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JP2012101966A - 多結晶シリコンの電磁鋳造装置および電磁鋳造方法 - Google Patents

多結晶シリコンの電磁鋳造装置および電磁鋳造方法 Download PDF

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JP2012101966A JP2010250710A JP2010250710A JP2012101966A JP 2012101966 A JP2012101966 A JP 2012101966A JP 2010250710 A JP2010250710 A JP 2010250710A JP 2010250710 A JP2010250710 A JP 2010250710A JP 2012101966 A JP2012101966 A JP 2012101966A
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Abstract

【課題】鋳造の対象をn型とp型の間で変更するに際し、装置内の清掃を短時間で行い、得られる多結晶シリコンの抵抗率のバラツキの低く抑えることができる多結晶シリコンの電磁鋳造装置および電磁鋳造方法を提供する。
【解決手段】(1)無底冷却モールド1と、このモールドを取り囲む誘導コイル2を有し、電磁誘導加熱により溶融したシリコンを凝固させ、インゴット3として取り出す、n型多結晶シリコンの製造に適した多結晶シリコンインゴットの電磁鋳造装置であって、メインチャンバー7−1の上部に雰囲気ガスを引き込む開口11a、12aを有し、サブチャンバー7−2の下部に前記引き込んだ雰囲気ガスを導入する開口11b、12bを有する還流配管11、12を少なくとも2系統備える電磁鋳造装置。(2)この装置を使用し、多結晶シリコンの導電型に応じてあらかじめ定めた還流配管を使用する電磁鋳造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、電磁誘導による連続鋳造技術を適用して多結晶シリコンを製造する多結晶シリコンの電磁鋳造装置および電磁鋳造方法に関し、より詳しくは、電磁鋳造装置を使用して太陽電池の基板材として用いられるn型多結晶シリコンを製造する際に、鋳造の対象をn型多結晶シリコンからp型多結晶シリコンに切り替え、または再度n型多結晶シリコンに切り替え、製造することができる多結晶シリコンの電磁鋳造装置および電磁鋳造方法に関する。
周方向に分割された無底の冷却モールドが取り付けられた電磁誘導による連続鋳造装置(以下、「電磁鋳造装置」という)を使用すれば、溶解された物質(ここでは、溶融シリコン)とモールドとはほとんど接触しないので、不純物汚染のない鋳塊(シリコンインゴット)を製造することができる。モールドからの汚染がないので、モールドの材質として高純度材料を使用する必要がないという利点もあり、また、連続して鋳造することができるので、製造コストの大幅な低下が可能である。したがって、電磁鋳造装置は、従来から太陽電池の基板材として用いられる多結晶シリコンの製造に適用されてきた。
この電磁誘導装置の基本的な構成は、例えば、特許文献1に開示されるように、誘導加熱コイルと、その内側に容器状領域を形成するように配置された複数の導電性部材からなっている。
図3は、この基本構造を備えた装置であって、多結晶シリコンの製造に使用される電磁鋳造装置の構成例を模式的に示す図である。同図に示すように、加熱用誘導コイル2の内側に、内部を水冷できる縦方向に長い銅製の板状片が、誘導コイル2の巻き軸方向と平行に、かつ誘導コイル2内では相互に絶縁された状態で配列されており、この板状片によって囲まれた空間がモールド(すなわち、側壁部が水冷されている無底の冷却モールド)1を構成する。冷却モールド1には、通常、板状片を銅片とした水冷銅モールドが用いられる。
加熱用誘導コイル2の下端位置(すなわち、冷却モールド1の底部に相当する位置)には下方に移動できる支持台14が設置されている。また、加熱用誘導コイル2の下側には、凝固した鋳塊(シリコンインゴット3)を加熱して、急激な冷却を防ぐための保温装置4が設置されており、保温装置4の下側には、均熱筒5が取り付けられている。シリコンインゴット3は引抜き装置(図示せず)により下方に引き抜かれる。
冷却モールド1の上方には、溶解中に原料をモールド1内に投入できる原料投入機15が設置されている。さらに、この例では、モールド1の上方に、原料シリコンを加熱するためのプラズマトーチ10が取り付けられている。
これらの諸装置は、溶融シリコン6および高温のシリコンインゴット3が大気と直接触れることがないように、密閉容器(チャンバー7)内に設置され、通常は、チャンバー7内を不活性ガスで置換して、若干の加圧状態で連続鋳造が行えるように構成されている。
上記の電磁鋳造装置を用いた電磁鋳造法では、モールド1にシリコン原料を装入する。続いて、プラズマトーチ10を降下させ、シリコン原料との間にプラズマアークを発生させて原料を溶解する。原料を追加投入すると同時に、誘導コイル2に交流電流を通じると、モールド1を構成する短冊状の各素片は互いに電気的に分割されていることから、各素片内で電流がループを作り、これによりモールド1の内壁側に電流が生じ、モールド1内に磁界が形成され、電磁誘導加熱とプラズマアーク加熱の併用によりシリコン原料が溶解される。モールド1内のシリコン原料は、モールド内壁の電流がつくる磁界と溶融シリコン6表面の電流の相互作用によって溶融シリコン6表面の内側法線方向の力を受け、モールド1と非接触の状態で溶解される。
溶融シリコン6が十分均一化した後、支持台14を少しずつ下方に移動させていけば、誘導コイル2から離れることにより冷却が始まり、モールド1内の溶融シリコン6に向けての一方向性凝固が進行してモールド断面と同じ形状の断面を有するシリコンインゴット3が形成される。
支持台14の下方への移動分に対応して溶融シリコン6の量が減少するので、その分の原料シリコンを原料投入機15から供給し、溶融シリコン6の上面が常に同じ高さレベルを保つようにして、加熱溶解、引き抜き、原料供給を継続していくことにより、多結晶シリコンインゴット3を連続して製造することができる。
この電磁鋳造装置を用い、従来は、主として、ボロン(B)をドーパントとして使用するp型の多結晶シリコンインゴットが製造されている。以前は、多結晶シリコンは、石英るつぼ中で原料の高純度シリコンを加熱溶解し、そのままるつぼの中で凝固させるか、鋳型に流し込んで凝固させる鋳造法(キャスト法)で製造されていた。n型の多結晶シリコンの製造では、ドーパントとしてリン(P)を使用するが、Pは結晶成長過程での偏析が大きく、Bをドーパントとして使用するp型の多結晶シリコンに比べて製造が困難であり、したがって、p型の多結晶シリコンが製造される場合が多かった。
一方、n型の多結晶シリコンインゴットを電磁鋳造法で製造する場合、モールド内の溶融シリコンに向けての一方向性凝固が進行してドーパントは平均化されるので、Pの偏析の問題は解消される。さらに、n型の多結晶シリコンの方がライフタイムが長く、当該多結晶シリコンを基板として構成した太陽電池の変換効率が向上すると考えられており、電磁鋳造法によるn型の多結晶シリコンインゴットの製造も行われるようになってきた。しかし、キャスト法による製造が行われて以来、p型の多結晶シリコンの製造が主流となっており、電磁鋳造法の適用が一般化された後においても、p型の多結晶シリコンが求められる場合が多い。そのため、n型の多結晶シリコンの鋳造を一旦終了した後、引き続き同じ装置でp型の多結晶シリコンの鋳造を行い、再度、n型多結晶シリコンの鋳造に戻るというような操業形態が採られるケースが往々にして生じる。
ところで、電磁鋳造を実施した場合、装置内にはシリコン(Si)蒸発物が残存しており、鋳造中にインゴットに混入する。このSi蒸発物にはドーパントが含まれており、例えばn型多結晶シリコンを製造している場合、装置内にはPを含有するSi蒸発物が存在している。この装置でp型多結晶シリコンの鋳造を行う場合は、Pを含有するSi蒸発物を除去しないと、鋳造の対象をp型多結晶シリコンに変更したときに、装置内に残存しているP含有Si蒸発物がp型の多結晶シリコンインゴットに混入し、抵抗率が目標値から外れ、またバラツキが増大する等の不具合が発生する。
このため、鋳造の対象である多結晶シリコンの導電型を例えばn型からp型、あるいはその逆へと変更する場合、装置内の清掃が行われるが、多大な工数を要し、生産効率の低下が著しい。しかも、前記導電型の変更後に得られる多結晶シリコンの抵抗率の目標値からの外れや、バラツキの増大が生じる。
特開昭61−52962号公報
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、太陽電池の基板材としてより好適であると考えられるn型多結晶シリコンの製造に適した電磁誘導装置を使用して、多結晶シリコンを製造するに際し、鋳造の対象をn型多結晶シリコンからp型多結晶シリコンへ、あるいは逆にp型からn型の多結晶シリコンへ変更するに当たっての装置内の清掃を容易に、かつ短時間で行い、得られる多結晶シリコンの抵抗率の目標値からの外れやバラツキの増大を抑えることができる多結晶シリコンの電磁鋳造装置、およびこの装置を使用する電磁鋳造方法を提供することを目的としている。
電磁誘導装置を使用して多結晶シリコンを製造する場合、チャンバー内の雰囲気温度は、溶融シリコンが存在するメインチャンバーの中心部で高く、下方のサブチャンバー内では低くなり、また、チャンバーの側壁に近づくほど低くなる。この温度差に起因して、チャンバー内には、インゴットの外周と均熱筒の内周との間を上昇し、保温装置の上端とモールドの下端との隙間を抜けてモールドの外側をさらに上昇した後、チャンバーの側壁近傍を下降する雰囲気ガスの自然対流が発生する。
本出願人は、先に、前記雰囲気ガスの自然対流の下降流をチャンバーの外側に設けた還流配管に導く方法を提案した。すなわち、チャンバーの側壁に無底冷却ルツボの上方と下方で開口する配管(還流配管)が連結されており、この配管を通じて無底冷却ルツボの上方の雰囲気ガスを無底冷却ルツボの下方に導入しつつ、無底冷却ルツボの下方から上方に流入する雰囲気ガスの流れを遮断しながら鋳造を行う連続鋳造方法である(特願2010−40789号)。この連続鋳造方法によれば、雰囲気ガスに金属不純物が含まれる場合であっても、それによる汚染を未然に防ぎ、品質に優れた太陽電池用のシリコンインゴットを製造することができる。
そこで、本発明者は、上記の課題を解決するにあたり、前述のチャンバー内の雰囲気ガスを循環させる還流配管の設置を前提として検討した。
実機による検討の結果、後述する実施例に示すように、n型多結晶シリコンの製造に適した電磁鋳造装置にこの還流配管を少なくとも2系統備え、鋳造を行う際には、鋳造対象の多結晶シリコンの導電型に応じてあらかじめ定めた配管系統を使用するのが有効であることを確認した。
本発明はこのような検討結果に基づきなされたもので、下記(1)の多結晶シリコンの電磁鋳造装置、および(2)の多結晶シリコンの電磁鋳造方法を要旨とする。
(1)メインチャンバー内に軸方向の一部が周方向で複数に分割された導電性の無底冷却モールドと、このモールドを取り囲む誘導コイルを有し、前記誘導コイルによる電磁誘導加熱により溶融したシリコンを下方に引き下げ凝固させつつ、前記メインチャンバーに連接されたサブチャンバーの下部からインゴットとして取り出す、n型多結晶シリコンの製造に適した多結晶シリコンインゴットの電磁鋳造装置であって、前記メインチャンバーの上部に雰囲気ガスを引き込む開口を有し、サブチャンバーの下部に前記引き込んだ雰囲気ガスを当該サブチャンバー内へ導入する開口を有する還流配管を少なくとも2系統備えることを特徴とする多結晶シリコンの電磁鋳造装置。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造装置において、前記少なくとも2系統の還流配管において、配管系統の切替えを行う開閉バルブが設置されていることとすれば、配管系統の切替えをバルブ操作で容易に行うことができる。
(2)前記(1)に記載の多結晶シリコンの電磁鋳造装置(前記実施形態を含む)を用い、シリコン原料をモールドに装入し、電磁誘導加熱により溶融し、当該溶融したシリコンを下方に引き下げ凝固させることにより多結晶シリコンを連続的に鋳造する多結晶シリコンの電磁鋳造方法であって、鋳造対象の多結晶シリコンの導電型に応じてあらかじめ定めた配管系統を使用することとして、それ以外の配管系統を閉止し、前記あらかじめ定めた配管系統におけるメインチャンバーの上部の開口から配管内に雰囲気ガスを導入し、サブチャンバーの下部の開口から当該サブチャンバー内へ還流させるとともに、モールドの下方から上方へ流入する雰囲気ガスの流れを遮断しながら鋳造を行うことを特徴とする多結晶シリコンの電磁鋳造方法。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造方法において、使用するドーパントの導電型を変更する際には、当該ドーパントにより定まる多結晶シリコンの導電型に応じて前記あらかじめ定めた配管系統を使用することとして、それ以外の配管系統を閉止し、装置内を清掃した後、使用する配管系統を開いて鋳造を行うこととすれば、得られる多結晶シリコンの導電型の変更を、迅速に、かつ抵抗率の目標値からの外れやバラツキの増大を伴うことなく行える。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造装置は、チャンバーの外側にチャンバー内の雰囲気ガスの還流配管を備える、n型多結晶シリコンの製造に適した電磁誘導装置である。この電磁鋳造装置を使用し、本発明の電磁鋳造方法を適用すれば、鋳造の対象をn型多結晶シリコンからp型多結晶シリコンへ、あるいは逆にp型からn型の多結晶シリコンへ変更するに当たっての切替えを迅速に行い、かつ得られる多結晶シリコンの抵抗率の目標値からの外れやバラツキの増大を抑えることができる。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造装置の概略構成例を示す縦断面図である。 実施例の結果で、本発明を適用して得られた多結晶シリコンの抵抗率とそのバラツキを示す図である。 多結晶シリコンの製造に使用される電磁鋳造装置の構成例を模式的に示す図である。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造装置は、メインチャンバー内に軸方向の一部が周方向で複数に分割された導電性の無底冷却モールドと、このモールドを取り囲む誘導コイルを有する電磁鋳造装置であることを前提としている。
このような電磁鋳造装置を前提とするのは、太陽電池の基板材として用いられる多結晶シリコンを製造するに際し、モールド内で、溶融シリコンとモールドとをほとんど接触させずに鋳造を行い、モールドからの金属汚染がなく、太陽電池の基板材として好適な多結晶シリコンを製造することができるからである。モールドの材質として高純度材料を使用する必要がなく、また、連続して鋳造することができるので、製造コストの大幅な低下も可能である。
この電磁鋳造装置を使用することにより、前述のように、ドーパントとして用いるPの偏析の問題を解消できるので、この装置はn型多結晶シリコンの製造に適した装置であるといえる。
上記本発明の前提である電磁鋳造装置は、さらに、加熱源として、プラズマトーチを有するものであってもよい。電磁誘導加熱とプラズマアーク加熱の併用により、電磁誘導加熱の負担を軽減し、原料溶解の効率化を図ることができるので望ましい。
また、プラズマ電極としてタングステン(W)を用いることにより、以下に述べるように、本発明の電磁鋳造装置をn型多結晶シリコンの製造により一層適した装置とすることが可能になる。すなわち、本出願人は、先に、プラズマトーチ内に配設されたプラズマ電極としてWを用い、かつ、n型多結晶シリコンの製造に用いられる多結晶シリコンの製造装置を提案した(特願2010−202170号)。プラズマアーク加熱を併用して電磁誘導法によりn型多結晶シリコンを製造するに際し、プラズマ電極としてWを用いることにより、ライフタイムが長く、太陽電池の基板として用いた場合に高い変換効率が得られるn型の多結晶シリコンを製造することができる。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造装置は、このようにn型多結晶シリコンの製造に適した装置であることを前提として、メインチャンバーの上部に雰囲気ガスを引き込む開口を有し、サブチャンバーの下部に前記引き込んだ雰囲気ガスを当該サブチャンバー内へ導入する開口を有する還流配管を少なくとも2系統備えることを特徴とする電磁鋳造装置である。
図1は、本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造装置の概略構成例を示す縦断面図である。図1に示すように、本発明の電磁鋳造装置は、導電性の無底冷却モールド1と、このモールド1を取り囲む誘導コイル2を有している。誘導コイル2の下側には、凝固したシリコンインゴット3を加熱して、急激な冷却を防ぐための保温装置4が設置されており、保温装置4の下側には、均熱筒5が取り付けられている。均熱筒5の外側には金属製の外枠13が取り付けられている。
これらの諸装置は、溶融シリコン6および高温のシリコンインゴット3が大気と直接触れることがないように、密閉されたチャンバー7内に設置されている。チャンバー7は、図示するように、メインチャンバー7−1と、当該メインチャンバー7−1に連接されたサブチャンバー7−2とで構成されており、メインチャンバー7−1の上部には不活性ガスをチャンバー7内に導入するための不活性ガス導入口8が取り付けられ、サブチャンバー7−2の下部には排気口9が設けられている。この装置例では、モールド1の上方に昇降可能に設置されたプラズマトーチ10が取り付けられている。
さらに、この電磁鋳造装置には還流配管が2系統配設されている。すなわち、図1において、チャンバー7を中心として、その右側(紙面の右側)に、メインチャンバー7−1の上部に雰囲気ガスを引き込む開口11aを有し、サブチャンバー7−2の下部に前記引き込んだ雰囲気ガスを当該サブチャンバー7−2内へ導入する開口11bを有する還流配管11が配設され、チャンバー7の左側にも同じ構成の還流配管12が配設されている。
前述したように、チャンバー内には、インゴットの外周と均熱筒の内周との間を上昇し、保温装置の上端とモールドの下端との隙間を抜けてモールドの外側をさらに上昇した後、チャンバーの側壁近傍を下降する雰囲気ガスの自然対流が発生する。
均熱筒5の下側の隙間から導入され、インゴット3の外周と均熱筒5の内周との間を上昇した雰囲気ガスは、図1中に矢印で示したように(但し、矢印は、煩雑さを避けるため還流配管11側においてのみ表示)、保温装置4の上端とモールド1の下端との隙間を抜けてモールド1の外側をさらに上昇する。その後、モールド1内の溶融シリコン6表面から発生した蒸気とともに、開口11aから還流配管11内に引き込まれ、同配管11内を通過して、開口11bからサブチャンバー7−2内へ導入される。
前記導入された雰囲気ガスは、前述のように、インゴット3の外周と均熱筒5の内周との間を上昇するが、一部は均熱筒5の上端とサブチャンバー7−2の上端面(メインチャンバー7−1とサブチャンバー7−2を仕切る面)の間の隙間を通過して前記均熱筒5の下側隙間からの上昇ガスと合流する。
このように、チャンバー7内には、還流配管11または還流配管12を介しての雰囲気ガスの自然対流が発生する。なお、雰囲気ガスは、不活性ガス導入口8から導入される不活性ガスとともに最終的には排気口9からチャンバー7外に排出される。
還流配管の内径、形状等について何ら限定はない。自然対流による配管内の雰囲気ガスの流れが円滑に行われるような内径、形状等を備えるものであればよい。
このように、電磁鋳造装置に2系統の還流配管を取り付けるのは、鋳造の対象をn型多結晶シリコンからp型多結晶シリコンへ、あるいは逆にp型からn型の多結晶シリコンへ変更するに当たっての切替えを迅速に行い、かつ、得られる多結晶シリコンの抵抗率の目標値からの外れやバラツキの増大を抑えるためである。この効果は、後に詳述するが、2系統の還流配管のうちの1系統をn型多結晶シリコンの鋳造時に使用し、残りの1系統をp型多結晶シリコンの鋳造時に使用することにより達成される。
還流配管の配置数は図1に例示した2系統に限らない。2系統の場合は、n型およびp型多結晶シリコンの鋳造にそれぞれ1系統の還流配管を割り当てることになるが、1系統の場合は雰囲気ガスの流れに偏りが生じやすい。したがって、還流配管の配置数を例えば4系統に増やして、n型およびp型多結晶シリコンの鋳造用にそれぞれ2系統を割り当て、それらを電磁鋳造装置内でバランスよく配置して雰囲気ガスの流れの均一化を図るのが望ましい。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造装置において、前記少なくとも2系統の還流配管において、配管系統の切替えを行う開閉バルブが設置されていることとすれば、配管系統の切替えをバルブ操作で容易に行うことができるので望ましい。
その場合、開閉バルブは、各開口部から当該配管内へ300mm以内の部位に設置されていれば、配管内の清掃を容易に行うことができる。さらに、開閉バルブに自動開閉機能をもたせ、遠隔操作で開閉することも可能である。
図1に示した例は、本発明の電磁鋳造装置の望ましい実施形態で、これら2系統の還流配管11、12において、各開口11a、11b、12a、12bから配管11または配管12内へ300mm以内の部位に、配管系統の切替えを行う自動開閉バルブV1、V2、V3、V4が設置されている。
図1に示した電磁鋳造装置において、自動開閉バルブV1、V2、V3、V4の設置位置を前記のように規定するのは、配管内の清掃を容易にするためである。鋳造の対象をn型多結晶シリコンからp型多結晶シリコンへ、あるいはその逆へ変更するに当たっての配管系統の切替え時には、チャンバー内に不活性ガスを送通して雰囲気ガスの置換を行うが、還流配管内の清掃はこのような雰囲気ガスの置換のみでは困難であり、例えば掃除機を利用して行われる。したがって、自動開閉バルブが各開口からそれら配管内へ300mm以内の部位(すなわち、開口部から手の届く距離)に設置されていれば、開閉バルブが閉止された状態でその手前のみを清掃すればよく、清掃を容易に行うことができる。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造方法は、前記本発明の電磁鋳造装置(前記実施形態を含む)を用い、シリコン原料をモールドに装入し、電磁誘導加熱により溶融し、当該溶融したシリコンを下方に引き下げ凝固させることにより多結晶シリコンを連続的に鋳造することを前提とする。この前提をおいた理由は前述のとおりである。
本発明の電磁鋳造方法は、この前提の下に、鋳造対象の多結晶シリコンの導電型に応じてあらかじめ定めた配管系統を使用することとして、それ以外の配管系統を閉止し、前記あらかじめ定めた配管系統におけるメインチャンバーの上部の開口から配管内に雰囲気ガスを導入し、サブチャンバーの下部の開口から当該サブチャンバー内へ還流させるとともに、モールドの下方から上方へ流入する雰囲気ガスの流れを遮断しながら鋳造を行うことを特徴とする方法である。以下、前記の図1を参照して説明する。
本発明の電磁鋳造方法を実施するに際しては、先ず、鋳造対象の多結晶シリコンの導電型に応じて使用する配管系統をあらかじめ定めておき、使用しない配管系統を閉止する。図1において、例えば、還流配管11をn型多結晶シリコンの鋳造用、還流配管12をp型多結晶シリコンの鋳造用として定め、n型多結晶シリコンを鋳造する場合を想定すると、還流配管11の自動開閉バルブV1、V2を開き、還流配管12のバルブV3、V4を閉じる。バルブV3、V4を閉じておくことにより、還流配管12内へのP含有Si蒸発物の通過が遮断されるので、鋳造の対象をn型多結晶シリコンからp型多結晶シリコンへ変更するに当たり、還流配管12内については清掃を行う必要がなく、n型、p型の切替えに際しての装置内の清掃を迅速に行うことが可能となる。
続いて、シリコン原料の溶解、鋳造の進行に伴い生成する雰囲気ガスを、自然対流を利用して、前記あらかじめ定めた配管系統(この場合は、還流配管11)におけるメインチャンバー7−1の上部の開口11aから当該配管11内に導入し、サブチャンバー7−2の下部の開口から当該サブチャンバー7−2内へ還流させる。
サブチャンバー7−2内へ導入された雰囲気ガスは、前述のように、インゴット3の外周と均熱筒5の内周との間を上昇し、一部は均熱筒5の上端とサブチャンバー7−2の上端面の間の隙間を通過して前記均熱筒5の下側隙間からの上昇ガスと合流する。合流した雰囲気ガスは保温装置4の上端とモールド1の下端との隙間を抜けてモールド1の外側をさらに上昇する。その後、モールド1内の溶融シリコン6表面から発生した蒸気とともに、開口12aから還流配管12内に引き込まれ、同配管12内を通過して、開口12bからサブチャンバー7−2内へ導入される。
このように、チャンバー7内には、還流配管11を介しての雰囲気ガスの自然対流が発生する。なお、雰囲気ガスは、不活性ガス導入口8から導入される不活性ガスとともに最終的には排気口9からチャンバー7外に排出される。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造方法において、使用するドーパントの導電型を変更する際には、当該ドーパントにより定まる多結晶シリコンの導電型に応じて前記あらかじめ定めた配管系統を使用することとして、それ以外の配管系統を閉止する。続いて、装置内を清掃した後、使用する配管系統を開いて鋳造を行う。
図1を参照して説明すると、先ず、あらかじめ定めてあるp型用還流配管12を使用することとして、n型用還流配管11の自動開閉バルブV1、V2を閉止する。なお、p型用還流配管12の自動開閉バルブV3、V4は引き続き閉じられたままである。不活性ガス導入口8から不活性ガスを導入してチャンバー7内の雰囲気ガスを置換するとともに、各開口部(例えば、開口11aから自動開閉バルブV1までの間)に付着残留しているP含有Si蒸発物を清掃除去する装置内の清掃を行う。開閉バルブV1、V2、V3、V4はいずれも閉じられており、還流配管11、12内については清掃を行う必要がない。その後、p型用還流配管12のバルブV3、V4を開いて、p型多結晶シリコンの電磁鋳造を開始する。
メインチャンバー7−1の上部の開口12aから当該配管12内には、自然対流により雰囲気ガスが導入され、サブチャンバー7−2の下部の開口12bから当該サブチャンバー7−2内へ還流される。還流配管12によりサブチャンバー7−2内へ導入された雰囲気ガスは、前述のように、最終的には排気口9からチャンバー7外に排出されるが、大半は還流配管12を介してチャンバー7内で自然対流する。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造方法によれば、鋳造の対象である多結晶シリコンの導電型を変更するに際し、装置内の清掃を迅速に行い、かつ得られる多結晶シリコンの抵抗率の目標値からの外れやバラツキの増大を抑えることができる。
前記図1に示した2系統の還流配管を備える本発明の電磁鋳造装置を使用し、p型用還流配管を使用してp型多結晶シリコンの鋳造(ドーパントとして、Bを使用)を15回行った後、n型用還流配管を使用してn型多結晶シリコン(ドーパントとして、Pを使用)の鋳造を行った。その際、切替えに際して還流配管の清掃に要した時間、得られたn型多結晶シリコンインゴットの抵抗率およびそのバラツキを調査した。インゴットの断面寸法は345mm×505mmで、長さは4mとした。この場合、還流配管の長さは7mであった。
調査結果を表1に示す。表1において、「本発明例」は、ドーパント別にあらかじめ定めた専用の還流配管を使用した場合である。「比較例」は、同じ電磁鋳造装置において、ドーパント別の専用の還流配管を定めず、2系統すべてをp型多結晶シリコンの鋳造に使用し、切替え後は、2系統すべてをn型多結晶シリコンの鋳造に使用した場合であり、比較例1は、還流配管(2本分)の清掃を実施した場合、比較例2は前記清掃を実施しなかった場合、比較例3はドーパントを変更せず(つまり、p型からn型多結晶シリコンへの切替えを行わず)、引き続きp型多結晶シリコンの鋳造を行った場合である。比較例3における抵抗率の平均値は、切替え後の抵抗率の目標値とみなされる。
抵抗率の調査は、得られたシリコンインゴットのそれぞれについて、トップ部とボトム部の500mmづつを取り除いた残りの部分を1000mmごとに切断し、切断した面内30箇所の合計120箇所で行った。調査に供したインゴット数は、本発明例、比較例とも3本である。表1には、全データについて、その平均値、および最低値、最大値を表示した。
Figure 2012101966
図2は、前記表1に示した結果を図示したもので、本発明を適用して得られた多結晶シリコンの抵抗率とそのバラツキを示す図である。
表1から明らかなように、p型多結晶シリコンからn型多結晶シリコンへの切替えに際して還流配管の清掃に要した時間は、比較例1(還流配管の清掃あり)では平均42分(2本分)であったのに対し、本発明例では僅か3分で、還流配管の清掃に要する時間は著しく短縮された。
表1および図2に示したように、ドーパントを変更せず、引き続きp型多結晶シリコンの鋳造を行った比較例3に対して、本発明例では、抵抗率の平均は全く変わらず、目標値からの外れはなかったと言える。また、バラツキも比較例3に比べて僅かに大きいだけであり、極めて良好な結果が得られた。これは、p型多結晶シリコンの鋳造を終了した後の装置内(特に、還流配管内)の清掃が短時間で十分に行われたことを裏付けるものである。
これに対し、比較例2(還流配管の清掃なし)では、抵抗率が幾分増大し、目標値からの外れが認められるとともに、抵抗率のバラツキが非常に大きかった。これは、還流配管内におけるP含有Si蒸発物の残存によるものと考えられる。還流配管の清掃を実施した比較例1でも抵抗率のバラツキがかなり大きかったが、配管内の清掃が困難で、P含有Si蒸発物の除去が十分ではなかったことによるものと推察される。
本発明の多結晶シリコンの電磁鋳造装置および電磁鋳造方法によれば、鋳造対象インゴットの導電型の切替えに際して、還流配管の清掃に要する時間を短縮して切替えを迅速に行うとともに、得られる多結晶シリコンの抵抗率の目標値からの外れやバラツキの増大を抑えることができる。したがって、本発明は、太陽電池の製造分野において有効に利用することができる。
1:モールド、 2:誘導コイル、 3:シリコンインゴット、
4:保温装置、 5:均熱筒、 6:溶融シリコン、
7:チャンバー、 7−1:メインチャンバー、 7−2:サブチャンバー、
8:不活性ガス導入口、 9:排気口、 10:プラズマトーチ、
11:還流配管、 11a、11b:開口、
12:還流配管、 12a、12b:開口、
13:外枠、 14:支持台、 15:原料投入機

Claims (4)

  1. メインチャンバー内に軸方向の一部が周方向で複数に分割された導電性の無底冷却モールドと、このモールドを取り囲む誘導コイルを有し、前記誘導コイルによる電磁誘導加熱により溶融したシリコンを下方に引き下げ凝固させつつ、前記メインチャンバーに連接されたサブチャンバーの下部からインゴットとして取り出す、n型多結晶シリコンの製造に適した多結晶シリコンインゴットの電磁鋳造装置であって、
    前記メインチャンバーの上部に雰囲気ガスを引き込む開口を有し、サブチャンバーの下部に前記引き込んだ雰囲気ガスを当該サブチャンバー内へ導入する開口を有する還流配管を少なくとも2系統備えることを特徴とする多結晶シリコンの電磁鋳造装置。
  2. 前記少なくとも2系統の還流配管において、配管系統の切替えを行う開閉バルブが設置されていることを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコンの電磁鋳造装置。
  3. 請求項1または2に記載の多結晶シリコンの電磁鋳造装置を用い、シリコン原料をモールドに装入し、電磁誘導加熱により溶融し、当該溶融したシリコンを下方に引き下げ凝固させることにより多結晶シリコンを連続的に鋳造する多結晶シリコンの電磁鋳造方法であって、
    鋳造対象の多結晶シリコンの導電型に応じてあらかじめ定めた配管系統を使用することとして、それ以外の配管系統を閉止し、
    前記あらかじめ定めた配管系統におけるメインチャンバーの上部の開口から配管内に雰囲気ガスを導入し、サブチャンバーの下部の開口から当該サブチャンバー内へ還流させるとともに、モールドの下方から上方へ流入する雰囲気ガスの流れを遮断しながら鋳造を行うことを特徴とする多結晶シリコンの電磁鋳造方法。
  4. 使用するドーパントの導電型を変更する際には、当該ドーパントにより定まる多結晶シリコンの導電型に応じて前記あらかじめ定めた配管系統を使用することとして、それ以外の配管系統を閉止し、
    装置内を清掃した後、使用する配管系統を開いて鋳造を行うことを特徴とする請求項3に記載の多結晶シリコンの電磁鋳造方法。
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