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JP2012179930A - 吸音体 - Google Patents

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JP2012179930A
JP2012179930A JP2011042130A JP2011042130A JP2012179930A JP 2012179930 A JP2012179930 A JP 2012179930A JP 2011042130 A JP2011042130 A JP 2011042130A JP 2011042130 A JP2011042130 A JP 2011042130A JP 2012179930 A JP2012179930 A JP 2012179930A
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Yasuhito Tanase
廉人 棚瀬
Hiroshi Nakajima
弘 中嶋
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Yamaha Corp
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Yamaha Corp
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Abstract

【課題】車両の走行時には音を吸収するとともに、車両に事故が発生したときには乗員を衝撃から保護する。
【解決手段】車両に急激な加速度が発生した場合には、まず、筐体12において質量部が慣性の法則に基づく慣性力により大きく揺すられることになり、これにより、脆弱部25が破壊されやすい状態になるか又は一部破壊される。ここで例えば脆弱部25が破壊されやすい状態になった後、慣性の法則に基づく慣性力により乗員の体も揺すられて吸音体10に接触し、この接触時に乗員の体から吸音体10に加わえられる力により、筐体12は脆弱部25において容易に破壊されて潰れる。つまり、乗員の体が吸音体10に当たったときの衝撃は、筐体12が脆弱部25で直ちに破壊されて潰れることで吸収され、乗員の体に与えられる衝撃の大きさは小さくなる。
【選択図】図2

Description

本発明は、音を吸収する吸音体に関する。
吸音体としては、開口部を有する筐体と、前記開口部に設けられ、前記筐体内に空気層を形成する板状または膜状の振動体と、を具備した板・膜振動型のもの(以下、「板吸音体」という)がある(特許文献1)。この種の板吸音体においては、振動体の外側から加わる音圧と空気層側の音圧との差(即ち、振動体の前後の音圧差)によって振動体が弾性振動する。これにより、当該吸音体に到達する音波のエネルギーは、この振動体の振動により消費されて音が吸収されることになる。
特開2006−11412号公報
上記のような吸音体を自動車のような車両に搭載した場合には、車両が走行するときの車室室内の騒音を吸音することができる。ただし、乗員が車両に乗っているときに事故が発生した場合を想定すると、事故のときの衝撃で乗員が吸音体にぶつかって怪我をすることが考えられる。
そこで、本発明は、車両の走行時には音を吸収するとともに、車両に事故が発生したときに乗員が吸音体にぶつかって怪我をしないようその乗員を保護する吸音体を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明は、中空で開口部を備えた筐体と、前記開口部を塞ぐ位置に設けられ、前記筐体に入射する音波の音圧により振動する振動体とを具備し、前記筐体の一部の部位が、その他の部位に比べて外力によって塑性変形しやすいことを特徴とする吸音体を提供する。
上記構成において、前記筐体の一部の部位の形状が、前記その他の部位の形状に比べて、その断面二次モーメントが小さい形状であることが好ましい。
上記構成において、前記筐体の一部の部位を構成する材料が、前記その他の部位を構成する材料に比べて、前記外力によって塑性変形しやすい材料であることが好ましい。
本発明によれば、車両の走行時には音を吸収するとともに、車両に事故が発生したときには乗員を衝撃から保護することができる。
実施形態に係る吸音体の斜視図である。 図1の矢視II−II方向から見た縦断面図である。 変形例に係る吸音体の横断面図である。 変形例に係る吸音体の縦断面図である。 変形例に係る吸音体の斜視図である。 図5中の矢視VI−VI方向から見た縦断面図である。 変形例に係る吸音体の斜視図である。 変形例における吸音特性を示す特性線図である。 変形例に係るヘルムホルツ型の吸音体を示す縦断面図である。
<吸音体の構成>
図1は本発明の実施形態に係る吸音体の斜視図、図2は図1中の矢視II−II方向から見た縦断面図である。なお、図においては、各構成要素を明確に描写するために、各構成要素の寸法は実際の寸法とは異なっていることがある。吸音体10は、基台をなす筐体12と、この筐体12の開口部15を塞ぐように設けられた振動体16と、筐体12と振動体16とによって筐体12内に形成される空気層17とを有する。吸音体10は、自動車などの車両を構成するシャーシの所定の取付部位100に対し、振動体16を車室内に向けた状態で接着剤やビスなどの固定手段により取り付けられる。吸音体10の取付部位100は、車室内の例えばインパネ、ドア、ピラー、シート、リアトレイ、サンバイザーまたはルーフ等の、乗客の体が触れ得る領域である。この吸音体10は、振動体16による吸音作用によって車室内の騒音を吸収する。また、事故等を原因として車両に大きな加速度が生じた場合には、乗客の体が吸音体10の筐体12に当たって怪我をするのを防止するために、筐体12の一部の部位が衝撃により塑性変形して、破壊し潰れやすい構造になっている。
まず、吸音体10の吸音作用に係る構造について説明する。筐体12は、合成樹脂(例えば、ABS樹脂)によって形成されており、矩形の底板13を有する箱状の部材である。底板13の4辺にはそれぞれ1枚ずつ、計4枚の側板14が設けられており、これらの各側板14が底辺13から立脚している。各側板14の自由端に相当する辺によって、上方から見たときに矩形となる開口部15が形成されている。振動体16は、弾性を有する高分子化合物(例えば、無機充填材入りオレフィン系共重合体)により矩形の板状に形成されており、その周縁が筐体12の開口部15に接着固定される。吸音体10の内部(振動体16の背後)には、筐体12の開口部15に振動体16が固定されることにより、密閉された空気層17が形成される。振動体16は、該振動体16以外の筐体12に対して剛性が相対的に低いか(ヤング率が低い、厚さが薄い、断面二次モーメントが小さい)、或いは機械インピーダンス(8×(曲げ剛性×面密度)1/2)が相対的に低い形状・部材で形成される。これにより、振動体16は筐体12よりも相対的に振動しやすくなっている。
このように構成される吸音体10において、筐体12に対して音波が入射すると、振動体16の外側から加わる音圧と空気層17側の音圧との差(即ち、振動体16の前後の音圧差)によって振動体16が弾性振動する。これにより、当該吸音体10に到達する音波のエネルギーは、この振動体16の振動により消費されて音が吸音されることになる。なお、振動体16の素材を合成樹脂としているが、振動体16の素材は合成樹脂に限るものではなく、弾性振動が生じる素材であれば、例えば紙、金属、繊維板など、他の素材であってもよい。また、振動体16の形状は、板状に限らず膜状であってもよい。要は、振動体16は、力(音圧)が加えられると変形し、弾性または張力により発生した復元力により元に戻る、という動作を繰り返して振動するような形状や素材の部材であればよい。ここで、板状とは、直方体(立体)に対して相対的に厚さが薄く2次元的な広がりを持つ形状であり、膜状(フィルム状、シート状)とは、板状よりもさらに相対的に厚さが薄く、張力により復元力を発生するものである。
次に、吸音体10による乗員の怪我防止に係る構造について説明する。筐体12の4枚の側板14の内壁面(空気層17側の面)において、高さ方向のほぼ中央部に、筐体12の内周全域に亘って連続する切込部が形成されている。この切込部においては、筐体12の厚さが他の部分の厚さよりも小さくなっていて脆弱であるから、以下、脆弱部25という。そして、側板14のうち、この脆弱部25から上側部分の筐体12は、その下側部分に比べて厚さが大きく、下側部分よりも質量が集中した質量部として作用する。
ここで、車両に急激な加速度が発生した場合には、まず、筐体12において質量部が慣性の法則に基づく慣性力により大きく揺すられることになり、これにより、脆弱部25が破壊されやすい状態になるか又は一部破壊されるという第1の現象が起きる。この第1の現象において例えば脆弱部25が破壊されやすい状態になった後、慣性の法則に基づく慣性力により乗員の体も揺すられて吸音体10に接触し、この接触時に乗員の体から吸音体10に加わえられる力により、筐体12は脆弱部25において容易に破壊されて潰れるという第2の現象が起きる。つまり、乗員の体が吸音体10に当たったときの衝撃は、筐体12が脆弱部25で直ちに破壊されて潰れることで吸収され、乗員の体に与えられる衝撃の大きさは小さくなる。また、第1の現象において、脆弱部25が一部破壊された状態になったとしても、その後に乗員の体が吸音体10に接触したとき、一部が破壊状態の筐体12はさらに破壊が進み、その乗員からの力を吸収するという第3の現象が起こる。これにより、乗員の体に与えられる衝撃の大きさは小さくなる。このように、事故時の慣性力及び乗員から加えられる力のどちらを外力として考えたとしても、筐体12はその外力によって破壊し潰れやすい、つまり、塑性変形しやすい部位を有しているから、上記のような第1及び第2の現象または第3の現象が極めて短い期間に起こることで、事故等を原因として車両に大きな加速度が生じた場合であっても、乗客の体が吸音体10の筐体12に当たって怪我をすることを防止できる。
最後に、吸音体10の吸音作用を発揮するための条件について説明する。一般に、板状または膜状の振動体と空気層により音を吸収する吸音構造について、減衰させる周波数は、振動体の質量成分(マス成分)と空気層のバネ成分とによるバネマス系の共振周波数によって設定される。空気の密度をρ0[kg/m3]、音速をc0[m/s]、振動体の密度をρ[kg/m3]、振動体の厚さをt[m]、空気層の厚さをL[m]とすると、バネマス系の共振周波数は数1の式で表される。
Figure 2012179930
また、板・膜振動型吸音構造において振動体が弾性を有して弾性振動をする場合には、弾性振動による屈曲系の性質が加わる。建築音響の分野においては、振動体の形状が長方形で一辺の長さをa[m]、もう一辺の長さをb[m]、振動体のヤング率をE[Pa]、振動体のポアソン比をσ[−]、p,qを正の整数とすると、以下の数2の式で板・膜振動型吸音構造の共振周波数を求め、求めた共振周波数を音響設計に利用することも行われている(周辺支持の場合)。
Figure 2012179930
そして、実施形態及び各変形例においては、上記数2の式から160〜315Hzバンド(1/3オクターブ中心周波数)を吸音するよう、以下のようにパラメータが設定される。
空気の密度ρ0 ;1.225[kg/m3]
音速c0 ;340[m/s]
振動体の密度ρ ;940[kg/m3]
振動体の厚さt ;0.0017[m]
空気層の厚さL ;0.03[m]
筐体の長さa ;0.1[m]
筐体の長さb ;0.1[m]
振動体のヤング率E ;1.0[GPa]
ポアソン比σ ;0.4
モード次数 ;p=q=1
一方、上記数2の式において、バネマス系の項(ρ00 2/ρtL)と屈曲系の項(バネマス系の項の後に直列に加えられている項)とが加算される。このため、上記式で得られる共振周波数は、バネマス系の共振周波数より高いものとなり、吸音のピークとなる周波数を低く設定することが難しい場合がある。
このように構成される吸音体においては、バネマス系による共振周波数と、板の弾性による弾性振動による屈曲系の共振周波数との関連性については、前記数式2によって一義的に決められるものの、実際には十分に解明されておらず、低音域で高い吸音力を発揮する吸音体の構造が確立されていないのが実情である。
そこで、発明者達は鋭意実験を行った結果、屈曲系の基本振動周波数の値をfa(=(1/2π)・((p/a)2+(q/b)2)・(π4Et3/(12ρt(1−σ2)))1/2)、バネマス系の共振周波数の値をfb(=数1の式)とした場合、以下の数3の関係を満足するように、上記パラメータを設定すればよいことがわかった。これにより、屈曲系の基本振動が背後の空気層のバネ成分と連成して、バネマス系の共振周波数と屈曲系の基本周波数との間の帯域に振幅の大きな振動が励振されて(屈曲系共振周波数fa<吸音ピーク周波数f<バネマス系基本周波数fb)、吸音率が高くなる。
Figure 2012179930
さらに、以下の数式4に設定する場合、吸音ピークの周波数がバネマス系の共振周波数より十分に小さくなる。この場合、低次の弾性振動のモードにより屈曲系の基本周波数がバネマス系の共振周波数より十分に小さく、300[Hz]以下の周波数の音を吸収する吸音構造として適していることも検証した。
Figure 2012179930
このように、上記した数式3,4の条件を満足するように各種パラメータを設定することにより、吸音のピークとなる周波数を低くした吸音体が構成できる。
前記各種パラメータとは、数2に示した共振周波数fを設定するパラメータであり、気体の密度ρ0、音速c0、振動体の密度ρ、振動体の厚さt、気体層の厚さL、、筐体の長さa、筐体の長さb、振動体のヤング率E、ポアソン比σ、モード次数p,q等である。
<変形例>
上述した実施形態を次のように変形してもよい。
<変形例1>
吸音体10による乗員の怪我防止に係る構造は、上記実施形態の例に限らない。
図3は、この変形例に係る吸音体10Nの横断面、つまり振動体16と平行な平面で吸音体10Nを切ったときの断面を示している。吸音体10Nにおいて、4枚の側板14Nの長手方向における中央部、および四つの隅部の位置に、筐体12Nの高さ方向に延びる切込部である脆弱部27が形成されている。これにより、側板14Nの板面に垂直な方向から外力が筐体12に加わった場合には、応力が集中する脆弱部27において筐体12Nが破壊されて潰れることになる。
<変形例2>
また、吸音体10による乗員の怪我防止に係る構造は、次のようなものであってもよい。この変形例に示す吸音体10Bでは、図4に示すように、筐体12Bの各側板14Bの高さ方向の途中が切断され、この切断部分において緩衝部20Bが上下の各側板14Bから挟持されている。この緩衝部20Bは、筐体12Bの4つの側面を連続して一巡するように設けられている。そして、この緩衝部20Bが、筐体12において衝撃により破壊し潰れやすい一部の部位に相当する。従って、緩衝部20Bは、例えば発泡樹脂や弾性部材などの、衝撃で破壊し易い材料からなり、かつ、振動体16より振動し難くなっている。つまり、振動体16は、前述した筐体12Bとの関係と同様に、緩衝部20Bに対して剛性が相対的に低いか(ヤング率が低い、厚さが薄い、断面二次モーメントが小さい)、或いは機械インピーダンス(8×(曲げ剛性×面密度)1/2)が相対的に低い形状・部材で形成されている。
また、図5、6は、別の変形に係る吸音体10Cの斜視図及び縦断面図である。吸音体10Cの筐体12Cの側板14Cには、側板の長手方向に延びる長方形状の孔14C1が、側板14C毎に段違いとなるように形成されている。この孔14C1を塞ぐように、緩衝部20Cが取り付けられている。この緩衝部20Cが、筐体12において衝撃により破壊し潰れやすい一部の部位に相当する。従って、緩衝部20Cは、緩衝部20Bと同様に、例えば発泡樹脂や弾性部材などの、衝撃で破壊し易い材料からなり、且つ、振動体16より振動し難くなっている。
また、図7は、別の変形に係る吸音体10Dの斜視図である。吸音体10Dにおいて、筐体12の四隅は、筐体12の高さ方向に延びる緩衝部20Dによって構成されている。この緩衝部20Dの下端部が取付部位100に当接し、その上端部が振動体16に当接している。この緩衝部20Dが、筐体12において衝撃により破壊し潰れやすい一部の部位に相当する。緩衝部20Dは、緩衝部20B,20Cと同様に、例えば発泡樹脂や弾性部材などの、衝撃で破壊し易い材料からなり、且つ、振動体16より振動し難くなっている。
上記の各構成に係る吸音体において、車両に急激な加速度が発生した場合に、筐体12において質量部が慣性の法則に基づく慣性力により大きく揺すられることになり、これにより、緩衝部が破壊されやすい状態になるか又は一部破壊されるという現象が起きる。そして、慣性の法則に基づく慣性力により乗員の体も揺すられて吸音体10に接触し、この接触時に乗員の体から吸音体10に加わえられる外力により、筐体12は脆弱部25において破壊されて潰れるという現象が起きる。つまり、乗員の体が吸音体10に当たったときの衝撃は、筐体12が緩衝部で破壊されて潰れることで吸収され、乗員の体に与えられる衝撃の大きさは小さくなる。これにより、事故等を原因として車両に大きな加速度が生じた場合であっても、乗客の体が吸音体10の筐体12に当たって怪我をすることを防止できる。
以上の実施形態及び変形例1,2で述べたように、本発明は、筐体12の一部の部位がその他の部位に比べて外力によって塑性変形しやすいという条件を満たす吸音体であればよい。ここでいう、塑性変形しやすいという条件とは、例えば実施形態や変形例1の構成においては、筐体12全体が同じ材料で構成されているときに、その筐体12の一部の部位の厚さが、その他の部位の厚さよりも小さい、ということである。ここでいう厚さという意味には、実効的な厚さも含まれる。例えば筐体12の一部の部位の厚さとその他の部位の厚さとが、外寸としては同じであっても、上記一部の部位には、内部に空隙が設けられたり、外面に切り欠きや穴が設けられていたり或いは貫通孔が設けられている一方、その他の部位にはそのような構造ではない、というような場合には、実効的な厚さは上記一部の部位のほうが小さい。要するに、筐体12の形状について、応力に対する屈しにくさを表す断面二次モーメントを考えると、一部の部位の断面二次モーメントがその他の部位の断面二次モーメントよりも小さいという条件を満たせばよい。
また、変形例2の構成において塑性変形しやすいという条件とは、筐体12の一部の部位を構成する材料そのものが、その他の部位を構成する材料に比べて、外力によって塑性変形しやすい材料である、ということである。
<変形例3>
上記実施形態においては、振動体を一様な構成として記載したが、振動体の一部が他の部分と異なる密度となるように形成したり、その一部が他の部分よりも異なる厚さに形成したり、その一部に錘を付与して形成したりして、振動体の一部が他の部分と異なる質量を有するように形成してもよい。このように振動体を形成することによって、振動体における振動条件を変更することが可能となる。
吸音体10においては、バネマス系と屈曲系で吸音メカニズムが構成されるが、発明者達は、振動体16の面密度を変えた際の共振周波数における吸音率の実験を行った。図8は、空気層17の縦と横の大きさが100mm×100mmで厚さが10mmの筐体12に振動体16(大きさが100mm×100mm、厚さ0.85mm)を固着し、中央部(大きさが20mm×20mm、厚さ0.85mm)の面密度を変化させた際の吸音体10の垂直入射吸音率のシミュレート結果を示した図である。なお、このシミュレートにおいては、JIS A 1405−2(音響管による吸音率及びインピーダンスの測定−第2部:伝達関数法)に従って、上記吸音体10を配置した音響室の音場を有限要素法により求め、その伝達関数より吸音特性を算出した。
具体的には、中央部の面密度を、(1)399.5[g/m2]、(2)799[g/m2]、(3)1199[g/m2]、(4)1598[g/m2]、(5)2297[g/m2]とし、周縁部材の面密度を799[g/m2]とし、振動体16の平均密度を、(1)783[g/m2]、(2)799[g/m2]、(3)815[g/m2]、(4)831[g/m2]、(5)863[g/m2]とした場合のシミュレーション結果である。シミュレートの結果を見ると、300〜500[Hz]の間と、700[Hz]付近において吸音率が高くなっている。
700[Hz]付近で吸音率が高くなっているのは、振動体16のマスと空気層17のバネ成分によって形成されるバネマス系の共振によるものである。吸音体10においては上記バネマス系の共振周波数での吸音率をピークとして音が吸音されており、中央部の面密度大きくしても、振動体16全体のマスは大きく変わらないので、バネマス系の共振周波数も大きく変わらないことが分かる。
また、300〜500[Hz]の間で吸音率が高くなっているのは、振動体16の屈曲振動によって形成される屈曲系の共振によるものである。吸音体10においては、屈曲系の共振周波数での吸音率が低音域側のピークとして表れており、振動体16が屈曲振動をする際に腹となる領域に相当する中央部の面密度を大きくしてゆくと屈曲系の共振周波数だけが低くなっていることが分かる。
一般に、屈曲系の共振周波数は、振動体16の弾性振動を支配する運動方程式で決定され、振動体16の密度(面密度)に反比例する。また、前記共振周波数は、固有振動の腹(振幅が極大値となる場合)の密度により大きく影響される。このため、上記シミュレーションでは、1×1の固有モードの腹となる領域を中央部で異なる面密度に形成したので、屈曲系の共振周波数が変化したものである。
このように、シミュレーション結果は、中央部の面密度を周縁部の面密度より大きくすると、吸音のピークとなる周波数のうち、低音域側の吸音率のピークがさらに低音域側へ移動することを表している。従って、中央部の面密度を変更することにより吸音のピークとなる周波数の一部をさらに低音域側または高音域側に移動(シフト)させることができる。
上述した吸音体10においては、中央部の面密度を変えるだけで、吸音される音のピークの周波数を変える(シフトさせる)ことができるため、振動体16を吸音体10全体と同じ素材で板状に形成し、吸音体10全体の質量を重くして吸音する音を変更する場合と比較して、吸音体10全体の質量を大きく変えることなく吸音させる音の周波数を低くすることができる。
<変形例4>
吸音体10の筐体の形状は矩形状に限らず円形状、多角形状であってもよい。さらに、吸音体10の空気層17内には、多孔質吸音材(例えば、発泡樹脂、フェルト,ポリエステルウール等の綿状繊維)を充填することにより、吸音率ピーク値を増加させてもよい。
<変形例5>
吸音体は板・膜振動型に限らず、以下に説明するヘルムホルツ型の吸音体であってもよい。
ヘルムホルツ型の吸音体40は、図9に示すように、内部に空間が形成された直方体状の筐体41と、この筐体41の上部側に穿設された挿入孔42に挿入された管状部材43と、を有している。筐体41の内側には密閉空間44が形成され、管状部材43の内側には密閉空間44と外部とを連通する開口45が形成されている。この管状部材43は、本発明による吸音手段となる。
筐体41は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)によって直方体状に形成されている。管状部材43は、例えば塩化ビニール製のパイプを使用でき、空気との摩擦が生じやすいように、内面を粗くしておく。このヘルムホルツ型の吸音体40は、寸法の小さい空洞である密閉空間44の中の空気がバネとして働くことにより、発生した音を減衰するように作用する。
この吸音体40では、密閉空間44に設けられた小さな開口45が外部に通じているため、開口45内の空気の塊をマスとして1質点系バネ・マスモデルが形成される。そして、この系の共振周波数においては、開口45内の空気の塊が外部からの音圧によって振動し、開口45の周壁と空気の塊との摩擦によって、音のエネルギーが熱エネルギーに変換される。つまり、音が減衰される。
いま、開口45の長さをL1、開口45の横断面積をS、空気層44の容積をV、音速をC、開口45の有効長さをLe(Le≒L1+0.8・S1/2)とすると、吸音体40の共鳴周波数f0は、f0=1/2π(C2 S/Le・V)1/2となる。
この式から、開口45の横断面積S又は有効長さLe、即ち、管状部材43の内径d又は長さL1を変えることによって、共鳴周波数f0を調整でき、これにより、周波数の異なる音を減音できることが分かる。
さらに、このヘルムホルツ型の吸音体40を取付部位100に取り付ける構造においては、前述した変形例を適宜適応することも可能である。
10・・・吸音体、12,41・・・筐体、15・・・開口部、16・・・振動体、17・・・空気層、20,21・・・緩衝部、25,27・・・脆弱部、43・・・管状部材

Claims (3)

  1. 車両に搭載される吸音体であって、
    中空で開口部を備えた筐体と、
    前記開口部に設けられ、前記筐体に入射する音波の音圧により振動する振動体とを具備し、
    前記筐体の一部の部位が、その他の部位に比べて外力によって塑性変形しやすい
    ことを特徴とする吸音体。
  2. 請求項1記載の吸音体において、
    前記筐体の一部の部位の形状が、前記その他の部位の形状に比べて、その断面二次モーメントが小さい形状である
    ことを特徴とする吸音体。
  3. 請求項1記載の吸音体において、
    前記筐体の一部の部位を構成する材料が、前記その他の部位を構成する材料に比べて、前記外力によって塑性変形しやすい材料である
    ことを特徴とする吸音体。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018074200A1 (ja) * 2016-10-17 2018-04-26 株式会社神戸製鋼所 吸音パネル

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