JP2013061072A - ピストンリング - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性、ガスシール性および油かき性を同時に満たすことが可能であり、かつその摺動面に形成された硬質皮膜自体が剥離することのないピストンリングを提供すること。
【解決手段】外周面に凹部が形成された母材と、前記凹部に設けられる硬質皮膜と、からなるピストンリングにおいて、前記ピストンリングの径方向に垂直な断面において、前記凹部を、母材の上下面のいずれか一方から他方に向かって、ピストンリング外周面に平行に延びる第1の面と、前記第1の面の一端からピストンリング外周面に向かって延びる第2の面と、から構成し、前記凹部に硬質皮膜を設けることで、ピストンリング外周面を、硬質皮膜が形成されている部分と母材が露出している部分とが存在し、前記凹部を形成する第2の面とピストンリング外周面とは10〜30°の角度をもって接しているようにする。
【選択図】図1
【解決手段】外周面に凹部が形成された母材と、前記凹部に設けられる硬質皮膜と、からなるピストンリングにおいて、前記ピストンリングの径方向に垂直な断面において、前記凹部を、母材の上下面のいずれか一方から他方に向かって、ピストンリング外周面に平行に延びる第1の面と、前記第1の面の一端からピストンリング外周面に向かって延びる第2の面と、から構成し、前記凹部に硬質皮膜を設けることで、ピストンリング外周面を、硬質皮膜が形成されている部分と母材が露出している部分とが存在し、前記凹部を形成する第2の面とピストンリング外周面とは10〜30°の角度をもって接しているようにする。
【選択図】図1
Description
本発明は内燃機関に使用されるピストンリングに関する。
一般に内燃機関用のピストンには、ピストンリングとして圧力リングとオイルリングとが装着される。この圧力リングは、高圧の燃焼ガスが燃焼室側からクランク室側へ流出する現象(ブローバイ)の防止機能を持たせている。一方、オイルリングは、シリンダ内壁の余分な潤滑油がクランク室側から燃焼室側へ侵入して消費される現象(オイルアップ)の抑制機能を主に有する。そして、従来の標準的なピストンリングの組合せとしては、トップリングおよびセカンドリングからなる2本の圧力リングと、1本のオイルリングとの計3本のピストンリングの組合せが知られている。
近年、内燃機関の軽量化と高出力化に伴い、ピストンリングに要求される品質が益々高まってきている。
ここで、内燃機関用ピストンリングに要求される性能の一つに耐摩耗性がある。当該耐摩耗性を向上する手段としては、現在、ピストンリング摺動面に窒化処理にて窒化層を形成したり、PVD法などを用い硬質皮膜を形成することが行われている。
一方で、内燃機関用ピストンリングは、前記オイルアップを抑制するための油かき性も要求されている。当該油かき性を向上する手段としては、ピストンリングの主に下面側のエッジ部をシャープに形成する必要がある。
しかしながら、上記2つの要求を同時に満たそうとした場合、ピストンリング摺動面に硬質皮膜を形成しつつ、当該硬質皮膜のエッジ部分をシャープに形成することとなるが、そうすると、摺動面に形成された硬質皮膜は、「硬質」であるが故に欠け易い性質を有しているがため、このエッジ部分が特に欠け易くなってしまう。
このような問題を解決するために、特許文献1においては、ピストンリング摺動面の全体を硬質皮膜で覆うのではなく、硬質皮膜を部分的に形成し、油かき性を満たすためのエッジ部分においては、シャープな形状のピストンリング母材を露出させる技術が開示されている。
上記特許文献1のピストンリングによれば、確かにピストンリングに要求されている上記2つの性能(耐摩耗性と油かき性)を同時に満たすことは可能である。
しかしながら、特許文献1のピストンリングにあっては、耐摩耗性を満たすための硬質皮膜自体がピストンリングの母材から剥離してしまうという問題について何らの検討もされておらず、本願発明者らの実験によれば、実際に硬質皮膜の剥離が生じ得ることが分かった。
本願発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、耐摩耗性、ガスシール性、さらには油かき性を同時に満たすことが可能であり、かつその摺動面に形成された硬質皮膜自体が剥離することのないピストンリングを提供することを主たる課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、外周面に凹部が形成された母材と、前記凹部に設けられる硬質皮膜と、からなるピストンリングであって、前記ピストンリングの径方向に垂直な断面において、前記凹部は、母材の上下面のいずれか一方から他方に向かって、ピストンリング外周面に平行に延びる第1の面と、前記第1の面の一端からピストンリング外周面に向かって延びる第2の面と、から構成されており、前記凹部に硬質皮膜が設けられることで、ピストンリング外周面には、硬質皮膜が形成されている部分と母材が露出している部分とが存在し、前記凹部を形成する第2の面とピストンリング外周面とは10〜30°の角度をもって接していることを特徴とするピストンリング。
また、前記ピストンリングにあっては、前記硬質皮膜が、PVD法により形成されたCr−N系、またはCr−B−N系の皮膜であってもよい。
また、前記ピストンリングにあっては、前記母材の少なくとも下面および外周面において前記母材が露出している部分が、窒化処理されていてもよい。
また、前記ピストンリングにあっては、前記ピストンリングが圧力リングであり、ピストンリング外周面における上面側には硬質皮膜が形成されており、下面側には硬質皮膜が形成されておらず母材が露出していてもよい。
また、前記ピストンリングにあっては、その外周面の形状が、バレルフェース形状を有していてもよい。
本発明によれば、外周面に凹部が形成された母材と前記凹部に設けられる硬質皮膜とからピストンリングを構成し、このピストンリングの外周面は、硬質皮膜が形成されている部分と母材が露出している部分とを存在させており、さらに、母材が露出されている部分は、外周面の上面または下面の一方の、いわゆるエッジ部分となっているため、硬質皮膜により耐摩耗性を発揮せしめることができるとともに、露出された母材によって形成されるエッジ部分によりガスシール性および油かき性を発揮せしめることができる。
加えて、本願発明は、母材の外周面であって硬質皮膜が形成される凹部の形状を特殊な形状としているため、母材と硬質皮膜との境界部分が「なだからかな」傾斜面(10〜30°)となっており、その結果、硬質皮膜の一点に応力が集中することを防止して、当該硬質皮膜自体が母材から剥離することを防止することができる。
また、本願発明において、硬質皮膜の材質をPVD法により形成されたCr−N系、またはCr−B−N系の皮膜とすることにより、ピストンリングに要求される耐摩耗性を充分に満たすことができるとともに、母材との密着性をも向上せしめ、剥離を防止することができる。
また、本願発明において、母材の上面、下面、内周面および外周面において露出している部分を窒化処理することにより、ピストンリングの耐摩耗性をさらに向上せしめることができると共に、後処理が不要となり製造工程を簡略化することができる。
さらに、本願発明にあっては、ピストンリングの中でも圧力リングとして用いられた場合に効果的であり、圧力リングとして用いた場合、その下面側のエッジ部分がガスシールを行うとともに油をかく部分となるため、当該部分に母材を露出させ、上面側に硬質皮膜を形成することがより効果的である。
また、本願発明は、その外周面の形状が、バレルフェース形状を有するピストンリングにも応用可能である。
以下に、本発明のピストンリングについて、図面を用いて具体的に説明する。
図1(a)は、本発明のピストンリングの一部径方向に垂直な断面を示した斜視図であり、(b)は(a)の断面の拡大図であり、(c)は、(b)のさらに拡大図である。なお、本発明のピストンリングには、図1には図示しない合い口部が形成されている。
図1(a)〜(c)に示すように、本発明のピストンリング1は、母材2と硬質皮膜3とから構成されている。そして、図1(b)および(c)に示すように、ピストンリングの径方向に垂直な断面をみた場合、母材2には、母材の上面から下面に向かって(逆でもよい)、ピストンリング外周面Zに平行に延びる第1の面Xと、前記第1の面Xの一端X1からピストンリング外周面Zに向かって延びる第2の面Yとから構成される凹部21が
形成されている。この前記凹部21には、最終的にピストンリング1の外周面Zの一部となる硬質皮膜3が設けられている。そして、前記凹部21を形成する第2の面Yとピストンリングの外周面Z(凹部21に形成された硬質皮膜3の表面)とが、10〜30°の角度をもって接している(図1(c)の符号α参照)。その結果、図1(a)に示すように、本発明のピストンリング1の外周面Zの外観は、その大半は硬質皮膜3により覆われており、下面近傍のいわゆるエッジ部分には母材2が露出した状態となっている。
形成されている。この前記凹部21には、最終的にピストンリング1の外周面Zの一部となる硬質皮膜3が設けられている。そして、前記凹部21を形成する第2の面Yとピストンリングの外周面Z(凹部21に形成された硬質皮膜3の表面)とが、10〜30°の角度をもって接している(図1(c)の符号α参照)。その結果、図1(a)に示すように、本発明のピストンリング1の外周面Zの外観は、その大半は硬質皮膜3により覆われており、下面近傍のいわゆるエッジ部分には母材2が露出した状態となっている。
このような本発明のピストンリング1によれば、外周面Zに設けられた硬質皮膜3により耐摩耗性を発揮せしめることができるとともに、露出された母材2によって形成されるエッジ部分によりガスシール性および油かき性を発揮せしめることができる。
また、ピストンリングの外周面Zと凹部21を構成する第2の面Yとのなす角α(図1(c)参照)を10〜30°とすることにより、母材と硬質皮膜との境界部分が「なだからかな」傾斜面となる一方、その結果、硬質皮膜の一点に応力が集中することを防止して、当該硬質皮膜3自体が母材2から剥離することを防止することができる。
このような本発明のピストンリング1を構成する母材2について以下に説明する。
母材2の材質については、特に限定されることはなくいかなる材質も用いることができる。例えば、その材質としては、主にスチール(鋼材)を用いることができ、またステンレス鋼としては、JIS規格に表されるSUS440、SUS410、SUS304等、あるいは8Cr鋼、10Cr鋼、SWOSC−V、SWRH材などを用いることができる。
母材2の外周面Zには、前述したように所定の形状を呈し、最終的に硬質皮膜3によって埋められる凹部21が形成されている。
当該凹部21を構成する第2の面Yとピストンリング外周面Zとのなす角αが10°より小さいと、凹部21に設けられる硬質皮膜3の厚さを確保することができず、剥離するおそれがある。一方でなす角αを30°より大きくすると、硬質皮膜の剥離が生じてしまう。
ここで、当該凹部を構成する第1の面Xと第2の面Yとのなす角θは、150〜170°の範囲とすることが好ましい。第1の面Xとピストンリングの外周面Zが平行であることから、なす角θをこの範囲とすることにより、前記なす角αを所定の範囲内にするkとができる。また、第1の面Xと第2の面Yとは曲面状(緩やかなカーブ)につなげることが好ましい。これにより、硬質皮膜3の剥離をより防止することができる。
また、図1(c)に示す凹部21の深さhについては、本願発明は特に限定することはないが、凹部21に設けられる硬質皮膜3の性能や製造コストなどを考慮すると、1〜70μm程度が好ましく、10〜60μmが特に好ましい。1μm未満であると、摩耗により皮膜が消滅し耐久性が劣るという問題があり、一方で70μmを超えると、製造上時間がかかりコスト的に好ましくない。なお、図1(c)からも分かるように、凹部21の深さhは、最終的に当該部分に形成される硬質皮膜3の厚さとなる。
さらに、図1(b)に示す凹部21の長さmについても、本願発明は特に限定することはない。しかしながら、ピストンリング1に耐摩耗性を付与するためには、その外周面Zに硬質皮膜3を充分に形成する必要があり、一方で、外周面Zに露出させる母材2の役割は、エッジをシャープにしてガスシール性および油かき性を向上せしめることであることから、凹部21の長さmは、ピストンリングの断面の全長の70〜90%程度とすることが好ましい。従って、外周面Zに露出される母材の長さnは、全長の10〜30%となる。外周面Zに露出される母材の長さnが10%未満であると、欠けや剥離が生じやすいという問題があり、一方で30%を超えると、硬質皮膜の無い部分が多く、耐摩耗性が劣るという問題がある。
ここで、母材2は、少なくとも下面24および外周面において露出している部分25が窒化処理されていることが好ましく、その上面22、内周面23、下面24および外周面において露出している部分25の全てが窒化処理されていてもよい。これにより、ピストンリングの耐摩耗性をさらに向上せしめることができると共に、後処理が不要となり製造工程を簡略化することができるからである。
当該窒化処理としては、特に限定されることはないが、塩浴軟窒化処理、ガス窒化処理、ガス軟窒化処理、イオン窒化処理などを具体例としてあげることができる。窒化処理にてビッカース硬さ(HV)が700以上の窒化層を窒化拡散層としこの窒化拡散層の厚さを1〜40μmで形成することが好ましく、厚さについては、10〜20μmが特に好ましい。
次に、凹部21に形成される硬質皮膜3について説明する。
硬質皮膜3の材質については特に限定することはなく、当該硬質皮膜3の効果、つまりピストンリングの耐摩耗性を向上せしめることが可能な皮膜であれば、従来から用いられている各種硬質皮膜を適宜選択して用いることができる。
本発明にあっては、各種硬質皮膜の中でも、PVD法(物理蒸着法)により形成されたCr−N系、またはCr−B−N系の皮膜であることが好ましい。
Cr−N系、またはCr−B−N系の硬質皮膜3の形成するためのPVD法としては、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法等を挙げることができる。
Cr−N系の硬質皮膜3は、Cr、CrN、Cr2Nよりなる皮膜であり、Crが0.5〜15.5質量%、CrNが45.0〜98.0質量%、Cr2Nが残部であることが好ましい。
一方で、Cr−B−N系の硬質皮膜3は、B含有量が0.05〜20質量%であることが好ましい。BがCr−N合金中に含まれることによって形成される当該硬質皮膜は、耐摩耗性および耐スカッフィング性に優れると共に、特に相手攻撃性に優れる。B含有量が0.05質量%未満では、耐スカッフィング性および相手攻撃性で期待する効果が得られない。B含有量が20質量%を超えると、硬質皮膜3の内部応力が高く、靱性が低下し、皮膜にクラックおよび層間剥離等が発生し、ピストンリングとしての機能を果たさなくなる。Cr−B−N系の硬質皮膜3を構成するB含有量の特に好ましい範囲としては、1〜3質量%であり、Cr−B−N系の硬質皮膜3を構成するN含有量は、4.0〜34.0重量%の範囲であり、残部がCrであることが好ましい。
次に本発明のピストンリングの製造方法について説明する。
製造方法に関しては特に限定されることはなく、最終製品としてのピストンリング1が上記で説明した特定の形状を有する凹部21を有する母材2と、当該凹部に設けられる硬質皮膜3とからなれば、いかなる製造方法を用いてもよい。
図2は、製造方法の一例を示す工程図である。
図2(a)に示すように、第1の面Xと第2の面Yとから構成される凹部21が設けられた母材2を用意する。ここで、第2の面Yと最外周面Wとのなす角αは10〜30°とする。一方で凹部21の深さHは、最終製品たるピストンリング1における凹部21の深さ(図1(c)の符号h)よりも深くしておく。言い換えれば、最終的に凹部21に形成されるべき硬質皮膜3の膜厚よりも深くしておく。なお、この凹部21の形成方法は切削、研削、研磨などの公知の技術を適宜選択して採用すればよい。
次に、図2(b)に示すように、母材2の外周面全体に硬質皮膜3を形成する。形成する硬質皮膜3の膜厚は、最終製品たるピストンリング1において必要な膜厚とする。なお、硬質皮膜3の形成方法には、前述したように、各種PVD法を用いればよい。
次に、図2(c)に示すように、母材2の下面側に形成された凸部分(図中の斜線の部分)を、母材2の凹部21に形成された硬質皮膜3の表面に沿って除去する。なお、除去方法は特に限定されない。
前記除去により、最終的に図2(d)に示すように、本発明のピストンリング1を形成することができる。
また、窒化処理を行うと、図2(e)に示すように、リング母材部分に窒化拡散層が形成される。
図2に示す方法によれば、母材2の外周面全体に硬質皮膜3を形成した後、不要な部分を除去することで、最終的に所定部分(下面側のエッジ部分)に母材2を露出させることができるため、硬質皮膜3をPVD法で形成する場合であっても、マスクなどを用いる必要がなく、比較的簡便かつ安価に本発明のピストンリングを製造することができる。
図3(a)および(b)は、本発明のピストンリングの他の一例を示す断面図である。
図3(a)に示すように、本願発明のピストンリングにおいては、その外周面Zの形状をバレルフェース形状とすることも可能であり、図3(b)に示すように、その外周面Zの形状を偏心バレルフェース形状にすることも可能である。バレル形状とすることにより、油膜潤滑を行いながら外周面(摺動面)からのガス漏れを防止することができる。
本発明のピストンリングは、いわゆる圧力リングとして機能するトップリングはもとより、同じ圧力リングであるセカンドリングに用いることもでき、さらにはオイルリングにも本発明は適用可能である。
図1や図2は、いわゆる圧力リングの例であり、この場合には、図示するように、ピストンリングの上面側に硬質皮膜3を形成し、下面側のエッジ部分に母材2を露出させることが好ましい。圧力リングにおいては下面側のエッジ部分に母材2を露出させることによって欠けや剥離を防止できるからである。
図4(a)および(b)は、本発明のピストンリングをオイルリングに適用した場合の断面図である。
コイルエキスパンダ(図示せず)とオイルリング本体1とからなる2ピースオイルリングにあっては、図4(a)に示すように、上下2つの摺動面ともに上面側に硬質皮膜3を形成し下面側に母材2を露出させることができる。この場合、オイルをかき出す方向はオイルリング本体1の下方向となる。
一方で、図4(b)に示すように、上側の摺動面にあっては、上面側に硬質皮膜3を形成し下面側に母材2を露出させ、下側の摺動面にあっては、下面側に硬質皮膜3を形成し上面側に母材2を露出させてもよい。この場合、オイルをかき出す方向はオイルリング本体1の中央部となる。
このように、2ピースオイルリングの本体にあっては圧力リングに比べてリング形状が複雑となる場合が多く、従来のオイルリング本体にあってはそのエッジ部分をシャープに形成することが困難な場合があったが、本発明によれば、母材2そのものを露出させることでエッジ部分を形成することができるため、比較的容易にシャープなエッジ部分とすることができる。
本発明のピストンリングを実施例を用いてさらに具体的に説明する。
(実施例1〜6)
前記図2を用いて説明した方法を用いて、図1に示すピストンリング(オイルリング)を製造した。
前記図2を用いて説明した方法を用いて、図1に示すピストンリング(オイルリング)を製造した。
ここで、母材(2)としては、JIS規格で表されるSUS440Bを用いた。
また、硬質皮膜(3)としては、イオンプレーティング法により形成したCr−B−Nとした。
製造したピストンリングの寸法は、直径:115mm、軸方向幅:3.0mm、径方向幅3.95mmである。なお、ピストンリング外周摺動面の下部(エッジ部分)において露出している母材の長さ(m)は0.5mmであった。
このような実施例1〜6において、母材(2)に形成された凹部(21)を構成する第2の面(Y)とピストンリング外周面(Z)とのなす角(α)の値は、以下の表1に示す通りである。なお、この第2の面(Y)とピストンリング外周面(Z)とのなす角(α)は、ピストンリング軸方向断面が観察できるように切断し、断面を研磨して鏡面化し、100倍の視野に拡大して確認した。また、これらの実施例にあっては、以下の表1に示すように、母材において硬質皮膜(3)が形成されていない部分を窒化処理したものとしていないものとがある。
窒化処理については、ガス窒化法を用い10〜20μmの厚さの窒化拡散層を形成した。
(比較例1〜2)
前記実施例と同じ要領で、母材(2)に形成された凹部(21)を構成する第2の面(Y)とピストンリング外周面(Z)とのなす角(α)の値が本発明の範囲外の比較例を製造した。具体的には表1の通りである。
前記実施例と同じ要領で、母材(2)に形成された凹部(21)を構成する第2の面(Y)とピストンリング外周面(Z)とのなす角(α)の値が本発明の範囲外の比較例を製造した。具体的には表1の通りである。
(従来例1〜2)
前記実施例と同じ要領で、母材(2)の外周面全体に硬質皮膜(3)が形成されている従来例を製造した。具体的には表1の通りである。
前記実施例と同じ要領で、母材(2)の外周面全体に硬質皮膜(3)が形成されている従来例を製造した。具体的には表1の通りである。
<剥離試験>
図5に示す捻り剥離試験機40を用いてツイスト試験を行った。
図5に示す捻り剥離試験機40を用いてツイスト試験を行った。
ツイスト試験においては、ピストンリング1の合口5の相対向する合口端部を掴持具41a、41bで掴持し、掴持具41aを固定しておいて掴持具41bをピストンリング1の直径方向で合口の反対側6を軸として一点鎖線で示されるように回転させてピストンリング1を所定のねじり角度にてねじる。ねじり角度は90°とした。ねじり後に、このピストンリング1の合口反対側6を切断し、切断面(破面)における皮膜層のリング母材からの剥離の有無を目視で観察した。観察した結果、亀裂又は剥離が全く無かった場合を○とし、亀裂又は剥離が軽微でも確認できた場合を×とした。剥離試験を行ったのは、実施例1、4、5、比較例1、2、従来例1である。
その結果を以下の表1に示す。
<実機試験>
排気量:8000cc、ボア径:φ115mmの直列6気筒ディーゼルエンジンにてオイル消費量及びブローバイガス量の測定を行った。また、第1圧力リングの下面の摩耗を実機運転前後のプロフィールより摩耗量を測定した。
排気量:8000cc、ボア径:φ115mmの直列6気筒ディーゼルエンジンにてオイル消費量及びブローバイガス量の測定を行った。また、第1圧力リングの下面の摩耗を実機運転前後のプロフィールより摩耗量を測定した。
この際のピストンリングの組合せは、第1圧力リングは、C:0.9(質量)%、Si:0.4%、Mn:0.3%、Cr:17.5%、Mo:1.1%、V:0.1%、P:0.01%、S:0.01%(JIS規格に表されるSUS440B材相当)からなる、リング軸方向幅(h1):3.0mm、リング径方向幅(a1):3.95mmのもので、実施例3、実施例4、従来例1の仕様とし、第2圧力リングは、10Cr鋼材相当からなる、リング軸方向幅(h1):2.5mm、リング径方向幅(a1):4.3mmのものである。オイルリングはJIS規格に表されるSUS410JI材相当からなる、リング軸方向幅(h1):4.0mm、リング径方向幅(a1):オイルリング単体で2.35mm、コイルエキスパンダとの組み合わせで4.35mmのものである。
実機試験は、第2圧力リング及びオイルリングの仕様は一定とし、第1圧力リングのみを変化させて行った。第1圧力リングは外周摺動面をバレルフェース形状とし、第2圧力リングは外周摺動面をテーパー形状とした。
具体的な試験方法としては、WOT(全負荷)によりエンジン回転数2200rpmにて、従来例1の圧力リングを用いたブローバイガス量、オイル消費量の数値を1とし、従来例2、実施例2、3、5、6の圧力リングを用いた試験結果を指数として求めた。また、摩耗量については、従来例1の圧力リングを用いたリング下面の摩耗量の数値を1とし、実施例3、5、6の圧力リングを用いた試験結果を指数として求めた。さらその結果を図5に示す。
表1や図6からも分かるように、本発明のピストンリングによれば、従来よりも耐剥離性、耐摩耗性、ガスシール性、およびオイルかき性をともに向上せしめることができる。
1…ピストンリング
2…母材
3…硬質皮膜
4…窒化拡散層
5…合口
X…第1の面
Y…第2の面
Z…ピストンリングの外周面
α…第2の面とピストンリング外周面とのなす角
θ…第1の面と第2の面のなす角
21…凹部
2…母材
3…硬質皮膜
4…窒化拡散層
5…合口
X…第1の面
Y…第2の面
Z…ピストンリングの外周面
α…第2の面とピストンリング外周面とのなす角
θ…第1の面と第2の面のなす角
21…凹部
Claims (5)
- 外周面に凹部が形成された母材と、前記凹部に設けられる硬質皮膜と、からなるピストンリングであって、
前記ピストンリングの径方向に垂直な断面において、
前記凹部は、母材の上下面のいずれか一方から他方に向かって、ピストンリング外周面に平行に延びる第1の面と、前記第1の面の一端からピストンリング外周面に向かって延びる第2の面と、から構成されており、
前記凹部に硬質皮膜が設けられることで、ピストンリング外周面には、硬質皮膜が形成されている部分と母材が露出している部分とが存在し、
前記凹部を形成する第2の面とピストンリング外周面とは10〜30°の角度をもって接している
ことを特徴とするピストンリング。 - 前記硬質皮膜が、PVD法により形成されたCr−N系、またはCr−B−N系の皮膜であることを特徴とする請求項1に記載のピストンリング。
- 前記母材の少なくとも下面および外周面において前記母材が露出している部分が、窒化処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載のピストンリング。
- 前記ピストンリングが圧力リングであり、ピストンリング外周面における上面側には硬質皮膜が形成されており、下面側には硬質皮膜が形成されておらず母材が露出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のピストンリング。
- 前記ピストンリングの外周面の形状が、バレルフェース形状を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のピストンリング。
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