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JP2012114579A - アンテナ装置及びその周波数調整方法 - Google Patents

アンテナ装置及びその周波数調整方法 Download PDF

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JP2012114579A JP2010260269A JP2010260269A JP2012114579A JP 2012114579 A JP2012114579 A JP 2012114579A JP 2010260269 A JP2010260269 A JP 2010260269A JP 2010260269 A JP2010260269 A JP 2010260269A JP 2012114579 A JP2012114579 A JP 2012114579A
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Abstract

【課題】個々の共振周波数の独立した調整が容易であり、小型で高性能な複共振アンテナを提供する。
【解決手段】アンテナ装置100は、直方体状の誘電体からなる基体11と、基体11の長手方向と直交する第1の側面11eに形成された給電導体12と、基体11の上面11a、第2の側面11f、及び底面11bにかけて連続的に形成された1本の帯状導体パターンからなる放射導体13と、基体11の底面11bであって給電導体12と接続されるように第1の側面11e寄りに形成された第1の端子電極14とを備えている。放射導体13は折り返し構造の帯状導体パターンであり、その全長はλ/4(λは基本波の波長)と実質的に等しい。放射導体13は、基体11の底面11bにおいて所定幅のギャップを介して第1の端子電極14と近接して対向配置された第1の折り返し部を有し、その形成位置は、2倍波の波形と3倍波の波形との交点の位置を含んでいる。
【選択図】図1

Description

本発明は、アンテナ装置及びその周波数調整方法に関し、特に、表面実装型の複共振アンテナの構造に関するものである。
近年、携帯電話等の無線携帯端末にはGPS(Global Positioning System)、ブルートゥース(登録商標)、無線LAN等の機能が搭載されており、通信の多機能化が進んでいる。このような携帯電話の多機能化に伴い、複共振アンテナの必要性が高まっている。一般に、複共振アンテナではアンテナ長が異なる複数の放射導体を用いてデュアルバンド若しくはマルチバンドを構成することができる。例えば、特許文献1には、3つの共振を得るために、3つの放射導体を用いている。しかしながら、このような構成ではアンテナサイズが大きくなるだけでなく、放射導体が相互に干渉し合い、放射効率が低下してしまうという問題がある。そのため、一本の放射導体パターンを用いて複共振アンテナを実現する試みがなされている。
例えば、特許文献2及び3には、一本の帯状導体パターンを用いて多共振を実現する複共振アンテナが提案されている。特許文献2では、放射線路であるループ状線路が折り返し部を有しており、ループ状線路の一端が給電点と接続され、他端が開放端である構成を有している。そして、線路の開放端は給電点から折り返し部までの線路との間で誘電体を介して対向配置されており、これにより容量結合部が形成されており、第1〜第3の周波数で共振するように構成されている。
また、特許文献3では、共振コンダクタ・トラック構造と呼ばれるミアンダ形状もしくはヘリカル形状のインダクタパターンを直列に挿入し、その形状を変更することで共振周波数を制御している。しかしながら、これらの形状のインダクタパターンを設けることは放射損失を増大させ、放射効率の低下をもたらす。また、先端の容量成分とインダクタ成分で制御できる周波数は2周波程度であり、さらなる多共振化は難しい。3共振を実現するために、ラインを一本増やす方法も示されているが、この場合は、特許文献2の場合と同様、放射効率が低下し、アンテナの占有面積が増大することになる。
特開2010−74489号公報 特開2009−111999号公報 特開2002−164729号公報
しかしながら、特許文献2の複共振アンテナは、放射線路を一回だけ折り返した構造であるため、アンテナのサイズが大きく、共振数も少ないという問題がある。特許文献2の図15では、共振数を増やすためにラインを一本増やす方法も示されているが、この場合は放射効率が低下し、アンテナの占有面積が増大することになる。
また、特許文献3ではインダクタパターンを用いているので、経路損失が増大して放射効率が低下するという問題がある。また、先端の容量成分とインダクタ成分で制御できる周波数は2周波程度であり、さらなる多共振化は難しい。3共振を実現するためにラインを一本増やす方法も示されているが、この場合は、特許文献2の場合と同様、放射効率が低下し、アンテナの占有面積が増大することになる。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、周波数調整が容易であり、小型で高性能な複共振アンテナを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明によるアンテナ装置は、略直方体状の誘電体からなる基体と、前記基体の長手方向と直交する第1の側面に形成された給電導体と、前記基体の上面、前記第1の側面と対向する第2の側面、及び底面にかけて連続的に形成された1本の帯状導体パターンからなる放射導体と、前記基体の底面であって、前記給電導体と接続されるように前記第1の側面寄りに形成された第1の端子電極とを備え、前記放射導体は、折り返し構造の帯状導体パターンであり、前記基体の底面において所定幅のギャップを介して前記第1の端子電極と近接して対向配置された第1の折り返し部を有することを特徴とする。
本発明において、前記放射導体の全長がλ/4(λは基本波の波長)と実質的に等しく、前記折り返し部の形成位置は、前記基本波に対する2倍波の電流分布波形と3倍波の電流分布波形との交点の位置を含むことが好ましい。この構成によれば、2倍波の電流分布波形と3倍波の波形との交点付近に相当する放射導体の折り返し部を給電点と電磁界結合しているので、折り返し部と第1の端子電極との間のギャップの幅を変更することで2倍波の周波数を実質的に独立して調整することができる。また、折り返し部の導体幅を変更することで3倍波の周波数を実質的に独立して調整することができる。
本発明において、前記放射導体は、前記基体の上面に形成され前記基体の長手方向に延びる第1及び第2の直線パターンと、前記基体の底面に形成され前記基体の長手方向に延びる第3及び第4の直線パターンと、前記第1の直線パターンの一端と前記第3の直線パターンの一端とを接続する第5の直線パターンと、前記第2の直線パターンの一端と前記第4の直線パターンの一端とを接続する第6の直線パターンと、前記第3の直線パターンと前記第4の直線パターンの他端とを接続する第7の直線パターンとを備え、前記第7の直線パターンによって前記第1の折り返し部が構成されており、前記第5の直線パターンによって前記第2の折り返し部が構成されており、前記第6の直線パターンによって前記第3の折り返し部が構成されていることが好ましい。
この構成によれば、1本の帯状導体パターンを3回折り返した構造からなる放射導体を構成することができ、特に、2倍波の電流分布波形と3倍波の波形との交点付近に相当する第7の直線パターンを給電点と電磁界結合させているので、第7の直線パターンと第1の端子電極との間のギャップの幅を変更することで2倍波の周波数を実質的に独立して調整することができる。また、第7の直線パターンの導体幅を変更することで3倍波の周波数を実質的に独立して調整することができる。
本発明において、前記給電導体と給電ラインとの間に直列挿入されたチップインダクタをさらに備えることが好ましい。この構成によれば、4共振アンテナを実現することができ、チップインダクタのインダクタンスを変更することで4倍波の共振周波数を容易に調整することができる。
また、上記課題を解決するため、本発明によるアンテナ装置は、アンテナ素子と、前記アンテナ素子が実装されるプリント基板とを備え、前記アンテナ素子は、略直方体状の誘電体からなる基体と、前記基体の長手方向と直交する第1の側面に形成された給電導体と、前記基体の上面、前記第1の側面と対向する第2の側面、及び底面にかけて連続的に形成された1本の帯状導体パターンからなる放射導体と、前記基体の底面であって前記給電導体と接続されるように前記第1の側面寄りに形成された第1の端子電極とを備え、前記放射導体は、折り返し構造の帯状導体パターンであり、前記基体の底面において所定幅のギャップを介して前記第1の端子電極と近接して対向配置された第1の折り返し部を有し、前記プリント基板の表面には、前記アンテナ素子が実装されるアンテナ実装領域が設けられており、前記プリント基板の裏面であって前記アンテナ素子の直下には、フローティングパターンが設けられていることを特徴とする。
さらに、上記課題を解決するため、本発明によるアンテナ装置の周波数調整方法は、前記第1の折り返し部と前記前記第1の端子電極との間のギャップの幅を変更することにより、前記基本波に対する2倍波の共振周波数を調整することを特徴とする。
さらにまた、本発明によるアンテナ装置の周波数調整方法は、前記第1の折り返し部の導体幅を変更することにより、基本波に対する3倍波の共振周波数を調整することを特徴とする。
本発明によれば、個々の共振周波数の独立した調整が容易であり、小型で高性能な複共振アンテナを提供することができる。
図1は、本発明の好ましい実施の形態によるアンテナ装置の構成を示す略斜視図である。 図2は、図1に示したアンテナ素子10の展開図である。 図3は、アンテナ素子10が実装されるプリント基板20上のパターンレイアウトを透過的に示す略斜視図である。 図4は、放射導体13上の電流分布を説明するためのグラフである。 図5は、図1に示したアンテナ装置100の等価回路図である。 図6は、図1に示したアンテナ装置100の放射効率の周波数特性を示すグラフである。 図7は、放射導体の先端と給電導体との間のギャップの幅が異なる2種類のアンテナ装置の放射効率の周波数特性を示すグラフである。 図8は、折り返し部を構成する第7の直線パターンと第1の端子電極との間のギャップの幅アンテナ装置の放射効率の周波数特性を示すグラフである。 図9は、折り返し部を構成する第7の直線パターンの幅が異なる2種類のアンテナ装置の放射効率の周波数特性を示すグラフである。 図10は、チップインダクタのインダクタンスが異なる2種類のアンテナ装置の放射効率の周波数特性を示すグラフである。 図11は、基本波の変化量が10MHzとなるようにアンテナ素子の各パラメータを独立して変化させたときの2倍波、3倍波及び4倍波の変化量を示す表である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施の形態によるアンテナ装置の構成を示す略斜視図である。また、図2は、図1に示したアンテナ素子10の展開図である。
図1及び図2に示すように、このアンテナ装置100は、アンテナ素子10と、アンテナ素子10が実装されたプリント基板20とを備えている。本実施形態によるアンテナ素子10は表面実装型の複共振アンテナであり、プリント基板20の一方の主面(表面)20aに形成されたアンテナ実装領域23に内に実装されている。
アンテナ素子10は、誘電体からなる基体11と、基体11に形成された複数の導体パターンによって構成されている。基体11は、Y方向を長手方向、X方向を幅方向、Z方向を高さ方向とする直方体形状を有している。このうち、基体11の上面11a、底面11b及び2つの側面11c,11dはY方向と平行な面であり、側面11e,11fはY方向と直交する面であり、底面11bはプリント基板20に対する搭載面である。なお、アンテナ素子10の上下方向はアンテナ素子10のプリント基板20上への実装状態に基づいて定められ、アンテナ素子10の実装時にはその底面11bがプリント基板20の表面に接触している。
基体11の材料としては、特に限定されるものではないが、Ba−Nd−Ti系材料(比誘電率80〜120)、Nd−Al−Ca−Ti系材料(比誘電率43〜46)、Li−Al−Sr−Ti(比誘電率38〜41)、Ba−Ti系材料(比誘電率34〜36)、Ba−Mg−W系材料(比誘電率20〜22)、Mg−Ca−Ti系材料(比誘電率19〜21)、サファイヤ(比誘電率9〜10)、アルミナセラミックス(比誘電率9〜10)、コージライトセラミックス(比誘電率4〜6)などを用いることができる。基体11は、型枠を用いてこれらの材料粉を焼成することによって作製される。
誘電体材料は、目的とする周波数に応じて適宜選択すればよい。比誘電率εが大きくなるほど大きな波長短縮効果が得られるので、放射導体の長さをより短くできるが、放射効率が低下するため、必ずしも比誘電率εが大きければよいというわけではなく、適切な値が存在する。したがって、例えば、目的とする周波数が2.4GHzである場合、比誘電率εが5〜40程度の材料を用いることが好ましい。これによれば、十分な放射効率を確保しつつ基体の小型化を図ることができる。比誘電率εが5〜40程度である材料としては、Mg−Ca−Ti系誘電体セラミックを好ましく挙げることができる。Mg−Ca−Ti系誘電体セラミックとしては、TiO、MgO、CaO、MnO、SiOを含有するMg−Ca−Ti系誘電体セラミックを用いることが特に好ましい。
アンテナ素子10の導体パターンは、基体11の側面11eに形成された給電導体12と、基体11の上面11a、側面11f、及び底面11bにかけて形成された放射導体13と、基体11の底面11bに形成された端子電極14,15a,15bを備えている。これらの導体パターンは、電極用ペースト材をスクリーン印刷や転写などの方法によって塗布した後、所定の温度条件下で焼き付けを行うことによって形成できる。電極用ペースト材としては、銀、銀−パラジウム、銀−白金、銅などを用いることができる。導体パターンは、この他にメッキやスパッタなどでも形成することが可能である。
放射導体13は、基体11の上面11aに形成された第1及び第2の直線パターン13a,13bと、基体11の底面11bに形成された第3及び第4の直線パターン13c,13dと、第1の直線パターン13aの一端と第3の直線パターン13cの一端とを接続する第5の直線パターン13eと、第2の直線パターン13bの一端と第4の直線パターン13dの一端とを接続する第6の直線パターン13fと、第3の直線パターン13cの他端と第4の直線パターン13dの他端とを接続する第7の直線パターン13gとを備えている。
第1の直線パターン13aは、基体11の上面11aの長手方向と平行な二辺のうち、側面11c寄りの一辺に沿って設けられており、その一端は第5の直線パターン13eに接続されており、その他端は給電導体12に接続されている。また、第2の直線パターン13bは、基体11の上面11aの長手方向と平行な二辺のうち、側面11cと対向する側面11d寄りの一辺に沿って設けられており、その一端は第6の直線パターン13fに接続されており、その他端は給電導体12との近接位置において開放されている。そのため、第1及び第2の直線パターン13a,13bは互いに平行なパターンであり、第2の直線パターン13bの他端は幅W1のギャップを介して給電導体12と容量結合している。
第1及び第2の直線パターン13a,13bと同様、第3及び第4の直線パターン13c,13dもまた互いに平行なパターンである。第3の直線パターン13cは、基体11の底面11bの長手方向と平行な二辺のうち、側面11c寄りの一辺に沿って設けられており、その一端は第5の直線パターン13eに接続されており、その他端は第7の直線パターン13gに接続されている。また、第4の直線パターン13dは、基体11の上面の長手方向と平行な二辺のうち、側面11cと対向する側面11d寄りの一辺に沿って設けられており、その一端は第6の直線パターン13fに接続されており、その他端は第7の直線パターン13gに接続されている。
第7の直線パターン13gは第3の直線パターン13cと第4の直線パターン13dの他端同士を連結しており、これにより放射導体13の第1の折り返し部が構成されている。第5の直線パターン13eは、第1の直線パターン13aと第3の直線パターン13cの一端同士を連結しており、これにより放射導体13の第2の折り返し部が構成されている。また、第6の直線パターン13fは、第2の直線パターン13bと第4の直線パターン13dの一端同士を連結しており、これにより放射導体13の第3の折り返し部が構成されている。以上の構成により、基体11の表面には、第1の直線パターン13a、第5の直線パターン、第3の直線パターン、第7の直線パターン、第4の直線パターン、第6の直線パターン、第2の直線パターンが順に接続され、3つの折り返し部を有する一本の帯状パターンが形成されている。
本実施形態において、第1の端子電極14は独立したパターンであるが、第2及び第3の端子電極15a、15bは第3及び第4の直線パターン13c,13dとそれぞれ重なるパターンであるため、第2の端子電極15aと第3の直線パターン13cは一体化されており、第3の端子電極15bと第3の直線パターン13dは一体化されている。よって、第3の直線パターン13cの幅は第2の端子電極15aの形成位置にて少し広くなっており、第4の直線パターン13dの幅も第3の端子電極15bの形成位置にて少し広くなっている。
上記のように、放射導体13は折り返し構造の帯状導体パターンであり、基体11の底面11bに設けられた第1の折り返し部は第1の端子電極14と近接しており、所定幅のギャップを介して第1の端子電極14と対向配置されている。詳細は後述するが、本実施形態によるアンテナ装置100は、放射導体13の第1の折り返し部が2倍波と3倍波の電流分布波形との交点付近に位置しており、この部分が給電点と電磁界結合している。そのため、2倍波及び3倍波の共振周波数を大きく変化させることができ、周波数調整が容易となる。2倍波の周波数調整は、第1の折り返し部と第1の端子電極14との間のギャップの幅W2を変更することにより調整することができる。また、3倍波の周波数調整は、第1の折り返し部を構成する第7の直線パターン13gの幅W3を変更することにより調整することができる。
図3は、アンテナ素子10が実装されるプリント基板20上のパターンレイアウトを透過的に示す略斜視図である。
図3に示すように、プリント基板20はFR4(ガラスエポキシ)等の絶縁基板21の表裏面に導体パターンが形成されたものである。プリント基板20の表面20aには、各種回路のための実装部品、配線、グランドパターン等が排除された領域であるアンテナ実装領域23が設けられている。アンテナ実装領域23は、アンテナ素子10よりも少し広い矩形領域である。本実施形態によるアンテナ実装領域はプリント基板20のコーナー部に設けられており、二辺がプリント基板20のエッジ20eに接している。アンテナ実装領域23をプリント基板20のコーナー部に設けた場合には、アンテナ素子10から見て二方向はプリント基板(導体パターン)の存在しない自由空間であることから、アンテナの放射効率を高めることができる。
アンテナ実装領域23内には3つのランド24〜26が設けられている。ランド24〜26にはアンテナ素子10の端子電極14〜16がそれぞれ接続される。ランド24はチップインダクタ27を介して給電ライン28に接続されているが、ランド25,26はフローティングパターンである。ランド25,26は、アンテナ素子10の端部を半田付けによって機械的に固定するために設けられている。
プリント基板20の裏面20bには、表面20a側のアンテナ実装領域23と平面視にて実質的に同一形状の絶縁領域であるグランドクリアランス領域29が設けられている。グランドクリアランス領域29には各種実装部品が実装されず、配線やグランドパターンも設けられていないが、本実施形態においては、グランドクリアランス領域29には、実装されるアンテナ素子10とほぼ同じサイズのフローティングパターンである放射抑制パターン30が形成されている。この放射抑制パターン30は、プリント基板20の裏面側の導体パターンや実装部品の影響を抑えるために設けられている。放射導体13は基体11の上面11aや側面11fのみならず底面11bにまで形成されており、この部分はプリント基板20に直接接触しているため、プリント基板20の裏面側の構成の影響を受けやすい。そこで、放射抑制パターン30を設けてプリント基板20の裏面側の影響を抑制している。
図1に示したように、プリント基板20上にアンテナ素子10を実装すると、放射導体13の一端は給電導体12、ランド24及びチップインダクタ27を介して給電ライン28に接続される。放射導体13には給電ライン28から給電電流が供給され、給電電流は放射導体13から放射される。
図4は、放射導体13上の電流分布を説明するためのグラフであり、横軸は給電点からの距離、縦軸は電流の振幅を示している。
図4に示すように、基本波WA1の波長λに対してアンテナ長がλ/4であるとき、2倍波及び3倍波の波形はそれぞれWA2、WA3のようになる。すなわち、2倍波WA2のピークはλ/8の位置にあり、3倍波WA3のピークはλ/6の位置にある。このような2倍波や3倍波がほぼピークとなる領域、すなわち2倍波と3倍波の波形の交点付近を給電点付近と結合させることにより。2倍波及び3倍波の周波数を調整することが可能となる。2倍波と3倍波のピーク位置は若干異なるが、第1の折り返し部の幅と位置を変更することによって、それらを独立に調整することが可能である。
図5は、アンテナ装置100の等価回路図である。
図5に示すように、プリント基板20上のアンテナ素子10は、インダクタL1〜L3と、キャパシタC1〜C3とを備えている。また、アンテナ素子10の給電点Pは、プリント基板20上のチップインダクタ27によるインダクタL4を介して給電ライン28に接続されている。インダクタL1は、放射導体13の第1の直線パターン13a、第5の直線パターン13e及び第3の直線パターン13cによって構成され、インダクタL2は、第7の直線パターン13gによる第1の折り返し部によって構成され、インダクタL3は、第2の直線パターン13b、第6の直線パターン13f及び第4の直線パターン13dによって構成されている。そのため、インダクタL1、L2、L3は直列に接続されている。
また、キャパシタC1は、第2の直線パターン13bの他端(放射導体13の先端)と給電導体12との間のギャップによる容量成分であり、キャパシタC2は、第7の直線パターン13gと第1の端子電極14との間のギャップによる容量成分であり、キャパシタC3は、第7の直線パターン13gの線幅に起因する容量成分である。
インダクタL1及びキャパシタC1は基本波の共振周波数に寄与し、インダクタL2及びキャパシタC2は2倍波の共振周波数に寄与し、インダクタL3及びキャパシタC3は3倍波の共振周波数に寄与する。そのため、キャパシタC2の容量を変更することで2倍波の共振周波数を独立して調整することができ、キャパシタC3の容量を変更することで3倍波の共振周波数を独立して調整することができる。
さらにインダクタL4は4倍波の周波数調整に寄与する。4共振アンテナを構成したい場合にはインダクタL4を給電点Pと給電ライン28との間に直列に挿入することで実現できる。インダクタL4も2倍波や3倍波の周波数に影響を与えるが、その影響は非常に小さい。したがって、インダクタL4を実装したとしても、2倍波や3倍波の共振周波数を容易に制御することができる。なお、4共振アンテナを構成する場合には、インダクタL4の値を最初に設定した後、2倍波及び3倍波のためのキャパシタC1、C2の値を調整することが好ましい。
一本のアンテナ導体パターンを用いて複共振特性を実現するためには、2倍波、3倍波等の高調波を利用することが有効である。しかし、目的とする複共振周波数が必ずしも2倍波、3倍波であるとは限らないので、複共振周波数を調整しなければならない。また、低周波から高周波までの広い周波数範囲内に複数の共振点を有する複共振アンテナを1チップ上に構成するためには、アンテナの帯状導体パターンを折り返し構造としなければならない。本実施形態のような折り返し構造とした場合には、第1の折り返し部が給電点に近づくが、この部分はアンテナの複共振特性に対する影響が大きい。本発明では、第1の折り返し部の位置や形状を調整することにより、所望の複共振特性を得ることを可能としたものである。
図6は、アンテナ装置100の放射効率の周波数特性を示すグラフであり、横軸は周波数(GHz)、縦軸は放射効率(dB)を示している。
図6に示すように、アンテナ装置100は、800MHz帯、1.5GHz帯、2.1GHz帯、及び2.5GHz帯にそれぞれ共振のピークを有する複共振アンテナである。この場合、800MHz帯が基本波、1.5GHz帯が2倍波、2.1GHz帯が3倍波、2.5GHz帯が4倍波に対応している。800MHz帯の基本波に対して、2倍波の理論的な周波数は1.6GHz帯、3倍波の理論的な周波数は2.4GHz帯となるべきところであるが、2倍波の電流分布波形と3倍波の電流分布波形との交点付近に放射導体13の折り返し部を設け、この折り返し部と給電点とを結合させているので、折り返し部の位置や形状を変更することで2倍波又は3倍波の周波数を大きく変化させることができ、2倍波又は3倍波の周波数を容易に調整することができる。
以上説明したように、本実施形態によるアンテナ装置100は、1本の帯状導体パターンを3回折り返した構造からなる放射導体によって複共振アンテナが構成されており、特に、2倍波の電流分布波形と3倍波の波形との交点付近に相当する放射導体13の第1の折り返し部を給電点と電磁界結合させているので、折り返し部と第1の端子電極14との間のギャップの幅W2を変更することで2倍波の周波数を実質的に独立して調整することができる。また、折り返し部の導体幅W3を変更することで3倍波の周波数を実質的に独立して調整することができる。さらに、給電ライン28上に周波数調整素子としてのチップインダクタ27を直列挿入することで、4倍波に対応する共振周波数を生成することができ、4共振アンテナを実現することができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されることは言うまでもない。
(実施例1)
図1に示す構造を有するアンテナ装置を用意した。アンテナ素子10のチップサイズは15×4×2mmとし、基体11の材料には誘電率37の材料を用いた。放射導体13の第1及び第2の直線パターン13a,13bの幅は1mm、第3及び第4の直線パターン13c、13dの幅は1.2mm、第5及び第6の直線パターン13e,13fの幅は1.5mm、第7の直線パターン13gの幅は1.2mmとした。このとき、放射導体13の先端と給電導体12との間のギャップの幅W1は11.6mmと11.4mmの2種類とした。その後、アンテナの放射効率の周波数特性を求めた。その結果を図7に示す。同図において"base"はW1=11.6mmのグラフ、"先端変更"はW1=11.4mmのグラフをそれぞれ示している。また"SPEC"はアンテナが満たすべきスペックを示しており、放射効率のグラフはこの矩形ラインと交差しないことが望ましい。
図7に示すように、放射導体13の先端を給電導体12に近づけ、ギャップの幅W1を11.6mmから11.4mmに変化させた場合には、基本波から4倍波までのすべての共振周波数のピークが低域側にシフトしたが、特に、基本波のシフト量が大きいことが分かった。
(実施例2)
放射導体13の先端と給電導体12との間のギャップの幅を11.6mmに固定し、第1の折り返し部を構成する第7の直線パターン13gと第1の端子電極14との間のギャップの幅W2を1.8mmと1.4mmの2種類とした点以外は実施例1と同一構造を有するアンテナ装置を用意した。そして、上記実施例1と同一の条件下でこれらのアンテナ装置の放射効率の周波数特性を求めた。その結果を図8に示す。同図において"base"はW2=1.8mmのグラフ、"間隔変更"はW2=1.4mmのグラフをそれぞれ示している。また"SPEC"はアンテナが満たすべきスペックを示している。
図8に示すように、第7の直線パターン13gを第1の端子電極14に近づけ、ギャップの幅W2を1.8mmから1.4mmに変化させた場合には、基本波から4倍波までのすべての共振周波数のピークが低域側にシフトしたが、特に、2倍波のシフト量が大きいことが分かった。
(実施例3)
放射導体13の先端と給電導体12との間のギャップの幅を11.6mmに固定し、第1の折り返し部を構成する第7の直線パターン13gの幅W3を1.2mmと1.8mmの2種類とした点以外は実施例1と同一構造を有するアンテナ装置を用意した。そして、上記実施例1と同一の条件下でこれらのアンテナ装置の放射効率の周波数特性を求めた。その結果を図9に示す。同図において"base"はW3=1.2mmのグラフ、"間隔変更"はW3=1.8mmのグラフをそれぞれ示している。また"SPEC"はアンテナが満たすべきスペックを示している。
図9に示すように、放射導体13の第1の折り返し部の幅W3を広くした場合には、基本波から4倍波までのすべての共振周波数のピークが低域側にシフトしたが、特に、3倍波及び4倍波の周波数のシフト量が大きいことが分かった。
(実施例4)
放射導体13の先端と給電導体12との間のギャップの幅を11.6mmに固定し、チップインダクタ27からなるインダクタL4の値を4.5nHと5.5nHの2種類とした点以外は実施例1と同一構造を有するアンテナ装置を用意した。そして、上記実施例1と同一の条件下でこれらのアンテナ装置の放射効率の周波数特性を求めた。その結果を図10に示す。同図において"base"はL4=4.5nHのグラフ、"インダクタンス値変更"はL4=5.5nHのグラフをそれぞれ示している。また"SPEC"はアンテナが満たすべきスペックを示している。
図10に示すように、チップインダクタ27からなるインダクタL4の値を大きくし、4.5nHから5.5nHに変化させた場合には、基本波の周波数は殆ど変化せず、2倍波及び3倍波の周波数は僅かに低下したが、それらに比べて4倍波の周波数の低下が非常に大きいことが分かった。
(実施例5)
実施例1で示した放射導体13の先端と給電導体12との間のギャップの幅W1、実施例2で示した第1の折り返し部を構成する第7の直線パターン13gと第1の端子電極14との間のギャップの幅W2、実施例3で示した第7の直線パターン13gの幅W1、チップインダクタ27からなるインダクタL4をそれぞれ独立のパラメータとし、各パラメータを動かして基本波を10MHz変化させた場合における2倍波、3倍波、4倍波の変化量を求めた。その結果を図11に示す。
図11に示すように、放射導体13の先端と給電導体12との間のギャップの幅W1を変化させた場合、基本波の共振周波数を10MHzの変化させた場合の各高調波の変化を見てみると、2倍波の変化は0MHz、3倍波の変化は6MHz、4倍波の変化は6MHzとなり、基本波の変化が最も大きいことが分かった。また、第7の直線パターン13gと第1の端子電極14との間のギャップの幅W2を変化させた場合、同様にして見てみると、2倍波の変化は284MHz、3倍波の変化は19MHz、4倍波の変化は25MHzとなり、2倍波の変化が最も大きいことが分かった。また、第7の直線パターン13gの幅W1を変化させた場合、同様にして見てみると、2倍波の変化は1MHz、3倍波の変化は18MHz、4倍波の変化は19MHzとなり、4倍波の変化が最も大きく、3倍波の変化もこれと同じ位であることが分かった。さらに、チップインダクタ27からなるインダクタL4の値を変化させた場合、同様にして見てみると、2倍波の変化は55MHz、3倍波の変化は192MHz、4倍波の変化は711MHzとなり、基本波の変化が最も大きいことが分かった。
10 アンテナ素子
11 基体
11a 基体の上面
11b 基体の底面
11c,11d 基体の側面
11e,11f 基体の側面
12 給電導体
13 放射導体
13a 第1の直線パターン
13b 第2の直線パターン
13c 第3の直線パターン
13d 第4の直線パターン
13e 第5の直線パターン
13f 第6の直線パターン
13g 第7の直線パターン
14 第1の端子電極
15a 第2の端子電極
15b 第3の端子電極
20 プリント基板
20a プリント基板の表面
20b プリント基板の裏面
20e プリント基板のエッジ
21 絶縁基板
23 アンテナ実装領域
24 第1のランド
25 第2のランド
26 第3のランド
27 チップインダクタ
28 給電ライン
29 グランドクリアランス領域
30 放射抑制パターン
100 アンテナ装置
C1-C3 キャパシタ
L1-L4 インダクタ
P 給電点
WA1 基本波
WA2 2倍波
WA3 3倍波

Claims (7)

  1. 略直方体状の誘電体からなる基体と、
    前記基体の長手方向と直交する第1の側面に形成された給電導体と、
    前記基体の上面、前記第1の側面と対向する第2の側面、及び底面にかけて連続的に形成された1本の帯状導体パターンからなる放射導体と、
    前記基体の底面であって、前記給電導体と接続されるように前記第1の側面寄りに形成された第1の端子電極とを備え、
    前記放射導体は、折り返し構造の帯状導体パターンであり、前記基体の底面において所定幅のギャップを介して前記第1の端子電極と近接して対向配置された第1の折り返し部を有することを特徴とするアンテナ装置。
  2. 前記放射導体の全長がλ/4(λは基本波の波長)と実質的に等しく、
    前記折り返し部の形成位置は、前記基本波に対する2倍波の電流分布波形と3倍波の電流分布波形との交点の位置を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 前記放射導体は、
    前記基体の上面に形成され前記基体の長手方向に延びる第1及び第2の直線パターンと、
    前記基体の底面に形成され前記基体の長手方向に延びる第3及び第4の直線パターンと、
    前記第1の直線パターンの一端と前記第3の直線パターンの一端とを接続する第5の直線パターンと、
    前記第2の直線パターンの一端と前記第4の直線パターンの一端とを接続する第6の直線パターンと、
    前記第3の直線パターンと前記第4の直線パターンの他端とを接続する第7の直線パターンとを備え、
    前記第7の直線パターンによって前記第1の折り返し部が構成されており、
    前記第5の直線パターンによって前記第2の折り返し部が構成されており、
    前記第6の直線パターンによって前記第3の折り返し部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
  4. 前記給電導体と給電ラインとの間に直列挿入されたチップインダクタをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
  5. アンテナ素子と、前記アンテナ素子が実装されるプリント基板とを備え、
    前記アンテナ素子は、略直方体状の誘電体からなる基体と、前記基体の長手方向と直交する第1の側面に形成された給電導体と、前記基体の上面、前記第1の側面と対向する第2の側面、及び底面にかけて連続的に形成された1本の帯状導体パターンからなる放射導体と、前記基体の底面であって前記給電導体と接続されるように前記第1の側面寄りに形成された第1の端子電極とを備え、前記放射導体は、折り返し構造の帯状導体パターンであり、前記基体の底面において所定幅のギャップを介して前記第1の端子電極と近接して対向配置された第1の折り返し部を有し、
    前記プリント基板の表面には、前記アンテナ素子が実装されるアンテナ実装領域が設けられており、前記プリント基板の裏面であって前記アンテナ素子の直下には、フローティングパターンが設けられていることを特徴とするアンテナ装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナ装置の周波数調整方法であって、
    前記第1の折り返し部と前記前記第1の端子電極との間のギャップの幅を変更することにより、前記基本波に対する2倍波の共振周波数を調整することを特徴とするアンテナ装置の周波数調整方法。
  7. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナ装置の周波数調整方法であって、
    前記第1の折り返し部の導体幅を変更することにより、基本波に対する3倍波の共振周波数を調整することを特徴とするアンテナ装置の周波数調整方法。
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