JP2012166270A - 異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スポット摩擦攪拌接合方法を用いて、金属材料を変形させることなく、安定した高い接合強度で異種金属材料を接合することができる異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法を提供することを課題とする。
【解決手段】裏当て材3上に、融点が高い金属材料1から順に下から重ね合わせて、その上方から回転する摩擦ツール5を用いてスポット摩擦攪拌接合するにあたり、裏当て材3と融点の高い金属材料1との間に断熱層4を形成し、その断熱層4を、セラミックス系の材料で形成したセラミックス層4bとしてなる。
【選択図】 図8
【解決手段】裏当て材3上に、融点が高い金属材料1から順に下から重ね合わせて、その上方から回転する摩擦ツール5を用いてスポット摩擦攪拌接合するにあたり、裏当て材3と融点の高い金属材料1との間に断熱層4を形成し、その断熱層4を、セラミックス系の材料で形成したセラミックス層4bとしてなる。
【選択図】 図8
Description
本発明は、融点の異なる異種金属材料を重ね合わせてスポット摩擦攪拌接合で接合する異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法、より詳しくは、鉄系材料とアルミニウム系材料を重ね合わせてスポット摩擦攪拌接合で接合する異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法に関するものである。
鉄系材料とアルミニウム系材料といった融点の異なる異種金属材料同士を重ね合わせて接合してなる溶接継手は、自動車、鉄道車両などの輸送分野、機械部品、建築物等の広い分野で採用されている。特に一方にアルミニウム系材料を用いた溶接継手は、アルミニウム系材料が軽量であることから、自動車、鉄道車両などの輸送分野に好適に用いられている。
しかしながら、鉄系材料とアルミニウム系材料といった融点の異なる異種金属材料を、従来から広く採用されてきた抵抗スポット溶接で接合する場合、高い電力エネルギーを必要とし、しかも溶接時にチリが飛散することから問題になっており、この抵抗スポット溶接に代えて、高い電力エネルギーを必要とせず、しかも作業環境も害することがない新規な溶接方法の採用が検討されていた。
そこで、近年採用され始めているのがスポット摩擦攪拌接合による溶接方法である。この溶接方法は、異種金属材料を接合する場合、抵抗スポット溶接のように高い電力エネルギーを必要としなく、しかも溶接時にチリが飛散することもない優れた溶接方法である。
しかしながら、このスポット摩擦攪拌接合方法は、アルミニウム系材料同士の接合といった同種の金属の接合には全く問題なく採用することができるのであるが、鉄系材料とアルミニウム系材料といった融点の異なる異種金属材料の接合に採用した場合、安定した高い接合強度を得ることができない。そこで、融点の異なる異種金属材料の接合にあたって、実際の溶接現場では種々の改善や工夫を加えて検討を行っているが、安定して高い接合強度を得ることができる方法の確立に至っていないのが現状である。
鉄系材料とアルミニウム系材料といった異種金属材料同士をスポット摩擦攪拌接合による溶接方法によって接合した場合に、安定した高い接合強度を得ることができない原因は、接合する金属材料の融点が異なることにある。
例えば、鉄系材料とアルミニウム系材料を、スポット摩擦攪拌接合によって溶接する場合の重要な要件は、回転する摩擦ツールの先端のプローブをアルミニウム系材料に押し込んでアルミニウム系材料を塑性流動させながら、アルミニウム系材料と鉄系材料の摩擦及び塑性流動による発熱により鉄系材料の表面(界面)温度を拡散接合できる状態の温度にまで上昇させることである。
しかしながら、従来から行われているスポット摩擦攪拌接合による溶接方法では、融点が低いアルミニウム系材料は直ぐに軟化塑性流動するが、融点が高い鉄系材料は摩擦時間が不足すると、接合界面における温度が安定して接合可能となる温度領域には達しないため、良好な接合部を得ることができない。一方、摩擦時間を長くして、且つ摩擦ツールを回転させてその先端のプローブを鉄系材料の直上まで押し込んだ場合は、鉄系材料の温度は適当な温度まで上昇するが、アルミニウム系材料が軟化しすぎてしまい、接合界面に対する圧力が負荷されず、結果として、安定した接合部を得ることはできない。
鉄系材料とアルミニウム系材料等の異種金属材料を重ね合わせて溶接接合する方法は、近年、特許文献1〜4等により提案されている。これらの提案のうち、特許文献1と特許文献2が、スポット摩擦攪拌接合によって溶接する方法に関係する提案である。尚、特許文献3と特許文献4はアーク溶接で鉄系材料とアルミニウム系材料を接合する技術に関する提案である。
特許文献1には、融点が異なる複数の部材を重ね合わせ、回転する接合ツール(摩擦ツール)で融点が低い上側の部材を押圧し、摩擦攪拌により接合する重ね継手の摩擦攪拌接合方法において、接合ツールで押圧する部材の表面近傍を摩擦熱により攪拌させ、その摩擦熱により重ね合わせ面の温度を上昇させ、対向する部材同士の拡散接合により接合する重ね継手の摩擦攪拌接合方法が記載されている。
また、特許文献2には、先端にピン部(プローブ)を有する回転工具(摩擦ツール)を用いて異種金属板同士を摩擦点接合するに際して、融点が高い金属板材を受承する受承面にピン部先端よりも外径寸法が大きい凹部を備えた受け具で、融点が低い金属板材を重ね合わせた融点が高い金属板材を受けると共に、回転工具を回転させながら融点が低い金属板材から押し込むことにより、融点が高い金属板材の前記凹部に対応する部分をその凹部側に変位させた状態で、発生した摩擦熱で融点が低い金属板材を軟化させて塑性流動させ、金属板材同士を接合することで、ピン部に対応した凹部を融点が高い金属板材に形成する方法が記載されている。
これらの方法は、鉄系材料とアルミニウム系材料といった異種金属材料同士をスポット摩擦攪拌接合によって溶接する技術の提案であって、異種金属材料同士を溶接するスポット摩擦攪拌接合方法に関する有効な提案であるとは考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の方法は、回転する接合ツールで融点が低い上側の部材を押圧して上板と下板の間の接合界面を拡散接合により密着させるもので、従来のスポット摩擦攪拌接合を具体的に明示しているだけで、従来技術と大きな変わりはなく、安定した高い接合強度を得ることができるとはいえない。また、特許文献2に記載の方法は、融点が高い金属板材にピン部(プローブ)に対応した小さな径の凹部を形成するだけであって、必ずしも安定した接合強度を得ることができるとはいえない。また、金属材料に凹部を形成しなければならず、その点でも問題が残る技術である。
すなわち、これら特許文献1〜4には、スポット摩擦攪拌接合方法を用いて、金属材料を変形させることなく、しかも安定した高い接合強度で異種金属材料を接合することができるスポット摩擦攪拌接合方法は記載されていない。尚、特許文献3と特許文献4にはアーク溶接による異種材料の接合に関する技術が記載されており、本発明とは異なる技術に関する提案である。
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、融点の異なる異種金属材料を、高い電力エネルギーを使用する必要はなく、しかも溶接時にチリが飛散することはなく作業環境も害することはないという優れた溶接方法であるスポット摩擦攪拌接合方法を用いて、金属材料を変形させることなく、安定した高い接合強度で異種金属材料を接合することができる異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、融点の異なる異種金属材料を重ね合わせて接合してなる異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法において、裏当て材上に、融点が高い金属材料から順に下から重ね合わせて、上方から回転する摩擦ツールを用いてスポット摩擦攪拌接合するにあたり、前記裏当て材と前記融点の高い金属材料との間の前記裏当て材上に断熱層を形成し、前記断熱層を、セラミックス系の材料で形成したセラミックス層としてなることを特徴とする異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法である。
請求項2記載の発明は、前記融点の異なる異種金属材料のうち、融点が高い金属材料は鉄系材料、融点が低い金属材料はアルミニウム系材料である請求項1記載の異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法である。
本発明の異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法によると、鉄系材料とアルミニウム系材料といった融点の異なる異種金属材料を、高い電力エネルギーを使用する必要はなく、しかも溶接時にチリが飛散することはなく作業環境も害することはないという優れた溶接方法であるスポット摩擦攪拌接合方法を用いて、金属材料を変形させることなく、安定した高い接合強度で接合することができる。
本発明者らは、鉄系材料とアルミニウム系材料といった融点の異なる異種金属材料を、高い電力エネルギーを使用する必要はなく、しかも溶接時にチリが飛散することはなく作業環境も害することはないという優れた溶接方法であるスポット摩擦攪拌接合方法を用いて、金属材料を変形させることなく、安定した高い接合強度で接合することができる方法を見出すために研究開発を進めた。
その結果、従来のスポット摩擦攪拌接合方法では、溶接接合位置で金属製の裏当て材に融点が高い金属材料が接触するため、融点が低い金属材料を攪拌塑性流動させながら、融点が低い金属材料と融点が高い金属材料を摩擦させることと、塑性流動による発熱により、融点が高い金属材料の表面温度を上昇させる際に、発生した熱エネルギーの多くが裏当て材に流れてしまうことが分かった。すなわち、融点が低い金属材料が接合するための適正な温度状態になったときに、融点が高い金属材料の表面温度が、接合するための十分な温度に上昇しておらず、その結果、金属材料同士を安定した高い接合強度で接合することができなかったのである。
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて更に詳細に説明する。尚、以下の説明では、融点が高い金属材料を鉄系材料、融点が低い金属材料をアルミニウム系材料として説明する。尚、アルミニウム系材料とは、純アルミニウム、或いはアルミニウム合金のことを示す。また、金属材料としては、鉄系材料、アルミニウム系材料のほか、ニッケル系材料、銅系材料、その他各種金属材料を用いても良いことは勿論である。
図1には鉄系材料とアルミニウム系材料の溶接継手を示し、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。尚、図に示す数値は後述する実施例で用いた溶接継手の各部寸法を示す。図2は本発明の異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法に用いる摩擦ツールを示し、図3は本発明の異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法に用いる裏当て材の一実施形態を示す。また、図4は従来のスポット摩擦攪拌接合方法に用いる裏当て材を示す。
図5は本発明の一実施形態で鉄系材料とアルミニウム系材料をスポット摩擦攪拌接合方法により溶接接合している状態を示す。また、図6は後述する実施例で鉄系材料とアルミニウム系材料の溶接継手の接合強度を確認している状態を示し、図7は摩擦ツール先端のプローブをアルミニウム系材料に押し込んでいる状態を示す。また、図8は本発明の異なる実施形態で鉄系材料とアルミニウム系材料をスポット摩擦攪拌接合方法により溶接接合している状態を示す。
本発明者らは、鉄系材料1の表面温度を上昇させる際に、発生した熱エネルギーの多くが裏当て材3に流れてしまうという問題を解消するために、円柱状の裏当て材3の上部の、従来のスポット摩擦攪拌接合による方法では鉄系材料1と接触していた位置に、断熱層4を形成した。図4および図5に示す断熱層4は空気層4aであって、図8に示す断熱層4はセラミックス系の材料を用いて形成したセラミックス層4bである。断熱層4をセラミックス層4bとした場合はセラミックス層4bが鉄系材料1と接触するが、セラミックス層4bは断熱性が高いため、熱エネルギーが裏当て材3に流れてしまうことを防止することができる。
断熱層4が空気層4aの場合はその空気層4aの平面視は円形であり、その径を、図2および図5に示す回転する摩擦ツール5のツール径の0.6〜1.4倍の範囲とする。また、空気層4aの厚みは0.20mm以上とする。
空気層4aの径を摩擦ツール5のツール径の0.6倍未満とした場合、空気層4aの周囲の裏当て材3が鉄系材料1に接触する面積が過大となってしまうため、十分な断熱効果を得ることができない。一方、空気層4aの径を摩擦ツール5のツール径の1.4倍超とした場合、摩擦ツール5で押し込まれてたわんだ鉄系材料1が裏当て材3に接触してしまうため、十分な断熱効果を得ることができない。尚、空気層4aの径と摩擦ツール5のツール径は同一であることがより望ましい。
また、空気層4aの厚みを0.20mm未満とした場合も摩擦ツール5で押し込まれてたわんだ鉄系材料1が裏当て材3に接触してしまうため、十分な断熱効果を得ることができない。尚、空気層4aの厚みの上限はないが、当然のことではあるが厚くても円柱状の裏当て材3の長さを超えることはない。
また、円柱状の裏当て材3の径は、摩擦ツール5のツール径以上とすることが望ましい。これは、摩擦ツール5を押し込んだ際に、確実に裏当て材3でその押し込み力を受けるためである。
更には、その裏当て材3の径を、空気層4aの径の1.1〜2.2倍とすることが望ましい。裏当て材3の径が空気層4aの径の1.1倍未満であれば、裏当て材3と鉄系材料1との接触面積が小さくなりすぎ、摩擦ツール5で押し込まれた鉄系材料1を十分に支持することができなくなる。一方、裏当て材3の径が空気層4aの径の2.2倍超であれば、鉄系材料1との接触面積が大きくなりすぎ、十分な断熱効果を得ることができない。尚、この場合の鉄系材料1と裏当て材3の接触位置は、溶接接合位置とは離れた位置であり、断熱効果の低下に与える影響は小さいため、本発明の必須要件とはしない。
断熱層4がセラミックス系の材料を用いて形成したセラミックス層4bである場合は、図8に示すように、裏当て材3の上部を全てセラミックス系の材料を用いて形成したセラミックス層4bとする。尚、セラミックス層4bに鉄系材料1が接触するため、空気層4aを断熱層4とした場合のように、鉄系材料1がたわむことはない。従って、断熱性が確保できればそのセラミックス層4bの厚みはいくらであっても良い。
次に、断熱層4を上部に形成した裏当て材3を用いて、本発明の異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法により、鉄系材料1とアルミニウム系材料2を接合する方法を、断熱層4が空気層4aの場合の実施形態である図5に基づいて説明する。
まず、裏当て材3上に、鉄系材料1とアルミニウム系材料2を、鉄系材料1、アルミニウム系材料2の順で下から重ね合わす。次に、アルミニウム系材料2の表面に、その上方から摩擦ツール5を回転させながらその先端のプローブ5aから押し込んで、アルミニウム系材料2を塑性流動させる。この状態でアルミニウム系材料2と鉄系材料1を摩擦させることと、塑性流動による発熱により鉄系材料1の表面(界面)温度を上昇させるが、鉄系材料1が接触する裏当て材3の上部には空気層4aが形成されているため、熱エネルギーの大部分は裏当て材3には流れない。鉄系材料1と裏当て材3は溶接接合位置の周囲では接触するが、溶接接合位置からは直接熱エネルギーが裏当て材3に流れ出ることはないため、溶接接合位置で、鉄系材料2の表面(界面)温度を拡散接合できる適性温度に維持することができる。
この状態で鉄系材料1とアルミニウム系材料2は摩擦攪拌接合されるので、融点の異なる異種金属材料である鉄系材料1とアルミニウム系材料2は、安定した高い接合強度で溶接接合される。
(実施例1)
スポット摩擦攪拌接合装置(川崎重工製:FSJ定置式システム)を用いて、鉄系材料1とアルミニウム系材料2のスポット摩擦攪拌接合試験を行った。試験体として、鉄系材料1は、590MPa級溶融亜鉛メッキ高張力鋼板(板厚:1.2mm)、アルミニウム系材料2は、AA6022相当アルミニウム合金板(板厚:1.0mm)を用いた。これら鉄系材料1とアルミニウム系材料2を溶接接合した溶接継手の形状を図1の(a),(b)に示す。溶接継手各部の具体的な寸法は図1の(a),(b)に示す通りである。尚、数値の単位はmmである。
スポット摩擦攪拌接合装置(川崎重工製:FSJ定置式システム)を用いて、鉄系材料1とアルミニウム系材料2のスポット摩擦攪拌接合試験を行った。試験体として、鉄系材料1は、590MPa級溶融亜鉛メッキ高張力鋼板(板厚:1.2mm)、アルミニウム系材料2は、AA6022相当アルミニウム合金板(板厚:1.0mm)を用いた。これら鉄系材料1とアルミニウム系材料2を溶接接合した溶接継手の形状を図1の(a),(b)に示す。溶接継手各部の具体的な寸法は図1の(a),(b)に示す通りである。尚、数値の単位はmmである。
発明例と比較例の試験に用いたスポット摩擦攪拌接合装置の摩擦ツール5を図2に、発明例の試験に用いたスポット摩擦攪拌接合装置の、鉄系材料1との間に断熱層4(空気層4a)を形成した裏当て材3を図3に、比較例の試験に用いたスポット摩擦攪拌接合装置の、鉄系材料1との間に断熱層4(空気層4a)を形成しない裏当て材3を図4に夫々示す。
図2中、Dsは摩擦ツール5のツール径であってφ10mm、Dpは摩擦ツール5先端のプローブ5aの径であってφ2mm、Hpはプローブ5aの長さであって0.5mmである。また、図3中、Duは裏当て材3の径であってφ16mm、Dkは空気層4aの径であってφ8mm、Hkは空気層4aの厚みであって0.25mm、図4中、Duは裏当て材3の径であってφ16mmである。尚、図7に示すDtは摩擦ツール5先端のプローブ5aの押込み深さを示す。
すなわち、発明例は、請求項1に示す条件のうち、空気層4aの径(Dk)/摩擦ツール5のツール径(Ds)=0.8倍、空気層4aの厚み(Hk)は0.25mmであって、請求項1に示す条件を満足する。また、請求項2に示す条件のうち、裏当て材3の径(Du)≧摩擦ツール5のツール径(Ds)、裏当て材3の径(Du)/空気層4aの径(Dk)=2.0倍であって、請求項2に示す条件も満足する。
図5に、鉄系材料1とアルミニウム系材料2を発明例のスポット摩擦攪拌接合方法によって溶接接合している状態を示す。このスポット摩擦攪拌接合方法によって鉄系材料1とアルミニウム系材料2を溶接接合した溶接継手を用い、図6に示す方法によって、JIS Z3136に準拠したせん断引張試験を実施した。また、比較例についても同様にスポット摩擦攪拌接合方法によって、鉄系材料1とアルミニウム系材料2を溶接接合して溶接継手を作製し、図6に示す方法によって、JIS Z3136に準拠したせん断引張試験を実施した。
せん断引張試験は、発明例、比較例共に、摩擦ツール5の加圧力、回転数、加圧時間、押込み深さを夫々変えて、サンプル数をN=3とし、実施した。合格判定基準は、各サンプルによって得られたせん断力が全て3200N以上で、平均せん断力が3500N以上のものを合格とした。その試験結果を表1と表2に示す。
表1に示す比較例では、一部にせん断力が3200N或いは3500Nを超えるサンプルが確認できるが、裏当て材3と鉄系材料1との間に断熱層4(空気層4a)を形成しない比較例では、安定して高い強度(せん断力)が得られる条件は確認できなかった。一方、表2に示す発明例では、各サンプル共に合格判定基準を全て満たし、請求項1に記載の条件で裏当て材3と鉄系材料1との間に断熱層4(空気層4a)を形成すれば、バラツキなく、安定して高い強度(せん断力)が得られることが確認できた。
(実施例2)
実施例1と同様に、スポット摩擦攪拌接合装置(川崎重工製:FSJ定置式システム)を用いて、鉄系材料1とアルミニウム系材料2のスポット摩擦攪拌接合試験を行った。試験体も実施例1と同様に、鉄系材料1は、590MPa級溶融亜鉛メッキ高張力鋼板(板厚:1.2mm)、アルミニウム系材料2は、AA6022相当アルミニウム合金板(板厚:1.0mm)を用いた。
実施例1と同様に、スポット摩擦攪拌接合装置(川崎重工製:FSJ定置式システム)を用いて、鉄系材料1とアルミニウム系材料2のスポット摩擦攪拌接合試験を行った。試験体も実施例1と同様に、鉄系材料1は、590MPa級溶融亜鉛メッキ高張力鋼板(板厚:1.2mm)、アルミニウム系材料2は、AA6022相当アルミニウム合金板(板厚:1.0mm)を用いた。
実施例2では、摩擦ツール5の加圧力を2.0kN 、回転数を2000rpm、加圧時間を5s、押込み深さを0.7mmと固定し、空気層4aの径(Dk)、空気層4aの厚み(Hk)を夫々変えることにより、適正な空気層4aの寸法を確認するためのせん断引張試験を実施した。また、空気層4aの径(Dk)に応じて一部の裏当て材3の径(Du)も変更した。尚、合格判定基準は実施例1と同様とする。
各比較例は、請求項1に示す条件のいずれかを満足しないものであって、No.18は空気層4aの径(Dk)/摩擦ツール5のツール径(Ds)が0.4倍であって、No.19は空気層4aの径(Dk)/摩擦ツール5のツール径(Ds)が0.5倍である。一方、No.20は空気層4aの径(Dk)/摩擦ツール5のツール径(Ds)が1.6倍である。また、No.21は空気層4aの厚み(Hk)が0.10mmであり、No.22は空気層4aの厚み(Hk)が0.15mmである。
これに対し、各発明例は、空気層4aの径(Dk)/摩擦ツール5のツール径(Ds)が0.6〜1.4倍、空気層4aの厚み(Hk)が0.20mm以上という条件を満足する。そのJIS Z3136に準拠したせん断引張試験による試験結果を表3に示す。
No.18とNo.19は、空気層4aの径(Dk)/摩擦ツール5のツール径(Ds)が0.6倍未満の比較例である。これら比較例では、空気層4aの周囲の裏当て材3が鉄系材料1に接触する面積が過大となったことで、空気層4aによる十分な断熱効果を得られず、合格判定基準を満足できなかったと考えられる。
一方、No.20は、空気層4aの径(Dk)/摩擦ツール5のツール径(Ds)が1.4倍超の比較例である。この比較例では、摩擦ツール5で押し込まれてたわんだ鉄系材料1が裏当て材3に接触してしまったため、空気層4aによる十分な断熱効果を得られず、合格判定基準を満足できなかったと考えられる。
また、No.21とNo.22は、空気層4aの厚み(Hk)が0.20mm以上という条件を満足しない比較例である。これら比較例では、空気層4aが薄過ぎ、摩擦ツール5で押し込まれてたわんだ鉄系材料1が裏当て材3に接触してしまったため、十分な断熱効果を得られず、合格判定基準を満足できなかったと考えられる。
これら比較例に対し、No.23〜28の発明例は、空気層4aの径(Dk)/摩擦ツール5のツール径(Ds)が0.6〜1.4倍、空気層4aの厚み(Hk)が0.20mm以上という条件を満足するため、空気層4aによって十分な断熱効果を得ることができ、合格判定基準を満足したと考えられる。すなわち、以上の試験により、適正な空気層4aの寸法を確認することができた。
(実施例3)
実施例1と同様に、スポット摩擦攪拌接合装置(川崎重工製:FSJ定置式システム)を用いて、鉄系材料1とアルミニウム系材料2のスポット摩擦攪拌接合試験を行った。試験体も実施例1と同様に、鉄系材料1は、590MPa級溶融亜鉛メッキ高張力鋼板(板厚:1.2mm)、アルミニウム系材料2は、AA6022相当アルミニウム合金板(板厚:1.0mm)を用いた。実施例1と異なるのは、図8に示すように、断熱層4をアルミナ系セラミックスを用いて形成したセラミックス層4bとしたことである。
実施例1と同様に、スポット摩擦攪拌接合装置(川崎重工製:FSJ定置式システム)を用いて、鉄系材料1とアルミニウム系材料2のスポット摩擦攪拌接合試験を行った。試験体も実施例1と同様に、鉄系材料1は、590MPa級溶融亜鉛メッキ高張力鋼板(板厚:1.2mm)、アルミニウム系材料2は、AA6022相当アルミニウム合金板(板厚:1.0mm)を用いた。実施例1と異なるのは、図8に示すように、断熱層4をアルミナ系セラミックスを用いて形成したセラミックス層4bとしたことである。
実施例3では、JIS Z3136に準拠したせん断引張試験は、摩擦ツール5の加圧力、回転数、加圧時間、押込み深さを夫々変えて実施した。合格判定基準は実施例1と同様とする。その試験結果を表4に示す。
表4の試験結果によると、全て合格判定基準を満足した。この結果から、断熱層をセラミックス系の材料で形成したセラミックス層とすることでも、十分な断熱効果を得ることができ、バラツキなく、安定して高い強度(せん断力)が得られることができることが確認できた。
1…鉄系材料(融点の高い金属材料)
2…アルミニウム系材料(融点の低い金属材料)
3…裏当て材
4…断熱層
4a…空気層
4b…セラミックス層
5…摩擦ツール
5a…プローブ
2…アルミニウム系材料(融点の低い金属材料)
3…裏当て材
4…断熱層
4a…空気層
4b…セラミックス層
5…摩擦ツール
5a…プローブ
Claims (2)
- 融点の異なる異種金属材料を重ね合わせて接合してなる異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法において、
裏当て材上に、融点が高い金属材料から順に下から重ね合わせて、上方から回転する摩擦ツールを用いてスポット摩擦攪拌接合するにあたり、
前記裏当て材と前記融点の高い金属材料との間の前記裏当て材上に断熱層を形成し、
前記断熱層を、セラミックス系の材料で形成したセラミックス層としてなることを特徴とする異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法。 - 前記融点の異なる異種金属材料のうち、融点が高い金属材料は鉄系材料、融点が低い金属材料はアルミニウム系材料である請求項1記載の異種金属材料のスポット摩擦攪拌接合方法。
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