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JP2013194126A - 活性エネルギー線硬化性組成物および硬化物、ならびにこれらを用いた画像表示装置 - Google Patents

活性エネルギー線硬化性組成物および硬化物、ならびにこれらを用いた画像表示装置 Download PDF

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JP2013194126A JP2012062158A JP2012062158A JP2013194126A JP 2013194126 A JP2013194126 A JP 2013194126A JP 2012062158 A JP2012062158 A JP 2012062158A JP 2012062158 A JP2012062158 A JP 2012062158A JP 2013194126 A JP2013194126 A JP 2013194126A
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Hiroyuki Sakane
裕之 坂根
Hitoshi Tamai
仁 玉井
Mitsuhiro Hori
充啓 堀
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Kaneka Corp
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Abstract

【課題】基材に塗布もしくは他の基材と貼り合わせた活性エネルギー線硬化性組成物の一部分が遮光されていても、露光部分への活性エネルギー線照射のみで遮光部分を広範囲に硬化できる活性エネルギー線硬化性組成物、および硬化物、さらには活性エネルギー線硬化性組成物で貼り合わせられた画像表示装置を提供する。
【解決手段】重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)、光ラジカル開始剤(B)、光カチオン発生剤(C)、過酸化物(D)、および、メルカプト基を少なくとも3基有する化合物(E)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を用いることで達成される。
【選択図】なし

Description

本発明は、基材に塗布もしくは他の基材と貼り合わせた活性エネルギー線硬化性組成物の一部分が遮光されていても、露光部分への活性エネルギー線照射のみで遮光部分を広範囲に硬化できる活性エネルギー線硬化性組成物、および硬化物、さらには活性エネルギー線硬化性組成物で貼り合わせられた画像表示装置に関する。
スマートフォン、携帯端末、タブレット端末などタッチパネル式のディスプレイ、フラットディスプレイ形のテレビの視認性、耐衝撃性、耐久性向上を目的に最前面のカバーボードとモジュール間、カバーボードとタッチパネル間、或いはタッチパネルとモジュール間を液状の樹脂で充填、硬化させる工法が提案されている。近年、これらの貼り合わせにおいて、液状または半液状の反応性オリゴマーまたは樹脂に活性エネルギー線または熱を作用させて硬化、接着性を発現させる反応性接着剤を用いることが、タクトタイム、段差追従性、速硬化性などの点で有利とされている。一方、これらディスプレイのカバーボードには、映像のコントラスト向上、IC回路の隠蔽、意匠性の向上など種々の目的のために、カバーボードの周囲にブラックマトリックスが施されている場合がある。このように、材料を活性エネルギー線照射で硬化させるときに活性エネルギー線硬化性材料の一部が遮光されている場合、遮光されている部分は視認側からの活性エネルギー線照射のみでは従来十分に硬化させることができず、未硬化部分の剥離、未硬化成分の漏出や臭気、ならびにモジュールの隙間に未硬化成分が浸入することによる表示部の汚染など製品信頼性に問題があった。
遮光された部分を硬化させる方法として、例えば特許文献1ではラジカル硬化性の硬化性組成物に活性エネルギー線照射したのち熱で完全に硬化させる方法、あるいは特許文献2では湿気反応性の官能基を有するポリマーを共存させる方法などが提案されているが、いずれも暗部硬化にかかる時間が長く、さらに前者は熱による基材へのダメージ、後者は2種類の硬化方法に由来する硬化ムラなどの課題があった。
また特許文献3では、外縁に紫外線非透過領域を有するカバーボードと液晶モジュールで紫外線硬化性液状物を挟み、カバーボードの視認側から紫外線照射した後に側面から照射し、紫外線非透過部分を硬化する方法が提案されているが、側面照射を行うために照射装置の構成が複雑になるため、さらなる改善が求められていた。
特開2009−186957 特開2010−248347 特開2009−86656
本発明は、基材に塗布もしくは他の基材と貼り合わせた活性エネルギー線硬化性組成物の一部分が遮光されていても、露光部分への活性エネルギー線照射のみで、露光部分と隣接した遮光部分を広範囲に速硬化できる活性エネルギー線硬化性組成物、および硬化物、さらには活性エネルギー線硬化性組成物で貼り合わせられた画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す(A)〜(E)成分をすべて含む硬化性組成物について、露光部分への活性エネルギー線照射のみで、露光部に隣接した遮光部分も速硬化できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)、光ラジカル開始剤(B)、光カチオン発生剤(C)、過酸化物(D)、および、メルカプト基を少なくとも3基有する化合物(E)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
(A)成分が、重合体もしくはオリゴマーであることが好ましく、ビニル系重合体であることがより好ましい。
(A)成分のビニル系重合体がポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、並びに(メタ)アクリル酸系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造されるものである重合体から少なくとも一種選択されることが好ましい。
(A)成分における分子末端の重合性の炭素−炭素二重結合が、一般式(1)で表されることが好ましい。
−Z−C(=O)−C(R1)=CH2(1)
(式中、R1は水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、Zはヘテロ原子、NR2(R2は、水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基)から選択される基である。)
(C)成分が、[(R3a(R4b(R5c(R6dW]u+(X)u- (式中、Wは、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、F、Cl、Br、I、Ti、Zr、Hf、Fe、Ru、Osであり、R3、R4、R5、およびR6は同一または異なる有機基である。a、b、c、およびdはそれぞれ0〜3の整数であって(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Xは、ハロゲン元素、もしくは[MZ(v+u)]で示される無機あるいは有機酸の対塩基、あるいは錯体である。Mは前記酸の対塩基あるいは錯体の中心原子を構成する元素であり、O、S、Se、Te、C、Si、Ge、Sn、N、P、As、Sb、Bi、B、Al、Ga、In、Tl、Ti、Zr、Hf、Sc、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Coである。ZはM上の置換基、あるいはMに配位する配位子で、ハロゲン原子または有機基である。uはハロゲン元素、前記酸の対塩基、もしくは錯体イオンの正味の電荷である。vはMの原子価である。)であることが好ましい。
(D)成分が有機過酸化物であることが好ましく、ジアシルパーオキサイドであることがより好ましい。
(B)成分の添加量が(A)成分100重量部に対して0.025重量部〜2重量部であり、(C)成分の添加量が(A)成分100重量部に対して0.25重量部〜4重量部であり、(D)成分の添加量が、(A)成分100重量部に対して0.5重量部〜3重量部であり、(E)成分の添加量が、重合体(A)100重量部に対して0.25重量部〜2重量部であることが好ましい。
上記活性エネルギー線硬化性組成物に、活性エネルギー線を照射することによって得られる硬化物に関する。
カバーボード/表示モジュール間またはタッチセンサー付カバーボード/表示モジュール間に上記の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布、貼り合わせて製造される画像表示装置に関する。
上記画像表示装置を搭載した電気・電子製品に関する。
本発明により、露光部への活性エネルギー線照射のみで、硬化性組成物内で発生したラジカルが連鎖的に伝播することで、暗部の硬化性を向上させることができる。その結果、遮光部からの未硬化樹脂の漏出および臭気を抑えることができ、硬化物を含む製品の信頼性向上につながる。本発明の硬化性組成物は活性エネルギー線硬化性接着剤として有用であり、特に、フラットパネルディスプレイ表示モジュールとカバーボード間充填用硬化性組成物として用いた場合、カバーボードの視認側からの照射のみで、遮光部分であるブラックマトリックスの裏面を速硬化できるため、本発明の効果を最大限に発揮することができる。
ダブルYのパターン図 カバーガラスとソーダガラスとの貼り合わせの断面図 カバーガラスとLCD(液晶ディスプレイ)との貼り合わせの断面図
本発明は、重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)、光ラジカル開始剤(B)、光カチオン発生剤(C)、過酸化物(D)、および、メルカプト基を少なくとも3つ有する化合物(E)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物である。
以下、本発明について詳しく説明する。
<(A)成分>
本発明の硬化性組成物は、重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)を含有する。
(A)成分としては、低分子量化合物、オリゴマー、重合体の何れを含んでいても構わないが、重合体もしくはオリゴマーを含むことが好ましい。ここで述べるオリゴマーとは、有機化合物の繰り返し単位を伴う構造で、2〜100の繰り返し単位からなる化合物を指し、重合体とは、重合体主鎖に化合物の繰り返し単位を伴う構造で、100以上の繰り返し単位からなる化合物を指す。重合体の主鎖は特に限定されないが、ビニル系重合体が好ましい。前記のビニル系重合体以外の重合体としては、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリオキシアルキレン、ポリシロキサンなどが挙げられる。
上記ビニル系重合体としては、炭化水素系重合体である、ポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、並びに、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造される重合体が好ましい。ここで「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。さらに、ビニル系重合体としては、ポリイソブチレン、(メタ)アクリル系モノマーを主として重合して製造された(メタ)アクリル系重合体が好ましく、(メタ)アクリル系重合体がより好ましい。(メタ)アクリル系重合体としては、アクリル系重合体が好ましく、アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるアクリル酸エステル系重合体がより好ましい。
上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;などが挙げられる。
アクリロニトリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩などが挙げられる。
フッ素含有ビニル系モノマーとしては、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
ケイ素含有ビニル系モノマーとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
その他のビニル系重合体を構成するモノマーとしては、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレンなどのアルケン類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどがあげられる。
(A)成分がオリゴマーもしくは重合体の場合、分子量分布(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比)には、特に限定はないが、好ましくは1.8未満、より好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.5以下、特別に好ましくは1.4以下、最も好ましくは1.3以下である。
なお、本発明におけるGPC測定の際には、通常は、クロロホルムまたはテトラヒドロフランを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用し、分子量の値はポリスチレン換算値で求めている。
(A)成分がオリゴマーもしくは重合体の場合、数平均分子量の下限は、好ましくは500、より好ましくは3,000であり、上限は、好ましくは100,000、より好ましくは40,000である。分子量が500未満であると、重合体の本来の特性が発現されにくくなる傾向があり、100,000をこえると、ハンドリングが困難になりやすい傾向がある。
化合物(A)は、重合性の炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物であるが、一般式(1)で表される置換基を1個以上有することが反応性の点で好ましい。
−Z−C(=O)−C(R1)=CH2(1)
(式中、R1は水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、Zはヘテロ原子、NR2(R2は、水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基)から選択される基である。)
さらに、上記置換基が、分子末端に有することが好ましく、末端のみに有することがより好ましい。
一般式(1)中のR1は水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基を表す。ここで言う置換された炭化水素基とは、炭化水素基上の水素原子がヘテロ原子を有する基によって置換された基を言う。R1としては、特に限定されず、例えば、水素原子;メチル基、エチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基が挙げられる。これらの中では、水素原子またはメチル基が原料の入手性から好ましく、さらに重合反応性の高さから、水素原子がより好ましい。
一般式(1)中のZは、特に限定されず、例えば、酸素原子;硫黄原子;−NH−、−NCH3−などのアミノ基が挙げられる。これらの中では、導入の容易さから、酸素原子、−NH−基が好ましく、酸素原子がより好ましい。
一般式(1)で表わされる置換基の数は、特に限定されないが、(A)成分がオリゴマーもしくは重合体の場合、化合物(A)同士が架橋するという点から、1分子あたり平均1個未満であると硬化性が低くなる傾向があるため、平均1個以上が好ましい。ただし、1分子あたり平均1個以上の一般式(1)で表わされる置換基を有する化合物(A)に対して、硬化物の硬度、柔軟性を調整するために、1分子あたり平均1個未満の一般式(1)で表わされる置換基を有する有機重合体を添加してもよい。また、一般式(1)で表わされる置換基は分子の側鎖、および/または、末端のいずれに存在していてもかまわないが、架橋点間分子量を均一かつ大きく(好ましくは500〜100000)にすることで良好なゴム弾性が得られるという観点から、分子の末端に存在することが好ましく、分子の末端のみに存在することがより好ましい。
低分子量化合物としては、重合性の炭素−炭素二重結合を有するものであればいずれでも構わないが、上記一般式(1)で表される置換基を1個以上有することが好ましく、上記(メタ)アクリル系モノマーである事がより好ましい。
<(A)成分の製造方法>
(A)成分の製法については特に限定はないが、(A)成分がビニル系重合体の場合には一般に、アニオン重合あるいはラジカル重合によって製造される。中でもモノマーの汎用性あるいは制御の容易さからラジカル重合が好ましい。ラジカル重合の中でも、リビングラジカル重合あるいは連鎖移動剤を用いたラジカル重合によって製造されるのが好ましく、特に前者が好ましい。
(A)成分の製造に用いられるラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いて、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と、末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類することができる。
「一般的なラジカル重合法」は簡便な方法であるが、この方法では特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使う必要があり、逆に少量の使用ではこの特定の官能基が導入されない重合体の割合が大きくなるという問題がある。また、フリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く粘度の高い重合体しか得られないという問題もある。
「制御ラジカル重合法」は、さらに、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合を行なうことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに、分類することができる。
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対してかなり大量の特定の官能基を有する連鎖移動剤が必要であり、処理も含めて経済面で問題がある。また、前記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の高い重合体しか得られないという問題もある。
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御が難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量を自由にコントロールすることができる。
したがって、「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、前記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましいものである。
なお、リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。
「リビングラジカル重合法」は、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、例えばジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されるようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、マクロモレキュルズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物などを開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、前記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲンなどを末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としては、さらに好ましい。
前記原子移動ラジカル重合法としては、例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュルズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁、サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号パンフレット,WO97/18247号パンフレットあるいはSawamotoら、マクロモレキュルズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁などに記載の方法があげられる。
本発明において、これらのうちのどの方法を使用するかには特に制約はないが、基本的には制御ラジカル重合法が利用され、さらに制御の容易さなどからリビングラジカル重合法が好ましく、特に原子移動ラジカル重合法が好ましい。
まず、制御ラジカル重合法のうちの一つ、連鎖移動剤を用いた重合法について説明する。
連鎖移動剤(テロマー)を用いたラジカル重合には特に限定はないが、本発明に適した末端構造を有するビニル系重合体を得る方法としては、つぎの2つの方法が例示される。
特開平4−132706号公報に示されているようなハロゲン化炭化水素を連鎖移動剤として用いてハロゲン末端の重合体を得る方法と、特開昭61−271306号公報、特許2594402号公報、特開昭54−47782号公報に示されているような水酸基含有メルカプタンあるいは水酸基含有ポリスルフィドなどを連鎖移動剤として用いて水酸基末端の重合体を得る方法である。
次に、リビングラジカル重合法のなかでより好ましい原子移動ラジカル重合法について説明する。この原子移動ラジカル重合法では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物などが開始剤として用いられる。
具体的に例示するならば、C65‐CH2X、C65‐C(H)(X)CH3、C65−C(X)(CH32
(式中、C65はフェニル基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
7−C(H)(X)−CO28、R7−C(CH3)(X)−CO28、R7−C(H)(X)−C(O)R8、R7−C(CH3)(X)−C(O)R8
(式中、R7、R8は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
7−C64−SO2
(式中、R7は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
などがあげられる。
一般式(1)で表わされる基を1分子あたり2個以上、分子末端に有するビニル系重合体を得るためには、2個以上の開始点を有する有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
Figure 2013194126
Figure 2013194126
などがあげられる。
前記重合において用いられるビニル系モノマーには特に制約はなく、既に例示したものをすべて好適に用いることができる。
また、重合触媒として用いられる遷移金属錯体には特に限定はないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする金属錯体、例えば銅、ニッケル、ルテニウム、鉄の錯体である。さらに好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体があげられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。
前記1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。
銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル、その誘導体、1,10−フェナントロリン、その誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどの配位子を添加することができる。
また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として好適である。
ルテニウム化合物を触媒として用いる場合、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加することができる。
さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu32)も、触媒として好適である。
重合は、無溶剤または各種の溶剤中で行なうことができる。
溶剤の種類としては、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶剤などがあげられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を混合して用いてもよい。
また、重合は、室温〜200℃、好ましくは50〜150℃の範囲で行なうことができる。
(A)成分の官能基導入方法には特に限定はないが、例えば前述の方法により反応性官能基を有するビニル系重合体を製造し、反応性官能基を(メタ)アクリロイル系基を有する置換基に変換することにより製造することができる。
以下に、反応性官能基を有するビニル系の重合体の末端を一般式(1)で表わされる基に変換する方法について説明する。
ビニル系重合体の末端に(メタ)アクリロイル系基を導入する方法には特に限定はないが、例えば以下の方法があげられる。
(導入方法1)末端にハロゲン基を有するビニル系重合体と、一般式(2)で示される化合物との反応による方法。
+−OC(O)C(Ra)=CH2 (2)
(式中、Raは水素原子または炭素数1〜20の有機基を表わす、M+はアルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオンを表わす)
末端にハロゲン基を有するビニル系重合体としては、一般式(3)で示される末端基を有するものが好ましい。
−CR910X (3)
(式中、R9、R10はビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わす)
(導入方法2)末端に水酸基を有するビニル系重合体と、一般式(4)で示される化合物との反応による方法。
1C(O)C(Ra)=CH2 (4)
(式中、Raは水素原子または炭素数1〜20の有機基を表わす、X1は塩素原子、臭素原子または水酸基を表わす)
(導入方法3)末端に水酸基を有するビニル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と一般式(5)で示される化合物との反応による方法。
HO−R'−OC(O)C(Ra)=CH2 (5)
(式中、Raは水素原子または炭素数1〜20の有機基を表わす、R'は炭素数2〜20の2価の有機基を表わす)
以下に、前記各方法について詳細に説明する。
[導入方法1]
導入方法1は、末端にハロゲン基を有するビニル系重合体と、一般式(2)で示される化合物との反応による方法である。
末端にハロゲン基を有するビニル系重合体には、特に限定はないが、一般式(3)に示す末端基を有するものが好ましい。
末端にハロゲン基を有するビニル系重合体、特に一般式(3)で表わされる末端基を有するビニル系重合体は、前述の有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいはハロゲン化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。
一般式(2)で表わされる化合物には特に限定はない。
一般式(2)中のRaにおける炭素数1〜20の有機基としては、前記と同様のものが例示され、その具体例も前記と同様のものが例示される。
一般式(2)中のM+は、オキシアニオンの対カチオンであり、その例としては、アルカリ金属イオン、4級アンモニウムイオンなどがあげられる。
前記アルカリ金属イオンとしては、例えばリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどがあげられ、4級アンモニウムイオンとしては、例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ジメチルピペリジニウムイオンなどがあげられる。これらのうち、好ましいものとしてはアルカリ金属イオン、より好ましいものとしてはナトリウムイオン、カリウムイオンがあげられる。
一般式(2)で示される化合物の使用量は、一般式(3)で示される末端基に対して、好ましくは1〜5当量、より好ましくは1.0〜1.2当量である。
前記反応を実施する溶剤には特に限定はないが、求核置換反応であるため極性溶媒が好ましく、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリルなどが好ましく用いられる。
反応温度には特に限定はないが、好ましくは0〜150℃、より好ましくは10〜100℃である。
[導入方法2]
導入方法2は、末端に水酸基を有するビニル系重合体と、一般式(4)で示される化合物との反応による方法である。
一般式(4)で表わされる化合物には特に限定はない。
一般式(4)中のRaにおける炭素数1〜20の有機基としては、前記と同様のものが例示され、その具体例も前記と同様のものが例示される。
末端に水酸基を有するビニル系重合体は、前述の有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合させる方法、あるいは水酸基を有する化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合させる方法により製造されるが、好ましくは前者である。
末端に水酸基を有するビニル系重合体を製造する方法には特に限定はないが、例えば以下の方法が例示される。
(a)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、一般式(6)で示される一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せもつ化合物などを第2のモノマーとして反応させる方法。
2C=C(R11)−R12−R13−OH (6)
(式中、R11は水素原子または炭素数1〜20の有機基、R12は−C(O)O−(エステル基)またはo−、m−もしくはp−フェニレン基、R13は直接結合または1個以上のエーテル結合を含有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表わす)
前記R11としては、水素原子、メチル基が好ましい。また、R12がエステル基のものは(メタ)アクリレート系化合物、R12がフェニレン基のものはスチレン系化合物である。
なお、一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せもつ化合物を反応させる時期に制限はないが、特にゴム的な性質を期待する場合には、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
(b)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして、一分子中に重合性の低いアルケニル基および水酸基を有する化合物を反応させる方法。
このような化合物には特に限定はないが、例えば一般式(7)に示される化合物などがあげられる。
2C=C(R11)−R14−OH (7)
(式中、R11は前記と同じ、R14は1個以上のエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表わす)
前記一般式(7)で示される化合物には特に限定はないが、入手が容易であるという点から、10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールが好ましい。
(c)特開平4−132706号公報などに開示されているような方法で、原子移動ラジカル重合により得られる一般式(3)で示される炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲン原子を、加水分解あるいは水酸基含有化合物と反応させることにより、末端に水酸基を導入する方法。
(d)原子移動ラジカル重合により得られる一般式(3)で示される炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、一般式(8)で示される水酸基を有する安定化カルバニオンなどを反応させてハロゲンを置換する方法。
+C−(R15)(R16)−R14−OH (8)
(式中、R14およびM+は前記と同じ、R15、R16はともにカルバニオンC−を安定化する電子吸引基または一方が前記電子吸引基で、他方が水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を表わす)
前記電子吸引基としては、−CO2R(エステル基)、−C(O)R(ケト基)、−CON(R2)(アミド基)、−COSR(チオエステル基)、−CN(ニトリル基)、−NO2(ニトロ基)などがあげられ、−CO2R、−C(O)R、−CNが特に好ましい。置換基Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。
(e)原子移動ラジカル重合により得られる一般式(3)で示される炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかるのちにアルデヒド類またはケトン類を反応させる方法。
(f)重合体末端のハロゲン原子、好ましくは一般式(3)で示されるハロゲンを少なくとも1個有するビニル系重合体に、一般式(9)で表わされる水酸基含有化合物などや、
HO−R14−O-M+ (9)
(式中、R14およびM+は前記と同じ)
一般式(10)で示される水酸基含有化合物などを反応させて、前記ハロゲン原子を水酸基含有置換基に置換する方法。
HO−R14−C(O)O−M+ (10)
(式中、R14およびM+は前記と同じ)
(a)〜(b)のような水酸基を導入する方法にハロゲン原子が直接関与しない場合、制御がより容易である点から(b)の方法がさらに好ましい。
また、(c)〜(f)のような炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲン原子を変換することにより水酸基を導入する場合、制御がより容易である点から(f)の方法がさらに好ましい。
一般式(4)で示される化合物の使用量は、ビニル系重合体の末端水酸基に対して、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量である。
前記反応を実施する溶剤には特に限定はないが、求核置換反応であるため極性溶剤が好ましく、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリルなどが好ましく用いられる。
反応温度には特に限定はないが、好ましくは0〜150℃、より好ましくは10〜100℃である。
[導入方法3]
導入方法3は、末端に水酸基を有するビニル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と一般式(5)で示される化合物との反応による方法である。
HO−R'−OC(O)C(Ra)=CH2 (5)
(式中、Raは水素原子または炭素数1〜20の有機基を表わす、R'は炭素数2〜20の2価の有機基を表わす)
一般式(5)中のRaにおける炭素数1〜20の有機基としては、前記と同様のものが例示され、その具体例も前記と同様のものが例示される。
一般式(5)中のR'の炭素数2〜20の2価の有機基としては、例えば炭素数2〜20のアルキレン基(エチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)、炭素数6〜20のアルキレン基、炭素数7〜20のアルキレン基などがあげられる。
一般式(5)で示される化合物には特に限定はないが、特に好ましい化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどがあげられる。
前記末端に水酸基を有するビニル系重合体は、前記のとおりである。
ジイソシアネート化合物には特に限定はなく、従来公知のものをいずれも使用することができる。具体例としては、例えばトルイレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどをあげることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ブロックイソシアネートを使用しても構わない。より優れた耐候性を得る点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香環を有しないジイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。
ジイソシアネート化合物の使用量は、ビニル系重合体の末端水酸基に対して、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量である。
また、反応溶剤には特に限定はないが、非プロトン性溶剤などが好ましい。
反応温度には特に限定はないが、好ましくは0〜250℃、より好ましくは20〜200℃である。
一般式(5)で示される化合物の使用量は、残存イソシアネート基に対して、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量である。
<(B)成分>
本発明の硬化性組成物に含まれる光ラジカル重合開始剤(B)としては特に限定されないが、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−メトキシアセトフェン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントン、3,9−ジクロロキサントン、3−クロロ−8−ノニルキサントン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが挙げられる。これらの中でも、タック改善性があるという点で、フェニルケトン系化合物が好ましい。
また、UV照射時の深部硬化性に優れるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤も配合することができる。アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−イソブチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−イソブチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられ、好ましくは、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドである。上記の光ラジカル開始剤は、単独で用いてもよく2種以上を混合して用いても良い。
本発明の硬化性組成物では、上記アシルホスフィンオキサイドおよびフェニルケトン系化合物を併用することもできる。
光ラジカル開始剤(B)の添加量は、(A)成分100重量部に対して0.025重量部〜2重量部であることが好ましく、0.05重量部〜1重量部であることが好ましい。0.025重量部より少ないと、暗部硬化性を発現せず、また照射部の硬化性も十分でない。2重量部より多いと硬化物の物性に影響を与えることがある。
<(C)成分>
本発明の硬化性組成物に含まれる光カチオン開始剤(C)は、[(R3a(R4b(R5c(R6dW]u+(X)u- (式中、Wは、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、F、Cl、Br、I、Ti、Zr、Hf、Fe、Ru、Osであり、R3、R4、R5、およびR6は同一または異なる有機基であり、a、b、c、およびdはそれぞれ0〜3の整数であって(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Xは、ハロゲン元素、もしくは[MZ(v+u)]で示される無機あるいは有機酸の対塩基、あるいは錯体である。Mは前記酸の対塩基あるいは錯体の中心原子を構成する元素であり、O、S、Se、Te、C、Si、Ge、Sn、N、P、As、Sb、Bi、B、Al、Ga、In、Tl、Ti、Zr、Hf、Sc、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Coである。ZはM上の置換基、あるいはMに配位する配位子で、ハロゲン原子または有機基である。uはハロゲン元素、前記酸の対塩基、もしくは錯体イオンの正味の電荷である。vはMの原子価である。)であることが好ましい。上記の中でもWがS、Iであり、R3、R4、R5、およびR6が置換もしくは無置換のフェニル基であるもの、Xがテトラフェニルボレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネートであるものが、それぞれ入手性の点で好ましい。
具体的には、ジフェニルヨードニウム−ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(p−アルキルフェニル)ヨードニウム−ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(p−アルキルフェニル)ヨードニウム−ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム−ヘキサフルオロフォスフェート、トリス(p−アルキルフェニル)スルホニウム−ヘキサフルオロフォスフェート、トリス(p−アルキルフェニル)スルホニウム−ヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。これら光カチオン発生剤が溶剤を含んでいても構わない。
光カチオン発生剤(C)の添加量は、(A)成分100重量部に対して0.25重量部〜4重量部であることが好ましく、0.5重量部〜3重量部であることが好ましい。0.25重量部より少ないと、暗部硬化性を発現せず、4重量部より多いと硬化物の物性に影響を与えることがある。
<(D)成分>
本発明の硬化性組成物に含まれる過酸化物は、有機過酸化物であることが安定性および相溶性の点で好ましい。有機化酸化物としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシカルボン酸、およびそのエステル、ジアシルパーオキサイドなどが挙げられる。これらの中でも、反応時の暗部硬化性の点でジアシルパーオキサイドが好ましい。ジアシルパーオキサイドとしては、過酸化ベンゾイル、過酸化トルイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイルが挙げられる。これら過酸化物がトルエン、キシレン、水などの溶剤を含んでいても構わない。
過酸化物(D)の添加量は、(A)成分100重量部に対して0.5重量部〜3重量部であることが好ましく、1重量部〜2重量部であることが好ましい。0.5重量部より少ないと、暗部硬化性を発現せず、3重量部より多いと硬化性組成物の貯蔵安定性が悪化する。
<(E)成分>
今回の発明において、前記の(A)〜(D)成分に加えて、メルカプト基を少なくとも3個有する化合物(E)を添加することで、暗部速硬化できることを見出した。(E)成分としては、トリメチロールプロパン(トリス)(2−メルカプトプロピオネート)、トリス−(3-メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル)−イソシアヌレート、ペンタエリスリトール(テトラキス)(2−メルカプトプロピオネート)、ビス(ペンタエリスリトール)(ヘキサキス)(2−メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
(E)成分の添加量は、(A)成分100重量部に対して0.25重量部〜2重量部であることが好ましく、0.5重量部〜1重量部であることが好ましい。0.25重量部より少ないと、暗部硬化性を発現せず、2重量部より多いと硬化物の物性に影響を与えることがある。
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ラジカル捕捉剤、可塑剤、シランカップリング剤、充填剤、改質剤、他の樹脂成分等のその他の成分を含有することができる。ここで言うラジカル捕捉剤とは、一般に、酸化防止剤、光安定剤と呼ばれるものなどを含む。酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系の酸化防止剤があげられ、これらの中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。同様に、チヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上、いずれもBASF株式会社製);MARK LA−57,MARK LA−62,MARK LA−67,MARK LA−63,MARK LA−68(以上、いずれもADEKA(株)製);サノールLS−770,サノールLS−765,サノールLS−292,サノールLS−2626,サノールLS−1114,サノールLS−744(以上、いずれも三共(株)製)に示されたヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。酸化防止剤の具体例は、特開平4−283259号公報や特開平9−194731号公報にも記載されている。酸化防止剤の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1重量部から10重量部の範囲で使用するのが良く、さらに好ましくは、0.2重量部から5重量部である。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、経済的に不利になるだけでなく、光ラジカル開始剤より発生したラジカルを酸化防止剤が捕捉し、硬化物の硬化不良が発生し、硬化物が良好な物性を発現しない可能性がある。
光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物などがあげられ、これらの中でも、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。光安定剤の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1重量部から10重量部の範囲で使用するのが好ましく、0.2重量部から5重量部がより好ましい。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、経済的に不利になる可能性があるだけでなく、光ラジカル開始剤より発生したラジカルを酸化防止剤が補足し、硬化物の硬化不良が発生し、硬化物が良好な物性を発現しない可能性がある。光安定剤の具体例は特開平9−194731号公報にも示されている。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケートなどの非芳香族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエートなどのポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類;塩化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油などを単独、または2種以上混合して使用することができるが、必ずしも必要とするものではない。なお、これら可塑剤は、飽和炭化水素系重合体製造時に配合することも可能である。可塑剤の使用量は、(A)成分100重量部に対して、5重量部から200重量部の範囲で使用するのが好ましく、10重量部から100重量部がより好ましい。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、得られる硬化物の機械物性が低下する可能性がある。可塑剤の添加は、物性の調整、性状の調節などに有効である。
シランカップリング剤としては、エポキシ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基等の反応性基を有するシラン化合物が挙げられる。具体的には、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメチルシラン等が挙げられる。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。本発明の樹脂組成物におけるシランカップリング剤成分の含有割合は、特に限定はないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分の合計100重量部に対して、通常0.1〜20重量部であり、好ましくは0.3〜10重量部である。シランカップリング剤の添加は、接着性や耐水性の向上に有効である。
充填剤としては、例えば、微粒子シリカ、ガラスビーズ、タルク、スチレン系ポリマー粒子、メタクリレート系ポリマー粒子、エチレン系ポリマー粒子、プロピレン系ポリマー粒子等が挙げられ、中でも無機充填剤が好ましく、特に微粒子シリカが好ましい。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。充填剤成分の含有割合は、特に限定はないが、(A)成分100重量部に対して、通常20〜150重量部であり、好ましくは50〜100重量部である。無機充填剤の添加により、高強度化、耐透湿性や接着性を向上させることができる。
改質剤としては、例えば重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、各成分を均一に混合することにより調製される。混合方法に特に限定は無いが、(D)成分の過酸化物を除くその他の成分を十分に混合した後に、(D)成分の過酸化物を混合することが、組成物の安定性および操作の安全性の点で好ましい。混合する場合、装置は特に限定されないが、手攪拌、機械的攪拌装置、ロールミル等を用い適宜混合することにより調製される。
本発明の硬化性組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、光(UV)、または、電子線などが挙げられるが、光(UV)によって硬化させることが好ましい。
活性エネルギー線源としては、特に限定されないが、使用する光重合開始剤の性質に応じて、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー、メタルハライドなどがあげられる。
その硬化温度は、0℃〜150℃が好ましく、5℃〜120℃がより好ましい。
<画像表示装置への塗工方法>
画像表示装置への塗工方法としては、スプレー塗工、スクリーン印刷等の印刷方式、ディスペンサーによるパターン塗布方法があるが、貼り合わせ時の泡の混入を防止する観点から、ディスペンサーによる塗工方法が好ましい。
また、塗工パターンとしては、特に限定されないが、全面塗布、線状型パターン、櫛型パターン、円状型パターン、ダブルY字型のパターン(図1)、雪形のパターン等がある。
本発明における硬化性組成物は、接着剤、塗料、シーリング剤組成物、防水剤、吹き付け剤、型取り用材料、注入型ゴム材料等として有用である。具体的には、UV硬化型材料・コーティング・インキ、液状ソルダーレジスト、液晶用レジスト、光ファイバーコーティング剤、UV・可視光硬化型接着剤、光ディスクコーティング剤、電子部品用封止剤、画像表示装置の視認性改良剤等が挙げられるが、活性エネルギー線照射による暗部速硬化の観点からすると、特に画像表示装置とカバーボードの間に充填する視認性改良剤としての用途において、本発明の効果を発揮することができる。
貼り合わせ対象のモジュールとしては、特に限定はないが、液晶モジュール、それを用いたタッチセンサー、プラズマディスプレイパネル、電子ペーパー用E−インクタイプの表示モジュール、同じくSIPIXタイプの表示モジュール、有機EL等の表示モジュールが挙げられる。
また、貼り合せる部位としては、タッチセンサーと表示モジュール間、カバーボードと表示モジュール間、カバーボードとタッチセンサー間、もしくはタッチセンサー付カバーボードと表示モジュール間である。特にカバーボード側にブラックマトリックスが施されることが多いことから、カバーボードと表示モジュール間、またはタッチセンサー付カバーボードと表示モジュール間の貼り合せにおいて、本発明の効果を最大限に発揮することができる。
また、カバーボード/表示モジュール間、タッチセンサー付カバーボード/表示モジュール間を貼り合わせた後、液状の樹脂が十分レベリングする迄間、各基材のズレ防止を目的に塗布・貼り合わせした部分の一部を仮固定することが好ましい。仮固定の方法としては、一部分だけを固定するが出来る点でUV照射が好ましい。
<用途>
本発明の、硬化性組成物によって貼り合せた表示装置を搭載した電気・電子製品としては、テレビ、携帯電話、スマートフォン、ポータブルメディアプレーヤー、PDAなどの持ち運び可能な電子端末、デジタルカメラ、パーソナルコンピューター、電子ペーパー、さらに、カーナビ、車載の表示メーター類、表示装置を搭載した冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機等の家電製品類、ゲーム機、スロットマシン等が挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
下記実施例中、「数平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCシステムとしてWaters社製LC Module1を、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(Shodex GPC K−804;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
「平均末端(メタ)アクリロイル基数」は、「重合体1分子当たりに導入された(メタ)アクリロイル基数」であり、1H−NMR分析及びGPCにより求められた数平均分子量より算出した。(ただし、1H−NMRはBruker社製ASX−400を使用し、溶媒として重クロロホルムを用いて23℃にて測定した。)
(製造例1)
(1)重合工程
アクリル酸n−ブチルを脱酸素した。攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅、全アクリル酸n−ブチルの一部(表1では初期仕込みモノマーとして記載)を仕込み、加熱攪拌した。アセトニトリル(表1では重合用アセトニトリルと記載)、開始剤としてジエチル2,5−ジブロモアジペート(DBAE)を添加、混合し、混合液の温度を約80℃に調節した段階でペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸n−ブチル(表1では追加モノマーとして記載)を逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加し、重合速度を調整した。重合時に使用したトリアミンの総量を重合用トリアミンとして表1に示す。重合が進行すると重合熱により内温が上昇するので内温を約80℃〜約90℃に調整しながら重合を進行させた。
(2)酸素処理工程
モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入した。内温を約80℃〜約90℃に保ちながらしながら反応液を数時間加熱攪拌して反応液中の重合触媒と酸素を接触させた。アセトニトリル及び未反応のモノマーを減圧脱揮して除去し、重合体を含有する濃縮物を得た。濃縮物は著しく着色していた。
(3)第一粗精製
酢酸ブチルを重合体の希釈溶媒として使用した。重合体100kgに対して100〜150kg程度の酢酸ブチルで(2)の濃縮物を希釈し、ろ過助剤(ラジオライトR900、昭和化学工業製)および吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入した後、約80℃で数時間加熱攪拌した。不溶な触媒成分をろ過除去した。ろ液は重合触媒残渣によって着色および若干の濁りを有していた。
(4)第二粗精製
ろ液を攪拌機付ステンレス製反応容器に仕込み、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加した。気相部に酸素−窒素混合ガスを導入して約100℃で数時間加熱攪拌した後、吸着剤等の不溶成分をろ過除去した。ろ液はほとんど無色透明な清澄液であった。ろ液を濃縮し、ほぼ無色透明の重合体を得た。
(5)(メタ)アクリロイル基導入工程
重合体100kgをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)約100kgに溶解し、アクリル酸カリウム(末端Br基に対して約2モル当量)、熱安定剤(H−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−n−オキシル)、吸着剤(キョーワード700SEN)、を添加し、約70℃で数時間加熱攪拌した。DMACを減圧留去し、重合体濃縮物を重合体100kgに対して約100kgのトルエンで希釈し、ろ過助剤を添加して固形分をろ別し、ろ液を濃縮し、末端にアクリロイル基を有する重合体[P1]を得た。得られた重合体の1分子あたりに導入されたアクリロイル基数、数平均分子量、分子量分布を併せて表1に示す。
Figure 2013194126
(実施例1)
製造例1に記載の、(A)成分として、末端にアクリロイル基を有する重合体[P1]100重量部、アクリル酸ラウリル(共栄社化学工業(株)製 ライトアクリレートL−A)30重量部をミニカップに加え、(B)成分として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製 DAROCURE1173)0.8重量部、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製 LUCIRIN TPO)0.1重量部、(C)成分として、ビス(p−アルキルフェニル)ヨードニウム−ヘキサフルオロフォスフェート・50%炭酸プロピレン溶液(和光純薬工業(株)製 WPI−113)3重量部、(E)成分として、ペンタエリスリトール(テトラキス)(3−メルカプトプロピオネート)(SC有機化学(株)製PEMP)0.5重量部を添加し、スパチュラにてよく攪拌して混合させた後、(D)成分として置換ベンゾイルパーオキサイド・40%p−キシレン溶液(日油(株)製 ナイパーBMT)4重量部を添加し、攪拌混合することで硬化性組成物を得た。
上記硬化性組成物を、幅2.0cm、厚さ0.05mmのブラックマトリックスを有する厚さ0.7mmのガラス製カバーガラスに膜厚が0.2mmになる様に、所定量を図1に示すパターンにディスペンス後、0.7mm厚ソーダガラスに貼り合わせ、貼り合わせ側面にUV照射しないように側面をアルミテープで遮光した(図2)。フュージョンUVシステム製UV照射装置(機種:LIGHT HAMMER 6、光源:水銀灯ランプ、ピーク照度600mW/cm2)積算光量:6000mJ/cm2)にて照射を行い、貼り合せ硬化物を得た。
UV照射後、室温下にて1分間自然冷却を行い、得られた貼り合せ硬化物の、カバーボード/ソーダガラス間にスパチュラを差し込んで、カバーボードをゆっくりと剥離し、露光部の硬化性、およびブラックマトリックス裏にあたる部分の硬化性組成物が硬化した幅を計測した(図2)。硬化性はUV照射後の硬化性組成物を触診し、硬化性組成物の流動や移行が無く、弾性を有している場合を硬化と判定した。硬化した幅は表2に示す。
(実施例2〜7、比較例1〜10)
実施例1と同様のプロセスで、表2、表3に示す各成分の配合を行い、硬化性組成物を得た。続いて、同様に貼り合わせ硬化物を得て、ブラックマトリックス裏の硬化した幅を計測した。各配合の詳細および硬化した幅は表2、表3に示す。
Figure 2013194126
Figure 2013194126
表2、表3中の略号は以下のとおりである。
LA: ラウリルアクリレート(共栄社化学(株)製 ライトアクリレートL−A)
DAROCUR1173: 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製)
IRGACURE184: 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製)
IRGACURE651: 2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製)
TPO: (2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製 LUCIRIN TPO)
WPI−113: ビス(p−アルキルフェニル)ヨードニウム−ヘキサフルオロフォスフェート、50%炭酸プロピレン溶液(和光純薬工業(株)製)
BMT: ベンゾイルパーオキサイド/トルイルパーオキサイド混合物、40%p−キシレン溶液(日油(株)製 ナイパーBMT)
PEMP: ペンタエリスリトール(テトラキス)メルカプトプロピオネート(SC有機化学(株)製)
TMMP: トリメチロールプロパン(トリス)(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学(株)製)
DPMP: ジペンタエリスリトール(ヘキサキス)(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学(株)製)
EGMP−4: テトラエチレングリコール(ビス)(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学(株)製)
ESC: 塩化エタンスルホニル(和光純薬工業(株)製)
DPDS: ジフェニルジスルフィド(和光純薬工業(株)製)
メルカプト基が3基以上含まれる化合物(E)を用いた実施例1〜7では、比較例1〜10に比べて暗部の硬化幅が長く、暗部硬化性は良くなっている。実施例1で用いた硬化性組成物と比較して、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分のうち、(B)成分の光ラジカル開始剤のみ含むもの(比較例1)、(B)成分の光ラジカル開始剤を添加しないもの(比較例2)、(C)成分の光カチオン発生剤を添加しないもの(比較例3)、(D)成分の過酸化物を添加しないもの(比較例4)、(E)成分のメルカプト基を有する化合物を添加しないもの(比較例5)では、いずれの配合においても、暗部の硬化性は実施例1に及ばず、また比較例2では露光部の硬化性も乏しいものであった。実施例1に記載のペンタエリスリトール(テトラキス)(3−メルカプトプロピオネート)の代わりに、メルカプト基の数が2基であるテトラエチレングリコール(ビス)(3−メルカプトプロピオネート)をそれぞれ0.5部、1部、2部添加した場合、いずれの場合においても、暗部の硬化性は実施例1に及ばなかった(比較例6〜8)。メルカプト基を持たない他の連鎖移動剤を用いた場合、暗部硬化性は発現しなかった(比較例9、10)。
(実施例8)
実施例1で得られた硬化性組成物を膜厚が200μmになる様に、幅5mmのブラックマトリックスを有するカバーガラスに所定量、図1に示すパターンにディスペンス後、LCDモジュールに貼り合わせ、フュージョンUVシステム製UV照射装置(機種:LIGHT HAMMER 6、光源:水銀灯ランプ、積算光量:6000mJ/cm2)にて照射を行い、図3に示す構造の画像表示装置を得た。
得られた画像表示装置のヒートショック500サイクル試験後の画像表示装置の表示性能を表3に示す。
(比較例11)
比較例1で得られた硬化性組成物を膜厚が200μmになる様に、幅5mmのブラックマトリックスを有するカバーガラスに所定量、図1に示すパターンにディスペンス後、LCDモジュールに貼り合わせ、フュージョンUVシステム製UV照射装置(機種:LIGHT HAMMER 6、光源:水銀灯ランプ、積算光量:6000mJ/cm2)にて照射を行い、図3に示す構造の画像表示装置を得た。
得られた画像表示装置のヒートショック500サイクル試験後の画像表示装置の表示性能を表4に示す。
Figure 2013194126
暗部速硬化する実施例8の画像表示装置では、ヒートショック後にも未硬化物の漏出、およびそれに伴う臭気が無く、表示部分の汚染もなかった。比較例11の画像表示装置では、未硬化物の漏出と臭気発生を伴い、また未硬化物が、LCDモジュールのLCDパネルと外枠の隙間から内部へ浸入して、表示部分を汚染し、画像の全体を表示することができなかった。
1.カバーボード
2.ブラックマトリックス
3.硬化性組成物
4.アルミテープ
5.ソーダガラス
6.LCDパネル
7.光反射板、拡散板
8.LCDモジュール外枠

Claims (12)

  1. 重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)、光ラジカル開始剤(B)、光カチオン発生剤(C)、過酸化物(D)、および、メルカプト基を少なくとも3つ有する化合物(E)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
  2. (A)成分が、重合体もしくはオリゴマーであることを特徴とする、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  3. (A)成分の重合体もしくはオリゴマーが、ビニル系重合体であることを特徴とする、請求項2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  4. (A)成分のビニル系重合体がポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、並びに、(メタ)アクリル酸系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造されるものである重合体から少なくとも一種選択されることを特徴とする、請求項3に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  5. (A)成分における分子末端の重合性の炭素−炭素二重結合が、一般式(1)で表されることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
    −Z−C(=O)−C(R1)=CH2(1)
    (式中、R1は水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、Zはヘテロ原子、NR2(R2は、水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基)から選択される基である。)
  6. (C)成分が、[(R3a(R4b(R5c(R6dW]u+(X)u-(式中、Wは、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、F、Cl、Br、I、Ti、Zr、Hf、Fe、Ru、Osであり、R3、R4、R5、R6は同一または異なる有機基である。a、b、c、およびdはそれぞれ0〜3の整数であって(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Xは、ハロゲン元素、もしくは[MZ(v+u)]で示される無機あるいは有機酸の対塩基、あるいは錯体である。Mは前記酸の対塩基あるいは錯体の中心原子を構成する元素であり、O、S、Se、Te、C、Si、Ge、Sn、N、P、As、Sb、Bi、B、Al、Ga、In、Tl、Ti、Zr、Hf、Sc、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Coである。ZはM上の置換基、あるいはMに配位する配位子で、ハロゲン原子または有機基である。uはハロゲン元素、前記酸の対塩基、もしくは錯体イオンの正味の電荷である。vはMの原子価である。)であることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  7. (D)成分が有機過酸化物であることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  8. (D)成分の有機過酸化物がジアシルパーオキサイドであることを特徴とする、請求項7に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  9. (B)成分の添加量が(A)成分100重量部に対して0.025重量部〜2重量部であり、(C)成分の添加量が(A)成分100重量部に対して0.25重量部〜4重量部であり、(D)成分の添加量が、(A)成分100重量部に対して0.5重量部〜3重量部であり、(E)成分の添加量が、重合体(A)100重量部に対して0.25重量部〜2重量部であることを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  10. 請求項1〜9に記載の活性エネルギー線硬化性組成物に、活性エネルギー線を照射することによって得られる硬化物。
  11. カバーボード/表示モジュール間またはタッチセンサー付カバーボード/表示モジュール間に請求項1〜9の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布、貼り合わせて製造される画像表示装置。
  12. 請求項11に記載の画像表示装置を搭載した電気・電子製品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP3771708A1 (en) 2019-08-02 2021-02-03 Nippon Shokubai Co., Ltd. Method of producing a 2-((meth)allyloxymethyl)acrylic acid derivative, and 2-((meth)allyloxymethyl)acrylic acid alkali metal salt powder

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