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JP2011116954A - ポリ乳酸系樹脂組成物および成形体 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂組成物および成形体 Download PDF

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JP2011116954A JP2010237527A JP2010237527A JP2011116954A JP 2011116954 A JP2011116954 A JP 2011116954A JP 2010237527 A JP2010237527 A JP 2010237527A JP 2010237527 A JP2010237527 A JP 2010237527A JP 2011116954 A JP2011116954 A JP 2011116954A
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Yuji Kiko
佑次 記虎
Junichi Mitsui
淳一 三井
Kazue Ueda
一恵 上田
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Abstract

【課題】耐加水分解性に優れ、長期使用や高温高湿条件で使用しても十分な耐久性を有するポリ乳酸系樹脂組成物およびそれにより得られる成形体を提供する。
【解決手段】第一の発明は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対し、カルボジイミド化合物0.1〜10質量部とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴム0.5〜20質量部とを含有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。第二の発明は、第一の発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は、高温高湿度下で長期使用に耐えうる耐加水分解性(耐久性)を有するポリ乳酸系樹脂組成物およびそれにより得られる成形体に関する。
近年、環境保全の見地から、ポリ乳酸に代表される生分解性を有する各種の脂肪族ポリエステル樹脂が注目されている。脂肪族ポリエステル樹脂のなかでも、ポリ乳酸は、透明性が良好で、かつ最も耐熱性が高い樹脂の一つであり、また、トウモロコシやサツマイモ等の植物由来原料から大量生産可能なためコストが安く、さらに石油原料の使用量削減にも貢献できることから、有用性が高い。
しかし、ポリ乳酸は耐加水分解性に乏しく、長期使用時の耐久性が低いという欠点がある。特に高温高湿度下においてはこの傾向が非常に顕著である。ポリ乳酸の加水分解反応は、分子鎖末端のカルボキシル基が触媒として進行し、特に高温高湿度下ではそれが加速度的に進行する。そのため、ポリ乳酸樹脂単体で作製した成形体は、長期使用時の耐久性、高温高湿度下の保存安定性が不十分で、劣化に伴う強度低下や分子量の低下が生じ、ひび割れ、ブリードアウト、変形などの問題が発生し、長期使用や高温高湿条件での使用には耐えうるものではなかった。
この問題を解決するものとして、特許文献1には、ポリ乳酸の分子鎖末端のカルボキシル基を、特定のカルボジイミド化合物で封鎖することで、耐加水分解性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2には、ポリ乳酸のカルボキシル基をエポキシ化合物で封鎖する事で、耐加水分解性を向上させる技術が開示されている。しかし、これらの方法は、ポリ乳酸のカルボキシル末端が完全に封鎖しきれず、カルボキシル末端が残っているため、耐加水分解性が不十分であり、長期使用や高温高湿条件での使用においては耐久性が不十分であった。また、カルボジイミド化合物やエポキシ化合物などの添加剤の残渣が耐熱性など他の物性に悪影響を及ぼす場合があった。
また、特許文献3には、ポリ乳酸の成形体の機械的強度、耐湿熱性、耐衝撃性を改良するために、カルボジイミド化合物とコアシェル型グラフト共重合体を含有したポリ乳酸系樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は耐衝撃性は向上しているが、耐湿熱性が60℃、相対湿度90%の条件下において、300時間という低温、短時間の環境下で測定した評価であり、長期使用や高温高湿条件での使用においては耐久性が不十分なものであった。
特許文献4には、ポリ乳酸樹脂に多層構造重合体とグリシジル基またはカルボジイミド基を含有する反応性化合物を配合し、耐衝撃性および耐加水分解性を向上させた樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物は、エポキシ基を含まない多層構造重合体とグリシジル基またはカルボジイミド基を有する反応性化合物を併用するものであるため、耐湿熱性は70℃、相対湿度95%の条件下において、100時間という短時間の評価のものであることからも明らかなように、長期使用や高温高湿条件での使用においては耐久性が不十分なものであった。
特開2001−261797号公報 特開2001−335626号公報 特開2008−231365号公報 特開2007−119730号公報
本発明は、上記のような問題点を解決するものであり、耐加水分解性に優れ、長期使用や高温高湿条件で使用しても十分な耐久性を有するポリ乳酸系樹脂組成物およびそれにより得られる成形体を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂にエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムとカルボジイミド化合物を併用すると、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐加水分解性が大きく向上することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂100質量部に対し、カルボジイミド化合物0.1〜10質量部とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴム0.5〜20質量部とを含有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂にエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムとカルボジイミド化合物を含有させたものであるため、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐加水分解性が大きく向上し、高温高湿条件での長期の使用に耐えうる耐久性を有するものである。このため、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形体は、様々な用途に好適に利用することができる。さらに、ポリ乳酸は植物由来であるため、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物及び成形体は、環境負荷の低減と石油資源の枯渇防止に貢献することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と略する場合がある)は、ポリ乳酸樹脂、カルボジイミド化合物およびエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを含有している。
まず、ポリ乳酸樹脂について説明する。ポリ乳酸樹脂は植物由来原料の中でも、成形性、透明性、耐熱性に優れるものである。ポリ乳酸樹脂としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体、ステレオコンプレックス共晶体などを挙げることができる。
そして、本発明におけるポリ乳酸樹脂は、D体含有量が10.0モル%以下であるか、またはD体含有量が90.0モル%以上であることが好ましく、中でも、D体含有量が0.1〜2.0モル%であるか、または98.0〜99.9モル%であることが好ましく、さらには、D体含有量が0.1〜1.0モル%であるか、または99.0〜99.9モル%であることが好ましい。D体含有量がこの範囲内であることにより、結晶性に優れ、耐熱性が向上する。そして、耐湿熱性については、後述するカルボジイミド化合物やエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを含有することにより向上する効果であるが、D体含有量がこの範囲のポリ乳酸樹脂を用いると、さらに耐湿熱性も向上する。
本発明において、ポリ乳酸樹脂のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂の場合、このポリ乳酸樹脂は、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
なお、本発明においては、ポリ乳酸系樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂のD体含有量を測定する際には、以下のようにして測定するものである。
樹脂組成物を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌する。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取る。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜる。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィー測定する。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂のD体含有量(モル%)とする。
ポリ乳酸樹脂は公知の溶融重合法で、あるいは必要に応じてさらに固相重合法を併用して製造することができる。
ポリ乳酸樹脂の分子量は、質量平均分子量(Mw)が5万〜30万であることが好ましく、中でも8万〜25万、さらに10万〜20万であることが好ましい。質量平均分子量が30万を超えるとポリ乳酸樹脂の溶融粘度が上がり、溶融混練時の流動性が損なわれることで操業性が低下するという問題があり、一方、5万未満であると機械的物性や耐熱性が低下するという問題がある場合がある。質量平均分分子量(Mw)は、示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置を用いて、テトラヒドロフランを溶出液として、40℃において標準ポリスチレン換算で求める値である。
また、ポリ乳酸樹脂は、190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローインデックス(MFI)が0.1〜50g/10分であることが好ましく、中でも0.2〜40g/10分であることが好ましい。MFIが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形体の機械的特性や耐熱性が劣るものとなりやすい。一方、MFIが0.1g/10分未満の場合は、成形加工時の負荷が高くなりすぎ操業性が低下する場合がある。上記のMFIを所定の範囲に制御する方法として、MFIが大きすぎる場合には、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が使用できる。一方、MFIが小さすぎる場合には、MFIの大きな生分解性ポリエステル樹脂などの低分子量化合物と混合する方法などが挙げられる。
そして、ポリ乳酸樹脂の融点は、成形加工性の観点から140〜240℃が好ましく、中でも150〜220℃であることが好ましい。
さらに、ポリ乳酸樹脂は一部が架橋されていてもよく、また、エポキシ化合物などで修飾(すなわち、グラフト重合)されていてもよい。
次にカルボジイミド化合物について説明する。カルボジイミド化合物としては、同一分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミド化合物と同一分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物が挙げられる。
モノカルボジイミド化合物としては、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド,N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミドなどが挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物としては、芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインヘミー社製スタバックゾールP、スタバックゾールP−100など)、脂肪族(脂環族)ポリカルボジイミド(例えば、日清紡績株式会社製カルボジライトLA−1など)が挙げられる。
これらカルボジイミド化合物は単独で使用してもよいが2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明では耐加水分解性、物性維持、外観の維持などの観点から、モノカルボジイミド化合物が好ましく、中でもN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが好ましい。
カルボジイミド化合物の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であり、中でも0.5〜8質量部であることが好ましい。カルボジイミド化合物の含有量が0.1質量部未満では耐加水分解性を向上させることができず、本発明の効果を奏することができない。一方、含有量が10質量部を超えると長期保存後にカルボジイミド化合物がブリードアウトしたり、外観も悪化するなど、他の物性に悪影響を与える。
ポリ乳酸樹脂の加水分解反応は、ポリ乳酸樹脂の分子鎖末端のカルボキシル基が多く残存しているほど速く進行する。したがって、ポリ乳酸樹脂物中のカルボキシル基濃度(以下、[COOH]と表記する場合がある)が低いほど、耐加水分解性を向上させるには好ましい。ポリ乳酸樹脂中のカルボキシル基濃度を適正な範囲に制御するには、カルボジイミド化合物中のカルボジイミド基濃度や、カルボジイミド化合物の添加量を適宜調整することにより可能である。
そこで、本発明の樹脂組成物中のカルボキシル基濃度は、3.0mol/ton以下であることが好ましく、1.5mol/ton以下であることがさらに好ましく、1.0mol/ton以下であることが最も好ましい。なお、上記カルボキシル基濃度の測定方法としては、滴定法や核磁気共鳴法(NMR)などが挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを含有するものである。エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムは、シリコーンとアクリルからなる複合ゴムであり、表層にエポキシ基を有するものである。エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムに含まれるエポキシ基がポリ乳酸樹脂のカルボキシル末端に反応するので、本発明において、カルボジイミド化合物とともにエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを用いることで、カルボジイミド化合物を単独で用いるときに比べて、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐加水分解性をさらに向上させることができる。さらに、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムはゴム弾性を有する重合体成分から構成されているため、耐加水分解性が向上するだけでなく、耐衝撃改良効果も向上し、機械的強度にも優れるものとなる。
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムのエポキシ量は、50mol/t〜2500mol/tが好ましく、より好ましくは100mol/t〜2000mol/tである。エポキシ量が50mol/tであると、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル末端に反応しにくく、本発明の目的とする耐加水分解性向上効果に乏しくなる。一方、エポキシ量が2500mol/tを超えると、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル末端との反応性が高くなりすぎて、耐加水分解性の向上に悪影響を及ぼす。また、ポリ乳酸樹脂の溶融粘度が高くなり、成形加工時の負荷が高くなりすぎて操業性が低下する。
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムに含有されるエポキシ量は、JIS K−72
36に従い、指示薬滴定法により測定するものである。まず、0.0006〜0.0009エポキシ当量程度に相当するサンプルにクロロホルム10ml及び酢酸20mlを加えて溶解し、この溶液に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液10mlを加え、クリスタルバイオレットを指示薬として0.1N過塩素酸酢酸溶液で滴定する。消費した0.1N過塩素酸酢酸溶液の量によってエポキシ当量を求める。
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムの含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対し0.5〜20質量部であり、中でも1〜10質量部であることが好ましい。含有量が0.5質量部未満であると、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル末端と十分に反応せず、耐加水分解性の向上効果に乏しくなる。一方、20質量部を超えると、耐加水分解性が悪化したり、長期保存後にブリードアウトしたり、変色、ひび割れなど外観が悪化する。また、曲げ強度が低く、機械的特性に劣るものとなる。
本発明の樹脂組成物には、耐熱性、結晶化速度、成形性等をさらに向上させる目的で、膨潤性層状珪酸塩を添加してもよい。その添加量は、操業性および加工性の観点から、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.05〜30質量部であることが好ましく、中でも0.1〜25質量部であることが好ましい。
樹脂組成物中に分散した膨潤性層状珪酸塩は、その層間距離は耐熱性、結晶化速度、成形性向上の観点から、20Å(2nm)以上であることが好ましく、また、膨潤性層状珪酸塩の粒径は、樹脂組成物への分散性を高める観点から、1〜1000nmであることが好ましい。
膨潤性層状珪酸塩としては、スメクタイト、バーミキュライト、膨潤性フッ素雲母などが挙げられる。スメクタイトの例としては、モンモリロナイト、ハイデライト、ヘクトライト、サポナイトなどが挙げられる。膨潤性フッ素雲母の例としては、Na型フッ素四ケイ素雲母、Na型テニオライト、Li型テニオライトなどが挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートおよびそれらの共重合体等の非生分解性樹脂を添加してもよい。
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、本発明で規定した以外の熱安定剤や酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、分散剤、結晶核剤等の添加剤を添加することができる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、イオウ系難燃剤、酸系難燃剤などが挙げられる。
充填材としては、無機充填材と有機充填材が挙げられる。無機充填材としては、タルク、ハイドロタルサイト化合物、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ、ケナフ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品などが挙げられる。
分散剤としては、流動パラフィン、ミネラルオイル、クレオソート油、潤滑油、シリコーンオイルなどの工業用オイル;コーン油、大豆油、菜種油、パーム油、亜麻仁油、ホホバ油などの植物油;イオン性またはノニオン性の界面活性剤などが挙げられる。
無機結晶核材としては、タルク、カオリン等が挙げられ、有機結晶核材としては、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物の他に、アミド化合物としてエチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスアクリル酸アミド、エチレンビスアクリル酸アミド、ヘキサメチレンビス−9、10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9、10ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N′−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N′−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N、N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド等が挙げられる。
なお、これらの添加剤は、単独で用いてもよいし2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、本発明の樹脂組成物にこれらの添加剤を混合する方法は特に限定されない。
そして、本発明の樹脂組成物は、上記のような構成を有することで、ポリ乳酸樹脂の大きな欠点であった高温高湿度下での長期使用時の耐久性が大幅に改善されている。そのため、各種成形体とした場合に、従来の生分解性を有するポリ乳酸樹脂では実用化において耐久性が不十分であった用途にも使用することができる。例えば、夏場の自動車内での高温高湿度下の過酷な状況でも、保存安定性に優れ、劣化に伴う強度低下や分子量低下などが生じない。
つまり、本発明の樹脂組成物の高温高湿度下で長期使用に耐えうる耐加水分解性および耐久性を示す指標として、本発明の樹脂組成物は、70℃、相対湿度95%の条件下で1000時間保持した時の曲げ強度保持率が80%以上であることが好ましい。さらに本発明の樹脂組成物は、70℃、相対湿度95%の条件下で1500時間保持した時の曲げ強度保持率が80%以上であることが好ましい。70℃、相対湿度95%の条件下で1000時間保持した時の曲げ強度保持率が80%未満であると、高温高湿度下で長期使用に耐えうる耐加水分解性および耐久性に乏しいものとなる。
上記の曲げ強度保持率は以下のようにして、曲げ破断強度を測定し、算出するものである。樹脂組成物を射出成形して、(5インチ)×(1/2インチ)×(1/8インチ)の成形片を得る。射出成形の際に、結晶核剤を添加していない樹脂組成物を用いる場合には成形時の金型温度を15℃として、結晶化させずに成形片を得、これをアニール処理したものを試験片とする。射出成形の際に、炭酸カルシウムなどの結晶核剤を添加するなどの方法により、結晶化促進処方を施した樹脂組成物を用いる場合は、成形時の金型温度を110℃とし、金型内部で結晶化させて成形片を得、これを試験片とする。次いで、ASTM−790に従い、変形速度1mm/分で荷重をかけ、室温での曲げ破断強度(A1)を測定する。
次に、恒温恒湿器(ヤマト科学社製、商品名「IG400型」)を用い、試験片を温度70℃、相対湿度95%の環境下に保存することにより湿熱処理を施す。保存時間(湿熱処理時間)を500時間、1000時間、1500時間とし、それぞれの処理時間湿熱処理を施した試験片を回収し、上記と同様にしてそれぞれの湿熱処理後(湿熱処理時間500時間、1000時間又は1500時間)の曲げ破断強度(A2)を測定する。そして、以下の式により曲げ強度保持率を算出する。
曲げ強度保持率(%)=(A2/A1)×100
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。一般的な押出機を用いて、ポリ乳酸樹脂、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムおよびカルボジイミド化合物をドライブレンドし、ホッパーから投入して溶融混練する方法や、ポリ乳酸樹脂とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを溶融押出する際に、カルボジイミド化合物を押出機の途中からフィーダーなどを使って添加する方法、カルボジイミド化合物を加熱し液状にしたのち加熱定量送液装置などを利用してポリ乳酸樹脂とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムの混練の途中から添加する方法が挙げられる。熱安定剤などのその他の添加剤は、一般に溶融混練時あるいは重合時に加えられる。溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することができる。混合均一性や分散性を高める観点からは二軸押出機を使用することが好ましい。
そして、本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物からなるものである。つまり、本発明の樹脂組成物を射出成形、ブロー成形、押出成形など公知の成形方法により、各種成形体としたものが挙げられる。
射出成形法としては、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等を採用できる。本発明において好適な射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度は樹脂組成物の融点(Tm)または流動開始温度以上であり、好ましくは180〜230℃、最適には190〜220℃の範囲である。シリンダ温度が低すぎると、樹脂の流動性の低下により成形不良や装置の過負荷に陥りやすい。逆にシリンダ温度が高すぎるとポリ乳酸樹脂が分解し、成形体の強度低下、着色等の問題が発生するため好ましくない。
また、本発明において、射出成形の際の金型温度については、樹脂組成物のTg(ガラス転移温度)以下とする場合には、好ましくは(Tg−10)℃以下である。また、樹脂組成物の剛性、耐熱性向上を目的として結晶化を促進するためにTg以上、(Tm−30)℃以下とすることもできる。
ブロー成形法としては、例えば原料チップから直接成形を行うダイレクトブロー法や、まず射出成形で予備成形体(有底パリソン)を成形後にブロー成形を行う射出ブロー成形法、さらには延伸ブロー成形法等が挙げられる。また、予備成形体を成形後に連続してブロー成形を行うホットパリソン法、いったん予備成形体を冷却し取り出してから再度加熱してブロー成形を行うコールドパリソン法のいずれの方法も採用できる。
押出成形法としては、Tダイ法、丸ダイ法等を適用することができる。押出成形温度は樹脂組成物の融点または流動開始温度以上であることが必要であり、好ましくは180〜230℃、さらに好ましくは190〜220℃の範囲である。成形温度が低すぎると操業が不安定になるという問題や、過負荷に陥りやすいという問題がある。逆に成形温度が高すぎるとポリ乳酸樹脂が分解し、押出成形体の強度低下や着色等の問題が発生するため好ましくない。押出成形によりシートやパイプ等を作製することができる。
押出成形法により得られたシートまたはパイプの具体的用途としては、深絞り成形用原反シート、バッチ式発泡用原反シート、クレジットカード等のカード類、下敷き、クリアファイル、ストロー、農業・園芸用硬質パイプ等が挙げられる。また、シートは、さらに、真空成形、圧空成形及び真空圧空成形等の深絞り成形を行うことで、食品用容器、農業・園芸用容器、ブリスターパック容器及びプレススルーパック容器などを製造することができる。
上記のような成形法を用いて得られる本発明の成形体は、その優れた特性を活かして自動車用部品に特に適する。上記自動車用部品の具体例としては、バンパー部材、インストルメントパネル、トリム、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、コンソールボックス、トランクカバー、スペアタイヤカバー、天井材、床材、内板、シート材、ドアパネル、ドアボード、ステアリングホイール、バックミラーハウジング、エアーダクトパネル、ウィンドモールファスナー、スピードケーブルライナー、サンバイザーブラケット、ヘッドレストロッドホルダー、各種モーターハウジング、各種プレート、各種パネルなどが挙げられる。
また、他にも耐久性を有する事務機器、家電製品などの筐体、各種部品などの用途に好適に用いることができる。事務機器の具体例としては、プリンター、複写機、ファックスなどのケーシングにおけるフロントカバー、リアカバー、給紙トレイ、排紙トレイ、プラテン、内装カバー、トナーカートリッジなどが挙げられる。他にも、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、OA機器、建材関係部品、家具用部品など耐久性を必要とする各種用途に好適に用いることができる。
上記以外の成形品としては、皿、椀、鉢、箸、スプーン、フォーク、ナイフ等の食器;流動体用容器;容器用キャップ;定規、筆記具、クリアケース、CDケース等の事務用品;台所用三角コーナー、ゴミ箱、洗面器、歯ブラシ、櫛、ハンガー等の日用品;植木鉢、育苗ポット等の農業・園芸用資材;プラモデル等の各種玩具類等が挙げられる。なお、流動体用容器の形態は特に限定されないが、流動体を収容するためには深さ20mm以上に成形されていることが好ましい。容器の厚さは特に限定されないが、強力の点から、0.1mm以上であることが好ましく、0.1〜5mmであることがより好ましい。流動体用容器の具体例としては、乳製品や清涼飲料水及び酒類等の飲料用コップ及び飲料用ボトル;醤油、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、食用油等の調味料の一時保存容器;シャンプー・リンス等の容器;化粧品用容器;農薬用容器等が挙げられる。
さらに、本発明の成形体は繊維であってもよい。繊維はマルチフィラメント、モノフィラメントのいずれであってもよく、長繊維、短繊維のいずれでもよい。本発明の樹脂組成物からなる繊維の製造方法は特に限定されないが、例えば、溶融紡糸し、未延伸糸を得た後、延伸する方法が好ましい。溶融紡糸温度としては、160℃〜260℃が好ましく、170℃〜230℃がより好ましい。160℃未満では溶融押出が困難となる場合があり、一方、260℃を超えると、樹脂の分解が顕著となり、繊維を得ることが困難な場合がある。溶融紡糸して得た未延伸糸は、目的とする強度や伸度となるように樹脂組成物のTg以上の温度で延伸させるとよい。上記方法により得られた繊維は、織編物や短繊維不織布とすることができ、衣料用、産業資材用途に使用することができる。
また、本発明の成形体は、上記以外の方法で得られる繊維からなる長繊維不織布であってもよい。その製造方法は特に限定されないが、樹脂組成物を高速紡糸法により繊維を堆積した後ウェブ化し、さらに熱圧接等の手段を用いて布帛化することにより得ることができる。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値の測定及び評価は以下のように行った。
(1)曲げ破断強度
得られた試験片を用い、前記したように、室温での曲げ破断強度(0h)、保存時間(湿熱処理時間)を500時間、1000時間、1500時間としたときの曲げ破断強度を測定した。
(2)曲げ強度保持率
(1)で測定した曲げ破断強度により、前記と同様にして曲げ強度保持率を算出した。(3)外観評価
(1)、(2)の測定において、保存時間(湿熱処理時間)を500時間、1000時間、1500時間とした際の試験片の表面を目視で観察し、湿熱処理前の試験片と比較し、以下の基準で評価した。○以上が実用に耐えうるものであるとした。
◎:全く変化なし。
○:表面が若干白化した。
△:表面が粉状に変質した。
×:試験片にひび割れ、またはブリードアウトが発生、または変形した。
(4)熱変形温度
得られた試験片(湿熱処理を施していないもの)を用い、ASTM D648に基づき、荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。なお、荷重は0.45MPaとした。
(5)成形サイクル
実施例18〜20の試験片を得る際の射出成形時において、樹脂組成物が金型内に射出(充填、保圧)され、冷却された後、成形体が金型に固着せずに取り出せるようになるまでの時間(射出時からカウントした時間:秒)、または成形体が金型から抵抗なく取り出せるようになるまでの時間(射出時からカウントした時間:秒)を成形サイクルとした。
以下に、実施例及び比較例において用いた各種原料を示す。
(1)ポリ乳酸樹脂
・PLA1
ネイチャーワークス社製、商品名「Nature Works 4032D」{L体/D体:98.6/1.4(mol%)、質量平均分子量(Mw):170000、融点:170℃、MFI:2.5g/10分(190℃、荷重2.16kg)、[COOH]:22mol/ton}
・PLA2
ネイチャーワークス社製、商品名「Nature Works 4060D」{L体/D体:88/12(mol%)、質量平均分子量(Mw):176000、流動開始温度:120℃〜160℃、MFI:11.6g/10分(190℃、荷重2.16kg)、[COOH]:19mol/ton}
・PLA3
トヨタ自動車社製、商品名「A−1」{L体/D体:99.4/0.6(mol%)、質量平均分子量(Mw):170000、融点:171℃、MFI:2g/10分(190℃、荷重2.16kg)、[COOH]:11mol/ton}
・PLA4
トヨタ自動車社製、商品名「S−17」{L体/D体:99.9/0.1(mol%)、質量平均分子量(Mw):120000、融点:176℃、MFI:11g/10分(190℃、荷重2.16kg)、[COOH]:3mol/ton}
(2)カルボジイミド化合物
・CD1
N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド:松本油脂社製、商品名「EN160」
・CD2
N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド:ラインケミー社製、商品名「スタバックゾールI−LF」
・CD3
脂肪族系ポリカルボジイミド:日清紡ケミカル社製、商品名「LA−1」
(3)エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム
・S−2200
三菱レイヨン社製、商品名「メタブレンS−2200」エポキシ量352mol/t
(4)シリコーン・アクリルゴム
・S−2001
三菱レイヨン社製、商品名「メタブレンS−2001」
・S−2006
三菱レイヨン社製、商品名「メタブレンS−2006」
(5)アクリル系ゴム
・W−450A
三菱レイヨン社製、商品名「メタブレンW−450A」
(6)ブタジエン系ゴム
・C−223A
三菱レイヨン社製、商品名「メタブレンC−223A」
(7)エポキシ基含有アクリル系共重合体
・KP−7653
三菱レイヨン社製、商品名「メタブレンKP−7653」エポキシ量5556mol/t
(8)エポキシ基含有スチレン・アクリル系共重合体
・ADR−4368
BASF社製、商品名「Joncryl ADR−4368」エポキシ量3509mol/t
・UG−4040
東亜合成社製、商品名「ARUFON UG−4040」エポキシ量2100mol/t
(9)結晶核剤
・TLA114:竹本油脂製TLA114(5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウム)
実施例1
100質量部のPLA1と、1、4質量部のCD1と、1質量部のS−2200とをドライブレンドした後、二軸押出機(池貝社製、商品名「PCM−30型」)を用いて、温度190℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練した。溶融混練の後0.4mm径×3孔のダイスよりストランドを押出してペレット状にカッティングし、真空乾燥機(ヤマト科学社製、商品名「真空乾燥機DP83」)にて、温度60℃で48時間乾燥処理し、樹脂組成物を得た。
そして、得られた樹脂組成物を、東芝機械社製の射出成形機(商品名「IS−80G型」)を用い、シリンダ温度:160〜190℃、金型温度:15℃の条件とし、金型の規格:ASTM規格、1/8インチ3点曲げ試験片用金型を用い、成形片を得た。そして、120℃のオーブン中で30分間加熱処理(アニール処理)を行い、試験片を得た。
実施例2〜6、比較例12〜13
S−2200の含有量を表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例7〜10、比較例15〜16
CD1の含有量を表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例11〜12
カルボジイミド化合物の種類をCD2、CD3にそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例13
ポリ乳酸樹脂をPLA2に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例14
ポリ乳酸樹脂をPLA2に変更した以外は、実施例11と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例15
ポリ乳酸樹脂をPLA2に変更した以外は、実施例12と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例16〜17
ポリ乳酸樹脂をPLA3、PLA4にそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例18
PLA1とCD1とS−2200に加えて、結晶核剤としてTLA114を0.5質量部添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
そして、得られた樹脂組成物を、東芝機械社製の射出成形機(商品名「IS−80G型」)を用い、シリンダ温度:160〜190℃、金型温度:110℃の条件とし、金型の規格:ASTM規格、1/8インチ3点曲げ試験片用金型を用い、成形片(試験片)を得た。
実施例19、20
ポリ乳酸樹脂をPLA3、PLA4にそれぞれ変更した以外は、実施例18と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例18と同様にして試験片を得た。
比較例1
PLA1のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例2
PLA1とCD1のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例3、4
カルボジイミド化合物の種類をCD2、CD3にそれぞれ変更したこと以外は、比較例2と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例5〜11
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(S−2200)に変えて、表1に示すそれぞれ他の添加剤に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例14
PLA1とS−2200のみを用いたこと以外は実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例17
S−2200に変えて、シリコーンアクリルゴム(S−2001)を用いたこと以外は実施例12と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例18
100質量部のPLA1と、5質量部のシリコーンアクリルゴム(S−2001)と1質量部のエポキシ基含有スチレン・アクリル系共重合体(UG−4040)とをドライブレンドしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。そして、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例1〜20、比較例1〜18で得られた樹脂組成物の組成、試験片の評価結果(曲げ破断強度、曲げ強度保持率)を表1、2に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜20で得られた樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂、カルボジイミド化合物、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを特定の割合で配合したものであったため、得られた試験片は、70℃、相対湿度95%の条件下で1000時間保持した時の曲げ強度保持率が80%以上であり、高温高湿条件で長期使用しても十分な耐久性を有するものであった。中でも、カルボジイミド化合物がモノカルボジイミド化合物である場合は、70℃、相対湿度95%の条件下で1500時間保持した時の曲げ強度保持率も80%以上であり、耐加水分解性が大幅に向上していた。
また、実施例16〜17、19〜20の樹脂組成物は、D体含有量の少ないポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物であったため、得られた試験片は熱変形温度が高く、耐熱性に優れていた。また、結晶核剤を含有させた実施例19〜20の樹脂組成物においては、試験片を得る際の成形サイクルも短く、結晶化速度も速いものであった。そして、これらの樹脂組成物は耐湿熱性能も向上し、得られた試験片は、曲げ強度保持率が高く、外観に優れ、長期の耐久性に優れたものであった。
そして、全ての実施例で得られた樹脂組成物は、良好な外観を有しており、カルボキシル基濃度は1.0mol/ton以下であった。
一方、表2から明らかなように、比較例1〜18で得られた樹脂組成物は実施例で得られた樹脂組成物よりも試験片の曲げ強度保持率が低く、外観にも劣っており、耐加水分解性(耐久性)に劣るものであった。
比較例1はポリ乳酸樹脂のみのものであったため、カルボキシル基濃度が22mol/tonであり、70℃、相対湿度95%の条件下で500時間保持した時の曲げ強度保持率が大幅に低下しており、試験片の外観も悪化した。比較例2〜4の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂にモノカルボジイミド化合物を添加した組成のものであったため、1000時間保持した時の曲げ強度保持率が大幅に低下しており、試験片にはひび割れが発生し、外観も悪化した。また、これらの樹脂組成物のカルボキシル基濃度は1.0mol/ton以下であった。比較例5〜6の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムに変えてシリコーン・アクリルゴムを添加したため、500時間保持した時の曲げ強度保持率又は1500時間保持した時の曲げ強度保持率が大幅に低下しており、さらに試験片は変色したり、ブリードアウトなどが発生した。比較例7の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムに変えてアクリル系ゴムを添加したため、1000時間保持した時の曲げ強度保持率が大幅に低下しており、さらに試験片は変色したり、ブリードアウトなどが発生した。比較例8の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムに変えてブタジエン系ゴムを添加したため、1000時間保持した時の曲げ強度保持率が大幅に低下しており、さらに試験片は変色したり、ブリードアウトなどが発生した。比較例9の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムに変えて、エポキシ基含有アクリル系共重合体を添加したため、1500時間保持した時の曲げ強度保持率が低下しており、さらに試験片は変色したり、ひび割れやブリードアウトなどが発生した。比較例10〜11の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムに変えて、エポキシ基含有スチレン・アクリル系共重合体を添加したため、1500時間保持した時の曲げ強度保持率が大幅に低下しており、さらに試験片は変色したり、ひび割れやブリードアウトなどが発生した。比較例12の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムの添加量が過少であったため、1500時間保持した時の曲げ強度保持率が大幅に低下しており、さらに試験片は変色したり、ひび割れやブリードアウトなどが発生した。比較例13の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムの添加量が過多であったため、500時間保持した時の曲げ強度保持率が大幅に低下しており、さらに試験片の外観も悪化した。また、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムの添加量が過多であったため、曲げ破断強度の初期値が低く、機械的物性に劣るものであった。また、2軸押出機での溶融混練の際に樹脂組成物の粘度が上がり、相溶性が悪くなり、操業性にも悪影響を及ぼした。また、比較例5〜13の樹脂組成物は、カルボキシル基濃度が1.0mol/ton以下であった。比較例14の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムのみを添加したものであったため、カルボキシル基濃度は20mol/tonであり、500時間保持した時の曲げ破断強度が大幅に低下し、測定できなかった。比較例15の樹脂組成物は、カルボジイミド化合物の添加量が過少であったため、カルボキシル基濃度は12mol/tonであり、500時間保持した時の曲げ強度保持率が大幅に低下し、試験片の外観も悪かった。比較例16の樹脂組成物は、カルボジイミド化合物の添加量が過多であったため、1500時間保持した時の曲げ強度保持率も高いものであったが、試験片の外観は変色したり、ブリードアウトなどが発生した。比較例17の樹脂組成物は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムに変えてシリコーン・アクリルゴムを添加したため、500時間保持した時の曲げ破断強度が大幅に低下し、試験片の外観も悪かった。比較例16、17の樹脂組成物は、カルボキシル基濃度は1.0mol/ton以下であった。比較例18の樹脂組成物は、カルボジイミド化合物を用いず、シリコーン・アクリルゴムとエポキシ基含有スチレン・アクリル系共重合体を添加したものであったため、カルボキシル基濃度は18mol/tonであり、500時間保持した時の曲げ破断強度が大幅に低下し、測定できなかった。
比較例14の結果より、カルボジイミド化合物を用いなかった場合は、樹脂組成物の耐加水分解性が大幅に劣ることがわかる。これは、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムのみをポリ乳酸樹脂に配合しただけでは、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル基末端が封鎖されず、分子鎖末端のカルボキシル基が触媒として働き、高温高湿度下で加速度的にポリ乳酸の加水分解が進行するためであると推定される。
これらの結果より、ポリ乳酸系樹脂の耐加水分解性(耐久性)を向上させるためには、カルボジイミド化合物でポリ乳酸樹脂のカルボキシル基末端を封鎖することが必要であり、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを含有することにより、さらに耐加水分解性(耐久性)が向上することがわかる。エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムは、シリコーン・アクリルゴム成分がポリ乳酸樹脂と相溶性があると考えられ、また、エポキシ基が少量含有されていることで、ポリ乳酸樹脂のカルボキシル基末端にさらに反応し、カルボジイミド化合物とともにカルボキシル基を封鎖する、またはカルボジイミド化合物による封鎖を助長すると考えられ、これらによりポリ乳酸樹脂組成物の耐加水分解性(耐久性)が大幅に向上する。

Claims (4)

  1. ポリ乳酸樹脂100質量部に対し、カルボジイミド化合物0.1〜10質量部とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴム0.5〜20質量部とを含有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
  2. カルボジイミド化合物が、モノカルボジイミド化合物である請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  3. 70℃、相対湿度95%の条件下で1000時間保持した時の曲げ強度保持率が80%以上である請求項1又は2記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。

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