図1ないし図5を参照して、本発明の一実施形態に係る基板内蔵電子部品の端子判別方法が適用された基板検査装置について説明する。この基板検査装置1は、図1に示すように、複数のプローブP1〜P14(これらを総称する場合は符号「P」を用いる)を有する図示しない検査治具と、接続切替部2と、電源部3と、電位差検出部4と、電流検出部5と、制御部6とを備えて構成され、図2に示す部品内蔵基板(以下、単に「基板」という)7に設けられた配線パターン及び基板7内に内蔵された電子部品8の電気的特性を検査する。なお、本実施形態では、基板7内に電子部品8としてICが内蔵されている場合を例に説明するが、ICに限らず、電源系と信号系等の複数種類に分類される端子を有する電子部品であれば、本実施形態に係る技術を適用できる。また、本実施形態では、電子部品8の端子判別等のための電位差検出に、電源供給用のプローブと電位差検出用のプローブを共用する2端子法が用いられているが、電源供給用のプローブと電位差検出用のプローブを個別に設けて電位差検出を行う4端子法を用いてもよい。
基板7は、複数の基板が貼り合わされて構成されており、内部に複数種類に分類される複数の端子T1〜T6(これらを総称する場合は符号「T」を用いる)を有する電子部品(IC)8が内蔵されているとともに、複数の配線パターンN1〜N10(これらを総称する場合は符号「N」を用いる)が設けられている。配線パターンN1〜N10のうちの配線パターンN1〜N6は、図3に示すように、電子部品8の端子T1〜T6と接続されている。また、基板7の上側表面及び下側表面には、基板検査装置1のプローブPが接触される複数の検査点D1〜D15(これらを総称する場合は符号「D」を用いる)が設けられている。例えば、配線パターンN1〜N10に設けられたランド部又はハンダバンプ等が検査点D1〜D15として設定される。各検査点D1〜D15と配線パターンN1〜N10との関係は、図2に示す通りである。
図1の構成に戻って、検査治具は、基板7の上側表面の検査点D1〜D3,D7〜10に接触されるプローブP1〜P3,P7〜P10を備えた上側検査治具と、基板7の下側表面の検査点D4〜D6,D11〜D14に接触されるプローブP4〜P6,P11〜P14を備えた下側検査治具とを備えている。検査の際は、上側検査治具のプローブP1〜P3,P7〜P10及び下側検査治具のプローブP4〜P6,P11〜P14が、基板7の対応する検査点D1〜D14に一括して接触される。
接続切替部2は、プローブPごとに設けられたスイッチ群SWG1〜SWG14を備えて構成され、制御部6の制御により各プローブPと、電源部3の第1及び第2出力端子3a,3b、電位差検出部4及び電流検出部5との間の電気接続関係を切り替える。各スイッチ群SWG1〜SWG14には、制御部6によってオン、オフ制御される2つのスイッチング素子(例えば、半導体スイッチング素子)SW1,SW2が備えられている。スイッチング素子SW1がオンされた場合は、対応するプローブPがスイッチング素子SW1を介して電源部3の第1出力端子3aに接続される。スイッチング素子SW2がオンされた場合は、対応するプローブPがスイッチング素子SW2を介して電源部3の第2出力端子3bに接続される。
電源部3は、制御部6の制御により検査用の検査電力を出力するようになっており、検査電力を出力する対をなす第1及び第2出力端子3a,3bを有している。電源部3は、検査電力として直流定電流及び直流定電圧を切り替えて出力可能となっているとともに、検査対象に供給する電流値の供給電流レベル及び供給電圧レベルを複数段階で切り替え可能となっている。また、検査内容により、電源部3に検査電力として、交流電流(例えば、交流定電流)、交流電圧(例えば、交流定電圧)、出力電流値が周期的に変動する直流変動電流、又は出力電圧値が周期的に変動する直流変動電圧を出力させるようにしてもよい。なお、電源部3が出力する検査電力に極性がある場合は、第1出力端子3aがプラス側に設定され、第2出力端子3bがマイナス側に設定される。
電位差検出部4は、電源部3によって基板7の検査点D間に与えられた電位差をプローブPを介して検出し、検出結果を制御部6に与える。
電流検出部5は、電源部3の第1出力端子3a又は第2出力端子3b(本実施形態では、第2出力端子3b)から接続切替部2を介してプローブPに向かう配線に介挿されており、電源部3によって検査対象の電子部品に供給される電流をプローブPを介して検出し、検出結果を制御部6に与える。
制御部6は、この基板検査装置1の制御、電子部品8の各端子Tの判別のための処理、及び、基板7の配線パターンN及び電子部品8に対する検査処理を行う。この制御部6による端子Tの判別のための処理、及び検査処理の具体的な内容については、図4及び図5に基づいて以下に詳述する。
図4に示すように、本実施形態では、ステップS4で行われる検査処理の前段に、ステップS1〜S3で検査のための準備処理が行われるようになっている。このステップS1〜S3での準備処理は、基板2に内蔵された電子部品8の各端子Tの種類を判別し、基板1に設けられた配線パターンN及び電子部品8に対する検査内容及び検査条件等を決定するためのものである。同一種類の複数の基板7について検査を行う場合は、ステップS1〜S3の処理は、最初の基板7に対する検査のときだけ実行され、2枚目以降の基板7に対する検査のときは省略される。
ステップS1では、電子部品8の各端子Tの特性が検出される。具体的には、電子部品8の端子Tから選出される2つの端子Tの全ての組み合わせについて、電源部3に、選出された端子T間に端子特性検出のための電流を供給させつつ、電位差検出部4にプローブP1〜P6、検査点D1〜D6及び配線パターンN1〜N6を介して選出された端子T間の電位差を検出させる。このとき、選出された各端子Tペアについて、電流の供給方向が正逆2つの供給方向に切り替えるとともに、供給される電流の値が、複数の電流供給レベル(本実施形態では、第1及び第2の2つの電流供給レベル)に変化される。すなわち、選出された2つの端子T間の電位差の検出は、電流の2つの供給方向及び複数の電流供給レベルの全ての組み合わせごとに行われる。なお、本実施形態では、端子特性検出のために供給される電流の第1の電流供給レベルは、例えば0.2mAに設定され、第2の電流供給レベルは、例えば1mAに設定される。
この端子特性検出の工程は、組み合わせの入れ替え項目が、端子Tペアの入れ替え、電流供給方向の正逆の入れ替え、及び供給電流レベルの2段階の切り替えの3項目となっているが、3つの項目についてどのような順番で入れ替えを行うかは任意である。例えば、選出された端子Tペアに対して、電流供給方向を正方向に設定して、2段階で電流供給レベルを切り替えて電流を供給した後、電流供給方向を逆方向に切り替えて、再び2段階で電流供給レベルを切り替えて電流を供給する。その後、次の端子Tペアを選出し、その選出した端子Tペアに対して同様な要領で端子特性検出用の電流を供給し、それが完了すると、さらに次の端子Tペアを選出するという具合に行われる。
また、本実施形態では、端子特性検出時の過度の電位差が端子Tに付与されて電子部品8に過剰な負荷が掛かるのを防止するため、制御部6に保護機能が設けられている。例えば、選出された端子Tペア間に電源部3による端子特性検出のための電流の供給を開始した際、端子Tペア間の電位差を電位差検出部3を介して監視し、端子Tペア間の電位差が所定の上限電位差値(本実施形態では、3V)に到達した時点で、電源部3による電流供給を停止するようになっている。
各端子Tペアの組み合わせについて検出された検出電位差値を表にまとめると、図5のようになる。図5の表の上から1行目には、電流供給時に正極側に設定される端子Tの符号が記入され、左から1列目には、電流供給時に負極側に設定される端子Tの符号が記入されている。それ以外の各升目には、その升目の縦方向上側に位置する1行目の升目の端子T1〜T6が正極側に設定され、その升目の横方向左側に位置する1列目の升目の端子T1〜T6が負極側に設定された際の、2つの電流供給レベルに対応する2つの検出電位差値が記入されている。斜めの仕切り線の左側の数値が、第1の電流供給レベル(0.2mA)の電流が供給されたときの検出電位差値で、斜めの仕切り線の右側の数値が、第2の電流供給レベル(1mA)の電流が供給されたときの検出電位差値である。各升目に記入された検出電位差値の単位はVである。
例えば、図5の表の升目G1には、端子T4が正極側に設定され、端子T1が負極側に設定された際の、第1及び第2の電流供給レベルに対応する2つの検出電位差値が記入されている。そして、0.5(V)が第1の電流供給レベル(0.2mA)の電流が供給されたときの検出電位差値で、0.6(V)が第2の電流供給レベル(1mA)の電流が供給されたときの検出電位差値である。また、升目G2のように、3(V)の検出電圧値が記入されているところは、制御部6の保護機能により端子T間への付与電位差が制限されたことを示している。
続くステップS2では、ステップS1の検出結果に基づいて、電子部品8の各端子Tの種類が判別される。具体的には、電子部品8の複数の端子Tのうち、他の端子Tとの間の2つの供給方向のいずれか一方の検出電位差値が、全て他の端子T及び全ての電流供給レベルについて所定の基準電位差値未満であり、かつ、電流が最小の電流供給レベル(本実施形態では、第1の電流供給レベル)であるときの検出電位差値と電流が最大の電流供給レベル(本実施形態では、第2の電流供給レベル)であるときの検出電位差値との間の変化度が所定の基準変化度未満である端子を、電源入力又はグランド接続に用いられる電源系端子として判別する。換言すると、この判別手順では、複数の端子Tのうちから他の全ての端子Tとの間の電気特性としてダイオード順方向特性が検出される端子Tを見つけ出し、その端子Tを電源系端子として判別するようになっている。
前記所定の基準電位差値としては、例えば3Vに設定される。また、端子T間への供給電流が第1の電流供給レベルであるときの検出電位差値と、供給電流が第2の電流供給レベルであるときの検出電位差値との間の変化度については、両検出電位差値の差分値又は比(割り算値)等が用いられる。本実施形態では、両検出電位差値の変化度として両検出電位差値の差分値が用いられ、その差分値が所定の基準変化差分値(例えば、0.15V)未満である場合に、電源系端子と判別している。図5の検出結果の場合、囲み領域A1,A2で示すように、端子T3,T4が電源系端子として判別される。
また、このステップS2では、電源系端子として判別された端子T3,T4が、電源入力端子又はグランド接続端子のいずれであるのかを判別する。具体的には、その端子T3,T4が正極側に設定されて端子判別用の電流が供給された際に、その端子T3,T4と他の全ての端子T1〜T6との間の検出電位差値が前記所定の基準電位差値以上である端子を電源入力端子として判別し、その端子T3,T4が負極側に設定されて端子判別用の電流が供給された際に、その端子T3,T4と他の全ての端子T1〜T6との間の検出電位差値が前記所定の基準電位差値以上である端子をグランド接続端子として判別する。図5の検出結果の場合、囲み領域A3,A4で示すように、端子T3が電源入力端子として判別され、端子T4がグランド接続端子として判別される。
換言すると、この判別手順では、電源系端子と判別された端子T3,T4を正極側に設定して他の端子T1〜T6との間に電流を供給したときに、他の端子T1〜T6との間でダイオード順方向特性が検出されない端子については、電源入力端子として判別するようになっている。また、電源系端子と判別された端子T3,T4を負極側に設定して他の端子T1〜T6との間に電流を供給したときに、他の端子T1〜T6との間でダイオード順方向特性が検出されない端子については、グランド接続端子として判別するようになっている。
さらに、このステップS2では、電子部品8の複数の端子Tのうち、電源系端子と判別された端子T3,T4以外の端子T1,T2,T5,T6を、信号入力又は信号出力に用いられる信号系端子として判別するとともに、その端子T1,T2,T5,T6が信号入力端子又は信号出力端子のいずれであるのかを判別する。
具体的には、第1の判別手法として、電源入力端子として判別された端子T3が負極側に設定されたときの各端子T1,T2,T5,T6と端子T3との間の第1又は第2のいずれかの電流供給レベルに対応する検出電位差値の大小関係に基づいて、端子T1,T2,T5,T6が信号入力端子、信号出力端子のいずれであるかを判別する。あるいは、第2の判別手法として、グランド接続端子と判別された端子T4が正極側に設定されたときの各端子T1,T2,T5,T6と端子T4との間の第1又は第2のいずれかの電流供給レベルに対応する検出電位差値の大小関係に基づいて、端子T1,T2,T5,T6が信号入力端子、信号出力端子のいずれであるかを判別する。なお、第1又は第2の判別手法のいずれを採用してもよく、各判別手法において第1の電流供給レベルに対応する検出電位差値と第2の電流供給レベルに対応する検出電位差値とのいずれの大小関係を用いて判別を行ってもよい。ここで、この信号系端子の入力側又は出力側の判別手法は、一般に信号系端子と電源系端子との間のダイオード特性の順方向電圧が、入力側の方が出力側よりも小さくなるという特性を利用したものである。
この信号系端子の入力側又は出力側の判別に関する更なる具体例として、例えば、上記第1の判別手法に対応して、電源入力端子として判別された端子T3が負極側に設定されたときの各端子T1,T2,T5,T6と端子T3との間の第1又は第2のいずれかの電流供給レベルに対応する検出電位差値を小さい方から順にならべてその中央で2つのグループに分け、検出電位差値が小さい方のグループに属する端子T1,T2,T5,T6を信号入力端子として判別し、検出電位差値が大きい方のグループに属する端子T1,T2,T5,T6を信号出力端子として判別する。あるいは、上記第2の判別手法に対応して、グランド接続端子として判別された端子T4が正極側に設定されたときの各端子T1,T2,T5,T6と端子T4との間の第1又は第2のいずれかの電流供給レベルに対応する検出電位差値を小さい方から順にならべてその中央で2つのグループに分け、検出電位差値が小さい方のグループに属する端子T1,T2,T5,T6を信号入力端子として判別し、検出電位差値が大きい方のグループに属する端子T1,T2,T5,T6を信号出力端子として判別する。
例えば、図5の検出結果の場合、上記第1の判別手法による判別では、囲み領域A1に示すように、第1の供給電流供給レベル(0.2mA)に対応する検出電位差値の小さい方から順にならべると、端子T1、端子T2、端子T5、端子T6の順になり、端子T1,T2が信号入力端子と判別され、端子T5,T6が信号出力端子と判別される。
続くステップS3では、ステップS2での電子部品8の各端子Tの種類の判別結果に基づいて、電子部品8及び各配線パターンNに対して行う検査内容(導通検査、絶縁検査等)及び検査条件(例えば、検査用の電力を付与する際の極性、電力供給レベル等)の設定が行われる。
続くステップS4では、ステップS3で設定された検査内容及び検査条件に基づいて、基板7に設けられた電子部品8及び各配線パターンNに対する検査が行われる。このときの検査には、例えば、配線パターンNの導通性に関する検査と、配線パターンNの絶縁性に関する検査が含まれる。配線パターンNの導通検査には、電子部品8を介して接続された配線パターンN間(例えば、配線パターンN1,N4間)の導通検査も含まれている。
導通検査の場合、例えば、順次選出された検査対象の配線パターンN(あるいは、電子部品8を介して接続された配線パターンN間)に応じて接続切替部2による接続関係が切り替えられながら、プローブPを介して、検査対象の配線パターンNに電源部3からの検査用の電力が供給され、そのときの各配線パターンNに付与されている電位差が電位差検出部4により検出されるとともに、各配線パターンNに供給されている電流が電流検出部5により検出され、その検出電位差値及び検出電流値に基づいて、各配線パターンNの導通性が検査される。
絶縁検査の場合、例えば、順次選出された検査対象の2つ配線パターンNに応じて接続切替部2による接続関係が切り替えられながら、プローブPを介して、検査対象の2つの配線パターンN間に電源部3からの検査用の電力が供給され、その2つの配線パターンN間に流れる電流の有無等が電流検出部5により検出され、その検出結果に基づいて、各配線パターンN間の絶縁性が検査される。
以上のように、本実施形態によれば、基板7に内蔵されている電子部品8の各端子Tの種類が知らされていない場合であっても、基板7内に内蔵された電子部品8の各端子Tについて、電源入力端子、グランド接続端子、信号入力端子又は信号出力端子の別を自動的に判別できる。その結果、内蔵されている電子部品8、及び電子部品8と接続された配線パターンNに対する検査を適切に行うことができる。