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JP2013151087A - インクジェット記録体の製造方法 - Google Patents

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毅拡 南
Masahiro Morie
正博 森江
Hideo Akigawa
英雄 秋川
Kazuo Ikeda
一雄 池田
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Abstract

【課題】固形分濃度を高くしても塗工適性が良好なインク受容層用塗液により、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造できる、インクジェット記録体の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】支持体上にインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成するインクジェット記録体の製造方法であって、前記インク受容層用塗液が、水に、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体と、炭酸カルシウムと、シリル変性ポリビニルアルコールとをこの順に添加して調製した塗液であることを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録体の製造方法に関する。
端末プリンター、ファクシミリ、プロッター、大型のポスター、帳票印刷等においては、記録時の騒音が少ないこと、フルカラー画像の形成が容易であること、高速記録が可能であること、記録コストが低いこと等の観点から、インクジェット記録方式が広く採用されている。インクジェット記録方式は、紙基材等の支持体上にインク受容層が形成されたインクジェット記録体を用い、微細なノズルから該インクジェット記録体のインク受容層に向かってインクを噴出し、インク受容層面に画像を形成させる方式である。
インクジェット記録体の製造方法としては、例えば、インク受容層の主成分である顔料やインク定着剤を含むインク受容層用塗液を支持体上に塗工し、乾燥してインク受容層を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。インク受容層用塗液は、例えば、所望の固形分濃度となるように顔料、インク定着剤、バインダー等を順次水に添加することで調製される。
特許第3078291号公報 特許第2944144号公報
ところで、高い生産性でインクジェット記録体を製造するには、塗工後の乾燥時間を短縮することが非常に有効である。乾燥時間を短縮する方法としては、インク受容層用塗液を高濃度化する方法が挙げられる。しかし、特許文献1、2のような従来のインク受容層用塗液を高濃度化しようとすると、粘度が高くなりすぎて塗工が困難になり、優れたインク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を形成することが難しくなる。
本発明は、固形分濃度を高くしても塗工適性が良好なインク受容層用塗液により、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造できる、インクジェット記録体の製造方法の提供を目的とする。
本発明のインクジェット記録体の製造方法は、支持体上にインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成する方法であって、
前記インク受容層用塗液が、炭酸カルシウムを含む顔料と、シリル変性ポリビニルアルコールを含むバインダーと、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体を含むインク定着剤と、水とを含み、かつ前記ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体、前記炭酸カルシウム、前記シリル変性ポリビニルアルコールの順に水に添加されて調製された塗液であることを特徴とする方法である。
本発明のインクジェット記録体の製造方法では、前記ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体の重量平均分子量が7,000〜300,000であることが好ましい。
また、前記顔料100質量部に対して、前記ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体が5〜20質量部であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録体の製造方法によれば、固形分濃度を高くしても塗工適性が良好なインク受容層用塗液により、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造することができる。
本発明における質量部(質量%)は、特に断りのない限り固形分の質量部(質量%)である。ここで、固形分とは、JIS P8225の規定に従って110℃で乾燥させた際の固形分であり、固形分の質量とはJIS P8225の規定に従って110℃で乾燥させた際の質量(絶乾質量)を意味する。
本発明のインクジェット記録体の製造方法は、支持体上にインク受容層が形成されたインクジェット記録体の製造方法である。具体的には、支持体上に、インク受容層を形成するためのインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成する工程を有する方法である。
インク受容層用塗液の塗工方法としては、例えば、ブレードコータ、エアーナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ、ロッドブレードコータ、リップコータ、カーテンコータ、ダイコータ等の各種塗工装置を用いる方法が挙げられる。
インク受容層用塗液の塗工量としては、固形分として、2〜40g/mが好ましく、4〜20g/mがより好ましい。前記塗工量が下限値以上であれば、インク受容層のインク吸収性がより良好になる。前記塗工量が上限値以下であれば、インク受容層にひび割れが生じ難くなる。
インク受容層用塗液を塗工した後の乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、熱風による加熱乾燥、赤外線照射による加熱乾燥等を採用できる。
本発明では、インク受容層用塗液の塗工及び乾燥を2回以上行い、2層以上のインク受容層を形成してもよい。
また、形成したインク受容層には、必要に応じて、スーパーカレンダ、ブラシ掛け等の平滑化処理を施してもよい。
[支持体]
支持体としては、紙基材、樹脂フィルム、又は各種シート材を使用することができる。また、支持体は、紙基材、樹脂フィルム、シート材の表面に、インクの溶媒を遮蔽する、インクの溶媒を吸収する、また支持体の平滑性を向上させる等の目的で下塗り層等が設けられたものであってもよい。
紙基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、クラフト紙、バライタ紙、板紙、含浸紙、蒸着紙、段ボール、酸性紙、中性紙等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルムや合成紙が挙げられる。
シート材としては、金属箔、金属板、ガラス板、ラミネート紙、織布、不織布等が挙げられる。
紙基材、樹脂フィルム、シート材のなかでは、取り扱い易さ、及び廃棄の容易さ等の面から、紙基材が好ましい。
以下、紙基材について説明する。
(紙基材)
紙基材は、木材パルプを主成分とし、必要に応じて填料、各種助剤等を含有する。
木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。なかでも、針葉樹及び広葉樹のクラフトパルプ、あるいはこれらクラフトパルプを漂白した針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプが好ましい。
また、環境への負荷低減の点から、木材パルプにおいては、その漂白工程で塩素の影響を取り除いた塩素フリーパルプが好ましい。塩素フリーパルプとしては、例えば、塩素そのものを使わずに塩素化合物を使って漂白したECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、塩素元素が一切入っていない漂白剤を用いて漂白したTCF(Total Chlorine Free)パルプが挙げられる。
また、木材パルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機によって叩解度(CSF:カナディアンスタンダードフリーネス)が調整されていることが好ましく、叩解度(JIS P8121)は250〜550mLにされていることが好ましい。
叩解度が前記下限値以上であれば、印刷した際のコックリング(吸収ジワ)を軽減でき、上限値以下であれば、紙基材の平滑性が向上する。
紙基材に含まれてもよい填料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライト、シリカ、酸化チタン、タルクが好ましい。なかでも、インクジェットプリンタから噴出されたインク中の溶媒を吸収する能力に優れることから、多孔質である軽質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライト、シリカがより好ましい。さらに、白色度が高い紙基材が容易に得られる点では、軽質炭酸カルシウムが特に好ましい。
紙基材中の填料の含有率(灰分)は、1〜20質量%が好ましい。この範囲であれば、平滑度、透気度、紙力及び剛性のバランスが優れる。
紙基材に含まれてもよい助剤としては、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤等が挙げられる。
サイズ剤としては、例えば、強化ロジン、アルケニル無水コハク酸等の公知のサイズ剤を用いることができる。定着剤としては、例えば、硫酸アルミニウムを用いることができる。歩留まり向上剤としては、例えば、澱粉を用いることができる。
また、紙基材に含まれてもよい助剤としては、紙力増強剤、カチオン化剤、染料、蛍光増白剤等を用いることもできる。
紙基材には、サイズ度のコントロール、紙力の増強、平滑化等を目的として、サイズプレス処理が施されていてよい。サイズプレス処理に用いるサイズプレスには、それぞれの目的に応じて、澱粉類、ポリビニルアルコール類、サイズ剤、各種顔料等が使用される。
サイズプレス処理された紙基材のステキヒトサイズ度(JIS P8122)は、1〜300秒が好ましく、4〜200秒がより好ましい。ステキヒトサイズ度が前記下限値以上であれば、塗工時の皺発生を抑制でき、前記上限値以下であれば、インク吸収性が向上する。
紙基材の坪量は、特に限定されないが、40〜400g/mが好ましい。
紙基材の王研式透気度(日本TAPPI No.5)は、10〜1000秒が好ましく、10〜800秒がより好ましく、20〜650秒がさらに好ましい。王研式透気度が前記下限値以上であれば、インク受容層用塗液が紙基材の内部に入り込むことを抑制でき、前記上限値以下であれば、インク吸収性が向上する。
紙基材の厚さは、特に限定されないが、用途に応じて40〜500μmの範囲で適宜選択される。
[インク受容層用塗液]
インク受容層用塗液は、炭酸カルシウムを含む顔料(以下、「顔料(A)」という。)と、シリル変性ポリビニルアルコールを含むバインダー(以下、「バインダー(B)」という。)と、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体を含むインク定着剤(以下、「インク定着剤(C)」という。)と、水と、を含む塗液である。
本発明の製造方法におけるインク受容層用塗液は、顔料(A)、バインダー(B)及びインク定着剤(C)を、後述の特定の順序で水に添加して調製することで、インク受容層の記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度の性能を維持しつつ、塗液調製時に塗液が増粘することを抑制し、固形分濃度を高くすることができる。そのため、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を速やかに形成でき、インクジェット記録体の生産性が高まる。
(顔料(A))
顔料(A)は、炭酸カルシウムを必須成分とする。
炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等が挙げられ、塗工時の流動性と高速塗工に適する点から、重質炭酸カルシウムが好ましい。
また、顔料(A)は、炭酸カルシウム以外の他の顔料を含んでもよい。例えば、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、カオリン(含クレー)、酸化チタン、酸化亜鉛、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等が挙げられる。
顔料(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
他の顔料としては、インクの乾燥性や吸収性が向上することから、多孔性無機顔料が好ましく、多孔性合成非晶質シリカ、多孔質アルミナがより好ましく、インク吸収性の点から、多孔性合成非晶質シリカが特に好ましい。多孔性合成非晶質シリカとしては、より固形分濃度の高いインク受容層用塗液を得やすいことから、湿式法シリカが好ましく、沈降法シリカ、ゲル法シリカがより好ましい。
湿式法シリカは、一般にケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の中和反応により形成されるシリカであり、沈降法シリカとゲル法シリカは湿式法シリカに含まれる。
沈降法シリカは、アルカリ性のpH領域で、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を段階的に加え、沈降したシリカをろ過することで製造され、一次粒子が大きく細孔容積や吸油量の高いシリカである。
一方、ゲル法シリカは、酸性のpH領域で、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を混合して得られる。一次粒子の成長を抑えた状態で凝集を起こさせるので、強度の強いシリカである。
湿式法シリカの比表面積は、200〜600g/mが好ましく、200〜500g/mがより好ましく、200〜350g/mがさらに好ましい。湿式法シリカの比表面積が前記下限値以上であれば、インクの発色性がより良好になる。湿式法シリカの比表面積が前記上限値以下であれば、インク受容層にひび割れが生じ難い。
また、顔料(A)としては、2次粒子の平均粒子径が100nm〜20μmの顔料が好ましく、1〜15μmの顔料がより好ましい。顔料の2次粒子の平均粒子径が前記下限値以上であれば、インク受容層のインク吸収性が向上し、前記上限値以下であれば、インク受容層の光沢が高まる。なお、本明細書における平均粒子径とは、動的光散乱法を利用した粒子径測定装置を使用して測定した粒子径分布のメジアン径のことである。
インク受容層用塗液中の顔料(A)の含有量は、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましく、60〜75質量%がさらに好ましい。顔料(A)の含有量が下限値以上であれば、インク吸収性がより良好になる。顔料(A)の含有量が上限値以下であれば、充分な塗膜強度を有するインク受容層が得られやすい。
顔料(A)中の炭酸カルシウムの含有量は、20〜60質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましく、25〜45質量%がさらに好ましい。前記炭酸カルシウムの含有量が前記下限値上であれば、塗膜強度がより強くなり、また固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製することが容易になる。前記炭酸カルシウムの含有量が前記上限値下であれば、記録濃度がより良好になる。
顔料(A)としては、より固形分濃度の高いインク受容層用塗液を得やすいことから、炭酸カルシウムと湿式法シリカを併用することがより好ましく、炭酸カルシウムと沈降法シリカとゲル法シリカを併用することがさらに好ましい。
顔料(A)として、炭酸カルシウムと沈降法シリカとゲル法シリカを併用する場合、顔料(A)100質量%に対して、沈降法シリカが20〜45質量%、ゲル法シリカが20〜45質量%、炭酸カルシウムが25〜50質量%であることが好ましく、沈降法シリカが20〜35質量%、ゲル法シリカが25〜40質量%、炭酸カルシウムが30〜45質量%であることがより好ましい。これら顔料の比率が前記範囲内であれば、インク受容層の性能を維持しつつ、固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製することが容易になる。
また、この場合、顔料(A)中の沈降法シリカ、ゲル法シリカ及び炭酸カルシウムの合計質量の比率は、インクジェット記録体の生産性がより向上する点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
顔料(A)における沈降法シリカとゲル法シリカの合計質量に対する炭酸カルシウムの質量の比率は、40〜70質量%が好ましい。前記比率が前記下限値以上であれば、塗膜強度がより強くなり、また固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製することが容易になる。前記比率が前記上限値以下であれば、記録濃度がより良好になる。
また、顔料(A)における沈降法シリカの質量に対するゲル法シリカの質量の比率は、50〜200質量%が好ましく、70〜180質量%がより好ましく、90〜150質量%がさらに好ましい。前記比率が前記下限値以上であれば、塗膜強度がより強くなる。前記比率が前記上限値以下であれば、インク吸収性がより良好になる。
(バインダー(B))
バインダー(B)は、シリル変性ポリビニルアルコールを必須成分とする。シリル変性ポリビニルアルコールは、容易に架橋させることができ、インク受容層の表面強度を容易に高くできるという利点を有する。
シリル変性ポリビニルアルコールは、そのケン化度によって性状が異なるため、目的に応じてそのケン化度を選択することが好ましい。インク受容層用塗液を調製する際の発泡を抑制しやすく、作業性が良好になるうえ、インク受容層の強度が向上する点では、シリル変性ポリビニルアルコールのケン化度は、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。インク受容層の可撓性が向上する点では、シリル変性ポリビニルアルコールのケン化度は、75〜90%が好ましい。シリル変性ポリビニルアルコールは、ケン化度の異なるものを併用してもよい。
シリル変性ポリビニルアルコールの重合度は、500以上が好ましく、1000〜4000がより好ましい。シリル変性ポリビニルアルコールの重合度が前記下限値以上であれば、インク受容層の強度が向上するうえ、ひび割れを抑制しやすく、またインクジェット記録体の断裁時の紙粉発生を低減できる。シリル変性ポリビニルアルコールの重合度が前記上限値以下であれば、充分なインク吸収性を得やすく、またインク受容層用塗液の粘度がより低くなりハンドリング性が高くなる。
バインダー(B)は、シリル変性ポリビニルアルコール以外の他のバインダーを含んでもよい。
他のバインダーとしては、例えば、無変性のポリビニルアルコール;カチオン性ポリビニルアルコール等の他の変性ポリビニルアルコール;スチレン−ブタジエン系樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン系樹脂等の共役ジエン系樹脂;アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等のビニル系樹脂;カゼイン、大豆蛋白、ゼラチン、合成蛋白等の蛋白質類;澱粉、酸化澱粉等の各種澱粉類;キチン、キトサン等の各種多糖類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;水性ポリウレタン樹脂;水性ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これら他のバインダーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
バインダー(B)としては、より固形分濃度の高いインク受容層用塗液を得やすいことから、シリル変性ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル系樹脂及びポリビニルアセタール樹脂を併用することが好ましい。なお、シリル変性ポリビニルアルコールは、アセタール化されたものは含まない。すなわち、本発明におけるシリル変性ポリビニルアルコールは、アセタール化されていないシリル変性ポリビニルアルコールである。また、ポリビニルアセタールは、シリル化されていないポリビニルアセタールが好ましい。
インク受容層用塗液中のバインダー(B)の含有量は、顔料(A)100質量部に対して、30〜45質量部が好ましく、35〜40質量部がより好ましい。バインダー(B)の含有量が前記下限値以上であれば、インク受容層にひび割れが生じ難い。バインダー(B)の含有量が前記上限値以下であれば、インク吸収性がより良好になる。
バインダー(B)中のシリル変性ポリビニルアルコールの含有量は、10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、20〜45質量%がさらに好ましい。前記シリル変性ポリビニルアルコールの含有量が前記下限値上であれば、表面強度がより良好になる。前記シリル変性ポリビニルアルコールの含有量が前記上限値下であれば、インク吸収性がより良好である。
また、バインダー(B)として、シリル変性ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル系樹脂及びポリビニルアセタール樹脂を併用する場合、それらの比率は、顔料(A)100質量部に対して、シリル変性ポリビニルアルコールが5〜25質量部、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が5〜25質量部、ポリビニルアセタール樹脂が5〜25質量部であることが好ましく、シリル変性ポリビニルアルコールが5〜20質量部、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が10〜15質量部、ポリビニルアセタール樹脂が5〜15質量部であることがより好ましい。
前記比率が前記範囲内であれば、形成するインク受容層の性能を維持しつつ、より固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製することが容易になり、インクジェット記録体の生産性がさらに高まる。
(インク定着剤(C))
インク定着剤(C)は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体を必須成分とする。インク定着剤(C)を含有することで、印字画像の耐水性が向上する。
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの重合度は、7,000〜300,000が好ましく、10,000〜250,000がより好ましく、50,000〜200,000がさらに好ましい。前記重合度が前記下限値以上であれば、印字耐水性や擦過性が良好である。前記重合度が前記上限値以下であれば、塗液粘度が高くなりすぎず、塗液の調製が容易になる。
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの共重合体としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと、該ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリルアミド、アリルアミン、ジアリルアミン、メチルジアリルアミン、アクリル酸、エピクロルヒドリン、ジメチルアミン等が挙げられる。なかでも、塗液の分散性の点から、アクリルアミド、アリルアミン、ジアリルアミンが好ましい。
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの共重合体の重合度は、7,000〜300,000が好ましく、2,000〜250,000がより好ましく、50,000〜200,000がさらに好ましい。
インク定着剤(C)は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及びその共重合体以外の他のインク定着剤を含んでもよい。
他のインク定着剤としては、例えば、インクジェット記録用のインク中の染料色素を定着する作用を有する公知のインク定着剤が挙げられる。具体的には、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及びその共重合体以外の他のカチオン性樹脂や、低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤等。)等のカチオン性化合物が挙げられる。
他のインク定着剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
他のインク定着剤としては、記録濃度向上の点から、前記他のカチオン性樹脂が好ましい。
他のカチオン性樹脂としては、例えば、(a)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、(b)第2級もしくは第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、又はそれらのアクリルアミドの共重合体、(c)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類、(d)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(e)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(f)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン共重合体、(g)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、(h)ジアリルアミン塩−SO重縮合体、(i)アリルアミン塩の共重合体、(j)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(k)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、(l)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等が挙げられる。
インク受容層用塗液中のインク定着剤(C)の含有量は、顔料(A)100質量部に対して、5〜20質量部が好ましく、5〜18質量部がより好ましく、5〜15質量部がさらに好ましい。インク定着剤(C)の含有量が前記下限値以上であれば、記録濃度が向上し、また印字画像の耐水性が向上する。インク定着剤(C)の含有量が前記上限値以下であれば、インク受容層の塗膜強度が向上する。
インク受容層用塗液中のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体の含有量は、顔料(A)100質量部に対して、5〜20質量部が好ましく、5〜18質量部がより好ましく、5〜15質量部がさらに好ましい。前記含有量が前記下限値以上であれば、記録濃度が向上し、また印字画像の耐水性が向上する。前記含有量が前記上限値以下であれば、インク受容層の塗膜強度が向上する。
インク定着剤(C)中のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体の比率は、塗液の分散性の点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
(他の成分)
本発明の製造方法に用いるインク受容層用塗液は、有機酸を含有することが好ましい。有機酸を含有することにより、塗液調製時の塗液の増粘を抑制することが容易になる。そのため、固形分濃度のより高いインク受容層用塗液が調製でき、その結果、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を備えたインクジェット記録体をより高い生産性で製造できる。
有機酸とは、酸性基(カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基)を有する有機化合物のことである。有機酸の中でも、反応性が穏やかなため、インク受容層用塗液中に共存する他の物質への影響が少ないことから、カルボキシ基を有する有機化合物が好ましい。
カルボキシ基を有する有機化合物としては、蟻酸、酢酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。なかでも、より高濃度のインク受容層用塗液を得やすいことから、リンゴ酸、乳酸及び酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これら有機酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
インク受容層用塗液に有機酸を使用する場合、インク受容層用塗液中の有機酸の含有量は、顔料(A)100質量部に対して、0.1〜1質量部が好ましく、0.2〜0.8質量部が好ましく、0.3〜0.6質量部がさらに好ましい。有機酸の含有量が前記下限値以上であれば、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすい。有機酸の含有量が前記上限値以下であれば、インク吸収性及び塗膜強度が優れたインク受容層を形成しやすい。
また、本発明の製造方法に用いるインク受容層用塗液は、顔料の分散性が向上し、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすくなることから、硫酸アルミニウム、硫酸水素ナトリウム、カリミョウバン等を配合することが好ましい。なかでも、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすいことから、硫酸アルミニウムが好ましい。
インク受容層用塗液に硫酸アルミニウムを使用する場合、インク受容層用塗液中の硫酸アルミニウムの含有量は、顔料(A)100質量部に対して、0.1〜1質量部が好ましく、0.3〜0.9質量部がより好ましく、0.5〜0.7質量部がさらに好ましい。硫酸アルミニウムの含有量が前記下限値以上であれば、固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすくなる。硫酸アルミニウムの含有量が前記上限値以下であれば、含有する炭酸カルシウムから炭酸ガスが発生して泡が発生することを抑制しやすい。
また、本発明の製造方法に用いるインク受容層用塗液には、一般のインク受容層用塗液に含まれる消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤や、蛍光染料、着色剤を用いてもよい。
インク受容層用塗液の固形分濃度は、28〜35質量%が好ましく、29〜34質量%がより好ましく、30〜33質量%がさらに好ましい。インク受容層用塗液の固形分濃度が前記下限値以上であれば、インク受容層用塗液の乾燥時間をより短縮でき、インクジェット記録体をより高い生産性で製造できる。また、インク受容層用塗液の固形分濃度が前記上限値以下であれば、より良好な塗工適性のインク受容層用塗液が得られる。
インク受容層用塗液の粘度は、100〜2000mPa・sが好ましく、150〜1500mPa・sがより好ましく、200〜1000mPa・sがさらに好ましい。インク受容層用塗液の粘度が前記下限値以上であれば、塗工量を調整しやすい。インク受容層用塗液の粘度が前記上限値以下であれば、塗液のレベリングが良好である。
なお、インク受容層用塗液の粘度とは、B型粘度計(カップ形状:直径60mm×高さ80mm、No.3ローター使用、回転数60rpm)により20℃で測定した値を意味する。
(インク受容層用塗液の調製方法)
本発明の製造方法に用いるインク受容層用塗液は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体、炭酸カルシウム、シリル変性ポリビニルアルコールの順に水に添加して調製する。これにより、インク受容層の記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度の性能を維持しつつ、塗液調製時に塗液が増粘することを抑制し、固形分濃度を高くすることができる。そのため、このインク受容層用塗液を用いることで、優れたインク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造することができる。
また、本発明の製造方法に用いるインク受容層用塗液は、有機酸を顔料(A)よりも前に水に添加して調製することが好ましい。これにより、塗液調製時に発泡して塗液中にブツが生じることを抑制することができ、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液が容易になる。有機酸を2種以上使用する場合、全ての有機酸を顔料(A)よりも前に添加することが好ましい。
インク定着剤(C)は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体を炭酸カルシウムよりも前に添加すればよく、全てのインク定着剤(C)が全ての顔料(A)よりも前に添加されることが好ましい。また、有機酸とインク定着剤(C)の添加は、いずれが先であってもよく、同時であってもよい。
また、分散剤を用いる場合、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液が得られやすいことから、分散剤は顔料(A)よりも前に添加することが好ましい。分散剤と、有機酸及びインク定着剤(C)との添加順序は特に限定されない。
また、消泡剤を用いる場合、消泡剤は顔料(A)よりも前に添加することが好ましい。
顔料(A)が2種以上の場合、それら顔料(A)の添加順序は特に限定されない。例えば、顔料(A)として湿式法シリカと炭酸カルシウムを併用する場合、湿式法シリカを添加した後に炭酸カルシウムを添加してもよく、炭酸カルシウムを添加した後に湿式法シリカを添加してもよい。
バインダー(B)は、シリル変性ポリビニルアルコールを、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体と炭酸カルシウムよりも後に添加すればよく、有機酸、インク定着剤(C)、分散剤を添加した後に添加することが好ましい。顔料(A)とバインダー(B)の添加順序は、炭酸カルシウムがシリル変性ポリビニルアルコールよりも前に添加される順序であれば特に限定されない。顔料(A)として湿式法シリカ及び炭酸カルシウムを使用する場合、塗料中に凝集物が発生することを抑制しやすい点から、炭酸カルシウム、シリル変性ポリビニルアルコール、湿式法シリカの順が好ましい。
また、バインダー(B)が2種以上の場合、それらバインダーの添加順序は特に限定されない。
例えば、水、有機酸、インク定着剤(C)、顔料(A)、バインダー(B)及び分散剤を含むインク受容層用塗液を調製する場合、各成分の水への添加順序は、下記(i)〜(vi)の順序が好ましい。
(i)有機酸、分散剤、インク定着剤(C)、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(ii)有機酸、インク定着剤(C)、分散剤、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(iii)分散剤、有機酸、インク定着剤(C)、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(iv)インク定着剤(C)、有機酸、分散剤、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(v)分散剤、インク定着剤(C)、有機酸、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
(vi)インク定着剤(C)、分散剤、有機酸、顔料(A)、バインダー(B)の順序。
以上説明した本発明のインクジェット記録体の製造方法によれば、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液を調製でき、優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を有するインクジェット記録体を高い生産性で製造することができる。
なお、本発明のインクジェット記録体の製造方法は、前記した方法には限定されない。例えば、インク受容層上にさらに別の層を形成する方法であってもよい。また、支持体のインク受容層を設けていない面に別の層を有していてもよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
[製造例1:古紙パルプAの製造]
パルパーにてケント古紙(灰分33.2%)を離解し、除塵装置(クリーナー及びスクリーン)を通過させた後、傾斜エキストラクター及びスクリュープレス脱水機により固形分濃度が30%程度となるまで濃縮した。その後、フォスフォスルフォンアミジン(FAS)を添加して漂白しながら、ディスパーザーを用いて分散処理を行い、さらに水で希釈しながらパルプ洗浄機(DNTウォッシャー:相川鉄工製)に通した後、フリーネスを300mLに調整し、古紙パルプAを得た。この古紙パルプAの灰分は10.5%、平均繊維長0.1mm以下の微細繊維の含有量は13%であった。
なお、灰分はJIS P8251に従い、525℃にて焼成して下式により求めた値である(以下、同じ。)。
Z(%)=(X/Y)×100
ただし、Zは古紙パルプAの灰分、Xは焼成後の残留物の質量、Yは焼成前の古紙パルプAの固形分の質量である。
また、平均繊維長は、JIS P8220のパルプ離解方法により離解した測定試料の繊維長を、JAPAN TAPPI No.52で規定された光学式自動計測法でのパルプ繊維長試験方法により測定し、数基準で求めた繊維長の平均である(以下、同じ。)。
[製造例2:原紙の製造]
以下に示す紙料及び条件にて、多層抄き合わせ長網抄紙機により、3層構成(表層/中層/裏層)の紙厚220μmの原紙を作成した。なお、表層と中層の層間、及び中層と裏層の層間には、それぞれ3.0%の酸化澱粉水溶液を固形分で0.3g/m塗布して抄き合わせした。
また、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)と表面サイズ剤(商品名:ポリマロン1329K、荒川化学工業社製)を質量比9:1で混合した固形分13.5%のサイズ液を、ロードブレードコータによって、原紙の表面及び裏面にそれぞれ固形分が2g/mとなるように塗布した後、乾燥し、キャレンダで平滑化処理した。
(表層及び裏層)
坪量:50g/m
パルプ配合:フリーネスを520mLに調整した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)100%。
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を有姿濃度で対パルプ0.3%添加した。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを有姿濃度で対パルプ5.0%添加した。
歩留向上剤:高分子量ポリアクリルアミドを有姿濃度で対パルプ0.025%添加した。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を有姿濃度で対パルプ0.5%添加した。
(中層)
坪量:90g/m
パルプ配合:古紙パルプA 100%。
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を有姿濃度で対パルプ1.5%添加した。
歩留向上剤:高分子量ポリアクリルアミドを有姿濃度で対パルプ0.02%添加した。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を有姿濃度で対パルプ10.0%添加した。
[実施例1]
(インク受容層用塗液の調製)
分散媒である水140部に、リンゴ酸(磐田化学社製)0.4部と、硫酸アルミニウム(キシダ化学社製)0.6部と、分散剤である非イオン性界面活性剤(商品名:エマルゲンA−60、花王社製)0.6部とを添加して撹拌した。その後、インク定着剤であるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:ユニセンスCP102、重量平均分子量:50,000、センカ社製)10部と、消泡剤(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製)とを添加して撹拌した。次いで、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン2200、備北粉化社製)30部を加えて撹拌した。次いで、沈降法シリカ(商品名:ファインシール(登録商標)X−30、トクヤマ社製、比表面積290g/m)35部と、ゲル法シリカ(商品名:サイロイド74X5500、グレースデビソン社製、比表面積250g/m)35部とを順に少量ずつ撹拌しながら加えた。よく撹拌した後、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R−1130、クラレ社製、ケン化度98〜99%、重合度1700)10部と、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(商品名:ポリゾールAM3150、昭和電工社製)20部と、ポリビニルアセタール樹脂(商品名:エスレックK KW10、積水化学工業社製)7.5部とを添加して撹拌し、少量の水を加えて固形分濃度33%のインク受容層用塗液1を得た。
(インクジェット記録体の製造)
製造例2で得られた原紙の表面に、インク受容層用塗液1をロッドブレードコータで塗工し、乾燥して固形分10g/mのインク受容層を形成し、インクジェット記録体を得た。
[実施例2〜4]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液2〜4(実施例2がインク受容層用塗液2、以下順に実施例3、4がインク受容層用塗液3、4である。)を得た。また、インク受容層用塗液2〜4を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[実施例5]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを表1に示すとおりに変更し、かつポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドと消泡剤を添加した後、沈降法シリカ、ゲル法シリカ、及び重質炭酸カルシウムをこの順に少量ずつ撹拌しながら添加した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液5を得た。また、インク受容層用塗液5を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[実施例6]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとバインダーを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液6を得た。また、インク受容層用塗液6を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[比較例1]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドに代えて、5員環アミジン構造を有するポリビニルアミン共重合物4級アンモニウム塩酸塩(商品名:ハイマックスSC−700M、重量平均分子量:30,000、ハイモ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液7を得た。なお、各成分を添加していく途中で塗料の増粘が激しくなったため、水を増量してインク受容層用塗液7の固形分濃度を26%に調整した。
また、インク受容層用塗液7を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[比較例2]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドに代えて、ジアリルアミン塩酸塩とアクリルアミドの共重合体(商品名:スミレーズレジン#1001、重量平均分子量:300,000、住友化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液8を得た。なお、各成分を添加していく途中で塗料の増粘が激しくなったため、水を増量してインク受容層用塗液8の固形分濃度を26%に調整した。
また、インク受容層用塗液8を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。
[比較例3]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを添加する順序を、重質炭酸カルシウムを添加した後で、かつ沈降法シリカ及びゲル法シリカを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液9を得た。なお、各成分を添加していく途中で塗料の増粘が激しくなったため、水を増量してインク受容層用塗液9の固形分濃度を18%に調整した。
[比較例4]
シリル変性ポリビニルアルコールを添加する順序を、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び消泡剤を添加した後で、かつ重質炭酸カルシウムを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液10を得た。得られたインク受容層用塗液10にはブツが生じていたため、インクジェット記録体の製造は行わなかった。
[比較例5]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの種類を表1に示すとおりに変更し、またポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを添加する順序を、重質炭酸カルシウムを添加した後で、かつ沈降法シリカ及びゲル法シリカを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液11を得た。なお、各成分を添加していく途中で塗料の増粘が激しくなったため、水を増量してインク受容層用塗液11の固形分濃度を12%に調整した。
[比較例6]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの種類を表1に示すとおりに変更し、またシリル変性ポリビニルアルコールを添加する順序を、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び消泡剤を添加した後で、かつ重質炭酸カルシウムを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液12を得た。なお、各成分を添加していく途中で塗料の増粘が激しくなったため、水を増量してインク受容層用塗液12の固形分濃度を24%に調整した。
[比較例7]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの種類と、バインダーの添加量を表1に示すように変更し、またポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを添加する順序を、重質炭酸カルシウムを添加した後で、かつ沈降法シリカ及びゲル法シリカを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液13を得た。なお、各成分を添加していく途中で塗料の増粘が激しくなったため、水を増量してインク受容層用塗液13の固形分濃度を15%に調整した。
[比較例8]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドの種類と、バインダーの添加量を表1に示すように変更し、またシリル変性ポリビニルアルコールを添加する順序を、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び消泡剤を添加した後で、かつ重質炭酸カルシウムを添加する前に変更した以外は、実施例1と同様にしてインク受容層用塗液14を得た。得られたインク受容層用塗液14にはブツが生じていたため、インクジェット記録体の製造は行わなかった。
Figure 2013151087
ただし、表1における略号は以下の意味を示す。
シリル変性PVA:シリル変性ポリビニルアルコール。
EVA系樹脂:エチレン−酢酸ビニル系樹脂。
A−60:商品名「エマルゲンA−60」、花王社製。
CP102:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、商品名「ユニセンスCP102」、重量平均分子量50,000、センカ社製。
DC902P:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、商品名「シャロールDC902P」、重量平均分子量9,000、第一工業製薬社製。
CP103:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、商品名「ユニセンスCP103」、重量平均分子量140,000、センカ社製。
PAS−J−81:ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、商品名「PAS−J−81」、重量平均分子量200,000、日東紡績社製。
SC−700M:5員環アミジン構造を有するポリビニルアミン共重合物4級アンモニウム塩酸塩、商品名「ハイマックスSC−700M」、重量平均分子量:30,000、ハイモ社製。
#1001:ジアリルアミン塩酸塩とアクリルアミドの共重合体、商品名「スミレーズレジン#1001」、重量平均分子量300,000、住友化学社製。
2200:商品名「ソフトン2200」、備北粉化社製。
1407K:商品名「ノプコ1407K」、サンノプコ社製。
X−30:商品名「ファインシール(登録商標)X−30」、トクヤマ社製。
74X5500:商品名「サイロイド74X5500」、グレースデビソン社製。
R−1130:商品名「R−1130」、クラレ社製。
AM3150:商品名「ポリゾールAM3150」、昭和電工社製。
KW10:商品名「エスレックK KW10」、積水化学工業社製。
[粘度]
各例で得られたインク受容層用塗液の粘度(単位:mPa・s)は、B型粘度計(カップ形状:直径60mm×高さ80mm、No.3ローター使用、回転数60rpm)により20℃で測定した。
[塗料適性]
各例のインク受容層用塗液の塗工適性を以下の基準で評価した。
「○」:安定して塗工可能である。
「△」:塗液の粘度が高すぎて塗工が難しい。
「×」:塗液にブツが生じており、塗工不能である。
[記録濃度]
インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、商品名:EP−703A、印字モード:郵便ハガキ(インクジェット))を用い、得られたインクジェット記録体のインク受容層に黒色インクでベタ印字し、記録濃度をマクベス反射濃度計(モデル:Gretag Macbeth RD−19、マクベス社製)で測定した。
[インク吸収性]
インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、商品名:EP−703A、印字モード:郵便ハガキ(インクジェット))を用い、得られたインクジェット記録体のインク受容層に緑色インクをベタ印字し、ベタ印字画像中に斑があるかどうかを目視で観察して以下に示す基準で評価した。印字斑は、先に打ち込まれたインクが、インクジェット記録体のインク受容層に完全に吸収されないうちに次のインクが飛来して表面で重なった場合に生ずる現象であり、インク吸収速度が遅くなるほど顕著に表れる。
「◎」:印字斑が全く見られない。
「○」:印字斑が多少あるが、実用上問題がない。
「△」:印字斑が多く見られ、実用性が低い。
「×」:印字斑がひどく、実用性が低い。
[塗膜強度]
摩擦試験機(スガ試験機社製)に、市販の黒画用紙(日清紡社製)と荷重200gの重りを設置し、得られたインクジェット記録体のインク受容層の表面を20往復擦り、表面の傷の程度を目視により確認して以下の基準で評価した。
「◎」:表面に傷が全く見られず、良好である。
「○」:表面に傷は若干見られるが、実用上は問題ない。
「△」:表面に傷が多く見られ、実用上問題がある。
「×」:表面に傷が非常に多く見られ、実用上問題がある。
各例の評価結果を表2に示す。
Figure 2013151087
表2に示すように、実施例1〜6では、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体、炭酸カルシウム、シリル変性ポリビニルアルコールの順に水に添加することで、優れた塗工適性を有する固形分濃度の高いインク受容層用塗液1〜6を調製することができた。また、該インク受容層用塗液1〜6によって優れた記録濃度、インク吸収性及び塗膜強度を有するインク受容層を形成できた。
一方、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及びその共重合体以外のカチオン性樹脂を用いた比較例1及び2のインク受容層用塗液7及び8は、固形分濃度を高めようとすると塗液が増粘し、塗液の固形分濃度を充分に高くすることができず、インク受容層の性能も劣っていた。
重質炭酸カルシウムを添加した後にポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを添加した比較例3、5、7では、固形分濃度を高めようとすると塗液が増粘し、インク受容層用塗液9、11、13の固形分濃度を充分に高くすることができず、インク受容層の塗膜強度も低かった。
重質炭酸カルシウムを添加する前にシリル変性ポリビニルアルコールを添加した比較例4及び8では、インク受容層用塗液10及び14中にブツが生じており塗工できなかった。また、同様の添加順序の比較例6のインク受容層用塗液12は、固形分濃度を充分に高くすることができなかった。
本発明のインクジェット記録体の製造方法は、固形分濃度が高く、塗工適性の良好なインク受容層用塗液を用いるため、従来の製造設備における生産性の向上に貢献する。さらに、これまで生産性に適さないとされていた乾燥能力の不充分な設備、例えば、抄紙機内に付属する塗工手段(オンマシンコーター)によってもインクジェット記録体の製造を可能とすることができる。さらに、新たに製造設備を導入する場合においても、乾燥能力を抑えることができるので、設備投資を軽減することができる。

Claims (3)

  1. 支持体上にインク受容層用塗液を塗工し、乾燥してインク受容層を形成するインクジェット記録体の製造方法であって、
    前記インク受容層用塗液が、炭酸カルシウムを含む顔料と、シリル変性ポリビニルアルコールを含むバインダーと、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体を含むインク定着剤と、水とを含み、かつ前記ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体、前記炭酸カルシウム、前記シリル変性ポリビニルアルコールの順に水に添加されて調製された塗液であることを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
  2. 前記ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体の重量平均分子量が7,000〜300,000である、請求項1に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  3. 前記顔料100質量部に対して、前記ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及び/又はその共重合体が5〜20質量部である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録体の製造方法。
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