JP2013203640A - 複合酸化物粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の複合酸化物粉末は、第一金属酸化物からなり一次粒径が15nm以下である第一基粒子が凝集して二次粒径が20nm以上となった二次粒子からなるコア部と、第一金属酸化物と異なる第二金属酸化物からなり一次粒径が40nm以下である第二基粒子が該コア部の外表面に結合してなるシェル部と、で構成された複合酸化物合成粒子からなることを特徴とする。この複合酸化物粉末は、例えば、第一金属酸化物ゾルと第二金属酸化物ゾルとを混合する混合工程と、その混合ゾルをミリング等して第一金属酸化物粒子を凝集させる凝集工程と、その凝集物を乾燥させる乾燥工程と、その乾燥物を焼成させる焼成工程と、その焼成物を解砕する解砕工程とを経て得られる。
【選択図】図1A
Description
(1)本発明の複合酸化物粉末は、第一金属酸化物からなり一次粒径が15nm以下である第一基粒子が凝集して二次粒径が20nm以上となった二次粒子からなるコア部と、該第一金属酸化物と異なる第二金属酸化物からなり一次粒径が40nm以下である第二基粒子が該コア部の外表面に結合してなるシェル部と、で構成された複合酸化物合成粒子からなることを特徴とする。
本発明の複合酸化物粉末は、その製造方法を問わないが、例えば、次のような本発明の製造方法により得られる。すなわち本発明の複合酸化物粉末は、第一金属酸化物からなる第一コロイド粒子が分散媒中に分散した第一金属酸化物ゾルと、該第一金属酸化物と異なる第二金属酸化物からなる第二コロイド粒子が分散媒中に分散した第二金属酸化物ゾルとを混合した混合ゾルを得る混合工程と、該混合ゾル中の該第一コロイド粒子と該第二コロイド粒子が凝集した凝集粒子を含む凝集物を得る凝集工程と、該凝集物を乾燥させた乾燥物を得る乾燥工程と、該乾燥物を焼成された焼成物を得る焼成工程と、該焼成物を解砕する解砕工程とを備え、前記第一金属酸化物からなるコア部と該コア部の外表面に前記第二金属酸化物が結合してなるシェル部とで構成された複合酸化物合成粒子からなる複合酸化物粉末が得られることを特徴とする複合酸化物粉末の製造方法によって得られる。
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した具体的な数値または数値範囲に含まれる任意の数値を、新たな下限値または上限値として「a〜b」のような数値範囲を任意に新設し得る。
(1)基粒子および二次粒子
本発明の複合酸化物粉末は、少なくとも2種以上の金属酸化物からなる基粒子で構成される。少なくともその一種である第一金属酸化物からなる第一基粒子がコア部を構成し、他種の第二金属酸化物からなる第二基粒子がコア部の表面に結合してシェル部を構成する。
複合酸化物合成粒子の比表面積は、周知のBET法で測定される。本発明の複合酸化物合成粒子は比表面積が大きく、比表面積は20m2/g以上さらには22m2/g以上となり得る。
本発明の複合酸化物粉末は、その用途を問わないが、例えば、排ガス浄化用触媒、特にその金属酸化物担体として用いられると好ましい。この他、本発明の複合酸化物粉末はガラス研磨材等としても利用され得る。なお、複合酸化物粉末の用途や仕様に応じて、第一金属酸化物や第二金属酸化物、粒径等は適宜選択されると好ましい。
本発明の複合酸化物粉末の製造方法は、少なくとも混合工程、凝集工程、乾燥工程、焼成工程および解砕工程を備える。これら各工程について以下に説明する。
混合工程は、原料となる少なくとも2種以上の金属酸化物ゾルを混合した混合ゾルを得る工程である。すなわち混合工程では、少なくともその一種である第一金属酸化物ゾルと他種の第二金属酸化物ゾルが混合される。各金属酸化物の種類(組成)については、上述した複合酸化物粉末の場合と同様である。
凝集工程は、混合ゾル中の第一コロイド粒子と第二コロイド粒子を凝集させた凝集粒子を得る工程である。この凝集工程は、具体的にいうと例えば、混合ゾルをメディアを用いてミリングするミリング工程である。メディアはジルコニアボール、シリカボール、アルミナボール等、公知のものを利用できるが、第一金属酸化物と同組成のものを利用すると好ましい。ミリング条件は適宜選択されるが、例えば、50〜500rpmで10〜100時間行えばよい。
乾燥工程は、凝集物を乾燥させて乾燥物を得る工程であり、具体的には、凝集物中に含まれる水等の分散媒を蒸発等させて除去する工程である。乾燥工程は、大気中で自然乾燥させることも考えられるが、例えば、凝集物を80〜150℃さらには100〜130℃に加熱して乾燥させる加熱乾燥工程を行えば効率的である。この乾燥温度が過小では乾燥時間が長くなる。乾燥温度が過大では金属酸化物ゾル中に含まれていた有機物等が硬化、炭化等して、複合酸化物合成粒子の形態に影響し得る。従って加熱乾燥工程を行う場合、乾燥温度は上記の範囲内とするのが好ましい。
焼成工程は、乾燥物を焼成させて焼成物を得る工程である。乾燥物を急激に焼成させると、金属酸化物粒子が緻密に結合した焼成物が得られ、比表面積や酸素吸蔵能等の低下を招く。そこで焼成工程は、低温焼成工程と、該低温焼成工程後の高温焼成工程とからなると好適である。具体的には、低温焼成工程は、乾燥物を450〜700℃さらには550〜650℃で焼成させた低温焼成物を得る工程とすると好ましい。また高温焼成工程は、低温焼成物を750〜1150℃さらには800〜1050℃で焼成させた高温焼成物を得る工程とすると好ましい。なお、低温焼成工程と高温焼成工程は連続的に行えばよい。
解砕工程は、焼成物を解砕して粉末状とする工程である。この解砕工程は各種のミルやミキサー等を用いて行うことができる。こうして得られた複合酸化物粉末は、第一金属酸化物のコロイド粒子(第一基粒子)からなるコア部とコア部の外周囲に第二金属酸化物のコロイド粒子(第二基粒子)が結合してなるシェル部とで構成された複合酸化物合成粒子となっている。ちなみに本発明の複合酸化物粉末は粒径が5〜20μmであると好ましい。この粒径はレーザー回折/散乱式粒度分布計で測定して特定される。
〈試料1〜7〉
(1)原料
酸化ジルコニウムゾル(第一金属酸化物ゾル)と酸化セリウムゾル(第二金属酸化物ゾル)を用意した。各ゾルともに分散媒は水(イオン交換水)と有機アミンからなる溶液である。試料3および試料4に係る酸化セリウムゾルはpH8であったが、それ以外のゾルは全てpH9.5であった。
ここで、Dは粒子の真比重(g/cm3)、Sは比表面積(m2/g)である。
上記の両ゾルを表1に示す混合比(モル比)で混合して混合ゾルを得た(混合工程)。この混合ゾルをセラミックス製のポット(容積:2L)に入れ、そこへメディア(ジルコニアボール:直径10mm):1kgを加えた。このポットをボールミルにセットして、回転数175rpmで回転させた(凝集工程、ミリング工程)。この操作を行った時間(ミリング時間)は表1に併せて示した。
酸化ジルコニウムゾルを酸化ジルコニウム粉末に替えて、試料3と同様な方法で複合酸化物粉末を製造した。
酸化ジルコニウムゾルを水酸化ジルコニウム粉末に替えて、試料3と同様な方法で複合酸化物粉末を製造した。
ミリング工程を省略して、他は試料1と同様な方法で複合酸化物粉末を製造した。
(1)外観
得られた各複合酸化物粉末を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。試料1および試料3に係るTEM写真を、それぞれ図1Aおよび図1B(両図を併せて図1という。)に示した。
各試料から任意に抽出した複合酸化物合成粒子について、その構造解析を粉末X線回折装置(株式会社リガク製Multi Flex)を用いて行った。用いた特性X線はCuKα線(波長λ=1.5418Å)である。各試料について得られたX線回折パターンから、単斜晶酸化ジルコニウム(m−ZrO2)の最大ピーク値Im(2θ=28.189°)と正方晶酸化ジルコニウム(t−ZrO2)の最大ピーク値It(2θ=29.953°)との比(ピーク強度比:It/Im)を求めた。その結果を表1に併せて示した。なお、試料1、試料2および試料C3に係るX線回折パターンを図2に例示した。
各試料に係る複合酸化物合成粒子の比表面積をBET法により測定した。この測定は、各試料から任意に抽出した約1gの粉末について、BET比表面積測定装置(株式会社島津製作所製トライスター)を用いて行った。その結果を表1に併せて示した。
各試料に係る複合酸化物合成粒子の酸素貯蔵能(OSC)を次のようにして求めた。先ず、各試料に係る複合酸化物粉末を圧縮成形したペレットを作製し、これを供試材(約0.1g)とした。この供試材を耐久試験装置に充填し、水素ガスとアルゴンガスの混合ガスからなる雰囲気中で、800℃まで昇温した。これにより供試材の還元処理を行った。引き続き、600℃まで冷却したアルゴンガス雰囲気へ酸素を導入して、供試材へ酸素を吸収させた。このときの酸素の吸収量に基づいて各試料のOSCを算出した。その結果を表1に併せて示した。
(1)粒形態
図1からわかるように、本実施例に係る複合酸化物合成粒子は、酸化ジルコニウム粒子からなる二次粒子(コア部)の外周囲に、酸化セリウム粒子(シェル部)がほぼ均一的に薄く結合した状態となっている。
上述した複合酸化物合成粒子の粒形態が、比表面積または酸素吸蔵能に反映されていることが表1からわかる。すなわち、試料1〜5はいずれも、比表面積が20m2/g以上であり、OSCも5ml/g以上であり、共に非常に高い値となっている。
表1に示した試料1〜5と試料6〜7の比較から次のことがわかる。ZrO2/CeO2の混合比が試料6のように過大になると、複合酸化物合成粒子の比表面積は十分に大きくなるものの、その酸素吸蔵能は小さくなる。これは複合酸化物合成粒子を構成する機能材であるCeO2(第二金属酸化物)が相対的に過少になったためと考えられる。逆に、その混合比が試料7のように過小になっても、酸素吸蔵能は十分に大きくなるが、希少なCeO2の使用量が相対的に増え、その使用量を十分に低減できなくなる。また、焼結性の高いCeO2の存在量が増加するため、比表面積が低下する。
これに対して試料C1のように、酸化ジルコニウムゾルを用いずに、一次粒径が比較的大きな酸化ジルコニウム粉末を用いた場合、ピーク強度比、比表面積およびOSCのいずれも非常に小さくなっている。試料C1に係る合成粒子は、酸化ジルコニウム粒子と酸化セリウム粒子の分散が進行しておらず、試料1〜5のような好適なコアシェル構造体にはなっていないと考えられる。
Claims (8)
- 第一金属酸化物からなる第一コロイド粒子が分散媒中に分散した第一金属酸化物ゾルと、該第一金属酸化物と異なる第二金属酸化物からなる第二コロイド粒子が分散媒中に分散した第二金属酸化物ゾルとを混合した混合ゾルを得る混合工程と、
該混合ゾル中の該第一コロイド粒子と該第二コロイド粒子が凝集した凝集粒子を含む凝集物を得る凝集工程と、
該凝集物を乾燥させた乾燥物を得る乾燥工程と、
該乾燥物を焼成された焼成物を得る焼成工程と、
該焼成物を解砕する解砕工程とを備え、
前記第一金属酸化物からなるコア部と該コア部の外表面に前記第二金属酸化物が結合してなるシェル部とで構成された複合酸化物合成粒子からなる複合酸化物粉末が得られることを特徴とする複合酸化物粉末の製造方法。 - 前記凝集工程は、前記混合ゾルをメディアを用いてミリングするミリング工程である請求項1に記載の複合酸化物粉末の製造方法。
- 前記乾燥工程は、前記凝集物を80〜150℃に加熱して乾燥させる加熱乾燥工程である請求項1または2に記載の複合酸化物粉末の製造方法。
- 前記焼成工程は、低温焼成工程と、該低温焼成工程後の高温焼成工程とからなる請求項1または3に記載の複合酸化物粉末の製造方法。
- 前記低温焼成工程は、前記乾燥物を450〜700℃で焼成させた低温焼成物を得る工程であり、
前記高温焼成工程は、該低温焼成物を750〜1150℃で焼成させた高温焼成物を得る工程である請求項4に記載の複合酸化物粉末の製造方法。 - 前記混合工程は、前記第二金属酸化物に対する前記第一金属酸化物のモル比が1.5〜9となる前記混合ゾルを得る工程である請求項1に記載の複合酸化物粉末の製造方法。
- 前記第一金属酸化物は酸化ジルコニウムであり、
前記第二金属酸化物は酸化セリウムである請求項1〜6のいずれかに記載の複合酸化物粉末の製造方法。 - 前記第一コロイド粒子の一次粒径は15nm以下であり、
前記第一コロイド粒子の二次粒径は20nm以上であり、
前記第二コロイド粒子の一次粒径は40nm以下である請求項1または7に記載の複合酸化物粉末の製造方法。
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