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JP2011215240A - フォトクロミックレンズ - Google Patents

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JP2011215240A JP2010081389A JP2010081389A JP2011215240A JP 2011215240 A JP2011215240 A JP 2011215240A JP 2010081389 A JP2010081389 A JP 2010081389A JP 2010081389 A JP2010081389 A JP 2010081389A JP 2011215240 A JP2011215240 A JP 2011215240A
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Tomofumi Onishi
智文 大西
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Abstract

【課題】レンズの曇りが抑制された、優れた光学特性を有するフォトクロミックレンズを提供すること。
【解決手段】フォトクロミック色素および樹脂成分を含むフォトクロミック層と有機系ハードコート層とをこの順に有するフォトクロミックレンズ。前記フォトクロミック層と有機系ハードコート層との間に、無機物質からなる中間層を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、フォトクロミックレンズに関するものであり、詳しくは、優れた光学特性を有するフォトクロミックレンズに関するものである。
近年、有機フォトクロミック染料を応用したフォトクロミックレンズが眼鏡用として市販されている(例えば特許文献1参照)。これらは明るい屋外で発色して高濃度のカラーレンズと同様な防眩効果を有し、室内に移ると高い透過率を回復するものである。
フォトクロミックレンズには、所定の光が入射するとすばやく応答して高濃度で発色し、かつ上記光がない環境下に置かれると速やかに退色することが求められる。従来、このフォフォトクロミックレンズの発退色の反応速度および発色濃度は、分子構造に起因するフォトクロミック色素固有の特性に依存すると考えられていた。そのため、特定の分子構造を有するフォトクロミック色素を使用することにより、フォトクロミック膜の光に対する応答性(反応速度および発色濃度)を改善することが検討されてきた。
これに対し、近年、フォトクロミック膜に適度な柔軟性(流動性)を持たせることにより、膜中でフォトクロミック色素が動き易くなり、発退色の反応速度および発色濃度が大きく向上することが報告されている(特許文献2参照)。
WO2005/014717A1 WO2008/001578A1
フォトクロミックレンズでは通常、レンズの耐久性を確保するためにフォトクロミック層上にハードコート層が設けられる。このようなハードコート層を設けることは、上記特許文献2に記載されているようにフォトクロミック膜に適度な柔軟性を持たせた場合にはレンズの耐久性を高める上で特に有効である。上記用途に使用されるハードコート層としては、高硬度な被膜を容易に形成することができるため、有機系のハードコート液から形成されたハードコート層(有機系ハードコート層)が広く用いられている。
しかし本願発明者らの検討の結果、フォトクロミック層上に有機系ハードコート層を形成したフォトクロミックレンズにおいては、レンズに曇りが生じ光学特性が低下する場合があることが明らかとなった。
そこで本発明の目的は、レンズの曇りが抑制された、優れた光学特性を有するフォトクロミックレンズを提供することにある。
本願発明者らが、上記目的を達成するためにフォトクロミックレンズにおいて生じる曇りの原因について検討した結果、ハードコート層の表面に微細な凹凸が存在することにより乱反射が生じていることが、上記曇りの原因となっていることが判明した。この点について本願発明者らは、フォトクロミック層、ハードコート層はいずれも主成分が有機化合物であるため層間で混ざり合いが生じやすく、特にフォトクロミック層中のマトリックスへの溶解度が低い成分や低分子量成分、さらにはフォトクロミック色素がフォトクロミック層からハードコート層へ溶出(移動)し、ハードコート層の形成を阻害するか、または最終的にハードコート層表面で析出物となることが原因と推察した。フォトクロミックレンズは、フォトクロミック色素が光の有無によって構造を可逆的に変化させることにより発退色するものであるため、フォトクロミック色素を層内で完全に固定してしまうとフォトクロミック色素の構造を変化させることが困難となる。そこで特許文献2に記載されているようにマトリックスに適度な柔軟性を付与することが有効となるが、層内で分子の動き易さを確保することは、その反面、成分を層内に固定化するという面では不利となる場合がある。
これに関連し特許文献1では、フォトクロミック層を形成するための硬化性組成物の処方によってフォトクロミック色素の溶出を抑制することが提案されているが、このようにフォトクロミック層の処方により溶出を抑制する技術は、層内に色素を固定化するものであるため、フォトクロミック色素の動きやすさを維持する上では不利である。
以上の知見に基づき本願発明者らは更に検討を重ねた結果、両層の間に無機物質からなる中間層を設けることにより、曇りが抑制されたフォトクロミックレンズが得られることを見出すに至った。これは、有機層同士であると層間移動が生じやすいところ、層間に無機系の層を形成すれば、該層によって相間の混ざり合いを抑制(フォトクロミック層からの成分の溶出を遮断)することが可能となり、これによりハードコート層表面でフォトクロミック層成分に起因する析出物の発生を抑制できることによるものと考えられる。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
即ち、上記目的は、下記手段によって達成された。
[1]フォトクロミック色素および樹脂成分を含むフォトクロミック層と有機系ハードコート層とをこの順に有するフォトクロミックレンズであって、
前記フォトクロミック層と有機系ハードコート層との間に、無機物質からなる中間層を有することを特徴とするフォトクロミックレンズ。
[2]前記中間層は、無機酸化物からなる蒸着膜である、[1]に記載のフォトクロミックレンズ。
[3]前記無機酸化物はケイ素酸化物である、[2]に記載のフォトクロミックレンズ。
[4]前記有機系ハードコート層は、有機ケイ素化合物および金属酸化物粒子を含むものである、[1]〜[3]のいずれかに記載のフォトクロミックレンズ。
本発明によれば、優れた光学特性を有するフォトクロミックレンズを提供することができる。
本発明のフォトクロミックレンズの層構成の一例を示す概略図である。
本発明は、フォトクロミック色素および樹脂成分を含むフォトクロミック層と有機系ハードコート層とを有するフォトクロミックレンズに関する。本発明のフォトクロミックレンズは、前記フォトクロミック層と有機系ハードコート層との間に、無機物質からなる中間層(以下、「無機中間層」ともいう)を有するものである。先に説明したように、本発明のフォトクロミックレンズは、有機系の層であるフォトクロミック層とハードコート層との間に無機物質からなる中間層を有することにより、優れた光学特性を発揮することができる。
以下、本発明のフォトクロミックレンズについて、更に詳細に説明する。
レンズ基材
フォトクロミックレンズの製造方法としては、レンズ基材上にフォトクロミック色素を含む樹脂コーティングを設ける方法(コーティング法)、レンズ基材にフォトクロミック色素を含浸させる方法(含浸法)または練りこむ方法(練りこみ法)等が用いられる。いずれの方法でもレンズ基材は特に限定されるものではなく、プラスチック、無機ガラス等の通常のレンズ基材を用いることができる。プラスチックとしては、例えばメチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エピチオ基を有する化合物を材料とする重合体、スルフィド結合を有するモノマーの単独重合体、スルフィドと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリスルフィドと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリジスルフィドと一種以上の他のモノマーとの共重合体等などが挙げられる。基材の厚さは、特に限定されるものではないが、通常1〜30mm程度である。また、その上にフォトクロミック層が形成される基材の表面形状は特に限定されず、平面、凸面、凹面等の任意の形状であることができる。
コーティング法では、フォトクロミック層は通常、レンズ基材上に直接または他の層を介して間接的に設けられる。フォトクロミック層と基材との間に形成され得る層の一例としては、ハードコート層やプライマー層を挙げることができる。ここで形成されるハードコート層の詳細は、中間層上に形成するハードコート層について後述する通りである。または、基材上に耐摩耗性を付与するために、特表2001−520699号公報に記載されている組成物から形成されたハードコート層を設けることも可能である。また、基材とフォトクロミック層との間に形成されるプライマー層としては、接着層として機能し得る、ポリウレタン等の公知の樹脂を用いることができる。
ここで形成されるハードコート層、プライマー層の厚さはいずれも、例えば0.5〜10μm程度である。なお、レンズ基材としてはハードコート付きで市販されているものもあり、本発明ではそのようなレンズ基材上にフォトクロミック層を形成することもできる。また、後述する中間層は、フォトクロミック層とレンズ基材との間、フォトクロミック層と上記ハードコート層との間に形成することも可能である。これにより、フォトクロミック層成分の下層への溶出を抑制し、より優れた光学特性を有するフォトクロミックレンズを得ることもできる。なお、含浸法または練りこみ法では、良好なフォトクロミック特性を発揮し得るために適切な基材を選択すべきであるが、コーティング法はそのような基材に対する制約がないため好ましい。
フォトクロミック層
上記含浸法または練りこみ法により形成されるフォトクロミックレンズでは、フォトクロミック色素を含有するレンズ基材そのものがフォトクロミック層となる。一方、コーティング法では、フォトクロミック色素と硬化性成分を含むフォトクロミック液を基材上に直接または間接に塗布した後に硬化処理を施すことによって、硬化体(樹脂成分)中にフォトクロミック色素を含むフォトクロミック層を形成することができる。より詳しくは、上記フォトクロミック液は、硬化性成分、フォトクロミック色素、重合開始剤、および任意に添加される添加剤から形成することができる。以下に、各成分について説明する。
(i)硬化性成分
フォトクロミック層形成のために使用可能な硬化性成分は、特に限定されず、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の光重合性モノマーやオリゴマー、それらのプレポリマーを用いることができる。これらのなかでも、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合性基として有する化合物が好ましい。なお、前記(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの両方を示し、(メタ)アクリロイルオキシとは、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシの両方を示す。その詳細については、WO2008/001578A1段落[0050]〜[0075]を参照できる。
(ii)フォトクロミック色素
フォトクロミック液に添加し得るフォトクロミック色素としては、公知のものを使用することができ、例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック化合物が挙げられ、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を特に制限なく使用することができる。その詳細については、WO2008/001578A1段落[0076]〜[0088]を参照できる。フォトクロミック液中のフォトクロミック色素の濃度は、前記硬化性成分100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることが更に好ましい。
(iii)重合開始剤
フォトクロミック液に添加する重合開始剤は、重合方法に応じて、公知の熱重合開始剤および光重合開始剤から適宜選択することができる。それらの詳細については、WO2008/001578A1段落[0089]〜[0090]を参照できる。
(iv)添加剤
フォトクロミック液には、フォトクロミック色素の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。これら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。その詳細については、WO2008/001578A1段落[0092]〜[0097]を参照できる。なお、WO2008/001578A1段落[0095]に記載されているヒンダートアミン化合物およびヒンダートフェノール化合物は、光安定化剤として機能することができる成分であり、本発明においても好ましい添加剤である。ただし分子量が比較的小さい(例えば分子量700以下)低分子化合物であるため、フォトクロミック層における定着性に乏しく、上層の有機系ハードコート層への溶出が懸念される成分の1つである。ここで後述する中間層を設けることにより、ハードコート層への上記低分子化合物の溶出を抑制できることが、ハードコート層表面の析出物発生の抑制に寄与していると考えられる。
以上説明した成分を含むフォトクロミック液を塗布および硬化することにより、フォトクロミック層を形成することができる。本発明において、フォトクロミック液の調製方法は特に限定されず、所定量の各成分を秤取り混合することにより行うことができる。なお、各成分の添加順序は特に限定されず全ての成分を同時に添加してもよいし、モノマー成分のみを予め混合し、重合させる直前にフォトクロミック色素や他の添加剤を添加・混合してもよい。前記フォトクロミック液は、25℃での粘度が20〜500mPa・sであることが好ましく、50〜300mPa・sであることがより好ましく、60〜200mPa・sであることが特に好ましい。この粘度範囲とすることにより、フォトクロミック液の塗布が容易となり、所望の厚さのフォトクロミック膜を容易に得ることができる。フォトクロミック液の塗布は、スピンコート法等の公知の塗布方法によって行うことができる。
上記フォトクロミック液を基材上に塗布した後、フォトクロミック液に含まれる硬化性成分の種類に応じた硬化処理(加熱、光照射等)を施すことにより、フォトクロミック層を形成することができる。前記硬化処理は、公知の方法で行うことができる。フォトクロミック層の厚さは、フォトクロミック特性を良好に発現させる観点から、10μm以上であることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。
無機中間層
本発明において、フォトクロミック層と有機系ハードコート層との間に設ける中間層は、無機物質からなるものである限り、特に制限されるものではない。無機物質からなる層を両層の間に設けることにより、有機層同士の混ざり合いを抑制できることが、曇りの抑制に寄与すると考えられるからである。
上記無機物質としては、金属、金属あるいは半金属の酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等が挙げられる。具体的には、SiO2 、SiO、ZrO2 、Al2 3 、TiO2 、Sb2 3 、Sb2 5 、酸化タンタルなどの金属酸化物、MgF2 などのフッ化物等である。成膜の容易性および屈折率の点からは、酸化物が好ましく、中でも、一般的なフォトクロミック層と屈折率が近く層同士の屈折率の違いに起因する干渉の発生を抑制できる点で、ケイ素酸化物が好ましい。また、ケイ素酸化物は後述する有機ケイ素化合物を含むハードコート層との密着性の点でも望ましい。
前記無機物質から構成される無機中間層は、公知の成膜方法により形成することができる。成膜方法としては、均一な膜を容易に形成できるため、蒸着法が好ましい。蒸着法としては、真空蒸着法、CVD法、PVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法などが挙げられる。
前記無機中間層の厚さは、フォトクロミック層上に均一な膜を形成する観点からは10nm以上であることが好ましい。上限については、200nmを超えると成膜に時間を要するため好ましくない。以上の観点から、前記無機中間層の厚さは、10nm〜200nmの範囲であることが好ましい。なお、無機中間層は少なくとも一層設ければよいが、異なる無機物質からなる層を二層以上設けることも可能である。この場合、上記厚さとは、複数の層の合計の厚さをいうものとする。
有機系ハードコート層
前記無機中間層上に位置するハードコート層としては、一般にハードコート層として使用される各種有機層を適用可能である。レンズの耐久性向上と光学特性を両立する観点からは、その厚さは0.5〜10μmの範囲であることが好ましい。
前記ハードコート層としては、レンズの耐久性向上の点からは、有機ケイ素化合物および金属酸化物粒子を含むものが好ましい。また、有機ケイ素化合物を含むハードコート層は、前述のケイ素酸化物からなる中間層との密着性の点および該中間層との屈折率が近い点でも好ましい。そのようなハードコート層を形成可能なハードコート組成物の一例としては、特開昭63−10640号公報に記載されているものを挙げることができる。
また、上記有機ケイ素化合物の好ましい態様としては、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物を挙げることもできる。
(R1a(R3bSi(OR24-(a+b) ・・・(I)
一般式(I)中、R1は、グリシドキシ基、エポキシ基、ビニル基、メタアクリルオキシ基、アクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、フェニル基等を有する有機基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシル基または炭素数6〜10のアリール基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表し、aおよびbはそれぞれ0または1を示す。
2で表される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であって、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
2で表される炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
2で表される炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
3で表される炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であって、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
3で表される炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、特開2007−077327号公報段落[0073]に記載されているものを挙げることができる。一般式(I)で表される有機ケイ素化合物は硬化性基を有するため、塗布後に硬化処理を施すことにより、硬化膜としてハードコート層を形成することができる。
前記ハードコート層に含まれる金属酸化物粒子は、ハードコート層の屈折率の調整および硬度向上に寄与し得る。具体例としては、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタニウム(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化アンチモン(Sb25)等の粒子が挙げられ、単独または2種以上の金属酸化物粒子を併用することができる。金属酸化物粒子の粒径は、耐擦傷性と光学特性とを両立する観点から、5〜30nmの範囲であることが好ましい。同様の理由から、ハードコート層における金属酸化物粒子の含有量は、屈折率および硬度を考慮して適宜設定可能であるが、通常、ハードコート組成物の固形分あたり5〜80質量%程度である。また、上記金属酸化物粒子は、ハードコート層中での分散性の点から、コロイド粒子であることが好ましい。
有機系ハードコート層は、上記成分および必要に応じて有機溶媒、界面活性剤(レベリング剤)等の任意成分を混合して調製したハードコート組成物を無機中間層上に塗布し、硬化性基に応じた硬化処理(熱硬化、光硬化等)を施すことにより形成することができる。ハードコート組成物の塗布手段としては、ディッピング法、スピンコーティング法、スプレー法等の通常行われる方法を適用することができるが、面精度の面からディッピング法、スピンコーティング法が好ましい。なお、ハードコート層を熱硬化により形成する場合、加えられる熱によりフォトクロミック層からの成分の溶出が促進されることが懸念されるが、本発明によれば上記溶出を無機中間層によって遮断することができる。
以上説明した本発明のフォトクロミックレンズの層構成の一例を、図1に示す。ただし本発明のフォトクロミックレンズは、図1に示す態様に限定されるものではなく、公知の反射防止膜等の機能性膜を任意の位置に有することができる。
以下に、実施例により本発明を更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
[実施例1〜5]
(1)プライマー層の形成
プラスチックレンズ基材として、メニスカス形状のポリチオウレタン(HOYA(株)製 商品名EYAS、中心肉厚2.0mm厚、直径75mm、凸面の表面カーブ(平均値)約+0.8)を使用し、レンズ基材の凸面上に、プライマー液としてポリウレタン骨格にアクリル基を導入したポリウレタンの水分散液(ポリカーボネートポリオール系ポリウレタンエマルジョン、粘度100mPa・s、固形分濃度38質量%)をスピンコート法により塗布した後、温度25℃湿度50%RHの雰囲気下で15分風乾処理し、厚さ約7μmのプライマー層を形成した。
(2)フォトクロミックコーティング液の調製
プラスチック製容器にトリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性組成物を調製した。このラジカル重合性組成物100質量部に対し、フォトクロミック色素として下記クロメン1を3質量部、光安定化剤LS765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)を5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製イルガキュア245)を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI−1870(BASF社製)0.6質量部を添加して十分に攪拌混合を行った組成物に、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM503)を攪拌しながら6質量部滴下した。その後、自転公転方式攪拌脱泡装置にて2分間脱泡することで、フォトクロミック性を有する硬化性組成物を得た。
(3)フォトクロミック層の形成
上記(1)で形成したプライマー層上に、(2)で調製した硬化性組成物をスピンコート法でコーティングした。その後、このレンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、UVランプ(Dバルブ)で波長405nmの紫外線を積算光量で1800mJ/cm2(100mW/cm2、3分)照射し、さらに、100℃、60分間硬化処理を行い、厚さ40μmのフォトクロミック層を形成した。
(4)シリカ蒸着膜(無機中間層)の形成
上記(3)で形成したフォトクロミック層上に、真空蒸着法によってシリカ(SiO2)からなる蒸着膜を形成した。ここで蒸着時の成膜時間を変えることで、各レンズに対して厚さの異なるシリカ蒸着膜を形成した。
(5)ハードコート組成物の調製
マグネティックスターラーを備えたガラス製の容器にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン17質量部、メタノール30質量部、および、水分散コロイダルシリカ(固形分40質量%、平均粒子径15nm)28質量部を加え充分に混合し、5℃で24時間攪拌を行った。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテル15質量部、シリコ−ン系界面活性剤0.05質量部、および、硬化剤としてアルミニウムアセチルアセトネ−トを1.5質量部加え、充分に撹拌した後、濾過を行ってハードコーティング液(ハードコート組成物)を調製した。このコーティング液のpHは、およそ5.5であった。
(6)ハードコート層の形成
上記(4)で形成したシリカ蒸着膜を有するプラスチックレンズレンズを60℃、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液にて5分間浸漬処理して十分に純水洗浄/乾燥を行った後、上記(5)で調製したハードコーティング組成物を用いて、ディッピング法(引き上げ速度20cm/分)でコーティングを行い、100℃、60分加熱硬化することで、厚さ3μmのハードコート層を形成した。
以上の工程により、レンズ基材上に、プライマー層、フォトクロミック層、無機中間層、および有機系ハードコート層をこの順に有するフォトクロミックレンズを得た。
[比較例1]
無機中間層(シリカ蒸着膜)を形成しなかった点以外、実施例と同様の方法でフォトクロミックレンズを得た。
曇りの評価
株式会社村上色彩技術研究所製ヘイズメーターMH−150にて、作製したフォトクロミックレンズのヘイズ値を測定した。ヘイズ値が0.3%以下の場合、目視では曇りは確認されないため、眼鏡レンズとして適用可能な光学特性を有すると判断することができる。そこでヘイズ値0.3%以下のレンズを○、0.3%を超えるレンズを×として評価した。結果を表1に示す。
評価結果
表1に示すように、比較例1のフォトクロミックレンズはヘイズ値が0.3を超え、目視で曇りが確認されるものであった。このレンズのハードコード層表面を観察したところ、析出物に起因する微細な凹凸が見られた。
これに対し、無機中間層を形成した実施例1〜5のフォトクロミックレンズでは、曇りの発生を抑制することができた。
以上の結果から、フォトクロミック層と有機系ハードコート層との間に無機中間層を形成することにより、曇りが抑制された、優れた光学特性を有するフォトクロミックレンズが得られることが確認された。
本発明のフォトクロミックレンズは、優れた光学特性が求められる眼鏡レンズとして好適である。

Claims (4)

  1. フォトクロミック色素および樹脂成分を含むフォトクロミック層と有機系ハードコート層とをこの順に有するフォトクロミックレンズであって、
    前記フォトクロミック層と有機系ハードコート層との間に、無機物質からなる中間層を有することを特徴とするフォトクロミックレンズ。
  2. 前記中間層は、無機酸化物からなる蒸着膜である、請求項1に記載のフォトクロミックレンズ。
  3. 前記無機酸化物はケイ素酸化物である、請求項2に記載のフォトクロミックレンズ。
  4. 前記有機系ハードコート層は、有機ケイ素化合物および金属酸化物粒子を含むものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォトクロミックレンズ。
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Cited By (2)

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