以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の第一の実施形態として、自動車用の能動型制振器10が示されている。能動型制振器10は、電磁式のリニアアクチュエータ12を含んで構成されており、このリニアアクチュエータ12が固定子14と可動子16を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは、図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、固定子14は、アウタ筒部としてのコイル部材18を含んで構成されている。このコイル部材18は、軸方向に延びる略円筒形状であって、それぞれ筒状のボビンに巻回された一対のコイル20a,20bと、それらコイル20a,20bに取り付けられて磁路を形成する上ヨーク金具22および下ヨーク金具24とを備えている。
上ヨーク金具22は、コイル20aの上面および外周面を覆う第一ヨーク26と、コイル20aの下面を覆う第二ヨーク28とを、部分的な当接状態で組み合わせることにより構成されている。そして、上ヨーク金具22には、第一ヨーク26の内周縁部から下方に突出する第一の上側磁極部30と、第二ヨーク28の内周縁部から上方に突出する第一の下側磁極部32が、軸方向に所定距離を隔てて形成されている。
下ヨーク金具24は、コイル20bの上面を覆う第三ヨーク34と、コイル20bの下面および外周面を覆う第四ヨーク36とを、部分的な当接状態で組み合わせることにより構成されている。そして、下ヨーク金具24には、第三ヨーク34の内周縁部から下方に突出する第二の上側磁極部38と、第四ヨーク36の内周縁部から上方に突出する第二の下側磁極部40が、軸方向に所定距離を隔てて形成されている。なお、図1からも明らかなように、上ヨーク金具22と下ヨーク金具24は水平面に対して互いに対称な構造を有する略中空円環形状の部材となっており、上ヨーク金具22の中空部分にコイル20aが配設されていると共に、下ヨーク金具24の中空部分にコイル20bが配設されている。
また、コイル部材18は、上部カバー42に取り付けられている。上部カバー42は、全体として、薄肉大径の略円筒形状を有している。更に、上部カバー42の下端開口部には環状の段差部44が設けられており、段差部44の外周縁部から下方に延び出すかしめ片46が一体形成されている。そして、コイル部材18のヨーク金具22,24が上部カバー42に圧入固定されている。
一方、可動子16は、磁石48の軸方向両側に第一の磁極形成部材50と第二の磁極形成部材52とが重ね合わされた構造を有している。磁石48は、略円環形状であって、軸方向上端部にN極が形成されていると共に、軸方向下端部にS極が形成されている。第一の磁極形成部材50と第二の磁極形成部材52は、何れも磁石48に対応する略円環形状を有しており、鉄等の強磁性材料で形成されている。そして、第一,第二の磁極形成部材50,52が磁石48に重ね合わされることにより、それら第一,第二の磁極形成部材50,52がそれぞれ磁化されて、第一の磁極形成部材50の外周縁部にN極が形成されていると共に、第二の磁極形成部材52の外周縁部にS極が形成されている。なお、第一,第二の磁極形成部材50,52は中央部分が軸方向外側に突出しており、後述する追加マス122に加えてそれら第一,第二の磁極形成部材50,52によっても可動子16側の質量が効率的に確保されるようになっている。
それら磁石48と第一の磁極形成部材50と第二の磁極形成部材52は、コイル部材18の内周側に挿入されて、所定の隙間を隔てて配設されている。そして、第一,第二の磁極形成部材50,52の磁極形成部分(外周縁部)が、上下のヨーク金具22,24における上下の磁極部30,32,38,40に対して所定の隙間を隔てて径方向内側に対向配置されている。
さらに、磁石48および第一,第二の磁極形成部材50,52の中央孔には、インナ軸部を構成する出力軸54が挿通されている。出力軸54は略ロッド形状を有しており、両端部がねじ山を形成された雄ねじ部となっていると共に、軸方向中間部分に大径部56が形成されている。そして、出力軸54は、第一,第二の磁極形成部材50,52の軸方向両側に突出するように挿通されており、大径部56が第二の磁極形成部材52よりも下方に位置している。なお、後述するように磁石48および第一,第二の磁極形成部材50,52が出力軸54によって固定されることにより、可動子16が形成されている。
また、上ヨーク金具22および第一の磁極形成部材50の上方には、第一の板ばね58が配設されている。第一の板ばね58は、略円板形状を有していると共に、図中では必ずしも明らかではないが、例えば渦巻き形状等の適当な形状の貫通孔が厚さ方向に貫通するように形成されており、第一の板ばね58の自由長が調節されていると共に、第一の板ばね58を挟んだ両側が相互に連通されている。そして、第一の板ばね58の外周縁部が上ヨーク金具22と上部カバー42に嵌着された上側挟持部材60との間で挟持されていると共に、中央部が出力軸54の上端に螺着される保持金具62と第一の磁極形成部材50との間で挟持されている。これらにより、上ヨーク金具22と第一の磁極形成部材50が、第一の板ばね58によって弾性的に連結されている。なお、上側挟持部材60は、外周部分が軸直角方向に広がる略平板形状となっていると共に、内周部分が上方に立ち上がって保持金具62を取り囲んでいる。そして、上側挟持部材60は、上部カバー42の周壁部に部分的に形成された複数の切起部61によって上方から押えられて、上方への抜け出しが防止されている。
さらに、下ヨーク金具24および第二の磁極形成部材52の下方には、第二の板ばね64が配設されている。第二の板ばね64は、第一の板ばね58と略同一形状を有しており、外周縁部が下ヨーク金具24と上部カバー42に嵌着されたリング状の下側挟持部材66との間で挟持されると共に、中央部が出力軸54の大径部56と第二の磁極形成部材52との間で挟持されている。これらにより、下ヨーク金具24と第二の磁極形成部材52が、第二の板ばね64によって弾性的に連結されている。
これらのように、リニアアクチュエータ12では、可動子16と固定子14が、上下両側において第一,第二の板ばね58,64で弾性的に連結されて、軸方向および軸直角方向で相対的に位置決めされている。そして、固定子14が上部カバー42に固定されていると共に、可動子16が上部カバー42に対して第一,第二の板ばね58,64を介して弾性的に支持されている。その結果、リニアアクチュエータ12は、後述する弾性連結ゴム76および下部カバー86の取付けを要することなく、アクチュエータ単体で作動可能とされている。なお、本実施形態では、第一,第二の板ばね58,64によって軸受部材が構成されている。
そして、図示しない外部電源からコイル20a,20bに給電されることにより、上下の磁極部30,32,38,40に磁極が形成されて、それら磁極部30,32,38,40と第一,第二の磁極形成部材50,52との間で磁気的な吸引力および排斥力が作用する。これにより、可動子16が固定子14に対して軸方向(図1中、上下方向)に駆動されるようになっている。更に、可動子16が固定子14に対して相対変位した状態で、コイル20a,20bへの通電を停止することにより、可動子16と固定子14の間で作用する磁気的な吸引力および排斥力が解除されると共に、板ばね58,64の弾性力によって可動子16が元の位置に復帰する。これらの作動を繰り返すことによって、可動子16が固定子14に対して上下に加振駆動されるようになっている。なお、コイル20a,20bへの通電の正負を逆転させることで、磁気的な吸引力および排斥力の作用方向を制御して、可動子16を加振駆動させることもできる。
また、上部カバー42の上側開口部には、蓋部材68が配設されている。蓋部材68は、全体として略円板形状を有していると共に、周上の一部にコネクタ部70を一体的に備えている。このコネクタ部70には、導電体で形成された端子72が配設されており、図示しない外部電源が端子72に接続されることで、外部電源から端子72を通じてコイル20a,20bに給電されるようになっている。なお、蓋部材68の下部が上部カバー42に嵌め込まれることで上部カバー42の上側開口部が閉塞されていると共に、それら蓋部材68と上部カバー42の重ね合わせ面間がゴム弾性体で形成されたOリング74によって封止されている。
また、リニアアクチュエータ12の下方には、弾性連結ゴム76が配設されている。弾性連結ゴム76は、図2に示されているように、略円環板形状のゴム弾性体で形成されており、径方向中間部分を厚さ方向に貫通する複数の連通孔78によって、弾性連結ゴム76を挟んだ両側が相互に連通されている。また、弾性連結ゴム76の外周縁部に大径筒状の外周固定部材80が加硫接着されていると共に、内周縁部に小径の略円形ブロック形状とされて上下に貫通する挿通孔84を備えた内周固定部材82が加硫接着されている。要するに、弾性連結ゴム76は、外周固定部材80と内周固定部材82を備えた一体加硫成形品として形成されている。
そして、外周固定部材80は、後述するストッパ金具94を介して下部カバー86に取り付けられている。下部カバー86は、略有底円筒形状を有しており、開口部付近に設けられた段差部88を挟んで上側部分が下側部分よりも大径とされることで開口部分に円環状のカラー90が形成されている。なお、下部カバー86は、例えば、図示しないブラケットを介してサスペンションメンバ等の制振対象部材に固定されるようになっており、これによって固定子14が制振対象部材に取り付けられるようになっている。
また、下部カバー86のカラー90に対して上部カバー42のかしめ片46が外嵌されて、かしめ片46がかしめ加工でカラー90及び段差部88に嵌着されることにより、上部カバー42と下部カバー86が互いの開口部において相互に突き合わされた状態でかしめ固定されている。これにより、第一,第二の板ばね58,64および弾性連結ゴム76を収容するハウジング92が形成されている。換言すれば、ハウジング92は、上部カバー42と下部カバー86を軸方向で組み合わせた分割構造体とされている。
また、上部カバー42と下部カバー86の連結部分には、ストッパ金具94が固着されている。ストッパ金具94は、略円筒形状を有していると共に、その軸方向上端部には外周側に広がる固定部96が一体形成されている一方、その軸方向下端部には内周側に広がる当接部98が一体形成されている。なお、当接部98には、その全体を覆う緩衝ゴム100が被着形成されている。
そして、ストッパ金具94は、固定部96が下部カバー86の段差部88に重ね合わされて、上部カバー42のかしめ片46でかしめ固定されることにより、ハウジング92に対して組み付けられている。なお、このストッパ金具94の軸方向上側の開口部分に対して外周固定部材80が圧入固定されており、外周固定部材80がストッパ金具94を介してハウジング92に固着されている。
また、ストッパ金具94の固定部96の上には、支持金具102が配設されている。かかる支持金具102は、円環板形状を有しており、内周縁部において僅かに上方に向かって立ち上がる環状突部106を備えている。また、支持金具102の外周面上には、筒状のシールゴム104が被着形成されて、支持金具102よりも下方に突設されている。更に、かかる環状突部106の外面を覆うようにして押圧ゴム108が被着形成されている。更にまた、支持金具102には、周上で適当な位置において下面に開口して径方向に延びる凹溝110が形成されており、この凹溝110に被着形成された接続ゴムによってシールゴム104と押圧ゴム108が接続されて一体形成されている。
そして、支持金具102の外周部分がストッパ金具94の固定部96の上に重ね合わされており、固定部96と共に、ハウジング92を構成する下部カバー86の段差部88と上部カバー42の段差部44との対向面間で挟まれて、上部カバー42のかしめ片46でかしめ固定されている。また、ストッパ金具94および支持金具102の外周側では、上下カバー42,86の各段差部44,88の間でシールゴム104が挟圧されて、かしめ固定部位が封止されている。なお、支持金具102は、周方向で上下に波打つように凹凸が付されており、上方に凸となる部分において下方に開口する凹溝110が形成されていると共に、下方に凸となる部分においてストッパ金具94の固定部96に対してメタルタッチで重ね合わされている。
また、このようにかしめ固定された支持金具102の内周部分は、ストッパ金具94の固定部96から内周側に突出しており、ストッパ金具94に圧入固定された外周固定部材80の上端面を押圧して上方への抜け出しを阻止している。更に、支持金具102の環状突部106は、上部カバー42の下側開口部に臨んで僅かに入り込んでいる。そして、この環状突部106の上端面が、押圧ゴム108を介して、リニアアクチュエータ12の下側挟持部材66に対して、軸方向下方から重ね合わされて押し付けられている。
これにより、固定子14を構成するコイル部材18に対して、上部カバー42からの軸方向下方への抜け出しに対する抵抗力が、支持金具102によって作用せしめられている。また、支持金具102における下側挟持部材66への押圧部位に押圧ゴム108が介在されていることにより、コイル部材18の各構成部品や上部カバー42等の部品公差に起因して下側挟持部材66の軸方向位置が多少異なっても、押圧ゴム108の弾性変形で吸収されて目的とする押圧力が安定して発揮されるようになっている。
一方、内周固定部材82は、ハウジング92内で出力軸54における第二の板ばね64よりも下方に突出した部分に外挿されており、可動子16が弾性連結ゴム76を介して固定子14側に弾性的に連結されている。更に、出力軸54の雄ねじ部を含んだ下端部が、内周固定部材82の挿通孔84を貫通して下方に突出している。また、内周固定部材82には、上面に開口する第一の係合凹部114が形成されており、第一の係合凹部114に出力軸54の大径部56が挿入されていると共に、第一の係合凹部114の底壁部を貫通するように形成された挿通孔84を通じて出力軸54が下方に突出している。
このような内周固定部材82の出力軸54への装着状態において、それら出力軸54と内周固定部材82の間には、係合部116が設けられている。より詳細には、出力軸54の大径部56の外周面に二面幅118が設けられていると共に、内周固定部材82の第一の係合凹部114の内周面に二面幅118と対応する二面幅120が設けられている。そして、大径部56が第一の係合凹部114に挿入されることによって、それら二面幅118,120が周方向で位置決めされて互いに重ね合わされている。これにより、出力軸54と内周固定部材82の中心軸回りでの相対回転を制限して周方向で相対的に位置決めする係合部116が、二面幅118,120の係止によって構成されている。なお、本実施形態では、二面幅118を形成された大径部56の下部によって、第一の係合凸部が一体的に設けられている。
また、内周固定部材82の下方には、付加質量体としての追加マス122が配設されている。この追加マス122は、薄肉の略円板形状とされた第一の付加質量体としての第一のマス部材124と、厚肉の略円板形状とされた第二の付加質量体としての第二のマス部材126を、軸方向上下に組み合わせた分割構造体となっている。そして、出力軸54における内周固定部材82よりも下方に突出した部分が、追加マス122の径方向中央を上下に貫通する挿通孔128に挿入されており、追加マス122が、出力軸54に取り付けられていると共に、内周固定部材82に対して下方から重ね合わされている。更に、出力軸54の下端に設けられた雄ねじ部は、追加マス122を貫通して下方に突出している。このことからも明らかなように、追加マス122は、出力軸54における内周固定部材82の装着部分と、後述するナット150の締結部分との軸方向間に装着されており、かかる追加マス122の装着部位が本実施形態における質量体固定部とされている。
なお、第二のマス部材126は、段差面130を挟んで上側が第一のマス部材124よりも小径となっており、第一のマス部材124と第二のマス部材126の段差面130との対向面間には、外周面に開口して周方向に延びる凹部132が形成されている。そして、追加マス122の出力軸54への装着状態において、追加マス122の凹部132にストッパ金具94の当接部98が挿し入れられており、凹部132の内面との間に所定の隙間が形成された状態で、凹部132の内面に対して軸方向および軸直角方向で対向せしめられている。これにより、ハウジング92やそれに固定された固定子14等に対して追加マス122が相対的に大きく変位せしめられた際、追加マス122の凹部132の内面に対して、ストッパ金具94の当接部98が緩衝ゴム100を介して打ち当たって、追加マス122の変位量を緩衝的に制限するストッパ機構が構成されている。
また、追加マス122の出力軸54への装着状態において、内周固定部材82と追加マス122の間には、位置決め手段134が設けられている。即ち、内周固定部材82には、下方に向かって突出する第二の係合凸部136が形成されており、第二の係合凸部136の外周面に二面幅138が形成されている。また、第一のマス部材124に貫通形成された係合孔133の下側開口が第二のマス部材126で覆われることによって、追加マス122には上面に開口する第二の係合凹部140が形成されており、第二の係合凹部140の内周面に二面幅142が形成されている。そして、内周固定部材82の第二の係合凸部136が追加マス122の第二の係合凹部140に挿入されており、第二の係合凸部136の二面幅138と第二の係合凹部140の二面幅142が周方向で位置決めされて重ね合わされて係止されている。
これにより、内周固定部材82と追加マス122の中心軸回りでの相対回転を制限して周方向で相対的に位置決めする位置決め手段134が、二面幅138,142の係止によって構成されている。なお、このことからも明らかなように、本実施形態では、第二の係合凸部136によって位置決め部が構成されていると共に、追加マス122が内周固定部材82に係止される他部材とされている。
また、第一のマス部材124と第二のマス部材126の間には、回転制限部144が設けられている。即ち、第一のマス部材124には、小径の略円柱形状で下方に向かって突出する第三の係合凸部146,146が、係合孔133(第一の係合凹部114)を外周側に外れた径方向の中間部分において形成されている。また、第二のマス部材126には、第三の係合凸部146,146に対応する位置において上面に開口する略円柱形状の第三の係合凹部148,148が形成されている。そして、第一のマス部材124と第二のマス部材126が上下に重ね合わされる際に、第一のマス部材124の第三の係合凸部146が第二のマス部材126の第三の係合凹部148に挿入される。これにより、第一のマス部材124と第二のマス部材126の中心軸回りでの相対回転を制限して周方向で相対的に位置決めする回転制限部144が、第三の係合凸部146と第三の係合凹部148の周方向での係止によって構成されている。なお、本実施形態の第三の係合凸部146および第三の係合凹部148は、挿通孔128を径方向一方向で挟んだ両側に形成されているが、周上に各1つだけが形成されていても良いし、各3つ以上が形成されていても良い。
また、内周固定部材82と追加マス122は、出力軸54に対してナット150で固定されている。即ち、ナット150は、追加マス122よりも下方に突出してねじ山を形成された出力軸54の下端部(雄ねじ部)に螺着されており、内周固定部材82と追加マス122が、ナット150の締付けによって出力軸54の大径部56とナット150との軸方向間で挟持されて、出力軸54に固定されている。また、第二のマス部材126には、径方向中央部分において下方に開口する収容凹所152が形成されており、収容凹所152の底壁部に挿通孔128が開口している。そして、出力軸54の雄ねじ部とそこに螺着されたナット150が、何れも、第二のマス部材126の下面よりも下方に突出することなく収容凹所152内に収容されている。
このような構造とされた能動型制振器10では、コイル20a,20bへの通電によって、内周固定部材82および追加マス122が出力軸54を介してリニアアクチュエータ12で加振されることにより、能動的な制振作用がハウジング92を介して制振対象部材に及ぼされるようになっている。
なお、能動型制振器10は、例えば、以下のような工程によって製造される。
すなわち、先ず、外周固定部材80と内周固定部材82を備えた弾性連結ゴム76の一体加硫成形品と、ストッパ金具94を備えた緩衝ゴム100の一体加硫成形品と、支持金具102を備えたシールゴム104と接続ゴムと押圧ゴム108との一体加硫成形品とを、それぞれ加硫成形して準備する。一方、第一のマス部材124と第二のマス部材126を予め準備する。
次に、準備した支持金具102と、内周固定部材82と、第一のマス部材124と、ストッパ金具94と、第二のマス部材126とを、予め準備したリニアアクチュエータ12の出力軸54に対して上記の順番で外挿する。より詳細には、先ず、支持金具102を出力軸54に外挿した後、図3に示されているように、内周固定部材82を出力軸54に外挿する。その後、内周固定部材82に対して第一のマス部材124を下方から重ね合わせて、内周固定部材82の第二の係合凸部136を第一のマス部材124の係合孔133に挿入する。次に、ストッパ金具94を、出力軸に外挿すると共に外周固定部材80に圧入固定して、ストッパ金具94の当接部98を第一のマス部材124に対して下方に所定距離を隔てた位置に配置する。最後に、第二のマス部材126を出力軸54に外挿して、図4に示されているように、第一のマス部材124と第二のマス部材126を上下に重ね合わせ、第一のマス部材124の第三の係合凸部146を第二のマス部材126の第三の係合凹部148に挿入する。
尤も、ストッパ金具94は組付け後に下端部を内周側に折り曲げて当接部98を後形成しても良く、この場合には、ストッパ金具94を、予め外周固定部材80に外嵌しておいても良いし、第一のマス部材124の装着後に組み付けても良い。なお、この工程では、かしめ片46によるかしめ固定は実施されておらず、外周固定部材80が上部カバー42に対する周方向への相対回転を許容された仮組み状態となっている。
その後、出力軸54にナット150を螺着して、内周固定部材82と追加マス122を出力軸54に固定し、可動子16側に取り付ける。そこにおいて、第二のマス部材126には、収容凹所152を外れた径方向中間部分において下方に開口する保持凹部154が形成されている。そして、図6に示されているように、この保持凹部154に対して、位置決め用のジグ156を挿入して、第二のマス部材126に回転阻止力を及ぼしながら、締結用の工具158によってナット150を締め付ける。これにより、第二のマス部材126に対する相対回転を係合部116と位置決め手段134と回転制限部144とによって阻止された出力軸54が、ナット150の回転に対する連れ回りを阻止される。その結果、ナット150の締結時に出力軸54に及ぼされるナット150の締付力に対して、充分な反力がジグ156と保持凹部154の係止によって発揮される。
また、ナット150を出力軸54に締め付ける際、弾性連結ゴム76の外周面に固着された外周固定部材80は、周方向への回転を許容されている。これにより、第二の係合凸部136と第二の係合凹部140の間に部品公差等によるサイズ差があって、ナット150のトルクによって内周固定部材82が追加マス122に対して僅かに相対回転する場合にも、外周固定部材80が内周固定部材82と略同量だけ回転することで、弾性連結ゴム76の歪みが防止されるようになっている。
最後に、第二のマス部材126からジグ156と工具158を取り外した後、予め準備した下部カバー86を上部カバー42にかしめ固定する。その際、ストッパ金具94と支持金具102を同時にかしめ固定することで、弾性連結ゴム76の外周側を固定子14側に取り付ける。これにより、本実施形態に係る能動型制振器10の製造工程を完了する。
このような本実施形態に従う構造の能動型制振器10では、出力軸54におけるナット150の螺着部分と、ジグ156による出力軸54の支持部分が、何れもリニアアクチュエータ12よりも下側に位置している。これにより、ナット150の出力軸54に対する締付けと、ジグ156による出力軸54の支持が、何れも軸方向の同じ側(図1,図6中の下方)からの作業によって実現される。それ故、蓋部材68によって上部カバー42の上側開口部が閉塞されたリニアアクチュエータ12においても、ナット150の締付反力を有効に且つ容易に得ることができる。
また、出力軸54は、追加マス122と内周固定部材82を介して、ジグ156で周方向に位置決めされている。即ち、先ず、ジグ156が追加マス122の保持凹部154に挿入されて追加マス122の回転が制限されている。次に、内周固定部材82が、追加マス122と内周固定部材82の間に設けられた位置決め手段134によって、追加マス122に対する相対回転を阻止されている。最後に、出力軸54が、係合部116によって、内周固定部材82に対する相対回転を阻止されている。これらによって、結果的に出力軸54の中心軸回りでの回転がジグ156によって阻止されて、ナット150の締付反力が出力軸54に及ぼされるようになっている。それ故、ロッド状の出力軸54を直接的にジグで支持する場合に比べて、簡易な構造のジグ156によって出力軸54の回転を容易に且つ安定して阻止することができる。
しかも、第二のマス部材126には出力軸54を外周側に外れた位置に保持凹部154が形成されており、出力軸54の回転中心(中心軸)から大きく外れた位置でジグ156による回転阻止力が作用するようになっている。それ故、ジグ156による回転阻止力が効率的に発揮されて、目的とする締付反力が出力軸54に対して有効に及ぼされる。
また、係合部116は、第一の係合凸部(大径部56)の二面幅118と、第一の係合凹部114の二面幅120が、重ね合わされることによって構成されている。それ故、係合部116を簡単に形成することができると共に、二面幅118,120の係合を利用することで出力軸54と内周固定部材82の相対回転が安定して防止される。しかも、出力軸54には、大径部56が設けられており、二面幅118が大径部56に形成されている。それ故、二面幅118の周方向での長さを大きく確保することができて、二面幅118の二面幅120に対する係合で発揮される回転阻止力を効率的に得ることができる。
さらに、位置決め手段134は、第二の係合凸部136の二面幅138と、第二の係合凹部140の二面幅142が、重ね合わされることによって構成されている。それ故、位置決め手段134も係合部116と同様に容易に形成することが可能であると共に、二面幅138,142の係止によって内周固定部材82と追加マス122の相対回転が安定して防止される。しかも、それら内周固定部材82と追加マス122は、何れも出力軸54に比して充分に大径の部材であり、二面幅138,142の周方向での長さをより大きく確保することが可能である。それ故、二面幅138,142の係止による回転阻止力が効率的に発揮される。
更にまた、回転制限部144は、第三の係合凸部146,146が第三の係合凹部148,148に挿入されて、周方向で係合されることによって構成されている。それ故、簡単な構造によって第一のマス部材124と第二のマス部材126の相対回転を確実に防ぐことができて、ジグ156から第二のマス部材126に及ぼされた回転阻止力を第一のマス部材124から内周固定部材82に効率的に伝達することができる。しかも、第三の係合凸部146,146と第三の係合凹部148,148は、大径とされた追加マス122の径方向中間部分に設けられており、出力軸54の回転中心から外周側に大きく外れている。それ故、第三の係合凸部146,146と第三の係合凹部148,148の係合によって発揮される回転阻止力を効率的に得ることができて、第一のマス部材124と第二のマス部材126の相対回転を効果的に防ぐことができる。
また、出力軸54の雄ねじ部とそこに螺着されたナット150が、第二のマス部材126の下面に開口する収容凹所152に収容されている。それ故、第二のマス部材126と下部カバー86の底部との対向面間距離を小さく設定することができて、ハウジング92の軸方向での小型化や、第二のマス部材126の質量の効率的な確保を実現することができる。しかも、出力軸54の回転止めが、ナット150を外周側に外れた位置に設けられていることから、狭い収容凹所152内にナット150を締め付ける場合にも、ナット150の締付反力を問題なく得ることができる。
また、追加マス122が第一のマス部材124と第二のマス部材126を組み合わせた分割構造体となっていることにより、それら第一のマス部材124と第二のマス部材126の間に形成された凹部132を利用してストッパ機構を構成することができる。しかも、ストッパ機構を構成すること等を目的として追加マスを分割構造体とした場合にも、第一のマス部材124と第二のマス部材126の間に回転制限部144を設けることで、周方向で実質的に一体とされた追加マス122を実現することができる。
次に、図7には、本発明の第二の実施形態としての能動型制振器160が示されている。なお、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
すなわち、能動型制振器160は、リニアアクチュエータ12を有していると共に、リニアアクチュエータ12の可動子16に取り付けられた出力軸54が、弾性連結ゴム76によって固定子14に対して弾性連結されている。また、弾性連結ゴム76は、図8に示されているように、外周固定部材162と内周固定部材82とを備えた一体加硫成形品として形成されており、外周固定部材162がハウジング92に固定されていると共に、内周固定部材82がリニアアクチュエータ12の出力軸54の下端に外挿されている。また、能動型制振器160は、図7に示されているように、第一の実施形態の能動型制振器10からストッパ金具94と支持金具102を省略した構造となっており、外周固定部材162がストッパ金具94を介することなく、上部カバー42と下部カバー86の連結部分に対して直接的に挟み込まれてかしめ固定されている。なお、本実施形態のリニアアクチュエータ12では、上側挟持部材164が下側挟持部材66と同様のリング状とされており、上側挟持部材164の上方への抜けが第一の実施形態と同様に上部カバー42に形成された切起部61によって防止されている。また、外周固定部材162は、図7に示されているように、上端において外周側に延び出すフランジ部166を有しており、フランジ部166が上部カバー42にかしめ固定されるようになっている。更に、このフランジ部166には、弾性連結ゴム76と一体形成されたシールゴム104が被着形成されており、上部カバー42と下部カバー86の連結部位に挟み込まれることで、それら上下カバー42,86の連結部位が封止されるようになっている。
また、出力軸54の内周固定部材82よりも下方に突出した部分には、追加マス168が取り付けられている。追加マス168は、図9に示されているように、厚肉大径の略円形ブロック形状を有しており、径方向中央部分には厚さ方向に貫通する挿通孔128が形成されている。更に、追加マス168の径方向中央部分には上面に開口する第二の係合凹部140が形成されており、その内周面に二面幅142が形成されている。更にまた、追加マス168の径方向中央部分には、下面に開口する収容凹所152が形成されており、収容凹所152の上底壁部に挿通孔128が開口している。そして、追加マス168は、挿通孔128に出力軸54が挿通されて、ナット150が出力軸54に螺着されることにより、内周固定部材82とナット150の間に挟み込まれて出力軸54に固定されている。また、追加マス168の装着状態において、第二の係合凹部140に内周固定部材82の第二の係合凸部136が挿入されて、二面幅138,142によって位置決め手段134が構成されている。なお、図7からも明らかなように、本実施形態の追加マス168は、単体で形成されており、分割構造とはなっていない。
また、追加マス168の外周面は、図10に示されているように、周上の複数箇所で部分的に略平面となっており、その平面部分によって二組の二面幅170,170が形成されている。更に、追加マス168には、略筒状とされた薄肉の緩衝ゴム172が装着されており、外周面と軸方向端面の外周縁部が緩衝ゴム172で被覆されている。この緩衝ゴム172は、二面幅170,170に重ね合わされる部分が他の部分よりも厚肉となっており、内周面が追加マス168の外周面に対応する二面幅を有する形状となっていると共に、外周面が略円筒形状となっている。なお、本実施形態のストッパ機構は、追加マス168の外周縁部が、外周固定部材162或いは下部カバー86に対して、緩衝ゴム172を介して当接することで構成されている。
このような構造を有する能動型制振器160においても、第一の実施形態の能動型制振器10と同様に、出力軸54の大径部56と内周固定部材82の間で二面幅118,120による係合部116が構成されていると共に、内周固定部材82と追加マス168の間で二面幅138,142による位置決め手段134が構成されている。そして、係合部116によって出力軸54と内周固定部材82の中心軸周りでの相対回転が制限されていると共に、位置決め手段134によって内周固定部材82と追加マス168の相対回転が制限されている。その結果、図11に示されているように、追加マス168の外周面をジグ156によって保持しながら締結用の工具158でナット150を締め付けることにより、第一の実施形態と同様にジグ156によって追加マス168に及ぼされる回転阻止力が出力軸54に伝達されて、ナット150の締め付けに対する反力が及ぼされるようになっている。
さらに、追加マス168の外周面を支持するジグ156は、下方から挿し入れられて追加マス168の二面幅170を挟持するようになっていることから、第一の実施形態と同様に、ナット150の締付け作業を行う側と同じ軸方向下側から、出力軸54に締付反力を及ぼすことができる。
さらに、図11に示されているように、ナット150の締め付け時には、外周固定部材162がハウジング92に対して固定されておらず、自由に回転可能となっている。それ故、第二の係合凸部136と第二の係合凹部140の寸法差等によって内周固定部材82が僅かに回転する場合にも、外周固定部材162が内周固定部材82と等量だけ回転することで、弾性連結ゴム76に初期応力が及ぼされるのを防ぐことができる。
また、図12には、本発明の第三の実施形態としての能動型制振器180が示されている。能動型制振器180では、図12から明らかなように、第二の実施形態の能動型制振器180から追加マス168が取り除かれていると共に、第一,第二の実施形態とは異なる構造の内周固定部材182が採用されている。なお、図12〜図14の理解を容易とするために、第一,第二の実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に同一の符号を付す。
より詳細には、内周固定部材182は、図12〜図14に示されているように、下向きの略有底円筒形状とされており、下方に開口する収容凹所184を有している。また、内周固定部材182の上底壁部には、第二の係合凹部140が形成されて、上方に向かって開口している。
さらに、内周固定部材182の周壁部には、係止部としての複数の保持凹溝186が形成されている。保持凹溝186は、収容凹所184よりも外周側に形成されて、内周固定部材182の周壁部の下面に開口しており、周壁部を径方向に貫通している。なお、保持凹溝186の形成部分では、弾性連結ゴム76の内周固定部材182への固着部分に切欠き188が形成されており、保持凹溝186の形成部分において内周固定部材182の周壁部が切欠き188を通じて外部に露出している。この切欠き188は、図12に示されているように、保持凹溝186よりも一回り大きく、保持凹溝186の外周側の開口が弾性連結ゴム76で覆われないようになっている。
そして、出力軸54へのナット150の締結時には、図15に示されているように、保持凹溝186にジグ156を挿入することで内周固定部材182の回転を阻止する。これにより、係合部116によって内周固定部材182に対する相対回転を阻止された出力軸54が、中心軸周りでナット150に対して連れ回りするのを防止することができる。
このように、ナット150の締め付けに際して、出力軸54の連れ回りを防止することができれば、追加マスを介することなく内周固定部材182を直接的に位置決めしても良く、第一,第二の実施形態と同様に、ナット150の締付反力を有効に得ることができる。要するに、追加マスの有無は、要求される制振性能等に応じて選択されるものであって、追加マスの有無に拘らず、本発明を能動型制振器に適用することができる。
また、出力軸54の下端に設けられた雄ねじ部と、そこに螺着されたナット150は、何れも内周固定部材182の収容凹所184に収容されており、内周固定部材182よりも下方への突出が回避されている。これにより、前記第一,第二の実施形態と同様に、ハウジング92の軸方向での大型化が回避されている。
なお、本実施形態では、内周固定部材182との係止によって内周固定部材182を周方向で位置決めする他部材が、ジグ156とされている。また、内周固定部材182を支持する本実施形態の製造方法においても、外周固定部材162は中心軸周りでの回転を許容されており、ナット150の締結トルクによる弾性連結ゴム76の歪みが回避されている。
また、図16には、本発明の第四の実施形態としての能動型制振器190が示されている。能動型制振器190は、リニアアクチュエータ192を有していると共に、リニアアクチュエータ192を除く部分が第一の実施形態の能動型制振器10と略同一の構造となっている。なお、図16の理解を容易にするために、第一の実施形態の能動型制振器10と実質的に同一の部材および部位には、図中に同一の符号を付す。
より詳細には、リニアアクチュエータ192は、固定子194と可動子196を有している。固定子194は、コイル20をボビン198に巻回してなるアウタ筒部としてのコイル部材200を備えている。ボビン198は、非磁性材料(硬質の合成樹脂等)で形成された部材であって、全体として略円筒形状を有している。また、ボビン198の下端部には、フランジ状の支持部202が一体形成されており、支持部202が上部カバー204に嵌め込まれることで、固定子194がハウジング206によって支持されている。
上部カバー204は、逆向きの略有底円筒形状を有していると共に、上底壁部が上方に向かって凸となるように突出している。また、上部カバー204の開口周縁部には、第一の実施形態と同様に、かしめ片46が一体形成されており、かしめ片46で下部カバー86のカラー90および段差部88がかしめ固定されることにより、上部カバー204が下部カバー86に固定されて、制振対象部材に取り付けられるハウジング206が形成される。そして、上述のように、固定子194がハウジング206に対して固定されることにより、固定子194が間接的に制振対象部材に取り付けられている。
一方、可動子196は、磁石208に対して磁路を形成する上ヨーク金具210と下ヨーク金具212を組み付けた構造を有している。磁石208は、略円環形状を有しており、軸方向両端部に磁極が形成されるように着磁されている。上ヨーク金具210は、鉄等の強磁性材料で形成された部材であって、逆向きの略有底円筒形状を有すると共に、径方向中央部分には上底壁部を貫通する挿通孔が形成されている。下ヨーク金具212は、上ヨーク金具210と同様の強磁性材料で形成されており、略円環板形状であって、外周部分が外周側に向かって次第に薄肉となっている。そして、上ヨーク金具210の上底壁部が磁石208の上面に重ね合わされていると共に、下ヨーク金具212が磁石208の下面に重ね合わされている。これにより、上ヨーク金具210における周壁部の下端部が下ヨーク金具212の外周側に所定距離を隔てて配置されており、それら上ヨーク金具210と下ヨーク金具212の径方向間に径方向の磁界が形成されている。
また、磁石208およびヨーク金具210,212の径方向中央には、インナ軸部を構成する出力軸214が挿通されている。出力軸214は、略ロッド形状であって、両端部にねじ山が形成されている。また、出力軸214の軸方向中間部には、二面幅が設けられており、かかる軸方向中間部分に磁石208およびヨーク金具210,212が外挿されることによって、それら磁石208およびヨーク金具210,212の出力軸214に対する軸方向取付位置が規定されると共に、周方向への回転が防止される。更に、磁石208およびヨーク金具210,212の出力軸214への外挿後に、出力軸214の上端部に保持金具62を螺着することにより、それら磁石208およびヨーク金具210,212が相互に締結される。
そして、出力軸214の軸方向両側が、第一,第二の板ばね58,64によって上部カバー204に対して弾性的に連結されることにより、出力軸214を含む可動子196が、上部カバー204および固定子194に対して、軸方向での微小変位を許容された態様で弾性的に連結されている。また、固定子194のコイル20が、可動子196の上ヨーク金具210と下ヨーク金具212の径方向間に差し込まれて、それらに対して所定距離を隔てて配されている。
なお、本実施形態において、第一の板ばね58は、その中央部分が出力軸214に対して保持金具62で固定されていると共に、その外周縁部が上部カバー204の上底壁部と上部カバー204に嵌め込まれた環状の上側挟持部材216とによって挟持されている。一方、第二の板ばね64は、その中央部分が出力軸214に外嵌されて、保持金具62による締結力を利用して出力軸214と内周固定部材82の軸方向間で挟持されていると共に、外周縁部が上部カバー204に圧入固定された円環板形状の下側挟持部材66とボビン198との間で挟持されている。
このようにして、外部からの通電によって単体での作動を可能とされたリニアアクチュエータ192が実現される。リニアアクチュエータ192では、外部電源からコイル20に通電されると、磁石208およびヨーク金具210,212によって形成された磁界の中を電流が流れて、可動子196を固定子194に対して軸方向に加振変位させる加振力が発生する。
そして、リニアアクチュエータ192の出力軸214に対して、第二の板ばね64よりも下方で大径部56が設けられており、第一の実施形態と同様に、大径部56の外周面に形成された二面幅118が内周固定部材82の二面幅120と係止されていると共に、内周固定部材82の二面幅138が追加マス122の二面幅142に係止されている。なお、本実施形態の大径部56は、出力軸214とは別体で形成されて、第二の板ばね64の出力軸214への外挿後に、出力軸214に外挿されて溶接や圧入等の手段で固定されている。
かくの如き構造のリニアアクチュエータ192を採用した能動型制振器190においても、第一の実施形態の能動型制振器10と同様の優れた効果が実現される。要するに、能動型制振器を構成するリニアアクチュエータの構造は、特に限定されるものではなく、各種公知の構造のリニアアクチュエータが適当に選択されて採用され得る。なお、本実施形態に示されたリニアアクチュエータ192を、第二の実施形態の能動型制振器160や第三の実施形態の能動型制振器180のリニアアクチュエータに代えて採用することも、勿論可能である。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記第一〜第三の実施形態では、係合部116として、二面幅118,120の係止を利用する構造が例示されているが、係合部の構造は前記実施形態に記載のものに限定されない。具体的には、例えば、出力軸54側に大径部56の下端面から突出するピンを形成すると共に、内周固定部材82(182)側に第一の係合凹部114の底面に開口する穴を形成して、ピンを穴に挿入することで係合手段が構成されていても良い。同様に、ピンを穴に挿入することで周方向に係合させた構造によって位置決め部を構成することもできる。一方、第一の実施形態では、第三の係合凸部146を第三の係合凹部148に挿入することで回転制限部144が形成されているが、回転制限部は、例えば、第一のマス部材124と第二のマス部材126の重ね合わせ面間に形成された二面幅によって構成されていても良い。
また、出力軸54の大径部56は、必ずしも一体形成されているものに限定されない。具体的には、例えば、略筒状乃至は環状の大径部を出力軸とは別体で形成して、略ロッド形状の出力軸に外挿して所定の位置に位置決めした後、溶接や接着等の手段で固定した構造も採用され得る。なお、このような別体の大径部を採用すれば、保持金具を出力軸と別体のナット状とする必要はなく、保持金具がボルトの頭部のように出力軸に一体形成されていても良い。
また、前記実施形態では、出力軸54とコイル部材18が第一,第二の板ばね58,64で弾性的に連結されることによって、軸直角方向で相対的に位置決めされた状態で軸方向への相対変位を許容されており、それら第一,第二の板ばね58,64によって軸受部材が構成されている。しかし、軸受部材は、板ばねに限定されるものではなく、例えば、滑り軸受や転がり軸受,摺動ブッシュ等を軸受部材として採用することもできる。