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JP2012166514A - 配線板用絶縁樹脂材料、多層配線板及び多層配線板の製造方法 - Google Patents

配線板用絶縁樹脂材料、多層配線板及び多層配線板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ビルドアップ方式の多層配線板において、平滑な樹脂表面でも無電解めっきとの高接着力を示し、加工性及び耐熱性に優れ、微細な回路の形成が可能で,信頼性の高い多層配線板を提供できる配線板用絶縁樹脂材料、多層配線板及び多層配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁樹脂層(A)と接着補助層(B)を有し、絶縁樹脂層(A)が、多官能型エポキシ樹脂(a-1)、エポキシ樹脂硬化剤(a-2)及び無機フィラー(a-3)を含有する層であり、接着補助層(B)が、多官能型エポキシ樹脂(b-1)、エポキシ樹脂硬化剤(b-2)の予備反応生成物及び平均一次粒径1μm以下の架橋有機フィラー(b-3)を含有し、厚みが1〜10μmの層である配線板用絶縁樹脂材料である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビルドアップ方式の多層配線板において、平滑な樹脂表面でも無電解めっきとの高接着力を示し、加工性及び耐熱性に優れ、微細な回路の形成が可能で、信頼性の高い多層配線板を提供できる配線板用絶縁樹脂材料、多層配線板及び多層配線板の製造方法に関する。
多層配線板を製造するには、片面または両面に内層回路を形成した絶縁基板上に、プリプレグと呼ばれる、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸し半硬化状態にした材料を銅箔と重ねて熱プレスにより積層一体化した後、ドリルで層間接続用のスルーホールと呼ばれる穴をあけ、スルーホール内壁と銅箔表面上に無電解めっきを行って、必要ならば更に電解めっきを行って回路導体として必要な厚さとした後、不要な銅を除去して多層配線板を製造するのが一般的であった。
ところが、近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が一段と進み、これに伴い、LSIやチップ部品等の高集積化が進みその形態も多ピン化、小型化へと急速に変化している。この為、多層配線板は、電子部品の実装密度を向上するために、微細配線化の開発が進められている。
これらの要求に合致する多層配線板の製造手法として、ガラスクロスを含まない絶縁樹脂をプリプレグの代わりに絶縁層として用い、必要な部分のみビアホールで接続しながら配線層を形成するビルドアップ方式の多層配線板があり、軽量化や小型化、微細化に適した手法として主流になりつつある。
このようなビルドアップ方式の多層配線板は、絶縁樹脂フィルムを内層回路板にラミネートし、加熱により硬化させて後、レーザ加工によるビアホール形成し、アルカリ過マンガン酸処理等によって粗化処理とスミア処理を行って無電解銅めっきして、第二の回路と層間接続可能とするビアホールを形成させて製造される(例えば、特許文献1〜3参照)。
このビルドアップ方式では、樹脂と無電解銅めっきとの接着力は、樹脂表面の粗さ(アンカー効果)により確保され、その表面粗さ(Ra)が0.5μm以上であり、表面粗さが大きい。
このビルドアップ方式の多層配線板においては、近年の半導体パッケージの小型化・高密度化に伴って、さらに回路の微細化が要求されている。
このような状況において、従来のような表面を粗化して得られる大きな粗化形状(アンカー効果)を利用して無電解銅めっきとの接着力を確保する方法では、10μm以下の微細な回路はショート不良やオープン不良が発生し、歩留り良く製造することができない。一方で、粗化形状を小さくすると、無電解銅めっきとの接着力が低下し、ラインが剥離するなどの不良が発生するため、平滑な表面で無電解銅めっきと高接着力を示す絶縁樹脂フィルムが必要となる。
また、無電解銅めっきと樹脂との接着を確保することを目的として、無電解銅めっき触媒を含む接着層と絶縁樹脂層との2層化構造の絶縁フィルムも開示されている。しかしながら、この2層化構造の絶縁フィルムでは、表面の粗化形状を平滑にすることが行われず、近年の微細化の半導体パッケージ用基板としては、不十分である(例えば、特許文献4参照)。
さらに、環境意識の高まりから燃焼時に有害な物質を発生する可能性がある材料は電子部品も含めて規制する動きが活発になっている。従来の多層配線板には、燃焼時に有害な物質を発生する可能性があるブロム化合物が難燃化のために使用されてきたが、このようなブロム化合物は近い将来の使用できなくなるものと予想される。
また、電子部品を多層配線板に接続するために一般的に用いられるはんだも鉛を有さない鉛フリーはんだが実用化されつつある。この鉛フリーはんだは、従来の共晶はんだよりも使用温度が約20〜30℃高くなることから従来にもまして材料には高いはんだ耐熱性が必要になっている。
特開平7−304931号公報 特開2002-3705号公報 特開平11−1547号公報 特開平1−99288号公報
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、ビルドアップ方式の多層配線板において、平滑な樹脂表面でも無電解めっきとの高接着力を示し、加工性及び耐熱性に優れ、微細な回路の形成が可能で、信頼性の高い多層配線板を提供できる配線板用絶縁樹脂材料、多層配線板及び多層配線板の製造方法を提供することである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、絶縁樹脂層を多官能型エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及び無機フィラーからなる層とし、接着補助層で多官能型エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を予備反応させると共に、平均一次粒径が1μm以下の架橋有機フィラーを含む樹脂組成物からなる厚みが1〜10μmの接着補助層を設けることにより、Raが0.3μm以下の平滑な樹脂面でも良好な接着性、高信頼性を確保できる配線板用絶縁樹脂材料を見出した。
このような平均一次粒径が1μm以下の架橋有機フィラーを20質量%以上含む樹脂組成物とすることで、平均一次粒径が1μmより大きな架橋有機フィラーを用いた場合と比較し、耐熱性を低下させることなく、樹脂の強靭化並びに高伸び率化が可能であり、さらに、Raが0.3μm以下の非常に微細で緻密な粗化形状が得られ、めっき銅との接着性が著しく向上する。
さらに、多官能型エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を予備反応させ、樹脂の分子量や溶融粘度を調整することで、接着補助層と絶縁樹脂層との2層構造の絶縁フィルムにおいて、樹脂成分の互いにそれぞれの層への移行を抑制でき、安定した接着強度が発現する。また、ジシアンジアミドのような結晶性の硬化剤を用いる際には樹脂組成物中に単体で残存することがあり、耐電食性の低下が懸念されるが、予備反応によりエポキシ樹脂と反応させることで、単体で結晶化して残存することがなくなる。
すなわち、本発明は、以下の配線板用絶縁樹脂材料、多層配線板及び多層配線板の製造方法を提供するものである。
1.絶縁樹脂層(A)と接着補助層(B)を有し、絶縁樹脂層(A)が、多官能型エポキシ樹脂(a-1)、エポキシ樹脂硬化剤(a-2)及び無機フィラー(a-3)を含有する層であり、接着補助層(B)が、多官能型エポキシ樹脂(b-1)、エポキシ樹脂硬化剤(b-2)の予備反応生成物及び、平均一次粒径1μm以下の架橋有機フィラー(b-3)を含有し、厚みが1〜10μmの層であることを特徴とする配線板用絶縁樹脂材料。
2.絶縁樹脂層(A)が、さらに、リン系難燃剤(a-4)を含有する上記1の配線板用絶縁樹脂材料。
3.接着補助層(B)が、さらに、ヒュームドシリカ(b-4)を含有する上記1又は2の配線板用絶縁樹脂材料。
4.接着補助層(B)に含有する架橋有機フィラー(b-3)がコアシェル構造架橋ゴム粒子である上記1〜3いずれかの配線板用絶縁樹脂材料。
5.接着補助層(B)における固形分基準の架橋有機フィラー(b-3)の含有量が20〜40質量%である上記1〜4いずれかの配線板用絶縁樹脂材料。
6.接着補助層(B)における多官能型エポキシ樹脂(b-1)がビフェニル構造を有するアラルキル型エポキシ樹脂であり、エポキシ樹脂硬化剤(b-2)がトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂及び/又はジシアンジアミドである上記1〜5いずれかの配線板用絶縁樹脂材料。
7.配線板用絶縁樹脂材料を硬化し、粗化処理した後の接着補助層(B)の表面粗さ(Ra)が0.3μm以下である上記1〜6いずれかの配線板用絶縁樹脂材料。
8.内層回路を有する基板の片面または両面に絶縁層及び外層回路層が逐次積層されてなる多層配線板であって、前記絶縁層が上記1〜7いずれかの配線板用絶縁樹脂材料の硬化物であることを特徴とする多層配線板。
9.内層回路を有する基板に上記1〜7いずれかの配線板用絶縁樹脂材料を積層する工程(イ)、前記配線板用絶縁樹脂材料を硬化して絶縁層を得る工程(ロ)、前記絶縁層表面に外層回路層を形成する工程(ハ)を含むことを特徴とする多層配線板の製造方法。
本発明によれば、ビルドアップ方式の多層配線板において、平滑な樹脂表面でも無電解めっきとの高接着力を示し、加工性及び耐熱性に優れ、微細な回路の形成が可能で、信頼性の高い配線板用絶縁樹脂材料を提供する。
また、本発明によれば、環境に悪影響を与える可能性があるブロム化合物を一切使用しないで難燃性を有し、鉛フリー化に対応可能な高いはんだ耐熱性を有する配線板用絶縁樹脂材料を提供する。
また、本発明における多層配線板の製造方法によれば、レーザーによる層間接続用ビア形成時において、接着補助層だけが残存するような不良が発生しなくなる。
本発明の多層配線板を製造する工程の一例を説明する断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の配線板用絶縁樹脂材料は、絶縁樹脂層(A)と接着補助層(B)を有し、絶縁樹脂層(A)が、多官能型エポキシ樹脂(a-1)、エポキシ樹脂硬化剤(a-2)及び無機フィラー(a-3)を含有する層であり、接着補助層(B)が、多官能型エポキシ樹脂(b-1)、エポキシ樹脂硬化剤(b-2)の予備反応生成物及び、平均一次粒径1μm以下の架橋有機フィラー(b-3)を含有し、厚みが1〜10μmの層であることを特徴とするものである。
先ず、本発明の配線板用絶縁樹脂材料の絶縁樹脂層(A)は、多官能型エポキシ樹脂(a-1)、エポキシ樹脂硬化剤(a-2)及び無機フィラー(a-3)を含有する層であり、さらに、リン系難燃剤(a-4)を含むことが好ましい。
多官能エポキシ樹脂(a-1)は、分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、フェノールノボラック型エポキシ樹脂や、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
絶縁樹脂層(A)における多官能エポキシ樹脂(a-1)の配合量は、溶剤を除いた絶縁樹脂層用組成物の全固形分中で20〜50質量%であることが好ましい。前記(a-1)成分の配合量が20質量%以上とすることによりはんだ耐熱性が向上し、50質量%以下とすることにより回路導体との接着強度が低下することがない。また、多官能エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂を併用すると、樹脂の流動性が向上するので好適に使用される。
エポキシ樹脂硬化剤(a-2)には、各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジット類などが使用できる。フェノール樹脂類としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂など、酸無水物類としては、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸など、アミン類として、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が挙げられる。信頼性を向上させるためには、ノボラック型フェノール樹脂であることが好ましい。
エポキシ樹脂硬化剤(a-2)の使用量は、エポキシ基に対して0.5〜1.5当量であることが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤をエポキシ基に対して0.5当量以上とすることにより外層銅との接着性が向上し、1.5当量以下とすることによりガラス転移温度(Tg)や絶縁性が低下することがない。
また、絶縁樹脂層(A)には、エポキシ樹脂硬化剤(a-2)の他に、必要に応じて反応促進剤を使用することができる。反応促進剤としては潜在性の熱硬化剤である各種イミダゾール類やBF3アミン錯体が使用できる。絶縁樹脂層用組成物の保存安定性やBステージ状(半硬化状)の絶縁樹脂層用組成物の取り扱い性及びはんだ耐熱性の点から、反応促進剤として2−フェニルイミダゾールや2−エチル−4−メチルイミダゾールが好適に使用される。
エポキシ樹脂硬化剤(a-2)の配合量はエポキシ樹脂100質量部に対して0.2〜1.0質量部が好ましい。0.2質量部以上とすることにより、はんだ耐熱性が得られ、1.0質量部以下とすることにより、絶縁樹脂層用組成物の保存安定性やBステージ状の絶縁樹脂層用組成物の取り扱い性が低下することがない。
無機フィラー(a-3)としては、例えばシリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、エーロジル、炭酸カルシウムの中から選ばれるものが使用でき、これらは単独でもあるいは混合して用いても良い。なお、難燃性や低熱膨張の点から水酸化アルミニウムとシリカとを単独あるいは併用して用いることが好ましい。
無機フィラー(a-3)の配合量は、溶剤を除く絶縁樹脂層用組成物全体の固形分中で10〜50質量%にするのが好ましい。さらに好ましくは、30〜40質量%であり、10質量%以上とすることにより低熱膨脹が得られ、また50質量%以下とすることによりレーザ加工性が低下することがない。
任意に配合されるリン系難燃剤(a-4)は、絶縁信頼性、耐熱性を考慮すれば、エポキシ樹脂と反応性を有するものが好ましく、例えば三光株式会社製のHCA−HQ(商品名)、やダウケミカル製XZ92741(商品名)等が使用できる。
リン系難燃剤(a-4)の含有量は、リン含有量が無機フィラーを除く絶縁樹脂層用組成物の固形分中で0.7〜3質量%の範囲になるようにするのが難燃性を発現するために好ましい。リン含有量が0.7質量%以上とすることにより難燃性が発現し、リン含有量が3質量%以下とすることによりはんだ耐熱性が低下することがない。
絶縁樹脂層(A)には、前記(a-1)〜(a-4)の他に、通常の絶縁樹脂層用組成物に使用されるチキソ性付与剤、界面活性剤、カップリング剤等の各種添加剤を適宜配合できる。これらを充分に撹拌した後、泡がなくなるまで静置して絶縁樹脂層(A)用樹脂組成物を得ることができる。
絶縁樹脂層(A)用組成物は溶剤中で混合して希釈または分散させてワニスの形態とすることが作業性の点で好ましい。この溶剤には、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルエトキシプロピオネート、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド等を使用できる。これらの溶剤は、単独あるいは混合系でも良い。この溶剤の前記樹脂層(A)用組成物に対する割合は、一般にワニスとして使用できる割合であればよく、絶縁樹脂層(A)用組成物の塗膜形成の設備に合わせてその使用量を調整する。
絶縁樹脂層(A)用組成物をコンマコータでキャリアフィルムや銅箔に塗工する場合は、溶剤を除く樹脂層用組成物の固形分がワニス中30〜60質量%となるように溶剤の使用量を調節することが好ましい。
本発明の配線板用絶縁樹脂材料における絶縁樹脂層(A)の厚みは10〜100μmとすることが好ましく、15〜60μmとすることがより好ましい。
接着補助層(B)における多官能型エポキシ樹脂(b-1)は、分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、フェノールノボラック型エポキシ樹脂や、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
特に接着補助層(B)における多官能型エポキシ樹脂(b-1)として、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、またはアラルキルノボラック型エポキシ樹脂を含むことが望ましい。アラルキルノボラック型エポキシ樹脂はビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。
ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂とは、分子中にビフェニル誘導体の芳香族環を含有したアラルキルノボラック型のエポキシ樹脂であり、例えば、下記の一般式(1)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
Figure 2012166514
(式中、pは1〜5の数を示す。)
上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂の市販品としては、日本化薬株式会社製のNC−3000(pが1.7の一般式(1)のエポキシ樹脂)、NC−3000−H(pが2.8の一般式(1)のエポキシ樹脂)が挙げられる。
接着補助層(B)における多官能型エポキシ樹脂(b-1)の配合量は、溶剤を除いた全固形分中の割合で20〜50質量%であるのが好ましい。多官能型エポキシ樹脂(b-1)を20質量%以上とすることによりはんだ耐熱性が向上し、50質量%以下とすることにより回路導体との接着強度が向上する。
接着補助層(B)におけるエポキシ樹脂硬化剤(b-2)としては、各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジット類などが挙げられる。フェノール樹脂類としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等、酸無水物類としては、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等、アミン類として、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が挙げられる。
エポキシ樹脂硬化剤(b-2)として、信頼性を向上させるためにはノボラック型フェノール樹脂であることが好ましく、トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂やジシアンジアミドであると金属箔の引き剥がし強さや化学粗化後の無電解めっきの引き剥がし強さが向上するので更に好適に使用される。
上記のトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂の主鎖にトリアジン環を含むノボラック型フェノール樹脂を示し、トリアジン環を含むクレゾールノボラック型フェノール樹脂でも構わない。窒素含有量は、トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂中、10〜25質量%が好ましく、より好ましくは12〜19質量%である。分子中の窒素含有量がこの範囲であると、誘電損失が大きく
なりすぎることもなく、応力緩和層をワニスとする場合に、溶剤への溶解度が適切で、未溶解物の残存量が抑えられる。トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は、数平均分子量が、500〜600であるものを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂は、フェノールとアデヒドとトリアジン環含有化合物を、pH5〜9の条件下で反応させて得ることができる。フェノールに換えクレゾールを用いるとトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂となる。クレゾールは、o−、m−、p−クレゾールのいずれも使用することができ、トリアジン環含有化合物としてはメラミン、グアナミン及びその誘導体、シアヌル酸及びその誘導体を使用することができる。
トリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂の市販品としては、大日本インキ化学工業株式会社製のトリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂フェノライトEXB−9829(窒素含有量18質量%)が挙げられる。
接着補助層(B)におけるエポキシ樹脂硬化剤(b-2)は、エポキシ基に対して0.5〜1.5当量であるのが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤がエポキシ基に対して0.5当量以上とすることにより外層銅との接着性が向上し、1.5当量以下とすることによりガラス転移温度(Tg)や絶縁性が低下することがない。
本発明では接着補助層(B)において、多官能型エポキシ樹脂(b-1)とエポキシ樹脂硬化剤(b-2)の予備反応生成物を使用する。
多官能型エポキシ樹脂(b-1)とエポキシ樹脂硬化剤(b-2)の予備反応は、樹脂の分子量や溶融粘度を調整することで、絶縁樹脂層(A)と接着補助層(B)との2層構造のフィルムにおいて、樹脂成分の互いにそれぞれの層への移行を抑制でき、安定した接着強度を発現させるために必要である。また、ジシアンジアミドのような結晶性の硬化剤を用いる際には接着補助層(B)中に単体で残存することがあり、耐電食性の低下が懸念されるが、予備反応によりエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を反応させることで、単体で結晶化して残存することがなくなる。
予備反応には、多官能型エポキシ樹脂(b-1)やエポキシ樹脂硬化剤(b-2)を溶解する溶剤を用いることができるが、反応速度の制御や副反応の抑制を目的として溶剤を使用することが好ましい。使用される溶剤には、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルエトキシプロピオネート、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド等を使用できる。これらの溶剤は、単独あるいは混合系でも良い。この溶剤の接着補助層(B)用樹脂組成物に対する割合は、一般にワニスとして使用できる割合であればよく、多官能型エポキシ樹脂(b-1)やエポキシ樹脂硬化剤(b-2)の種類によりその使用量を調整する。
予備反応の条件は、目的とする樹脂の分子量や溶融粘度、またはジシアンジアミドのような結晶性硬化剤の残存量を調整するように決定される。一般には80℃から180℃の範囲で、30分から10時間程度で予備反応を行う。
また、予備反応時に、必要に応じて反応促進剤を使用することができる。反応促進剤として各種イミダゾール類やフォスフィン類、BF3アミン錯体が使用できるが、プレ反応中にゲル化しないような反応促進剤を用いる必要がある。
さらに、予備反応後に必要に応じて反応促進剤を追加して使用することができる。この際の反応促進剤としては潜在性の熱硬化剤である各種イミダゾール類やBF3アミン錯体が使用できる。
予備反応後に追加して使用される反応促進剤は、配線板用絶縁樹脂材料の保存安定性やBステージ状(半硬化状)の配線板用絶縁樹脂材料の取り扱い性及びはんだ耐熱性の点から2−フェニルイミダゾールや2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。その配合量はエポキシ樹脂100質量部に対して0.2〜1.0質量部が好ましい。0.2質量部以上とすることにより硬化反応が不十分となってはんだ耐熱性が低下することがなく、1.0質量部以下とすることにより配線板用絶縁樹脂材料の保存安定性やBステージ状の配線板用絶縁樹脂材料の取り扱い性が低下するためである。
接着補助層(B)における架橋有機フィラー(b-3)は、平均一次粒径が1μm以下であれば、どのようなものでもよいが、例えばアクリロニトリルブタジエンの共重合物として、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合した架橋NBR粒子や、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸などのカルボン酸とを共重合したもの、ポリブタジエンやNBR、シリコンゴムをコアとしアクリル酸誘導体をシェルとした、いわゆるコア−シェルゴム粒子も使用可能である。
上記の架橋NBR粒子とは、アクリロニトリル、ブタジエンを共重合させ、かつ共重合する段階で、部分的に架橋させ、粒子状にしたものである。またアクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸を併せて共重合することにより、カルボン酸変性架橋NBR粒子を得ることも可能である。ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコア−シェルゴム粒子は、乳化重合でブタジエン粒子を重合させ、引き続きアクリル酸エステル、アクリル酸等のモノマーを添加して重合を続ける二段階の重合方法で得ることができる。架橋シリコンゴム−アクリル樹脂のコア−シェルゴム粒子は、乳化重合でシリコン粒子を重合させ、引き続きアクリル酸エステル、アクリル酸等のモノマーを添加して重合を続ける二段階の重合方法で得ることができる。粒子の大きさは、一次平均粒子径で、50nm〜1μmにすることができる。これらは、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の市販品としては日本合成ゴム株式会社製のXER−91(商品名)が挙げられ、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子はロームアンドハース株式会社製のパラロイドEXL2655(商品名)やガンツ化成工業株式会社のAC−3832(商品名)が挙げられる。
架橋シリコンゴム−アクリル樹脂のコア−シェルゴム粒子は、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製GENIOPERL P52(商品名)などがある。
接着補助層(B)において、架橋有機フィラー(b-3)の含有量は20〜40質量%が好ましい。この架橋有機フィラーの含有量を20質量%以上とすることにより樹脂の強靭性や伸び率が高く、さらに緻密な粗化形状が得られるので、めっき銅との接着力が向上する。また、架橋有機フィラーの含有量を40質量%以下とすることにより耐熱性が低下することがない。
これらの架橋有機フィラー(b-3)は、分散性を高めるために、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール、ナノマイザー等既知の混練・分散方法により分散することが好ましい。
接着補助層(B)において任意に使用されるヒュームドシリカ(b-4)はどのようなものでも良いが、絶縁信頼性、耐熱性を考慮すれば、エポキシ樹脂中での分散性が良好なものが好ましく、表面を疎水性化処理した例えば日本アエロジル株式会社製のAEROSIL R972(商品名)や同社製AEROSIL R202(商品名)等が使用できる。
ヒュームドシリカ(b-4)の含有量は、接着補助層(B)の固形分中で3〜20質量%の範囲になるようにすることがレーザ加工性を良好にするために好ましい。ヒュームドシリカの含有量を3質量%以上とすることによりレーザ加工性が低下して接着補助層の残存することがなく、20質量%以下とすることにより接着強度が低下することがない。
接着補助層(B)には、前記(b-1)〜(b-4)の成分の他、通常の絶縁樹脂組成物に使用されるチキソ性付与剤、界面活性剤、カップリング剤等の各種添加剤を適宜配合できる。これらを充分に撹拌した後、泡がなくなるまで静置して接着補助層用樹脂組成物を得ることができる。
接着補助層(B)を形成する際は、接着補助層用樹脂組成物を溶剤中で混合して希釈または分散させてワニスの形態とするのが作業性の点で好ましい。この溶剤には、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルエトキシプロピオネート、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド等を使用できる。これらの溶剤は、単独あるいは混合系でも良い。この溶剤の接着補助層用樹脂組成物に対する割合は、一般にワニスとして使用できる割合であればよく、樹脂組成物の塗膜形成の設備に合わせてその使用量を調整する。
接着補助層(B)用樹脂組成物をコンマコータでキャリアフィルム(支持体)に塗工する場合は、溶剤を除く樹脂組成物の固形分がワニス中で10〜40質量%となるように溶剤の使用量を調節することが好ましい。
接着補助層(B)の厚さは1〜10μmであり、好ましくは2〜5μmである。接着補助層(B)の厚さを1μm以上とすることにより接着力が向上し、10μm以下とすることにより配線板用絶縁樹脂としての低熱膨張率化に有効である。
本発明のビルドアップ方式の多層配線板に使用される配線板用絶縁樹脂材料(アディティブ用絶縁樹脂材料)は、例えば、支持体上に絶縁樹脂層(A)と接着補助層(B)の半硬化状態のフィルムとして形成される。
即ち、配線板用絶縁樹脂材料の一形態例としてアディティブ用絶縁樹脂フィルムを得る場合には、先ず、接着補助層(B)用組成物のワニスを支持体上に塗布・乾燥して接着補助層付き支持体を作成し、得られた支持体の接着補助層上に絶縁樹脂層(A)用組成物のワニスを塗布し、乾燥する方法が挙げられる。
絶縁樹脂層(A)用組成物のワニスを、支持体に形成された接着補助層上に塗布する際は、コンマコータ、バーコータ、キスコータ、ロールコーター等が利用でき、アディティブ絶縁フィルムの厚みによって適宜使用される。塗布厚、塗布後の乾燥条件等は、使用目的に合わせて適宜選択されるため特に制限するものではないが、一般にワニスに使用した溶剤が80質量%以上揮発していることが好ましい。
アディティブ用絶縁樹脂フィルムが表面に形成される支持体としては、PET等のプラスチックフィルムや金属箔等が挙げられ、アディティブ用絶縁樹脂フィルムの硬化後に支持体を剥離除去する場合は離型性のプラスチックフィルム等が好ましい。
本発明の多層配線板は、内層回路を有する基板の片面または両面に絶縁層及び外層回路層が逐次積層されているものであり、絶縁層が本発明の配線板用絶縁樹脂材料が硬化物であることを特徴とするものである。配線板用絶縁樹脂材料は、通常、多層配線板作製時の熱履歴により硬化される。
以下、図面を用いて本発明の多層配線板の製造方法を説明する。図1は本発明の多層配線板を製造する工程の一例を説明する断面図である。
本発明の多層配線板は、配線板用絶縁樹脂材料を積層する工程(イ)、前記配線板用絶縁樹脂材料を硬化させて絶縁層を得る工程(ロ)、絶縁層表面に外層回路層を形成する工程(ハ)を繰り返すことにより多層化されて製造される。
図1の(a)は、本発明の多層配線板の製造に使用される回路板の断面図であり、絶縁基板2上に第一の回路1(内層配線)が形成されている。
内層基板として、通常の配線板において用いられている公知の積層板、例えば、ガラス布−エポキシ樹脂、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス紙−エポキシ樹脂等が使用でき特に制限はない。また、ビスマレイミド−トリアジン樹脂を含浸させたBT基板、さらにはポリイミドフィルムを基材として用いたポリイミドフィルム基板等も用いることができる。
第一の回路1を形成するための方法は特に制限はなく、銅箔と前記絶縁基板を張り合わせた銅張り積層板を用い、銅箔の不要な部分をエッチング除去するサブトラクティブ法や、前記絶縁基板の必要な個所に無電解めっきによって回路を形成するアディティブ法等、公知の配線板の製造方法を用いることができる。
なお、図1(a)には絶縁基板2の片面に第一の回路1を形成した例を示すが、両面銅張積層板を用いて回路1を絶縁基板2の両面に形成することもできる。
第一の回路1は、必要に応じて回路1の表面を接着性に適した状態に表面処理する。この手法は、特に制限はなく、例えば、次亜塩素酸ナトリウムのアルカリ水溶液により第一の回路1の表面に酸化銅の針状結晶を形成し、形成した酸化銅の針状結晶をジメチルアミンボラン水溶液に浸漬して還元するなど公知の製造方法を用いることができる。
(1)配線板用絶縁樹脂材料を積層する工程(イ)
先ず、第一の回路1を有する回路板の片面若しくは両面に、本発明の配線板用絶縁樹脂材料を積層して接着補助層3付きの絶縁樹脂層4を形成する[図1(b)参照]。図1(b)では、第一の回路1は回路板の片面に形成されているが、両面に形成されていても良く、この場合は絶縁樹脂層4を回路板の両面に形成できる。この形成方法に特に制限はなく、例えば、前記のアディティブ用絶縁樹脂フィルムを回路板に積層して形成する方法が挙げられる。
支持体付き接着補助層を有するアディティブ用絶縁樹脂フィルムを用いる場合、ワニスが塗布される支持体としては、PET等のプラスチックフィルム等が挙げられ、ワニス硬化後に支持体を剥離除去する場合は離型性のプラスチックフィルム等が好ましい。支持体付き接着補助層を有するアディティブ用絶縁樹脂フィルムは、絶縁樹脂層(A)を回路板の回路層と接する面側に向け、ラミネート法やプレス装置を用いて回路板に積層される。
(2)前記配線板用絶縁樹脂材料を硬化させて絶縁層を得る工程(ロ)
次に、積層した配線板用絶縁樹脂材料を加熱硬化させて第一の接着補助層3と絶縁樹脂層4からなる絶縁層とする[図1(b)参照]。
硬化温度は後のめっき処理や銅のアニール処理などを考慮した温度や時間で行う必要がある。すなわち、あまり硬化を進めると後のめっき処理時に銅との接着性が低下し、反面硬化が足りないとめっき処理時のアルカリ処理液に浸食されめっき液に溶解するような現象が生じたりする。これらを考慮すると、150〜190℃で30〜90分間の熱処理を与えて硬化するのが望ましい。前記の支持体付き接着補助層を有するアディティブ用絶縁樹脂フィルムを使用した場合は、加圧積層工程と加熱硬化工程とは同時でも別でもよい。加圧積層条件は、半硬化状態の配線板用絶縁樹脂材料に第一の回路1の凹凸が埋め込まれれば良く、通常0.5〜20MPaが好ましい。
なお、内層回路である第一の回路1と外層回路を層間接続するために第一の接着補助層3、絶縁材料樹脂層4にビアホールを形成することもできる[図1(b)参照]。このビアホールの形成手法として特に制限はなく、レーザ法やサンドブラスト法などを用いることができる。
(3)絶縁層表面に外層回路層を形成する工程(ハ)
その後、以下のような回路加工を施すことにより第二の回路5を形成し、さらに第一の回路1と第二の回路との層間接続を形成する[図1(c)参照]。
まず、外層回路である第二の回路5を接着補助層3上にめっき法で形成する場合は、接着補助層3を粗化処理するのが好ましい。粗化液としては、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、ホウフッ酸粗化液などの酸化性粗化液を用いることができる。粗化処理としては、例えば、先ず膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルとNaOHとの水溶液を70℃に加温して接着補助層3を5分間浸漬処理する。次に、粗化液として、KMnO4とNaOHとの水溶液を80℃に加温して10分間浸漬処理する。引き続き、中和液、例えば塩化第一錫(SnCl2)の塩酸水溶液に室温で5分間浸漬処理して中和する。
これにより粗化処理した後の接着補助層(B)の表面粗さ(Ra)は0.3μm以下で非常に微細で緻密な粗化形状が得られる。
粗化処理後、パラジウムを付着させるめっき触媒付与処理を行う。めっき触媒処理は、
塩化パラジウム系のめっき触媒液に浸漬して行われる。次に、無電解めっき液に浸漬して接着補助層3の表面全面(ビアホールを形成した場合はビアホール内面を含む)に厚さが0.3〜1.5μmの無電解めっき層(導体層)を析出させる。必要により、更に電気めっきを行って必要な厚さとする。
無電解めっきに使用する無電解めっき液は、公知の無電解めっき液を使用することができ、特に制限はない。また、電気めっきについても公知の方法によることができ特に制限はない。これらのメッキは銅メッキであることが好ましい。さらに不要な箇所をエッチング除去して第二の回路5と第一の回路1及び第二の回路5の層間接続とを形成することができる。
以上の工程(イ)、工程(ロ)及び工程(ハ)を経ることにより、第一の回路1及び第二の回路5を有する配線板が製造されるが、さらに、第一の回路1の表面処理と同様にして第二の回路5の表面処理を行い、前記接着補助層3、絶縁樹脂層4の形成と同様にして接着補助層6、絶縁樹脂層7を形成する[図1(d)参照]。
即ち、積層した配線板用絶縁樹脂材料を硬化させて第二の接着補助層6、絶縁樹脂層7とし、また、ビアホールを形成する[図1(d)参照]。さらに、同様にして第三の回路層8を形成する[図1(e)参照]。
以下、更に同様の工程を繰り返して層数の多い多層配線板を製造できる。
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、以下の実施例で作製した多層配線板について、以下の方法で性能を測定・評価した。
(1)外層回路との接着強度
各実施例及び比較例で得た多層配線板の最外層の回路(第三の回路)の一部に銅のエッチング処理によって、幅10mm、長さ100mmの部分を形成し、この一端を回路/樹脂界面で剥がしてつかみ具でつかみ、垂直方向に引張り速度約50mm/分で、室温中で引き剥がした時の荷重を測定した。
(2)接着補助層の表面粗さ(Ra)
各実施例及び比較例で得た多層配線板の最外層の回路(第三の回路)の一部の銅をエッチング処理し、露出した接着補助層の表面を、菱化システム社製マイクロマップMN5000型を用い、表面粗さRa(μm)を測定した。
(3)288℃はんだ耐熱性
各実施例及び比較例で作製した多層配線板を25mm角に切断し、288±2℃に調整したはんだ浴に浮かべ、ふくれが発生するまでの時間を調べた。
(4)レーザー加工性
各実施例及び比較例の(5)多層配線板の作製(2)におけるめっき前の基板を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し,樹脂の残存等の異物の有無を評価した。
(5)高度加速寿命試験(HAST試験)
各実施例及び比較例で作製したライン/スペース:10/10μmのくし型回路を不飽和プレシャークッカー槽内で130℃、85%RH、印加電圧5.5Vで、最大200時間の通電試験を行った。
実施例1
(1)内層回路板の作製
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板[日立化成工業株式会社製MCL−E−679FG(商品名)、銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.4mm、両面粗化箔を両面に有する。]の片面にエッチングを施して片面に回路(以下、第一の回路とする。)を有する回路板を作製した。
(2)接着補助層付き支持体の作製
多官能エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000H)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤(ジシアンジアミド)1.3質量部、反応促進剤(四国化成株式会社製、2−フェニルイミダゾール)0.2質量部、溶剤(シクロヘキサノン)65質量部をフラスコに配合し、130℃で2時間予備反応させた。反応後のゲルパーミエーション液体クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量分子量は2330であった。
冷却後、さらに硬化剤(DIC株式会社製、商品名:LA−3018、固形分50質量%)50質量部、架橋有機フィラー(パラロイドEXL2655、商品名、ロームアンドハースジャパン株式会社製)55質量部、ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジルR−972)15質量部、硬化促進剤(四国化成工業株式会社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.5質量部、溶剤(2−ブタノン)250質量部、シクロヘキサノン200質量部を攪拌棒で混ぜ、分散機(吉田機械興業株式会社製、商品名:ナノマイザー)を用いて均一なワニスを得た。このワニスを離型処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック株式会社製、商品名:PET−38X)の離型処理面に、乾燥後5μmになるように塗布し、140℃で10分間乾燥させた。
(3)配線板用絶縁樹脂材料(アディティブ用絶縁樹脂フィルム)の作製
多官能エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000H)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤(DIC株式会社製、商品名:LA−3018、固形分50質量%)40質量部、リン系難燃剤(三光株式会社製、商品名:HCA−HQ)40質量部、無機フィラー(株式会社アドマテックス製、球状シリカ、商品名:SO−C2)100質量部、硬化促進剤(四国化成工業株式会社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.5質量部、溶剤(2−ブタノン)150質量部を均一に混ぜ、分散機(吉田機械興業株式会社製、商品名:ナノマイザー)を用いて、均一なワニスを得た。このワニスを上述の接着補助層を塗布したPETフィルムの接着補助層側に、乾燥後35μmになるように塗布し、100℃で5分間乾燥させ、目的とする配線板用絶縁樹脂材料(アディティブ用絶縁樹脂フィルム)を得た。
(4)多層配線板の作製(1)
前記配線板用絶縁樹脂材料(アディティブ用絶縁樹脂フィルム)と前記内層回路板を、絶縁樹脂層を回路板の第一の回路層と接する面側にしてバッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(名機株式会社製、商品名)を用いて積層した。次に、PETフィルムを剥がした後、180℃−60分の硬化条件で配線板用絶縁樹脂材料を硬化して接着補助層3および絶縁樹脂層4からなる第一の絶縁層を得た。
この第一の絶縁層に層間接続用のビアホールを日立ビアメカニクス製CO2レーザ加工機(LCO−1B21型)を使用し、ビーム径60μm、周波数500Hzでパルス幅5μsec、ショット数4の条件で加工して作製した。第一の接着補助層3を化学粗化するために、膨潤液としてジエチレングリコールモノブチルエーテル:200ml/L、NaOH:5g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して3分間浸漬処理した。
次に、粗化液として、KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して5分間浸漬処理した。引き続き、中和液(SnCl2:30g/L、HCl:300ml/L)の水溶液に室温(25℃)で5分間浸漬処理して中和した。
第一の接着補助層3の表面に第二の回路層を形成するために、まず、PdCl2を含む無電解めっき用触媒液(日立化成工業株式会社製、商品名:HS−202B)に、室温(25℃)−10分間浸漬処理し、水洗し、無電解銅めっき用めっき液(日立化成工業株式会社製、商品名:CUST−201)に室温で15分間浸漬して、無電解めっきを施した。
さらに、厚さ15μmのめっきレジスト(日立化成工業株式会社製、商品名:RD−1215)をラミネートし、ネガマスクと405nmの光源を用いて120mJ/cm2の条件で露光し、1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、硫酸銅電解めっきで8μm厚のめっきをした。
その後、3%水酸化ナトリウム水溶液を用いてレジストを剥離し、硫酸−過酸化水素水溶液を用いて不要な給電層(無電解めっき層)のエッチング除去し、上記過マンガン酸粗化液を用いて、不要なパラジウムを除去して、 第一の回路層と接続したバイアホールを含む第二の回路形成を行った。
さらに、多層化するために、第二の回路導体表面を、亜塩素酸ナトリウム:50g/リットル、NaOH:20g/リットル、リン酸三ナトリウム:10g/リットルの水溶液に85℃で20分間浸漬し、水洗して、80℃で20分間乾燥して第二の回路導体表面上に酸化銅の凹凸を形成した。
(5)多層配線板の作製(2)
前記(4)の工程を繰り返して三層の多層配線板を作製した。なお、回路層はライン/スペース:10/10μmのくし型回路とした。
得られた多層配線板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
実施例2
実施例1の(2)接着補助層付き支持体の作製において、架橋有機フィラーのパラロイドEXL2655を35質量部とし、接着補助層の厚みを9μmとした以外、実施例1と同様にした。得られた多層配線板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
実施例3
実施例1の(2)接着補助層付き支持体の作製において、架橋有機フィラーとして、スタフィロイドAC−3832(ガンツ化成株式会社製、商品名)80質量部とし、接着補助層の厚みを3μmとした以外、実施例1と同様にした。得られた多層配線板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
実施例4
実施例1の(3)配線板用絶縁樹脂材料(アディティブ用絶縁樹脂フィルム)の作製において、リン系難燃剤(三光株式会社製、商品名:HAC−HQ)を60質量部とした以外、実施例1と同様にした。得られた多層配線板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、接着補助層を形成せずに、絶縁樹脂層を形成した以外、実施例1と同様にした。得られた多層配線板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1の(2)接着補助層付き支持体の作製において、予備反応を行わないで、すべて配合して混合した以外、実施例1と同様にした。得られた多層配線板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
Figure 2012166514
第1表から、本発明の配線板用絶縁樹脂材料を用いた多層配線板は、実施例1〜4から明らかなように、平滑な樹脂表面上において、無電解銅めっきと高接着力を示し、またレーザ加工性やHAST試験が優れる良好な結果を示す。さらに、288℃はんだ耐熱性にも優れており環境に配慮した多層配線板を製造することが可能である。
一方、本発明の配線板用絶縁樹脂材料を用いない比較例1〜2に示す多層配線板は、表面粗さが大きいか、もしくはレーザ加工性やHAST試験で不具合が発生した。
本発明によれば、ビルドアップ方式の多層配線板において、平滑な樹脂表面でも無電解めっきとの高接着力を示し、加工性及び耐熱性に優れ、微細な回路の形成が可能で、鉛フリー化に対応可能な、信頼性の高い多層配線板を提供でき、高いはんだ耐熱性を有する配線板用絶縁樹脂材料を提供できる。
従って、本発明の配線板用絶縁樹脂材料を使用することにより、高集積化された多層配線板を有利に製造でき、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が促進される。
1 第一の回路
2 基板(絶縁基板)
3 接着補助層
4 絶縁樹脂層
5 第二の回路
6 接着補助層(二層目)
7 絶縁樹脂層
8 第三の回路

Claims (9)

  1. 絶縁樹脂層(A)と接着補助層(B)を有し、絶縁樹脂層(A)が、多官能型エポキシ樹脂(a-1)、エポキシ樹脂硬化剤(a-2)及び無機フィラー(a-3)を含有する層であり、接着補助層(B)が、多官能型エポキシ樹脂(b-1)、エポキシ樹脂硬化剤(b-2)の予備反応生成物及び平均一次粒径1μm以下の架橋有機フィラー(b-3)を含有し、厚みが1〜10μmの層であることを特徴とする配線板用絶縁樹脂材料。
  2. 絶縁樹脂層(A)が、さらに、リン系難燃剤(a-4)を含有する請求項1に記載の配線板用絶縁樹脂材料。
  3. 接着補助層(B)が、さらに、ヒュームドシリカ(b-4)を含有する請求項1又は2に記載の配線板用絶縁樹脂材料。
  4. 接着補助層(B)に含有する架橋有機フィラー(b-3)がコアシェル構造架橋ゴム粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の配線板用絶縁樹脂材料。
  5. 接着補助層(B)における固形分基準の架橋有機フィラー(b-3)の含有量が20〜40質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の配線板用絶縁樹脂材料。
  6. 接着補助層(B)における多官能型エポキシ樹脂(b-1)がビフェニル構造を有するアラルキル型エポキシ樹脂であり、エポキシ樹脂硬化剤(b-2)がトリアジン環含有ノボラック型フェノール樹脂及び/又はジシアンジアミドである請求項1〜5のいずれかに記載の配線板用絶縁樹脂材料。
  7. 配線板用絶縁樹脂材料を硬化し、粗化処理した後の接着補助層(B)の表面粗さ(Ra)が0.3μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の配線板用絶縁樹脂材料。
  8. 内層回路を有する基板の片面または両面に絶縁層及び外層回路層が逐次積層されている多層配線板であって、前記絶縁層が請求項1〜7のいずれかに記載の配線板用絶縁樹脂材料の硬化物であることを特徴とする多層配線板。
  9. 内層回路を有する基板に請求項1〜7のいずれかに記載の配線板用絶縁樹脂材料を積層する工程(イ)、前記配線板用絶縁樹脂材料を硬化させて絶縁層を得る工程(ロ)、前記絶縁層表面に外層回路層を形成する工程(ハ)を含むことを特徴とする多層配線板の製造方法。
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