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JP2011121474A - 車両用操舵装置 - Google Patents

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JP2011121474A JP2009280870A JP2009280870A JP2011121474A JP 2011121474 A JP2011121474 A JP 2011121474A JP 2009280870 A JP2009280870 A JP 2009280870A JP 2009280870 A JP2009280870 A JP 2009280870A JP 2011121474 A JP2011121474 A JP 2011121474A
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Yorinobu Kanayama
順宣 金山
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Abstract

【課題】緊急回避時において最大限の転舵を確保できる可能性を高める。
【解決手段】車両用操舵装置1は、操舵部材2の操作に応じて駆動される電動モータ25が発生する操舵補助力を転舵機構10に与える電動パワーステアリング装置19と、操舵部材2の操作角θ1に対する転舵機構10の転舵角θ2の比である伝達比を可変設定する伝達比可変機構5とを含む。電動モータ25の電力は、所定の電力制限条件に従って制限される。制御部29は、車両の運転状態が所定の緊急回避状態か否かを判断する。また、制御部29は、操舵補助力の目標値に相当する補助目標値を、緊急回避状態でないときには通常目標値に設定し、緊急回避状態のときには緊急回避目標値に設定する。また、制御部29は、目標伝達比を、緊急回避状態でないときには通常伝達比に設定し、緊急回避状態のときには緊急回避伝達比に設定する。
【選択図】図1

Description

この発明は、電動パワーステアリング装置および伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置に関する。
電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールの操作に応じて駆動される電動モータの駆動力を舵取り機構に伝達して操舵補助するように構成されている。たとえば、ステアリングホイールに加えられる操舵トルクに応じて操舵補助力に関する目標値が設定され、この目標値に応じて電動モータが制御される。
伝達比可変装置は、ステアリングホイールの操作角と舵取り装置の転舵角との比(伝達比)を可変設定する装置である。伝達比可変装置は、ステアリングホイール側の入力軸の回転を、舵取り装置側の出力軸に増速または減速して伝達する。伝達比は、たとえば、車速に応じて可変設定される。たとえば、車速が低いほど伝達比を大きくすることにより、駐車時のステアリングホイール操作を軽減できる。
電動パワーステアリング装置および伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。特許文献1の構成では、低速走行時(伝達比が大きい走行条件のとき)にステアリングホイールの急操作が行われると、伝達比を小さくされる。これにより、電動パワーステアリング装置の制御追従性が確保される。
特開2005−112025号公報 特開2009−10802号公報
低速走行時には伝達比が大きくなるので、操舵速度が速ければ、それに追従するために、電動パワーステアリング装置の電動モータに大電流が供給される。一方、電動モータの発熱や異常回転を回避するために、電動モータに大電流が供給されたときに、その電流を制限するための制御(電流制限制御)が実行されることがある。したがって、低速走行状態で急操舵を行うと、電流制限制御が実行され、操舵補助が得られなくなるおそれがある。
緊急回避のために急操舵が実行されるときは、できる限り長く操舵補助が行われ、かつ、できる限り大きなステアリング切れ角が確保されることが好ましい。特許文献1の構成は、急操舵時に伝達比を小さくすることで電動パワーステアリング装置の追従性を確保しているが、緊急回避時において、電流制限制御が実行されるまでに必ずしも最大限の転舵量(ステアリング切れ角)を確保できるとは限らない。
そこで、この発明の目的は、緊急回避時において最大限の転舵を確保できる可能性を高めた車両用操舵装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、操舵部材(2)の操作に応じて駆動される電動モータ(25)が発生する操舵補助力を転舵機構(10)に与える電動パワーステアリング装置(19)と、前記操舵部材(2)の操作角(θ1)に対する前記転舵機構(10)の転舵角(θ2)の比である伝達比を可変設定する伝達比可変装置(5)と、前記電動モータ(25)の電力を所定の電力制限条件に従って制限する電力制限手段86)と、車両の運転状態が所定の緊急回避状態か否かを判断する緊急回避判断手段(51,81)と、前記操舵補助力の目標値に相当する補助目標値を、前記緊急回避判断手段(81)によって緊急回避状態でないと判断されているときには通常目標値に設定し、前記緊急回避判断手段(81)によって緊急回避状態であると判断されているときには前記通常目標値とは異なる緊急回避目標値に設定する補助目標値設定手段(80,82,83)と、前記伝達比の目標値である目標伝達比(R)を、前記緊急回避判断手段(51)によって緊急回避状態でないと判断されているときには通常伝達比に設定し、前記緊急回避判断手段(51)によって緊急回避状態であると判断されているときには前記通常伝達比とは異なる緊急回避伝達比に設定する目標伝達比設定手段(50,52,53)とを含む、車両用操舵装置(1)である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、緊急回避状態のときには、補助力目標値および目標伝達比が通常時(緊急回避状態でないとき)とは異なる緊急回避目標値および緊急回避伝達比にそれぞれ設定される(たとえば、異なる特性に従って設定される)。したがって、緊急回避目標値および緊急回避伝達比を適切に定めておくことによって、たとえば、電動モータの電力(供給電力)が制限されるまでの操舵補助力発生時間を最大にしたり、電動モータの電力が制限されるまでの転舵角変化量を最大にしたりすることができる。
電力制限条件は、モータ電流値が所定の制限値に達することを含んでいてもよい。また、電力制限条件は、モータ電流値が所定の制限値に達した状態が所定時間にわたって継続することを含んでいてもよい。
緊急回避状態は、操舵部材の操作速度が所定のしきい値を超える急操舵状態を含んでいてもよい(請求項2)。また、緊急回避状態は、車両の加速度が所定の負のしきい値未満である急減速状態を含んでいてもよい(請求項3)。
補助目標値は、前記電動モータのための目標駆動値(目標電流値、目標電圧値など)であってもよいし、前記電動モータから発生すべきトルクの目標値であってもよい。
目標伝達比は、伝達比に直接対応した値であってもよいし、伝達比に換算可能な他の値であってもよい。
緊急回避目標値および緊急回避伝達比の組み合わせは、緊急回避状態において、電力制限が実行されるまでの操舵補助力発生時間および/または転舵角変化量が最大となるように設定されることが好ましい。このような緊急回避目標値および緊急回避伝達比の組み合わせは、操舵実験(シミュレーションを含む)によって定めることができる。
より具体的には、学習を用いた多変数最適解を求める方法を適用することによって、緊急回避目標値および緊急回避伝達比の組み合わせを決定することができる。たとえば、様々な補助目標値および目標伝達比を設定して緊急回避状態に相当する操舵実験(シミュレーションを含む)を行い、電力制限が実行されるまでの時間および転舵角変化量を評価してもよい。そして、評価点の最も優れた補助目標値および目標伝達比の組み合わせを、緊急回避目標値および緊急回避伝達比の組み合わせとして決定すればよい。操舵実験(学習)に際しては、たとえば、次表1に示す学習ルールに従って、各回の操舵実験結果(評価)に基づき、次回の操舵実験のための補助目標値および目標伝達比の組み合わせを定めてもよい。
Figure 2011121474
この学習ルールに従うことによって、妥当な補助目標値および目標伝達比へと収束させることができる。
請求項4記載の発明は、前記操舵部材(2)に対して所定の緊急回避操作を行ったときに、前記電力制限手段(86)による電力制限が実行されるまでの時間に関する評価値と、前記電力制限手段(86)による電力制限が実行されるまでの前記転舵機構(10)の転舵角変化量に関する評価値との合計が最大となるように、前記緊急回避目標値および前記緊急回避伝達比が定められている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用操舵装置(1)である。この構成により、緊急回避状態のときに、操舵補助力が発生される時間をできるだけ長く、かつ転舵角変化量をできるだけ大きくすることができる。
緊急回避操作とは、たとえば、一定時間(たとえば10秒)内に一定の転舵角変化量(たとえば1000度)が得られるように定めた一定操舵速度での操作であってもよい。
請求項5記載の発明は、前記操舵部材(2)に対して所定の緊急回避操作を行ったときに、前記電力制限手段(86)による電力制限が実行されるまでの時間が最長となるように、前記緊急回避目標値および前記緊急回避伝達比が定められている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用操舵装置である。この構成により、緊急回避状態のときに、操舵補助力が発生する時間を長くできる。
請求項6記載の発明は、前記操舵部材(2)に対して所定の緊急回避操作を行ったときに、前記電力制限手段(86)による電力制限が実行されるまでの前記転舵機構(10)の転舵角変化量が最大となるように、前記緊急回避目標値および前記緊急回避伝達比が定められている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用操舵装置(1)である。この構成により、緊急回避状態のときに、電力制限が実行されるまでの転舵角変化量を大きくすることができる。
請求項7記載の発明は、前記緊急回避判断手段(51,81)によって、緊急回避状態であると判断されたときに、前記電力制限手段(86)による電力制限が実行されるまでの時間および/または転舵角変化量を監視して評価する評価手段(S9)と、前記評価手段による評価結果に基づいて、前記緊急回避目標値および緊急回避伝達比を更新する緊急回避適用値更新手段(S10)とをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用操舵装置(1)である。
この構成によれば、緊急回避目標値および緊急回避伝達比を適用した結果として、電動モータが電力制限を受けるまでの時間および/または転舵角変化量が監視され、それらに対して評価が与えられる。その評価結果に基づいて、緊急回避目標値および緊急回避伝達比が更新される。これにより、次に緊急回避状態となったときには、評価結果の優れた緊急回避目標値および緊急回避伝達比を適用することができる。このようにして、実際のシステム運用時の学習によって、緊急回避目標値および緊急回避伝達比を更新することができる。これにより、車両に組み込まれた実際の使用状態に適合した緊急回避目標値および緊急回避伝達比を設定することができる。
請求項8記載の発明は、前記評価手段は、前記電力制限が実行されるまでの時間が所定の基準時間に比較して大きいか小さいかを評価するものであり、前記緊急回避適用値更新手段は、前記電力制限が実行されるまでの時間が前記基準時間に比較して大きいときは前記緊急回避目標値を大きくし、前記電力制限が実行されるまでの時間が前記基準時間に比較して小さいときは前記緊急回避目標値を小さくするものである、請求項7記載の車両用操舵装置である。電力制限が実行されるまでの時間が長いときは、より多くの電力を電動モータに供給する余裕がある。したがって、電力制限が実行されるまでの時間が長いときには緊急回避目標値を大きくし、逆に、電力制限が実行されるまでの時間が短いときには緊急回避目標値を小さくすることによって、緊急回避目標値を妥当な値へと導くことができる。
請求項9記載の発明は、前記評価手段は、前記電力制限が実行されるまでの転舵角変化量が所定の基準転舵角変化量に比較して大きいか小さいかを評価するものであり、前記緊急回避適用値更新手段は、前記電力制限が実行されるまでの転舵角変化量が前記基準転舵角変化量に比較して大きいときは前記緊急回避伝達比を小さくし、前記電力制限が実行されるまでの転舵角変化量が前記基準転舵角変化量に比較して小さいときは前記緊急回避伝達比を大きくするものである、請求項7または8記載の車両用操舵装置である。電力制限までの転舵角変化量が小さいときには、より大きな転舵角変化量を確保することが好ましい。また、電力制限までの転舵角変化量が大きいときには、電力制限が早期に実行される可能性が高まる。そこで、転舵角変化量が小さいときは緊急回避伝達比を大きくし、逆に、転舵角変化量が大きいときには緊急回避伝達比を小さくすることによって、緊急回避伝達比を妥当な値へと導くことができる。
本発明の一実施の形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。 伝達比可変機構の一部を断面で表した側面図である。 伝達比可変機構に関連する制御ブロック図である。 基本伝達比を設定するための特性図である。 操舵補助力付与機構(電動パワーステアリング装置)に関連する制御ブロック図である。 基本目標電流値を設定するための特性図である。 目標伝達比および目標電流値の設定を説明するためのフローチャートである。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る車両用操舵装置1の概略構成を示す模式図である。車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に付与された操舵トルクを、操舵軸としてのステアリングシャフト3等を介して左右の転舵輪4L,4Rのそれぞれに与えて転舵を行うものであり、操舵部材2の操作角θ1に対する転舵輪の転舵角θ2の比としての伝達比θ2/θ1を変更することのできるVGR(Variable Gear Ratio)機能を有している。
この車両用操舵装置1は、操舵部材2と、操舵部材2に連なるステアリングシャフト3とを有している。ステアリングシャフト3は、互いに同軸上に配置された第1〜第3のシャフト11〜13を含んでいる。第1〜第3のシャフト11〜13の中心軸線としての第1の軸線Aは、当該第1〜第3のシャフト11〜13の回転軸線でもある。
以下では、ステアリングシャフト3の軸方向Sを単に軸方向Sといい、ステアリングシャフト3の径方向Rを単に径方向Rといい、ステアリングシャフト3の周方向Cを単に周方向Cという。
第1のシャフト11の一端に操舵部材2が同行回転可能に連結されている。第1のシャフト11の他端部と第2のシャフト12の一端部とは、差動機構としての伝達比可変機構5(伝達比可変装置)を介して差動回転可能に連結されている。第2のシャフト12の他端と第3のシャフト13の一端とは、トーションバー14を介して所定の範囲内で弾性的に相対回転可能且つ動力伝達可能に連結されている。
第3のシャフト14の他端は、自在継手7、中間軸8、自在継手9および転舵機構10等を介して、転舵輪4L,4Rと連なっている。
転舵機構10は、自在継手9に連なるピニオン軸15と、ピニオン軸15の先端のピニオン15aに噛み合うラック16aを有し車両の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸16とを有している。ラック軸16の一対の端部のそれぞれにタイロッド17L,17Rを介してナックルアーム18L,18Rが連結されている。
上記の構成により、操舵部材2の回転は、ステアリングシャフト3等を介して転舵機構10に伝達される。転舵機構10では、ピニオン15aの回転がラック軸16の軸方向の運動に変換される。ラック軸16の軸方向の運動は、各タイロッド17L,17Rを介して対応するナックルアーム18L,18Rに伝えられ、これらのナックルアーム18L,18Rがそれぞれ回動する。これにより、各ナックルアーム18L,18Rに連結された対応する転舵輪4L,4Rがそれぞれ操向する。
伝達比可変機構5は、ステアリングシャフト3の第1および第2のシャフト11,12間の回転伝達比(伝達比θ2/θ1)を変更するためのものであり、この実施形態では、ニューテーションギヤ機構とされている。この伝達比可変機構5は、第1のシャフト11の他端部に設けられた入力部材20と、第2のシャフト12の一端部に設けられた出力部材22と、入力部材20と出力部材22との間に介在する軌道輪ユニット39とを含んでいる。
入力部材20は、第1のシャフト11と同軸的に且つ同行回転可能に連結されており、出力部材22は、第2のシャフト12と同軸的に且つ同行回転可能に連結されている。第1の軸線Aは、入力部材20および出力部材22の中心軸線および回転軸線でもある。
出力部材22は、第2のシャフト12や転舵機構10等を介して転舵輪4L,4Rに連なっている。
軌道輪ユニット39は、第1の軸線Aに対して傾斜する中心軸線としての第2の軸線Bを有しており、第1の軌道輪としての内輪391と、第2の軌道輪としての外輪392と、内輪391および外輪392間に介在する玉等の転動体393とを含んでいる。
内輪391は、入力部材20と出力部材22とを差動回転可能に連結するものであり、入力部材20と出力部材22のそれぞれと回転伝達可能に係合している。内輪391は、転動体393を介して外輪392に回転可能に支持されていることにより、第2の軸線Bの回りを回転可能である。また、内輪391は、外輪392を駆動するためのアクチュエータとしての電動モータである伝達比可変機構用モータ23が駆動されることに伴い、第1の軸線Aの回りを回転可能である。内輪391および外輪392は、第1の軸線A回りにコリオリ運動(首振り運動)可能である。
伝達比可変機構用モータ23は、伝達比可変機構5を駆動するために、第1および第2のシャフト11,12と同軸的に配置されている。第1の軸線Aは、伝達比可変機構用モータ23の中心軸線でもある。伝達比可変機構用モータ23は、第1の軸線A回りに関する外輪392の回転速度を変更することにより、伝達比θ2/θ1を変更する。
伝達比可変機構用モータ23は、この実施形態では、ステアリングシャフト3と同軸的に配置されたブラシレスモータからなり、軌道輪ユニット39を保持する筒状のロータ231と、ロータ231を取り囲むとともにハウジング24に固定されたステータ232とを含んでいる。
車両用操舵装置1は、さらに、ステアリングシャフト3に操舵補助力を付与するための操舵補助力付与機構19(電動パワーステアリング装置)を備えている。操舵補助力付与機構19は、伝達比可変機構5の出力部材22に連なる入力軸としての上記第2のシャフト12と、転舵機構10に連なる出力軸としての上記第3のシャフト13と、第2のシャフト12と第3のシャフト13との間に伝達されるトルクを検出するトルクセンサ44と、操舵補助用のアクチュエータとしての操舵補助用モータ25と、操舵補助用モータ25と第3のシャフト13との間に介在する減速機構26とを含んでいる。
操舵補助用モータ25は、ブラシレスモータ等の電動モータからなる。この操舵補助用モータ25の出力は、減速機構26を介して第3のシャフト13に伝達されるようになっている。
減速機構26は、例えばウォームギヤ機構からなり、操舵補助用モータ25の出力軸25aに連結された駆動歯車としてのウォーム軸27と、ウォーム軸27と噛み合い且つ第3のシャフト13に同行回転可能に連結された従動歯車としてのウォームホイール28とを含んでいる。
上記伝達比可変機構5および操舵補助力付与機構19は、ハウジング24内に収容されている。ハウジング24は、車両の乗員室(キャビン)内に配置されている。なお、ハウジング24を、中間軸8を取り囲むように配置してもよいし、車両のエンジンルーム内に配置してもよい。
上記伝達比可変機構用モータ23および操舵補助用モータ25の駆動は、それぞれ、CPU、RAMおよびROMを含む制御部29によって制御される。制御部29は、駆動回路40を介して伝達比可変機構用モータ23に接続されているとともに、駆動回路41を介して操舵補助用モータ25に接続されている。
制御部29には、操作角センサ42、伝達比可変機構用モータ23のロータ231の回転角を検出する回転角センサとしてのモータレゾルバ43、トルクセンサ44、転舵角センサ45、および車速センサ46がそれぞれ接続されている。
操作角センサ42からは、操舵部材2の直進位置からの操作量である操作角θ1に対応する値として、第1のシャフト11の回転角についての信号が制御部29に入力される。
モータレゾルバ43からは、伝達比可変機構用モータ23のロータ231の回転角θrについての信号が制御部29に入力される。
トルクセンサ44からは、操舵部材2に作用する操舵トルクTに対応する値として、第2および第3のシャフト12,13間に作用するトルクについての信号が制御部29に入力される。
転舵角センサ45からは、転舵角θ2に対応する値として第3のシャフト13の回転角についての信号が制御部29に入力される。
車速センサ46からは、車速Vについての信号が制御部29に入力される。
制御部29は、各上記センサ42〜46の信号等に基づいて、伝達比可変機構用モータ23および操舵補助用モータ25の駆動を制御する。
上記の構成により、操舵部材2からのトルクおよび伝達比可変機構5からのトルクは、操舵補助力付与機構19を介して転舵機構10に伝達される。具体的には、操舵部材2に入力された操舵トルクは、第1のシャフト11を介して伝達比可変機構5の入力部材20に入力され、入力部材20から内輪391に入力される。内輪391には、操舵部材2からのトルクに加え、外輪392および転動体393を介して内輪391に伝わった伝達比可変機構用モータ25からのトルクが伝達され、これらのトルクが、出力部材22に伝達される。出力部材22に伝達されたトルクは、第2のシャフト12に伝達される。第2のシャフト12に伝達されたトルクは、トーションバー14および第3のシャフト13に伝わり、操舵補助用モータ25からの出力(アシストトルク)と合わさって、自在継手7、中間軸8、および自在継手9を介して、転舵機構10に伝達される。
このように、操舵部材2のトルクを転舵機構10に伝える動力伝達経路Dが構成されている。動力伝達経路Dは、第1のシャフト11、入力部材20、内輪391、出力部材22、第2のシャフト12、トーションバー14および第3のシャフト13、自在継手7、中間軸8ならびに自在継手9を通る経路である。
図2は、伝達比可変機構5の一部を断面で表した側面図である。入力部材20はリング状に形成されている。この入力部材20および内輪391の対向面のそれぞれに第1の凹凸係合部64が設けられていることにより、入力部材20と内輪391とは動力伝達可能とされている。また、出力部材22もリング状に形成されている。内輪391および出力部材22の対向面のそれぞれに第2の凹凸係合部67が設けられていることにより、内輪391と出力部材22とは動力伝達可能とされている。
第1の凹凸係合部64は、入力部材20の一端面としての動力伝達面70に形成された第1の凸部65と、内輪391の一端面としての第1の端面71に形成され第1の凸部65に係合する第1の凹部66とを含む。動力伝達面70および第1の端面71はステアリングシャフト3の軸方向Sに互いに対向しており、第1の凹凸係合部64は、これら動力伝達面70および第1の端面71を動力伝達可能に係合させる。むろん、第1の凸部65の配置と第1の凹部66の配置とを入れ換えてもよい。
第2の凹凸係合部67は、出力部材22の一端面としての動力伝達面72に形成された第2の凸部68と、内輪391の他端面としての第2の端面73に形成され第2の凸部68に係合する第2の凹部69とを含む。動力伝達面72および第2の端面73はステアリングシャフト3の軸方向Sに互いに対向しており、第2の凹凸係合部67は、これら動力伝達面72および第2の端面73を動力伝達可能に係合させる。むろん、第2の凸部68の配置と第2の凹部69の配置とを入れ換えてもよい。
第1の凸部65は、入力部材20の周方向の全周に亘って等間隔に形成されている。同様に、第1の凹部66は、内輪391の周方向の全周に亘って等間隔に形成されている。第1の凸部65は、例えば38個形成されている。第1の凹部66の数は、第1の凸部65の数とは異なる数(たとえば40個)にされている。第1の凸部65の数と第1の凹部66の数との差に応じて、入力部材20と内輪391との間で差動回転を発生することができる。
内輪391の第2の軸線Bが入力部材20および出力部材22の第1の軸線Aに対して所定角度θだけ傾斜していることにより、複数の第1の凸部65のうちの一部の第1の凸部65のみと、複数の第1の凹部66のうちの一部の第1の凹部66のみとが、互いに噛み合っている。
同様に、第2の凸部68は、出力部材22の周方向の全周に亘って等間隔に形成されている。また、第2の凹部69は、内輪391の周方向の全周に亘って等間隔に形成されている。第2の凸部68は、例えば40個形成されている。第2の凹部69の数は、第2の凸部68の数と同数であってもよい。
内輪391の第2の軸線Bが入力部材20および出力部材22の第1の軸線Aに対して所定角度θだけ傾斜していることにより、複数の第2の凸部68のうちの一部の第2の凸部68のみと、複数の第2の凹部69のうちの一部の第2の凹部69のみとが、互いに噛み合っている。
次に、伝達比可変機構5の動作の一例について説明する。以下では、(i)伝達比可変機構用モータ23のロータ231の回転が規制されている場合と、(ii)伝達比可変機構用モータ23のロータ231が回転しており、且つ入力部材20の回転が規制されている場合と、(iii)伝達比可変機構用モータ23のロータ231が回転しており、且つ入力部材20が回転している場合と、を説明する。ロータ231の回転の規制は、図示しないロック機構によって行うこともでき、伝達比可変機構用モータ23を回転停止状態に制御することによって行うこともできる。
上記(i),(ii),(iii)の何れの場合も、第1の凹凸係合部64の第1の凸部65の数が38で第1の凹部66の数が40とされ、且つ第2の凹凸係合部67の第2の凸部68の数が40で第2の凹部69の数が40とされているものとして説明する。
上記(i)の場合、すなわち、伝達比可変機構用モータ23のロータ231の回転が規制されている場合において操舵部材2の操作により第1のシャフト11が回転すると、入力部材20の第1の凸部65が第1の軸線Aの回りを回転する。このとき、軌道輪ユニット39は第1の軸線Aの回りを回転するコリオリ運動をせず、内輪391のみがその第2の軸線B回りを回転する。この回転により、第1の凹部66が設けられている内輪391が回転し、さらに第2のシャフト12を回転させる。その結果、入力部材20が1回転したときに内輪391が38/40回転する。このとき、出力部材22は、38/40回転する。すなわち、入力部材20の回転が19/20に減速される。
上記(ii)の場合、すなわち、伝達比可変機構用モータ23のロータ231が回転しており、且つ運転者が操舵部材2を保持していることにより入力部材20の回転が規制されている場合、ロータ231が第1の軸線Aの回りを回転することにより、軌道輪ユニット39がコリオリ運動する。これにより、内輪391が入力部材20と出力部材22とを互いに逆回転させようとする。しかしながら、入力部材20の回転が規制されていることにより、出力部材22のみが回転する。このとき、第1の凹部66の数が第1の凸部65の数と比べて2つ多くされている結果、軌道輪ユニット39の外輪392が1回転しているときに、内輪391は上記の歯数差(2つ)に相当する量だけ位相が進むことになる。これが内輪391の回転になる。その結果、外輪392が1回転したときに、内輪391は上記の歯数差に相当する量だけ回転し、出力部材22は2/40回転する。以上より、伝達比可変機構用モータ23のロータ231の回転が1/20に減速されて出力される。
上記(iii)の場合、すなわち、伝達比可変機構用モータ23のロータ231が回転しており、且つ運転者が操舵部材2を操舵していることにより入力部材20が回転している場合には、出力部材22の回転量は、上記(ii)の回転量に入力部材20(操舵部材)の回転量を加えた値となる。これにより、操作角θ1を増幅して運転者の操舵を補助する機能を発揮することができる。
たとえば、車両が比較的低速で走行している場合には、伝達比可変機構用モータ23が駆動され、操作角θ1が増幅される。すなわち、伝達比が1よりも大きくされる。これにより、運転者の操舵を補助できる。また、車両が比較的高速で走行している場合には、伝達比可変機構用モータ23は、たとえば、停止状態に保たれる。これにより、伝達比が小さくなる。その他、伝達比可変機構用モータ23のロータ231の回転を増速したり、減速したりすることにより、車両のスタビリティコントロール(姿勢安定制御)が行われてもよい。
図3は、伝達比可変機構5に関連する制御ブロック図である。制御部29は、機能処理部として、基本伝達比設定部50、緊急回避状態判定部51、伝達比係数設定部52、係数乗算部53、目標角演算部54、偏差演算部55、PI(比例積分)制御部56、加算部57、およびPWM変換部58を備えている。制御部29には、車速センサ46によって検出される車速V、操作角センサ42によって検出される操作角θ1、およびモータレゾルバ43によって検出されるモータ回転角θrが入力されている。
基本伝達比設定部50は、車速Vに基づいて、基本伝達比Rを設定する。基本伝達比Rは、車速Vが小さいほど(低速時ほど)大きくなる特性に従って設定される。たとえば、基本伝達比設定部50は、図4に示すように、第1所定車速V1未満の低速域では基本伝達比Rを1よりも大きな一定値(たとえば1.4)に設定し、第2所定車速V2以上の速度域では基本伝達比Rを1に設定し、第1および第2所定車速V1,V2間の速度域では車速Vの増加に従って前記一定値から1まで単調に減少する特性に従って基本伝達比Rを設定する。
緊急回避状態判定部51は、操作角θ1を時間微分して操舵速度を求め、車速Vを時間微分して車両の加速度を求める。そして、緊急回避状態判定部51は、操舵速度が所定のしきい値(たとえば5rad/sec)を超えている(すなわち急操舵状態)か、または車両加速度が所定の負のしきい値(たとえば1秒間で15km/h以上の減速に相当する値)未満(すなわち、急減速状態)であるかのいずれかの条件が成立するときに、緊急回避状態であると判定する。
伝達比係数設定部52は、緊急回避状態判定部51による判定結果に応じた伝達比係数kを生成する。この伝達比係数kは、係数乗算部53によって、基本伝達比Rに乗じられる。具体的には、伝達比係数設定部52は、緊急回避状態判定部51が緊急回避状態ではないと判定しているときは、伝達比係数k=1を生成する。したがって、この場合、係数乗算部53では、基本伝達比Rに対する補正は行われない。また、伝達比係数設定部52は、緊急回避状態判定部51が緊急回避状態であると判定しているときは、予め定めた緊急回避用伝達比係数(「1」以外の値)を伝達比係数kとして生成する。この緊急回避用係数が係数乗算部53において基本伝達比Rに乗じられることにより、基本伝達比Rに補正が加えられる。これにより、通常時と緊急回避時とで異なる伝達比R(=k×R)が設定されることになる。
目標角演算部54は、係数乗算部53によって補正された伝達比Rと操作角θ1とに基づいて、伝達比可変機構用モータ23の回転角の目標値である目標角θrを生成する。前述のとおり、操舵部材2の操作角θ1が軌道輪ユニット39の外輪392の回転によって増速または減速されて(あるいは増速も減速もされずに)転舵機構10に伝達される。そこで、目標角演算部54は、操作角θ1に伝達比Rを乗じて目標転舵角を求め、この目標転舵角が達成されるように伝達比可変機構用モータ23の目標角θrを設定する。
偏差演算部55は、目標角θrに対するモータ回転角θrの偏差(θr−θr)を演算する。この偏差に対して、PI制御部56によるPI(比例積分)演算が行われることにより、モータ電流目標値が求められる。さらに、加算部57では、目標角θrに対応する電流補正値がモータ電流目標値に加算される。これにより、モータ回転角に対して、フィードバック制御およびフィードフォワード制御が行われて、モータ電流目標値(補助目標値の一例)が求められる。
PWM変換部58は、モータ電流目標値に対応したPWM駆動信号を生成する。このPWM駆動信号によって駆動回路40が駆動されることにより、伝達比可変機構用モータ23が駆動される。その結果、伝達比可変機構用モータ23の回転角は、伝達比Rおよび操作角θ等に応じた目標角θrに導かれる。
図5は、操舵補助力付与機構19(電動パワーステアリング装置)に関連する制御ブロック図である。制御部29は、機能処理部として、目標電流値設定部80、緊急回避状態判定部81、アシスト係数設定部82、係数乗算部83、偏差演算部84、PI制御部85、電流制限部86、およびPWM変換部87を備えている。制御部29には、操作角センサ42によって検出される操作角θ1、トルクセンサ44によって検出される操舵トルクT、車速センサ46によって検出される車速V、および電流検出部30によって検出されるモータ電流値が入力されている。電流検出部30は、操舵補助用モータ25の電流値を検出するように構成されている。
目標電流値設定部80は、操舵トルクおよび車速Vに基づいて、基本目標電流値Iを設定する。基本目標電流値Iは、図6に示すように、操舵トルクTの方向に応じて正の値または負の値に設定される。たとえば、目標電流値設定部80は、図6に示されたアシスト特性(操舵トルク−目標電流値特性)に従って、基本目標電流値Iを生成する。操舵トルクTは、たとえば右方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、左方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。また、基本目標電流値Iは、操舵補助用モータ25から右方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには正の値とされ、操舵補助用モータ25から左方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには負の値とされる。基本目標電流値Iは、操舵トルクTの正の値に対しては正の値をとり、操舵トルクTの負の値に対しては負の値をとる。操舵トルクが−T1〜T1(たとえば、T1=0.4N・m)の範囲(トルク不感帯)の微小な値のときには、基本目標電流値Iは零とされる。
さらに、基本目標電流値Iは、車速が大きいほど、絶対値の小さな値とされる。これにより、高速走行時ほど操舵補助力を低減する車速感応制御が行われる。
緊急回避状態判定部81は、前述の緊急回避状態判定部51と同様の機能を有しており、緊急回避状態判定部51と共通の機能処理部であってもよい。すなわち、緊急回避状態判定部81は、操作角θ1を時間微分して操舵速度を求め、車速Vを時間微分して車両の加速度を求める。そして、緊急回避状態判定部81は、操舵速度が所定のしきい値を超えている(すなわち急操舵状態)か、または車両加速度が所定の負のしきい値未満(すなわち、急減速状態)であるかのいずれかの条件が成立するときに、緊急回避状態であると判定する。
アシスト係数設定部82は、緊急回避状態判定部81による判定結果に応じたアシスト係数kを生成する。このアシスト係数kは、係数乗算部83によって、基本目標電流値Iに乗じられる。具体的には、アシスト係数設定部82は、緊急回避状態判定部81が緊急回避状態ではないと判定しているときは、アシスト係数k=1を生成する。したがって、この場合、係数乗算部83では、基本目標電流値Iに対する補正は行われない。また、アシスト係数設定部82は、緊急回避状態判定部81が緊急回避状態であると判定しているときは、予め定めた緊急回避用係数(「1」以外の値)をアシスト係数Iとして生成する。この緊急回避用係数が係数乗算部83において基本目標電流値Iに乗じられることにより、基本目標電流値Iに補正が加えられる。これにより、通常時と緊急回避時とで異なる目標電流値Iが設定されることになる。
偏差演算部84は、目標電流値Iに対するモータ電流値Iの偏差を演算する。この偏差(I−I)に対して、PI制御部85によるPI演算が行われることにより、モータ電流目標値が求められる。
電流制限部86は、モータ電流値が所定の制限値(たとえば定格電流)以上になると、モータ電流目標値に制限を加える。電流制限部86は、モータ電流値が所定の制限値以上の状態が所定時間(たとえば2msec)継続したことを条件に、モータ電流目標値に制限を加えるものであってもよい。モータ電流目標値に対する制限とは、たとえば、モータ目標電流値を所定の制限値電流値(たとえば定格電流の90%程度の値)に強制設定する処理であってもよい。
PWM変換部87は、モータ電流目標値に対応したPWM駆動信号を生成する。このPWM駆動信号によって駆動回路41が駆動されることにより、操舵補助用モータ25が駆動される。その結果、操舵補助用モータ25は、目標電流値Iに応じた操舵補助力を発生する。
図7は、目標伝達比および目標電流値(補助目標値)の設定を説明するためのフローチャートである。緊急回避状態判定部51は、操舵速度および車両加速度を求める(ステップS1)。さらに、緊急回避状態判定部51は、操舵速度および車両加速度に基づいて、緊急回避状態かどうかを判断する(ステップS2)。具体的には、操舵速度が所定のしきい値を超えるか、または、加速度が所定の負のしきい値未満であると、緊急回避状態判定部51は、緊急回避状態であると判定する。これらの条件がいずれも満たされないときには、緊急回避状態判定部51は、緊急回避状態ではないと判定する。すなわち、急操舵または急減速が検出されると緊急回避状態であると判定され、さもなければ緊急回避状態ではないと判定される。
緊急回避状態ではないと判定されると(ステップS2およびS3でいずれもNO)、伝達比係数kが「1」に設定され、通常時の伝達比特性(図4参照)に従って伝達比Rが設定される(ステップS4)。また、アシスト係数kが「1」に設定され、通常時のアシスト特性(図6参照)に従って目標電流値Iが設定される(ステップS5)。
一方、緊急回避状態であると判定されると(ステップS2またはS3でYES)、伝達比係数設定部52は、緊急回避時用の伝達比係数(1以外の値)を設定する。これにより、目標伝達比Rは、通常時とは異なる緊急回避伝達比に設定される(ステップS6)。また、アシスト係数設定部82は、緊急回避時用のアシスト係数k(1以外の値)を設定する。これにより、目標電流値Iは、通常時とは異なる緊急回避目標電流値Iに設定される(ステップS7)。これによって、電流制限部86によって目標電流値Iが制限されるまでの時間が最大化され、かつ、電流制限までの転舵角変化量(切れ角)が最大化される。
さらに、この実施形態では、緊急回避状態であると判定されたときに、制御部29は、電流制限がされるまでの時間および転舵角変化量を計測する(ステップS8)。転舵角変化量は、転舵角センサ45の出力を監視することによって求められる。さらに、制御部29は、電流制限が実行されるまでの時間および転舵角変化量を評価する(ステップS9)。この評価結果に基づいて、制御部29は、必要に応じて、緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数を更新し、この更新された各係数を内部のメモリ29M(図1参照)に記録する(ステップS10)。以後に緊急回避状態と判定されたときは、当該更新された伝達比係数およびアシスト係数が適用されることになる。
このようにして、緊急回避時用の係数設定に関して、学習機能が備えられているので、車両を使用していくうちに、より適切な伝達比係数およびアシスト係数が設定されることになる。むろん、車両用操舵装置の構成部品の経年変化やその他の要因に適応した係数が設定されることになる。
次に示す表2は、緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数を変更するための規則(学習ルール)の一例を示す。電力制限までの時間が長いときには、より多くの電流を操舵補助用モータ25に供給する余裕がある。そこで、電力制限までの時間が長いときには(ステップS9の評価結果)、緊急回避時用のアシスト係数が大きくされる(ステップS10)。逆に、電力制限までの時間が短いときには(ステップS9の評価結果)、緊急回避時用のアシスト係数が小さくされる(ステップS10)。一方、電力制限までの転舵角変化量が小さいときには(ステップS9の評価結果)、より大きな転舵角変化量を確保することが好ましいから、緊急回避時用の伝達比係数が大きくされる(ステップS10)。逆に、電力制限までの転舵角変化量が大きいときには(ステップS9の評価結果)、操舵補助用モータ25の駆動電力が制限される可能性が高まるので、緊急回避時用の伝達比係数が小さくされる(ステップS10)。
Figure 2011121474
電力制限実行までの時間が長いか短いかの比較基準となる基準時間は、予め設定しておけばよい。同様に、電力制限実行までの転舵角変化量が大きいか小さいかの基準となる基準転舵角変化量は、予め設定しておけばよい。基準時間および基準転舵角変化量は、たとえば、緊急回避状態を想定した操舵実験を行って適切に定めればよい。より具体的には、初期設定される緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数に対する実験値に基づいて、基準時間および基準転舵角変化量を設定してもよい。
初期設定される緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数の組み合わせは、所定の緊急回避操作を行ったときに、電流制限が実行されるまでの時間および転舵角変化量が最大となるように設定される。このような緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数の組み合わせは、操舵実験(シミュレーションを含む)によって定めることができる。
より具体的には、学習を用いた多変数最適解を求める方法を適用することによって、緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数の組み合わせを決定することができる。たとえば、様々な伝達比係数およびアシスト係数を設定して緊急回避状態に相当する操舵実験(たとえばシミュレーション実験)を行い、電流制限が実行されるまでの時間および転舵角変化量を評価してもよい。さらに、具体的には、操舵部材2に対して所定の緊急回避操作を行ったときに、電流制限が実行されるまでの時間および転舵角変化量を求め、これらに対して、それぞれ評価値を与える。そして、それらの評価値との合計が最大となるように、緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数の組み合わせを定めればよい。
緊急回避操作とは、たとえば、一定時間(たとえば10秒)内に一定の転舵角変化量(たとえば1000度)が得られるように定めた一定操舵速度での操作であってもよい。
操舵実験(学習)に際しては、各回の操舵実験結果(評価)に基づき、たとえば前記表2に示す学習ルールに従って、次回の操舵実験のための伝達比係数およびアシスト係数の組み合わせを定めてもよい。この学習ルールに従うことによって、妥当な伝達比係数およびアシスト係数へと収束させることができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。たとえば、緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数を、電流制限までの時間に対する評価点と、電流制限までの転舵角変化量に対する評価点との合計が最大となるように定めた例を示したが、一例に過ぎない。たとえば、所定の緊急回避操作を行ったときに電流制限までの時間が最大となるように緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数を定めてもよい。また、所定の緊急回避操作を行ったときに電流制限までの転舵角変化量が最大となるように緊急回避時用の伝達比係数およびアシスト係数を定めてもよい。
また、前述の実施形態では、ニューテーションギヤ機構からなる伝達比可変機構5を示したが、波動歯車装置、遊星歯車機構その他の形態の伝達比可変機構を用いてもよい。
また、前述の実施形態では、電流を制限することによって操舵補助用モータ25の電力制限を行う例を示したが、電圧の制限によって電力制限を行うこともできる。
また、転舵角センサ45は、省略されてもよい。この場合、所定周期毎に操作角θ1に伝達比R(またはR)を乗じ、その乗算値θ1×R(またはR)の積分値を転舵角θ2としてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…車両用操舵装置、2…操舵部材、5…伝達比可変機構、10…転舵機構、19…操舵補助力付与機構、25…操舵補助用モータ

Claims (9)

  1. 操舵部材の操作に応じて駆動される電動モータが発生する操舵補助力を転舵機構に与える電動パワーステアリング装置と、
    前記操舵部材の操作角に対する前記転舵機構の転舵角の比である伝達比を可変設定する伝達比可変装置と、
    前記電動モータの電力を所定の電力制限条件に従って制限する電力制限手段と、
    車両の運転状態が所定の緊急回避状態か否かを判断する緊急回避判断手段と、
    前記操舵補助力の目標値に相当する補助目標値を、前記緊急回避判断手段によって緊急回避状態でないと判断されているときには通常目標値に設定し、前記緊急回避判断手段によって緊急回避状態であると判断されているときには前記通常目標値とは異なる緊急回避目標値に設定する補助目標値設定手段と、
    前記伝達比の目標値である目標伝達比を、前記緊急回避判断手段によって緊急回避状態でないと判断されているときには通常伝達比に設定し、前記緊急回避判断手段によって緊急回避状態であると判断されているときには前記通常伝達比とは異なる緊急回避伝達比に設定する目標伝達比設定手段とを含む、車両用操舵装置。
  2. 前記緊急回避判断手段は、前記操舵部材の操作速度が所定のしきい値を超える急操舵状態のときに、緊急回避状態であると判断する、請求項1記載の車両用操舵装置。
  3. 前記緊急回避判断手段は、車両の加速度が所定の負のしきい値未満である急減速状態のときに、緊急回避状態であると判断する、請求項1または2記載の車両用操舵装置。
  4. 前記操舵部材に対して所定の緊急回避操作を行ったときに、前記電力制限手段による電力制限が実行されるまでの時間に関する評価値と、前記電力制限手段による電力制限が実行されるまでの前記転舵機構の転舵角変化量に関する評価値との合計が最大となるように、前記緊急回避目標値および前記緊急回避伝達比が定められている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用操舵装置。
  5. 前記操舵部材に対して所定の緊急回避操作を行ったときに、前記電力制限手段による電力制限が実行されるまでの時間が最長となるように、前記緊急回避目標値および前記緊急回避伝達比が定められている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用操舵装置。
  6. 前記操舵部材に対して所定の緊急回避操作を行ったときに、前記電力制限手段による電力制限が実行されるまでの前記転舵機構の転舵角変化量が最大となるように、前記緊急回避目標値および前記緊急回避伝達比が定められている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用操舵装置。
  7. 前記緊急回避判断手段によって、緊急回避状態であると判断されたときに、前記電力制限手段による電力制限が実行されるまでの時間および/または転舵角変化量を監視して評価する評価手段と、
    前記評価手段による評価結果に基づいて、前記緊急回避目標値および緊急回避伝達比を更新する緊急回避適用値更新手段とをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用操舵装置。
  8. 前記評価手段は、前記電力制限が実行されるまでの時間が所定の基準時間に比較して大きいか小さいかを評価するものであり、
    前記緊急回避適用値更新手段は、前記電力制限が実行されるまでの時間が前記基準時間に比較して大きいときは前記緊急回避目標値を大きくし、前記電力制限が実行されるまでの時間が前記基準時間に比較して小さいときは前記緊急回避目標値を小さくするものである、請求項7記載の車両用操舵装置。
  9. 前記評価手段は、前記電力制限が実行されるまでの転舵角変化量が所定の基準転舵角変化量に比較して大きいか小さいかを評価するものであり、
    前記緊急回避適用値更新手段は、前記電力制限が実行されるまでの転舵角変化量が前記基準転舵角変化量に比較して大きいときは前記緊急回避伝達比を小さくし、前記電力制限が実行されるまでの転舵角変化量が前記基準転舵角変化量に比較して小さいときは前記緊急回避伝達比を大きくするものである、請求項7または8記載の車両用操舵装置。
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