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JP2011516071A - シス作用性多様化活性化因子および核酸の選択的多様化のための方法 - Google Patents

シス作用性多様化活性化因子および核酸の選択的多様化のための方法 Download PDF

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JP2011516071A JP2011503389A JP2011503389A JP2011516071A JP 2011516071 A JP2011516071 A JP 2011516071A JP 2011503389 A JP2011503389 A JP 2011503389A JP 2011503389 A JP2011503389 A JP 2011503389A JP 2011516071 A JP2011516071 A JP 2011516071A
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ジャン−マリー ビュールシュテッデ,
ランドルフ ベー. カルドウェル,
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ヘルムホルツ ツェントゥルム ミュンヘン ドイチェス フォルシュングスツェントゥルム フューア ゲズントハイト ウント ウムヴェルト (ゲーエムベーハー)
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Abstract

本発明は、自身に連結した転写ユニットにおける多様化の活性化に必要かつ十分である、シス作用性多様化活性化因子(DIVAC)の同定に関連する。本発明は、多様化活性化因子を含む遺伝的構築物を、レシピエント細胞へ導入することを含む、標的核酸の多様化の方法を提供し、ここでその多様化活性化因子は、標的核酸に連結している。本発明は、本発明の多様化活性化因子を含む遺伝的構築物を、レシピエント細胞へ導入して、組換えレシピエント細胞を産生することを含む、標的核酸の多様化の方法を提供し、ここで当該多様化活性化因子は、その標的核酸に連結している。

Description

本発明は、連結した転写ユニットにおける遺伝的多様化を活性化する、免疫グロブリン遺伝子座由来の調節性配列を採用することによる、組換えレシピエント細胞における標的核酸配列の選択的多様化の方法に関連する。
(序論)
変異遺伝子および配列が最適化された遺伝子ならびにそれらの遺伝子産物は、医学、化学、および技術的領域において、広範な適用を有する。遺伝子および遺伝子産物の多様化のための今日の戦略は、主に、インビトロにおける多数の変異配列の産生、人工的発現および続く望ましい性質に関する選択に頼る。これらの方法は、変異遺伝子は生理学的状況において発現するのが困難であり、そしてその変異レパートリーは、それらが発現するときまでに固定されるという欠点を有する。他方、ゲノム全体での変異生成が生きた細胞で誘導される場合、これは偶発的な致死的変異による高い毒性を伴い、かつ、個々の遺伝子における変異率は低い、すなわち、その変異生成は選択性を欠く。
よって、生きた細胞内で遺伝子座特異的核酸多様化を可能にする遺伝的システムを提供することが試みられた。天然において、指向的かつ選択的な多様化は、主に免疫グロブリン遺伝子内の多様性を産生するために使用される。従って、脊椎動物B細胞は、高頻度変異、遺伝子転換、およびクラススイッチ組換えによって、再編成された免疫グロブリン(Ig)遺伝子を多様化し得る。3つの現象は全て、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID、NC_006088)[Miramatsuら、2000;Arakawaら、2002;Harrisら、2002]の発現を必要とし、これはおそらく、変異導入する配列内および組換える配列内でシチジンを脱アミノ化することによって、Ig遺伝子の多様化を開始する[Di NoiaおよびNeuberger、2002;Radaら、2004]。高頻度変異およびスイッチ組換えのさらなる必要条件は、Ig遺伝子およびスイッチ領域それぞれの転写である[PetersおよびStorb、1996;Shinkuraら、2003]。
例えば、E2A転写因子遺伝子の不活性化が、表面IgまたはAID発現のレベルに影響を与えずにIgL鎖の変異率を抑制することも観察され、このことは、E2Aコード化タンパク質は、AIDをIg遺伝子座へリクルートすることによって、Ig高頻度変異を増強することを示唆する[Schoetzら、2006]。
AIDを発現するB細胞由来の転写された非Ig遺伝子の配列分析は、Ig遺伝子と比較して、変異が全く無いかまたは非常に少数の変異しかないことを明らかにした[Shenら、1998]。B細胞における多数の発現遺伝子の最近の研究は、野生型マウスにおける変異の数は、AIDノックアウトマウスにおける変異の数よりも有意に多いことを示した[Liuら、2008]。しかし、AID発現B細胞における非Ig遺伝子の変異率は、依然としてIg遺伝子のものより数桁低かった。このIg遺伝子と非Ig遺伝子との間の差を説明するために、Ig遺伝子座のシス作用性配列が、おそらくAIDをリクルートすることによって、高頻度変異を活性化していると示唆された。しかし、マウスおよびヒトIg遺伝子座について、これらの配列を明確に定義するための努力は成功しなかった[OdegardおよびSchatz、2006]。トランスジェニックマウスにおけるキメラリポーター遺伝子を用いた研究は、あるIgエンハンサーおよびその周囲の配列が、高頻度変異活性を与えることを示した[Betzら、1994;KlotzおよびStorb、1996;Klixら、1998]。しかし、ノックアウトマウスにおけるIgkエンハンサーの欠失は、Igk遺伝子(CAA36032)の高頻度変異を防がなかった[van der Stoepら、1998;Inlay、2006]。少なくとも、1つのマウスB細胞株[Wangら、2004]およびAID発現線維芽細胞[Yoshikawaら、2002]は、付近にIg遺伝子座配列が存在しないときに、転写される導入遺伝子を変異させ、このことは、シス作用性調節性配列が高頻度変異のために必要かどうかという問題をさらに混乱させた。
以前に、発明者らは、ニワトリB細胞株DT40が、付近に偽V(ψV)遺伝子が存在するときは遺伝子変換によって[Arakawaら、2002]、またはψV遺伝子が欠失している場合は高頻度変異によって[Arakawaら、2004;特許文献1]、その再編成されたIg軽鎖(IgL)遺伝子を多様化することを示した。両方の活性は、AIDの発現に厳密に依存する。続いて、発明者らは、緑色蛍光タンパク質(GFP、AAB08058)導入遺伝子が、再編成されたIgL遺伝子座に挿入された場合、変異によって迅速に多様化されることを示し[Arakawaら、2008]、このことは、相同的遺伝子変換ドナーの欠失は、IgL遺伝子の高頻度変異を引き起こすという最初の発見[Arakawaら、2004]と一致していた。同時に、高度に転写された伸長因子1アルファ遺伝子(NP_989488)において変異は見出されず[Arakawaら、2004]、このことは、高頻度変異は、IgL遺伝子座内でのみ起こることを示した。それぞれIgL遺伝子座の上流および下流の近傍である、VpreB3(NC_006102)遺伝子または炭酸脱水酵素(XP_415218)遺伝子も、DT40において配列不均一性を示さなかった[GopalおよびFugmann、2008]。エンハンサー領域の下流の、再編成されたIgL遺伝子座の4.1kbの欠失が、ψV陽性DT40におけるIgL遺伝子の変換を停止させることが観察され[Kothapalliら、2008]、このことは、IgL遺伝子座の一部が遺伝子変換のために必要であることを示した。しかし、この研究において使用された技術を、小さな特異的多様化活性配列の正確な同定のために使用することはできなかった。さらに、推定多様化配列が、多様化の活性化のために十分であるかどうかという問いも解決できなかった。
このように、ヒト、マウス、またはDT40細胞のいずれかにおける公知の研究は、AID依存性遺伝的多様化のIg遺伝子座特異性のために必要かつ十分であるシス作用性調節性配列を明らかにしなかった。そのような配列は、AID発現細胞において、Ig遺伝子座の外で、核酸標的配列の多様性が生じることを可能にする。
国際公開第2005/080552号
従って、自身に連結した核酸において多様化を活性化する調節性配列、および標的核酸の特異的多様化を達成するための方法に関するニーズが存在する。本発明はそのニーズを満たし、そしてさらなる利点も提供する。
(発明の概要)
本発明は、調節性核酸分子、シス作用性多様化活性化因子(cis-acting diversification activator(DIVAC))を利用可能にし、DIVACはそれに連結した転写ユニットにおける多様化を活性化する機能を有する。本発明の多様化活性化因子は、ニワトリB細胞の免疫グロブリン(Ig)遺伝子座由来であり、そして配列番号第1番の配列を有する核酸、当該核酸の断片、または配列番号第1番もしくはその断片に相同的な核酸を含み、それによって当該断片および当該ホモログはDIVAC機能を保持する。
よって、本発明は、本発明の多様化活性化因子を含む遺伝的構築物を、レシピエント細胞へ導入して、組換えレシピエント細胞を産生することを含む、標的核酸の多様化の方法を提供し、ここで当該多様化活性化因子は、その標的核酸に連結している。
標的核酸を導入遺伝子として外部からレシピエント細胞へ供給し得、または、標的核酸はレシピエント細胞ゲノムの一部であり得る。それぞれの場合において、標的核酸はDIVACに連結していることが確保され、すなわちDIVACは、標的核酸の多様化を活性化および指示する。
本発明はさらに、(a)レシピエント細胞に、1回以上、多様化活性化因子、および任意で標的核酸を含む1つ以上の遺伝的構築物をトランスフェクトまたは感染させて組換えレシピエント細胞を得る工程、(b)当該多様化活性化因子が当該標的核酸に連結している、組換えレシピエント細胞を同定する工程、(c)標的核酸の発現および多様化に適当な条件下で、(b)由来の細胞を増殖および増加させる工程、ならびに(d)(c)由来の細胞集団内で、望ましい活性を有する変異標的核酸を含む個々の細胞または細胞集団を選択する工程を含む、望ましい活性を有する標的核酸を産生する方法を提供する。
本発明はさらに、単独で、または標的遺伝子に連結してのいずれかで、本発明の1つ以上の多様化活性化因子を含む組換え核酸構築物を提供する。
免疫グロブリン(Ig)遺伝子座とは異なる位置で、細胞染色体に組み込まれた、本発明の多様化活性化因子を含む組換え細胞がさらに提供される。
図1は、再編成されたIgL遺伝子座から様々な距離にあるGFP2レポーターの高頻度変異を示す。(A)再編成されたIgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、およびGFP2レポーターの標的化挿入後のIgL遺伝子座の物理地図。(B)第15染色体におけるIgL遺伝子座と比較したGFP2挿入の位置。参照ポイントは、IgLGFP2トランスフェクタントにおけるGFP2の挿入部位である。(C)標的化されたトランスフェクト構築物が組み込まれた一次トランスフェクタントのFACS分析。(D)サブクローンの変動分析。各点は、単一のサブクローンの分析を表し、そして同じ一次トランスフェクタント由来の全てのサブクローンの中央値を、線で示す。(E)第15染色体への、IgL遺伝子座から様々な距離における、GFP2を含む構築物の標的化組み込み[22]。(F)A−MYB、RAD52、BACH2およびBc16遺伝子座における、GFP2を含む構築物の標的化組み込み。 図1は、再編成されたIgL遺伝子座から様々な距離にあるGFP2レポーターの高頻度変異を示す。(A)再編成されたIgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、およびGFP2レポーターの標的化挿入後のIgL遺伝子座の物理地図。(B)第15染色体におけるIgL遺伝子座と比較したGFP2挿入の位置。参照ポイントは、IgLGFP2トランスフェクタントにおけるGFP2の挿入部位である。(C)標的化されたトランスフェクト構築物が組み込まれた一次トランスフェクタントのFACS分析。(D)サブクローンの変動分析。各点は、単一のサブクローンの分析を表し、そして同じ一次トランスフェクタント由来の全てのサブクローンの中央値を、線で示す。(E)第15染色体への、IgL遺伝子座から様々な距離における、GFP2を含む構築物の標的化組み込み[22]。(F)A−MYB、RAD52、BACH2およびBc16遺伝子座における、GFP2を含む構築物の標的化組み込み。 図1は、再編成されたIgL遺伝子座から様々な距離にあるGFP2レポーターの高頻度変異を示す。(A)再編成されたIgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、およびGFP2レポーターの標的化挿入後のIgL遺伝子座の物理地図。(B)第15染色体におけるIgL遺伝子座と比較したGFP2挿入の位置。参照ポイントは、IgLGFP2トランスフェクタントにおけるGFP2の挿入部位である。(C)標的化されたトランスフェクト構築物が組み込まれた一次トランスフェクタントのFACS分析。(D)サブクローンの変動分析。各点は、単一のサブクローンの分析を表し、そして同じ一次トランスフェクタント由来の全てのサブクローンの中央値を、線で示す。(E)第15染色体への、IgL遺伝子座から様々な距離における、GFP2を含む構築物の標的化組み込み[22]。(F)A−MYB、RAD52、BACH2およびBc16遺伝子座における、GFP2を含む構築物の標的化組み込み。 図1は、再編成されたIgL遺伝子座から様々な距離にあるGFP2レポーターの高頻度変異を示す。(A)再編成されたIgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、およびGFP2レポーターの標的化挿入後のIgL遺伝子座の物理地図。(B)第15染色体におけるIgL遺伝子座と比較したGFP2挿入の位置。参照ポイントは、IgLGFP2トランスフェクタントにおけるGFP2の挿入部位である。(C)標的化されたトランスフェクト構築物が組み込まれた一次トランスフェクタントのFACS分析。(D)サブクローンの変動分析。各点は、単一のサブクローンの分析を表し、そして同じ一次トランスフェクタント由来の全てのサブクローンの中央値を、線で示す。(E)第15染色体への、IgL遺伝子座から様々な距離における、GFP2を含む構築物の標的化組み込み[22]。(F)A−MYB、RAD52、BACH2およびBc16遺伝子座における、GFP2を含む構築物の標的化組み込み。 図2は、再編成されたIgL遺伝子座の欠失および再構築後のGFP2高頻度変異を示す。(A)GFP2標的化構築物を用いた、再編成IgL遺伝子座における欠失および挿入のデザイン。(上の部分)ψV遺伝子座の欠失後の再編成IgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、および標的化組み込み後の遺伝子座の物理地図。(中央の部分)欠失した再編成IgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、および標的化組み込み後のGFP2挿入部位の物理地図。(下の部分)欠失した再編成IgL遺伝子座、「W」断片と共にGFP2レポーターを含む標的化構築物、および再構成されたIgL遺伝子座におけるGFP2挿入部位の物理地図。(B)一次トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。(D)GFP2のGFPオープンリーディングフレーム内の、特定のヌクレオチド置換の頻度。 図2は、再編成されたIgL遺伝子座の欠失および再構築後のGFP2高頻度変異を示す。(A)GFP2標的化構築物を用いた、再編成IgL遺伝子座における欠失および挿入のデザイン。(上の部分)ψV遺伝子座の欠失後の再編成IgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、および標的化組み込み後の遺伝子座の物理地図。(中央の部分)欠失した再編成IgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、および標的化組み込み後のGFP2挿入部位の物理地図。(下の部分)欠失した再編成IgL遺伝子座、「W」断片と共にGFP2レポーターを含む標的化構築物、および再構成されたIgL遺伝子座におけるGFP2挿入部位の物理地図。(B)一次トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。(D)GFP2のGFPオープンリーディングフレーム内の、特定のヌクレオチド置換の頻度。 図2は、再編成されたIgL遺伝子座の欠失および再構築後のGFP2高頻度変異を示す。(A)GFP2標的化構築物を用いた、再編成IgL遺伝子座における欠失および挿入のデザイン。(上の部分)ψV遺伝子座の欠失後の再編成IgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、および標的化組み込み後の遺伝子座の物理地図。(中央の部分)欠失した再編成IgL遺伝子座、GFP2レポーターを含む標的化構築物、および標的化組み込み後のGFP2挿入部位の物理地図。(下の部分)欠失した再編成IgL遺伝子座、「W」断片と共にGFP2レポーターを含む標的化構築物、および再構成されたIgL遺伝子座におけるGFP2挿入部位の物理地図。(B)一次トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。(D)GFP2のGFPオープンリーディングフレーム内の、特定のヌクレオチド置換の頻度。 図3は、「W」断片欠失シリーズの分析である。(A)欠失したIgL遺伝子座および「W」断片の一部と共にGFP2レポーターの挿入を引き起こす、整列した標的化構築物の物理地図。(B)代表的な一次トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。再構成された断片の文字のみを示し、そしてトランスフェクタントの完全な名前は示さない。 図3は、「W」断片欠失シリーズの分析である。(A)欠失したIgL遺伝子座および「W」断片の一部と共にGFP2レポーターの挿入を引き起こす、整列した標的化構築物の物理地図。(B)代表的な一次トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。再構成された断片の文字のみを示し、そしてトランスフェクタントの完全な名前は示さない。 図3は、「W」断片欠失シリーズの分析である。(A)欠失したIgL遺伝子座および「W」断片の一部と共にGFP2レポーターの挿入を引き起こす、整列した標的化構築物の物理地図。(B)代表的な一次トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。再構成された断片の文字のみを示し、そしてトランスフェクタントの完全な名前は示さない。 図4は、非Ig遺伝子座へのGFP2レポーターの挿入を示す。(A)GFP2挿入の染色体位置。(B)一次トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。 図4は、非Ig遺伝子座へのGFP2レポーターの挿入を示す。(A)GFP2挿入の染色体位置。(B)一次トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。 図4は、非Ig遺伝子座へのGFP2レポーターの挿入を示す。(A)GFP2挿入の染色体位置。(B)一次トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。 図5は、「W」断片の存在下における非Ig遺伝子座におけるGFP2レポーターの高頻度変異を示す。(A)非Ig遺伝子座、「W」断片と共にGFP2レポーターを含む標的化構築物、およびGFP2レポーターの標的化挿入後の遺伝子座の物理地図。(B)一次AID陽性トランスフェクタントおよび一次AID陰性トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。 図5は、「W」断片の存在下における非Ig遺伝子座におけるGFP2レポーターの高頻度変異を示す。(A)非Ig遺伝子座、「W」断片と共にGFP2レポーターを含む標的化構築物、およびGFP2レポーターの標的化挿入後の遺伝子座の物理地図。(B)一次AID陽性トランスフェクタントおよび一次AID陰性トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。 図5は、「W」断片の存在下における非Ig遺伝子座におけるGFP2レポーターの高頻度変異を示す。(A)非Ig遺伝子座、「W」断片と共にGFP2レポーターを含む標的化構築物、およびGFP2レポーターの標的化挿入後の遺伝子座の物理地図。(B)一次AID陽性トランスフェクタントおよび一次AID陰性トランスフェクタントのFACS分析。(C)サブクローンの変動分析。 図6は、1kbずつ徐々に増加する欠失シリーズの「S」(または「0−4」)断片の分析である。その欠失シリーズは、配列の5’末端および3’末端から始まる、1kbずつ徐々に増加する欠失から成る。(A)欠失したIgL遺伝子座および「S」断片の一部と共にGFP2レポーターの挿入を引き起こす、整列した標的化構築物の物理地図。(B)サブクローンの変動分析。 図7は、「0−4」断片200bp欠失シリーズの分析である。その欠失シリーズは、配列の5’末端から始まる連続的な200bpの欠失から成る。(A)推定エンハンサー部位と比較した、200bpの欠失の位置を示す、「0−4」断片の物理地図。(B)サブクローンの変動分析。 図8は、「2−3」断片50bp欠失シリーズの分析である。その欠失シリーズは、配列の5’末端から始まる連続的な50bpの欠失から成る。(A)推定エンハンサー部位と比較した、50bpの欠失の位置を示す、「2−3」断片の物理地図。(B)サブクローンの変動分析。 図9は、「2−3」断片の50bpずつ徐々に増加する5’欠失シリーズの分析である。その欠失シリーズは、配列の5’末端から始まる、50bpずつ徐々に増加する欠失から成る。(A)推定エンハンサー部位と比較した、徐々に増加する50bpの欠失の位置を示す、「2−3」断片の物理地図。(B)サブクローンの変動分析。 図10は、「2−3」断片の50bpずつ徐々に増加する3’欠失シリーズの分析である。その欠失シリーズは、配列の3’末端から始まる、50bpずつ徐々に増加する欠失から成る。(A)推定エンハンサー部位と比較した、徐々に増加する50bpの欠失の位置を示す、「2−3」断片の物理地図。(B)サブクローンの変動分析。 図11は、「2.2−2.4」断片の再構成および多量体化(multimerisation)である。(A)多様化活性化因子として使用される、「2.2−2.4」単量体および多量体を示す物理地図。(B)サブクローンの変動分析。 図12は、BACH2遺伝子座における「2.2−2.4」断片の挿入を示す。(a)BACH2遺伝子座、「2.2−2.4」断片と共にGFP2レポーターを含む標的化構築物、およびGFP2レポーターの標的化挿入後の遺伝子座の物理地図。GFPを矢印で示し、そして「2.2−2.4」断片を灰色の四角で記す。(b)サブクローンの変動分析。再構成断片の文字および位置のみを示し、そしてトランスフェクタントの完全な名前は示さない。各クローンに関するGFP減少の中央値を、線の上に示す。 図13は、七面鳥およびアヒルにおける「2.2−2.4」ホモログの分析である。(A)ニワトリにおける「2.2−2.4」断片、ならびに七面鳥およびアヒルにおけるその相同的対応物の物理地図。白い部分は、種間で保存された配列を示す。黒い線は、種間の配列の差異を示す。灰色の線は、アヒルおよび七面鳥で保存されているが、ニワトリとは異なる配列である。(B)1つの一次クローンのサブクローン(n=24)の変動分析。各クローンの減少した緑色蛍光の中央値を線の上に書く。 図14は、9.8kb(「W」)断片と比較した結合モチーフの位置を示す。E2A転写因子、NF−κB因子およびISREの結合モチーフを示す。モチーフにはその名前およびその正確なヌクレオチド位置の注釈をつける。「W」内の重要な欠失断片の位置を、「0−4」(緑色の四角)、「2−3」(赤色の四角)、「2.2−2.4」(橙色の四角)、「3−4」(淡青色の四角)、および「N」(濃青色の四角)と記載する。
(本発明の詳細な説明)
本発明は、生きた細胞内における標的核酸の遺伝的多様化のための改善された方法を利用可能にする。この方法は、調節性核酸分子、シス作用性多様化活性化因子(DIVAC)の発見に基づき、それは自身に連結した核酸の遺伝的多様化の活性化に必須かつ十分である。
本発明の目的のために、以下の定義を適用する。
「遺伝的多様化」は、標的核酸における個々のヌクレオチドまたはヌクレオチドの範囲の変化である。本発明による遺伝的多様化は、好ましくは高頻度変異によって起こる。本発明の方法において、標的核酸の相同的ドナーが提供される場合、遺伝的多様化は、遺伝子変換または高頻度変異および遺伝子変換の組み合わせによって起こり得る。
「高頻度変異」は、主に単一のヌクレオチドの置換によって、標的核酸を多様化する。好ましくは、高頻度変異は、1世代あたり10−5bp−1と10−3bp−1との間の変異率を指し、それは同じ細胞内の非高頻度変異遺伝子のバックグラウンド変異率より少なくとも100倍高い。
「遺伝子変換」は、配列情報が、一方向性の様式で、相同的遺伝子変換ドナーから遺伝子変換標的配列へ移動する現象である。遺伝子変換は、DNAポリメラーゼが鋳型を切り換えて、そして相同的配列から複製することの結果、またはヘテロ二本鎖の形成後のミスマッチ修復(ヌクレオチドが1本の鎖から除去され、そして他の鎖を用いた修復合成によって置換される)の結果であり得る。天然の遺伝子変換の例は、ある種における、付近の偽V遺伝子変換ドナーによる再編成VJ IgLセグメントの多様化である。
多くの脊椎動物において、高頻度変異および遺伝子変換は、B細胞の免疫グロブリンV(D)Jセグメント内に多様性を生じる。高頻度変異は、抗原刺激後に、マウスおよびヒトのような種の胚中心において起こる。遺伝子変換は、抗原刺激とは独立に、ニワトリ、ウシ、ウサギ、ヒツジ、およびブタのような種において、主にファブリキウス嚢または消化管関連リンパ系組織のような一次リンパ系器官において起こる。
「多様化活性化因子」は、標的核酸としてふるまう近傍の転写ユニットの遺伝的多様化を活性化する、シス作用性調節性配列である。
「標的核酸」は、遺伝的多様化を受ける核酸分子である。標的核酸は、好ましくは導入遺伝子であり、そして遺伝子産物をコードする1つ以上の転写ユニットを含み得る。その標的核酸はまた、非コード転写ユニットまたは内因性遺伝子であり得、その多様化は多様化活性化因子が近くに挿入されることによって活性化される。DIVAC関連多様化の結果として変化した標的核酸はまた、変異核酸と呼ばれる。
「導入遺伝子」は、トランスフェクション、形質導入、または感染などによって、レシピエント細胞へ挿入された外来性核酸分子である。例えば、導入遺伝子は、異種の転写ユニットを含み得、それはゲノムへ無作為に、または標的化組み込みによって規定された位置に挿入され得る。本発明の目的のために、その導入遺伝子は、好ましくは多様化活性化因子の隣に位置し、それによって標的核酸となる。
「標的化組み込み」は、内因性遺伝子座への、相同的組換えによる、トランスフェクトされた核酸構築物(これは、内因性核酸配列に相同的な核酸配列を含む)の組み込みである。標的化組み込みは、規定された染色体位置に、あらゆる核酸を直接挿入することを可能にする。
「組換えレシピエント細胞」は、標的核酸の遺伝的多様化のために操作された細胞を指す。好ましくは、そのレシピエント細胞はAIDを発現し、そして多様化活性化因子に連結した導入遺伝子のレシピエントである。
「選択」は、標的核酸によってコードされる遺伝子産物の望ましい活性または標的核酸の調節性機能の望ましい活性を引き起こす、標的核酸における配列変化の存在を決定することを指す。
(標的核酸の多様化の方法)
1つの局面において、多様化活性化因子を含む遺伝的構築物を、レシピエント細胞へ導入して、組換えレシピエント細胞を産生することを含む、標的核酸の多様化の方法を提供し、
ここで当該多様化活性化因子は、標的核酸に連結しており、
ここで当該多様化活性化因子は、配列番号第1番の配列を有する核酸、当該核酸の断片、および当該核酸または当該断片に相同的な核酸から成るグループから選択され、ならびに、
ここで当該多様化活性化因子は、自身に連結した核酸において遺伝的多様化を活性化する機能を有する。
1つの実施態様において、その多様化は、体細胞高頻度変異の過程によって起こる。好ましい体細胞高頻度変異の率は、世代あたり10−5bp−1と10−3bp−1との間である。
別の実施態様において、その標的核酸は、標的核酸の遺伝子変換ドナーとして作用し得る少なくとも1つの核酸にさらに連結しており、そしてその多様化は、体細胞高頻度変異および遺伝子変換の両方を含む過程によって起こる。
(多様化活性化因子)
本発明の多様化活性化因子(DIVAC)は、ニワトリB細胞の免疫グロブリン(Ig)遺伝子座由来である。1つの実施態様において、DIVACは、IgL転写開始部位から炭酸脱水酵素遺伝子の3’末端まで伸びる、再編成IgL遺伝子座の9.8kbの断片(「W」断片とも呼ばれる)である。その9.8kbの断片は、Gallus gallus染色体chr15:8165070−8176699に位置する。
ニワトリB細胞株DT40から単離された9.8kbの断片は、配列番号第1番のヌクレオチド配列を有する。別の実施態様において、本発明のDIVACは、自身に連結した核酸の多様化を活性化するDIVAC機能を保持する、9.8kb断片の断片である。DIVAC断片は、50ヌクレオチド程度の短さであり得、および5000ヌクレオチド程度の長さであり得る。例えば、DIVACの長さは、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1250ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1750ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2250ヌクレオチド、少なくとも2500ヌクレオチド、少なくとも2750ヌクレオチド、少なくとも3000ヌクレオチド、少なくとも3250ヌクレオチド、少なくとも3500ヌクレオチド、少なくとも3750ヌクレオチド、少なくとも4000ヌクレオチド、少なくとも4250ヌクレオチド、少なくとも4500ヌクレオチド、少なくとも4750ヌクレオチド、少なくとも5000ヌクレオチド、少なくとも5250ヌクレオチド、少なくとも5500ヌクレオチド、少なくとも5750ヌクレオチド、少なくとも6000ヌクレオチド、少なくとも6250ヌクレオチド、少なくとも6500ヌクレオチド、または少なくとも6750ヌクレオチドであり得る。DIVACの長さは、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3250、3500、3750、4000、4250、4500、4750、5000、5250、5500、6000、6250、6500、6750、または7000ヌクレオチドであり得る。
特定のDIVAC断片を、個々の断片のPCR増幅のために使用し得る、表2に列挙したオリゴヌクレオチドに基づいて規定し得る。DIVAC断片をまた、9.8kb断片(配列番号第1番)内のヌクレオチド位置に基づいて規定し得る。
従って、DIVACは、配列番号第1番の位置1−7099、1−7799、2184−9784、3098−9784、4102−9784、5114−9784、6107−9784、または3098−7099の間のヌクレオチド配列を有し得る。これらの配列は、図3Aにおいて、それぞれF、G、I、K、L、M、NおよびSと命名された断片に対応する。DIVACは、配列番号第1番の位置1000−3000、2825−6082、2000−3000、2000−4000、4000−9784、4000−7000、4000−6000、5000−9784、5000−8000、5000−7000、6000−9784、6000−8000、8000−9784、8500−9784の間のヌクレオチド配列を有する、5kbと1kbとの間の長さの断片であり得る。DIVACは、位置2825−3625、5000−6000、6000−7000、9000−9784、5114−6106(「2−3」)、6107−7099(「3−4」)、9509−9802(「9.6−9.8」)、または5288−5485(「2.2−2.4」)の間のヌクレオチド配列を有する、1kbと200bpとの間の長さのより短い断片であり得る。DIVACが、配列番号第1番の位置6107−9784(「N」)、3098−7099(「S」)、5288−5485(「2.2−2.4」)、または9509−9802(「9.6−9.8」)の間の断片を含むか、またはそれから成ることが好ましい。DIVACが、9.8kb(配列番号第1番)スケール上で約5000と6000との間の位置に位置する、Igエンハンサーを含むことも好ましい。
DIVACはまた、ニワトリIg重鎖(IgH)遺伝子座由来かまたは他の鳥類もしくは哺乳類種の免疫グロブリン遺伝子座由来の、配列番号第1番の機能性ホモログかまたはその断片であり得る。DIVACホモログは、ニワトリIg遺伝子座と同様に組織化された免疫グロブリン遺伝子座を有する生物由来であることが好ましい。従って、DIVACは、様々なトリ由来の、配列番号第1番に対応する配列、またはその断片であり得る。例えば、DIVACは、七面鳥IgL由来であり得、そして配列番号第117番(9.8kb断片のホモログ)、または配列番号第115番(「2.2−2.4」断片のホモログ)の配列を有し得る。あるいは、DIVACは、アヒルIgL由来であり得、そして配列番号第118番(9.8kb断片のホモログ)、または配列番号第116または119番(「2.2−2.4」断片のホモログ)の配列を有し得る。DIVACが、他の生物において配列番号第1番に対応する、位置6107−9784(「N」)、3098−7099(「S」)、5288−5485(「2.2−2.4」)、または9509−9802(「9.6−9.8」)の間の配列を有することが好ましい。
DIVACはまた、遺伝子変換によってその免疫グロブリン遺伝子を多様化することが公知である、ブタ、ヒツジ、ウシ、またはウサギのような生物のIg遺伝子座由来であり得る。しかし、DIVACはまた、高頻度変異によってその免疫グロブリン遺伝子を多様化する、マウスまたはヒトのような他の哺乳類由来の、配列番号第1番の機能的ホモログまたはその断片であり得る。
本発明によって、連結した標的核酸の多様化を活性化するDIVAC機能は、DIVAC非存在下のものと比較して、DIVAC存在下における標的核酸の多様化率の少なくとも5倍、10倍、20倍、50倍、または100倍の増加によって定義される。
DIVAC機能的ホモログをさらに、上記で定義したような9.8kb断片(配列番号第1番)またはその断片に対する構造的相同性によって特徴付け得、そのホモログは、自身に連結した核酸の多様化を活性化するDIVAC機能を保持する。例えば、本発明のDIVACは、配列番号第1番またはその断片と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を共有する。例えば、アヒル「2.2−2.4」断片とニワトリ「2.2−2.4」断片との間の配列相同性は、約85%である。
多様化の率を増加させるために、本発明のDIVACを組み合わせ得る。この目的のために、1つより多くのDIVACのコピーを、タンデムリピートの形式でレシピエント細胞へ提供し得る。そのような配列が、相加効果を示すことが好ましい。例えば、リピートは「2.2−2.4」断片(配列番号第114、115、116、または119番)の2つ以上のコピーを含み得る。あるいは、異なるDIVAC配列を組み合わせ得る。そのような配列が、累積的効果を示すことが好ましい。例えば、「S」と「N」とを、「2.2−2.4」と「3−4」とを、「3−4」と位置8000−9000の間の断片とを、「2.2−2.4」と位置8000−9000の間の断片とを、「2.2−2.4」と「9.6−9.8」とを;「3−4」と位置8000−9000の間の断片と「9.6−9.8」とを、位置2825−3625の間の断片と「0−4」とを、または位置2825−3626の間の断片と「0−4」とを、多様化活性を増加させるために組み合わせ得る。
(標的核酸)
本発明の標的核酸は、多様化が望まれる任意の核酸である。本発明の方法において、その標的核酸は、好ましくは転写される。1つの実施態様において、その標的核酸はタンパク質をコードする。例えば、標的核酸は、免疫グロブリン鎖、選択マーカー、DNA結合タンパク質、酵素、受容体タンパク質、またはその一部をコードする。その標的核酸はヒト免疫グロブリン遺伝子であることが好ましい。従って本発明の方法は、抗原に対する高い特異性および/または高い親和性のような、特定の結合活性を有する免疫グロブリンをコードする免疫グロブリン遺伝子を産生することを可能にする。その標的核酸が、緑色蛍光タンパク質(GFP)または黄色蛍光タンパク質(YFP)のような、蛍光タンパク質であることも好ましい。この実施態様において、本発明の方法は、新しく、かつ、異なる吸収/発光波長を有する蛍光タンパク質の産生を可能にする。
別の実施態様において、その標的核酸は、調節性の活性を有する。例えば、その標的核酸は、プロモーターまたはエンハンサーのような転写調節性エレメントであり得、またはRNA干渉による特異的遺伝子抑制において使用するための干渉RNA分子をコードし得る。この実施態様において、関心のある標的核酸を有する組換えレシピエント細胞を同定するために、標的核酸によって影響されるレポーターが必要である。
1つの実施態様において、その標的核酸は、外来性の核酸である。外来性の核酸を、同じ遺伝的構築物において、または代替的に、異なる遺伝的構築物において、DIVACと共にレシピエント細胞へ提供し得る。この実施態様において、その遺伝的構築物は、好ましくは導入遺伝子および/またはDIVACを含む細胞の選択を可能にする選択可能なマーカー遺伝子を含む。その選択可能なマーカー遺伝子を、続いて例えばcre−リコンビナーゼシステムを用いて組換えによって除去し得るか、または他の手段によって不活性化し得る。その標的核酸およびDIVACが、細胞染色体に安定に組み込まれることが好ましい。あるいは、その標的核酸およびDIVACは、例えばEBV由来ベクターのような自己複製ウイルスベクターにおいて、レシピエント細胞の染色体外に留まり得る。
別の実施態様において、その標的核酸は、先天的に細胞染色体の一部、すなわち内因性核酸である。内因性核酸は、免疫グロブリン遺伝子またはその一部ではないことが好ましい。この実施態様において、DIVACのみが細胞へ提供され、そしてDIVACが標的核酸の近傍において細胞染色体へ組み込まれることを確実にする。
本発明によって、その標的核酸はDIVACに連結する。これは、DIVACが標的核酸の多様化を活性化および指示することを確実にするようなお互いに対する位置で、上記2つの核酸が同じ染色体上にあることを意味する。一般的にDIVACの多様化活性は、多様化される核酸までの距離の増加に伴って減少することが理解される。従って、DIVACと標的核酸との間の距離は、150kb以下、好ましくは125kb以下、好ましくは120kb未満、100kb未満、70kb未満、50kb未満、30kb未満、10kb未満、5kb未満、または3kb未満であることが好ましい。
本発明によって、その標的核酸および/またはDIVACは、規定された位置か、または無作為な位置においてレシピエント細胞の染色体へ組み込まれ得る。1つの実施態様において、外来性標的核酸およびDIVACを含む遺伝的構築物が、無作為な位置において細胞染色体へ組み込まれる。
別の実施態様において、外来性標的核酸、すなわち導入遺伝子を含む1番目の遺伝的構築物が、規定された染色体位置に組み込まれ、そしてDIVACを含む2番目の遺伝的構築物が、DIVACが導入遺伝子の多様化を活性化および指示することを確実にする染色体位置において組み込まれる。DIVACが導入遺伝子の近傍へ、好ましくはそこから150kbまたは125kbまたは100kbより近いところへ、好ましくは120kb未満、100kb未満、70kb未満、50kb未満、30kb未満、10kb未満、5kb未満、または3kb未満のところへ組み込まれることが好ましい。
さらなる実施態様において、その標的核酸は、内因性であり、そしてDIVACを含む構築物が、DIVACが標的核酸の多様化を活性化および指示することを確実にする染色体位置において組み込まれる。DIVACが、標的核酸の近傍に、好ましくはそこから150kbまたは125kbまたは100kbより近くに、好ましくは120kb未満、100kb未満、70kb未満、50kb未満、30kb未満、10kb未満、5kb未満、または3kb未満に組み込まれることが好ましい。
規定された染色体位置における組み込み(標的化組み込み)は、それぞれの遺伝的構築物に、配列が組み込み部位の核酸配列と同一または相同的である核酸断片を含めることによって達成される。標的化組み込みによって、細胞が遺伝的構築物を組み込む能力は、細胞の固有の性質である。異なる種および起源の細胞は、様々な程度でこの性質を有する。例えば、マウス細胞において標的化組み込みはまれな出来事である。対照的に、ALV形質導入ニワトリB細胞株DT40は、好ましくは、規定された染色体位置における標的化組み込みによって、遺伝的構築物を組み込む。
(レシピエント細胞)
本発明のレシピエント細胞は、活性化誘導性デアミナーゼ(AID)またはその機能的等価物を発現する真核細胞である。レシピエント細胞は、脊椎動物種由来のBリンパ球、特に鳥類または哺乳類B細胞であることが好ましい。例えば、それはニワトリ、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ブタ、マウス、またはラット由来のB細胞である。レシピエント細胞がニワトリBリンパ球またはそれ由来であること、特にALV形質導入ニワトリB細胞株DT40またはその誘導体であることがさらに好ましい。
本発明の組換えレシピエント細胞は、トランスジェニック(すなわち外来性)核酸としての本発明の多様化活性化因子、および標的核酸を含むレシピエント細胞である。
1つの実施態様において、その組換えレシピエント細胞は、標的核酸の変異体(これは、望ましい活性を有する)を含む細胞の選択を促進する様式で、標的核酸を発現する。その選択は、細胞表面または細胞の外側での、細胞内の標的核酸によってコードされる活性かまたはそうでなければ細胞内の標的核酸によって決定される活性についての、直接的選択であり得る。あるいは、その選択は、レポーター核酸によってコードされる活性かまたはそうでなければレポーターによって決定される活性に関する間接的選択である。
(トランス作用性調節因子)
本発明によって、標的核酸の多様化を、トランス作用性調節因子によって調節し得る。例えば、そのトランス作用性調節因子は、DNA修復または組換え因子、DNAポリメラーゼ、転写因子、ウラシルDNAグリコシラーゼ、染色体組織化に関与する因子であり得る。その多様化過程はまた、活性化誘導デアミナーゼ(AID)のような、トランス作用性調節因子によって開始および終了し得る。例えば、AIDは条件的に発現され得、そして一旦望ましい性質を有する標的核酸が得られたら、その発現はスイッチオフされ得る。これは、最適な性質の喪失を引き起こし得る、さらなる変異を防ぐ。同様に、他の調節因子を、レシピエント細胞へ加え得、またはそこで発現させ得る。
トランス作用性因子は、DIVACのようなシス調節性多様化活性化配列内のそれぞれのモチーフに結合し得、または標的遺伝子の周囲に形成される多様化複合体内の他のタンパク質に結合することによって上記モチーフに結合し得る。例えば、本発明のDIVACは、E−Box、NF−κBおよびISREモチーフを含む。あるいは、トランス調節性因子は、自身に融合した係留分子(これは、関心のある遺伝子の近傍にまたは関心のある遺伝子座内に組み込まれたそれぞれの結合モチーフに結合する)によって関心のある遺伝子または遺伝子座へ標的化し得る。
(望ましい活性を有する核酸およびタンパク質を調製する方法)
別の局面において、本発明は、以下の工程を含む、望ましい活性を有する標的核酸を調製する方法を提供する:
(a)レシピエント細胞に、本発明の多様化活性化因子および任意で標的核酸を含む1つ以上の核酸構築物を導入して、組換えレシピエント細胞を得る工程、
(b)当該多様化活性化因子が、当該標的核酸に連結している組換えレシピエント細胞を同定する工程、
(c)(b)由来の細胞を、標的核酸の発現および多様化に適当な条件下で、増殖および増加させる工程、ならびに
(d)(c)由来の細胞の集団内で、望ましい活性を有する変異標的核酸を含む個々の細胞または細胞集団を選択する工程。
1つの実施態様において、本方法の工程(c)および(d)を反復する。
別の実施態様において、その方法は、(d)において選択した細胞由来の変異標的核酸の配列を決定することを含む、さらなる工程(e)を含み得る。
さらなる実施態様において、その方法は、多様化を終了させることを含む工程(f)をさらに含む。例えば、活性化誘導デアミナーゼ(AID)のようなトランス作用性調節因子の発現をダウンレギュレートすることによって、または多様化活性化因子の除去によって、多様化をスイッチオフし得る。この目的のために、tetのようなスイッチ可能なプロモーターを使用し得る。
工程(a)において、本発明の核酸構築物を、レシピエント細胞にトランスフェクトし得る。あるいは、レシピエント細胞は、構築物で形質導入され得るかまたは構築物を感染させられ得る。
工程(d)において、望ましい性質を有する変異体の単離のために、様々な選択手順を適用し得る。例えば、改善した結合特異性または新規の結合特異性を有する免疫グロブリン分子を発現する細胞を、蛍光標示式細胞分取(Fluorescence Activated Cell Sorting(FACS))、磁気ビーズを用いた細胞分離、抗原クロマトグラフィー法、または他の公知の細胞分離技術によって選択し得る。
1つの実施態様において、その標的核酸およびDIVACは、同じ核酸構築物上にある。あるいは、その標的核酸およびDIVACは、異なる構築物上にある。この実施態様において、多様化されるべき標的核酸を含む遺伝子座を、1回より多くのトランスフェクションによって構築し得る。さらなる実施態様において、その標的核酸は細胞染色体の一部であり、そして構築物は1つ以上のDIVACを含む。
(組換え核酸構築物)
3番目の局面において、本発明は、本発明の多様化活性化因子を含む組換え核酸構築物を提供する。その構築物は、プラスミド、ウイルス、組み込み型ベクターまたは自己複製ベクターのようなウイルス由来ベクターであり得る。その構築物は、DIVACまたは異なるDIVACの組み合わせの1つ以上のコピーを含み得る。
(組換え細胞)
4番目の局面において、本発明は、トランスジェニック(外来性)配列として本発明の多様化活性化因子を含む、組換え細胞を提供する。1つの実施態様において、その細胞はBリンパ球である。B細胞は、トリ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、マウス、またはヒトのような、脊椎動物種由来であり得る。B細胞はニワトリ由来であることが好ましい。本発明の組換え細胞が、DT40細胞株の細胞であることが極めて好ましい。
本発明の範囲から除外されるのは、極めてありそうにない実施態様であり、ここで、多様化活性化因子は細胞の染色体に組み込まれ、そして多様化活性化因子と同一の染色体の一部を置換し、その結果として、できた細胞を天然細胞と区別できない。
本発明を以下の実施例によって説明する。
(実施例)
(実施例1:GFP発現に基づく高頻度変異レポーター)
発明者らは以前に、DT40中のGFP導入遺伝子は、再編成IgLのプロモーターの位置に組み込まれた場合、急速に変異を蓄積することを示した[Arakawaら、2008]。その高頻度変異活性は、AIDの発現に依存し、そして有害なGFP変異のために減少した緑色蛍光を示す細胞の出現によって可視化し得た。
この現象を利用するために、強力なRSVプロモーターに続くGFPコーディング領域、配列内リボソーム侵入部位(IRES)、ブラストサイジン耐性遺伝子(P19997)およびSV40ポリアデニル化シグナルから成る、GFP2と名付けた新しい発現カセットをデザインした。GFP2を、GFP2導入遺伝子の転写および転写後調節とIgL遺伝子の転写および転写後調節との間の干渉を最小限にするために、IgL遺伝子の転写方向とは逆に、標的化構築物pIgLGFP2に組み込んだ(図1A)。
条件的にAIDを発現するクローンAIDR2へのpIgLGFP2のトランスフェクションは、標的化組み込みがIgLプロモーターをGFP2導入遺伝子で置換した、IgLGFP2という名前の多くのトランスフェクタントを生じた。2つの独立した一次トランスフェクタント由来のサブクローンの蛍光標示式細胞分取(FASC)分析は、12.8%および14.5%減少した緑色蛍光の中央値を明らかにした(図1Cおよび1D)。この結果は、発明者らの以前の研究の結果を確認し、上記以前の研究の結果は、GFP2導入遺伝子が、再編成IgL遺伝子座内で高い率で変異していること、ならびに、減少した緑色蛍光を有する細胞集団を、この高頻度変異活性を定量するために使用し得ることを示している。
(実施例2:IgL遺伝子座の近傍における高頻度変異)
第15染色体のIgL遺伝子座から様々な距離においてGFP2レポーターを挿入するために、標的化組み込みを用いた[International Chicken Genome Sequencing Consortium、2004](図1Bおよび1E)。一次トランスフェクタントおよびそのサブクローンのFACS分析は、減少した緑色蛍光の中央値が、+26kbおよび−15kb位置において約3%、+52kb位置において0.5%、および−135kb位置において約0.05%まで低減したことを明らかにした(図1Cおよび1D)。再編成染色体または非再編成染色体のいずれが標的となったか、IgL遺伝子座の外側のGFP2挿入に関しては決定できなかったが、サブクローンの結果も、多数の独立した一次トランスフェクタントを示していた(表1A)。従って、GFP2レポーターの高頻度変異は、IgL遺伝子座から52kb離れるまでの挿入において検出可能であったが、変異の発生は、距離の増加と共に低減し、そして−135kb位置においてはかろうじて検出可能であった。
周囲の配列は転写後プロセシングおよびGFP2転写物の翻訳に影響を与えるはずはないので、GFP2の転写は、導入遺伝子挿入部位と独立に、細胞の緑色蛍光によって反映される。変異する導入遺伝子に関しても、GFP2転写レベルを、おそらく非変異GFP配列を発現していた主要な細胞集団の平均緑色蛍光から推定し得る。FACS分析によって見られるように、主要な細胞集団の平均緑色蛍光は、おそらく染色体位置の効果を反映して、一次トランスフェクタントの間でわずかに異なっていた(図1C)。しかし、トランスフェクタント+52IgLGFP2とIgLGFP2とは、それらの主要な細胞集団の類似した緑色蛍光にも関わらず、それらの蛍光減少の中央値において、20倍を越えて異なっていた。これは、トランスフェクタント間の高頻度変異の差は、IgL遺伝子座までのGFP2挿入部位の距離を反映し、そしてGFP2転写の変動ではないことを強く示唆した。
(実施例3:多様化活性化因子の同定)
実施例1および2において観察された効果を、距離依存性の様式で高頻度変異を活性化する、シス作用性配列の存在によって説明し得る。この推定調節配列を、多様化活性化因子(DIVAC)と命名した。DIVAGのマッピングを、GFP2レポーターの挿入とIgL遺伝子座の欠失とを組み合わせることによって行った。
ψV遺伝子座の役割に焦点をあてるために、GFP2構築物(図2A、上部)を、クローンψV−AIDR1にトランスフェクトし[Arakawaら、2008]、ここでψV遺伝子座の20kb全体を欠失させた。そのトランスフェクタントψVIgLGFP2は、ψV遺伝子座の非存在下で、IgLプロモーターの位置においてGFP2レポーターを発現した(図2B)。ψVIgLGFP2サブクローンのFACS分析は、5.2%および7.5%の緑色蛍光減少の中央値を明らかにし(図2C)、これは、ψV陽性IgLGFP2サブクローンの中央値よりわずかに1倍低かった。IgLGFP2サブクローンとψVIgLGFP2サブクローンとの間の差は、変動効果またはAIDR2およびψVAIDR1前駆体における異なるAID発現レベルにより得るので、ψV遺伝子座は、GFP2レポーターの高頻度変異活性に対して、もしあるとしてもわずかな刺激しか発揮しないようである。
ψVIgLGFP2は、IgL転写開始部位から炭酸脱水酵素遺伝子の3’末端まで伸長する、再編成IgL遺伝子座の9.8kb断片(以下において断片「W」と呼ばれる)を依然として含んでいた。この断片の関連を試験するために、GFP2構築物を、クローンψVIgL(再編成IgL遺伝子座全体が、ピューロマイシン耐性遺伝子(P42670)によって置換されている)へトランスフェクトした。できたトランスフェクタントψVIgL−,GFP2は、欠失したIgL遺伝子座の位置にGFP2レポーターを挿入していた(図2A、中央部および図2B)。ψVIgL−,GFP2のサブクローンは、0.01%および0.02%の緑色蛍光減少の中央値を示し(図2C)、これは、ψVIgLGFP2サブクローンの中央値より100倍を超えて低かった。これは、「W」断片(ψVIgL−,GFP2において存在しないが、ψVIgLGFP2において存在している)が、GFP2導入遺伝子の高頻度変異に必要であることを示した。ψVIgL細胞を、次いでGFP2導入遺伝子および「W」断片を含む構築物でトランスフェクトした(図2A、下部)。トランスフェクタントψVIgLW、GFP2のサブクローンは、ψVIgLGFP2サブクローンの中央値と同様の緑色蛍光減少の中央値を示した(図2C)。従って、「W」断片は、真のDIVAC配列に関して予期されるように、IgL遺伝子座への再挿入後に、高頻度変異を効率的に活性化する。
コントロールは、減少した緑色蛍光を有する細胞の出現は、GFP2遺伝子における高頻度変異を反映することを確認した。予期されるように、AID陰性トランスフェクタントψVIgLGFP2AID−/−のサブクローンは、非常に低い0.001%の緑色蛍光の減少の中央値しか示さなかったので、ψVIgLGFP2培養の緑色蛍光の減少は、AIDに依存した(図2C)。さらに、サブクローニングの6週後にψVIgLGFP2細胞から増幅されたGFPオープンリーディングフレームは、平均で0.9ヌクレオチドの置換を示した(図2D)。最も一般的な変異は、ψV欠失クローン由来のIgL VJセグメントの高頻度変異に関して以前に観察されたように、CからG、およびGからCへのトランスバージョンであった[Arakawaら、2004]。対照的に、ψVIgL−,GFP2細胞のGFP遺伝子において、非常に少数のヌクレオチド置換しか見出されなかった(図2D)。
(実施例4:DIVACのマッピング)
(「W」断片のマッピング)
標的化構築物の新しいシリーズを、ψVIgLへトランスフェクトして、段階的な欠失によって「W」断片を特徴付けた(図3A)。異なるトランスフェクタント由来のサブクローンのFACS分析は、「W」断片がいずれかの末端から短くなった場合に、変動するが進行性の高頻度変異活性の喪失を示した(図3C)。以前に同定したIgLエンハンサー[Bulfone_Pausら、1995]を含む、「W」断片の中央にある4kbの「S」断片は、依然として2.7%および1.7%の緑色蛍光の減少の中央値を生じた。対照的に、上流の「B」断片および下流の「P」断片は、それによってそれぞれ約0.13%および0.05%の緑色蛍光の減少の中央値を生じ、それは絶対項において低いが、ψVIgL−,GFP2の中央値より明らかに上であった。これらの断片のうちのいずれか1つを、それぞれ「F」および「K」断片中の「S」断片と組み合わせた場合、緑色蛍光の減少中央値は、約3倍増加した。これは、ニワトリIgL遺伝子座のDIVACは、全体の活性に寄与する中央のコア領域および部分的に重複する隣接領域から成ることを示唆した。
ψVIgLW,GFP2の主要な集団における平均緑色蛍光は、おそらく「W」断片のIgLエンハンサーによる、GFP2におけるRSVプロモーターのさらなる刺激のために、ψVIgL−,GFP2と比較して増加した(図2B)。しかし、ψVIgL−,GFP2において見られる、GFP2転写の比較的小さい減少は、おそらく高頻度変異の300倍を超える低減の原因ではない。図3に示した全ての断片の一次トランスフェクタントは、同様のGFP転写レベルを示したので、「W」断片欠失の分析はまた、高頻度変異における差はGFP2転写の変化によって引き起こされたという可能性に対して強力に反対した。
(「S」断片のマッピング)
前述したように、再編成されたDT40 IgL遺伝子座の約4kbの部分(「S」断片)は、AIDによる高頻度変異に必須であった。そのDNA断片は、既に同定されたエンハンサーの上流2kbの配列および下流1.6kbの配列にまたがる。推定高頻度変異機構のアセンブリーのプラットフォームとなり得、ならびにAIDをIg遺伝子座に置く、「S」断片の活性コアを突き止めるために、4kb領域の詳細な欠失分析を行った。「S」断片(さらに「0−4」断片と呼ばれる)の5’開始点をゼロ点として規定し、そして配列を4つの1kb領域に分割した(図6)。配列の5’末端および3’末端から始まる、一連の1kbの段階的欠失を行った。
「0−4」断片それ自身は、2.7%および1.7%の緑色蛍光の減少中央値を生じた。欠失構築物の緑色蛍光減少中央値を、「0−4」コントロールと比較し、そしてマンホイットニーのU検定を用いて、p値を計算した。p<0.001の値のみを、有意として受け入れた。
「0−3」断片の緑色蛍光減少中央値が依然として3.7%および1.7%であったので、3’末端から始まる欠失は、最後の1kb領域(「3−4」)は、AIDのリクルートに有意な関連を有さないことを示した。3’末端からさらに1kb欠失すること(「0−2」)は、0.1%および0.3%へ明らかに変異を抑制し、このことは、完全なエンハンサー配列を含む「2−3」が、高頻度変異過程において役割を果たしていることを示唆した。5’末端から始まる欠失が、この理論を支持した。断片「2−4」は1.5%および1.3%の範囲であり「0−4」と同じレベルであったが、「2−3」を除去すると、「3−4」のGFP変異レベルの中央値は、0.4%および0.1%の有意に減少した値に低下した。よって、「0−4」断片の両方の末端からの欠失が、AIDリクルートのための「2−3」の役割を支持した。
「2−3」は、高頻度変異増強効果を有する(0.9%および1.3%)わずか1kbの断片であったけれども、1kb断片「2−3」の実験は、その結果を確認した。「0−1」、「1−2」および「3−4」のクローンにおける多様化活性は、IgLと比較した場合、依然としてバックグラウンドレベルより上であったが、「0−1」(どちらも0.1%)、「1−2」(0%および0.3%)および「3−4」のいずれもが、高頻度変異を有意な程度まで開始しなかった。この結果は、高頻度変異に対する「0−1」、「1−2」および「3−4」の相加効果(すなわちそれらによる増強効果)に反対した。しかし、それらの断片のうちの1つを「2−3」に加えた場合、高頻度変異レベルがわずかに増加するので、これらの断片にはいくらかの累積的な効果が存在し得る。「2−3」断片は、高頻度変異を標的化する原因となるコアシスエレメントを含むようである。上記結果はまた、高頻度変異活性化過程における、「2−3」内に存在する、エンハンサーの重要な役割を示した。
(「0−4」断片の精密なマッピング)
「0−4」における内部欠失の欠失分析は、より小さい活性断片の規定において有用である。同時に、それは、お互いに離れていたとしても協同的な方法で作用する、単一作用性配列またはエレメントを同定することを助ける。体細胞高頻度変異の頻度の低下は、AIDによる多様化に関与する重要なエレメントが欠失していることを示す。
「0−4」断片の精密なマッピングを、一連の200bpの欠失の助けを借りて行った(図7)。欠失クローンを、もとの「0−4」クローンと比較し、そしてマンホイットニーのU検定によって有意性を計算した。20個の欠失クローンのうち3つの体細胞高頻度変異活性が、有意に抑制された。構築物「0.0−1.0/1.2−4.0」および「0.0−3.6/3.8−4.0」は、0.8%のGFP発現の減少を示し、そして構築物「0.0−2.2/2.4−4.0」は、0.4%のGFP発現の減少を示した。これらの3つの構築物の実験における人為的影響を除外するために、その結果を、各構築物に関してさらに1つのクローンをスクリーニングすることによって確認した。「0.0−1.0/1.2−4.0」および「0.0−3.6/3.8−4.0」の2番目のクローンのGFP発現の減少は、それぞれ3.5%および4.9%であった(データは示していない)。トランスフェクトした構築物の無作為な組み込みはコントロールし得ないので、クローンの差は、AIDcDNA発現カセットまたは体細胞高頻度変異に関わる他の遺伝子の喪失または阻害のためであり得る。「0.0−2.2/2.4−4.0」の2番目のクローンは、0.5%の有意に減少したGFP発現を示し(データは示していない)、従って最初のクローンで得られたデータを確認した。同定された200bpの領域「2.2−2.4」は、以前に同定された「2−3」断片の一部であり、そしてIgLエンハンサー内に位置する。これらの結果は、高頻度変異遺伝子座へのAIDのリクルートに関するエンハンサーの役割を支持する。
(「2−3」断片のマッピング)
典型的なタンパク質結合部位は、10−20bpの範囲であるので、「2−3」断片においてより詳細な欠失分析を行って、特異的タンパク質結合領域を規定した。50bpの内部欠失および両方の末端からの50bpの連続的欠失の組み合わせが、重複モチーフまたはモチーフの反復を同定するために有用である。
「2−3」断片のマッピングを、「2−3」断片の50bpの末端欠失および内部欠失を分析することによって行った(図8、9、および10)。
5’末端から始まる、50bpの徐々に増加する欠失シリーズは、「2.2−3.0」の0.6%から、「2.25−3.0」の0.2%へのGFP発現の減少を示した(図9)。「2.2−2.25」の除去は、「2.2−2.4」断片の重要性を確認する。しかし、「2.2−2.25」の内部欠失は影響を有さなかったので(図8)、「2.2−2.4」領域に重複エレメントが存在することが予期される。3’末端において50bpの欠失を増加させることは、「2.25−2.3」における、「2.2−2.4」断片の高頻度変異活性に関連するさらなるエレメントの存在を示した(図10)。例えば、GFP変異レベルは、「2−2.25」の0.2%から、「2−2.3」の0.5%へ上昇した。従って、「2.2−2.3」領域におけるいくつかの異なる、または反復するモチーフが予期された。しかし、「2.2−2.25」および「2.25−2.3」の内部欠失(図8)は、高頻度変異活性の有意な喪失を示さなかったので、「2.2−2.25」および「2.25−2.3」において同定されたモチーフは、適当な機能のためにさらなるエレメントを必要とするようである。
3’末端欠失シリーズにおいて、「2−2.75」および「2−2.8」に関連するGFP減少の低下が、さらに検出され得る(図10)。これは、サイレンシングエレメントの影響を反映し得る。しかし、50bp内部欠失シリーズにおいてこの領域の欠失は影響を受けなかった(図8)。「2.8−2.85」の追加が、その影響を補い得る。これらの結果は、高頻度変異活性化因子としての200bpのエレメント「2.2−2.4」の役割を確認する。
このように、50bpの内部欠失は、GFP発現の有意な減少を示さなかった。無作為な欠失を産生したので、保存された部分は欠失せず、配列モチーフの一部のみが欠失したと推測したくなる。さらに、「2−3」断片は、お互いに置換し得る重複エレメントを含み得る。
(「2.2−2.4」断片の再構築および多量体化)
「0−4」断片における「2.2−2.4」の欠失は、GFP発現減少の5倍の低下を引き起こした。「2−3」と同様に、「2.2−2.4」が高頻度変異に必要なだけでなく十分でもあるかどうか調べるために、「2.2−2.4」断片を、ψVIgLに再構築した。0.6%のGFP発現減少の中央値を検出し得た。この結果は、「2.2−2.4」は、高頻度変異に十分な1つまたはいくつかのエレメントを含むことを確認した。しかし、GFP陰性細胞の数は、「2−3」におけるよりも低く(0.9%、1.3%)、そして「0−4」におけるよりも有意に低かった(2.7%、1.7%)。
この効果が、追加のエレメントまたは反復性モチーフのためであるかどうかを調べるために、「2.2−2.4」断片を多量体化した(図11)。エレメントを2倍にすることは、蛍光の減少中央値を2倍に増強し(1.55%)、一方エレメントを4倍にすることは、GFP陰性細胞の画分が、「0−4」のもの(4%)よりさらに高いレベルに達することを引き起こした。その配列を8倍および14倍に多量体化しても、高頻度変異率をさらに高くすることはできなかった。「2.2−2.4」断片に関する飽和レベルが存在すること、ならびに、他のモチーフおよび/または内因性因子の欠如がその過程を制限し得ることが考えられる。これらのデータは、「2.2−2.4」断片は、高頻度変異を誘発するために必要かつ十分であることを確認する。
(実施例5:非Ig遺伝子座における高頻度変異)
(「W」(9.8kb)断片)
GFP2レポーターが自身によって非Ig遺伝子座において安定に発現することを確認するために、5つの異なる染色体における6つの遺伝子座[International Chicken Genome Sequencing Consortium、2004]を、ψVAIDR1へのGFP2構築物のトランスフェクションによって標的化した(図4Aおよび1F)。一次トランスフェクタント(図4B、表1B)もそのサブクローン(図4C)も、高いパーセントの緑色蛍光減少を示さなかった。実験および挿入部位に依存して、サブクローンの中央値は0.02%から0.22%の範囲であり、このことは、選択した遺伝子座におけるGFP2レポーターの変異率は、IgL遺伝子座におけるよりも50から500倍低いことを示した。しかし、これらの中央値は、AID陰性トランスフェクタント由来の様々なサブクローンの中央値よりも約2−10倍高く(図2Cおよび5C)、このことは、AID発現B細胞におけるバックグラウンド変異率においてのわずかな増加を確認した[Liuら、2008]。
次いでGFP2を「W」断片と共に、ψVAIDR1のAID遺伝子座、BACH2(NC_006090)遺伝子座およびRDM1(BAC02561)遺伝子座それぞれに挿入した(図5Aおよび5B)。トランスフェクタントψVAIDW,GFP2、ψVBACH2W,GFP2、およびψVRDM1W,GFP2のサブクローンは、ψVIgLGFP2およびψVIgLR,GFP2サブクローンの中央値と同様の、4.0%と9.4%との間の緑色蛍光減少の高い中央値を示した(図5C)。AID陰性トランスフェクタントψVAIDW,GFP2/−、ψVBACH2W,GFP2/−AID−/−およびψVRDM1W,GFP2/−AID−/−のサブクローンは、0.001%から0.03%の範囲の、緑色蛍光減少の非常に低い中央値を示したので、GFP2高頻度変異はAID依存性であった。これらの結果は、「W」断片は、そうでなければ高頻度変異を支持しない遺伝子座において、AIDによる高頻度変異を活性化し得ることを示した。
(「2.2−2.4」断片)
DIVAC配列のマッピングは、「2.2−2.4」が、高頻度変異を開始し得る、真の高頻度変異コアエレメント(「HyCorE」)のように作用することを示した。このエレメントの多量体化は、相加効果を有していた。「2.2−2.4」の、高頻度変異を特定の非Ig遺伝子座へ標的化する能力について試験した。異なる非Ig遺伝子座における「W」断片についてのこの実施例において記載された実験と同様に、「2.2−2.4」断片の高頻度変異活性を、BACH遺伝子座において試験した(図12)。「2.2−2.4」と共にGFP2レポーターを、BACH2遺伝子座へ標的化した。できたクローンAIDR1IgLBACH2+/2.2−2.4,GFP2をサブクローニングし、そしてFACSによって分析した。減少した緑色蛍光の中央値を、クローンAIDR1IgL2.2−2.4,GFP2のものと比較した。
ψVAIDR1のBACH2遺伝子座の位置における、GFP2レポーター単独の挿入(AIDR1IgLBACH2+/GFP2)は、GFP導入遺伝子における変異を引き起こさなかった。しかし、「2.2−2.4」断片と組み合わせた場合、GFP2は、緑色蛍光の約1%の減少の中央値で変異の標的となった。これは、上記断片が欠失したIgL遺伝子座の位置に挿入された、「IgL2.2−2.4」よりもいくらか高い。同時に、両方の値は、IgL遺伝子座全体の欠失のためにGFP2レポーターが高頻度変異していない細胞株、「IgL−」から有意に異なっていた。
これらの結果は、「2.2−2.4」断片は、非Ig遺伝子座において高頻度変異を引き起こし得ることを示し、このことは、「2.2−2.4」断片は、高頻度変異を活性化するために必要かつ十分であることを示す。
(実施例6:アヒルおよび七面鳥における「2.2−2.4」断片のホモログ)
アヒルおよび七面鳥における「2.2−2.4」断片のホモログ(homologous)をクローニングおよび配列決定した。3つの種間の配列相同性は非常に高く、アヒル配列85%、および七面鳥配列92%の相同性であった(図13)。機能的保存を示すために、アヒル(配列番号第116番)および七面鳥(配列番号第115番)の「2.2−2.4」断片を、ψVIgL細胞株へ挿入した。アヒル配列は、0.9%のGFP発現の減少を、そして七面鳥配列は1.0%の減少を引き起こした。これは、多様化活性化因子配列が、異なる種を通じて保存されていることを示す。
(実施例7:配列モチーフの分析)
約9.8kbの「W」断片のバイオインフォマティクス分析を、重要なタンパク質結合モチーフの位置を同定する目的で行った。モチーフE−Box、NF−κBおよびISREを考慮した、9.8kbの断片のモチーフ分析を、図14に示す。これらのモチーフは、それらが「2.2−2.4」断片内で最も興味深い候補であるので、選択した。特に、NEMO((NK−κB Essential Modulator)NF−κBを活性化する因子)は、高頻度変異に影響を与えることが公知であり、そしてインターフェロン調節因子に結合するISRE(Interferon−Stimulated Response Element)は、NF−κBと相互作用することが公知である[Jainら、2004;Souto−Carneiroら、2008;Naschbergerら、2004;Wuら、1994;MatInspector転写因子データベース(www.genomatix.de;Quandtら、1995;Carthariusら、2005)]。
図14は、上記3つのモチーフの最も緊密なクラスターが、「2.2−2.4」断片において見出されることを示す(図14、橙色の四角)。「2.2−2.4」断片に存在するモチーフはまた、「9.6−9.8」断片にも含まれる。別のクラスターが、6−7.1kbの間の約1kbの配列内にある(図14、淡青色の四角)。配列のこの部分は、「0−4」および「N」に含まれ、すなわち両方の断片は、高頻度変異活性を有する。実際、この1kbの断片が、「N」断片と「P」断片との間の唯一の違いであり、そしてそれは高頻度変異を100倍増強する(図3を参照のこと)。もう1つのクラスターは、8−9kbにあり、そして「N」の一部である。「3−4」のクラスターが、8kbと9kbとの間のクラスターと相互作用することが可能である。有意な高頻度変異活性を有さない、上記配列の最初の5kbにおいて、3つのモチーフのクラスターは存在しない。
9.8kbスケールにおける欠失断片の座標を、表3に示す。
Figure 2011516071
従って、「W」断片は、「2.2−2.4」のものと高い類似性を有する複数の重複モチーフから構成されるようである。多量体化の結果(実施例4;図11)は、この仮説に有利に作用する。さらに、これらのモチーフは、特に、高頻度変異の誘発に関連することが証明された「W」配列の部分において、クラスター化する。
この分析は、「高頻度変異モチーフ」は、A−B−B−A構造を有するという理論を支持する。9.8kb断片の最初の800bp(2825−3625)は、モチーフAに対応する。モチーフAは、コアモチーフまたはモチーフBのエンハンサーであるモチーフである。モチーフBは、例えば「2.2−2.4」断片である。2つのコアエレメント(B)は、2つの増強エレメント(A)と同様に、明確なモチーフ相同性を有する。NEMOにおける欠損は、AIDが存在するとしても上記過程を停止することが公知である。これは、非常に明確な活性化コアエレメントを示し、シグナル伝達はここで、体細胞高頻度変異、遺伝子変換、およびクラススイッチ組換え活性へと通訳される。上で列挙したエレメントがおそらく主なものであるが、SP1、AP1、E2A/Thing1、PAX2/4/5ファミリーのような、考えられる増強モチーフ因子も、役割を果たし得る。
(実施例8:材料および方法)
標的化構築物。GFP2構築物を、RSVプロモーター−pHypermut2のGFPオープンリーディングフレーム[20]を、IRES[Arakawaら、2004]、ブラストサイジン耐性遺伝子およびSV40ポリアデニル化シグナル[Arakawaら、2001]を含むPCR増幅産物を組み合わせることによって作製した。そのPCRを、補足の表2で記載したプライマーを用いて行った。GFP2は、標的化ベクターへの容易なクローニングのために、唯一のBamHI制限部位に隣接していた。
「W」断片欠失および再構成のシリーズに属するものを除く全ての標的化構築物を、アームの配列をpBluescriptKS+(Stratagene、CA)にクローニングし、そして次いで図5Aおよび図1Eおよび1Fにおいて示したように、GFP2を唯一のBamHI部位またはBglII部位のいずれかへ挿入することによって作製した。AID[Arakawaら、2001]、およびRDM1[Hamimesら、2004]の標的化が、以前に記載された。全ての標的アームのPCR増幅を、Expand long template PCRシステム(Roche、Switzerland)、鋳型としてDT40ゲノムDNA、および、表2において記載したようなプライマーを用いて行った。
「W」断片は、単一の配列として増幅することが困難であったので、上流および下流PCR増幅産物を、再編成IgL標的化構築物「構築物R」[BuersteddeおよびTakeda、1991]から切除された2.2kbのAvrII/SpeI制限断片と組み合わせることによって、連続的にクローニングした。そのAvrII/SpeI制限断片の配列は、A/Tリッチであり、そしてJセグメントとC領域との間に位置していた。アセンブルした「W」断片を配列決定し、そしてアクセッション番号bankit FJ482234でGenbankへ寄託した。「W」断片欠失シリーズに属する構築物を、標的アームの間のGFP2をクローニングし、そして次いで「W」断片またはその一部を、唯一のNheI/SpeI部位へ挿入することによって作製した。GFP2および「W」断片を含むBamHI断片を、AID、BACH2およびRDM1標的化ベクターへ組み込み、非Ig遺伝子座における「W」断片の活性を試験した。
細胞培養。細胞を、ニワトリ培地(10%胎仔ウシ血清、1%ニワトリ血清、2mMのL−グルタミン、0.1μMのβ−メルカプトエタノールおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI−1640またはDMEM/F−12)中で、41℃において、5%CO2と共に培養した。トランスフェクションを、Gene Pulser Xcell(BIO−RAD)によって、25μFおよび700Vにおいて、40μgの直線化プラスミドDNAを用いて、エレクトロポレーションによって行った。15μg/mlのブラストサイジン中で培養することによって、安定なトランスフェクタントを選択した。標的化組み込みによって、トランスジェニック構築物を組み込まれたトランスフェクタントを、GFP2のSV40ポリアデニル化シグナル配列由来の内側プライマーと、標的アームの外側の配列由来のプライマー(表2)とを共に使用したPCRによって同定した。IgL遺伝子座への挿入の場合、再編成アレルへの標的化組み込みを、再編成されていない遺伝子座のVJ介在配列を増幅することによって立証した。AID再構築クローンAIDR2を、AID cDNA発現カセットを欠失AID遺伝子座の1つに標的化する構築物のトランスフェクションによって、AID欠失クローンAID−/−[Arakawaら、2002]から産生した。AID陰性トランスフェクタントを、ψVAID−/−[Arakawaら、2004]をトランスフェクトすることによって産生した。
フローサイトメトリー。各変異の表現型を、少なくとも2つの独立した標的化トランスフェクタントおよび24個のそれぞれのサブクローンのFACS分析によって決定した。一次トランスフェクタントを、トランスフェクションの約3週間後に、そしてサブクローンを、サブクローニングの2週間後に、FACSによって分析した。主要な集団における緑色蛍光レベルは、トランスフェクタント間でわずかに変動するので、緑色蛍光細胞の主要な集団を、減少または消失した緑色蛍光を示す細胞から分離するためのゲートを、状況に応じて適合させた。生きた細胞のゲートに入る少なくとも5000のイベントを、各一次トランスフェクタントまたはサブクローンに関して回収した。50%を超える生きた細胞のイベントが、減少または消失した緑色蛍光についてのゲートに入ったサブクローンは、サブクローニングの時点で既に変異GFP2導入遺伝子を発現している前駆細胞の増殖を示しているかもしれないので、分析から除外した。
GFP遺伝子配列決定。PCR導入変異を最小限にするために、Pfu Ultraホットスタートポリメラーゼ(Staratgene)を、配列決定の前のGFPオープンリーディングフレームの増幅のために使用した。配列決定および配列分析を、以前に記載したように行った[Arakawaら、2004]
Figure 2011516071
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Claims (20)

  1. 多様化活性化因子(DIVAC)を含む遺伝的構築物を、レシピエント細胞へ導入して、組換えレシピエント細胞を産生する工程を含む、標的核酸の多様化のための方法であって、
    該多様化活性化因子は、該組換えレシピエント細胞内の該標的核酸に連結され、
    該多様化活性化因子は、配列番号第1番の配列を有する核酸、該核酸の断片、ならびに該核酸および該断片に相同的な核酸からなる群より選択され、そして
    該多様化活性化因子は、該多様化活性化因子に連結した転写ユニットにおける遺伝的多様化を活性化する機能を有する、方法。
  2. 前記多様化は、体細胞高頻度変異である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記標的核酸は、該標的核酸に対する遺伝子変換ドナーとして作用し得る少なくとも1つの核酸にさらに連結され、そして前記多様化は、体細胞高頻度変異および遺伝子変換の組合せである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記多様化活性化因子は、免疫グロブリンエンハンサー配列を含む、請求項1〜3に記載の方法。
  5. 前記多様化活性化因子は、配列番号第1番の位置2825〜3625、5114〜6106、5288〜5485、6107〜7099、6107〜9784、3098〜7099、9000〜9784、または9509〜9802の間の配列を有する核酸を含む、請求項1〜3に記載の方法。
  6. 前記多様化活性化因子の長さは、少なくとも100ヌクレオチドである、請求項1〜5に記載の方法。
  7. 前記多様化活性化因子は、配列番号第1番またはその断片と、少なくとも50%の配列同一性を共有する、請求項1〜6に記載の方法。
  8. 前記多様化活性化因子の一つより多いコピー、または一つより多い多様化活性化因子が、前記組換えレシピエント細胞内に存在する、請求項1〜7に記載の方法。
  9. 前記標的核酸は、外来性核酸である、請求項1〜8に記載の方法。
  10. 前記標的核酸は、免疫グロブリン鎖、選択マーカー、DNA結合タンパク質、酵素、受容体タンパク質、またはそれらの一部をコードする、請求項1〜9に記載の方法。
  11. 前記標的核酸と前記多様化活性化因子との間の距離は、150kb以下である、請求項1〜10に記載の方法。
  12. 前記多様化活性化因子の存在下における前記標的核酸の前記多様化は、該多様化活性化因子の非存在下よりも、少なくとも5倍高い、請求項1〜11に記載の方法。
  13. 前記レシピエント細胞は、活性化誘導性デアミナーゼ(AID)またはその機能的等価物を発現する真核細胞である、請求項1〜12に記載の方法。
  14. 前記レシピエント細胞は、Bリンパ球またはそれ由来の細胞株、好ましくはニワトリB細胞株DT40またはその誘導体である、請求項1〜13に記載の方法。
  15. 望ましい活性を有する標的核酸を調製するための方法であって、該方法は、
    (a)レシピエント細胞に、多様化活性化因子および任意で該標的核酸を含む1つ以上の核酸構築物を導入して、組換えレシピエント細胞を得る工程、
    (b)組換えレシピエント細胞を同定する工程であって、ここで該多様化活性化因子が、該標的核酸に連結している、工程、
    (c)(b)由来の細胞を、該標的核酸の発現および多様化に適当な条件下で、増殖および増加させる工程、ならびに
    (d)(c)由来の細胞の集団内で、望ましい活性を有する変異標的核酸を含む個々の細胞または細胞集団を選択する工程:
    を含み、
    ここで、該多様化活性化因子は、配列番号第1番の配列を有する核酸、該核酸の断片、ならびに該核酸および該断片に相同的な核酸からなる群より選択され、そして
    該多様化活性化因子は、該多様化活性化因子に連結した転写ユニットにおける遺伝的多様化を活性化する機能を有する、方法。
  16. 工程(c)および工程(d)が、反復的に繰り返される、請求項15に記載の方法。
  17. (d)において選択した細胞由来の前記標的核酸の変異配列を決定する工程(e)をさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記多様化を終了させる工程(f)をさらに含む、請求項15〜17に記載の方法。
  19. 多様化活性化因子を含む組換え核酸構築物であって、
    該多様化活性化因子は、配列番号第1番の配列を有する核酸、該核酸の断片、ならびに該核酸および該断片に相同的な核酸からなる群より選択され、そして
    該多様化活性化因子は、該多様化活性化因子に連結した転写ユニットにおける遺伝的多様化を活性化する機能を有する、組換え核酸構築物。
  20. 外来性核酸として多様化活性化因子を含む組換え細胞であって、
    該多様化活性化因子は、配列番号第1番の配列を有する核酸、該核酸の断片、ならびに該核酸および該断片に相同的な核酸からなる群より選択され、そして
    該多様化活性化因子は、該多様化活性化因子に連結した転写ユニットにおける遺伝的多様化を活性化する機能を有する、組換え細胞。
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