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JP2011225867A - 水性顔料分散液の製造方法 - Google Patents

水性顔料分散液の製造方法 Download PDF

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JP2011225867A
JP2011225867A JP2011078630A JP2011078630A JP2011225867A JP 2011225867 A JP2011225867 A JP 2011225867A JP 2011078630 A JP2011078630 A JP 2011078630A JP 2011078630 A JP2011078630 A JP 2011078630A JP 2011225867 A JP2011225867 A JP 2011225867A
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JP2011078630A
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Yoshinosuke Shimamura
佳ノ助 島村
Ken Kaneko
研 金子
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DIC Corp
Original Assignee
DIC Corp
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Abstract

【課題】良好な発色性、隠蔽性を有し、沈降が少なく、分散性と長期にわたる分散安定性に優れたインクジェット記録用の白色水性顔料分散液及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】酸化チタン、アニオン性基を含有する樹脂、水溶性有機溶剤、及び塩基性化合物を含有する水性顔料分散液であって、シリカ、アルミナを用いた特定の表面処理とシランカップリング剤による表面処理を併用することにより、極めて優れた分散安定性効果、沈降抑制効果が得られる。前記酸化チタンはアルミナ及びシリカによる表面処理後に、さらにシランカップリング剤によって表面処理され、前記アルミナ及びシリカによる表面処理量の総和のうち、アルミナ処理量の比率が35質量%以上、80質量%未満である。
【選択図】なし

Description

本発明は酸化チタンを着色剤とする分散安定性の良好な水性顔料分散液の製造方法に関する。
近年、インクジェット記録方法がオフィス用、産業用に多用されるようになっている。
使用されるインクとしては、環境負荷が少なく臭気の点でも問題の無い水性インクが既にオフィス用として広く用いられるが、産業用のインクとしても安全性・コストの観点から、溶剤系・UV系よりも水系が望まれ、水性インクへの転換が進んでいる。
特に産業用のインクについては使用環境の点で高い耐久性、耐光性が求められ、着色剤として顔料の使用が必要とされている。また最近はオフィス用途についても着色剤の染料から顔料への切り替えが進行している。
またインクジェット印刷用インクは今後、下地の白い紙への印刷だけでなく黒暗色系の多い布・繊維、あるいは透明フィルム・有色プラスチックなどへの印刷用にも拡大すると見られ、その視認性の良さからオフィス用、産業用を問わず水性白色インクの要望が高い。しかしこのようなインクジェット印刷用白色インクは溶剤系・UV系では一部市販されているが、生産や経時安定化が困難な水性のインクジェット印刷用白色インクは、まだ実用化されていないのが現状である。
インクジェット記録用白色インクは、特に産業用のマーキングインクとして重要であり、白色顔料としては、その隠蔽性の良さ・安価なこと、などから酸化チタンが用いられている。しかし着色剤として用いられる酸化チタンは比重が大きいため沈降し易く、従来から安定分散が困難であった。特に水性インクとして用いる場合には高い隠蔽性、発色性を維持しつつ良好な安定性を確保するのが難しかった。
着色剤としての酸化チタンの安定分散のためには、その表面処理を中心として種々の試みが行われてきた。例えば特許文献1には、酸化チタンを分散しアルコール系溶剤で分散させた白色顔料組成物である塗料分散体を得るとの記述があるが、該顔料組成物の水性化や水性塗料には言及しておらず酸化チタンへのシランカップリング処理の記述も無い。また、特許文献2では、プラスチックに練り込むために表面が親水性の酸化チタンを有機シラン化合物によって疎水化する、という記述があるが、水性化の手法については触れられておらず、またどのような酸化チタンが好適かについて、酸化チタンのアルミナ処理、シリカ処理等の表面処理については述べられていない。また、特許文献3では、酸化チタンの表面処理に関する記述はあるものの、シランカップリング剤として、アルキル基を含まないポリシロキサンを使用した油性塗料である、インクジェット記録用油性白色インキについて記載されているのみで、水性インキについては記載されていない。更に特許文献4には、酸化チタンのシランカップリング処理・水性塗料化に言及はしているが、酸化チタン表面のアルミナ処理:シリカ処理の比率や好適なカップリング剤との組み合わせについては記述が無い。また、酸化チタンの一次粒子径が1〜130nmと非常に微小粒径の酸化チタンを用いているために隠蔽性に劣っている。
上記のようにこれまでの方法では、水性媒体中で酸化チタンの良好な分散性・隠蔽性・非沈降性を確保し、長期にわたる優れた分散安定性を実現するには至っていない。
特開平6−107964号公報 特開2007−254757号公報 特開2004−263181号公報 特開2009−067968号公報
本発明の目的は、良好な発色性、隠蔽性を有し、沈降が少なく、分散性と長期にわたる分散安定性に優れたインクジェット記録用の白色水性顔料分散液及びその製造方法を提供することである。
さらに本発明の目的は上記特性と良好な吐出性を有するため、隠蔽性に優れた精細な画像を形成することが可能なインクジェット記録用白色水性インクを提供することである。
発明者らは酸化チタンの水性媒体中における良好な分散性を確保するために、酸化チタンの表面処理を行うことで、通常の有機顔料と同様にこれにアニオン性基を有する樹脂を吸着して顔料を被覆し、吸着樹脂による立体障害効果とアニオン性基の有する静電反発力により、これを行うことを考えた。このために、酸化チタンの表面を表面処理する方法を中心に検討をおこなったところ、シリカ、アルミナを用いた特定の表面処理とシランカップリング剤による表面処理を併用することにより、極めて優れた分散安定性効果、沈降抑制効果が得られることを見出した。
すなわち本発明は、酸化チタン、アニオン性基を含有する樹脂、水溶性有機溶剤、及び塩基性化合物を含有する水性顔料分散液であって、前記酸化チタンはアルミナ及びシリカによる表面処理後に、さらにシランカップリング剤によって表面処理され、前記アルミナ及びシリカによる表面処理量の総和のうち、アルミナ処理量の比率が35質量%以上、80質量%以下であることを特徴とする水性顔料分散液を提供する。
また本発明は、上記水性顔料分散液を含有するインクジェット記録用インクを提供する。
さらに本発明は、アルミナおよびシリカで予め表面処理された酸化チタンであって、前記酸化チタンと共に存在するアルミナが、前記酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの総量に対して、35質量%以上、80質量%以下である酸化チタンに対して、シランカップリング剤で表面処理する表面処理工程と、前記シランカップリング剤で表面処理された酸化チタン、アニオン性基を含有する樹脂、水溶性有機溶剤、および塩基性化合物を含有する混合物を混練して固形混練物を作製する混練工程、前記固形混練物を水性媒体中に分散する分散工程とを有することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法を提供する。
本発明の水性顔料分散液は、シリカ、アルミナを用いた特定の表面処理とシランカップリング剤による表面処理を併用している。酸化チタンは表面に水酸基を持ち親水性であることから、樹脂で分散・被覆・カプセル化などを行う場合には、表面にシランカップリング処理を行い親油化することが好適である。
シランカップリング処理を行う場合には、予め特定のAL/Si比率で酸化チタン表面を処理しておくと、その後のシランカップリング処理及びアニオン性基を有する分散用樹脂の被覆を良好に進行させることができ、水中分散に好適な酸化チタンが得られる。一般的に酸化チタンの表面処理は、酸化チタンの光触媒性を抑えるため、アルミナで行われるのが一般的であるが、さらに重要なことは表面の酸性・塩基性のコントロールを目的として、アルミナに加えてシリカで表面処理されていることが多いことである。
このようなアルミナとシリカで処理された酸化チタンを、アニオン性基を有する分散用樹脂で被覆して水性分散体中に分散し水性分散体を得る場合、アルミナが多すぎると酸化チタン表面の親水性が極めて強くなり、シランカップリング剤で被覆しきれなかった酸化チタン表面の親水基が残ることになる。このため通常は疎水性基を顔料表面に向けて酸化チタンの疎水性部分に吸着する、アニオン性基を有する分散用樹脂の吸着を妨げる。アルミナに比べて親水性の弱いシリカによる表面処理を併用すると、分散用樹脂の吸着はより容易に進行する。しかし逆にアルミナが少なすぎると、酸性酸化物としての特性を有するシリカ部分がアニオン性基を有する分散用樹脂中のアニオン性基部分と反発して樹脂が吸着しにくくなり、分散液の安定性・非沈降性に劣ることとなる。このような理由のため、好適なAL/Siの比率範囲が存在すると考えられる。
このように、好適なAL/Siの比率で処理された酸化チタンに、更にシランカップリング処理することで樹脂吸着量が多くなる。このため吸着樹脂による立体障害と、該樹脂の有するアニオン性基による水中における静電反発により、酸化チタンが沈降しにくい白色の水性顔料分散体を得ることが出来る。
本発明の水性顔料分散液に、公知の有機溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、カビ防止剤、付着防止剤、PH調整剤、等を添加して作成できるインクジェット記録用インクは、隠蔽性・非沈降性・経時安定性などに優れており、各種のインクジェット装置により、紙・布・繊維、あるいは透明フィルム・有色プラスチックなどの被記録媒体への印刷用に非常に有用に使用できる。
本発明の水性顔料分散液の製造方法は、酸化チタンと共に存在するアルミナが、前記酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの総量に対して、35質量%以上、80質量%以下である表面処理された酸化チタンを用い、これに対してシランカップリング剤でさらに表面処理する表面処理工程を経て作製された酸化チタンを用いているので、該酸化チタン表面に樹脂が良好に吸着しこれを被覆し易く、アニオン性基を含有する樹脂、水溶性有機溶剤、および塩基性化合物を含有する混合物を分散する分散工程を経ることにより、分散安定性に優れた水性白色分散液を得ることが出来る。
本発明の水性顔料分散液は、微小粒径の酸化チタンを用いることによる隠蔽性の低下の弊害が無く、また樹脂吸着量が多いため、水性媒体中で静電反発により酸化チタンが沈降しにくい。このため経時安定性にも優れた白色水性顔料分散体であって、インクジェット記録用水性インクとして同様に良好な特性を有する。
さらに本発明の水性顔料分散液の製造方法は、特定処理量のアルミナ及びシリカによる表面処理を行われた酸化チタンに、シランカップリング剤によってさらに表面処理を行う工程を有しており、該酸化チタンにアニオン性基を含有する樹脂が良好に吸着するため、極めて分散安定性の良好な水性顔料分散液を製造することができる。
以下に本発明の水性顔料分散液及びその製造方法、ならびにインクジェット記録用インクについて、さらに詳細な説明を行う。最初に本発明で使用する各種の原材料およびその配合範囲について詳細に説明し、その後でそれらを用いた本発明の水性顔料分散液の製造方法について説明を行う。
酸化チタンとしては、公知のルチル型・アナターゼ型の二酸化チタンが使用できるが、好ましくはルチル型二酸化チタンを使用する。本発明で使用する酸化チタンの平均粒径としては、100〜500nmのものを使用することが好ましく、150〜400nmのものを使用することがより好ましい。平均粒径が100nm以下であると水性媒体中の非沈降性や分散安定性はより実現し易くなるものの、白色度や隠蔽性が劣ってしまい本来の白色インキとしての実用性が低下する、平均粒径が500nm以上になると白色度や隠蔽性の点では問題ないが、非常に沈降しやすくなり、水性媒体中で安定した分散を得難くなる。またその大きさや重さがインク吐出性に悪影響を及ぼすため、インクジェット記録用インクとして使用することが極めて困難となる。これら理由から、粒径について実用的には200〜300nmが更により好ましい。
なお原料としての酸化チタンの平均粒径は電子顕微鏡写真により20個の粒径測定を行って平均をとったものとする。
また、一般に酸化チタンは光触媒性による有機物分解性を持つため、樹脂で直接分散・被覆させることは好適ではない。この光触媒性を封じるために、通常は表面を無機物で被覆され、アルミナで表面処理を行うことが一般的である。さらに酸化チタンの表面の酸・塩基の状態を調整するためにシリカを併用しての表面処理も行われる。さらに主に分散時の酸化チタンの濡れを改良するためにアルミナが使用され、主に印刷物の耐久性を改良するためシリカが多用されている。
酸化チタンの表面処理方法としては、水系処理、気相処理等が行われるが、上記理由のため表面処理剤としては、一般的にアルミナ、シリカが使用され、この結果、通常塗料用酸化チタンとしては、未処理、アルミナ処理、アルミナ・シリカ処理のものがある。また、アルミナ・シリカ処理の顔料については、アルミナ処理量に比較してシリカ処理量の多い品種、シリカ処理量に比較してアルミナ処理量の多い品種が市販されている。
本発明で使用する酸化チタンの表面処理は、表面処理後の酸化チタン表面に吸着されるアニオン性基を有する樹脂との関係から、前記アルミナ及びシリカによる表面処理量の総和のうち、アルミナ処理量の比率が35質量%以上、80質量%以下のものを使用する。
酸化チタンを処理するこれら無機物の量は必ずしも限定されないが、一般的には酸化チタン100部に対して30部以下である。
酸化チタンの表面がアルミナ、もしくはアルミナ及びシリカで表意面処理されている場合のアルミナとシリカの比率は、アルミナが多すぎるとその強い親水性が完全には除去しきれない。この結果、通常はアニオン性基を外側にして、疎水性部分で顔料に吸着する本発明で使用のアニオン性基を有する樹脂が、酸化チタン表面に対して行う吸着が阻害される。さらにアルミナは酸化チタン表面でAl−OHの形で存在しており、アルミナ処理量が多量すぎると、このOHに吸着させるためのシランカップリング剤も多量に必要となり、処理の際の増粘などの問題が発生しやすい。一方アルミナ処理量が少なすぎ、シリカ処理量の比率が多すぎると、酸性顔料としての特性が強くなるため、酸化チタン表面がアニオン性基を有する樹脂のアニオン性基部分と反発し、酸化チタン表面に吸着しにくくなる。従って実用的なアルミナによる処理量の、アルミナ及びシリカ処理量の総和に対する比率の範囲としては35〜80質量%である。35〜65質量%
がより好ましく、35〜50質量%がさらにより好ましい。
このような表面処理の行われた酸化チタンは石原産業(株)、テイカ(株)等の酸化チタン製造メーカーより、市販されており、未処理、アルミナ処理、アルミナ・シリカ処理のものがある。また、アルミナ・シリカ処理の顔料については、アルミナ処理量に比較してシリカ処理量の多い品種、シリカ処理量に比較してアルミナ処理量の多い品種が市販され、アルミナによる処理量が上記比率の範囲に入る酸化チタンも入手することができる。
なお、本発明の表面処理に用いられたアルミナ及びシリカそれぞれの質量比は、酸化チタンの表面に酸化チタンと共に存在するアルミナ及びシリカの量から推定することができる。アルミナ及びシリカの存在量比は、蛍光X線またはESCA等により酸化チタン表面に吸着されたアルミナ、またはシリカの量を分析、比較することによって確認することができる。特に蛍光X線による測定が簡便で精度が高い。シリカおよびアルミナは酸化チタンの表面上に存在する他、その一部が遊離した粒子として存在する可能性があり、蛍光X線による測定を行うと、その総量を測定することができる。蛍光X線による定量法については、標準資料を用いた検量線による分析方法が確立されている。
したがって市販の酸化チタンに対して、その表面に存在するアルミナとシリカの質量比を蛍光X線による測定で確認し、種々の質量比の酸化チタンを使用することができる。
本発明で使用するシランカップリング剤としては、アルミナ処理もしくはアルミナ及びシリカ処理された酸化チタン表面に存在する水酸基と反応する加水分解基と、有機官能基を有しており、その一般構造は
下記一般式(1)
Figure 2011225867
(1)
(式中、(R1)(R2)(R3)及び(R4)はそれぞれ独立に、水素原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、クロル基、有機基のいずれかであり、少なくとも1つはアルコキシ基、ヒドロキシ基、クロル基のいずれかであり、かつ、少なくとも1つは有機基である。
a,b,c及びdは0〜3の整数であり、かつ、a+b+c+d=4である。)
の構造を有する有機ケイ素化合物である。
これらシランカップリング剤は加水分解基の加水分解によってシラノールを生じ、シラノール同士が縮合してシロキサン結合となりオリゴマーを形成する。一方、無機化合物の酸化表面あるいは水酸基とも同様のメカニズムで反応し、無機物表面にある水酸基との水素結合を介して無機物表面に移行し、脱水縮合反応を経てポリシロキサン結合を形成する。これら反応は並行して進行し、ポリシロキサン結合を有するオリゴマー、ポリマーによる被覆、すなわちオルガノポリシロキサン被覆を無機物表面に形成する。
具体的な化合物としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン等のサルファーシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネートシラン等をあげることができる。
前記一般式(1)の(R1)(R2)(R3)及び(R4)の少なくとも1つはクロル基、メトキシ基、またはエトキシ基であり、かつ、(R1)(R2)(R3)及び(R4)の少なくとも1つはビニル基であることが好ましい。
これらのシランカップリング剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明で使用するシランカップリング剤としてはアニオン性基を有する樹脂の疎水性部分に対して吸着性が良く、後述するが、酸化チタンを分散・被覆・カプセル化する為の水溶性樹脂には多くのStモノマーを含むものが好適なことから、これら有機官能基の中では特にStへの親和力が強いビニル基が好適である。このため、特にアニオン性基を有する樹脂がスチレンアクリル系樹脂の場合に、スチレンモノマーからなる疎水性部位に吸着性が良好と考えられるビニルシランが好ましく、中でもビニルトリエトキシシランまたはビニルトリメトキシシランが好ましく、保存安定性、環境面からみた安全性の点でより優れているビニルトリエトキシシランがさらにより好ましい。
アルミナ処理もしくはアルミナ及びシリカで処理された酸化チタンをシランカップリング剤で処理するには、例えば水中で酸化チタンとシランカップリング剤とを混合して加熱・攪拌し、しかる後に完全に水分を揮発させれば良い。シランカップリング剤の使用量は、一般に0.05〜20%程度であるが、酸化チタンは比較的に比表面積が小さいので1〜10%程度でその効果を発現できる。
本発明で使用するアニオン性基を有する樹脂としては、カルボキシル基・スルホン基などの極性基をもつアクリル系・ポリエステル系・エポキシ系・ウレタン系、またはその共重合体などが使用できるが、シランカップリング剤が持つ有機官能基への吸着が良い方が好ましいことを考慮すると、構成モノマーの配合成分としてその中にスチレン部位をもつ構成の樹脂が好ましく、酸価やガラス転移点のコントロールもし易い点からスチレンアクリル酸系樹脂が好ましい。
アニオン性基を有するスチレンアクリル系樹脂は、構成モノマーとしてスチレン系モノマーと、ラジカル重合性の二重結合を有しアニオン性基を含有するモノマーを含有する。スチレン系モノマーとしては公知の化合物を用いることができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレンの如きアルキルスチレン、4−フルオロスチレン、3−クロロスチレン、3−ブロモスチレンの如きハロゲン化スチレン、更に3−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン等がある。
スチレンアクリル系樹脂の構成成分としてのスチレン系モノマーの使用比率は、全モノマー成分に対して20〜90質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることがさらに好ましく、60〜90質量%であることがさらにより好ましく、70〜90質量%であることがさらに好ましい。スチレン系モノマーの使用比率が20質量%未満であると、表面処理された酸化チタンへのアニオン性基を有するスチレンアクリル酸系樹脂の親和性が不充分となり、水性顔料分散液の分散安定性が低下する傾向がある。また該水性顔料分散液から得られるインクジェット記録用水性インクの記録特性が劣化し、画像記録濃度が低下する傾向があり、更に耐水特性も低下する傾向がある。30質量%未満のときは20質量%未満のときほどではないが、同様の傾向が認められる。スチレン系モノマーの量が上記範囲であると、表面処理を行って疎水性となった酸化チタン表面にアニオン性基を有するスチレンアクリル酸系樹脂が吸着し易い。またアクリル酸、メタクリル酸等アニオン性基を有するモノマーを構成成分として十分使用できるため、スチレンアクリル酸系樹脂の水性媒体に対する分散性を良好に維持することができ、水性顔料分散液における顔料の分散性や分散安定性を向上させることができる。更に、インクジェット記録用水性インクとして使用した場合の印字安定性が良好になる。一方、スチレン系モノマーの使用比率が90質量%を超えると、アニオン性基を有するモノマーの構成比率が極めて少なくなるため、水性媒体への分散性が不十分となる傾向にあり、インクジェット記録用水性インクを作製したときの分散性、分散安定性が低下する傾向がある。
スチレン系モノマーと共重合させるラジカル重合性の二重結合とアニオン性基を有するモノマーのアニオン性基としては、例えばカルボキシル基、スルホン基、ホスホ基等をあげることができる。原料モノマーの入手しやすさ、価格等を考慮すると、中でもカルボキシル基またはスルホン基を含有するアニオン性基含有モノマーが好ましく、電気的中性状態と、アニオン状態の共存範囲を広く制御できる点で、カルボキシル基を有するアニオン性基含有モノマーが好ましく、その中でも特に不飽和脂肪族カルボン酸モノマーが好ましい。
不飽和脂肪族カルボン酸モノマーとしては、公知の化合物を使用することができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸を使用するのが好ましく、両者を併用するのが特に好ましい。アクリル酸とメタクリル酸を併用することによって、樹脂合成時の共重合性が向上して、樹脂の均一性が良くなり、該樹脂による顔料分散を行った場合、分散剤の組成の不均一性に起因すると考えられる安定性の低下が抑制されると考えられる。
ゆえに本発明で使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系樹脂の構成モノマーとしては、スチレン系モノマー、アクリル酸、及びメタクリル酸の3種のモノマーを使用するのが好ましく、それらのモノマーの含有比率の総和が、全モノマー成分に対して95質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明において使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系樹脂は、塩基性化合物で中和することにより安定した水分散性を得るため、その樹脂酸価が50〜250mgKOH/gが好ましい。50mgKOH/g未満だと水性媒体中での分散性、溶解性に極めて乏しく、水分散液や水溶液にならなかったり、液中で析出してしまう可能性がある。また250mgKOH/gを超えると、水性媒体中に溶出する樹脂成分が増加して酸化チタンへの樹脂吸着量が低下したり、分散液の粘度が増加したりする他、顔料粒径や樹脂そのものの安定性の悪化、樹脂の黄変、樹脂塗膜の脆性などの悪影響が出る場合が有る。これら理由から、酸価の範囲は75〜200mgKOH/gがより好ましく、更に好ましくは100〜200mgKOH/gである。
本発明で使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)の重量平均分子量は5,000から40,000の範囲内にあることが好ましく、7,500から30,000の範囲内にあることがより好ましい。中でも、10,000〜25,000の範囲内にあることが特に好ましい。重量平均分子量が5,000未満であると、顔料(a)のインクジェット記録用水性顔料分散液を作製したときの長期保存安定性が悪くなる傾向にあり、顔料の凝集等による沈降が発生する場合がある。アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)の重量平均分子量が40,000を超えると、これを用いたインクジェット記録用水性顔料分散液から調製したインクジェット記録用水性インクの粘度が高くなって、インクの吐出安定性が不安定になる傾向にある。なお、ここで重量平均分子量とはGPC(ゲル・浸透・クロマトグラフィー)法で測定される、ポリスチレン換算の値とする。
本発明の水性顔料分散液に含有される塩基性化合物は、アニオン性基を有する樹脂のアニオン性基を中和し、該共重合体の分散性を向上させる。その結果分散液中の樹脂で被覆された酸化チタン粒子の分散状態がより安定となり、分散安定性、長期保存安定性も向上する。
使用される塩基性化合物としては、無機系塩基性化合物、有機性塩基性化合物のいずれも用いることができるが、アルカリ強度を調整し易い点において、無機系塩基性化合物がより好ましく、その中でもアルカリ金属水酸化物がさらに好ましい。
本発明で使用する水溶性有機溶剤は、インクジェット用水性インクに適した公知慣用のものが使用できる。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。
これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上を混合して用いることができる。また適宜水を併用することもできる。特に、沸点が170℃以上、より好ましくは200℃以上の湿潤剤としての機能を有する水溶性有機溶剤を用いると、水性顔料分散体の製造中にこれら水溶性有機溶剤が揮散しにくく、水性顔料分散体の固形分比率を一定に保ちつつ分散を進行させることができる。
水との併用が容易な有機溶媒としては、メタノール・エタノール・イソプロピルアルコールなどの一価アルコール類、グリセリン・ジグリセリンなどの多価アルコール類、エチレングリコール・プロピレングリコール・ヘキシレングリコールなどのグリコール類、アセトン・メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチレングリコール・ジエチレングリコールモノメチルエーテル・ジエチレングリコールモノエチルエーテル・トリエチレングリコール・トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類、などの有機溶剤が使用出来る。
シランカップリング処理された酸化チタンを、アニオン性基を含有する樹脂・水溶性有機溶媒・塩基性化合物・および水に分散させて水性顔料分散液を得るには、公知の混練機・分散機が使用出来る。例えば、ニーダーなどの各種公知の混練基でこれら全材料を高濃度の固形物状態で混練した後、混練工程の生成物を希釈して得ることが出来る。また、例えばビーズミルのような各種公知の分散機で、これら全材料を混合させた混合液を直接分散しても得ることができる。また、さらに上記混練機・分散機を順次併用して用いても良い。中でも上記混練工程を経て製造すると樹脂が顔料表面に安定的に吸着し易く、このため水性顔料分散液の製造時間も短く、生産効率が向上する点で好ましい。
上記原材料を用いて本願発明の水性顔料分散液を作製するには、アルミナおよびシリカで予め表面処理され、アルミナによる処理量がアルミナとシリカの処理量の総和の35〜80質量%である酸化チタンに対して、シランカップリング剤で表面処理する表面処理工程を行い、前記シランカップリング剤で表面処理された酸化チタン、アニオン性基を含有する樹脂、水溶性有機溶剤、および塩基性化合物を含有する混合物を水性媒体中に分散する分散工程を行うことによって製造する。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、水性顔料分散液を用いて、常法により調製して作製することができる。基本的には例えば上述のようにして得られた水性顔料分散液を、さらに水性媒体にて希釈して製造することができる。本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液を用いてインクジェット記録用水性インクを調製する場合は、工程内で生じるあるいは混入する粗大な成分が、ノズル詰まり、その他の画像特性を劣化させる原因にならないように、インク調製前あるいは後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子等をさらに除去し、粗大粒子数を低減するための工程を用いても良い。水性顔料分散液からインクジェット記録用インクを作製するため、さらに添加する材料としては、特に限定されるものではなく、公知の有機溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、カビ防止剤、付着防止剤、PH調整剤、等を添加することが出来る。水性顔料分散液を希釈する水性媒体には湿潤剤が配合されていると、インク組成物において、乾燥防止、粘度調整、濃度調整に寄与するため、好ましい。また、記録媒体への浸透性を示す水溶性有機溶剤が配合されていると、インク組成物に浸透性を付与することができ好ましい。インク組成物において浸透性は、記録媒体へのインク組成物の侵透性や記録媒体上でのドット径の調整を行うために必要な特性である。
このように作製したインクジェット記録用水性インクは、インクジェット記録用のインクとして各種のインクジェット用プリンターに好適に用いることができる。適用可能なインクジェットの方式は特に限定するものではないが、荷電制御型、スプレー型等の連続噴射型、ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等のオンデマンド型のもので、公知のものを例示することができる。そして、本願のインクジェット記録用水性インクは、これら各種のインクジェット方式に適用した場合に、極めて安定したインク吐出が可能となり、特にサーマルジェット方式のインクジェット記録に対して好適に用いることができる。
以下に実施例、比較例を示す。
(実施例1)酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの質量比がアルミナ:シリカ=2:3である表面処理された酸化チタン100部に対して、ビニルトリエトキシシラン3部を加え、ボールミルにて加水・加熱・混合処理して取り出し後、更に加熱して水分を取り除き、シランカップリング処理された酸化チタンを得た。続いて得られたシランカップリング剤により表面処理された酸化チタン100部に対して、以下の配合で混合物を作製し、ジルコニアビーズ450部とともにポリエチレン容器に入れ、ペイントコンディショナーで3時間震盪し水性顔料分散液Aを得た。
なお使用した酸化チタンの表面に存在するアルミナとシリカの質量比を、走査型蛍光X線分析装置(ZSX Primus リガク社製)を使用して測定したところ、アルミナ量がアルミナとシリカの総量の38質量%であった。
シランカップリング剤処理済み酸化チタン 100部
スチレンアクリル系樹脂A
(酸価150、重量平均分子量10000
スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13) 8部
2−ピロリドン 32部
水酸化カリウム水溶液(8規定) 3.53部
純水 106.47部
(実施例2)実施例1のスチレンアクリル系樹脂Aを酸価150、重量平均分子量12000、スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸/メタクリル酸=30/47/10/13のスチレンアクリル系樹脂Bに変更する以外は実施例1と同様にして水性顔料分散液Fを得た。
(比較例1)酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの質量比がAL:Si=2:3である表面処理された酸化チタン100部に対して、シランカップリング剤による表面処理を実施せず、他は実施例1と同様にして水性顔料分散液Bを得た。
(比較例2)酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの質量比がAL:Si=2:3である表面処理された酸化チタンに換えて、ALまたはSiで表面処理されていない酸化チタン100部を使用する他は、実施例1と同様にして水性顔料分散液Cを得た。
(比較例3)酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの質量比がAL:Si=2:3である表面処理された酸化チタンに換えて、同質量比がAL:Si=1:2である酸化チタンを使用する他は、実施例1と同様にして水性顔料分散液Dを得た。なお使用した酸化チタンの表面に存在するアルミナとシリカの質量比を、実施例1と同様に測定したところ、アルミナの量がアルミナとシリカの総量の29質量%であった。
(比較例4)酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの質量比がAL:Si=2:3である表面処理された酸化チタンに換えて、アルミナのみで表面処理された酸化チタンを使用する他は、実施例1と同様にして水性顔料分散液Eを得た。
また、得られた分散体の粒径安定性・非沈降性を見るべく、60℃2週間後の粒径安定性、常温2週間後の沈降傾向を測定した。さらに分散安定性に影響の大きいゼータ電位、散乱光減少率について測定を行った。測定方法を下記に示す。
〔初期分散粒径・粒径安定性〕
実施例、比較例で作製された水性顔料分散液を純水で約2000倍に希釈し、マイクロトラックUPA−150(日機装社製)を用いて、水性顔料分散液作製時の体積平均粒径を測定し、これを初期分散粒径とした。60℃の恒温層に該水性顔料分散液を2週間静置後、同様の方法で体積平均粒径を測定して粒径増加率を計算し、以下の評価基準で評価を行う。
○:粒径増加率が20%未満
×:粒径増加率が20%以上〜50%未満
××:粒径増加率が50%以上
〔沈降傾向〕
容量10mlのガラス瓶に実施例、比較例で作製された水性顔料分散液を入れ、25℃で1週間保存後に、その底部への沈降傾向を以下の基準により目視評価した。
○:沈降が認められない
△:沈降が僅かに認められる
×:沈降が有ることがはっきりとわかる
××:沈降が非常に多い
〔ゼータ電位〕
実施例、比較例で作製された水性顔料分散液を、酸化チタン濃度1%に希釈して、DT1200(日本ルフト社製)を用い、分散液中の酸化チタンのゼータ電位を測定した。
〔散乱光減少率〕:
実施例、比較例で作製された水性顔料分散液を、酸化チタン濃度1%に水で希釈して分散体サンプル作製し、25℃で放置して2時間ごとに液面から2cm下方の光散乱率(%)をタービスキャンLab (Formulaction社製)にて測定し、単位時間当たりの散乱光減少率を求めた。この数値が小さいほど、酸化チタン粒子による光散乱が減少しない(酸化チタンが沈降しない)ことを表す。
表1に上記実施例、比較例で作製した水性顔料分散液の測定結果を示す。
Figure 2011225867
上記結果より、酸化チタンと共に存在するアルミナが、酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの総量の35質量%を超える量となるように表面処理された酸化チタンを用い、該酸化チタンに対して3質量%のシランカップリング剤を用いてさらに表面処理を施し、さらにアニオン性基を有する樹脂を顔料に吸着させた後、水性媒体中に分散した分散体(実施例1)は、粒径安定性が良好で目視による非沈降性にも優れている。このことはゼータ電位の測定値でも確認することが出来、実際に25℃で静置した散乱光減少率でもこれが確認できた。
実施例1で使用したものと同様のアルミナ・シリカ処理を行った酸化チタンを用い、シランカップリング剤による処理を行わなかった比較例1においては、樹脂が顔料表面の十分に吸着せず、粒径安定性が低下する結果となっている。またアルミナ・シリカ処理を行っていない酸化チタンを使用した場合は比較例2に示すように、シランカップリング剤による処理を行っても、十分にカップリング剤の吸着、及び樹脂の吸着が行われず、粒径安定性が悪く、沈降も多いことがわかる。
さらに酸化チタンと共に存在するアルミナが、酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの総量の35質量%以下の酸化チタンを用いた比較例3においては、前述のように多量のSiによる酸性分と樹脂中のアニオン性基の反発により、樹脂の酸化チタン表面への吸着が良好には進行せず、粒径安定性は維持できたものの、初期分散粒径が増加し、また非沈降性に劣る結果となったと考えられる。
アルミナのみで表面処理された酸化チタンを用いた比較例4においては、シランカップリング剤の吸着と樹脂吸着は一定量行われ、粒径安定性は良好となる。しかしAL−OHによる強い親水性が残存するため樹脂の吸着の進行を妨げてしまい、沈降を効果的に抑制するには至らなかったと考えられる。
本発明による白色水性分散液、またはインクは、下地の白い紙への印刷だけでなく黒暗色系の多い布・繊維、あるいは透明フィルム・有色プラスチックなどへのインクジェット印刷用印刷用にも好適に使用される。

Claims (11)

  1. 酸化チタン、アニオン性基を含有する樹脂、水溶性有機溶剤、及び塩基性化合物を含有する水性顔料分散液であって、前記酸化チタンはアルミナ及びシリカによる表面処理後に、さらにシランカップリング剤によって表面処理され、前記アルミナ及びシリカによる表面処理量の総和のうち、アルミナ処理量の比率が35質量%以上、80質量%以下であることを特徴とする水性顔料分散液。
  2. 酸化チタン、アニオン性基を含有する樹脂、水溶性有機溶剤、及び塩基性化合物を含有する水性顔料分散液であって、前記酸化チタン表面はアルミナ及びシリカによって被覆され、さらにシランカップリング剤によって表面処理され、前記酸化チタンを被覆するアルミナは、前記酸化チタンを被覆するアルミナとシリカの総量に対して、35質量%以上、80質量%以下であることを特徴とする水性顔料分散液。
  3. 前記酸化チタンの平均粒径は100から500nmである請求項1または2に記載の水性顔料分散液。
  4. 表面処理に使用されたシランカップリング剤は、酸化チタンの1〜10質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
  5. 前記シランカップリング剤は、水酸基と反応する加水分解性基と有機官能基を有する下記一般式(1)
    Figure 2011225867
    (1)
    (式中、(R1)(R2)(R3)及び(R4)はそれぞれ独立に、水素原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、クロル基、有機基のいずれかであり、少なくとも1つはアルコキシ基、ヒドロキシ基、クロル基のいずれかであり、かつ、少なくとも1つは有機基である。
    a,b.c,及びdは0〜3の整数であり、かつ、a+b+c+d=4である。)
    の構造を有する有機ケイ素化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
  6. 前記一般式(1)の(R1)(R2)(R3)及び(R4)の少なくとも1つはクロル基、メトキシ基、またはエトキシ基であり、かつ、(R1)(R2)(R3)及び(R4)の少なくとも1つはビニル基である請求項5に記載の水性顔料分散液。
  7. 前記シランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランのいずれかである請求項5に記載の水性顔料分散液。
  8. 前記アニオン性基を有する樹脂は、スチレンアクリル酸系共重合体であって、50〜250の酸価、5000〜40000の重量平均分子量、及び全構成モノマーの総量に対して20質量%以上の構成比のスチレンモノマーを含有する請求項1〜7のいずれか1項
    に記載の水性顔料分散液。
  9. 請求項1〜8に記載の水性顔料分散液を含有するインクジェット記録用水性インク。
  10. アルミナおよびシリカで予め表面処理された酸化チタンであって、前記酸化チタンと共に存在するアルミナが、前記酸化チタンと共に存在するアルミナとシリカの総量に対して、35質量%以上、80質量%以下である酸化チタンに対して、シランカップリング剤で表面処理する表面処理工程と、
    前記シランカップリング剤で表面処理された酸化チタン、アニオン性基を含有する樹脂、水溶性有機溶剤、および塩基性化合物を含有する混合物を分散する分散工程と
    を有することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法。
  11. 前記アニオン性基を有する樹脂は、スチレンアクリル酸系共重合体であって、75〜200の酸価、5000〜40000の重量平均分子量、及び全構成モノマーの総量に対して20質量%以上の構成比のスチレンモノマーを含有する請求項10に記載の水性顔料分散液の製造方法。
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