このようなインクジェット方式の三次元造型機では、各スライスに対応した各層の厚みを均一に保つことで、高さ方向の造形精度が維持される。しかし、各層の厚みを均一に保つために、複数のノズルが同時に吐出する樹脂の量を常に一定に制御するのは困難であることから、各層の造形に必要な樹脂量よりも多くしたマージンを設けて、モデル材やサポート材等の造形材料を余剰に吐出する。そして樹脂の吐出後には、ノズルから吐出された樹脂の余剰分を、回収機構で回収しながら造形を行う。このような回収機構には、ローラ部25が用いられる。図28に、ローラ部25で造形材の余剰分を除去する状態の斜視図を示す。この例では、造形プレート40上に吐出された樹脂が流動可能な状態で、その表面を、ローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図28において時計回り)に回転され、流動可能な状態にある造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。また吸引パイプ29は廃液経路に接続されており、ポンプ等を用いてバス28に溜まった造形材を吸引して、廃液タンク(図示せず)に溜める。
このようなローラ部25を用いて、造形物のすべての積層面に対してローラ本体26を押し当て、余分な樹脂を掻き取ることで造形物の精度を実現している。ローラ本体26の表面には、樹脂の余剰分を掻き取りやすくするため、図29に示すように5〜10μm程度の突起をらせん状に設けている。この場合、造形物の表面となる部分についてもローラ本体26を当てるため、造形物表面にローラ本体26が当たったことによる波模様が形成されてしまうという問題があった。この様子を図30(a)、(b)に示す。これらの図において図30(a)はローラ本体によって造形材の表面に縞模様が生じる様子を示す断面図、図30(b)は図30(a)の平面図を、それぞれ示している。これらの図に示すように、樹脂の表面がローラ本体26を掛ける前は滑らかであったところ、ローラ本体26が当たった部分が波打ち、表面に縞模様が形成されたり、あるいはローラ本体26表面に形成された突起や、表面に付着した異物などによって、樹脂の表面に筋が形成されてしまう。
また、この問題は樹脂で造形される最表面において発生するのみならず、途中の面でも発生する。すなわち、積層型の三次元造形装置では、サポート材を積層した積層体の上に造形物を作成することも多々ある。この場合に、サポート材の表面がローラ本体26を当てることで波打っていると、図31の断面図に示すように、その上に造形される造形物にサポート材積層構造の波打模様が転写されてしまう。
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、造形物の表面に表れる筋や波模様を低減して品質を高めた三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、回転自在に支承され、前記モデル材MA又はサポート材SAが流動可能な状態でこれを上面から回転しながら押圧して、該モデル材MA又はサポート材SAの余剰分を掻き取るためのローラ部25と、前記造形材吐出手段及びローラ部25を備えるヘッド部20と、前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、前記水平駆動手段を駆動させて、一スライス分の造形材を前記造形材吐出手段で吐出させ硬化させた上で、前記垂直駆動手段を駆動させて吐出位置を該硬化後のスライス上に移動させ、さらに次層のスライス分の造形材を吐出、硬化させてスライスを順次積層するよう制御する制御手段10と、造形物の三次元データに対し、造形物の最表面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライス、又は造形材の種類が切り替わる異種造形材界面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライスよりも、一層以上下方に位置するスライスにおいて、該スライスに含まれる前記モデル材MA又はサポート材SAを吐出しない又は吐出量を減少させた中空部ESを生成する中空部生成手段とを備え、前記造形材吐出手段は、造形対象のスライスに、前記中空部生成手段で生成された前記中空部ESを含む場合、該中空部ESに対応する位置に造形材を吐出しない又は吐出量を減少させて該スライスの造形を行うことができる。これにより、最表面又は異種造形材界面に位置するスライスの造形時には、中空部に対応する位置に吐出された造形材が、ローラ部により掻き取られないように制御できる。すなわち、最表面又は異種造形材界面のモデル材又はサポート材は、中空部によって本来の位置よりも下方に造形される結果、余剰樹脂の回収時にローラ部に接触しないため、このローラ部によって筋や皺が生じることを回避でき、造形材の表面仕上げを綺麗にできる。
また第2の側面に係る三次元造形装置によれば、造形物を構成するスライス毎の吐出パターンを記録した吐出データを記憶するための吐出データ記憶手段を備えており、前記制御手段10は、前記吐出データ記憶手段に記憶された吐出データに従って、造形対象のスライスに、前記中空部生成手段で生成された前記中空部ESを含む場合、該中空部ESに対応する位置に前記造形材吐出手段から造形材を吐出しない或いは吐出量を減少するよう制御して該スライスの造形を行い、前記最表面又は異種造形材界面に位置するスライスの造形時に、前記中空部ESに対応する位置に吐出された造形材が前記ローラ部25により掻き取られないように、前記造形材吐出手段を制御することができる。これにより、予め中空部生成手段で生成された中空部を含む吐出データに従い、制御手段で吐出を制御することが可能となる。すなわち、吐出データを変更するのみで足り、ハードウェア的な変更を不要とでき、既存の三次元造形装置に対して適用できる利点が得られる。
さらに第3の側面に係る三次元造形装置によれば、前記造形材吐出手段による各スライスの造形に際して、前記中空部生成手段は該スライス中に中空部ESを形成する必要があるかどうかを判定し、中空部ESが含まれている場合は、前記制御部が、前記中空部生成手段で生成された前記中空部ESに対応する位置に前記造形材吐出手段から造形材を吐出しない又は吐出量を減少させてするよう制御することができる。これにより、事前に中空部を設けるように吐出データを加工する必要がなく、既存の吐出データを利用しつつも、造形時において条件に合致する部位に自動的に中空部を設けることで、余剰樹脂の回収時にローラ部の接触を回避することができる。
さらにまた第4の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、回転自在に支承され、前記モデル材MA又はサポート材SAが流動可能な状態でこれを上面から回転しながら押圧して、該モデル材MA又はサポート材SAの余剰分を掻き取るためのローラ部25と、前記造形材吐出手段及びローラ部25を備えるヘッド部20と、前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、前記水平駆動手段を駆動させて、一スライス分の造形材を前記造形材吐出手段で吐出させ硬化させた上で、前記垂直駆動手段を駆動させて吐出位置を該硬化後のスライス上に移動させ、さらに次層のスライス分の造形材を吐出、硬化させてスライスを順次積層するよう制御する制御手段10と、造形物の最表面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライス、又は造形材の種類が切り替わる異種造形材界面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライスよりも、一層以上下方に位置するスライスにおいて、該スライスに含まれる前記モデル材MA又はサポート材SAを吐出しない又は吐出量を減少させるように前記造形材吐出手段を制御する吐出制御手段13と、を備えることができる。これにより、最上面又は異種造形材界面のモデル材又はサポート材は、造形材の吐出量を抑えた中空部を設けることで本来の位置よりも下方に造形される結果、余剰樹脂の回収時にローラ部に接触しないため、このローラ部によって筋や皺が生じることを回避でき、造形材の表面仕上げを綺麗にできる利点が得られる。
さらにまた第5の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13は、造形物の最表面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SA、又は造形材の種類が切り替わる異種造形材界面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAの直下に当たる部分のみ、モデル材MA又はサポート材SAの吐出を行わないように前記造形材吐出手段を制御することができる。これにより、ローラ部に当接させたくない部位のみを、造形材の吐出を制限して樹脂の回収を行わせないことにより、表面状態を改善できる。
さらに第6の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13が、吐出しないモデル材MA又はサポート材SAを含む中空部ESを、該中空部ESから最表面又は異種造形材界面までのスライス数だけ、前記モデル材MA又はサポート材SAを前記造形材吐出手段で吐出して積層しても、該最表面又は異種造形材界面のスライスに含まれる前記モデル材MA又はサポート材SAが、前記ローラ部25に接触しない程度に、最表面又は異種造形材界面から下方に位置させることができる。これにより、中空部を設けることで造形材の表面を低くして高低差を設けつつ、ローラ部による樹脂余剰分の回収がないことでスライスを重ねるごとに高低差が徐々に小さくなることを考慮した上で、最上面又は異種造形材界面でローラ部との接触を避けるように設定できる。
さらにまた第7の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13が、中空部を、最表面又は異種造形材界面から1〜10スライス分下方に位置させることができる。
さらにまた第8の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13が、吐出しないモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を含む中空部ESの位置を、最表面又は異種造形材界面からnスライス分下方とするとき、該中空部ESの1スライス分上面が、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方であり、該中空部ESのnスライス分上面が、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方であり、かつ該中空部ESのn+1スライス分上面が、空白、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか他方である条件をすべて満たすnに設定できる。
さらにまた第9の側面に係る三次元造形装置によれば、中空部ESの一層分の厚さが、前記ローラ部25で回収される余剰分の樹脂の厚さよりも厚くすることができる。これにより、中空部一層分を抜くことでローラ部が造形材の表面に接触しないように高低差を設けることができ、硬化した造形材をローラ部で回収してしまうことを回避できる。
さらにまた第10の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに、前記モデル材MA及びサポート材SAを硬化させるための硬化手段24を備え、前記制御手段10が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部20を一方向に往復走査させて、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記造形材吐出手段により前記モデル材MA又はサポート材SAの一方を前記造形プレート40上に吐出させ、該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記ローラ部25により流動可能な状態にあるモデル材MA又はサポート材SAの一方の余剰分を回収し、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段24により前記モデル材MA又はサポート材SAの一方を硬化させることにより、さらに該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記造形材吐出手段により前記モデル材MA又はサポート材SAの他方を前記造形プレート40上に吐出させ、該往復走査の往路又は復路の少なくともいずれか一方で、前記ローラ部25により流動可能な状態にあるモデル材MA又はサポート材SAの他方の余剰分を回収し、該往復走査の復路又は往路の少なくともいずれか一方で、前記硬化手段24により前記モデル材MA又はサポート材SAの他方を硬化させることにより、前記スライスを生成し、前記垂直駆動手段で高さ方向に前記造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、前記スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行するよう制御することができる。
さらにまた第11の側面に係る三次元造形装置によれば、造形物の走査方向における前記モデル材MAとサポート材SAとが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材MAとサポート材SAを同時に吐出させず、いずれか一方の造形材のみを吐出、硬化させることができる。
さらにまた第12の側面に係る三次元造形装置によれば、造形物の走査方向における前記モデル材MAとサポート材SAとが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材MAとサポート材SAとを吐出させ、又は硬化させることができる。
さらにまた第13の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13が、中空部ESとしてモデル材MAを吐出しないよう、前記造形材吐出手段を制御することができる。
さらにまた第14の側面に係る三次元造形装置によれば、前記吐出制御手段13が、中空部ESとしてサポート材SAを吐出しないよう、前記造形材吐出手段を制御することができる。
さらにまた第15の側面に係る三次元造形方法によれば、造形物を載置するための造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を水平駆動手段で造形材吐出手段を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させ、垂直駆動手段で吐出位置を高さ方向に相対的に移動させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成しながら、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形方法であって、前記モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を、該造形材を吐出するための造形材吐出手段により前記造形プレート40上に吐出させる工程と、該吐出された一方の造形材を、流動可能な状態で該造形材の余剰分を回収するため回転自在に支承されたローラ部25で所定速度にて回転させながら回収する工程と、該余剰分を回収された流動可能な造形材を硬化させる工程と、前記垂直駆動手段で前記造形材吐出手段と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させる工程と、前記造形材吐出手段による造形材の吐出、前記ローラ部25による造形材の余剰分の回収、造形材の硬化、及び前記垂直駆動手段による高さ方向への移動を繰り返しつつ、造形物の最表面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライス、又は造形材の種類が切り替わる異種造形材界面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライスよりも、一層以上下方に位置するスライスの造形に際して、該スライスに含まれる前記モデル材MA又はサポート材SAを吐出しない又は吐出量を減少させるように前記造形材吐出手段を制御する工程と、を含むことができる。これにより、最上面又は異種造形材界面のモデル材又はサポート材は、中空部を設けることで本来の位置よりも下方に造形される結果、余剰樹脂の回収時にローラ部に接触しないため、このローラ部によって筋や皺が生じることを回避でき、造形材の表面仕上げを綺麗にできる利点が得られる。
さらにまた第16の側面に係る三次元造形装置用の設定データ作成装置によれば、造形物を載置するための造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を水平駆動手段で造形材吐出手段を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させ、垂直駆動手段で吐出位置を高さ方向に相対的に移動させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成しながら、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置用の設定データ作成装置であって、造形物の三次元データを取得するための入力手段61と、造形物の最表面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライス、又は造形材の種類が切り替わる異種造形材界面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライスよりも、一層以上下方に位置するスライスにおいて、該スライスに含まれる前記モデル材MA又はサポート材SAを吐出しない又は吐出量を減少させた中空部ESを生成する中空部生成手段と、を備えることができる。これにより、最上面又は異種造形材界面のモデル材又はサポート材は、中空部を設けることで本来の位置よりも下方に造形される結果、余剰樹脂の回収時にローラ部に接触しないため、このローラ部によって筋や皺が生じることを回避でき、造形材の表面仕上げを綺麗にできる利点が得られる。
さらにまた第17の側面に係る三次元造形装置用の設定データ作成プログラムによれば、造形物を載置するための造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を水平駆動手段で造形材吐出手段を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させ、垂直駆動手段で吐出位置を高さ方向に相対的に移動させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを生成しながら、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置用の設定データ作成プログラムであって、造形物の三次元データを取得するための入力機能と、造形物の最表面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライス、又は造形材の種類が切り替わる異種造形材界面に位置する前記モデル材MA又はサポート材SAを含むスライスよりも、一層以上下方に位置するスライスにおいて、該スライスに含まれる前記モデル材MA又はサポート材SAを吐出しない又は吐出量を減少させるように中空部ESを生成する中空部生成機能と、をコンピュータに実現させることができる。これにより、最上面又は異種造形材界面のモデル材又はサポート材は、中空部を設けることで本来の位置よりも下方に造形される結果、余剰樹脂の回収時にローラ部に接触しないため、このローラ部によって筋や皺が生じることを回避でき、造形材の表面仕上げを綺麗にできる利点が得られる。
さらにまた第18の側面に係るコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、上記プログラムを格納したものである。記録媒体には、CD−ROM、CD−R、CD−RWやフレキシブルディスク、磁気テープ、MO、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、Blu−ray、HD DVD(AOD)等の磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリその他のプログラムを格納可能な媒体が含まれる。またプログラムには、上記記録媒体に格納されて配布されるものの他、インターネット等のネットワーク回線を通じてダウンロードによって配布される形態のものも含まれる。さらに記録媒体にはプログラムを記録可能な機器、例えば上記プログラムがソフトウエアやファームウエア等の形態で実行可能な状態に実装された汎用もしくは専用機器を含む。さらにまたプログラムに含まれる各処理や機能は、コンピュータで実行可能なプログラムソフトウエアにより実行してもよいし、各部の処理を所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウエア、又はプログラムソフトウエアとハードウエアの一部の要素を実現する部分的ハードウエアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を例示するものであって、本発明は三次元造形装置、三次元造形方法、三次元造形装置用の設定データ作成装置、三次元造形装置用の設定データ作成プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例1)
図1に、本発明の実施例1に係る三次元造形システム100のブロック図を示す。ここでは、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に適用する例を説明する。この三次元造形システム100は、造形材を流動状態でインクジェット方式によって吐出、硬化させ、これを積層することによって任意の造形物を製造するものである。造形材には、最終的な造形物を構成するモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支えるために造形され、最終的に除去されるサポート材SAとが利用される。
図1に示す三次元造形システム100は、三次元造形装置2に造形物データならびに造形条件である設定データを送出する設定データ作成装置1(図1ではコンピュータPC)と、三次元造形装置2で構成される。三次元造形装置2は、制御手段10と、ヘッド部20と、造形プレート40とを備える。ヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAを吐出するモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するサポート材吐出ノズル22を備えている。またこれらの吐出された造形材から余剰分を掻き取ることにより、その時点での造形物の最上層の厚みの適正化を図ると共に、造形材の表面を平滑化するためのローラ部25と、造形材を硬化させる硬化手段24も、ヘッド部20に備えられる。さらにヘッド部20を水平方向において、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって、造形プレート40上の適切な位置に吐出させるために、往復走査するX方向と、このX方向に直交するY方向に走査させるための水平駆動手段、及びヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段として、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を備えている。ここで、Y方向とはモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズルが有する複数のオリフィスが配列した並び方向であり、X方向は水平面内においてこのY方向と直交する方向である。
コンピュータPCは、三次元形状の造形物の基礎データ、例えば三次元CAD等で設計されたモデルデータの入力を外部から受けると、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて三次元造形装置2に対して送信を行う設定データ作成装置1として機能する。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形プレート40上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材MAにて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材SAを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。制御手段10は、コンピュータPCからの断面データを取り込み、そのデータに従ってヘッド部20、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を制御する。この制御手段10の制御により、XY方向駆動部31が作動すると共に、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAを、小滴として造形プレート40上の適切な位置に吐出することにより、コンピュータPCから与えられた断面データに基づく断面形状が造形される。そして造形プレート40上に吐出された造形材の一であるモデル材MAは少なくとも硬化されて液体又は流体状態から固体に変化して硬化する。このような動作によって一層分の断面体すなわちスライスが作り出される。なお、スライスデータは、三次元造形装置2側で生成してもよいが、その際においても、各スライス層の厚み等のオペレータが決定しなくてはならない造形パラメータはコンピュータPC側から三次元造形装置2へ送信しなければならない。
(スライス)
ここで「スライス」とは、造形物のz方向の積層単位であり、スライス数は高さを積層厚で除算した値となる。実際には、各スライスの厚みを決定する要件としては、各吐出ノズルからの吐出可能な最小限の単位吐出量やローラ部25のローラの上下方向における偏心によるばらつき等によって、設定可能な最小の厚みが決定される。このような観点に基づいて設定された値をスライスの最小値として、後は、ユーザが造形物に対して、求める、例えば、造形精度や造形速度の観点から各スライス量を最終的に決定できる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、上述したスライス最小値又はその近傍の値にて各スライス量を決定し、一方造形速度を優先すれば、最低限の造形精度を維持した各スライス量を決定することができる。または、別の方法としては、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。
また、一つのスライスデータに対する造形行為は、少なくともヘッド部20をX方向(ヘッド部20の主走査方向)に往復動作する際の少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出させ、造形プレート40上に吐出された造形物が流動可能な状態にて、少なくとも往路又は復路にてその未硬化の造形物の表面を平滑化するためにローラ部25を作用させると共に、平滑化された造形物の表面に対して、硬化手段24から特定波長の光を照射することにより、造形物を硬化させる一連のステップを少なくとも一回行うことで行われるが、この回数は、スライスデータの厚みや要求される造形精度によって自動的に変更されることはいうまでもない。なお、造形に用いる造形材料が、所定の温度によって硬化するものであれば、本発明においては硬化手段24を冷却または加熱手段とすることもでき、また自然硬化できる場合には硬化手段を省略することもできる。
一方、また少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から吐出され、造形プレート上に形成される一回の最大の厚みは、吐出された液滴の着弾後の断面形状が略円形を留めることが可能な単位吐出量によって決まる。
(造形プレート40)
造形プレート40は、Z方向駆動部32によって昇降自在としている。一スライスが形成されると、制御手段10によってZ方向駆動部32が制御され、造形プレート40は一スライス分の厚さに相当する距離だけ降下する。そして上記と同様な動作を繰り返し行うことにより一スライス目の上側(上表面)に新たなスライスが積層される。このように連続的に作り出された幾層もの薄いスライスが積層されて造形物が造形される。
また、造形物がZ方向(つまり高さ方向)において、高さ方向で下方に位置する造形部分よりX−Y平面で張り出した、いわゆるオーバーハング形状を有する場合には、コンピュータPCにおいて造形物をデータ化する際に必要に応じてオーバーハング支持部形状が付加される。言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。そして制御手段10は、最終造形物を構成するモデル材MAの造形と同時に、そのオーバーハング支持部形状に基づいて、オーバーハング支持部SBを造形する。具体的には、モデル材MAとは別のサポート材SAを、サポート材吐出ノズル22から小滴として吐出させることにより、オーバーハング支持部SBを形成する。造形後に、オーバーハング支持部SBを構成するサポート材SAを除去することで、目的の三次元造形物を得ることができる。
ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、ヘッド移動手段30により水平方向、すなわちXY方向に移動される。ヘッド部20は、図において上下にそれぞれ配置された一対のX方向(主走査方向)ガイド機構であるX方向移動レール43に支持される。ヘッド部20を支持する基台側には、X方向への駆動部(図示せず)が、一方のX方向移動レール43に沿って設けられている。また、ヘッド部20をX方向移動レール43上に載置する門型のフレームに、ヘッド部20をY方向(副走査方向)に移動させるためのY方向移動レール44が設けられる。またヘッド部20をY方向移動レール44に沿って駆動するための駆動部(図示せず)が載置される。これらの駆動部によってヘッド部20は、XならびにY方向に移動することが可能となっている。
さらに図4の例に示すヘッド部20は、吐出ノズルを設けた吐出ヘッドユニット20Aと、ローラ部及び硬化手段を設けた回収硬化ヘッドユニット20Bとに分割されている。吐出ヘッドユニット20Aと回収硬化ヘッドユニット20Bとの間には、ヘッド部20を移動させるためのY方向移動レール44を通すレールガイド45が設けられている。ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、Y方向移動レール44に沿ってY方向に往復移動する。さらにY方向移動レール44の両端は、ヘッド移動手段30で支承されている。ヘッド移動手段30は、造形プレート40を上下方向に跨ぐように、造形プレートの上下に沿って平行に設けた一対のX方向移動レール43に沿ってX方向に往復移動する。これによってヘッド部20は、造形プレート上でXY平面上の任意の位置に移動できる。
さらに造形プレート40が、図1に示すようにプレート昇降手段(Z方向駆動部32)によって高さ方向、すなわちZ方向に移動される。これによって、ヘッド部20と造形プレート40の相対高さを変更でき、立体的な造形が可能となる。より詳細には、まずヘッド部20は、ヘッド移動手段30によりモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出するために、X方向に往復動作され、各吐出ノズル21、22に各々設けられる複数のY方向に伸びるオリフィスから、モデル材MA及びサポート材SAが吐出される。さらに、図3に示すように、各吐出ノズル21、22のY方向の幅が、造形プレート40上の造形可能なY方向の幅より小さい場合で、且つ造形用のモデルデータのY方向の幅が、Y方向に伸びるオリフィスの全長より大きい場合は、各吐出ノズル21、22の所定の位置におけるX方向の往復動作の後、Y方向に各吐出ノズル21、22を所定量シフトさせ、その位置でのX方向の往復走査と共に、モデル材MA及びサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出させることを繰り返すことにより、設定された全ての造形物データに対応した造形物の生成を行う。
なお図1の例では、Z方向駆動部32として造形プレート40を昇降させるプレート昇降手段を用いているが、この例に限られず、図2に示す三次元造形装置2’のように、造形プレート40側を高さ方向に固定し、ヘッド部側をZ方向に移動させるZ方向駆動部32’を採用することもできる。また、XY方向への移動も、ヘッド部側を固定して、造形プレート側を移動させてもよい。また、上述したような、ヘッド部20のY方向へのシフトは、各ノズルの幅を、実質的に造形プレート40の造形可能なY方向の幅と同じにすれば、その必要はないが、その際においても、例えばノズルに設けられるオリフィスの間隔で決定される造形物のY方向の解像度を高める目的として、ヘッド部20のY方向へのシフトにより、各オリフィスが、先の造形時におけるオリフィスとオリフィスの間に位置するようにシフトさせてもよい。
(制御手段10)
制御手段10は、造形材の吐出パターンを制御する。すなわちモデル材MA及びサポート材SAを、X方向における往復走査の内、少なくとも往路又は復路の一方にて造形材吐出手段により造形プレート40上に吐出させながら、ヘッド部20をX方向に往復走査させて、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ往路又は復路の少なくともいずれか一方で、モデル材MA及びサポート材SAに対して硬化手段24で硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行する。なお、詳細は後述するが、ローラ部25による造形材表面の平滑化は、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ硬化手段24にて造形材の表面が硬化させる前に、往路又は復路の少なくともいずれか一方で、行われる。
この制御手段10は、一回のX方向への往復走査でモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を吐出して、ローラ部25による造形材表面の平滑化と余剰分の除去を行い、更に硬化手段24により硬化させてから、次回以降の往復走査で、吐出されなかった他方の造形材を吐出して、造形材表面の平滑化を行い、硬化させる。これら一連の工程を少なくとも一回行うことにより、一枚のスライスの生成を行う。いうまでもなく、一層のスライスデータに対応した上記一連の工程は、例えばユーザの求める最終的なモデルの表面精度や造形時間に応じて、複数回繰り返すことが含まれる。これにより、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を未硬化の状態でその表面を平滑化し、そして硬化させた後、他方を吐出することで個別に硬化でき、これらモデル材MAとサポート材SAの異種造形材界面における混合を効果的に回避できる利点が得られる。
なお、この例では先にモデル材MAを吐出し、次いでサポート材SAを吐出させる例を説明したが、逆にサポート材を先に吐出させ、次いでモデル材を吐出させてもよい。また、この例ではいずれか一方の造形材をまず吐出して、これを硬化させた後に、他方の造形材を吐出して硬化させるという、モデル材とサポート材を個別に吐出、硬化させて造形する方法を説明した。ただ、この方法に限られず、モデル材とサポート材を同時に吐出させることも可能である。
(造形材)
上述の通り、造形材には、最終的な造形物となるモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAが用いられる。
(硬化手段24)
モデル材MAには、光硬化樹脂、例えば紫外線硬化樹脂が使用できる。この場合、硬化手段24は少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光を照射する光照射手段であり、例えば紫外線ランプ等の紫外線照射手段である。紫外光ランプには、ハロゲンランプや水銀灯、LED等が利用できる。またこの例では、サポート材SAも紫外線硬化樹脂としている。同じ波長の紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂を使用する場合は、同じ紫外線照射手段を利用でき、光源を共通化できる利点が得られる。
(モデル材MA)
またモデル材MAとして、熱可塑性樹脂を使用することもできる。この場合、硬化手段24は、冷却手段となる。なおモデル材とサポート材にいずれも熱可塑性樹脂を使用する場合は、モデル材の融点をサポート材の融点よりも高いものを採用することにより、積層完了後に造形物をサポート材の融点より高く、モデル材の融点より低い温度に加熱、保温することにより、サポート材を溶融除去することができる。さらに、モデル材とサポート材の一方を光硬化樹脂、他方を熱可塑性樹脂とすることもできる。
あるいは、硬化材との化学反応により硬化可能な材料をモデル材に用いることもできる。さらにモデル材は、粘度や表面張力等の噴射特性を調整するために、必要に応じて液体改質剤を混合してもよい。また温度調整によって噴射特性を変更することもできる。モデル材の他の例としては、紫外線フォトポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン等が挙げられる。
(サポート材SA)
サポート材SAは、基本的には、上述したモデル材と同様な材料を用いることができる。ただ、サポート材は最終的に容易に除去できる材料としたいとの観点から、モデル材と類似した材料に更に除去可能な材料を添加することが望ましい。このため、具体的には水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等が使用できる。サポート材SAの除去には、サポート材の性質に応じて水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波の照射により溶解させる、熱膨張差を利用した分離等の方法が適宜利用できる。
(ヘッド部20)
図4に、インクジェット方式の三次元造形装置のヘッド部20の一例を示す。この図に示すヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAとサポート材SAの吐出を個別に行う専用の吐出ノズルを設けている。具体的には、モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、平行に離間させて備えている。各吐出ノズルは、2つのノズル列23が設けられている。
ヘッド部20では、左からサポート材吐出ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25、硬化手段24が一体的に設けられている。各吐出ノズルは、圧電素子方式のインクジェットプリントヘッドの要領で、インク状の造形材を吐出する。また造形材は、吐出ノズルから吐出可能な粘度に調整される。
図4の例では、ヘッド部20が先にモデル材MAを吐出した後、サポート材SAを吐出している。またヘッド部20は往路(図において左から右)で造形材を吐出し、復路(図において右から左)では造形材の最表面からローラ部25にて余剰樹脂を掻き取り、平滑化を図った後、平滑化された樹脂を硬化手段24で硬化させている。
(ローラ部25)
ヘッド部20はさらに、吐出されたモデル材MA及びサポート材SAの表面を未硬化の状態で押圧し、造形材の余剰分を除去することにより、造形材表面を平滑化するためのローラ部25を設けている。このようなローラ部25の動作の様子を、図5の模式図に基づいて説明する。この例では、吐出されたモデル材MAの表面を、未硬化の状態でローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26は回転自在に支承されており、未硬化の樹脂を回転しながら押圧することにより、樹脂の表面を均しつつ、余剰分を掻き取って回収する。このローラ本体26はローラ本体26で余剰な樹脂を掻き取る際のヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図5において時計回り)に回転され、未硬化の造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、ローラ本体26が樹脂表面に当接する際の進行方向に対して、ローラ本体26の後方の位置に配置され、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。同様に、バス(槽)28もローラ本体26に対してブレート27と同様な側に配置され、且つブレード27の下方に配置されている。また吸引パイプ29はポンプに接続されており、バス28に溜まった造形材を吸引して排出する。この例では、ローラ本体26の外形をφ20mm程度としている。
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを行う。換言すると、左から右にヘッド部20が進行しつつ、スライスデータに基づいて、適切な位置にモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から各々モデル材MAとサポート材SAを吐出する際は、ローラ部25は造形材に接触せず、同様に硬化手段24の光源からの照明も行われない。図においてヘッド部20の左から右への主走査方向の例えでは、往路にて少なくとも造形材の吐出が各ノズル21、22から実行された後の右から左方向への復路としての主走査方向において、上述したローラ部25の掻き取り動作が実行されると共に、少なくともモデル材MAを硬化するための光を照射する光源としての硬化手段24も動作することになる。
なお硬化手段24の光源は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22より進行方向に対して前方に配置されるため、光源を点灯していても、吐出され、ローラ部25によって平滑化される前の流動可能な樹脂に照射を行うことはない。その一方で、硬化手段24の光源を積極的に必要なタイミング以外は消灯することはもちろん可能である。また一方で、硬化手段を複数設ける構成としてもよい。例えば、硬化手段として第一硬化手段と第二硬化手段とを設け、吐出後の樹脂に対して第一硬化手段で予備的に硬化を行い、次いで第二硬化手段で樹脂をより一層硬化させる。このように硬化手段を多段構成とすることで、樹脂の硬化能力を十分に発揮させることができる。またこのような場合において、第一硬化手段が予備的な硬化に留まり、第一硬化手段を経ても樹脂に未だ十分な流動性が残っている場合は、第一硬化手段による予備硬化後に、ローラ部で樹脂余剰分の掻き取りを行い、その後に第二硬化手段で硬化を行うように構成してもよい。すなわち、すべての硬化手段がローラ部の次段側に配置されることを必ずしも要しない。
図1、図4に示すように、ヘッド部20の進行方向に対してローラ部25は硬化手段24の前方、図において左側に配置されている。この結果、先に未硬化の造形材をローラ部25で掻き取った後、硬化手段24が造形材を硬化させる。このような配置によって、同一のパスで造形材の掻き取りと硬化を行うことができ、効率よく処理できる利点が得られる。
なお、X軸方向に沿うサポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25及び硬化手段24の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッド部20の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルのレイアウトに対して、ローラ部25ならびに硬化手段24は、ローラの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置し、ローラの作用を復路で行いたい場合は、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の復路の進行方向において後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置すればよい。
また、上記実施例においては、ヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
ただ、この構成以外にも、上述の通り硬化手段を多段で構成することもできる。例えばヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、硬化手段24によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためUV光を照射する方法もある。この場合、硬化手段24は、ヘッド部20において、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向で、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21を挟む前後方向に一対の硬化手段を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラ部25による掻き取り動作を可能とするために、流動可能な、半硬化状態である。このため本明細書においては、ローラ部25による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現する。
(ローラ部25の幅)
ここでローラ部25の幅は、造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成している。なお、各ノズルには、ヘッド部20の主走査方向に直交する副走査方向と略平行となるように形成された複数の樹脂吐出用のオリフィスが所定の間隔を持って配列されている。そして、上述した各ノズルの幅とは、各ノズルにおける副走査方向における両端部に位置するオリフィス間の距離を意味している。つまり、ローラ部25の幅が、各ノズルにおける副走査方向における両端部に位置するオリフィス間の距離より狭いことを意味する。
なお、ここでのオリフィス間の距離とは、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22の各々に設けられる各々のオリフィスが、ヘッド部20に対して、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向において、一直線状に配置されるようになっていることを前提とした定義である。言い換えると、モデル材吐出ノズル21の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向における位置と、サポート材吐出ノズル22の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向の位置が全て重なるように、ヘッド部20に対して、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22が位置決めされ、配置されていることを前提としている。
また、図6に示すヘッド部20の底面図のように、複数のモデル材吐出ノズル21、図では二つと複数のサポート材吐出ノズル22を用いると共に、一つのモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に対して、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22を副走査方向にオフセットし、ヘッド部20に対して、位置決めして用いられる場合がある。
元々、このような複数のモデル材吐出ノズル21、図では二つと複数のサポート材吐出ノズル22を用いる場合の基本的な狙いは、一方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスの副走査方向の位置を、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスの副走査方向の位置に対してオフセットさせることにより、モデル材やサポート材のY方向における解像度を向上させることである。つまり、一方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられる二つの隣接するオリフィスの間に、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスを副走査方向において配置するような位置決めを行うことである。このような場合、本件発明でのローラ部25の幅を造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成するという意味合いは以下のようになる。
複数のモデル材吐出ノズル21を副走査方向にオフセットして配置した場合におけるモデル材吐出ノズル21の幅とは、複数のモデル材吐出ノズル21の中で、副走査方向の一端部において最も外側に配置されるオリフィスの位置から、副走査方向の他端部において最も外側に配置されるオリフィスの位置までの距離より、ローラ部25の幅を狭くするという意味である。これは、同じシステムに採用される複数のサポート材吐出ノズル22においても同様である。また、上述した基本システムと同様に、このシステムにおいても、モデル材吐出ノズル21の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向における位置と、サポート材吐出ノズル22の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向の位置が全て重なるように、ヘッド部20に対して、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22が位置決めされ、配置されていることを前提としている。
また、上述したローラ部25の幅とは、ローラ部25における軸方向、つまり副走査方向においてローラ部25が持つローラ表面において、余剰樹脂を掻き取る際に用いられる実質的な幅を意味しており、見かけ上の幅がモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも大きくても、実質的にローラ部本来の機能である、掻き取り機能を果たすローラの幅がモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅より狭ければよい。
更に、その際ローラの端部に形成される実質的に余剰樹脂を掻き取る機能のないローラ部から実質的に余剰樹脂を掻き取るローラ部へは、段部をつけることによりローラの径を変化させてもよく、またローラの端部に形成される実質的に余剰樹脂を掻き取る機能のないローラ部から実質的に余剰樹脂を掻き取るローラ部に向けて徐々にローラ部の径を連続的に変化させたものであってもよい。
図6に、ヘッド部20の底面図の一例を示す。この図に示す例では、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22は、それぞれ吐出ノズルを2列並べてオフセット配置している。各モデル材吐出ノズル21の幅D1とサポート材吐出ノズル22の幅D2は、ほぼ等しくしており、またオフセット量もほぼ等しくしているため、吐出ノズル全体の吐出幅DNもモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22とでほぼ等しくなる。そしてローラ部25の幅DRは、吐出ノズルの吐出幅DNよりも狭くしている。このようにローラ部25の幅を吐出幅DNよりも短くすることにより、図7に示すように同一層(スライス)を複数の領域に分けて造形した場合でも(図7の例では領域R1、R2)、ローラ部25が右側の領域R2を押圧する際に、既に造形した部分(図7において左側の領域R1)に接触せず、精度良く大面積の造形を可能とする。また硬化後の樹脂を誤って回収することがないので、吸引パイプを詰まらせてしまう事態も回避できる。またローラ部の振れ、傾きの調整量は1スライス分の厚み以下で良いことになり、ローラ部の作成、取り付け時の調整の難度を低減させることができる。ここで、ローラ部25の幅はモデル材吐出ノズル及びサポート材吐出ノズルの両端部に位置するオリフィスよりも内側にオリフィス間の間隔の半ピッチ分だけ短く形成される(0.5mm)。例えば、オリフィス間の間隔が1mmである場合は、ローラ部25の幅はモデル材吐出ノズル及びサポート材吐出ノズルの両端部に位置するオリフィスから各0.5mm分ずつ短く形成される。
なお、ローラ部25を吐出幅よりも短くすることにより、図7で示す破線で囲んだ部分のように、ローラ部25で樹脂を回収できない部分が存在することになる。ただ、ローラ部25が樹脂の余剰分を回収した直後では、樹脂は液体状であることから、図8(a)に示すような状態には維持されず、自重によって形状を保てない結果、図8(b)に示すようにたれる。この結果、ローラ部25ですべて回収したときとほぼ変わらない造形となり、実用上の問題は殆ど生じない。実際の例においては、造形物の最上表面から掻き取る余剰樹脂の厚みは、例えば数十μm未満の厚み、より好ましくは50μm以下であり、掻き取り残した部分の樹脂の高さもそれと同様の高さとなることからも、実用上の問題がないことが言える。
また、造形材吐出手段で任意の厚みを有するスライスデータに基づいた樹脂の吐出を行う際、前回の副走査方向における樹脂吐出位置から副走査方向にオフセットさせて印字させることもできる。このように、各スライス層毎にローラ部25が印加されない部位を変化させて、未回収の樹脂が残る影響を累積させず、均一にして抑制できる。より詳細には、最初のスライス層を所定の副走査位置にて主走査方向に移動を行いながら樹脂の吐出を行い、その副走査位置を維持してローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、次のスライス層を上述した所定位置から副走査方向に一定距離移動した後、その副走査位置において、主走査方向に移動を行いながら樹脂の吐出を行い、その副走査位置を維持してローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行うこととなる。
さらに、図6に示すように、モデル材吐出ノズル21を、複数列、オフセット状に配置した状態では、ローラ部25の幅を、モデル材吐出ノズル21の複数列の和集合の幅よりも狭く形成することが好ましい。これにより、モデル材吐出ノズル21をオフセット配置することで解像度を向上させると共に、オフセット配置されたモデル材吐出ノズル21に対してローラ部25の幅を短くして、同一スライスを複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部25を造形物に接触させず、精度の良い造形が可能となる。
さらに、ローラ部が印加されない部位をスライスによって変化させることにより、未回収の樹脂が残る影響を累積させないようにすることもできる。すなわち、スライス毎に領域の境目の位置を変化させることで、境界部分のみが高くなる事態を抑制できる。例えば、図9の例では、前段で吐出した領域同士の境界P1の中間に、次段の境界P2が位置するよう、制御手段10で樹脂の吐出位置をオフセットさせている。これにより、前回のスライスの結果、若干高く造形されたとしても、次のスライスでは未硬化の樹脂が盛り上がった分をローラ部25で回収されるため、高さ方向への影響は累積せず、未回収の樹脂が残る問題を回避、抑制できる。
このように、上記実施例によれば造形物の吐出に際して同一スライスを複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部を硬化後の樹脂に衝突させることを回避して、造形物の品質を向上させることができる。
(ローラ回転速度制御手段12)
図1及び図2に示す三次元造形装置は、制御手段10がローラ回転速度制御手段12を備えている。ローラ回転速度制御手段12は、ローラ本体26がモデル材MA又はサポート材SAを個別に回収する際に、各吐出ノズルから吐出されるモデル材MA又はサポート材SAの物理的特性に応じて、ローラ本体26の回転速度を変化させる。特に本実施例では、モデル材MA、サポート材SA各樹脂を同時ではなく、個別に吐出し、個別に回収して、個別に硬化させている。そのため、ローラ本体26の回転速度を、それぞれの樹脂を回収する際に、各樹脂の物理的特性に応じて変化させることができる。
ここでの各樹脂の物理的特性の主なものとしては、ローラ本体26によって掻き取られる前の、造形物の最上表面ならび近傍の樹脂の粘性ならびに表面張力が挙げられる。ただ、実際の最適なローラ部の回転速度は、造形に用いる実際のモデル材とサポート材毎に、実際の実験に基づき、造形物の最上表面及び近傍の樹脂の粘性ならびに表面張力による基本的な最適な回転速度の検証に基づく設定に加え、ヘッド部のX方向への移動速度、ヘッド部からの単位時間当たりの樹脂吐出量などの造形条件パラメータを考慮した上で決定され、これに基づいたローラ部の回転速度決定用テーブルが作成され、記憶される。この場合、このローラ部の回転速度決定用テーブルは、設定データ作成装置1または三次元造形装置2のいずれに記憶されてもよい。
実際は、オペレータが選択した造形条件により、上述した種々のパラメータが算出され、その結果に基づいて上記テーブルからオペレータが選択した条件に基づき、ローラ部のモデル材除去とサポート材除去の各々に対する最適回転速度を決定することができる。
また、このようなテーブルとしてローラ本体26の回転速度をモデル材回収用、サポート材回収用に、別個の値(2値)を持つことにより、それぞれの樹脂に適した回転速度で樹脂を回収し、モデル材MAとサポート材SAの界面の混入を軽減できる。
なお図1、図2の例では、ローラ回転速度制御手段12を制御手段10と統合している。このような制御手段10は、MPUなどで構成できる。ただ、ローラ回転速度制御手段と制御手段とを別部材としてもよいことは言うまでもない。
以下、この手順を図10(a)〜(d)の模式図及び図11のフローチャートに基づいて説明する。まずステップS1101で、図10(a)に示すように、サポート材SAを吐出する。次にステップS1102で、図10(b)に示すようにサポート材SAに適した回転速度aでローラ本体26を回転させて押圧する。その後、サポート材SAを硬化させる。さらにステップS1103で、図10(c)に示すようにモデル材MAを吐出する。そしてステップS1104で、図10(d)に示すようにモデル材MAに適した回転速度bでローラ部25を回転させながら押圧する。このように、サポート材SA、モデル材MAとして利用する各樹脂の物理的特性に応じて、それぞれの樹脂を回収する際のローラ部25の回転速度を変えることで、造形物のモデル材MAとサポート材SAとの界面の混ざりを軽減することができる。ここで樹脂の物理的特性としては、樹脂の粘度や表面張力が利用できる。ただし、ローラ部25の回転速度を変化させる別の要因としては、上述したように樹脂の物理的特性の他に、ヘッドの移動速度、単位時間当たりの樹脂の吐出量、つまり1スライスの厚みが挙げられる。たとえば、本発明ではモデル材とサポート材の各層の成形を別々の工程で行うことを前提としている。このような工程で造形を行う場合は、単位時間当たりの吐出量を造形速度及び造形精度の観点から適切に定めることができる。たとえば、サポート材は後工程において除去されるものであるため、モデル材ほど造形精度が求められない。したがって、モデル材に対して、サポート材の単位時間当たりの吐出量を増やして造形を行うことにより造形速度を高めることができる。ローラ部25の回転速度は、これら造形速度及び造形精度の観点から、モデル材およびサポート材を掻き取る際に適切に設定されることが好ましい。
(評価試験)
ここで、本実施例の有効性を確認するための評価試験として、図12に示す造形物をローラ本体26の回転速度(回転数)を変化させて作成し、サポート材除去後の造形物を比較した。この結果を表1、表2に示す。表1は、モデル材MAの回収を主眼として回転数を469〜1125ppsに変化させた状態を、また表2は、サポート材SAの回収を主眼として回転数を375〜1125ppsに変化させた状態を、それぞれ示している。ここで用いたモデル材MAの粘度は45mPa・s、表面張力は30mN/mであり、またサポート材SAの粘度は80mPa・s、表面張力は34mN/mである。また造形した造形物は、図12に示すように厚さが数百μmの薄壁を離間させて4枚直立させており、周囲にはサポート材SAを配置している。このような薄壁を、ローラ本体26の回転数を変化させて造形した結果を表1、表2に示しており、これらの表において、薄壁が直立できているものは○、薄壁がやや曲がっているものは△、薄壁が大きく変形している、もしくは造形できていないものは×を示している。この結果から、モデル材、サポート材で最適な回転数はそれぞれ異なっており、樹脂の特性に応じて回転速度を変化させることが有効であることが確認された。
このように、モデル材とサポート材という2種類の樹脂を、異なる時期に回収すると共に、回収の際のローラ本体の回転速度をそれぞれの樹脂に合わせて最適化することで、造形物のモデル材とサポート材との界面の混ざりを軽減できる。特にモデル材とサポート材とを個別に硬化させることで、これらモデル材、サポート材の回収時に、ローラ本体の回転数を変化させることが可能となり、各樹脂の物理的特性に応じて樹脂余剰分を回収することで、樹脂界面の混合を抑制して高品質な造形物を得ることが可能となる。
(吐出制御手段13)
図1、図2に示す制御手段10は、吐出制御手段13を備えている。吐出制御手段13は、造形物の最上面に位置する樹脂、又は樹脂の種類が切り替わる異種造形材界面に位置する樹脂を含むスライスよりも下方のスライスで、樹脂を吐出しないように造形材吐出手段を制御する。またこの吐出制御手段13は、後述する造形物データから吐出データを作成する際に、造形物の垂直方向において、中空部ESを生成する中空部生成手段としても機能する。このように、積層方向の中間に造形材の吐出量を抑えた中空部を設けることで、最上面又は異種造形材界面のモデル材MA又はサポート材SAは、本来の位置よりも下方に造形される結果、余剰樹脂の回収時にローラ部25に接触しないため、このローラ部25によって筋や皺が生じることを回避でき、造形材の表面仕上げを綺麗にできる。
従来、造形物のすべての積層面に対してローラ部を押し当てて、余分な樹脂を掻き取ることで造形物の精度を実現していた。この場合は、造形物の表面となる部分についてもローラ部が接触するため、造形物表面に、ローラ本体の凹凸に起因する波模様や、ローラ本体26表面の筋が転写されてしまうという問題があった。
これに対して本実施例では、造形物の表面や樹脂の切り替わる異種造形材界面で、ローラ部25を接触させないように樹脂の吐出を制限する。すなわち、表面や界面では吐出を行う一方で、その下面の層を一層分抜き取ることで、造形物の表面や異種造形材界面では樹脂表面にローラ部25が接触しないようにする。樹脂表面は、ローラ本体26を接触させる前は平滑であることから、表面や切り替わりの界面ではローラ本体26と離間させることで回収を行わせずに造形の精度を維持し、造形物の表面状態を改善する。具体的には、吐出制御手段13によって、表面状態改善機能を実現する。
(表面状態改善機能)
図13に示す造形物を例に挙げて、本実施例の表面状態改善機能が適用される場所を示す。この例では、上から、斜線で示す造形物の一番上の面A、その下方側であって、サポート材SAからモデル材MAに切り替わる面B、及びさらにその下方側であって、モデル材MAからサポート材SAに切り替わる面Cが、それぞれ対象となる。B及びCはいずれも、サポート材SAを除去したときにモデル材MAの表面となる。ここで、造形物の最上面は、モデル材MAの表面となることから、筋や皺などが表面に生じると目立つこととなる。このため、樹脂の最表面にはローラ部25を当接させないことで造形物表面に模様が形成されるのを回避する。このため、造形物の表面となる部分を持つ層から、任意の層数下方の層を造形する際に、造形物の表面となる部分の直下にあたる部分のみ、吐出を行わないようにする。このような吐出制御は、吐出制御手段13が行う。ここで任意の層数は、樹脂の吐出量、積層厚などに基づいて決定される。
例えば、図14に示すような階段状の造形物に対して、表面状態改善機能を実行する様子を、図15〜図19に基づいて説明する。この造形物において、表面となるのは図中の破線で囲んだ部分である。そして、任意層数n=1とすると、吐出が行われない部分(「中空部ES」と呼ぶ。)は、図15に示すように造形物の左側に及び右側において、それぞれ最上層から1層下の、図中において白色の部分となる。
なお、この例では吐出しない層(中空部ES)を1層としているが、複数層で吐出しないようにしても良い。
図15に示す白色の部分を吐出しないことで、造形物の表面となる部分が所定の高さまで到達せず、ローラ部25が当たらないこととなる。図15において、左側の4層目を造形する場合を例に挙げると、3層目までの造形終了時点では図16に示す状態となる。この状態で図17に示すように4層目を吐出すると、中空部ESの上に吐出された分は、そうでない部分に比べ若干低くなる(図18)。この状態でローラ部25を印加すると、図19の右側部分の造形材にのみ当接し、前層で吐出されなかった左側部分の造形材には接触しない。このため造形材の左側の表面には、ローラ部25による模様が形成されず、滑らかな表面となる。その一方で、造形材の右側にはローラ部25が接触し、樹脂余剰分を回収して、造形精度が維持される。
このように中空部ESを設けることで、それ以降に造形される造形物には、数層の間、ローラ部25が当たらない状態が暫く続く。この間に造形が終了するように、層数や樹脂の吐出量を調整することで、造形物の最上面にローラ部25が当たらず、滑らかな表面状態に造形することができる。
また、以上は造形物の上面について説明したが、造形物の下面についても、同様の処理を行うことができる。造形物の下面(例えば図13においてBで示す面)では、その下に造形されているサポート材SAにもし凹凸や縞などの模様が形成されていれば、その上面に形成されるモデル材MAにも模様が転写されることとなる。これを回避するため、サポート材SAの上面を滑らかに造形しておくことで、モデル材MAの下面も滑らかに形成できる。具体的には、上記と同様、サポート材SAの積層に際しても、図20に示すように、サポート材SAの最上面から下方のスライスを抜き取る、中空部を形成する。ここでは、サポート材SAからモデル材MAに切り替わる層から、任意の層数nだけ下方のサポート材SAを吐出しない中空部ESを形成する。このようなサポート材SAを実際に吐出、造形すると、図21のようになる。この場合でも、サポート材SAの最上面層では、ローラ部25が当接しないため、滑らかな表面となる。よって、このサポート材SAの上面にさらにモデル材MAを造形しても、このモデル材MAとサポート材SAの異種造形材界面、すなわちモデル材MAの下面も、滑らかな面とできる。
このように、モデル材MAやサポート材SAなどの造形物の表面にローラ部25を接触させないことによって、ローラ本体26によって生じる造形材表面の波模様や筋模様の無い、滑らかな造形物を造形することが可能となる。
さらに、造形途中の層を間引くことによって、副次的な効果も期待できる。すなわち、例えば、モデル材吐出ノズルやサポート材吐出ノズル等の吐出ノズルの間隔によって、筋が生じることがあるが、このような筋の影響を緩和できる。また、複数の吐出ノズルのいずれかが、詰まりなどの原因によって樹脂の吐出ができなくなる、いわゆる不吐ノズルが存在すると、同様に不吐のノズルの軌跡に沿って不吐筋が生じるところ、中空部ESを設けることで、このような不吐筋も目立たなくできる。これらは、吐出する層が間引かれることによって、図22に示すように、吐出された樹脂の着弾位置が通常より下方にずれる結果、着弾後の樹脂が広がりやすくなることで、皺や皺など凹凸が緩和されて、このような模様が際立たなくなるためである。このように、中空部ESを設けることで、造形材の表面に模様を表出させ難くする効果も期待できる。
(中空部ESの決定方法)
表面層から何層目に、中空部ESを形成するかについては、以下の2点を考慮して決定できる。すなわち、
(1)中空部ESに造形材が順次造形されていくことで、高低差が徐々に低減され、最終的にはローラ部25が接触できる高さに回復するが、このようなローラ部25との接触が生じるよりも前に、造形が終了するかどうか、及び
(2)中空部ESを設けた後、造形材を吐出することで、既に生じている模様等を十分に消去することができるか(例えば凹凸を埋めることができるか)、
の2点の条件を満たすように、吐出制御手段13が決定する。
(連続してローラ部25をかけない場合の実施例)
例えば図23(a)に示すように、造形材の表面がローラ部25によって既に大きく凹んでしまっているような場合や、不吐のノズルが重畳されることで、凹みが大きく成長されてしまったような場合、間引き層である中空部ESを形成後に、その上に吐出される層が1層では、この凹みを十分に埋めきれない場合がある。このような場合は、吐出を行わない層すなわち中空部を、表面の直下とせず、図23(b)に示すように、表面から下方に離れた位置に配置することが考えられる。このようにすることで、ローラ部25をかけない層が数層連続するので、図23(c)に示すように、穴を埋める効果が重畳されて、徐々に凹部が解消されて目立たなくできる。このように、中空部を設ける位置を、表面から下方に離間させることで、1層のみでは埋めきれない凸凹であっても、これを補填することが可能となる。
(吐出量制限)
また以上の例では、中空部を形成するために、スライス全体で樹脂を吐出しない方法について説明した。ただ、本発明において中空部はこのような構成に限られない。すなわち中空部を、完全に樹脂を吐出しない非吐出スライスとするのみならず、樹脂の吐出量を少なくした中空部することでも、同様に以降に積層された層の造形材にローラが当たらないようにすることも可能である。特に、樹脂の吐出量を制御可能な吐出ノズルを用いれば、このような樹脂量を減少させた層の造形が可能となる。樹脂の吐出量の制御は、例えば吐出ノズルが圧電素子に印加される電圧により制御される場合は、当該圧電素子に印加される電圧の電圧値、パルス幅、周波数等を変化することにより、単位時間当たりに吐出される樹脂量を調整することができる。この制御は、例えば吐出制御手段13により実行される。
ここで、このような吐出制限を行いながら各スライスを造形する手順を図24(a)〜(e)に示す。ここでは、図24(a)に示すように、スライスS1〜S7の計7層の積層において、図15と同様、スライスS3及びS6においてモデル材MAの吐出量を制限して中空部ES’を形成している。換言すると、中空部ES’を、完全に造形材を吐出しないブロックとするのでなく、造形材の吐出量を少なくし、中空部ES’の容積を上記の中空部ESの例よりも若干小さくしている。
まず図24(b)に示すように、スライスS1〜S2までの2層について、モデル材MAを順次吐出、硬化させ、ブロックB1、B2を積層させる。そしてスライスS3の吐出において、ブロックB2上に吐出されるモデル材MAの量が、右側においては通常のままとしつつ(ブロックB3)、左側の領域においては通常のスライスよりも少なくなるように制限する(ブロックB3’)。この状態でローラ本体26を印加すると、右側のモデル材MAのブロックB3については余剰分の樹脂が回収される一方、左側のモデル材MAについてはローラ本体26がブロックB3’に接触しない。このため、ブロックB3’の表面において、ローラ本体26の凹凸の転写や皺の発生が回避される。
次にスライスS4の積層において、図24(c)に示すように、ブロックB3上にモデル材MAが通常の量だけ吐出され(ブロックB4)、またブロックB3’上には同様にモデル材MAが吐出される(ブロックB4’)。その後ローラ本体26がブロックB4に印加されるが、この状態でも未硬化のブロックB4’にローラ本体26は接触しない。ここでブロックB4’のモデル材MAの余剰分が掻き取られない結果、ブロックB4’は通常のスライスよりも厚く積層されて、造形物の左側における最終的なモデル材層の高さは、図24(a)と比べ、若干低下するものの、図18と比較すれば、その差は小さくなる。
さらに図24(d)に示すように、スライスS5のモデル材MAがブロックB4上に吐出され、ブロックB5が積層される。そしてスライスS6において、ブロックB5上にモデル材を吐出する際、樹脂の吐出量を制限してブロックB6’を薄く積層する。この状態では、ローラ本体26は本来の高さ位置で回転するため、ブロックB6’の上面に接触しない。この結果、ローラ本体26の押圧による皺などの発生が阻止される。
そして図24(e)に示すように、最後にスライスS7においてモデル材MAが吐出される(ブロックB7’)。この状態でも、ブロックB7’の表面はローラ本体26と接触しないため、最表面のモデル材に皺等が転写されることが回避される。
このように、中空部ES’は、一スライスにおいて吐出を完全に停止したものに限定されず、吐出量を制限することでも形成できる。換言すると、吐出量を少なくして形成される中空部ES’であっても、未硬化又は流動性のある状態の樹脂をローラ本体と接触させないように離間させることができれば足りる。したがって本発明においては、このような吐出量を少なくしたブロックも中空部に包含する。
(中空部ESの決定)
中空部の位置、すなわち造形材を間引く位置の決定は、上述の通り吐出制御手段13が行う。ここで、吐出制御手段13が中空部の位置を決定する手順の一例を説明する。上述の通り、中空部を設けた部位については、この上に吐出される樹脂は他のスライスに比べ、高さが低くなる結果、ローラ部25に接触せず、表面を平滑に維持できる。その一方で、スライスの積層を繰り返す内、高低差が徐々に少なくなって、最終的にはローラ部25に接触するようになる。そこで、最上面又は異種造形材界面までスライスが積層されても、中空部を設けた部位の上面ではローラ部25に接触しないことを限度として、中空部の位置、すなわち最上面又は異種造形材界面から何層下に設けるかを、吐出制御手段13が演算する。例えば、最上面又は異種造形材界面から1〜10スライス分下方に、中空部の位置を設定する。好ましくは1スライス下とする。
例えばモデル材MAを積層した部位に中空部を設ける場合、その表面又は異種造形材界面からn層目に中空部を設けるとした場合には、以下の条件をすべて満たすように演算する。
(1)中空部の1層上がモデル材MAである。
(2)中空部のn層上がモデル材MAである。
(3)中空部のn+1層上が空白(すなわち、これ以上の造形材がない、最表面であること)、又はサポート材SA(すなわち、モデル材MAとサポート材SAとの異種造形材界面であること)である。
以上の条件を満たす位置(n層)に、中空部を設ける。例えば、上述した図14に示す造形物に、図15に示すような中空部を設ける場合は、図25(a)の造形物データから図25(b)に示す吐出データを求めることとなる。この例では、中空部を設ける位置を表面から1層目(N=1)としているので、上記(1)と(2)は同じ条件となる。図25(b)の下から3層目のスライスS3に着目すれば、左側の部位は、n+1=2層上が空白となるので、(3)の条件も具備する。
なお、モデル材が1層分抜き取られても、図25(b)に示すように各部位でモデル材MAが抜き取られるため、全体の比率としての変化分は極めて少ない。また、樹脂の上面や異種造形材界面ではローラ部25が接触しないことから、樹脂余剰分が回収されずにその分だけ厚く造形される結果、中空部ESは若干小さくなる。これらから、最終的に得られる造形物の厚さは、精度上ほぼ無視できるレベルとなる。
ここで、吐出制御手段13が吐出データを生成する手順の一例を、図26のフローチャートに示す。まずステップS1201において、造形物データを取得する。造形物データは、例えばSTLファイル等で入力される。次にステップS1202において、造形物を造形するために必要なサポート材SAの領域を演算する。さらにステップS1203において、必要な補正処理等を行う。そしてステップS1204において、表面状態改善のための処理を行う(詳細は後述)。最後にステップS1205において、最終的な吐出データを生成する。このようにして生成された吐出データに従って、制御手段はヘッド部の造形物吐出手段を制御する。これによって、造形物の吐出が制御される。
このように吐出制御手段13は、入力される造形物データに対して表面状態改善処理を行った吐出データを演算する。各スライスの吐出データは、例えば以下の論理演算を用いて決定できる。
吐出データ=造形する層& ̄(造形する層&1層上&N層上& ̄N+1層上)
例として、図25(a)に示す造形材において、スライスS3を造形対象の層とすると、図27(a)に示すスライスS3、S4、S5の3層で論理演算を行うこととなる。ここで、造形する層であるスライスS3は図27(b)のようになり、その1層上のスライスS4は図27(c)のようになり、N層上も同様に図27(c)となる。さらに ̄N+1層上であるスライス ̄S5は図27(d)のようになり、これらの論理和(消去する部分)は図27(e)のようになる。さらにその否定は図27(f)のようになり、これに造形する層である図27(g)のスライスS3との論理和を取ると、図27(h)のようになり、演算後のスライスS3’の吐出データが求められる。
このような論理演算をすべての層に対して行うことで、各層の吐出データが取得できる。この結果、条件を満たす部分のみ吐出されない吐出データを作成することができる。
以上の例では、中空部としてモデル材を抜き取る層数は、1層としているが、複数層を抜き取るようにすることも可能であることはいうまでもない。
このように、造形物のデータから積層方向において一方の種類の造形材から他方の種類の造形材に変化する界面や最表面を抽出し、該抽出した界面から所定層離間した位置に樹脂を吐出しない、あるいは吐出量を制限した層を所定層設けた吐出データを生成することにより、造形物の表面にローラーが当たらないように造形を制御できる。この吐出データの生成は、設定データ作成装置1上で実行される。すなわち、設定データ作成装置1は造形物データに基づいて、中空部ESを含む吐出データを生成し、三次元造形装置100に送信する。なお、この吐出データの生成を、設定データ作成装置1から受信した造形物データに基づいて、三次元造形装置100で実行する構成とすることも可能である。いずれの場合も、造形物を構成するスライス毎の吐出パターンを記録した吐出データを記憶するための吐出データ記憶手段を備える。吐出データ記憶手段は、一時メモリや不揮発性メモリ等の記憶素子が利用できる。これによって、吐出データの加工によって表面状態改善機能を実現でき、三次元造形に関するハードウェア的な変更を不要とでき、既存の三次元造形装置に対して適用できる利点が得られる。
(三次元造形装置用の設定データ作成装置)
次に、このような三次元造形装置に造形物のデータを指示する設定データ作成装置について、図32のブロック図に基づいて説明する。この図に示す三次元造形装置用の設定データ作成装置1は、CADデータ等の三次元データを取得するための入力手段61と、取得された三次元データを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換した三次元データにて規定される造形物を示すオブジェクトを三次元的に表示するための表示手段62と、造形パラメータを設定するためのパラメータ設定手段63と、設定された造形パラメータに従ってオブジェクトの最適な姿勢と配置位置を演算する演算手段64と、演算手段64で演算された最適姿勢及び最適位置をユーザが微調整したり、あるいは所望の位置、姿勢を手動で調整するための調整手段65と、決定された姿勢及び位置に従って三次元造形装置を駆動する設定データを、三次元造形装置が読み込めるデータ形式に変換して、三次元造形装置側に出力するための出力手段66とを備える。
また上述の通り、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に対して、三次元状の造形物の設定データを送出する設定データ作成装置を説明するが、この設定データ作成装置は、利用する三次元造形装置をインクジェット方式に特定するものでなく、他の方式でもUV硬化型樹脂や熱可塑性樹脂を用いる三次元造形装置であれば有効な手法である。
(吐出制御手順)
また、以上の例では造形物データから吐出データを生成する手順を説明した。ただ、造形物のデータそのものは変更することなく、実際に造形を行う造形材吐出手段で造形材を吐出する際に、吐出の可否を判別して部分的に造形材の吐出を禁止するよう制御することで、実質上、部分的なブロックの抜き取りを実現してもよい。この場合は、吐出制御手段13等の制御手段において、造形材吐出手段の吐出動作を制限する。この方法であれば、吐出データを別途加工することなく、造形材吐出手段で直接吐出制御を行うことでも、造形材である樹脂の切り替わりからn層分の樹脂を吐出しないようにして、樹脂の誤回収を回避できる。
以上のように、本発明においては、与えられた造形物データを加工して中空部を形成するデータ処理に限られず、未加工の造形物データを利用しつつ、実際の造形の際に中空部が存在するのと同様の制御を行う方法も利用できる。すなわち、データ設定装置側で生成される、中空部を含まない造形物データに基づいて、三次元造形装置側で実際に造形する際、三次元造形装置が、所定の条件に従って、仮想的に中空部を形成したのと同様な造形材の吐出制限を行う。例えば、樹脂の種別が切り替わる異種界面の下方において、樹脂の吐出を止める又は吐出量を制限する。この場合は、造形物データの加工は不要であり、既存の造形物データに従って造形を行いつつも、実際の造形時においては仮想的に中空部を形成したのと同様のパターンで樹脂を吐出することによって、最終造形物の表面に皺や凹凸が表出する事態を回避できる。このように、本発明は中空部を必ずしも造形物データ中に含める必要は無く、最終的に三次元造形装置で造形する際に、造形材の種別の切り替わる異種界面の下方で樹脂の吐出を止める又は吐出量を少なくするように制御できれば足りる。よって本発明は、データ上で中空部を生成するソフトウェア的な制御方法に加え、ハードウェア的に樹脂の吐出量を制限する制御方法をも包含する。このように、造形物データから吐出データを作成する際のデータ処理によって中空部ESを形成する方法、又は造形物データを変更することなく、造形材吐出手段等のハードウェアの動作を直接操作する方法のいずれにおいても、所定数のスライスを除去した造形が可能となり、最終造形物として残るモデル材を維持しつつ、誤回収による品質低下や樹脂回収のトラブルを回避できる。
(同時造形)
さらに、以上の例ではモデル材とサポート材を、同時に造形する同時造形の他、それぞれを個別に造形する個別造形とすることもできる。同時造形の場合は、ヘッド部の一回の走査で、モデル材とサポート材とが吐出され、各スライスにおいてモデル材とサポート材が同時に造形される。この場合は、モデル材とサポート材を同じ走査で造形できるため、造形時間の短縮化が図られる。一方、個別造形の場合は、ヘッド部の一回の走査で、モデル材又はサポート材のいずれか一方の造形材のみを吐出し、硬化させ、次回の走査では他方の造形材を吐出、硬化させる動作を繰り返す。この方法によれば、モデル材MAとサポート材SAとが同一スライスにおいて隣接する垂直方向の界面において、未硬化又は流動性のある樹脂同士が混ざり合って表面状態が悪くなる事態を回避できる。これら、同時造形、個別造形のいずれにおいても、上述した表面状態改善処理を行うことで、上面や異種造形材界面の下方において中空部を設けることで、ローラ部の接触による表面の筋や皺などを回避できる。