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JP2013180121A - 無針注射器 - Google Patents

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JP2013180121A JP2012047065A JP2012047065A JP2013180121A JP 2013180121 A JP2013180121 A JP 2013180121A JP 2012047065 A JP2012047065 A JP 2012047065A JP 2012047065 A JP2012047065 A JP 2012047065A JP 2013180121 A JP2013180121 A JP 2013180121A
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真浩 灰塚
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Abstract

【課題】注射針を介することなく注射目的物質を目的とする生体の注射対象領域の目的部位に的確に送り込むこと、特に浅い部位に的確に送り込むことを可能とする。
【解決手段】注射針を介することなく、注射目的物質を生体の注射対象領域に注射する注射器であって、注射目的物質を収容する収容部と、少なくとも点火薬の燃焼により収容部に収容された注射目的物質に対して加圧し、該加圧された該注射目的物質を注射対象領域に対して射出するとともに、該射出された注射目的物質の一部を該注射対象領域内の目的部位に侵入させる、射出部と、を備えるように構成する。
【選択図】図6A

Description

本発明は、注射針を介することなく、注射目的物質を生体の注射対象領域に注射する無針注射器に関する。
注射針を介することなく注射を行う無針注射器では、加圧ガスやバネにより注射液が収容された収容室に対して圧力を加えることで注射成分を射出する構成が採られることがある。例えば、特許文献1に記載の無針注射器では、注射器本体の内部に複数のノズル孔が形成されるとともに、各ノズル孔に対応して射出時に駆動されるピストンを配置させる構成が採用されている。この構成により、複数のノズル孔から注射液を同時に噴射させて対象への均一な注射を実現しようとしている。
また、無針注射器での注射液の射出動力源として、加圧ガスを利用する形態がある。例えば、特許文献2や特許文献3に記載の無針注射器では、射出初期に瞬間的に大きな加圧を行った後、40〜50msecかけて加圧力を徐々に低減させていく加圧形態が例示されている。
特開2004−358234号公報 米国特許第5399163号 米国公開公報2005/0010168号
生体に対して注射を行う場合、その注射目的によって注射液に含まれる成分や、該成分を送り込むべき生体の注射対象領域内の目的部位、特に深さ方向において認識される送り込むべき部位が異なる。これは、生体の注射対象領域には、皮膚や筋肉、内臓等の様々な構造体が含まれ、これらの構造体を構成する生体組織は、その表面(注射を行う場合に、注射器が構造体に触れる表面)からの深さによってその機能が異なってくるためであり、注射液中の成分がその目的とする生体組織(目的部位)に届かなければ、その効果を適切に発揮させることが難しくなるからである。たとえば、ヒトの皮膚は、その表面側から表皮、真皮、皮下組織と層状に区別できる。各層は解剖学的にそれぞれの機能を果たすべく、表皮は角化細胞、樹状細胞や色素細胞、真皮は繊維芽細胞やコラーゲン細胞、皮下組織は皮下脂肪等で構成されている。そして、所定の目的において注射液を注射するときは、そこに含まれる所定の成分が的確に目的とする組織等(目的部位)に届けられるのが好ましい。
また、生体の注射対象領域において、射出された注射目的物質に対する抵抗力は一定ではなく、生体の種類や場所に応じて、もしくは固体差によって異なるのが通常である。一般的な皮膚構造体では、表皮部分は硬くその内部は急に軟らかくなるため、表皮直下の部分に加圧された注射目的物質を的確に届けるのは困難な場合がある。そこで、本発明では、上記した問題に鑑み、注射針を介することなく注射目的物質を目的とする生体の注射対象領域内の目的部位に的確に送り込むこと、特に浅い部位に的確に送り込むことを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、注射針を介することなく、注射目的物質を生体の注射対象領域に注射する注射器において、火薬の燃焼により注射目的物質の射出のための加圧を行い、その注射目的物質の一部が注射対象領域の内部に侵入する射出構成を採用することとした。このような構成を無針注射器が備えることで、注射対象領域の表面直下の、極めて浅い部位から比較的深い部位まで広い範囲に好適に、注射目的物質を届けることが可能となる。
具体的には、本発明は、注射針を介することなく、注射目的物質を生体の注射対象領域に注射する注射器であって、前記注射目的物質を収容する収容部と、少なくとも点火薬の燃焼により前記収容部に収容された前記注射目的物質に対して加圧し、該加圧された該注射目的物質を前記注射対象領域に対して射出するとともに、該射出された注射目的物質の一部を該注射対象領域内の目的部位に侵入させる、射出部と、を備えるように構成される。なお点火薬とは点火手段に含まれる着火薬のことであり、例えば着火電流で作動する電気式点火器のような点火装置を指す。しかし本件発明の無針注射器では、このような点火薬を使用する限りはその具体的な点火装置の構成を限定するものではなく、公知のガス発生剤を併用することもできる。
本発明に係る無針注射器では、生体の注射対象領域に対して注射される注射目的物質が収容部に収容され、そしてこの収容部に収容された注射目的物質に対して、少なくとも点火薬の燃焼により発生する圧力が加えられることで、注射目的物質の射出が行われることになる。この注射目的物質は、注射対象領域内部の目的部位で効能が期待される成分を含むものである。そのため、少なくとも点火薬の燃焼を介した加圧による射出が可能であれば、収容部における注射目的物質の収容状態や、液体やゲル状等の流体、粉体、粒状の固体等の注射目的物質の具体的な物理的形態は問われない。たとえば、注射目的物質は液体であり、また固体であっても射出を可能とする流動性が担保されればゲル状の固体であってもよい。そして、注射目的物質には、生体の注射対象領域内部の目的部位に送り込むべき成分が含まれ、当該成分は注射目的物質の内部に溶解した状態で存在してもよく、又は当該成分が溶解せずに単に混合された状態であってもよい。一例を挙げれば、送りこむべき成分として、抗体増強のためのワクチン、美容のためのタンパク質、毛髪再生用の培養細胞等があり、これらが射出可能となるように、液体、ゲル状等の流体に含まれることで注射目的物質が形成される。
そして、上記無針注射器では、射出部が、少なくとも点火薬の燃焼によって生じた圧力を注射目的物質に伝えることで、注射対象領域への射出が行われる構成が採用されているが、このとき、注射目的物質の一部が注射対象領域内に侵入し、その目的部位に到達するように、該注射目的物質の射出が行われる。これは、注射目的物質の一部が注射対象領域内の目的部位に侵入するように、その射出を行うことで、注射対象領域において比較的浅い部位にも的確に注射目的物質を届けることが可能となることを、本出願人は見出したことによる。この本出願人による新たな知見は、従来の技術には見出せないものである。このような注射目的物質の射出を行うことで、従来技術にはない好適な注射目的物質の射出性能を、無針注射器に備えさせることが可能となる。
ここで、上記無針注射器において、前記注射目的物質の一部が前記注射対象領域内に侵入し、目的部位に到達可能となるように、前記注射目的物質が注射器本体から射出される射出口が、前記注射対象領域の表面に所定押圧力で押圧された状態で、前記射出部による前記注射目的物質の射出が行われてもよい。無針注射器の場合、射出口から射出された注射目的物質が、注射対象領域の内部へと侵入することで、注射が行われることになる。そこで、射出口への押圧力が所定押圧力に設定された状態で、注射目的物質の射出が行われることで、その一部を好適に目的部位に、特に注射対象領域の比較的浅い部位に届けることが可能となる。なお、当該所定押圧力は、射出口からの注射目的物質の噴射圧や、注射
対象領域の硬さ(注射目的物質に対する抵抗力)等に応じて適宜設定される。なお、所定押圧力は、注射が行われる前の状態から注射が完了した状態の間、一定であってもよく、途中で変更することもできる。このように押圧力を調整することで、ノズルから押し出される注射目的物質が注射対象領域に対して貫通するエネルギーを調整しており、広義の意味において、点火薬による注射目的物質の射出力を調整していることにもなる。
また、上述までの注射器においては、前記点火薬は、ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬、アルミニウムと酸化銅を含む火薬、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬のうち何れか一つの火薬、又はこれらのうち複数の組み合わせからなる火薬であってもよい。これらの点火薬の特徴としては、その燃焼生成物が高温状態ではガスが発生しても常温では気体成分を含まないため、燃焼室において燃焼生成物がその表面に接触すると直ちに凝縮を行うため、生体の注射対象領域のより浅い部位への効率的な注射が可能となる。
注射器において、注射針を介することなく注射目的物質を目的とする生体の注射対象領域内の目的部位に的確に送り込むこと、特に浅い部位に的確に送り込むことを可能とする。
本発明に係る無針注射器の概略構成を示す図である。 図1に示す注射器に装着されるイニシエータ(点火装置)の概略構成を示す図である。 図1に示す無針注射器において、火薬の燃焼により注射液に掛けられる圧力の推移を示すグラフである。 本発明に係る火薬式の無針注射器を用いたマウスへの注射実験に関し、注射後のマウスでの実験結果を示す第一の図である。 本発明に係る火薬式の無針注射器を用いたマウスへの注射実験に関し、注射後のマウスでの実験結果を示す第二の図である。 本発明に係る火薬式の無針注射器を用いたマウスへの注射実験に関し、注射後のマウスでの実験結果を示す第三の図である。 従来技術に係るバネ式の無針注射器を用いたマウスへの注射実験に関し、注射後のマウスでの実験結果を示す図である。 本発明に係る火薬式の無針注射器を用いたマウスへの注射実験に関し、注射後のマウス組織の顕微鏡写真を示す第一の図である。 本発明に係る火薬式の無針注射器を用いたマウスへの注射実験に関し、注射後のマウス組織の顕微鏡写真を示す第二の図である。 本発明に係る無針注射器の、第二の概略構成を示す図である。 図7に示す無針注射器において、火薬の燃焼により注射液に掛けられる圧力の推移を示すグラフである。
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る無針注射器(以下、単に「注射器」という)1について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこの実施の形態の構成に限定されるものではない。
ここで、図1(a)は注射器1の断面図であり、図1(b)は注射器1をイニシエータ(点火器)20側から見た側面図であり、図1(c)は注射器1を、注射液を射出するノズ
ル4側から見た側面図である。注射器1は、注射器本体2を有し、該注射器本体2の中央部には、その軸方向に延在し、軸方向に沿った径が一定である貫通孔14が設けられている。そして、貫通孔14の一端は、該貫通孔14の径より大きい径を有する燃焼室9に連通し、残りの一端は、ノズル4に至る。更に、燃焼室9の、貫通孔14との連通箇所とは反対側に、イニシエータ20が、その点火部が該連通箇所に対向するように設置される。
ここで、イニシエータ20の例について図2に基づいて説明する。イニシエータ20は電気式の点火装置であり、表面が絶縁カバーで覆われたカップ21によって、点火薬22を配置するための空間が該カップ21内に画定される。そして、その空間に金属ヘッダ24が配置され、その上面に筒状のチャージホルダ23が設けられている。該チャージホルダ23によって点火薬22が保持される。この点火薬22の底部には、片方の導電ピン28と金属ヘッダ24を電気的に接続したブリッジワイヤ26が配線されている。なお、二本の導電ピン28は非電圧印加時には互いが絶縁状態となるように、絶縁体25を介して金属ヘッダ24に固定される。さらに、絶縁体25で支持された二本の導電ピン28が延出するカップ21の開放口は、樹脂27によって導電ピン28間の絶縁性を良好に維持した状態で保護されている。
このように構成されるイニシエータ20においては、外部電源によって二本の導電ピン28間に電圧印加されるとブリッジワイヤ26に電流が流れ、それにより点火薬22が燃焼する。このとき、点火薬22の燃焼による燃焼生成物はチャージホルダ23の開口部から噴出されることになる。そこで、本発明においては、イニシエータ20での点火薬22の燃焼生成物が燃焼室9内に流れ込むように、注射器本体2に対するイニシエータ20の相対位置関係が設計されている。また、イニシエータ用キャップ12は、イニシエータ20の外表面に引っ掛かるように断面が鍔状に形成され、且つ注射器本体2に対してネジ固定される。これにより、イニシエータ20は、イニシエータ用キャップ12によって注射器本体2に対して固定され、以てイニシエータ20での点火時に生じる圧力で、イニシエータ20自体が注射器本体2から脱落することを防止できる。
なお、注射器1において用いられる点火薬22として、好ましくは、ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(ZPP)、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(THPP)、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(TiPP)、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(APP)、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬(ABO)、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬(AMO)、アルミニウムと酸化銅を含む火薬(ACO)、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬(AFO)、もしくはこれらの火薬のうちの複数の組合せからなる火薬が挙げられる。これらの火薬は、点火直後の燃焼時には高温高圧のプラズマを発生させるが、常温となり燃焼性生物が凝縮すると気体成分を含まないために発生圧力が急激に低下する特性を示す。なお、これら以外の火薬を点火薬として用いても構わない。
ここで、図1に示す燃焼室9内には何も配置されていないが、点火薬22の燃焼によって生じる燃焼生成物によって燃焼しガスを発生させるガス発生剤を、燃焼室9内に配置するようにしてもよい。仮に燃焼室内にガス発生剤を配置させる場合、その一例としては、ニトロセルロース98質量%、ジフェニルアミン0.8質量%、硫酸カリウム1.2質量%からなるシングルベース無煙火薬が挙げられる。また、エアバッグ用ガス発生器やシートベルトプリテンショナ用ガス発生器に使用されている各種ガス発生剤を用いることも可能である。このようなガス発生剤の併用は、上記点火薬22のみの場合と異なり、燃焼時に発生した所定のガスは常温においても気体成分を含むため、発生圧力の低下率は小さい。さらに、当該ガス発生剤の燃焼時の燃焼完了時間は、上記点火薬22と比べて極めて長いが、燃焼室9内に配置されるときの該ガス発生剤の寸法や大きさ、形状、特に表面形状を調整することで、該ガス発生剤の燃焼完了時間を変化させることが可能である。このよ
うにガス発生剤の量や形状、配置を調整することで、燃焼室9内での発生圧力を適宜調整できる。
次に、貫通孔14には、金属製のピストン6が、貫通孔14内を軸方向に沿って摺動可能となるように配置され、その一端が燃焼室9側に露出し、他端には封止部材7が一体に取り付けられている。そして、注射器1によって注射される注射目的物質である注射液MLは、該封止部材7から注射器先端側の貫通孔14内に形成される空間に収容される。なお、図1(a)に示すように注射液MLは、完全に閉じられた空間に封入されておらず、注射器先端側は開放された状態となっている。しかし、注射液MLが収容される貫通孔14の内径は極めて小さく、また注射液量も少ないため、このように注射液MLの収容空間が半閉空間であっても、注射液MLの表面張力によって好適に貫通孔14内に注射液MLは収容された状態が保持される。そして、後述するように、その収容された注射液MLは、イニシエータ20に加圧されることでノズル4から射出されることになる。ここで、封止部材7および貫通孔14によって、本発明に係る注射器の収容部が形成されることになる。この封止部材7は、ピストン6の摺動に伴って注射液MLが円滑に貫通孔14内を移動できるように、表面にシリコンオイルを薄く塗布したゴム製のものである。
さらに、注射器1の先端側(図1の右側)には、注射液MLを射出するためのノズル4が形成されたホルダー5が設けられている。このホルダー5はガスケット3を挟んで注射器本体2の端面に、ホルダー用キャップ13を介して固定される。ホルダー用キャップ13はホルダー5に対して引っ掛かるように断面が鍔状に形成され、且つ注射器本体2に対してネジ固定される。これにより、ホルダー5は、注射液MLの射出時に注射液MLに掛けられる圧力によって注射器本体2から脱落することが防止される。なお、ノズル4は、図1(c)に示すように、ホルダー5の中央に一つ形成されている。
このように構成される注射器1では、イニシエータ20における点火薬22によって、燃焼室9内に燃焼生成物を充満させて、ピストン6を介して貫通孔14内に収容されている注射液MLに圧力を加える。その結果、封止部材7を伴って注射液MLは注射器1の先端側に押し出され、ノズル4を経て注射対象物に向かって射出されることになる。射出された注射液MLには圧力が掛けられているため、注射対象物の表面を貫通し、その内部に注射液が到達することで、注射器1における注射の目的を果たすことが可能となる。
ここで、生体の皮膚構造体等の注射対象領域について、例えば皮膚に対する治療目的に応じて注射される物質と、それが注射されるのが望ましい皮膚構造体での位置(深さ方向における部位、つまり目的部位)は個別的に対応するが、特に、浅い位置に存在する目的部位に的確に所望の物質を注射により届けることは難しい。そこで、本発明に係る注射器1では、注射液の射出に関する諸条件を、注射液の一部が注射対象領域の目的部位に侵入するように調整することで、その到達深さを比較的浅い位置にすることを可能とした。なお、上述の通り、皮膚構造体に対して注射すべき物質(注射目的物質)はその治療目的に応じて様々であるため、以下の説明では注射目的物質を「注射液」と総称する。しかし、これには注射される物質の内容や形態を限定する意図は無い。注射目的物質では、皮膚構造体に届けるべき成分が溶解していても溶解していなくてもよく、また注射目的物質も、加圧することでノズル4から皮膚構造体に対して射出され得るものであれば、その具体的な形態は不問であり、液体、ゲル状等様々な形態が採用できる。
<加圧条件>
図1に示す注射器1においては、上記の通り、イニシエータ20が備える点火薬22が点火され燃焼する際に生じる加圧力が、注射液MLの射出の駆動源となる。本実施例では、生きたマウスに対して、所定の注射目的物質を含む注射液を注射することとし、そのた
め点火薬22としてZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム混合物)を35mg使用する。なお、この点火薬22が燃焼することにより燃焼室9内で発生する圧力推移は、図3に示す通りである。点火時点(経過時間0secの時点)では瞬間的に20MPa超の圧力が発生
し、その直後は圧力が急降下するが、0.02〜0.05secにかけて緩やかに圧力が低下し、概
ね5MPa付近を推移する。このように、点火薬22のみを注射液射出の駆動源とする場合は、点火時は急峻な圧力発生があるものの、その後は、緩やかに圧力が低下していくのが特徴である。なお、このときの注射器1における燃焼室9の容積は、0.5ccである。また図3は常温で作動させたときの圧力推移である。
このようなイニシエータ20による加圧条件の下、注射器1による注射実験(実験1〜3)を行った。また、実験結果の比較のための参考結果を得るために、従来技術に係るバネ式の無針注射を用いた注射実験(参考実験1〜3)、有針注射を用いた注射実験(参考実験4〜6)を行った。
<その他の実験条件>
(注射液について)
射出される注射液として(すなわち、注射器1の貫通孔14内に収容される注射液として)、ルシフェラーゼあるいはLacZをコードしたプラスミドを27μL使用した。ルシフェ
ラーゼ等がマウスの皮膚構造体の所定の部位(表皮直下の比較的浅い部位)に到達し、そこで拡散すると、遺伝子発現を外部から目視、または注射部位の顕微鏡観察で確認することができる。
(押圧条件)
本実施例では、注射器1のマウス生体への注射時にあたり、ノズル4の射出口をマウス生体に押圧した状態で注射、すなわちイニシエータ20の点火が行われた。この射出口の押圧力は、射出口がマウス生体に完全に覆われるように、且つマウス生体の表面に対して垂直に掛けられる荷重であり、射出された注射液の挙動に影響を及ぼすパラメータの一つと考えられる。以下に、当該押圧力を含めて、各実験の条件を表にまとめる。なお、表1は実験1〜3の条件を示し、表2は参考実験1〜3の条件を示し、表3は参考実験4〜6の条件を示すものである。押圧力は、注射対象のマウスを載せた秤(電子天秤など)を、固定している注射器1のノズル4に対してジャッキを使って押しあて、そのときの秤が指す目盛りを押圧力とした。
<実験結果>
次に、以下に上記実験条件に従った実験結果を示す。まず、下記の表4は、ルシフェラーゼを注射されたマウスにおける、ルシフェラーゼ活性(相対発光量:RLU/Protein)の
測定値である。マウスの場合、ルシフェラーゼが表皮直下の部位に拡散することで、ルシフェラーゼによる発光量が顕著となる。
上記表4における注射侵入率とは、注射器側で装填された注射液量(27μL)に対して
、注射によってマウス生体の目的部位へ侵入した注射液量の比率を示すものである。具体的には、マウス生体の目的部位に注射されなかった注射液の量を測定することで、当該注
射侵入率の算出を行った。なおこのとき、装填された量からマウスの目的部位に達しなかった量を除く量は、マウスの目的部位に達したという判断を前提とする。そして、上記実験2および実験3では、イニシエータ20によって図3に示す加圧力が発生する条件のもとで、注射器1内に装填された注射液の一部のみが、マウス生体の内部に注射されたことになる。
また、上記表4における活性部視認大きさとは、ルシフェラーゼ活性が生じている箇所についての、視認可能な大きさであり、実験1〜3については、その活性箇所の写真を図4A、図4B、図4Cにそれぞれ示している。また、参考実験1については、その活性箇所の写真を図5に示している。その他の参考実験については、基本的に参考実験1と同程度の視認大きさであったため、上記表4にその旨を記載することでそれぞれの活性箇所の写真の記載は割愛した。なお、各活性箇所の写真について、大きさの把握を可能にするために、活性箇所を点線で囲むとともに、当該活性箇所に1mmの目盛りを有する定規を並べ
ている。
上記実験結果によれば、実験2、3に示すように、注射器1に装填されていた注射液の一部がマウス生体の目的部位に侵入するように、すなわち、上記注射侵入率が100%とな
らないようにイニシエータ20での点火薬22の燃焼が行われると、ルシフェラーゼ活性を外部から明確に且つ容易に把握することが可能な状態となる。このことは、実験2、3での注射によれば、ルシフェラーゼ活性をマウスの表皮直下の部位(目的部位)で発現させていることを意味する。一方で、上記注射侵入率が100%となるケース(実験1、およ
び各参考実験)では、ルシフェラーゼ活性をマウスの表皮直下に確認することは難しい状態である。
更に、下記表5に示す条件で、注射器1を用いてマウス生体に対して注射実験(実験4、実験5)を行い、48時間経過後のその組織片(凍結切片)をX-gal染色およびE染色したときの当該組織片の顕微鏡写真を、図6A、図6Bにそれぞれ示す。
上記条件の下で行われた実験4および実験5の注射侵入率は、それぞれ50%、100%とな
った。注射侵入率が50%の組織片の顕微鏡写真を示す図6Aを見ると、図中点線で囲って
いる表皮直下の部位(目的部位)にLacZによる遺伝子発現箇所(図中、濃く表わされている箇所)を広く見出すことができる。このことは、注射器1によって射出されたLacZを含む注射液は、マウス生体の深部に入り込まずに表皮直下の部位に留まり、そこで拡散したことを意味している。一方で、注射侵入率が100%の組織片の顕微鏡写真を示す図6Bを見ると、図6Aとは異なり、図中点線で囲っている表皮直下の部位にはLacZによる遺伝子発現箇所を見出すことはできない。このケースでは、射出された注射液は、顕微鏡写真の視野外の、マウス生体の深部にまで到達していると考えられる。
以上の実験結果を踏まえると、少なくとも注射器1においては、注射侵入率が100%とならないように、すなわち、注射器1に装填された注射液の一部がマウス生体の目的部位に
侵入するようにその射出を行うことで、マウス生体内部での、注射液の侵入深さを比較的浅い部位に好適に調整することが可能となると言える。特に、実験2、3、4が示すように、注射器1の射出口の押圧力を比較的小さくすることで(本実施例の場合、17g程度)、射出時における注射液の侵入率を100%に至らないように調整することが可能であり、その結果、比較的浅い部位での注射液の拡散を実現することができる。
<その他の実施例>
上述までの実施例は、注射対象がマウスに係る例であったが、マウス以外の生体を注射対象としてもよい。例えば、マウスより大きな生体としてウサギが挙げられる。この場合、注射効果を上げるために、図8に示すように、注射器1の構造を図1に示す構造と違えてもよい。図8に示す注射器1では、注射器側に装填し得る注射液量が増量されるように、貫通孔14の内径が図1に示す構造よりも大きくされている。そのため、表面張力を利用した注射液の収容が困難となるため、注射液MLが封止部材7と封止部材8に挟まれた閉空間に収容される構成が採用される。
そして、ホルダー5が注射器本体2に取り付けられた状態のとき、封止部材8と対向する箇所に、封止部材8を収容可能な凹部10が形成されている。この凹部10は、封止部材8とほぼ同じ径を有し、封止部材8の長さより若干長い深さを有する。これにより、ピストン6に圧力がかかり注射液MLが封止部材7、8とともに注射器1の先端側に移動したときに、封止部材8が凹部10内に収容されることが可能となる。凹部10に封止部材8が収容されると、加圧された注射液MLが解放されることになる。そこで、ホルダー5の注射器本体2側に接触する部位に、解放された注射液MLがノズル4まで導かれるように流路11が形成されている。これにより、解放された注射液MLは、流路11を経てノズル4から注射対象物へ射出されることになる。また、凹部10が封止部材8を収容する深さを有することで、注射液MLの射出が封止部材8によって阻害されることを回避できる。
また、図8に示す注射器1には、複数のノズル4(例えば、3つのノズル)が設けられている。この場合、注射器1の中心軸の周囲に等間隔で各ノズルが配置されるのが好ましい。複数のノズルが形成される場合には、各ノズルに対して解放された注射液が送り込まれるように、各ノズルに対応する流路が形成される。また、ノズル4の径は、注射対象、注射液MLに掛かる射出圧力、注射液の物性(粘性)等を考慮して適宜設定される。
更に、図8に示す注射器1には、燃焼室9内にガス発生剤30が配置されている。当該ガス発生剤30は、シングルベース発射薬であり、その成分比は以下の通りである。
ニトロセルロース:98.1重量%
ジフェニルアミン:0.8重量%
硫酸カリウム :1.1重量%
黒鉛(外割) :微量
そして、本実施例では、イニシエータ20における点火薬22として、ZPPを55mg使用するとともに、上記成分比を有するガス発生剤30を10mg使用し、そのときの燃焼室9内の圧力推移を、図9に実線で示す。なお、図9に示す点線は、図3に示した注射器1での圧力推移であり、比較のために図9に含めることとした。このようにガス発生剤30を利用することで、点火薬22の点火後の0.01〜0.05secの間の加圧力を高く設定
することが可能となる。
そして、このような加圧条件の下、ウサギに対してマウスの場合と同質の注射実験を行った結果、有針の注射器と比較して、無針注射器を使用し注射侵入率が100%とならないように、すなわち装填注射液の一部をウサギ生体の目的部位に侵入させるように、射出口の
押圧力を調整しながら注射を行うことで、ウサギ生体の比較的浅い部位にも好適に注射液を拡散させることができ、その部分において注射液の活性が有針注射器での活性以上になることを確認することができた。また、図8に示す注射器1は、ウサギ以外にも、ブタやラットへの注射にも有効であることを本出願人は確認した。
<その他の実施例>
本発明に係る注射器1によれば、上述した注射液を皮膚構造体に注射する場合以外にも、例えば、再生医療の分野において、注射対象となる細胞や足場組織・スキャフォールドに培養細胞、幹細胞等を播種することが可能となる。例えば、特開2008−206477号公報に示すように、移植される部位及び再細胞化の目的に応じて当業者が適宜決定し得る細胞、例えば、内皮細胞、内皮前駆細胞、骨髄細胞、前骨芽細胞、軟骨細胞、繊維芽細胞、皮膚細胞、筋肉細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、腸管細胞、幹細胞、その他再生医療の分野で考慮されるあらゆる細胞を、注射器1により注射することが可能である。
さらには、特表2007−525192号公報に記載されているような、細胞や足場組織・スキャフォールド等へのDNA等の送達にも、本発明に係る注射器1を使用することができる。この場合、針を用いて送達する場合と比較して、本発明に係る注射器1を使用した方が、細胞や足場組織・スキャフォールド等自体への影響を抑制できるためより好ましいと言える。
さらには、各種遺伝子、癌抑制細胞、脂質エンベロープ等を直接目的とする組織に送達させたり、病原体に対する免疫を高めるために抗原遺伝子を投与したりする場合にも、本発明に係る注射器1は好適に使用される。その他、各種疾病治療の分野(特表2008−508881号公報、特表2010−503616号公報等に記載の分野)、免疫医療分野(特表2005−523679号公報等に記載の分野)等にも、当該注射器1は使用することができ、その使用可能な分野は意図的には限定されない。
1・・・・注射器
2・・・・注射器本体
4・・・・ノズル
5・・・・ホルダー
6・・・・ピストン
7、8・・・・封止部材
9・・・・燃焼室
10・・・・凹部
11・・・・流路
20・・・・イニシエータ
22・・・・点火薬
30・・・・ガス発生剤

Claims (3)

  1. 注射針を介することなく、注射目的物質を生体の注射対象領域に注射する注射器であって、
    前記注射目的物質を収容する収容部と、
    少なくとも点火薬の燃焼により前記収容部に収容された前記注射目的物質に対して加圧し、該加圧された該注射目的物質を前記注射対象領域に対して射出するとともに、該射出された注射目的物質の一部を該注射対象領域内の目的部位に侵入させる、射出部と、を備える、
    無針注射器。
  2. 前記注射目的物質の一部が前記注射対象領域内の目的部位に侵入可能となるように、前記注射目的物質が注射器本体から射出される射出口が、前記注射対象領域の表面に所定押圧力で押圧された状態で、前記射出部による前記注射目的物質の射出が行われる、
    請求項1に記載の無針注射器。
  3. 前記点火薬は、ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬、アルミニウムと酸化銅を含む火薬、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬のうち何れか一つの火薬、又はこれらのうち複数の組み合わせからなる火薬である、
    請求項1又は請求項2に記載の無針注射器。
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