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JP2011131135A - 複層塗膜形成方法 - Google Patents

複層塗膜形成方法 Download PDF

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JP2011131135A
JP2011131135A JP2009291054A JP2009291054A JP2011131135A JP 2011131135 A JP2011131135 A JP 2011131135A JP 2009291054 A JP2009291054 A JP 2009291054A JP 2009291054 A JP2009291054 A JP 2009291054A JP 2011131135 A JP2011131135 A JP 2011131135A
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mass
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coating film
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JP2009291054A
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Takayuki Kawabata
貴之 川端
Hideaki Ogawa
英明 小川
Daisuke Segawa
大介 瀬川
Akira Nishimura
彰 西村
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Nippon Paint Co Ltd
Toyota Motor Corp
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Nippon Paint Co Ltd
Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】中塗り塗料、水性ベース塗料およびクリヤー塗料をウェット・オン・ウェットで塗装する複層塗膜形成方法で、鋼板とプラスチック基材に塗装し外観が均一になる方法を提供する。
【解決手段】基材に水性中塗り塗料を塗装し塗膜を形成し、中塗り塗膜に水性ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成後、有機溶剤型クリヤー塗料でクリヤー塗膜を形成し、上記中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜の三層を加熱硬化させる複層塗膜形成方法で、前記水性ベース塗料が樹脂固形分100質量%中(a)架橋性モノマー0.2〜20質量%の混合物をエマルション重合したアクリル樹脂エマルション固形分10〜60質量%、(b)水溶性アクリル樹脂固形分5〜40質量%、(c)メラミン樹脂固形分20〜40質量%、(d)プロピレングリコールモノアルキルエーテルを塗料樹脂固形分100質量部に10〜40質量部含有することを特徴とする複層塗膜の形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車車体等に形成される複層塗膜の形成方法およびその方法により得られた複合塗膜に関するものである。
近年、環境に対する影響を考慮して、塗料中に含まれる有機溶剤の量を低減するために、塗料の水性化が検討されている。自動車用塗装においては、ベース塗膜を形成し、その上にクリヤー塗膜を形成することが一般的であるが、この系においてベース塗料を水性化することがこれまで行われてきた。
このような系に適応する水性ベース塗料として、例えば、特開昭63−193968号公報(特許文献1)には、アクリルエマルションである水分散性フィルム形成性アクリル重合体、疎水性メラミン樹脂および顔料からなる水性被覆組成物が開示されている。また、特開昭63−265974号公報(特許文献2)には、炭素数4〜12のアルキル基を有するモノマーをコア部、アクリルアミドまたはメタクリル酸を含むシェル部を有するエマルション樹脂を含む水性塗料がそれぞれ開示されている。
本発明者等は既に特開2001−240791号公報(特許文献3)において、水性ベース塗料を用いた塗装方法において、塗膜外観と作業性の改善を提案した。この技術では、水性ベースコート塗料において、特定のモノマーをアクリルエマルション樹脂の合成に用いることにより水とのなじみが改善され塗膜外観が向上し、酸価を調節して塗装作業性を改善した。この特許文献3の技術は、優れた性能を発揮するものであり、自動車塗装、特にいわゆるツーコート・ワンベーク方法(水性ベース塗膜とクリヤー塗膜とを形成後両塗膜を同時に焼付硬化する方法)に十分利用できるものである。しかしながら、最近は上記ツーコート・ワンベークをもう一歩進めて、ベース塗膜の前に形成される中塗り塗膜も硬化しないでベース塗膜とクリヤー塗膜と同時に焼付硬化する、いわゆるスリーコート・ワンベーク塗装方法が採用されつつあり、しかも被塗物も鋼板のみでは無く鋼板とプラスチック基材の両方を有するものに塗布することも行われてきている。このような鋼板とプラスチック基材の両方を備えた基材上にスリーコート・ワンベーク塗装方法をする場合には、上記の特許文献3(特開2001−240791号公報)の技術では、全ての塗膜面(特に、鋼板とプラスチック基材の両方の塗膜面)で外観を均一にするのが難しい。
特開昭63−193968号公報 特開昭63−265974号公報 特開2001−240791号公報
本発明は、上記特許文献3の技術を改善して、スリーコート・ワンベーク塗装方法で鋼板とプラスチック基材の両方を有する基材上に塗装しても外観が均一になる複層塗膜形成方法を提供する。
即ち、本発明は、鋼板およびプラスチック基材の両方を有する基材上に、水性中塗り塗料を塗装して中塗り塗膜を形成し、形成された中塗り塗膜上に水性ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成した後、有機溶剤型クリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、上記中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜の三層を加熱し硬化させる複層塗膜の形成方法であって、
前記水性ベース塗料が、樹脂固形分100質量%中、
(a)架橋性モノマーを0.2〜20質量%含んだモノマー混合物をエマルション重合して得られるアクリル樹脂エマルションが固形分で10〜60質量%、
(b)水溶性アクリル樹脂が固形分で5〜40質量%、および
(c)メラミン樹脂が固形分で20〜40質量%、
(d)プロピレングリコールモノアルキルエーテルを塗料樹脂固形分100質量部に対して10〜40質量部
含有することを特徴とする複層塗膜の形成方法を提供する。
上記プロピレングリコールモノアルキルエーテル(d)は、好ましくは、プロピレングリコールモノプロピルエーテルである。
上記プロピレングリコールモノアルキルエーテルは、塗料樹脂固形分100質量部に対して、20〜30質量部の量で配合されるのが好ましい。
上記アクリル樹脂エマルションの合成に用いられる架橋性モノマーは、好ましくは、アクリル樹脂エマルション合成用のモノマー混合物中に0.5〜20質量%の量で含有する。
上記のアクリル樹脂エマルション(a)を合成するモノマー混合物は、好ましくは、架橋性モノマー、酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー、水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーおよびその他のα,β−エチレン性不飽和モノマーを含有する。
上記のアクリル樹脂エマルション(a)は、酸価3〜50mgKOH/g、水酸基価10〜150mgKOH/gを有するのが好ましい。
上記水性ベース塗料は、更に、光輝性顔料を含むのが好ましい。
上記水性ベース塗料は、更に、ポリエステル樹脂を含有するのが好ましい。
本発明では、鋼板とプラスチック基材の両方を有する被塗物上に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料および有機溶剤型クリヤー塗料の三層をウェット・オン・ウェットで塗り重ねて、得られた三層の塗膜を同時に焼付硬化するスリーコート・ワンベーク方法で複層塗膜を形成する場合に、水性ベース塗料にプロピレングリコールモノアルキルエーテルを溶剤の一部として所定量用いることにより、鋼板とプラスチック基材の両方の塗膜面で外観が均一になることが解った。
特定の理論に拘束されるわけではないが、プロピレングリコールモノアルキルエーテルを配合した場合、水性ベース塗料をスプレー塗装して塗料が被塗物表面に塗着してから通常はプレヒートが行われるが、塗着からプレヒートまでの間で粘度上昇が緩やかになって、顔料、特に光輝性顔料の配向が揃う余裕が生じて外観が均一化するのではないかと考えられる。
本発明の複合塗膜形成方法は、鋼板およびプラスチック基材の両方を有する基材上に、水性中塗り塗料を塗装して中塗り塗膜を形成し、形成された中塗り塗膜上に水性ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成した後、有機溶剤型クリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、上記中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜の三層を加熱し硬化させる複層塗膜の形成方法であって、
前記水性ベース塗料が、樹脂固形分100質量%中、
(a)架橋性モノマーを0.2〜20質量%含んだモノマー混合物をエマルション重合して得られるアクリル樹脂エマルションが固形分で10〜60質量%、
(b)水溶性アクリル樹脂が固形分で5〜40質量%、および
(c)メラミン樹脂が固形分で20〜40質量%、
(d)プロピレングリコールモノアルキルエーテルを樹脂固形分100質量部に対して10〜40質量部
含有することを特徴とするものである。
水性ベース塗料
本発明の複層塗膜形成方法に用いられる水性ベース塗料は、(a)架橋性モノマーを0.2〜20質量%含んだモノマー混合物をエマルション重合して得られるアクリル樹脂エマルションが固形分で10〜60質量%、(b)水溶性アクリル樹脂が固形分で5〜40質量%、(c)メラミン樹脂が固形分で20〜40質量%および(d)プロピレングリコールモノアルキルエーテルを樹脂固形分100質量部に対して10〜40質量部を含有する。
成分(a)
成分(a)のアクリル樹脂エマルションは、架橋性モノマーとその他のα,βーエチレン性不飽和モノマーとのモノマー混合物であり、モノマー混合物の質量を100%とした時に架橋性モノマーを0.2〜20質量%含有する。従って、その他のα,βーエチレン性不飽和モノマーは80〜99.8質量%含有することになる。
成分(a)のアクリル樹脂エマルションは、水性ベース塗料中に10〜60質量%、好ましくは15〜50質量%の量で配合する。10質量%未満では、良好なフリップフロップ性(FF性)が得られない。60質量%を超えると、塗着時の粘度上昇が早くなって、肌外観が悪くなる。
成分(a)のアクリル樹脂エマルションを形成するモノマー混合物は、架橋性モノマーを0.2〜20質量%、好ましくは0.5〜20質量%含有する。架橋性モノマーが0.2質量%未満の場合は、塗装時の固形分が低下して、タレが発生する。また、光輝性顔料の配向が乱れてFF性が低下する。架橋性モノマーが20質量%を超えると、樹脂がゲル化して、エマルションの合成が困難になる。
架橋性モノマーは、分子内に2つ以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物であり、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のジビニル化合物が挙げられ、トリアリルシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等も挙げられる。架橋性モノマーは、上記のモノマーの組合せであってもよい。好ましい架橋性モノマーは、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびジビニルベンゼンである。これらの架橋性モノマーは、比較的取扱が容易であるからである。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とはアクリルとメタクリルとの両方を意味するものとする。
アクリル樹脂エマルション(a)は、必要に応じて、酸価または水酸基価を有するのが好ましい。アクリル樹脂の酸価または水酸基価はそれが合成されるモノマー混合物の酸価または水酸基価と実質上同じである。本発明で用いるモノマー混合物は酸価が好ましくは3〜50mgKOH/gであり、より好ましくは7〜40mgKOH/gである。酸価が3mgKOH/g未満では、作業性を向上させることができず、50mgKOH/gを上回ると、塗膜の耐水性が低下する。一方、上記水性ベース塗料が硬化性を有する必要がある場合には、モノマー混合物は水酸基価が10〜150mgKOH/gであり、好ましくは20〜100mgKOH/gである必要がある。水酸基価が10mgKOH/g未満では、充分な硬化性が得られず、150mgKOH/gを上回ると、塗膜の耐水性が低下する。また、上記モノマー混合物を共重合して得られるポリマーのガラス転移温度は、−20〜80℃の間であることが、得られる塗膜の機械的物性の点から好ましい。
上記モノマー混合物は、酸基または水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーをその中に含むことにより、上記酸価および水酸基価を有することができる。
上記酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α−ハイドロ−ω−((1−オキソ−2−プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル))、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3−ビニルサリチル酸、3−ビニルアセチルサリチル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸二量体である。
一方、水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタクリルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物である。
さらに、上記モノマー混合物はさらにその他のα,β−エチレン性不飽和モノマーを含んでいてもよい。上記その他のα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル等)、重合性アミド化合物(例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、N−モノオクチル(メタ)アクリルアミド2,4−ジヒドロキシ−4’−ビニルベンゾフェノン、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等)、重合性芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルケトン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビニルナフタレン等)、重合性ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、α−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)、重合性芳香族化合物、重合性ニトリル、α−オレフィン、ビニルエステル、及びジエンを挙げることができる。これらは目的により選択することができるが、親水性を容易に付与する場合には(メタ)アクリルアミドを用いることが好ましい。
本発明の水性ベース塗料に含まれるアクリル樹脂エマルションは、上記モノマー混合物を乳化重合して得られるものである。ここで行われる乳化重合は、通常よく知られている方法を用いて行うことができる。具体的には、水、または必要に応じてアルコールなどのような有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、上記モノマー混合物および重合開始剤を滴下することにより行うことができる。乳化剤と水とを用いて予め乳化したモノマー混合物を同様に滴下してもよい。
好適に用いうる重合開始剤としては、アゾ系の油性化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)など)、および水性化合物(例えば、アニオン系の4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジンおよびカチオン系の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン));並びにレドックス系の油性過酸化物(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよびt−ブチルパーベンゾエートなど)、および水性過酸化物(例えば、過硫酸カリおよび過硫酸アンモニウムなど)が挙げられる。
乳化剤には、当業者に通常使用されているものを用いうるが、反応性乳化剤、例えば、アントックス(Antox)MS−60(日本乳化剤社製)、エレミノールJS−2(三洋化成工業社製)、アデカリアソープNE−20(旭電化社製)およびアクアロンHS−10(第一工業製薬社製)などが特に好ましい。
また、分子量を調節するために、ラウリルメルカプタンのようなメルカプタンおよびα−メチルスチレンダイマーなどのような連鎖移動剤を必要に応じて用いうる。
反応温度は開始剤により決定され、例えば、アゾ系開始剤では60〜90℃であり、レドックス系では30〜70℃で行うことが好ましい。一般に、反応時間は1〜8時間である。モノマー混合物の総量に対する開始剤の量は、一般に0.1〜5質量%であり、好ましくは0.2〜2質量%である。
上記乳化重合は多段階で行うことができ、例えば、二段階で行うことができる。すなわち、まず上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物のうちの一部(モノマー混合物1)を乳化重合し、ここに上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の残り(モノマー混合物2)をさらに加えて乳化重合を行うものである。
ここでクリヤー塗膜とのなじみ防止の点から、モノマー混合物1はアミド基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーを含有していることが好ましい。またこの時、モノマー混合物2は、アミド基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーを含有していないことがさらに好ましい。なお、モノマー混合物1および2を一緒にしたものが、上記モノマー混合物であるため、先に示した上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の要件は、モノマー混合物1および2を一緒にしたものが満たすことになる。
上記アクリル樹脂エマルションの体積平均粒子径は0.01〜1.0μmの範囲であることが好ましい。体積平均粒子径が0.01μm未満であると作業性の改善の効果が小さく、1.0μmを上回ると得られる塗膜の外観が悪化する恐れがある。この粒子径の調節は、例えば、モノマー組成や乳化重合条件を調整することにより可能である。
上記アクリル樹脂エマルションは、必要に応じて塩基で中和することにより、pH5〜10で用いることができる。これは、このpH領域における安定性が高いからである。この中和は、乳化重合の前または後に、ジメチルエタノールアミンやトリエチルアミンのような3級アミンを系に添加することにより行うことが好ましい。
成分(b)
本発明の水性ベース塗料は、水溶性アクリル樹脂(b)を含有する。水溶性アクリル樹脂は、水性ベース塗料中に5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の量で含有する。5質量%より少ないと、塗着時の粘度上昇が大きくなって肌外観が悪くなり、40質量%を超えると、良好なFF性が出なくなる。
水溶性アクリル樹脂は、数平均分子量3000〜50000、好ましくは6000〜30000であることが好ましい。3000より小さいと作業性および硬化性が十分でなく、50000を越えると塗装時の不揮発分が低くなりすぎ、かえって作業性が悪くなる。
また、水溶性アクリル樹脂は10〜100mgKOH/g、更に20〜80mgKOH/gの酸価を有することが好ましく、上限を越えると塗膜の耐水性が低下し、下限を下回ると樹脂の水分散性が低下する。また、20〜180mgKOH/g、更に30〜160mgKOH/gの水酸基価を有することが好ましく、上限を越えると塗膜の耐水性が低下し、下限を下回ると塗膜の硬化性が低下する。
この水溶性アクリル樹脂は、先のモノマー混合物のところで述べた酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーを必須成分とし、それ以外のα,β−エチレン性不飽和モノマーとともに溶液重合を行うことにより得ることができる。
なお、上記水溶性アクリル樹脂は、通常、塩基性化合物、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジメチルエタノールアミンのような有機アミンで中和し、水に溶解させて用いるが、この中和は、水溶性アクリル樹脂そのものに対して行っても、後述する水性ベース塗料の製造時に行ってもよい。
成分(c)
本発明の水性ベース塗料は、メラミン樹脂(c)を硬化剤として含有する。メラミン樹脂は、水溶性であっても、非水溶性であってもよい。メラミン樹脂のなかでも水トレランスが3.0以上のものを用いることが、安定性上好ましい。ここで用いる水トレランスとは、親水性の度合を評価するためのものであり、その値が高いほど親水性が高いことを意味する。水トレランス値の測定方法は、25℃において、100mlビーカー内で、サンプル0.5gをアセトン10mlに混合して分散させ、ビュウレットを用いてイオン交換水を徐々に加え、混合物が白濁を生じるまでに要するイオン交換水の量(ml)を測定し、このイオン交換水の量(ml)を水トレランス値としたものである。
メラミン樹脂の含有量は水性ベースコート組成物中の樹脂固形分に対し、20〜40質量%であることが好ましい。20質量%未満では硬化性が低下し、40質量%を超えると塗料の安定性が低下するおそれがある。
成分(d)
本発明では、水性ベース塗料に溶剤の一部としてプロピレングリコールモノアルキルエーテルを配合する。プロピレングリコールモノアルキルエーテルは、塗料の樹脂固形分100質量部に対して、10〜40質量部、好ましくは10〜30質量部の量で配合する。10質量部より少ないと、塗料塗着時の粘度上昇が早くなって、塗膜の肌外観が悪くなり、40質量部より多いと、FF性が低下する。
上記成分(d)として、より好ましいプロピレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基は、炭素数2〜4であり、炭素数3がさらに好ましい。具体的には、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
その他の成分
本発明の水性ベース塗料は、顔料を含むことができる。顔料としては、光輝性顔料および着色顔料が挙げられる。光輝性顔料としては、形状は特に限定されず、また着色されていてもよいが、例えば、平均粒径(D50)が2〜50μmであり、かつ厚さが0.1〜5μmであるものが好ましい。また、平均粒径が10〜35μmの範囲のものが光輝感に優れ、さらに好適に用いられる。具体的には、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム等の金属または合金等の無着色あるいは着色された金属製光輝剤およびその混合物が挙げられる。この他に干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料などもこの中に含めるものとする。
一方、着色顔料としては、例えば有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、無機系では黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等が挙げられる。
本発明の水性ベース塗料中の全顔料濃度(PWC)としては、0.1〜50質量%であることが好ましい。さらに好ましくは、0.5〜40質量%であり、特に好ましくは、1.0〜30質量%である。上限を越えると塗膜外観が低下する。また、光輝性顔料が含まれる場合、その顔料濃度(PWC)としては、一般的に18.0質量%以下であることが好ましい。上限を越えると塗膜外観が低下する。さらに好ましくは、0.01〜15.0質量%であり、特に好ましくは、0.01〜13.0質量%である。
また、上記水性ベース塗料は、ポリエーテルポリオールを含むことができる。このポリエーテルポリオールを含むことで、これから得られる複合塗膜のフリップフロップ性をより高めることができるので、さらに塗膜外観を向上させることができる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、1分子中に少なくとも一級水酸基を1つ以上有しており、数平均分子量300〜3000、水酸基価が30〜700mgKOH/g、かつ先の水トレランスが2.0以上であるものを用いることが好ましい。上記条件を満たしていない場合には、耐水性の低下や目的とする外観の向上が得られないことがある。
このようなポリエーテルポリオールは、多価アルコール、多価フェノール、多価カルボン酸類などの活性水素含有化合物にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドが付加した化合物を用いることができる。具体的なものとしては、プライムポールPX−1000、サニックスSP−750(上記いずれも三洋化成工業社製)、PTMG−650(三菱化学社製)などの市販品を挙げることができる。上記ポリエーテルポリオールは、塗料樹脂固形分中、1〜40質量%含有されることが好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。
またさらに、本発明の水性ベース塗料には、上塗り塗膜とのなじみ防止、塗装作業性を確保するために、その他の粘性制御剤を添加することができる。粘性制御剤としては、一般にチクソトロピー性を示すものを使用でき、例えば、架橋あるいは非架橋の樹脂粒子、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドの燐酸塩等のポリアマイド系のもの、酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系等のもの、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系のもの、ケイ酸アルミ、硫酸バリウム等の無機顔料、顔料の形状により粘性が発現する偏平顔料等を挙げることができる。
本発明に用いられる水性メタリックベース塗料中には、上記成分の他に塗料に通常添加される添加剤、例えば、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤等を配合してもよい。これらの配合量は当業者の公知の範囲である。
上記水性ベース塗料は、成分(c)のメラミン樹脂硬化剤の他に、他の硬化剤を含んでもよい。そのような硬化剤としては、塗料一般に用いられているものを使用することができる。このようなものとして、ブロックイソシアネート、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、金属イオン等が挙げられる。得られた塗膜の諸性能、コストの点からブロックイソシアネート樹脂が一般的に用いられる。
上記ブロックイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートに活性水素を有するブロック剤を付加させることによって得ることができるものであって、加熱によりブロック剤が解離してイソシアネート基が発生するものが挙げられる。
本発明の水性ベース塗料には、更に必要に応じて、ポリエステル樹脂を配合してもよい。ポリエステル樹脂は酸成分およびアルコール成分を縮重合して得られる。上記酸成分としては特に限定されず、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、無水フタル酸等の多価カルボン酸化合物およびそれらの無水物を挙げることができる。さらに、酸成分として、ジメチロールプロピオン酸等の1分子中にカルボン酸基と水酸基とを有する化合物を用いることができる。また、上記アルコール成分としては特に限定されず、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール化合物を挙げることができる。上記ポリエステル樹脂は、好ましくは、樹脂固形分酸価10〜80mgKOH/g、および数平均分子量1000〜15000を有する。ポリエステル樹脂は、得られる塗膜の色ムラを抑制するために添加される。ポリエステル樹脂の塗料中の配合量は、5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%である。5質量%より少ないと色ムラ抑制の効果が小さく、30質量%より多いと、フリップフロップ性が低下するおそれがある。
本発明に用いられる塗料の製造方法は、後述するものを含めて、特に限定されず、顔料等の配合物をニーダーまたはロール等を用いて混練、分散する等の当業者に周知の全ての方法を用い得る。
水性中塗り塗料
本発明の方法で用いる水性中塗り塗料は、下地を隠蔽し、上塗り塗装後の表面肌外観を確保(外観向上)し、耐衝撃性等の塗膜物性を付与するために塗布されるものである。水性中塗り塗料は、水性媒体中に分散または溶解された状態で、アクリル樹脂エマルションである樹脂、硬化剤等を含有する。
アクリル樹脂エマルションは水性中塗り塗料において樹脂として機能し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)、酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー(ii)、及び水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー(iii)を含むモノマー混合物を乳化重合して得ることができる。これらのモノマーとしては、具体的には、上述の水性ベース塗料の成分(a)で例示した架橋性モノマー、酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー、水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーおよびその他のα,β−エチレン性不飽和モノマーを各々挙げることができる。尚、モノマー混合物の成分としてこれらモノマーは1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用してよい。また、上記乳化重合、並びに乳化重合に用いられる重合開始剤及び乳化剤は、具体的には、上述の水性ベース塗料の成分(a)で例示したものを挙げることができる。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−50℃〜20℃、好ましくは−40℃〜10℃、さらに好ましくは−30℃〜0℃の範囲とする。この範囲の樹脂のTgとすることにより、アクリル樹脂エマルションを含む水性中塗り塗料をウェットオンウェット方式において用いた場合に、下塗り塗料及び上塗り塗料との親和性や密着性が良好となり、ウェット状態の上側塗膜との界面でのなじみが良く反転が起こらない。また、最終的に得られる塗膜の適度な柔軟性が得られ、耐チッピング性が高められる。これらの結果、非常に高外観を有する複層塗膜が形成できる。樹脂のTgが−50℃未満では塗膜の機械的強度が不足し、耐チッピング性が弱い。一方、樹脂のTgが20℃を超えると、塗膜が硬くて脆くなるため、耐衝撃性に欠け、耐チッピング性が弱くなる。前記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂のTgが上記範囲となるように選択する。
アクリル樹脂の酸価は2〜60mgKOH/g、好ましくは5〜50mgKOH/gの範囲とする。この範囲の樹脂の酸価とすることにより、樹脂エマルションやそれを用いた水性中塗り塗料の保存安定性、機械的安定性、凍結に対する安定性等の諸安定性が向上し、また、塗膜形成時におけるメラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応が十分起こり、塗膜の諸強度、耐チッピング性、耐水性が向上する。樹脂の酸価が2mgKOH/g未満では、上記諸安定性が劣り、また、メラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応が十分行われず、塗膜の諸強度、耐チッピング性、耐水性が劣る。一方、樹脂の酸価が60mgKOH/gを超えると、樹脂の重合安定性が悪くなったり、上記諸安定性が逆に悪くなったり、得られた塗膜の耐水性が劣るものとなる。前記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂の酸価が上記範囲となるように選択する。前述したように、酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)の内でもカルボキシル基含有モノマーを用いることが重要であり、モノマー(b)の内、カルボキシル基含有モノマーが好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上含まれる。
アクリル樹脂の水酸基価は10〜120mgKOH/g、好ましくは20〜100mgKOH/gの範囲とする。この範囲の樹脂の水酸基価とすることにより、樹脂が適度な親水性を有し、樹脂エマルションを含む塗料組成物として用いた場合における作業性や凍結に対する安定性が増すと共に、メラミン樹脂やイソシアネート系硬化剤との硬化反応性も十分である。水酸基価が10mgKOH/g未満では、前記硬化剤との硬化反応が不十分で、塗膜の機械的性質が弱く、耐チッピング性に欠け、耐水性及び耐溶剤性にも劣る。一方、水酸基価が120mgKOH/gを超えると、逆に得られた塗膜の耐水性が低下したり、前記硬化剤との相溶性が悪く、塗膜にひずみが生じ硬化反応が不均一に起こり、その結果、塗膜の諸強度、特に耐チッピング性、耐溶剤性及び耐水性が劣る。前記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂の水酸基価が上記範囲となるように選択する。
得られたアクリル樹脂エマルションに対し、カルボン酸の一部又は全量を中和してアクリル樹脂エマルションの安定性を保つため、塩基性化合物が添加される。これら塩基性化合物としては、通常アンモニア、各種アミン類、アルカリ金属などが用いられ、本発明においても適宜使用される。
硬化剤は、エマルションとして含まれるアクリル樹脂やウレタン樹脂と硬化反応を生じ、水性中塗り塗料中に配合することができるものであれば特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上が適宜組み合わされ使用される。塗膜性能上、メラミン樹脂またはカルボジイミド系化合物を含有することが好ましい。
メラミン樹脂としては特に限定されず、硬化剤として通常用いられるものを使用することができる。但し、疎水性メラミン樹脂が好ましい。得られる複層塗膜の外観が向上するからである。
メラミン樹脂は、硬化剤として通常用いられるものを使用することができる。例えば、アルキルエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましく、メトキシ基及び/又はブトキシ基で置換されたメラミン樹脂がより好ましい。このようなメラミン樹脂としては、メトキシ基を単独で有するものとして、サイメル325、サイメル327、サイメル370、マイコート723;メトキシ基とブトキシ基との両方を有するものとして、サイメル202、サイメル204、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267(何れも商品名、三井サイテック社製);ブトキシ基を単独で有するものとして、マイコート506(商品名、三井サイテック社製)、ユーバン20N60、ユーバン20SE(何れも商品名、三井化学社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、サイメル325、サイメル327、マイコート723がより好ましい。
イソシアネート樹脂は、ジイソシアネート化合物を適当なブロック剤でブロックしたものである。上記ジイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族−脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネート類;ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、水素化されたTDI(HTDI)、水素化されたXDI(H6XDI)、水素化されたMDI(H12MDI)等の水素添加ジイソシアネート類、及び以上のジイソシアネート類のアダクト体及びヌレート体等を挙げることができる。さらに、これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
ジイソシアネート化合物をブロックするブロック剤としては、特に限定されず、例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;m−クレゾール、キシレノール等のフェノール類;ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル等のジケトン類;チオフェノール等のメルカプタン類;チオ尿酸等の尿素類;イミダゾール類;カルバミン酸類等を挙げることができる。なかでも、オキシム類、フェノール類、アルコール類、ラクタム類、ジケトン類が好ましい。
オキサゾリン系化合物は、2個以上の2−オキサゾリン基を有する化合物であることが好ましく、例えば、下記のオキサゾリン類やオキサゾリン基含有重合体等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。オキサゾリン系化合物は、アミドアルコールを触媒の存在下で加熱して脱水環化する方法、アルカノールアミンとニトリルとから合成する方法、或いはアルカノールアミンとカルボン酸とから合成する方法等を用いることによって得られる。
オキサゾリン類としては、例えば、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
オキサゾリン基含有重合体は、付加重合性オキサゾリン及び必要に応じて少なくとも1種の他の重合性単量体を重合したものである。付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上が適宜組み合わされて使用される。中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
付加重合性オキサゾリンの使用量は特に限定されるものではないが、オキサゾリン基含有重合体中、1質量%以上であることが好ましい。1質量%未満の量では硬化の程度が不充分となる傾向にあり、耐久性、耐水性等が損なわれる傾向にある。
他の重合性単量体としては、付加重合性オキサゾリンと共重合可能で、かつ、オキサゾリン基と反応しない単量体であれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化α,β−不飽和単量体類;スチレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族単量体類等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
オキサゾリン基含有重合体は付加重合性オキサゾリン及び必要に応じて少なくとも1種の他の重合性単量体を、従来公知の重合法、例えば懸濁重合、溶液重合、乳化重合等により製造できる。上記オキサゾリン基含有化合物の供給形態は、有機溶剤溶液、水溶液、非水ディスパーション、エマルション等が挙げられるが、特にこれらの形態に限定されない。
カルボジイミド系化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成して得られたものを挙げることができる。より具体的には、ポリカルボジイミド系化合物の製造において、(a)1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するポリカルボジイミド化合物と、(b)分子末端に水酸基を有するポリオールとを、上記(a)ポリカルボジイミド化合物のイソシアネート基のモル量が上記(b)ポリオールの水酸基のモル量を上回る比率で反応させる工程と、上記工程で得られた反応生成物に、活性水素および親水性部分を有する親水化剤(c)を反応させる工程とにより得られた親水化変性カルボジイミド化合物が好ましいものとして挙げることができる。
1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するカルボジイミド化合物(a)としては、特に限定されないが、反応性の観点から、両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物であることが好ましい。両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物の製造方法は当業者によく知られており、例えば、有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応を利用することができる。
本発明に用いられる水性中塗り塗料に含有される親水化変性カルボジイミド化合物は、カルボジイミドユニットとポリオールユニットとがウレタン結合を介して交互に繰り返し連続して存在しており、分子両末端において、ウレタン結合を介してモノアルコキシポリアルキレンオキサイドユニットがカルボジイミドユニットに結合しているものである。
上記カルボジイミドユニットとは、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するポリカルボジイミド化合物(a)からイソシアネート基を除いたものであり、−(−N=C=N−R−)−(R7は飽和であっても不飽和であっても、また、窒素原子および/または酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基、nは重合度であり、2〜20の自然数)で表される単位をいう。
上記ポリカルボジイミド化合物(a)は、上記親水化変性カルボジイミド化合物の製造方法のところで述べたものと同一である。
上記ポリオールユニットとは、1分子中に水酸基を少なくとも2個含有するポリオール(b)から活性水素を除いたものである単位をいう。
上記ポリオール(b)は、上記親水化変性カルボジイミド化合物の製造方法のところで述べたものと同一である。
親水化変性カルボジイミド化合物における上記カルボジイミドユニットおよび上記ポリオールユニットは、−NHCO−で表されるウレタン結合を介して交互に繰り返し連続して存在している。上記繰り返し回数としては、特に限定されないが、反応効率の観点から、1〜10であることが好ましい。
本発明の親水化変性カルボジイミド化合物は、その分子両末端がモノアルコキシポリアルキレンオキサイドユニットであって、上記モノアルコキシポリアルキレンオキサイドユニットが上記ウレタン結合を介して上記カルボジイミドユニットに結合している。
上記モノアルコキシポリアルキレンオキサイドユニットとしては、上記モノアルコキシポリアルキレングリコールから活性水素を除いたものであり、R−O−(CH−CHR−O−)−(但し、式中R、R、mは上記と同一)で表される単位をいう。
上記モノアルコキシポリアルキレングリコールとしては、具体的には、上記親水化変性カルボジイミド化合物の製造方法のところで述べたものと同一である。
本発明で用いる水性中塗り塗料は、さらに以下の成分を含むことができる。例えば、追加の樹脂成分、顔料分散ペースト、増粘剤、その他の添加剤成分等である。
上記追加の樹脂成分としては特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂エマルション、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、カーボネート樹脂及びエポキシ樹脂等を挙げることができる。
顔料としては、通常の水性塗料に使用される顔料であれば特に限定されないが、耐候性を向上させ、かつ隠蔽性を確保する点から、着色顔料であることが好ましい。特に二酸化チタンは着色隠蔽性に優れ、しかも安価であることから、より好ましい。
二酸化チタン以外の顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料; 黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック等の無機系着色顔料等が挙げられる。これら顔料に、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料を併用しても良い。
また顔料として、カーボンブラックと二酸化チタンとを主要顔料とした標準的なグレーの塗料を用いることもできる。他にも、上塗り塗料と明度又は色相等を合わせた塗料や各種の着色顔料を組み合わせた塗料を用いることもできる。
増粘剤としては特に限定されないが、例えば、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、市販されているものとしては、チローゼMH及びチローゼH(いずれもヘキスト社製、商品名)等のセルロース系のもの;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、市販されているもの(以下いずれも商品名)としては、プライマルASE−60、プライマルTT−615、プライマルRM−5(いずれもローム&ハース社製)、ユーカーポリフォーブ(ユニオンカーバイト社製)等のアルカリ増粘型のもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、市販されているもの(以下いずれも商品名)としては、アデカノールUH−420、アデカノールUH−462、アデカノールUH−472、UH−540、アデカノールUH−814N(旭電化工業社製)、プライマルRH−1020(ローム&ハース社製)、クラレポバール(クラレ社製)等の会合型のものを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増粘剤を含有することにより、水性中塗り塗料の粘度を高くすることができ、水性中塗り塗料を塗装する際に、タレが発生することを抑制することができる。また、中塗り塗膜とベース塗膜との間での混層をより抑制することができる。その結果、増粘剤を含まない場合に比べて、塗装時の塗装作業性が向上し、得られる塗膜の仕上がり外観を優れたものとすることができる。
その他の添加剤としては、上記成分の他に通常添加される添加剤、例えば、紫外線吸収剤;酸化防止剤;消泡剤;表面調整剤;ピンホール防止剤等が挙げられる。これらの配合量は当業者の公知の範囲である。
本発明で使用する水性中塗り塗料は、上述のアクリル樹脂エマルション、硬化剤、及び必要に応じてその他の成分を混合して調製される。
硬化剤は、硬化剤およびアクリル樹脂エマルションの固形分に対して下限2質量%、上限50質量%、好ましくは下限4質量%、上限40質量%、より好ましくは下限5質量%、上限30質量%となるように使用する。2質量%より少ないと、得られる塗膜の耐水性が低下する傾向がある。また、50質量%を超えると、得られる塗膜のピーリング性が低下する傾向がある。
追加の樹脂成分、顔料分散ペーストやその他の添加剤は、適量混合すれば良い。但し、追加の樹脂成分は、水性中塗り塗料用組成物中に含まれる全ての樹脂の固形分を基準として、50質量%以下の割合で配合することが好ましい。50質量%を越えて配合した場合は、塗料中の固形分濃度を高くすることが困難になるため、好ましくない。
顔料は、水性中塗り塗料中に含まれる全ての樹脂の固形分及び顔料の合計質量に対する顔料濃度(PWC;pigment weight content)が、10〜60質量%であることが好ましい。10質量%未満では、隠蔽性が低下するおそれがある。60質量%を超えると、硬化時の粘性増大を招き、フロー性が低下して塗膜外観が低下することがある。
増粘剤の含有量は、上記水性中塗り塗料の樹脂固形分(水性中塗り塗料に含まれる全ての樹脂の固形分)100質量部に対して、下限0.01質量部、上限20質量部であることが好ましく、下限0.1質量部、上限10質量部であることがより好ましい。0.01質量部未満であると、増粘効果が得られず、塗装時のタレが発生するおそれがあり、20質量部を超えると、外観及び得られる塗膜の諸性能が低下するおそれがある。
これら成分を加える順番は、エマルションに硬化剤を加える前でもよいし、後でも良い。水性中塗り塗料は、水性であれば形態は特に限定されず、例えば、水溶性、水分散型、水性エマルション等の形態であればよい。
有機溶剤型クリヤー塗料
上記有機溶剤型クリヤー塗料は、特に限定されず、塗膜形成性樹脂および硬化剤等を含有するクリヤー塗料を利用できる。更に下地の意匠性を妨げない程度であれば着色顔料を含有することもできる。
上記有機溶剤型クリヤー塗料の好ましい例としては、透明性あるいは耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂及び/またはイソシアネートとの組合わせ、あるいはカルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂系等が挙げられる。
更に、上記有機溶剤型クリヤー塗料には、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤が添加されていることが好ましい。粘性制御剤は、一般にチクソトロピー性を示すものを使用できる。このようなものとして、例えば、上述の水性ベースコート組成物のところで述べたものを使用することができる。また必要により、硬化触媒、表面調整剤等を含むことができる。
被塗物
本発明の塗膜形成方法は、鋼板およびプラスチックの両方を有する基材に用いられる。鋼板は、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等およびこれらの金属を含む合金が挙げられる。これらの鋼板は予めリン酸塩、クロム酸塩等で化成処理されたものが特に好ましい。
上記化成処理された鋼板上に電着塗膜が形成されていても良く、この電着塗料としては、カチオン型及びアニオン型を使用できるが、カチオン型電着塗料組成物が防食性において優れた複層塗膜を与えるため好ましい。
上記プラスチックとしては、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等のものが挙げられる。具体的には、スポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリル、ドアノブ等の自動車部品等が挙げられる。これらのプラスチック製品は、トリクロロエタンで蒸気洗浄または中性洗剤で洗浄されたものが好ましく、また、さらに静電塗装を可能にするためのプライマー塗装が施されていてもよい。
複層塗膜形成方法
本発明の複層塗膜形成方法では、鋼板およびプラスチックの両方を有する被塗物(鋼板上には電着塗膜が形成されていてもよい)上に、水性中塗り塗料による中塗り塗膜、水性ベース塗料によるベース塗膜及び有機溶剤型クリヤー塗料によるクリヤー塗膜を、順次形成することができる。
本発明で、水性中塗り塗料および水性ベース塗料を、自動車車体に塗装する場合は、外観を高めるために、エアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装、好ましくは2ステージで塗装するか、或いは、エアー静電スプレー塗装と、通称「μμ(マイクロマイクロ)ベル」、「μ(マイクロ)ベル」あるいは「メタベル」等と言われる回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装方法等により塗膜を形成する方法を用いることができる。
本発明における、水性中塗り塗料による塗装時の塗膜の膜厚は所望の用途により変化するが、多くの場合15〜30μmが有用である。上限を越えると、塗装時にタレやワキが発生し、下限を下回ると、肌外観が低下するおそれがある。
本発明における、水性ベース塗料による塗装時の塗膜の膜厚は所望の用途により変化するが、多くの場合10〜30μmが有用である。上限を越えると、鮮映性が低下したり、塗装時にムラあるいは流れ等の不具合が起こることがあり、下限を下回ると、下地が隠蔽できず膜切れが発生する。
本発明の複層塗膜形成方法では、未硬化のベース塗膜の上にさらにクリヤー塗料を塗布し、クリヤー塗膜を形成すること(ウェット・オン・ウェット塗装)が焼き付け乾燥炉を省略することができ、経済性及び環境面からも好ましい。なお、良好な仕上がり塗膜を得るために、クリヤー塗料を塗布する前に、未硬化のベース塗膜を40〜100℃で2〜10分間加熱しておくことが望ましい。
本発明の塗膜形成方法において、上記ベース塗膜を形成した後に塗装されるクリヤー塗膜は、上記ベース塗膜に起因する凹凸、チカチカ等を平滑にし、保護するために形成される。塗装方法として具体的には、先に述べたμμベル、μベル等の回転霧化式の静電塗装機により塗膜を形成することが好ましい。
上記クリヤー塗料により形成されるクリヤー塗膜の乾燥膜厚は、一般に10〜80μm程度が好ましく、より好ましくは20〜60μm程度である。上限を越えると、塗装時にワキあるいはタレ等の作業性の不具合が起こることもあり、下限を下回ると、下地の凹凸が隠蔽できない。
上述のようにして得られたクリヤー塗膜は、焼き付け温度を80〜180℃、好ましくは120〜160℃に設定することで高い架橋度の硬化塗膜が得られる。上限を越えると、塗膜が固く脆くなり、下限未満では硬化が充分でない。硬化時間は硬化温度により変化するが、120〜160℃で10〜30分が適当である。
本発明で形成される複層塗膜の膜厚は、多くの場合30〜300μmであり、好ましくは50〜250μmである。上限を越えると、冷熱サイクル等の膜物性が低下し、下限を下回ると膜自体の強度が低下する。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下「部」とあるのは「質量部」を意味する。
製造例1 アクリル樹脂エマルション1の製造
反応容器に脱イオン水126.5部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら80℃に昇温した。次いで、アクリル酸メチル27.61部、アクリル酸エチル53.04部、スチレン4.00部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル9.28部、メタクリル酸3.07部およびメタクリル酸アリル3.00部のモノマー混合物100部、アクアロンHS−10(ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル、第一工業製薬社製)0.7部、アデカリアソープNE−20(α−[1−[(アリルオキシ)メチル]−2−(ノニルフェノキシ)エチル]−ω−ヒドロキシオキシエチレン、旭電化社製)0.5部、および脱イオン水80部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.3部、および脱イオン水10部からなる開始剤溶液とを2時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。次いで、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した後、脱イオン水70部およびジメチルアミノエタノール0.32部を加えpH6.5に調整し、平均粒子径150nm、不揮発分25%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/gの単層のアクリル樹脂エマルションを得た。
製造例2 水溶性アクリル樹脂の製造
反応容器にトリプロピレングリコールメチルエーテル23.89部およびプロピレングリコールメチルエーテル16.11部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら105℃に昇温した。次いで、下記のモノマー混合物100部、トリプロピレングリコールメチルエーテル10.0部およびターシャルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート1部からなる開始剤溶液を3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。
さらに、トリプロピレングリコールメチルエーテル5.0部およびターシャルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
脱溶剤装置により、減圧下(70torr)110℃で溶剤を16.1部留去した後、脱イオン水204部およびジメチルアミノエタノール7.1部を加えて水溶性アクリル樹脂溶液を得た。得られた水溶性アクリル樹脂溶液の不揮発分は30%であり、固形分酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g、粘度は140ポイズ(E型粘度計1rpm/25℃)であった。
モノマー混合物メタクリル酸メチル 13.1部アクリル酸エチル 68.4部メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 11.6部メタクリル酸 6.9部
製造例3 ポリエステル樹脂の製造
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にジメチルテレフタル酸372部、ジメチルイソフタル酸380部、2−メチル−1,3−プロパンジオール576部、1,5−ペンタンジオール222部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下まで減圧して、260℃にて40分間重縮合反応を行った。窒素雰囲気下、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸を23部投入し、220℃で30分間反応を行ってポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂は、NMRの組成分析の結果、カルボン酸成分がモル比でテレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸:48/49/3であり、ポリオール成分がモル比で2−メチル−1,3−プロパンジオール/1,5−ペンタンジオール:65/35であった。つまりポリカルボン酸成分、ポリオール成分のそれぞれの合計量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸が97モル%、イソフタル酸が49モル%、所定のジオールの合計量が65モル%、エチレングリコールは0モル%であった。
得られた樹脂について、以下の通り、特性値を測定した。
(1)数平均分子量:ポリスチレン標準サンプル基準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したところ、12000であった。
(2)酸価:試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した後、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定したところ、16.1mgKOH/gであった。
このポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ40部、トリエチルアミン2.7部を投入した後、80℃で1時間攪拌を行って溶解させた。次いで、イオン交換水193部をゆるやかに添加し、不揮発分30%のポリエステル樹脂を含んだポリエステルの水分散体1を得た。平均粒子径を測定するために、専用セルにイオン交換水だけを入れ、この分散体を1滴添加しかき混ぜ、樹脂固形分濃度0.1質量%に調整して動的光散乱式粒径測定装置LB−500(堀場製作所社製)によって、20℃で測定したところ、35nmであった。
製造例4 リン酸基含有アクリル樹脂の合成
攪拌機、温度調整器、冷却管を備えた1リットルの反応容器にエトキシプロパノール40部を仕込み、これにスチレン4部、n−ブチルアクリレート35.96部、エチルヘキシルメタアクリレート18.45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13.92部、メタクリル酸7.67部、エトキシプロパノール20部に、ホスマーPP(ユニケミカル社製アシッドホスホオキシヘキサ(オキシプロピレン)モノメタクリレート)20部を溶解した溶液40部、及びアゾビスイソブチロニトリル1.7部からなるモノマー溶液121.7部を120℃で3時間滴下した後、1時間さらに攪拌を継続した。得られた樹脂は、酸価105mgKOH/g、うちリン酸基による酸価55mgKOH/g、水酸基価60mgKOH/g、数平均分子量6000のアクリルワニスで、不揮発分が63%であった。
実施例1
<水性メタリックベース塗料の製造>
先の製造例1で得られたアクリル樹脂エマルションを160部(固形分25%)、10質量%ジメチルアミノエタノール10部、製造例2の水溶性アクリル樹脂33部(樹脂固形分30%)、製造例3のポリエステル樹脂33部(樹脂固形分30%)、メラミン樹脂としてサイメル204(三井サイテック社製混合アルキル化型メラミン樹脂、固形分80%、水トレランス3.6ml)を38部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部(塗料の樹脂固形分100質量部に対して15質量部)、プライムポールPX−1000(三洋化成工業社製2官能ポリエーテルポリオール)10部、光輝性顔料としてアルペーストMH8801(旭化成社製アルミニウム顔料)21部(固形分65%、PWC12%)、リン酸基含有アクリル樹脂5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.3部を添加し、さらに、2−エチルヘキサノール30部、アデカノールUH−814N3.3部(ADEKA社製増粘剤、固形分30%)を均一分散することにより水性メタリックベース塗料を得た。
<複合塗膜形成方法(ツーコート・ワンベーク)>
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、縦30cm、横40cmのダル鋼板に、カチオン電着塗料「パワートップU−50」(日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付けた塗板に、25秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に、予め希釈されたグレー中塗り塗料「オルガOP−30」(日本ペイント社製ポリエステル・メラミン系塗料)を、乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレーで2ステージ塗装し、140℃で30分間、焼き付けた。
冷却後、先の製造例の水性メタリックベース塗料を、脱イオン交換水を用いて6000mPa・s(B型粘度計を使用し、6rpmの条件にて、20℃で測定)に希釈した。室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚15μmになるように「カートリッジベル」で2ステージ塗装した。2回の塗布の間に、1分30秒間のインターバルセッティングを行った。2回目の塗布後、1分30秒間のインターバルをとって、セッティングを行った。その後、80℃で5分間のプレヒートを行った。
プレヒート後、塗装板を室温まで放冷し、クリヤー塗料として−O−1810(日本ペイント社製溶剤型クリヤー塗料)を、乾燥膜厚35μmとなるように1ステージ塗装し、7分間セッティングした。ついで、塗装板を乾燥機で140℃で30分間焼き付けを行うことにより、複合塗膜を得た。
得られた塗膜について、FF性と塗膜外観(肌外観)を評価した。評価方法は以下の通りであった。結果を表1に示す。
<FF性評価>
ミノルタ株式会社から市販のミノルタCM−512m3を用いて、塗膜に垂直にある受光部を0°とした場合に、25°、45°、75°となる角度から光源を照射して測定されるL*値を測定し、その測定値からフリップフロップ値を算出した。
FF値(フリップフロップ値)=25°L*値/75°L*値の比で表す。FF性は2.15以上(25度のL*値が98以上)が合格である。
<肌外観>
積層塗膜の外観評価
得られた積層塗膜の表面について、BYK−Gardner GmbH社製「ウェーブスキャン−T」を用いて、W1値およびW4値を測定することにより、仕上がり外観を評価した。ここで、W1値は、塗膜の肌のうねり(ラウンド)を評価する指標であり、この値が低い程、仕上がり外観が良好であることを示す。W4値は、塗膜の艶感及び微小な肌を評価する指標であり、この値が低い程、仕上がり外観が良好であることを示す。
肌外観の合格は、W1<15、W2<10、W3<20およびW4<15である。
<複合塗膜形成方法(スリーコート・ワンベーク)>
水性中塗り塗料の製造例
(顔料分散ペーストの調製)
有機物処理二酸化チタン顔料(石原産業社製「タイペークCR−90−2」)72.1部、市販分散剤(ビックケミー社製「Disperbyk190」)4.5部、脱イオン水23.4部を予備混合後、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で粒度5μm以下になるまで混合分散し、顔料分散ペーストを得た。
(アクリル樹脂エマルジョンの調製)
反応容器に脱イオン水35.75部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら80℃に昇温した。次いでα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物として、スチレン10部、メタクリル酸メチル24.02部、アクリル酸ブチル28.94部、アクリル酸エチル20.11部、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル15.40部、メタクリル酸1.53部、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル(第一工業製薬社製「アクアロンHS−10」)3.0部、乳化剤(旭電化社製「アデカリアソープNE−20」)0.5部、及び脱イオン水50部からなるモノマー乳化物と、過流酸アンモニウム0.30部、及び脱イオン水15.0部からなる開始剤溶液とを2時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了、後同温度で2時間熟成を行った。次いで、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターでろ過し、粒径200nm、不揮発分50%、酸価10mgKOH/g、水酸基価60mgKOH/g、質量平均分子量200000のアクリル樹脂エマルジョンを得た。
得られたアクリル樹脂エマルジョンは、30%ジメチルアミノエタノール水溶液を用いてpHを7.2に調整した。
(水性中塗り塗料の調製)
上述のようにして得られた顔料分散ペースト55.5部、アクリル樹脂エマルジョン96部、及び硬化剤としてメラミン樹脂(三井サイテック社製「サイメル327」)13.3部を混合した後、ウレタン会合型増粘剤(旭電化工業社製「アデカノールUH−814N」、有効成分30%)1.0部を混合攪拌し、水性中塗り塗料を得た。
鋼板上の3C/1B複層塗膜形成方法
リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、パワーニクス110(日本ペイント社製カチオン電着塗料、商品名)を、乾燥塗膜が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間の加熱硬化後冷却して、鋼板基板を準備した。
得られた基板に、上記水性中塗り塗料をエアースプレー塗装にて乾燥膜厚が20μmとなるように塗装し、80℃で5分プレヒートを行った後、上記で得た水性メタリックベース塗料をエアースプレー塗装にて10μm塗装し、80℃で3分プレヒートを行った。更に、その塗板にクリヤー塗料として、マックフローO−1810をエアースプレー塗装にて乾燥膜厚40μmとなるように塗装した後、140℃で30分間の加熱硬化を行い、複層塗膜を持つ試験板を得た。
バンパー用の3C/1B複層塗膜形成方法
市販のポリプロピレン素材(70mm×150mm×3mm)にWB8200(日本ビー・ケミカル社製ポリプロピレン素材用水性プライマー塗料、商品名)をエアースプレー塗装にて乾燥膜厚が10μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱乾燥することにより、プラスチック部材を作製した。
得られたプラスチック部材に、水性メタリックベース塗料をエアースプレー塗装にて10μm塗装し、80℃で3分プレヒートを行った。更に、その塗板にクリヤー塗料として、ポリウレエクセルO−1100クリヤー(日本ペイント社製イソシアネート硬化型クリヤー塗料、商品名)を、エアースプレーにて乾燥膜厚40μmとなるように塗装し、7分間セッティングした。更に、得られた塗装板を熱風乾燥炉にて120℃で30分間加熱硬化を行い、複層塗膜を持つ試験板を得た。
スリーコート・ワンベーク塗装方法で得られた塗膜についても、FF性、塗膜外観(肌外観)を評価した。結果を表1に示す。
実施例2ならびに比較例1〜3
実施例1の水性メタリックベース塗料の製造時に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部の代わりに、実施例2ではプロピレングリコールモノプロピルエーテル30質量部(塗料の樹脂固形分100質量部に対して30質量部)、比較例1ではプロピレングリコールモノプロピルエーテル5質量部(塗料の樹脂固形分100質量部に対して5質量部)、比較例2ではプロピレングリコールモノプロピルエーテル50質量部(塗料の樹脂固形分100質量部に対して50質量部)、および比較例3ではプロピレングリコールモノプロピルエーテルの代わりにブチルセロソルブを15質量部(塗料の樹脂固形分100質量部に対して15質量部)で配合した水性メタリックベース塗料を製造した。それらの塗料を用いて、ツーコート・ワンベーク塗装およびスリーコート・ワンベーク塗装を実施例1と同様に行って、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、FF性と塗膜外観(肌外観)を実施例1と同様に測定し、結果を表1に示す。
Figure 2011131135
上記結果から明らかなように、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを塗料の樹脂固形分に対して15質量部配合した水性メタリックベース塗料および30質量部配合した水性メタリックベース塗料を用いた場合、ツーコート・ワンベーク塗装の鋼板上のみならず、スリーコート・ワンベーク塗装の鋼板上およびプラスチックバンパー上もFF性および外観(肌外観)が共に優れている。一方、比較例では、ツーコート・ワンベーク塗装およびスリーコート・ワンベーク塗装の鋼板上でのFF性および外観(肌外観)がいずれかの部分で性能が悪化していることが解る。
本発明の複層塗膜形成方法は、自動車車体等の高外観塗膜を形成する際に利用することができる。

Claims (7)

  1. 鋼板およびプラスチック基材の両方を有する基材上に、水性中塗り塗料を塗装して中塗り塗膜を形成し、形成された中塗り塗膜上に水性ベース塗料を塗装してベース塗膜を形成した後、有機溶剤型クリヤー塗料を塗布してクリヤー塗膜を形成し、上記中塗り塗膜、ベース塗膜およびクリヤー塗膜の三層を加熱し硬化させる複層塗膜の形成方法であって、
    前記水性ベース塗料が、樹脂固形分100質量%中、
    (a)架橋性モノマーを0.2〜20質量%含んだモノマー混合物をエマルション重合して得られるアクリル樹脂エマルションが固形分で10〜60質量%、
    (b)水溶性アクリル樹脂が固形分で5〜40質量%、および
    (c)メラミン樹脂が固形分で20〜40質量%、
    (d)プロピレングリコールモノアルキルエーテルを塗料樹脂固形分100質量部に対して10〜40質量部
    含有することを特徴とする複層塗膜の形成方法。
  2. プロピレングリコールモノアルキルエーテルが、プロピレングリコールモノプロピルエーテルである請求項1記載の複層塗膜の形成方法。
  3. 架橋性モノマーがアクリル樹脂エマルション合成用のモノマー混合物中に0.5〜20質量%の量で含有する請求項1記載の複層塗膜の形成方法。
  4. アクリル樹脂エマルション(a)を合成するモノマー混合物が、架橋性モノマー、酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー、水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーおよびその他のα,β−エチレン性不飽和モノマーを含有する請求項1記載の複層塗膜の形成方法。
  5. アクリル樹脂エマルション(a)が、酸価3〜50mgKOH/g、水酸基価10〜150mgKOH/gを有する請求項1記載の複層塗膜の形成方法。
  6. 水性ベース塗料が、更に、光輝性顔料を含む請求項1記載の複層塗膜の形成方法。
  7. 水性ベース塗料が、更に、ポリエステル樹脂を含有する請求項1記載の複層塗膜の形成方法。
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