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JP2011247841A - リチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法およびその装置 - Google Patents

リチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法およびその装置 Download PDF

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JP2011247841A JP2010123726A JP2010123726A JP2011247841A JP 2011247841 A JP2011247841 A JP 2011247841A JP 2010123726 A JP2010123726 A JP 2010123726A JP 2010123726 A JP2010123726 A JP 2010123726A JP 2011247841 A JP2011247841 A JP 2011247841A
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宏之 秋田
Naoki Wakamatsu
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Abstract

【課題】内部抵抗が経時により変動するリチウムイオン電池について,測定時点に関わらない,測定対象電池に固有の内部抵抗特性を取得できるリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法,その装置を提供すること。
【解決手段】リチウムイオン電池の内部抵抗を,時間間隔をおいて3回以上測定し,測定値を,電池の放置時間の平方根に対してプロットし,プロット結果に基づいて,内部抵抗の,放置時間の平方根に対する増加率と,初期値とを決定する。ここで,測定された内部抵抗を,放置時間に対してプロットする予備プロットを行い,その結果に対して近似二次曲線を当てはめることで放置時間のゼロ点を決定できる。あるいは,測定前に対象電池を放置開始時電圧まで放電させることで放置時間のゼロ点を規定してもよい。その場合測定回数は1回少なくてもよい。また,内部抵抗の増加率が既知であれば,そのことによっても測定回数を1回減らせる。
【選択図】図6

Description

本発明は,製造後,放置時間とともに内部抵抗が上昇するリチウムイオン電池について,その内部抵抗を測定する方法およびその装置に関するものである。
従来から,個々の電池の性能を評価するために,内部抵抗の測定が行われている。内部抵抗は電池の基本的な特性の1つであり,電池の性能上,小さい方が優れる。内部抵抗の測定方法としては,例えば特許文献1に記載されている交流インピーダンス法が挙げられる。同文献の技術では,電池の内部インピーダンスの周波数特性について,等価回路のインピーダンスモデルから計算上求められる特性が,実測結果に一致するように,インピーダンスモデルの各素子のパラメータの最適値を決定する。そのための内部インピーダンスの実測方法として,交流インピーダンス法を用いている。交流インピーダンス法により求められるインピーダンスの実数成分を抽出することで,内部抵抗が得られる。
特開2009−97878号公報
しかしながら前記した従来の技術には,次のような問題点があった。すなわち,特許文献1の技術では,単に,電池の製造後のある1時点での特性を測定しているに過ぎない。一方,リチウムイオン電池の内部抵抗は,一定ではなく経時により変動する。特に放置により上昇する傾向がある。例えば図11に示すように,1つのリチウムイオン電池の内部抵抗を,時間をおいて測定すると,後で測定した結果ほど高い値となる。このため,履歴の分からない電池の特性を特許文献1の技術で測定しても,その測定結果には履歴による影響が含まれていることになる。したがって,測定結果からその電池の固有の特性を知ることができなかった。また,履歴の分からない電池同士での測定結果から,それらの電池の固有の特性を比較することができなかった。
このように放置によりリチウムイオン電池の内部抵抗が上昇する理由は,正極合材層と電解液との間での水素イオンとリチウムイオンの置換が起こるためと推定される。すなわち,リチウムイオン電池の正極活物質としては,ニッケル酸リチウム(LiNiO2 )やコバルト酸リチウム(LiCoO2 )などの層状構造化合物が用いられる。この層状構造化合物内には,リチウムイオンが含まれている。一方,電解液内には水素イオンが含まれている。そして,電極表面では,層状構造化合物における,リチウムイオン層とMO2 (MはNiあるいはCo等)層とがともに電解液に接している。
ここで放置により,正極合材層の表面で水素イオンとリチウムイオンが一部入れ替わってしまうのである。この様子を図12の模式図に示す。図12の右半分が放置後の状態を示している。放置後には,正極活物質の表面付近の領域Xにおいて,リチウムイオンの一部が脱出して代わりに水素イオンが侵入してきている。このような状況が内部抵抗を上昇させているのである。図12の左半分に示す放置前の状態ではこのような状況はない。なお,正極活物質合材の混練のための溶媒として水を用いていると,このようなイオンの置換が起こりやすい。水に由来して水素イオンが発生するので,その水素イオンが電解液を経由して層状構造化合物中に引き込まれるためと解される。
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,内部抵抗が経時により変動するリチウムイオン電池について,測定時点に関わらない,測定対象電池に固有の内部抵抗特性を取得できるリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法およびその装置を提供することにある。
この課題の解決を目的としてなされた本発明のリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法は,放置することで時間の経過とともに内部抵抗が増加するリチウムイオン電池を対象電池として,対象電池を,放置による抵抗上昇がない状態にする初期調整を行い,対象電池の内部抵抗を,初期調整後に,時間間隔をおいて2回以上測定し,測定された内部抵抗を,初期調整終了から測定までの経過時間(以下,「放置時間」という)の平方根に対してプロットし,プロット結果に基づいて,対象電池の内部抵抗の,放置時間の平方根に対する増加率と,初期調整終了時の初期値とを決定する。
上記のプロットでは,内部抵抗が放置時間の平方根に対してほぼ直線状をなすように分布することが分かっている。このため,プロット結果に対して近似直線を当てはめることで,内部抵抗の,放置時間の平方根に対する増加率を求めることができる。その際の必要な最低の測定回数は「2」である。また,初期調整終了時を放置時間のゼロ点とすることで,放置開始前における内部抵抗の初期値も決定できる。
本発明の別の態様の測定方法では,対象電池の内部抵抗を,時間間隔をおいて3回以上測定し,測定された内部抵抗を,放置時間の平方根に対してプロットし,プロット結果(以下,「本プロット」という)に基づいて,対象電池の内部抵抗の,放置時間の平方根に対する増加率と,放置開始前の初期値とを決定する。初期調整を行わない場合には,必要な最低の測定回数が,前記の場合より1多く「3」である。測定結果から放置時間のゼロ点を決定する必要があるからである。
測定回数が3回以上あることにより例えば,測定された内部抵抗を,放置時間に対してプロットする予備プロットを行い,予備プロットの結果に対して近似二次曲線を当てはめることで放置時間のゼロ点を決定できる。そして,本プロットにおける放置時間のゼロ点での内部抵抗を,放置開始前の初期値と決定できるのである。
本発明の別の態様の測定方法では,リチウムイオン電池の正極活物質の種類ごとに,放置時間の平方根に対する内部抵抗の増加率をあらかじめ記憶しておき,対象電池の内部抵抗を,時間間隔をおいて2回以上測定し,測定された内部抵抗を,電池の放置開始から測定までの経過時間の平方根に対してプロットし,プロット結果と,対象電池の正極活物質の種類に対してあらかじめ記憶されている増加率とに基づいて,対象電池の内部抵抗の,放置開始前の初期値を決定する。
このように内部抵抗の増加率が正極活物質の種類ごとに既知であれば,初期調整を行わなくても,必要な最低の測定回数は「2」である。正極活物質の種類さえ分かれば,2回の測定結果による2元連立方程式から,放置開始前の初期値と,1回目の測定前の放置時間とを求めることができるからである。
さらに,正極活物質の種類ごとの増加率が既知であり,かつ,初期調整を行えば,必要な最低の測定回数は「1」である。また,本発明は,層状構造化合物を正極活物質に用いているリチウムイオン電池を対象とする場合に特に意義が大きい。さらに,正極合材の混練溶媒として水が用いられているリチウムイオン電池を対象とする場合により意義が大きい。
また,本発明のリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置は,対象電池を放置による抵抗上昇がない状態にする初期調整部と,対象電池の内部抵抗を,初期調整部による処理後に,時間間隔をおいて2回以上測定する測定部と,測定された内部抵抗を放置時間の平方根に対してプロットし,プロット結果に基づいて,対象電池の内部抵抗の,放置時間の平方根に対する増加率と,初期調整部による処理の終了時の初期値とを決定する演算部とを有する。
また,本発明の別のリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置は,対象電池の内部抵抗を,時間間隔をおいて3回以上測定する測定部と,測定された内部抵抗を放置時間の平方根に対してプロットし,プロット結果(本プロット)に基づいて,対象電池の内部抵抗の,放置時間の平方根に対する増加率と,放置開始前の初期値とを決定する演算部とを有する。
このリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置では,演算部が,測定された内部抵抗を,放置時間に対してプロットする予備プロットを行い,予備プロットの結果に対して近似二次曲線を当てはめることで放置時間のゼロ点を決定し,本プロットにおける放置時間のゼロ点での内部抵抗を,放置開始前の初期値とすることが望ましい。
また,本発明のさらに別のリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置は,リチウムイオン電池の正極活物質の種類ごとに,放置時間の平方根に対する内部抵抗の増加率をあらかじめ記憶する記憶部と,対象電池の内部抵抗を,時間間隔をおいて2回以上測定する測定部と,測定された内部抵抗を,放置時間の平方根に対してプロットし,プロット結果と,対象電池の正極活物質の種類に対して記憶部に記憶されている増加率とに基づいて,対象電池の内部抵抗の,放置開始前の初期値を決定する演算部とを有する。
また,本発明のさらに別のリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置は,リチウムイオン電池の正極活物質の種類ごとに,放置時間の平方根に対する内部抵抗の増加率をあらかじめ記憶する記憶部と,対象電池を放置による抵抗上昇がない状態にする初期調整部と,対象電池の内部抵抗を,初期調整部による処理後に測定する測定部と,測定結果と,初期調整部による処理の終了から測定までの放置時間と,対象電池の正極活物質の種類に対して記憶部に記憶されている増加率とに基づいて,対象電池の内部抵抗の,初期調整部による処理の終了時の初期値を決定する演算部とを有する。
本発明によれば,内部抵抗が経時により変動するリチウムイオン電池について,測定時点に関わらない,測定対象電池に固有の内部抵抗特性を取得できるリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法およびその装置が提供されている。
本実施の形態での内部抵抗測定に用いることができる回路の一例を示す回路図である。 本実施の形態での内部抵抗測定の全体手順を示すフローチャートである。 本実施の形態で用いたリチウムイオン電池における放電カット電圧と抵抗回復率との関係を示すグラフである。 交流インピーダンス法による測定結果のCole−Coleプロットを示すグラフである。 内部抵抗の放置時間による変化の状況を示すグラフである。 図5のグラフを,横軸を時間の平方根として書き直したグラフである。 初期状態の調整をし,測定を2回行った場合のプロット例を示すグラフである。 初期状態の調整をせず,測定を3回行った場合のプロット例を示すグラフである。 初期状態の調整をせず,傾きが既知であり,測定を2回行った場合のプロット例を示すグラフである。 初期状態の調整をし,傾きが既知であり,測定を1回行った場合のプロット例を示すグラフである。 リチウムイオン電池の内部抵抗を,時間をおいて測定したときの結果をプロットしたグラフである。 層状構造化合物である活物質と電解液との間でのイオンの置換が起こる状況を示す模式図である。
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態では,リチウムイオン電池の内部抵抗を測定する。対象とするリチウムイオン電池は,通常のものである。すなわち,正負の電極板をセパレータを介して重ね合わせて電極体とし,これをケースに挿入して電解液を含浸させて封止したものである。
測定装置は,例えば図1に示すようなものでよい。図1の測定装置は,測定器2と,処理部3により構成されている。測定対象のリチウムイオン電池1は,正端子11と負端子12とを有している。測定器2は,正電圧端子21,正電流端子22,負電圧端子23,負電流端子24,の4つの端子を備えている。測定器2としては例えば,ソーラトロン(Solartron)社製の「SI1280B」等を用いることができる。
そして,正端子11と正電圧端子21とがケーブル4で,負端子12と負電圧端子23とがケーブル5で,それぞれ接続されている。正電圧端子21および負電圧端子23は,リチウムイオン電池1に対する電圧の印加と,リチウムイオン電池1の電圧の測定とを行う端子である。また,正端子11と正電流端子22とがケーブル6で,負端子12と負電流端子24とがケーブル7で,それぞれ接続されている。正電流端子22および負電流端子24は,リチウムイオン電池1に流れる電流を測定する端子である。これにより,交流インピーダンス法による抵抗測定ができるようになっている。
処理部3は,測定器2での測定結果を取得して,必要な記録や演算等の処理を行うものである。このため処理部3は,測定値記録部31と,演算部32と,パラメータ記憶部33とを有している。測定値記録部31は,測定結果である内部抵抗値と,その測定をした時点での電池の放置時間とを組にして記憶するものである。演算部32は,測定結果に基づく演算やグラフ化を行うものである。パラメータ記憶部33は,演算上使用する種々の既知パラメータを記憶するものである。
測定対象のリチウムイオン電池1について説明する。例えば次のようなものを対象として用いることができる。
正極活物質 :LiNi0.8Co0.15Al0.052(層状構造化合物)
正極合材組成:活物質/AB/PEO/CMC = 88/10/1/1(重量比)
負極活物質 :天然黒鉛を非晶質炭素で被覆した炭素材
負極合材組成:活物質/SBR/CMC = 98/1/1(重量比)
電池容量 :5Ah
ここにおいて,LiNi0.8Co0.15Al0.052は,ニッケル酸リチウムのニッケルの一部をコバルトおよびアルミで置き換えたものである。また,
AB :アセチレンブラック(導電剤)
PEO:ポリエチレンオキシド(結着剤)
SBR:スチレンブタジエンラバー(結着剤)
CMC:カルボキシルメチルセルロース(増粘剤)
である。
むろん,対象とするリチウムイオン電池1は上記のものに限らない。層状構造化合物(正極活物質)はLiNiO2でもよいし,LiCoO2でもLiMnO2 でもよい。これらの複合化合物でもよい。他の部材も,リチウムイオン電池として機能するものであれば何でもよい。ただし前述のように,正極合材の溶媒として水を用いているものを主に対象とする。なお,正極合材の溶媒として水以外を用いているものであっても,内部抵抗の放置時間による変化傾向が見られるものであれば対象となりうる。
本形態では,図2に示す手順により,測定対象のリチウムイオン電池1の内部抵抗を評価する。まず,リチウムイオン電池1の初期状態を調整する(S1)。これは,測定開始前のリチウムイオン電池1の状態を,図12の左半分に示した状態に一律に揃えるために行う処理である。具体的には,測定対象のリチウムイオン電池1を,所定の電圧まで放電させることで,イオンの置換が起こっている状況を元に回復させることができる。これにより,放置による抵抗上昇がない状態にする。このS1の処理を完了した時が,放置時間の起点である。ただし後述するように,このS1の処理をしなくてもよい場合もある。
次に,交流インピーダンス法による測定を行う(S2)。すなわち,様々な周波数の交流電圧をリチウムイオン電池1に印加して,それぞれの周波数におけるインピーダンスを測定する。そして,演算部32により,その結果のCole−Coleプロットに基づいて,リチウムイオン電池1の内部抵抗値を算出する(S3)。さらに,このS2とS3とを,間隔をおいて反復して行う。放置による内部抵抗値の変化の傾向を知るためである。測定の都度,算出結果である内部抵抗値とその時点での放置時間とが測定値記録部31に記録される。S1の処理をしなかった場合には,真の放置時間が不明なので,1回目の測定以後の放置時間が記憶される。
そして,演算部32により,得られた内部抵抗値と時間の平行根との関係をグラフ化し,近似式を当てはめる(S4)。この近似式が,リチウムイオン電池1の固有の内部抵抗特性を示す指標である。そしてこの近似式の各係数により,当該リチウムイオン電池1の特性を評価するのである(S5)。以下,図2のフローの各処理について詳述する。
(S1:初期状態の調整)
S1の初期調整における放電カット電圧の好ましい値は,例えば1.6Vである。これは,前述のリチウムイオン電池1における,放電カット電圧と抵抗回復率との関係から定まるものである。図3のグラフにその関係を示す。なお,放電カット電圧とは,放電を停止した時点でのリチウムイオン電池1の電圧のことである。抵抗回復率とは,放電停止後のリチウムイオン電池1の内部抵抗を,放置開始時の内部抵抗で割った値である。抵抗回復率が1より大きければ,内部抵抗が放置開始時よりも上昇した状態にあるということである。抵抗回復率が1に近いほど,内部抵抗が低い状態,つまり放置開始時に近い状態に回復したということである。
図3のグラフでは,放電カット電圧が概ね2V以下であれば,抵抗回復率がほぼ1となっている。そこで,2Vに対してある程度マージンを持たせて放電カット電圧を,1.6Vと定めることができる。なお放電電流は,75A程度とすればよい。この初期調整は,リチウムイオン電池1を図1の装置に接続する前に別途行うこととしてもよい。あるいは,図1の装置で処理部3および測定器2による制御で行ってもよい。その場合は,処理部3および測定器2が初期調整部を兼ねていることになる。
(S2:交流インピーダンス法による測定)
交流インピーダンス法による測定は,次の条件で行うことができる。SOCとは充電状態(State of Charge)のことである。
温度 :25℃
SOC:60%
周波数:100kHz〜100mHz
なお,S1の放電でSOCが下がっているので,充電してSOCを調整してから測定に供する。また,この測定を行う際,S1の初期調整を完了してからの放置時間を測定値記録部31に記録する。
(S3:Cole−Coleプロットに基づく内部抵抗値の算出)
S2の測定結果に基づくCole−Coleプロットの一例を,図4に示す。図4で縦軸は測定結果の虚数成分を示し,横軸は実数成分を示す。図4において,Cole−Coleプロットについての一般的な解析手法に従い,円弧状の部分(図4では10〜50Hzの部分)に近似円弧Cを当てはめる。そして,その円弧Cとグラフの横軸(虚数成分がゼロである線)との2つの交点D1,D2間の距離Eを算出する。距離Eは,一般的に反応抵抗と称されるパラメータであり,これをここでは測定対象のリチウムイオン電池1の内部抵抗とする。こうして内部抵抗値が算出される。この処理は演算部32によりなされ,算出結果は放置時間と関連づけられて測定値記録部31に記録される。
(S2およびS3の反復)
そしてS2およびS3を,間隔を置いて,すなわち放置期間を置いて反復する。これにより,放置時間の進行とともにその各々の時点での内部抵抗値が得られる。
(S4:グラフ化)
そして,得られた内部抵抗値を放置時間に対してプロットしてグラフ化する。単純にプロットすると図5のようになる。図5の横軸は,各測定時点での,S1の初期調整処理の完了時点からの放置時間である。これは,純粋な放置時間の累計,すなわちS2の測定を実行している時間(1回当たりだいたい10〜20分程度)を除いた放置時間のみの累計である。ただし,単純な経過時間,すなわち測定時間をも含めた経過時間を用いても,内部抵抗値の変化の傾向としてはさほど大きくは違わない。
図5より,内部抵抗値は放置時間とともに増加する傾向があるが,その増加の程度は次第に飽和することが分かる。そこで図5のグラフを,横軸を放置時間の平方根として書き直すと,図6のようになる。これはほぼ直線Lで近似することができる。この直線Lが,当該リチウムイオン電池1に固有の内部抵抗特性であるといえる。
そこで,直線Lを図6上の一次関数
y = a*x+b (yが縦軸,xが横軸)
と考えると,最小二乗法等の公知の数学的手法により,S2およびS3での取得結果から,傾き「a」とy切片「b」とを求めることができる。これらのパラメータ「a」および「b」を,当該リチウムイオン電池1の内部抵抗特性を評価する指標とすることができる。「a」は,リチウムイオン電池1の内部抵抗が放置時間とともに増加する程度を示す指標である。「b」は,リチウムイオン電池1の放置開始前における初期値としての内部抵抗値を示す指標である。これらのパラメータの値はいずれも,小さい方が電池の特性としては好ましい。図6の例では,
a:0.0327
b:0.4078
である。
(S5:評価)
次に,S4で算出したそのリチウムイオン電池1の指標「a」および「b」を用いて,そのリチウムイオン電池1を評価する。すなわち,算出した「a」および「b」を,あらかじめ「a」および「b」についてそれぞれ定められている上限値と比較する。そして,「a」と「b」とのいずれか一方でも,算出した値が上限値を上回っていたら,そのリチウムイオン電池1は不良品であると判定する。一方,「a」と「b」とのいずれについても,算出した値が上限値以内であっていたら,そのリチウムイオン電池1は良品であると判定する。なお,「a」,「b」についての上限値は,パラメータ記憶部33に記憶させておけばよい。
あるいは,上記のような良否判定ばかりでなく,そのリチウムイオン電池1を同一仕様の他の電池と比較したときのランク付けをすることもできる。すなわち,「a」および「b」について何段階かのランク分けを設定しておくのである。そして,算出した「a」および「b」がどのランクに属するかにより,そのリチウムイオン電池1をランク付けできるのである。こうした評価を,内部抵抗測定を行った時点に左右されずにそのリチウムイオン電池1の固有の特性値により行うことができるのである。また,算出した「a」および「b」の値と[0039]中の式とを用いて,任意の放置時間におけるそのリチウムイオン電池1の内部抵抗値を算出することもできる。「a」,「b」の各ランクの境界値も,パラメータ記憶部33に記憶させておけばよい。
次に,上記のS2およびS3の処理の,必要な最低の反復回数について説明する。その最低回数は,「2」である。反復回数を2回とした場合のプロット例を図7に示す。図7では,1回目の測定時の放置時間をt1とし,2回目の測定時の放置時間をt2としている。また,1回目の測定時の内部抵抗値をR1とし,2回目の測定時の内部抵抗値をR2としている。図7では,放置時間t1,t2ともに既知である。前述のように初期調整(S1)を行うことにより,放置時間のゼロ点が確定しているからである。このため,最低2点のプロットがあれば,直線を当てはめて「a」および「b」を決定できるのである。
ただし,初期調整(S1)を行わなかった場合には,最低回数は「3」である。反復回数を3回とした場合のプロット例を図8に示す。図8では,1回目の測定時の放置時間を「T」としている。これを基準として,2回目の測定時の放置時間をt1とし,3回目の測定時の放置時間をt2としている。また,1回目の測定時の内部抵抗値をR1とし,2回目の測定時の内部抵抗値をR2とし,3回目の測定時の内部抵抗値をR3としている。図7と図8とで共通する記号は互いに無関係である。この場合,放置時間t1,t2は既知であるが,1回目の測定時の放置時間Tが未知である。初期調整(S1)を行わないことにより,放置時間のゼロ点が確定していないからである。
このため,2点のプロットでは,直線を当てはめることはできても,「a」および「b」を一意に決定することはできない。「T」,「a」,「b」の3つの未知数が存在しているからである。よって,「T」,「a」,「b」の3つを一意に決定するためには,最低3点のプロットが必要である。3点のプロットがあれば,3元連立方程式により「T」,「a」,「b」の3つを一意に決定することができる。あるいは,図5のように放置時間そのものを横軸とするグラフを用いてもよい。このプロット図上での3点のプロットに近似2次曲線を当てはめることで放置時間のゼロ点をまず決定し,「T」を既知にすることができるからである。このように,3回以上の測定を行えば,初期調整(S1)を省略することができる。[0029]でS1の処理が必須でない旨を述べたのはこのためである。
以上,必要最低反復回数が,初期調整を行うか否かにより,2回または3回であることを述べた。しかしさらに,正極活物質の種類が既知であれば,これらの回数を1回減らすことができる。正極活物質の種類が決まっていれば,内部抵抗の増加の程度も既知だからである。例えば正極活物質がLiNiO2 である場合についての,放置開始から24時間放置後までの間における内部抵抗の増加率を,複数の試験体について本発明者らが試験したところ,表1の結果が得られた。このように標準偏差はわずか1%であった。むろん,他の正極活物質の場合(LiCoO2 等)でも同様に,正極活物質の種類が決まっていれば,内部抵抗の増加率も決まる。
Figure 2011247841
このように,抵抗増加率を定数と見なせるので,上記の傾き「a」が既知となる。これにより未知数の数が1つ減るので,必要な最低反復回数を1つ減らせるのである。具体的には,既知値としての「a」を,正極活物質の種類に応じてパラメータ記憶部33に記憶しておけばよい。そして,対象のリチウムイオン電池1における正極活物質の種類が判明したら,対応する「a」をパラメータ記憶部33から読み出して使用すればよい。
Figure 2011247841
よって,初期調整を行わない場合で,最低回数が「2」となる(図9)。さらに,初期調整を行う場合には,最低回数が「1」となる(図10)。この図10のケースでは,任意の放置時間後の1回の測定で,ある基準放置時間後の内部抵抗値を算出できる。その実測例を表2に示す。表2における左側欄の「測定時点」は,電池ごとにまちまちである。このため測定時点での抵抗値が,標準偏差0.13とかなりばらついている。しかし表の右側欄の基準放置時間後の抵抗値(算出値)は,標準偏差0.03とばらつきが小さくなっている。このように,1回の測定でも良好に電池の内部抵抗特性を取得できることが分かる。
なお,以上述べた「1回」,「2回」や「3回」は,あくまでも最低限必要な回数である。「a」,「b」の算出精度を考えればもっと多くの回数にわたり反復した方がよいことは言うまでもない。
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,リチウムイオン電池1について,単に製造後のある時点での内部抵抗値を測定するだけでなく,放置時間の平方根に対する増加傾向を取得する。これにより,測定時点に左右されずにそのリチウムイオン電池1の固有の内部抵抗特性を取得できる測定方法および測定装置が実現されている。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,対象とするリチウムイオン電池の形態は,平巻き型,円筒型,平積み型など,何でもよい。また,内部抵抗値の測定手法として交流インピーダンス法およびCole−Coleプロットを用いているのも1つの例であり,他の手法により測定してもよい。
2 測定器
3 処理部
31 測定値記録部
32 演算部
33 パラメータ記憶部

Claims (12)

  1. 放置することで時間の経過とともに内部抵抗が増加するリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法において,
    対象とするリチウムイオン電池(以下,「対象電池」という)を,放置による抵抗上昇がない状態にする初期調整を行い,
    対象電池の内部抵抗を,前記初期調整後に,時間間隔をおいて2回以上測定し,
    測定された内部抵抗を,前記初期調整終了から測定までの経過時間(以下,「放置時間」という)の平方根に対してプロットし,
    プロット結果に基づいて,対象電池の内部抵抗の,
    放置時間の平方根に対する増加率と,
    初期調整終了時の初期値とを決定することを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法。
  2. 放置することで時間の経過とともに内部抵抗が増加するリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法において,
    対象とするリチウムイオン電池(以下,「対象電池」という)の内部抵抗を,時間間隔をおいて3回以上測定し,
    測定された内部抵抗を,電池の放置開始から測定までの経過時間(以下,「放置時間」という)の平方根に対してプロットし,
    プロット結果(以下,「本プロット」という)に基づいて,対象電池の内部抵抗の,
    放置時間の平方根に対する増加率と,
    放置開始前の初期値とを決定することを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法。
  3. 請求項2に記載のリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法において,
    測定された内部抵抗を,放置時間に対してプロットする予備プロットを行い,予備プロットの結果に対して近似二次曲線を当てはめることで放置時間のゼロ点を決定し,
    前記本プロットにおける前記放置時間のゼロ点での内部抵抗を,放置開始前の初期値とすることを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法。
  4. 放置することで時間の経過とともに内部抵抗が増加するリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法において,
    リチウムイオン電池の正極活物質の種類ごとに,放置時間の平方根に対する内部抵抗の増加率をあらかじめ記憶しておき,
    対象とするリチウムイオン電池(以下,「対象電池」という)の内部抵抗を,時間間隔をおいて2回以上測定し,
    測定された内部抵抗を,電池の放置開始から測定までの経過時間の平方根に対してプロットし,
    プロット結果と,対象電池の正極活物質の種類に対してあらかじめ記憶されている前記増加率とに基づいて,対象電池の内部抵抗の,放置開始前の初期値を決定することを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法。
  5. 放置することで時間の経過とともに内部抵抗が増加するリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法において,
    リチウムイオン電池の正極活物質の種類ごとに,放置時間の平方根に対する内部抵抗の増加率をあらかじめ記憶しておき,
    対象とするリチウムイオン電池(以下,「対象電池」という)を,放置による抵抗上昇がない状態にする初期調整を行い,
    対象電池の内部抵抗を,前記初期調整終了後に測定し,
    測定結果と,前記初期調整終了から測定までの放置時間と,対象電池の正極活物質の種類に対してあらかじめ記憶されている前記増加率とに基づいて,対象電池の内部抵抗の,放置開始前の初期値を決定することを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載のリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法において,
    層状構造化合物を正極活物質に用いているリチウムイオン電池を対象とすることを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載のリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法において,
    正極合材の混練溶媒として水が用いられているリチウムイオン電池を対象とすることを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定方法。
  8. 放置することで時間の経過とともに内部抵抗が増加するリチウムイオン電池の内部抵抗を測定する,リチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置において,
    対象とするリチウムイオン電池(以下,「対象電池」という)を,放置による抵抗上昇がない状態にする初期調整部と,
    対象電池の内部抵抗を,前記初期調整部による処理後に,時間間隔をおいて2回以上測定する測定部と,
    測定された内部抵抗を,前記初期調整部による処理の終了から測定までの経過時間(以下,「放置時間」という)の平方根に対してプロットし,プロット結果に基づいて,対象電池の内部抵抗の,
    放置時間の平方根に対する増加率と,
    前記初期調整部による処理の終了時の初期値とを決定する演算部とを有することを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置。
  9. 放置することで時間の経過とともに内部抵抗が増加するリチウムイオン電池の内部抵抗を測定する,リチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置において,
    対象とするリチウムイオン電池(以下,「対象電池」という)の内部抵抗を,時間間隔をおいて3回以上測定する測定部と,
    測定された内部抵抗を,電池の放置開始から測定までの経過時間(以下,「放置時間」という)の平方根に対してプロットし,プロット結果(以下,「本プロット」という)に基づいて,対象電池の内部抵抗の,
    放置時間の平方根に対する増加率と,
    放置開始前の初期値とを決定する演算部とを有することを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置。
  10. 請求項9に記載のリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置において,前記演算部は,
    測定された内部抵抗を,放置時間に対してプロットする予備プロットを行い,予備プロットの結果に対して近似二次曲線を当てはめることで放置時間のゼロ点を決定し,
    前記本プロットにおける前記放置時間のゼロ点での内部抵抗を,放置開始前の初期値とするものであることを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置。
  11. 放置することで時間の経過とともに内部抵抗が増加するリチウムイオン電池の内部抵抗を測定する,リチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置において,
    リチウムイオン電池の正極活物質の種類ごとに,放置時間の平方根に対する内部抵抗の増加率をあらかじめ記憶する記憶部と,
    対象とするリチウムイオン電池(以下,「対象電池」という)の内部抵抗を,時間間隔をおいて2回以上測定する測定部と,
    測定された内部抵抗を,電池の放置開始から測定までの経過時間の平方根に対してプロットし,プロット結果と,対象電池の正極活物質の種類に対して前記記憶部に記憶されている増加率とに基づいて,対象電池の内部抵抗の,放置開始前の初期値を決定する演算部とを有することを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置。
  12. 放置することで時間の経過とともに内部抵抗が増加するリチウムイオン電池の内部抵抗を測定する,リチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置において,
    リチウムイオン電池の正極活物質の種類ごとに,放置時間の平方根に対する内部抵抗の増加率をあらかじめ記憶する記憶部と,
    対象とするリチウムイオン電池(以下,「対象電池」という)を,放置による抵抗上昇がない状態にする初期調整部と,
    対象電池の内部抵抗を,前記初期調整部による処理後に測定する測定部と,
    測定結果と,前記初期調整部による処理の終了から測定までの放置時間と,対象電池の正極活物質の種類に対して前記記憶部に記憶されている増加率とに基づいて,対象電池の内部抵抗の,前記初期調整部による処理の終了時の初期値を決定する演算部とを有することを特徴とするリチウムイオン電池の内部抵抗の測定装置。
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