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JP2011189687A - 塗装ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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JP2011189687A JP2010059418A JP2010059418A JP2011189687A JP 2011189687 A JP2011189687 A JP 2011189687A JP 2010059418 A JP2010059418 A JP 2010059418A JP 2010059418 A JP2010059418 A JP 2010059418A JP 2011189687 A JP2011189687 A JP 2011189687A
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Abstract

【課題】耐滑り性および塗膜密着性に優れる塗装ステンレス鋼板を提供すること。
【解決手段】ステンレス鋼板の表面に、数平均分子量が2万〜4万の範囲内で、かつ重量平均分子量が5万以上のポリエステル100質量部と、ポリイソシアネート化合物20〜60質量部とを含む、膜厚3〜30μmの熱硬化性樹脂塗膜を形成する。この熱硬化性樹脂塗膜は、20℃の環境において、直径1mmの円柱形状の圧子で49mNの荷重を加えられたときの押し込み深さが2μm以上である。また、熱硬化性樹脂塗膜は、沸騰水に1時間浸漬され、次いで大気中で24時間静置された後、JIS K 5600−5−6に準拠して行った付着性試験の試験結果の分類が0である。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐滑り性および塗膜密着性に優れる塗装ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
ステンレス鋼板は、優れた外観を生かして、外装材や内装材、厨房機器などの広範な用途で使用されている。このように外観を生かした使用態様では、成形時に生じる傷や、使用時に付着する指紋や汚れなどが非常に目立ちやすい。そこで、耐傷付き性を向上させるとともに、指紋や汚れなどの付着による外観の劣化を抑制するために、ステンレス鋼板の表面にクリア塗膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、塗膜硬度が高く、耐傷付き性に優れるクリア塗装ステンレス鋼板の製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法では、ポリフッ化ビニリデンおよびアクリル樹脂の混合塗料を焼き付けた後、140℃以下の温度で再度加熱処理を行うことで、ポリフッ化ビニリデンのα型結晶の生成を抑制するとともに、β型結晶の生成を促進している。このようにして得られたクリア塗装ステンレス鋼板は、クリア塗膜中のβ型結晶化度が高く、耐傷付き性、塗膜密着性および意匠性に優れている。
一方、屋根材などの建材用に、耐滑り性に優れる塗装鋼板(プレコート鋼板)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、有機粒子や無機粒子などの骨材を塗膜中に配合して、耐滑り性を向上させた艶消し塗装鋼板が記載されている。
特開2000−70844号公報 特開平9−267428号公報
特許文献2に記載されているように、従来の耐滑り性に優れる塗装鋼板は、防滑骨材を塗膜中に配合することで耐滑り性を向上させているため、艶消しの外観であった。このように塗膜中に防滑骨材を配合する方法では、塗膜の透明感が損なわれてしまうため、優れた外観を有するステンレス鋼板を塗装原板とした場合であっても、ステンレス鋼板の外観を生かすことができなかった。
防滑骨材を使用せずにステンレス鋼板の耐滑り性を向上させる手段としては、ステンレス鋼板の表面にエラストマー塗膜を形成することが考えられる。しかしながら、従来の技術では、ステンレス鋼板の表面にエラストマーを十分に密着させることができず、耐滑り性と塗膜密着性とを両立した塗装ステンレス鋼板を製造することはできなかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、耐滑り性および塗膜密着性に優れる塗装ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
本発明者は、所定の分子量分布のポリエステルを主樹脂とし、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を含有する樹脂組成物の硬化物からなる塗膜をステンレス鋼板の表面に形成することで、上記課題を解決しうることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の塗装ステンレス鋼板に関する。
[1]ステンレス鋼板と、前記ステンレス鋼板の表面に形成された、膜厚3〜30μmの熱硬化性樹脂塗膜とを有する塗装ステンレス鋼板であって:前記熱硬化性樹脂塗膜は、20℃の環境において、直径1mmの円柱形状の圧子で49mNの荷重を加えられたときの押し込み深さが2μm以上であり;前記熱硬化性樹脂塗膜は、沸騰水に1時間浸漬され、次いで大気中で24時間静置された後、JIS K 5600−5−6に準拠して行った付着性試験の試験結果の分類が0である、塗装ステンレス鋼板。
[2]前記熱硬化性樹脂塗膜は、以下の方法により測定される塗膜の軟化温度が15℃以下である、[1]に記載の塗装ステンレス鋼板。
[塗膜の軟化温度の測定方法]
液体窒素で冷却された前記熱硬化性樹脂塗膜に、直径1mmの円柱形状の圧子で98mNの荷重を加え;前記熱硬化性樹脂塗膜を5℃/分で加熱して、押し込み深さ曲線を求め;前記押し込み深さ曲線において、前記圧子が押し込まれ始める温度よりも低温側の温度での接線Aと、押し込み速度が最大となる温度での接線Bとの交点を塗膜の軟化温度とする。
[3]前記熱硬化性樹脂塗膜は、数平均分子量が2万〜4万の範囲内で、かつ重量平均分子量が5万以上のポリエステル100質量部と、ポリイソシアネート化合物20〜60質量部とを含む樹脂組成物の硬化物である、[1]または[2]に記載の塗装ステンレス鋼板。
[4]前記塗装ステンレス鋼板は、プレコート鋼板である、[1]〜[3]のいずれかに記載の塗装ステンレス鋼板。
また、本発明は、以下の塗装ステンレス鋼板の製造方法に関する。
[5]ステンレス鋼板を準備するステップと;前記ステンレス鋼板の表面に、数平均分子量が2万〜4万の範囲内で、かつ重量平均分子量が5万以上のポリエステル100質量部と、ポリイソシアネート化合物20〜60質量部とを含む塗料を塗布するステップと;前記ステンレス鋼板の表面に塗布された塗料を焼き付けるステップとを有する、塗装ステンレス鋼板の製造方法。
本発明によれば、耐滑り性、塗膜密着性および意匠性に優れる塗装ステンレス鋼板を提供することができる。本発明の塗装ステンレス鋼板は、例えばキッチン台の収納スペースの底板や、ショーケースの底板などの耐滑り性および意匠性が要求される部材用のプレコート鋼板として有用である。
No.1の塗料から形成される塗膜の軟化温度を測定する際に得られた押し込み深さ曲線を示すグラフ
本発明の塗装ステンレス鋼板は、ステンレス鋼板(塗装原板)と、ステンレス鋼板の表面に形成された熱硬化性樹脂塗膜とを有する。ここで「ステンレス鋼板の表面」とは、ステンレス鋼板そのものの表面だけでなく、ステンレス鋼板の表面に形成された化成処理皮膜の表面も含む。
[塗装原板]
塗装原板としては、ステンレス鋼板が使用される。ステンレス鋼板の鋼種や表面仕上げの種類、硬さなどは、特に限定されない。ステンレス鋼板の鋼種の例には、SUS304、SUS430、SUS316などが含まれる。また、ステンレス鋼板の表面仕上げの種類の例には、BA、2B、2D、No.4、HLなどが含まれる。
塗装原板となるステンレス鋼板は、耐食性および塗膜密着性をより向上させる観点から、化成処理皮膜を形成されていてもよい。この場合、化成処理の種類は、特に限定されない。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理、リン酸塩処理などが含まれる。これらの中では、チタンおよび水溶性樹脂を主成分とするフルオロアシッド系皮膜は、良好な塗膜密着性向上効果を示すため好ましい。化成処理皮膜の膜厚は、ステンレス鋼板の腐食の抑制および塗膜密着性の向上に有効な範囲内であれば特に限定されない。たとえば、クロメート皮膜の場合、全Cr換算付着量が5〜100mg/mとなるように膜厚を調整すればよい。また、クロムフリー皮膜の場合、Ti−Mo複合皮膜では10〜500mg/m、フルオロアシッド系皮膜ではフッ素換算付着量または総金属元素換算付着量が3〜100mg/mの範囲内となるように膜厚を調整すればよい。また、リン酸塩皮膜の場合、付着量が5〜500mg/mとなるように膜厚を調整すればよい。
化成処理皮膜は、公知の方法で形成されうる。たとえば、化成処理液をロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの方法で塗装原板の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。乾燥温度および乾燥時間は、水分を蒸発させることができれば特に限定されない。生産性の観点からは、乾燥温度は、到達板温で60〜150℃の範囲内が好ましく、乾燥時間は、2〜10秒の範囲内が好ましい。
[熱硬化性樹脂塗膜]
熱硬化性樹脂塗膜は、押し込み深さが2μm以上であり、かつ付着性試験において塗膜の剥離が生じない塗膜である。本明細書において「塗膜の押し込み深さ」とは、20℃の環境において、直径1mmの円柱形状の圧子で塗膜に49mNの荷重を加えたときの、塗膜の押し込み深さを意味する(実施例参照)。また、「付着性試験において塗膜の剥離が生じない」とは、塗装ステンレス鋼板を沸騰水に1時間浸漬して塗膜に負荷を加え、次いで大気中で24時間静置した後、JIS K 5600−5−6:1999に準拠して付着性試験(クロスカット法)を行ったときの、試験結果の分類が0であることを意味する(実施例参照)。
熱硬化性樹脂塗膜の膜厚は、3〜30μmの範囲内が好ましく、5〜30μmの範囲内がより好ましい。膜厚が3μm未満の場合、塗膜の押し込み深さを2μm以上とすることが難しくなり、耐滑り性を十分に発揮させることができない。一方、膜厚が30μm超の場合、焼き付けの際にワキが発生しやすくなり、塗膜の外観を損なうおそれがある。
熱硬化性樹脂塗膜の押し込み深さは、熱硬化性樹脂塗膜の軟化温度に依存する。したがって、熱硬化性樹脂塗膜の押し込み深さを2μm以上とするためには、熱硬化性樹脂塗膜の軟化温度は15℃以下であることが好ましい。本明細書において「塗膜の軟化温度」とは、以下の1)〜3)の手順により測定される温度を意味する。
1)液体窒素で冷却された熱硬化性樹脂塗膜に、直径1mmの円柱形状の圧子で98mNの荷重を加える。
2)圧子で98mNの荷重を加えながら、熱硬化性樹脂塗膜を昇温速度5℃/分で加熱して、押し込み深さ曲線を求める。
3)得られた押し込み深さ曲線において、圧子が押し込まれ始める温度よりも低温側の温度での接線Aと、押し込み速度が最大となる温度での接線Bとの交点を塗膜の軟化温度とする(図1参照)。
このように、熱硬化性樹脂塗膜の押し込み深さを2μm以上とする(塗膜の軟化温度を15℃以下とする)ことで、熱硬化性樹脂塗膜に物体が接触した場合に、熱硬化性樹脂塗膜とその物体との接触面積を大きくすることができ、その結果として耐滑り性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂塗膜の塗膜密着性を上記付着性試験に耐えうるものとすることで、プレコート鋼板としての使用に耐えうるものにすることができる。
熱硬化性樹脂塗膜の押し込み深さを2μm以上とし、かつステンレス鋼板への塗膜密着性を上記付着性試験に耐えうるものとするためには、例えば、1)数平均分子量が2万〜4万の範囲内で、かつ重量平均分子量が5万以上のポリエステルを主樹脂とし、2)硬化剤としてポリイソシアネート化合物を含む樹脂組成物(塗料)を硬化させて、熱硬化性樹脂塗膜を形成すればよい。
熱硬化性樹脂塗膜を形成するための樹脂組成物(塗料)は、数平均分子量が2万〜4万の範囲内で、かつ重量平均分子量が5万以上のポリエステルを主樹脂とする。数平均分子量が4万以下となるように、分子量が小さいポリエステルを一定量含有することで、硬化物中のウレタン結合の数を増やすことができる。このウレタン結合は、極性基であるため、ステンレス鋼板表面への塗膜密着性を向上させる。また、数平均分子量が2万以上、かつ重量平均分子量が5万以上となるように、分子量が大きいポリエステルを一定量含有することで、硬化物の軟化温度を低下させることができる。軟化温度の低下により、塗膜の押し込み深さを2μm以上とすることができる。なお、本明細書において「数平均分子量」および「重量平均分子量」は、いずれもゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の平均分子量である。
ポリエステル樹脂の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、2〜10の範囲内が好ましい。分散度が2未満の場合、高分子量成分の割合が過剰となり、樹脂粘度が大きくなりすぎて塗料化が困難となる。また、ステンレス鋼板表面への塗膜密着性も低下してしまう。一方、分散度が10を超える場合は、低分子量成分の割合が過剰となり、塗膜の押し込み深さが2μm未満となってしまう。
ポリエステルを構成するモノマー成分(ジカルボン酸成分、ジオール成分、オキシ酸成分)の種類は、特に限定されない。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸などを使用することができる。脂肪族ジカルボン酸化合物の例には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸などが含まれる。芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが含まれる。これらのジカルボン酸は、単独で使用されてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用されてもよい。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールや芳香族ジオールなどを使用することができる。脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、n−ブトキシエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ダイマージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキシリレングリコールなどが含まれる。芳香族ジオールの例には、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などが含まれる。これらのジオールは、単独で使用されてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用されてもよい。
オキシ酸成分は、分子中に1個の水酸基とカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されない。オキシ酸の例には、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ−n−酪酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシジメチル酪酸、ヒドロキシメチル酪酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などが含まれる。これらの中では、6−ヒドロキシカプロン酸が好ましい。これらのオキシ酸は、単独で使用されてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用されてもよい。
ポリエステルの調製方法は、特に限定されない。たとえば、上記のジカルボン酸およびジオールを、必要に応じてエステル化触媒を用いて、公知のエステル化反応によってエステル化させればよい。
上記ポリエステルは、硬化剤により架橋されている。硬化剤としては、表層濃化および自己縮合のおそれがないポリイソシアネート化合物が好ましい。硬化剤が表層に濃化したり、自己縮合したりしてしまうと、塗膜硬度が高まり、塗膜の押し込み深さが2μm未満となるおそれがある。
ポリイソシアネート化合物の種類は、特に限定されない。ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネートや脂環族ポリイソシアネートなどを使用することができる。脂肪族ポリイソシアネートの例には、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート)、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどが含まれる。脂環族ポリイソシアネートの例には、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが含まれる。
また、ポリイソシアネート化合物は、ブロック剤によりブロック化されていてもよい。ブロック剤の例には、オキシム類、フェノール類、アルコール類、ラクタム類、ジケトン類、メルカプタン類、尿素類、イミダゾール類、カルバミン酸類などが含まれる。
使用できるポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えばタケネート(三井化学株式会社)、スミジュール(住化バイエルウレタン株式会社)、デスモジュール(住化バイエルウレタン株式会社)、コロネート(日本ポリウレタン工業株式会社)が挙げられる。
ポリエステルおよびポリイソシアネート化合物の配合比は、ポリエステルの水酸基(−OH)に対するポリイソシアネートのイソシアネート基(−NCO)の比(NCO/OH)が0.8〜1.2の範囲内となるように、好ましくは0.9〜1.1の範囲内となるように調整すればよい。質量部に換算すると、上述のポリエステル100質量部に対してポリイソシアネート化合物が20〜60質量部の範囲内であることが好ましい。ポリイソシアネート化合物の配合量が20質量部未満の場合、熱硬化性樹脂塗膜を十分に成膜することができない。一方、ポリイソシアネート化合物の配合量が60質量部超の場合、副反応が過剰に生じてしまい、塗膜硬度が高まるおそれがある。
熱硬化性樹脂塗膜は、着色顔料、メタリック顔料、防錆顔料、体質顔料などの任意の顔料を含有していてもよい。ただし、これらの顔料は、塗膜の凝集力を高めて耐滑り性を低下させるおそれがあるため、各種顔料の配合量は、塗膜の軟化挙動に影響を与えない範囲内であることが好ましい。耐滑り性の観点およびステンレス鋼板の優れた外観を生かす観点からは、熱硬化性樹脂塗膜は、各種顔料を含有しないクリア塗膜であることが好ましい。
着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、ベンガラ、チタンイエロー、コバルトブルー、コバルトグリーン、アニリンブラック、フタロシアニンブルーなどが含まれる。メタリック顔料の例には、パール顔料や、アルミやステンレス、ニッケルなどの金属粉などが含まれる。防錆顔料の例には、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、リン酸亜鉛マグネシウム、リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム、シリカ、カルシウムイオン交換シリカ、リン酸ジルコニウム、トリポリリン酸2水素アルミニウム、酸化亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなどが含まれる。体質顔料の例には、硫酸バリウム、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウムなどが含まれる。
熱硬化性樹脂塗膜は、公知の方法で形成されうる。たとえば、所定の分子量分布のポリエステルおよびポリイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂塗料をステンレス鋼板の表面に塗布し、焼き付ければよい。熱硬化性樹脂塗料の塗布方法は、特に限定されず、プレコート鋼板の製造に使用されている方法から適宜選択すればよい。塗布方法の例には、ロールコート法、フローコート法、カーテンフロー法、スプレー法などが含まれる。焼き付け条件は、例えば、到達板温200〜250℃で30〜90秒間焼き付ければよい。
本発明の塗装ステンレス鋼板は、熱硬化性樹脂塗膜中に架橋間分子量が大きいポリエステル(ソフトセグメント)を一定量含有するため、耐滑り性に優れている。また、本発明の塗装ステンレス鋼板は、熱硬化性樹脂塗膜中に架橋間分子量が小さいポリエステルも一定量含有し、一定量の極性基(ウレタン結合)を有するため、塗膜密着性も優れている。すなわち、本発明の塗装ステンレス鋼板は、耐滑り性および塗膜密着性の両方に優れている。
本発明の塗装ステンレス鋼板は、耐滑り性、塗膜密着性および意匠性に優れているため、例えばキッチン台の収納スペースの底板や、ショーケースの底板などの耐滑り性および意匠性が要求される部材用のプレコート鋼板として有用である。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.塗料の調製
表1に示される組成のジカルボン酸、ジオールおよびオキシ酸からポリエステルを調製した。得られたポリエステルのポリスチレン換算の数平均分子量は、15000〜42000の範囲内であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は、45000〜180000の範囲内であった(表1参照)。ポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量は、高速GPCシステム(HLC−8220;東ソー株式会社)を用いて測定した。カラムは、KF−800DおよびKF−805L(いずれも昭和電工株式会社)を使用した。溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用し、検出器は示差屈折計を使用した。得られたポリエステルとポリイソシアネート化合物(デスモジュール;住友バイエルウレタン株式会社)とから、表1に示される組成の塗料(No.1〜6)を調製した。
Figure 2011189687
各塗料(No.1〜6)について、その塗料から形成される塗膜(膜厚15μm)の押し込み深さおよび塗膜の軟化温度を、熱機械分析装置(TMA8140C;株式会社リガク)を用いて測定した。塗膜の押し込み深さは、20℃の環境において、直径1mmの円柱形状の圧子を用いて塗膜に49mNの荷重を加えることで測定した。塗膜の軟化温度は、以下の手順で測定した。まず、液体窒素で冷却された塗膜に、直径1mmの円柱形状の圧子で98mNの荷重を加えた。次いで、塗膜に荷重を加えながら、塗膜を昇温速度5℃/分で加熱して、押し込み深さ曲線を求めた。得られた押し込み深さ曲線において、圧子が押し込まれ始める温度よりも低温側の温度の接線Aと、押し込み速度が最大となる温度での接線Bとの交点を塗膜の軟化温度とした(図1参照)。
図1は、No.1の塗料から形成される塗膜の軟化温度を測定する際に得られた押し込み深さ曲線を示すグラフである。グラフ中、「TMA」は押し込み深さ曲線を示し、「DTMA」は押し込み深さ曲線(TMA)の微分曲線を示す。図1に示されるように、接線Aと接線Bとの交点から求められる、No.1の塗料についての塗膜の軟化温度は、−25℃であった。
各塗料(No.1〜6)についての、塗膜の押し込み深さおよび塗膜の軟化温度の測定結果を表1に示す。
2.塗装ステンレス鋼板の作製
塗装原板として、板厚0.5mmステンレス鋼板(SUS304、BA仕上げ)を準備した。準備した鋼板の表面をアルカリ脱脂し、水洗した。各鋼板の片面に、塗装前処理液(ヘキサフルオロチタン酸:50g/L、アミノメチル置換ポリビニルフェノール:75g/L、溶媒:水)を、チタン換算付着量で10mg/mとなるようにバーコーターで塗布し、100℃で乾燥させて、塗装前処理皮膜を形成した。
塗装前処理をした各ステンレス鋼板の表面に上述の塗料(No.1〜6)を塗布し、230℃で60秒間焼き付けて、膜厚5μmのクリア塗膜を形成した。
3.耐滑り性試験および付着性試験
(1)耐滑り性試験
上述の塗料(No.1〜6)を塗布した各塗装ステンレス鋼板(実施例1〜4、比較例1〜2)および塗装前処理のみを行ったステンレス鋼板(比較例3)について、耐滑り性試験を実施した。耐滑り性試験は、静摩擦係数測定機(TRIBOGEAR TYPE:10;新東科学株式会社)を用いて、対物荷重200g、試験速度8mm/秒の条件で静摩擦係数を測定することで行った(参照規格:JIS P 8147)。静摩擦係数が0.35以上のものを「◎」、0.30以上0.35未満のものを「○」、0.25以上0.30未満のものを「△」、0.25未満のものを「×」と評価した。
(2)付着性試験
上述の塗料(No.1〜6)を塗布した各塗装ステンレス鋼板(実施例1〜4、比較例1〜2)について、付着性試験を実施した。具体的には、まず、各塗装ステンレス鋼板を沸騰水に1時間浸漬し、次いで大気中で24時間静置した。24時間後、JIS K 5600−5−6に準拠して付着性試験を行った。テープ剥離後、塗膜が剥離しているか否かを観察した。塗膜がまったく剥離しなかった場合(試験結果の分類が0)は「◎」、塗膜が少しでも剥離した場合(試験結果の分類が1〜5)は「×」と評価した。
(3)結果
耐滑り性試験および付着性試験の結果を表2に示す。
Figure 2011189687
表2から、実施例1〜4の塗装ステンレス鋼板は、耐滑り性および塗膜密着性(付着性)に優れていることがわかる。
本発明の塗装ステンレス鋼板は、耐滑り性および意匠性に優れているため、例えばキッチン台の収納スペースの底板や、ショーケースの底板などの耐滑り性および意匠性が要求される部材用のプレコート鋼板として有用である。

Claims (5)

  1. ステンレス鋼板と、前記ステンレス鋼板の表面に形成された、膜厚3〜30μmの熱硬化性樹脂塗膜とを有する塗装ステンレス鋼板であって、
    前記熱硬化性樹脂塗膜は、20℃の環境において、直径1mmの円柱形状の圧子で49mNの荷重を加えられたときの押し込み深さが2μm以上であり、
    前記熱硬化性樹脂塗膜は、沸騰水に1時間浸漬され、次いで大気中で24時間静置された後、JIS K 5600−5−6に準拠して行った付着性試験の試験結果の分類が0である、
    塗装ステンレス鋼板。
  2. 前記熱硬化性樹脂塗膜は、以下の方法により測定される塗膜の軟化温度が15℃以下である、請求項1に記載の塗装ステンレス鋼板。
    [塗膜の軟化温度の測定方法]
    液体窒素で冷却された前記熱硬化性樹脂塗膜に、直径1mmの円柱形状の圧子で98mNの荷重を加え;
    前記熱硬化性樹脂塗膜を昇温速度5℃/分で加熱して、押し込み深さ曲線を求め;
    前記押し込み深さ曲線において、前記圧子が押し込まれ始める温度よりも低温側の温度での接線Aと、押し込み速度が最大となる温度での接線Bとの交点を塗膜の軟化温度とする。
  3. 前記熱硬化性樹脂塗膜は、数平均分子量が2万〜4万の範囲内で、かつ重量平均分子量が5万以上のポリエステル100質量部と、ポリイソシアネート化合物20〜60質量部とを含む樹脂組成物の硬化物である、請求項1に記載の塗装ステンレス鋼板。
  4. 前記塗装ステンレス鋼板は、プレコート鋼板である、請求項1に記載の塗装ステンレス鋼板。
  5. ステンレス鋼板を準備するステップと、
    前記ステンレス鋼板の表面に、数平均分子量が2万〜4万の範囲内で、かつ重量平均分子量が5万以上のポリエステル100質量部と、ポリイソシアネート化合物20〜60質量部とを含む塗料を塗布するステップと、
    前記ステンレス鋼板の表面に塗布された塗料を焼き付けるステップと、
    を有する、塗装ステンレス鋼板の製造方法。
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