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JP2012133391A - 金属被覆光ファイバの製造方法 - Google Patents

金属被覆光ファイバの製造方法 Download PDF

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JP2012133391A JP2012046114A JP2012046114A JP2012133391A JP 2012133391 A JP2012133391 A JP 2012133391A JP 2012046114 A JP2012046114 A JP 2012046114A JP 2012046114 A JP2012046114 A JP 2012046114A JP 2012133391 A JP2012133391 A JP 2012133391A
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芳宣 黒沢
Masanori Ito
正宣 伊藤
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Abstract

【課題】長尺で緻密な金属被覆層を有し、伝送損失が低い金属被覆光ファイバの製造方法を提供する。
【解決手段】光ファイバ2の外周に金属被覆層3が形成されている金属被覆光ファイバの製造方法において、金属被覆層3は、平均粒子径が100nmより大きく500nm以下の金属微粒子を分散液中に分散させ、粘度が200mPa・sより大きく5000mPa・s以下であるスラリーを塗布し、焼結して金属被覆層を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、光ファイバの表面に金属被覆を施した金属被覆光ファイバの製造方法に係り、特に、金属被覆の原料として金属微粒子を用いた金属被覆光ファイバの製造方法に関する。
光ファイバへ金属被覆を施すための主な手段として、従来、以下の方法が提案されている。
(1)溶融金属への浸漬法(ディッピング)
(2)イオンプレーティング法、スパッタ法(気相)
(3)電解・無電解めっき法(液相)
溶融金属への浸漬法は最もシンプルな方法であり、その製造方法は光ファイバ裸線をガラス母材から溶融線引した後、ただちに溶融金属被覆装置に導入し、金属を所定の厚みに被覆したのち常温下で冷却し巻き取るのが一般的な方法である(例えば、特許文献1参照)。金属被覆は耐熱性に優れ、また透水を防止できることなどから、光ファイバとして耐熱性、耐湿性、長期信頼性に優れ、高温高湿などの劣悪な環境下でも使用可能である。
イオンプレーティング法での製造方法は、前述した浸漬法と同様に、光ファイバ裸線をガラス母材から溶融線引した後、光ファイバ線引ライン上に設けられた内部に溶融金属るつぼと高周波発生コイルとを有する真空容器に、光ファイバを通過させながら光ファイバ表面に金属被覆を施す(例えば、特許文献2参照)。
めっき法による金属被覆光ファイバの製造方法では、光ファイバ裸線が石英ガラスからなる絶縁体であることから、初めに、無電解めっきにて光ファイバの表面に無電解めっき層を施し、その後無電解めっき層を電気導体として利用して比較的成膜速度が速い電解めっきを施している(例えば、特許文献3,4参照)。
線引・走行中の光ファイバ表面にめっき法を用いて金属被覆を施す場合、生産性すなわち線引速度を上げようとすると、併せてめっき成膜速度も高める必要がある。電解・無電解めっきとも、めっき液で満たされた槽の中に光ファイバを通す必要があり、槽が長い方が光ファイバの滞在時間が長くなり成膜厚が厚くなる。つまり、線引速度を上げるために必要な長い槽は、通常、縦型の光ファイバ線引ラインには設置し難い構造である。ただし、滑車などで光ファイバの走行経路を水平方向に転換することで、線引ラインへのめっき設備の設置は可能である。
特公昭62−45186号公報 特公昭59−3416号公報 特開2002−236240号公報 特許第3434202号公報
しかしながら、前述の(1)〜(3)の各製造方法および各製法には、以下の問題がある。
溶融金属への浸漬法における製造時の問題点としては、まず、金属被覆の厚みのコントロールが難しい点が挙げられる。金属被覆の膜厚は、ファイバ外径、ファイバ温度、線引速度、金属溶融温度などの諸条件に影響を受けるため、被覆厚のコントロールが難しい。
また、金属溶融槽から出て金属被覆層が固化する際に金属とガラスの熱膨張係数差(一般的に金属の方が10倍以上大きい)によって、光ファイバが特に長手方向に収縮力を受け、光ファイバが曲げられて伝送損失が増加する。
特に被覆する金属のヤング率、融点が増すほど損失増加量が大きくなる傾向にある。
また、上面が開口された溶融金属槽へ光ファイバを挿通させる場合、被覆する光ファイバの表面が鉛直の線引ライン上に設置された滑車などとの接触により加傷されファイバ強度が劣化してしまう。
イオンプレーティング法、スパッタ法では、線引ライン上に設置した反応容器内の真空化が必要であるが、光ファイバ線引ライン上に反応容器を設置する場合、容器の上下部分には光ファイバ通過用に直径数mmの開口が必要である。光ファイバはその表面の傷によってガラス欠損が成長するが、光ファイバが走行中に反応容器に接触すると、加傷によるガラス欠損が発生し、その後に金属被覆を施しても光ファイバの強度は極度に劣化してしまう。
そのため、開口部を有しつつ反応容器内を真空に保持する必要から、通常は容器の入・出口部には多段のガス吸引式のシールを設置するのが一般的である。多段のガスシールは構造が複雑で大きさも嵩むことから、光ファイバ線引ライン上に設置する場合は容易でない。
また、他の方式に比べ成膜速度が遅く、真空度が上がらないとさらにその傾向が顕著になる。さらに、光ファイバのような細径で表面積が小さい物体への被覆では、イオン化して供給した金属材料に対して光ファイバ表面に付着する金属の量は極めて少なく、金属材料の歩留り率が低く非効率である。
以上から、イオンプレーティング法、スパッタ法の方式は光ファイバの端末部のみ、あるいは一部の区間において同時に多数本を金属被覆する際には好適であるが、線引ライン上で光ファイバの全長に被覆する場合は必ずしも優位な方法ではない。
めっき法によって金属被覆する場合、金属膜の緻密性が不十分となってしまう。前述の2方式では、膜厚によらず緻密性の高い金属膜を成膜できる。一方、めっき法による成膜では数nmから数10nmの金属微粒子がファイバ表面に順次堆積していくため、微粒子間に数nm程度の微細な空孔が無数に生じてしまう。そのため、めっき法により形成した金属膜は水分やガスを遮断できるほどの緻密性は得られない。
また、めっき法による金属被覆は成膜速度が遅いため量産が難しく、結果として金属被覆光ファイバのコストが高くなってしまう。
また、光ファイバ線引ラインで長尺にわたり連続的に被覆を施す場合、めっき槽は横長で水平に設置する必要があるため、光ファイバを滑車などに通して光ファイバの走行経路を水平方向に転換させた際、光ファイバ表面が滑車などに直接接触することから、ファイバ強度が劣化してしまう場合がある。例えば、めっき槽の長さが5m、目標めっき厚が3〜5μm程度である場合、線引速度は0.5m/sを大きく下回るレベルであり、量産性に乏しく、またこのように線引速度が遅い場合は光ファイバ径の変動も大きくなり、光ファイバの長手方向で寸法安定性が乱れるという弊害も出てくる。
以上の3方式は線引ラインではなく、光ファイバ端末部に部分的に金属被覆層を施すに際しては好適な方法であるが、線引ラインで長尺にわたり高速で被覆する際には実用的ではない。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、長尺で緻密な金属被覆層を有し、伝送損失が低い金属被覆光ファイバを製造するための金属被覆光ファイバの製造方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、光ファイバの外周に金属被覆層が形成されている金属被覆光ファイバの製造方法において、前記光ファイバの外周に、平均粒子径が100nmより大きく500nm以下の金属微粒子を分散液中に分散させ、粘度が200mPa・sより大きく5000mPa・s以下であるスラリーを塗布し、焼結して金属被覆層を形成することを特徴とする金属被覆光ファイバの製造方法である。
請求項2の発明は、光ファイバの外周に金属被覆層が形成されている金属被覆光ファイバの製造方法において、光ファイバ母材を線引炉に挿入し、前記光ファイバ母材の先端部を加熱・溶融させて、前記光ファイバを線引速度20〜60m/minで線引する線引工程と、線引された前記光ファイバを金属微粒子のスラリーを満たしたダイスを通過させ、前記光ファイバの外周に前記金属微粒子のスラリーを塗布する塗布工程と、前記ダイスの下流に設けられた第1加熱炉及び第2加熱炉に前記スラリーを塗布された光ファイバを順に通過させ、前記スラリーを焼結する焼結工程と、を備え、前記金属微粒子のスラリーは、平均粒子径500nm以下の前記金属微粒子を分散液で希釈して、粘度が1000〜1500mPa・sになるように作成されたものであり、前記第1加熱炉は、炉長が2.0mであり、かつ、線引ラインの上流から下流にかけて200/250/250℃となるように個別に温度設定された3ゾーンのヒータユニットを有し、前記第2加熱炉は、炉長が2.0mであり、かつ、線引ラインの上流から下流にかけて300/350/350℃となるように個別に温度設定された3ゾーンのヒータユニットを有し、前記焼結工程で前記スラリーを焼結して金属被覆層を形成することを特徴とする金属被覆光ファイバの製造方法である。
請求項3の発明は、前記金属被覆層は、金、銀、銅、およびニッケルのいずれかからなる請求項1または2に記載の金属被覆光ファイバの製造方法である。
請求項4の発明は、前記金属被覆層の外周に絶縁ポリマー層が形成されている請求項1〜3いずれかに記載の金属被覆光ファイバの製造方法である。
本発明によれば、長尺で緻密な金属被覆層を有し、伝送損失が低い金属被覆光ファイバを製造できる。
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の好適な実施形態を示す金属被覆光ファイバの横断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る金属被覆光ファイバ1は、光ファイバ2と、光ファイバ2の外周に形成された金属被覆層3と、金属被覆層3の外周に形成された絶縁ポリマー層4を備える。
光ファイバ2は、コア5と、コア5の外周に形成されたクラッド6とからなるシングルモード光ファイバ(SMF)である。
金属被覆層3は、光ファイバ2の表面に、平均粒子径500nm以下の金属微粒子を分散液中に分散したスラリーを塗布し、これを焼結して形成される。
金属微粒子の平均粒子径を500nm以下とするのは、金属微粒子の平均粒子径が500nmを超えると、焼結前の段階で粒子間の空隙が大きくなり、金属微粒子が溶融してもその空隙が残ってしまうので、金属被覆層3の緻密性が低下し、外部からの水分やガスを遮断できなくなる場合があるためである。なお、平均粒子径は、レーザー回折法などによって得られる粒子分布から求められるメジアン径で表したものである。
また、金属被覆層3は、その焼結後の厚さが2〜10μmであり、望ましくは2〜5μmである。これは、金属被覆層3の厚さが2μm未満であると、金属被覆層3の保護効果が得られず、10μmを超えると、金属被覆層3を焼結した後の冷却時に金属被覆層3が収縮し、光ファイバ2が蛇行変形して、伝送損失が発生してしまう場合があるためである。
金属微粒子としては、金、銀、銅、およびニッケルのいずれかからなるものを用いるとよい。また、分散液としては、例えば、1−デカノールなどの有機溶媒を用いるとよい。
金属微粒子を分散液中に分散させたスラリーの粘度は、200mPa・sより大きく5000mPa・s以下であるとよく、望ましくは500〜5000mPa・sであるとよい。これは、スラリーの粘度が200mPa・s以下であると、スラリーを光ファイバ2にダイス塗布する際に、重力の影響で光ファイバ2表面に玉状の液ダレが発生してしまい、スラリーの粘度が5000mPa・sを超えると、スラリーと光ファイバ2の表面との間ですべりが発生して、光ファイバ2表面にスラリーを塗布できない場合があるためである。
絶縁ポリマー層4は、金属被覆層3の外周に絶縁性のポリマーを被覆して形成される。絶縁性のポリマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、シリコーン樹脂などのUV硬化型樹脂を用いるとよい。
次に、本実施形態に係る金属被覆光ファイバの製造方法に用いる金属被覆光ファイバの製造装置を説明する。
図2に示すように、金属被覆光ファイバの製造装置21は、光ファイバ2の表面に、金属微粒子を分散液中に分散させたスラリーSを塗布するダイス25と、光ファイバ2の表面に塗布されたスラリーS中の分散液を揮発させる第1加熱炉26と、光ファイバ2の表面に塗布されたスラリーS中の金属微粒子を溶融一体化(焼結)して金属被覆層3を形成する第2加熱炉27と、絶縁ポリマー層を形成するための図示しないダイス及び硬化装置とを主に備える。
また、金属被覆光ファイバの製造装置21は、光ファイバ母材22を加熱・溶融して光ファイバ2とする線引炉23と、光ファイバ2の外径を測定する外径測定器24と、金属被覆光ファイバ1の外径を測定する外径測定器28と、外径測定器28を通過した金属被覆光ファイバ1をガイドするガイドロール29と、ガイドロール29からの金属被覆光ファイバ1を引き取り、線引速度を調整する引取機30と、金属被覆光ファイバ1を巻き取る巻取機31とを備える。
線引ラインの最上流に設置された線引炉23の下流には、順次、外径測定器24、ダイス25、第1加熱炉26、第2加熱炉27、ダイス(図示せず)、硬化装置(図示せず)、外径測定器28、ガイドロール29、引取機30、巻取機31が設置される。
線引炉23は、その中央部に高純度カーボンからなる円管状の炉心管を有し、その炉心管の周囲に円管状のヒータを有する。炉心管の下部中央には、光ファイバ2を引き出すための内径数mmのファイバ出口が設けられる。
本実施形態では、線引炉23内に挿入する光ファイバ母材22として、シングルモード光ファイバ用の母材を用いた。光ファイバ母材22は、図示しないサーボモータなどで一定速度で線引炉23に挿入される。
また、製造装置21は、線引速度を制御するための図示しない速度制御盤を備える。速度制御盤は、外径測定器24で測定した光ファイバ2の外径データ、特にあらかじめ設定した目標とするファイバ径(基準値)に対する偏差信号を受け、引取機30にフィードバック信号を出力し、光ファイバ2の外径が一定かつ均一となるように線引速度を制御する。
外径測定器24、28としては、レーザー式のものを用いるとよい。
ダイス25は、通常一般の光ファイバ被覆であるUV硬化型樹脂(ウレタンアクリレート樹脂、シリコーン樹脂など)の塗布に用いるものと同じであり、光ファイバが通線する出口部のノズル径を金属被覆層3の被覆厚にあわせて調節する。ダイス25には、金属微粒子を分散液中に分散させたスラリーSが充填される。
第1加熱炉26および第2加熱炉27は管状炉であり、それぞれ3ゾーンに分かれ、個別に温度設定できるヒーターユニット26a、27aを有する。
次に、本実施形態に係る金属被覆光ファイバの製造方法を、金属被覆光ファイバの製造装置21の動作と共に説明する。
本実施形態に係る金属被覆光ファイバの製造方法は、基本的には熱硬化型樹脂を被覆する場合の光ファイバ線引方法とほぼ共通である。
まず、光ファイバ母材22を線引炉23内に挿入して、その先端部を加熱・溶融する。その後、外径測定器24により線引炉23の出口から引き出された光ファイバ2の外径を連続的に測定する。
外径測定器24は、光ファイバ2の外径データ、特に、あらかじめ設定した目標とするファイバ径に対する偏差信号を速度制御盤に出力する。偏差信号を受けた速度制御盤は、引取機30にフィードバック信号を出力し、光ファイバ2の外径を一定かつ均一とするように引取機30の回転速度を制御する。
外径測定器24で光ファイバ2の外径を測定した後、ダイス25で光ファイバ2の表面にスラリーSを塗布する。
光ファイバ2の表面にスラリーSを塗布した後、第1加熱炉26でスラリーS中の分散液を揮発させ、さらに第2加熱炉27で金属微粒子を溶融一体化(焼結)させて金属被覆層3を形成し、その後、金属被覆層3の外周にUV硬化樹脂を塗布、硬化させて絶縁ポリマー層4を形成し、金属被覆光ファイバ1とする。
その後、金属被覆光ファイバ1は、ガイドロール29、引取機30を通過し、巻取機31に巻き取られる。
以上により、図1の金属被覆光ファイバ1が得られる。
本実施形態の作用を説明する。
本実施形態に係る金属被覆光ファイバ1は、光ファイバ2の表面に、平均粒子径500nm以下の金属微粒子を分散液中に分散したスラリーSを塗布し、これを焼結した金属被覆層3を備えている。
平均粒子径500nm以下の金属微粒子を用いることで、焼結後の粒子間の空隙がなくなるため、緻密な金属被覆層3を形成することができる。これにより、気密性が高く、機械的強度(ファイバ強度)が高い金属被覆光ファイバを作製することができる。
さらに、本実施形態に係る金属被覆光ファイバ1は、焼結後の金属被覆層3の厚さを2〜10μmとしている。
金属被覆層3の線膨張係数が、石英ガラスからなる光ファイバ2の線膨張係数に比べて大きいために、金属被覆層3を焼結した後、室温まで温度降下する際に、光ファイバ2を収縮させる応力が発生し、光ファイバ2を蛇行変形させて光ファイバ2の光損失(伝送損失)が大きくなることがある。
本実施形態では、焼結後の金属被覆層3の厚さを10μm以下とすることで、光ファイバ2を収縮させる応力を小さくし、光ファイバ2の変形を防止することができる。これにより、金属被覆光ファイバ1の光損失(伝送損失)の増加を防止できる。また、焼結後の金属被覆層3の厚さを2μm以上とすることで、光ファイバ2表面を十分に保護できる保護効果を得ることができ、高温高湿などの劣悪な環境下で用いることができる。
本実施形態に係る金属被覆光ファイバ1の製造方法では、光ファイバ母材22を加熱・溶融して光ファイバ2を線引し、その線引中の光ファイバ2の表面にスラリーSをダイス塗布した後、これを乾燥・焼結して金属被覆層3を形成している。
線引中の光ファイバ2表面にスラリーSをダイス塗布することにより、線引中の光ファイバ2に連続的にスラリーSを塗布できるため、長尺にわたって高速に金属被覆光ファイバ1を製造することができ、量産性を向上することができる。また、量産性が向上することにより製造コストを低くすることができる。さらに、金属被覆層3を形成する設備が従来方式に比べ簡便となるため、設備コストを低くすることができる。
また、本実施形態に係る金属被覆光ファイバ1の製造方法では、スラリーSの粘度を200mPa・sより大きく5000mPa・s以下としている。
これより、玉状の液ダレが発生したり、すべりが発生してスラリーSを塗布できないということがなく、光ファイバ2表面にスラリーSを安定して塗布することができる。
本実施形態に係る金属被覆光ファイバ1は、高温高湿などの劣悪な環境下で用いる場合の他、例えば、光ファイバ磁気センサに用いてもよい。
上記実施形態では、光ファイバ2としてシングルモード光ファイバを用いたが、これに限定されるものではなく、マルチモード光ファイバや、クラッド内のコアの周囲に空孔を有するホーリーファイバ、フォトニック結晶光ファイバなど、既存の光ファイバを用いてもよい。
外径40mmのシングルモード光ファイバ用光ファイバ母材22を線引炉23内に挿入して先端部を加熱・溶融する。線引温度は2000〜2200℃とした。光ファイバ母材22を0.6mm/minの速度で線引炉23に供給し、外径125μmの光ファイバ2を線引速度20〜60m/minで線引した。
光ファイバ2は金属微粒子のスラリーSを満たしたダイス25を通過し、光ファイバ2の表面に均一塗布される。金属微粒子としては銀微粒子を用い、銀微粒子には、ハリマ化成株式会社製のNPSを用いた。このNPSは、微細な銀微粒子を1−デカノールで希釈してペースト状にしたものである。この金属微粒子分散液である1−デカノールでさらに希釈して、粘度が1000〜1500mPa・sのスラリーSを作成した。
ダイス25の下流には、スラリーSを焼結するための第1加熱炉26、第2加熱炉27を設置した。これら第1加熱炉26、第2加熱炉27の炉長は2.0mであり、ヒータユニットが3ゾーンに分かれ、個別に温度設定できる。第1加熱炉26の温度設定は、線引ラインの上流から下流にかけて200/250/250℃とし、第2加熱炉27の温度設定は、線引ラインの上流から下流にかけて300/350/350℃とした。第1加熱炉26では、1−デカノールを揮発させるために、第2加熱炉27では、銀微粒子を溶融一体化して緻密な金属被覆層3を形成することを目的として温度設定した。第2加熱炉27を通過した後、シリコーン樹脂を金属被覆層3上に塗布し、紫外線硬化させて絶縁ポリマー層4を形成し、充実の金属被覆層3を有する金属被覆光ファイバ1を得た。
図3,4は、本実施形態に係る金属被覆光ファイバ1の金属被覆層3を拡大した図であり、金属微粒子の平均粒子径が3〜7nm(実施例1)、金属微粒子の平均粒子径が100〜200nm(実施例2)、金属微粒子の平均粒子径が400〜500nm(実施例3)である銀微粒子を用いて金属被覆光ファイバ1を作製し、金属被覆層3の断面を電子顕微鏡で観察した。
実施例1〜3の銀粒子径と成膜後の微小気孔の有無を表1に示す。また、実施例1の断面写真を図3に、実施例3の断面写真を図4に示す。実施例1〜3において、金属被覆層3の膜厚はいずれも7〜8μmであった。
表1および図3,4に示すように、実施例1〜3では焼結後の金属被覆層3には気孔は見られなかった。
実施例1〜3と同様にして、金属微粒子の平均粒子径が600〜700nm(比較例1)、金属微粒子の平均粒子径が1000〜1500nm(比較例2)である銀微粒子を用いて金属被覆光ファイバを作製し、実施例1〜3と同様に評価を行った。比較例1,2に用いた銀粒子径と成膜後の微小気孔の有無を表1に併せて示す。また、比較例1の断面写真を図5に示す。
表1および図5に示すように、比較例1,2では焼結後の金属被覆層に無数の気孔が存在した。これは、粒子径が大きいほど焼結前の段階で粒子間の空隙が大きくなり、金属微粒子が溶融してもその空隙が残ってしまうためである。
以上の結果から、金属微粒子径は500nm以下であるとよい。
次に、金属被覆層の膜厚を0.5〜20μmの範囲で変えて作製したシングルモード型の金属被覆光ファイバの波長1.55μmにおける伝送損失と被覆厚(金属被覆層の膜厚)との関係を図6に示す。
図2に示した金属被覆光ファイバ1の製造装置21を用い、十分な焼結時間を確保するために線引速度を20m/minに設定して金属被覆光ファイバ1を作製した。
UV硬化型樹脂やシリコーンなどの一般的な被覆を施した場合のシングルモード光ファイバの波長1.55μmにおける伝送損失は、0.18〜0.19dB/kmである。
図6に示すように、被覆厚10μmまでは通常の被覆とほぼ同等の損失特性が得られ、それ以上では伝送損失が増加した。損失増加要因は、金属被覆層が焼結した後室温まで温度降下する際に、銀からなる金属被覆層が石英ガラスからなる光ファイバに比べ線膨張係数が大きいために、光ファイバを収縮させる応力が発生し光ファイバを蛇行変形させて光損失が発生するためである。
一方、被覆厚を薄くすると被覆残留応力によるファイバの光損失増加の心配はなくなるものの、ガラス表面の機械的な保護効果が低下し、ファイバ強度が劣化してしまう。
通常のUV硬化型樹脂やシリコーンを被覆した一般的な光ファイバでは50〜150μm程度の厚さの被覆が施される。金属はこれらのポリマーより弾性率が高いので、比較的薄くしてもガラス表面の保護効果が得られるが、被覆厚2μmが巻き取りなどのハンドリングできる限界であることが分かった。すなわち、2μm未満の被覆厚では線引時に高強度な光ファイバを線引できたとしても、金属被覆層の保護効果が低いため後天的に光ファイバ表面を加傷してファイバ強度が低下して断線に至ることがある。
次に、平均粒子径が3〜7nmの銀微粒子を1−デカノールで希釈して500mPa・s(実施例4)、2500mPa・s(実施例5)、5000mPa・s(実施例6)の粘度を有するスラリーSを作製し、ダイス25による被覆安定性を評価した結果を表2に示す。
図2に示した金属被覆光ファイバ1の製造装置21を用い、線引速度を20m/minとし、外径125μmの光ファイバ2に内径190μmのダイス25でスラリーSを塗布して、焼結させる前にスラリーSの塗布状況を外径測定器を用いて確認した。本実験ではスラリーSを焼結せずに、ダイス25直下250mmの位置に外径測定器を設置してダイス25でのスラリー塗布状況すなわち被覆厚の安定性を評価した。
表2に示すように、実施例4〜6ではダイス塗布状況は良好であり、塗布厚変動量は±2μmと小さかった。
また、実施例4〜6と同様にして、粘度が50mPa・s(比較例3)、200mPa・s(比較例4)、7500mPa・s(比較例5)のスラリーを用いて、ダイス25による被覆安定性を評価した。
表2に示すように、比較例3,4では、重力の影響でダイスから出た直後にスラリーは垂れて、数mm間隔で玉状の液ダレが連続的に発生してしまった。
一方、比較例5では、スラリーと光ファイバの表面との界面ですべりが発生して、スラリーがほとんど塗布できない状態となった。
本発明の好適な実施形態を示す金属被覆光ファイバの横断面図である。 本実施形態に係る金属被覆光ファイバの製造装置の概略図である。 平均粒子径3〜7nmの銀微粒子を焼結した金属被覆層断面の電子顕微鏡写真である。 平均粒子径400〜500nmの銀微粒子を焼結した金属被覆層断面の電子顕微鏡写真である。 平均粒子径600〜700nmの銀微粒子を焼結した金属被覆層断面の電子顕微鏡写真である。 金属被覆光ファイバの伝送損失と被膜厚との関係を示すグラフである。
1 金属被覆光ファイバ
2 光ファイバ
3 金属被覆層

Claims (4)

  1. 光ファイバの外周に金属被覆層が形成されている金属被覆光ファイバの製造方法において、
    前記光ファイバの外周に、平均粒子径が100nmより大きく500nm以下の金属微粒子を分散液中に分散させ、粘度が200mPa・sより大きく5000mPa・s以下であるスラリーを塗布し、焼結して金属被覆層を形成することを特徴とする金属被覆光ファイバの製造方法。
  2. 光ファイバの外周に金属被覆層が形成されている金属被覆光ファイバの製造方法において、
    光ファイバ母材を線引炉に挿入し、前記光ファイバ母材の先端部を加熱・溶融させて、前記光ファイバを線引速度20〜60m/minで線引する線引工程と、
    線引された前記光ファイバを金属微粒子のスラリーを満たしたダイスを通過させ、前記光ファイバの外周に前記金属微粒子のスラリーを塗布する塗布工程と、
    前記ダイスの下流に設けられた第1加熱炉及び第2加熱炉に前記スラリーを塗布された光ファイバを順に通過させ、前記スラリーを焼結する焼結工程と、を備え、
    前記金属微粒子のスラリーは、平均粒子径500nm以下の前記金属微粒子を分散液で希釈して、粘度が1000〜1500mPa・sになるように作成されたものであり、
    前記第1加熱炉は、炉長が2.0mであり、かつ、線引ラインの上流から下流にかけて200/250/250℃となるように個別に温度設定された3ゾーンのヒータユニットを有し、
    前記第2加熱炉は、炉長が2.0mであり、かつ、線引ラインの上流から下流にかけて300/350/350℃となるように個別に温度設定された3ゾーンのヒータユニットを有し、
    前記焼結工程で前記スラリーを焼結して金属被覆層を形成することを特徴とする金属被覆光ファイバの製造方法。
  3. 前記金属被覆層は、金、銀、銅、およびニッケルのいずれかからなる請求項1または2に記載の金属被覆光ファイバの製造方法。
  4. 前記金属被覆層の外周に絶縁ポリマー層が形成されている請求項1〜3いずれかに記載の金属被覆光ファイバの製造方法。
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