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JP2013076123A - 銅合金管 - Google Patents

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Abstract

【課題】ろう付け時等の加熱時に、950℃を超えるような温度に過剰に加熱された場合にも、溶け割れの発生の可能性を低減した銅合金管を提供する。
【解決手段】熱交換器用銅合金管は、Sn:0.1乃至1.0質量%、P:0.001乃至0.100質量%、Zr:0.01乃至0.30質量%及びAl:0.0001乃至0.0050質量%を含有し、S:0.0020質量%以下、O:0.0050質量%以下、H:0.0002質量%以下に規制し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する。そして、管軸を含む断面において、肉厚方向の平均結晶粒径が30μm以下であり、1000℃での絞り値が20%以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、配管用銅合金管及び熱交換器用銅合金管のろう付け時の加熱による溶け割れを防止した銅合金管に関する。
りん脱酸銅管(JISH3300C1220T)は、ルームエアコン、パッケージエアコン、二酸化炭素冷媒ヒートポンプ式給湯器、冷蔵庫、ショーケース、及び自動販売機等の熱交換器、又はコンプレッサ周辺の機内配管及び部品等に広く使われている。
例えば、ルームエアコンの熱交換器は、ヘアピン状に曲げ加工したU字形銅管(以下、銅合金管も含めて銅管という)を、アルミニウムフィンの貫通孔に通し、前記銅管を治具により拡管することによって、銅管とアルミニウムフィンとを密着させ、更に銅管の開放端を拡管し、この拡管部にU字形に曲げ加工した銅製リターンベンド管を挿入し、りん銅ろう等のろう材により拡管部とリターンベンド管とを接合して、ヘアピン状の銅管とリターンベンド管を連結することにより、熱交換器が製造されている。
また、コンプレッサと熱交換器をつなぐ機内配管では、銅管を任意に曲げ加工した材料を作製して、必要であれば管端を拡管又は縮管加工を行い、コンプレッサと熱交換器を上述のりん銅ろう等のろう材によって、機内配管により連結して、ルームエアコンを組み立てている。
一方、ルームエアコンなどに使用される冷媒には、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)系のフロンが広く使用されてきたが、HCFCはオゾン破壊係数が高いことから、環境保護の観点によりその値が小さいHFC(ハイドロフルオロカーボン)系フロンが使用されるようになってきた。更に、ヒートポンプ式給湯器及び自動販売機には、HFCよりも更に環境にやさしい自然冷媒である二酸化炭素が使用されるようになってきている。例えば、高圧ガス保安法冷凍保安規則関係例示基準等に規定される冷媒ガスの設計圧力は、高圧部の基準凝縮温度が43℃のとき、HCFCのR22では1.6MPaであるのに対して、HFCのR410Aが2.6MPa、二酸化炭素が8.3MPaと増大している。
設計圧力が高くなれば、熱交換器又は機内配管の銅管の肉厚を厚くして強度に耐えられるようにする必要がある。しかし、資源の有効活用の観点から、またコスト上の観点から、銅管の肉厚を上げて銅の使用量が多くなることについては問題がある。この課題を解決するために、従来のりん脱酸銅管に変えて、Sn及びCo等の添加により強度を高めた高強度銅管が開発され、市場に供されるようになった。この高強度銅管は、従来の銅管よりも強度が高く、その分、肉厚を薄くすることができ、銅の使用量を削減して、省資源及び製品の低コスト化を図ることができる。また、この高強度銅管は、日本工業規格JISH3300にも追加登録(2009年7月20日)されて、従来のりん脱酸銅管に変わる新しい材料として期待されている。
例えば、本願出願人は、特許文献1にて、Sn:0.1乃至1.0質量%、P:0.005乃至0.1質量%、O:0.005質量%以下及びH:0.0002質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下である熱交換器用銅管を提案した。また、本願出願人は、特許文献2にて、Sn:0.1乃至2.0質量%、P:0.005乃至0.1質量%、S:0.005質量%以下、O:0.005質量%以下及びH:0.0002質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、引張り強さ255N/mm以上であり、管軸直交断面において、管の肉厚方向と垂直な方向に測定した平均結晶粒径が30μm以下である銅合金管であって、前記銅合金管の引張り強さをαa、破壊圧力をPFa、前記銅合金管と同一外径及び肉厚のりん脱酸銅管の引張り強さをαd、破壊圧力をPFdとしたとき、(PFa)/(σa)>(PFd)/(σd)である熱交換器用銅合金管を提案した。
特開2003−268467号公報 特開2008−174785号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された銅合金は、その所期の目的を達成し、Snの固溶強化によって強度が向上しているものの、配管等をりん銅ろうによりろう付けする際に(800〜950℃)、引張応力が印加されていると、極めてまれに、割れが発生することがある。
ろう付け時の銅合金管の脆化割れとして、高温での銅合金管の延性(伸び、絞り)の低下による脆化割れと、高温での銅合金管の粒界の溶融による溶け割れとがある。脆化割れは以下の機構により発生すると推定される。つまり、Cu−Sn系の高強度銅管は、800℃以上の温度において、りん脱酸銅に比して、その延性が低く、そのため、引張応力が印加された状態では、十分に変形することができず、割れに至ると考えられる。そして、本願出願人は、この脆化割れについて、それを防止した銅合金管を出願した(特願2010−080825号)。
一方、ろう付け時に、950℃を超えるような高温になると、この950℃から融点直下までの温度域において、銅合金管には溶け割れが発生する虞がある。Cu−Sn系銅合金管は、950℃を超える温度に加熱されると、りん脱酸銅よりも低い温度で粒界が溶融して、溶け割れに至りやすい。
なお、このような特殊な状況下において、引張応力が印加されないように製造工程を変更したり、ろう付け時の火力を配管形状ごとに調整するというような対策は、生産性の点から現実的ではない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ろう付け時等の加熱時に、950℃を超えるような温度に過剰に加熱された場合にも、溶け割れの発生の可能性を低減した銅合金管を提供することを目的とする。
本発明に係る銅合金管は、Sn:0.1乃至1.0質量%、P:0.001乃至0.100質量%、Zr:0.01乃至0.30質量%及びAl:0.0001乃至0.0050質量%を含有し、S:0.0020質量%以下、O:0.0050質量%以下、H:0.0002質量%以下に規制し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する銅合金の管材であって、管軸を含む断面において、肉厚方向の平均結晶粒径が30μm以下であり、1000℃での絞り値が20%以上であることを特徴とする。
更に、上述の各銅合金管は、熱交換器に使用することができる。
なお、平均結晶粒径は、銅合金の管軸を含む断面において、JISH0501に定められた切断法により肉厚方向の平均結晶粒径を測定し、この肉厚方向の平均結晶粒径を管軸方向に100mm間隔の10箇所で測定し、その平均値としたものである。
本発明によれば、りん銅ろうによるろう付け時等に950℃を超える高温に過剰に加熱された場合にも、溶け割れの発生の可能性を著しく低減することができる。
割れ試験の方法を示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明者等が、高温での延性・靭性(絞り値、伸び)を向上させると共に、溶け割れを防止できる熱交換器用銅合金管を開発すべく種々実験研究した結果、銅合金管のSn含有量、P含有量、Zr含有量、Al含有量及びその他の合金元素の含有量、及び平均結晶粒径を適切に規定することによって、過剰な高温に加熱されたときの溶け割れが防止された銅合金管を得ることができることを見出した。
以下、本発明の銅合金管の成分添加理由及び組成の数値限定理由について説明する。
「Sn:0.1乃至1.0質量%」
Snは固溶硬化によって、引張強さを向上させると共に、りん銅ろうなどのろう付けによる熱影響に対して結晶粒の粗大化を抑制して、銅合金管の耐熱性を向上させる。しかし、高温加熱されたとき、Sn含有合金では、Sn含有量の増加に伴って高温での延性低下が認められることを見出した。Snが高温延性を低下させる機構は明確ではないが、高温での粒界若しくは粒界近傍の強度又は延性を低下させることにより、割れが発生したと思われる。Snの含有量が1.0質量%を超えると、高温における延性低下が大きくなると共に、鋳塊における凝固偏析が激しくなり、通常の熱間押出及び/又は加工熱処理により、偏析が完全に解消しないことがあり、銅合金管の組織、機械的性質、曲げ加工性、ろう付け後の組織及び機械的性質の不均一、耐食性の低下等をもたらす。また、Sn含有量が1.0質量%を超えると、必要な押出圧力が高くなり、Sn含有量が1.0質量%以下の銅合金と同一の押出圧力で押出成形しようとすると、押出温度を上げることが必要になり、それにより押出材の表面酸化が増加し、生産性が低下し、銅合金管の表面欠陥が増加する。また、本発明の銅合金へのSnの含有量が0.1質量%未満であると、焼鈍後及びろう付け加熱後に十分な引張強さ及び細かい結晶粒径を得ることができなくなり、更にりん銅ろう等によるろう付け加熱時の強度低下抑制効果及び結晶粒粗大化防止効果が、不十分なものとなってしまう。従って、Snの含有量を0.1乃至1.0質量%とすることが必要である。
「P:0.001乃至0.100質量%」
Pは、Snと同様に、銅合金管の高温延性を低下させ、Snによる高温延性の低下を助長する。P含有量が0.100質量%を超えると、本発明の銅合金の特に高温における延性低下が大きくなり、また導電率が低下したり、熱間加工性及び冷間加工性が阻害されてしまう。一方、P含有量が0.001質量%未満であると、所定の強度を得ることができず、また脱酸が不十分となり、酸化物が鋳塊に巻き込まれ、鋳塊の健全性が低下すると共に、製造された管の曲げ加工性が低下しやすくなる。従って、Pの含有量を0.001乃至0.100質量%にすることが必要である。
「Zr:0.01乃至0.30質量%」
配管等をりん銅ろうによりろう付けする際に、そのろう付け温度は、通常800〜950℃であるが、この配管等が不用意に950℃を超えるような高温に加熱された場合、材質がCu−Sn系銅合金管の場合は、その結晶粒界のSnの濃度が結晶粒内より高いことから、この粒界の融点が粒内よりも低下し、その結果粒界が先に溶融して応力を支えきれなくなる。これが溶け割れの現象である。
この溶け割れは、Cu−Sn系銅合金管にZrを添加することにより、著しく低減することが可能になる。溶け割れ発生が低減される機構は明確でないが、応力が負荷された状態でろう付け加熱により温度が上昇すると、到達温度が950℃を超えない状態でも、Zrを含有しないCu−Sn系銅合金管では粒界に作用する応力が粒界の強度を超え、破壊が起こる。一方、Zrを含有させることにより、粒界の強度が向上するか、又は粒界近傍で応力集中が緩和される等の現象が発現すると推定される。これにより、粒界での割れの起点が減少し、950℃未満の温度で割れが抑制されると共に、加熱温度が950℃を超えても、粒界近傍での応力が減少していることから、溶け割れの発生が大幅に低減される。このように、Zrの含有量を適切に設定することにより、950℃未満に加熱したときの割れだけでなく、950℃を超える過剰の加熱による溶け割れをも防止することができる。このためには、Zrを0.01乃至0.30質量%添加することが必要である。Zrが0.01質量%未満では、800乃至950℃での延性の回復効果があり、950℃未満の割れ防止に効果はあるものの、前述の950℃を超えた場合の溶け割れの十分な対策とはならない。従って、安定して溶け割れを防止するためには、Zrを0.01質量%以上添加することが必要である。一方、Zr含有量が0.30質量%を超えると、Zrの粗大な晶出物が発生し、管の曲げ加工性を低下させる。よって、Zr含有量は0.01乃至0.30質量%とする。
「Al:0.0001乃至0.0050質量%」
不可避的不純物であるSは低融点であり、微量でも粒界に濃縮して粒界の強度を下げ、銅合金管の高温での脆化を助長する。Alは、Sを、溶解鋳造工程において、溶解中に安定したAl硫化物(Al等)として分離し、除去するという作用を有する。また、Alは、その後の加工熱処理工程において、粒界になお存在するSを、安定したAl硫化物(Al等)として無害化する作用を有する。Al含有量が0.0001質量%未満では、Sを分離し、除去する効果が十分でなく、Sが鋳塊中に残留してしまい、高温での材料の脆化を助長すると共に、熱間加工時に割れなどの原因となる。一方、Al含有量が0.0050質量%を超えると、導電率の低下が大きくなり、またAlの酸化物の巻き込みにより、合金管に表面疵が発生し、曲げ加工性の低下等、材料の特性を低下させる。よって、Al含有量は、0.0001乃至0.0050質量%とする。
「S:0.0020質量%以下」
Sは、固溶せずに、粒界に濃縮しやすく、融点が低いために、粒界の強度を著しく低下させ、本発明の銅合金の高温での延性を低下させる。Sは本発明の銅合金中において、Cuと化合物を形成して母相中に存在する。Sの含有量が増えると、鋳造時の鋳塊割れ及び熱間押出工程における熱間押出割れが増加する。また、熱間押出割れが発生しないまでも、押出材を冷間圧延し、抽伸加工すると、材料内部のCu−S化合物は管の軸方向に伸張し、Cu−S化合物の界面で割れが発生しやすく、製品加工中及び加工後の製品において、表面疵及び割れ等が発生し、製品の歩留りを低下させる。また、Cu−S化合物界面で割れが発生しない場合でも、本発明の銅合金管に曲げ加工を行う際、割れ発生の起点となり、曲げ部で割れが発生する頻度が高くなる。このような問題を改善するために、本発明の銅合金におけるSの含有量は0.0020質量%以下、望ましくは0.0010質量%以下に規制する必要がある。
Sは、銅地金、及びスクラップ等の原料、スクラップに付着する油、溶解鋳造雰囲気(溶湯を被覆する木炭/フラックス、溶湯と接触する雰囲気中のSOxガス、炉材等)から、比較的簡単に溶湯中に取り込まれるため、S含有量を0.0020質量%以下とするには、低品位のCu地金及びスクラップの使用量を低減し、溶解雰囲気のSOxガスを低減し、適正な炉材を選定し、Mg及びCa等のように、Sと親和性が強い元素を溶湯に微量添加すること等の対策が有効である。
「O:0.0050質量%以下(50ppm以下)」
本発明の銅合金管においては、溶け割れを抑制する元素として、Zrを添加するが、そのZrが酸化されてしまうと、Zrの添加効果が消失する。このため、Oは0.0050質量%以下とする。また、Oの含有量が0.0050質量%を超えると、Cu及びSnの酸化物が鋳塊に巻き込まれ、鋳塊の健全性が低下すると共に、製造された管の曲げ加工性が低下しやすくなる。また、Oの含有量が0.0050質量%を超えると、水素脆化を起こす危険性が増大する。このため、Oの含有量を0.0050量%以下とする必要がある。曲げ加工性をより改善するには、Oの含有量を0.003質量%以下とすることが望ましく、0.0015%以下とすることが更に望ましい。
「H:0.0002質量%以下(2ppm以下)」
溶解鋳造時に溶湯に取り込まれる水素が多くなると、その水素が粒界に集まって、高温での延性低下を促進しやすくなる。また、溶湯に取り込まれる水素が多くなると、ピンホールが発生しやすくなり、水素が粒界に濃化した状態で鋳塊中に存在すると、熱間押出時の割れを発生させやすくなる。また、水素が過剰であると、押出後においても、焼鈍時に、粒界に水素に起因する膨れが発生しやすくなり、製品歩留が低下する。このため、本発明の銅合金管においては、Hの含有量を0.0002質量%以下とすることが必要である。製品歩留りをより向上させるにはHの含有量を0.0001質量%以下とすることが望ましい。
なお、Hの含有量を0.0002質量%以下とするためには、溶解鋳造時の原料を乾燥状態にすること、溶湯被覆木炭を赤熱すること、溶湯と接触する雰囲気の露点を低く保持すること、及びりん添加前の溶湯を酸化気味にすること等の対策が有効である。
「結晶粒度:平均結晶粒径が30μm以下」
結晶粒度は、素材の強度と曲げ等の加工性に重要な役割を果たしている。一般に、結晶粒度が小さければ強度は高く、曲げ加工性が向上する。結晶粒度が大きいと強度が低くなる。結晶粒度が30μmを超えると、強度が低下して、エアコン等の熱交換器に組み込んだときの耐圧が不十分となり、またろう付け後の強度を十分に維持できない。従って、平均結晶粒径は、30μm以下、更には15μm以下が好ましい。
なお、高温で引張応力が印加された状態では、結晶粒径が小さい方が高温延性の低下を抑制するのに有利である。本発明合金では、800℃、10分間加熱された後の結晶粒径が70μm以下であることが望ましい。
「1000℃での絞り値が20%以上」
高ろう付け温度に相当する1000℃での絞り値が、20%未満であると、ろう付け時に引張応力が印加された場合に、割れが生じる危険性があることがわかった。このため、1000℃における絞り値が20%以上であることが必要である。なお、900℃での絞り値が25%以上、また、950℃での絞り値が20%以上であることが更に望ましい。本発明の銅合金管は、熱交換器の配管等に使用され、引張応力が印加された状態でろう付けされる態様で使用される場合でも、1000℃における絞り値が20%以上であるので、高温における延性が極めて優れたものであり、850℃を超える高温に加熱されても、割れを防止することができる。なお、絞りとは、管の引張試験後の破断部の断面積を試験前の断面積で除した比率のことで、この値が高い程、延性が高い。
以下、本発明の銅合金管の製造方法の一例について説明する。以下に示す製造方法は平滑管の場合についてのものであるが、内面溝付管の場合は、周知の内面溝付工程が付加される。
先ず、原料の電気銅を木炭被覆のもとで溶解し、銅が溶解した後、Sn及び必要な添加元素を所定量添加し、更に、脱酸を兼ねてCu−15質量%P中間合金によりPを添加する。このとき、Zr等の酸化しやすい添加元素については、所定量を均一にかつ適正に添加するために、中間合金で添加することが望ましい。成分調整が終了した後、半連続鋳造により所定の寸法のビレットを作製する。得られたビレットを加熱炉で加熱し、均質化処理を行なう。熱間押出前に、ビレットを750〜950℃に1分〜2時間程度保持して均質化による偏析の改善処理を行う。その後、ビレットにピアシングによる穿孔加工を行い、750〜950℃で熱間押出を行う。
本発明の銅合金管を製造するには、Snの偏析解消又は押出後にZrを固溶させることによりその後のSnの偏析を抑制することが必須要件である。このため、熱間押出による断面減少率が88%以上、望ましくは93%以上となるようにし、更に熱間押出後の素管を水冷等の方法により、表面温度が300℃になるまでの冷却速度が10℃/秒以上、望ましくは15℃/秒以上、更に望ましくは20℃/秒以上となるように冷却することが好ましい。但し、断面減少率は、[穿孔されたビレットのドーナツ状の面積−熱間押出後の素管の断面積]/[穿孔されたビレットのドーナツ状の面積]×100%として求まる。
その後、押出素管に圧延加工を行なう。このときの加工率を断面減少率で92%以下とすることにより、圧延時の製品不良を低減することができる。次いで、圧延素管に抽伸加工を行なって所定の寸法の素管を製造する。通常、抽伸加工は複数台の抽伸機を用いて行うが、各抽伸機による加工率(断面減少率)を35%以下にすることにより、素管における表面欠陥及び内部割れを低減することができる。
必要に応じて、抽伸管に焼鈍を行う。本発明の銅合金管を製造するには、ローラーハース炉による連続焼鈍により、抽伸管の実体温度が400〜700℃となるように加熱し、その温度で10分〜1時間程度保持するようにして焼鈍することが望ましい。また、室温から所定温度までの平均昇温速度が5℃/分以上、望ましくは10℃/分以上となるように加熱することが望ましい。なお、上記のローラーハース炉による連続焼鈍に変えて、高周波誘導加熱炉を用い、高速昇温、高速冷却、及び短時間加熱の焼鈍を行ってもよい。
次に、本発明の銅合金の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
下記表1乃至6に示す組成の実施例1乃至14及び比較例1乃至9並びに従来例1の各組成の銅合金材料を得るために、電気銅を溶解した溶湯に、Sn、及びZrを添加した後、Cu−P母合金を添加し、更にAlを添加することにより、所定組成の溶湯を作製し、直径300mmのビレットに鋳造した。次に、前記ビレットを850乃至950℃に加熱した後、ビレット中心をピアシング加工し、熱間押出により外径100mm、肉厚10mmの押出素管を作製した。この断面減少率は90%以上であった。押出後の素管は急冷され、押出直後から水冷までの時間及び水冷後の押出素管の表面温度等より、300℃までの平均冷却速度は20℃/秒以上と見積られた。押出素管を圧延及び抽伸して、外径9.52mm、肉厚0.80mmの素管を製作した。なお、圧延における断面減少率は90%以下、抽伸における1パスあたりの加工率は40%以下とした。還元性ガス雰囲気にしたローラーハース炉で、前記抽伸管を550乃至650℃(実体温度)に加熱し(平均昇温速度10乃至25℃/分)、その温度で30乃至80分保持した後、室温まで冷却して供試材とした。
評価試験は、室温から1000℃まで15分間で昇温させて、10分間保持した後、その温度で高温引張試験を行い、夫々、引張強さ、伸び及び絞り値を測定した。引張強さ、伸び及び絞り値はJISZ2241に記載された定義に基づいて算出した。なお、高温引張り後の絞りは、{(引張試験前の管の断面積−引張り破断後の破断面の断面積)/(引張り試験前の管の断面積)}×100%であり、引張破断後の断面積は破断面の外径と肉厚を測定することにより算出した。また、引張応力が印加された状態でのろう付けを模擬する割れ試験として、図1に示す固定荷重の割れ試験を行った。即ち、固定台1に外径が11mm、内径が9.8mmのステンレス鋼製の管2をその軸方向を水平にして固定し、この管2に、上述のごとく、外径が9.52mm、肉厚が0.80mm、長さが300mmの供試管3を挿入した。供試管3の挿入長は150mmであり、図1に示すように、管2から出ている150mmの部分の端部から50mmの位置に1kgの錘4を取り付けた。そして、アセチレン酸素バーナー5により、管2近傍の供試管3の部分を約950〜1000℃に加熱した。アセチレン酸素バーナーと管2との間の距離は、5cmとした。アセチレン酸素バーナー炎の当たる位置にK熱電対を点溶接し、加熱中の供試管の温度を測定した。アセチレン酸素バーナーによる加熱は、加熱後、8〜12秒で950℃になるように調整した。錘4により、供試管3の加熱部において、供試管に約20MPaの引張応力が印加されるものである。
下記表1及び表2は、本発明の実施例1乃至14、比較例1乃至9及び従来例1の組成を示し、表3は、その結晶粒径及び1000℃における高温引張試験(絞り)の測定値と、溶け割れ試験の試験結果を示す。
Figure 2013076123
Figure 2013076123
Figure 2013076123
この表3に記載されているように、本発明の実施例1乃至14は、割れ試験において、割れが発生しなかった。これに対し、比較例2,5,9は、夫々、Snが多く、Zrが少なく、Sが多いため、溶け割れが発生した。また、従来例1も、Zrを含有しないため、、溶け割れが発生した。
比較例1はSnが少ないため、結晶粒径が大きく、高強度銅管としての十分な強度が得られなかった。比較例3はPが少ないため、Oが多くなり、鋳塊に酸化物の巻き込みがあり、管の外面に多数の疵が発生した。比較例4はPが多いため、鋳塊に割れが発生した。比較例6はZrが多いため、鋳塊の肌が悪く、銅合金管の表面の疵が多かった。比較例7はAlが少ないため、Sが多くなり、絞り値が本発明の範囲から外れた。比較例8はAlが多いため、鋳塊に酸化物が巻き込まれ、管の外面に多数の疵が発生した。
1:固定台
2:管
3:供試管
4:錘
5:アセチレン酸素バーナー
「1000℃での絞り値が20%以上」
う付け温度に相当する1000℃での絞り値が、20%未満であると、ろう付け時に引張応力が印加された場合に、割れが生じる危険性があることがわかった。このため、1000℃における絞り値が20%以上であることが必要である。なお、900℃での絞り値が25%以上、また、950℃での絞り値が20%以上であることが更に望ましい。本発明の銅合金管は、熱交換器の配管等に使用され、引張応力が印加された状態でろう付けされる態様で使用される場合でも、1000℃における絞り値が20%以上であるので、高温における延性が極めて優れたものであり、850℃を超える高温に加熱されても、割れを防止することができる。なお、絞りとは、管の引張試験後の破断部の断面積を試験前の断面積で除した比率のことで、この値が高い程、延性が高い。

Claims (2)

  1. Sn:0.1乃至1.0質量%、P:0.001乃至0.100質量%、Zr:0.01乃至0.30質量%及びAl:0.0001乃至0.0050質量%を含有し、S:0.0020質量%以下、O:0.0050質量%以下、H:0.0002質量%以下に規制し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有する銅合金の管材であって、管軸を含む断面において、肉厚方向の平均結晶粒径が30μm以下であり、1000℃での絞り値が20%以上であることを特徴とする銅合金管。
  2. 熱交換器に使用されることを特徴とする請求項1に記載の銅合金管。
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