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JP2013251377A - 太陽電池用透明導電膜付基板 - Google Patents

太陽電池用透明導電膜付基板 Download PDF

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JP2013251377A JP2012124550A JP2012124550A JP2013251377A JP 2013251377 A JP2013251377 A JP 2013251377A JP 2012124550 A JP2012124550 A JP 2012124550A JP 2012124550 A JP2012124550 A JP 2012124550A JP 2013251377 A JP2013251377 A JP 2013251377A
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Takashi Sugiyama
享司 杉山
Mika Kanbe
美花 神戸
Kiichi Takeuchi
喜一 竹内
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

【課題】ヘイズ率が高く、光線透過率が高く、かつ、透明導電膜付基板を用いて作製される太陽電池において、高開放電圧(VOC)、および、高短絡電流(Jsc)を達成できる太陽電池用透明導電性基板の提供。
【解決手段】基板上に透明導電性酸化物膜が形成された太陽電池用透明導電性基板であって、前記透明導電性酸化物膜が、酸化スズ、または、フッ素を含有する酸化スズからなり、前記透明導電性酸化物膜の表面には、略三角錐、略四角錐、または、それ以上の略多角錐のファセットからなる凹凸が存在し、原子間力顕微鏡(AFM)にて測定される、該透明導電性酸化物膜の面積(水平方向への投影面積)に対する、ファセット面角度が70°以上のファセットの面積(水平方向への投影面積)の比率が0.05〜0.25%であり、ファセット面角度が20°以下のファセットの面積(水平方向への投影面積)の比率が16%以下であることを特徴とする、太陽電池用透明導電性基板。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池用透明導電膜付基板に関する。
太陽電池には、太陽入射光のエネルギーを最大限に活かすべく、光電変換効率を高くすることが望まれている。
光電変換効率を高くするための一つの手段としては、太陽電池に電極として用いられる太陽電池用透明導電膜付基板に流れる電流を大きくすることが挙げられる。そのためには、ヘイズ率を高くすることが知られており、例えば、透明導電膜の表面に凹凸を設ける方法が知られている。透明導電膜の表面に適当な凹凸を付与することによって、該透明導電膜上に形成される光電変換層においてより有効な光吸収が図られる。つまり、凹凸によって透明導電膜と光電変換層との界面で入射光が散乱され、光電変換層における光路長を長くする、いわゆる光閉じ込め効果が発揮される(例えば、特許文献1および2参照。)。
特開2006−005021号公報 特開2010−262931号公報
特許文献1,2には、透明導電膜表面に付与する凹凸の好ましい形状が示されている。これによると、透明導電膜表面の凹凸形状に鋭いV型の谷が存在していると、開放電圧(VOC)が劣化するため、透明導電膜表面の凹凸形状には鋭いV型の谷が存在しないことが好ましいことになる。
本願発明者らは、透明導電膜表面の凹凸形状と、太陽電池用透明導電膜付基板としての特性と、の関係について、鋭意検討した結果、凹凸形状をなすファセット、すなわち、凹凸形状をなす略三角錐、略四角錐、または、それ以上の略多角錐のファセットのファセット面角度が、太陽電池用透明導電膜付基板としての特性に重要な影響を及ぼすことを見出した。
具体的には、透明導電性酸化物膜の面積(水平方向への投影面積)に対する、ファセット面角度が特定の角度以上のファセットの面積(水平方向への投影面積)の比率が高いと、透明導電膜表面にクラックが生じ易くなり、透明導電膜付基板を用いて作製される太陽電池の開放電圧(VOC)が低下する。
しかしながら、ファセット面角度が特定の角度以上のファセットが全く存在しないと、透明導電膜のヘイズ率が低下する。また、透明導電膜と、該透明導電膜上に形成される光電変換層と、の密着性が低下する。透明導電膜上に形成される光電変換層としては、ケイ素(Si)を主成分とする薄膜が用いられるが、Siを主成分とする薄膜は膜応力が大きいため、透明導電膜と、該透明導電膜上に形成される光電変換層と、の密着性が低下すると、透明導電膜から光電変換層が剥離するおそれがある。よって、特定の角度以上のファセットの存在により、光電変換層の剥離を低減させることができる。
一方、ファセット面角度が特定の角度以下のファセットでは、透明導電膜上に形成される光電変換層(p−i−n層)のうち、透明導電膜上に直接形成されるp層の膜厚が、ファセット面角度が特定の角度よりも大きい場合に比べ相対的に増加する。このため、透明導電性酸化物膜の表面積(水平方向への投影面積)に対する、ファセット面角度が特定の角度以下のファセットの面積(水平方向への投影面積)の比率が高い場合には、その部分でのp層は光線吸収率が高いため、p層の膜厚の増加により、i層に到達する光線が減少し、光電変換層での光線の利用効率が低下し、光電変換層における短絡電流(Jsc)が低下する。
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、ヘイズ率が高く、光線透過率が高く、かつ、透明導電膜付基板を用いて作製される太陽電池において、高開放電圧(VOC)、および、高短絡電流(Jsc)を達成できる太陽電池用透明導電性基板を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するため、本発明は、基板上に透明導電性酸化物膜が形成された太陽電池用透明導電性基板であって、
前記透明導電性酸化物膜が、酸化スズ、または、フッ素を含有する酸化スズからなり、
前記透明導電性酸化物膜の表面には、略三角錐、略四角錐、または、それ以上の略多角錐のファセットからなる凹凸が存在し、
原子間力顕微鏡(AFM)にて測定される、
該透明導電性酸化物膜の面積(水平方向への投影面積)に対する、ファセット面角度が70°以上のファセットの面積(水平方向への投影面積)の比率が0.05〜0.25%であり、
該透明導電性酸化物膜の面積(水平方向への投影面積)に対する、ファセット面角度が20°以下のファセットの面積(水平方向への投影面積)の比率が16%以下である太陽電池用透明導電性基板を提供する。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板において、前記透明導電性酸化物膜の表面に存在する前記凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が50〜200nmの範囲に入る比率が60%以上であり、前記太陽電池用透明導電性基板のC光源ヘイズ率が7%以上20%未満であることが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板において、前記透明導電性酸化物膜表面におけるファセット面角度の最頻角度が、30〜51°の範囲に存在し、該最頻角度に対するファセット面角度の標準偏差が12°以下であり、
該透明導電性酸化物膜の表面に存在する前記凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が200〜800nmの範囲に入る比率が60%以上であることが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、C光源ヘイズ率が20%以上であることが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板において、前記基板の前記透明導電性酸化物膜を形成する面に対し平行方向を角度0°とし、酸化物膜を形成する面に対し垂直方向を角度90°として、X線回折パターンを測定した際、X線回折パターンにおける(110)面による回折ピークのピーク強度に関して、角度40°でのピーク強度が角度90°でのピーク強度の5倍以上であることが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板において、前記基板の前記透明導電性酸化物のX線回折パターンにおける(301)面による回折ピークの積分強度が他の面による回折ピークの積分強度より強いことが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、前記基板が、350〜1200nmの波長域の光線透過率が80%以上のソーダライムシリケートガラス基板であることが好ましい。
また、前記ソーダライムシリケートガラス基板は、鉄の含有率が酸化鉄量で0.05wt%以下であることが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板において、前記基板と、前記透明導電性酸化物膜と、の間に、酸化チタン層および酸化ケイ素層のうち、少なくとも一方が形成されていることが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板において、前記透明導電性酸化物膜は、常圧CVD法を用いて形成されていることが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板において、前記透明導電性酸化物膜は、四塩化スズおよび水を主原料として、常圧CVD法を用いて形成されていることが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、450〜1200nmの波長域での平均した光線透過率が80%以上であることが好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、シート抵抗が7〜20Ω/□であることが好ましい。
また、本発明の別の一態様は、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板を用いた太陽電池を提供する。
また、本発明のさらに別の一態様は、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板を用いたタンデム構造の太陽電池を提供する。
また、本発明の一態様は、基板上に常圧CVD法によって透明導電性酸化物膜を形成する、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板の製造方法であって、前記常圧CVD法で、前記基板上に供給されるプロセスガスが、四塩化スズ(SiCl4)、および、水(H2O)を含有し、前記プロセスガス中でのH2OとSiCl4との流量比(H2O(m/sec)/SiCl4(m/sec))が23倍以下であり、前記基板に対する前記プロセスガスの接触時間が90秒以上である太陽電池用透明導電性基板の製造方法を提供する。
本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、透明導電性酸化物膜表面におけるファセット面角度が70°以上のファセットの面積比率が0.25%以下と低いため、透明導電膜表面にクラックが生じにくく、透明導電膜付基板を用いて作製される太陽電池において、高開放電圧(VOC)を達成できる。その一方で、透明導電性酸化物膜表面におけるファセット面角度が70°以上のファセットの面積比率が0.05%以上であることにより、透明導電性酸化膜上に形成される光電変換層との密着性が向上し、透明導電性酸化膜から光電変換層が剥離するおそれが解消されている。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、透明導電性酸化物膜表面におけるファセット面角度が20°以下のファセットの面積比率が16%以下と低いため、透明導電膜上に形成される光電変換層(p−i−n層)のうち、透明導電膜上に直接形成されるp層の膜厚の増加の影響がない。このため、透明導電膜上に形成される光電変換層での光線の利用効率が高くなり、光電変換層における短絡電流(Jsc)が向上する。
図1は、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板におけるファセット面角度を説明するための模式図である。
以下、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板について説明する。
本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、基板上に透明導電性酸化物膜が形成されたものである。本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板の個々の構成について、以下に説明する。
<基板>
基板の材質は、特に限定されないが、透光性(光透過率)および機械的強度に優れる点で、ガラス、プラスチックが好適に例示される。中でも、透光性、機械的強度および耐熱性に優れ、かつ、コスト面でも優れる点で、無機ガラスが好ましい。
無機ガラスの種類は、特に限定されず、例えば、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスが挙げられる。中でも、無色透明であり、安価であり、市場で面積、形状、板厚等の仕様を指定して入手することが容易である点で、ソーダライムシリケートガラスが好ましい。なお、ソーダライムシリケートガラス基板は、鉄の含有率が酸化鉄量で0.05wt%以下であることが、基板での可視光の吸収が減少し、可視光域の光線透過率が向上するので好ましい。
なお、ソーダライムシリケートガラスなどのアルカリ成分を含有するガラス基板の場合には、ガラスからその上面に形成される透明導電性酸化物膜へのアルカリ成分の拡散を最小限にするためのアルカリバリア層として、酸化チタン層および酸化ケイ素層のうち、少なくとも一方を、ガラス基板と透明導電性酸化物膜との間に形成することが好ましい。また、酸化チタン層および酸化ケイ素層をこの順に基板から形成して反射防止効果を持たせることがよりよい。
基板がガラス製である場合、厚さは、0.2〜6.0mmであるのが好ましい。上記範囲であると、機械的強度および透光性のバランスに優れる。
基板は、350〜1200nmの波長領域の光透過率に優れているのが好ましい。具体的には350〜1200nmの波長領域の光透過率が80%以上あるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
また、基板は、絶縁性に優れているのが好ましく、化学的耐久性および物理的耐久性にも優れているのが好ましい。
基板の形状は特に限定されず、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板を用いて製造される太陽電池の形状に応じて適宜選択することができる。例えば、断面形状が平らな平板状であってもよく、曲面状であってもよく、また他の異形状であってもよい。
<透明導電性酸化物膜>
透明導電性酸化物膜は、可視光域で透明であること、および、導電性を有することが求められる。
可視光域で高透過であるためには、透明導電性酸化物膜の屈折率は、波長400〜800nmにおいて、1.8〜2.2であることが好ましく、さらに、1.9〜2.1であるのが好ましい。
また、導電性に関して、透明導電性酸化物膜のシート抵抗が7〜20Ω/□であることが好ましく、より好ましくは8〜12Ω/□である。
上記の屈折率およびシート抵抗を満たすため、本発明の一態様では、透明導電性酸化物膜が、実質的にフッ素を含有する酸化スズ単体、もしくは、フッ素を含有しない酸化スズ、および、フッ素を含有する酸化スズからなる。好ましい形態は,移動度を高くし光透過率を高くすると同時に、ヘイズ率を上げるために,先ずフッ素を含有しない酸化スズからなる層を100〜1000nmの厚さで形成し、その上にフッ素を含有する酸化スズからなる層を300〜1000nmの厚さで形成する。上記フッ素を含有する酸化スズからなる層若しくはフッ素を含有する酸化スズからなる透明導電性酸化物膜におけるフッ素含有量は、酸化スズに対するフッ素の含有量が0.01〜4mol%であるのが好ましく、0.02〜2mol%であるのがより好ましい。
また、上記の量フッ素を含有する酸化スズからなる透明導電性酸化物膜と光電変換層の間に中間層と呼ぶ、フッ素の含有率が1ppm以下の酸化スズ層、もしくは フッ素を0.01〜4mol%含有する酸化スズよりも仕事関数が高い材料からなる層が1〜50nmの厚さで形成することが好ましい。この中間層は光発電層のVoc改善のため設置することが好ましい。
上述したように、太陽電池の光電変換効率を高めるためには、太陽電池用透明導電性基板のヘイズ率が高くすることが好ましく、透明導電性酸化物膜の表面に凹凸を設けることで、太陽電池用透明導電性基板のヘイズ率を高めることができる。このため、本発明の一態様の透明導電性酸化物膜の表面には、略三角錐、略四角錐、または、それ以上の略多角錐のファセットからなる凹凸が存在する。
なお、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、C光源ヘイズ率が7%以上である。
ヘイズ値は、前記凹凸の高低差に関係が深いために、前記凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が50〜200nmの範囲に入る比率が60%以上である場合は、C光源ヘイズ率が7%以上〜20%未満である。一方、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が200〜800nmの範囲に入る比率が60%以上である場合にはヘイズ率は20%以上が好ましく、20%〜60%がより好ましい。
また、基板の透明導電性酸化物膜を形成する面に対し平行方向を角度0°とし、酸化物膜を形成する面に対し垂直方向を角度90°として、X線回折パターンを測定した際、X線回折パターンにおける(110)面による回折ピークのピーク強度に関して、角度40°でのピーク強度が角度90°でのピーク強度の5倍以上である場合には、ヘイズ率は20%以上が好ましく、20%〜60%がより好ましい。
なお、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差とは、透明導電性酸化物膜の表面に複数存在する凹凸について、凸部の基板面からの高さと、当該凸部に隣接する複数の凸部との間に形成される凹部の基板面からの高さと、の差(高低差)を取ったときの、最大の高低差の値を指すものとする。
また、C光源ヘイズ率を20%以上とするためには、透明導電性酸化物膜の表面におけるファセット面角度のばらつきが少ないことが好ましい。
具体的には、ファセット面角度の最頻角度が30〜51°の範囲に存在し、該最頻角度に対するファセット面角度の標準偏差が12°以下であることが好ましい。
ファセット面角度の面角度の最頻角度は、35〜48°の範囲に存在することがより好ましく、40〜45°の範囲に存在することがさらに好ましい。
また、該最頻角度に対するファセット面角度の標準偏差が10°以下であることがより好ましく、8°以下であることがさらに好ましい。
ファセット面角度の最頻角度、および、該最頻角度に対するファセット面角度の標準偏差が、上述した条件を満たす透明導電性酸化物膜は、ファセット面方位が、主として(110)面に配向するものである。このような透明導電性酸化物膜を得るには、透明導電性酸化物膜を構成する酸化スズの結晶成長の方位が、主として(301)面に配向するように、透明導電性酸化物膜を形成すればよい。
なお、ファセット面角度の最頻角度とは、原子間力顕微鏡(AFM)にて測定した際の後述する水平面に対するファセット面角度の最頻値をさす。
また、酸化スズの結晶成長の方位が(301)面に配向することは、X線回折パターンにおける回折ピークのピーク強度により確認できる。具体的には、θ―2θ法によりX線回折パターンを測定し、2θの値が66度付近で観測されるルチル型酸化スズの301回折ピークの積分値の値が全ての回折ピークの積分値のなかで最も大きい場合に、酸化スズの結晶成長の方位が主として(301)面に強く配向していることになる。また、ファセット面方位が、主として(110)面に配向することは110回折に対するX線回折の極点図を測定することにより確認できる。具体的には、透明導電性酸化物膜を形成する面に対し平行方向を角度0°とし、酸化物膜を形成する面に対し垂直方向を角度90°としてX線回折パターンを測定したとき、X線回折極点図における(110)面による回折強度に関して、角度40°での回折強度が角度90°での回折強度の10倍以上であれば、酸化スズの結晶成長のファセット面方位が、主として(110)面に配向していることになる。すなわち、ファセット面角度の最頻角度、および、該最頻角度に対するファセット面角度の標準偏差が上述した条件を満たす透明導電性酸化物膜となる。
上述したように、ファセット面方位が主として(110)面に配向する透明導電性酸化物膜を形成するには、透明導電性酸化物膜を構成する酸化スズの結晶成長の方位が、主として(301)面に配向するように、透明導電性酸化物膜を形成すればよい。透明導電性酸化物膜を構成する酸化スズの結晶成長の方位が、主として(301)面に配向するように、透明導電性酸化物膜を形成するには、常圧CVD法の実施時において、基板上に供給するプロセスガス中でのH2OとSiCl4との流量比(H2O(m/sec)/SiCl4(m/sec))を23倍以下とし、基板に対するプロセスガスの連続接触時間が90秒以上となる条件とすればよい。
本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、原子間力顕微鏡(AFM)にて測定される、透明導電性酸化物膜の面積(水平方向への投影面積)に対する、ファセット面角度が70°以上のファセットの面積(水平方向への投影面積)の比率(ファセット面角度が70°以上のファセットの面積比率)が0.05〜0.25%である。
本発明の一態様におけるファセット面角度は、以下の手順で求めることができる。
先ずAFMを用いて、透明導電性酸化物膜の表面の凹凸の高さを測定する。一例を挙げると、透明導電性酸化物膜の表面のうち、8μm×8μmの範囲を1024×1024点の解像度で測定する。得られた測定結果から、図1に示すように、隣り合う三点A,B,CをXY面内でなす角がAB⊥ACとなるように選択し、三次元ベクトルABと、三次元ベクトルACと、を各点間の距離と高さの差から求める。なお、XY面内を水平面とも呼び、基板が板状態であるときは透明導電性酸化物膜を形成する基板の表面がXY面になる。
よって、原子間力顕微鏡(AFM)にて測定される、透明導電性酸化物膜の面積(水平方向への投影面積)は、この水平面に平行な面における面積で定義される。
求められた二つのベクトル(三次元ベクトルAB、三次元ベクトルAC)の外積を求めることにより、二つのベクトル(三次元ベクトルAB、三次元ベクトルAC)から構成される三角形の面(ファセット)の法線方向のベクトル(AB×AC)を求める。
求められた法線方向のベクトル(AB×AC)と,垂直方向のベクトル(0,0,1)の角度を求めることにより、二つのベクトル(三次元ベクトルAB、三次元ベクトルAC)から構成される三角形の面の角度θ(ファセット面角度)を求める。
上記の手順を透明導電性酸化物膜の表面全体を対象として、全ての隣り合う三点について実施する。
上記の手順で得られるファセット面角度が70°以上のファセットについて、水平方向への投影面積を求め、透明導電性酸化物膜の水平方向への投影面積に対する比率(ファセット面角度が70°以上のファセットの面積比率)を求める。
ファセット面角度が70°以上のファセットの面積比率が0.25%超だと、透明導電性酸化物膜の表面にクラックが生じ易くなり、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板を用いて製造される太陽電池の開放電圧(VOC)が低下する。
ファセット面角度が70°以上のファセットの面積比率は、0.2%以下であることが好ましく、0.15%以下であることがより好ましく、さらに0.10%以下であることが好ましい。
その一方で、透明導電性酸化物膜表面におけるファセット面角度が70°以上のファセットの面積比率が0.05%未満だと、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板のヘイズ率が低下するうえ、透明導電性酸化物膜と、該透明導電性酸化物膜上に形成される光電変換層と、の密着性が低下する。透明導電性酸化物膜上に形成される光電変換層としては、ケイ素(Si)を主成分とする薄膜が用いられるが、Siを主成分とする薄膜は膜応力が大きいため、透明導電性酸化物膜と、該透明導電性酸化物膜上に形成される光電変換層と、の密着性が低下すると、透明導電性酸化物膜から光電変換層が剥離するおそれがある。
また、上記と手順で得られるファセット面角度が20°以下のファセットについて、水平方向への投影面積を求め、透明導電性酸化物膜の水平方向への投影面積に対する比率(ファセット面角度が20°以下のファセットの面積比率)を求める。
本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、ファセット面角度が20°以下のファセットの面積比率が16%以下である。ファセット面角度が20°以下の部分では、透明導電性酸化物膜上に形成される光電変換層(p−i−n層)のうち、透明導電性酸化物膜上に直接形成されるp層の膜厚が相対的に増加する。p層は光線吸収率が高いため、p層の膜厚の増加により、i層に到達する光線が減少し、光電変換層での光線の利用効率が低下し、光電変換層における短絡電流(Jsc)が低下する。ファセット面角度が20°以下の、ファセットの面積比率が16%超だと、十分な短絡電流(Jsc)がえられない。
ファセット面角度が20°以下のファセットの面積比率は、12%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。特に該透明導電性酸化物膜表面におけるファセット面角度の最頻角度が、30〜51°の範囲に存在し、該最頻角度に対するファセット面角度の標準偏差が12°以下である場合には、ファセット面角度が20°以下のファセットの面積比率は、12%以下が特に好ましい。
また、特に前記凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が50〜200nmの範囲に入る比率が60%以上である場合は、ファセット面角度が20°以下のファセットの面積比率は12%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、6%以下であることがさらに好ましい。
透明導電性酸化物膜のヘイズ率は、透明導電性酸化物膜の表面に存在する凹凸の高低差、すなわち、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)により調節することができる。本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、凹凸の高低差が50〜200nmの範囲でその凸部の比率が60%以上である場合は、太陽電池用透明導電性基板のC光源ヘイズ率を7%以上20%未満とするうえで好ましい。
具体的には、透明導電性酸化物膜の表面に存在する前記凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が50〜200nmの範囲に入る比率が60%以上であることが好ましい。
なお、前記凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が50〜200nmの範囲に入る比率は、上述したファセット面角度の評価手順と同様に、AFMを用いて、透明導電性酸化物膜の表面を測定することで得られる。AFMを用いて一定の範囲の透明導電性酸化物膜の表面を測定して、その中で比率を求めればよく、好ましくは8μm×8μmの範囲より広い範囲を測定することが精度の点で好ましい。
また、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が50〜200nmの範囲の比率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、前記凸凹において凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さと、の差)を取ったときの最大高低差が200〜800nmの範囲に入る比率が60%以上である場合は、太陽電池用透明導電性基板のC光源ヘイズ率を20%以上するうえで好ましい。
透明導電性酸化物膜は、膜厚が450〜1200nmであることが、後述する光線透過率とシート抵抗を達成するうえで好ましく、より好ましくは300〜900nmであり、さらに好ましくは300〜600nmである。
透明導電性酸化物膜の形成には、装置コストが低いこと、成膜速度が速い等の理由から常圧CVD法を用いることが好ましい。酸化スズからなる透明導電性酸化物膜を形成するには、四塩化スズおよび水を主原料として、常圧CVD法を実施すればよい。フッ素を含有する酸化スズからなる透明導電性酸化物膜を形成するには、これらに加えてフッ化水素を主原料として、常圧CVD法を実施すればよい。
次に、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板が有する特性を示す。
本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板はヘイズ率が高い。具体的には、凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が50〜200nmの範囲に入る比率が60%以上である場合は、C光源ヘイズ率が7%以上20%未満であり、好ましくは、10〜15%である。また、前記凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が200〜800nmの範囲に入る比率が60%以上である場合は、C光源ヘイズ率が20%以上であり、好ましくは20%以上〜60%未満である。
本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、可視光域の光線透過性に優れる。具体的には、450〜1200nmの波長域での平均した光線透過率が80%以上であり、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。ここで平均した光線透過率とは、450〜1200nmの波長域を5nm間隔で測定した透過率の値を平均した値である。
本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、導電性に優れる。具体的には、シート抵抗が7〜20Ω/□であり、好ましくは8〜12Ω/□である。
本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板は、アモルファスシリコン系か、若しくは結晶シリコン系か、といった光電変換層の材質の違い、またはシングル構造か、若しくはタンデム構造か、といった構造の違いを問わず幅広い種類の太陽電池に使用することができる。従って、シングル構造のアモルファスシリコン系太陽電池にも使用することができる。但し、C光源ヘイズ率が7%以上20%未満、若しくはC光源ヘイズ率が20%以上と高く、450〜800nmの波長領域の光線透過率が80%以上と高く、透明導電膜付基板を用いて製造される太陽電池において、高開放電圧(VOC)、および、高短絡電流(Jsc)を達成できるという本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板の特徴により、光電変換効率に優れたタンデム構造の太陽電池に使用することが特に好ましい。タンデム構造の光電変換層のうち、ボトムセルの層厚が800〜3000nmであることが特に好ましい。
また、本発明の一態様の太陽電池用透明導電性基板の製造方法は、基板上に常圧CVD法によって透明導電性酸化物膜を形成する際に、常圧CVD法で、基板上に供給されるプロセスガス(原料ガス)が、四塩化スズ(SiCl4)、および、水(H2O)を含有し、前記プロセスガス中でのH2OとSiCl4との流量比(H2O(m/sec)/SiCl4(m/sec))が23倍以下であり、前記基板に対する前記プロセスガスの接触時間が90秒以上であることが特に好ましい。

Claims (16)

  1. 基板上に透明導電性酸化物膜が形成された太陽電池用透明導電性基板であって、
    前記透明導電性酸化物膜が、実質的に酸化スズ、または、フッ素を含有する酸化スズからなり、
    前記透明導電性酸化物膜の表面には、略三角錐、略四角錐、または、それ以上の略多角錐のファセットからなる凹凸が存在し、
    原子間力顕微鏡(AFM)にて測定される、
    該透明導電性酸化物膜の面積(水平方向への投影面積)に対する、ファセット面角度が70°以上のファセットの面積(水平方向への投影面積)の比率が0.05〜0.25%であり、
    該透明導電性酸化物膜の面積(水平方向への投影面積)に対する、ファセット面角度が20°以下のファセットの面積(水平方向への投影面積)の比率が16%以下である太陽電池用透明導電性基板。
  2. 前記透明導電性酸化物膜の表面に存在する前記凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が50〜200nmの範囲に入る比率が60%以上であり、前記太陽電池用透明導電性基板のC光源ヘイズ率が7%以上20%未満であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池用透明導電性基板。
  3. 前記透明導電性酸化物膜表面におけるファセット面角度の最頻角度が、30〜51°の範囲に存在し、該最頻角度に対するファセット面角度の標準偏差が12°以下であり、
    該透明導電性酸化物膜の表面に存在する前記凸凹において、凸部と隣接する複数の凸部の間に形成される凹部との高低差(基板面からの凸部の高さと、基板面からの凹部の高さのと、の差)を取ったときの最大高低差が200〜800nmの範囲に入る比率が60%以上であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池用透明導電性基板。
  4. 前記透明導電性酸化物膜が形成された基板のC光源ヘイズ率が20%以上であることを特徴とする請求項3記載の太陽電池用透明導電性基板。
  5. 前記基板の前記透明導電性酸化物膜を形成する面に対し平行方向を角度0°とし、酸化物膜を形成する面に対し垂直方向を角度90°として、X線回折パターンを測定した際、X線回折パターンにおける(110)面による回折ピークのピーク強度は、角度40°でのピーク強度が角度90°でのピーク強度の5倍以上である、請求項3または4に記載の太陽電池用透明導電性基板。
  6. 前記透明導電性酸化物膜のX線回折パターンにおける(301)面による回折ピークの積分強度が、他の面による回折ピークの積分強度より強いことを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載の太陽電池用透明導電性基板。
  7. 前記基板が、350〜1200nmの波長域の光線透過率が80%以上のソーダライムシリケートガラス基板である、請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用透明導電性基板。
  8. 前記ソーダライムシリケートガラス基板が、鉄の含有率が酸化鉄量で0.05wt%以下である、請求項7に記載の太陽電池用透明導電性基板。
  9. 前記基板と、前記透明導電性酸化物膜と、の間に、酸化チタン層および酸化ケイ素層のうち、少なくとも一方が形成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の太陽電池用透明導電性基板。
  10. 前記透明導電性酸化物膜が、常圧CVD法を用いて形成されている、請求項1〜9のいずれかに記載の太陽電池用透明導電性基板。
  11. 前記透明導電性酸化物膜は、四塩化スズおよび水を主原料として、常圧CVD法を用いて形成されている、請求項1〜10のいずれかに記載の太陽電池用透明導電性基板。
  12. 450〜1200nmの波長域での平均した光線透過率が80%以上である、請求項1〜11のいずれかに記載の太陽電池用透明導電性基板。
  13. 前記透明導電性酸化物膜のシート抵抗が7〜20Ω/□である、請求項1〜12のいずれかに記載の太陽電池用透明導電性基板。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の太陽電池用透明導電性基板を用いた太陽電池。
  15. 請求項1〜13のいずれかに記載の太陽電池用透明導電性基板を用いたタンデム構造の太陽電池。
  16. 基板上に常圧CVD法によって透明導電性酸化物膜を形成する、請求項1に記載の太陽電池用透明導電性基板の製造方法であって、基板上に常圧CVD法によって透明導電性酸化物膜が形成する形成方法であって、前記常圧CVD法で、前記基板上に供給されるプロセスガスが、四塩化スズ(SiCl4)、および、水(H2O)を含有し、前記プロセスガス中でのH2OとSiCl4との流量比(H2O(m/sec)/SiCl4(m/sec))が23倍以下であり、前記基板に対する前記プロセスガスの接触時間が90秒以上である太陽電池用透明導電性基板の製造方法。
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