本発明は、住宅等の建築物の床用、壁用、その他の内装用建材や家具の面材、カーテン等として用いるのに好適な装飾性に優れた透光性化粧材、及びそれを用いた発光化粧構造体に関するものである。
従来、透光性を有する化粧材として、特許文献1に示されているように、天然木の表面に研磨材を吹き付けることで、密なる輪層(秋目部分)と粗なる輪層(春目部分)とを有する年輪のうちの粗なる輪層を刳り抜き除去して、密なる輪層のみの骨格を持つ透かし状にし、それを照明器具のシェード等に用いたものは知られている。
また、特許文献2には、ガラスや樹脂等の透明板の表面に木質薄単板からなる突板を、また裏面に模様付きカッティングシートをそれぞれ接着して一体化し、裏面からの光によりカッティングシートのシルエット模様を突板の木目模様と共に表側に現出させるようにした照明用装飾突板貼着積層体が提案されている。
さらに、特許文献3に示されるものでは、透光性木目付化粧板として、木質薄単板の裏面に不織布が接着された木目シートを裏面にて透明樹脂板に接着するようにしている。
この他、光透過性を有する突板を利用し、その突板を透光性基材の表面に積層して突板層を形成し、基材裏側の光源の光を突板層表面から照射させることにより、光源の消灯時には、通常の木目調パネルに見えるが、光源の点灯時には、突板層の木目を浮かび上がらせて現出させるようにしたものが提案されている(例えば特許文献4〜8参照)。
また、突板層と光源との間に絵柄模様を描いた絵柄層を配置し、その絵柄を影絵のように突板層表面に現出させることが提案されている(例えば特許文献5,7参照)。
特開2003−109414号公報
実用新案登録第3153311号公報
特開2002−144483号公報
特開平8−267667号公報
特開2002−205500号公報
特開2009−80981号公報
特開2009−160819号公報
特開2010−180563号公報
しかし、上記従来の特許文献のものでは、いずれも、木質薄単板からなる突板層の透光性を利用し、光源からの光を突板層に透過させて表面に放射させたり、絵柄を表面に現出させたりしているものの、その突板層の透光性が低く、表面に絵柄を明確にかつ鮮明に現出させることが困難であった。さりとて、透光性を高めるために突板層の厚さを薄くすればよいが、それには限度がある。
また、裏側の光源からの光により絵柄を表面側に現出させるようにすると、光源からの光がないときでも絵柄が表面側に露呈してしまい、不自然な外観になるという問題がある。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記木質薄単板に限らず、その他に紙や布等をシート素材として表面に有する化粧材の構造に改良を加えることにより、裏側から光がないときには、色柄が表面側に露呈せず、通常のシート素材そのままの外観を呈する一方、裏側から光が当たったときには、一転、シート素材の模様と共に色柄が表面に明確にかつ鮮明に現出する透光性化粧材、及びそれを用いた発光化粧構造体が得られるようにすることにある。
上記の目的を達成すべく、この発明では、表面層をシート素材に樹脂が含浸されて透光性を有する処理がなされた表面透光シート層とする。それとともに、その表面透光シート層と裏側の色柄層との間に、裏側からの光がないときに色柄層の色柄を表面から隠蔽するための隠蔽層を配置するようにした。
具体的には、第1の発明では、透光性化粧材は、シート素材に樹脂が含浸されることで透光性を有する状態となった表面透光シート層と、この表面透光シート層の裏面側に配置された隠蔽層と、この隠蔽層の裏面側に配置され、所定の色柄が形成された透光性を有する色柄層とを含む積層体からなる。
上記隠蔽層は、積層体の裏側からの光がないときに上記色柄層の色柄を積層体表面から該色柄が積層体表面に現出しない状態に隠蔽する一方、積層体の裏側からの光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有している。
そして、透光性化粧材は、裏側からの光で上記色柄層の色柄が表面側に現出するように構成されている。
尚、上記色柄層の色柄は絵柄のみ、色のみ、或いは色と絵柄とを組み合わせたものであってもよい。
この第1の発明では、透光性化粧材は、表面透光シート層、隠蔽層及び色柄層を含む積層体からなり、その表面透光シート層はシート素材への樹脂の含浸処理により透光性を有するものとなっているので、高い透光性が得られる。そのため、透光性化粧材の裏側から光が照射されると、その光により色柄層の色柄が透光性化粧材の表面側に鮮明にかつ明確に、表面透光シート層のシート素材が持っている表面の本来の模様に加えて現出する。
また、積層体の隠蔽層は、積層体の裏側からの光がないときに色柄層の色柄を積層体表面から該色柄が積層体表面に現出しない状態に隠蔽し、裏側からの光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有しているので、透光性化粧材の裏側からの光がない場合は、色柄層の色柄は積層体表面から隠蔽され、透光性化粧材の表面側に現出することがなく、表面透光シート層表面の模様がそのまま露出し、樹脂含浸シートの通常と同様の模様を有する外観模様が得られる。
すなわち、透光性化粧材は、裏側から光を当てない状態と、光を当てた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
第2の発明では、上記第1の発明に係る透光性化粧材において、上記表面透光シート層のシート素材は木質薄単板、紙、織布又は不織布からなることを特徴とする。
この第2の発明では、積層体表面の表面透光シート層をなすシート素材が木質薄単板、紙、織布又は不織布であるので、その樹脂の含浸処理により透光性を有するようになり、透光性を持つ表面透光シート層が確実にかつ容易に得られる。
第3の発明では、第1又は第2の発明に係る透光性化粧材において、色柄層は、裏面に色柄が反転印刷された紙層からなるものとする。
第4の発明では、第3の発明に係る透光性化粧材において、紙層は、一方の面に色柄が他方の面に至らないように反転印刷されることで該一方の面が印刷面とされた紙からなり、該印刷面が裏側になり印刷面と反対側の他方の面が表側になるように配置されている。
これらの第3及び第4の発明では、紙層の裏面に色柄を反転印刷するだけで色柄層の色柄が形成されるので、色柄の形成を容易に行うことができる。反転印刷された色柄は、裏面側から光を当てることにより、表面側に所望の色柄が表出する。
第5の発明では、発光化粧構造体は、上記第1〜第4の発明のいずれか1つに係る透光性化粧材と、この透光性化粧材における積層体の裏側に配置され、上記色柄層の色柄を積層体表面側に現出させる光源とを備えていることを特徴とする。
この第5の発明では、発光化粧構造体は、表面透光シート層、隠蔽層及び色柄層を含む積層体を有し、その表面透光シート層は樹脂の含浸により透光性を有するものであるので、高い透光性が得られる。そのため、積層体の裏側から光源の光が照射されると、その光により色柄層の色柄が積層体の表面側に鮮明にかつ明確に表面透光シート層表面の模様に加えて現出する。
また、積層体の隠蔽層は、積層体の裏側からの光源による光がないときに色柄層の色柄を積層体表面から該色柄が積層体表面に現出しない状態に隠蔽する一方、積層体の裏側からの光源による光があるときには色柄層の色柄を積層体表隠蔽し、裏側からの光源による光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有しているので、積層体の裏側から光源による光がない場合は、色柄層の色柄は積層体表面から隠蔽され、その表面側に現出することがなく、表面透光シート層表面の本来の模様がそのまま露出し、通常の化粧材と同様の模様を有する外観模様が得られる。
すなわち、発光化粧構造体は、積層体裏側から光源の光を当てない状態と、光源の光を当てた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
第6の発明では、第5の発明に係る発光化粧構造体において、光源は有機ELシートとする。
この第6の発明では、厚さが薄くて発光化粧構造体に好適な光源が得られる。
第7の発明では、第5又は第6の発明に係る発光化粧構造体において、色柄層には、互いに異なる複数の色で色柄が形成されている一方、光源は、上記色柄の各色と同じか又は近似した複数の色に発色可能とされ、上記光源の発色を変えることにより積層体表面側に現出する色柄を変化させることを特徴とする。
この第7の発明では、光源は色柄の各色と同じか又は近似した複数の色に発色可能であるので、この光源の発色を変えると、色柄において光源の光の色と同じか又は近似した色の部分が消えて積層体表面に現出する。このことで、積層体表面側に現出する色柄を変化させることができる。
第8の発明では、第5〜第7の発明のいずれか1つに係る発光化粧構造体において、積層体の裏側に、光源を収容しかつ積層体以外の部分で光に対して密閉された光源収容部を形成する。
この第8の発明では、積層体裏側の光源収容部が表側の積層体以外の部分で光に対して密閉されたものであるので、光源が点灯していないときに、積層体における隠蔽層よりも裏側にある部分(色柄層も含む)を積層体表面から確実に見え難くすることができ、光源の点灯によって初めて色柄層の色柄を積層体表面に現出できることとなる。
以上説明した如く、第1の発明によると、シート素材への樹脂の含浸により透光性を有するようになった表面透光シート層と、この表面透光シート層の裏面側に配置された隠蔽層と、この隠蔽層の裏面側に配置され、所定の色柄が形成された透光性を有する色柄層とを含む積層体からなる透光性化粧材を設け、隠蔽層は、積層体の裏側からの光がないときに色柄層の色柄を積層体表面から積層体表面に現出しない状態に隠蔽する一方、積層体の裏側からの光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有するものとし、裏側からの光で色柄層の色柄が表面側に現出するようにした。このことにより、表面透光シート層の透光性を高くすることができ、透光性化粧材の裏側からの光がない場合に、色柄層の色柄は積層体表面から隠蔽され、通常の化粧材と同様の模様を有する外観模様が得られる一方、透光性化粧材の裏側から光が照射されると、その光により色柄層の色柄が透光性化粧材の表面側に鮮明にかつ明確に樹脂含浸シート表面の模様に加えて現出し、よって裏側から光を当てない状態と、光を当てた状態との間で大きな差異のある外観を有し、意匠性の高い透光性化粧材が得られる。
第2の発明によると、表面透光シート層のシート素材を木質薄単板、紙、織布又は不織布としたことにより、これら木質薄単板、紙、織布又は不織布が樹脂の含浸処理により透光性を有するようになり、透光性を持つ表面透光シート層が確実にかつ容易に得られる。
第3の発明では、色柄層としての補強層は、裏面に色柄が反転印刷された紙層からなるものとした。また、第4の発明では、その紙層は、一方の面である印刷面に色柄が他方の面に至らないように反転印刷された紙からなり、印刷面が裏側になり他方の面が表側になるように配置されているものとした。これら第3及び第4の発明によると、紙層の裏面に色柄を反転印刷するだけで色柄層の色柄が形成されるので、色柄の形成を容易に行うことができる。
第5の発明によると、積層体の裏側に色柄層の色柄を積層体表面側に現出させる光源を配置し、隠蔽層は、光源による光がないときに色柄層の色柄を積層体表面から積層体表面に現出しない状態に隠蔽する一方、光源による光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有するものとした。このことにより、その表面透光シート層の透光性を高くすることができ、光源の光がない場合に、色柄層の色柄は積層体表面から隠蔽され、通常の化粧材と同様の模様を有する外観模様が得られる一方、光源の光が照射されると、その光により色柄層の色柄が積層体の表面側に鮮明にかつ明確に樹脂含浸シート表面の木目模様に加えて現出し、よって光源の光を当てない状態と、光を当てた状態との間で大きな差異のある外観を有し、意匠性の高い発光化粧構造体が得られる。
第6の発明によると、光源を有機ELシートとしたことにより、厚さが薄くて発光化粧構造体に好適な光源が得られる。
第7の発明によると、色柄層に、互いに異なる複数の色で色柄を形成する一方、光源は、色柄の各色と同じか又は近似した複数の色に発色可能とし、その光源の発色を変えることにより積層体表面側に現出する色柄を変化させるようにしたことにより、光源の発色を変えることで、色柄において光源の光の色と同じか又は近似した色の部分が消えて積層体表面に現出し、よって積層体表面側に現出する色柄を変化させることができる。
第8の発明によると、積層体の裏側に積層体以外の部分で光に対して密閉された光源収容部を形成したことにより、光源が点灯していないときに、積層体における隠蔽層よりも裏側にある部分を積層体表面から確実に見え難くし、光源の点灯によって初めて色柄層の色柄を積層体表面に現出することができる。
図1は本発明の実施形態1に係る透光性化粧材の断面図である。
図2は透光性化粧材の表面を示す図である。
図3は透光性化粧材の裏面を示す図である。
図4は、透光性化粧材の裏側から光を当てたときに色柄が表面に現出した状態を示す図2相当図である。
図5は実施形態1に係る透光性化粧材の製造工程を示す図である。
図6は実施形態2に係る透光性化粧材を示す図1相当図である。
図7は実施形態2に係る透光性化粧材の製造工程を示す図である。
図8は実施形態3に係る透光性化粧材を示す図1相当図である。
図9は実施形態4に係る透光性化粧材を示す図1相当図である。
図10は、透光性化粧材が施工されたドアの正面図である。
図11は図10のXI−XI線拡大断面図である。
図12は、透光性化粧材を光源と組み合わせた実施形態5に係る発光化粧構造体が設けられたベッドを示す斜視図である。
図13は、光源が点灯して色柄がヘッドボードの表面に現出した状態を示す図12相当図である。
図14は図12のXIV−XIV線断面図である。
図15は発光化粧構造体の要部を拡大して示す断面図である。
図16は、実施形態6に係る発光化粧構造体が設けられたベッドを示す図12相当図である。
図17は、光源が点灯して色柄が表面に現出した状態を示す図16相当図である。
図18は図16のXVIII−XVIII線断面図である。
図19は、実施形態7に係る発光化粧構造体が設けられたテーブルを示す斜視図である。
図20は図19のXX−XX線拡大断面図である。
図21は、テーブルの天板上面に組み付けられた発光化粧構造体における積層体の表面を示す図である。
図22は発光化粧構造体における積層体の色柄を示す図である。
図23は発光化粧構造体における積層体の断面図である。
図24は、光源の消灯状態及び点灯状態の切換えにより色柄が表面に現出した状態を示す図である。
図25は、実施形態8に係る発光化粧構造体が設けられたテーブルを示す図20相当図である。
図26は、実施形態9に係る発光化粧構造体が設けられた階段を示す側面図である。
図27は階段の要部を拡大して示す断面図である。
図28は、実施形態10に係る発光化粧構造体が設けられた部屋の床面、壁面及び天井面を示す斜視図である。
図29は光源が点灯した状態を示す図28相当図である。
図30は発光化粧構造体の施工構造を示す断面図である。
図31は、実施形態11に係る発光化粧構造体が設けられた欄間を襖と共に示す図である。
図32は図31のXXXII−XXXII線拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
[実施形態1]
図1〜図4は本発明の実施形態1に係る透光性化粧材Aを示す。この透光性化粧材Aは、表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7(図3参照)が描かれた色柄層6と、上記表面透光シート層1の表面に形成された表面コート層9とをそれぞれ表側から順に積層して一体化した積層体11からなる。
(表面透光シート層)
上記表面透光シート層1は、シート素材として、例えば木質薄単板、紙、織布又は不織布からなり、そのシート素材に樹脂が含浸されることで、該シート素材の感触を維持したまま透明化されて透光性を有する状態となったものである。シート素材が紙や織布、不織布の場合には素材中に樹脂が入り込むことによって透明化し、透光性が向上する。
また、例えばシート素材が木質薄単板の場合、樹脂を含浸させるWPC処理をすることで透明化されて透光性が向上されている。すなわち、表面透光シート層1は、木質薄単板の表面に浮造り加工を施すことにより、単板の軟らかい春目部分を硬い秋目部分よりも深く凹陥して該春目部分が凹部となり秋目部分が凸部となる凹凸部が形成されてWPC処理されたものであり、表面に秋目部分(凸部)が春目部分(凹部)よりも濃色となる木目(木理)の模様が形成されている。この木質薄単板は天然木の薄単板からなり、例えばオーク、バーチ、ビーチやチェリー等の硬さの硬い樹種や、スギ、ツガ、ヒノキ、サワグルミ等の硬さの軟らかい樹種等が用いられる。
尚、その表面透光シート層1としての木質薄単板表面の凹部を透明性樹脂により充填して平滑面とし、その上に表面コート層9を形成するようにしてもよい。
ここで、上記表面透光シート層1となる木質薄単板、紙、織布又は不織布に含浸させる樹脂について詳細に説明する。この樹脂は、例えば含浸樹脂と着色充填樹脂の2つの樹脂を用いる。これらの含浸樹脂及び着色充填樹脂は、共に、活性エネルギー線硬化特性と湿気硬化特性とを兼ね備えている。このため、活性エネルギー線硬化特性のみを有する樹脂と比べると、活性エネルギー線の照射により瞬時に樹脂を硬化させることができる。
両樹脂は、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーやポリマーを単独、又はこれらを複数混合させたものに、反応性モノマーを加えたものを主成分とする。さらに、両樹脂は、主成分に対して、ポリイソシアネートを1質量%以上でかつ15質量%以下添加されてなる。
両樹脂に用いるオリゴマー、ポリマーおよび反応性モノマーは、活性エネルギー線硬化特性を有する樹脂として一般的に用いられるものでよい。両樹脂に用いる反応性モノマーの例として以下のものが挙げられる。
単官能モノマーの例としては、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、ジシクロペンタジエンアクリレート、2−ヒドロキシルプロピルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、イソボロニルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。
2官能モノマーの例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタアクリレート、ポリプロピレンジアクリレート、ポリプロピレンジメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタアクリレート等が挙げられる。
3官能モノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート等が挙げられる。
4官能以上のモノマーの例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
また、両樹脂には、イソシアネート系化合物が添加されることが好ましい。このイソシアネート系化合物は、空気中の湿気を吸収し、両樹脂の湿気硬化に寄与する。このため、両樹脂のシート素材(木質薄単板紙、織布又は不織布)への密着性をより向上させることができる。
イソシアネート系化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のイソシアネートモノマー、並びにこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体等のポリイソシアネート誘導体、並びにこれらイソシアネートモノマーまたはポリイソシアネート誘導体のブロック体等が挙げられる。さらには、イソシアネート系化合物は、無黄変型または難黄変型のものを用いることが好ましい。これらのイソシアネート系化合物を単独で、又はこれらを複数混合して用いる。
両樹脂には、さらに、一般的に用いられる錫化合物や、亜鉛化合物、アミン化合物等の触媒を添加してもよい。
そして、具体的には、上記の含浸樹脂をシート素材の表面全体に塗布する。含浸樹脂は、スポンジロールコーターやナチュラルリバースコーター、フローコーター等を使用して塗布する。また、透光性をさらに向上させるためには、ディッピング処理をしてもよいし、特に木質単板を使用する場合は、減圧加圧注入法により樹脂を含浸させてもよい。
含浸樹脂は、低粘度でかつ含浸性の高い樹脂であることが好ましい。具体的には、含浸樹脂は、シート素材の表面に塗布されたとき、その粘度が100Pa・s以下であることが好ましい。このように、含浸樹脂を低粘度のものとすることで、含浸性をより高めることができる。なお、含浸樹脂は、上述したモノマーにより希釈したり加熱したりすることで、上記の粘度となるように調整する。また、例えば、予めシート素材をその表面の温度が40°〜50°となるように加熱し、この表面の温度よりも10°〜20°低い温度にした含浸樹脂を塗布することで、この含浸樹脂の含浸性をより向上させることができる。
含浸樹脂を硬化又は半硬化させるために、シート素材の表面側から活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線には紫外線又は電子線が用いられる。
活性エネルギー線が紫外線である場合、含浸樹脂に、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、一般的に用いられるラジカル反応型のアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンジル系、ベンゾイン系等のカルボニル化合物、テトラアルキルチウラムモノサルファイド、チオキサンソン等のイオウ化合物を単独、またはこれらを複数混合して用いてもよい。しかし、含浸樹脂の硬化を促進するためには、上記一般的な光重合開始剤よりも紫外線に対して反応性に優れたものが好ましい。
具体的には、光重合開始剤として、含浸樹脂は、ビスアシルフォスフィンオキサイドを0.1質量%以上1.5質量%以下含むものか、モノアシルフォスフィンオキサイドを0.5質量%以上5.0質量%以下含むものであることが好ましい。ビスアシルフォスフィンオキサイドまたはモノアシルフォスフィンオキサイドは、紫外線の波長領域が350nm〜400nm近辺である長波長に吸収極大がある。したがって、紫外線を発光する光源として、350nm以上400nm以下の長波長領域に発光スペクトルを持つ発光方式を用いることにより、含浸樹脂8をより効果的に硬化させることができる。具体的には、放電灯方式のメタルハライドランプ、無電極方式のDバルブ、Vバルブ、Qバルブ、Mバルブ、パルスUV方式等を使用する。
また、活性エネルギー線が紫外線である場合、含浸樹脂には、増感剤や、光安定剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤等の助剤を添加してもよい。また、含浸樹脂に染料、顔料等を加えて着色を行ってもよい。
(隠蔽層)
上記隠蔽層5は、積層体11の裏側から後述する光源41(図14、図15、図18、図20、図25、図27、図20、図32参照)の光が照射されていないときに上記色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する程度に透光性を有しており、上記光が照射されたときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる。
この隠蔽層5は、例えば紙、プラスチックシート、これらを積層したポリサンド紙等の積層体等のシート状物を用いてもよいし、接着剤で一定厚みの層を形成してもよい。
この他、隠蔽層5としては、液晶層、温度に応じて透光性及び色が変化する感熱性樹脂、温度に応じて透光性が変化するフェイズチェンジマテリアル(PCM)を用いることができる。
隠蔽層5を液晶層で構成した場合、その液晶層に対する印加電圧の変更により液晶層の透光性を調整し、色柄層6の隠蔽状態を外部からコントロールすることができる。
また、隠蔽層5を感熱性樹脂とする場合には、例えば裏側に配置された発熱する光源等の隠蔽層5に対する加熱を利用し、その加熱により感熱性樹脂の温度が例えば25〜50℃の所定の温度に昇温することで、その感熱性樹脂の透光性(透明度)が高くなり、色も薄くなり、色柄層6の色柄7が表出するようにすればよい。
さらに、隠蔽層5をフェイズチェンジマテリアルとした場合、やはり裏側に配置された光源等による加熱によりPCMの温度が例えば25〜50℃に昇温することで、PCMが融点に達して固体が液体に変わることで、その透光性(透明度)が高くなるようにする。PCMとは、例えばn−オクタデカン、n−ヘキサデカンが主原料のノルマルパラフィンが用いられる。このノルマルパラフィンは、融点が23〜28℃のもので、基本的に融点よりも低い温度で固体となり、融点よりも高い温度で液体となる。この潜熱蓄熱材としてのノルマルパラフィンは例えばビニルパック等の透明容器に封入されたものや、透明の樹脂殻に封入されたマイクロカプセル状のものが樹脂と混合され、シート状に成形されたもの等が好適に使用される。
ノルマルパラフィン以外の潜熱蓄熱材としては、無機水和塩(塩化カルシウム六水和塩、硫酸ナトリウム十水和塩等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ミリスチン酸等)、芳香族炭化水素化合物(ベンゼン、p−キシレン等)、エステル化合物(パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等)、アルコール類(ステアリルアルコール等)、ポリアルキレングリコール等を使用することができ、内部に配した光源の発する温度により、適宜選択すればよい。
接着剤で一定厚みの隠蔽層5を形成する方法としては、基材表面に所定厚み(10〜200μm、好ましくは30μm〜75μm)の接着剤を塗布し、紫外線照射や熱硬化等の手段により半硬化させて、所定厚みを確保した上で表面シート素材を載置し、熱圧や冷圧等の手段により積層一体化する方法が好適に行われる。
このとき、接着層を隠蔽層5とするために、接着剤自体に染料系着色剤を用いて着色を施してもよい。また、接着剤自体を透明とし、顔料系の着色剤を添加してもよい。さらに、着色剤に替えて感温性樹脂やマイクロカプセル化されたPCM材料を使用してもよい。
(色柄層)
色柄層6は、例えば紙、樹脂シート等からなる。色柄層6は透光性を有し、この色柄層6には所定の色柄7が形成されている。この色柄7は写真や字、その他の所望のものが用いられる。色柄層6の色柄7は絵柄のみ、色のみ、或いは色と絵柄とを組み合わせたものであってもよい。
具体的には、この色柄層6として紙を用いる場合、図3に示すように、その紙の裏面に色柄7(図示例では「富士山」の漢字及びその写真)が反転印刷されている。すなわち、色柄層6としての紙層は、一方の面に色柄7がインクの透過等により他方の面に至らないように反転印刷されることで該一方の面が印刷面とされた紙からなり、該印刷面が裏側になり印刷面と反対側の他方の何も印刷されていない面が表側になるように配置されている。この場合、色柄層6に形成された色柄7は、裏面側からの光の透過により、鏡反転された態様で表面に色柄が透過される。
尚、この色柄層6は、必ずしも色柄7を反転させる必要はなく、表面側に向けて色柄7を形成する場合には反転されていないそのままの色柄7が用いられる。この場合、色柄層6に形成された色柄7は、裏面側からの光の透過により、印刷された態様のままで表面に色柄が透過される。
その他の例として、色柄層6は、例えば紙、樹脂シート、ガラス等からなり、色柄層6と隠蔽層5を積層一体に設けてもよいし、色柄層6と後述する補強層16を積層一体に設けてもよいし、色柄層6と隠蔽層5と補強層16とを別に設けてもよい。
例えば色柄層6と隠蔽層5を積層一体に設ける場合、表面にインク受容層を設けた紙を使用し、インク受容層にインクジェット印刷を行ってもよい。この場合、所定厚みを有する紙を使用し、裏面側にインクが透過しないようにインクジェット印刷することでインクが透過していない層を隠蔽層5としてもよい。
また、2枚の紙の間に樹脂シートを熱圧一体化したいわゆるポリサンド紙等の片面に色柄7を印刷し、印刷した方の紙層を色柄層6、印刷していない方の紙層を隠蔽層5としてもよい。この場合、裏面側にインクが透過していく恐れがないので、安定した品質の隠蔽性能を実現することができる。
また、例えば色柄層6と隠蔽層5を積層一体に設ける場合、透光性を有するガラスやアクリル樹脂をステンドグラス様に配したり、ガラス表面に直接色柄7を印刷等により設けてもよい。
(表面コート層)
表面コート層9は、表面透光シート層1の表面に形成されている。この表面コート層9は、例えばアクリル系透明樹脂塗料やウレタン系透明樹脂塗料等からなる。
そして、透光性化粧材Aは、図2に示すように、その裏側(積層体11の裏側)から光源41の光が当てられていないときには、色柄層6の色柄7が隠蔽層5により隠蔽されて、透光性を有する表面透光シート層1表面のシート素材の模様がそのまま露出する一方、図4に示すように、透光性化粧材Aの裏側から光源41の光を当てたときに、その光で色柄層6の色柄7が、透光性化粧材Aの表面側に表面透光シート層1(シート素材)表面の模様に加えて現出するようになっている。
(透光性化粧材の製造方法)
次に、上記透光性化粧材Aの製造方法の一例について図5に基づき説明する。
まず、紙吸着工程において、図5(a)に示すように、表面の吸着層14aにより吸着性を有する板状の基材14の表面に、色柄7が形成されて色柄層6となる紙等を吸着させる。上記吸着層14aは、「ALシート」(ゼオン化成社製の商品名)等が用いられる。また離型層を有したフィルムへ接着を行い、最終工程において剥離させることもできる。基材14は、例えば「ダイセルバリューコーティングT789」(ダイセルバリューコーティング社製の商品名)等が用いられる。
次いで、積層工程において、図5(b)に示すように、上記色柄層6(紙)の表面に顔料系着色剤を混合させた接着剤を塗布し、半硬化させた後、その上に表面透光シート層1となるシート素材1′を貼着し、これらを積層一体化して積層体11を形成する。このことで、紙が色柄層6となり、接着剤が隠蔽層5となる。
この後、樹脂含浸工程において、図5(c)に示すように、シート素材1′にその表面から樹脂を含浸させた後に硬化させることで、シート素材1′を透明化し、そのシート素材1′を透光性を有する表面透光シート層1とする。
次のコーティング処理工程では、図5(d)に示すように、上記表面透光シート層1表面をコーティング処理して表面コート層9を形成する。
最後の基材剥離工程では、図5(e)に示すように、上記基材14をその表面の吸着層14aにおいて、他の部分、すなわち色柄層6(紙)、隠蔽層5(接着剤)、表面透光シート層1及び表面コート層9と分離除去する。
以上により、表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6が積層一体化され、その表面透光シート層1表面に表面コート層9が形成された図1に示す透光性化粧材Aが得られる。
この実施形態に係る透光性化粧材Aは、木質薄単板、紙、織布又は不織布からなるシート素材に樹脂を含浸させることで透明化されて透光性を有する表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置された色柄層6と、表面透光シート層1の表面に形成された表面コート層9とを積層して一体した積層体11からなっている。上記隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有しているので、図2に示すように、透光性化粧材Aの裏側(積層体11の裏側)から光源41の光が当てられていないときには、最も裏側にある色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が透光性化粧材Aの表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面にシート素材の持つ模様がそのまま露出する。このことで、通常の化粧材と同様の模様を有する外観模様が得られる。
これに対し、透光性化粧材Aの裏側から光を当てたときには、図4に示すように、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5と透光性を有する表面透光シート層1とを経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が透光性化粧材Aの表面側に表面透光シート層1表面の本来の模様に加えて浮き上がるように鮮明に現出する。
したがって、この実施形態においては、透光性化粧材Aは、裏側から光を当てない状態と、光を当てた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[実施形態2]
図6は実施形態2に係る透光性化粧材Aを示し(尚、以下の各実施形態では図1〜図5と同様の部分について同じ符号を付して説明する)、補強層を加えたものである。
すなわち、この実施形態2では、実施形態1と同様に、透光性化粧材Aは、シート素材に樹脂が含浸されることで透光性を有する表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含む積層体11からなり、上記隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに上記色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有しており、透光性化粧材Aは、裏側からの光で上記色柄層6の色柄7が表面側に現出するように構成されている。
そして、この実施形態では、積層体11の内部に、透光性を有する補強層16が設けられている。具体的には、補強層16は上記隠蔽層5と色柄層6との間(隠蔽層5の裏面側でかつ色柄層6の表面側)に設けられている。
この補強層16は、主として表面透光シート層1を補強するためのものであり、例えばアクリル樹脂や塩ビ樹脂等の透明性樹脂板、ガラス等からなる。その他、透光性を有する板状体であれば、どのようなものでもよい。
(透光性化粧材の製造方法)
次に、この実施形態に係る透光性化粧材Aの製造方法について図7に基づき説明する。
まず、図7(a)に示すように、シート素材1′と、このシート素材1′の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置された補強層16と、この補強層16の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを積層一体化して積層体11を形成する(積層体形成工程)。
さらに、図7(b)に示すように、上記シート素材1′に表面から樹脂を含浸させて、シート素材1′を透光性を有する表面透光シート層1とする(樹脂含浸工程)。
最後に、図7(c)に示すように、上記表面透光シート層1表面をコーティング処理する(コーティング処理工程)。
以上により、表面透光シート層1、隠蔽層5、補強層16及び色柄層6が積層一体化され、その表面透光シート層1表面に表面コート層9が形成された図6に示す透光性化粧材Aが得られる。
したがって、この実施形態においても、実施形態1と同様の作用効果が得られる。特に、この実施形態の場合、積層体11内に補強層16が設けられているので、この補強層16により積層体11を所定の強度に保つことができ、透光性化粧材Aの製造時及び使用時の取扱い性や運搬性が高くなる。
[実施形態3]
図8は実施形態3を示し、補強層16の位置を変えたものである。上記実施形態2では、補強層16が隠蔽層5と色柄層6との間に設けられているのに対し、この実施形態では、補強層16は表面透光シート層1と隠蔽層5との間(表面透光シート層1の裏面側でかつ隠蔽層5の表面側)に設けられている。他の構成は実施形態2と同じである。この実施形態でも、実施形態2と同様の作用効果が得られる。
[実施形態4]
図9は実施形態4を示す。上記実施形態2及び3では、補強層16が積層体11の内部に設けられているのに対し、この実施形態4では、透光性を有する補強層16を積層体11の裏側に設けたものである。他の構成は実施形態2と同じである。この実施形態でも、実施形態2と同様の作用効果が得られる。
尚、この実施形態4とは異なり、補強層16を表面透光シート層1の表側に設けてもよい。その場合、積層体11における表面透光シート層1を交換可能としてもよく、表面透光シート層1のみを交換して、該表面透光シート層1の柄を他のものに変更することができる。
また、色柄層6を交換可能としてもよく、色柄層6のみを交換して、該色柄層6の色柄7を他のものに変更することができる。
さらには、表面透光シート層1ないし色柄層6を交換可能とすることもできる。こうすれば、表面透光シート層1及び色柄層6を同時に交換して、該表面透光シート層1の木目の柄及び色柄層6の色柄7を他のものに変更することができる。
補強層を積層体11の表面に設けることもできる。その場合、積層体11の表面透光シート層1、色柄層6、又は表面透光シート層1ないし色柄層6を交換可能とすることもできる。
尚、上記実施形態2〜4では、補強層16を積層体11とは別に設けているが、補強層16を隠蔽層5又は色柄層6の少なくとも一方で構成してもよい。
[透光性化粧材の施工例]
図10及び図11は上記透光性化粧材Aの施工例を示し、玄関用又は内装用の木質ドア等に適用したものである。すなわち、図10において、21はドアで、このドア21は縦長の左右のドアパネル22,22間に縦長の透光性化粧材Aを一体的に組み付けて固定したものであり、左右のドアパネル22,22及び透光性化粧材Aは互いに同じ高さとされている。左右のドアパネル22,22は木質材料からなり、両ドアパネル22,22の対向縁部にはそれぞれ納め部材としてのモール23,23が固定され、これらモール23,23間に透光性化粧材Aが組み付けられている。図10中、25はドア21を開閉操作するためのハンドルである。
図11に示すように、上記モール23,23間には、室外側に位置するパネル材24が固定され、このパネル材24の室内側に透光性化粧材Aが配置されている。上記パネル材24は、例えばスリガラス等、透光性はあるが透光性化粧材Aの積層体11における色柄層6の色柄7の透けない材料で構成されている。
透光性化粧材Aは、積層体11と、その裏側に配置された補強層16とを有する。補強層16は、例えば透明アクリル樹脂板や透明塩ビシート等からなり、積層体11とパネル材24との間に介在されている。
積層体11は、上記各実施形態で説明したものと同様に、シート素材に樹脂が含浸されることで透光性を有する木質薄単板、紙、織布又は不織布からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含んでいる。その隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光(例えば太陽光や室外の電灯光)がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
この実施形態においては、例えば夜間等で室外からの太陽光、或いは室外の電灯光がないときには、ドア21の透光性化粧材Aの積層体11における色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面のシート素材の模様がそのまま露出する。このことで、室内側において、ドア21は表面透光シート層1表面にシート素材の模様のみが現れ、通常の外観模様が得られる。
これに対し、例えば日中等で室外からの太陽光、或いは夜間等で室外の電灯光があるときには、その光が透光性を有するパネル材24及び補強層16を介して積層体11に裏側から照射される。この光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、シート素材の模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈し、光源の消灯時(日中)とは異なる表情を演出することができる。
このようなドア21を、例えばトイレ用ドアや洗面所用ドアに使用すると、夜間の電灯の消し忘れ等を防ぐための小窓等のプラスチック部材を用いなくとも、電灯が点いているかどうかを確認できるため、極めて有用である。また、玄関ドアに用いると、季節に応じた色柄を使用することにより、例えばクリスマスシーズンにクリスマスリース等を表出すること等ができる。
したがって、この実施形態においては、ドア21の一部に、室外からの光が裏側から当てられない状態と、光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[実施形態5]
図12〜図15は実施形態5を示し、上記透光性化粧材Aの積層体11を光源と組み合わせて発光化粧構造体を構成し、その発光化粧構造体をベッドのヘッドボードに組み付けて固定したものである。
すなわち、図12において、27はベッドで、このベッド27は、前側(頭側)のヘッドボード28と後側(足側)のフットボード37とを左右のサイドレール38,38(一方のみを図示する)で連結して矩形枠状にし、左右のサイドレール38,38間に複数の板状のスノコ(図示せず)を掛け渡し、そのスノコの上にマットレス39を載置した一般的な構造のものとされている。
そして、上記ヘッドボード28は、図14及び図15に示すように、ヘッドボード本体29と、その後側面(フットボード37と対向する面)に組み付けられた発光化粧構造体Bとを備えている。
上記ヘッドボード本体29の後面には、そのマットレス39よりも上側部分に、ヘッドボード本体29の後面を矩形状に凹陥してなる第1凹部30と、その第1凹部30の底面中央部を部分的に矩形状に凹陥してなる第2凹部31とが段差状に形成されている。
上記発光化粧構造体Bは、樹脂が含浸されることで透光性を有する状態となった表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置された補強層16と、この補強層16の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含む積層体11を備え、これら表面透光シート層1、隠蔽層5、補強層16及び色柄層6は積層されて一体化されている。
上記表面透光シート層1、隠蔽層5、補強層16及び色柄層6は、上記実施形態2(図6参照)と同様のものであり、表面透光シート層1は、木質薄単板、紙、織布又は不織布からなり、これらのシート素材に樹脂が含浸されることで透光性を有するものである。また、隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。これら表面透光シート層1及び隠蔽層5は、ヘッドボード28の全体又は少なくともマットレス39よりも上側部分と同じ大きさであり、ヘッドボード本体29の後面に該後面を覆うように一体的に固定されて、ヘッドボード28の後面を構成している。補強層16及び色柄層6は表面透光シート層1及び隠蔽層5よりも小さく、ヘッドボード本体29の第1凹部30に嵌挿可能(必要に応じて取換え可能)な大きさとされている。色柄層6の構造は、上記実施形態2(図6参照)と同じであり、紙層の裏面に色柄7が反転印刷されている。尚、図示例では、紙層の中央に「富士山」の漢字及びその写真が印刷されているが、その他、家族や風景の写真を印刷したものでも、イラスト、キャラクター及び抽象柄等でもよく、ベッド27から観る色柄7として好ましいものであれば、どのようなものでもよい。
ヘッドボード本体29後面の第1凹部30内には、その第1凹部30の大きさに対応する上記補強層16及び色柄層6が嵌挿されている。また、上記積層体11の裏側に位置する第2凹部31の底面には、上記色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させるための光源41が取り付けられている。この光源41は、取付ボード42上に並べられた状態で固定された複数の発光部43,43,…を有し、各発光部43は例えばLED(発光ダイオード)、電球、蛍光灯、面発光体(有機ELシート)等からなっている。第2凹部31内の空間は、光源41を収容する光源収容部48を構成しており、この光源収容部48は、表側の積層体11以外の部分では光に対して密閉されて光漏れのない構造で、表側の積層体11のみから透光可能とされている。図12及び図13中、45はベッド27のヘッドボード28上面に取り付けられたスイッチで、上記光源41の点灯及び消灯を切り換えるものである。
この実施形態においては、スイッチ49をオフにして光源41を消灯状態にしているときには、図12に示すように、発光化粧構造体Bの色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が積層体11の表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の外観模様を呈するヘッドボード28を有するベッド27が得られる。
その際、光源41を収容する光源収容部48が表側の積層体11のみから透光可能で他の部分では光に対して密閉されているので、光源41が点灯していない状態で、積層体11の隠蔽層5よりも裏側にある部分(色柄層6も含む)が積層体11表面から確実に見え難くなる(光源41の点灯によって初めて色柄層6の色柄7が積層体11表面に現出する)。
これに対し、スイッチ49をオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が積層体11に裏側から照射される。このときには、図13に示すように、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5、透光性を有する補強層16、及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に鮮明に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が積層体11の表面側に表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、そのシート素材の模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈する。すなわち、光源41の消灯状態では、シート素材模様のベッド27が光源41の点灯に伴い色柄7が現出するようになり、雰囲気を大きく変化させることができる。
したがって、この実施形態においても、ベッド27のヘッドボード28に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[実施形態6]
図16〜図18は実施形態6を示し、上記実施形態5では、発光化粧構造体Bをベッド27のヘッドボード28に取換え不能に組み付けているのに対し、この例では、発光化粧構造体Bを取換え可能に組み付けたものである。
すなわち、この実施形態では、ベッド27におけるヘッドボード28のヘッドボード本体29の後側面(フットボード37と対向する面)に発光化粧構造体Bが交換可能に組み付けられている。
具体的には、ヘッドボード本体29の後面には、そのマットレス39よりも上側の上下中間部分に、ヘッドボード本体29の後面を左右端間に亘り断面矩形状に凹陥してなる凹溝部32が形成されている。また、ヘッドボード本体29の後面は上記凹溝部32の開口の上下角部が凹陥されていて、その凹陥部分に、凹溝部32の開口のみを覆うように透明アクリル板や透明塩ビシート等からなる透明の透明板33が嵌合されて固定されており、この透明板33により開口が覆われた凹溝部32はヘッドボード本体29の左右端面で開口している。
発光化粧構造体Bは、樹脂が含浸されることで透光性を有する表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含む積層体11を備え、この色柄層6の裏面側に補強層16が配置されている。
上記表面透光シート層1、隠蔽層5、色柄層6及び補強層16は、上記実施形態4(図9参照)と同様のものであり、表面透光シート層1は、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる。また、隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。色柄層6の構造は、上記実施形態1(図1参照)と同じであり、紙層の裏面に色柄7が反転印刷されている。補強層16は透明アクリル板、透明塩ビシート、透明ガラス板等からなり、積層体11とは別体に設けられている。これら表面透光シート層1、隠蔽層5、色柄層6及び補強層16はいずれも同じ大きさで、上記ヘッドボード本体29の凹溝部32内に嵌挿可能とされている。
尚、本実施形態等のように、色柄層6の裏側に補強層16として厚みのある透明樹脂板や透明ガラス板等を使用する場合は、その補強層16の端部(端面)から色柄層6裏面側へ光が透過することがあり、それを防ぐために、補強層16端部への遮光手段を講じる必要がある。例えば補強層16端部にカバー部材を取り付けたり、遮光性のある樹脂を塗布したりすればよい。これは、全ての実施形態において応用可能な技術である。
ヘッドボード本体29後面の凹溝部32内には、その凹溝部32の溝幅に対応する大きさの上記積層体11(表面透光シート層1、隠蔽層5、色柄層6及び補強層16)がヘッドボード本体29の左右端面の開口を通して着脱可能に嵌挿されている。この積層体11の凹溝部32内への嵌挿状態では、裏面のアクリル板等からなる補強層16と上記透明板33との間に積層体11の表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6が挟み込まれて固定されるようになっている。
さらに、積層体11の裏側である、凹溝部32の底面には、上記色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させるための光源41が取り付けられている。この光源41は上記発光化粧構造体の例1と同様のもので、取付ボード42上に並べられて固定されたLED(発光ダイオード)等からな複数の発光部43,43,…を有する。凹溝部32内の空間は、光源41を収容する光源収容部48を構成しており、この光源収容部48は、表側の積層体11以外の部分では光に対して密閉されて光漏れのない構造で、表側の積層体11のみから透光可能とされている。上記光源41は、ヘッドボード28上面に取り付けたスイッチ49により点灯及び消灯が切り換えられる。
この実施形態においては、スイッチ49をオフにして光源41を消灯状態にしているときには、図16に示すように、発光化粧構造体Bの色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が積層体11の表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の外観模様を呈するヘッドボード28を有するベッド27が得られる。
これに対し、スイッチ49をオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が補強層16及び積層体11に裏側から照射される。このときには、図17に示すように、その光により色柄層6の色柄7が、補強層16、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に鮮明に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が積層体11の表面側に表面透光シート層1表面のシート素材の模様に加えて現出して、模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈する。
そして、積層体11における表面透光シート層1の柄や色柄層6の色柄7を変える場合には、積層体11を補強層16と共に凹溝部32から、そのヘッドボード本体29左右端の開口を通して引き出し、新しい木目柄の表面透光シート層1や色柄7が形成された色柄層6を補強層16と共に上記とは逆にヘッドボード本体29左右端の開口から凹溝部32内に嵌挿すればよい。
したがって、この例においても、ベッド27のヘッドボード28に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
また、ヘッドボード28に対し積層体11の表面透光シート層1又は色柄層6が交換可能であるので、必要に応じて表面透光シート層1や色柄7を別のものに取り換えることができ、ベッド27の雰囲気を自由に変えることができる。
尚、積層体11の表面透光シート層1又は色柄層6の少なくとも一方を交換できるように他の層と別体にすることもできる。
また、上記実施形態1及び2では、ベッド27のヘッドボード28に発光化粧構造体Bを設けているが、フットボード37に設けてもよく、ヘッドボード28及びフットボード37の双方に設けてもよい。
[実施形態7]
図19〜図24は実施形態7を示し、発光化粧構造体Bをテーブルの天板に設けたものである。
すなわち、図19において、51はテーブルであって、このテーブル51は、床面に載置される基台52と、この基台52に立設された脚部53と、この脚部の上端に固定された天板54とを備えている。
上記天板54は、図20に示すように、矩形状の天板本体55と、その上面に組み付けられた発光化粧構造体Bとを備えている。この発光化粧構造体Bは、図21〜図23に示すように、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含む積層体11を備え、これら表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6は積層されて一体化されている。図21は積層体11(表面透光シート層1)の表面を、また図22は積層体11(色柄層6)の裏面をそれぞれ示している。
上記表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6は、上記実施形態1(図1参照)と同様のものであり、表面透光シート層1は、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる。また、隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
天板本体55の上面には、例えばその長さ方向の中間部分に、天板本体55の上面を幅方向の端部間に亘り断面矩形状に凹陥してなる第1凹溝部56と、その第1凹溝部56の底面中央部を断面矩形状に凹陥してなる第2凹溝部57とが段差状に形成されている。また、天板本体55の上面は上記第1凹溝部56の開口の両角部が凹陥されていて、その凹陥部分に、第1凹溝部56の開口のみを覆うようにアクリル板等からなる透明板58が嵌合されて固定されており、この透明板58により開口が覆われた第1凹溝部56とその底面の第2凹溝部57とはいずれも天板本体55の幅方向の端面で開口している。
上記第1凹溝部56内には、その第1凹溝部56の溝幅に対応する大きさの上記積層体11(表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6)が着脱可能に嵌挿されている。さらに、積層体11の裏側である、第2凹溝部57の底面には、上記色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させるための光源41が取り付けられている。この第2凹溝部57内の空間は、光源41を収容する光源収容部48を構成しており、この光源収容部48は、表側の積層体11以外の部分では光に対して密閉されて光漏れのない構造で、表側の積層体11のみから透光可能とされている。
そして、図22に示すように、色柄層6には互いに異なる複数の色で色柄7が形成されている。図示例では、色柄層6の色柄7は、矩形の平面を9つのマス目に区画するように描かれた格子部と、5つのマス目内に描かれた5つの「円形」(●)と、残り4つのマス目内に描かれた4つの「三角形」(▲)とからなるものであり、背景、格子部、「円形」及び「三角形」の色は互いに異なり、背景は白色、格子部は黄色(図では点(ドット)にて示す)、「円形」は赤色(図では粗い間隔の斜線にて示す)であり、「三角形」は緑色(図では細かい間隔の斜線にて示す)となっている。
一方、上記光源41は、点灯時に上記色柄7の色と同じか又は近似した複数の色に発色可能とされている。すなわち、光源41は例えば基板(図示せず)上に複数の光源モジュール44,44,…を配列したものであり、図示しないが、各光源モジュール44はLEDチップと、そのLEDチップを覆う封止樹脂とからなり、一部の光源モジュール44の封止樹脂にはLEDの発光の一部の波長を変換して蛍光を放射させる1又は複数種類の蛍光体が混入されており、その蛍光体の種類の調整等により光源モジュール44が異なる色に発色する。具体的には、一部の光源モジュール44は格子部と同じ黄色か又は黄色に近似した色に、また他の一部の光源モジュール44は背景の色と同じ白色か又は白色に近似した色に、さらに残りの光源モジュール44は「円形」の色と同じ赤色か又は赤色に近似した色にそれぞれ発色する。これら複数の光源モジュール44,44,…は図外の切換スイッチ49により点灯及び消灯状態が切り換えられ、かつ点灯状態では異なる色毎に点灯可能とされて、その発色が変更可能とされている。こうして点灯する光源モジュール44の発色を変えることにより積層体11表面側に現出する色柄7を変化させ、全ての色の光源モジュール44を消灯させたときには、図24(a)に示すように、色柄層6の全ての色柄7を表面透光シート層1の表面に現出させないが、いずれかの色の光源モジュール44が点灯したときには、色柄層6の色柄7のうち光源モジュール44の色以外の色の色柄7を表面透光シート層1の表面に現出させ、黄色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(b)に示すように、黄色の格子部を除いた色の色柄7を表面透光シート層1の表面に、また白色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(c)に示すように、白色の背景を除いた色の色柄7を表面透光シート層1の表面に、さらに赤色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(d)に示すように、赤色の「円形」を除いた色の色柄7を表面透光シート層1の表面にそれぞれ現出させるようにしている。
この実施形態においては、切換スイッチをオフにして全ての光源モジュール44,44,…を消灯状態にしているときには、図24(a)に示すように、発光化粧構造体Bの色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が積層体11の表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の天板54を有するテーブル51の外観模様が得られる。
これに対し、切換スイッチをオン操作して光源41を点灯させると、その光源モジュール44,44,…からの光が積層体11に裏側から照射される。このときには、図24(b)〜図24(d)に示すように、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が積層体11の表面側に表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈する。すなわち、光源41の消灯状態では、表面木様のテーブル51が光源41の点灯に伴い色柄7が現出するようになり、雰囲気を大きく変化させることができる。
そして、上記点灯する光源モジュール44は異なる色毎に点灯状態が切り換えられる。黄色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(b)に示すように黄色の格子部を除いた色の色柄7が、また白色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(c)に示すように白色の背景を除いた色の色柄7が、さらに赤色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(d)に示すように赤色の「円形」を除いた色の色柄7が、それぞれ表面透光シート層1の表面に現出される。このことにより、複数の色柄を切り換えて表面に現出させることができ、テーブル51の外観見映えを高めることができる。
そして、表面に現出する色柄7を交換する場合には、積層体11を天板本体55の第1凹溝部56から、その天板本体55の幅方向端面の開口を通して引き出し、新しい色柄7が形成された色柄層6を有する積層体11を上記とは逆に天板本体55端面の開口から第1凹溝部56内に嵌挿すればよい。尚、この交換する色柄層6の色柄7も光源41の発色に対応した複数種類の色に分けられている。
したがって、この例においても、テーブル51の天板54に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
また、天板本体55及び透明板58に対し積層体11が交換可能であるので、必要に応じて積層体11を交換して色柄層6の色柄7を別のものに取り換えることができ、テーブル51の雰囲気を自由に変えることができる。
[実施形態8]
尚、上記実施形態7では、テーブル51の天板本体55及び透明板58に対し積層体11を交換可能としているが、図25に示す実施形態8のように、透明板58を天板本体55に対して着脱可能に固定し、その透明板58の裏面(下面)に積層体11を一体的に固定して透明板58を補強層16とすることで、積層体11を透明板58と共に天板本体55に対し交換可能とするようにしてもよい。
この実施形態では、積層体11は、天板本体55と略同じ大きさの表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6を有する。その表面透光シート層1は、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる。また、隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。色柄層6には、図22に示すような所定の色柄7が形成されている。その他の構造は図19及び図20に示す実施形態7と同様である。
したがって、この実施形態においても、テーブル51の天板54に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
また、天板本体55に対し積層体11が透明板58(補強層16)と共に交換可能であるので、必要に応じて積層体11及び透明板58を交換して色柄層6の色柄7を別のものに取り換えることができ、テーブル51の雰囲気を自由に変えることができる。
[実施形態9]
図26及び図27は実施形態9を示し、階段の蹴込板に設置したものである。
すなわち、図26において、61は階段であって、この階段61は、上部に水平部62aと垂直部62bとが交互に段状に形成された雛段型の側桁62を有し、該側桁62の各水平部62aには踏板65が載置固定され、側桁62の各垂直部62bには蹴込板66が、上側に位置する踏板65の手前端部と下側に位置する踏板65の奥端部とに亘るように施工されている。この階段61の構造は通常のものと同様である。図26中、64は側桁62を支持する受梁である。
そして、この実施形態では、上記各蹴込板66は発光化粧構造体Bからなっている。図27に拡大して示すように、この発光化粧構造体B(蹴込板66)は、積層体11と、この積層体11の裏側(奥側)に配置された光源41とを備えてなる。上記積層体11は、上記各実施形態と同様に、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含み、積層体11の裏面には透光性を有する補強層16が配置されている。積層体11の隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光源41による光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光源41による光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
上記補強層16は、例えば透明アクリル樹脂板や透明塩ビシート等からなり、積層体11と光源41との間に介在されるものである。
また、積層体11の裏側に配置されている光源41は、図外のスイッチにより点灯状態及び消灯状態に切り換えられる電球、蛍光灯、LEDや有機ELシート(面発光体)等からなり、その光により色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させる。
この実施形態においては、例えば日中でスイッチをオフにして光源41を消灯状態にしているときには、各蹴込板66(発光化粧構造体B)の積層体11における色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の蹴込板66及び階段61の外観模様が得られる。
これに対し、例えば夜間にスイッチをオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が透光性を有する基材を介して積層体11に裏側から照射される。このときには、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、シート素材の模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈し、光源41の消灯時(日中)とは異なる表情を演出することができる。
また、こうして階段61の蹴込板66が光ることで踏板65が照らされ、階段61の昇降時に足下が明るくなって歩行の安全性に寄与することができる。
したがって、この実施形態においては、階段61の蹴込板66に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[実施形態10]
図28〜図30は実施形態10を示し、発光化粧構造体Bは部屋の床面、壁面及び天井面に施工したものである。
図28及び図29において、71は部屋の床、72は壁、73は天井であり、これら床71、壁72及び天井73の各中間部には係る発光化粧構造体Bが連続するように施工されている(図28で点線にて挟まれた範囲)。
床71、壁72及び天井73での施工構造は互いに同じであり、図30に示すように、下地材74において発光化粧構造体Bの施工範囲に断面矩形状に凹陥した凹陥部75が形成され、その凹陥部75に発光化粧構造体Bが組み付けられている。この発光化粧構造体Bは、部屋の室内側に位置する積層体11と、この積層体11の裏側(奥側)に配置された光源41とを備えてなる。上記積層体11は、上記各実施形態と同様に、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7(図示例では大小の複数の円)が形成された色柄層6とを含み、積層体11の裏面には透光性を有する補強層16が配置されている。積層体11の隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光源41による光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光源41による光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
上記補強層16は、例えば透明アクリル樹脂板や透明塩ビシート等からなり、積層体11と光源41との間に介在されるものである。
また、積層体11の裏側に配置されている光源41は、図外のスイッチにより点灯状態及び消灯状態に切り換えられる電球、蛍光灯、LEDや有機ELシート(面発光体)等のからなり、その光により色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させる。この光源41は下地材74の凹陥部75内に配置されている。
下地材74において、凹陥部75の左右両側部分の表面には、上記補強層16に積層体11を加えた厚さと同じ厚さの化粧板76が固定されている。この各化粧板76は、MDF等の化粧板用基材77と、この各基材77の表面に接着された突板78とを備えている。この突板78は、積層体11の表面透光シート層1と同じ模様を有する。そして、化粧板76と発光化粧構造体Bとを隣接して施工することで、床71、壁72及び天井73の発光化粧構造体Bにおける表面透光シート層1の表面と化粧板76の表面とが面一になり、かつ表面透光シート層1及び突板78間で同じ模様を呈するようになっている。
この実施形態においては、例えば日中でスイッチをオフにして光源41を消灯状態にしているときには、床71、壁72及び天井73に施工されている発光化粧構造体Bの積層体11における色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、図28に示すように、通常の色柄を呈する床71、壁72及び天井73の外観模様が得られる。
その際、発光化粧構造体Bにおける表面透光シート層1の表面と化粧板76の表面とが面一で同じ模様を呈するので、どの部分に発光化粧構造体Bが施工されているのかが判り難くなり、外観見映えがよい。
これに対し、例えば夜間にスイッチをオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が透光性を有する補強層16を介して積層体11に裏側から照射される。このときには、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、図29に示すように、その色柄層6の色柄7が表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈し、光源41の消灯時(日中)とは異なる表情を演出することができる。
したがって、この例においては、床71、壁72及び天井73の一部に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
尚、この実施形態では、部屋の床71、壁72及び天井73の全てに亘り発光化粧構造体Bを施工しているが、床71、壁72及び天井73のいずれか1つ又は2つに施工してもよい。
[実施形態11]
図31及び図32は実施形態11に係る発光化粧構造体Bを示し、欄間に施工したものである。
図31において、81は部屋の壁72の下端部に施工された敷居、82は壁72の上部に施工された鴨居であって、これら敷居81と鴨居82との間には壁72の開口を開閉する襖83が嵌め込まれている。また、壁72の上端部である鴨居82の上側には、襖83(壁72の開口)に対応する位置に欄間84が設けられている。この欄間84は鴨居82と天井73面との間に施工された枠部材85に嵌め込まれて固定されている。
図32に示すように、欄間84は、壁72の厚さ方向の中央部に位置する非透光性の固定板86を有し、この固定板86の周縁部には、枠部材85の内周面に形成した凹溝85aに嵌合されて固定板86を枠部材85に固定するための嵌合部86aが設けられている。固定板86の厚さ方向の両側にはそれぞれ発光化粧構造体B,Bが配置されている。各発光化粧構造体Bは、積層体11と、この積層体11の裏側(壁72の厚さ方向の中央側)に配置された光源41とを備えてなる。上記積層体11は、上記各実施形態と同様に、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含み、積層体11の裏面には透光性を有する補強層16が配置されている。積層体11の隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光源41による光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光源41による光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
上記補強層16は、例えば透明アクリル樹脂板や透明塩ビシート等からなり、積層体11と光源41との間に介在されるものである。
また、積層体11の裏側に配置されている光源41は、図外のスイッチにより点灯状態及び消灯状態に切り換えられる電球、蛍光灯、LEDや有機ELシート(面発光体)からなり、その光により色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させる。
この実施形態においては、例えば日中でスイッチをオフにして光源41を消灯状態にしているときには、各発光化粧構造体Bの積層体11における色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の色柄を呈する欄間84の外観模様が得られる。
これに対し、例えば夜間にスイッチをオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が透光性を有する基材を介して積層体11に裏側から照射される。このときには、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈し、光源41の消灯時(日中)とは異なる表情を演出することができる。
また、欄間84には、固定板86の両側に発光化粧構造体B,Bが配置されているので、部屋の内側及び外側からそれぞれ上記発光化粧構造体Bの効果を得ることができる。特に、両方の発光化粧構造体B,Bにおける色柄層6,6の色柄7,7を互いに異ならせることができ、部屋毎に見合う意匠の欄間84が得られる。例えば和室と洋室との間の壁72に欄間84がある場合には、その和室及び洋室にそれぞれ対応した色柄7を採用すればよい。
したがって、この例においても、欄間84に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[その他の実施形態]
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、種々の実施形態を包含している。例えば、上記実施形態では、透光性化粧材A(発光化粧構造体B)をベッド27のヘッドボード28やフットボード、テーブル51の天板54、階段61の蹴込板66、床71、壁72、天井73、欄間84に施工しているが、他の箇所や部材に施工し又は組み込むようにしてもよい。例えば、照明器具のシェード等が好ましい。
また、表面透光シート層1のシート素材を特定することで、その特定シート素材に対応した用途の製品に適用することができ、例えばシート素材が織布の場合にはカーテン等に用いることができる。
本発明は、裏からの光の照射の有無に応じて外観意匠が大きく異なる意匠性に優れた透光性化粧材や発光化粧構造体が得られるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
A 透光性化粧材
B 発光化粧構造体
1 表面透光シート層
1′ シート素材
5 隠蔽層
6 色柄層
7 色柄
9 表面コート層
11 積層体
16 補強層
41 光源
48 光源収容部
本発明は、住宅等の建築物の床用、壁用、その他の内装用建材や家具の面材、カーテン等として用いるのに好適な装飾性に優れた透光性化粧材、及びそれを用いた発光化粧構造体に関するものである。
従来、透光性を有する化粧材として、特許文献1に示されているように、天然木の表面に研磨材を吹き付けることで、密なる輪層(秋目部分)と粗なる輪層(春目部分)とを有する年輪のうちの粗なる輪層を刳り抜き除去して、密なる輪層のみの骨格を持つ透かし状にし、それを照明器具のシェード等に用いたものは知られている。
また、特許文献2には、ガラスや樹脂等の透明板の表面に木質薄単板からなる突板を、また裏面に模様付きカッティングシートをそれぞれ接着して一体化し、裏面からの光によりカッティングシートのシルエット模様を突板の木目模様と共に表側に現出させるようにした照明用装飾突板貼着積層体が提案されている。
さらに、特許文献3に示されるものでは、透光性木目付化粧板として、木質薄単板の裏面に不織布が接着された木目シートを裏面にて透明樹脂板に接着するようにしている。
この他、光透過性を有する突板を利用し、その突板を透光性基材の表面に積層して突板層を形成し、基材裏側の光源の光を突板層表面から照射させることにより、光源の消灯時には、通常の木目調パネルに見えるが、光源の点灯時には、突板層の木目を浮かび上がらせて現出させるようにしたものが提案されている(例えば特許文献4〜8参照)。
また、突板層と光源との間に絵柄模様を描いた絵柄層を配置し、その絵柄を影絵のように突板層表面に現出させることが提案されている(例えば特許文献5,7参照)。
特開2003−109414号公報
実用新案登録第3153311号公報
特開2002−144483号公報
特開平8−267667号公報
特開2002−205500号公報
特開2009−80981号公報
特開2009−160819号公報
特開2010−180563号公報
しかし、上記従来の特許文献のものでは、いずれも、木質薄単板からなる突板層の透光性を利用し、光源からの光を突板層に透過させて表面に放射させたり、絵柄を表面に現出させたりしているものの、その突板層の透光性が低く、表面に絵柄を明確にかつ鮮明に現出させることが困難であった。さりとて、透光性を高めるために突板層の厚さを薄くすればよいが、それには限度がある。
また、裏側の光源からの光により絵柄を表面側に現出させるようにすると、光源からの光がないときでも絵柄が表面側に露呈してしまい、不自然な外観になるという問題がある。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記木質薄単板とは異なり、紙や布等をシート素材として表面に有する化粧材の構造に改良を加えることにより、裏側から光がないときには、色柄が表面側に露呈せず、通常のシート素材そのままの外観を呈する一方、裏側から光が当たったときには、一転、シート素材の模様と共に色柄が表面に明確にかつ鮮明に現出する透光性化粧材、及びそれを用いた発光化粧構造体が得られるようにすることにある。
上記の目的を達成すべく、この発明では、表面層をシート素材に樹脂が含浸されて透光性を有する処理がなされた表面透光シート層とする。それとともに、その表面透光シート層と裏側の色柄層との間に、裏側からの光がないときに色柄層の色柄を表面から隠蔽するための隠蔽層を配置するようにした。
具体的には、第1の発明では、透光性化粧材は、紙、織布又は不織布からなるシート素材に樹脂が含浸されることで透光性を有する状態となった表面透光シート層と、この表面透光シート層の裏面側に配置された隠蔽層と、この隠蔽層の裏面側に配置され、所定の色柄が形成された透光性を有する色柄層とを含む積層体からなる。
上記隠蔽層は、積層体の裏側からの光がないときに上記色柄層の色柄を積層体表面から該色柄が積層体表面に現出しない状態に隠蔽する一方、積層体の裏側からの光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有している。
そして、透光性化粧材は、裏側からの光で上記色柄層の色柄が表面側に現出するように構成されている。
尚、上記色柄層の色柄は絵柄のみ、色のみ、或いは色と絵柄とを組み合わせたものであってもよい。
この第1の発明では、透光性化粧材は、表面透光シート層、隠蔽層及び色柄層を含む積層体からなり、その表面透光シート層はシート素材への樹脂の含浸処理により透光性を有するものとなっているので、高い透光性が得られる。そのため、透光性化粧材の裏側から光が照射されると、その光により色柄層の色柄が透光性化粧材の表面側に鮮明にかつ明確に、表面透光シート層のシート素材が持っている表面の本来の模様に加えて現出する。
また、積層体の隠蔽層は、積層体の裏側からの光がないときに色柄層の色柄を積層体表面から該色柄が積層体表面に現出しない状態に隠蔽し、裏側からの光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有しているので、透光性化粧材の裏側からの光がない場合は、色柄層の色柄は積層体表面から隠蔽され、透光性化粧材の表面側に現出することがなく、表面透光シート層表面の模様がそのまま露出し、樹脂含浸シートの通常と同様の模様を有する外観模様が得られる。
すなわち、透光性化粧材は、裏側から光を当てない状態と、光を当てた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
第2の発明では、第1の発明に係る透光性化粧材において、色柄層は、裏面に色柄が反転印刷された紙層からなるものとする。
第3の発明では、第2の発明に係る透光性化粧材において、紙層は、一方の面に色柄が他方の面に至らないように反転印刷されることで該一方の面が印刷面とされた紙からなり、該印刷面が裏側になり印刷面と反対側の他方の面が表側になるように配置されている。
これらの第2及び第3の発明では、紙層の裏面に色柄を反転印刷するだけで色柄層の色柄が形成されるので、色柄の形成を容易に行うことができる。反転印刷された色柄は、裏面側から光を当てることにより、表面側に所望の色柄が表出する。
第4の発明では、発光化粧構造体は、上記第1〜第3の発明のいずれか1つに係る透光性化粧材と、この透光性化粧材における積層体の裏側に配置され、上記色柄層の色柄を積層体表面側に現出させる光源とを備えていることを特徴とする。
この第4の発明では、発光化粧構造体は、表面透光シート層、隠蔽層及び色柄層を含む積層体を有し、その表面透光シート層は樹脂の含浸により透光性を有するものであるので、高い透光性が得られる。そのため、積層体の裏側から光源の光が照射されると、その光により色柄層の色柄が積層体の表面側に鮮明にかつ明確に表面透光シート層表面の模様に加えて現出する。
また、積層体の隠蔽層は、積層体の裏側からの光源による光がないときに色柄層の色柄を積層体表面から該色柄が積層体表面に現出しない状態に隠蔽する一方、積層体の裏側からの光源による光があるときには色柄層の色柄を積層体表隠蔽し、裏側からの光源による光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有しているので、積層体の裏側から光源による光がない場合は、色柄層の色柄は積層体表面から隠蔽され、その表面側に現出することがなく、表面透光シート層表面の本来の模様がそのまま露出し、通常の化粧材と同様の模様を有する外観模様が得られる。
すなわち、発光化粧構造体は、積層体裏側から光源の光を当てない状態と、光源の光を当てた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
第5の発明では、第4の発明に係る発光化粧構造体において、光源は有機ELシートとする。
この第5の発明では、厚さが薄くて発光化粧構造体に好適な光源が得られる。
第6の発明では、第4又は第5の発明に係る発光化粧構造体において、色柄層には、互いに異なる複数の色で色柄が形成されている一方、光源は、上記色柄の各色と同じか又は近似した複数の色に発色可能とされ、上記光源の発色を変えることにより積層体表面側に現出する色柄を変化させることを特徴とする。
この第6の発明では、光源は色柄の各色と同じか又は近似した複数の色に発色可能であるので、この光源の発色を変えると、色柄において光源の光の色と同じか又は近似した色の部分が消えて積層体表面に現出する。このことで、積層体表面側に現出する色柄を変化させることができる。
第7の発明では、第4〜第6の発明のいずれか1つに係る発光化粧構造体において、積層体の裏側に、光源を収容しかつ積層体以外の部分で光に対して密閉された光源収容部を形成する。
この第7の発明では、積層体裏側の光源収容部が表側の積層体以外の部分で光に対して密閉されたものであるので、光源が点灯していないときに、積層体における隠蔽層よりも裏側にある部分(色柄層も含む)を積層体表面から確実に見え難くすることができ、光源の点灯によって初めて色柄層の色柄を積層体表面に現出できることとなる。
以上説明した如く、第1の発明によると、紙、織布又は不織布からなるシート素材への樹脂の含浸により透光性を有するようになった表面透光シート層と、この表面透光シート層の裏面側に配置された隠蔽層と、この隠蔽層の裏面側に配置され、所定の色柄が形成された透光性を有する色柄層とを含む積層体からなる透光性化粧材を設け、隠蔽層は、積層体の裏側からの光がないときに色柄層の色柄を積層体表面から積層体表面に現出しない状態に隠蔽する一方、積層体の裏側からの光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有するものとし、裏側からの光で色柄層の色柄が表面側に現出するようにした。このことにより、表面透光シート層の透光性を高くすることができ、透光性化粧材の裏側からの光がない場合に、色柄層の色柄は積層体表面から隠蔽され、通常の化粧材と同様の模様を有する外観模様が得られる一方、透光性化粧材の裏側から光が照射されると、その光により色柄層の色柄が透光性化粧材の表面側に鮮明にかつ明確に樹脂含浸シート表面の模様に加えて現出し、よって裏側から光を当てない状態と、光を当てた状態との間で大きな差異のある外観を有し、意匠性の高い透光性化粧材が得られる。
第2の発明では、色柄層としての補強層は、裏面に色柄が反転印刷された紙層からなるものとした。また、第3の発明では、その紙層は、一方の面である印刷面に色柄が他方の面に至らないように反転印刷された紙からなり、印刷面が裏側になり他方の面が表側になるように配置されているものとした。これら第2及び第3の発明によると、紙層の裏面に色柄を反転印刷するだけで色柄層の色柄が形成されるので、色柄の形成を容易に行うことができる。
第4の発明によると、積層体の裏側に色柄層の色柄を積層体表面側に現出させる光源を配置し、隠蔽層は、光源による光がないときに色柄層の色柄を積層体表面から積層体表面に現出しない状態に隠蔽する一方、光源による光があるときには色柄層の色柄を積層体表面に現出させる程度に透光性を有するものとした。このことにより、その表面透光シート層の透光性を高くすることができ、光源の光がない場合に、色柄層の色柄は積層体表面から隠蔽され、通常の化粧材と同様の模様を有する外観模様が得られる一方、光源の光が照射されると、その光により色柄層の色柄が積層体の表面側に鮮明にかつ明確に樹脂含浸シート表面の木目模様に加えて現出し、よって光源の光を当てない状態と、光を当てた状態との間で大きな差異のある外観を有し、意匠性の高い発光化粧構造体が得られる。
第5の発明によると、光源を有機ELシートとしたことにより、厚さが薄くて発光化粧構造体に好適な光源が得られる。
第6の発明によると、色柄層に、互いに異なる複数の色で色柄を形成する一方、光源は、色柄の各色と同じか又は近似した複数の色に発色可能とし、その光源の発色を変えることにより積層体表面側に現出する色柄を変化させるようにしたことにより、光源の発色を変えることで、色柄において光源の光の色と同じか又は近似した色の部分が消えて積層体表面に現出し、よって積層体表面側に現出する色柄を変化させることができる。
第7の発明によると、積層体の裏側に積層体以外の部分で光に対して密閉された光源収容部を形成したことにより、光源が点灯していないときに、積層体における隠蔽層よりも裏側にある部分を積層体表面から確実に見え難くし、光源の点灯によって初めて色柄層の色柄を積層体表面に現出することができる。
図1は本発明の実施形態1に係る透光性化粧材の断面図である。
図2は透光性化粧材の表面を示す図である。
図3は透光性化粧材の裏面を示す図である。
図4は、透光性化粧材の裏側から光を当てたときに色柄が表面に現出した状態を示す図2相当図である。
図5は実施形態1に係る透光性化粧材の製造工程を示す図である。
図6は実施形態2に係る透光性化粧材を示す図1相当図である。
図7は実施形態2に係る透光性化粧材の製造工程を示す図である。
図8は実施形態3に係る透光性化粧材を示す図1相当図である。
図9は実施形態4に係る透光性化粧材を示す図1相当図である。
図10は、透光性化粧材が施工されたドアの正面図である。
図11は図10のXI−XI線拡大断面図である。
図12は、透光性化粧材を光源と組み合わせた実施形態5に係る発光化粧構造体が設けられたベッドを示す斜視図である。
図13は、光源が点灯して色柄がヘッドボードの表面に現出した状態を示す図12相当図である。
図14は図12のXIV−XIV線断面図である。
図15は発光化粧構造体の要部を拡大して示す断面図である。
図16は、実施形態6に係る発光化粧構造体が設けられたベッドを示す図12相当図である。
図17は、光源が点灯して色柄が表面に現出した状態を示す図16相当図である。
図18は図16のXVIII−XVIII線断面図である。
図19は、実施形態7に係る発光化粧構造体が設けられたテーブルを示す斜視図である。
図20は図19のXX−XX線拡大断面図である。
図21は、テーブルの天板上面に組み付けられた発光化粧構造体における積層体の表面を示す図である。
図22は発光化粧構造体における積層体の色柄を示す図である。
図23は発光化粧構造体における積層体の断面図である。
図24は、光源の消灯状態及び点灯状態の切換えにより色柄が表面に現出した状態を示す図である。
図25は、実施形態8に係る発光化粧構造体が設けられたテーブルを示す図20相当図である。
図26は、実施形態9に係る発光化粧構造体が設けられた階段を示す側面図である。
図27は階段の要部を拡大して示す断面図である。
図28は、実施形態10に係る発光化粧構造体が設けられた部屋の床面、壁面及び天井面を示す斜視図である。
図29は光源が点灯した状態を示す図28相当図である。
図30は発光化粧構造体の施工構造を示す断面図である。
図31は、実施形態11に係る発光化粧構造体が設けられた欄間を襖と共に示す図である。
図32は図31のXXXII−XXXII線拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
[実施形態1]
図1〜図4は本発明の実施形態1に係る透光性化粧材Aを示す。この透光性化粧材Aは、表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7(図3参照)が描かれた色柄層6と、上記表面透光シート層1の表面に形成された表面コート層9とをそれぞれ表側から順に積層して一体化した積層体11からなる。
(表面透光シート層)
上記表面透光シート層1は、シート素材として、紙、織布又は不織布からなり、そのシート素材に樹脂が含浸されることで、該シート素材の感触を維持したまま透明化されて透光性を有する状態となったものである。シート素材が紙や織布、不織布の場合には素材中に樹脂が入り込むことによって透明化し、透光性が向上する。
尚、その表面透光シート層1表面の凹部を透明性樹脂により充填して平滑面とし、その上に表面コート層9を形成するようにしてもよい。
ここで、上記表面透光シート層1となる紙、織布又は不織布に含浸させる樹脂について詳細に説明する。この樹脂は、例えば含浸樹脂と着色充填樹脂の2つの樹脂を用いる。これらの含浸樹脂及び着色充填樹脂は、共に、活性エネルギー線硬化特性と湿気硬化特性とを兼ね備えている。このため、活性エネルギー線硬化特性のみを有する樹脂と比べると、活性エネルギー線の照射により瞬時に樹脂を硬化させることができる。
両樹脂は、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーやポリマーを単独、又はこれらを複数混合させたものに、反応性モノマーを加えたものを主成分とする。さらに、両樹脂は、主成分に対して、ポリイソシアネートを1質量%以上でかつ15質量%以下添加されてなる。
両樹脂に用いるオリゴマー、ポリマーおよび反応性モノマーは、活性エネルギー線硬化特性を有する樹脂として一般的に用いられるものでよい。両樹脂に用いる反応性モノマーの例として以下のものが挙げられる。
単官能モノマーの例としては、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、ジシクロペンタジエンアクリレート、2−ヒドロキシルプロピルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、イソボロニルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。
2官能モノマーの例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタアクリレート、ポリプロピレンジアクリレート、ポリプロピレンジメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタアクリレート等が挙げられる。
3官能モノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート等が挙げられる。
4官能以上のモノマーの例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
また、両樹脂には、イソシアネート系化合物が添加されることが好ましい。このイソシアネート系化合物は、空気中の湿気を吸収し、両樹脂の湿気硬化に寄与する。このため、両樹脂のシート素材(紙、織布又は不織布)への密着性をより向上させることができる。
イソシアネート系化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のイソシアネートモノマー、並びにこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体等のポリイソシアネート誘導体、並びにこれらイソシアネートモノマーまたはポリイソシアネート誘導体のブロック体等が挙げられる。さらには、イソシアネート系化合物は、無黄変型または難黄変型のものを用いることが好ましい。これらのイソシアネート系化合物を単独で、又はこれらを複数混合して用いる。
両樹脂には、さらに、一般的に用いられる錫化合物や、亜鉛化合物、アミン化合物等の触媒を添加してもよい。
そして、具体的には、上記の含浸樹脂をシート素材の表面全体に塗布する。含浸樹脂は、スポンジロールコーターやナチュラルリバースコーター、フローコーター等を使用して塗布する。また、透光性をさらに向上させるためには、ディッピング処理をしてもよい。
含浸樹脂は、低粘度でかつ含浸性の高い樹脂であることが好ましい。具体的には、含浸樹脂は、シート素材の表面に塗布されたとき、その粘度が100Pa・s以下であることが好ましい。このように、含浸樹脂を低粘度のものとすることで、含浸性をより高めることができる。なお、含浸樹脂は、上述したモノマーにより希釈したり加熱したりすることで、上記の粘度となるように調整する。また、例えば、予めシート素材をその表面の温度が40°〜50°となるように加熱し、この表面の温度よりも10°〜20°低い温度にした含浸樹脂を塗布することで、この含浸樹脂の含浸性をより向上させることができる。
含浸樹脂を硬化又は半硬化させるために、シート素材の表面側から活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線には紫外線又は電子線が用いられる。
活性エネルギー線が紫外線である場合、含浸樹脂に、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、一般的に用いられるラジカル反応型のアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンジル系、ベンゾイン系等のカルボニル化合物、テトラアルキルチウラムモノサルファイド、チオキサンソン等のイオウ化合物を単独、またはこれらを複数混合して用いてもよい。しかし、含浸樹脂の硬化を促進するためには、上記一般的な光重合開始剤よりも紫外線に対して反応性に優れたものが好ましい。
具体的には、光重合開始剤として、含浸樹脂は、ビスアシルフォスフィンオキサイドを0.1質量%以上1.5質量%以下含むものか、モノアシルフォスフィンオキサイドを0.5質量%以上5.0質量%以下含むものであることが好ましい。ビスアシルフォスフィンオキサイドまたはモノアシルフォスフィンオキサイドは、紫外線の波長領域が350nm〜400nm近辺である長波長に吸収極大がある。したがって、紫外線を発光する光源として、350nm以上400nm以下の長波長領域に発光スペクトルを持つ発光方式を用いることにより、含浸樹脂8をより効果的に硬化させることができる。具体的には、放電灯方式のメタルハライドランプ、無電極方式のDバルブ、Vバルブ、Qバルブ、Mバルブ、パルスUV方式等を使用する。
また、活性エネルギー線が紫外線である場合、含浸樹脂には、増感剤や、光安定剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤等の助剤を添加してもよい。また、含浸樹脂に染料、顔料等を加えて着色を行ってもよい。
(隠蔽層)
上記隠蔽層5は、積層体11の裏側から後述する光源41(図14、図15、図18、図20、図25、図27、図20、図32参照)の光が照射されていないときに上記色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する程度に透光性を有しており、上記光が照射されたときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる。
この隠蔽層5は、例えば紙、プラスチックシート、これらを積層したポリサンド紙等の積層体等のシート状物を用いてもよいし、接着剤で一定厚みの層を形成してもよい。
この他、隠蔽層5としては、液晶層、温度に応じて透光性及び色が変化する感熱性樹脂、温度に応じて透光性が変化するフェイズチェンジマテリアル(PCM)を用いることができる。
隠蔽層5を液晶層で構成した場合、その液晶層に対する印加電圧の変更により液晶層の透光性を調整し、色柄層6の隠蔽状態を外部からコントロールすることができる。
また、隠蔽層5を感熱性樹脂とする場合には、例えば裏側に配置された発熱する光源等の隠蔽層5に対する加熱を利用し、その加熱により感熱性樹脂の温度が例えば25〜50℃の所定の温度に昇温することで、その感熱性樹脂の透光性(透明度)が高くなり、色も薄くなり、色柄層6の色柄7が表出するようにすればよい。
さらに、隠蔽層5をフェイズチェンジマテリアルとした場合、やはり裏側に配置された光源等による加熱によりPCMの温度が例えば25〜50℃に昇温することで、PCMが融点に達して固体が液体に変わることで、その透光性(透明度)が高くなるようにする。PCMとは、例えばn−オクタデカン、n−ヘキサデカンが主原料のノルマルパラフィンが用いられる。このノルマルパラフィンは、融点が23〜28℃のもので、基本的に融点よりも低い温度で固体となり、融点よりも高い温度で液体となる。この潜熱蓄熱材としてのノルマルパラフィンは例えばビニルパック等の透明容器に封入されたものや、透明の樹脂殻に封入されたマイクロカプセル状のものが樹脂と混合され、シート状に成形されたもの等が好適に使用される。
ノルマルパラフィン以外の潜熱蓄熱材としては、無機水和塩(塩化カルシウム六水和塩、硫酸ナトリウム十水和塩等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ミリスチン酸等)、芳香族炭化水素化合物(ベンゼン、p−キシレン等)、エステル化合物(パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等)、アルコール類(ステアリルアルコール等)、ポリアルキレングリコール等を使用することができ、内部に配した光源の発する温度により、適宜選択すればよい。
接着剤で一定厚みの隠蔽層5を形成する方法としては、基材表面に所定厚み(10〜200μm、好ましくは30μm〜75μm)の接着剤を塗布し、紫外線照射や熱硬化等の手段により半硬化させて、所定厚みを確保した上で表面シート素材を載置し、熱圧や冷圧等の手段により積層一体化する方法が好適に行われる。
このとき、接着層を隠蔽層5とするために、接着剤自体に染料系着色剤を用いて着色を施してもよい。また、接着剤自体を透明とし、顔料系の着色剤を添加してもよい。さらに、着色剤に替えて感温性樹脂やマイクロカプセル化されたPCM材料を使用してもよい。
(色柄層)
色柄層6は、例えば紙、樹脂シート等からなる。色柄層6は透光性を有し、この色柄層6には所定の色柄7が形成されている。この色柄7は写真や字、その他の所望のものが用いられる。色柄層6の色柄7は絵柄のみ、色のみ、或いは色と絵柄とを組み合わせたものであってもよい。
具体的には、この色柄層6として紙を用いる場合、図3に示すように、その紙の裏面に色柄7(図示例では「富士山」の漢字及びその写真)が反転印刷されている。すなわち、色柄層6としての紙層は、一方の面に色柄7がインクの透過等により他方の面に至らないように反転印刷されることで該一方の面が印刷面とされた紙からなり、該印刷面が裏側になり印刷面と反対側の他方の何も印刷されていない面が表側になるように配置されている。この場合、色柄層6に形成された色柄7は、裏面側からの光の透過により、鏡反転された態様で表面に色柄が透過される。
尚、この色柄層6は、必ずしも色柄7を反転させる必要はなく、表面側に向けて色柄7を形成する場合には反転されていないそのままの色柄7が用いられる。この場合、色柄層6に形成された色柄7は、裏面側からの光の透過により、印刷された態様のままで表面に色柄が透過される。
その他の例として、色柄層6は、例えば紙、樹脂シート、ガラス等からなり、色柄層6と隠蔽層5を積層一体に設けてもよいし、色柄層6と後述する補強層16を積層一体に設けてもよいし、色柄層6と隠蔽層5と補強層16とを別に設けてもよい。
例えば色柄層6と隠蔽層5を積層一体に設ける場合、表面にインク受容層を設けた紙を使用し、インク受容層にインクジェット印刷を行ってもよい。この場合、所定厚みを有する紙を使用し、裏面側にインクが透過しないようにインクジェット印刷することでインクが透過していない層を隠蔽層5としてもよい。
また、2枚の紙の間に樹脂シートを熱圧一体化したいわゆるポリサンド紙等の片面に色柄7を印刷し、印刷した方の紙層を色柄層6、印刷していない方の紙層を隠蔽層5としてもよい。この場合、裏面側にインクが透過していく恐れがないので、安定した品質の隠蔽性能を実現することができる。
また、例えば色柄層6と隠蔽層5を積層一体に設ける場合、透光性を有するガラスやアクリル樹脂をステンドグラス様に配したり、ガラス表面に直接色柄7を印刷等により設けてもよい。
(表面コート層)
表面コート層9は、表面透光シート層1の表面に形成されている。この表面コート層9は、例えばアクリル系透明樹脂塗料やウレタン系透明樹脂塗料等からなる。
そして、透光性化粧材Aは、図2に示すように、その裏側(積層体11の裏側)から光源41の光が当てられていないときには、色柄層6の色柄7が隠蔽層5により隠蔽されて、透光性を有する表面透光シート層1表面のシート素材の模様がそのまま露出する一方、図4に示すように、透光性化粧材Aの裏側から光源41の光を当てたときに、その光で色柄層6の色柄7が、透光性化粧材Aの表面側に表面透光シート層1(シート素材)表面の模様に加えて現出するようになっている。
(透光性化粧材の製造方法)
次に、上記透光性化粧材Aの製造方法の一例について図5に基づき説明する。
まず、紙吸着工程において、図5(a)に示すように、表面の吸着層14aにより吸着性を有する板状の基材14の表面に、色柄7が形成されて色柄層6となる紙等を吸着させる。上記吸着層14aは、「ALシート」(ゼオン化成社製の商品名)等が用いられる。また離型層を有したフィルムへ接着を行い、最終工程において剥離させることもできる。基材14は、例えば「ダイセルバリューコーティングT789」(ダイセルバリューコーティング社製の商品名)等が用いられる。
次いで、積層工程において、図5(b)に示すように、上記色柄層6(紙)の表面に顔料系着色剤を混合させた接着剤を塗布し、半硬化させた後、その上に表面透光シート層1となるシート素材1′を貼着し、これらを積層一体化して積層体11を形成する。このことで、紙が色柄層6となり、接着剤が隠蔽層5となる。
この後、樹脂含浸工程において、図5(c)に示すように、シート素材1′にその表面から樹脂を含浸させた後に硬化させることで、シート素材1′を透明化し、そのシート素材1′を透光性を有する表面透光シート層1とする。
次のコーティング処理工程では、図5(d)に示すように、上記表面透光シート層1表面をコーティング処理して表面コート層9を形成する。
最後の基材剥離工程では、図5(e)に示すように、上記基材14をその表面の吸着層14aにおいて、他の部分、すなわち色柄層6(紙)、隠蔽層5(接着剤)、表面透光シート層1及び表面コート層9と分離除去する。
以上により、表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6が積層一体化され、その表面透光シート層1表面に表面コート層9が形成された図1に示す透光性化粧材Aが得られる。
この実施形態に係る透光性化粧材Aは、紙、織布又は不織布からなるシート素材に樹脂を含浸させることで透明化されて透光性を有する表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置された色柄層6と、表面透光シート層1の表面に形成された表面コート層9とを積層して一体した積層体11からなっている。上記隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有しているので、図2に示すように、透光性化粧材Aの裏側(積層体11の裏側)から光源41の光が当てられていないときには、最も裏側にある色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が透光性化粧材Aの表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面にシート素材の持つ模様がそのまま露出する。このことで、通常の化粧材と同様の模様を有する外観模様が得られる。
これに対し、透光性化粧材Aの裏側から光を当てたときには、図4に示すように、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5と透光性を有する表面透光シート層1とを経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が透光性化粧材Aの表面側に表面透光シート層1表面の本来の模様に加えて浮き上がるように鮮明に現出する。
したがって、この実施形態においては、透光性化粧材Aは、裏側から光を当てない状態と、光を当てた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[実施形態2]
図6は実施形態2に係る透光性化粧材Aを示し(尚、以下の各実施形態では図1〜図5と同様の部分について同じ符号を付して説明する)、補強層を加えたものである。
すなわち、この実施形態2では、実施形態1と同様に、透光性化粧材Aは、シート素材に樹脂が含浸されることで透光性を有する表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含む積層体11からなり、上記隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに上記色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有しており、透光性化粧材Aは、裏側からの光で上記色柄層6の色柄7が表面側に現出するように構成されている。
そして、この実施形態では、積層体11の内部に、透光性を有する補強層16が設けられている。具体的には、補強層16は上記隠蔽層5と色柄層6との間(隠蔽層5の裏面側でかつ色柄層6の表面側)に設けられている。
この補強層16は、主として表面透光シート層1を補強するためのものであり、例えばアクリル樹脂や塩ビ樹脂等の透明性樹脂板、ガラス等からなる。その他、透光性を有する板状体であれば、どのようなものでもよい。
(透光性化粧材の製造方法)
次に、この実施形態に係る透光性化粧材Aの製造方法について図7に基づき説明する。
まず、図7(a)に示すように、シート素材1′と、このシート素材1′の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置された補強層16と、この補強層16の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを積層一体化して積層体11を形成する(積層体形成工程)。
さらに、図7(b)に示すように、上記シート素材1′に表面から樹脂を含浸させて、シート素材1′を透光性を有する表面透光シート層1とする(樹脂含浸工程)。
最後に、図7(c)に示すように、上記表面透光シート層1表面をコーティング処理する(コーティング処理工程)。
以上により、表面透光シート層1、隠蔽層5、補強層16及び色柄層6が積層一体化され、その表面透光シート層1表面に表面コート層9が形成された図6に示す透光性化粧材Aが得られる。
したがって、この実施形態においても、実施形態1と同様の作用効果が得られる。特に、この実施形態の場合、積層体11内に補強層16が設けられているので、この補強層16により積層体11を所定の強度に保つことができ、透光性化粧材Aの製造時及び使用時の取扱い性や運搬性が高くなる。
[実施形態3]
図8は実施形態3を示し、補強層16の位置を変えたものである。上記実施形態2では、補強層16が隠蔽層5と色柄層6との間に設けられているのに対し、この実施形態では、補強層16は表面透光シート層1と隠蔽層5との間(表面透光シート層1の裏面側でかつ隠蔽層5の表面側)に設けられている。他の構成は実施形態2と同じである。この実施形態でも、実施形態2と同様の作用効果が得られる。
[実施形態4]
図9は実施形態4を示す。上記実施形態2及び3では、補強層16が積層体11の内部に設けられているのに対し、この実施形態4では、透光性を有する補強層16を積層体11の裏側に設けたものである。他の構成は実施形態2と同じである。この実施形態でも、実施形態2と同様の作用効果が得られる。
尚、この実施形態4とは異なり、補強層16を表面透光シート層1の表側に設けてもよい。その場合、積層体11における表面透光シート層1を交換可能としてもよく、表面透光シート層1のみを交換して、該表面透光シート層1の柄を他のものに変更することができる。
また、色柄層6を交換可能としてもよく、色柄層6のみを交換して、該色柄層6の色柄7を他のものに変更することができる。
さらには、表面透光シート層1ないし色柄層6を交換可能とすることもできる。こうすれば、表面透光シート層1及び色柄層6を同時に交換して、該表面透光シート層1の柄及び色柄層6の色柄7を他のものに変更することができる。
補強層を積層体11の表面に設けることもできる。その場合、積層体11の表面透光シート層1、色柄層6、又は表面透光シート層1ないし色柄層6を交換可能とすることもできる。
尚、上記実施形態2〜4では、補強層16を積層体11とは別に設けているが、補強層16を隠蔽層5又は色柄層6の少なくとも一方で構成してもよい。
[透光性化粧材の施工例]
図10及び図11は上記透光性化粧材Aの施工例を示し、玄関用又は内装用の木質ドア等に適用したものである。すなわち、図10において、21はドアで、このドア21は縦長の左右のドアパネル22,22間に縦長の透光性化粧材Aを一体的に組み付けて固定したものであり、左右のドアパネル22,22及び透光性化粧材Aは互いに同じ高さとされている。左右のドアパネル22,22は木質材料からなり、両ドアパネル22,22の対向縁部にはそれぞれ納め部材としてのモール23,23が固定され、これらモール23,23間に透光性化粧材Aが組み付けられている。図10中、25はドア21を開閉操作するためのハンドルである。
図11に示すように、上記モール23,23間には、室外側に位置するパネル材24が固定され、このパネル材24の室内側に透光性化粧材Aが配置されている。上記パネル材24は、例えばスリガラス等、透光性はあるが透光性化粧材Aの積層体11における色柄層6の色柄7の透けない材料で構成されている。
透光性化粧材Aは、積層体11と、その裏側に配置された補強層16とを有する。補強層16は、例えば透明アクリル樹脂板や透明塩ビシート等からなり、積層体11とパネル材24との間に介在されている。
積層体11は、上記各実施形態で説明したものと同様に、シート素材に樹脂が含浸されることで透光性を有する紙、織布又は不織布からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含んでいる。その隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光(例えば太陽光や室外の電灯光)がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
この実施形態においては、例えば夜間等で室外からの太陽光、或いは室外の電灯光がないときには、ドア21の透光性化粧材Aの積層体11における色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面のシート素材の模様がそのまま露出する。このことで、室内側において、ドア21は表面透光シート層1表面にシート素材の模様のみが現れ、通常の外観模様が得られる。
これに対し、例えば日中等で室外からの太陽光、或いは夜間等で室外の電灯光があるときには、その光が透光性を有するパネル材24及び補強層16を介して積層体11に裏側から照射される。この光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、シート素材の模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈し、光源の消灯時(日中)とは異なる表情を演出することができる。
このようなドア21を、例えばトイレ用ドアや洗面所用ドアに使用すると、夜間の電灯の消し忘れ等を防ぐための小窓等のプラスチック部材を用いなくとも、電灯が点いているかどうかを確認できるため、極めて有用である。また、玄関ドアに用いると、季節に応じた色柄を使用することにより、例えばクリスマスシーズンにクリスマスリース等を表出すること等ができる。
したがって、この実施形態においては、ドア21の一部に、室外からの光が裏側から当てられない状態と、光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[実施形態5]
図12〜図15は実施形態5を示し、上記透光性化粧材Aの積層体11を光源と組み合わせて発光化粧構造体を構成し、その発光化粧構造体をベッドのヘッドボードに組み付けて固定したものである。
すなわち、図12において、27はベッドで、このベッド27は、前側(頭側)のヘッドボード28と後側(足側)のフットボード37とを左右のサイドレール38,38(一方のみを図示する)で連結して矩形枠状にし、左右のサイドレール38,38間に複数の板状のスノコ(図示せず)を掛け渡し、そのスノコの上にマットレス39を載置した一般的な構造のものとされている。
そして、上記ヘッドボード28は、図14及び図15に示すように、ヘッドボード本体29と、その後側面(フットボード37と対向する面)に組み付けられた発光化粧構造体Bとを備えている。
上記ヘッドボード本体29の後面には、そのマットレス39よりも上側部分に、ヘッドボード本体29の後面を矩形状に凹陥してなる第1凹部30と、その第1凹部30の底面中央部を部分的に矩形状に凹陥してなる第2凹部31とが段差状に形成されている。
上記発光化粧構造体Bは、樹脂が含浸されることで透光性を有する状態となった表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置された補強層16と、この補強層16の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含む積層体11を備え、これら表面透光シート層1、隠蔽層5、補強層16及び色柄層6は積層されて一体化されている。
上記表面透光シート層1、隠蔽層5、補強層16及び色柄層6は、上記実施形態2(図6参照)と同様のものであり、表面透光シート層1は、紙、織布又は不織布からなり、これらのシート素材に樹脂が含浸されることで透光性を有するものである。また、隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。これら表面透光シート層1及び隠蔽層5は、ヘッドボード28の全体又は少なくともマットレス39よりも上側部分と同じ大きさであり、ヘッドボード本体29の後面に該後面を覆うように一体的に固定されて、ヘッドボード28の後面を構成している。補強層16及び色柄層6は表面透光シート層1及び隠蔽層5よりも小さく、ヘッドボード本体29の第1凹部30に嵌挿可能(必要に応じて取換え可能)な大きさとされている。色柄層6の構造は、上記実施形態2(図6参照)と同じであり、紙層の裏面に色柄7が反転印刷されている。尚、図示例では、紙層の中央に「富士山」の漢字及びその写真が印刷されているが、その他、家族や風景の写真を印刷したものでも、イラスト、キャラクター及び抽象柄等でもよく、ベッド27から観る色柄7として好ましいものであれば、どのようなものでもよい。
ヘッドボード本体29後面の第1凹部30内には、その第1凹部30の大きさに対応する上記補強層16及び色柄層6が嵌挿されている。また、上記積層体11の裏側に位置する第2凹部31の底面には、上記色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させるための光源41が取り付けられている。この光源41は、取付ボード42上に並べられた状態で固定された複数の発光部43,43,…を有し、各発光部43は例えばLED(発光ダイオード)、電球、蛍光灯、面発光体(有機ELシート)等からなっている。第2凹部31内の空間は、光源41を収容する光源収容部48を構成しており、この光源収容部48は、表側の積層体11以外の部分では光に対して密閉されて光漏れのない構造で、表側の積層体11のみから透光可能とされている。図12及び図13中、45はベッド27のヘッドボード28上面に取り付けられたスイッチで、上記光源41の点灯及び消灯を切り換えるものである。
この実施形態においては、スイッチ49をオフにして光源41を消灯状態にしているときには、図12に示すように、発光化粧構造体Bの色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が積層体11の表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の外観模様を呈するヘッドボード28を有するベッド27が得られる。
その際、光源41を収容する光源収容部48が表側の積層体11のみから透光可能で他の部分では光に対して密閉されているので、光源41が点灯していない状態で、積層体11の隠蔽層5よりも裏側にある部分(色柄層6も含む)が積層体11表面から確実に見え難くなる(光源41の点灯によって初めて色柄層6の色柄7が積層体11表面に現出する)。
これに対し、スイッチ49をオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が積層体11に裏側から照射される。このときには、図13に示すように、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5、透光性を有する補強層16、及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に鮮明に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が積層体11の表面側に表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、そのシート素材の模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈する。すなわち、光源41の消灯状態では、シート素材模様のベッド27が光源41の点灯に伴い色柄7が現出するようになり、雰囲気を大きく変化させることができる。
したがって、この実施形態においても、ベッド27のヘッドボード28に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[実施形態6]
図16〜図18は実施形態6を示し、上記実施形態5では、発光化粧構造体Bをベッド27のヘッドボード28に取換え不能に組み付けているのに対し、この例では、発光化粧構造体Bを取換え可能に組み付けたものである。
すなわち、この実施形態では、ベッド27におけるヘッドボード28のヘッドボード本体29の後側面(フットボード37と対向する面)に発光化粧構造体Bが交換可能に組み付けられている。
具体的には、ヘッドボード本体29の後面には、そのマットレス39よりも上側の上下中間部分に、ヘッドボード本体29の後面を左右端間に亘り断面矩形状に凹陥してなる凹溝部32が形成されている。また、ヘッドボード本体29の後面は上記凹溝部32の開口の上下角部が凹陥されていて、その凹陥部分に、凹溝部32の開口のみを覆うように透明アクリル板や透明塩ビシート等からなる透明の透明板33が嵌合されて固定されており、この透明板33により開口が覆われた凹溝部32はヘッドボード本体29の左右端面で開口している。
発光化粧構造体Bは、樹脂が含浸されることで透光性を有する表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含む積層体11を備え、この色柄層6の裏面側に補強層16が配置されている。
上記表面透光シート層1、隠蔽層5、色柄層6及び補強層16は、上記実施形態4(図9参照)と同様のものであり、表面透光シート層1は、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる。また、隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。色柄層6の構造は、上記実施形態1(図1参照)と同じであり、紙層の裏面に色柄7が反転印刷されている。補強層16は透明アクリル板、透明塩ビシート、透明ガラス板等からなり、積層体11とは別体に設けられている。これら表面透光シート層1、隠蔽層5、色柄層6及び補強層16はいずれも同じ大きさで、上記ヘッドボード本体29の凹溝部32内に嵌挿可能とされている。
尚、本実施形態等のように、色柄層6の裏側に補強層16として厚みのある透明樹脂板や透明ガラス板等を使用する場合は、その補強層16の端部(端面)から色柄層6裏面側へ光が透過することがあり、それを防ぐために、補強層16端部への遮光手段を講じる必要がある。例えば補強層16端部にカバー部材を取り付けたり、遮光性のある樹脂を塗布したりすればよい。これは、全ての実施形態において応用可能な技術である。
ヘッドボード本体29後面の凹溝部32内には、その凹溝部32の溝幅に対応する大きさの上記積層体11(表面透光シート層1、隠蔽層5、色柄層6及び補強層16)がヘッドボード本体29の左右端面の開口を通して着脱可能に嵌挿されている。この積層体11の凹溝部32内への嵌挿状態では、裏面のアクリル板等からなる補強層16と上記透明板33との間に積層体11の表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6が挟み込まれて固定されるようになっている。
さらに、積層体11の裏側である、凹溝部32の底面には、上記色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させるための光源41が取り付けられている。この光源41は上記発光化粧構造体の例1と同様のもので、取付ボード42上に並べられて固定されたLED(発光ダイオード)等からな複数の発光部43,43,…を有する。凹溝部32内の空間は、光源41を収容する光源収容部48を構成しており、この光源収容部48は、表側の積層体11以外の部分では光に対して密閉されて光漏れのない構造で、表側の積層体11のみから透光可能とされている。上記光源41は、ヘッドボード28上面に取り付けたスイッチ49により点灯及び消灯が切り換えられる。
この実施形態においては、スイッチ49をオフにして光源41を消灯状態にしているときには、図16に示すように、発光化粧構造体Bの色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が積層体11の表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の外観模様を呈するヘッドボード28を有するベッド27が得られる。
これに対し、スイッチ49をオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が補強層16及び積層体11に裏側から照射される。このときには、図17に示すように、その光により色柄層6の色柄7が、補強層16、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に鮮明に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が積層体11の表面側に表面透光シート層1表面のシート素材の模様に加えて現出して、模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈する。
そして、積層体11における表面透光シート層1の柄や色柄層6の色柄7を変える場合には、積層体11を補強層16と共に凹溝部32から、そのヘッドボード本体29左右端の開口を通して引き出し、新しい柄の表面透光シート層1や色柄7が形成された色柄層6を補強層16と共に上記とは逆にヘッドボード本体29左右端の開口から凹溝部32内に嵌挿すればよい。
したがって、この例においても、ベッド27のヘッドボード28に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
また、ヘッドボード28に対し積層体11の表面透光シート層1又は色柄層6が交換可能であるので、必要に応じて表面透光シート層1や色柄7を別のものに取り換えることができ、ベッド27の雰囲気を自由に変えることができる。
尚、積層体11の表面透光シート層1又は色柄層6の少なくとも一方を交換できるように他の層と別体にすることもできる。
また、上記実施形態1及び2では、ベッド27のヘッドボード28に発光化粧構造体Bを設けているが、フットボード37に設けてもよく、ヘッドボード28及びフットボード37の双方に設けてもよい。
[実施形態7]
図19〜図24は実施形態7を示し、発光化粧構造体Bをテーブルの天板に設けたものである。
すなわち、図19において、51はテーブルであって、このテーブル51は、床面に載置される基台52と、この基台52に立設された脚部53と、この脚部の上端に固定された天板54とを備えている。
上記天板54は、図20に示すように、矩形状の天板本体55と、その上面に組み付けられた発光化粧構造体Bとを備えている。この発光化粧構造体Bは、図21〜図23に示すように、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含む積層体11を備え、これら表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6は積層されて一体化されている。図21は積層体11(表面透光シート層1)の表面を、また図22は積層体11(色柄層6)の裏面をそれぞれ示している。
上記表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6は、上記実施形態1(図1参照)と同様のものであり、表面透光シート層1は、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる。また、隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
天板本体55の上面には、例えばその長さ方向の中間部分に、天板本体55の上面を幅方向の端部間に亘り断面矩形状に凹陥してなる第1凹溝部56と、その第1凹溝部56の底面中央部を断面矩形状に凹陥してなる第2凹溝部57とが段差状に形成されている。また、天板本体55の上面は上記第1凹溝部56の開口の両角部が凹陥されていて、その凹陥部分に、第1凹溝部56の開口のみを覆うようにアクリル板等からなる透明板58が嵌合されて固定されており、この透明板58により開口が覆われた第1凹溝部56とその底面の第2凹溝部57とはいずれも天板本体55の幅方向の端面で開口している。
上記第1凹溝部56内には、その第1凹溝部56の溝幅に対応する大きさの上記積層体11(表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6)が着脱可能に嵌挿されている。さらに、積層体11の裏側である、第2凹溝部57の底面には、上記色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させるための光源41が取り付けられている。この第2凹溝部57内の空間は、光源41を収容する光源収容部48を構成しており、この光源収容部48は、表側の積層体11以外の部分では光に対して密閉されて光漏れのない構造で、表側の積層体11のみから透光可能とされている。
そして、図22に示すように、色柄層6には互いに異なる複数の色で色柄7が形成されている。図示例では、色柄層6の色柄7は、矩形の平面を9つのマス目に区画するように描かれた格子部と、5つのマス目内に描かれた5つの「円形」(●)と、残り4つのマス目内に描かれた4つの「三角形」(▲)とからなるものであり、背景、格子部、「円形」及び「三角形」の色は互いに異なり、背景は白色、格子部は黄色(図では点(ドット)にて示す)、「円形」は赤色(図では粗い間隔の斜線にて示す)であり、「三角形」は緑色(図では細かい間隔の斜線にて示す)となっている。
一方、上記光源41は、点灯時に上記色柄7の色と同じか又は近似した複数の色に発色可能とされている。すなわち、光源41は例えば基板(図示せず)上に複数の光源モジュール44,44,…を配列したものであり、図示しないが、各光源モジュール44はLEDチップと、そのLEDチップを覆う封止樹脂とからなり、一部の光源モジュール44の封止樹脂にはLEDの発光の一部の波長を変換して蛍光を放射させる1又は複数種類の蛍光体が混入されており、その蛍光体の種類の調整等により光源モジュール44が異なる色に発色する。具体的には、一部の光源モジュール44は格子部と同じ黄色か又は黄色に近似した色に、また他の一部の光源モジュール44は背景の色と同じ白色か又は白色に近似した色に、さらに残りの光源モジュール44は「円形」の色と同じ赤色か又は赤色に近似した色にそれぞれ発色する。これら複数の光源モジュール44,44,…は図外の切換スイッチ49により点灯及び消灯状態が切り換えられ、かつ点灯状態では異なる色毎に点灯可能とされて、その発色が変更可能とされている。こうして点灯する光源モジュール44の発色を変えることにより積層体11表面側に現出する色柄7を変化させ、全ての色の光源モジュール44を消灯させたときには、図24(a)に示すように、色柄層6の全ての色柄7を表面透光シート層1の表面に現出させないが、いずれかの色の光源モジュール44が点灯したときには、色柄層6の色柄7のうち光源モジュール44の色以外の色の色柄7を表面透光シート層1の表面に現出させ、黄色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(b)に示すように、黄色の格子部を除いた色の色柄7を表面透光シート層1の表面に、また白色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(c)に示すように、白色の背景を除いた色の色柄7を表面透光シート層1の表面に、さらに赤色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(d)に示すように、赤色の「円形」を除いた色の色柄7を表面透光シート層1の表面にそれぞれ現出させるようにしている。
この実施形態においては、切換スイッチをオフにして全ての光源モジュール44,44,…を消灯状態にしているときには、図24(a)に示すように、発光化粧構造体Bの色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が積層体11の表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の天板54を有するテーブル51の外観模様が得られる。
これに対し、切換スイッチをオン操作して光源41を点灯させると、その光源モジュール44,44,…からの光が積層体11に裏側から照射される。このときには、図24(b)〜図24(d)に示すように、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が積層体11の表面側に表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈する。すなわち、光源41の消灯状態では、表面木様のテーブル51が光源41の点灯に伴い色柄7が現出するようになり、雰囲気を大きく変化させることができる。
そして、上記点灯する光源モジュール44は異なる色毎に点灯状態が切り換えられる。黄色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(b)に示すように黄色の格子部を除いた色の色柄7が、また白色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(c)に示すように白色の背景を除いた色の色柄7が、さらに赤色を発色する光源モジュール44が点灯したときには、図24(d)に示すように赤色の「円形」を除いた色の色柄7が、それぞれ表面透光シート層1の表面に現出される。このことにより、複数の色柄を切り換えて表面に現出させることができ、テーブル51の外観見映えを高めることができる。
そして、表面に現出する色柄7を交換する場合には、積層体11を天板本体55の第1凹溝部56から、その天板本体55の幅方向端面の開口を通して引き出し、新しい色柄7が形成された色柄層6を有する積層体11を上記とは逆に天板本体55端面の開口から第1凹溝部56内に嵌挿すればよい。尚、この交換する色柄層6の色柄7も光源41の発色に対応した複数種類の色に分けられている。
したがって、この例においても、テーブル51の天板54に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
また、天板本体55及び透明板58に対し積層体11が交換可能であるので、必要に応じて積層体11を交換して色柄層6の色柄7を別のものに取り換えることができ、テーブル51の雰囲気を自由に変えることができる。
[実施形態8]
尚、上記実施形態7では、テーブル51の天板本体55及び透明板58に対し積層体11を交換可能としているが、図25に示す実施形態8のように、透明板58を天板本体55に対して着脱可能に固定し、その透明板58の裏面(下面)に積層体11を一体的に固定して透明板58を補強層16とすることで、積層体11を透明板58と共に天板本体55に対し交換可能とするようにしてもよい。
この実施形態では、積層体11は、天板本体55と略同じ大きさの表面透光シート層1、隠蔽層5及び色柄層6を有する。その表面透光シート層1は、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる。また、隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。色柄層6には、図22に示すような所定の色柄7が形成されている。その他の構造は図19及び図20に示す実施形態7と同様である。
したがって、この実施形態においても、テーブル51の天板54に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
また、天板本体55に対し積層体11が透明板58(補強層16)と共に交換可能であるので、必要に応じて積層体11及び透明板58を交換して色柄層6の色柄7を別のものに取り換えることができ、テーブル51の雰囲気を自由に変えることができる。
[実施形態9]
図26及び図27は実施形態9を示し、階段の蹴込板に設置したものである。
すなわち、図26において、61は階段であって、この階段61は、上部に水平部62aと垂直部62bとが交互に段状に形成された雛段型の側桁62を有し、該側桁62の各水平部62aには踏板65が載置固定され、側桁62の各垂直部62bには蹴込板66が、上側に位置する踏板65の手前端部と下側に位置する踏板65の奥端部とに亘るように施工されている。この階段61の構造は通常のものと同様である。図26中、64は側桁62を支持する受梁である。
そして、この実施形態では、上記各蹴込板66は発光化粧構造体Bからなっている。図27に拡大して示すように、この発光化粧構造体B(蹴込板66)は、積層体11と、この積層体11の裏側(奥側)に配置された光源41とを備えてなる。上記積層体11は、上記各実施形態と同様に、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含み、積層体11の裏面には透光性を有する補強層16が配置されている。積層体11の隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光源41による光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光源41による光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
上記補強層16は、例えば透明アクリル樹脂板や透明塩ビシート等からなり、積層体11と光源41との間に介在されるものである。
また、積層体11の裏側に配置されている光源41は、図外のスイッチにより点灯状態及び消灯状態に切り換えられる電球、蛍光灯、LEDや有機ELシート(面発光体)等からなり、その光により色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させる。
この実施形態においては、例えば日中でスイッチをオフにして光源41を消灯状態にしているときには、各蹴込板66(発光化粧構造体B)の積層体11における色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の蹴込板66及び階段61の外観模様が得られる。
これに対し、例えば夜間にスイッチをオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が透光性を有する基材を介して積層体11に裏側から照射される。このときには、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、シート素材の模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈し、光源41の消灯時(日中)とは異なる表情を演出することができる。
また、こうして階段61の蹴込板66が光ることで踏板65が照らされ、階段61の昇降時に足下が明るくなって歩行の安全性に寄与することができる。
したがって、この実施形態においては、階段61の蹴込板66に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[実施形態10]
図28〜図30は実施形態10を示し、発光化粧構造体Bは部屋の床面、壁面及び天井面に施工したものである。
図28及び図29において、71は部屋の床、72は壁、73は天井であり、これら床71、壁72及び天井73の各中間部には係る発光化粧構造体Bが連続するように施工されている(図28で点線にて挟まれた範囲)。
床71、壁72及び天井73での施工構造は互いに同じであり、図30に示すように、下地材74において発光化粧構造体Bの施工範囲に断面矩形状に凹陥した凹陥部75が形成され、その凹陥部75に発光化粧構造体Bが組み付けられている。この発光化粧構造体Bは、部屋の室内側に位置する積層体11と、この積層体11の裏側(奥側)に配置された光源41とを備えてなる。上記積層体11は、上記各実施形態と同様に、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7(図示例では大小の複数の円)が形成された色柄層6とを含み、積層体11の裏面には透光性を有する補強層16が配置されている。積層体11の隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光源41による光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光源41による光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
上記補強層16は、例えば透明アクリル樹脂板や透明塩ビシート等からなり、積層体11と光源41との間に介在されるものである。
また、積層体11の裏側に配置されている光源41は、図外のスイッチにより点灯状態及び消灯状態に切り換えられる電球、蛍光灯、LEDや有機ELシート(面発光体)等のからなり、その光により色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させる。この光源41は下地材74の凹陥部75内に配置されている。
下地材74において、凹陥部75の左右両側部分の表面には、上記補強層16に積層体11を加えた厚さと同じ厚さの化粧板76が固定されている。この各化粧板76は、MDF等の化粧板用基材77と、この各基材77の表面に接着された突板78とを備えている。この突板78は、積層体11の表面透光シート層1と同じ模様を有するのが好ましい。そして、化粧板76と発光化粧構造体Bとを隣接して施工することで、床71、壁72及び天井73の発光化粧構造体Bにおける表面透光シート層1の表面と化粧板76の表面とが面一になり、かつ表面透光シート層1及び突板78間で同じ模様を呈するようになっている。
この実施形態においては、例えば日中でスイッチをオフにして光源41を消灯状態にしているときには、床71、壁72及び天井73に施工されている発光化粧構造体Bの積層体11における色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、図28に示すように、通常の色柄を呈する床71、壁72及び天井73の外観模様が得られる。
その際、発光化粧構造体Bにおける表面透光シート層1の表面と化粧板76の表面とが面一で同じ模様を呈するようにすると、どの部分に発光化粧構造体Bが施工されているのかが判り難くなり、外観見映えがよい。
これに対し、例えば夜間にスイッチをオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が透光性を有する補強層16を介して積層体11に裏側から照射される。このときには、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、図29に示すように、その色柄層6の色柄7が表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈し、光源41の消灯時(日中)とは異なる表情を演出することができる。
したがって、この例においては、床71、壁72及び天井73の一部に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
尚、この実施形態では、部屋の床71、壁72及び天井73の全てに亘り発光化粧構造体Bを施工しているが、床71、壁72及び天井73のいずれか1つ又は2つに施工してもよい。
[実施形態11]
図31及び図32は実施形態11に係る発光化粧構造体Bを示し、欄間に施工したものである。
図31において、81は部屋の壁72の下端部に施工された敷居、82は壁72の上部に施工された鴨居であって、これら敷居81と鴨居82との間には壁72の開口を開閉する襖83が嵌め込まれている。また、壁72の上端部である鴨居82の上側には、襖83(壁72の開口)に対応する位置に欄間84が設けられている。この欄間84は鴨居82と天井73面との間に施工された枠部材85に嵌め込まれて固定されている。
図32に示すように、欄間84は、壁72の厚さ方向の中央部に位置する非透光性の固定板86を有し、この固定板86の周縁部には、枠部材85の内周面に形成した凹溝85aに嵌合されて固定板86を枠部材85に固定するための嵌合部86aが設けられている。固定板86の厚さ方向の両側にはそれぞれ発光化粧構造体B,Bが配置されている。各発光化粧構造体Bは、積層体11と、この積層体11の裏側(壁72の厚さ方向の中央側)に配置された光源41とを備えてなる。上記積層体11は、上記各実施形態と同様に、樹脂が含浸されることで透光性を有するシート素材からなる表面透光シート層1と、この表面透光シート層1の裏面側に配置された隠蔽層5と、この隠蔽層5の裏面側に配置され、所定の色柄7が形成された色柄層6とを含み、積層体11の裏面には透光性を有する補強層16が配置されている。積層体11の隠蔽層5は、積層体11の裏側からの光源41による光がないときに色柄層6の色柄7を積層体11表面から隠蔽する一方、積層体11の裏側からの光源41による光があるときには色柄層6の色柄7を積層体11表面に現出させる程度に透光性を有している。
上記補強層16は、例えば透明アクリル樹脂板や透明塩ビシート等からなり、積層体11と光源41との間に介在されるものである。
また、積層体11の裏側に配置されている光源41は、図外のスイッチにより点灯状態及び消灯状態に切り換えられる電球、蛍光灯、LEDや有機ELシート(面発光体)からなり、その光により色柄層6の色柄7を積層体11表面側に現出させる。
この実施形態においては、例えば日中でスイッチをオフにして光源41を消灯状態にしているときには、各発光化粧構造体Bの積層体11における色柄層6の色柄7は、その色柄層6よりも表側に位置する隠蔽層5により隠蔽され、その色柄7が表面透光シート層1表面に現出することはなく、表面透光シート層1表面の模様がそのまま露出する。このことで、通常の色柄を呈する欄間84の外観模様が得られる。
これに対し、例えば夜間にスイッチをオン操作して光源41を点灯させると、その光源41からの光が透光性を有する基材を介して積層体11に裏側から照射される。このときには、その光により色柄層6の色柄7が、透光性を有する隠蔽層5及び透光性を有する表面透光シート層1を経て、該表面透光シート層1の表面に現出する。このことで、その色柄層6の色柄7が表面透光シート層1表面の模様に加えて現出して、模様中に色柄7が浮き上がったような外観を呈し、光源41の消灯時(日中)とは異なる表情を演出することができる。
また、欄間84には、固定板86の両側に発光化粧構造体B,Bが配置されているので、部屋の内側及び外側からそれぞれ上記発光化粧構造体Bの効果を得ることができる。特に、両方の発光化粧構造体B,Bにおける色柄層6,6の色柄7,7を互いに異ならせることができ、部屋毎に見合う意匠の欄間84が得られる。例えば和室と洋室との間の壁72に欄間84がある場合には、その和室及び洋室にそれぞれ対応した色柄7を採用すればよい。
したがって、この例においても、欄間84に、光源41が消灯されて該光源41からの光が裏側から当てられない状態と、光源41の点灯光が裏側から当てられた状態との間で大きな差異のある外観が得られ、その意匠性を高めることができる。
[その他の実施形態]
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、種々の実施形態を包含している。例えば、上記実施形態では、透光性化粧材A(発光化粧構造体B)をベッド27のヘッドボード28やフットボード、テーブル51の天板54、階段61の蹴込板66、床71、壁72、天井73、欄間84に施工しているが、他の箇所や部材に施工し又は組み込むようにしてもよい。例えば、照明器具のシェード等が好ましい。
また、表面透光シート層1のシート素材を特定することで、その特定シート素材に対応した用途の製品に適用することができ、例えばシート素材が織布の場合にはカーテン等に用いることができる。
本発明は、裏からの光の照射の有無に応じて外観意匠が大きく異なる意匠性に優れた透光性化粧材や発光化粧構造体が得られるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
A 透光性化粧材
B 発光化粧構造体
1 表面透光シート層
1′ シート素材
5 隠蔽層
6 色柄層
7 色柄
9 表面コート層
11 積層体
16 補強層
41 光源
48 光源収容部