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JP2011241280A - ガソリンの製造方法 - Google Patents

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JP2011241280A JP2010113698A JP2010113698A JP2011241280A JP 2011241280 A JP2011241280 A JP 2011241280A JP 2010113698 A JP2010113698 A JP 2010113698A JP 2010113698 A JP2010113698 A JP 2010113698A JP 2011241280 A JP2011241280 A JP 2011241280A
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Koichiro Aikawa
孔一郎 相川
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Abstract

【課題】粒子状物質の排出量が少ないガソリンの製造方法を提供する。
【解決手段】下記数式(1)で表されかつ粒子状物質の排出のし易さの指標となるPM_Indexの値を小さくする工程を含み、これにより、粒子状物質の排出量が少ないガソリンを製造することを特徴とするガソリンの製造方法である。
Figure 2011241280

[数式(1)中、iは、ガソリン中に含まれるn個の成分のそれぞれに対応付けされた番号であり、V.P(443K)は、i成分の443Kにおける蒸気圧であり、DBEは、前記i成分の2重結合当量であり、Wtは、ガソリン中における前記i成分の重量%である。]
【選択図】図6

Description

本発明は、ガソリンの製造方法に関する。詳しくは、粒子状物質の排出量が少ないガソリンの製造方法に関する。
ディーゼルエンジンから多く排出される粒子状物質は、煤、未燃炭化水素、硫化物および灰分から構成される。煤と未燃炭化水素は、燃料の不完全燃焼時に生成され、粒子状物質の主構成要素である。これらのうち、特に煤は分解され難く、大気中に長時間浮遊するため、人体への悪影響が懸念される他、地球温暖化への影響も懸念される。
そこで、例えば軽油燃料組成物において、粒子状物質の排出量と、燃料の性状との関係を数値化することにより、粒子状物質の排出量を低減する技術が提案されている(特許文献1参照)。
特開2001−164271号公報
ところで、自動車分野における粒子状物質の発生源としては、ディーゼルエンジンが主と考えられていたが、近年では、ガソリンエンジンからも多くの粒子状物質が排出されているとの報告がなされている。また、このような状況の中、いち早く欧州ではEURO6により、ガソリンエンジンにおいても粒子状物質の排出規制の導入が検討されている。従って、ガソリンエンジンにおいても、粒子状物質の排出量を削減することは、火急の重要課題である。
しかしながら、ガソリンエンジンから排出される粒子状物質の排出量は、エンジンの構造や燃焼制御にも依存するが、ガソリンの構成成分による影響を大きく受けると考えられている。このため、例えば特許文献1で提案されている技術を、軽油とは構成成分が大きく異なるガソリンに適用したところで、十分な効果は得られなかった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、粒子状物質の排出量が少ないガソリンの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明に係るガソリンの製造方法は、下記数式(1)で表されかつ粒子状物質の排出のし易さの指標となるPM_Indexの値を小さくする工程を含み、これにより、粒子状物質の排出量が少ないガソリンを製造することを特徴とする。
Figure 2011241280
[数式(1)中、iは、ガソリン中に含まれるn個の成分のそれぞれに対応付けされた番号であり、V.P(443K)は、i成分の443Kにおける蒸気圧であり、DBEは、前記i成分の2重結合当量であり、Wtは、ガソリン中における前記i成分の重量%である。]
本発明に係るガソリンの製造方法では、上記の数式(1)で表されかつ粒子状物質の排出のし易さの指標となるPM_Indexの値を小さくする工程を設けた。より詳しくは、ガソリンを構成する成分の蒸気圧、具体的には最も粒子状物質の排出量と良好な相関が得られる443Kにおける蒸気圧、2重結合当量および重量%濃度に基づいてPM_Indexを定義し、このPM_Indexの値を小さくする工程を設けた。
これにより、粒子状物質の排出のし易さの指標となるPM_Indexの値が小さいガソリン、即ち、粒子状物質の排出量が少ないガソリンを確実に製造することができる。
本発明によれば、粒子状物質の排出量が少ないガソリンの製造方法を提供できる。
排出粒子数(PMN)測定システムの概略構成を示す図である。 NEDC走行時における各試験燃料のPMNを示す図である。 120km/h定常走行時における各試験燃料のPMNを示す図である。 443Kのときの蒸気圧から算出した変数IとΔPMNとの関係を示す図である。 変数IとΔPMNとの間の決定係数Rと温度との関係を示す図である。 NEDC走行時における試験燃料No.1〜10のPMNとPM_Indexとの関係を示す図である。 EUDC走行時における試験燃料および市販燃料のPMNとPM_Indexとの関係を示す図である。 120km/h定常走行時における試験燃料および市販燃料のPMNとPM_Indexとの関係を示す図である。 市販燃料のPM_Indexと煤濃度との関係を示す図である。 世界中の市販燃料のPM_Indexの分布を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
本実施形態に係るガソリンの製造方法は、上記の数式(1)で表されかつ粒子状物質(Particulate Matter、以下「PM」という)の排出のし易さの指標となるPM_Indexの値を小さくする工程を含むことを特徴とする。
以下、PMの発生メカニズムと、ガソリンの構成成分がPM排出量に与える影響とを説明しつつ、PMの排出のし易さの指標となるPM_Indexについて詳述する。
先ず、PMの発生メカニズムについて説明する。
ガソリンを構成する炭素と水素の比率(H/C比)を簡略化して2とした場合、完全予混合状態のガソリンを理論空燃比で燃焼させたときの反応は、下記式(1)で表される。このとき、不完全燃焼は起こらず、煤や未燃炭化水素(Soluble Organic Fraction、以下「SOF」という)は発生せず、PMは排出されない。
また、完全予混合状態のガソリンを空燃比(以下、「A/F」という)=9.7で燃焼させたときの反応は、下記式(2)で表される。このとき、燃料は全て酸化されて一酸化炭素に変換されるため、煤やSOFは発生せず、PMは排出されない。
また、完全予混合状態のガソリンをA/F=5で燃焼させたときの反応は、下記式(3)で表される。この式(3)から分かるように、A/Fが5を下回ると、酸素不足により酸化されない炭素が存在するようになる。このとき、初めて煤やSOFが発生し、PMが排出されるようになる。
Figure 2011241280
従って、通常、予混合燃焼されているガソリンエンジンにおいて、煤などによるPMの発生には、燃料の拡散燃焼が関係していると考えられる。ここで、拡散燃料とは、ピストンやシリンダー壁面に付着した燃料や、液滴として残留した燃料が、気化されずに液状で燃焼することを意味する。この拡散燃焼では、燃料が拡散しながら酸素と反応して燃焼するため、拡散速度が遅い成分は、酸素と出会う確率が小さくなり不完全燃焼を起こす。このため、燃料の拡散速度が速いほど、酸素と出会う確率が高くなり完全燃焼に近い状態となるため、煤などによるPMの発生が少なくなるものと考えられる。
また、燃料の拡散速度は、燃料の蒸気圧に大きく依存することから、PMの排出量は、燃料の蒸気圧による影響を大きく受けると考えられる。また、例えば芳香族成分はPMを排出し易い傾向があることから、PMの排出量は、燃料を構成する成分の分子構造による影響も大きく受けると考えられる。
上述したようなガソリンエンジンにおけるPMの発生メカニズムを考慮すると、ガソリンの構成成分がPM排出量に与える影響は大きいと考えられる。しかしながら、ガソリンの構成成分とPM排出量との関係については、十分な研究がなされていないのが現状である。
そこで、ガソリンの構成成分の中で、特にPM排出量に関係が深いと考えられる芳香族成分を中心に、ガソリンの構成成分がPM排出量に与える影響について検討した結果を、以下に説明する。
ガソリンの構成成分がPM排出量に与える影響を調べるためには、ガソリンの組成を大きく変化させたときのPM排出量を測定することが有効である。このため、種々の炭化水素を、ベースとなる燃料に添加したときのPM排出量の変化と、添加した炭化水素の物性値との関係を調べるための試験を行った。
上記の試験に際しては、試験車両として、2.3Lターボチャージャー付のポートフューエルインジェクション(PFI)エンジン搭載車を使用した。使用した試験車両のエンジン緒元を表1に示す。
Figure 2011241280
ところで、PMの測定方法には様々な方法が存在する。例えば、PMをフィルターにトラップしてその重量を測定する重量法や、国連欧州経済委員会のECE R83に規定されている排出粒子数を測定する方法などがある。ここでは、欧州の排ガステストサイクルであるNEDC(New European Driving Cycle)走行時、および120km/h定常走行時に排出される距離平均排出粒子数(以下、「PMN」という)を測定した。
具体的には、点火時期や燃料噴射時期などの影響が現れないように、エンジンキャリブレーションデータは固定値とし、ECE 83で規定されているPMP法に従って測定を行った。また、NEDC走行での測定前には、NEDCのプレコンディショニング走行を行い、25℃の試験室に12時間以上ソークした後に、測定を行った。120km/h定常走行での測定は、完全暖気状態で行った。
ここで、PMP法における測定の対象は、エミッションとして排出されるPMのうち、SOFなどの揮発成分を取り除いた固体粒子である。
また、PMNの測定には、PMN測定システム1を用いた。図1は、使用したPMN測定システム1の概略構成を示す図である。図1に示されるように、PMN測定システム1は、PMN測定装置10と、CVS(Constant Volume Sampling)希釈トンネル11と、CVS装置12と、シャシダイナモメータ20と、を備える。
シャシダイナモメータ20は、試験車両Sの後輪をのせるローラ21と、後輪からの力により回転するローラ21から力を測定する測定部22と、走行モードなどを制御する制御部23と、冷却部24と、を備える。
CVS希釈トンネル11およびCVS希釈装置12は、希釈エアーにより、常時一定の分流比で排気を採取する。
PMN測定装置10は、PMを希釈する希釈器と、PMから揮発成分を除去する揮発成分除去器と、PM粒子を計測するPMカウンターと、を備える。PMN測定装置10の諸元を表2に示す。
Figure 2011241280
使用した試験燃料の一覧を表3に示す。表3における沸点は、各試験燃料に添加した炭化水素などの沸点である。
表3の試験燃料No.1は、本試験のベース燃料であり、米国エミッション試験用ガソリンである。試験燃料No.2は、このベース燃料に、2,2,2−トリメチルペンタンの含有量が10重量%となるように添加したものであり、試験燃料No.3〜10は、このベース燃料に、表3に示す芳香族成分を主とした各種炭化水素またはエタノールを、試験燃料No.2で添加した2,2,2−トリメチルペンタンの炭素数と同等の炭素数に相当する量、添加したものである。
なお、各試験燃料は、120Lのドラム缶中に、上記のベース燃料と上記の各種炭化水素またはエタノールを加え、撹拌器により混合して調製した。
Figure 2011241280
図2は、NEDC走行時における試験燃料No.1〜9のPMNを示す図である。また、図3は、120km/h走行時における試験燃料No.1〜9のPMNを示す図である。
図2および図3に示されるように、炭化水素を添加した試験燃料No.2〜9は全て、試験燃料No.1のベース燃料に比してPMNが増加していることが分かる。上述した通り、PMP法においてはSOFなどの揮発成分は取り除かれるため、増加したPMNは全て、煤や高沸点の多環芳香族炭化水素(以下「PHA」という)であると考えられる。
また、図2および図3から分かるように、添加した炭化水素の沸点が高いほどPMNの増加率が大きくなる傾向があり、特に芳香族炭化水素を添加した試験燃料(以下、「アロマ群」という)では、その傾向が顕著である。具体的には、沸点が409Kのエチルベンゼンを添加した試験燃料No.4では、ベース燃料に対してPMNが約1.3倍であったのに対し、沸点が491Kのナフタレンを添加した試験燃料No.8では、ベース燃料に対してPMNが約5.7倍であり、沸点の上昇に対してPMNの増加率が大きいことが分かる。
一方、鎖式飽和炭化水素を添加した試験燃料(以下、「パラフィン群」という)では、例えば沸点が372Kの2,2,2−トリメチルペンタンを添加した試験燃料No.2のPMNは、ベース燃料に対して約1.0倍であったのに対し、沸点がナフタレンと同等の489Kのドデカンを添加した試験燃料No.3のPMNは、ベース燃料に対して約1.4倍である。このことから、パラフィン群は上記の芳香族群と比べて、沸点の上昇に対してPMNの増加率が小さいことが分かる。
また、沸点が454Kのインデンを添加した試験燃料No.9は、インデンと同程度の沸点を有する他の炭化水素を添加した試験燃料と比べて、PMNが3倍以上である。このことから、インデンは他の炭化水素と比べて、PMNの増加に与える影響が大きいことが分かる。
ところで、炭化水素に限って言えば、一般的に沸点と蒸気圧には相関があり、沸点が低いほど蒸気圧は高い。そして、蒸気圧の高い成分ほど拡散速度が速く、より酸素と出会う確率が高いと考えられる。このため、より沸点の高い炭化水素が添加された試験燃料ほど、PMNの増加率が大きかったものと推測される。
また、アロマ群は、パラフィン群と比べて、添加した炭化水素の沸点に対するPMNの増加率が大きい理由としては、添加した炭化水素の分子構造の差異が挙げられる。ここで、従来より、ディーゼルエンジンから排出されるPMの構成成分の一つである煤やPHAの発生メカニズムは、軽油中の高沸点成分量と、2重結合当量(以下、「DBE」という)とでうまく説明できることが知られている。そして、これについては、ガソリンエンジンにおいても同様のことが言えると考えられる。即ち、煤やPHAの発生は、ガソリンのDBEに依存するものと考えられる。
この点、上記の試験では、パラフィン群のDBEは0であるのに対して、アロマ群のDBEは、添加した炭化水素の構造にもよるが、4〜7程度である。このため、アロマ群は、パラフィン群に比べて多量のPMが排出されたものと推測される。
また、インデンは、DBEがナフタレンと同じ5であり、沸点がナフタレンより低いにも関わらず、PMNがナフタレンよりも多い。これは、インデンはベンセン環を有するだけでなく、反応性に富み、PHAから煤への成長がより助長されるためと考えられる。
以上より、ガソリンのPMNは、ガソリンを構成する成分の蒸気圧、DBEおよび反応性で決定されると考えられる。そこで、本発明者は、ガソリンのPMNと、ガソリンを構成する成分の蒸気圧、DBEおよび反応性との関係について解析を行い、PMの排出のし易さの指標となるPM_Indexを定義したので、以下に説明する。
上記試験の結果から明らかであるように、インデンのような反応性の高い成分がガソリン中に含まれる場合、ガソリンのPMNは著しく増加する。しかしながら、酸化安定度や反応性の観点から、通常、ガソリン中にはインデンのような反応性の高い成分が多量に存在するとは考え難い。このため、ここでの解析では、インデンの結果を除外して考えることとする。
上記の試験において、ベース燃料に添加した各種炭化水素の量は、試験燃料全体の約10重量%を占めるものであることから、PMNの変化の原因は、ほぼ添加した炭化水素による影響と考えてよい。ここで、PMの主構成成分である煤は、一般的にガソリンのDBEが高いほど生成し易くなると考えられる。また、沸点が低く蒸気圧が高い成分ほど拡散速度が速く、より酸素と出会う確率が高いため、煤は生成し難くなると考えられる。従って、PMNの増加量ΔPMNは、添加した炭化水素のDBEと沸点V.Pを用いて、下記数式(a)で表わすことができると推測できる。
Figure 2011241280
上記の数式(a)において、Wtは、燃料全体における各構成成分の重量%である。このように重量%で加重を加えているのは、各構成成分の重量%、即ち炭素の量が多いほど、PM排出量に与える影響が大きいと考えられるからである。また、関数fDBEおよび関数fV.Pとしては、種々の関数が考えられるが、今回行った試験のみで定義することはできない。ここでは、それぞれの関数がΔPMNに単純に比例および反比例するとした場合について、検証を試みた。具体的には、下記数式(b)で表わされる新たな変数Iを定義し、この変数IとΔPMNとの関係について調べた。
Figure 2011241280
上記の数式(b)において、関数fDBEをDBE+1と設定したのは、パラフィン群のDBEが0となって、パラフィン群ではPMが全く排出されないことになってしまうことを回避するためである。従って、パラフィン群が基準となるように、DBEに1を加えたもので評価を行った。
図4は、443Kのときの蒸気圧から算出した変数IとΔPMNとの関係を示す図である。図4に示されるように、変数IとΔPMNとの間には強い相関があることが分かる。
また、図5は、変数IとΔPMNとの間の決定係数Rと温度との関係を示す図である。図5に示されるように、最も決定係数Rが大きくなるのは、温度443Kのときであることが分かる。即ち、これは、上記の試験において、ベース燃料に添加した各種炭化水素のDBE+1の値と、443Kのときの蒸気圧とから得られる変数Iとで、ΔPMNをうまく説明できることを意味する。
上述した通り、新たに定義した変数Iは、ベース燃料に炭化水素を添加したときのPM排出数の増加をうまく説明できるものであることが分かったが、上記の試験で添加した炭化水素は、パラフィン成分と芳香族成分のみである。このため、例えばオレフィンやナフテンなどに対しても、上記と同様の考え方が適用できれば、ガソリンの構成成分の変数Iの値は、かかる構成成分がPMNに与える影響度合いを表すと言える。即ち、ガソリンは約200〜300種類の炭化水素群で構成されていることから、これら全ての構成成分において変数Iを算出し、算出した変数Iを全て加算した値が大きいほど、そのガソリンはPM排出量が多いガソリンであると考えられる。
そこで、本発明者は、下記数式(1)により表され、かつPMの排出のし易さの指標となるPM_Indexを定義した。
Figure 2011241280
上記の数式(1)において、iは、ガソリン中に含まれるn個の成分のそれぞれに対応した番号であり、i=1、2、3、・・・・nである。V.P(443K)は、i成分の443Kにおける蒸気圧であり、DBEは、前記i成分の2重結合当量である。また、Wtは、ガソリン中における前記i成分の重量%である。
ここで、上記の試験で使用した各試験燃料について、PM_Indexを算出した結果を、表4に示す。PM_Indexの算出に際しては、米国材料試験協会のASTM D−6729で規定されているDHA(Detailed hydrocarbon analysis)に従ってガソリン成分の分析を行い、その結果を用いた。また、ガソリンについてGC−MS測定を行い、その測定結果から各炭化水素成分の同定を行った。
Figure 2011241280
図6は、NEDC走行時における試験燃料No.1〜10のPMNと、上記算出したPM_Indexとの関係を示す図である。図6に示されるように、PMNとPM_Indexとの間には、強い相関があることが分かり、上記で定義したPM_Indexは、ガソリンのPMの排出のし易さの指標として非常に有効であると言える。
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態に係るガソリンの製造方法では、上記の数式(1)で表されかつPMの排出のし易さの指標となるPM_Indexの値を小さくする工程を設けた。より詳しくは、ガソリンを構成する成分の蒸気圧、具体的には最もPMの排出量と良好な相関が得られる443Kにおける蒸気圧、2重結合当量および重量%濃度に基づいてPM_Indexを定義し、このPM_Indexの値を小さくする工程を設けた。
これにより、PMの排出のし易さの指標となるPM_Indexの値が小さいガソリン、即ち、PMの排出量が少ないガソリンを確実に製造することができる。
上記のPM_Indexの値を小さくする工程では、結果としてPM_Indexを小さくすることができれば特にその処理内容については限定されない。例えば、低沸点でDBEの小さい炭化水素を所定量添加することにより、PM_Indexを小さくすることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1:市販燃料での検証]
先ず、表5に示す市販燃料No.1〜8について、上記の数式(1)により、PM_Indexを算出した。各市販燃料のPM_Index算出結果は、表5の通りであった。
Figure 2011241280
上述した試験燃料No.1〜10と、これらの燃料とPM_Indexの値が異なる表5の市販燃料No.1〜3について、上述した試験車両を用いて、完全暖気状態からのEUDCモード(欧州の試験モードで特殊な都市モード)走行時、および120km/hの定常走行時に排出されるPMNを測定した。PMNの測定には、上述したPMN測定システムを用いた。
図7は、EUDC走行時における試験燃料No.1〜10および市販燃料No.1〜3のPMNとPM_Indexとの関係を示す図である。また、図8は、120km/hの定常走行時における試験燃料No.1〜10および市販燃料No.1〜3のPMNとPM_Indexとの関係を示す図である。
これらの図に示されるように、走行モードの違いによらず、市販燃料のPMNとPM_Indexとの関係は、試験燃料のそれと合致することが分かった。この結果から、PM_Indexは、市販ガソリンのPMの排出のし易さの指標として非常に有効であることが検証された。
[実施例2:異なるエンジンでの検証]
上記の市販燃料のうち、それぞれ異なるPM_Indexを有する市販燃料No.1および4〜7について、上述した試験車両に搭載されたエンジンとは異なるタイプの試験エンジン単体を用いたベンチテストを行い、当該試験エンジンから排出される排気中の煤濃度の測定を行った。試験エンジンの運転条件としては、エンジン回転数を3000rpmとし、全負荷とした。また、煤濃度の測定には、AVL社製のマイクロスートセンサーを用いた。なお、使用した試験エンジンの緒元を表6に示す。
Figure 2011241280
図9は、市販燃料No.1および4〜7のPM_Indexと煤濃度との関係を示す図である。図9に示されるように、市販燃料No.1および4〜7のPM_Indexと煤濃度との間には、強い相関があることが分かった。ここで、煤はPMの主構成成分であることから、煤濃度の増減はPMNの増減と同義であると考えられる。従って、上記の試験エンジンにおいても、PM_IndexとPMNとの間には強い相関があることが分かり、PM_IndexがPMの排出のし易さの指標として有効なものであることが検証された。
なお、本発明者の研究により、このPM_Indexは、燃焼効率の高さから近年注目されている直噴エンジンに対しても有効に適用できることが検証されている。
[実施例3:世界中の市販燃料への適用]
PMの排出のし易さの指標として有効であることが検証されたPM_Indexを、世界中の市販燃料に適用した。具体的には、2008年の夏から2009年の夏にかけて、世界の主要国からサンプリングした全1345サンプルのガソリンについて、PM_Indexを算出した。各国のガソリンのサンプル数は、表7に示す通りであった。なお、PM_Indexの算出に際しては、米国材料試験協会のASTM D−6729で規定されているDHAに従ってガソリン成分の分析を行い、その結果を用いた。
Figure 2011241280
図10は、表7に示した世界中の市販燃料のPM_Indexの分布を示す図である。具体的には、図10の棒グラフは各PM_Indexの頻度を表わしており、曲線はその累積頻度を表わしている。図10に示されるように、サンプリングした市販燃料のPM_Indexのうち最も小さな値が0.67、最も大きな値が3.86であり、世界各国で市販されているガソリンのPM_Indexは、非常に幅広い分布を持つことが分かった。この結果から、NEDC相当の走行状態で考えれば、世界各国の市販燃料は、PMNで10倍程度の差があるものと考えられた。
また、上述した表3の試験燃料No.1(米国エミッション試験用ガソリン)を基準に考えると、この試験燃料No.1のPM_Indexが1.36であることから、世界各国で市販されているガソリンの70%が、試験燃料No.1よりもPMを排出し易いガソリンであることが分かった。
同様に、上述した表5の市販燃料No.8(EURO5認証ガソリン)を基準に考えると、この市販燃料No.8のPM_Indexが1.61であることから、世界各国で市販されているガソリンの40%が、試験燃料No.1よりもPMを排出し易いガソリンであることが分かった。
ところで、上述したように、エンジンハードでPMの排出量を低減するためには、エンジンに供給した燃料を極力気化させることが重要である。しかしながら、低温始動時において、蒸気圧が低いガソリン成分を短時間で完全気化させることは容易ではない。特に、直噴エンジンはシリンダー内に直接燃料を噴射するため、燃料が気化する時間がMPIエンジンに比べて短くなることや、シリンダーやピストンに燃料が付着して気化を妨げる可能性が高い。従って、ガソリンエンジンからのPM排出量を低減するためには、世界各国で市販されているガソリンを、米国エミッション試験用ガソリンレベルやEURO5認証ガソリンレベルに改善することが重要であり、これにより、全世界でガソリンエンジンから排出されるPMを大幅に削減できると考えられた。
1…PMN測定システム
10…PMN測定装置
11…CVS希釈トンネル
20…シャシダイナモメータ
S…試験車両

Claims (1)

  1. 下記数式(1)で表されかつ粒子状物質の排出のし易さの指標となるPM_Indexの値を小さくする工程を含み、これにより、粒子状物質の排出量が少ないガソリンを製造することを特徴とするガソリンの製造方法。
    Figure 2011241280
    [数式(1)中、iは、ガソリン中に含まれるn個の成分のそれぞれに対応付けされた番号であり、V.P(443K)は、i成分の443Kにおける蒸気圧であり、DBEは、前記i成分の2重結合当量であり、Wtは、ガソリン中における前記i成分の重量%である。]
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