0.1質量%以上1.5質量%以下とすることが好ましい。0.1質量%以上とすれば、焼入れ性が良好となり、焼入れ後のピニオンシャフトの靱性が高まる。また、1.5質量%以下とすれば、合金鋼の被削性と熱間加工性が良好となる。
<ニードルローラについて>
次に、ニードルローラに関して規定された各種の数値の臨界的意義について詳細に説明する。
〔硬化層の表面窒素濃度及びSi−Mn系窒化物の量について〕
Si−Mn系窒化物は熱的に安定しており、該Si−Mn系窒化物中のケイ素とマンガンとの質量比は5:1である。そして、Si−Mn系窒化物は、合金鋼のマトリックスに均一に分散して硬さを向上させるので、ニードルローラの寿命、耐摩耗性、及び耐焼付き性を向上させる。
次に、ニードルローラに関して規定された各種の数値の臨界的意義について詳細に説明する。
〔硬化層の表面窒素濃度及びSi−Mn系窒化物の量について〕
Si−Mn系窒化物は熱的に安定しており、該Si−Mn系窒化物中のケイ素とマンガンとの質量比は5:1である。そして、Si−Mn系窒化物は、合金鋼のマトリックスに均一に分散して硬さを向上させるので、ニードルローラの寿命、耐摩耗性、及び耐焼付き性を向上させる。
硬化層のSi−Mn系窒化物の量が面積率で1%以上、硬化層の表面窒素濃度が0.2質量%以上であれば、ニードルローラの寿命が顕著に向上する。一方、硬化層のSi−Mn系窒化物の量が面積率で10%を超えると、寿命向上効果は飽和するので、Si−Mn系窒化物の量の上限値は面積率で10%、表面窒素濃度の上限値は2質量%(好ましくは1.90質量%)である。
〔Si−Mn系窒化物の個数について〕
Si−Mn系窒化物はニードルローラの強さに寄与する。圧痕の形成を抑制するためには、変形の抵抗を大きくすることが重要であり、Si−Mn系窒化物の大きさが大きくなると、ニードルローラを強化する効果が低減する。すなわち、ニードルローラの表面を強化するためには、Si−Mn系窒化物を微細に分散させる必要がある。本発明においては、Si−Mn系窒化物の量を面積率で1%以上10%以下として、十分な量を析出させるとともに、粒径が0.05μm以上1μm以下の細かいSi−Mn系窒化物を析出させることにより、ニードルローラの表面を強化している。
Si−Mn系窒化物はニードルローラの強さに寄与する。圧痕の形成を抑制するためには、変形の抵抗を大きくすることが重要であり、Si−Mn系窒化物の大きさが大きくなると、ニードルローラを強化する効果が低減する。すなわち、ニードルローラの表面を強化するためには、Si−Mn系窒化物を微細に分散させる必要がある。本発明においては、Si−Mn系窒化物の量を面積率で1%以上10%以下として、十分な量を析出させるとともに、粒径が0.05μm以上1μm以下の細かいSi−Mn系窒化物を析出させることにより、ニードルローラの表面を強化している。
粒径が1μmを超えるSi−Mn系窒化物は、合金鋼の強化にあまり寄与せず、粒径が1μm以下の細かいSi−Mn系窒化物の方が強化に寄与する。この理由は以下の通りである。析出強化の理論においては、析出物の粒子間距離が小さい方が強化能に優れるので、Si−Mn系窒化物の量(面積率)が同じであっても、析出物の粒子数が多ければ相対的に粒子間距離が小さくなり、強化されることとなる。
すなわち、ケイ素及びマンガンの含有量が多い合金鋼を用いて、Si−Mn系窒化物の量を面積率で1%以上10%以下の範囲とし、粒径が0.05μm以上1μm以下の微細なSi−Mn系窒化物の個数を増やすことが好ましい。なお、粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物のうち、粒径が0.05μm以上0.5μm以下のSi−Mn系窒化物の個数の比率を20%以上とすることにより、より強化することが可能である。
粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数を、面積375μm2 あたり100個以上とする方法としては、800℃以上870℃以下の温度で浸炭窒化処理又は窒化処理を施す方法があげられる。870℃を超えると、Si−Mn系窒化物が粗大化して、微細なSi−Mn系窒化物の個数が減少する。また、870℃を超えると、窒素の固溶限が大きくなるため、Si−Mn系窒化物の量が少なくなり、所望の量(面積率)が得られなくなる。
浸炭窒化処理又は窒化処理の初期から、Rxガスとエンリッチガスであるアンモニアガスとの混合ガス雰囲気とし、Cp値は1.2以上、アンモニアガスの流量はRxガスの1/5以上とすることが好ましい。また、浸炭窒化処理又は窒化処理の後の焼入れは、油温60℃以上120℃以下の範囲で行うことが好ましい。120℃よりも高温であると、十分な硬さが得られない場合がある。また、焼戻しは160℃以上270℃以下で行うことが好ましい。さらに、必要に応じて、焼入れ処理後にサブゼロ処理を行ってもよい。
〔ケイ素の含有量について〕
Si−Mn系窒化物を十分に析出させるためには、ケイ素及びマンガンを多く含有する合金鋼を用いる必要がある。例えば、JIS鋼種SUJ2(ケイ素の含有量0.25質量%、マンガンの含有量0.40質量%)では、浸炭窒化処理などで窒素を過剰に付与しても、Si−Mn系窒化物の量が不十分である。
このため、Si−Mn系窒化物の析出に必要な元素であるケイ素の含有量は、0.3質量%以上2.2質量%以下とする必要がある。ケイ素の含有量が0.3質量%以上であれば、マンガンとの共存によって、ケイ素は窒素と効果的に反応してSi−Mn系窒化物が顕著に析出する。
Si−Mn系窒化物を十分に析出させるためには、ケイ素及びマンガンを多く含有する合金鋼を用いる必要がある。例えば、JIS鋼種SUJ2(ケイ素の含有量0.25質量%、マンガンの含有量0.40質量%)では、浸炭窒化処理などで窒素を過剰に付与しても、Si−Mn系窒化物の量が不十分である。
このため、Si−Mn系窒化物の析出に必要な元素であるケイ素の含有量は、0.3質量%以上2.2質量%以下とする必要がある。ケイ素の含有量が0.3質量%以上であれば、マンガンとの共存によって、ケイ素は窒素と効果的に反応してSi−Mn系窒化物が顕著に析出する。
〔マンガンの含有量について〕
マンガンは、Si−Mn系窒化物の析出に必要な元素であり、マンガンの含有量は、0.3質量%以上2質量%以下とする必要がある。マンガンの含有量が0.3質量%以上であれば、ケイ素との共存によって、マンガンはSi−Mn系窒化物の析出を促進させる作用がある。
また、マンガンは、オーステナイトを安定化する働きがあるので、硬化熱処理後に残留オーステナイトが必要以上に増加するという問題が生じることを防止するため、2質量%以下とする。
マンガンは、Si−Mn系窒化物の析出に必要な元素であり、マンガンの含有量は、0.3質量%以上2質量%以下とする必要がある。マンガンの含有量が0.3質量%以上であれば、ケイ素との共存によって、マンガンはSi−Mn系窒化物の析出を促進させる作用がある。
また、マンガンは、オーステナイトを安定化する働きがあるので、硬化熱処理後に残留オーステナイトが必要以上に増加するという問題が生じることを防止するため、2質量%以下とする。
〔ケイ素の含有量とマンガンの含有量との比Si/Mnについて〕
Si−Mn系窒化物は、焼戻しによる窒化物とは異なり、浸炭窒化処理時又は窒化処理時に侵入してきた窒素が、オーステナイト域でマンガンを取り込みながらケイ素と反応して形成される。したがって、ケイ素の含有量に対してマンガンの含有量が少ないと、十分に窒素を拡散させても、Si−Mn系窒化物の析出が促進されない。
Si−Mn系窒化物は、焼戻しによる窒化物とは異なり、浸炭窒化処理時又は窒化処理時に侵入してきた窒素が、オーステナイト域でマンガンを取り込みながらケイ素と反応して形成される。したがって、ケイ素の含有量に対してマンガンの含有量が少ないと、十分に窒素を拡散させても、Si−Mn系窒化物の析出が促進されない。
前述したケイ素及びマンガンの含有量の範囲内で、且つ、侵入する窒素の濃度を0.2質量%以上とした場合は、ケイ素の含有量とマンガンの含有量との比Si/Mnを5以下とする必要があり、4.97以下とすることが好ましい。そうすれば、Si−Mn系窒化物の析出量を確保して、面積率を1%以上とすることができるので、寿命延長や、耐摩耗性及び耐焼付き性の向上という効果が得られる。
〔炭素の含有量について〕
炭素は、焼入れによって鋼中にマルテンサイト組織を生じさせ、マトリックス組織を硬化させる作用がある。ニードルローラとして必要な心部硬さを得るためには、炭素の含有量は0.3質量%以上とすることが好ましい。浸炭窒化処理又は窒化処理の時間を短縮するためには、0.5質量%以上とすることがより好ましく、0.8質量%以上とすることがさらに好ましく、0.95質量%以上とすることが特に好ましい。一方、炭素を過剰に添加すると、セメンタイトの析出が過剰となり、浸炭窒化処理又は窒化処理によって粗大化して合金鋼の靭性が低下する。このため、炭素の含有量は1.2質量%以下とすることが好ましい。
炭素は、焼入れによって鋼中にマルテンサイト組織を生じさせ、マトリックス組織を硬化させる作用がある。ニードルローラとして必要な心部硬さを得るためには、炭素の含有量は0.3質量%以上とすることが好ましい。浸炭窒化処理又は窒化処理の時間を短縮するためには、0.5質量%以上とすることがより好ましく、0.8質量%以上とすることがさらに好ましく、0.95質量%以上とすることが特に好ましい。一方、炭素を過剰に添加すると、セメンタイトの析出が過剰となり、浸炭窒化処理又は窒化処理によって粗大化して合金鋼の靭性が低下する。このため、炭素の含有量は1.2質量%以下とすることが好ましい。
〔クロムの含有量について〕
クロムは、鋼の焼入性を向上させると同時に、炭化物を形成させる元素であり、鋼材を強化する炭化物の析出を促進し、さらに微細化させる。クロムの含有量が0.5質量%未満であると、焼入れ性が低下して十分な硬さが得られなかったり、浸炭窒化処理時又は窒化処理時に炭化物が粗大化したりするおそれがある。一方、2質量%を超えると、浸炭窒化処理時又は窒化処理時に表面にクロム酸化膜が形成されて、炭素及び窒素の拡散が阻害されるおそれがある。そのため、クロムの含有量は0.5質量%以上2質量%以下とすることが好ましい。
クロムは、鋼の焼入性を向上させると同時に、炭化物を形成させる元素であり、鋼材を強化する炭化物の析出を促進し、さらに微細化させる。クロムの含有量が0.5質量%未満であると、焼入れ性が低下して十分な硬さが得られなかったり、浸炭窒化処理時又は窒化処理時に炭化物が粗大化したりするおそれがある。一方、2質量%を超えると、浸炭窒化処理時又は窒化処理時に表面にクロム酸化膜が形成されて、炭素及び窒素の拡散が阻害されるおそれがある。そのため、クロムの含有量は0.5質量%以上2質量%以下とすることが好ましい。
〔モリブデンの含有量について〕
モリブデンは、鋼の焼入れ性を向上させると同時に、炭化物を形成させる元素であり、材料を強化する炭化物及び炭窒化物、窒化物の析出を促進し、さらに微細化させる作用がある。その効果は、0.2質量%以上の添加で顕著になる。一方、1.2質量%を超えると前記効果が飽和し、コストが高くなる。したがって、モリブデンの含有量は0.2質量%以上1.2質量%以下とすることが好ましい。
モリブデンは、鋼の焼入れ性を向上させると同時に、炭化物を形成させる元素であり、材料を強化する炭化物及び炭窒化物、窒化物の析出を促進し、さらに微細化させる作用がある。その効果は、0.2質量%以上の添加で顕著になる。一方、1.2質量%を超えると前記効果が飽和し、コストが高くなる。したがって、モリブデンの含有量は0.2質量%以上1.2質量%以下とすることが好ましい。
〔表面硬さについて〕
ニードルローラの表面硬さ(ビッカース硬さ)は750Hv以上とする必要があり、752Hv以上とすることが好ましく、803Hv以上とすることがより好ましい。耐圧痕性を向上させるために最も有効な材料因子は硬さである。表面硬さが750Hv未満であると、潤滑不良環境などの油膜形成性が劣化する環境下で、ニードルローラの表面に圧痕が形成されやすくなる。ニードルローラの表面硬さを750Hv以上とすることで、耐摩耗性、耐圧痕性、静的強度が良好になる。
ニードルローラの表面硬さ(ビッカース硬さ)は750Hv以上とする必要があり、752Hv以上とすることが好ましく、803Hv以上とすることがより好ましい。耐圧痕性を向上させるために最も有効な材料因子は硬さである。表面硬さが750Hv未満であると、潤滑不良環境などの油膜形成性が劣化する環境下で、ニードルローラの表面に圧痕が形成されやすくなる。ニードルローラの表面硬さを750Hv以上とすることで、耐摩耗性、耐圧痕性、静的強度が良好になる。
〔残留オーステナイト量について〕
外輪に相当するピニオンギヤの中心穴の内面の粗さは、一般的な転がり軸受の軌道面に比べて粗いことが知られている。粗さの悪い部材は相手部材(ニードルローラ)にダメージを与えるので、ニードルローラ自身の強化が必要になる。相手部材が粗い場合の破損形態はピーリング損傷であり、ピーリング損傷の抑制には残留オーステナイトが有効である。ニードルローラの表面に形成された硬化層中の残留オーステナイト量を5体積%以上にすることで、異物により生じる圧痕縁における応力集中を軽減することができる。5体積%未満では、この応力集中軽減効果が不足して、転動疲労寿命が低下する。
外輪に相当するピニオンギヤの中心穴の内面の粗さは、一般的な転がり軸受の軌道面に比べて粗いことが知られている。粗さの悪い部材は相手部材(ニードルローラ)にダメージを与えるので、ニードルローラ自身の強化が必要になる。相手部材が粗い場合の破損形態はピーリング損傷であり、ピーリング損傷の抑制には残留オーステナイトが有効である。ニードルローラの表面に形成された硬化層中の残留オーステナイト量を5体積%以上にすることで、異物により生じる圧痕縁における応力集中を軽減することができる。5体積%未満では、この応力集中軽減効果が不足して、転動疲労寿命が低下する。
一方、残留オーステナイトはマルテンサイトに比べて軟質組織であるため、残留オーステナイトが多すぎると、Si−Mn系窒化物の硬さ向上効果が相殺されるおそれがある。そうすると、ニードルローラの表面形状が劣化し、圧痕縁の盛り上がり量が大きくなりやすく、ピニオンシャフトの長寿命化効果が得にくいため、ニードルローラの硬化層の残留オーステナイト量は45体積%以下とする必要がある。これらの不都合がより生じにくくするためには、ニードルローラの硬化層の残留オーステナイト量は20体積%以上30体積%以下とすることが好ましい。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、プラネタリギヤ装置の要部であるケージアンドローラを構成するころとしてニードルローラを用いた例について説明したが、ころの種類はニードルローラに限定されるものではなく、円筒ころ等の他種のころを用いることも可能である。
以下に、さらに具体的な実施例を示して、本発明を説明する。まず、ニードルローラの耐久性を調査するために、寿命及び耐焼付き性の評価を行った。
窒素濃度とSi−Mn系窒化物の析出量及び性能との関係を明らかにする実験の試験片として、以下のような円板を製造した。すなわち、表1に記載の合金成分を含有する合金鋼(残部は鉄及び不可避的不純物)を切削加工して、直径65mm、厚さ6mmの円板を得て、RXガス,プロパンガス,及びアンモニアガスの混合ガスからなる雰囲気中において820〜900℃で2〜10時間保持して浸炭窒化処理を施した。このとき、RXガス,プロパンガス,及びアンモニアガスの流量を変化させることにより、種々の窒素濃度の試験片を作製した。この熱処理の後に、円板の表面を研磨及びラッピング処理して鏡面仕上げした。なお、表1中の鋼種1はJIS鋼種SUJ3、鋼種2はJIS鋼種SUJ2に相当する。
窒素濃度とSi−Mn系窒化物の析出量及び性能との関係を明らかにする実験の試験片として、以下のような円板を製造した。すなわち、表1に記載の合金成分を含有する合金鋼(残部は鉄及び不可避的不純物)を切削加工して、直径65mm、厚さ6mmの円板を得て、RXガス,プロパンガス,及びアンモニアガスの混合ガスからなる雰囲気中において820〜900℃で2〜10時間保持して浸炭窒化処理を施した。このとき、RXガス,プロパンガス,及びアンモニアガスの流量を変化させることにより、種々の窒素濃度の試験片を作製した。この熱処理の後に、円板の表面を研磨及びラッピング処理して鏡面仕上げした。なお、表1中の鋼種1はJIS鋼種SUJ3、鋼種2はJIS鋼種SUJ2に相当する。
このようにして得られた円板について、表面に形成された硬化層の表面窒素濃度、及び、硬化層に析出しているSi−Mn系窒化物の量(面積率)をそれぞれ測定した。表面窒素濃度は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用い、加速電圧15kVで測定した。
また、Si−Mn系窒化物の量は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて測定した。すなわち、加圧電圧10kVで試験片の表面を観察し、倍率5000倍に拡大した写真を少なくとも3視野撮影し、その写真を2値化してから画像解析装置を用いてSi−Mn系窒化物の量を面積率で算出した。
測定対象となるSi−Mn系窒化物が微細なものであるので、測定倍率5000倍、測定面積375μm2 とすると、粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数を測定することができる。測定結果を表2に示す。
測定対象となるSi−Mn系窒化物が微細なものであるので、測定倍率5000倍、測定面積375μm2 とすると、粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数を測定することができる。測定結果を表2に示す。
〔寿命試験について〕
続いて、ニードルローラの転動面に形成されている硬化層の表面窒素濃度、Si−Mn系窒化物の量(面積率)、及び粒径0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の面積375μm2 中の個数の影響を調査するために、種々のニードルローラ試験片を、上記円板と同様にして製造した。そして、スラスト型寿命試験機を用いて、これらニードルローラ試験片の寿命試験を異物混入潤滑下で行った。試験条件は以下の通りである。
試験荷重:5880N
回転速度:1000min-1
潤滑油:ISO粘度グレードがISO VG68である潤滑油
異物の硬さ:870Hv
異物の大きさ:74〜147μm
異物混入量:200ppm
各ニードルローラ試験片における表面窒素濃度、Si−Mn系窒化物の量(面積率)、寿命を表2に示す。なお、表2中の寿命の数値は、比較例1のL10寿命を1とした場合の相対値で示してある。
続いて、ニードルローラの転動面に形成されている硬化層の表面窒素濃度、Si−Mn系窒化物の量(面積率)、及び粒径0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の面積375μm2 中の個数の影響を調査するために、種々のニードルローラ試験片を、上記円板と同様にして製造した。そして、スラスト型寿命試験機を用いて、これらニードルローラ試験片の寿命試験を異物混入潤滑下で行った。試験条件は以下の通りである。
試験荷重:5880N
回転速度:1000min-1
潤滑油:ISO粘度グレードがISO VG68である潤滑油
異物の硬さ:870Hv
異物の大きさ:74〜147μm
異物混入量:200ppm
各ニードルローラ試験片における表面窒素濃度、Si−Mn系窒化物の量(面積率)、寿命を表2に示す。なお、表2中の寿命の数値は、比較例1のL10寿命を1とした場合の相対値で示してある。
また、ニードルローラ試験片の硬化層の表面窒素濃度とSi−Mn系窒化物の量(面積率)との関係を、図3に示す。Si−Mn系窒化物の量(面積率)、すなわち析出量は、表面窒素濃度に比例して増大することが分かる。したがって、同一窒素濃度で比較した場合には、ケイ素、マンガンの含有量の多い合金鋼(鋼種1)の方が、Si−Mn系窒化物の析出量が多いことになる。
さらに、ニードルローラ試験片の硬化層のSi−Mn系窒化物の量(面積率)とL10寿命との関係を、図4に示す。Si−Mn系窒化物の量(面積率)が10%を越えると、その効果が飽和して、寿命が向上しないことが分かる。
さらに、ニードルローラ試験片の硬化層のSi−Mn系窒化物の量(面積率)と、粒径0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数と、寿命試験結果とを、表3に示す。そして、粒径0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数と寿命との関係を、図5に示す。
さらに、ニードルローラ試験片の硬化層のSi−Mn系窒化物の量(面積率)と、粒径0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数と、寿命試験結果とを、表3に示す。そして、粒径0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数と寿命との関係を、図5に示す。
図5から、測定面積375μm2 の範囲内に、Si−Mn系窒化物を100個以上分散させることにより、合金鋼のマトリックス組織が強化され、異物混入潤滑下での寿命が延長することが分かる。
〔耐久試験について〕
本発明のプラネタリーギヤ装置の作用・効果を確認するために、以下の耐久試験を行った。表4,5に記載の合金成分及びケイ素(0.15〜1.5質量%)、マンガン(0.1〜1.5質量%)を含有する合金鋼(残部は鉄及び不可避的不純物)により、ピニオンシャフトとニードルローラを作製した。
本発明のプラネタリーギヤ装置の作用・効果を確認するために、以下の耐久試験を行った。表4,5に記載の合金成分及びケイ素(0.15〜1.5質量%)、マンガン(0.1〜1.5質量%)を含有する合金鋼(残部は鉄及び不可避的不純物)により、ピニオンシャフトとニードルローラを作製した。
ピニオンシャフトは、RXガス,プロパンガス,及びアンモニアガスの混合ガスからなる雰囲気中において850〜980℃で2〜15時間保持して浸炭窒化処理を施した後に、油焼入れを施し、その後、160〜270℃で2時間焼戻し処理を施した。そして、最後に仕上げ加工を行った。
また、ニードルローラは、RXガス,プロパンガス,及びアンモニアガスの混合ガスからなる雰囲気中において820〜900℃で2〜10時間保持して浸炭窒化処理を施した後に、油焼入を施し、その後、160〜250℃で2時間焼戻し処理を施した。そして、最後に仕上げ加工を行った。
熱処理の温度及び時間並びにアンモニア流量を変化させて、硬化層の残留オーステナイト量やSi−Mn系窒化物の量(面積率)等が異なる種々の試験片(ピニオンシャフト及びニードルローラ)を作製し、図6に示す試験装置100を用いる耐久試験に供した。
熱処理の温度及び時間並びにアンモニア流量を変化させて、硬化層の残留オーステナイト量やSi−Mn系窒化物の量(面積率)等が異なる種々の試験片(ピニオンシャフト及びニードルローラ)を作製し、図6に示す試験装置100を用いる耐久試験に供した。
次に、試験装置100の構造及び耐久試験の方法について、図6を参照しながら説明する。ピニオンギヤに相当する外輪102にピニオンシャフト101(外径8mm)が挿通されており、ピニオンシャフト101の外周面と外輪102の内周面との間に転動自在に介装された複数のニードルローラ110(外径2mm)によって、外輪102がピニオンシャフト101に回転自在に支持されている(すなわち、転がり軸受が構成されている)。このピニオンシャフト101には図示のようにグリースの給油孔103が設けてあり、端面の開口部に注入されたグリースが円筒面に開口する給油孔103から転動面に給油されるようになっている。
耐久試験を行う際には、まず、300ppmの鉄粉をあらかじめ混入したグリースを供給しつつ試験装置100を10分間運転し、外輪102の軌道面並びにピニオンシャフト101及びニードルローラ110の転動面に圧痕を形成する。そして、グリースを洗浄した後に、鉄粉を含んでいないグリースを供給しつつ試験装置100を運転することによって、表面疲労型剥離寿命を評価した。
ピニオンシャフト及びニードルローラの硬化層に関する各測定値を、表4,5に示す。すなわち、ピニオンシャフトについては、硬化層の表面硬さと残留オーステナイト量(γR)を示す。また、ニードルローラについては、硬化層の表面硬さ、残留オーステナイト量(γR)、表面窒素濃度、Si−Mn系窒化物の量(面積率)、粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数を示す。そして、ピニオンシャフト、ニードルローラ、及び外輪で構成される転がり軸受の寿命を、表4,5に示す。
なお、表4,5中の寿命の数値は、比較例11のL10寿命を1とした場合の相対値で示してある。また、表面硬さは、ビッカース硬度計を用いて測定した。さらに、X線回折装置を用いて試験片の表面を直接測定することによって、残留オーステナイト量を測定した。
表4,5の試験結果から明らかなように、実施例は比較例に比べて長寿命であった。特に、ニードルローラの残留オーステナイト量がピニオンシャフトの残留オーステナイト量以下の場合に、優れた寿命延長効果を得ることができる。
表4,5の試験結果から明らかなように、実施例は比較例に比べて長寿命であった。特に、ニードルローラの残留オーステナイト量がピニオンシャフトの残留オーステナイト量以下の場合に、優れた寿命延長効果を得ることができる。
表4,5に示された結果から、ニードルローラの表面硬さと寿命との関係をプロットしたグラフを図7に示し、ニードルローラの残留オーステナイト量と寿命との関係をプロットしたグラフを図8に示す。両グラフから、ニードルローラの硬化層の表面硬さをHv750以上、残留オーステナイト量を5〜45体積%とすると、転がり軸受が長寿命であることが分かる。
また、表4,5に示された結果から、合金鋼のSi/Mn比率とSi−Mn系窒化物の量(面積率)との関係をプロットしたグラフを図9に示す。例えば、比較例14,15は、本発明に包含される合金鋼を用い、さらに表面窒素濃度を0.2質量%以上としているが、ケイ素の含有量に対してマンガンの含有量が少ないため(Si/Mn比率の数値が大きいため)、Si−Mn系窒化物の析出量が面積率で1%以下となっている。図9のグラフからも明らかなように、Si/Mn比率を5以下にすることによって、Si−Mn系窒化物の析出を促進することができる。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、本実施例では保持器つきのケージアンドローラで試験を行っているが、総ころ軸受であっても同様の効果が得られる。また、本実施例ではニードルローラを1列に配列して試験を行った例を示しているが、複数列のニードルローラを配したプラネタリーギヤ装置においても同様の効果が得られる。
10 プラネタリギヤ装置
11 サンギヤ
12 リングギヤ
13 ピニオンギヤ
14 キャリヤ
15,101 ピニオンシャフト
15a 硬化層
16,110 ニードルローラ(ころ)
11 サンギヤ
12 リングギヤ
13 ピニオンギヤ
14 キャリヤ
15,101 ピニオンシャフト
15a 硬化層
16,110 ニードルローラ(ころ)
Claims (3)
- 中心に位置するサンギヤと、該サンギヤと同心に配されたリングギヤと、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛み合い前記サンギヤの周りを公転するピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの中心穴に挿通され前記ピニオンギヤを回転自在に支持するピニオンシャフトと、前記ピニオンギヤの中心穴の内面と前記ピニオンシャフトの外周面との間に転動自在に配された複数のころと、を備えるプラネタリギヤ装置であって、下記の6つの条件A〜Fを満足することを特徴とするプラネタリギヤ装置。
条件A:前記ピニオンシャフトは、炭素の含有量が0.3質量%以上1.2質量%以下、クロムの含有量が0.5質量%以上2質量%以下の合金鋼で構成されている。
条件B:前記ピニオンシャフトは、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面に備えており、この硬化層の表面硬さはHv650以上で、残留オーステナイト量は20体積%以上50体積%以下である。
条件C:前記ころは、ケイ素の含有量が0.3質量%以上2.2質量%以下、マンガンの含有量が0.3質量%以上2質量%以下で、且つ、前記ケイ素の含有量と前記マンガンの含有量との比Si/Mnが5以下である合金鋼で構成されている。
条件D:前記ころは、浸炭窒化処理又は窒化処理により硬化されてなる硬化層を転動面に備えており、この硬化層の表面硬さはHv750以上で、残留オーステナイト量は5体積%以上45体積%以下である。
条件E:前記ころの硬化層には、ケイ素及びマンガンを含有する窒化物が析出しており、この硬化層の表面に析出している前記窒化物の量は面積率で1%以上10%未満であるとともに、前記ころの硬化層の表面窒素濃度は0.2質量%以上である。
条件F:前記ころの硬化層の表面に析出している、粒径が0.05μm以上1μm以下の前記窒化物の個数が、面積375μm2 あたり100個以上である。 - 粒径が0.05μm以上1μm以下の前記窒化物のうち、粒径が0.05μm以上0.5μm以下のものの個数の比率が20%以上であることを特徴とする請求項1に記載のプラネタリギヤ装置。
- 前記ピニオンシャフトを構成する合金鋼は、ケイ素及びマンガンの少なくとも一方をさらに含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラネタリギヤ装置。
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