JP2012138285A - 同軸ケーブル - Google Patents
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Abstract
【課題】シース材として可塑剤等を含む材料を使用した場合であっても絶縁体の劣化を抑制することが可能である同軸ケーブルを提供する。
【解決手段】内導体2の外周が絶縁体3で被覆され、該絶縁体3の外周に外導体4が設けられ、該外導体4の外周が樹脂シース5により被覆されているものであり、絶縁体3と樹脂シース5との間に結晶性樹脂からなり、可塑剤の移行を防止するための移行防止層6を形成して同軸ケーブル1を構成した。
【選択図】図1
【解決手段】内導体2の外周が絶縁体3で被覆され、該絶縁体3の外周に外導体4が設けられ、該外導体4の外周が樹脂シース5により被覆されているものであり、絶縁体3と樹脂シース5との間に結晶性樹脂からなり、可塑剤の移行を防止するための移行防止層6を形成して同軸ケーブル1を構成した。
【選択図】図1
Description
本発明は、同軸ケーブルに関するものである。
従来、同軸ケーブルとして、例えば、内側から内部導体、発泡絶縁体、金属編組等の外部導体、シースが順次被覆された同軸ケーブルが公知である(特許文献1参照)。この同軸ケーブルは、発泡絶縁体の内側に内スキン層が形成され、発泡絶縁体の外側に外スキン層が形成されている。
同軸ケーブルのシースの材料として、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を使用した場合、シースに含まれる可塑剤が外部導体を通して絶縁体に移行することがある。このとき絶縁体がポリエチレン等のポリオレフィン系材料である場合、移行した可塑剤により劣化し易くなってしまうという問題があった。特に同軸ケーブルが自動車等の車載用の場合には、高い耐久性が要求されることから、耐久性を向上させる必要がある。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、シース材として可塑剤等を含む材料を使用した場合であっても絶縁体の劣化を抑制することが可能である同軸ケーブルを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の同軸ケーブルは、内導体の外周が絶縁体で被覆され、該絶縁体の外周に外導体が設けられ、該外導体の外側が軟質塩化ビニル樹脂シースにより被覆されている同軸ケーブルであって、
前記絶縁体と前記樹脂シースの間に、結晶性樹脂からなり可塑剤の移行を防止するための移行防止層が形成されていることを要旨とするものである。
前記絶縁体と前記樹脂シースの間に、結晶性樹脂からなり可塑剤の移行を防止するための移行防止層が形成されていることを要旨とするものである。
上記同軸ケーブルにおいて前記移行防止層は、前記絶縁体と前記外導体の間、前記外導体と前記樹脂シースの間、前記絶縁体と前記外導体の間及び前記外導体と前記樹脂シースの間、のいずれかに形成することができる。
上記同軸ケーブルにおいて、前記移行防止層がポリエチレンテレフタレート樹脂からなることや、前記絶縁体がポリオレフィン系樹脂からなること等が好ましい。
上記同軸ケーブルにおいて、前記移行防止層の厚みが5〜30μmであることや、前記内導体の断面積が0.01〜0.08mm2であることが好ましい。
本発明の同軸ケーブルは、絶縁体と樹脂シースの間に、結晶性樹脂からなり可塑剤の移行を防止するための移行防止層が形成されていることにより、樹脂シースに可塑剤等を含む材料を使用した場合であっても、結晶性樹脂からなる移行防止層が可塑剤の移行を阻止して、絶縁体が可塑剤等の移行により劣化が促進されるのを防止して、長期にわたり良好な電気的特性及び機械的特性を維持することができる。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の同軸ケーブルの一例を示す断面図である。図1の同軸ケーブル1は、内導体2の外周が絶縁体3で被覆され、該絶縁体3の外周に外導体4が設けられ、該外導体4の外周が樹脂シース5により被覆されているものである。更に同軸ケーブル1は、絶縁体3と樹脂シース5との間に結晶性樹脂からなり、可塑剤の移行を防止するための移行防止層6が形成されている。図1に示す同軸ケーブル1では、移行防止層6は絶縁体3の外側であって外導体4の内側である、絶縁体3と外導体4の間に設けられている。
図2は本発明の同軸ケーブルの他の例を示す断面図である。図2に示す同軸ケーブル1は、図1に示す同軸ケーブルと同様に、内導体2、絶縁体3、外導体4、樹脂シース5が順次設けられている。図2に示す同軸ケーブル1は、外導体4の外側であって樹脂シース5の内側である、外導体4と樹脂シース5の間に、移行防止層7が設けられている。
図3は本発明の同軸ケーブルのその他の例を示す断面図である。図3に示す同軸ケーブルは、図1に示す同軸ケーブルと同様に、内導体2、絶縁体3、外導体4、樹脂シース5が順次設けられている。図2に示す同軸ケーブルは、絶縁体3と外導体の間に移行防止層6が設けられ、更に外導体4と樹脂シース5の間に移行防止層7が設けられている。
図1〜図3に示すように本発明の同軸ケーブル1は、移行防止層が、絶縁体3と樹脂シース5との間に形成されていればよく、絶縁体3と外導体4の間、外導体4と樹脂シース5の間、絶縁体3と外導体4の間及び外導体4と樹脂シース5の間のいずれに設けられていてもよい。
このように本発明の同軸ケーブル1は、結晶性樹脂からなる移行防止層6、7が、絶縁体3と樹脂シース5の間に設けられていることにより、樹脂シース5に含まれる可塑剤が外導体4を通り、絶縁体3に移行するのを阻止することができるので、絶縁体3が可塑剤によって劣化が促進されるのを良好に防止することきる。
以下、本発明の上記各構成要素について、詳細に説明する。内導体2は、同軸ケーブル1の中心導体として用いられる。内導体2は、銅、銅合金等の素線、或いは撚線等が用いられる。内導体2のサイズは、断面積が0.01〜0.08mm2であるのが好ましい。このサイズは、自動車用同軸ケーブルとして最適な大きさである。
絶縁体3を構成する絶縁材料としては、特に限定されるものではないが、オレフィン系樹脂が好ましい。オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンの単独重合体、エチレンとαオレフィンとの共重合体、オレフィンと(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニルなどとの共重合体等が挙げられる。
絶縁体3は、発泡体であっても、中実なソリッド体であってもいずれでもよい。絶縁体3の構造は使用されるシステムの特性インピーダンスと整合するように設計される。
外導体4は、一般に同軸ケーブル1のグランドとして機能する。外導体4は金属編組、金属箔等の導電構造体を用いることができる。好ましい外導体の構成としては、金属編組である。金属編素は、編組線として、銅合金等の素線を編んだものが用いられる。
樹脂シース5の具体的な材料としては、軟質塩化ビニル樹脂を用いるのが好ましい。軟質塩化ビニル樹脂は、基本的な成分として塩化ビニル樹脂と可塑剤とを含む。
樹脂シース5の厚みは、ケーブル保護の観点から0.4〜0.6mm形成するのが好ましい。
移行防止層6、7は、結晶性樹脂からなる。一般に可塑剤は樹脂の非晶部分に取り込まれやいが、結晶部分に取り込まれ難い。移行防止層としては、結晶性樹脂を用いることで、樹脂シース5の可塑剤がその内側の絶縁体3に移行するのを防止できる。その結果、絶縁体の可塑剤により劣化を防ぐことができる。同軸ケーブル1の絶縁体3の劣化が可塑剤により促進されるのを防止できるので、同軸ケーブル1は機械的特性、電気的特性を長期にわたり維持できる。
移行防止層6、7に用いられる結晶性樹脂としては、特に限定されないが、結晶性エンジニアリングプラスチック(以下、結晶性エンプラと略記することもある)が、可塑剤の移行防止性に優れ、製造時の押出特性等(後述する)に優れることから、好ましい材料である。結晶性エンプラとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)等が挙げられる。
移行防止層6、7の厚みは、それぞれ5〜30μmの範囲であるのが好ましい。移行防止層が上記範囲であれば、同軸ケーブル1の外径がさほど太くならない。また移行防止層6、7の厚みが5μm未満では、可塑剤の移行防止効果が十分得られない虞がある。また移行防止層6、7の厚みが30μmを超えると、移行防止層6、7の結晶性樹脂自体が持つ誘電率や誘電正接等の電気特性の影響により、同軸ケーブル1の電気的特性が悪化する虞がある。更に好ましい移行防止層6、7の厚みは、それぞれ8〜15μmである。
移行防止層6、7の形成方法は、特に限定されず、各種の形成手段を用いることができる。移行防止層6、7の形成方法は、例えば、予め結晶性樹脂からなるフィルム(PETフィルム等)を用いて、このフィルムを同軸ケーブルの絶縁体の外周或いは、外導体の外周に巻付ける方法が挙げられる。フィルムの巻付は、縦巻、横巻のいずれでもよい。
また移行防止層6、7は、結晶性樹脂を絶縁体の外周、外導体の外周、樹脂シースの内周等に押出成形して形成してもよい。例えば、図1に示す同軸ケーブル1の場合には、内導体2の周囲に絶縁体3を押出する際に、同時に移行防止層6を絶縁体3の周囲に押し出して、2層を同時に押出す同時押出成形により行ってもよい。
例えば、ポリエチレン樹脂を押出成形して絶縁体3を形成する際に、PET樹脂を同時押出成形し移行防止層6を形成することができる。このように絶縁体3と移行防止層6を同時押出成形する場合、PETフィルムを巻いて移行防止層を形成する場合と比較して、フィルム巻き工程を省略できるので製造コストを低減できる。更に、押出成形では、移行防止層の厚みを成形時に調節できるので、厚みの調節が容易である。
本発明の同軸ケーブルは、図1〜図3に示す態様に特に限定されず、適宜変更することが可能である。例えば、図1に示す絶縁体3と移行防止層6との間に、接着層等を設けてもよい。この場合、移行防止層としてPETフィルムを絶縁体3の周囲に接着剤で貼付けることで、接着剤層を介して移行防止層6が形成される。
本発明の同軸ケーブルは、例えば、自動車のアンテナフィーダ線等に最適に用いることができる。
以下、本発明の実施例、比較例を示す。実施例1 図1に示すように、内導体2の外周に、絶縁体3、移行防止層6、外導体4、樹脂シース5が順次積層された同軸ケーブルを作製した。外導体2は、外径0.10mmの軟銅素線を7本撚りして作成したものを用いた。絶縁体3は、ポリエチレン樹脂を内導体の周囲にφ1.6mmに押出し成形した。移行防止層6は、絶縁体3の成形と同時に、絶縁体3の外周にPETを厚み12μmに同時押出成形して形成した。外導体4は、移行防止層6の外周に、打ち数16打、持ち本数5本、素線径0.10mmの軟銅線を編み込みしてなる編組を用いた。樹脂シース5は、外導体4の外側に、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に、可塑剤としてDINPを30質量部添加した軟質塩化ビニル樹脂を0.4mmの厚みに押出成形して形成した。この同軸ケーブルの形成時の初期の特性として減衰量(電気的特性)と絶縁体の伸び(機械的特性)を測定した。更に耐久試験後の特性として、同軸ケーブルを85℃×3000時間の環境下で促進劣化させた後、減衰量と絶縁体の伸びを測定した。測定結果を表1に示す、尚、減衰量及び絶縁体の伸びは以下の方法で測定した。
[減衰量の測定方法] 100mの長さの同軸ケーブル把の状態で両端にBNCコネクタを取り付け、ネットワークアナライザ(Agilent社製、E5071A)を用いて測定した。
[絶縁体の伸び測定方法] 同軸ケーブルから絶縁体のみを取り出し、標線間距離20mm、引張速度200mm/minで引張試験を行い、破断した時の伸びを測定した。伸び率の計算は下記のように行った。伸び率[%]=(伸び量−20mm)/20mm×100
実施例2 PETからなる移行防止層の厚みを3μmに形成した以外は実施例1と同様にして実施例2の同軸ケーブルを得た。得られた同軸ケーブルについて、初期と耐久試験後の減衰量と絶縁体の伸びを測定した。測定結果を表1に示す。
実施例3 PETからなる移行防止層の厚みを50μmに形成した以外は実施例1と同様にして実施例3の同軸ケーブルを得た。得られた同軸ケーブルについて、初期と耐久試験後の減衰量と絶縁体の伸びを測定した。測定結果を表1に示す。
実施例4 図2に示すように、内導体2の外周に、絶縁体3、外導体4、移行防止層7、樹脂シース5が順次積層された同軸ケーブルを作製した。外導体2は、外径0.10mmの軟銅素線を7本撚りして作成したものを用いた。絶縁体3は、ポリエチレン樹脂を内導体の周囲にφ1.6mmに押出し成形した。外導体4は、移行防止層6の外周に、打ち数16打、持ち本数5本、素線径0.10mmの軟銅線を編み込みしてなる編組を用いた。樹脂シース5は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に、可塑剤としてDINPを30質量部添加した軟質塩化ビニル樹脂を0.4mmの厚みに押出成形して形成した。この樹脂シース形成と同時に厚み12μmのPETフィルムを編組の周囲に縦添え加工して、樹脂シースと編組の間にPETフィルムからなる移行防止層を形成した。PETフィルムは片面接着層付きタイプを使用し、樹脂シースの内側に接着させた。この同軸ケーブルについて、実施例1と同様に、初期及び耐久試験後の減衰量(電気的特性)と絶縁体の伸び(機械的特性)を測定した。測定結果を表1に示す。
比較例1 比較のために、実施例1の同軸ケーブルにおいて移行防止層6を形成しなかった同軸ケーブルを作製し比較例1の同軸ケーブルを得た。得られた同軸ケーブルについて、実施例1と同様に初期及び耐久試験後の減衰量(電気的特性)と絶縁体の伸び(機械的特性)を測定した。測定結果を表1に示す。
表1に示すように、移行防止層が形成されていない比較例1は、耐久試験後の減衰量及び絶縁体の伸びは、初期特性と比較して大きく低下している。これは塩化ビニル樹脂に含まれる可塑剤が絶縁体に移行して、絶縁体の劣化が促進されていることを示している。
これに対し実施例1〜3の同軸ケーブルは、比較例1と比較して、いずれも耐久試験後の減衰量、絶縁体の伸びの悪化が小さく、可塑剤の移行を防止して、電気的特性及び機械的特性の劣化が抑制されていることを示している。
また表1に示すように実施例3の初期の減衰量は、実施例1、2、比較例1よりも大きい。これは、PET単体の電気特性(誘電正接)が影響しているものと考えられる。実施例1、2は、PETからなる移行防止層(PET層)がない比較例1と比較して減衰量がほとんど変化しておらず、PET層がある程度薄い場合は、PET層自体の電気的特性の影響は無視することができることを示している。
また表1に示すように、実施例1と実施例2の耐久試験後の減衰量と絶縁体の伸びを見ると、実施例1は実施例2よりも特性の低下が小さい。これは実施例1のようにPET層の厚みがある程度以上ある場合、実施例2のPET層の厚みが3μmの場合のような特性低下が見られず、実施例3とほぼ同等の移行防止効果が得られることを示している。
1 同軸ケーブル
2 内導体
3 絶縁体
4 外導体
5 樹脂シース
6 移行防止層
7 移行防止層
2 内導体
3 絶縁体
4 外導体
5 樹脂シース
6 移行防止層
7 移行防止層
Claims (8)
- 内導体の外周が絶縁体で被覆され、該絶縁体の外周に外導体が設けられ、該外導体の外側が軟質塩化ビニル樹脂シースにより被覆されている同軸ケーブルであって、
前記絶縁体と前記樹脂シースの間に、結晶性樹脂からなり可塑剤の移行を防止するための移行防止層が形成されていることを特徴とする同軸ケーブル。 - 前記移行防止層が、前記絶縁体と前記外導体の間に形成されていることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
- 前記移行防止層が、前記外導体と前記樹脂シースの間に形成されていることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
- 前記移行防止層が、前記絶縁体と前記外導体の間及び前記外導体と前記樹脂シースの間に形成されていることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
- 前記移行防止層がポリエチレンテレフタレート樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の同軸ケーブル。
- 前記絶縁層がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の同軸ケーブル。
- 前記移行防止層の厚みが5〜30μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の同軸ケーブル。
- 前記中心導体の断面積が0.01〜0.08mm2であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の同軸ケーブル。
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