以下に、本発明に係るコンバインの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1は、本実施形態に係るコンバインを示す側面図である。図2は、本実施形態に係るコンバインを示す平面図である。コンバイン1は、走行しながら穀稈を刈り取って脱穀するものである。なお、以下では、コンバイン1の前進方向を前方側(図1および図2の左側)とし、コンバイン1の後退方向を後方側(図1および図2の右側)とし、コンバイン1の前後方向に直交する直交方向を左右方向としている。すなわち、「右」とは、コンバイン1の前方に向かって右であり、「左」とは、コンバイン1の前方に向かって左である。
図1に示すように、コンバイン1は、機体フレーム2と、機体フレーム2の前方側に取り付けられた刈取装置7と、機体フレーム2の下方側に取り付けられた走行装置3と、機体フレーム2の後方側に取り付けられた脱穀装置5とを有している。また、コンバイン1には、動力源となるエンジン20(図7参照)が搭載されている。
走行装置3は、左右一対の履帯4を有し、左右一対の履帯4には、エンジン20から動力が伝達される。左右一対の履帯4は、エンジン20から動力が伝達されることで周回し、走行装置3は、周回する左右一対の履帯4により、コンバイン1を走行させる。
刈取装置7は、穀稈を分草する分草具7aと、分草された穀稈を引き起こす引起し装置7bと、引き起こされた穀稈の根元を切断する刈刃とを有している。刈取装置7は、圃場に立毛する穀稈を分草具7aで分草し、分草した穀稈を引起し装置7bで引き起こし、引き起こした穀稈を刈刃で刈り取る。刈り取られた穀稈は、穀稈搬送装置10により脱穀装置5へ向けて搬送される。なお、穀稈搬送装置10の詳細については、後述する。
刈取装置7の後方側において左右方向の一方側(右側)には、操縦室となるキャビン6が設けられている。キャビン6には、運転席6Sと、運転席6Sの前方側に設けられた走行操作レバー6Hおよび操作パネル等の操作装置6Cと、各種情報を表示可能なモニタ6Dとが設けられている。また、キャビン6には、各種操作レバーおよび計器類が配設されている。
図3は、本実施形態に係るコンバインの内部構造を示す側面図である。図4は、本実施形態に係るコンバインの内部構造を示す平面図である。図3および図4に示すように、脱穀装置5は、穀稈搬送装置10により穀稈が後方に搬送される過程で、刈取装置7により刈り取った穀稈から穀粒を切離し、藁等の夾雑物と穀粒とを分離するものである。図3に示すように、脱穀装置5は、脱穀部5aと、脱穀部5aの下方に配置された選別部5bとを有する。図3および図4に示すように、脱穀部5aは、前部左側に配置された扱室5Iと、扱室5Iの右方に配置された第二処理室5Kと、第二処理室5Kの後方に配置された排塵処理室5Eとを含んで構成される。扱室5Iは、キャビン6の左方に位置し、扱室5Iには、前後方向に延在する回転軸を中心に回転可能な円柱形状の扱胴5Rが配置されている。扱胴5Rは、回転動作により、扱室5I内に搬送されてきた穀稈の穂先部から穀粒を脱粒する。なお、第二処理室5Kには二番処理胴5Hが、排塵処理室5Eには排塵処理胴5Dが、それぞれ前後方向に延在する回転軸を中心に回転可能に配置されている。
選別部5bは、扱室5Iの下方に揺動可能に配置された選別棚5Cと、選別棚5Cの下方空間にそれぞれ配置された唐箕5Fと、唐箕5Fの後方に配置された第2唐箕5Mと、一番回収部5Gおよび二番回収部5Jと、選別棚5Cの後方に配置された排塵ファン5Lとを含んで構成される。選別部5bは、脱穀部5aで脱粒された穀粒を含む被処理物(扱胴5Rが脱穀したもの)から夾雑物を除去して、穀粒を回収する。すなわち、選別棚5Cの揺動運動と、唐箕5Fおよび第2唐箕5Mによる選別風、および排塵ファン5Lによる吸引の作用とにより、脱穀部5aから送られてきた被処理物から穀粒を選別し、一番回収部5Gおよび二番回収部5Jで回収する。回収した穀粒は、グレンタンク8に搬送され、貯蔵される。なお、脱穀装置5を通過し、穀粒が扱ぎ取られた穀稈(排藁)は、穀稈搬送装置10の後方側に配置された図示しない排藁搬送装置によって、コンバイン1の後方側に配置されている排藁切断装置へ搬送される。排藁切断装置は、排藁搬送装置に投入された排藁を切断し、例えば、圃場に放出する。
再び、図1および図2を参照し、キャビン6の後方側には、脱穀装置5が脱穀した穀粒を一時的に貯蔵するためのグレンタンク8が配置されている。グレンタンク8の後方側には、内部に貯蔵された穀粒を外部へ排出する穀粒排出オーガ9が設けられている。穀粒排出オーガ9は、グレンタンク8に接続された揚穀筒9aと、揚穀筒9aに接続された伸縮可能な搬送筒9bと、グレンタンク8、揚穀筒9aおよび搬送筒9bの内部に設けられた複数の螺旋軸とを有している。搬送筒9bには、穀粒を排出する排出口が設けられ、穀粒排出オーガ9は、搬送筒9bを適宜伸縮させつつ、昇降および旋回させることで、排出口を所定の場所に位置させる。そして、穀粒排出オーガ9は、複数の螺旋軸を回転させることで、グレンタンク8の内部から揚穀筒9aへ穀粒を搬送し、揚穀筒9aから搬送筒9bへ穀粒を搬送することで、搬送筒9bへ搬送された穀粒は、搬送筒9bに設けられた排出口を介して外部に排出される。
次に、図5および図6を参照して、穀稈搬送装置10について説明する。図5は、本実施形態に係るコンバインの内部構造を示す側面図である。図6は、本実施形態に係るコンバインの一部を示す側面図である。穀稈搬送装置10は、刈取装置7から脱穀装置5へ向けて刈り取った穀稈を搬送している。穀稈搬送装置10は、図2に示すグレンタンク8が配置されている側とは反対側、すなわち、左側部に配置されている。穀稈搬送装置10は、挟扼杆11(図1および図6参照)と、フィードチェン13(図4から図6参照)とを含む。穀稈搬送装置10は、刈取装置7によって刈り取った穀稈を、挟扼杆11とフィードチェン13との間に送り込む。フィードチェン13は、扱胴5Rの回転中心軸と交差する方向、かつ扱室5Iの一方側(左側)に配置される。挟扼杆11は、図示しないコイルスプリングによって、フィードチェン13側へ向けて付勢される。このような構造により、挟扼杵11は、穀稈にフィードチェン13へ向かう力を付与する。このため、挟扼杆11とフィードチェン13との間に送り込まれた穀稈は、挟扼杆11とフィードチェン13とに挟み込まれ、フィードチェン13によって脱穀装置5に搬送される。
本実施形態において、図6に示すように、フィードチェン13は、刈取装置7側における端部13Tが、挟扼杆11の刈取装置7側における端部11Tに比して長くなっている。このため、フィードチェン13は、刈取装置7側における端部13Tが露出した状態となっている。挟扼杆11の刈取装置7側における端部(上手側の部位)11Tには、露出するフィードチェン13の端部13Tを覆う規制部材14が設けられている。この規制部材14は、挟扼杆11の端部11Tを中心として、後述する手扱ぎ作業を許容する開放位置L1と、手扱ぎ作業を規制する規制位置L2との間で回動自在となるように、挟扼杆11の端部11Tに取り付けられている。このため、手扱ぎ作業時には、規制部材14を規制位置L2から開放位置L1へ回動させ、一方で、非手扱ぎ作業時には、規制部材14を開放位置L1から規制位置L2へ回動させる。これにより、非手扱ぎ作業時には、規制部材14がフィードチェン13を覆うことになることから、挟扼杆11とフィードチェン13との間に穀稈以外の異物が挟み込まれるおそれを低くでき、非手扱ぎ作業時の安全性を向上させることができる。なお、規制部材14周りには、規制部材14の開放位置L1と規制位置L2とを検出可能な規制部材位置検出センサ172が設けられている。
ここで、コンバイン1は、通常、走行装置3により走行しながら、刈取装置7が刈り取った穀稈を脱穀装置5で処理する。一方で、コンバイン1は、走行を停止した状態で、作業者が手刈りした穀稈をフィードチェン13によって脱穀装置5へ供給して処理する手扱ぎ処理(手扱ぎ作業)を行う場合がある。この手扱ぎ作業では、作業者が、手刈りした穀稈をフィードチェン13に供給することで、穀稈が挟扼杆11とフィードチェン13との間に挟まれて搬送されながら脱穀装置5に供給される。そして、脱穀装置5に供給された穀稈は、脱穀装置5により脱穀される。
ここで、図7を参照して、エンジン20から穀稈搬送装置10のフィードチェン13に至る動力伝達経路について説明する。図7は、本実施形態に係るコンバインの動力伝達経路の一部を示す模式図である。
エンジン20には、出力軸20Sが設けられ、出力軸20Sには、複数のエンジン出力プーリ20Pが取り付けられている。なお、複数のエンジン出力プーリ20Pからは、走行装置3、刈取装置7、脱穀装置5、穀粒排出オーガ9および穀稈搬送装置10を駆動するための動力が出力される。なお、図7では、複数のエンジン出力プーリ20Pから脱穀装置5および穀稈搬送装置10を駆動するための動力が出力される動力伝達経路について図示する。一方で、図7では、複数のエンジン出力プーリ20Pから走行装置3、刈取装置7および穀粒排出オーガ9を駆動するための動力が出力される動力伝達経路についての図示は省略する。
複数(本実施形態では、例えば3つ)のエンジン出力プーリ20Pからは、脱穀装置5および穀稈搬送装置10を駆動するための動力が出力される。コンバイン1は、脱穀装置5へ動力を伝達するための脱穀動力伝達シャフト38を有する。脱穀動力伝達シャフト38には、一端側(図示左側)から順に、複数(本実施形態では、例えば3つ)の入力プーリ38a、処理胴出力プーリ38b、複数(本実施形態では、例えば3つ)の扱胴出力プーリ38c、回収部出力プーリ38d、および唐箕出力プーリ38eが取り付けられている。
複数のエンジン出力プーリ20Pと複数の入力プーリ38aとには、複数(本実施形態では、例えば3つ)の第1伝達ベルト37が掛け回されている。第1伝達ベルト37は無端のベルトである。このため、エンジン20から発生した動力は、各エンジン出力プーリ20Pと各第1伝達ベルト37と各入力プーリ38aとを介して、脱穀動力伝達シャフト38に伝達される。
各エンジン出力プーリ20Pと各入力プーリ38aとの間には、脱穀クラッチ81が設けられている。脱穀クラッチ81を接続すると、エンジン出力プーリ20Pと入力プーリ38aとの間で動力が伝達され、脱穀クラッチ81の接続を解除すると、エンジン出力プーリ20Pと入力プーリ38aとの間における動力の伝達が遮断される。
二番処理胴5Hおよび排塵処理胴5Dは、処理胴出力プーリ38bから伝達される動力で駆動される。処理胴出力プーリ38bには、無端の第2伝達ベルト60を介して、処理胴駆動プーリ61aが連結されている。処理胴駆動プーリ61aは、処理胴駆動シャフト61の一端部に取り付けられている。処理胴駆動シャフト61の他端部には、第1傘歯車61bが取り付けられており、第1傘歯車61bは、第2傘歯車62aと噛み合っている。第2傘歯車62aは、処理胴回転シャフト62に取り付けられ、処理胴回転シャフト62には、二番処理胴5Hおよび排塵処理胴5Dが取り付けられている。このため、脱穀動力伝達シャフト38に伝達されたエンジン20の動力は、処理胴出力プーリ38b、第2伝達ベルト60、処理胴駆動プーリ61a、処理胴駆動シャフト61、第1傘歯車61b、第2傘歯車62aおよび処理胴回転シャフト62を介して、二番処理胴5Hおよび排塵処理胴5Dに伝達されることで、二番処理胴5Hおよび排塵処理胴5Dを回転させる。これにより、二番処理胴5Hおよび排塵処理胴5Dは、エンジン20の動力が直接伝達されるため、コンバイン1の走行速度に関わらず一定の速度(回転速度)で駆動される。
扱胴5Rは、扱胴出力プーリ38cから伝達される動力で駆動される。扱胴出力プーリ38cには、無端の第3伝達ベルト63を介して、扱胴駆動プーリ64aが連結されている。扱胴駆動プーリ64aは、第1扱胴駆動シャフト64の一端部に取り付けられている。第1扱胴駆動シャフト64の他端部には、第1減速ギヤ64bが取り付けられており、第1減速ギヤ64bは、第2減速ギヤ65aと噛み合っている。第2減速ギヤ65aは、第2扱胴駆動シャフト65の一端部に取り付けられている。第2扱胴駆動シャフト65の他端部には、第3傘歯車65bが取り付けられており、第3傘歯車65bは、第4傘歯車66aと噛み合っている。第4傘歯車66aは、扱胴回転シャフト66に取り付けられ、扱胴回転シャフト66には、扱胴5Rが取り付けられている。このため、脱穀動力伝達シャフト38に伝達されたエンジン20の動力は、扱胴出力プーリ38c、第3伝達ベルト63、扱胴駆動プーリ64a、第1扱胴駆動シャフト64、第1減速ギヤ64b、第2減速ギヤ65a、第2扱胴駆動シャフト65、第3傘歯車65b、第4傘歯車66aおよび扱胴回転シャフト66を介して、扱胴5Rに伝達されることで、扱胴5Rを回転させる。これにより、扱胴5Rも、エンジン20の動力が直接伝達されるため、コンバイン1の走行速度に関わらず一定の速度(回転速度)で駆動される。
唐箕5Fは、唐箕出力プーリ38eから伝達される動力で駆動される。唐箕出力プーリ38eには、無端の第4伝達ベルト67を介して、唐箕駆動プーリ68aが連結されている。唐箕駆動プーリ68aは、唐箕回転シャフト68の一端部に取り付けられている。唐箕回転シャフト68には、唐箕変速機構69を介して、唐箕5Fが取り付けられている。このため、脱穀動力伝達シャフト38に伝達されたエンジン20の動力は、唐箕出力プーリ38e、第4伝達ベルト67、唐箕駆動プーリ68a、唐箕回転シャフト68、唐箕変速機構69を介して、唐箕5Fに伝達されることで、唐箕5Fを回転させる。これにより、唐箕5Fは、エンジン20の動力が唐箕変速機構69を介して伝達されるため、所定の速度(回転速度)で駆動される。
一番回収部5Gおよび二番回収部5Jは、回収部出力プーリ38dから伝達される動力で駆動される。回収部出力プーリ38dには、無端の第5伝達ベルト90を介して、一番回収部駆動プーリ91aおよび二番回収部駆動プーリ92aが連結されている。一番回収部駆動プーリ91aは、一番回収部5Gを駆動するための一番回収部駆動シャフト91に取り付けられている。二番回収部駆動プーリ92aは、二番回収部5Jを駆動するための二番回収部駆動シャフト92に取り付けられている。このため、脱穀動力伝達シャフト38に伝達されたエンジン20の動力は、回収部出力プーリ38d、第5伝達ベルト90、一番回収部駆動プーリ91aおよび一番回収部駆動シャフト91を介して、一番回収部5Gに伝達されることで、一番回収部5Gを駆動させる。また、脱穀動力伝達シャフト38に伝達されたエンジン20の動力は、回収部出力プーリ38d、第5伝達ベルト90、二番回収部駆動プーリ92a、二番回収部駆動シャフト92を介して、二番回収部5Jに伝達されることで、二番回収部5Jを駆動させる。
また、一番回収部駆動プーリ91aと二番回収部駆動プーリ92aとの間には、第2唐箕駆動プーリ93aが設けられ、第2唐箕駆動プーリ93aは、第5伝達ベルト90に連結されている。第2唐箕駆動プーリ93aは、第2唐箕回転シャフト93に取り付けられ、第2唐箕回転シャフト93には、第2唐箕5Mが取り付けられている。このため、脱穀動力伝達シャフト38に伝達されたエンジン20の動力は、回収部出力プーリ38d、第5伝達ベルト90、第2唐箕駆動プーリ93aおよび第2唐箕回転シャフト93を介して、第2唐箕5Mに伝達されることで、第2唐箕5Mを回転させる。
ここで、一番回収部駆動シャフト91には、搬送駆動プーリ91bが取り付けられ、搬送駆動プーリ91bからは、穀稈搬送装置10を駆動するための動力が取り出される。搬送駆動プーリ91bは、第6伝達ベルト92を介して、ギヤボックス100の変速入力プーリ101aに連結されている。
次に、図7から図9を参照して、ギヤボックス100について説明する。図8は、本実施形態に係るコンバインのギヤボックスの内部構造を示す側面図である。図9は、本実施形態に係るコンバインのギヤボックスの内部構造を示す平面図である。このギヤボックス100は、エンジン20からの動力を変速してフィードチェン13へ向けて出力するフィードチェン変速装置として機能すると共に、エンジン20からの動力を遮断可能なクラッチとして機能する。
ギヤボックス100は、第6伝達ベルト92に連結された変速入力プーリ101aを有し、変速入力プーリ101aは、ギヤボックス入力軸101の一端部に取り付けられている。ギヤボックス入力軸101の他端部には、入力ギヤ101bが取り付けられており、入力ギヤ101bは、排塵ファン出力ギヤ102aと噛み合っている。排塵ファン出力ギヤ102aは、排塵ファン回転シャフト102に取り付けられ、排塵ファン回転シャフト102には、排塵ファン5Lが取り付けられている。このため、一番回収部駆動シャフト91に伝達されたエンジン20の動力は、搬送駆動プーリ91b、第6伝達ベルト92、変速入力プーリ101a、ギヤボックス入力軸101、入力ギヤ101b、排塵ファン出力ギヤ102aおよび排塵ファン回転シャフト102を介して、排塵ファン5Lに伝達されることで、排塵ファン5Lを回転させる。これにより、排塵ファン5Lも、エンジン20の動力が直接伝達されるため、コンバイン1の走行速度に関わらず一定の速度(回転速度)で駆動される。
また、排塵ファン出力ギヤ102aは、変速入力ギヤ103aと噛み合っている。変速入力ギヤ103aは、変速軸103の一端部に取り付けられている。この変速軸103には、高速側伝動ギヤ103bと低速側伝動ギヤ103cとが回転自在に取り付けられている。高速側伝動ギヤ103bは、変速入力ギヤ103a側に設けられ、低速側伝動ギヤ103cは、高速側伝動ギヤ103bを挟んで、変速入力ギヤ103aの反対側に設けられている。高速側伝動ギヤ103bと低速側伝動ギヤ103cとの間の変速軸103には、移動体103dが設けられ、移動体103dは、変速軸103と一体的に回転するように取り付けられる一方で、変速軸103の軸方向に移動可能となっている。高速側伝動ギヤ103bの軸方向の移動体103dと対向する面には、高速側クラッチ爪104が設けられ、低速側伝動ギヤ103cの軸方向の移動体103dと対向する面には、低速側クラッチ爪105が設けられる。また、移動体103dの軸方向の高速側伝動ギヤ103bと対向する面には、高速側クラッチ爪104に係合可能な第1クラッチ爪106が設けられ、移動体103dの軸方向の低速側伝動ギヤ103cと対向する面には、低速側クラッチ爪105に係合可能な第2クラッチ爪107が設けられる。
このため、移動体103dが高速側伝動ギヤ103b側の高速側変速位置に移動すると、高速側クラッチ爪104と第1クラッチ爪106とが係合状態となる一方で、低速側クラッチ爪105と第2クラッチ爪107とが非係合状態となり、高速側伝動ギヤ103bは、移動体103dおよび変速軸103と一体となって回転する。一方で、移動体103dが低速側伝動ギヤ103c側の低速側変速位置に移動すると、低速側クラッチ爪105と第2クラッチ爪107とが係合状態となる一方で、高速側クラッチ爪104と第1クラッチ爪106とが非係合状態となり、低速側伝動ギヤ103cは、移動体103dおよび変速軸103と一体となって回転する。なお、移動体103dが高速側変速位置と低速側変速位置との間の中立位置に位置すると、移動体103dの第1クラッチ爪106および第2クラッチ爪107は、高速側クラッチ爪104および低速側クラッチ爪105と非係合状態となるため、変速軸103からの動力は、高速側伝動ギヤ103bおよび低速側伝動ギヤ103cへ伝達されずに遮断される。
上記の移動体103dは、シフタアーム109を介してシフタ軸108に連結されており、シフタ軸108が回転することによって、変速軸103の軸方向に沿って、移動体103dを、高速側変速位置、中立位置、または低速側変速位置へ移動させる。このシフタ軸108は、変速ロッド110を介して変速用モータ111に接続されている。このため、変速用モータ111を動力源として、変速ロッド110を介してシフタ軸108を回転させることにより、移動体103dを所定の位置へ移動させることが可能となる。
また、このシフタ軸108は、移動体103dが中立位置へ移動するように、クラッチアーム121により強制的に移動可能に構成されている。シフタ軸108は、軸方向の一方側(図示上側)の端部に、軸方向に直交する直交方向に突出する突起部124が設けられている。また、クラッチアーム121には、突起部124に嵌り込む溝部125が設けられている。クラッチアーム121は、フィードチェンクラッチモータ126に接続されている。このため、フィードチェンクラッチモータ126を動力源として、クラッチアーム121を所定の方向に移動させることで、クラッチアーム121の溝部125に、シフタ軸108の突起部124を嵌め込むことで、移動体103dが中立位置へ移動するように、シフタ軸108を強制的に回転させる。
上記の高速側伝動ギヤ103bは、高速側出力ギヤ112aと噛み合っている。また、上記の低速側伝動ギヤ103cは、低速側出力ギヤ112bと噛み合っている。高速側出力ギヤ112aおよび低速側出力ギヤ112bは、ギヤボックス出力軸113に一体に設けられている。このため、高速側出力ギヤ112aまたは低速側出力ギヤ112bに動力が伝達されることで、ギヤボックス出力軸113が回転する。
上記のように構成されたギヤボックス100のギヤボックス出力軸113には、フィードチェン駆動プーリ113aが設けられている。フィードチェン駆動プーリ113aには、フィードチェン13が巻き掛けられている。このため、ギヤボックス100のギヤボックス入力軸101に伝達されたエンジン20の動力は、ギヤボックス100において変速され、変速された動力は、ギヤボックス出力軸113からフィードチェン13に伝達されることで、フィードチェン13を駆動(周回)させる。
上記のように構成されたコンバイン1は、制御装置150によって制御される。図10を参照し、制御装置150について説明する。図10は、本実施形態に係るコンバインの制御系に関するブロック図である。制御装置150には、操作装置6Cおよび各種センサが接続され、操作装置6Cからの操作入力および各種センサから入力される検出結果に基づいて、エンジン20、走行装置3、脱穀装置5、刈取装置7および穀粒排出オーガ9を制御する。
具体的に、図10に示すように、制御装置150には、エンジン自動調整スイッチ161と、脱穀クラッチ検出センサ162と、脱穀用ポテンショメーター163と、走行用ポテンショメーター164と、車速センサ165と、駐車ブレーキセンサ166と、手扱ぎスイッチ167と、緊急停止スイッチ168(緊急停止操作部)と、搬送穀稈検出センサ169(第1穀稈検出センサ)と、刈取り穀稈検出センサ170(第2穀稈検出センサ)と、刈取駆動状態検出センサ171と、規制部材位置検出センサ172と、選別棚5Cの流量センサ173と、排藁層厚センサ174と、搬送穀稈層厚センサ175と、が接続されている。また、制御装置150には、モニタ6Dと、エンジン20と、変速用モータ111と、フィードチェンクラッチモータ126と、手扱ぎモードランプ190と、唐箕モータ191と、シーブモータ192と、刈取クラッチモータ193と、警報ブザー195と、主電源スイッチ196と、が接続されている。
エンジン自動調整スイッチ161は、操作装置6Cの操作パネルに設けられ、コンバイン1の駆動状態に応じて、エンジン20の定格回転数(定格回転速度)を調整するために入切操作されるスイッチである。つまり、制御装置150は、エンジン自動調整スイッチ161の入操作(ON操作)を検出すると、エンジン20の定格回転数を自動で調整する一方で、エンジン自動調整スイッチ161の切操作(OFF操作)を検出すると、エンジン20の定格回転数の自動調整を解除する。
脱穀クラッチ検出センサ162は、脱穀クラッチ81による接続および接続解除を検出している。脱穀用ポテンショメーター163は、脱穀操作レバーの操作位置を検出している。脱穀操作レバーは、刈取位置および脱穀位置を含む所定の操作位置となるように操作される。刈取位置は、刈取装置7による穀稈の刈り取りを行うと共に脱穀装置5による脱穀を行うための操作位置となっている。脱穀位置は、脱穀装置5による脱穀を行うための操作位置となっている。
走行用ポテンショメーター164は、走行操作レバー6Hの操作位置を検出している。走行操作レバー6Hは、エンジン20の動力を変速する図示しない油圧式無段変速機を操作するためのレバーである。油圧式無段変速機は、HST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機として構成されている。走行操作レバー6Hは、前進位置、後退位置および中立位置を含む所定の操作位置となるように操作される。前進位置は、コンバイン1を前進させるための操作位置となっており、前進位置としては、コンバイン1の車速を低速とする低速位置、コンバイン1の車速を中速とする中速位置、およびコンバイン1の車速を高速とする高速位置等がある。後退位置は、コンバイン1を後退させるための操作位置となっている。中立位置は、コンバイン1の走行を停止させるための操作位置となっている。このため、走行操作レバー6Hが前進位置、中立位置および後退位置等に操作されることで、油圧式無段変速機は、エンジン20の動力を、コンバイン1が前進方向に駆動する動力として出力したり、コンバイン1の走行を停止させる制動力として出力したり、コンバイン1が後退方向に駆動する動力として出力可能となっている。
車速センサ165は、コンバイン1の走行速度を検出している。駐車ブレーキセンサ166は、キャビン6の運転席6Sの足元に設けられた図示しない駐車ブレーキのブレーキ操作の有無を検出している。駐車ブレーキは、運転者によりブレーキ操作が行われると、走行操作レバー6Hを中立位置に戻し、走行装置3を制動することで、コンバイン1の走行を停止させる。
手扱ぎスイッチ167は、キャビン6の運転席6S周りに設けられ、具体的に、走行操作レバー6Hに設けられている。手扱ぎスイッチ167は、手扱ぎモードへ移行させるために入切操作されるスイッチとなっている。制御装置150は、手扱ぎ作業が可能となる手扱ぎモードの有効条件を満たした状態で、手扱ぎスイッチ167が入操作(ON操作)されると、コンバイン1を手扱ぎモードとする。なお、本実施形態では、手扱ぎスイッチ167となる操作部として構成したが、手扱ぎレバー等の操作部で構成してもよく、特に限定されない。
緊急停止スイッチ168は、脱穀装置5の外側面(左側面)に設けられ、エンジン20の回転を緊急停止するために入切操作されるスイッチとなっている。制御装置150は、緊急停止スイッチ168が入操作(ON操作)されると、エンジン20を停止するエンジン緊急停止制御を実行する。
搬送穀稈検出センサ169は、フィードチェン13によって搬送される穀稈を検出している。刈取り穀稈検出センサ170は、刈取装置7によって刈り取られる刈取対象穀稈を検出している。刈取駆動状態検出センサ171は、刈取装置7の駆動状態を検出している。
規制部材位置検出センサ172は、規制部材14の位置を検出している。なお、規制部材位置検出センサ172は、ノーマルオープンまたはノーマルクローズのマイクロスイッチ、あるいは、プッシュスイッチであってもよく、特に限定されない。
流量センサ173は、選別棚5C上を移動する脱穀部5aにより分離された夾雑物および穀粒の量を検出している。排藁層厚センサ174は、図示しない排藁搬送装置によって搬送される排藁の層の厚さを検出している。搬送穀稈層厚センサ175は、フィードチェン13によって搬送される穀稈の層の厚さを検出している。
モニタ6Dは、キャビン6の内部に設けられ、コンバイン1に関する各種情報が表示される。なお、手扱ぎモードランプ190、唐箕モータ191、シーブモータ192、刈取クラッチモータ193、警報ブザー195、主電源スイッチ196については、後述する。
ここで、制御装置150は、接続された各種センサおよび各種スイッチ等からの入力に基づいて、各種モードに移行したり、各種制御を実行したりしている。例えば、制御装置150は、走行用ポテンショメーター164または車速センサ165の検出結果から、コンバイン1が走行停止または低速走行を行うと判定すると、エンジン20の回転数(回転速度)をアイドリング時における回転数(アイドリング回転数、アイドリング回転速度)とするアイドリング回転制御を実行する。このとき、制御装置150は、脱穀クラッチ検出センサ162の検出結果から、脱穀クラッチ81が接続状態であると判定すると、アイドリング回転制御を実行しない。
また、制御装置150は、走行用ポテンショメーター164または車速センサ165の検出結果に基づいて、ギヤボックス100の変速用モータ111を制御して、フィードチェン13の搬送速度を変速するフィードチェン変速制御を実行する。つまり、制御装置150は、走行用ポテンショメーター164または車速センサ165の検出結果から、コンバイン1が停止または低速走行を行うと判定すると、変速用モータ111を制御して、ギヤボックス100のシフタ軸108により移動体103dを低速側変速位置へ移動させることで、フィードチェン13の搬送速度を低速とする。一方で、制御装置150は、走行用ポテンショメーター164または車速センサ165の検出結果から、コンバイン1が低速走行よりも高速で走行すると判定すると、変速用モータ111を制御して、ギヤボックス100のシフタ軸108により移動体103dを高速側変速位置へ移動させることで、フィードチェン13の搬送速度を高速とする。
また、制御装置150は、所定の条件が満たされると、コンバイン1を所定のモードに切り換えるモード切換制御を実行する。例えば、制御装置150は、各種センサおよび各種スイッチ等からの入力によって、手扱ぎ作業が可能となるような手扱ぎモードの有効条件を満たした場合、コンバイン1を手扱ぎモードに切り換えるモード切換制御を実行する。つまり、制御装置150は、手扱ぎモードの有効条件を満たした場合、モード切換制御を実行することで、手扱ぎモードを有効状態とする。
一方で、制御装置150は、手扱ぎモードの有効条件を満たさない場合、コンバイン1の手扱ぎモードを解除するモード切換制御を実行する。つまり、制御装置150は、手扱ぎモードの有効条件を満たさない場合、モード切換制御を実行することで、手扱ぎモードを無効状態とする。
ここで、図11を参照し、制御装置150によって手扱ぎモードを有効状態と無効状態とに切り換えるモード切換制御に関する一例の制御フローについて説明する。図11は、モード切換制御に関する一例のフローチャートである。なお、図11では、コンバイン1の走行を停止させた状態で行われるモード切換制御について説明する。
制御装置150は、先ず、エンジン自動調整スイッチ161の入力結果に基づいて、エンジン自動調整スイッチ161がON操作されているか否かを判定する(ステップS1)。制御装置150は、エンジン自動調整スイッチ161がON操作されていると判定すると(ステップS1:Yes)、脱穀装置5の駆動要求があるか否かを判定する(ステップS2)。一方で、制御装置150は、エンジン自動調整スイッチ161がON操作されていないと判定すると(ステップS1:No)、後述するステップS6に進む。
ここで、ステップS2における脱穀装置5の駆動要求の判定は、脱穀クラッチ検出センサ162または脱穀用ポテンショメーター163の検出結果に基づいて判定を行っている。つまり、制御装置150は、脱穀クラッチ検出センサ162により、脱穀クラッチ81の接続を検出すると、脱穀装置5の駆動要求があると判定する一方で、脱穀クラッチ81の接続の解除を検出すると、脱穀装置5の駆動要求がないと判定する。または、制御装置150は、脱穀用ポテンショメーター163によって検出された操作位置が刈取位置または脱穀位置である場合、脱穀装置5の駆動要求があると判定する一方で、操作位置が刈取位置または脱穀位置以外の操作位置である場合、脱穀装置5の駆動要求がないと判定する。
制御装置150は、脱穀装置5の駆動要求があると判定すると(ステップS2:Yes)、コンバイン1が走行停止しているか否かを判定する(ステップS3)。一方で、制御装置150は、脱穀装置5の駆動要求がないと判定すると(ステップS2:No)、後述するステップS6に進む。
ここで、ステップS3におけるコンバイン1の走行停止の判定は、走行用ポテンショメーター164、車速センサ165または駐車ブレーキセンサ166の検出結果に基づいて判定を行っている。つまり、制御装置150は、走行用ポテンショメーター164によって検出された走行操作レバー6Hの操作位置が中立位置である場合、コンバイン1が走行停止していると判定する一方で、中立位置以外の操作位置である場合、コンバイン1が走行停止していないと判定する。または、制御装置150は、車速センサ165によって検出された走行速度がゼロである場合、コンバイン1が走行停止していると判定する一方で、走行速度がゼロより大きい場合、コンバイン1が走行停止していないと判定する。または、制御装置150は、駐車ブレーキセンサ166によりブレーキ操作が行われていることを検出すると、コンバイン1が走行停止していると判定する一方で、ブレーキ操作が行われていないことを検出すると、コンバイン1が走行停止していないと判定する。
制御装置150は、コンバイン1が走行停止していると判定すると(ステップS3:Yes)、手扱ぎスイッチ167がON操作されたか否かを判定する(ステップS4)。一方で、制御装置150は、コンバイン1が走行停止していないと判定すると(ステップS3:No)、後述するステップS6に進む。
制御装置150は、手扱ぎスイッチ167の検出結果から、手扱ぎスイッチ167がON操作されたと判定すると(ステップS4:Yes)、手扱ぎモードを有効状態とする(ステップS5)。一方で、制御装置150は、手扱ぎスイッチ167の検出結果から、手扱ぎスイッチ167がON操作されていないと判定すると(ステップS4:No)、手扱ぎモードを無効状態とする(ステップS6)。
そして、制御装置150は、ステップS5またはステップS6を実行すると、再びステップS1に進んで、上記したモード切換制御に関する制御フローを繰り返し実行する。
制御装置150は、手扱ぎモードを有効状態とすると、エンジン20の回転数を予め設定された設定回転数(設定回転速度)まで低くするエンジン低回転制御を実行する。ここで、設定回転数は、エンジン20の定格回転数よりも低く、エンジン20のアイドリング時における回転数(アイドリング回転数)よりも高くなる回転数である。そして、制御装置150は、エンジン低回転制御を実行することで、フィードチェン13による穀稈の搬送速度を遅くすることができる。なお、制御装置150は、エンジン低回転制御の実行時において、穀粒排出オーガ9を駆動可能なエンジン回転数とすることが好ましい。
また、制御装置150は、手扱ぎモードを有効状態とすると、フィードチェン13の搬送速度が遅くなるようにフィードチェン低速側変速制御を実行する。つまり、制御装置150は、フィードチェン低速側変速制御を実行し、変速用モータ111を制御して、ギヤボックス100のシフタ軸108により移動体103dを低速側変速位置へ移動させることで、フィードチェン13の搬送速度を低速とする。なお、制御装置150は、フィードチェン低速側変速制御を実行する手扱ぎモードの有効条件として、少なくとも脱穀クラッチ81の接続と、駐車ブレーキのブレーキ操作とが満たされた場合に実行することが好ましい。また、制御装置150は、フィードチェン低速側変速制御を実行する手扱ぎモードの有効条件として、少なくとも脱穀クラッチ81の接続と、副変速の中立状態とが満たされた場合に実行してもよい。ここで、副変速について簡単に説明する。エンジン20には、上記の油圧式無段変速機(HST)が接続されると共に、油圧式無段変速機に走行ミッションが接続され、走行ミッションから走行装置3へ動力が伝達されることで、コンバイン1が走行する。走行ミッション内には、有段変速装置である副変速装置が設けられ、副変速装置は、低速、中立(標準またはニュートラルともいう)、高速の変速段を有している。低速は低速走行を行うときの変速段であり、中立は動力の伝達を遮断するときの変速段であり、高速は路上走行(高速走行)を行うときの変速段である。上記の副変速の中立状態とは、副変速装置の変速段が中立の変速段となっていることである。また、制御装置150は、フィードチェン低速側変速制御を実行する手扱ぎモードの有効条件として、少なくとも脱穀クラッチ81の接続と、走行操作レバー6Hの中立位置とが満たされた場合に実行してもよい。
また、制御装置150は、手扱ぎモードを有効状態とすると、搬送穀稈層厚センサ175により検出される穀稈の層厚と手扱ぎモードの経過時間とから、排出される排藁の推定総量を算出し、推定総量が予め設定された設定総量を上回った場合、モニタ6Dに、「コンバインを移動してください」という旨の警告表示を行ったり、警報ブザー195によりその旨の報知を行ったりしてもよい。ここで、警報ブザー195は、制御装置150に接続されており、コンバイン1に関する各種警報を発することが可能となっている。また、制御装置150は、排出される排藁の推定総量が予め設定された設定総量を上回った場合、モニタ6Dに、「カッタを確認してください」という旨の警告表示を行ったり、警報ブザー195によりその旨の報知を行ったりしてもよい。
また、制御装置150には、手扱ぎモードであることを運転者に報知するための手扱ぎモードランプ190が接続されており、手扱ぎモードを有効状態にすると、手扱ぎモードランプ190を点灯させる。この手扱ぎモードランプ190は、キャビン6の運転席6S周りに設けられ、具体的に、操作装置6Cの操作パネルに配置されている。なお、制御装置150は、手扱ぎモードランプ190に代えて、モニタ6Dに「手扱ぎモードON」等の表示を行ってもよい。
また、制御装置150は、エンジン低回転制御の実行時、唐箕5Fの回転数の低下を抑制すべく、唐箕回転数補正制御を実行する。唐箕回転数補正制御は、唐箕変速機構69の駆動源となる唐箕モータ191を制御することで、唐箕5Fの回転数を補正する。つまり、この唐箕モータ191は制御装置150に接続され、制御装置150は、唐箕モータ191を制御することにより唐箕変速機構69の変速制御を実行する。制御装置150は、手扱ぎモードが有効にされ、エンジン低回転制御が実行されると、唐箕モータ191により唐箕変速機構69を変速制御することで、唐箕5Fの回転数がエンジン低回転制御の実行前の回転数となるように、高速側に変速する。なお、唐箕回転数補正制御では、唐箕5Fの回転数が、エンジン低回転制御の実行前の回転数となるように高速側に変速したが、高速側に変速する構成であれば、特に限定されない。すなわち、唐箕回転数補正制御では、唐箕5Fの回転数が、エンジン低回転制御の実行前の回転数以下で、唐箕回転数補正制御を実行しないときの唐箕5Fの回転数よりも大きくなれば、いずれの回転数であってもよい。
また、制御装置150には、選別棚5Cのシーブ面(上面)に付着する付着物を清掃する図示しないシーブスクレーパの駆動源となるシーブモータ192が接続されている。制御装置150は、手扱ぎモードを有効状態とすると、シーブモータ192を制御することで、シーブスクレーパの作動を停止させる。
また、制御装置150には、エンジン20の動力を刈取装置7へ伝達する動力伝達経路に設けられた図示しない刈取クラッチの駆動源となる刈取クラッチモータ193が接続されている。制御装置150は、刈取クラッチモータ193により刈取クラッチを係合させることで、エンジン20の動力を刈取装置7へ伝達する一方で、刈取クラッチの係合を解除することで、エンジン20の動力の刈取装置7への伝達を遮断する。制御装置150は、手扱ぎモードを有効にすると、刈取クラッチモータ193を制御することで、刈取クラッチの係合を解除し、エンジン20の動力の刈取装置7への伝達を遮断する。ここで、刈取装置7は、図示しない刈取昇降機構により昇降されており、制御装置150は、刈取昇降機構により刈取装置7を下降した場合、刈取クラッチモータ193により刈取クラッチを係合させるが、手扱ぎモードが有効となっている場合、刈取昇降機構により刈取装置7を下降した場合であっても、刈取クラッチの係合を解除した状態を維持する。
なお、ステップS3におけるコンバイン1の走行停止の判定は、駐車ブレーキセンサ166の検出結果に基づいて行うことが好ましい。この場合、制御装置150は、コンバイン1が走行停止となった状態を確実に判定することが可能となる。このとき、制御装置150は、ステップS3において駐車ブレーキによるブレーキ操作がされていないと判定した状態で、手扱ぎスイッチ167がON操作された場合は、モニタ6Dに、「駐車ブレーキをかけてから手扱ぎスイッチを操作してください」等の警告表示を行ってもよい。また、制御装置150は、ステップS3において駐車ブレーキを操作してコンバイン1を走行停止させた場合、手扱ぎモードの有効状態において、駐車ブレーキが解除されると、手扱ぎモードを有効状態から無効状態となるようにモード切換制御を実行してもよい。
次に、図12を参照し、制御装置150によって手扱ぎモードを有効状態と無効状態とに切り換えるモード切換制御に関する一例の制御フローについて説明する。図12は、モード切換制御に関する一例のフローチャートである。なお、図12では、コンバイン1を低速走行させた状態で行われるモード切換制御について説明する。
制御装置150は、先ず、エンジン自動調整スイッチ161の入力結果に基づいて、エンジン自動調整スイッチ161がON操作されているか否かを判定する(ステップS11)。制御装置150は、エンジン自動調整スイッチ161がON操作されていると判定すると(ステップS11:Yes)、脱穀装置5の駆動要求があるか否かを判定する(ステップS12)。一方で、制御装置150は、エンジン自動調整スイッチ161がON操作されていないと判定すると(ステップS11:No)、後述するステップS17に進む。
制御装置150は、脱穀装置5の駆動要求があると判定すると(ステップS12:Yes)、コンバイン1が低速走行しているか否かを判定する(ステップS13)。一方で、制御装置150は、脱穀装置5の駆動要求がないと判定すると(ステップS12:No)、後述するステップS17に進む。
ここで、ステップS13におけるコンバイン1の低速走行の判定は、走行用ポテンショメーター164または車速センサ165の検出結果に基づいて行っている。つまり、制御装置150は、走行用ポテンショメーター164によって検出された走行操作レバー6Hの操作位置が低速位置である場合、コンバイン1が低速走行していると判定する一方で、低速位置以外の操作位置である場合、コンバイン1が低速走行していないと判定する。または、制御装置150は、車速センサ165によって検出された走行速度が、低速走行とされる所定の速度の範囲内である場合、コンバイン1が低速走行していると判定する一方で、低速走行とされる所定の速度の範囲外である場合、コンバイン1が低速走行していないと判定する。
制御装置150は、コンバイン1が低速走行していると判定すると(ステップS13:Yes)、刈取装置7によって刈り取られる穀稈が有るか否かを判定する(ステップS14)。一方で、制御装置150は、コンバイン1が低速走行していないと判定すると(ステップS13:No)、後述するステップS17に進む。
ここで、ステップS14における刈り取られる穀稈の有無の判定は、搬送穀稈検出センサ169または刈取り穀稈検出センサ170の検出結果に基づいて行っている。つまり、制御装置150は、搬送穀稈検出センサ169により搬送される穀稈が検出されると、刈取装置7によって刈り取られる穀稈が有ると判定する一方で、搬送される穀稈が検出されないと、刈取装置7によって刈り取られる穀稈がないと判定する。または、制御装置150は、刈取り穀稈検出センサ170により刈取対象穀稈が検出されると、刈取装置7によって刈り取られる穀稈が有ると判定する一方で、刈取対象穀稈が検出されないと、刈取装置7によって刈り取られる刈取対象穀稈がないと判定する。よって、制御装置150は、搬送穀稈検出センサ169により搬送中の穀稈が検出されている状態では、手扱ぎモードの有効状態への切り換わりを牽制する構成となっている。また、制御装置150は、刈取り穀稈検出センサ170により刈取対象穀稈が検出されている状態では、手扱ぎモードの有効状態への切り換わりを牽制する構成となっている。
制御装置150は、刈取装置7によって刈り取られる穀稈が有ると判定すると(ステップS14:Yes)、手扱ぎスイッチ167がON操作されたか否かを判定する(ステップS15)。一方で、制御装置150は、刈取装置7によって刈り取られる穀稈がないと判定すると(ステップS14:No)、後述するステップS17に進む。
制御装置150は、手扱ぎスイッチ167の検出結果から、手扱ぎスイッチ167がON操作されたと判定すると(ステップS15:Yes)、手扱ぎモードを有効状態とする(ステップS16)。一方で、制御装置150は、手扱ぎスイッチ167の検出結果から、手扱ぎスイッチ167がON操作されていないと判定すると(ステップS15:No)、手扱ぎモードを無効状態とする(ステップS17)。
そして、制御装置150は、ステップS16またはステップS17を実行すると、再びステップS11に戻って、上記したモード切換制御に関する制御フローを繰り返し実行する。
以上から、制御装置150は、ステップS14において、搬送穀稈検出センサ169または刈取り穀稈検出センサ170により穀稈が検出されると、モード切換制御により手扱ぎモードを無効状態とする。
なお、上記したモード切換制御は、一例であり、例えば、下記するステップをさらに追加してもよい。制御装置150は、手扱ぎスイッチ167がON操作されたか否かを判定する(ステップS4またはステップS15の実行)前に、規制部材14が開放位置L1にあるか否かを判定してもよい。つまり、制御装置150は、規制部材位置検出センサ172の検出結果から、規制部材14が開放位置L1にあると判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たすと判定する一方で、規制部材14が規制位置L2にあると判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たさないと判定する。このため、作業者が規制部材14を開放位置L1に移動させることで、手扱ぎモードの有効条件を満たすことができ、手扱ぎモードを自動的に有効状態に切換える構成とすることができる。
また、制御装置150は、ステップS14における判定と合わせて、刈取装置7が駆動しているか否かを判定してもよい。つまり、制御装置150は、刈取駆動状態検出センサ171により刈取装置7の駆動を検出しないと、手扱ぎモードの有効条件を満たすと判定する一方で、刈取駆動状態検出センサ171により刈取装置7の駆動を検出すると、手扱ぎモードの有効条件を満たさないと判定する。つまり、制御装置150は、搬送穀稈検出センサ169または刈取り穀稈検出センサ170により穀稈が検出され、且つ刈取駆動状態検出センサ171により刈取装置7の駆動が検出されると、モード切換制御により手扱ぎモードを無効状態とし、手扱ぎモードの有効状態への切り換わりを牽制する。また、制御装置150は、搬送穀稈検出センサ169により穀稈が検出された状態で、手扱ぎスイッチ167がON操作された場合は、モニタ6Dに、「刈取部の藁を処理してから手扱ぎスイッチを操作してください」等の警告表示を行ってもよい。
また、制御装置150は、手扱ぎスイッチ167がON操作されたか否かを判定する(ステップS4またはステップS15の実行)前に、上記した副変速装置の変速段が中立の変速段または低速の変速段であるか否かを判定してもよい。つまり、制御装置150は、副変速装置の変速段が中立の変速段または低速の変速段であると判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たすと判定する一方で、副変速装置の変速段が中立の変速段または低速の変速段でないと判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たさないと判定する。また、制御装置150は、副変速装置の変速段が高速の変速段であると判定された状態で、手扱ぎスイッチ167がON操作された場合は、モニタ6Dに、「副変速を中立に戻してから手扱ぎスイッチを操作してください」等の警告表示を行ってもよい。
また、制御装置150は、手扱ぎスイッチ167がON操作されたか否かを判定する(ステップS4またはステップS15の実行)前に、選別棚5C上を移動する夾雑物および穀粒の量が、所定の流量以下であるか否かを判定してもよい。つまり、制御装置150は、流量センサ173の検出結果から、夾雑物および穀粒が所定の流量以下であると判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たすと判定する一方で、夾雑物および穀粒が所定の流量よりも大きいと判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たさないと判定する。また、制御装置150は、夾雑物および穀粒が所定の流量よりも大きいと判定された状態で、手扱ぎスイッチ167がON操作された場合は、モニタ6Dに、「脱穀部をしばらく回してから手扱ぎスイッチを操作してください」等の警告表示を行ってもよい。
また、制御装置150は、手扱ぎスイッチ167がON操作されたか否かを判定する(ステップS4またはステップS15の実行)前に、排藁搬送装置により搬送される排藁が一定の層厚以下であるか否かを判定してもよい。つまり、制御装置150は、排藁層厚センサ174の検出結果から、排藁が一定の層厚以下であると判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たすと判定する一方で、排藁が一定の層厚よりも大きいと判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たさないと判定する。また、制御装置150は、排藁が一定の層厚よりも大きいと判定された状態で、手扱ぎスイッチ167がON操作された場合は、モニタ6Dに、上記と同様に、「脱穀部をしばらく回してから手扱ぎスイッチを操作してください」等の警告表示を行ってもよい。
また、制御装置150は、手扱ぎスイッチ167がON操作されたか否かを判定する(ステップS4またはステップS15の実行)前に、穀稈搬送装置10に搬送される穀稈が一定の層厚以下であるか否かを判定してもよい。つまり、制御装置150は、搬送穀稈層厚センサ175の検出結果から、穀稈が一定の層厚以下であると判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たすと判定する一方で、穀稈が一定の層厚よりも大きいと判定すると、手扱ぎモードの有効条件を満たさないと判定する。また、制御装置150は、搬送される穀稈が一定の層厚よりも大きいと判定された状態で、手扱ぎスイッチ167がON操作された場合は、モニタ6Dに、上記と同様に、「脱穀部をしばらく回してから手扱ぎスイッチを操作してください」等の警告表示を行ってもよい。
また、制御装置150は、脱穀装置5の駆動要求がないと判定された状態で、手扱ぎスイッチ167がON操作された場合は、モニタ6Dに、「脱穀クラッチを入れてから手扱ぎスイッチを操作してください」等の警告表示を行ってもよい。
次に、手扱ぎモードの有効状態における制御装置150の各種制御について説明する。制御装置150は、手扱ぎモードの有効状態において、緊急停止スイッチ168が操作されると、エンジン20を停止させるエンジン緊急停止制御を実行する。以下、図13を参照し、手扱ぎモードが有効状態である場合において、緊急停止スイッチ168が操作されたときの制御装置150の制御フローについて説明する。図13は、緊急停止スイッチの操作時における制御装置の一例のフローチャートである。
制御装置150は、先ず、緊急停止スイッチ168の入力結果に基づいて、緊急停止スイッチ168がON操作されているか否かを判定する(ステップS21)。制御装置150は、緊急停止スイッチ168がON操作されていると判定すると(ステップS21:Yes)、脱穀装置5の駆動要求があるか否かを判定する(ステップS22)。一方で、制御装置150は、緊急停止スイッチ168がON操作されていないと判定すると(ステップS21:No)、再びステップS21に進む。
制御装置150は、脱穀装置5の駆動要求があると判定すると(ステップS22:Yes)、エンジン20の緊急停止を実行する(ステップS23)。一方で、制御装置150は、脱穀装置5の駆動要求がないと判定すると(ステップS22:No)、再びステップS21に進む。
制御装置150は、ステップS23において、エンジン20を緊急停止させると、警報ブザー195から緊急停止した旨を知らせる警報音を発する。また、制御装置150は、ステップS23において、エンジン20を緊急停止させると、フィードチェンクラッチモータ126を制御して、クラッチアーム121の溝部125とシフタ軸108の突起部124とを係合させ、移動体103dを中立位置に移動させることで、フィードチェン13のクラッチ係合を解除する。
このとき、制御装置150は、手扱ぎモードが有効状態であり、エンジン低回転制御を実行していることから、低回転のエンジン20を停止させることができるため、エンジン20の回転を直ぐに停止することが可能となる。また、制御装置150は、手扱ぎモードが有効状態であり、フィードチェン低速側変速制御を実行していることから、低速のフィードチェン13のクラッチ係合を解除することができるため、フィードチェン13を直ぐに停止することが可能となる。
ステップS23の実行後、制御装置150は、緊急停止の解除操作が行われたか否かを判定する(ステップS24)。ここで、緊急停止の解除操作としては、緊急停止スイッチ168による緊急停止の解除操作、脱穀操作レバーによる緊急停止の解除操作または主電源スイッチ196による緊急停止の解除操作等がある。緊急停止スイッチ168による緊急停止の解除操作は、緊急停止スイッチ168の切操作(OFF操作)である。制御装置150は、緊急停止スイッチ168のOFF操作を検出すると、緊急停止の解除操作が行われたと判定する一方で、緊急停止スイッチ168のON操作を検出すると、緊急停止の解除操作が行われていないと判定する。また、脱穀操作レバーによる緊急停止の解除操作は、脱穀操作レバーの操作位置を刈取位置および脱穀位置以外の操作位置にすることである。制御装置150は、脱穀用ポテンショメーター163の検出結果から脱穀操作レバーが刈取位置および脱穀位置以外の操作位置にあると検出すると、緊急停止の解除操作が行われたと判定する一方で、脱穀操作レバーが刈取位置または脱穀位置にあると検出すると、緊急停止の解除操作が行われていないと判定する。さらに、主電源スイッチ196による緊急停止の解除操作は、主電源スイッチ196が切操作(OFF操作)された後、入操作(ON操作)されることである。ここで、主電源スイッチ196は、コンバイン1の始動時に電力を供給するために操作されるスイッチであり、制御装置150に接続されている。制御装置150は、主電源スイッチ196のOFF操作を検出した後、ON操作を検出すると、緊急停止の解除操作が行われたと判定する一方で、主電源スイッチ196のON操作のみを検出する、または主電源スイッチ196のOFF操作のみを検出すると、緊急停止の解除操作が行われていないと判定する。
制御装置150は、緊急停止の解除操作が行われたと判定すると(ステップS24:Yes)、緊急停止を解除する(ステップS25)。一方で、制御装置150は、緊急停止の解除操作が行われていないと判定すると(ステップS24:No)、再びステップS24に進む。
ここで、ステップS25における緊急停止の解除としては、ステップS23において警報ブザー195から発した警報音を停止すること、およびステップS23において停止させたエンジン20の始動を可能とすることである。なお、ステップS25において、エンジン20は、脱穀装置5の駆動要求がないときのみ始動可能となることが好ましい。
制御装置150は、ステップS25の実行後、再びステップS21に進んで、上記した緊急停止スイッチ168が操作されたときの制御装置150の制御フローを繰り返し実行する。なお、ステップS23において、フィードチェンクラッチモータ126によりクラッチ係合が解除されたフィードチェン13は、下記する制御装置150の制御フローによって適宜クラッチ係合される。
図14を参照し、制御装置150によりフィードチェン13をクラッチ係合する制御フローについて説明する。図14は、フィードチェンのクラッチ係合に関する制御装置の一例のフローチャートである。
制御装置150は、先ず、脱穀装置5の駆動要求があるか否かを判定する(ステップS31)。制御装置150は、脱穀装置5の駆動要求があると判定すると(ステップS31:Yes)、フィードチェンクラッチモータ126を制御して、クラッチアーム121の溝部125とシフタ軸108の突起部124との係合を解除することで、フィードチェン13をクラッチ係合する(ステップS32)。一方で、制御装置150は、脱穀装置5の駆動要求がないと判定すると(ステップS31:No)、フィードチェンクラッチモータ126を制御して、クラッチアーム121の溝部125とシフタ軸108の突起部124とを係合させることで、フィードチェン13のクラッチ係合を解除する(ステップS33)。
次に、手扱ぎモードの有効状態における制御装置150の他の制御について説明する。制御装置150は、手扱ぎモードが有効状態である場合、走行装置3を制御して、コンバイン1の車高を、作業者に対して手扱ぎ作業の作業位置が好適な位置となるように調整する車高調整制御を実行する。例えば、制御装置150は、車高調整制御を実行すると、コンバイン1が水平面と平行となるように、コンバイン1の車高を下げる。または、制御装置150は、車高調整制御を実行すると、左右方向において穀稈搬送装置10が配置されている側(左側)に下り傾斜するように、コンバイン1の車高を下げる。または、制御装置150は、車高調整制御を実行すると、前後方向において穀稈搬送装置10が配置されている側(前側)に下り傾斜するように、コンバイン1の車高を下げる。または、制御装置150は、車高調整制御を実行すると、前後左右方向において穀稈搬送装置10が配置されている側(左前側)に下り傾斜するように、コンバイン1の車高を下げる。これにより、制御装置150は、手扱ぎ作業を行う作業者に対し、手扱ぎ作業の作業位置を好適な位置とすることができ、作業の容易性を向上できることから、安全性を向上させることができる。なお、車高調整制御は、入切操作により任意に設定可能であり、車高調整制御を実行する入操作(ON操作)が行われた場合のみ実行する構成としてもよい。
また、制御装置150は、手扱ぎモードが有効状態である場合、車高調整制御を実行したが、穀粒排出オーガ9を駆動させる場合には、車高調整制御を禁止する。穀粒排出オーガ9の駆動としては、例えば、搬送筒9bを伸長させたり、搬送筒9bの排出口から穀粒を排出したりすることである。これにより、制御装置150は、穀粒排出オーガ9からグレンタンク8に溜められた穀粒を排出する場合、車高調整制御を禁止するため、穀粒排出オーガ9の搬送筒9bを適切に支持することができ、また、安定した穀粒の排出を実行することができる。
また、制御装置150は、手扱ぎモードが有効状態である場合、車高調整制御を実行したが、コンバイン1の走行速度が所定の速度以上となった場合には、車高調整制御を禁止する。これにより、制御装置150は、コンバイン1の走行を安定的なものとすることができる。
また、制御装置150は、手扱ぎモードが有効状態である場合、車高調整制御を実行した。ここで、車高調整制御は、予め設定された車高となるように車高を自動で調整する車高自動調整制御と、手動で調整した車高となるように車高を自動で調整する車高手動調整制御とがある。制御装置150は、手扱ぎモードが有効状態である場合、車高調整制御として、車高手動調整制御を、車高自動調整制御に比して優先させて実行する。これにより、制御装置150は、作業者が任意に設定した車高となるように、コンバイン1の車高を調整することができる。
また、制御装置150は、手扱ぎモードが有効状態である場合、穀粒排出オーガ9による穀粒の排出を停止する穀粒排出停止制御を実行してもよい。つまり、制御装置150は、穀粒排出停止制御を実行することで、穀粒の排出によって加わるエンジン20の負荷を低減することができる。なお、穀粒排出停止制御では、穀粒の排出のみを停止すればよく、搬送筒9bの伸縮および移動の実行については許容する。これにより、穀粒排出オーガ9の搬送筒9bの位置にかかわらず、手扱ぎモードで手扱ぎ作業を行うことが可能となる。
一方、制御装置150は、穀粒排出オーガ9による穀粒の排出を行っている場合、手扱ぎスイッチ167がON操作された場合は、手扱ぎモードの有効条件を満たさないとして、手扱ぎモードを無効状態としてもよい。このとき、制御装置150は、モニタ6Dに、「オーガの排出を停止してから手扱ぎスイッチを操作してください」という旨の警告表示を行ってもよく、または、警報ブザー195によりその旨を報知してもよい。
また、制御装置150は、手扱ぎモードが有効状態である場合、エンジン低回転制御を実行したが、穀粒排出オーガ9による穀粒の排出を行っている場合、エンジン20の回転数を定格回転数に維持する制御を実行してもよい。このとき、制御装置150は、モニタ6Dに、「オーガ排出中につきエンジン回転数を維持します」等の警告表示を行ってもよい。
以上のように、本実施形態の構成によれば、制御装置150は、フィードチェン変速制御を実行することにより、通常の刈取作業中において、車速または走行操作レバー6Hの操作位置に応じて、ギヤボックス100によりフィードチェン13の搬送速度を変速することができる。このため、制御装置150は、穀稈搬送装置10によって脱穀装置5へ搬送される穀稈の層厚を適正化することができ、脱穀装置5による脱穀効率を高めることができる。また、制御装置150は、手扱ぎモードの有効状態となると、フィードチェン低速側変速制御を実行するため、フィードチェン13の搬送速度を低速とすることができる。さらに、制御装置150は、手扱ぎモードの有効状態となると、エンジン低回転制御を実行するため、フィードチェン13の搬送速度を更に低速とすることができることから、穀稈をフィードチェン13へ円滑に供給して脱穀処理することができる。そして、制御装置150は、手扱ぎモードの有効状態において、緊急停止スイッチ168がON操作されると、エンジン緊急停止制御が実行されることで、エンジン20が停止するため、フィードチェン13の搬送速度が低速となっていることにより、フィードチェン13をより素早く停止させることができる。
また、本実施形態の構成によれば、制御装置150は、手扱ぎモードの有効状態となると、エンジン低回転制御を実行する。このとき、エンジン20の回転数を定格回転数よりも低く、アイドリング時における回転数(アイドリング回転数)よりも高くすることができる。このため、制御装置150は、緊急停止スイッチ168のON操作時におけるフィードチェン13の素早い停止を実現しつつ、脱穀装置5による脱穀処理を実行するのに十分な動力を確保することができる。
また、本実施形態の構成によれば、制御装置150は、走行操作レバー6Hが中立位置または低速位置に操作された場合、あるいはコンバイン1が走行停止または低速走行する場合、アイドリング回転制御を実行する。このため、制御装置150は、エンジン20の回転数をアイドリング回転数まで低下できることから、エンジン20の燃料消費量および排気ガスの排出量を低減することができる。一方で、制御装置150は、脱穀クラッチ81が接続状態である場合、アイドリング回転制御が実行されないため、エンジン20の回転数が低下することなく、フィードチェン13の搬送速度を維持することができるため、刈取装置7により刈り取った穀稈を脱穀装置5へ素早く搬送して脱穀処理することができる。そして、制御装置150は、手扱ぎモードを有効状態とすると、エンジン低回転制御を実行するため、フィードチェン13の搬送速度を低速にできることから、穀稈をフィードチェン13へ円滑に供給して脱穀処理することができる。
また、本実施形態の構成によれば、制御装置150は、規制部材14を開放位置L1に移動させることにより、手扱ぎモードの有効条件を満たし、フィードチェン低速側変速制御を実行するため、フィードチェン13の搬送速度を低速にできることから、穀稈をフィードチェン13へ円滑に供給して脱穀処理することができる。
また、本実施形態の構成によれば、制御装置150は、刈取駆動状態検出センサ171により刈取装置7が駆動していると判定した場合、また、搬送穀稈検出センサ169により搬送される穀稈を検出した場合、手扱ぎモードを有効状態とすることがない。このため、通常の刈取作業中に、誤操作等によって手扱ぎスイッチ167がON操作された場合であっても、制御装置150は、手扱ぎモードを有効状態としないため、エンジン低回転制御およびフィードチェン低速側変速制御を実行することを抑制でき、刈取作業の能率低下を抑制することができる。
また、本実施形態の構成によれば、制御装置150は、刈取り穀稈検出センサ170により刈取前の穀稈を検出した場合、手扱ぎモードを有効状態とすることがない。このため、例えばコンバイン1を圃場に進入させながら刈取装置7により刈取作業を開始する場合にであっても、刈取り穀稈検出センサ170により穀稈を検出していれば、エンジン低回転制御およびフィードチェン低速側変速制御を実行することを抑制できるため、刈取作業の能率低下を抑制することができる。
なお、本実施形態において、フィードチェン13は、有段のギヤボックス100により高速側または低速側に変速されたが、HST等の無段変速機を適用してもよい。