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JP2012188728A - 複合水素吸蔵合金及びニッケル水素蓄電池 - Google Patents

複合水素吸蔵合金及びニッケル水素蓄電池 Download PDF

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JP2012188728A JP2011093015A JP2011093015A JP2012188728A JP 2012188728 A JP2012188728 A JP 2012188728A JP 2011093015 A JP2011093015 A JP 2011093015A JP 2011093015 A JP2011093015 A JP 2011093015A JP 2012188728 A JP2012188728 A JP 2012188728A
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Limin Wang
立民 王
万▲強▼ ▲劉▼
Wanqiang Liu
▲耀▼明 ▲呉▼
Yaoming Wu
Yoshiteru Kawabe
佳照 川部
Tetsuya Ozaki
哲也 尾崎
Masaharu Watada
正治 綿田
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Changchun Institute of Applied Chemistry of CAS
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Abstract

【課題】高放電容量及び高率放電性能を有する複合水素吸蔵合金及びそれを用いてなるニッケル水素蓄電池を提供する。
【解決手段】I相を有する水素吸蔵合金とAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金とを含有する複合水素吸蔵合金。
【選択図】なし

Description

この発明は、高放電容量及び高率放電性能を有する複合水素吸蔵合金及びそれを用いてなるニッケル水素蓄電池に関するものである。
水素吸蔵合金は、水素を安全かつ容易に貯蔵でき、クリーンなエネルギー源として期待される材料であり、エネルギーの新しい貯蔵・変換材料として注目されている。
従来、水素吸蔵合金としては、CaCu型構造を有するAB型、CsCI型構造を有するAB型、立方晶系C15や六方晶系C14構造を有するAB型等の結晶相が含まれるものについて、その電気化学的特性が広く調べられている。
一方、5回対称軸、正20面体構造を有し、Ti、Zr、Ni等の遷移金属からなる合金は、Icosahedral型の準結晶相(I相)を有することが知られており、その高い水素吸蔵能が注目されている(非特許文献1)。
このような水素吸蔵合金の応答分野は、水素の貯蔵・輸送、熱の貯蔵・輸送、熱−機械エネルギーの変換、水素の分離・精製、水素同位体の分離、ニッケル水素蓄電池、合成化学における触媒、温度センサー等の多岐にわたるが、このうち負極活物質として水素吸蔵合金を用いるニッケル水素蓄電池は、小型、軽量高出力等の利点を有することより、需要が拡大している。
ニッケル水素蓄電池の負極活物質としては、従来、希土類元素及びNiを主たる構成元素とするAB型合金が用いられてきたが、現在使用されているAB型合金の放電容量はすでにLaNiの理論容量の約85%に達しており、これ以上の高容量化は期待できない。
Appl.Phys. Lett. 69(1996)2998-3000
そこで本発明は、上記現状に鑑み、高放電容量及び高率放電性能を有する複合水素吸蔵合金及びそれを用いてなるニッケル水素蓄電池を提供すべく図ったものである。
本発明者は、鋭意検討の結果、優れた水素吸蔵能を備えたI相を有する水素吸蔵合金に、AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金を混合して複合合金化することにより、水素放出能の向上を図ることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明に係る複合水素吸蔵合金は、I相を有する水素吸蔵合金とAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金とを含有することを特徴とする。
本発明に係る複合水素吸蔵合金において、前記AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金の含有量は、複合水素吸蔵合金中10〜30重量%であることが好ましい。
前記I相を有する水素吸蔵合金は、少なくともTiを構成元素とするものであることが好ましく、なかでも、少なくともTi、V及びNiを構成元素とするものであることがより好ましい。
本発明に係る複合水素吸蔵合金の用途としては特に限定されないが、ニッケル水素蓄電池の負極活物質として好適に用いることができる。このように、本発明に係る複合水素吸蔵合金を含有する負極を備えているニッケル水素蓄電池もまた、本発明の1つである。
本発明によれば、優れた水素吸蔵能を備えたI相を有する水素吸蔵合金に、AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金を混合して複合合金化することにより、水素放出能の向上を図ることができる。そして、このような優れた水素吸蔵能と水素放出能とを兼ね備えた複合水素吸蔵合金をニッケル水素蓄電池の負極活物質として用いることにより、放電容量が高く、かつ、高率放電性能に優れた電池を得ることができる。
AB型合金(a)、Ti1.40.6Ni合金(b)、及び、それらの複合合金(c)のXRDパターンを示す図である。 透過型電子顕微鏡(TEM)により観察されたTi1.40.6Ni合金の、明視野像(a)、5倍の電子回折パターン(b)、及び、通常の電子回折パターン(c)を示す図である。 Ti1.40.6Ni合金からなる負極と、Ti1.40.6Ni合金とAB型合金との複合合金からなる負極との、サイクル回数と放電容量との相関を示すグラフである。 Ti1.40.6Ni合金からなる負極と、Ti1.40.6Ni合金とAB型合金との複合合金からなる負極との、50%DODでの電気化学インピーダンスのスペクトルを示すグラフである。 図4に示す電気化学インピーダンスのスペクトルに対応する等価回路を示す図である。 Ti1.40.6Ni合金からなる負極と、Ti1.40.6Ni合金とAB型合金との複合合金からなる負極との、電流時間応答に対するアノード電流の片対数プロットを示すグラフである。
以下に本発明を詳述する。
本発明に係る複合水素吸蔵合金は、I相を有する水素吸蔵合金とAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金とを含有するものである。ここで、I相とは、Icosahedral型の準結晶相を意味し、AB型の結晶相とは、ABで表される組成を有する結晶相を意味する。なお、Aは、希土類元素及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(水素吸蔵金属)を表し、Bは、希土類元素以外の遷移元素及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(水素放出金属)を表す。
前記I相を有する水素吸蔵合金としては、例えば、Ti1.40.6Ni、Ti1.60.4Ni、Ti1.70.3Ni、Ti1.80.2Ni、Ti1.90.1Ni、Ti45Zr30Ni13Pd、Ti45Zr30Ni25Y、Ti45Zr35Ni17Cu、Ti45Zr38Ni17、Ti59Ni34等のチタン系合金;Mg2511Zn64等のマグネシウム系合金;Al63Cu25Fe12、Al70Cu20Fe10、Al86Mn14、Al56.1Cu10.2Li33.7、Al85.714.3、Al78.4Mn10.6Ru、Al80.4Mn19.6、Al78Re22、AlMn等のアルミニウム系合金;Sc16.2Cu12.3Zn71.5等のスカンジウム系合金;Zn59Mg31Ho10等の亜鉛系合金等が挙げられる。これらはいずれもIcosahedral型の準結晶相を有する合金であり、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの合金のなかでも、Tiを主たる構成元素とするチタン系合金が、その優れた水素吸蔵能から好適に用いられ、Ti含有量が45at%以上のものがより好ましい。
前記チタン系合金としては、安定性に優れていることから、Ti、Zr及びNiを構成元素とするTiZrNi系合金が広く用いられているが、TiZrNi系合金のZrの少なくとも一部がVに置換されたTiVNi系合金は、TiZrNi系合金より動的効果(活性)が高く、水素放出能に優れている。また、VはZrより安価であるので、TiVNi系合金はTiZrNi系合金よりコスト面でも有利である。このような少なくともTi、V及びNiを構成元素とするチタン系合金のなかでも、例えば、一般式TiNi(1.4≦x≦1.9、0.1≦y≦0.6、x+y=2)で表される組成を有する合金が好適に用いられる。
前記I相を有する水素吸蔵合金におけるI相の含有量は、当該水素吸蔵合金中30〜70体積%であることが好ましい。I相の含有量が30体積%未満であると水素吸蔵量が充分となることがあり、一方、I相の含有量が70体積%を超えると、水素放出能が低下することがある。
前記I相を有する水素吸蔵合金の製造方法としては特に限定されず、例えば、単ロール溶融紡糸法、双ロール溶融紡糸法、遠心噴霧法、REP法、回転液中紡糸法、ガスアトマイズ法等の溶融状態の合金を急冷する方法;機械的合金(メカニカルアロイング)法等の固相反応法;スパッタ法等の気相から形成する方法等が挙げられ、これらを適宜選択して用いることにより前記I相を有する水素吸蔵合金を製造することができる。
前記AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金としては特に限定されず、例えば、AB3.0〜AB3.8の組成で表されるものが挙がられ、このようなものとしては、例えば、一般式LaMg1−a−bNiM2(式中、0.3≦a≦0.65、0.15≦b≦0.3、2.5≦c≦3.8、3≦c+d≦3.8であり、M1は、La以外の希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、M2は、希土類元素とNiとを除く遷移元素及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)で表される組成を有する合金が挙げられる。
このような一般式で表される組成を有する合金としては、例えば、LaNdMg1−a−bNiAl3−c(0.60≦a≦0.65、0.10≦b≦0.12、2.5≦c<3)、LaNdMg1−a−bNi2.85CoSiAl1−c−d(0.50≦a≦0.52、0.25≦b≦0.30、0.60≦c≦0.70、0≦d≦0.10)、LaNdMg1−a−b−cNiCoSiAl(0.30≦a≦0.40、0.10≦b≦0.20、0.1≦c≦0.20、2.5≦d≦2.7、0.30≦e≦0.40、0≦f≦0.10、0≦g≦0.10)等が挙げられ、より具体的には、例えば、La0.65Nd0.12Mg0.23Ni2.9Al0.1、La0.52Nd0.30Mg0.18Ni2.85Co0.70Si0.10Al0.15、La0.4Nd0.20.2Mg0.2Ni2.7Co0.4Si0.1Al0.1等が挙げられる。これらの合金は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
前記AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金の製造方法としては特に限定されず、例えば、誘導浮遊溶解法、焼結法、急冷凝固法等が挙げられ、これらを適宜選択して用いることにより前記AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金を製造することができる。
本発明に係る複合水素吸蔵合金は、I相を有する水素吸蔵合金にAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金を添加し、これらを複合合金化することにより、得られた複合合金中でAB型の結晶相が原子状水素の移動を促進し、この結果、水素放出能を向上させることができる。このため、I相を有する水素吸蔵合金とAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金とを含有する本発明に係る複合水素吸蔵合金は、I相を有する水素吸蔵合金単独よりも、放電容量が大きく、かつ、高率放電性能に優れている。
本発明において、I相を有する水素吸蔵合金とAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金との混合比としては、得られた複合水素吸蔵合金中AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金の含有量が10〜30重量%となるように、I相を有する水素吸蔵合金にAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金を添加して、これらを混合することが好ましい。前記AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金の含有量が10重量%未満であると、水素放出能が不充分となることがあり、一方、AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金の含有量が30重量%を超えても、それ以上の放電容量の改善効果は見込めず、また、その分I相を有する水素吸蔵合金の含有量が減少してしまうので、水素吸蔵能が不充分となることがある。
本発明に係る複合水素吸蔵合金の製造方法としては特に限定されず、例えば、それぞれ所定の組成になるように、単一ロール溶融紡糸法等を用いて製造されたI相を有する水素吸蔵合金と、誘導浮遊溶解法等を用いて製造されたAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金とを、それぞれ機械的に粉砕し、微粉末化した後、所定の混合比で混ぜ合わせ、得られた混合物に対し機械的合金化処理を行うことにより、本発明に係る複合水素吸蔵合金を製造することができる。
なお、本発明に係る複合水素吸蔵合金、及び、その原料であるI相を有する水素吸蔵合金とAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金とにおける、準結晶相又は結晶相の存在は、例えば、X線回折法(XRD)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認することができる。
本発明に係る複合水素吸蔵合金の用途としては特に限定されず、ニッケル水素蓄電池、燃料電池、水素自動車用の燃料用タンク等をはじめ、様々な用途に適用することが可能であるが、なかでも、ニッケル水素蓄電池の負極活物質に好適に用いられる。このように本発明に係る複合水素吸蔵合金を含有する負極を備えたニッケル水素蓄電池もまた、本発明の1つである。
本発明に係るニッケル水素蓄電池は、例えば、本発明に係る複合水素吸蔵合金を負極活物質として含有する負極に加えて、更に、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有する正極(ニッケル電極)、セパレータ、及び、アルカリ電解液等を備えているものである。
前記負極は、本発明に係る複合水素吸蔵合金が負極活物質として配合されているものである。本発明に係る複合水素吸蔵合金は、例えば、粉末化された複合水素吸蔵合金粉末として負極中に配合される。
前記複合水素吸蔵合金粉末の平均粒径は、20〜100μmであることが好ましく、より好ましくは40〜70μmである。平均粒径が20μm未満であると、合金の活性化が不充分となり、一方、平均粒径が100μmを超えると、生産性が低下することがある。前記複合水素吸蔵合金粉末は、例えば、不活性ガスの存在下に、本発明に係る複合水素吸蔵合金を機械で粉砕すること等により得られる。
前記負極は、前記複合水素吸蔵合金粉末に加えて、導電剤、結着剤(増粘剤)等を含有していてもよい。
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、気相成長炭素等の炭素系導電剤;ニッケル、コバルト、銅等の金属の粉末や繊維等からなる金属系導電剤;酸化イットリウム等が挙げられる。これらの導電剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
前記導電剤の配合量は、前記複合水素吸蔵合金粉末100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5質量部である。前記導電剤の配合量が0.1質量部未満であると、充分な導電性を得ることが難しく、一方、前記導電剤の配合量が10質量部を超えると、放電容量の向上効果が不充分となることがある。
前記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルフォン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム等が挙げられる。これらの結着剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
前記結着剤の配合量は、前記複合水素吸蔵合金粉末100質量部に対して、0.1〜0.5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3質量部である。前記結着剤の配合量が0.1質量部未満であると、充分な増粘性が得られにくく、一方、前記結着剤の配合量が0.5質量部を超えると、電極の性能が低下してしまうことがある。
前記正極としては、例えば、主成分である水酸化ニッケルに水酸化亜鉛や水酸化コバルトが混合されてなる水酸化ニッケル複合酸化物が正極活物質として配合された電極等が挙げられる。当該水酸化ニッケル複合酸化物としては、共沈法によって均一分散されたものが好適に用いられる。
前記正極は、前記水酸化ニッケル複合酸化物に加えて電極性能を改善するための添加剤を含有していることが好ましい。前記添加剤としては、例えば、水酸化コバルト、酸化コバルト等の導電改質剤が挙げられ、また、前記水酸化ニッケル複合酸化物に水酸化コバルトがコートされたものや、前記水酸化ニッケル複合酸化物の一部が、酸素又は酸素含有気体、K、次亜塩素酸等によって酸化されていてもよい。
前記添加剤としては、また、Y、Yb等の希土類元素を含む化合物や、Ca化合物等の酸素過電圧を向上させる物質を用いることもできる。Y、Yb等の希土類元素は、その一部が溶解して、負極表面に配置されるため、負極活物質の腐食を抑制する効果も期待できる。
前記正極は、更に、前記負極と同様に、上述の導電剤、結着剤等を含有していてもよい。
このような正極及び負極は、各活物質に、必要に応じて上述の導電剤、結着剤等を加えた上で、これらを水又はアルコールやトルエン等の有機溶媒と共に混練して得られたペーストを、導電性支持体に塗布し、乾燥させた後、圧延成形すること等により製造することができる。
前記導電性支持体としては、例えば、鋼板、鋼板にニッケル等の金属材料からなるメッキが施されたメッキ鋼板等が挙げられる。前記導電性支持体の形状としては、例えば、発泡体、繊維群の成形体、凹凸加工を施した3次元基材;パンチング板等の2次元基材が挙げられる。これらの導電性支持体のうち、正極用としては、アルカリに対する耐食性と耐酸化性に優れたニッケルを材料とし、集電性に優れた構造である多孔体構造からなる発泡体が好ましい。一方、負極用としては、安価で、かつ、導電性に優れる鉄箔に、ニッケルメッキを施したパンチング板が好ましい。
前記導電性支持体の厚さは、30〜100μmであることが好ましく、より好ましくは40〜70μmである。前記導電性支持体の厚さが30μm未満であると、生産性が低下することがあり、一方、前記導電性支持体の厚さが100μmを超えると、放電容量が不充分となることがある。
前記導電性支持体が多孔性のものである場合、その内径は、0.8〜2μmであることが好ましく、より好ましくは1〜1.5μmである。内径が0.8μm未満であると、生産性が低下することがあり、一方、内径が2μmを超えると、水素吸蔵合金の保持性能が不充分となることがある。
前記導電性支持体への各電極用ペーストの塗布方法としては、例えば、アプリケーターロール等を用いたローラーコーティング、スクリーンコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、パーコーティング等が挙げられる。
前記セパレータとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル、ポリアミド等を材料とする多孔膜や不織布等が挙げられる。
前記セパレータの目付は、40〜100g/mであることが好ましい。目付が40g/m未満であると、短絡や自己放電性能の低下が起こることがあり、一方、目付が100g/mを超えると単位体積当たりに占めるセパレータの割合が増加するため、電池容量が下がる傾向にある。また、前記セパレータの通気度は、1〜50cm/secであることが好ましい。通気度が1cm/sec未満であると、電池内圧が高くなりすぎることがあり、一方、通気度が50cm/secを超えると、短絡や自己放電性能の低下が起こることがある。更に、前記セパレータの平均繊維径は、1〜20μmであることが好ましい。平均繊維径が1μm未満であるとセパレータの強度が低下し、電池組み立て工程での不良率が増加することがあり、一方、20μmを超えると、平均繊維径が短絡や自己放電性能の低下が起こることがある。
前記セパレータは、その繊維表面に親水化処理が施されていることが好ましい。当該親水化処理としては、例えば、スルフォン化処理、コロナ処理、フッ素ガス処理、プラズマ処理等が挙げられる。なかでも、繊維表面にスルフォン化処理が施されたセパレータは、シャトル現象を引き起こすNO 、NO 、NH 等の不純物や負極からの溶出元素を吸着する能力が高いため、自己放電抑制効果が高く、好ましい。
前記アルカリ電解液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等を含有するアルカリ性の水溶液が挙げられる。前記アルカリ電解液は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
前記アルカリ電解液の濃度は、イオン濃度の合計が9.0mol/L以下であるものが好ましく、5.0〜8.0mol/Lであるものがより好ましい。
前記アルカリ電解液には、正極での酸素過電圧向上、負極の耐食性の向上、自己放電向上のため、種々の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば、イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、カルシウム、亜鉛等の酸化物や水酸化物等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明に係るニッケル水素蓄電池が開放型ニッケル水素蓄電池である場合、当該電池は、例えば、セパレータを介して負極を正極で挟み込み、これらの電極に所定の圧力がかかるように電極を固定した状態で、アルカリ電解液を注液し、開放形セルを組み立てることにより製造することができる。
一方、本発明に係るニッケル水素蓄電池が密閉型ニッケル水素蓄電池である場合、当該電池は、正極、セパレータ及び負極を積層する前又は後に、アルカリ電解液を注液し、外装材で封止することにより製造することができる。また、正極と負極とがセパレータを介して積層された発電要素を巻回してなる密閉型ニッケル水素蓄電池においては、前記発電要素を巻回する前又は後に、アルカリ電解液を発電要素に注液するのが好ましい。アルカリ電解液の注液法としては特に限定されず、常圧で注液してもよいが、例えば、真空含浸法、加圧含浸法、遠心含浸法等を用いてもよい。また、密閉型ニッケル水素蓄電池の外装材としては、例えば、鉄、ニッケル等の金属材料からなるメッキが施された鉄、ステンレススチール、ポリオレフィン系樹脂等からなるものが挙げられる。
前記密閉型ニッケル水素蓄電池の態様としては特に限定されず、例えば、コイン電池、ボタン電池、角型電池、扁平型電池等の正極、負極及び単層又は複層のセパレータを備えた電池や、ロール状の正極、負極及びセパレータを備えた円筒型電池等が挙げられる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
<試験方法>
幅2.5mm×厚さ35μmのTi1.40.6Ni合金の帯状体を、アルゴン雰囲気下において、単ロール溶融紡糸法を用いて調製した。このときの銅輪の周速は34m/sであった。La0.65Nd0.12Mg0.23Ni2.9Al0.1の組成を有するAB型合金は、アルゴン雰囲気下において、誘導浮遊溶解法を用いて調製した。Ti1.40.6Ni合金とAB型合金のサンプルを、機械的に粉砕し、200〜400メッシュの粉末にまで細かくし、80重量%のTi1.40.6Ni合金と20重量%のAB型合金との粉末混合物に対し、高エネルギーボールミルによる30分間の機械的合金化処理を行った。調製された複合合金の帯状体の相は、X線回折法(XRD)により調べられ、微少構造は透過型電子顕微鏡(TEM)により調べられた。
調製された複合合金の粉末をカルボニルニッケル粉末と重量比1:5で混ぜて、負極を作製した。得られた粉末混合物に15MPaの圧力を加えて、直径10mmで厚さ1.5mmの小型のペレットに圧縮した。電気化学的測定のために、6MのKOHの電解液中で、Ni(OH)/NiOOH電極を対極として用い、Hg/HgO電極を参照極として用い、作用極を用いて、半電池を作製した。電気化学的試験は、自動定電流充電・放電装置(DC−5)を用いて303Kで行った。負極は、60mA/gで6時間充電し、終止電圧−0.6V(対Hg/HgO)まで30mA/gで放電した。充放電ごとに、5分間休止したソラルトン1287ポテンシオスタット/ガルバノスタットと、ウインドウズ用のZ−PLOTソフトウェアが搭載されたソラルトン1255B周波数応答解析器とを使用して、50%深度の放電(DOD)で、電気化学インピーダンス分光(EIS)分析を行った。この試験では、所定の電極において水素が拡散する効果を評価するために、定電圧放電法を選択した。開回路30分に続くフル充電を行った後で、試験用電極を、M352腐食ソフトウェアを使って、EG&G PARCモデル273ポテンシオスタット/ガルバノスタットにより、+500mVのポテンシャルステップで3600秒間放電した。
<結果>
(1)相構造
図1は、AB型合金、Ti1.40.6Ni合金、及び、それらの複合合金のXRDパターンを示すものである。AB型合金は図1(a)に示され、当該合金が主に、PuNi型の表面体晶構造(空間グループR3m)を有する(La、Mg)Ni相と、CaCu系の六方晶系構造(空間グループP6/mmm)を有するLaNi相からなることが観察された。Ti1.40.6Ni合金に対応する図1(b)の回折ピークは、I相と、TiNi型の面心立方格子構造(FCC)相と、体心立方格子構造(BCC)固溶体相を示した。Ti1.40.6Ni合金とAB型合金との混合物をボールミルにより粉砕した後(図1(c))では、結晶格子の異方性が拡大した結果、(La、Mg)Ni相とLaNi相の回折ピークは明らかにブロードになった。
図2(a)は、典型的な成長形態とI相の小塊の存在を示す明視野像である。I相の点群対称性と結晶性のBCC相に関しては、図2(b)及び図2(c)に示すように、期待された5倍及び通常の電子回折パターン(001)がそれぞれ観察された。(La、Mg)Ni相、LaNi相及びTiNi型FCC相に対応する電子回折パターンは観察されなかったものの、XRD結果(図1)は、明らかに複合合金サンプル中におけるそれらの相の存在を示した。異なった条件下で液体から形成される他の結晶相も、通常、このようにサンプルの異なった領域に沈殿するので、この現象は起こり得ることである。
(2)放電容量及び安定性
図3は、Ti1.40.6Ni合金からなる負極と、Ti1.40.6Ni合金とAB型合金との複合合金からなる負極との、サイクル回数と放電容量との相関を示すグラフである。放電容量はAB型合金の添加により著しく改善した。放電容量は、AB型合金を添加しなかったときは、2回目のサイクルで272.7mAh/gの最高値に達し、より高い水素吸蔵特性(340mAh/g)を有するAB型合金を加えることにより増加し、AB型合金を20重量%加えた後では、1回目のサイクルで294.7mAh/gの最高値に達した。これは、複合水素吸蔵合金電極中においてAB型合金とTi1.40.6Ni合金との間に相乗効果があることを示す。しかし、AB型合金を30重量%加えても、それ以上の放電容量の改善効果は見られなかった。
(3)高率放電性能及び動的特性
Ti1.40.6Ni合金からなる負極(a)と、及び、Ti1.40.6Ni合金とAB型合金との複合体からなる負極(b)との高率放電性能(HRD)を、表1に示した。
表1に示す結果より、Ti1.40.6Ni合金とAB型合金との複合体からなる電極(b)は、Ti1.40.6Ni合金からなる電極(a)より、優れた高率放電性能を有することが分かった。金属水素化物(MH)電極のHRDは、主に、電極/電解液界面で起こる電荷移動反応と、電極中での水素の拡散速度とに影響を受けることが知られている。
Ti1.40.6Ni合金とAB型合金との複合体からなる電極と、Ti1.40.6Ni合金からなる電極の電気化学的反応速度を評価するために、電気化学インピーダンスとポテンシャルステップとのスペクトルを測定した。50%DODでの両電極サンプルの電気化学インピーダンスのスペクトルを図4に示す。いずれのEISカーブも、直線へ続く2つの円弧からなることが分かった。
栗山らにより提案された分析モデル(J. Alloys. Compd. 202(1993)183-197参照)によれば、中周波数領域における比較的大きな円弧は、表面における電気化学反応に対する電荷移動抵抗を表し、ここで、Rは電解質抵抗であり、RとCとはそれぞれ、集電体と合金ペレットとの間の接触抵抗と接触キャパシタンスとされる。合金ペレット中の合金粉末間の接触抵抗と接触キャパシタンスはそれぞれ、RとCで表される。RctとCとはそれぞれ、電荷移動抵抗と二層キャパシタンスを示す。Woはワールブルグ抵抗である。図5に示す等価回路に基づいて、電荷移動抵抗Rctを、フィッテイングプログラムZ−VIEWによって得た。
計算結果によれば、合金電極のRctは0.148Ω(b)から0.218Ω(a)に増加した。電荷移動抵抗と交換電流密度は、電気触媒活性により決まることは良く知られている。AB型合金を加えた後のTi1.40.6Ni合金電極は、Rctが減少した。しかし、電気化学インピーダンス測定の結果はHRDの結果とは異なっており、表面電荷移動が律速段階ではないことが示唆された。
バルク電極の水素拡散係数は、ポテンシャルステップ法により求められた。図6は、電流時間応答に対するアノード電流の片対数プロットが、スペクトルから明らかに、過電圧を印加した後3つの時間領域に分かれうることを示している。Zhengらのモデル(J. Electrochem. Soc. 142(1995)2695-2699参照)によれば、水素の拡散速度を特定するために用いられるバルク電極における水素拡散係数は、下記式に対応するプロットの直線領域の傾きから算出される。
式中、Dは水素拡散係数(cm/s)であり、aは球状粒子の半径(cm)であり、iは拡散電流密度(A/g)であり、Cはバルク電極の初期水素濃度(mol/cm)であり、Csは合金粒子の表面の水素濃度(mol/cm)であり、dは水素吸蔵物質の密度(g/cm)であり、tは放電時間である。平均粒径が15μmであると仮定した場合のバルク電極における水素拡散係数Dを、式(1)により算出し、表2に示した。
表2に示す結果より、D値は、Ti1.40.6Ni+AB(b)>Ti1.40.6Ni(a)の順であり、放電能力が高い順番と一致した。このことは、電気化学的反応を制御するに際して、拡散プロセスが優勢であることを示唆している。上述のとおり、AB型合金が原子状水素の移動を促進し、電気化学的反応速度の向上に有効であると思われる。

Claims (5)

  1. I相を有する水素吸蔵合金とAB型の結晶相を有する水素吸蔵合金とを含有することを特徴とする複合水素吸蔵合金。
  2. 前記AB型の結晶相を有する水素吸蔵合金を10〜30重量%含有する請求項1記載の複合水素吸蔵合金。
  3. 前記I相を有する水素吸蔵合金が、少なくともTiを構成元素とするものである請求項1又は2記載の複合水素吸蔵合金。
  4. 前記I相を有する水素吸蔵合金が、少なくともTi、V及びNiを構成元素とするものである請求項1、2又は3記載の複合水素吸蔵合金。
  5. 請求項1、2、3又は4記載の複合水素吸蔵合金を含有する負極を備えていることを特徴とするニッケル水素蓄電池。
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