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JP2011125092A - アクチュエータ - Google Patents

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Abstract

【課題】変位量および発生力が大きいアクチュエータを提供する。
【解決手段】一対の電極層と、前記一対の電極層の間に配置されている電解質を含有する電解質層とを有し、前記一対の電極層に電圧を印加することにより前記電解質中のイオンが移動して変形するアクチュエータにおいて、前記電解質層はポリマー繊維からなるポリマー繊維層を少なくとも一層有し、前記ポリマー繊維層の前記ポリマー繊維の少なくとも一部は前記電解質層の面内で一軸方向に配向しているアクチュエータ。
【選択図】図1

Description

本発明は、アクチュエータに関し、具体的には電解質層と電極層を有する高分子アクチュエータに関する。
医療、福祉、ロボット、電子など各種産業領域において、人間との親和性から生物らしい柔軟な運動特性を有するソフトアクチュエータが求められている。中でも、高分子材料を用いた、電気的刺激により形状を変化させるアクチュエータは、電気的信号に応じた制御性と共に、重量・体積あたりの発生力を大きくできる可能性から活発な研究開発が行われている。
これら高分子アクチュエータの基本構造は、イオン性物質が電子導電体(電極)に挟持されたものである。電極間への電圧印加に対して、電極間の引力や、イオンの移動に伴う体積変化、静電反発などに起因して、デバイスとして屈曲運動や伸縮運動を行うことが知られている。
特に、カーボンナノチューブ(CNT)と、不揮発性のイオン伝導材料であるイオン液体とからなるゲル状物質を用いたアクチュエータにおいては、数Vの低電圧で動作し、また空気中及び真空中において極めて高い安定性を示すなどの優れた特性があることが知られている(特許文献1)。
上記アクチュエータは、イオン液体とポリマーをゲル化させた電解質層を、CNTとイオン液体とポリマーから形成される電極層で挟み込んだ構成である。
特開2005−176428号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例では、電解質層および電極層はキャストなどの方法で作製されたフィルム状の膜であるため、アクチュエータ内部でのイオンの移動性が十分に高いものとは言えなかった。イオンの移動効率が低いとアクチュエータとしての変位量或いは発生力の低下につながるため、これらの課題への対処が必要であった。
また、このようなフィルム状の膜を使用した場合は、膜厚を変える他は、アクチュエータの変位量と発生力のバランスを任意に設計することが難しかった。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、変位量および発生力が大きいアクチュエータを提供するものである。
上記の課題を解決するアクチュエータは、一対の電極層と、前記一対の電極層の間に配置されている電解質を含有する電解質層とを有し、前記一対の電極層に電圧を印加することにより前記電解質中のイオンが移動して変形するアクチュエータにおいて、前記電解質層はポリマー繊維からなるポリマー繊維層を少なくとも一層有し、前記ポリマー繊維層の前記ポリマー繊維の少なくとも一部は前記電解質層の面内で一軸方向に配向していることを特徴とする。
本発明によれば、変位量および発生力が大きいアクチュエータを提供することができる。
本発明のアクチュエータの一実施形態の構成を説明するための概観図である。 本発明のアクチュエータの一実施形態の動作を説明するための模式図である。 本発明における電解質層の構成とイオン性物質の伝導を説明するための模式図である。 従来技術の電解質層の構成とイオン性物質の伝導を説明するための模式図である。 本発明の実施例3のアクチュエータの構成を説明するための概観図である。 本発明の実施例4のアクチュエータの構成を説明するための概観図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るアクチュエータは、一対の電極層と、前記一対の電極層の間に配置されている電解質を含有する電解質層とを有し、前記一対の電極層に電圧を印加することにより前記電解質中のイオンが移動して変形するアクチュエータにおいて、前記電解質層はポリマー繊維からなるポリマー繊維層を少なくとも一層有し、前記ポリマー繊維層の前記ポリマー繊維の少なくとも一部は前記電解質層の面内で一軸方向に配向していることを特徴とする。
以下、本発明のアクチュエータにおける実施の形態について説明する。
図1に、本発明のアクチュエータの一実施形態の構成を説明するための概観図を示す。図1において、1はアクチュエータ、2は電解質層、3は電極層、4は取り出し電極、5はリード線、6は駆動電源、13はポリマー繊維層、10は電解質層のポリマー繊維、Zはポリマー繊維が一軸方向に配向している方向(「一軸配向方向」と略記する。)を表す。
本発明のアクチュエータ1の特徴は、一対の電極層3と、前記一対の電極層の間に配置されている電解質を有する電解質層2とを有し、前記一対の電極層に電圧を印加することにより前記電解質中のイオンが移動して変形するアクチュエータにおいて、前記電解質層2はポリマー繊維10の集合体からなるポリマー繊維層13を有し、前記ポリマー繊維層13の前記ポリマー繊維10は前記電解質層2の面内で一軸方向に揃って配向している部分を有することにある。
図3および図4は、本発明の実施の形態の電解質層(図3)と、従来技術の電解質層(図4)の構成とイオン性物質の伝導の違いを説明するための模式図である。図3は図1におけるAA線の断面図を表す。
図3に示すように、ポリマー繊維を一軸方向に配向(「一軸配向」と略記する。)するように並べた繊維状フィルムでは、ポリマー繊維自身がイオン性物質12を内部に含有するほか、ポリマー繊維のバルク14とバルク14の連なった構成である。そのため、ポリマー繊維とポリマー繊維の間には少なくとも構造上、一部空隙16が存在する。イオン性物質12はポリマーのバルク内部に存在する伝導路の他、バルクとバルクの間に存在する空隙も通過する。空隙の孔径はバルク内部のイオン伝導路よりも大きいためイオン伝導率もより大きい。
一方、図4に示した、例えばキャスト法により形成された従来技術のフィルム状の電解質層においても、ポリマー内にイオン性物質12を保持し、また、一部空隙16は存在し得る。しかし、全体として一つのバルク構造であるため、繊維状フィルムに比べて、バルク15間に存在する空隙16が少ない。そのため、フィルム内に占める空隙の存在率は、ポリマー繊維を用いたものの方がより大きい。
このため、本発明のようなポリマー繊維からなるポリマー繊維層(繊維状フィルム)を電解質層に用いることで、例えばキャスト法で形成された従来技術であるフィルム状の電解質層を用いるよりも、電解質層内でのイオンの移動効率をより高めることが可能となる。このためアクチュエータの変位、或いは、発生力をより向上させることが可能となる。
また、本発明の実施の形態における電解質層の構成を取れば、一軸配向の軸方向の曲げに対する機械的強度が高く、フィルムとして力を引き出し易い構造となる。相対的に、軸と垂直な方向の曲げに対する機械的強度は小さく、フィルムとして変位を促し易い構造となる。このため、本発明の構成により、曲げに対する機械的強度を配向の方向によって任意に調整することができるため、アクチュエータとしての変位量、或いは発生力をより向上させることが可能である。
以下、アクチュエータの各材料および構成について更に詳しく述べていく。
(アクチュエータの構成)
アクチュエータ1は電解質を含有し、電解質中のイオンの移動によって変形動作するアクチュエータである。電解質とポリマー繊維を含有する電解質層2の両側表面に、導電材と電解質とポリマーを含有する電極層3が形成される。各層は柔軟性を有し、矩形状に構成される。アクチュエータとしては高分子アクチュエータが好ましい。
図1で示すように、両電極層が向かい合うように挟持された構造においては、電圧印加に対してアクチュエータ全体として図2で示すような屈曲動作を示す。アクチュエータの長尺方向の一端を取り出し電極4で固定した場合、長尺方向から反り返るように屈曲する。
また、屈曲動作以外でも、電解質層2の構成や電極層3の配置などを設計することで、伸縮動作や捻り動作を示すことも可能である。
また、アクチュエータ1は矩形平板状の構成の他、円形、三角形、楕円形、棒状等の平板状、膜状、円筒状、螺旋状、コイル状等の各種構成を任意に選択可能である。
また、アクチュエータ1は単数あるいは複数の各素子から成る複合構成を取ることも可能である。
<電解質層の構成>
電解質層2は、ポリマー繊維からなるポリマー繊維層13を少なくとも一層有しおり、前記ポリマー繊維層のポリマー繊維10の少なくとも一部は電解質層の面内で一軸方向に配向している。
ここで一層のポリマー繊維層とはポリマー繊維を集積して形成されたフィルム体を指し、電解質層はこれらフィルム体を任意に積層して多層に形成されても構わない。一つのフィルム体において、厚み方向に明らかに構造が異なるポリマー繊維層が堆積されている場合は、電解質層は多層であると考えて構わない。
一軸方向に配向し揃ったポリマー繊維は、電解質層の面内において一部分であっても良く、異なる一軸方向を有したポリマー繊維の複数の部分から構成されても良い。
ポリマー繊維10を一軸配向するように並べたフィルム状のポリマー繊維層(繊維状フィルム)では、ポリマー繊維とポリマー繊維の間に少なくとも空隙が生じる。この空隙によりポリマー繊維のバルク内外がイオンの伝導路となるため、イオンの移動・拡散をより容易にしてくれる。このため、アクチュエータ内でのイオンの移動効率を高めることが可能となる。これにより、アクチュエータの特性を向上させることが可能となる。
また、ポリマー繊維10を一軸配向するように並べた繊維状フィルムでは、軸方向の曲げに対する機械的強度が高く、フィルムとして力を引き出し易い構造となる。相対的に、軸と垂直な方向の曲げに対する機械的強度は小さく、フィルムとして変位を促し易い構造となる。
このため、曲げに対する機械的強度を配向の方向によって任意に調整することができるため、アクチュエータとしての変位量、或いは、発生力をより向上させることが可能である。
一軸方向が全て同じである場合には、変位量、或いは、発生力をより向上させることができるためより好ましい。
具体的には、電解質層のポリマー繊維が高分子アクチュエータの長尺方向(X方向)に揃っていれば、屈曲方向に対する機械的強度を大きくすることができる。そのため、高分子アクチュエータが力を及ぼすべき対象物との相互作用において、アクチュエータ側が押し負けることが少なくなり、より大きな力を対象物へと伝達することが可能となる。
また、電解質層のポリマー繊維が高分子アクチュエータの短尺方向(Y方向)に揃っていれば、屈曲方向に対する機械的強度を小さくすることができる。そのため、高分子アクチュエータの屈曲動作における変位量をより促すことが可能となる。
また、電解質層のポリマー繊維の配向は、長尺方向から任意の傾きを持つように設計することも可能である。傾きの程度によって、高分子アクチュエータの変位量、或いは、発生力の調整が可能となる。
また、電解質層のポリマー繊維層は多層であっても良い。この場合、異なる層間の配向の向きは同じであっても良く、異なっていても良い。例えば、少なくとも一層が長尺方向に配向し、他層の少なくとも一層が短尺方向に配向するような網目状構造を取ることで、高分子アクチュエータの機械的強度をより高めることも可能である。
ポリマー繊維は径に対して長さが十分に長いものであり、径として0.05μm以上50μm以下が適用可能である。繊維径が小さい程、体積あたりの充填量を柔軟に調整することができるため、0.05μm以上1μm以下がより好ましい。
これらポリマー繊維を含有する電解質層の厚さは、1μm以上500μm以下であることが好ましい。これは、十分な電解質を保持するためには膜厚として1μm以上が必要であること、また、電解質層を厚くして曲げに対する機械的強度を過度に大きくすると動作効率が低減するために膜厚として500μm以下に抑える必要があることによる。
また、ポリマー繊維は内部にイオン液体を保持していても良く、また、ポリマー繊維とポリマー繊維の間の空隙にイオン液体を保持していても良い。
また、ポリマー繊維の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、四角形、多角形、半円形などでもよく、また正確な形状でなくてもよいし、任意の断面で形状が異なっていてもよい。尚、繊維径とは、ポリマー繊維が円柱状のものでは、断面円形の直径のことを表すが、それ以外では、繊維断面における重心を通る最長直線の長さを表す。
<電極層の構成>
電極層3の構成は、特に限定されるものでは無く、例えばキャスト法などで形成された、導電材と電解質とポリマーを含有するフィルム状の膜などが挙げられる。また、めっきやスパッタ、蒸着などで形成された薄い金属層であっても構わない。
これらフィルム状の膜においては、厚さは0.1μm以上5mm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上500μm以下である。電極層内に移動する電解質の量を十分に確保するためには0.1μm以上が必要であり、また電極層を厚くして曲げに対する機械的強度を過度に大きくすると動作効率が低減するために膜厚として5mm以下に抑える必要がある。
また、電極層3は電解質層2と同様に、少なくとも一層からなるポリマー繊維層を有し、前記ポリマー繊維層のポリマー繊維が、電極層の面内で一軸方向に揃っている部分を有する構成であっても良い。
ここで一層のポリマー繊維層とはポリマー繊維を集積して形成されたフィルム体を指し、電解質層はこれらフィルム体を任意に積層して多層に形成されても構わない。一つのフィルム体において、厚み方向に明らかに構造が異なるポリマー繊維層が堆積されている場合は、電極層は多層であると考えて構わない。
また、この場合、導電材はポリマー繊維の内側あるいは外側の任意の個所に配置されて構わない。即ち、ポリマー繊維の表面に金属やカーボン類などの導電部材が付与されていてもよいし、ポリマー繊維の内部にこれら導電部材が付与されていてもよい。
具体的には、前記一対の電極層のうちいずれか一方の電極層は、導電材料とポリマー繊維からなるポリマー繊維層を少なくとも一層有し、前記電極層の前記ポリマー繊維の少なくとも一部は前記電極層の面内で一軸方向に配向していることが好ましい。
また、前記電解質層のポリマー繊維と前記電極層のポリマー繊維が一軸方向に配向している方向は、いずれもアクチュエータの長尺方向であることが好ましい。
また、前記電解質層のポリマー繊維と前記電極層のポリマー繊維が一軸方向に配向している方向は、いずれもアクチュエータの短尺方向であることが好ましい。
電極層のポリマー繊維からなるポリマー繊維層の構成は、電解質層のポリマー繊維層の構成と同様である。
電極層3のポリマー繊維の配向の方向は任意に設計可能であるが、好ましくは、電解質層2の配向の方向との間に相関性を持たせることである。
例えば、電解質層2のポリマー繊維が長尺方向に配向している場合に、電極層3のポリマー繊維を短尺方向に配向させれば、アクチュエータの面内における機械的強度を高めることが可能となる。
さらに好ましい構成は、(1)電解質層2のポリマー繊維が長尺方向に配向している場合に、電極層3のポリマー繊維を長尺方向に配向させる、(2)電解質層2のポリマー繊維が短尺方向に配向している場合に、電極層3のポリマー繊維を短尺方向に配向させる、構成である。
(1)の構成においては、高分子アクチュエータの屈曲方向に対する機械的強度をより大きくすることができるため、高分子アクチュエータが力を及ぼすべき対象物との相互作用において、アクチュエータ側が押し負けることがより少なくなり、より大きな力を対象物へと伝達することが可能となる。
また、(2)の構成においては、高分子アクチュエータの屈曲方向に対する機械的強度をより小さくすることができるため、高分子アクチュエータの屈曲動作における変位量をより促すことが可能となる。
また、電極層のポリマー繊維の配向は、電解質層のポリマー繊維の配向に対し、任意の傾きを持つように設計することも可能である。傾きの程度によって、高分子アクチュエータの変位量、或いは、発生力の調整が可能となる。
また、電極層のポリマー繊維層は多層であっても良い。この場合、異なる層間の配向の向きは同じであっても良く、異なっていても良い。例えば、少なくとも一層が長尺方向に配向し、他層の少なくとも一層が短尺方向に配向するような網目状構造を取ることで、高分子アクチュエータの機械的強度をより高めることも可能である。
これらポリマー繊維は径に対して長さが十分に長いものであり、径として0.05μm以上50μm以下が適用可能である。繊維径が小さい程、体積あたりの充填量を柔軟に調整することができるため、0.05μm以上1μm以下がより好ましい。
これらポリマー繊維を含有する電極層は、フィルム状の電極層と同様に、厚さとして0.1μm以上5mm以下であることが好ましい。
また、ポリマー繊維の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、四角形、多角形、半円形などでもよく、また正確な形状でなくてもよいし、任意の断面で形状が異なっていてもよい。尚、繊維径とは、ポリマー繊維が円柱状のものでは、断面円形の直径のことを指すが、それ以外では、繊維断面における重心を通る最長直線の長さのことである。
(アクチュエータの構成材料)
アクチュエータ1を構成する部材について、代表的な材料を説明する。
<電解質層>
電解質層2は電解質(即ち、溶融状態でイオン性を示す物質)とポリマーとを含む柔軟材料であり、イオン性物質を含有する非イオン性高分子化合物、あるいはイオン伝導性高分子化合物である。これら材料では電場下で電荷が移動して電流が流れるときに、イオンが電荷の担い手となる。
ポリマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの含フッ素系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー;ポリブダジエン系化合物;エラストマーやゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;熱可塑性のポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。これらは単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよく、また官能基化してもよく、他のポリマーとの共重合体としてもよい。
これらポリマーに含有されるイオン性物質としては、例えば、フッ化リチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸銅、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等を挙げることができる。
また、イオン性物質としてイオン液体を用いれば空気中での駆動における耐久性が向上するためより好ましい。ここでイオン液体とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩であり、例えば0℃、好ましくは−20℃、さらに好ましくは−40℃で溶融状態を呈する塩である。また、イオン液体はイオン伝導性が高いものが好ましい。
イオン液体には各種公知のものを使用することができるが、実使用温度域において液体状態を呈する安定なものが好ましい。好適なイオン液体としては、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられ、単独あるいは複合して用いてもよい。
本発明の電解質層としては、電解質にイオン液体を、ポリマーとしてポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体[PVDF(HFP)]やポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いたものが好適である。
<電極層>
電極層3は導電材料とポリマーの複合体からなる柔軟電極、あるいは導電材料からなる柔軟な薄層電極から成る。
導電材料としては、アクチュエータの性能に悪影響を及ぼさないものならば特に問わない。例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイルなどの各種炭素材料や、金属(白金、パラジウム、ルテニウム、銀、鉄、コバルト、ニッケル、銅、インジウム、イリジウム、チタン、アルミニウム等)粉(微粒子)、金属化合物(酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化第二スズ、ITO等)、金属繊維、導電性セラミックス材料、導電性高分子材料、等が挙げられる。電極層はこれら導電材料を1種またはそれらの混合物として含有する。
導電材料としては、導電性及び比表面積の観点より、ナノ構造を有する炭素材料が好ましく、特に好ましくは、カーボンナノチューブ(CNT)である。また、カーボンナノチューブとイオン液体とのCNTゲルはCNTのバンドルがイオン液体との自己組織化によりゲル化してCNTが効果的に分散しているなどの利点があり、電極材料として極めて好適である。
電極層3に含まれるポリマーとしては、アクチュエータの動作に追従できる柔軟性を有するものであれば特に限定されるものではないが、加水分解性が少なく、大気中で安定であることが好ましい。このようなポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー;ポリスチレン;ポリイミド;ポリパラフェニレンオキサイド、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリパラフェニレンスルフィド等のポリアリーレン類(芳香族系ポリマー);ポリオレフィン系ポリマー、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)等に、スルホン酸基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したもの;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系のポリマー;含フッ素系のポリマーの骨格にスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したパーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカルボン酸ポリマー、パーフルオロリン酸ポリマー等;ポリブダジエン系化合物;エラストマーやゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート;ナイロン;ポリアリレート等を挙げることができる。
また、導電性を有する高分子を用いることもでき、かかる高分子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン等を挙げることができる。尚これらは単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよく、また官能基化してもよく、他のポリマーとの共重合体としてもよい。
また、上記ポリマーは、電解質層2と相溶性の高いポリマーであることが好ましい。電解質層2との相溶性および接合性が高いことで、強固に密着した電極層3を構成することが可能となる。このためポリマーは、電解質層2を構成する高分子化合物と、同種、類似または同一のポリマー構造を有するポリマー、または、同種、類似または同一の官能基を有するポリマーであることが好ましい。
また、電極層3をめっきや蒸着、スパッタなどで薄い金属層として形成してもよい。このような電極を電解質層に直接形成する場合には、電極層3は導電材のみから形成されると見なしてもよい。
(アクチュエータの製造方法)
アクチュエータの構成について、代表的な製造方法を説明する。
<電解質層の製造方法>
本発明における電解質層は少なくとも一層からなるポリマー繊維層を有し、前記ポリマー繊維層のポリマー繊維が、前記電解質層の面内で一軸方向に揃っている部分を有することを特徴とする。
本発明のポリマー繊維の作製法としては、特に限定されないが、例えば、エレクトロスピニング法、複合紡糸法、ポリマーブレンド紡糸法、メルトブロー紡糸法、フラッシュ紡糸法等があげられる。
このなかで様々なポリマーに対して繊維形状に紡糸できること、また繊維形状のコントロールが比較的簡便であり、ナノサイズの繊維を得ることができることから、エレクトロスピニング法が好ましく用いられる。
エレクトロスピニング法によるポリマー繊維の製造方法は、高圧電源、ポリマー溶液・貯蔵タンク、紡糸口、およびアースされたコレクターを用いて行う。ポリマー溶液はタンクから紡糸口まで一定の速度で押し出される。紡糸口では、1から50kVの電圧が印加されており、電気引力がポリマー溶液の表面張力を越える時、ポリマー溶液のジェットがコレクターに向けて噴射される。この時、ジェット中の溶媒は徐々に揮発し、コレクターに到達する際には、ジェットサイズがナノレベルまで減少する。そしてコレクターにおいて電解質層を形成する。
ポリマー繊維層は前記電解質層の面内でポリマー繊維が一軸方向に揃っている部分を有する。ポリマー繊維の配向方法に関しては、特に限定されるものではなく、公知の技術を適宜、また場合によっては組み合わせて用いることができる。例えば、上述したエレクトロスピニング法では、繊維巻き取り可能な回転ドラムをコレクターとして用い、巻き取りつつ連続的に紡糸することで、面内で一軸配向したポリマー繊維を作製することが出来る。また、回転ドラムの巻き取り速度の調整で、ポリマー繊維の一軸配向の度合や、繊維径をコントロールすることができる。例えば、巻き取り速度が大きいほど、配向性は向上し、繊維径は細くなる傾向がある。
これらポリマー繊維で形成された電解質層は、面内で一軸方向に揃っている部分を有している。一軸方向に揃ったポリマー繊維は、電解質層の面内において一部分であっても良く、異なる一軸方向を有した複数の部分々々から構成されても良い。一軸方向が全て同じである場合には、変位量、或いは、発生力をより向上させることができるためより好ましい。
ポリマー繊維が電解質層の面内で一軸方向に揃っている割合は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された画像を、画像処理ソフト(A像くん:旭化成エンジニアリング製)の解析コマンド「方向分布計測」で解析し、配向度として算出した。具体的には、得られた繊維の傾きを0°から180°まで10°刻みで18等分に区分けし、各範囲の繊維の個数(度合)の度数分布図を描き、下記式より求められる。
Figure 2011125092
配向度が高いほど、ポリマー繊維が一軸方向に揃っている割合が高い。本発明の電解質層における好ましい配高度は50%以上であり、より好ましくは80%以上である。
<電極層の製造方法>
本発明で用いる電極層3の製造方法には特に制限は無く、電極層3が導電材とイオン液体とポリマーとから構成される場合を例に示すと、例えば加熱下において機械的に混練し、ついで成形する方法、適当な溶媒に溶解させた後に溶媒を除去し、ついで成形する方法など各種公知の方法を用いれば良い。
上記で、イオン液体及びポリマーを適当な溶媒に溶解させた後に溶媒を除去する方法における溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を用いることができる。
また、電極層3は、電解質層2と同様にポリマー繊維から構成されていてもよい。ポリマー繊維からなる電極層の作製方法としては、上述した電解質層2におけるポリマー繊維の作製工程に導電材を添加し、同様の手法を用いれば良い。
<電解質層と電極層の接合>
得られた電解質層2および電極層3は任意の形状・サイズに切り揃えられる。高分子アクチュエータ1を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、電解質層2の両面に電極層3を挟持するよう配置し、加熱プレスする方法を好適に用いることができる。
加熱プレスの温度やプレス圧、時間は、高分子バインダの分解温度以下であれば特に限定されるものではなく、用いる高分子バインダ、アクチュエータを構成する高分子化合物、移動するイオン種等に応じて適宜選択すればよい。例えば、加熱プレスの温度は、30℃から150℃であることが好ましい。また、プレス圧は1から100kg/cmであることが好ましく、10から50kg/cmであることがより好ましい。
また、電解質層2の表面にめっきや蒸着、スパッタなどで薄く金属層を形成する方法であっても構わない。
アクチュエータに、水、イオン性物質、イオン液体、またはこれらの混合物を素子作製後に含ませる場合には、これらの溶液にアクチュエータを含浸させればよい。ここで、含浸させる溶液の濃度、含浸させる時間は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。
接合時に電解質層2及び電極層3を形成するポリマー繊維の一軸配向の向きを、任意に設計することで、アクチュエータの変位量或いは発生力をより向上させる構成を取ることが可能となる。
(アクチュエータの固定と駆動電源部との接続)
本発明のアクチュエータ1は、取り出し電極4およびリード線5を用いて、固定および駆動電源6との接続が行われる。
一対の電極層は、一対の取り出し電極に接続されている。取り出し電極4はアクチュエータの電極層3の少なくとも一部を膜面において挟持するように配置されており、挟持にかかる圧力によりアクチュエータ1を固定保持している。また、これら圧力の維持には、向かい合う取り出し電極4同士をボルトで締結したり、ひも状物質で締め付けたり、クリップのようにバネによる付勢力で挟み付けたり、接着剤などで圧着する方法が用いられる。また、取り出し電極4はアクチュエータの電極層部分の他、電解質層2に当接していても構わない。
取り出し電極4は確実な固定のために剛性の高い部材で形成されることが好ましく、具体的には金、銀、銅、白金、SUS、アルミなどの金属材が使用できる。また、ガラス材、セラミック材、プラスチック材などの固定材と導電材料とを組み合わせて使用することもできる。
取り出し電極4の挟持によってアクチュエータ1は運動基点が固定されるとともに、駆動電源6との接続が行われる。
駆動電源6はアクチュエータ1に対して電圧あるいは電流を印加する装置であり、これら電気的な入力をもってアクチュエータ1は形状の変化を示し、図2のように全体として屈曲の動作を示す。
(アクチュエータの駆動)
駆動電源6はアクチュエータ1の電極層間に電圧あるいは電流を印加して電位差を与える。これら電気的な信号は図示せぬ制御装置によって、入力の値、時間、極性、波形などが制御されており、アクチュエータの屈曲動作を制御することができる。
電極層/電解質層/電極層の構造を有するアクチュエータでは、電位差によるイオン性物質の層内移動に起因して、2つの電極層の間で体積差が生じる。例えば、イオン液体を含有している場合は、電圧印加に対してイオン液体を構成するアニオンはプラス極に、カチオンはマイナス極に引き寄せられる。通常イオン液体に含有される、これらアニオンとカチオンの大きさは異なるため、電極層の間で体積差を生じさせる一因となる。
このような電極層間での形状・体積の変化に付随して、アクチュエータ全体としては一方の電極側に撓むような屈曲の運動を示す。
また、イオン性物質の移動量および移動速度は、両極間に印加される電圧や電流の値によって異なるため、電気的な制御によってアクチュエータの屈曲運動における変位量や変位速度を制御することが可能である。また、印加する電圧の極性あるいは電流の方向を変えることで、屈曲運動の向きを制御することが可能である。
駆動電源6は、アクチュエータ1に対して直流電圧(電流)あるいは交流電圧(電流)を印加する。電気信号の入力は一定値の印加、リニア掃引、矩形波や正弦波、パルス波など任意の形状波形をとることが可能であり、信号の基準や振幅の制御を行うことが可能であってもよい。また、信号の入力時間や信号波形のデューティサイクルなどを任意に設定できてもよい。
また、アクチュエータ1の変位や位置に関する情報を取得する内界センサが別に設けられ、前記内界センサの検出値に応じて、アクチュエータ1への入力信号を適宜変更するような制御機構を有していてもよい。
また、アクチュエータには前記内界センサとは別に、対象物との距離や接触状態を検出するための外界センサが設けられ、前記外界センサの検出値に応じて、アクチュエータ1への入力信号を適宜変更するような制御機構を有していてもよい。
これらセンサを用いた制御により、アクチュエータ1の動作制御性をより高めることが可能となる。
イオン液体を使用した場合には、イオン液体の電位窓を超えない範囲で電圧印加することで、電気分解により生じる劣化を抑制することができる。一般的なイオン液体を使用した場合、印加電圧は4V以下であることがより好ましい。
本発明のように電解質層および電極層にポリマー繊維を一軸配向するように並べた繊維状フィルムを用いると、ポリマー繊維とポリマー繊維の間に少なくとも構造上の空隙が生じ、従来のフィルム状の電解質に比べて、電解質層中の空隙率をより大きくすることができる。この空隙がイオンの移動・拡散を容易にしてくれるため、電解質層内でのイオンの移動効率を高めることが可能となる。これにより、アクチュエータの特性を向上させることが可能となる。
また、これらポリマー繊維の配向方向、繊維径や充填量によって、曲げに対する機械的強度を大きく或いは小さくすることが可能となる。このような機械的強度の設計により、アクチュエータの変位量、或いは、発生力をより引き出すことのできる構造を提供することが可能となる。
以下に、本発明の様々な態様の各実施例について、更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらにより何ら限定されるべきものでは無い。
(フィルム状電極層/長尺方向に配向したポリマー繊維電解質層)
本実施例のアクチュエータ1における構成は、図1で示されるように、電解質層2はポリマー繊維10から構成され、また、電極層3はフィルム状の膜から構成される。そして、電解質層2のポリマー繊維10は、アクチュエータの長尺方向に配向した構成を取る。
アクチュエータ1は、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF(HFP))からなる母材に、イオン液体である1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート(BMIBF)を充填させた電解質層2と、それら電解質層の物質中にカーボンナノチューブを混入させた電極層3とから成る。
電解質層2は以下の手順で作製した。
母材であるPVdF(HFP)(関東化学社製)80mgと、イオン液体であるBMIBF4(関東化学社製)100mgと、有機溶剤であるN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(キシダ化学社製)2mLとを80℃で加熱混合した。
混合溶液をエレクトロスピニング装置(メック社製)を用いて噴射して紡糸した。この時、エレクトロスピニングの紡糸口には25kVの電圧を印加した。また、1500rpmで回転するドラム式回転コレクターで5時間かけて繊維を巻き取ることで配向の方向が揃った一層からなるフィルム体としての電解質層が形成された。
得られたポリマー繊維を走査型電子顕微鏡(S−4800;日立ハイテクノロジーズ社製)で観察すると、約1μmの径を有するポリマー繊維が一軸配向していることが確認された。また、画像処理ソフトにより配向度を算出すると約85%であった。
電極層3は以下の手順で作製した。
導電材である単層カーボンナノチューブ(SWNT、カーボン・ナノテクノロジー・インコーポレッド社製、「HiPco」)50mgと、イオン液体(BMIBF4)100mgと、有機溶剤(DMAc)1mLを容器に入れる。
粒径2mmのジルコニアボールを容器容量の1/3まで加え、ボールミル機(フリッチュ社製遊星型微粒粉砕機)を用いて、200rpm/30分間の条件で分散処理を行う。
次いで、母材であるPVdF(HFP)80mgをDMAc2mLで加熱溶解させて作った溶液を加え、更に500rpm/30分間の条件で分散処理を行った。
得られた混合溶液をPTFEから成る型に流し込み、ブレードなどで平坦に均した後、室温にて乾燥させることで導電材が均一分散して厚みの揃った電極層3を得た。
電解質層2をポリマー繊維の配向の方向が長尺方向となる状態で幅4mm、長さ14mmにカッティングした。また、電極層3を幅2mm、長さ12mmにカッティングし、電解質層2の両側に配置した状態で130℃/0.5kN/1分間の条件で熱圧着し圧着物を得た。熱圧着後に、圧着物をイオン液体(BMIBF)中に1時間浸漬し、その後、約12時間真空乾燥した。最後に電解質層2のはみ出た部分を切り揃えてアクチュエータを得た。なお、アクチュエータの幅と長さは以下の実施例及び比較例でも同一とした。
得られたアクチュエータ1の厚みは約75μm(電解質層の厚みは15μm、電極層の厚みはそれぞれ30μm)であった。
(フィルム状電極層/短尺方向に配向したポリマー繊維電解質層)
本実施例のアクチュエータ1における構成は、電解質層2はポリマー繊維10から構成され、また、電極層3はフィルム状の膜から構成される。そして、電解質層2のポリマー繊維10は、アクチュエータの短尺方向に配向した構成を取る他は、実施例1と同様の方法でアクチュエータを得た。
(長尺方向に配向したポリマー繊維電極層/長尺方向に配向したポリマー繊維電解質層)
本実施例のアクチュエータ1における構成は、図5で示されるように、電解質層2はポリマー繊維10から構成され、また、電極層3もポリマー繊維11から構成される。そして、電解質層2のポリマー繊維10及び電極層3のポリマー繊維11は、アクチュエータの長尺方向に配向した構成を取る。
本実施例は、電極層3以外は実施例1と同様である。また、電極層3のポリマー繊維11の構造は以下の手順で作製した。
まず、導電材料が均一分散した導電材料分散体を次のようにして作製した。導電材として30mgの単層カーボンナノチューブ(SWNT)と、80mgのイオン液体(BMIBF)と、1mLの有機溶剤(DMAc)を、同一容器に加えた。次いで、ジルコニアボール(粒径2mm)を用いて200rpm/30分の条件でボールミル機による分散を行った。
次いで、母材であるPVdF(HFP)80mgをDMAc2mLで加熱溶解させて作った溶液を加え、更に500rpm/30分間の条件で分散処理を行った。
上記で得られた分散体にDMAcを加えて希釈することにより、導電材料が均一に分散した導電材料分散体を得た。
次にエレクトロスピニング装置により導電材料分散体溶液を噴射して紡糸を行った。この時、エレクトロスピニングの紡糸口には25kVの電圧を印加した。また、1500rpmで回転するドラム式回転コレクターで5時間かけて繊維を巻き取ることで配向の方向が揃った一層からなるフィルム体としての電極層が形成された。
得られたポリマー繊維を走査型電子顕微鏡(S−4800;日立ハイテクノロジーズ社製)で観察すると、約1μmの径を有したポリマー繊維が一軸配向していることが確認された。また、画像処理ソフトにより配向度を算出すると約85%であった。
電解質層2および電極層3をポリマー繊維の配向の方向が長尺方向となる状態でカッティングし、熱圧着し圧着物を得た。熱圧着後に、圧着物をイオン液体(BMIBF4)中に1時間浸漬し、その後、約12時間真空乾燥した。
得られたアクチュエータ1の厚みは約75μm(電解質層の厚みは15μm、電極層の厚みはそれぞれ30μm)となるように調整した。
(短尺方向に配向したポリマー繊維電極層/短尺方向に配向したポリマー繊維電解質層)
本実施例のアクチュエータ1における構成は、電解質層2はポリマー繊維10から構成され、また、電極層3もポリマー繊維11から構成される。そして、電解質層2のポリマー繊維10及び電極層3のポリマー繊維11が、図6で示すようにアクチュエータの短尺方向に配向した構成を取る他は、実施例3と同様な構成である。
<比較例1>
(フィルム状電極層/フィルム状電解質層)
本比較例のアクチュエータにおける構成は、電解質層2はフィルム状の膜から構成され、また、電極層3もフィルム状の膜から構成される。
本比較例では、電解質層2以外は実施例1と同様である。また、電解質層2は以下の手順で作製した。
母材であるPVdF(HFP)100mgと、イオン液体(BMIBF4)100mgと、有機溶剤(DMAc)1mLとを80℃で加熱混合する。混合溶液をPTFEから成る型に流し込み、ブレードなどで平坦に均した後、室温にて乾燥させることで厚みの揃った電解質層2を得た。
電解質層2および電極層3をカッティングし、熱圧着し圧着物を得た。熱圧着後に、圧着物をイオン液体(BMIBF4)中に1時間浸漬し、その後、12時間ほど真空乾燥しアクチュエータを得た。
得られたアクチュエータ1の厚みは約75μm(電解質層の厚みは15μm、電極層の厚みはそれぞれ30μm)となるように調整した。
<アクチュエータの駆動>
アクチュエータの駆動は次のようにして行った。
外部電源6は任意波形発生器(33220A;Agilent社製)と電流/電圧増幅器(HSA4014;エヌエフ回路設計ブロック社製)から成り、任意波形発生器で作成した電圧信号を電流/電圧増幅器で増幅してアクチュエータに印加した。電圧波形は矩形波であり、基準電圧を0V、振幅を±2.5V、周波数を0.1Hzとして交流電圧を印加した。
<変位量の評価>
アクチュエータの屈曲運動における変位量の評価はレーザー変位計(LK−G80;キーエンス社製)を用いて行った。
幅2mm、長さ12mmのアクチュエータの長尺端から2mm(固定端)までの部分を取り出し電極4で挟持して、空気中で±2.5Vの電圧を印加して屈曲運動させた。その際の固定端から8mmの位置の変位量をレーザー変位計で測定した。
実施例1から4、比較例1で作製したアクチュエータの変位量の結果を表1に記した。表1では、比較例1の結果を基準(数値として1)とし、実施例1から4は比較例1の相対的な値を示す。
<発生力の評価>
アクチュエータの屈曲運動における発生力の評価は微小力評価用のロードセル(UL−10GR;ミネベア社製)を用いて行った。
幅2mm、長さ12mmのアクチュエータの長尺端から2mm(固定端)までの部分を取り出し電極4で挟持して、空気中で±2.5Vの電圧を印加して屈曲運動させた。その際のアクチュエータの固定端から2mmの位置の発生力をロードセルを用いて測定した。
実施例1から4、比較例1で作製したアクチュエータの発生力の結果を表1に記した。表1では、比較例1の結果を基準(数値として1)とし、実施例1から4は比較例1の相対的な値を示す。
Figure 2011125092
表1の結果から、幅、長さ、厚さがほぼ等しいアクチュエータにおいて、電解質層にポリマー繊維を使用することで、変位量或いは発生力をより向上させることが可能であった。具体的には、長尺方向に配向させることで、曲げに対する機械的強度を高め、発生力を向上させることが可能であった。また、短尺方向に配向させることで、曲げに対する機械的強度を小さくし、変位量を向上させることが可能であった。
さらに、電極層にポリマー繊維を使用し、電解質層のポリマー繊維と配向の方向を揃えることで、変位量或いは発生力をより向上させることが可能である。
本発明のアクチュエータは、空気中での動作において、変位量、或いは、発生力を大きくすることができる。そのため、柔軟性や安全性が必要な人と接するロボットのアクチュエータ、ロボット用ハンドやマニュピレータ、各種機械類の駆動源、さらには、手術デバイスやアシストスーツなどの医療・福祉用ロボット、さらにはマイクロマシンなどのためのアクチュエータに利用することができる。
1 アクチュエータ
2 電解質層
3 電極層
4 取り出し電極
5 リード線
6 駆動電源
10 ポリマー繊維
13 ポリマー繊維層

Claims (4)

  1. 一対の電極層と、前記一対の電極層の間に配置されている電解質を含有する電解質層とを有し、前記一対の電極層に電圧を印加することにより前記電解質中のイオンが移動して変形するアクチュエータにおいて、前記電解質層はポリマー繊維からなるポリマー繊維層を少なくとも一層有し、前記ポリマー繊維層の前記ポリマー繊維の少なくとも一部は前記電解質層の面内で一軸方向に配向していることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 前記一対の電極層のうちいずれか一方の電極層は、導電材料とポリマー繊維からなるポリマー繊維層を少なくとも一層有し、前記電極層の前記ポリマー繊維の少なくとも一部は前記電極層の面内で一軸方向に配向していることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
  3. 前記電解質層のポリマー繊維と前記電極層のポリマー繊維が一軸方向に配向している方向は、いずれもアクチュエータの長尺方向であることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
  4. 前記電解質層のポリマー繊維と前記電極層のポリマー繊維が一軸方向に配向している方向は、いずれもアクチュエータの短尺方向であることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
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