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JP2012519282A - 間葉様腫瘍細胞またはその生成を阻害する薬剤を同定するための方法 - Google Patents

間葉様腫瘍細胞またはその生成を阻害する薬剤を同定するための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、抗がん剤の同定で使用するEMTプロセスのモデルとして使用する腫瘍細胞調製物を提供するが、ここで前記腫瘍細胞調製物は、EMTを誘発する受容体リガンドにより誘導されるか、またはEMTを刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞を含む。本発明は、このような腫瘍細胞調製物を使用して、EMTを阻害するか、METを刺激するか、または間葉様細胞の増殖を阻害する薬剤を同定して、潜在的な抗がん剤を同定する方法も提供する。このような薬剤は、EMTを起こした腫瘍細胞の阻害にあまり効果的ではないと見られる、EGFRおよびIGF-1Rキナーゼ阻害剤などのその他の抗がん薬と併用するときに特に有用なはずである。
【選択図】 図1

Description

発明の背景
[1]本発明は、EMT細胞モデルおよびがん患者を治療するための新しい抗がん剤の同定においてそれを使用するための方法に関連し、特にEMTを生じた腫瘍細胞を抑制するにあたってはそれほど効果がないと考えられるEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤などのその他の薬剤との組み合わせに関する。がんとは、無秩序な成長、分化の欠如、および局所組織への侵入や転移の能力を特徴とする広範囲な細胞悪性腫瘍の総称である。これらの新生物性悪性腫瘍は、さまざまな程度の有病率で、身体の各組織および臓器に影響を及ぼす。
[2]抗腫瘍剤は、理想的にはがん細胞を選択的に殺し、良性細胞に対するその毒性と比べて幅広い治療指数を持つ。また、薬剤に長期間暴露した後でも、悪性細胞に対するその効力が維持されうるものである。残念ながら、現在の化学療法でこのような理想的プロファイルを持つものはない。それどころか、たいていは非常に狭い治療指数を持つ。さらに、亜致死濃度よりわずかに低い化学療法剤にさらされたがん細胞は、頻繁にこのような薬剤に対する耐性を生じ、しばしば他の抗腫瘍薬剤に対しても交差耐性を生じる。
[3]過去数十年間に、さまざまなタイプのがんの治療のための数多くの治療薬が開発されてきた。最も一般的に使用されるタイプの抗がん剤は以下を含む:DNAアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、葉酸拮抗薬、および5-フルオロウラシル、ピリミジン拮抗薬)、微小管破壊剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル)、DNAインターカレータ(例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン、シスプラチン)、およびホルモン療法(例えば、タモキシフェン、フルタミド)。より最近では、タンパク質-チロシンキナーゼ阻害薬などの遺伝子標的療法が、がん治療にますます使用されるようになってきた(de Bono J.S. and Rowinsky, E.K. (2002) Trends in Mol. Medicine 8:S19-S26、 Dancey, J. and Sausville, E.A. (2003) Nature Rev. Drug Discovery 2:92-313)。EGFRキナーゼ阻害剤エルロチニブなど、こうしたアプローチは、一般に従来的な細胞毒性薬剤と比較して低めの毒性に関連している。従って、多剤併用療法での使用に特に適している。膵臓がんにおいて、第一選択エルロチニブ治療をゲムシタビンと組み合わせた第III相治験では、生存率が改善されることが示されている。
[4]上皮成長因子受容体(EGFR)系統群は、分化や増殖などの細胞応答に関与する密接に関連した4つの受容体(HER1/EGFR、HER2、HER3およびHER4)を含む。EGFRキナーゼ、またはそのリガンドTGF-αの過剰発現は、しばしば乳がん、肺がん、結腸直腸がん、卵巣がん、腎細胞がん、膀胱がん、頭部がんおよび頸部がん、膠芽細胞腫、ならびに星状細胞腫を含む多くのがんに関連しており、これらの腫瘍の悪性増殖に寄与するものと考えられている。EGFR遺伝子(EGFRvIII)における特異的な欠失突然変異も、細胞の腫瘍原性を増加させることがわかっている。EGFR刺激性シグナル経路の活性化は、増殖、血管形成、細胞運動および侵入、アポトーシスの低下および薬剤抵抗性の誘導など、がん促進の可能性がある複数のプロセスを促進する。HER1/EGFR発現の増大は、進行疾患、転移および予後不良にしばしば関連する。例えば、NSCLCおよび胃がんでは、HER1/EGFR発現の増大は、高い転移率、腫瘍分化の不良および腫瘍増殖の増加に関連することが示されてきた。
[5]受容体の内因性タンパク質チロシンキナーゼ活性を活性化、および/または下流シグナル伝達を増加させる突然変異が、NSCLCおよび膠芽細胞腫で観察されている。ところが、例えば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))またはゲフィチニブ(IRESSA(商標))などのEGF受容体阻害薬に感受性を与える主要メカニズムとしての突然変異の役割については、議論の余地がある。最近、EGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブに対する応答性を予測する完全長EGF受容体の突然変異体の形態が報告されている(Paez, J. G. et al. (2004) Science 304:1497-1500、 Lynch, T. J. et al. (2004) N. Engl. J. Med. 350:2129-2139)。細胞培養研究では、EGF受容体(すなわち、H3255)の突然変異型を発現する細胞株は、EGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブによる増殖阻害に対して、より感受性が高いこと、また野生型のEGF受容体を発現する腫瘍細胞株を抑制するにはかなり高いゲフィチニブの濃度が必要とされることが示されている。これらの知見は、EGF受容体の特定の突然変異型は、EGF受容体阻害薬に対する高い感受性を反映するものであるかもしれないが、完全に非反応性の表現型を同定するものではないことを示唆している。
[6]エルロチニブ(例えば、エルロチニブHCl、別名TARCEVA(登録商標)またはOSI-774)は、経口投与が可能なEGFRキナーゼの阻害剤である。生体外で、エルロチニブは、多くのヒト腫瘍細胞株のEGFRキナーゼに対してかなりの阻害活性を示している。第III相治験では、エルロチニブ単剤療法は、進行性、治療難治性のNSCLC患者において、著しい生存率の延長、病気の進行の遅れ、および肺がんに関連した症状の悪化の遅れがみられた(Shepherd, F. et al. (2005) N. Engl. J. Med. 353(2):123-132)。2004年11月、米国食品医薬品局(FDA)は、それ以前に少なくとも1回の化学療法が失敗した、局所進行性または転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療に対してTARCEVA(登録商標)を認可した。
[7]IGFのキナーゼ活性-1Rを直接阻害する化合物や、IGF-1R活性化またはIGF-1Rの発現を遮断するアンチセンスオリゴヌクレオチドを遮断することによってIGF-1Rキナーゼ活性を低減する抗体を抗腫瘍薬として使用するための開発も、集中的な研究努力の分野である(例えば、Larsson, O. et al (2005) Brit. J. Cancer 92:2097-2101; Ibrahim, Y.H. and Yee, D. (2005) Clin. Cancer Res. 11:944s-950s; Mitsiades, C.S. et al. (2004) Cancer Cell 5:221-230; Camirand, A. et al. (2005) Breast Cancer Research 7:R570-R579 (DOI 10.1186/bcr1028); Camirand, A. and Pollak, M. (2004) Brit. J. Cancer 90:1825-1829; Garcia-Echeverria, C. et al. (2004) Cancer Cell 5:231-239を参照)。

[8]IGF-1Rは、主としてIGF-1に結合するが、IGF-IIおよびインスリンにも低い親和性で結合する膜貫通RTKである。IGF-1のその受容体への結合は、受容体のオリゴマー形成、チロシンキナーゼの活性化、分子間受容体の自己リン酸化および細胞基質のリン酸化(主な基質はIRS1およびShc)を引き起こす。リガンド活性化したIGF-1Rは、正常細胞における細胞分裂活性を誘発し、異常な増殖において重要な役割を果たす。IGF-lシステムの主な生理学的役割は、正常な増殖および再生の促進である。過剰発現したIGF-1R(1型インスリン様成長因子受容体)は有糸分裂を開始し、リガンド依存性悪性形質転換を促進することがある。さらに、IGF-1Rは、悪性表現型の確立と維持に重要な役割を果たす。上皮成長因子(EGF)受容体とは異なり、IGF-1Rの発がん性変異型は特定されていない。ただし、いくつかの発がん遺伝子が、IGF-1およびIGF-1R発現に影響を及ぼすことが実証されている。IGF-1R発現の減少と形質転換に対する耐性との相関が観察されている。IGF-1R RNAに対するmRNAアンチセンスへ細胞を暴露することにより、いくつかのヒト腫瘍細胞株の軟寒天増殖が防止される。IGF-1Rにより、生体内および生体外の両方においてアポトーシスへの進行が抑止される。IGF-1Rのレベルが野生型レベル以下に低下すると、生体内で腫瘍細胞のアポトーシスが起こることも示されている。IGF-1R破壊がアポトーシスを起こす能力は、正常な非発がん性細胞では減少するようである。
[9]ヒトの腫瘍成長において、IGF-1経路は重要な役割を持つ。IGF-1Rの過剰発現が各種の腫瘍(乳房、結腸、肺、肉腫)でよくみられ、また悪性表現型と関連していることがよくある。高いIGF1循環濃度は、前立腺がん、肺がんおよび乳がんのリスクと強い相関性がある。さらに、IGF-1Rは、生体外および生体内における形質転換された表現型の確立・維持に必要とされる(Baserga R. Exp. Cell. Res., 1999, 253, 1-6)。IGFのキナーゼ活性-1Rは、EGFR、PDGFR、SV40 T抗原、活性Ras、Raf、およびv-Srcといったいくつかの発がん遺伝子の形質転換活性にとって不可欠である。正常な線維芽細胞におけるIGF-1Rの発現により、腫瘍性表現型が誘発され、次いでこれによって生体内で腫瘍が形成されうる。IGF-1R発現は、足場非依存性の増殖に重要な役割を果たす。IGF-1Rは、化学療法、放射線、およびサイトカイン誘導性アポトーシスから細胞を保護することも示されている。逆に、優性阻害IGF-1R、3重らせん形成またはアンチセンス発現ベクターによる内在性IGF-1Rの阻害は、生体外における形質転換活性および動物モデルにおける腫瘍増殖を抑制することが示されている。
[10]たいていのがん転移時には、上皮間葉転換(EMT)として知られている重要な変化が腫瘍細胞内で起こる(Thiery, J.P. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:442-454; Savagner, P. (2001) Bioessays 23:912-923; Kang Y. and Massague, J. (2004) Cell 118:277-279; Julien-Grille, S., et al. Cancer Research 63:2172-2178; Bates, R.C. et al. (2003) Current Biology 13:1721-1727; Lu Z., et al. (2003) Cancer Cell. 4(6):499-515))。胚形成中を除いて、EMTは健康な細胞では発生しない。互いに固く結合し、極性を示す上皮細胞は、よりゆるく結合し、極性の喪失を示し、移動能力を持つ間葉細胞を生じさせる。これらの間葉細胞は、原発腫瘍を取り囲む組織中に広がるだけでなく、腫瘍から分離して血液およびリンパ管に侵入し、新しい部位に移動して分裂し、追加的な腫瘍を形成することができる。最近の研究では、上皮細胞はEGFRおよびIGF-1Rキナーゼ阻害剤によく応答するが、EMTの後で、結果的に生じる間葉様細胞はこうした阻害剤に対する感受性がより低いことが実証されている。(例えば、Thompson, S. et al. (2005) Cancer Res. 65(20):9455-9462; 米国特許出願第60/997,514号)。こうして、腫瘍細胞EMTイベントを阻止または逆転(例えば、間葉から上皮への転換(MET)を刺激)する、またはEMTの結果生じる間葉様腫瘍細胞の増殖を阻害する抗がん剤に対する差し迫った必要性がある。このような薬剤は、EGFRおよびIGF-1Rキナーゼ阻害剤などその他の抗がん剤と併用した時、特に有用である。
[11]ヒトのがんがより浸潤性の転移状態に進行するのに伴い、細胞および組織の状況に依存して、細胞生存を規制する複数のシグナル伝達プログラムおよび遊走プログラムが観察される(Gupta, G. P., and Massague, J. (2006) Cell 127, 679-695)。最近のデータは、上皮間葉転換に似たプロセスであり(EMT; (Oft, M., et al. (1996). Genes & development 10, 2462-2477; Perl, A. K., et al.(1998). Nature 392, 190-193)、細胞の浸潤および転移を促進するための(Brabletz, T. et al. (2005) Nat Rev Cancer 5, 744-749; Christofori, G. (2006) Nature 441, 444-450)、上皮性のがん細胞のより間葉様の状態への分化転換を強調している。EMT様転換により、間葉様腫瘍細胞は、増殖ポテンシャルを犠牲にして遊走能を得るものと考えられている。間葉上皮転換(MET)は、より増殖状態を再生し、原発腫瘍に類似したマクロ転移が遠隔部位に形成されるための前提条件であるとされてきた(Thiery, J. P. (2002) Nat Rev Cancer 2, 442-454)。腫瘍細胞におけるEMT様転換は、ジンクフィンガー、フォークヘッド、bHLHおよびHMG-boxドメインを有する転写因子を介した、相当な期間(数週〜数ヶ月)をかけた転写の再プログラミングに起因する(Mani, S. A. et al. (2007) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104, 10069-10074; Peinado, H. et al. (2007) Nat Rev Cancer 7, 415-428)。E-カドヘリンの喪失および、より間葉様な状態への転換が、がんの進行において主要な役割を果たしている可能性が高く(Matsumura, T. et al. (2001) Clin Cancer Res 7, 594-599; Yoshiura, K. et al. (1995). Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 92, 7416-7419)、そして間葉表現型の獲得は不良な予後との関連性があった(Baumgart, E. et al. (2007) Clin Cancer Res 13, 1685-1694; Kokkinos, M. I. Et al. (2007) Cells, tissues, organs 185, 191-203; Willipinski-Stapelfeldt, B. et al. (2005) Clin Cancer Res 11, 8006-8014)。腫瘍由来および/または腫瘍に関連する間質細胞を標的にすることで、EMT様転換を遮断し、浸潤してくる細胞の生存を抑制するユニークな機構が提供される。
[12]EMT様転換に伴う細胞の変化により、生存のためのEGF受容体シグナル伝達網に関する悪性腫瘍細胞の依存が変化する。EMT様転換がEGFR-TKIエルロチニブに対する細胞の非感受性に関連することが観察されたが(Thomson, S. et al. (2005) Cancer research 65, 9455-9462; Witta, S. E., et al. (2006) Cancer research 66, 944-950; Yauch, R. L., et al. (2005) Clin Cancer Res 11, 8686-8698)、それは部分的にはPI3’キナーゼまたはMek-Erk経路のいずれかまたは両方のEGFRに依存しない活性化による(Buck, E. et al. (2007). Molecular cancer therapeutics 6, 532-541)。EGFR TKIに対する感受性についてのEMTステータスに関連した類似データが、膵臓、CRC(Buck, E. et al. (2007) Molecular cancer therapeutics 6, 532-541)膀胱(Shrader, M. et al. (2007) Molecular cancer therapeutics 6, 277-285)の株細胞、異種移植片および患者(Yauch, R. L., et al. (2005) Clin Cancer Res 11, 8686-8698)について報告されている。EGF受容体阻害薬に対する細胞の感受性をバイパスできる、PI3’キナーゼおよびErk経路を活性化するための別の経路の分子決定因子について、活発に研究されてきた(Chakravarti, A. et al. (2002) Cancer research 62, 200-207; Engelman, J. A. et al. (2007) Science 316:1039-1043)。
[13]EMT様転換および間葉様細胞の生存の阻害は、腫瘍の転移および進行を低減するために予測されうる。現在のデータは、転移のある患者が上皮性および間葉様の表現型細胞を含みうる不均質な腫瘍を持つことを示唆している。腫瘍が新しいシグナル経路、例えばPDGFRおよびFGFR自己分泌シグナル伝達を獲得できるという観察は、標的とする特定の腫瘍細胞集団に対する新しい治療の様相を示唆する。これらのデータは、直接的に腫瘍細胞の増殖阻害またはアポトーシスをもたらすだけでなく、がんの再発を促進する間葉細胞集団に影響を及ぼすこともできる合理的な複合薬を示唆する(Moody, S. E. et al. (2005). Cancer cell 8, 197-209)。こうした複合薬の発見および開発にとって不可欠なことは、その効力を簡単に評価できる適切な細胞および動物モデルが利用できることである。本書で説明した発明は、このようなモデルを提供する。
発明の概要
本発明は、腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤を同定する方法であって、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、H1650細胞において上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤に試料を接触させること、前記試験薬が試料中の腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを試験薬と接触していないH1650細胞の同一サンプルにおける同じ生物マーカーのレベルと比較することによって判断すること、およびかくして、前記試験薬が腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む方法を提供する。一つの実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、EGF、TGFβ、TNFαまたはOSMをEMTインデューサHGFに追加しても、またTNFαをEMTインデューサEGFに追加してもよく、そのどちらも結果的に、より完全度の高いEMTとなる。別の実施形態において、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。
本発明は、上皮間葉転換を起こす腫瘍細胞を阻害する薬剤を同定する方法であって、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をH1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が間葉様H1650の細胞増殖を阻害するかどうかを判断すること、およびかくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む方法も提供する。一つの実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、EGF、TGFβ、TNFαまたはOSMをEMTインデューサHGFに追加しても、またTNFαをEMTインデューサEGFに追加してもよく、そのどちらも結果的に、より完全度の高いEMTとなる。別の実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。
本発明は、間葉様腫瘍細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤を同定する方法も提供し、これは上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をH1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が試料中の間葉様H1650細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こすかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していない同一の間葉様H1650細胞サンプルにおける同じ生物マーカーのレベルと比較することにより判断すること、およびかくして、試験薬が間葉様腫瘍細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤であるかどうかを判断することを含む。一つの実施形態において、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、EGF、TGFβ、TNFαまたはOSMをEMTインデューサHGFに追加しても、またTNFαをEMTインデューサEGFに追加してもよく、そのどちらも結果的に、より完全度の高いEMTとなる。別の実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。
本発明は、抗癌剤の同定で使用するための間葉様腫瘍細胞の調製物も提供し、ここで上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させることを含むプロセスによって前記腫瘍細胞調製物が調製される。一つの実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、EGF、TGFβ、TNFαまたはOSMをEMTインデューサHGFに追加しても、またTNFαをEMTインデューサEGFに追加してもよく、そのどちらも結果的に、より完全度の高いEMTとなる。別の実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。
[14]本発明は、抗癌剤の同定で使用するための間葉様腫瘍細胞調製物も提供し、ここで前記腫瘍細胞調製物は、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を含む。誘導的に発現して、H1650細胞における上皮間葉転換刺激するタンパク質は、例えば、Snail、Zeb-1、EGFまたはHGFでありうる。本発明は、このような腫瘍細胞の調製物を使用して、EMTを阻害するか、METを刺激するか、または間葉様細胞の増殖を阻害する薬剤を同定して潜在的な抗癌剤を同定する方法も提供する。
[15]本発明は、腫瘍または腫瘍転移の治療に使用するために、本明細書に記載したいずれかの方法によって同定された薬剤を含む組成物を調製する方法も提供する。
[16]図1: H1650細胞における成長因子およびサイトカインによるEMTの誘発。H1650細胞を成長因子またはサイトカインで7日間処理し(「材料および方法」を参照)、EMT、E=カドヘリンおよびビメンチンのタンパク質生物マーカーを細胞抽出物の免疫ブロットで測定した。含めた因子:HGF(肝細胞成長因子)、EGF(上皮成長因子)、OSM(オンコスタチンM)、TGFβ1(形質転換増殖因子、β 1)、およびTNFα(腫瘍壊死因子α)。 [17]図2: 成長因子およびサイトカインのEMT誘発に伴うH1650形態の変化。図示のとおり、成長因子およびサイトカインを単独または二つの組み合わせのいずれかで、H1650細胞を処理した。対照の未治療H1650細胞はコロニーを形成したのに対して、EMTイベントを表すマーカーの変化があった細胞処理では、より細長い細胞形態でより分散した増殖があった。 [18]図3: H1650細胞におけるEMT誘発された変化の共焦点画像。H1650細胞をHGF、EGF、HGF+EGF、またはHGF+TGFbの組み合わせで7日間処理し、染色してE-カドヘリン(緑)およびビメンチン(赤)を局在化させた。未処理のH1650細胞にはE-カドヘリンの薄膜局在化が見られたが、処理した細胞では、E-カドヘリンの不在または細胞質へのE-カドヘリンの誤った局在化があった(DNA核染色法、青)。 [19]図4:3D-マトリゲルにおけるEMTのH1650誘発。未処理H1650細胞はコロニーを形成したが、リガンド処理したH1650細胞、HGF+OSMまたはHGF+TGFβは分岐構造を持つコロニーを形成した。 [20]図5:3D-マトリゲルでのEMTのH1650誘発の共焦点顕微鏡。未処理H1650細胞はスフェロイドを形成し、E-カドヘリンがコロニー末梢部の細胞を染色した。HGF+OSMで処理した細胞は、ビメンチンについて陽性に染色される分岐構造と、E-カドヘリンについて陽性に染色されるコロニー本体を持つ(染色: E-カドヘリン−緑、ビメンチン−赤、DNA核染色−青)。 [21]図6:EMTの薬理学的阻害。 7日間にわたり、MEK阻害剤1(1 μ M)、PI3K阻害剤LY294002(10 μ M)またはJAK阻害剤1(0.25 μM)の存在下で、指示したリガンドで細胞を刺激した。(a)7日後の細胞可溶化物のウエスタンブロット。(b)7日間処理した後の形態の写真。JAKおよびPI3Kの阻害により、それぞれのモデルにおいてEMTが様々に遮断され、その一方、MEKの阻害では、何の効果もなかった。 [21]図6:EMTの薬理学的阻害。 7日間にわたり、MEK阻害剤1(1 μ M)、PI3K阻害剤LY294002(10 μ M)またはJAK阻害剤1(0.25 μM)の存在下で、指示したリガンドで細胞を刺激した。(a)7日後の細胞可溶化物のウエスタンブロット。(b)7日間処理した後の形態の写真。JAKおよびPI3Kの阻害により、それぞれのモデルにおいてEMTが様々に遮断され、その一方、MEKの阻害では、何の効果もなかった。 [22]図7:リガンド除去によるEMTの逆転。7日間にわたりHGF、OSM、HGF+OSM、TGFβ、またはOSM+TGFβ(T0)で細胞を刺激した後、その後2週間(T3 - T14)、リガンドなしで3〜4日おきに継代させた。示した日に採取した細胞可溶化物に、E-カドヘリン、ビメンチンおよびZeb1についてウエスタンブロットを実行した。
発明の詳細な説明
[23]動物においての「がん」という用語は、無秩序な増殖、不死性、転移能力、急速な成長および増殖速度、および特定の特徴的な形態学的機能など、発がん性細胞に特有の性質を持つ細胞の存在を指す。がん細胞は腫瘍の形態を取ることが多いが、このような細胞は動物内のみに存在したり、白血病細胞などの独立した細胞として血流中を循環していることがある。
[24]「細胞増殖」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば「腫瘍細胞増殖」という文脈においては、別途指定されない限り、腫瘍学で一般的に使用されるように使用され、ここでこの用語は細胞数の増加と主に関連しており、その増殖の小構成要素は、特定の状況では細胞サイズまたは個々の細胞の細胞質体積の増加にもよるが、後者の速度が(例えばアポトーシスまたは壊死による)細胞死の速度より大きい時に細胞繁殖(すなわち増殖)によって起こり、細胞集団サイズを増加させる。したがって、細胞増殖を阻害する薬剤は、増殖を阻害するかまたは細胞死を促進するかのどちらか、または両方によって阻害を行い、これらの2つの相反プロセスの間の平衡が変化するようにする。
[25]本明細書で使用される場合、「腫瘍増殖」または「腫瘍転移増殖」は、別途指定されない限り、腫瘍学で一般的に使用されるように使用され、この用語は、主に腫瘍細胞増殖の結果としての腫瘍または腫瘍転移の質量または容量の増加に主に関連する。
[26]本明細書で使用される場合、別途指定されない限り「異常な細胞増殖」とは、正常な調節機構に無関係な細胞増殖を指す。これは以下の異常増殖を含む:(1) 変異チロシンキナーゼを発現するか、または受容体チロシンキナーゼを過剰発現することによって増殖する腫瘍細胞(腫瘍);(2) 異常なチロシンキナーゼ活性化が起こる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞;(4) 受容体チロシンキナーゼによって増殖する任意の腫瘍;(5) 異常なセリン/トレオニンキナーゼ活性化によって増殖する任意の腫瘍;および (6) 異常なセリン/トレオニンキナーゼ活性化が起こる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞。
[27]本書で使用される場合「治療する」という用語は、別途指定されない限り、がん患者の腫瘍の増殖、腫瘍転移、または他の発がん性または腫瘍細胞(neoplastic cells)を部分的または完全に改善する、緩和する、その進行を阻害する、または防止することを意味する。本書で使用される場合、「治療」という用語は、別途指定されない限り、治療行為を指す。
[28]「治療方法」またはそれと同等の句は、例えばがんに適用された場合、動物のがん細胞数を減少または除去するように、またはがんの症状を緩和するようにデザインされた処置または一連の行為を指す。がんまたは別の増殖性疾患の「治療方法」は、がん細胞または他の疾患が実際に除去されること、細胞数または疾患が実際に減少すること、またはがんまたは他の疾患の症状が実際に緩和されることを必ずしも意味しない。がんの治療方法は多くの場合、成功の見込みが低い場合でも行われるが、動物の病歴および予測される生存期間を考慮した場合、それでも全体として一連の有益な行為であると判断される。
[29]「治療効果のある薬剤」という用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医が追求する組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的な反応を引き起こす組成物を指す。
[30]「治療有効量」または「有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医が追求する組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的な反応を引き起こす、対象化合物または組み合わせの量を指す。
[31]本発明は、どの腫瘍がタンパク質-チロシンキナーゼ阻害薬による治療に最も効果的に反応するかを判断するための方法を提供した研究に由来する(例えば、Thompson, S. et al. (2005) Cancer Res. 65(20):9455-9462; US Patent Application 60/997,514) based on whether the tumor cells have undergone an epithelial to mesenchymal transition (“EMT”; Thiery, J.P. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:442-454; Savagner, P. (2001) Bioessays 23:912-923; Kang Y. and Massague, J. (2004) Cell 118:277-279; Julien-Grille, S., et al. Cancer Research 63:2172-2178; Bates, R.C. et al. (2003) Current Biology 13:1721-1727; Lu Z., et al. (2003) Cancer Cell. 4(6):499-515)。この研究は、上皮系細胞はEGFRおよびIGF-1Rキナーゼ阻害剤に対してよく応答するが、EMTの後で、結果的に生じる間葉様細胞は、このような阻害剤に対する感受性がずっと低いことを実証したものである。腫瘍細胞がEMTを起こしたかどうかを判断するために、生物マーカーを使用できる(Thomson, S. et al. (2005) Cancer Res. 65(20):9455-9462)。このような研究の結果、浸潤型で転移性の腫瘍の特性において重要な要素であると考えられている、このような間葉様細胞の発生、増殖および/または機能を阻害する能力のある薬剤を見つけるには、新しい治療アプローチが必要となることが明らかとなる。
[32]腫瘍EMT事象の調節に関与する生化学経路を描写し、結果的として得られた間葉様腫瘍細胞の特徴付けを行い始めた研究が相当な数で出現しつつある。例えば、間葉様腫瘍細胞によって生成された各種タンパク質生成物の発現の特異的siRNA阻害剤を用いた実験では、所定の遺伝子生成物の発現の低下が、間葉様腫瘍細胞の増殖を特異的に阻害しうることが実証された。したがって、これらの遺伝子によってコードされたタンパク質産物の発現をも特異的に阻害するか、または細胞外ドメイン、アンチセンス 分子、リボザイム、または低分子酵素阻害剤(例えば、タンパク質キナーゼ阻害剤)を持つタンパク質を発現する特異的な抗体といった、発現されたタンパク質の生物活性(例えば、ホスホトランスフェラーゼ活性)を特異的に阻害する薬理学的薬剤は、間葉様腫瘍細胞の増殖をも特異的に阻害する薬剤であることが同様に期待される。EGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤とこのような薬剤の組み合わせの抗腫瘍効果は、このような組み合わせが上皮性および間葉様の腫瘍細胞の両方を効果的に阻害するべきであることから、これらのキナーゼ阻害剤それ自体の抗腫瘍効果よりも優れているべきであり、そしてしたがって、このような薬剤のEGFRまたはIGF-1Rキナーゼ阻害剤との同時投与は、NSCL、膵臓がん、結腸がんまたは乳がんなどの進行がんの患者の治療にとって有効であるべきである。
[33]間葉様腫瘍細胞の増殖、またはEMTプロセスを阻害する薬剤の発見および開発のための主要標的の同定を考えると、こうして、間葉様腫瘍細胞の増殖および/または変化を阻害する予測される効果を持つかどうかについて、生体外でのスクリーニング法(例えば、タンパク質キナーゼアッセイを使用)により同定された薬剤を評価するためのモデルおよび方法に対して差し迫った必要性がある。本書の「実施例」で提示されているデータは、上皮腫瘍細胞株H1650が、それを一つ以上の細胞受容体リガンドに接触させることにより、またはEMTプロセスを調節する能力を持つ一つ以上のタンパク質生成物の発現を誘導することにより、EMTを起こすよう誘発できることを実証している。全ての上皮腫瘍細胞株がEMTを起こすよう誘発できるわけではなく、またEMT誘導の最適プロセスは細胞株に依存する。したがって、EMTを誘発する様々な方法で処理したH1650腫瘍細胞を、間葉様腫瘍細胞の阻害、その形成の阻止、またはEMTプロセスの逆転ができる薬剤を同定する方法において、モデルとして生体外および生体外の両方で使用できる。これらの方法はまた、限定はされないが、腎線維症、肝臓の線維形成、肺疾患の線維形成、および中皮腫を含めた、EMT転換に部分的に起因する線維性疾患の治療のための薬剤の同定にも有用である。こうして、腫瘍細胞に適用されるものとして本書で説明した任意の発明が、EMTを起こす線維性疾患に関与するその他の細胞タイプにも適用される。同様に、抗がん剤の同定のために有用とされている本書で説明した任意の発明が、線維形成が関与する疾患の治療のための線維形成阻害薬の同定にも有用である。
[34]「H1650細胞」は、本書で使用される場合、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC(登録商標))からATCC(登録商標)番号: CRL-5883(商標)として入手可能な細胞株NCI-H1650 [別名H1650;CRL-5883(商標)] の細胞を意味し、これは第3B期の肺癌:腺癌および気管支肺胞の悪性腫瘍を持つヒト患者に由来する上皮系細胞株である。
[35]したがって、本発明は、腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤を同定する方法であって、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、H1650細胞において上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤に試料を接触させること、前記試験薬が試料中の腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していないH1650細胞の同一試料における同じ生物マーカーのレベルと比較することによって判断すること、およびかくして、試験薬が腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む方法を提供している。一つの実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。
[36]「単一タンパク質リガンド製剤」は、本書で使用される場合、細胞受容体のためのタンパク質リガンドを含む製剤を意味し、このリガンド自体がH1650細胞においてEMTを実質的に誘発することができ、これは例えば、上皮系生物マーカーE-カドヘリンの発現の著しい減少、および/または間葉の生物マーカービメンチンの発現の著しい増加によって評価される。「二重タンパク質リガンド製剤」は、本書で使用される場合、異なる細胞受容体のための2つのタンパク質リガンドを含む製剤を意味し、そのリガンドがH1650細胞でEMTを誘発する能力を持ち、またEMT誘導には両方のリガンドを必要とする(すなわち、どちらのリガンドもそれ自体では実質的にEMTを誘発しない)。どちらの製剤も、追加的な化合物またはタンパク質、例えば細胞栄養素、その他の成長因子、タンパク質リガンドを安定させる薬剤などを含みうる。例えば、単一タンパク質リガンド製剤には、これまたEMTを誘発する一つ以上の代替的な単一リガンド、または通常はそれ自体ではEMTを誘発しないリガンドを補充することもでき、それによってより完全度の高いEMTとなりうる。例えば、EGF、TGFβ、TNFαまたはOSMをEMTインデューサHGFに追加したり、またはTNFαをEMTインデューサEGFに追加することができ、そのどちらも、E-カドヘリンまたはビメンチン発現で判定したとき、結果的により完全度の高いEMTとなり、またこのような追加は、より完全度の高いEMT誘導が求められるときに、EGFまたはHGFを本書で説明した任意の方法または製剤で使用する時に好ましい実施形態である。意外にも、それ自体ではEMTを刺激しないこれらの追加したリガンドのいくつか(すなわち、TGFβ、TNFα、またはOSM)はそれ自体でEMTを誘発するリガンドの追加に匹敵するほどのEMTの増大を引き起こす。「TGF-β」(または「TGFβ」)は、本書で使用される場合、任意の活性の哺乳類TGF-β(形質転換増殖因子β)タンパク質、例えばヒトTGF β -1(TGFB1、NCIB GeneID: 7040)、ヒトTGF β -2(TGFB2、NCIB GeneID: 7042)、またはヒトTGF β -3(TGFB3、NCIB GeneID: 7043)、またはそのヘテロ二量体を意味しうる(Massague J, et al. (1992) Cancer Surv. 12:81-103を参照)。他の実施形態において、TGF β、TNFαまたはOSMがEMTの誘発においてリガンドの効果を増大させる効果が高い調製物では、TGF-β、TNFαまたはOSMは、同一の受容体または異なる受容体のいずれかを通って、H1650細胞における同一のシグナル伝達経路を活性化させる別の受容体リガンドによって置き換えることができる。
[37]本明細書で説明した発明の任意の方法または細胞調製物において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、現時点で既知であるか、または今後発見または合成される、EGF受容体(NCIB GeneID: 1956、または他のHER系統群受容体とのヘテロ二量体)、またはHGF受容体(NCIB GeneID: 4233、別名、met原癌遺伝子、Met受容体チロシンキナーゼ、または肝細胞成長因子受容体)に結合し、それを活性化する任意のタンパク質リガンドから選択しうる。例えば、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGF(NCIB GeneID: 1950)およびHGF(NCIB GeneID: 3082)から選択しうる。その他の例には、EGF受容体リガンド、形質転換増殖因子-α(TGF-α:NCIB GeneID: 7039)、ヘパリン-結合EGF様成長因子(HB-EGF:NCIB GeneID: 1839)、アンフィレギュリン(AREG:NCIB GeneID: 374)、ベタセルリン(BTC:NCIB GeneID: 685)、エピレグリン(EREG:NCIB GeneID: 2069)、およびエピゲン(EPGN:NCIB GeneID: 255324)を含む。追加的な例には、H1650細胞上で細胞チロシンキナーゼ受容体と結合し、HGFをその受容体に結合することによって活性化される同一のシグナル伝達経路を活性化するリガンドを含む(すなわち、PI3KおよびMAPK経路。HGFのMet受容体チロシンキナーゼへの結合によって活性化される)。ヒトの上記リガンドタンパク質が好ましいが、H1650細胞に対してヒト受容体を刺激する活性も持ち、かつEMTを誘発するような代替的な動物のリガンドタンパク質が存在する場合(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、ブタなどからの)にはこれも使用しうる。
[38]PI3KおよびMAPK経路を活性化する受容体チロシンキナーゼには、例えば、IGF1-R、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGF受容体1-4のヘテロ二量体、RON、EGFR、HER-4、HER受容体1-4のヘテロ二量体、VEGFR-1(Flt-1)、VEGFR-2(Flk-1/KDR)、VEGFR-3(Flt-4)、およびPDGFR(αおよびβ受容体のホモ二量体およびヘテロ二量体)を含む。こうして、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発しうる追加的なリガンドの例には、IGF-1、IGF-2、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF8、FGF10、マクロファージ刺激タンパク質(MSP、RON受容体リガンド)、ニューレグリン(NRG-1(ヘレグリン)、NRG-2、NRG-3、NRG-4)、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PDGF-CC、およびPDGF-DDを含むが、ここにおいて十分な受容体レベルが存在する。
[39]本明細書で説明した発明の任意の方法または細胞調製物において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、オンコスタチン-M受容体(OSMR:NCIB GeneID: 9180)に結合し、それを活性化する一つのリガンドに加え、TNFα受容体(TNFRSF1A、別名CD120aまたはTNF-R1:NCIB GeneID: 7132)と結合し、それを活性化する一つのリガンドを含むか、またはTNFα受容体と結合し、それを活性化させる一つのリガンドに加え、TGFβ受容体と結合し、それを活性化させる一つのリガンドを含みうる。例えば、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、オンコスタチン-M(OSM:NCIB GeneID: 5008)にTNFα(腫瘍壊死因子α:NCIB GeneID: 7124)を加えたもの、またはTGFβにTNFαを加えたものとしうる。他の実施例において、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、オンコスタチンMをその受容体に結合することで活性化したシグナル伝達経路を活性化する受容体に結合するタンパク質リガンド(例えば、オンコスタチン-M受容体に結合し、それを活性化する一つのリガンド(例えば、オンコスタチンM)、またはオンコスタチンMのその受容体への結合によって活性化されるように同一のシグナル伝達経路を活性化する別の受容体に結合するタンパク質リガンド(すなわちJAK-STAT経路))、およびある受容体に結合し、HGFをその受容体に結合することで活性化する同一のシグナル伝達経路を活性化する一つのリガンドを含みうる。他の実施例において、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TGFβをその受容体に結合させることで活性化したシグナル伝達経路を活性化させる受容体に結合したタンパク質リガンド(例えば、TGFβ受容体に結合し、それを活性化する一つのリガンド(例えば、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3など)、またはTGFβのその受容体への結合によって活性化されるように同一のシグナル伝達経路を活性化する別の受容体に結合するタンパク質リガンド(すなわち、JAK-STAT経路))、およびある受容体に結合し、HGFをその受容体に結合することで活性化する同一のシグナル伝達経路を活性化する一つのリガンドを含みうる。ヒトの上記リガンドタンパク質が好ましいが、H1650細胞に対してヒト受容体を刺激する活性も持ち、かつEMTを誘発するような代替的な動物のリガンドタンパク質が存在する場合(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、ブタなどからの)にはこれも使用しうる。
[40]本明細書で開示した特異的なリガンドによってH1650細胞においてEMTを誘発することにより、EMTを誘発し、また従って抗癌剤の同定について異なる作用機序を持つことができ、また従って相乗的な方法で作用しうる特異的経路を標的化することが可能となる。本書で開示した二重リガンド駆動のEMTモデルおよびそれに依存する方法は、EMT誘発のためには両方のリガンドに全面的に依存する。このような二重リガンド製剤によるEMT誘発はこれまでに説明されておらず、また新しい抗癌剤の同定のためのそれらの使用も、単一リガンドEMT誘発システムまたはその他の二重リガンドシステムによって同定されるものとは異なる作用機序を持つ薬剤の同定につながりうる。同様に、そのEMT誘発を高めるもののそれ自体ではH1650細胞での有意なEMT誘発能力を備えていない薬剤(例えばTGF-β、TNFα、またはOSM)と、本書で同定した特定の単一リガンドインデューサ(すなわち、HGFまたはEGF)を組み合わせることによるH1650細胞でのEMTの誘発も、単一リガンドEMT誘発システムまたは二重リガンドシステムのどちらかによって同定されたものとは異なる作用機序を持つ抗癌剤の同定につながりうる。
[41]本書にリストしたNCBI GeneID番号は、NCBI Entrez遺伝子データベース記録(国立生物工学情報センター(NCBI)、米国国立医学図書館(8600 Rockville Pike, Building 38A, Bethesda, MD 20894)、インターネットアドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/)による遺伝子の重複のない識別子である。これらは本明細書において、出願の他の場所で名称および/または頭字語で言及されている遺伝子産物を明瞭に同定するために使用される。こうして同定された遺伝子により発現されたタンパク質は、本発明の方法で使用しうるタンパク質を表し、またNCBIデータベース(例えば、GENBANK(登録商標))記録に開示されている異なるアイソフォームを含めたこれらのタンパク質の配列を参照によって本明細書に組み込む。
[42]本発明の任意の方法または調製物における上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料は、例えば単層培養中の細胞(例えば、組織培養プレートまたは皿中の細胞、例えば96ウェルプレート)、三次元培養中の細胞、例えばマトリゲル(商標) 3D培養、スフェロイド培養、または軟寒天培養(Kim, J.B., (2005) Seminars in Cancer Biology 15:365-377; Sutherland, R.M., (1988) Science 240:177-184; Hamilton, G. (1998) Cancer Letters, 131:29-34)、または生体内の細胞、例えば腫瘍の異種移植片でありうる。「同一の細胞サンプル」を必要とする本明細書で説明した方法において、これは本質的に同一数の細胞を持ち、同一条件で培養している細胞試料を意味する。例えば、凡そ同一数の細胞を持つ同一の組織培養皿、または同じかまたは類似した大きさの腫瘍の異種移植片である。
[43]その発現または活性のレベルが腫瘍細胞のEMTステータスを示す多くの生物マーカーが知られている(例えば、米国特許出願公開2007/0212738、米国特許出願第60/923,463号、米国特許出願第60/997,514号を参照)。このようなマーカーは、特定の段階のEMTとの特徴的関連から、上皮系または間葉系として分類される傾向にある。特徴的生物マーカーとしては、例えば、タンパク質、コード化mRNA、遺伝子プロモーターの活性、転写リプレッサーのレベル、またはプロモーターのメチル化が考えられる。本明細書で説明した任意の方法において、その発現レベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーは、上皮性細胞生物マーカーでありうる。上皮性細胞生物マーカーには、例えばE-カドヘリン、サイトケラチン8、サイトケラチン18、P-カドヘリンまたはerbB3を含む。追加的な上皮性細胞生物マーカーは、Brk、γ-カテニン、α1-カテニン、α2-カテニン、α3-カテニン、コネキシン31、プラコフィリン3、ストラティフィン1、ラミニンα-5、およびST14を含む。本書で説明した任意の方法において、その発現レベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーはまた、間葉系細胞生物マーカーでもありうる。間葉系細胞生物マーカーには、例えば、ビメンチン、フィブロネクチン、Nカドヘリン、zeb1、twist、FOXC2またはSnailを含む。さらなる間葉系細胞生物マーカーには、フィブリリン-1、フィブリリン-2、コラーゲンα2(IV)、コラーゲンα2(V)、LOXL1、ニドゲン、C11orf9、テネイシン、チューブリンα-3、およびエピモルフィンが含まれる。さらに、本明細書で説明した、あるいはこれから説明する当技術分野でよく知られているその他の任意の上皮系または間葉系細胞生物マーカーを、本明細書で説明した発明の方法で使用しうる。本明細書で説明した任意の方法において、複数の生物マーカーレベルの判定をEMTステータスの評価に使用することもでき、潜在的により信頼できる評価が提供される。例えば、上皮系および間葉系の生物マーカーレベルを評価することができ、個々についての相互的な変化はEMTが起こったことの内部的な確認を提供する(例えば、適切な生物マーカーの対には、例えばE-カドヘリン/ビメンチンが含まれる)。代替的な実施形態において、上皮系生物マーカーには、上皮性ケラチン1-28および71-80から選択される一つ以上のケラチンが含まれ、また間葉系生物マーカーはビメンチンであるが、ここで、類似したレベルでの上皮系および間葉系の生物マーカーの共発現は、間葉様腫瘍細胞を示す(米国特許出願第60/923,463号を参照)。本明細書で説明した発明の任意の方法で使用するとき、上皮性ケラチン1-28および71-80は、本明細書の表2にリストした全てのケラチンを含む。後者の方法の一つの実施形態において、上皮性ケラチンは、腫瘍細胞によって発現されたケラチン生物マーカーのうち全てまたは過半数(すなわち50%以上)を検出する方法を使用して(例えば、多重特異的または汎特異的抗体を使用することで)評価される。上皮性ケラチン生物マーカーの生物マーカーレベルが判定される上記の方法の別の実施形態において、生物マーカーは、ケラチン8および/またはケラチン18を含む。
[44]「上皮系および間葉系の生物マーカーの類似したレベルでの同時発現」という用語は、本書で上皮性ケラチンおよび間葉系生物マーカービメンチンの同時発現を判定するという文脈で、間葉系生物マーカーレベルの上皮系生物マーカーレベルに対する比率が約10:1〜約1:10の範囲にあることを意味する(比較可能な条件下で、各生物マーカーが、例えば同一親和性の抗体、同一長の核酸プローブ、同一の検出方法などを使用して検定されたものと仮定する)。
[45]そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを判断する工程を含む、本明細書で説明した任意の方法の他の実施形態において、生物マーカーは、腫瘍細胞がEMTを起こすときに変化する遺伝子プロモーター活性でありうる。このようなプロモーター活性は、プロモーター-レポーター構築物を腫瘍細胞に組み込んでレポーター活性を測定することで簡単に評価される。一つの実施形態において、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性は、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物をH1650細胞に含めて、前記プロモーターレポーター作用がレポーター遺伝子のレベルまたは活性により監視できるようにすることによって評価される。例えば、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物は、E-カドヘリンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼでありうる。代替的な実施形態において、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性は、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子の構築物をH1650細胞に含めることで、前記プロモーターレポーター作用がレポーター遺伝子のレベルまたは活性によって監視できるようにすることによって評価される。例えば、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子の構築物は、ビメンチンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼとしうる。プロモーター-レポーター遺伝子の構築物は、H1650細胞に安定した組み換え細胞株として永久的に組み込むか、または核酸構築物を細胞に移動するための任意の標準技法を用いて過渡的に発現させることもできる(例えば、トランスフェクション、エレクトロポーレーション)。いくつかの生物マーカーを同時に監視するために(例えば、E-カドヘリンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼとビメンチンプロモーター-ウミシイタケルシフェラーゼの構築物)、腫瘍細胞がEMTを起こした際に、E-カドヘリン遺伝子の抑制とビメンチン遺伝子の誘導を同時に監視するために、複数のプロモーター-レポーター遺伝子構築物を採用することもできる。
[46]本発明は、上皮間葉転換を起こす腫瘍細胞を阻害する薬剤を同定する方法であって、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が間葉様H1650の細胞増殖を阻害するかどうかを判断すること、およびかくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む方法も提供する。一つの実施形態において、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。この方法の代替的な実施例には、試験薬が上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害するかどうかを判断する工程の後で、間葉様H1650腫瘍細胞増殖を阻害する薬剤が、上皮性のH1650腫瘍細胞増殖も阻害するかどうか、このようにして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を特異的に阻害する薬剤であるかどうかの判断をする追加的な工程を含む。上記の方法の一つの実施形態において、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤が、前記腫瘍細胞のアポトーシスを刺激することによりそのような阻害をしていることが判断される。上記の方法の一つの実施形態において、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤が、前記腫瘍細胞の増殖を阻害することによりそのような阻害をしていることが判断される。
[47]本発明は、間葉様腫瘍細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤を同定する方法も提供し、これは上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をH1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が試料中の間葉様H1650細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こすかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していない同一の間葉様H1650細胞サンプルにおける同じ生物マーカーのレベルと比較することにより判断すること、およびかくして、前記試験薬が、間葉様腫瘍細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤であるかどうかを判断することを含む。一つの実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。
[48]本発明は、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する化学物質を含む組成物を調製する方法も提供し、これは、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、前記試料をH1650細胞において上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること、試料中の腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、前記試験薬と接触していないH1650細胞における同一試料での同じ生物マーカーのレベルと比較すること、およびかくして、試験薬が腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断することによって判断すること、ならびにそのように同定された試験薬を担体と混合させて、それにより前記組成物を調製することを含む。
[49]本発明は、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する化学物質を含む組成物を調製する方法も提供しており、これは、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をH1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が間葉様H1650の細胞増殖を阻害するかどうかを判断すること、およびかくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤であるかどうかを判断すること、ならびにそのように同定された試験薬を担体と混合させて、それにより前記組成物を調製することを含む。
[50]本発明は、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する化学物質を含む組成物を調製する方法も提供し、これは、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が試料中の間葉様H1650細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こすかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していない同一の間葉様H1650細胞サンプルにおける同じ生物マーカーのレベルと比較することにより判断すること、およびかくして、前記試験薬が間葉が上皮転換を起こすように間葉様腫瘍細胞を刺激する薬剤であるかどうかを判断すること、ならびにそのように同定された試験薬を担体と混合させて、それにより前記組成物を調製することを含む。
[51]本発明は、抗癌剤の同定で使用するための間葉様腫瘍細胞調製物も提供し、ここで上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させることを含むプロセスによって前記腫瘍細胞調製物が準備され、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFであり、またH1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。
[52]本書で説明した任意の方法について、試験薬は、低分子(凡そ5000ダルトン未満の分子量)および高分子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質、核酸、糖タンパク質、錯体炭水化物、合成または天然の重合体など)を含めた、任意の化学物質とすることができる。こうして、試験薬は、例えば、コンビナトリアルライブラリ、定義済み化学物質、ペプチドおよびペプチドミメティクス、オリゴヌクレオチドおよび天然物ライブラリ、アプタマー、ならびにディスプレイ(例えば、ファージ・ディスプレイ・ライブラリ)や抗体生成物などその他の実体から選択される。
[53]本発明は、腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤を同定する方法も提供し、これは、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること(ここで細胞が免疫不全動物の膵臓に同所的に移植される)、試料中の腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルと、試験薬と接触していないH1650細胞の同一試料における同じ生物マーカーのレベルと比較することによって判断すること、およびこうして、試験薬が腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む。この方法の一つの実施形態において、免疫不全動物はヌードマウスである。別の実施態様において、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーは、上皮系細胞生物マーカーである。上皮系細胞生物マーカーは、例えば、E-カドヘリン、CDH1プロモーター活性、サイトケラチン8、サイトケラチン18、P-カドヘリン、またはerbB3としうる。別の実施形態において、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーは、間葉系細胞生物マーカーである。間葉系細胞生物マーカーは、例えば、ビメンチン、フィブロネクチン、Nカドヘリン、CDH1メチル化、zeb1、twist、FOXC2またはSnailでありうる。
[54]本発明は、免疫不全動物の膵臓に同所的に移植された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を含む、抗がん剤の同定で使用する動物モデルも提供する。一つの実施形態において、免疫不全動物は、ヌードマウス(別名Foxn1nuマウス)である。
[55]一つの実施形態においてH1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するように設計された上皮腫瘍細胞株H1650が関与する、本瞑さし保で説明した任意の方法または細胞調製物について、細胞には、同様に誘導的に発現できる、プロモーター-レポーター遺伝子構築物も含まれるが、これは前記プロモーターレポーター活性がレポーター遺伝子の発現レベルまたは活性によって監視でき、またこうして、上皮間葉転換を刺激するタンパク質の誘導が成功したかどうかを簡単に評価するために使用できるようにするためである。このような実施形態の一例において、レポーター遺伝子は、ホタルまたはウミシイタケルシフェラーゼ用の遺伝子である。レポーターのレベルの評価は、例えば、H1650細胞のEMT誘導の範囲、およびEMTを起こした細胞の位置を簡単に監視するために使用できる。こうして、例えば、原発腫瘍から移動した(つまり転移性の)生体内の細胞は、このようなレポーター遺伝子を監視することにより、簡単に追跡できる。こうして、本発明は、腫瘍細胞が上皮間葉転換(および転移)を起こすのを阻害する薬剤を識別する方法を提供するが、これには、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質と、レポーター遺伝子産物(例えば、ホタル由来ルシフェラーゼ)の両方を誘導的に発現するように設計され、免疫不全状態の動物に腫瘍の異種移植片を形成できるようにした上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と生体内で接触させること、改変H1650細胞での上皮間葉転換を刺激する前記タンパク質の発現およびレポーター遺伝子産物の発現を誘導する化合物と前記試料を接触させること、前記試験薬が試料中の腫瘍細胞が上皮間葉転換(および転移)を起こすのを阻害するかどうかについて、試料腫瘍細胞の原発腫瘍からの移動範囲(例えば、レポーター遺伝子生成物の画像分析による)を、試験薬と接触していない同一の改変H1650細胞試料の移動範囲と比較することで判断すること、およびかくして、試験薬が腫瘍細胞の上皮間葉転換(および転移)を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む。生体内でのEMT転換に由来する細胞は、外科的分離および、例えば本書で、または米国特許出願公開2007/0212738号、米国特許出願第60/923,463号、または米国特許出願第60/997,514号で説明した生物マーカーを使用して、免疫組織化学または原位置でのハイブリダイゼーションにより検出することもできる。
[56]上述の方法の一つの実施形態において、誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質はSnailである。この方法の別の実施形態において、誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質はZeb-1である。この方法の別の実施形態において、誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質はHGFである。代替的な実施形態において、誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質は、EMTを高める一つ以上のその他のタンパク質と共発現させてもよい(例えば、EGF、TGF-β、TNFα、OSM)。改変H1650において誘導的に発現してEMTを促進しうるタンパク質をコードするさらなるEMT起因遺伝子は、限定はされないが、共発現したTNFαおよびOSM、共発現したTNFαおよびTGF-β、構成的に活性のcMET受容体、活性化したSrc キナーゼ(例えばv-SrcまたはSrc Y530F 突然変異体)、EGF、形質転換増殖因子-α(TGF-α)、ヘパリン-結合EGF様成長因子(HB-EGF)、アンフィレギュリン(AREG)、ベタセルリン(BTC)、エピレグリン(EREG)、およびエピゲン(EPGN)を含む。同様に、誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換刺激するタンパク質が関与する、本明細書で説明したその他の任意の方法または細胞調製物において、タンパク質は上記に説明した例のうちどれでもよい。
[57]これらの方法のうち一つの実施形態において、Tet調節プロモーターは、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するために使用されるが、例えば、Tet-onシステムである。この方法の一つの実施形態において、改変されたH1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質の発現を誘導する化合物は、ドキシサイクリンである。使用しうるその他の誘導物質には、限定はされないが、テトラサイクリンおよびアンヒドロテトラサイクリンを含む。同様に、誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質が関与する、本明細書で説明したその他任意の方法または細胞調製物において、タンパク質を誘導的に発現させるために使用するプロモーターおよびインデューサ化合物は、上記に説明した例のうちどれでもよい。誘導システムは、限定はされないが、テトラサイクリン調節したプラスミド、例えば、Tet-onおよびTet-offシステムを含む。
[58]上記の方法において、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーは、例えば、上皮性細胞生物マーカー(例えば、E-カドヘリン、サイトケラチン8、サイトケラチン18、P-カドヘリンまたはerbB3)、または上皮系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性である。一つの実施形態において、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性は、ヒト上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物を改変H1650細胞に含めて、前記プロモーターレポーター作用がレポーター遺伝子の発現レベルまたは活性により監視できるようにすることによって評価される。一つの実施形態において、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物は、ヒトE-カドヘリンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼである。使用しうる上皮性のプロモーターの追加的な例には、ヒトELF3(すなわち、E74様因子3(ets領域転写因子、上皮性特異的)、GeneID: 1999)などの遺伝子のプロモーターを含む。他の実施形態において、ヒト上皮系細胞生物マーカーにとって一意で(Savagner, P. et al. (1994) Mol Biol Cell. 5(8):851-862; Oltean, S. et al. (2006) Proc Natl Acad Sci U S A. 103(38):14116-14121; Ghigna, C. et al. (2005) Mol Cell. 20(6):881-890; Bonano, V.I. et al. (2007) Nat Protoc. 2(9):2166-2181)、かつEMT後には作動しないRNA転写スプライシングメカニズムをEMTステータスのマーカーとして利用できる。例えば、このような上皮特異的スプライシングにとって必要な配列を、活性ルシフェラーゼが上皮状態でのみ発現されるように、H1650細胞に組み込まれたプロモーター-ルシフェラーゼ構築物に含めることによって(例えば、CMVプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼ構築物)、EMTの誘発を、ルシフェラーゼ発現または活性の減少によって簡単に監視できる。他の実施形態において、ヒト上皮細胞で特異的に発現されるmiRNA(例えば、Hurteau, G. J. et al. (2007) Cancer Research 67:7972-7976; Christoffersen, N.R. et al. (2007) RNA 13:1172-1178; Shell, S. et al (2007) Proc Natl. Acad. Sci. 104(27):11400-11405を参照)は、相補核酸配列を含む転写物の翻訳を劣化または減少させるが、EMTステータスのマーカーとして利用できる。例えば、活性ルシフェラーゼが上皮状態では発現されないように、このようなmiRNAに対して相補的な配列をH1650細胞に組み込まれたプロモーター-ルシフェラーゼ構築物に含めることによって(例えば、CMVプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼ構築物)、EMTの誘発を、ルシフェラーゼ発現または活性の増加により簡単に監視できる。同様に、誘導的に発現し、H1650細胞において上皮間葉転換を刺激するタンパク質が関与する、本明細書で説明したその他の任意の方法または細胞調製物において、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーは、上記に説明した例のうちどれでもよい。
[59]上記の方法において、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーは、例えば、間葉系細胞生物マーカー、例えば、ビメンチン、フィブロネクチン、Nカドヘリン、zeb1、twist、FOXC2またはSnail、または間葉系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性である。一つの実施形態において、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性は、ヒト間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物を改変H1650細胞に含めて、前記プロモーターレポーター作用がレポーター遺伝子の発現レベルまたは活性により監視できるようにすることによって評価される。一つの実施形態において、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物は、ヒトビメンチンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼ構築物である。使用できる間葉プロモーターの追加的な例には、S100A4(すなわち、S100カルシウム結合タンパク質A4(別名FSP1)、GeneID: 6275)、SPARC(すなわち、分泌されたタンパク質、酸性、システインに富む(オステオネクチン)、GeneID: 6678)、IL-11(すなわち、インターロイキン11、GeneID: 3589)、PCOLCE2(すなわち、プロコラーゲンCエンドペプチターゼエンハンサー2、GeneID: 26577)、COL6A2(すなわち、コラーゲン、タイプVI、α 2、GeneID: 1292)、TFPI2(すなわち、組織因子経路阻害剤2)、GeneID: 7980)、FBN1(すなわち、フィブリリン1、GeneID: 2200)、Zeb1(すなわち、ジンクフィンガーE-box 結合ホメオボックス1、GeneID: 6935)、およびCHST2(すなわち、炭水化物(N-アセチルグルコサミン-6-O)スルホ基転移酵素2、GeneID: 9435)といったヒト遺伝子に由来するプロモーターを含む。他の実施形態において、ヒト間葉細胞にとって一意で(Savagner, P. et al. (1994) Mol Biol Cell. 5(8):851-862; Oltean, S. et al. (2006) Proc Natl Acad Sci U S A. 103(38):14116-14121; Ghigna, C. et al. (2005) Mol Cell. 20(6):881-890; Bonano, V.I. et al. (2007) Nat Protoc. 2(9):2166-2181)、かつEMTの前には作動しないRNA転写スプライシングメカニズムを、EMTステータスのマーカーとして利用できる。例えば、このような間葉特異的スプライシングにとって必要な配列を、活性ルシフェラーゼが間葉状態でのみ発現されるように、H1650細胞に組み込まれたプロモーター-ルシフェラーゼ構築物に含めることによって(例えば、CMVプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼ構築物)、EMTの誘発を、ルシフェラーゼ発現または活性の増加により簡単に監視できる。他の実施形態において、ヒト間葉系細胞生物マーカーで特異的に発現されるmiRNA(例えば、Hurteau, G. J. et al. (2007) Cancer Research 67:7972-7976; Christoffersen, N.R. et al. (2007) RNA 13:1172-1178; Shell, S. et al (2007) Proc Natl. Acad. Sci. 104(27):11400-11405を参照)は、相補核酸配列を含む転写物の翻訳を劣化または減少させるが、EMTステータスのマーカーとして利用できる。例えば、活性ルシフェラーゼが間葉の状態では発現されないように、このようなmiRNAに対して相補的な配列をH1650細胞に組み込まれたプロモーター-ルシフェラーゼ構築物に含めることによって(例えば、CMVプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼ構築物)、EMTの誘発を、ルシフェラーゼ発現または活性の減少により簡単に監視できる。同様に、誘導でき似発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質が関与する、本書で説明したその他の任意の方法または細胞調製物において、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーは、上記に説明した例のうちどれでもよい。
[60]生物マーカープロモーター活性の監視のための改変H1650細胞において生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物が関与する、本書で説明した任意の方法または細胞調製物において、EMTステータスを評価するために、複数の生物マーカーが同時に監視できるように、複数の生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物を採用することもできる。例えば、一つの実施形態において、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物および間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物はどちらも、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター活性の減少および間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター活性の増加がEMT中でどちらも監視できるように使用される。例えば、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物は、E-カドヘリンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼとすることができ、また間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物は、ビメンチンプロモーター-ウミシイタケルシフェラーゼ構築物とすることができる。独立的に監視可能な2つの異なるレポーター遺伝子を使用することで(例えば、異なる性質の波長の発光に関与する発光反応に関係する生成物を生成する2つのルシフェラーゼ。例えば、Hawkins, E.H. et al.(2002) Dual-GloTM Luciferase Assay System: Convenient dual-reporter measurements in 96- and 384-well plates. Promega Notes 81, 22-6; Nieuwenhuijsen BW. et al. (2004) J Biomol Screen. 8, 676-84を参照)、両方のプロモーターを同時に監視できる。同様に、本明細書で上記に説明した、上皮または間葉特異的なmiRNAまたはスプライシングメカニズムに関与する2つ以上の生物マーカーは、独立的に監視できる2つの異なるレポーター遺伝子を使用することで同時に監視できる。
[61]レポーター遺伝子発現レベルを評価することにより生物マーカープロモーター活性を監視するための、改変H1650細胞内の生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物が関与する、本明細書で説明した任意の方法または細胞調製物において、レポーター遺伝子は、発現されたタンパク質または酵素活性を測定することによりそのレベルが簡単に判定できる、タンパク質を発現する任意の異種遺伝子でありうる。適切なレポーター遺伝子には、ホタル(ホチヌス・ピラリス)ルシフェラーゼ、ウミシイタケ(レニラ属・ベゴニア・レニフォルミス)ルシフェラーゼ、ガウシア(ガウシア・プリンケプス)ルシフェラーゼ、緑蛍光タンパク質(GFP)、赤蛍光タンパク質(RFP)など(例えば、Hawkins, E.H. et al.(2002) Dual-GloTM Luciferase Assay System: Convenient dual-reporter measurements in 96- and 384-well plates. Promega Notes 81, 22-6; Nieuwenhuijsen BW. et al. (2004) J. Biomol. Screen. 8, 676-84; Verhaegen M. and Christopoulos T.K. (2002) Anal. Chem., 74:4378-4385; Tannous, B.A., et al. (2005) Mol. Ther., 11:435-443; Hoffmann, R.M. (2004) Acta Histochemica 106(2):77-87); Hoffmann, R.M. (2008) Methods in Cell Biol. 85:485-495を参照)を含む。ガウシアルシフェラーゼは、細胞から分泌されてそこで発現されるタンパク質であり、それゆえ、本発明の任意の方法において、培養細胞の培地に、または血液、またはその他の生物体液に、生体内(例えば、腫瘍異種移植片)で増殖する細胞から分泌されるレポーター活性を監視することができる潜在性がある。
[62]上述の方法の一つの実施形態において、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料は、例えば、動物において成長する異種移植片(例えば、免疫不全のマウスまたはラット)などの生体内の試料である。同様に、誘導的に発現し、H1650細胞において上皮間葉転換を刺激するタンパク質が関与する本書で説明したその他の任意の方法または細胞調製物において、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料は、上記に説明した生体内の試料でありうる。
[63]本発明は、上皮間葉転換を起こす腫瘍細胞を阻害する薬剤を同定する方法も提供し、これは、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、前記タンパク質の発現を誘導することによって、前記細胞において上皮間葉転換が誘発される化合物と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が間葉様H1650の細胞増殖を阻害するかどうかを判断すること、および、かくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む。この方法の代替的な実施形態には、試験薬が上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害するかどうかを判断する工程の後で、間葉様H1650腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤が上皮性のH1650腫瘍細胞の増殖も阻害するかどうか、、かくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を特異的に阻害する薬剤であるかどうかの判断をする追加的な工程を含む。上記の方法の一つの実施形態において、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤が、前記腫瘍細胞のアポトーシスを刺激することによりそのような阻害をしていることが判断される。上記の方法の一つの実施形態において、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤が、前記腫瘍細胞の増殖を阻害することによりそのような阻害をしていることが判断される。
[64]本発明は、間葉様腫瘍細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤を同定する方法も提供しており、これは、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、前記タンパク質の発現を誘導することによって、前記細胞において上皮間葉転換が誘発される化合物と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が試料中の間葉様H1650細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こすかどうか、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを試験薬と接触していない同一の間葉様H1650試料細胞における同じ生物マーカーのレベルと比較することにより判断すること、およびこうして、試験薬が間葉様腫瘍細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤であるかどうかを判断することを含む。
[65]本発明は、抗がん剤の同定で使用するための間葉様腫瘍細胞調製物も提供しており、ここで前記腫瘍細胞調製物は、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を含む。一つの実施形態において、腫瘍細胞調製物には、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性が、レポーター遺伝子のレベルまたは活性を監視することにより評価できるように、改変H1650細胞内の間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物も含まれる。一つの実施形態において、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物は、ビメンチンプロモーター-ホタルルシフェラーゼ構築物である。別の実施形態において、腫瘍細胞プレパラートには、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性が、レポーター遺伝子のレベルまたは活性を監視することにより評価できるように、改変H1650細胞内の上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物が含まれる。一つの実施形態において、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物は、E-カドヘリンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼである。上記の細胞調製物において、誘導的に発現してH1650細胞内の上皮間葉転換を刺激するタンパク質は、このような細胞調製物(例えば、Snail、Zeb1など)を利用する上記に説明した方法で使用するために同定された任意のものとしうる。この細胞調製物の一つの実施形態において、H1650細胞内の上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現(例えば、ドキシサイクリン、またはテトラサイクリンを使用)するために、Tet調節プロモーターが使用される。上記の実施形態において、生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物は、改変したH1650細胞により安定して発現される。したがって、本発明は、抗がん剤の同定に使用するために、上皮間葉転換を刺激するタンパク質の誘導前の上皮性のH1650腫瘍細胞調製物と、上皮間葉転換を刺激するタンパク質の誘導後の間葉様腫瘍細胞試料の両方を提供する。本書に記載されている通り、これらの細胞調製物は、どちらかの細胞タイプを阻害する薬剤を同定したり、EMTを阻害するかまたはMETを刺激する薬剤を発見するためのスクリーニング試験薬用に使用できる。
[66]本発明の方法の文脈において、腫瘍細胞により発現された上皮系または間葉系の生物マーカーには、腫瘍細胞の変化状態を示す分子および細胞のマーカーが含まれうる。好ましい実施形態において、生物マーカーは、個別のマーカータンパク質であるか、またはそのコード化mRNA、腫瘍細胞の特定の変化状態についての特性、すなわち、上皮または間葉の特性を示す腫瘍細胞である。代替的な実施形態において、一定の状況での生物マーカーは、腫瘍細胞内に上皮または間葉のいずれかの状態の特性である細胞の高分子により生成される特性的形態パターンでありうる。こうして、細胞の形態学的解析を使用して腫瘍細胞の上皮または間葉のステータスに関する情報を提供できる。追加的な一つの実施形態において、腫瘍細胞の移行状態を示す生物マーカーは、E-カドヘリン遺伝子(CDH1)プロモーターのメチル化である。CDH1プロモーターメチル化は、腫瘍細胞がEMT転換を起こしたことを示す。
[67]
1 NCBI GeneID番号は、NCBI Entrez遺伝子データベース記録(国立生物工学情報センター(NCBI)、米国国立医学図書館(8600 Rockville Pike, Building 38A, Bethesda, MD 20894)、インターネットアドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/)による生物マーカー遺伝子の重複のない識別子である。
2 NCBI RefSeq(基準配列)は、生物マーカー遺伝子により発現した配列の一例である。
[68]
1 NCBI GeneID番号は、NCBI Entrez遺伝子データベース記録(国立生物工学情報センター(NCBI)、米国国立医学図書館(8600 Rockville Pike, Building 38A, Bethesda, MD 20894)、インターネットアドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/)による生物マーカー遺伝子の重複のない識別子である。
2 NCBI RefSeq(基準配列)は、生物マーカー遺伝子により発現した配列の一例である。
3 ケラチンについて言及する際には、新しく合意された命名法が本書では使用されている(Schweizer, J. et al. (2006) J. Cell Biol. 174(2):169-174を参照)。これらのタンパク質の従来の名称は、後者の文献とヒト中間系フィラメントデータベース(http://www.interfil.org/index.php)にある。N.B.上皮性ケラチンまたはサイトケラチンは、中間系フィラメントケラチンである。「ケラチン」および「サイトケラチン」という用語は、本書では同義で使用される。本書のテキストで特定のケラチンに言及するとき、標準ケラチン指定における「K」(表2にあるとおり)は、一般に省略される(例えば、ケラチンK8 = ケラチン8)。
[69]表1には、本明細書で説明した発明の方法の実施にあたり使用できる上皮系または間葉系の分子生物マーカーの例をコードするをリストしている。上皮系または間葉系の分子生物マーカーには、これらの遺伝子によって発現された任意の産物(その変異体、例えば発現されたmRNAまたはタンパク質、スプライスバリアント、同時翻訳および翻訳後の修飾タンパク質、多相バリアントなどを含めたもの)が含まれうる。一つの実施形態において、生物マーカーは、胚性EDB+フィブロネクチン、すなわちフィブロネクチン1遺伝子により発現されたスプライスバリアントである(Kilian, O. et al. (2004) Bone 35(6):1334-1345)。この胎児性フィブロネクチンを測定することによる考えられる利点は、間葉様腫瘍を周囲の間質性組織から簡単に区別できることである。表2は、本明細書に記述した発明の方法の一定の実施形態の実施にあたって使用できる分子生物マーカーの例をコードする遺伝子をリストしており、ここで、上皮系細胞生物マーカーと間葉系生物マーカービメンチンの類似したレベルでの共発現は、間葉様の細胞であることを示す。分子生物マーカーには、これらの遺伝子によって発現された任意の産物(その変異体、例えば、発現されたmRNAまたはタンパク質、スプライスバリアント、同時翻訳および翻訳後の修飾タンパク質、多相バリアントなどを含めたもの)が含まれうる。
[70]本明細書で説明した発明の任意の方法の別の実施形態において、その方法で利用される間葉系生物マーカーは、ヒト転写リプレッサであるSnail(NCBI GeneID 6615)、Zeb1(NCBI GeneID 6935)、twist(NCBI GeneID 7291)、Sip1(NCBI GeneID 8487)、およびSlug(NCBI GeneID 6591)から選択される。
[71]本発明の方法の別の実施形態において、間葉系生物マーカーは、その転写が腫瘍細胞におけるEMTの結果として阻害される遺伝子プロモーターのメチル化である。この方法の文脈において、高レベルの腫瘍細胞間葉系生物マーカーは基本的に簡単に検出可能なプロモーターのメチル化を意味し(例えば、プロモーターメチル化部位に由来するメチル化特異的なPCR増幅核酸生成物の検出の間の強いシグナル)、その一方で、低レベルの腫瘍細胞間葉系生物マーカーは基本的に検出可能なプロモーターのメチル化がないかまたは低いことを意味する(例えば、プロモーターメチル化部位に由来するメチル化特異的なPCR増幅核酸生成物の検出の間の、まったくないか比較的弱いシグナル)。この方法の一つの実施形態において、その転写が腫瘍細胞におけるEMTの結果として抑制される遺伝子は、E-カドヘリン遺伝子(すなわちCDH1、NCBI GeneID 999)である。この方法の別の実施形態において、その転写が腫瘍細胞におけるEMTの結果として抑制される遺伝子は、γ-カテニン 遺伝子(すなわちNCBI GeneID 3728)である。この方法の別の実施形態において、その転写が腫瘍細胞におけるEMTの結果として抑制される遺伝子は、α-カテニン遺伝子(例えば、NCBI GeneID 1495、1496、または29119)である。この方法の別の実施形態において、その転写が腫瘍細胞におけるEMTの結果として抑制される遺伝子は、サイトケラチン遺伝子(例えば、NCBI GeneID 3856(ケラチン8)または3875(ケラチン18))である。
[72]本発明の任意の方法で使用可能な追加的な上皮性マーカーの例には、ホスホ-14-3-3エプシロン、14-3-3 ガンマ(KCIP-1)、14-3-3シグマ(ストラティフィン)、14-3-3 ゼータ/デルタ、ホスホ-セリン/スレオニンホスファターゼ2A、4F2hc(CD98抗原)、アデニンヌクレオチドトランスロケーター2、アネキシンA3、ATP合成酵素β鎖、ホスホ-インスリン受容体基質p53/p54、Basigin(CD147抗原)、ホスホ-CRK結合基質(p130Cas)、Bcl-X、ホスホ-P-カドヘリン、ホスホ-カルモジュリン(CaM)、カルパイン-2触媒サブユニット、カテプシンD、コフィリン-1、カルパイン低分子サブユニット1、カテニンβ-1、カテニンδ-1(p120カテニン)、シスタチンB、ホスホ-DAZ関連タンパク質1、カルボニルレダクターゼ[NADPH]、Diaphanous関連フォルミン1(DRF1)、デスモグレイン-2、「伸長因子1-δ、ホスホ-p185erbB2、Ezrin(p81)、ホスホ-局所接着キナーゼ1、ホスホ-p94-FER(c-FER)、フィラミンB、ホスホ-GRB2関連結合タンパク質1、Rho-GDI α、ホスホ-GRB2、GRP 78、グルタチオンS-転移酵素P、3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素、HSP 90-α、HSP70.1、eIF3 p110、eIF-4E、白血球エラスターゼ阻害剤、インポーチン-4、インテグリンα-6、インテグリンβ-4、ホスホ-サイトケラチン17、サイトケラチン19、サイトケラチン7、カゼインキナーゼI、α、タンパク質キナーゼC、δ、ビルビン酸キナーゼ、アイソザイムM1/M2、ホスホ-Erbin、LIMおよびSH3領域タンパク質1(LASP-1)、4F2lc(CD98軽鎖)、L-乳酸脱水素酵素A鎖、ガレクチン-3、ガレクチン-3結合タンパク質、ホスホ-LIN-7 相同体C、MAP(APC-結合タンパク質EB1)、マスピン前駆物質(プロテアーゼ阻害剤5)、ホスホ-METチロシンキナーゼ(HGF受容体)、混合血統白血病タンパク質2、乳酸トランスポーター4、ホスホ-C-Myc結合タンパク質(AMY-1)、ミオシン-9、ミオシン光ポリペプチド6、ニコチン酸アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ、ニバン様タンパク質(Meg-3)、オルニチンアミノ基転移酵素、ホスホ-オクルジン、ユビキチンチオールエステラーゼ、PAFアセチルヒドラーゼIB βサブユニット、ホスホ分割欠陥3(PAR-3)、ホスホ-プログラム細胞死6-相互作用タンパク質、ホスホ-プログラム細胞死タンパク質6、タンパク質ジスルフィド-異性化酵素、ホスホ-プラコフィリン-2、ホスホ-プラコフィリン-3、タンパク質ホスファターゼ1、ペルオキシレドキシン5、プロテアソーム活性化剤複合体サブユニット1、プロサイモシンα、レチノイン酸誘発タンパク質3、ホスホ-DNA修復タンパク質REV1、リボヌクレアーゼ阻害剤、RuvB様1、S-100P、S-100L、カルサイクリン、S100C、ホスホ-Sec23A、ホスホ-Sec23B、リソソーム薄膜タンパク質II(LIMP II)、p60-Src、ホスホ-アンプラキシン(EMS1)、SLP-2、ガンマ-シヌクレイン、腫瘍カルシウム信号トランスデューサ1、腫瘍カルシウム信号トランスデューサ2、トランスゲリン-2、トランスアルドラーゼ、チューブリンβ-2鎖、翻訳制御性(TCTP)、組織トランスグルタミナーゼ、膜貫通タンパク質Tmp21、ユビキチン-結合酵素E2 N、UDP-グルコシルトランスフェラーゼ1、ホスホ-p61-Yes、ホスホ-タイトジャンクションタンパク質ZO-1、AHNAK(デスモヨーキン)、ホスホ-ATP合成酵素β鎖、ホスホ-ATP合成酵素δ、寒冷ショックドメインタンパク質E1、デスモプラキンIII、プレクチン1、ホスホ-ネクチン2(CD112抗原)、ホスホ-p185-Ron、ホスホ-SHC1、E-カドヘリン、Brk、ガンマ-カテニン、α1-カテニン、α2-カテニン、α3-カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、ストラタフィン1、ラミニンα-5、ST14、および当技術分野でよく知られているその他の上皮系生物マーカー(例えば、米国特許出願公開2007/0212738、米国特許出願第60/923,463号、米国特許出願第60/997,514号)を含む。上皮系生物マーカーがホスホ-「タンパク質」である場合、EMTの後に変化するパラメータは、タンパク質それ自体のレベルではなく、タンパク質のリン酸化の範囲である。これらのタンパク質における変化したリン酸化レベルは、タンパク質における一つ以上のチロシン残留物のリン酸化レベルの変化によることも理解される(米国特許出願公開2007/0212738)。
[73]本発明の任意の方法で使用可能な追加的な間葉系マーカーの例には、MMP9(基質-メタロプロテイナーゼ9、NCBI遺伝子ID番号4318)、MHCクラスI抗原A*1、アシル-CoAデサチュラーゼ、LANP様タンパク質(LANP-L)、アネキシンA6、ATP合成酵素ガンマ鎖、BAG-系分子シャペロンレギュレータ-2、ホスホ-水疱性類天疱瘡抗原、ホスホ-タンパク質C1orf77、CDK1(cdc2)、ホスホ-クラスリン重鎖1、コンデンシン複合体サブユニット1、3,2-トランス-エノイル-CoA異性化酵素、DEAH-ボックスタンパク質9、ルディメンタリーホモログ(rudimentary homolog)のホスホ-エンハンサー、ホスホ-フィブリラリン、GAPDH筋肉、GAPDH肝臓、シナプス糖タンパク質SC2、ホスホ-ヒストンH1.0、ホスホ-ヒストンH1.2、ホスホ-ヒストンH1.3、ホスホ-ヒストンH1.4、ホスホ-ヒストンH1.5、ホスホ-ヒストンH1x、ホスホ-ヒストンH2AFX、ホスホ-ヒストンH2A.o、ホスホ-ヒストンH2A.q、ホスホ-ヒストンH2A.z、ホスホ-ヒストンH2B.j、ホスホ-ヒストンH2B.r、ホスホ-ヒストンH4、ホスホ-HMG-17様3、ホスホ-HMG-14、ホスホ-HMG-17、ホスホ-HMGI-C、ホスホ-HMG-I/HMG-Y、ホスホ-甲状腺受容体相互作用タンパク質7(TRIP7)、ホスホ-hnRNP H3、hnRNP C1/C2、hnRNP F、ホスホ-hnRNP G、eIF-5A、NFAT 45 kDa、インポーチンβ-3、cAMP依存性 PK1a、ラミンB1、ラミンA/C、ホスホ-ラミニンα-3鎖、L-乳酸脱水素酵素B鎖、ガレクチン-1、ホスホ-Fez1、ヒアルロナン-結合タンパク質1、ホスホ-微小管-アクチン架橋因子1、黒色腫関連抗原4、マトリン-3、リン酸塩担体タンパク質、ミオシン-10、ホスホ-N-アシルノイラミン酸シチジルトランスフェラーゼ、ホスホ-NHP2様タンパク質1、H/ACAリボ核タンパク質サブユニット1、核小体リンタンパク質p130、ホスホ-RNA-結合タンパク質Nova-2、求核性(NPM)、NADH-ユビキノンオキシドレダクターゼ39 kDaサブユニット、ホスホ-ポリアデニル酸-結合タンパク質2、プロヒビチン、プロヒビチン-2、スプライシング因子Prp8、ポリピリミジントラクト-結合タンパク質1、プロサイモシン、Rab-2A、ホスホ-RNA-結合タンパク質Raly、推定上のRNA-結合タンパク質3、ホスホ-60Sリボソームタンパク質L23、hnRNP A0、hnRNP A2/B1、hnRNP A/B、U2核内低分子リボヌクレオタンパク質B、ホスホ-リアノジン受容体3、ホスホ-スプライシング因子3Aサブユニット2、snRNP中核タンパク質D3、ネスプリン-1、チロシン--tRNAリガーゼ、ホスホ-タンキラーゼ1-BP、チューブリンβ-3、アセチル-CoAアセチル基転移酵素、ホスホ-bZIP増強因子BEF(Aly/REF、Tho4)、ユビキチン、ユビキチンカルボキシル-端末ハイドロラーゼ5、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ、液胞タンパク質選別16、ホスホ-ジンクフィンガータンパク質64、ホスホ-AHNAK(デスモヨーキン)、ATP合成酵素β鎖、ATP合成酵素δ鎖、ホスホ-寒冷ショック領域タンパク質E1、ホスホ-プレクチン1、ネクチン2(CD112抗原)、p185-Ron、SHC1、ビメンチン、フィブロネクチン、フィブリリン-1、フィブリリン-2、コラーゲンα-2(IV)、コラーゲンα-2(V)、LOXL1、ニドゲン、C11orf9、テネイシン、Nカドヘリン、胚性EDB+フィブロネクチン、チューブリンα-3、エピモルフィン、および当技術分野でよく知られているその他の間葉系生物マーカー(例えば、米国特許出願公開2007/0212738、米国特許出願第60/923,463号、米国特許出願第60/997,514号を参照)を含む。間葉系生物マーカーが、ホスホ-「タンパク質」である場合、EMTの後に変化するパラメータは、タンパク質それ自体のレベルではなく、タンパク質のリン酸化の範囲である。これらのタンパク質における変化したリン酸化レベルは、タンパク質における一つ以上のチロシン残留物のリン酸化レベルの変化によることも理解される(米国特許出願公開2007/0212738)。
[74]上記上皮系および間葉系の生物マーカーのリストにある生物マーカーは、EMT後に、発現レベル(またはホスホ-「タンパク質」ではリン酸化レベル)が変化することで同定された(例えば、米国特許出願公開2007/0212738、この内容を参照することで本書に組み込む、米国特許出願公開2006/0211060(3/16/2006出願)、Thomson, S. et al. (2005) Cancer Res. 65(20) 9455-9462、 and Yauch, R.L. et al. (2005) Clin. Can. Res. 11(24) 8686-8698を参照)。
[75]本発明の方法において、生物マーカー 発現レベルは、その発現レベルがEMTを通して一定のままである制御分子に対して、または分子生物マーカー(例えば、GAPDH、β-アクチン、チューブリンなどの「ハウスキーピング」遺伝子)により示される上皮または間葉のどちらかの変化状態を発現する腫瘍細胞を比較して評価することができる。生物マーカーの発現レベルは、その他のタイプの腫瘍細胞生物マーカーに対して(すなわち、上皮系を間葉系と比較)、または同一組織の非腫瘍細胞、または試験の基準として使用される別の細胞または組織源における生物マーカーレベルに対して評価することもできる。
[76]本発明の方法において、腫瘍細胞により発現された上皮系または間葉系の生物マーカーのレベルは、下記にさらに詳細に説明するとおり、例えば、ELISA、RIA、免疫沈降、免疫ブロット、免疫蛍光顕微鏡検査法、免疫組織化学(IHC)、室温-PCR、原位置ハイブリダイゼーション、cDNAマイクロアレイ、または同類のものを含めた、遺伝子の発現レベルを判定するために当技術分野でよく知られている任意の標準生物検定手順を使用することで評価できる。これらの任意の方法の一つの実施形態において、その使用は、例えば、レーザーキャプチャー法(LCM)といった特定の細胞数を分離するための方法と組み合わされる。追加的な一つの実施形態において、異なる上皮系または間葉系の生物マーカーを発現する細胞集団を分離・定量化するために、FACS分析を免疫蛍光生物マーカー(例えば、E-カドヘリン)標識化と併用することもでき、こうして、例えば、EMTを起こした細胞のパーセントを予想することができる(例えば、Xu, Z. et al. (2003) Cell Research 13(5):343-350を参照)。
[77]本発明の方法において、腫瘍細胞の上皮系または間葉系の生物マーカーの生体内での発現レベルは、腫瘍生検の検定により評価することが好ましい。一つの実施形態において、生検は、腫瘍の複数領域から採った試料を含むか、または腫瘍の異なる領域から試料を採る方法(例えば、コアニードル生検)が含まれ、したがって含まれている細胞のタイプの点で不均質な場合、典型的な生検が獲得されることが裏付けられる。他の実施形態において、含まれている細胞のEMTステータスの点で腫瘍が不均質でありうると仮定すると、本発明の方法は、異なる細胞タイプに別個に適用されることが好ましい(例えば、IHC、または特定の細胞数を分離する手順と併用した分析方法を使用)。別の方法として、細胞表面の上皮系および/または間葉系の生物マーカー抗体(例えば、E-カドヘリンに対する)を採用することで、FACS分析を使用して、EMTの異なる段階で腫瘍細胞の数を分離・数量化することができる。
[78]ところが、他の実施形態において、腫瘍細胞生物マーカーの発現レベルは、検出可能なレベルの腫瘍または腫瘍細胞を発生源とする生物マーカーを含む体液または排泄物中で評価できる。本発明で有用な体液または排泄物には、血液、尿、唾液、糞便、胸水、リンパ液、痰、腹水、前立腺液、脳脊髄液(CSF)、またはその他の任意の分泌液またはその派生物を含む。血液により、全血、血漿、血清または血液の任意の派生物を含むことを意味する。このような体液または排泄物中の腫瘍の上皮系または間葉系の生物マーカーの評価は、侵襲的なサンプリング方法が不適切であるかまたは不都合である状況で好ましいときもある。
[79]腫瘍細胞の上皮系または間葉系の生物マーカーの発現を評価するために、腫瘍細胞、またはこれらの腫瘍細胞により産生されたタンパク質または核酸を含む腫瘍サンプルを本発明の方法で使用することもできる。これらの実施形態において、生物マーカーの発現レベルは、例えば、動物から得た腫瘍生検、または腫瘍に由来する物質が含まれる別の試料(例えば、血液、血清、尿、または本書に上記のその他の体液または排泄物)といった、腫瘍細胞試料内のマーカーの量(例えば、絶対量または濃度)を評価することにより評価できる。当然ながら、試料中のマーカーの量を評価する前に、細胞試料は、周知の多様な回収後の調製・保管技術(例えば、核酸および/またはタンパク質の抽出、定着、保管、冷凍、限外濾過、濃度、蒸発、遠心分離など)の対象となりうる。同様に、腫瘍生検も、例えば固定といった回収後の調製・保管技術の対象となりうる。
[80]生体内研究での上皮系または間葉系の生物マーカーレベルの判定は、上皮関連の(例えば、E-カドヘリン)または間葉関連の(例えば、ビメンチン、Zeb1)生物マーカーを分離するタンパク質の直接分析を含む、多数の異なるアプローチにより評価できる。このアプローチの利点は、EMTマーカーが直接的に読み取られること、および上皮系または間葉系の生物マーカーを発現する細胞集団の相対的な量が例えばFACS分析(例えば、see Xu、Z. et al. (2003)Cell Research 13(5):343-350)により、簡単に検査・定量化できることである。ところが、このアプローチでは、分析(例えば、免疫組織化学)を実施するために、細胞または組織を十分に数量化する必要もある。組織の十分な数量化は、FNA(微細針吸引)などの一定の手順から得ることは困難なことがある。コア生検ではより大きな量の組織が提供されるが、ときには簡単に入手できないことがある。別の方法として、これらのEMT生物マーカーは、定量的PCRをベースにしたアプローチを使用してそのコード化RNA転写物の発現レベルをもとに評価できる。このアプローチの利点は、この測定用に必要な腫瘍細胞が非常に少数であることと、十分な材料がFNAによって得られる可能性が非常に高いことである。ところが、ここで所定の生物マーカーについての転写レベルは、腫瘍からの腫瘍細胞と湿潤性間質細胞との両方から得られることがある。間質細胞も間葉系細胞マーカーを発現することに鑑みると、これにより腫瘍細胞についてのEMTステータスの検出が曖昧となりうる。原位置でのハイブリダイゼーション(例えば、FISH)または組織の顕微解剖の使用が、ここでこの潜在的な限界を克服するのに有用なことがある。
[81]E-カドヘリンの発現レベルは腫瘍細胞のEMTステータスを証明するものであるため、本明細書で説明したとおり、EMTはE-カドヘリンプロモーターのメチル化の状態を基に評価することもできる。メチル化によって転写が沈静化し、そのため高レベルのメチル化は間葉様の状態と相関性を持つ。このアプローチの潜在的な利益は、転写レベルの測定と同様、DNAのメチル化の状態の測定に必要なのは非常に少量の材料のみという可能性があることである。十分な材料をFNAから得られる可能性があり、またコア生検は必要がない。さらに、このアプローチにはRNAでなくDNAの評価が関与するため、試料の中期〜長期の保管中など、長期にわたって、より安定した読み出しができる可能性がある。
[82]本発明の方法において、それを発現する腫瘍細胞の表面上に表示される少なくとも一部分を持つ生物マーカータンパク質の発現を検出できる。マーカータンパク質またはその部分が、細胞表面上に露出しているかどうかを判定することは、当業者にとって簡単なことである。例えば、少なくとも一つの細胞外ドメインの存在を予想するために、免疫学的方法を使用して全細胞についてこのようなタンパク質を検出するか、または周知のコンピュータベースの配列分析方法を使用することもできる(すなわち、分泌されたタンパク質および少なくとも一つの細胞表面領域を持つタンパク質の両方を含む)。それを発現する細胞の表面に表示される少なくとも一部分を持つマーカータンパク質の発現は、(例えば、タンパク質の細胞表面領域と特異的に結合する標識抗体を使用して)腫瘍細胞を必ずしも溶解することなく検出しうる。
[83]本発明で説明した生物マーカーの発現は、転写した核酸またはタンパク質の発現を検出するための任意の様々な周知の方法により評価しうる。このような方法の非限定的な例には、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質、または核タンパク質の検出のための免疫学的方法や、タンパク質精製方法、タンパク質機能または活性評価法、核酸ハイブリダイゼーション方法、核酸逆転写法、および核酸増幅方法を含む。
[84]一つの実施形態において、生物マーカーの発現は、抗体(例えば、放射標識、発色団標識、フルオロフォア標識、または酵素標識の抗体)、抗体誘導体(例えば、基質とまたはタンパク質-リガンドの対のタンパク質またはリガンドと結合する抗体(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン)、または生物マーカータンパク質またはそのフラグメントと特異的に結合する抗体フラグメント(例えば、単鎖抗体、単離した抗体の高頻度可変性領域など)を使用して評価されるが、これには一般に腫瘍細胞で対象となる翻訳後修飾の全てまたは一部を受けた生物マーカータンパク質を含む(例えば、グリコシル化、リン酸化、メチル化など)。
[85]別の実施形態において、生物マーカーの発現は、mRNA/cDNA(すなわち、転写ポリヌクレオチド)を腫瘍細胞から調製し、mRNA/cDNAを生物マーカーの核酸の相補体である基準ポリヌクレオチドまたはそのフラグメントでハイブリダイゼーションすることにより評価される。オプションとして、cDNAは、基準ポリヌクレオチドによるハイブリダイゼーションの前に、任意の多様なポリメラーゼ連鎖反応方法を使用して増幅できる。一つ以上の生物マーカーの発現も同様に、生物マーカーの発現レベルを評価するために定量的PCRを使用して検出できる。別の方法として、発明の生物マーカーの突然変異または変異体(例えば、一塩基多型、欠失など)を検出する任意の多くの既知の方法を使用して、腫瘍細胞における生物マーカーの発生を検出できる。
[86]関連する実施形態において、試料から獲得した転写ポリヌクレオチドの混合物は、生物マーカーの核酸の少なくとも一部分(例えば、少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、100、500、またはそれより多いヌクレオチド残基)に対して相補的またはそれと相同的なポリヌクレオチドがそれに固定された基質と接触させる。相補的または相同的なポリヌクレオチドが基質について差動的(differentially)に検出可能(例えば、異なる発色団または蛍光団を用いて、または異なる選択部位に固定して検出可能)な場合には、多数の生物マーカーの発現レベルは、単一の基質(例えば、選択した部位に固定したポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を用いて同時に評価できる。ある核酸と別の核酸のハイブリダイゼーションに関して生物マーカー発現を評価する方法を使用する場合は、厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイゼーションが実施されることが好ましい。
[87]本発明の方法において、本発明の生物マーカーを複数使用する場合、EMTを起こすように誘発された腫瘍細胞における各生物マーカーの発現レベルを、単一の反応混合物内(すなわち、各生物マーカーについて、異なる蛍光プローブなどの試薬を使用して)または一つ以上の生物マーカーに対応する個別の反応混合物内のいずれかで、同一タイプの誘発されていない試料における多数の生物マーカーのそれぞれの発現レベルと比較できる。
[88]生体試料内の生物マーカータンパク質または核酸の存在または不在を検出する例示的な方法には、生体試料(例えば、腫瘍に関連する体液)を被験者から獲得すること、およびポリペプチドまたは核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA、またはcDNA)を検出する能力を持つ化合物または薬剤と生体試料を接触させることが関与する。こうして本発明の検出方法を使用して、mRNA、タンパク質、cDNA、またはゲノムDNAを、例えば、生体サンプル内において生体外または生体内で検出できる。例えば、mRNAを検出するための生体外での技術には、ノーザンハイブリダイゼーションおよび原位置でのハイブリダイゼーションを含む。生物マーカータンパク質の検出のための生体外での技術には、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む。生体外でのゲノムDNA検出の技術には、サザンハイブリダイゼーションを含む。生体外でのゲノムmRNA検出の技術には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ノーザンハイブリダイゼーションおよび原位置でのハイブリダイゼーションを含む。さらに、生物マーカータンパク質を検出するための生体内での技術には、被験者へのタンパク質またはそのフラグメントに対して示す標識抗体の導入を含む。例えば、抗体は、その存在および被験者内での位置が標準画像技術により検出できる放射性マーカーを持つ標識でありうる。
[89]このような診断および予後の試験法の一般原則には、生物マーカーおよびプローブが相互作用し結合するために適切な条件下で、かつ十分な時間、生物マーカーおよびプローブを含みうるような試料または反応混合物の調製と、またこうして反応混合物内で除去および/または検出できる複合体の形成とが関与する。これらの評価法は、多様な方法で実施できる。
[90]例えば、このような試験法を実施する一つの方法には、生物マーカーまたはプローブを固相(基質ともいわれる)の支持体に固定することと、反応の最後に固相に固定された標的生物マーカー/プローブ複合体の検出することが関与することになる。このような方法の一つの実施形態において、生物マーカーの存在および/または濃度について検定の対象となる被験者からの試料は、担体または固相支持体に固定することができる。別の実施形態において、逆の状況も可能であり、プローブを固相に固定でき、また被験者からの試料を試験法の未固定の構成要素として反応させることができる。
[91]検定用の構成要素を固相に固定するための多くの確立された方法がある。これらには、限定はされないものの、ビオチンおよびストレプトアビジンの接合により固定化された生物マーカーまたはプローブ分子を含む。このようなビオチン化検定用の構成要素は、ビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から、当技術分野でよく知られている方法(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、イリノイ州ロックフォード)、およびストレプトアビジン被覆した96ウェルプレートのウェルへの固定化(Pierce Chemical)を使用して調製できる。一定の実施形態において、固定化した検定用構成要素を持つ表面は、前もって準備して保存しておくことができる。
[92]このような評価法のためのその他の適切な担体または固相の保持体には、生物マーカーまたはプローブが属するクラスの分子を結合する能力のある任意の材料を含む。周知の保持体または担体には、限定はされないが、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然および加工セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、およびマグネタイトを含む。
[93]上述のアプローチで評価法を実施するために、固定化されない構成要素を固相に追加し、その上に、第二の構成要素を固定させる。反応が完了した後、非複合型の構成要素は、形成される任意の複合体が固相に固定化されたままとなるような条件下で(例えば洗浄により)除去することができる。固相に固定化させた生物マーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書で概説した多くの方法で達成できる。
[94]一つの実施形態において、プローブは、検定用の構成要素に固定されていないとき、本明細書で考察した当業者に良く知られている周知の検出可能ラベルを用いて、試験法の検出および読み出し(直接または間接のいずれか)の目的のための標識としうる。
[95]どちらの構成要素(生物マーカーまたはプローブ)の操作または標識化もそれ以上行うことなく、生物マーカー/プローブ複合体生成を直接的に検出することも、例えば、蛍光性エネルギー移動の技法の使用により可能である(すなわち、電界効果トランジスタ(FET)であり、例えば、Lakowicz et al.、米国特許第5,631,169号、Stavrianopoulos, et al.、米国特許第4,868,103号を参照)。第一の「ドナー」分子上のフルオロフォア標識が適切な波長の入射光により励起されると、その発せられた蛍光エネルギーが第二の「アクセプター」分子の蛍光標識により吸収され、これが次に吸収されたエネルギーにより蛍光を発しうるように選択される。別の方法として、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用してもよい。標識は、「アクセプター」分子標識が「ドナー」のそれと区別されるように、異なる光の波長を発するものが選択される。標識間でのエネルギー移動の効率は、分子を隔てる距離に関連するため、分子間の空間的関係を評価できる。分子間で結合が発生する状況において、試験法における「アクセプター」分子標識の蛍光の発光は最大となるべきである。電界効果トランジスタ(FET)結合イベントは、(例えば、蛍光計の使用など)当技術分野で良く知られている標準蛍光測定器検出の手段によって都合よく測定ができる。
[96]別の実施形態において、生物マーカーを認識するプローブの能力の判定は、どちらの検定用構成要素(プローブまたは生物マーカー)も標識化することなく、リアルタイムの生体分子相互作用解析(BIA)などの技術を利用して達成できる(例えば、Sjolander, S. and Urbaniczky, C., 1991, Anal. Chem. 63:2338-2345 and Szabo et al., 1995, Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705を参照)。本明細書で使用される場合、「BIA」または「表面プラズモン共鳴」は、どの反応体(例えば、BIAcore)も標識化することなく、生物特異性相互作用をリアルタイムで研究する技術である。結合表面での質量の変化(結合イベントで表示)が、表面付近での光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)という光学的現象)につながり、結果的に生体分子間のリアルタイム反応を示すものとして使用できる検出可能な信号となる。
[97]別の方法として、別の実施形態において、類似した診断および予後アッセイは、液相中での溶質として生物マーカーおよびプローブを用いて実施できる。このような試験法において、複合化した生物マーカーおよびプローブには、限定はされないが、分画遠心法、クロマトグラフィー、電気泳動法および免疫沈降を含めた多数の標準技法のいずれかにより、非複合型の成分から分離される。分画遠心法では、その異なるサイズおよび濃度に基づく複合体の異なる沈降平衡により、一連の遠心手順によって、生物マーカー/プローブ複合体を非複合型の検定用構成要素から分離できる(例えば、Rivas, G., and Minton, A. P., 1993, Trends Biochem Sci. 18(8):284-7を参照)。複合化した分子を複合化していない分子から分離するために、標準クロマトグラフィ法も利用できる。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーは、サイズに基づき分子を分離し、適切なゲルろ過樹脂を例えばカラム形式で利用することにより、比較的大きな複合体を比較的小さな非複合型の成分から分離できる。同様に、例えば、イオン交換クロマトグラフィー樹脂の利用により、非複合型の構成要素と比較した、生物マーカー/プローブ複合体の比較的異なる荷電特性を利用して複合体を非複合型の構成要素から区別できる。このような樹脂およびクロマトグラフ法は当業者によく知られている(例えば、Heegaard, N. H., 1998, J. Mol. Recognit. Winter 11(1-6):141-8; Hage, D. S., and Tweed, S. A. J. Chromatogr B Biomed Sci Appl 1997 Oct 10;699(1-2):499-525を参照)。複合化した検定用構成要素を未結合成分と分離するために、ゲル電気泳動も採用しうる(例えば、Ausubel et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987-1999を参照)。この技法において、タンパク質または核酸の複合体は、例えば、サイズまたは電荷に基づき分離される。電気泳動プロセス中の結合相互作用を維持するために、非変性のゲル基質材料および還元剤がない条件が一般に好ましい。特定の試験法およびその構成要素に対する適切な条件は、当業者によく知られている。
[98]特定の実施形態において、生物マーカーmRNAのレベルは、生体サンプル内で当技術分野でよく知られている方法を利用して原位置および生体外での形式の両方で判定できる。「生体サンプル」という用語は、被験者から分離した組織、細胞、生物体液およびその単離体、ならびに被験者内に存在する組織、細胞および流体を含むことが意図される。多くの発現検出方法では、単離したRNAを使用する。生体外での方法について、mRNAの分離に対して選択されていない任意のRNA分離技術をRNAを腫瘍細胞から生成するために利用できる(例えば、Ausubel et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 1987-1999を参照)。さらに、大多数の組織試料は、例えば、Chomczynskiの単一手順のRNA分離プロセス(1989、米国特許第4,843,155号)など、当業者によく知られている技術を使用して簡単に処理できる。
[99]単離したmRNAは、限定はされないが、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析およびプローブアレイを含む、ハイブリダイゼーションまたは増幅法で使用できる。mRNAレベルの検出のための好ましい一つの診断方法には、単離したmRNAを検出の対象である遺伝子によりコードされたmRNAにハイブリダイゼーションできる核酸分子(プローブ)と接触させることが関与する。核酸プローブは、例えば、完全長cDNAまたはその一部分で、長さが少なくとも7、15、30、50、100、250または500のヌクレオチドから成り、厳密な条件下で本発明の生物マーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAにハイブリダイゼーションするために十分なオリゴヌクレオチドなどでありうる。発明の診断法に使用するために適切なその他のプローブを本書で記述している。プローブによるmRNAのハイブリダイゼーションは、問題の生物マーカーが発現中であることを示す。
[100]一つの形式において、mRNAは固体表面上に固定され、例えば単離したmRNAをアガロースゲル上を移動させ、ゲルからのmRNAをニトロセルロースなどの薄膜に移すことにより、プローブと接触させる。代替的な形式として、プローブを固体表面に固定させ、mRNAを例えばアフィメトリクス遺伝子チップアレイ中でプローブと接触させる。当業者であれば、本発明の生物マーカーにより符号化されたmRNAのレベルを検出するために使用する既知のmRNA検出方法を簡単に適応できる。
[101]試料中でのmRNA 生物マーカーのレベルを検定するための代替的方法には核酸増幅のプロセスが関与するが、例えば、室温PCR(Mullis, 1987、米国特許第4,683,202号に記載のある実験的な実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189-193)、自家持続配列複製法(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)、転写性増幅システム(Kwoh et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177)、Q-Βレプリカーゼ(Lizardi et al., 1988, Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.、米国特許第5,854,033号)またはその他の任意の核酸増幅方法によるものがあり、それに続いて当業者によく知られている技術を用いた増幅された分子の検出が行われる。これらの検出方式は、このような分子の存在が非常に少数な場合における核酸分子の検出に特に有用である。本書で使用される場合、増幅用プライマーは、遺伝子の5'または3'領域(それぞれ、プラスとマイナスの鎖、またはその逆)へのアニールが可能で、かつその間に短い領域を含む一対の核酸分子として定義される。一般に、増幅用プライマーは長さが約10〜30のヌクレオチドであり、また長さが約50〜200のヌクレオチドの領域に隣接する。適切な条件下および適切な試薬を用いると、このようなプライマーにより、プライマーに隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅が可能となる。
[102]原位置(in situ)での方法では、検出の前にmRNAを腫瘍細胞から単離する必要がない。このような方法において、細胞または組織の試料は、既知の組織学的方法を使用して調製/処理される。次に、試料を支持体(一般にガラススライド)に固定し、次に生物マーカーをコードしたmRNAにハイブリダイゼーションできるプローブを接触させる。
[103]生物マーカーの絶対的発現レベルに基づく判定の代わりとして、標準化した生物マーカーの発現レベルに基づき判定することもできる。発現レベルは、例えば、構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子など、生物マーカーではない遺伝子の発現と生物マーカーの発現を比較することで、当該生物マーカーの絶対的発現レベルを修正することによって標準化される。標準化のための適切な遺伝子には、アクチン遺伝子、または上皮系細胞に特異的な遺伝子など、ハウスキーピング遺伝子を含む。この標準化により、ある試料(例えば、腫瘍細胞試料)での発現レベルを、別の試料(例えば、非腫瘍試料)と、または異なる出所の試料間で、またはEMTの誘発前後での試料間で、比較することができるようになる。
[104]別の方法として、相対的発現レベルとして発現レベルを供給することもできる。生物マーカーの相対的発現レベル(例えば、間葉系生物マーカー)を判定するには、問題の試料について発現レベルを決定する前に、正常細胞とがん細胞を対比した単離体の10以上の試料、望ましくは50以上の試料について、生物マーカーの発現レベルを検定する。より多数の試料について評価したそれぞれの遺伝子の平均発現レベルを検定し、これをその生物マーカーのベースライン発現レベルとして使用する。次に、試験サンプルについて判定した生物マーカーの発現レベル(発現の絶対レベル)を、その生物マーカーについて得た平均発現値で割る。これが相対的発現レベルとなる。
[105]本発明の別の実施形態において、生物マーカータンパク質が検出される。本発明の生物マーカータンパク質を検出するために好ましい薬剤は、このようなタンパク質またはそのフラグメントとの結合が可能な抗体で、好ましくは検出可能ラベルを持つ抗体である。抗体は多クローン性としうるが、より好ましくはモノクローナルである。損傷のない抗体、またはそのフラグメントまたは誘導体(例えば、FabまたはF(ab').sub.2)を使用することができる。「標識」という用語は、プローブまたは抗体に関する場合、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合させる(すなわち、物理的にリンクする)ことによるプローブまたは抗体の直接標識化だけでなく、直接標識化される別の試薬との反応によるプローブまたは抗体の間接標識化も含まれる。間接標識化の例には、二次抗体の蛍光標識化や、ストレプトアビジンを蛍光標識化して検出できるように、ビオチンによってDNAプローブの端部標識化を使用して、一次抗体を検出することを含む。
[106]腫瘍細胞からのタンパク質は、当業者によく知られている技術を使用して単離できる。採用するタンパク質単離法には、例えば、Harlow and Lane(Harlow and Lane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.)に記載された方法などがある。
[107]ある試料が所定の抗体に結合されるタンパク質を含むかどうかを判定するために、多様な形式を採用できる。このような形式の例には、限定はされないが、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫アッセイ(RIA)、ウエスタンブロット分析および酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を含む。当業者であれば、腫瘍細胞が本発明の生物マーカーを発現するかどうかの判定に使用するために、既知のタンパク質/抗体検出方法を簡単に適応できる。
[108]一つの形式において、抗体または抗体のフラグメントまたは誘導体を、ウエスタンブロットまたは発現されたタンパク質を検出するための免疫蛍光技術などの方法で使用できる。このような用途において、一般に抗体またはタンパク質を固体担体のどちらかに固定することが好ましい。適切な固相の保持体または担体には、抗原または抗体の結合が可能な任意の保持体を含む。周知の保持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および加工セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、およびマグネタイトを含む。
[109]当業者であれば、抗体または抗原を結合するためのその他の多くの適切な担体を把握しており、また本発明と共に使用するために保持体を適応できる。例えば、腫瘍細胞から単離したタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、ニトロセルロースなどの固相保持体上に固定することができる。次に、保持体を適切な緩衝液で洗浄し、検出可能となるように標識化した抗体で処理することができる。次に、固相保持体に緩衝液で二度目の洗浄を行い、未結合抗体を除去することができる。こうして、固体担体に結合された標識の量を従来的な方法で検出することができる。
[110]ELISA試験法では、特異的な結合ペアは、免疫性または非免疫性のタイプとすることができる。免疫特異的な結合ペアは、抗原間システムまたはハプテン/抗ハプテンシステムで例示されている。フルオレセイン/抗フルオレセイン、ジニトロフェニル/抗ジニトロフェニル、ビオチン/抗ビオチン、ペプチド/抗ペプチドおよび同類のものが言及されうる。特異的な結合ペアの抗体部分は、当業者にとって馴染みの慣習的方法により生成できる。このような方法には、特異的な結合ペアの抗原部分による動物の免疫化が関与する。特異的な結合ペアの抗原部分が免疫原性でない場合(例えば、ハプテン)、担体タンパク質に共有結合させて、免疫原性を持たせることができる。非免疫性結合のペアには、2つの成分が互いに天然の親和性を共有するが、抗体ではないシステムを含む。模範的な非免疫性ペアには、ビオチン-ストレプトアビジン、内因性因子-ビタミンB12、葉酸-葉酸結合タンパク質および同類のものを含む。
[111]特異的な結合ペアの部分によって抗体を共有結合的に標識化するために、多様な方法が利用できる。方法は、特異的な結合ペアの部分の性質、希望する連鎖のタイプ、および様々な接合の化学的性質に対する抗体の耐性を基に選択される。ビオチンは、市販の活性誘導体を利用して抗体に共有結合できる。これらのいくつかを挙げれば、タンパク質上のアミン基に結合するビオチン-N-ヒドロキシ-スクシンイミド、カルボジイミドカップリングによって炭水化物部分、アルデヒドおよびカルボキシル基に結合するビオチンヒドラジド、およびスルフヒドリル基に結合するビオチンマレイミドおよびヨードアセチルビオチンである。フルオレセインは、フルオレッセインイソチオシアネートを使用してタンパク質アミン基に結合できる。ジニトロフェニル基は、2,4-ジニトロベンゼン硫酸塩または2,4-ジニトロフルオロベンゼンを使用してタンパク質アミン基に結合できる。モノクローナル抗体を特異的な結合ペアの部分に結合させるために、ジアルデヒド、カルボジイミドカップリング、ホモ官能性架橋、およびヘテロ二官能価架橋を含む、その他の結合の標準的方法を採用できる。カルボジイミドカップリングは、一つの物質上にあるカルボキシル基を別の物質上にあるアミン基に結合する効果的な方法である。カルボジイミドカップリングは、市販の試薬1-エチル-3-(ジメチル-アミノプロピル)-カルボジイミド(EDAC)を使用して促進される。
[112]二官能性イミドエステルおよび二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを含めたホモ二官能性架橋試薬は市販されており、ある物質上のアミン基を別の物質上のアミン基に結合するために採用される。ヘテロ二官能価架橋剤は、異なる官能基を有する試薬である。最も一般的な市販のヘテロ二官能価架橋剤は、一つの官能基としてアミン反応性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを、また第二の官能基としてスルフヒドリル反応基を持つ。最も一般的なスルフヒドリル反応基は、マレイミド、ピリジルジスルフィドおよび活性のハロゲンである。官能基の一つは、照射によって多様な基と反応をする光活動性アリールニトレンでありうる。
[113]検出可能なように標識化された抗体または検出可能なように標識化された特異的な結合ペアの要素は、放射性同位元素、酵素、蛍光発生的、化学発光または電気化学的材料でありうるレポーターの結合により準備される。一般に使用される2つの放射性同位元素は、125Iおよび3Hである。標準的な放射性同位元素による標識化手順には、125IについてのクロラミンT、ラクトペルオキシダーゼおよびボルトン−ハンター(Bolton-Hunter)法、および3Hについての還元的メチル化を含む。「検出可能なように標識化された」という用語は、標識の内因性の酵素活性によるか、またはそれ自体が簡単に検出される別の構成要素の標識への結合によって簡単に検出されるよう標識化された分子を意味する。
[114]本発明での使用に適した酵素には、限定はされないが、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、b-ガラクトシダーゼ、グルコース酸化酵素、ルシフェラーゼ(ホタルおよびレニラ属を含む)、b-ラクタマーゼ、ウレアーゼ、緑蛍光タンパク質(GFP)およびリゾチームを含む。酵素の標識化は、抗体を特異的な結合ペアの要素に結合するために上述した説明のとおりにジアルデヒド、カルボジイミドカップリング、ホモ二官能性架橋試薬およびヘテロ二官能価架橋剤を使用することで促進される。
[115]選択するラベリング法は、酵素上で使用可能な官能基および標識の対象となる材料、および接合状態に対する両者の耐性に依存する。本発明で使用するラベリング法は、限定はされないが、Engvall and Pearlmann, Immunochemistry 8, 871 (1971)、Avrameas and Ternynck, Immunochemistry 8, 1175 (1975)、Ishikawa et al., J. Immunoassay 4(3):209-327 (1983)およびJablonski, Anal. Biochem. 148:199 (1985) に記載のあるものを含め、現時点で採用されている任意の従来の方法のうちどれか一つでありうる。
[116]標識化は、スペーサーまたは特異的な結合ペアのその他の要素を使用するなど、間接的な方法によって達成できる。この一例が、非標識化のストレプトアビジンおよびビオチン化酵素によるビオチン化抗体の検出であり、ストレプトアビジンおよびビオチン化酵素が連続的または同時のどちらかで追加される。従って、本発明によれば、検出するために使用した抗体は、レポーターで直接的に、または特異的な結合ペアの第一のメンバーに間接的に、検出可能なように標識化できる。抗体を特異的な結合ペアの第一のメンバーに結合するときには、特異的な結合複合体の抗体の第一のメンバーを標識であるかまたは非標識である結合ペアの第二のメンバーと上述のとおり反応させることで、検出が行われる。
[117]さらに、非標識の検出用抗体は、非標識の抗体に特異的な標識抗体とその非標識の抗体を反応させることで検出できる。この例で、上記で使用した「検出可能なように標識化された」は、非標識の抗体に特異的な抗体が結合できるようなエピトープ(抗原決定基)を含むという意味を持つものとする。このような抗体は、上記で考察した任意のアプローチを用いて、直接標識化または間接標識化できる。例えば、抗体は、上記で考察したストレプトアビジン-西洋わさびペルオキシダーゼシステムと反応させることによって検出されるビオチンと結合できる。
[118]本発明の一つの実施形態において、ビオチンが利用される。次には、ビオチン化抗体がストレプトアビジン-西洋わさびペルオキシダーゼ複合体と反応する。色素の検出をするために、オルトフェニレンジアミン、4-クロロ-ナフトール、テトラメチルベンジジン(TMB)、ABTS、BTSまたはASAを使用することができる。
[119]本発明を実施するための一つのイミュノアッセイ形式において、捕獲試薬が従来的な技術を使用して保持体の表面に固定化された、フォワードサンドイッチ法が使用される。評価法で使用する適切な保持体には、ポリプロピレン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、例えば、アミノ化またはカルボキシル化ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリビニルクロリド、ガラス玉、アガロース、またはニトロセルロースなどの合成ポリマー保持体を含む。
[120]本明細書で説明した方法により同定される、腫瘍細胞が上皮間葉変転換を起こすことを阻害するか、上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞を阻害するか、または間葉様腫瘍細胞が間葉から上皮への転換を起こすように刺激する薬剤、またはそうした薬剤を含む組成物を、患者における腫瘍または腫瘍転移の治療を行う方法に使用できる。
[121]本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、好ましくは、任意の目的で抗がん剤での治療を必要とするヒトを指し、より好ましくは、がん、または前がん状態または病変を治療するためにこのような治療を必要とするヒトを指す。しかし、「患者」という用語はヒト以外の動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジおよびヒト以外の霊長類などで、抗がん剤での治療が必要な哺乳類を指すこともある。
[122]本明細書で説明した任意の方法により同定された抗がん剤(またはそれらを含む組成物)は、下記の任意の腫瘍またはがんの治療に使用できる:NSCL、乳がん、結腸がん、または膵臓がん、肺がん、細気管支肺胞上皮細胞肺がん、骨肉腫、皮膚がん、頭部がんまたは頚部がん、皮膚がんまたは眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部分のがん、胃がん、胃がん、子宮がん、卵管がん、子宮がん、卵巣がん膣の悪性腫瘍、外陰部の悪性腫瘍、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、尿管がん、腎臓がん、腎細胞悪性腫瘍、腎盂がん、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、中枢神経(CNS)腫瘍、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多形性膠芽腫芽細胞腫多形、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣細胞腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮がん、下垂体腺腫、上記の任意のがんの難治性のもの、または上記のがんの一つ以上の組み合わせを含む。
[123]本書で使用される場合、「難治性」という用語は、治療(例えば、化学療法薬剤、生物学的薬剤、および/または放射線治療)に効果がないことが実証されたがんを定義する。難治性がん腫瘍は縮小するが、治療が有効であると判断される点までには及ばない。しかし一般的に、腫瘍は治療前と同じサイズのまま(安定疾患)かまたは増殖する(進行疾患)。本書で使用される場合、この用語は、単剤または併用で使用された時、本書に記述の任意の治療または薬剤に適用されうる。
[124]本書で説明した任意の方法により同定された抗がん剤(またはそれらを含む組成物)は、異常な細胞増殖の治療に使用できる。
[125]治療的に有効な量の同定済み薬剤を前記患者に投与する厳密な方法(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤および前記薬剤の組み合わせ)が担当の医師の自由裁量であることは、医療技術の当業者によって理解される。投薬量、その他の抗がん剤との組み合わせ、投与の時期および頻度、および同類のものを含めた投与方法は、例えば、患者のEGFRまたはIGFRキナーゼ阻害剤への見込まれる応答性の診断、および患者の状態および病歴の影響を受ける。こうして、例えば、単一の薬剤としてEGFRまたはIGFRキナーゼ阻害剤に対する比較的感応性があると予測される腫瘍の診断を受けた患者でさえも、このようなキナーゼ阻害剤および同定済み薬剤の組み合わせ、随意なその他の抗がん剤、またはその他の薬剤との組み合わせによる治療からの恩恵を受けることがある。
[126]本発明の文脈では、薬剤または治療の「有効量」とは上記に定義の通りである。薬剤または治療の「治療量以下の量」は、その薬剤または治療の有効量未満の量であるが、別の薬剤または治療の有効量または治療量以下の量と組み合わされた場合、例えば、結果得られる有効効果または副作用の減少によって医師が望む結果を生むことができる。
[127]さらに、本発明は、例えば、医薬品として容認できる担体におけるEGFRまたはIGFRキナーゼ阻害剤および同定済み薬剤の組み合わせを含む医薬組成物を提供している。
[128]発明はまた、本明細書で説明した任意の方法によって調製された、腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するか、腫瘍上皮間葉転換を起こした細胞を阻害するか、または間葉様腫瘍細胞が間葉から上皮への転換を起こすことを刺激する薬剤を含む、本明細書で説明した任意の方法により同定された薬剤(すなわち、「同定済み薬剤」)であって、薬学的に許容される担体との組み合わせ、およびオプションとして一つ以上のその他の抗がん剤(例えば、EGFR、IGF-1R、RONまたはMET受容体チロシンキナーゼ阻害剤)との組み合わせでの医薬組成物をも包含する。
[129]医薬組成物を調製する方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 18th edition (1990) などの参考文献に記載のあるとおり、当技術分野でよく知られている。
[130]組成物は、薬学的に許容される担体および非中毒性の治療に有効な量の同定済み薬剤(その各構成要素の薬学的に許容される塩を含む)を含むことが好ましい。
[131]さらに、この好ましい実施形態の範囲内において、発明には、その使用が結果的に腫瘍性細胞の増殖、良性または悪性腫瘍、または転移の阻害につながり、薬学的に許容される担体および非中毒性の治療に有効な量の同定済み薬剤(その各構成要素の薬学的に許容される塩を含む)を含む、病気の治療のための医薬組成物を含む。
[132]「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される非毒性塩基または酸から調製された塩を指す。本発明の化合物が酸の場合、その対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む、薬学的に許容される非毒性塩基から好都合に調製されうる。薬学的に許容される薬学的に許容されるこのような無機塩基から生じる塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第二銅および第一銅)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第二マンガンおよび第一マンガン)、カリウム、ナトリウム、亜鉛および同類の塩を含む。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩である。薬学的に許容される薬学的に許容される有機非中毒性塩基から生じる塩には、第一、第二、および第三アミンのほか、環状アミンおよび合成置換アミンなどの置換アミンを含む。塩を形成できる他の薬学的に許容される有機非中毒性塩基には、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N’,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンおよび類似のものなどのイオン交換樹脂を含む。
[133]本発明の化合物が塩基性のとき、その対応する塩は、無機酸および有機酸を含む、薬学的に許容される非中毒性酸から好都合に調製されうる。このような酸には、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸および類似のものを含む。特に好ましいものは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。
[134]本発明の医薬組成物は、活性原料としての低分子IGF-1Rキナーゼ阻害剤および抗IGF-1R抗体またはIGF結合タンパク質(その各成分の薬学的に許容される塩を含む)、薬学的に許容される担体および随意に他の治療成分またはアジュバントを含む。他の治療薬には、上記にリストされるように、細胞毒性剤、化学療法剤または抗がん剤、またはこのような薬剤の効果を増強する薬剤を含みうる。組成物には、経口、直腸、局所および非経口(皮下、筋肉内および静脈内を含む)投与に適する組成物を含むが、特定の例の最適経路は特定の宿主、および活性原料を投与する目的の状態の性質および重症度によって決まる。医薬組成物は、単位剤形で便利に提示可能で、薬学分野でよく知られている任意の方法で調製しうる。
[135]実際には、本発明の低分子IGF-1Rキナーゼ阻害剤および抗IGF-1R抗体またはIGF結合タンパク質(その各成分の薬学的に許容される塩を含む)の組み合わせによって代表される化合物は、活性原料として、従来の薬学的配合技術に従った医薬担体と共に密接な混合物中に混合することができる。担体は、投与(例えば、経口または非経口(静脈内を含む))に対して好ましい調製形態によって、さまざまな形態をとりうる。したがって、本発明の医薬組成物は、それぞれが所定量の活性原料を含むカプセル、カシェーまたは錠剤などの経口投与に適した個別単位で提示できる。さらに組成物は、粉末として、顆粒として、溶液として、水性液体中の懸濁液として、非水性液体として、水中油型エマルジョンとして、または油中水型液体エマルジョンとして提示されうる。上記に述べた一般的な剤形に加えて、低分子IGF-1Rキナーゼ阻害剤および抗IGF-1R抗体またはIGF結合タンパク質(その各成分の薬学的に許容される塩を含む)の混合薬は、放出制御手段および/または送達装置によっても投与されうる。組み合わせ組成物は、薬学の任意の方法によって調製されうる。一般的に、このような方法には、1つ以上の必要な原料を構成する担体を活性原料と関連させるステップを含む。一般的に、組成物は、活性原料を液体担体または細かく分割された固体担体または両方と均一かつ密接に混合することによって調製される。生成物は次に好ましい形状に便利に成形される。
[136]こうして、本発明の医薬組成物には、薬学的に許容されるできる担体、および同定済み薬剤(その薬学的に許容されるできる塩を含む)の組み合わせが含まれうる。同定済み薬剤(その薬学的に許容されるできる塩を含む)は、一つ以上のその他の治療に有効な化合物と組み合わせた医薬組成物に含めることもできる。他の治療活性化合物には、上記にリストされるように、細胞毒性、化学療法剤または抗がん剤、またはこのような薬剤の効果を増強する薬剤を含みうる。
[137]したがって、本発明の一つの実施形態では、医薬組成物は、同定済み薬剤と抗がん剤との組み合わせを含むことができ、ここで前述の抗がん剤は、アルキル化剤、抗代謝剤、微小管阻害剤、ポドフィロトキシン、抗生物質、ニトロソウレア、ホルモン療法、キナーゼ阻害剤、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、および血管新生阻害薬から成るグループから選択されたメンバーである。
[138]使用される医薬担体は、例えば、固体、液体、または気体でありうる。固体担体の例には、ラクトース、白土、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸を含む。液体担体の例は、シュガー・シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、および水である。気体担体の例には、二酸化炭素および窒素を含む。
[139]経口剤形の組成物の調製では、任意の都合のよい医薬媒体を使用しうる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤、および同類のものを、懸濁液、エリキシルおよび溶液などの経口液体製剤の形成に使用しうるが、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒薬、潤滑剤、結合剤、崩壊剤および同類のものなどの担体を、粉末、カプセルおよび錠剤などの経口固体製剤の形成に使用しうる。投与の簡便性のために、錠剤およびカプセルが好ましい経口投与単位であり、ここでは固体医薬担体が使用される。随意に、錠剤は標準的な水性または非水性技術でコートされうる。
[140]本発明の組成物を含む錠剤は、随意に付属原料またはアジュバントの1つ以上と共に、圧縮または成形によって調製されうる。圧縮錠剤は、適切な機械で、粉末または顆粒などの自由流動形状の活性原料を、随意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性化剤または分散剤と混合して圧縮することによって調製されうる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を、適切な機械で成形することによって作ることができる。各錠剤は、好ましくは約0.05mg〜約5gの活性原料を含み、各カシェーまたはカプセルは好ましくは約0.05mg〜約5gの活性原料を含む。
[141]例えば、ヒトへの経口投与を目的とした製剤は約0.5mg〜約5gの活性剤を含み、総組成物の5〜95%の間で変化する適切で便利な量の担体材料と混合されうる。単位投与形態は、一般に活性原料を約1mg〜約2g含み、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg一般に、600mg、800mg、または1000mgを含む。
[142]非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、水中の活性化合物の溶液または懸濁液として調製されうる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な界面活性剤を含めることができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物を油中で分散剤に調製することもできる。さらに、微生物の有害な増殖を防ぐために保存剤を含めることができる。
[143]注射用に適した本発明の医薬組成物には、滅菌水溶液または分散液を含む。さらに、組成物は、このような滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末の形態でもよい。すべての例では、最終的な注射剤型は無菌でなければならず、簡単に注射器に入れられるよう事実上流動的でなければならない。医薬組成物は、製造下および保管条件下で安定していなければならず、したがって好ましくは、細菌およびカビなどの微生物の汚染作用に対して保護されるべきであることが好ましい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、植物油、およびその適切な混合物を含む、溶媒または分散媒でありうる。
[144]本発明の医薬組成物は、例えば、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、散布剤または同類のものなど、局所使用に適した形態でありうる。さらに、組成物は、経皮デバイスでの使用に適した形態でもありうる。これらの製剤は、本発明の同定済み薬剤(その薬学的に許容される塩を含む)を使用して、従来の処理方法を介して調製しうる。一例として、親水性材料と水を約5wt%〜約10wt%の化合物と混合して、希望の稠度を持つクリームまたは軟膏を作ることによって、クリームまたは軟膏を調製する。
[145]本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸投与に適した形態でありうる。混合物が単位用量坐薬を形成することが好ましい。適切な担体には、ココアバターおよび当技術分野で一般的に使用されるその他の材料を含む。坐薬は、まず組成物を軟化または溶かした担体と混合し、冷却および成型することで便利に形成しうる。
[146]前述の担体原料に加えて、上述の製剤処方は、必要に応じて、希釈剤、緩衝液、香味剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)および同類のものなど、一つ以上の追加的な担体成分を含みうる。さらに、対象である受け手の血液と等張の製剤を提供するために、その他のアジュバントを含めることができる。同定済み薬剤(その薬学的に許容される塩を含む)を含む組成物は、粉末または液体濃縮型にも調製されうる。
[147]本発明の文脈において、その他の抗がん剤には、例えば、その他の細胞毒性剤、化学療法薬または抗がん剤、またはこのような薬剤の効果を高める化合物、抗ホルモン剤、血管形成阻害薬、腫瘍細胞アポトーシス促進剤またはアポトーシス刺激剤、シグナル伝達阻害剤、抗増殖剤、抗HER2抗体またはその免疫療法で活性なフラグメント、抗増殖剤、COX II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤、および抗腫瘍免疫応答を増進する能力を持つ薬剤を含む。
[148]本発明の文脈において、その他の細胞毒性剤、化学療法薬または抗がん剤、またはこのような薬剤の効果を高める化合物には、例えば、シクロホスファミド(CTX、例えばCYTOXAN(登録商標))、クロランブシル(CHL、例えばLEUKERAN(登録商標))、シスプラチン(CisP、例えばPLATINOL(登録商標))ブスルファン(例えばmyleran(登録商標))、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンC、および同類のものなどのアルキル化剤またはアルキル化作用を持つ薬剤、メトトレキセート(MTX)、エトポシド(VP16、例えばvepesidR)、6-メルカプトプリン(6MP)、6-チオグアニン(6TG)、シタラビン(Ara-C)、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン(例えばXeloda(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)、および同類のものなどの抗代謝生成物、アクチノマイシンD、ドキソルビシン(DXR、例えば、アドリアマイシン(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよび同類のものなどの抗生物質、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン(VCR)など)、ビンブラスチン、および同類のものなどのアルカロイド、ならびにパクリタキセル(例えばタキソール(登録商標))およびパクリタキセル誘導体、細胞分裂阻害剤、糖質コルチコイド(例えば、デキサメタゾン(DEX、例えばデカドロン(登録商標))など)および副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾンなど)、ヌクレオシド酵素阻害剤(例えばヒドロキシウレアなど)、アミノ酸枯渇酵素(例えばアスパラギナーゼなど)、ロイコボリンおよびその他の葉酸誘導体などといったその他の抗腫瘍薬剤、ならびに類似した多様な抗腫瘍薬剤を含む。アミホスチン(例えばethyol(登録商標))、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェン・マスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(例えば、doxil(登録商標))、ゲムシタビン(例えばgemzar(登録商標))、ダウノルビシン(例えばdaunoxome(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(例えばtaxotere(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトセシン、CPT 11(イリノテカン)、10-ヒドロキシ7-エチル-カンプトセシン(SN38)、フロキシウリジン、フルダラビン、イホスフアミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンβ、インターフェロンα、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロランブシルといった薬剤も追加的な薬剤として使用しうる。
[149]本書で使用される場合、「抗ホルモン剤」という用語は、腫瘍に対してホルモン作用を調節または阻害する働きをする天然または合成有機またはペプチド化合物を含む。抗ホルモン剤には、例えば、ステロイド受容体拮抗薬、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、その他のアロマターゼ阻害剤、42-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、およびトレミフェン(例えば、Fareston(登録商標))などの抗エストロゲン薬、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤(男性ホルモン)、および上記の任意の薬学的に許容される塩、酸または誘導体、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)およびLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)などの糖タンパク質ホルモンの作動薬および/または拮抗薬、LHRH作動薬である酢酸ゴセレリン(Zoladex(登録商標)(AstraZeneca)として入手可)、LHRH 拮抗薬であるD-アラニンアミド N-アセチル-3-(2-ナフタレニル)-D-アラニル-4-クロロ-D-フェニルアラニル-3-(3-ピリジニル)-D-アラニル-L-セリル-N6-( 3-ピリジニルカルボニル)-L-リシル-N6-(3-ピリジニルカルボニル)-D-リシル-L-ロイシル-N6-(1-メチルエチル)-L-リシル -L-プロリン(例えば、アンチド(登録商標)、Ares-Serono)、LHRH 拮抗薬の酢酸ガニレリクス、ステロイド性抗アンドロゲン剤(男性ホルモン)の酢酸シプロテロン(CPA)および酢酸メゲストロール(Megace(登録商標)(Bristol-Myers Oncology)として市販されている)、非ステロイド抗アンドロゲン剤のフルタミド(2-メチル-N-[4、20-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)フェニルプロパンアミド)(Eulexin(登録商標)(Schering Corp.)として入手可)、非ステロイド抗アンドロゲン剤のニルタミド(5,5-ジメチル-3-[4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル-4’-ニトロフェニル)-4,4-ジメチル-イミダゾリジン-ジオン)、ならびにRAR、RXR、TR、VDRに対する拮抗薬などのその他の許容不可能な受容体に対する拮抗薬、および同類のものを含む。
[150]血管形成阻害薬には、例えば、SU-5416およびSU-6668(Sugen Inc. of South San Francisco, Calif., USA)などのVEGFR阻害剤、または例えば国際特許出願番号WO 99/24440、WO 99/62890、WO 95/21613、WO 99/61422、WO 98/50356、WO 99/10349、WO 97/32856、WO 97/22596、WO 98/54093、WO 98/02438、WO 99/16755、およびWO 98/02437、および米国特許第5,883,113号、5,886,020号、5,792,783号、5,834,504号および6,235,764号に記述されているようなVEGF阻害剤、IM862(Cytran Inc.、米国ワシントン州カークランド)、Ribozyme(コロラド州ボールダー)およびChiron(カリフォルニア州エメリービル)社製の合成リボザイムであるアンジオザイム、、およびベバシズマブ(例えばAVASTIN(商標)、Genentech、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)などのVEGFに対する組み換えヒト化抗体などのVEGFに対する抗体、例えばαvβ3, αvβ5およびαvβ6 インテグリン、およびそのサブタイプに対するような受容体拮抗薬およびインテグリン拮抗薬で、、例えば、シレンジタイド(EMD 121974)、または例えば αvβ3 特異的ヒト化抗体(例えばVITAXIN(登録商標))などの抗インテグリン抗体、IFN-α(米国特許第41530,901号、4,503,035号、および5,231,176号)などの因子、アンギオスタチンおよびプラスミノーゲンフラグメント(例えば、クリングル1-4、クリングル5、クリングル1-3(O'Reilly, M. S. et al. (1994) Cell 79:315-328; Cao et al. (1996) J. Biol. Chem. 271: 29461-29467; Cao et al. (1997) J. Biol. Chem. 272:22924-22928)、エンドスタチン(O'Reilly, M. S. et al. (1997) Cell 88:277、および国際特許公開番号WO 97/15666)、トロンボスポンジン(TSP-1、Frazier, (1991) Curr. Opin. Cell Biol. 3:792)、血小板因子4(PF4)、プラスミノゲン活性化因子/ウロキナーゼ阻害剤、ウロキナーゼ受容体拮抗薬、ヘパリナーゼ、TNP-4701などのフマギリン類似体、スラミンおよびスラミン類似体、血管新生阻害性ステロイド、bFGF 拮抗薬、flk-1およびflt-1拮抗薬、MMP-2(マトリクス・メタロプロテイナーゼ2)阻害剤およびMMP-9(マトリクス・メタロプロテイナーゼ9)阻害剤などの血管形成阻害薬を含む。有用なマトリクス・メタロプロテイナーゼ阻害剤の例は、国際特許公開番号WO 96/33172、WO 96/27583、WO 98/07697、WO 98/03516、WO 98/34918、WO 98/34915、WO 98/33768、WO 98/30566号、WO 90/05719、WO 99/52910、WO 99/52889、WO 99/29667、およびWO 99/07675、欧州特許公開番号818,442、780,386、1,004,578、606,046、および931,788、英国特許公開番号9912961、および米国特許第5,863,949号および5,861,510号に記載がある。好ましいMMP-2およびMMP-9阻害剤は、MMP-1を阻害する活性をほとんどまたは全く持たないものである。より好ましいのは、他のマトリックス・メタロプロテイナーゼと比較して、MMP-2および/またはMMP-9を選択的に阻害するものである(すなわち、MMP-1、MMP-3、MMP-4、MMP-5、MMP-6、MMP-7、MMP-8、MMP-10、MMP-11、MMP-12、およびMMP-13)。
[151]シグナル伝達阻害剤には、例えば、有機分子などのerbB2受容体に結合する抗体、例えば、トラスツズマブ(例えばHERCEPTIN(登録商標))などのerbB2受容体阻害剤、例えばイミチニブ(例えばGLEEVEC(登録商標))などの他のタンパク質チロシン-キナーゼの阻害剤、ras阻害剤、raf阻害剤、MEK阻害剤、mTOR阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、タンパク質キナーゼC阻害剤、およびPDK-1阻害剤を含む(このような阻害剤の数例の説明およびそのがん治療の臨床試験でのその用法については、Dancey, J. and Sausville, E.A. (2003) Nature Rev. Drug Discovery 2:92-313を参照)。
[152]ErbB2受容体阻害剤には、例えば、GW-282974(Glaxo Wellcome plc)などのErbB2受容体阻害剤、AR-209(Aronex Pharmaceuticals Inc.、米国テキサス州ウッドランド)および2B-1(Chiron)などのモノクローナル抗体、および国際特許公開番号WO 98/02434、WO 99/35146、WO 99/35132、WO 98/02437、WO 97/13760、およびWO 95/19970、および米国特許第5,587,458号、5,877,305号、6,465,449号および6,541,481号に記述されるもののようなerbB2阻害剤を含む。
[153]抗増殖剤には、例えば、酵素ファルネシルタンパク質転移酵素の阻害剤、および受容体チロシンキナーゼPDGFRの阻害剤が含まれ、これには米国特許第6,080,769号、6,194,438号、6,258,824号、6,586,447号、6,071,935号、6,495,564号、6,150,377号、6,596,735号および6,479,513号、および国際特許公開番号WO 01/40217に開示・請求のある化合物を含む。抗増殖剤には、受容体チロシンキナーゼIGF-1RおよびFGFRの阻害剤も含まれる。
[154]有用なCOX-II阻害剤の例には、アレコキシブ(例えば、CELEBREX(商標))、バルデコキシブ、およびロフェコキシブを含む。抗腫瘍免疫応答を高める能力を持つ薬剤には、例えば、CTLA4(細胞毒性リンパ球抗原4)抗体(例えばMDX-CTLA4)、およびCTLA4を遮断する能力を持つ他の薬剤を含む。本発明に使用されうる特異的CTLA4抗体には、米国特許第6,682,736号に記述のものを含む。
[155]本発明は、さらに患者における腫瘍または腫瘍転移を治療する方法も提供し、これには、本書で上記に記載した治療的に有効な量の同定済み薬剤およびオプションとしての一つ以上のその他の抗がん剤を、患者に同時または連続的に投与することを含む。
[156]本発明の同定済み薬剤の投与レベルは、本書で説明するとおりだが、年齢、体重、全般的健康、性別、食餌、投与時刻、投与経路、排泄率、複合薬および治療中の特定の病気の重症度を含む多様な要因に依存する。
[157]上述の細胞毒性および他の抗がん剤の化学療法レジメンにおける使用は、一般的にがん治療技術において良好な特徴付けが行われており、本明細書でのそれらの使用は、一部調節しつつ忍容性および有効性のモニタリング、および投与経路と用量に対して同じ考慮を受ける。例えば、細胞毒性薬剤の実際の用量は、抗がん剤感受性試験を使用して決定された患者の培養細胞反応によって異なりうる。一般的に用量は、他の追加的薬剤を使用しない場合の量に比べて減量される。
[158]有効な細胞毒性薬剤の一般的用量は、製造業者が推奨する範囲内であり、生体外反応または動物モデルでの反応によって示される場合は、濃度または量を最大約一桁低減させうる。したがって、実際の用量は、医師の判断、患者の状態、および一次培養がん細胞または抗がん剤感受性試験を行った組織サンプルの生体外反応性、または適切な動物モデルで観察された反応に基づく治療方法の有効性に依存する。
[159]本書で使用される場合、「EGFRキナーゼ阻害剤」という用語は、本技術分野で現在知られているか将来特定される任意のEGFRキナーゼ阻害剤を指し、患者に投与した際に、EGFRの天然リガンドへの結合から生じる下流の生物学的効果のような患者のEGFR受容体活性化と関連した生物学的活性の阻害を引き起こす任意の化学物質を含む。このようなEGFRキナーゼ阻害剤には、EGFR活性化または患者のがんの治療に関連するEGFR活性化の下流の生物学的効果を遮断できる任意の薬剤を含む。このような阻害剤は、受容体の細胞外ドメインに直接結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって作用できる。または、このような阻害剤は、EGF受容体のリガンド結合部位またはその一部分を占有し、それにより受容体の正常な生物学的活性が阻止または低減されるように受容体が天然リガンドにアクセスできないようにすることによって作用できる。または、このような阻害剤は、EGFRポリペプチドの二量化、またはEGFRと他のタンパク質との相互作用を調節することによって、またはEGFRのユビキチン化およびエンドサイトーシス分解を増強することによって作用できる。EGFRキナーゼ阻害剤には、低分子阻害剤、抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたはRNAアプタマー、アンチセンス構築物、小阻害RNA(すなわち、dsRNAによるRNA干渉、RNAi)、およびリボザイムを含むがこれに限定されない。好ましい実施形態では、EGFRキナーゼ阻害剤は、ヒトEGFRに特異的に結合する小さな有機分子または抗体である。
[160]EGFRキナーゼ阻害剤には、例えば、下記の特許公報に記述されているようなキナゾリンEGFRキナーゼ阻害剤、ピリド-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピリミド-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピロロ-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピラゾロ-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、フェニルアミノ-ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、オキシンドールEGFRキナーゼ阻害剤、インドロカルバゾールEGFRキナーゼ阻害剤、フタラジンEGFRキナーゼ阻害剤、イソフラボンEGFRキナーゼ阻害剤、キナロンEGFRキナーゼ阻害剤、およびチルホスチンEGFRキナーゼ阻害剤、および前述のEGFRキナーゼ阻害剤の薬学的に許容される塩および溶媒和物のすべてを含むを含む:国際特許公開番号WO 96/33980、WO 96/30347、WO 97/30034、WO 97/30044、WO 97/38994、WO 97/49688、WO 98/02434、WO 97/38983、WO 95/19774、WO 95/19970、WO 97/13771、WO 98/02437、WO 98/02438、WO 97/32881、WO 98/33798、WO 97/32880、WO 97/3288、WO 97/02266、WO 97/27199、WO 98/07726、WO 97/34895、WO 96/31510、WO 98/14449、WO 98/14450、WO 98/14451、WO 95/09847、WO 97/19065、WO 98/17662、WO 99/35146、WO 99/35132、WO 99/07701、およびWO 92/20642、欧州特許出願番号EP 520722、EP 566226、EP 787772、EP 837063、およびEP 682027、米国特許第5,747,498号、5,789,427号、5,650,415号、および5,656,643号、およびドイツ特許出願番号DE 19629652。低分子EGFRキナーゼ阻害剤の追加的な非限定的例には、Traxler, P., 1998, Exp. Opin. Ther. Patents 8(12):1599-1625に記述の任意のEGFRキナーゼ阻害剤を含む。
[161]本発明に従い使用できる低分子EGFRキナーゼ阻害剤の具体的な好ましい例には、[6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)-4-キナゾリン-4-イル]-(3-エチニルフェニル)アミン(別名OSI-774、エルロチニブ、またはTARCEVA(登録商標)(エルロチニブ HCl)、OSI Pharmaceuticals/Genentech/ Roche)(米国特許第5,747,498号、国際特許公開番号WO 01/34574、およびMoyer, J.D. et al. (1997) Cancer Res. 57:4838-4848)、CI-1033(旧称PD183805、Pfizer)(Sherwood et al., 1999, Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 40:723)、PD-158780(Pfizer)、AG-1478(University of California)、 CGP-59326(Novartis)、PKI-166(Novartis)、EKB-569(Wyeth)、GW-2016(別名GW-572016またはラパチニブジトシラート、GSK)、およびゲフィチニブ(別名ZD1839またはIRESSA(商標)、Astrazeneca)(Woodburn et al., 1997, Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 38:633)を含む。本発明に従い使用できる特に好低分子EGFRキナーゼ阻害剤は、[6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)-4-キナゾリン-4-イル]-(3-エチニルフェニル)アミン(すなわち、エルロチニブ)、その塩酸塩(すなわちエルロチニブHCl、TARCEVA(登録商標))、または他の塩の形態(例えばエルロチニブメシレート)である。
[162]EGFRキナーゼ阻害剤には、例えば、EGFRキナーゼに対して活性を持つ複数キナーゼ阻害剤(すなわち、EGFRキナーゼおよび一つ以上の追加的キナーゼを阻害する阻害剤)も含む。このような化合物の例には、EGFRおよびHER2阻害剤CI-1033(旧称PD183805;Pfizer)、EGFRおよびHER2 阻害剤GW-2016(GW-572016またはラパチニブジトシラートとしても知られる、GSK)、EGFRおよびJAK 2/3阻害剤AG490(チルホスチン)、EGFRおよびHER2阻害剤ARRY-334543(Array BioPharma)、BIBW-2992、不可逆性二重EGFR/HER2キナーゼ阻害剤(Boehringer Ingelheim Corp.)、EGFRおよびHER2阻害剤EKB-569(Wyeth)、VEGF-R2およびEGFR阻害剤ZD6474(別名ZACTIMA(商標)、AstraZeneca Pharmaceuticals)、およびEGFRおよびHER2阻害剤BMS-599626(Bristol-Myers Squibb)を含む。
[163]抗体ベースのEGFRキナーゼ阻害剤には、その天然リガンドによってEGFR活性化を部分的または完全に遮断できる、抗体フラグメントを含めた任意の抗EGFR抗体を含む。抗体ベースのEGFRキナーゼ阻害剤の非限定的例には、Modjtahedi, H., et al., 1993, Br. J. Cancer 67:247-253; Teramoto, T., et al., 1996, Cancer 77:639-645; Goldstein et al., 1995, Clin. Cancer Res. 1:1311-1318; Huang, S. M., et al., 1999, Cancer Res. 15:59(8):1935-40; およびYang, X., et al., 1999, Cancer Res. 59:1236-1243に記述のものを含む。したがって、EGFRキナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体Mab E7.6.3(Yang, X.D. et al. (1999) Cancer Res. 59:1236-43)、またはMab C225(ATCC受入番号HB-8508)、抗体またはその結合特異性を持つ抗体フラグメントでありうる。適切なモノクローナル抗体EGFRキナーゼ阻害剤には、限定はされないが、IMC-C225(別名、セツキシマブまたはERBITUX(商標)、Imclone Systems)、ABX-EGF(Abgenix)、EMD 72000(Merck KgaA、ダルムシュタット)、RH3(York Medical Bioscience Inc.)、およびMDX-447(Medarex/ Merck KgaA)を含む。
[164]本発明で使用するEGFRキナーゼ阻害剤は、代替的にペプチドまたはRNAアプタマーでもありうる。このようなアプタマーは、例えば、EGFRの細胞外または細胞内ドメインと相互作用して、細胞内のEGFRキナーゼ活性を阻害する。細胞外ドメインと相互作用するアプタマーは、このような標的細胞の細胞膜を通過する必要がないために好ましい。アプタマーは、EGFRを活性化する能力を阻害するように、EGFRに対するリガンド(例えば、EGF、TGF-α)とも相互作用しうる。適切なアプタマーの選択方法は、当技術分野で良く知られている。このような方法を使用して、EGFRファミリーメンバーと相互作用し阻害するペプチドおよびRNAアプタマーの両方が選択されてきた(例えば、Buerger, C. et al. et al. (2003) J. Biol. Chem. 278:37610-37621; Chen, C-H. B. et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. 100:9226-9231; Buerger, C. and Groner, B. (2003) J. Cancer Res. Clin. Oncol. 129(12):669-675. Epub 2003 Sep 11を参照)。
[165]本発明に使用するEGFRキナーゼ阻害剤は、代替的にアンチセンスオリゴヌクレオチド構築物に基づきうる。アンチセンスRNA分子およびアンチセンスDNA分子を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、EGFR mRNAに結合してその翻訳を直接遮断するように作用して、タンパク質の翻訳を妨げるか、またはmRNAの分解を増加させ、それによって細胞のEGFRキナーゼタンパク質のレベル、ひいては活性レベルを減少させる。例えば、少なくとも約15塩基を持ち、EGFRをコードするmRNA転写配列の固有領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成できる(例えば、従来のホスホジエステル技術により合成でき、静脈注射または注入で投与できる)。配列が知られている遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するためにアンチセンス技術を使用する方法は、当技術分野では良く知られている(例えば、米国特許第6,566,135号、6,566,131号、6,365,354号、6,410,323号、6,107,091号、6,046,321号、および5,981,732号を参照)。
[166]低分子阻害RNA(siRNA)も、本発明で使用するEGFRキナーゼ阻害剤として機能しうる。EGFRの発現が特異的に阻害(すなわち、RNA干渉またはRNAi)されるように、腫瘍、被験者または細胞を、小さな二重鎖RNA(dsRNA)、または小さな二重鎖RNAの生成を引き起こすベクターまたは構築物と接触させることによって低減できる。適切なdsRNAまたはdsRNAをコードするベクターを選択する方法は、その配列が知られている遺伝子に対しては、当技術分野でよく知られている(例えば、Tuschi, T., et al. (1999) Genes Dev. 13(24):3191-3197; Elbashir, S.M. et al. (2001) Nature 411:494-498; Hannon, G.J. (2002) Nature 418:244-251; McManus, M.T. and Sharp, P. A. (2002) Nature Reviews Genetics 3:737-747; Bremmelkamp, T.R. et al. (2002) Science 296:550-553、米国特許第6,573,099号および6,506,559号、および国際特許公開番号WO 01/36646、WO 99/32619、およびWO 01/68836を参照)。
[167]リボザイムも、本発明で使用するEGFRキナーゼ阻害剤として機能しうる。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒する能力を持つ酵素性RNA分子である。リボザイム作用のメカニズムには、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、およびその後のエンドヌクレアーゼ的切断が関与する。したがって、EGFR mRNA配列のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的かつ効率的に触媒する工学的ヘアピンまたはハンマーヘッドモチーフのリボザイム分子は、本発明の範囲内で有用である。任意の可能性のあるRNA標的内における特異的なリボザイム切断部位は、標的分子のリボザイム切断部位をスキャンすることによってまず特定され、これは一般的にGUA、GUU、およびGUCの配列を含む。一旦特定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する約15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列を、二次構造などオリゴヌクレオチド配列を不適切にさせうる予測構造特性に対して評価することができる。候補標的の適切性は、例えばリボヌクレアーゼ保護分析を使って、相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのしやすさをテストすることによっても評価できる。
[168]EGFRキナーゼ阻害剤として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドとリボザイムの両方は、既知の方法で作成できる。これらには、例えば固相ホスホラミダイト化学合成などによる化学合成の技術を含む。または、アンチセンスRNA分子は、RNA分子をコードするDNA配列の、生体外または生体内転写によって生成できる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを取り込む、さまざまなベクターを取り込むことができる。本発明のオリゴヌクレオチドには、細胞内安定性および半減期を増加させる手段として、さまざまな修飾を加えることができる。可能性のある修飾には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの分子の5'および/または3'端へのフランキング配列の追加、またはオリゴヌクレオチド骨格内のホスホジエステラーゼ結合よりもむしろホスホロチオエートまたは2'-O-メチルを使用することが含まれるが、これに限定されない。
[169]本書で使用される場合、「IGF-1Rキナーゼ阻害剤」という用語は、当技術分野で現在知られているか将来特定される、任意のIGF-1Rキナーゼ阻害剤を指し、患者に投与した際に、IGF-1Rの天然リガンドへの結合から生じる下流の生物学的効果のような患者のIGF-1受容体活性化と関連した生物学的活性の阻害を引き起こす任意の化学物質を含む。このようなIGF-1Rキナーゼ阻害剤には、IGF-1Rの活性化または患者のがん治療に関連するIGF-1R活性化の下流の生物学的効果を遮断できる任意の薬剤を含む。このような阻害剤は、受容体の細胞内ドメインに直接的に結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって作用できる。または、このような阻害剤は、IGF-1受容体のリガンド結合部位またはその一部分を占有し、それにより受容体の正常な生物学的活性が阻止または低減されるように受容体が天然リガンドにアクセスできないようにすることによって作用できる。または、このような阻害剤は、IGF-1Rポリペプチドの二量体化、またはIGF-1Rポリペプチドと他のタンパク質との相互作用を調節することによって、またはIGF-1Rのユビキチン化およびエンドサイトーシス分解を増強することによって作用できる。IGF-1Rキナーゼ阻害剤は、IGF-1Rを活性化するために利用できるIGF-1の量を減少させることにより、例えばIGF-1のその受容体への結合を拮抗させることにより、IGF-1のレベルを低下させることにより、またはIGF-1R以外のタンパク質、IGF結合タンパク質(例えば、IGFBP3)などとのIGF-1の関係を促進させることにより作用できる。IGF-1Rキナーゼ阻害剤には、低分子阻害剤、抗体または抗体フラグメント、アンチセンス構築物低分子阻害RNA(すなわち、dsRNAによるRNA干渉、RNAi)、およびリボザイムを含むがこれに限定されない。好ましい実施形態では、IGF-1Rキナーゼ阻害剤は、ヒトIGF-1Rに特異的に結合する小さな有機分子または抗体である。
[170]IGF-1Rキナーゼ阻害剤には、例えば、イミダゾピラジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、アザビシクロアミン阻害剤、キナゾリンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、ピリド-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、ピリミド-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、ピロロ-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、ピラゾロ-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、フェニルアミノ-ピリミジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、オキシンドールIGF-1Rキナーゼ阻害剤、インドロカルバゾール IGF-1Rキナーゼ阻害剤、フタラジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、イソフラボンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、キナロンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、およびチルホスチンIGF-1Rキナーゼ阻害剤、およびIGF-1Rキナーゼ阻害剤の全ての薬学的に許容される塩および溶媒和物を含む。
[171]IGF-1Rキナーゼ阻害剤の例には、国際特許公開番号WO 05/097800(アザビシクロアミン誘導体を記載)、国際特許公開番号WO 05/037836(イミダゾピラジンIGF-1Rキナーゼ阻害剤を記載)、国際特許公開番号WO 03/018021およびWO 03/018022(IGF-1R関連の障害を治療するためのピリミジンを記載)、国際特許公開番号WO 02/102804およびWO 02/102805(IGF-1R阻害剤としてのシクロリグナンおよびシクロリグナンを記載)、国際特許公開番号WO 02/092599(IGF-1Rチロシンキナーゼの阻害に応答する疾患治療のためのピロロピリミジンを記載)、国際特許公開番号WO 01/72751(チロシンキナーゼ阻害剤としてのピロロピリミジンを記載)、および国際特許公開番号WO 00/71129(キナーゼのピロロトリアジン阻害剤を記載)、および国際特許公開番号WO 97/28161(ピロロ [2,3-d]ピリミジンおよびチロシンキナーゼ阻害剤としてのその使用を記載)、Parrizas, et al.(生体外および生体内でのIGF-1R阻害活性を持つチルホスチンを記載(Endocrinology, 138:1427-1433 (1997))、国際特許公開番号WO 00/35455(IGF-1R阻害剤としてのヘテロアリール-アリールウレアを記載)、国際特許公開番号WO 03/048133(IGF-1Rの調節因子としてのピリミジン誘導体を記載)、国際特許公開番号WO 03/024967、WO 03/035614、WO 03/035615、WO 03/035616、およびWO 03/035619(キナーゼタンパク質に対する阻害効果を持つ化学物を記載)、国際特許公開番号WO 03/068265(過剰増殖状態を治療するための方法および組成物を記載)、国際特許公開番号WO 00/17203(タンパク質キナーゼ阻害剤としてのピロロピリミジンを記載)、日本特許公報第JP 07/133280号(セフェム系化合物、その製造および抗菌薬組成物を記載)、Albert, A. et al., Journal of the Chemical Society, 11: 1540-1547 (1970)(プテリジン研究および4位が非置換のプテリジンを記載)、およびA. Albert et al., Chem. Biol. Pteridines Proc. Int. Symp., 4th, 4: 1-5 (1969)(ピラジンからの3-4-ジヒドロプテリジンを介したプテリジンの合成(4位が非置換型)を記載)に記載のあるものを含む。
[172]本発明に従い使用できる追加的なIGF-1Rキナーゼ阻害剤の特定の例には、h7C10(Centre de Recherche Pierre Fabre)、IGF-1拮抗薬、EM-164(ImmunoGen Inc.)、IGF-1R修飾因子、CP-751871(Pfizer Inc.)、IGF-1拮抗薬、ランレオチド(Ipsen)、IGF-1拮抗薬、IGF-1Rオリゴヌクレオチド(Lynx Therapeutics Inc.)、IGF-1オリゴヌクレオチド(National Cancer Institute)、Novartisにより開発中のIGF-1Rタンパク質-チロシンキナーゼ阻害薬(例えば、NVP-AEW541、Garcia-Echeverria, C. et al. (2004) Cancer Cell 5:231-239、またはNVP-ADW742、Mitsiades, C.S. et al. (2004) Cancer Cell 5:221-230)、IGF-1Rタンパク質-チロシンキナーゼ阻害薬(Ontogen Corp)、OSI-906(OSI Pharmaceuticals)、AG-1024(Camirand, A. et al. (2005) Breast Cancer Research 7:R570-R579(DOI 10.1186/bcr1028)、Camirand, A. and Pollak, M. (2004) Brit. J. Cancer 90:1825-1829、 Pfizer Inc.)、IGF-1拮抗薬、チルホスチンAG-538およびI-OMe-AG 538、BMS-536924、IGF-1Rの低分子阻害剤、PNU-145156E(Pharmacia & Upjohn SpA)、IGF-1拮抗薬、BMS 536924、二重IGF-1RおよびIRキナーゼ阻害剤(Bristol-Myers Squibb)、AEW541(Novartis)、GSK621659A(Glaxo Smith-Kline)、INSM-18(Insmed)、およびXL-228(Exelixis)を含む。
[173]抗体ベースのIGF-1Rキナーゼ阻害剤には、その天然リガンドによってIGF-1R活性化を部分的または完全に遮断できる、抗体フラグメントを含めた任意の抗IGF-1R抗体を含む。抗体ベースのIGF-1Rキナーゼ阻害剤には、IGF-1R活性化を部分的または完全に遮断する、抗体フラグメントを含めた任意の抗IGF-1R抗体を含む。抗体ベースのIGF-1Rキナーゼ阻害剤の非限定的例には、Larsson、O. et al(2005)Brit.J. Cancer 92:2097-2101およびIbrahim、Y.H.およびYee、D.(2005)Clin. Cancer Res.11:944s-950sに記載のあるもの、またはImcloneによって開発中のもの(例えば、IMC-A12)、またはAMG-479、抗IGF-1R抗体(Amgen)、R1507、抗IGF-1R抗体(Genmab/Roche)、AVE-1642、抗IGF-1R抗体(Immunogen/Sanofi-Aventis)、MK 0646またはh7C10、抗IGF-1R抗体(Merck)、またはSchering-Plough Research Instituteによって開発中の抗体(例えば、SCH 717454または19D12、または米国特許出願公開番号US 2005/0136063 A1およびUS 2004/0018191 A1に記載)に記載のあるものを含む。IGF-1Rキナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体、または抗体またはその結合特異性を持つ抗体フラグメントでありうる。
[174]本書で使用される場合、「PDGFRキナーゼ阻害剤」という用語は、当技術分野で現在知られているか将来特定される、任意のPDGFRキナーゼ阻害剤を指し、患者に投与した際に、PDGFRの天然リガンドのへの結合から生じる下流の生物学的効果のような患者のPDGF受容体活性化に関連した生物学的活性の阻害を引き起こす任意の化学物質を含む。このようなPDGFRキナーゼ阻害剤には、PDGFRの活性化または患者のがん治療に関連するPDGFR活性化の下流の任意の生物学的効果をブロックできる任意の薬剤を含む。このような阻害剤は、受容体の細胞内ドメインに直接結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって作用することができる。または、このような阻害剤は、PDGF受容体のリガンド結合部位またはその一部分を占有し、それにより受容体の正常な生物学的活性が阻止または低減されるように受容体が天然リガンドにアクセスできないようにすることによって作用できる。または、このような阻害剤は、PDGFRポリペプチドの二量体化、またはPDGFRポリペプチドとその他のタンパク質との相互作用を調節することによって、またはPDGFRのユビキチン化およびエンドサイトーシス分解を増強することによって作用できる。PDGFRキナーゼ阻害剤には、低分子阻害剤、抗体または抗体フラグメント、アンチセンス構築物、低分子阻害RNA(すなわち、dsRNAによるRNA干渉、RNAi)、およびリボザイムを含むがこれに限定されない。PDGFRキナーゼ阻害剤には、抗PDGFまたは抗PDGFRアプタマー、抗PDGFまたは抗PDGFR抗体、またはPDGFのその同族の受容体への結合を阻止する可溶性PDGF受容体デコイを含む。好ましい実施形態では、PDGFRキナーゼ阻害剤は、ヒトPDGFRに特異的に結合する小さな有機分子または抗体である。化合物または薬剤がPDGFRキナーゼ阻害剤としての役目を果たす能力は、当技術分野でよく知られており、さらに例えば、Dai et al., (2001) Genes & Dev. 15: 1913-25; Zippel, et al., (1989) Eur. J. Cell Biol. 50(2):428-34; and Zwiller, et al., (1991) Oncogene 6: 219-21に記載の方法に従って決定されうる。
[175]本発明は、当技術分野で知られているPDGFRキナーゼ阻害剤に加えて下記で支持されているもの、および当業者が作成できる範囲の同等物すべてを含む。例えば、米国特許第5,976,534号、5,833,986号、5,817,310号、5,882,644号、5,662,904号、5,620,687号、5,468,468号、およびPCT WO 2003/025019に記述のものなど、抗PDGFを目的とする阻害性抗体が当技術分野で知られており、その内容の全体を参照によって本書に組み込む。さらに、本発明は、PDGFRキナーゼ阻害剤であるN-フェニル-2-ピリミジン-アミン誘導体が含まれ、これには、米国特許第5,521,184号に加えて、WO2003/013541、WO2003/078404、WO2003/099771、WO2003/015282、およびWO2004/05282に開示されているものなどがあり、これらの全体が参照によって本書に組み込まれる。
[176]PDGFの作用を遮断する低分子は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第または公開出願番号6,528,526号(PDGFRチロシンキナーゼ阻害剤)、6,524,347号(PDGFRチロシンキナーゼ阻害剤)、6,482,834号(PDGFRチロシンキナーゼ阻害剤)、6,472,391号(PDGFRチロシンキナーゼ阻害剤)、6,949,563号、6,696,434号、6,331,555号、6,251,905号、6,245,760号、6,207,667号、5,990,141号、5,700,822号、5,618,837号、5,731,326号、および2005/0154014号、および国際公開出願番号WO 2005/021531、WO 2005/021544、およびWO 2005/021537に記述のものがあり、その内容の全体が参照によって本書に組み込まれる。
[177]PDGFの作用を遮断するタンパク質およびポリペプチドは当技術分野で知られており、例えば、米国特許第6,350,731号(PDGFペプチド類似体)、5,952,304号に記述のものがあり、その内容の全体が参照によって本書に組み込まれる。
[178]EGFおよび/またはPDGF受容体チロシンキナーゼを阻害するビスモノおよびビシクリルアリールおよびヘテロアリール化合物は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,476,851号、5,480,883号、5,656,643号、5,795,889号、および6,057,320号などに記述のものがあり、その内容の全体が参照によって本書に組み込まれる。
[179]PDGFの阻害のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,869,462号および5,821,234号に記述のものがあり、その内容の全体が参照によって本書に組み込まれる。
[180]PDGFの阻害のためのアプタマー(別名、核酸リガンド)は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第6,582,918号、6,229,002号、6,207,816号、5,668,264号、5,674,685号、および5,723,594号などに記載されているものがあるが、その内容の全体が参照によって本書に組み込まれる。
[181]当技術分野で知られている、PDGFを阻害する他の化合物は、米国特許第5,238,950号、5,418,135号、5,674,892号、5,693,610号、5,700,822号、5,700,823号、5,728,726号、5,795,910号、5,817,310号、5,872,218号、5,932,580号、5,932,602号、5,958,959号、5,990,141号、6,358,954号、6,537,988号および6,673,798号に記述のものを含み、それぞれの内容の全体が参照によって本書に組み込まれる。
[182]PDGFRなどのチロシンキナーゼ受容体酵素に対して選択的なチロシンキナーゼ阻害剤の多くのタイプが当技術分野で知られている(例えばSpada and Myers ((1995) Exp. Opin. Ther. Patents, 5: 805)およびBridges ((1995) Exp. Opin. Ther. Patents, 5: 1245を参照)。さらに、LawおよびLydonは、チロシンキナーゼ阻害剤のがんを抑える可能性を記述している((1996) Emerging Drugs: The Prospect For Improved Medicines, 241-260)。例えば、米国特許第6,528,526号は、血小板由来の成長因子受容体(PDGFR)チロシンキナーゼ活性を選択的に阻害する置換キノキサリン化合物を記述している。PDGFRチロシンキナーゼ活性の既知の阻害剤には、Maguire et al.,((1994) J. Med. Chem., 37: 2129)、およびDolle, et al.,((1994) J. Med. Chem., 37: 2627)によって報告されたキノリンベースの阻害剤を含む。フェニルアミノ-ピリミジンの阻害剤のクラスが、最近Traxler, et al.によりEP 564409で、およびZimmerman et al.,((1996) Biorg. Med. Chem. Lett., 6: 1221-1226)およびBuchdunger, et al.,((1995) Proc. Nat. Acad. Sci. (USA), 92: 2558)により報告された。PDGF受容体チロシンキナーゼ活性の阻害に有用なキナゾリン誘導体には、ビスモノおよびビシクリルアリール化合物およびヘテロアリール化合物(例えば、WO 92/20642を参照)、キノキサリン誘導体((1994) Cancer Res., 54: 6106-6114を参照)、ピリミジン誘導体(日本公開特許出願番号87834/94)およびジメトキシキノリン誘導体(Abstracts of the 116th Annual Meeting of the Pharmaceutical Society of Japan(金沢), (1996), 2, p. 275, 29(C2) 15-2を参照)を含む。
[183]本発明に従って使用されうる低分子PDGFRキナーゼ阻害剤の好ましい具体的な例には、イマチニブ(グリベック(登録商標)、Novartis)、SU-12248(スニチニブリンゴ酸塩、SUTENT(登録商標)、Pfizer)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS、別名BMS-354825)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer、別名Bay-43-9006)、AG-13736(アクシチニブ、Pfizer)、RPR127963(Sanofi-Aventis)、CP-868596(Pfizer /OSI PHARMACEUTICALS)、MLN-518(タンヅチニブ、Millennium Pharmaceuticals)、AMG-706(モテサニブ、Amgen)、ARAVA(登録商標)(レフルノミド、Sanofi-Aventis、別名SU101)、およびOSI-930(OSI PHARMACEUTICALS)が含まれ、本発明に従い使用できるFGFRキナーゼ阻害剤でもある追加的な低分子PDGFRキナーゼ阻害剤の好ましい例には、XL-999(Exelixis)、SU6668(Pfizer)、CHIR-258/TKI-258(Chiron)、RO4383596(Hoffmann-La Roche)およびBIBF-1120(Boehringer Ingelheim)を含む。
[184]本明細書で使用される場合、「FGFRキナーゼ阻害剤」という用語は、現時点で当技術で知られているか将来特定される任意のFGFRキナーゼ阻害剤を指し、患者に投与した際に、FGFRの天然リガンドへの結合から生じる下流の生物学的効果を含む、患者のFGF受容体活性化に関連した生物学的活性の阻害を引き起こす任意の化学物質を含む。このようなFGFRキナーゼ阻害剤には、FGFR活性化、または患者のがん治療に関連するFGFR活性化の下流の生物学的効果を遮断できる任意の薬剤を含む。このような阻害剤は、受容体の細胞内ドメインに直接結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって作用できる。または、このような阻害剤は、FGF受容体のリガンド結合部位またはその一部分を占有し、それにより受容体の正常な生物学的活性が阻止または低減されるように受容体が天然リガンドにアクセスできないようにすることによって作用できる。または、このような阻害剤は、FGFRポリペプチドの二量体化、またはFGFRと他のタンパク質との相互作用を調節することによって、またはFGFRのユビキチン化およびエンドサイトーシス分解を増強することによって作用できる。EGFRキナーゼ阻害剤には、低分子阻害剤、抗体または抗体フラグメント、アンチセンス構築物、低分子阻害RNA(すなわち、dsRNAによるRNA干渉、RNAi)、およびリボザイムを含むがこれに限定されない。FGFRキナーゼ阻害剤には、抗FGFまたは抗FGFRアプタマー、抗FGFまたは抗FGFR抗体、またはFGFRがその同族受容体に結合することを妨げる可溶性FGFR受容体デコイを含む。好ましい実施形態では、FGFRキナーゼ阻害剤は、ヒトFGFRに特異的に結合する小さな有機分子または抗体である。抗FGFR抗体には、FR1-H7 (FGFR-1) およびFR3-D11 (FGFR-3) (Imclone Systems, Inc.) を含む。
[185]FGFRキナーゼ阻害剤には、ヘパラン硫酸プロテオグリカンのFGFR活性を調節する能力に影響することによってFGFRシグナル伝達を阻害する化合物も含む。細胞外基質内でのヘパラン硫酸プロテオグリカンは、例えば、成長因子のタンパク質分解からの保護、局在化、保管、および内在化などのFGFの作用を媒介でき(Faham, S. et al. (1998) Curr. Opin. Struct. Biol., 8:578-586)、FGFをその同族FGFRに提示するように、および/または受容体のオリゴマー形成を促進するように作用する低親和性のFGF受容体として働きうる(Galzie, Z. et al. (1997) Biochem. Cell. Biol., 75:669-685)。
[186]本発明は、当技術分野でよく知られているFGFRキナーゼ阻害剤(例えば、PD173074)に加えて下記で支持されているもの、および当業者が作成できる範囲の同等物すべてを含む。
[187]FGF作用に拮抗することから、本明細書に記述の方法のFGFRキナーゼ阻害剤として使用されうる化学物質の例には、スラミン、スラミンの構造類似体、ペントサン多硫酸スコポラミン、アンギオスタチン、スプロウティ、エストラジオール、カルボキシメチルベンジルアミン・デキストラン(CMDB7)、スラジスタ、インスリン様成長因子結合タンパク質-3、エタノール、ヘパリン(例えば、6-O-脱硫酸化ヘパリン)、低分子ヘパリン、硫酸プロタミン、シクロスポリンA、またはbFGFのRNAリガンドを含む。
[188]当技術分野でよく知られているFGFRキナーゼを阻害するためのその他の薬剤または化合物には、米国特許第7,151,176号(Bristol-Myers Squibb Company、ピロロトリアジン化合物)、7,102,002号(Bristol-Myers Squibb Company、ピロロトリアジン化合物)、5,132,408号(Salk Institute、ペプチドFGF拮抗薬)、および5,945,422号(Warner-Lambert Company、2-アミノ置換ピリド[2,3-d]ピリミジン)、米国特許出願公開番号2005/0256154(4-アミノ-チエノ[3,2-c]ピリジン-7-カルボン酸アミド化合物)、および2004/0204427(ピリミジン化合物)、および国際特許出願公開番号WO-2007019884(Merck Patent GmbH、N-(3-ピラゾリル)-N'-4-(4-ピリジニルオキシ)フェニル)尿素化合物)、WO-2007009773(Novartis AG、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イルアミン誘導体)、WO-2007014123(Five Prime Therapeutics, Inc.、FGFR融合タンパク質)、WO-2006134989(協和発酵工業株式会社、窒素性の複素環化合物)、WO-2006112479(協和発酵工業株式会社、アザヘテロ環)、WO-2006108482(Merck Patent GmbH、9-(4-ウレイドフェニル)プリン化合物)、WO-2006105844(Merck Patent GmbH、N-(3-ピラゾリル)-N'-4-(4-ピリジニルオキシ)フェニル)尿素 化合物)、WO-2006094600(Merck Patent GmbH、テトラヒドロピロロキノリン誘導体)、WO-2006050800(Merck Patent GmbH、N,N'-ジアリール尿素誘導体)、WO-2006050779(Merck Patent GmbH、N,N'-ジアリール尿素誘導体)、WO-2006042599(Merck Patent GmbH、フェニル尿素誘導体)、WO-2005066211(Five Prime Therapeutics, Inc.、 抗FGFR抗体)、WO-2005054246(Merck Patent GmbH、ヘテロシクリル アミン)、WO-2005028448(Merck Patent GmbH、2-アミノ-1-ベンジル-置換ベンズイミダゾール誘導体)、WO-2005011597(Irm Llc、置換複素環式誘導体)、WO-2004093812(Irm Llc/Scripps、 6-フェニル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン誘導体)、WO-2004046152(F. Hoffmann La Roche AG、ピリミド[4,5-e]オキサジアジン誘導体)、WO-2004041822(F. Hoffmann La Roche AG、ピリミド[4,5-d]ピリミジン誘導体)、WO-2004018472(F. Hoffmann La Roche AG、ピリミド[4,5-d]ピリミジン誘導体)、WO-2004013145(Bristol-Myers Squibb Company、ピロロトリアジン誘導体)、WO-2004009784(Bristol-Myers Squibb Company、ピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-イル 化合物)、 WO-2004009601(Bristol-Myers Squibb Company、アザインドール化合物)、WO-2004001059(Bristol-Myers Squibb Company、複素環式誘導体)、WO-02102972(Prochon Biotech Ltd./Morphosys AG、、抗FGFR抗体)、WO-02102973(Prochon Biotech Ltd.、抗FGFR抗体)、WO-00212238(Warner-Lambert Company、2-(ピリジン-4-イルアミノ)-6-ジアルコキシフェニル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オン誘導体)、WO-00170977(Amgen, Inc.、FGFR-Lおよび 誘導体)、WO-00132653(Cephalon, Inc.、ピラゾロン誘導体)、WO-00046380(Chiron Corporation、FGFR-Ig融合タンパク質)、およびWO-00015781(Eli Lilly、ヒトSPROUTY-1タンパク質に関連したポリペプチド)に記載のあるものを含む。
[189]本発明に従い使用できる低分子FGFRキナーゼ阻害剤の特定の好ましい例には、RO-4396686(Hoffmann-La Roche)、CHIR-258(Chiron、別名TKI-258)、PD 173074(Pfizer)、PD 166866(Pfizer)、ENK-834およびENK-835(どちらもEnkam Pharmaceuticals A/S)、およびSU5402(Pfizer)を含む。本発明に従い使用できるPDGFRキナーゼ阻害剤でもある追加的な低分子FGFRキナーゼ阻害剤の好ましい例には、XL-999(Exelixis)、SU6668(Pfizer)、CHIR-258/TKI-258(Chiron)、RO4383596(Hoffmann-La Roche)、およびBIBF-1120(Boehringer Ingelheim)を含む。
[190]本発明は、上皮細胞が上皮間葉転換を起こさないように阻害する薬剤を同定する方法であって、上皮細胞株H1650の細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、H1650細胞において上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤に試料を接触させること、前記試験薬が試料中の上皮細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するかどうかについて、、そのレベルが試料細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していないH1650細胞の同一サンプルでの同一の生物マーカーのレベルと比較することによって判断すること、およびかくして、前記試験薬が細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む方法を提供している。上皮系細胞が上皮間葉転換を起こさないように阻害する薬剤は、部分的にEMT転換に起因する線維性疾患の治療に有用であり、これには、限定はされないが、腎線維症、肝臓の線維形成、肺疾患の線維形成、および中皮腫が含まれる。一つの実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。
[191]本発明は、上皮間葉転換を起こす細胞を阻害する薬剤を同定する方法であって、上皮細胞株H1650の細胞試料を、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、前記試験薬が間葉様H1650の細胞増殖を阻害するかどうかを判断すること、およびかくして、それが上皮間葉転換を起こした細胞の増殖を阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む方法も提供している。間葉様の細胞を阻害する薬剤は、部分的にEMT転換に起因する線維性疾患の治療にとって有用であり、これは、限定はされないが、腎線維症、肝臓の線維形成、肺疾患の 線維形成、および中皮腫を含む。一つの実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。この方法の代替的な実施例には、試験薬が上皮間葉転換を起こした細胞の増殖を阻害するかどうかを判断する工程の後で、間葉様H1650腫瘍細胞増殖を阻害する薬剤が、上皮性のH1650腫瘍細胞増殖も阻害するかどうか、このようにして、それが上皮間葉転換を起こした細胞の増殖を特異的に阻害する薬剤であるかどうかの判断をする追加的な工程を含む。上記の方法の一つの実施形態において、上皮間葉転換を起こした細胞の増殖を阻害する薬剤が、前記細胞のアポトーシスを刺激することによりそのような阻害をしていることが判断される。上記の方法の一つの実施形態において、上皮間葉転換を起こした細胞の増殖を阻害する薬剤が、前記細胞の増殖を阻害することによりそのような阻害をしていることが判断される。
[192]本発明は、間葉様細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤を同定する方法も提供しており、これは上皮細胞株H1650の細胞試料をH1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が試料中の間葉様H1650細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こすかどうかについて、そのレベルが試料細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを試験薬と接触していない同一の間葉様H1650細胞サンプルにおける同じの生物マーカーのレベルと比較することにより判断すること、かくして、試験薬が、間葉が上皮転換を起こすように間葉様腫瘍細胞を刺激する薬剤であるかどうかを判断することを含む。間葉様の細胞が間葉から上皮への転換を起こすことを刺激する薬剤は、部分的にEMT変化に起因する線維性疾患の治療にとって有用であり、これには、限定はされないが、腎線維症、肝臓の線維形成、肺疾患の線維形成、および中皮腫を含む。一つの実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドは、EGFまたはHGFである。別の実施形態において、H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである。
[193]本発明は、細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤を同定する方法も提供しており、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘発的に発現するよう設計された上皮細胞株H1650の細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試料を改変H1650細胞での上皮間葉転換を刺激する前記タンパク質の発現を誘発する化合物と接触させること、試料中の腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するかどうかを、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを試験薬と接触していない同一の改変CFPAC細胞試料における同じ生物マーカーのレベルと比較し、かくして、試験薬が腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む。
[194]本発明は、上皮間葉転換を起こす細胞を阻害する薬剤を同定する方法も提供しており、これは、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮細胞株H1650の細胞試料を、細胞において上皮間葉転換が誘発されるように前記タンパク質の発現を誘導する化合物と接触させること、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること、試験薬が間葉様H1650の細胞増殖を阻害するかどうかを判断すること、および、かくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤であるかどうかを判断することを含む。この方法の代替的な実施例には、試験薬が上皮間葉転換を起こした細胞の増殖を阻害するかどうかを判断する工程の後で、間葉様H1650細胞増殖を阻害する薬剤が、上皮性のH1650細胞増殖も阻害するかどうかを判断し、かくして、それが上皮間葉転換を起こした細胞の増殖を特異的に阻害する薬剤であるかどうかの判断をする追加的な工程を含む。上記の方法の一つの実施形態において、上皮間葉転換を起こした細胞の増殖を阻害する薬剤が、前記細胞のアポトーシスを刺激することによってそのような阻害をしていることが判断される。上記の方法の一つの実施形態において、上皮間葉転換を起こした細胞の増殖を阻害する薬剤が、前記細胞の増殖を阻害することによってそのような阻害をしていることが判断される。
[195]本発明は、間葉様細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤を同定する方法も提供し、これは、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮細胞株H1650の細胞試料を、細胞において上皮間葉転換が誘発されるように前記タンパク質の発現を誘導する化合物と接触させる、細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させる、試験薬が試料中の間葉様H1650細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こすかどうかについて、そのレベルが試料細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを試験薬と接触していない同一の間葉様CFPACサンプル-1細胞における同じ生物マーカーのレベルと比較することにより判断する、またこうして、試験薬が間葉様細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤であるかどうかを判断することを含む。
[196]本発明は、以下の実験の詳細で、より良く理解される。しかし、以下に続く請求項により完全に記述されるように、検討されている特定の方法および結果は本発明の単なる実例であり、これをいかなる形でも制限するとは見なされないことは、当業者であれば容易に理解できるはずである。
[197]実験の詳細
[198]序文
[199]目的とする抗がん剤を臨床試験へと進めるには、目的とする抗がん剤の同定のためのモデルおよび抗がん剤の特定の組み合わせについての合理的設計が明らかに必要である。ここで、上皮系および間葉系の両方の腫瘍細胞化合物についてのモデルシステムについて説明する。腫瘍内の上皮系および間葉系の両方の細胞タイプを標的にする能力は、患者の長期生存に対する治療の影響にとって非常に重要である。説明したモデルにより、生体外および動物モデルにおける腫瘍細胞タイプに対する、抗がん化合物、抗体、アプタマーおよびその他の治療用核酸の評価が可能となる。
[200]材料および方法
[201]細胞培養条件
[202]10%のFBS、2mM L-グルタミン、および1mMのピルビン酸ナトリウムを含むRPMI1650内で、37℃、5%CO2で、ヒト細胞株H1650を培養した。成長因子およびサイトカイン誘発したEMTを7日間にわたり監視した。成長因子およびサイトカインは、商業的供給源から入手したもので、以下のとおり使用した。HGF(肝細胞成長因子)を100ng/ml、EGF(上皮系細胞増殖因子)を100ng/ml、OSM(オンコスタチンM)を100ng/ml、TGFβ1(形質転換増殖因子β 1)を10ng/ml、およびTNFα(腫瘍壊死因子α)を25ng/ml。
[203]3次元マトリゲル培養
[204]組織培養のウェルを1mm以上の深さのマトリゲルの層で覆った。2%マトリゲル中、播種密度5000/cm2で、H1650細胞をこの上に播種した。細胞/マトリゲルの層が一旦固化したら培養液を加え、リガンドで細胞を処理する前に、培養をCO2中37℃で培養した。リガンドのある培地とリガンドのない培地を、実験の持続期間中、3〜4日毎に補充した。
[205]細胞株抽出物の免疫ブロット分析
[206]リン酸緩衝食塩水(PBS)で細胞を一回洗浄して、プロテアーゼ阻害剤(シグマ P8340)、ホスファターゼ阻害剤(Sigma P2850、P5726)および200μMバナジウム酸ナトリウムを含む氷冷のRIPA緩衝液(Sigma R0278)中でスクレーピングしながら(セルリフター、Corning Inc. #3008を使用)、氷上で10分間溶解して回収した。最大速度、4℃で10分間、上澄液を微量遠心機にかけた。BCA法(Pierce #23225)を使用してタンパク質含量を定量化し、試料をLaemliバッファー内で総タンパクに標準化し、100℃で10分に加熱した。Bis-Trisゲルシステム(Invitrogen NuPAGE)をMOPSバッファー(Invitrogen NP0001)と共に使用してSDS PAGEを実行し、iBLOTシステム(Invitrogen)を使用してニトロセルロース上に移し、主なAb供給業者の要件を手引きにPBS-T(0.1% Tween 20)、5%脱脂乳またはBSA中で遮断した。5%脱脂乳またはBSAのどちらかに入れたPBS-T(0.1% Tween 20)を以下の作業希釈度に希釈した中で、全ての一次抗体を一晩4℃で培養した: 抗E-カドヘリン(Santa Cruz #sc-21791)1:500希釈、抗ビメンチン(BD Biosciences #550513)1:2000希釈、1:1000希釈、抗β-アクチン(シグマ、A5441)1:10,000希釈。使用した第二HRP標識抗体は: 抗ウサギIgG HRP(Amersham NA934)1:5000希釈、抗マウスIgG HRP(Sigma A2304)1:2000希釈である。Supersignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate(Pierce)を使用して、膜を可視化した。
[207]2D培養のための免疫蛍光/共焦点顕微鏡
[208]4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences #15710)/PBS(Gibco#14190)で10分間室温で細胞を固定し、PBSで洗浄し、PBS中0.1%トリトンX100(Sigma P1379)で10分間室温で透過化させた。3% BSA/PBSで少なくとも15分間細胞をブロッキングした後、ブロッキングバッファーで希釈した一次抗体と共に少なくとも2時間室温で培養した。抗E-カドヘリンは、1:75希釈で使用し、また抗ビメンチン(Millipore #AB5733)は1:2000希釈で使用した。細胞を洗浄し、蛍光標識二次抗体で1時間培養した後、5分間のTO-PRO3核対比染色(Invitrogen #T3605)を室温で行い、洗浄してスライド上にPro-Long Gold退色防止剤(Invitrogen #P36934)と共に載せた。使用した二次蛍光抗体は: 抗マウス488nm(Invitrogen #A11029)1:600希釈、抗ニワトリTRITC(Chemicon #AP194R)1:50希釈であった。染色した細胞を、ライカ共焦点ソフトウェア(LCS)を使用して、ライカDMRXE顕微鏡/SP2スキャナー上に捕獲した。
[209]3Dマトリゲルのための免疫蛍光/共焦点顕微鏡

[210]2〜4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences #15710)/PBS(Gibco#14190)で10分間、室温で細胞を固定し、PBSで洗浄し、PBS中0.1%トリトンX100(Sigma P1379)で20分間室温で透過化させた。3% BSA/PBSで少なくとも1時間細胞をブロッキングした後、ブロッキングバッファー内で希釈した一次抗体と共に少なくとも一晩室温で培養した。 抗E-カドヘリン(Santa Cruz sc-21791)は1:75希釈で使用し、また抗ビメンチン(Millipore #AB5733)は1:2000希釈で使用した。細胞を洗浄し、少なくとも1時間、望ましくは一晩、蛍光標識二次抗体と共に室温で培養した。これに続き、3回、20分間リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄したが、3回目の洗浄には5μM TO-PRO3核対比染色(Invitrogen #T3605)が含まれ、どれも室温で行った。最後の20分間リン酸緩衝食塩水(PBS)での洗浄の後、Pro-Long Gold退色防止剤(Invitrogen #P36934)を加えた。スライドにカバーガラスをかぶせ、暗所に4℃で保管した。ライカ共焦点ソフトウェア(LCS)を使用して、染色した細胞をライカDMRXE顕微鏡/SP2スキャナー上に捕獲した。
[211]薬理学的阻害剤
[212]MEK阻害剤1(EMD Biosciences #444937)、JAK阻害剤1(EMD Biosciences #420099)、およびLY294002(EMD Biosciences #440202)を、指示された濃度で使用した。リガンド刺激の前、細胞を阻害剤で30分処理した。実験3〜4日目に、媒体、阻害剤およびリガンドを一新した。細胞を写真撮影し、7日目にウエスタンブロット法用にRIPA緩衝液で溶解した。
[213]EMT形態および表現型の逆転
[214]リガンドありで、またはリガンドなしで細胞を7日間処理した後、リガンドなしの新鮮なプレートに継代接種した。指示された日にRIPA緩衝液中のタンパク質について細胞を回収し、EMTマーカーについて免疫ブロット法により逆転を監視した。
[215]倍加時間:
[216]細胞を播種し、リガンドで7日間処理した。7日に細胞を計数し、6 cm細胞培養シャーレ上に再び播種した。3日目、5日目、7日目、10日目および12日目に細胞をトリプシン処理し、シャーレ内の細胞の合計数を計数して倍化を判定した。倍加時間を、ウェブサイトwww.doubling-time.comにある複数時点法を使用して計算した。
[217]qPCR:
[218]細胞を播種し、リガンドで7日間処理した。収穫の時点で細胞をトリプシン処理し、後で使用するためにスナップ凍結した。RNAqueous-4 PCRキット(Ambion、AM1914)を使用して総RNAを単離した。Turbo DNA-Freeキット(Ambion、AM1907)を使用して試料をDNase処理し、qPCR分析用のSuperscript III(Invitrogen、18080-044)を使用して逆転写した。ProbeFinderソフトウェア(ユニバーサルプローブライブラリ、Roche)を使用して、Taqmanプライマーおよびロックド核酸プローブを設計した。mRNA分析のために、ABI 7900HTシリーズのPCRマシンを使用してリアルタイムPCRを実施した。サーモサイクル条件は、以下のとおりであった:50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒、50℃で10秒、60℃で1分。データを45サイクルについて収集し、GAPDHに対して標準化し、未処理の対照試料に対してさらに標準化した。
[219]
[220]結果
[221]EMTリガンド駆動型細胞モデル
[222]株細胞が上皮間葉転換(EMT)を起こす能力について、さまざまな細胞外リガンドドライバーを使用して調査した。NSCLC、膵臓癌、および乳癌の細胞株のパネルを、それぞれのリガンドが単独または組み合わせで存在する中で細胞を処理することにより、7日間にわたりスクリーニングした。当初のスクリーニングで、リガンドが形態的変化を起こす上皮系マーカーであるE-カドヘリンを下方制御するか、またはビメンチンなどの間葉系マーカーを上方制御する能力を判定した。潜在的なEMT細胞モデルは、間葉系マーカーを上方制御し、形態的変化を示すはずである。より確かなモデルは、E-カドヘリン発現の下方制御を示す。E-カドヘリンのタンパク質レベルが実質的に下方制御されないモデルについては、E-カドヘリンが誤って局在化しているとみなされる。
[223]H1650 NSCLC細胞株は、特に組み合わせで使用したとき、各種のリガンドとEMTを起こす傾向を持つ。図1は、ビメンチンの上方制御およびE-カドヘリンの下方制御に影響を持つ、試験対象のリガンドの比率をまとめたものである。これらのEMTイベントに伴う形態変化を図2に示す。
[224]図1に示すとおり、E-カドヘリン減少の免疫ブロットは、EMTイベントについての7日間の処理後の残留タンパク質レベルを示す。E-カドヘリンが誤って局在化されることがあるため、共焦点顕微鏡法を行い、E-カドヘリンおよびビメンチンの局在化を調べた。図3に示すとおり、E-カドヘリンの誤った局在化が観察された。
[225]以下の結論に至った。HGFおよびEGFは単独で部分的なEMTを誘発する。HGF+EGF、HGF+TGFβ1、HGF+TNFα、HGF+OSM、EGF+TNFα、OSM+TNFα、およびTGFβ1+TNFαの組み合わせによって、より完全度の高いEMTが起こされた。一部の例において、E-カドヘリンタンパク質が誤って局在化された。
[226]形態(図4)およびマーカー変化(図5)について、3D-マトリゲル条件下で、H1650細胞を成長因子およびサイトカインで処理した。興味深いことに、3DでのH1650細胞では、間葉系マーカーの存在は成長中の細胞コロニーの突出部に限定され、また上皮系マーカーE-カドヘリンは成長中のコロニーの本体のみに発現した。さらに、コロニーの中央部にある細胞は、細胞死を起こした。H1650はこのような変化を示した最初の癌細胞株であり、EMTの伝統的3DモデルであるMDCKおよびMCF10Aについて記載される内容を連想させるものである。
[227]EMTにおけるシグナル経路の分析
[228]このモデルにおいて、どのシグナル経路がEMTに重要であるかを判断するために、MEK、PI3KおよびJAKに対する阻害剤の存在下で、細胞をOSM、HGF+OSMまたはOSM+TGFβを用いて7日間にわたり誘発させた。これらの経路は前記リガンドの確立された下流エフェクターであることからである。7日後、形態を示すために細胞の写真撮影を行い、細胞を回収して免疫ブロットによりマーカーを分析した(図6)。3つの全てのリガンドモデルで、JAKの阻害によってEMTが遮断されることがわかった。OSMおよびOSM+TGFβではほぼ完全に遮断されたが、OSM+HGFでは部分的であった。PI3Kの阻害によって、OSM誘発されたEMTが遮断され、またHGF+OSMにより誘発されたEMTが部分的に遮断されたが、OSM+TGFβで誘発されたEMTにはほとんど効果がなかった。MEKの阻害は、どのモデルにも有意な効果はなかった。
[229]リガンドの回収によるEMTの逆転
[230]このようなモデルでEMTが可逆的かどうかを判定した。HGF、OSM、TGFβ、HGF+OSMまたはOSM+TGFβで細胞を7日間処理した後、細胞を継代し、リガンドのない正常な増殖培地に再播種した。その後2週間にわたり、細胞のEMTマーカーを監視して、どの時点で逆転が起こるかを評価した(図7)。3日までに、HGF、OSMまたはTGFβ単独で処理した細胞でのE-カドヘリンおよびビメンチン発現が、基底レベルに逆転した。ただし、2つのリガンドの組み合わせでは、かなり長い時間がかかった。リガンドの回収から14日後までに、E-カドヘリンおよびビメンチンは基底レベルに近づいたが、一部の残留ビメンチンはそのまま残った。全てのリガンド処理で、Zeb1発現が基底レベルに戻ることはなかった。
[231]2DにおけるEMTが表現型に与える影響
[232]EMTに関連する一つの表現型が変化したとき、リガンド処理したH1650細胞を倍加時間の変化について調べた。細胞をリガンドで7日間処理した後、倍加時間をその後2週間にわたり判定した。HGF+OSMのみで小幅な倍加時間の増加がみられた一方、その他の処理では影響がみられなかった(TGFβ、OSM+TGFβ)か、または倍加時間の小幅の減少がみられた(HGF、OSM)。これらの結果は、H1650細胞でみられたEMTが増殖率の有意な変化には関連しないことを示す。
[233]
[234]表3:EMTリガンドに対応した倍加時間の変化。指示通り、細胞をリガンドで7日間処理した。その後2週間にわたり、倍加時間を計算した。時間は、時間数で表し、結果は2回の実験を平均した。
[235]EMT中の転写性再プログラミング
[236]E-カドヘリンおよびビメンチン発現の変化に加え、他のモデルでEMTによって変化することが報告されている遺伝子パネルについての変化の特徴付けも行った。リガンドで7日間処理した細胞からRNAを単離し、qPCRによる遺伝子発現の変化を観察した(表4)。上皮系の遺伝子について、CLDN3およびTJP3の下方制御がみられた。間葉系の遺伝子ITGB3、VCAN、およびVIMの上方制御がみられた。評価したEMT転写因子中、SNAI2、ZEB1およびZEB2のみが上方制御された。遺伝子変化のパターンにより、全ての処理(SNAI2、VCAN、VIM)、OSM依存性遺伝子(ITGB3、ZEB1、ZEB2)、および2つのリガンド依存性遺伝子(CLDN3、TJP3)により変化する遺伝子が明らかになった。
[237]
[238]表4:リガンド処理に対応したEMT遺伝子の変化。細胞をリガンドで7日間処理し、RNAについて収穫した。遺伝子の変化をqPCRにより数量化し、倍数変化で表現した。3倍未満の倍数変化は、NCとして報告した。
[239]略語:
[240]EGF:上皮成長因子、EGFR:上皮成長因子受容体、EGFR-TKI:上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤、EMT:上皮間葉転換、MET:間葉上皮転換、NSCL:非小細胞肺、NSCLC、非小細胞肺癌、HNSCC:頭と首扁平上皮癌、CRC:結腸直腸癌、MBC:転移性乳癌、Brk:胸部腫瘍キナーゼ(別名タンパク質チロシンキナーゼ6(PTK6))、FCS:ウシ胎児血清、LC:液体クロマトグラフィー、MS:質量分析法、IGF-1:インスリン様成長因子-1、TGFα:形質転換増殖因子α、HB-EGF:ヘパリン-結合上皮成長因子、LPA:リゾホスファチジン酸、IC50:半値最大阻害濃度、pY:ホスホチロシン、wt:野生型、PI3K:ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ、GAPDH:グリセルアルデヒド3-リン酸塩 脱水素酵素、MAPK:マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ;PDK-1:3-ホスホイノシチド依存タンパク質キナーゼ1、Akt:別名タンパク質キナーゼBで、これはウィルス発癌遺伝子v-Aktの細胞相同体である、mTOR:哺乳類のラパマイシンの標的、4EBP1:真核生物の翻訳開始因子-4E(mRNA キャップ-結合タンパク質)結合タンパク質-1、別名PHAS-I、p70S6K:70 kDaリボソームタンパク質-S6キナーゼ、eIF4E、真核生物の翻訳開始因子-4E(mRNA キャップ-結合タンパク質)、Raf:Raf発癌遺伝子のタンパク質キナーゼ生成物、MEK:ERKキナーゼ、別名マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ、ERK:細胞外のシグナル調節タンパク質キナーゼ、別名マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ、PTEN:「10番染色体で削除されたホスファターゼおよびテンシン相同体」、ホスファチジルイノシトールリン酸ホスファターゼ、pPROTEIN:ホスホ-タンパク質、「タンパク質」はリン酸化できる任意のタンパク質でよく、例えば、EGFR、ERK、S6など、PBS:リン酸緩衝生理食塩水、TGI:腫瘍増殖阻害、WFI:注射用の水、SDS:ナトリウムドデシル硫酸塩、ErbB2:「v-erb-b2赤芽球系白血病ウィルス発癌遺伝子相同体2」、別名HER-2、ErbB3:「v-erb-b2赤芽球系白血病ウィルス発癌遺伝子相同体3」、別名HER-3;ErbB4:「v-erb-b2赤芽球系白血病ウィルス発癌遺伝子相同体4」、別名HER-4、FGFR:線維芽細胞増殖因子受容体、DMSO:ジメチルスルホキシド、qPCR:定量的ポリメラーゼ連鎖反応。
[241]参照による組み込み
[242]本書で開示した全ての特許、公開された特許出願およびその他の参考文献は、ここに参照によって本書に明示的に組み込まれる。
[243]均等物
当業者であれば、日常の実験以上のものを使用することなく、本書に具体的に記述された本発明の特定実施形態の多くの均等物を認識、または解明できるはずである。このような均等物は、以下の請求項の範囲に包含されることを意図している。

Claims (93)

  1. 腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤を同定する方法であって、以下:
    上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、スクリーニング対象の試験薬と接触させること;
    H1650細胞において上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤に試料を接触させること;
    前記試験薬が、試料中の腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していないH1650細胞の同一サンプルにおける同じ生物マーカーのレベルと比較することによって判断すること;および
    かくして、前記試験薬が、腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断すること
    を含む方法。
  2. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがEGF受容体またはHGF受容体に結合し、かつ活性化させる任意のタンパク質リガンドから選択される、請求項1の方法。
  3. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドが、EGF、TGF-α、HB-EGF、アンフィレギュリン、ベタセルリン、エピレグリン、エピゲン、およびHGFから選択される、請求項2の方法。
  4. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドが、EGFおよびHGFから選択される、請求項3の方法。
  5. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがEGFであり、任意にTNF-αで補完される、請求項4の方法。
  6. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがHGFであり、任意にEGF、TGF-β、TNF-α、またはOSMで補完される、請求項4の方法。
  7. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドが、オンコスタチンMがその受容体に結合することによって活性化したシグナル伝達経路を活性化させる受容体に結合するタンパク質リガンドか、または、TGF-βがその受容体に結合することによって活性化したシグナル伝達経路を活性化させる受容体に結合するタンパク質リガンドのいずれか、および、TNFα受容体に結合して、TNFαのその受容体への結合により活性化される同一のシグナル伝達経路を活性化させる一つのリガンドの組み合わせである、請求項1の方法。
  8. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである、請求項7の方法。
  9. TGF-βがTGF β -1、TGF β -2、TGF β -3、またはそのヘテロ二量体である、請求7の方法。
  10. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーが、上皮系細胞生物マーカーである、請求項1の方法。
  11. 上皮系細胞生物マーカーが、E-カドヘリン、CDH1プロモーター作用、サイトケラチン8、サイトケラチン18、P-カドヘリンまたはerbB3である、請求項10の方法。
  12. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーが、間葉系細胞生物マーカーである、請求項1の方法。
  13. 間葉系細胞生物マーカーが、ビメンチン、フィブロネクチン、Nカドヘリン、CDH1メチル化、zeb1、twist、FOXC2またはsnailである、請求項12の方法。
  14. 上皮間葉転換を起こす腫瘍細胞を阻害する薬剤を同定する方法であって、以下:
    上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること;
    前記細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること;
    前記試験薬が間葉様H1650の細胞増殖を阻害するかどうかを判断すること;および
    かくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤であるかどうかを判断すること
    を含む方法。
  15. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがEGF受容体またはHGF受容体に結合し、かつ活性化させる任意のタンパク質リガンドから選択される、請求項14の方法。
  16. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドが、EGF、TGF-α、HB-EGF、アンフィレギュリン、ベタセルリン、エピレグリン、エピゲン、およびHGFから選択される、請求項15の方法。
  17. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがEGFおよびHGFから選択される、請求項16の方法。
  18. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがEGFであり、任意にTNF-αで補完される、請求項17の方法。
  19. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがHGFであり、任意にEGF、TGF-β、TNF-α、またはOSMで補完される、請求項17の方法。
  20. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドが、オンコスタチンMがその受容体に結合することによって活性化したシグナル伝達経路を活性化させる受容体に結合するタンパク質リガンドか、または、TGF-βがその受容体に結合することによって活性化したシグナル伝達経路を活性化させる受容体に結合するタンパク質リガンドのいずれか、および、TNFα受容体に結合して、TNFαのその受容体への結合により活性化される同一のシグナル伝達経路を活性化させる一つのリガンドの組み合わせである、請求項14の方法。
  21. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである、請求項20の方法。
  22. TGF-βがTGF β -1、TGF β -2、TGF β -3、またはそのヘテロ二量体である、請求19の方法。
  23. 請求項14の方法であって、試験薬が上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害するかどうかを判断する工程の後で、以下の工程:
    間葉様H1650腫瘍細胞増殖を阻害する薬剤が、上皮性のH1650腫瘍細胞増殖も阻害するかどうかを判断すること;および
    かくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を特異的に阻害する薬剤であるかどうかの判断をすること
    を含む方法。
  24. 試験薬が間葉様H1650腫瘍細胞増殖を阻害するかどうかを判断する工程において、試験薬が前記腫瘍細胞のアポトーシスを刺激することにより阻害することが判断される、請求項23の方法。
  25. 試験薬が間葉様H1650腫瘍細胞増殖を阻害するかどうかを判断する工程において、試験薬が前記腫瘍細胞の増殖を阻害することにより阻害することが判断される、請求項23の方法。
  26. 間葉様腫瘍細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤を同定する方法であって、以下:
    上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること;
    細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること;
    間葉が上皮転換を起こすように試験薬が試料中の間葉様H1650細胞を刺激するかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していない同一の間葉様H1650細胞試料における同じ生物マーカーのレベルと比較することにより判断すること;および
    かくして、試験薬が間葉が上皮転換を起こすように間葉様腫瘍細胞を刺激する薬剤であるかどうかを判断すること
    を含む方法。
  27. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがEGF受容体またはHGF受容体に結合し、かつ活性化させる任意のタンパク質リガンドから選択される、請求項26の方法。
  28. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドが、EGF、TGF-α、HB-EGF、アンフィレギュリン、ベタセルリン、エピレグリン、エピゲン、およびHGFから選択される、請求項27の方法。
  29. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドが、EGFおよびHGFから選択される、請求項28の方法。
  30. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがEGFであり、任意にTNF-αで補完される、請求項29の方法。
  31. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがHGFであり、任意にEGF、TGF-β、TNF-α、またはOSMで補完される、請求項29の方法。
  32. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドが、オンコスタチンMがその受容体に結合することによって活性化したシグナル伝達経路を活性化させる受容体に結合するタンパク質リガンドか、または、TGF-βがその受容体に結合することによって活性化したシグナル伝達経路を活性化させる受容体に結合するタンパク質リガンドのいずれか、および、TNFα受容体に結合して、TNFαのその受容体への結合により活性化される同一のシグナル伝達経路を活性化させる一つのリガンドの組み合わせである、請求項26の方法。
  33. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドは、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである、請求項32の方法。
  34. TGF-βがTGF β -1、TGF β -2、TGF β -3、またはそのヘテロ二量体である、請求項32の方法。
  35. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーが上皮系細胞生物マーカーである、請求項26の方法。
  36. 上皮系細胞生物マーカーが、E-カドヘリン、CDH1プロモーター作用、サイトケラチン8、サイトケラチン18、P-カドヘリンまたはerbB3である、請求項35の方法。
  37. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーが間葉系細胞生物マーカーである、請求項26の方法。
  38. 間葉系細胞生物マーカーが、ビメンチン、フィブロネクチン、Nカドヘリン、CDH1メチル化、zeb1、twist、FOXC2またはsnailである、請求項37の方法。
  39. 上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する化学物質を含む組成物を調製する方法であって、以下:
    上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること;
    試料を、H1650細胞において上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤に接触させること;
    前記試験薬が、試料中の腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していないH1650細胞の同一サンプルでの同じ生物マーカーのレベルと比較することによって判断すること;および
    このようにして、試験薬が腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断すること;
    ならびにそのように同定された試験薬を担体と混合させて、それにより前記組成物を調製すること
    を含む方法。
  40. 上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する化学物質を含む組成物を調製する方法であって、以下:
    上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること;
    細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること;
    試験薬が間葉様H1650の細胞増殖を阻害するかどうかを判断すること;および
    かくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤であるかどうかを判断すること;
    ならびにそのように同定された試験薬を担体と混合させて、それにより前記組成物を調製すること
    を含む方法。
  41. 上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する化学物質を含む組成物を調整する方法であって、以下:
    上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること;
    細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること;
    試験薬が試料中の間葉様H1650細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こすかどうかを、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していない同一の間葉様H1650細胞試料における同一生物マーカーのレベルと比較することにより判断すること;および
    かくして、試験薬が間葉が上皮転換を起こすように間葉様腫瘍細胞を刺激する薬剤であるかどうかを判断すること;
    ならびにそのように同定された試験薬を担体と混合させて、それにより前記組成物を調製すること
    を含む方法。
  42. 抗癌剤の同定で使用するための間葉様腫瘍細胞調製物であって、以下:
    上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料をH1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一または二重タンパク質リガンド製剤と接触させること;
    H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドが、EGF受容体またはHGF受容体に結合し、かつ活性化させる任意のタンパク質リガンドから選択されること;および
    H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドが、オンコスタチンMがその受容体に結合することによって活性化したシグナル伝達経路を活性化させる受容体に結合するタンパク質リガンドか、または、TGF-βがその受容体に結合することによって活性化したシグナル伝達経路を活性化させる受容体に結合するタンパク質リガンドのいずれか、および、TNFα受容体に結合して、TNFαのその受容体への結合により活性化される同一のシグナル伝達経路を活性化させる一つのリガンドの組み合わせであること;
    を含むプロセスによって調製される、調製物。
  43. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドが、EGF、TGF-α、HB-EGF、アンフィレギュリン、ベタセルリン、エピレグリン、エピゲン、およびHGFから選択される、請求項42の細胞調製物。
  44. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがEGFおよびHGFから選択される、請求項42の細胞調製物。
  45. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがEGFであり、任意にTNF-αで補完される、請求項44の細胞調製物。
  46. H1650細胞における上皮間葉転換を誘発する単一タンパク質リガンドがHGFであり、任意にEGF、TGF-β、TNF-α、またはOSMで補完される、請求項44の細胞調製物。
  47. H1650細胞での上皮間葉転換を誘発する二重タンパク質リガンドが、TNFαとオンコスタチン-Mの組み合わせ、またはTNFαとTGF-βの組み合わせである、請求項42の細胞調製物。
  48. TGF-βがTGF β -1、TGF β -2、TGF β -3、またはそのヘテロ二量体である、請求項42の細胞調製物。
  49. 腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤を同定する方法であって、以下:
    H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、スクリーニング対象の試験薬と接触させること;
    改変H1650細胞での上皮間葉転換を刺激する前記タンパク質の発現を誘導する化合物と試料を接触させること;
    前記試験薬が、試料中の腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害するかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していない改変H1650細胞の同一試料での同じ生物マーカーのレベルと比較することによって判断すること;および
    かくして、試験薬が腫瘍細胞が上皮間葉転換を起こすのを阻害する薬剤であるかどうかを判断すること;
    を含む方法。
  50. 誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質がZeb-1またはSnailである、請求項49の方法。
  51. 誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質がHGFである、請求項49の方法。
  52. Tet調節プロモーターが、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘発的に発現するために使用される、請求項49の方法。
  53. Tet調節プロモーターがTet-onシステムである、請求項52の方法。
  54. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーが上皮系細胞生物マーカーである、請求項49の方法。
  55. 上皮系細胞生物マーカーが、E-カドヘリン、サイトケラチン8、サイトケラチン18、P-カドヘリンまたはerbB3である、請求項54の方法。
  56. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す上皮系細胞生物マーカーが、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性である、請求項54の方法。
  57. 上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物を改変H1650細胞に前記プロモーターレポーター作用がレポーター遺伝子のレベルまたは活性により監視できるように含めることにより、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性が評価される、請求項56の方法。
  58. 上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物が、E-カドヘリンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼである、請求項57の方法。
  59. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーが間葉系細胞生物マーカーである、請求項49の方法。
  60. 間葉系細胞生物マーカーが、ビメンチン、フィブロネクチン、Nカドヘリン、CDH1メチル化、zeb1、twist、FOXC2またはsnailである、請求項59の方法。
  61. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す間葉系細胞生物マーカーが、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性である、請求項59の方法。
  62. 間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物を、改変H1650細胞に前記プロモーターレポーター作用がレポーター遺伝子のレベルまたは活性により監視できるように含めることにより、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性が評価される、請求項61の方法。
  63. 上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物が、E-カドヘリンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼである、請求項62の方法。
  64. H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料が、動物において成長する異種移植片である、請求項49の方法。
  65. 上皮間葉転換を起こす腫瘍細胞を阻害する薬剤を同定する方法であって、以下:
    H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、前記タンパク質の発現を誘導してH1650細胞における上皮間葉転換を誘発する化合物と接触させること;
    前記細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること;
    前記試験薬が間葉様H1650の細胞増殖を阻害するかどうかを判断すること;および
    かくして、それが上皮間葉転換を起こした腫瘍細胞の増殖を阻害する薬剤であるかどうかを判断すること
    を含む方法。
  66. 誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質がZeb-1またはsnailである、請求項65の方法。
  67. 誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質がHGFである、請求項65の方法。
  68. Tet調節プロモーターが、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するために使用される、請求項65の方法。
  69. Tet調節プロモーターがTet-onシステムである、請求項68の方法。
  70. 間葉様腫瘍細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤を同定する方法であって、以下:
    H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料を、前記タンパク質の発現を誘導して、H1650細胞において上皮間葉転換を誘発する化合物と接触させること;
    前記細胞試料をスクリーニング対象の試験薬と接触させること;
    前記試験薬が試料中の間葉様H1650細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こすかどうかについて、そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーのレベルを、試験薬と接触していない同一の間葉様H1650細胞試料における同じ生物マーカーのレベルと比較することにより判断すること;および
    かくして、試験薬が間葉様腫瘍細胞を刺激して間葉が上皮転換を起こす薬剤であるかどうかを判断すること
    を含む方法。
  71. 誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質がZeb-1またはsnailである、請求項70の方法。
  72. 誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質がHGFである、請求項70の方法。
  73. Tet調節プロモーターが、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するために使用される、請求項70の方法。
  74. Tet調節プロモーターがTet-onシステムである、請求項73の方法。
  75. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーが上皮系細胞生物マーカーである、請求項70の方法。
  76. 上皮系細胞生物マーカーが、E-カドヘリン、サイトケラチン8、サイトケラチン18、P-カドヘリンまたはerbB3である、請求項75の方法。
  77. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す上皮系細胞生物マーカーが、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性である、請求項75の方法。
  78. 上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物を改変H1650細胞に前記プロモーターレポーター作用がレポーター遺伝子のレベルまたは活性により監視できるように含めることにより、上皮系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性が評価される、請求項77の方法。
  79. 上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物が、E-カドヘリンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼである、請求項78の方法。
  80. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す生物マーカーが間葉系細胞生物マーカーである、請求項70の方法。
  81. 間葉系細胞生物マーカーが、ビメンチン、フィブロネクチン、Nカドヘリン、CDH1メチル化、zeb1、twist、FOXC2またはsnailである、請求項80の方法。
  82. そのレベルが試料腫瘍細胞のEMTステータスを示す間葉系細胞生物マーカーが、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性である、請求項80の方法。
  83. 間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物を改変H1650細胞に含めて、前記プロモーターレポーター作用がレポーター遺伝子のレベルまたは活性により、間葉系生物マーカー遺伝子プロモーターの活性が監視できるようにすることによって評価される、請求項82の方法。
  84. 上皮系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター構築物が、E-カドヘリンプロモーター-ホタル由来ルシフェラーゼである、請求項83の方法。
  85. H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料が、動物において成長する異種移植片である、請求項70の方法。
  86. 抗癌剤の同定で使用するための間葉様腫瘍細胞調製物であって、以下:
    H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された、上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料
    を含む腫瘍細胞調製物。
  87. 誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質がZeb-1またはSnailである、請求項86の腫瘍細胞調製物。
  88. 誘導的に発現し、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質がHGFである、請求項86の腫瘍細胞調製物。
  89. Tet調節プロモーターが、H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するために使用される、請求項86の腫瘍細胞調製物。
  90. Tet調節プロモーターがTet-onシステムである、請求項89の腫瘍細胞調製物。
  91. 前記プロモーターレポーター作用がレポーター遺伝子のレベルまたは活性により監視できるように、追加的に改変H1650細胞に安定的に組み込まれた上皮性のおよび/または間葉系生物マーカー遺伝子プロモーター-レポーター遺伝子構築物を含む、請求項86の腫瘍細胞調製物。
  92. レポーター遺伝子のレベルまたは活性がEMT誘導を監視するために使用できるように、さらにH1650細胞がレポーター遺伝子を誘導的に発現するよう設計された、請求項91の腫瘍細胞調製物。
  93. H1650細胞における上皮間葉転換を刺激するタンパク質を誘導的に発現するよう設計された上皮腫瘍細胞株H1650の細胞試料が、動物において成長する異種移植片である、請求項86の方法。
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