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JP2013110327A - 太陽電池用シリコン基板の製造方法 - Google Patents

太陽電池用シリコン基板の製造方法 Download PDF

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JP2013110327A JP2011255543A JP2011255543A JP2013110327A JP 2013110327 A JP2013110327 A JP 2013110327A JP 2011255543 A JP2011255543 A JP 2011255543A JP 2011255543 A JP2011255543 A JP 2011255543A JP 2013110327 A JP2013110327 A JP 2013110327A
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利基 白濱
Shigeki Matsuo
繁樹 松尾
Hiroshi Otsubo
弘司 大坪
Takeshi Sawai
毅 沢井
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Abstract

【課題】非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液でシリコン基板を処理した際に、凹凸構造を均一に形成することが出来るように改良されたシリコン基板の製造方法を提供する。
【解決手段】アズスライスシリコン基板を用いて表面にピラミッド状の凹凸構造を有する太陽電池用シリコン基板の製造方法であって、非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液でシリコン基板を処理してその表面にピラミッド状の凹凸構造を形成するテクスチャー工程と、当該テクスチャー工程の前段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してスライス工程由来の付着物を除去する工程とを包含し、スライス工程由来の付着物を除去する工程において、上記の洗浄液が水媒体中で過酸化水素とアルカリの組合せ又は過酸化水素と炭酸塩との反応物を使用する起泡性洗浄液である太陽電池用シリコン基板の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池用シリコン基板の製造方法に関し、詳しくは、アズスライスシリコン基板を用い、表面にピラミッド状の凹凸を有する太陽電池用シリコン基板を再現性良く製造する方法に関する。
太陽電池に用いられる単結晶シリコン基板及び多結晶シリコン基板は、インゴットから主にワイヤーソーを用いてスライスすることによって作製されている。しかし、スライスしたままの基板(アズスライス基板)には、基板表面からの深さが数μmから十数μmのダメージ層(加工変質層)が存在している。このダメージ層には、加工ダメージや加工歪等が残留しているため、ダメージ層を残したまま太陽電池を作製してもpn接合の特性が悪く、高効率な太陽電池は得られない。従って、ダメージ層は、基板表面をエッチングすることで、十分除去する必要がある。
一方、太陽電池の効率の向上のためには、受光面の反射率を低減し、入射光をシリコン基板内に閉じ込める構造が望まれる。このための方法として、シリコン基板表面をエッチングすることで凹凸構造(これを「(表面)テクスチャー構造」という)を形成することが行われている。照射された光はこのテクスチャー構造により表面で多重反射することでシリコン基板への入射の機会が増加し、効率よく太陽電池内部に吸収される。
シリコン基板のエッチングは、いずれもアルカリ性のエッチング液を用いた湿式エッチングにより行うことができる。このエッチングは以下の反応式(1)の反応によって進行する。
[化1]

Si+4OH+4H → Si(OH) + 2H 反応式(1)
シリコン基板の表面にテクスチャー構造を形成するために、通常はエッチング速度を制御したエッチング液を使用することにより異方性エッチングを行う。ダメージ層の除去とテクスチャー構造の形成を同じエッチング液で実施しても良いし、生産性の観点からはダメージ層の除去とテクスチャーの形成に異なるエッチング液を使用した2段階のエッチング処理を行っても良い。
2段階のエッチング処理は、先ず、比較的エッチング速度の速いアルカリ性のエッチング液によってダメージ層除去エッチングを行い、次いで、テクスチャーエッチングとしてエッチング速度を制御したエッチング液を使用することにより異方性エッチングを行う処理方法である。
いずれの方法においてもシリコン基板の表面へのテクスチャー構造の形成は、以下のメカニズムに基づく。
シリコン基板のアルカリ水溶液によるエッチング速度は、シリコンの(100)面が最も早く、(111)面が最も遅い。そのため、アルカリ水溶液にエッチング速度を低下させることができる特定の添加剤(以下、「エッチング抑制剤」ということもある。)を添加することによってテクスチャーエッチングの速度を抑制すると、シリコンの(100)面等のエッチングされやすい結晶面が優先的にエッチングされ、エッチング速度の遅い(111)面が表面に残存する。この(111)面は、(100)面に対して約54度の傾斜を持つためにプロセスの最終段階では(111)面とその等価な面で構成されるピラミッド状の凹凸が形成される。
ダメージ層除去エッチングには、一般的な強アルカリ薬液からなるエッチング液を用いることができるのに対し、テクスチャーエッチングにおいては、上記のエッチング抑制剤を添加し、溶液温度などの諸条件を制御することにより、エッチング速度をコントロールする必要がある。
通常、テクスチャーエッチング用エッチング液として、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に、エッチング抑制剤としてイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と称する場合がある)を添加したエッチング液が使用されている。このエッチング液を60〜80℃程度に加温し、(100)面のシリコン基板を10〜30分間浸漬させる方法がとられてきた(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
さらに、45重量%水酸化カリウム(KOH)を水で1:1に希釈した液を85℃に加温し、シリコン基板を30分浸漬することでダメージ層を除去した後に、水酸化カリウム(KOH)水溶液に、エッチング抑制剤としてIPAを添加したエッチング液を使用してテクスチャーエッチングを行う方法も開示されている(例えば、非特許文献2参照)。
一方で、IPAは揮発性が高いため、揮発量に相当するIPAをテクスチャーエッチング液中に随時添加する必要があり、IPAの消費量が増加することによるエッチング費用の増大が問題になっている。さらに、揮発性の高いIPAを多量使用することは安全性、環境面でも好ましくなく、揮発したIPAを回収する装置を付設したとしても、エッチング処理設備の製作費用が増大すると共に、設備運転費用も増加するという問題があった。
そのため、IPAの代替となるエッチング抑制剤を含むテクスチャーエッチング液の開発が行われている。例えば、エッチング抑制剤として、非アルコール系のエッチング抑制剤、具体的には、脂肪族カルボン酸あるいはその塩(特許文献2及び3)、無機塩(特許文献4)、ベンゼン環を含む化合物(特許文献5)が提案されている。
特開昭61−96772号公報 特開2002−57139号公報 国際公開第06/046601号パンフレット 特開2000−183378号公報 特開2007−258656号公報
「Uniform Pyramid Formation onAlkaline-etched Polished Monocrystalline (100) Silicon Wafers 」 Progress inPhotovoltaics , Vol.4 , 435-438 (1996) 「EXPERIMENTAL OPTIMIZATION OF AN ANISOTROPICETCHING PROCESS FOR RANDOM TEXTURIZATION OF SILICON SOLAR CELLS」CONFERENCERECORD OF THE IEEEPHOTOVOLTAICSPECIALISTS CONFERENCE , P303-308 (1991)
ところで、アズスライスシリコン基板の表面にはスライス工程由来の付着物が存在する。斯かる付着物は、エッチング液のシリコン基板表面への濡れ性などに影響し、凹凸構造をシリコン基板の全面に亘って均一に形成する上での障害となることがある。そして、テクスチャーの形成が阻害された部位は、部分的に光反射率が劣り、そのため外観上もムラとなって見える。また、非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液を用いた場合、エッチング抑制剤がシリコン基板のピラミッド状の凹凸構造の中に残存し、pn接合形成させるためのドーパントの熱拡散が不十分となり、エネルギー変換効率を低下させることがある。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液でシリコン基板を処理した際に、凹凸構造を均一に形成することが出来るように改良されたシリコン基板の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ピラミッド状の凹凸構造の中に残存するエッチング抑制剤を除去し、エネルギー変換効率の一層高い太陽電池が得られるように改良されたシリコン基板の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記実情に鑑み、シリコン基板の表面に存在するスライス工程由来の付着物およびシリコン基板のピラミッド状の凹凸構造の中に残存した非アルコール系のエッチング抑制剤の除去について鋭意検討を重ねた結果、特定の洗浄液を使用することにより、スライス工程由来の付着物および非アルコール系のエッチング抑制剤を効果的に除去し得るとの知見を得、本発明に至った。
すなわち、本発明の第1の要旨は、アズスライスシリコン基板を用いて表面にピラミッド状の凹凸構造を有する太陽電池用シリコン基板の製造方法であって、非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液でシリコン基板を処理してその表面にピラミッド状の凹凸構造を形成するテクスチャー工程と、当該テクスチャー工程の前段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してスライス工程由来の付着物を除去する工程とを包含し、スライス工程由来の付着物を除去する工程において、上記の洗浄液が水媒体中で過酸化水素とアルカリの組合せ又は過酸化水素と炭酸塩との反応物を使用する起泡性洗浄液であることを特徴とする太陽電池用シリコン基板の製造方法に存する。
本発明の第2の要旨は、アズスライスシリコン基板を用いて表面にピラミッド状の凹凸構造を有する太陽電池用シリコン基板の製造方法であって、非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液でシリコン基板を処理してその表面にピラミッド状の凹凸構造を形成するテクスチャー工程と、当該テクスチャー工程の後段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してシリコン基板の表面に残存するエッチング抑制剤を除去する工程とを包含し、エッチング抑制剤除去工程において、上記の洗浄液が水媒体中で過酸化水素とアルカリの組合せ又は過酸化水素と炭酸塩との反応物を使用する起泡性洗浄液であること特徴とする太陽電池用シリコン基板の製造方法に存する。
そして、本発明の第3の要旨は、アズスライスシリコン基板を用いて表面にピラミッド状の凹凸構造を有する太陽電池用シリコン基板の製造方法であって、非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液でシリコン基板を処理してその表面にピラミッド状の凹凸構造を形成するテクスチャー工程と、当該テクスチャー工程の前段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してスライス工程由来の付着物を除去する工程と、上記テクスチャー工程の後段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してシリコン基板の表面に残存するエッチング抑制剤を除去する工程とを包含し、上記のスライス工程由来の付着物を除去する工程と上記のエッチング抑制剤除去工程における洗浄液が水媒体中で過酸化水素とアルカリの組合せ又は過酸化水素と炭酸塩との反応物を使用する起泡性洗浄液であることを特徴とする太陽電池用シリコン基板の製造方法に存する。
本発明によれば、太陽電池用シリコン基板の表面に清浄で均一なテクスチャー構造を形成することができるため、外観均一性の優れた太陽電池用シリコン基板が得られる。また、光閉じ込め及び効率的なセル形成に適した平均サイズが2.0〜4.0μmの微細なテクスチャー構造も再現性よく形成することが可能である
本発明に係る太陽電池用シリコン基板の製造方法の好ましい態様の一例を示すフローチャートである。 過酸化水素−アルカリ洗浄液における過酸化水素の補充例を示すグラフである。 実施例2で得られたシリコン基板の外観写真である。 比較例1で得られたシリコン基板の外観写真である。 実施例4で得られたシリコン基板のSEM写真である。 実施例17で得られたシリコン基板のSEM写真である。
以下、本発明につき詳細に説明する。図1に例示した製造方法は、主として、スライス工程由来の付着物除去工程、マクロエッチング工程、テクスチャーエッチング工程、エッチング抑制剤除去工程、スライス工程由来のコンタミ金属除去工程とを順次に包含して成る。そして、各工程間には水洗工程が設けられ、また、スライス工程由来のコンタミ金属除去工程の後の水洗工程に引き続き、湯洗工程と乾燥工程とが設けられている。本発明の製造方法において、テクスチャーエッチング工程とエッチング抑制剤除去工程とは必須の工程であり、マクロエッチング工程は省略可能な工程であり、その他の工程は、本発明の好ましい態様として設けられる工程である。以下、工程毎に説明する。
<スライス工程由来の付着物除去工程>
スライス工程由来の付着物は、加工中に生じたシリコン基板の微細なクラック内部にクーラント成分(砥粒を含まない加工液)などが浸透したものである。また、スライス加工時にシリコン基板に付着した研削粉やクーラント成分等を洗浄するために用いる界面活性剤等の洗浄剤の残存物も含まれる。シリコン基板表面に、これらのスライス工程由来の付着物が残存したままでテクスチャー工程で凹凸形状のエッチング処理を実施してしまうと、得られるシリコン基板の表面に「色むら、白曇り、斑点、ギラツキ」等の目視外観評価における不具合が生じる。これらの外観不良は、最終製品の太陽電池用セル、モジュール化してもそのまま残るため、大きな問題となる。
本工程ではシリコン基板を洗浄液で処理してスライス工程由来の付着物を除去する。本工程で使用する洗浄液は、水媒体中で過酸化水素とアルカリの組合せ又は過酸化水素と炭酸塩との反応物を使用する起泡性洗浄液である。斯かる起泡性洗浄液の使用により、非常に除去され難い上記の付着物を容易に除去することが出来る。過酸化水素は以下の反応式(2)に示すように分解して酸素を発生するが、この分解反応はアルカリの触媒作用によって促進され発熱する。スライス工程由来のクーラント成分等の有機性付着物は、過酸化水素の分解により生ずる酸素ガスによる酸化若しくはリフトオフ効果によって、シリコン基板表面より除去される。
[化2]

2H → 2HO + O↑ 反応式(2)
洗浄液の調製には、通常、濃度35wt%の過酸化水素水が使用される。一方、アルカリとしては特に制限されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。これらの中では、洗浄液が空気中の炭酸ガスの影響を受けず、長時間に亘って安定しているとの観点から、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)等の炭酸塩が好ましい。また、過酸化水素と炭酸塩との反応物としては、過炭酸ナトリウム(2NaCO・3HO)、過硼酸ソーダ(BNaO・4HO)等が挙げられる。これらは酸素系酸化漂白剤として知られている。過酸化水素と炭酸塩との反応物は水中において分解して酸素を発生する。過炭酸ナトリウムは、一般的な酸素系酸化漂白剤でありコスト面でも有利である。
水媒体中の過酸化水素の濃度は、通常0.1〜35重量%、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%である。水媒体中のアルカリの濃度は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%である。洗浄液温は、通常10〜70℃、好ましくは20〜40℃であり、洗浄時間(浸漬時間)は通常1〜30分である。
洗浄液を繰返し使用することは、薬液コスト、廃棄物処理コスト及び環境配慮の観点からも好ましい。一方、洗浄効果を安定的に維持するには過酸化水素の分解速度をコントロールして、酸素による洗浄効果を維持する必要がある。過酸化水素の分解速度を必要以上に速めると、その消費量が増大しコストアップになるため好ましくない。本発明の方法に従えば分解して減少した過酸化水素は再補充することで洗浄液を繰返し使用することが可能であり、さらに、アルカリとして炭酸塩を使用した場合、または、起泡性洗浄液として過炭酸ナトリウムを使用した場合は、空気中の炭酸ガスの影響を受けないためアルカリの濃度が変化せず、過酸化水素の分解速度を一定に保つことができる。また、過酸化水素の分解速度が一定に維持できることで、洗浄液の濃度管理が容易になるという利点もある。
図2に減少した過酸化水素を再補充した例を示す。洗浄液は室温下で水に対して炭酸ナトリウム濃度が10.4重量%、過酸化水素濃度が3.0重量%となるようにそれぞれを添加し、均一に混合しながら40℃に調整することで作製した。この洗浄液を40℃で8時間保持したところ炭酸ナトリウム濃度が10.4重量%、過酸化水素濃度が0.6重量%であった。再度、炭酸ナトリウム濃度濃度が10.4重量%、過酸化水素濃度が3.0重量%となるように濃度を調整し同様に8時間保持したところ炭酸ナトリウム濃度が10.4重量%、過酸化水素濃度が0.2重量%であった。結果から、減少した過酸化水素は減少分を再補充することで繰返し使用することが可能で、再補充後も過酸化水素の分解速度が安定していることが分かる。
<エッチング工程>
エッチング工程はマクロエッチング工程とテクスチャーエッチング工程とが例示されているが、前述の従来技術と同様に、本発明においてもマクロエッチング工程は任意の工程である。
アルカリ性のエッチング液のアルカリ成分としては、従来公知の方法と同様に、水酸化アルカリが使用できる。水酸化アルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム等が挙げられ、これらを単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。この中でも、特に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムは、入手が容易でコスト面でも優れるため好適である。また、これらの水酸化アルカリは任意の割合で混合して使用してもよい。
テクスチャーエッチング工程で使用する非アルコール系のエッチング抑制剤としては、従来公知のものを制限なく使用することが出来る。例えば、カプリル酸またはラウリン酸を主成分とする界面活性剤(特開2002−57139号公報参照)、1個のカルボキシル基を有する炭素数12以下のカルボン酸又はその塩(国際公開第06/046601号パンフレット参照)、置換又は非置換のベンゼンカルボン酸又はその塩、置換又は非置換のベンゼンスルホン酸又はその塩(特開2007−258656号公報参照)等が挙げられる。その他、アルキルスルホン酸又はその塩、アルキルスルホン酸エステル又はその塩、置換又は非置換のベンゼンスルホン酸エステル又はその塩、R-O(CH-CH-O)-Hで表されるポリエチレンオキサイド(Rは分岐していてもよい炭素数8〜20のアルキル基、nは3〜20の整数を表す)も使用し得る。
ところで、脂肪族カルボン酸を使用する方法では、原料コストが高く、廃液処理の際に中和すると脂肪族カルボン酸が遊離し、別途油水分離工程が必要となると共に特有の悪臭が生じるという問題がある。また、廃液処理にコストがかかり、製造コストの上昇にもつながるといった問題がある。また、ベンゼン環を含む鎖状構造の化合物は、単純な鎖状構造の化合物に対して、エッチングの抑制効果が強いため、添加剤濃度を少なくする必要がある。しかしながら、添加剤濃度が少なすぎると、エッチング液中の濃度管理が難しく、再現性良く微細なテクスチャー構造を有するシリコン基板を製造することが困難となる。
従って、本発明において、エッチング抑制剤としては、シリコン基板状に微細なテクスチャー構造を再現性良く形成することができ、かつ、廃液処理や作業環境の面を含めて工業的に満足できる性能を有するとの観点から、本願出願人によって既に提案された以下の一般式(1)で表される化合物(A)又は一般式(2)で表される化合物(B)が推奨される。
(一般式(1)中、Rは、炭素数4〜15のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基の何れかを表し、Xはスルホン酸基又そのアルカリ塩を表し、一般式(2)中、R及びRは、それぞれ、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基(何れも炭素数が1又は2であり、R及びRはの合計炭素数は0〜2個である)を表し、Xはスルホン酸基又はそのアルカリ塩を表す。)
先ず、一般式(1)で表される化合物(A)について説明する。アルキル基構造を有する化合物として、具体的には、ブチルスルホン酸、ペンチルスルホン酸、ヘキシルスルホン酸、ヘプチルスルホン酸、オクチルスルホン酸、ノニルスルホン酸、デシルスルホン酸、ウンデシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、トリデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸;アルケニル基構造を有する化合物として、ブテンスルホン酸、ペンテンスルホン酸、ヘキセンスルホン酸、ヘプテンスルホン酸、オクテンスルホン酸、ノネンスルホン酸、デセンスルホン酸、ウンデセンスルホン酸、ドデセンスルホン酸、トリデセンスルホン酸、テトラデセンスルホン酸、ペンタデセンスルホン酸;アルキニル基構造を有する化合物として、ブチンスルホン酸、ペンチンスルホン酸、ヘキシンスルホン酸、ヘプチンスルホン酸、オクチンスルホン酸、ノニンスルホン酸、デシンスルホン酸、ウンデシンスルホン酸、ドデシンスルホン酸、トリデシンスルホン酸、テトラデシンスルホン酸、ペンタデシンスルホン酸、等が挙げられる。
化合物(A)として、好適には一般式(1)中のRが、炭素数5〜12のアルキル基である化合物である。具体的には、ペンチルスルホン酸、ヘキシルスルホン酸、ヘプチルスルホン酸、オクチルスルホン酸、ノニルスルホン酸、デシルスルホン酸、ウンデシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸が挙げられる。この中でも、特に均一なテクスチャー構造が得られるという観点から、好ましくは、炭素数6〜10のアルキル基である化合物である。具体的には、ヘキシルスルホン酸、ヘプチルスルホン酸、オクチルスルホン酸、ノニルスルホン酸、デシルスルホン酸、である。
次に、一般式(2)で表される化合物(B)について説明する。一般式(2)におけるR及びRとしては水素原子またはアルキル基が好ましく、また、少なくとも4位に置換を有する化合物が好ましい。化合物(B)の具体例としては、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、4−エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4−ジメチルベンゼン酸スルホン酸ナトリウム、4−スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
なお、化合物(A)及び化合物(B)のアルカリ塩におけるアルカリ成分としては、第1族元素、第2族元素が使用でき、この中でも、特に水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムは、入手が容易でコスト面でも優れるため好適である。
エッチング抑制剤の濃度は、シリコン基板の表面に微細なテクスチャー構造を形成することができ、工業的に有効なエッチング速度の範囲で選択され、通常0.0001〜30重量%である。特に、一般式(1)で表される化合物(A)の場合の濃度は好ましくは0.0001〜10重量%、更に好ましくは0.0005〜10重量%、特に好ましくは0.001〜5重量%である。また、一般式(2)で表される化合物(B)の場合の濃度は、好ましくは0.01〜30重量%、更に好ましくは0.1〜20重量%であり、特に好ましくは1〜15重量%である。
上記範囲であると、当該基板の表面を異方エッチングし、当該基板の表面に微細なテクスチャー構造を形成することができる。エッチング抑制剤の濃度が、0.0001重量%未満の場合には、エッチングの抑制効果が不十分になるおそれがあり、また、濃度が低すぎ、エッチング液中の濃度管理が難しく再現性良く微細なテクスチャー構造を有するシリコン基板を製造することが困難となる。一方、30重量%より大きい場合には、薬剤コストが増加するとともに水洗回数、廃液処理コストが増すため好ましくない。
エッチング液において、エッチング液中の水酸化アルカリの濃度は、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5重量〜10重量%である。この範囲であれば、エッチングが好適に進行し、シリコン基板の表面に微細な凹凸構造を形成することができる。アルカリ濃度が0.1重量%未満では、エッチング速度が十分でない場合があり、50重量%より大きいと、水酸化アルカリが析出する場合がある。
本発明において、「シリコン基板」とは、単結晶シリコン基板および多結晶シリコン基板を含むが、単結晶シリコン基板が好ましく、特に表面の面方位が(100)である単結晶シリコン基板が好ましい。これは上述のようにアルカリ水溶液によるシリコン基板のエッチングは異方性エッチングであるため、表面の面方位が(100)のシリコン基板は、微細なテクスチャー構造を形成し低反射率のものが得られ、セル化した時のエネルギー変換効率が高くなるためである。エッチング抑制剤として化合物(A)又は化合物(B)を含むアルカリ性エッチング液は、単結晶シリコン基板、特に(100)面を表面に有する単結晶シリコン基板のエッチングに適する。
化合物(A)又は化合物(B)は、従来のエッチング抑制剤であるIPAと同等以上のエッチング抑制効果を示し、かつ、後述するように適用可能な濃度範囲が広いという利点がある。そのため、エッチング抑制剤として化合物(A)又は化合物(B)を含むアルカリ性エッチング液を使用することによって、シリコン基板の表面にピラミッド状の凹凸の大きさ、形状を好適な範囲に制御することができる。また、太陽電池の高効率化の手段として、テクスチャー工程に関連する項目は「光閉じ込め量の向上(低反射率)」及び「セル化におけるSi基板と電極間抵抗の低減」などであるが、本発明のエッチング液を使用することによって、平均サイズで2.0〜4.0μmの微細なピラミッド状の凹凸形成が可能となり、これらの項目が改善されて太陽電池の高効率化に寄与できることも特徴である。
テクスチャーエッチング工程で使用するエッチング液には、エッチング抑制剤以外に珪酸塩化合物を含有させることもできる。
珪酸塩化合物(C)として具体的には、オルト珪酸リチウム(LiSiO・nHO)、メタ珪酸リチウム(LiSiO・nHO)、ピロ珪酸リチウム(LiSi・nHO)、メタ二珪酸リチウム(LiSi・nHO)、メタ三珪酸リチウム(LiSi・nHO)、オルト珪酸ナトリウム(NaSiO・nHO)、メタ珪酸ナトリウム(NaSiO・nHO)、ピロ珪酸ナトリウム(NaSi・nHO)、メタ二珪酸ナトリウム(NaSi・nHO)、メタ三珪酸ナトリウム(NaSi・nHO)、オルト珪酸カリウム(KSiO・nHO)、メタ珪酸カリウム(KSiO・nHO)、ピロ珪酸カリウム(KSi・nHO)、メタ二珪酸カリウム(KSi・nHO)、メタ三珪酸カリウム(KSi・nHO)が挙げられる。
珪酸塩化合物にはシリコンの溶解を抑制する作用があるため、エッチング液に珪酸塩化合物を含有させることにより、エッチング抑制剤のエッチング抑制作用を補助することができ、テクスチャー構造の形成に適したエッチング速度の制御がより適切に行うことが可能となる。
珪酸塩化合物としては、上記の化合物の他、シリコン基板を水酸化アルカリ水溶液によりエッチングして得られた生成物、水酸化アルカリとシリコンもしくは二酸化珪素との反応生成物などであってもよい。
珪酸塩化合物の濃度が高すぎると、エッチング速度が著しく低下すること及び液粘度の上昇、更には珪酸塩化合物の析出が起こり易く、当該基板を正常にエッチングすることができなくなり、太陽電池用基板としての使用が困難となる。このため、エッチング液中の珪酸塩濃度は、Si換算濃度で10重量%以下の範囲が好適である。ここで、「Si換算濃度」とは、珪酸塩に含まれるシリコン(Si)原子換算での濃度を意味する。
なお、珪酸塩化合物はシリコン基板のエッチングの副生成物としても生成するため、繰り返しのエッチング操作によりエッチング液中の珪酸塩化合物の濃度が、Si換算濃度で10重量%を超える場合には、他の成分を補充して希釈するか、溶液を交換することが好ましい。
なお、エッチング液には、他の成分として、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、上記以外の成分、例えば、緩衝剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤などを含有していてもよい。
エッチング液は、常法によって、必要な成分を溶媒である水に溶解することで得ることができる。エッチング液の溶媒としての水は、不純物を除去した水が好ましく、通常はイオン交換水または蒸留水が好適に用いられる。具体的には、25℃で測定した電気伝導度が1mS/cm以下(特に100μS/cm以下)のイオン交換水または蒸留水が好適である。
エッチング液の使用温度は、特に限定されないが、通常0〜100℃であり、エッチング効率の観点から、好ましくは80〜100℃である。エッチング時間も特に限定されないが、通常1〜120分、好ましくは10〜40分である。
<エッチング抑制剤除去工程>
エッチング抑制剤は前述の非アルコール系のエッチング抑制であり、シリコン基板のピラミッド状の凹凸構造の中に残存している。本工程では、シリコン基板を洗浄液で処理してシリコン基板の表面に残存するエッチング抑制剤を除去する。本工程で使用する洗浄液は、水媒体中で過酸化水素とアルカリの組合せ又は過酸化水素と炭酸塩との反応物を使用する起泡性洗浄液である。その詳細および好ましい態様は、前述のスライス工程由来の付着物を除去する工程における場合と同じである。洗浄液温は、通常10〜70℃、好ましくは20〜40℃であり、洗浄時間(浸漬時間)は通常1〜30分である。
<スライス工程由来のコンタミ金属除去工程>
スライス工程由来のコンタミ金属は次のようにして生じる。すなわち、太陽電池用基板のスライスには通常マルチワイヤーソーが用いられるが、その方式としては、炭化ケイ素砥粒スラリーを切削部位に供給しながら加工を行なう遊離砥粒方式、表面に予めダイヤモンド砥粒を固定化したワイヤーをクーラントと共に用いる固定砥粒方式が一般的である。そして、遊離砥粒用ワイヤーにおいては、珪素鋼線の表面に銅、亜鉛から成る真鍮めっき、固定砥粒ワイヤーにおいては、ダイヤモンド砥粒を表面に固定化させるために、更にニッケルめっきが施されている。
スライス加工時にワイヤーはウェーハ表面との摩擦で磨耗するためアズスライスシリコン基板表面には上記の金属が付着している。この金属不純物はテクスチャーエッチング時にエッチング液に溶け出すが、一部の金属不純物は液中で基板表面に再付着するためテクスチャーエッチング後においても基板表面に金属不純物が残存する。これらの金属不純物はpn接合形成させるためのドーパントの熱拡散の際にシリコン基板中に拡散し、ライフタイムを悪化させる等、変換効率低下の原因となるため、可能な限り除去することが好ましい。
本工程では、シリコン基板を洗浄液で処理してスライス工程由来のコンタミ金属を除去する。本工程で使用する洗浄液は水媒体中で弗化水素と鉱酸の組合せを使用する洗浄液である。鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸が挙げられるが、典型的には塩酸が使用される。水媒体中の弗化水素酸の濃度は、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.01〜5重量%である。水媒体中の鉱酸の濃度は、通常0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜80重量%、更に好ましくは1.0〜70重量%である。洗浄液温は通常20〜40℃であり、洗浄時間(浸漬時間)は通常1〜30分である。
<水洗工程および湯洗工程>
本工程で使用する水は、エッチング液の調整溶媒に使用する水と同様に不純物を除去した水が好ましく、通常はイオン交換水または蒸留水が好適に用いられる。これらの詳細は、前述の通りである。水洗工程における洗浄水の温度は、通常20〜40℃であり、洗浄時間(浸漬時間)は、通常1〜30分である。湯洗工程における洗浄水の温度は、通常60〜80℃であり、洗浄時間(浸漬時間)は、通常1〜30分である。湯洗工程を行うことにより、より一層の清浄化が図られる。
<スライス工程由来の付着物を除去する工程〜湯洗工程>
前記の各工程は、複数枚のアズスライスシリコン基板を収容したキャリアを各工程の処理槽に浸漬することによって行われる。キャリアの移動動作にはロボット機構を利用することも可能である。
<乾燥工程>
本工程においては、ドーパントの熱拡散が阻害されにいように、基板に付着した水分を乾燥して除去する。乾燥方法は、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥、スピンドライ等の公知の乾燥手段を適宜に組み合せた方法が採用される。装置コスト及び乾燥効率の観点から、加熱送風乾燥が好ましい。
以下、参考例および実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
参考例1〜21及び比較参考例1〜3(エッチング抑制剤の評価):
<アズスライスシリコン基板>
アズスライスシリコン基板として、単結晶シリコンインゴットを切断加工して作製した、厚さ約180μm、156×156mmサイズの単結晶シリコン基板(表面結晶面:(100)面)を用いた。但し、参考例1〜19、21、比較参考例1〜3、後述の実施例1、3〜13については50×50mmサイズを使用した。
<マクロエッチング液の調液とマクロエッチング>
(参考例2〜8、11、後述の実施例3〜5及び比較例7)
ステンレス容器中に所定量のイオン交換水を秤取り、これに水酸化ナトリウム濃度が25重量%になるように攪拌下で発熱に注意しながら、所定量の水酸化ナトリウム(フレーク状)を徐々に添加、溶解して調液した。これを80℃に加温してマクロエッチング液として使用した。但し、参考例8については水酸化ナトリウム濃度が48重量%、比較例7については水酸化ナトリウム濃度が3.5重量%となるように調液した。
アズスライスシリコン基板を80℃に加温された25重量%の水酸化ナトリウム溶液に約15分浸漬し、シリコン基板表面の付着物及び加工変性層を除去した。但し、参考例8については48重量%の水酸化ナトリウム溶液に約10分、比較例7については3.5重量%の水酸化ナトリウム溶液に約2分浸漬した。
<テクスチャーエッチング液の調液とテクスチャーエッチング>
各諸例で使用したエッチング液は、室温で水に溶解した水酸化アルカリに表1及び表2に示す化合物を添加して、完全に溶解するまで攪拌し、表1及び表2に示すそれぞれのエッチング温度まで加熱することで調液した。珪酸塩化合物は、シリコン基板を水酸化アルカリに浸漬して副生する珪酸塩化合物がSi換算濃度で所定濃度になるまでエッチングを繰り返し実施することにより調液した。
前述の単結晶シリコン基板(表面結晶面:(100)面)を使用し、表1及び表2に示す組成のエッチング液に浸漬して、表1及び表2に示す条件でテクスチャーエッチングを行った。表1及び表2中のエッチング条件に示したエッチング量は(μm)は、テクスチャーエッチング前後のシリコン基板の重量を測定し、その重量差から求めた基板片面あたりのエッチング厚みであり、エッチングレート(μm/min)とは、前記エッチング量をエッチング時間で除したエッチング速度を表す。
<テクスチャーエッチングの評価>
以下の方法によりエッチング後のシリコン基板の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
(1)シリコン基板の外観評価:
目視により、以下の基準に沿って評価した。
◎:基板全面が一様にエッチングされて、基板全面としてエッチング均一性が高い。
○:基板全面が一様にエッチングされている。
△:わずかな斑点又はムラが存在するが、基板全面としてエッチング均一性は高い。
×:斑点又は、ムラが確認される。
(2)テクスチャー平均サイズ:
テクスチャー平均サイズとは、単位面積あたりのピラミッド個数から算術的に得たピラミッドの平均辺長を意味する。具体的には次の方法で算出する。すなわち、先ず、テクスチャー処理済み基板の任意の90×120μmの領域を拡大観察し、当該領域に存在するピラミッドの頂点個数を計数する。次に、前述の計数領域の面積をピラミッド頂点個数で除し、その平方から得られるピラミッドの平均辺長をテクスチャー平均サイズとする。計算式以下に示す。
[数1]
テクスチャー平均サイズ=√A/N
A(μm):測定領域(90×120μm)の面積
N(個) :測定領域(90×120μm)内のピラミッドの頂点個数
(3)光反射率:
紫外・可視・近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−3150)を使用し、測定波長600nmにおける表面反射率測定した。
(4)電子顕微鏡観察:
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−6510)を使用して行った。
参考例1〜21のエッチング液を使用してエッチングを行ったシリコン基板の外観の均一性は、従来のIPAを使用したエッチング液(比較参考例3)と同等以上であった。さらに、電子顕微鏡観察によって、これらのシリコン基板の表面に平均サイズ2.0〜4.0μmの微細なテクスチャー構造が形成されているのが確認された。また、反射率もそれぞれ太陽電池として使用でき得る十分な値であった。
一方、エッチング抑制剤を添加しなかった比較参考例1及び2は、鏡面に近い外観であり、電子顕微鏡による観察でも微細なテクスチャー構造は確認されなかった。
実施例1〜17:
<過酸化水素−アルカリ洗浄液の調製>
炭酸ナトリウムと過酸化水素の濃度35重量%の過酸化水素水を使用し、室温下でイオン交換水に対して上記の各成分を添加し、炭酸ナトリウム濃度が2.7重量%、過酸化水素水濃度が3.0重量%となるように調節した。そして、均一に混合しながら40℃に加温して洗浄液として使用した。
<弗化水素−鉱酸洗浄液の調製>
濃度が55重量%のふっ化水素酸と塩化水素の濃度が35重量%の濃塩酸を使用し、室温下でイオン交換水に対して上記の各成分を添加し、ふっ化水素酸濃度が5.0重量%、塩化水素濃度が5.0重量%となるように調節した。そして、均一に混合しながら30℃に加温して洗浄液として使用した。
<水洗工程および湯洗工程の洗浄水>
各工程間の水洗工程および湯洗工程は、イオン交換水を使用して行い、水洗工程の温度は25℃、時間は3分、湯洗工程の温度は80℃、時間は3分とした。
図1に示すフローチャートに従って、表5−1〜表5−3に記載の条件で同表に示す工程を行った。シリコン基板の評価結果を表6に示す。
比較例1〜7:
表7−1〜表7−3に記載の条件で同表に示す工程を行った。シリコン基板の評価結果を表8に示す。
<シリコン基板の評価>
目視での外観評価、電子顕微鏡観察、抑制剤の残存測定、ならびに表面反射率測定を行った。なお、抑制剤の残存測定には飛行時間二次イオン質量分析計(ION−TOF社製、TOF−SIMS IV)を使用した。その他の項目の測定方法は、参考例と同じである。
実施例1〜13において、テクスチャー工程の前段で本発明の起泡性洗浄液を用いてスライス工程由来の付着物除去処理を実施したものは当該処理を実施しなかった比較例1〜5と比較して、テクスチャー工程で得られたシリコン基板の外観均一及び反射率が優れていることが確認された。図3及び図4にそれぞれ実施例2及び比較例1で得られたシリコン基板の外観写真を示す。また、図5及び図6にそれぞれ実施例4及び実施例17で得られたシリコン基板のSEM写真を示す。
実施例14において、テクスチャー工程の後段で本発明の起泡性洗浄液を用いて、エッチング抑制剤の除去処理を実施したものは、TOF−SIMS分析結果からエッチング抑制剤の残存量が、当該処理を実施しなかった比較例6と比較して、著しく低減されており、抑制剤を使用していない表8中の比較例7と同等であることから本発明の起泡性洗浄液の有効性が確認された。
実施例15〜17において、本発明の起泡性洗浄液を用いてテクスチャー工程の前段でスライス工程由来の付着物除去処理を実施、更にテクスチャー工程の後段でエッチング抑制剤の除去処理を実施したものは得られるシリコン基板の外観均一性、反射率、エッチング抑制剤の残存など全ての評価項目で優れた結果が得られた。
本発明によれば、太陽電池用シリコン基板の表面に清浄で均一なテクスチャー構造を形成することができるため、外観均一性の優れた太陽電池用シリコン基板が得られる。また、テクスチャー平均サイズが2.0〜4.0μmの微細な凹凸の形成が可能であり、当該シリコン基板を使用した太陽電池の高効率化を実現することができる。

Claims (20)

  1. アズスライスシリコン基板を用いて表面にピラミッド状の凹凸構造を有する太陽電池用シリコン基板の製造方法であって、非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液でシリコン基板を処理してその表面にピラミッド状の凹凸構造を形成するテクスチャー工程と、当該テクスチャー工程の前段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してスライス工程由来の付着物を除去する工程とを包含し、スライス工程由来の付着物を除去する工程において、上記の洗浄液が水媒体中で過酸化水素とアルカリの組合せ又は過酸化水素と炭酸塩との反応物を使用する起泡性洗浄液であることを特徴とする太陽電池用シリコン基板の製造方法。
  2. アズスライスシリコン基板を用いて表面にピラミッド状の凹凸構造を有する太陽電池用シリコン基板の製造方法であって、非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液でシリコン基板を処理してその表面にピラミッド状の凹凸構造を形成するテクスチャー工程と、当該テクスチャー工程の後段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してシリコン基板の表面に残存するエッチング抑制剤を除去する工程とを包含し、エッチング抑制剤除去工程において、上記の洗浄液が水媒体中で過酸化水素とアルカリの組合せ又は過酸化水素と炭酸塩との反応物を使用する起泡性洗浄液であること特徴とする太陽電池用シリコン基板の製造方法。
  3. アズスライスシリコン基板を用いて表面にピラミッド状の凹凸構造を有する太陽電池用シリコン基板の製造方法であって、非アルコール系のエッチング抑制剤を含有するアルカリ性のエッチング液でシリコン基板を処理してその表面にピラミッド状の凹凸構造を形成するテクスチャー工程と、当該テクスチャー工程の前段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してスライス工程由来の付着物を除去する工程と、上記テクスチャー工程の後段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してシリコン基板の表面に残存するエッチング抑制剤を除去する工程とを包含し、上記のスライス工程由来の付着物を除去する工程と上記のエッチング抑制剤除去工程における洗浄液が水媒体中で過酸化水素とアルカリの組合せ又は過酸化水素と炭酸塩との反応物を使用する起泡性洗浄液であることを特徴とする太陽電池用シリコン基板の製造方法。
  4. 過酸化水素水とアルカリの組合せから成る起泡性洗浄液において、アルカリが炭酸塩である請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
  5. 炭酸塩が炭酸ナトリウムである請求項4に記載の製造方法。
  6. 過酸化水素とアルカリの組合せから成る起泡性洗浄液において、水媒体中の過酸化水素の濃度が0.1〜35重量%であり、アルカリの濃度が0.1〜20重量%である請求項1〜5の何れかに記載の製造方法。
  7. エッチング抑制剤として、アルキルカルボン酸又はその塩、置換又は非置換のベンゼンカルボン酸又はその塩、置換又は非置換のベンゼンスルホン酸又はその塩、置換又は非置換のベンゼンスルホン酸エステル又はその塩、アルキルスルホン酸又はその塩、アルキルスルホン酸エステル又はその塩、置換又は非置換のベンゼンスルホン酸エステル又はその塩、R-O(CH-CH-O)-Hで表されるポリエチレンオキサイド(Rは分岐していてもよい炭素数8〜20のアルキル基、nは3〜20の整数を表す)の群から選択される1種又は2種以上を使用する1〜6の何れかに記載の製造方法。
  8. エッチング抑制剤として、以下の一般式(1)で表される化合物(A)又は一般式(2)で表される化合物(B)を使用する1〜6の何れかに記載の製造方法。
    (一般式(1)中、Rは、炭素数4〜15のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基の何れかを表し、X1はスルホン酸基又はそのアルカリ塩を表し、一般式(2)中、R及びRは、それぞれ、同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基(何れも炭素数が1又は2であり、R及びRはの合計炭素数は0〜2個である)を表し、Xはスルホン酸基又はそのアルカリ塩を表す。)
  9. 一般式(1)で表される化合物化合物(A)のRが炭素数5〜12のアルキル基である請求項8に記載の製造方法。
  10. 一般式(2)で表される化合物(B)が少なくとも4位に置換基を有する化合物である請求項8に記載の製造方法。
  11. エッチング抑制剤の濃度が0.0001〜30重量%である請求項1〜10に記載の製造方法。
  12. エッチング液のアルカリ成分が水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである請求項1〜11の何れかに記載の製造方法。
  13. アルカリの濃度が0.1〜50重量%である請求項1〜12の何れかに記載の製造方法。
  14. エッチング液が珪酸塩化合物を含有する請求項1〜13の何れかに記載の製造方法。
  15. 珪酸塩化合物がナトリウム又はカリウムの珪酸塩である請求項14に記載の製造方法。
  16. 珪酸塩化合物の濃度がSi換算濃度として10重量%以下である請求項14又は15に記載の製造方法。
  17. 前記テクスチャー工程の後段に設けられ、シリコン基板を洗浄液で処理してスライス工程由来のコンタミ金属を除去工程とを包含し、スライス工程由来のコンタミ金属を除去する工程において、上記の洗浄液が水媒体中で弗化水素と鉱酸の組合せを使用する洗浄液である請求項1〜16の何れかに記載の製造方法。
  18. 弗化水素と鉱酸の組合せから成る洗浄液において、鉱酸が塩酸である請求項1〜17の何れかに記載の製造方法。
  19. 弗化水素と鉱酸の組合せから成る洗浄液において、水媒体中の弗化水素酸の濃度が0.01〜20重量%であり、鉱酸の濃度が0.1〜90重量%である請求項18又は19に記載の製造方法。
  20. ピラミッド状の凹凸の平均サイズが2.0〜4.0μmである1〜19の何れかに記載の製造方法。
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