JP2011184266A - ヒ酸鉄粒子の処理方法 - Google Patents
ヒ酸鉄粒子の処理方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2011184266A JP2011184266A JP2010053530A JP2010053530A JP2011184266A JP 2011184266 A JP2011184266 A JP 2011184266A JP 2010053530 A JP2010053530 A JP 2010053530A JP 2010053530 A JP2010053530 A JP 2010053530A JP 2011184266 A JP2011184266 A JP 2011184266A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- acid
- iron arsenate
- solution
- particles
- arsenic
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Compounds Of Iron (AREA)
Abstract
【課題】本発明は、ヒ酸鉄からのヒ素の溶出を低減させ、ヒ酸鉄を安定化させる方法を提案することを目的とする。
【解決手段】ヒ酸鉄をアルカリ溶液でアルカリ洗浄処理し、ついで酸溶液で酸洗浄処理することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】ヒ酸鉄をアルカリ溶液でアルカリ洗浄処理し、ついで酸溶液で酸洗浄処理することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、ヒ酸鉄粒子を処理する方法に関し、特にスコロダイトのようなヒ酸鉄の粒子中のヒ素の溶出値を低減させる方法に関する。
従来、ヒ素を安定化する処理方法として、ヒ素の溶出値が低く安定で、かつ、ろ過性に優れたヒ酸鉄を作製する方法が提案されている。例えば特許文献1には、一定の条件で、ヒ素イオンと2価の鉄イオンを含む溶液に酸化剤を添加することで、ヒ素の溶出値が抑制された結晶性の良いスコロダイトを合成する方法が開示されている。固定化されたヒ素は、保管されるが、保管はより簡便であることが経済上望まれる。保管の際には、物質として安定であるほど簡便となるので、ヒ酸鉄の耐環境性の向上は重視される課題である。
このような技術的な課題に対して、幾つか改善されたプロセスが提案されている。例えば、特許文献2には、ヒ素含有固形物に鉄酸化化合物を添加する事でヒ素の溶出値を非常に簡便に抑制する方法が開示されている。この方法は、ヒ素の溶出はヒ酸鉄粒子からくるものであるが、粒子の集合体である粉体を1つのモノと捉え、粉体からのヒ素の溶出を抑制することで、ヒ素の溶出を抑制した点が特徴の1つである。(しかし、ヒ酸鉄粒子の1つ1つの溶出抑制を改善するものではない。)
なお、非特許文献1は、スコロダイトの溶解度について詳細に述べているが、このヒ素の溶出を抑制する方法に関しては特に言及されていない。したがって、あらゆる環境、とりわけ酸性環境下において、従来よりもヒ素の溶出量を低減して、ヒ酸鉄を更に安定化させる技術の開発が求められていた。
「Immobilization of Arsenic from Novel Synthesized Scorodite - Analysis on Solubility and Stability」, Tetsuo Fujita, Ryoichi Taguchi, Hisashi Kubo, EtsuroShibata and Takashi Nakamura, Materials Transactions, Vol. 50, No. 2 (2009), 321 - 331
本発明は、上記現状に鑑み開発されたもので、ヒ酸鉄粒子からのヒ素の溶出を低減させ、ヒ酸鉄を安定化させる方法を提案することを目的とする。ここで、粒子と粉体では、検討する手法が異なるため従来技術の適用は困難である。粒子では粒子単体のそれぞれの反応を検討するもので、粒子の集合体である粉体は、粉体を全体的に1つの物質と捉え得て反応を検討するため、これらの検討は全く異なるものであった。
さて、本発明者らは、ヒ酸鉄を安定化させるべく、単体のヒ酸鉄粒子の表面の状態を改質することに思い至り、その方法としてアルカリ溶液でヒ酸鉄粒子の表面の一部を溶解する方法が有効であることを見出した。この方法によれば、ヒ酸鉄粒子の表面に存在するヒ素成分を予め溶出させ、表面にヒ素が存在しない、またはヒ素量を低減した部分を形成しておくことで、ヒ酸鉄粒子の内部のヒ素成分がさらに溶出することを防止するものである。本発明者らは、さらに鋭意検討を行ったところ、ヒ酸鉄粒子にアルカリ溶液を接触させた後に、さらに酸溶液を接触させることが、所期した目的を達成する上で極めて有効であることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するもので、その要旨構成は以下の通りである。
(1)ヒ酸鉄粒子をアルカリ溶液でアルカリ処理し、次いで酸溶液で酸処理することを特徴とするヒ酸鉄粒子の処理方法。
(1)ヒ酸鉄粒子をアルカリ溶液でアルカリ処理し、次いで酸溶液で酸処理することを特徴とするヒ酸鉄粒子の処理方法。
(2)前記アルカリ溶液は、前記ヒ酸鉄粒子の表面のヒ素を溶解し、前記酸溶液は、前記ヒ酸鉄粒子の表面を中和する上記(1)に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
(3)前記アルカリ溶液は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの少なくとも1種を含むpH8〜12の溶液である上記(1)または(2)に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
(4)前記酸溶液は、硫酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、アルミン酸、珪酸、燐酸、フッ素酸、ブロム酸、ヨウ素酸および有機酸の少なくとも1種を含むpH1以上7未満の溶液である上記(1)、(2)または(3)に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
(5)前記ヒ酸鉄粒子がスコロダイト(FeAsO4・2H2O)である上記(1)〜(4)のいずれか一に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
(6)前記酸処理後のヒ酸鉄粒子の表面のFe/Asモル比率が、前記酸処理後のヒ酸鉄粒子全体のFe/Asモル比率よりも大きい上記(1)〜(5)のいずれか一に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
(7)前記アルカリ溶液および/または酸溶液は、緩衝溶液である上記(1)〜(6)のいずれか一に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
(8)前記アルカリ処理後、前記酸処理の前に、前記ヒ酸鉄粒子と前記アルカリ溶液とを固液分離する上記(1)〜(7)のいずれか一に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
本発明によれば、ヒ酸鉄粒子をアルカリ溶液でアルカリ処理し、次いで酸溶液で酸処理するという簡便な方法で、特許文献1と比較してヒ酸鉄粒子のヒ素溶出値を低減させることが可能である。また、本方法によれば、ヒ酸鉄粒子表面からのヒ素分子のロス(溶出)が抑制され、ヒ酸鉄粒子の形状を大きく変化させることなくヒ素溶出値を低減することができる。
本発明のヒ酸鉄粒子の処理方法の実施形態について説明する。
本発明のヒ酸鉄粒子の処理方法は、ヒ酸鉄粒子をアルカリ溶液でアルカリ処理し、次いで酸溶液で酸処理することを特徴とし、かかる工程を有することにより、処理後のヒ酸鉄粒子のヒ素の溶出値を大きく低減させることができるものである。
本発明のヒ酸鉄粒子の処理方法は、ヒ酸鉄粒子をアルカリ溶液でアルカリ処理し、次いで酸溶液で酸処理することを特徴とし、かかる工程を有することにより、処理後のヒ酸鉄粒子のヒ素の溶出値を大きく低減させることができるものである。
本発明において、ヒ素の溶出値を下げるメカニズムは、単体のヒ酸鉄粒子にアルカリ溶液を接触させることで、ヒ酸鉄粒子の表面の一部のヒ素成分を溶出させて、表面に鉄ヒ素モル比して当量以上のヒ素の少ない部分を形成し、次いでヒ酸鉄粒子に酸溶液を接触させることにより、ヒ酸鉄の表面に付着したアルカリ溶液を中性または酸性へと変化させるものである。ここで、「ヒ酸鉄粒子の表面」とは、単体のヒ酸鉄粒子の表面から所定の深さ位置(例えば表面から数nmの範囲)までを含むものとする。
本発明でいうヒ酸鉄は、例えばスコロダイト(FeAsO4・2H2O)、kankit(FeAsO4・1.5H2O),zykaite(Fe4(AsO4)3(SO4)(OH)・15H2O)、bukovskyite(Fe4(AsO4)3(SO4)(OH)・7H2O)、sarmiente(Fe4(AsO4)3(SO4)(OH)・7H2O)等が挙げられ、特には、粒径が10μm以上の大きな粒子の斜方晶形のスコロダイト結晶粒子に適応できる。大きい粒子ほど、保管に適してあり、形状や、含水率などの変化を抑制するのが望まれるからである。
アルカリ溶液は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの少なくとも1種を含むpH8〜12の溶液とするのが好ましい。アルカリ溶液は、ヒ酸鉄粒子からヒ素を浸出できるものであればよいが、これらの物質は比較的容易に入手可能である。
また、上記アルカリ溶液によるアルカリ処理において、ヒ酸鉄粒子からのヒ素の浸出は、含まれるヒ素量の1%未満にすることが好ましい。結晶性を維持するためである。さらに、アルカリ溶液は、pHが10以下の溶液を用いるのが好ましい。このpH領域でアルカリ処理を行うと、溶解されるヒ素量を1%未満に抑えることができ、必要以上にヒ素が浸出するおそれがなくなるからである。なお、このように溶解量を制御するにあたっては非特許文献1の記載のように、適宜に薬剤、条件を設定すればよい。
アルカリ溶液のpHが8未満だと、表面のヒ素が十分に浸出されず、溶出値を十分に低減することができない。一方、アルカリ溶液のpHが12を超える(例えばNaOH=0.5g/Lの水溶液)と、表面からのヒ素の溶解量を制御するのが難しくなる。なお、アルカリ溶液のpHは高いほど、ヒ素の浸出速度が上がるため、処理時間を短くすることができる。
アルカリ溶液のpHが8未満だと、表面のヒ素が十分に浸出されず、溶出値を十分に低減することができない。一方、アルカリ溶液のpHが12を超える(例えばNaOH=0.5g/Lの水溶液)と、表面からのヒ素の溶解量を制御するのが難しくなる。なお、アルカリ溶液のpHは高いほど、ヒ素の浸出速度が上がるため、処理時間を短くすることができる。
水酸化ナトリウムなどの溶液は強アルカリ性を示す溶液なので、例えばpH=9で溶液を制御するとした場合でも、処理用のアルカリ溶液中にこのような強アルカリ性溶液を添加した瞬間は局所的にpHが高い部分を作ってしまうため、ヒ酸鉄粒子は必要以上にヒ素を溶出させてしまう可能性がある。その影響を抑制する為に、緩衝溶液を利用する事は非常に有効である。また、ヒ素の浸出が進むにつれてアルカリ溶液のpHは低下する傾向があるが、このようなpH変動を抑える必要がある場合には、例えば、ホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ砂−炭酸ナトリウム緩衝液、炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウム緩衝液のようなpH7以上の緩衝溶液を用いても良い。緩衝作用によりpHが低下してヒ素の浸出が抑制されることを防ぐことができる。
なお、アルカリ処理として、アルカリ溶液は、ヒ酸鉄粒子に添加してもよいし、アルカリ溶液中にヒ酸鉄粒子を添加してもよく、これらアルカリ溶液とヒ酸鉄粒子とが接触するよう処理すればよい。また、「アルカリ溶液」とは、アルカリを水等の常温液体で溶解したものが好ましい。高温のアルカリ溶融液は、反応が激しすぎる場合もある。
しかしながら、ヒ酸鉄粒子の表面にこのアルカリ溶液が残存したままだと、ある程度アルカリが消費されるまで溶解の進行が止まらないためヒ素成分のさらなる溶出を十分に防止することができず、ヒ酸鉄の安定化としては不十分になる。
酸溶液は、硫酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、アルミン酸、珪酸、燐酸、フッ素酸、ブロム酸、ヨウ素酸および有機酸の少なくとも1種を含むpH1以上7未満の溶液であるのが好ましい。酸溶液は、アルカリの溶解力を解除するためでもあるので、pH、量は適宜設定すればよい。酸溶液であるからpH7未満のものとする。pHが2〜5程度の弱酸性領域の酸溶液を用いれば、急激な反応を回避でき、表面の状態を安定的に処理できる。
なお、酸溶液での酸処理では、付着する溶液を酸性にできればよいので、処理時間を長く取る必要はない。
溶液のpHが5以下であれば、ヒ酸鉄粒子の表面に残存するアルカリ溶液の付着液を、十分に中和または酸性にすることができる。
なお、酸溶液での酸処理では、付着する溶液を酸性にできればよいので、処理時間を長く取る必要はない。
溶液のpHが5以下であれば、ヒ酸鉄粒子の表面に残存するアルカリ溶液の付着液を、十分に中和または酸性にすることができる。
アルカリ溶液と同じ目的で、局所的なpHの低下を抑えたり、酸溶液のpHの変動を抑えたりする為に、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、リン酸二水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液等のpH7未満の緩衝溶液を用いても良い。
酸処理として、酸溶液は、アルカリ処理後のヒ酸鉄粒子に添加してもよいし、酸溶液の中にヒ酸鉄粒子を添加してもよく、これら酸溶液とヒ酸鉄粒子とが接触するよう処理すればよい。また、上述したアルカリ処理において、アルカリ溶液中にヒ酸鉄粒子を添加した場合には、ろ過等によりヒ酸鉄粒子をアルカリ溶液から分離してから酸処理を行ってもよいし、そのままアルカリ溶液を酸性にするまで酸溶液を添加してもよい。
このように本発明の処理は、例えばヒ酸鉄粒子を溶液に添加・混合し、固液分離を行う一般的な操作ですることができる。ヒ酸鉄が、溶液と必要な時間、接触する状態になる操作を行うことができればよい。例えば、添加・混合として、攪拌、しんとう、ねっかなど、固液分離として、濾過、遠心分離、デカンテーションなどを用いることができる。
各溶液で処理した後は、ヒ酸鉄を純水等で洗浄するのが好ましい。アルカリ溶液でアルカリ処理した後に、洗浄を行うと、酸溶液で酸処理する際に、中和されて消費する酸の量を少なくすることができる。また、酸溶液で処理した後、強酸溶液が付着したままであると、取り扱いに相応の保護具・設備が必要となるので、水で洗浄するのがより好ましい。
アルカリ溶液、酸溶液での処理は、いずれも室温、常圧下で可能であるが、アルカリ溶液での処理の場合、反応温度を上げるとヒ素の浸出速度が上がるので、反応時間を短くすることができる。
ヒ酸鉄と溶液の比率(固液比)は、ハンドリングが可能で、処理後のアルカリ溶液、酸溶液のpHが上述の範囲に収まり、かつ処理の効果が得られる範囲で高くすることができる。
このように、ヒ酸鉄粒子の表面には、鉄ヒ素モル比(Fe/As)が1以上の鉄リッチ領域が形成される。
表面のFe/Asモル比は、処理前後にて粉体全体での平均で20%以上に高い値となる。また、単一粒子内での表面と内部のFe/Asモル比は、5%以上に高い値となる。このように表面が改質されることによりヒ素の溶出が少ないヒ酸鉄粒子が得られる。粒子の形状も元の形状を維持する。例えばスコロダイト結晶粒子であれば、膨潤せずに含水率を低く維持し、斜方晶形も維持され、ろ過性、ハンドリング性を損なうことがない。
本発明のスコロダイト結晶粒子は、粒子表面のFe/Asモル比率が、粒子全体のFe/Asモル比率の1.05〜1.2倍であることを特徴とする。このモル比率が1.05倍以上であることにより、ヒ素の溶出が少なくなり、また、モル比率が1.2倍以下であることにより、粒子の形状も元の形状を維持することができるためである。
表面のFe/Asモル比は、処理前後にて粉体全体での平均で20%以上に高い値となる。また、単一粒子内での表面と内部のFe/Asモル比は、5%以上に高い値となる。このように表面が改質されることによりヒ素の溶出が少ないヒ酸鉄粒子が得られる。粒子の形状も元の形状を維持する。例えばスコロダイト結晶粒子であれば、膨潤せずに含水率を低く維持し、斜方晶形も維持され、ろ過性、ハンドリング性を損なうことがない。
本発明のスコロダイト結晶粒子は、粒子表面のFe/Asモル比率が、粒子全体のFe/Asモル比率の1.05〜1.2倍であることを特徴とする。このモル比率が1.05倍以上であることにより、ヒ素の溶出が少なくなり、また、モル比率が1.2倍以下であることにより、粒子の形状も元の形状を維持することができるためである。
〔ヒ酸鉄(ここではスコロダイト)の作成〕
出発原料として、ヒ素は、市販の試薬(和光純薬工業製)のヒ素溶液でAs=500g/L(5価)の溶液を純水で希釈して使用した。鉄塩は、試薬(和光純薬工業製)の硫酸第1鉄・7水和物FeSO4・7H2Oを用いた。
出発原料として、ヒ素は、市販の試薬(和光純薬工業製)のヒ素溶液でAs=500g/L(5価)の溶液を純水で希釈して使用した。鉄塩は、試薬(和光純薬工業製)の硫酸第1鉄・7水和物FeSO4・7H2Oを用いた。
これらの物質と純水を混合して、ヒ素濃度50g/L、鉄濃度55.91g/Lのヒ素・鉄含有液4Lを調製した。この液を容量5Lのガラス製ビーカーに移し、2段タービン撹拌羽根・邪魔板4枚をセットし、回転数800rpmで強撹拌しながら95℃になるよう加熱した。この反応前液を95℃に保持したまま、撹拌しながら純度99%の酸素ガスを容器内に吹き込んだ。酸素ガス流量は4L/minとした。酸素ガス吹き込み開始から7時間、撹拌状態、温度、ガス流量を保持した。
反応が終わった液(溶液・析出物の混合スラリー)の温度が70℃に低下したのち、ろ過(固液分離)した。ろ過に当たって加圧ガスとして空気を使用し、加圧力(ゲージ圧)は0.4MPaにした。
ろ過した固形分はパルプ濃度100g/Lにて純水で1時間リパルプ洗浄したのち再びろ過した。リパルプ洗浄時の撹拌強度は2段タービンディスク、500rpm、邪魔板4枚にして行なった。ろ過温度は30℃とした。洗浄とろ過の終わった固形分を60℃で18時間乾燥しヒ酸鉄を作製した。
〔評価方法〕
溶出試験は環境庁告示13号に則った方法で行った。すなわち、固形分とpH=5の水を1対10の割合で混合し、しんとう機で6時間しんとうさせた後、固液分離して、ろ過した液を組成分析した。
溶出試験は環境庁告示13号に則った方法で行った。すなわち、固形分とpH=5の水を1対10の割合で混合し、しんとう機で6時間しんとうさせた後、固液分離して、ろ過した液を組成分析した。
粒度分布計による粒径の測定は、堀場製作所製のLA−500を用いた。BET測定は、ユアサアイオニクス製モノソーブを用いてBE1点法による方法で行なった。X線回折パターンの測定は、リガクRINT−2500を用いて、Cu−Kα、管電圧40kV、管電流300mA、走査速度0.01°/sec、走査角度2θ=5°から85°、シンチレーションカウンター使用の条件で行った。
ヒ酸鉄の表面でのFe/Asモル比率は、ESCA(X線光電子分光分析:アルバック・ファイ株式会社製、PHI 5800 ESCA System)を用いて求めた。測定条件は、X線源としてモノクロAl陽極線源を用い、150Wとし、分析エリア800μmφ、取り出し角45°とした。本測定の定量値は、スペクトルピークからFe原子とAs原子の存在比を算出したものであり、この条件より、粒子表面から数nm深さまでの情報が得られる。
〔実施例1〕
作成したヒ酸鉄の乾燥品50gとpH9.18のアルカリ溶液(ホウ酸塩pH緩衝液、和光純薬工業製)1Lを2Lビーカーに加え(固液比1/20)、2段タービン撹拌羽根・邪魔板4枚をセットし、回転数400rpmで室温にて1週間、撹拌した。
作成したヒ酸鉄の乾燥品50gとpH9.18のアルカリ溶液(ホウ酸塩pH緩衝液、和光純薬工業製)1Lを2Lビーカーに加え(固液比1/20)、2段タービン撹拌羽根・邪魔板4枚をセットし、回転数400rpmで室温にて1週間、撹拌した。
反応が終わった液(溶液と析出物の混合スラリー)は、加圧ろ過にて固液分離した。ろ過に当たっては、0.5μmのPTFE製メンブレンフィルターを用いた。加圧ガスは空気を使用し、加圧力(ゲージ圧)は0.4MPaにした。ろ過した固形分はパルプ濃度100g/Lにて純水を用いて1時間リパルプ洗浄したのち再びろ過した。
洗浄した固形分は、pH2.88の酸溶液(0.1mol/Lの酢酸溶液、緩衝液)1Lを2Lビーカーに加え(固液比1/20)、2段タービン撹拌羽根・邪魔板4枚をセットし、回転数400rpmで室温で1時間、撹拌し、ろ過した。ろ過した固形分は同様の方法で洗浄、ろ過を行った。これら一連の操作の終わった固形分を60℃で24時間乾燥した。
得られた固形分は水分値が10%と低くヒ素含有率は29質量%であった。平均粒子径は14μmで、X線回折パターンから、この物質は結晶質のスコロダイトであることが確認された。処理前のスコロダイトと大きな違いは見られなかった。バルク(粒子全体)のFe/Asモル比率は1.10であったが、ESCAの測定結果より、粒子の表面のFe/Asモル比率は1.18であり、表面のFe/Asモル比率の方が高かった。溶出試験の結果、ヒ素の溶出量は0.01mg/Lであった。
〔実施例2〕
実施例2は、pH2.88の酸溶液をpH4.93の酸溶液(0.1mol/Lの酢酸と0.1mol/Lの水酸化ナトリウム混合溶液、緩衝液)に置き換えた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
実施例2は、pH2.88の酸溶液をpH4.93の酸溶液(0.1mol/Lの酢酸と0.1mol/Lの水酸化ナトリウム混合溶液、緩衝液)に置き換えた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
得られた固形分は水分値が13%と低くヒ素含有率は29質量%であった。平均粒子径は15μmで、X線回折パターンから、この物質は結晶質のスコロダイトであることが確認された。バルクのFe/Asモル比率は1.11であったが、ESCAの測定結果より、粒子の表面のFe/Asモル比率は1.37であり、表面のFe/Asモル比率の方が高かった。溶出試験の結果、ヒ素の溶出量は0.02mg/Lであった。
〔比較例1〕
比較例1は、〔スコロダイトの作成〕で作成した固形物をアルカリ溶液と酸溶液で処理せず、そのまま〔評価方法〕で記載の方法に従い評価した。得られた固形分は水分値が10%と低くヒ素含有率は29質量%であった。平均粒子径は15μmで、X線回折パターンから、この物質は結晶質のスコロダイトであることが確認された。バルクのFe/Asモル比率は1.11であったが、ESCAの測定結果より、粒子の表面のFe/Asモル比率は0.98であり、表面のFe/Asモル比率の方が低い。溶出試験の結果、ヒ素の溶出量は0.03mg/Lであった。実施例1および2、比較例1の結果を表1に示す。
比較例1は、〔スコロダイトの作成〕で作成した固形物をアルカリ溶液と酸溶液で処理せず、そのまま〔評価方法〕で記載の方法に従い評価した。得られた固形分は水分値が10%と低くヒ素含有率は29質量%であった。平均粒子径は15μmで、X線回折パターンから、この物質は結晶質のスコロダイトであることが確認された。バルクのFe/Asモル比率は1.11であったが、ESCAの測定結果より、粒子の表面のFe/Asモル比率は0.98であり、表面のFe/Asモル比率の方が低い。溶出試験の結果、ヒ素の溶出量は0.03mg/Lであった。実施例1および2、比較例1の結果を表1に示す。
BET値がやや上昇していることから、表面の凹凸などが増し、表面がわずかではあるが変化したことがわかる。すなちち、表面の状態が改質されている。
表1から分かるように、本発明に従う実施例1および2は、比較例1と比べてヒ素の溶出値を低減することができる。また、本発明に従う実施例1および2で得られた固体は、粒子表面のFe/Asモル比率がバルクのFe/Asモル比率よりも高くなっており、鉄リッチ層が形成されていた。
また、図1は、実施例1にかかるヒ酸鉄粒子のSEM写真であり、図2は、実施例2にかかるヒ酸鉄粒子のSEM写真であるが、図3に示す比較例1にかかるヒ酸鉄粒子のSEM写真と比較して、ヒ酸鉄粒子の形状(外延)も変化がなく、斜方晶を維持できていることが分かった。
本発明によればヒ酸鉄粒子をアルカリ溶液でアルカリ処理し、次いで酸溶液で酸処理するという簡便な方法で、特許文献1と比較してヒ酸鉄のヒ素溶出値を低減させることが可能である。また、本方法によれば、ヒ酸鉄粒子表面からのヒ素分のロス(溶出)が抑制され、ヒ酸鉄粒子の形状を大きく変化させることなくヒ素溶出値を低減することができる。
Claims (8)
- ヒ酸鉄粒子をアルカリ溶液でアルカリ処理し、次いで酸溶液で酸処理することを特徴とするヒ酸鉄粒子の処理方法。
- 前記アルカリ溶液は、前記ヒ酸鉄粒子の表面のヒ素を溶解し、前記酸溶液は、前記ヒ酸鉄粒子の表面を中和する請求項1に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
- 前記アルカリ溶液は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの少なくとも1種を含むpH8〜12の溶液である請求項1または2に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
- 前記酸溶液は、硫酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、アルミン酸、珪酸、燐酸、フッ素酸、ブロム酸、ヨウ素酸および有機酸の少なくとも1種を含むpH1以上7未満の溶液である請求項1、2または3に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
- 前記ヒ酸鉄粒子がスコロダイト(FeAsO4・2H2O)である請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
- 前記酸処理後のヒ酸鉄粒子の表面のFe/Asモル比率が、前記酸処理後のヒ酸鉄粒子全体のFe/Asモル比率よりも大きい請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
- 前記アルカリ溶液および/または酸溶液は、緩衝溶液である請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
- 前記アルカリ処理後、前記酸処理の前に、前記ヒ酸鉄粒子と前記アルカリ溶液とを固液分離する請求項1〜7のいずれか一項に記載のヒ酸鉄粒子の処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010053530A JP2011184266A (ja) | 2010-03-10 | 2010-03-10 | ヒ酸鉄粒子の処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010053530A JP2011184266A (ja) | 2010-03-10 | 2010-03-10 | ヒ酸鉄粒子の処理方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011184266A true JP2011184266A (ja) | 2011-09-22 |
Family
ID=44790998
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010053530A Pending JP2011184266A (ja) | 2010-03-10 | 2010-03-10 | ヒ酸鉄粒子の処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2011184266A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104525555A (zh) * | 2014-12-29 | 2015-04-22 | 中国电建集团中南勘测设计研究院有限公司 | 一种用于砷渣的稳定化处理方法及设备 |
CN106282534A (zh) * | 2016-08-29 | 2017-01-04 | 长沙华时捷环保科技发展股份有限公司 | 砷酸铁渣的稳定固化方法 |
CN106673069A (zh) * | 2016-12-20 | 2017-05-17 | 中南大学 | 一种黑色砷酸铁晶体及其合成方法 |
CN106830091A (zh) * | 2016-12-21 | 2017-06-13 | 中南大学 | 一种从含砷溶液中沉淀得到高浸出稳定性臭葱石的方法 |
JP2020525121A (ja) * | 2017-06-29 | 2020-08-27 | ザ ロイヤル インスティチューション フォー ジ アドヴァンスメント オブ ラーニング/マギル ユニヴァーシティ | 有害物質の安定化 |
Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008254944A (ja) * | 2007-04-02 | 2008-10-23 | Dowa Metals & Mining Co Ltd | 多孔質鉄酸化物およびその製造方法並びに被処理水の処理方法 |
WO2009011320A1 (ja) * | 2007-07-13 | 2009-01-22 | Dowa Metals & Mining Co., Ltd. | 砒素を含むもののアルカリ処理方法 |
JP2009102192A (ja) * | 2007-10-23 | 2009-05-14 | Nikko Kinzoku Kk | スコロダイトの製造方法及び洗浄方法 |
JP2010285340A (ja) * | 2009-05-13 | 2010-12-24 | Dowa Metals & Mining Co Ltd | スコロダイト型鉄砒素化合物粒子および製造方法並びに砒素含有固形物 |
JP2011162712A (ja) * | 2010-02-12 | 2011-08-25 | Ohbayashi Corp | 砒素汚染土の処理材、及び、処理方法 |
-
2010
- 2010-03-10 JP JP2010053530A patent/JP2011184266A/ja active Pending
Patent Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008254944A (ja) * | 2007-04-02 | 2008-10-23 | Dowa Metals & Mining Co Ltd | 多孔質鉄酸化物およびその製造方法並びに被処理水の処理方法 |
WO2009011320A1 (ja) * | 2007-07-13 | 2009-01-22 | Dowa Metals & Mining Co., Ltd. | 砒素を含むもののアルカリ処理方法 |
JP2009102192A (ja) * | 2007-10-23 | 2009-05-14 | Nikko Kinzoku Kk | スコロダイトの製造方法及び洗浄方法 |
JP2010285340A (ja) * | 2009-05-13 | 2010-12-24 | Dowa Metals & Mining Co Ltd | スコロダイト型鉄砒素化合物粒子および製造方法並びに砒素含有固形物 |
JP2011162712A (ja) * | 2010-02-12 | 2011-08-25 | Ohbayashi Corp | 砒素汚染土の処理材、及び、処理方法 |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104525555A (zh) * | 2014-12-29 | 2015-04-22 | 中国电建集团中南勘测设计研究院有限公司 | 一种用于砷渣的稳定化处理方法及设备 |
CN106282534A (zh) * | 2016-08-29 | 2017-01-04 | 长沙华时捷环保科技发展股份有限公司 | 砷酸铁渣的稳定固化方法 |
CN106673069A (zh) * | 2016-12-20 | 2017-05-17 | 中南大学 | 一种黑色砷酸铁晶体及其合成方法 |
CN106673069B (zh) * | 2016-12-20 | 2017-12-19 | 中南大学 | 一种黑色砷酸铁晶体及其合成方法 |
CN106830091A (zh) * | 2016-12-21 | 2017-06-13 | 中南大学 | 一种从含砷溶液中沉淀得到高浸出稳定性臭葱石的方法 |
JP2020525121A (ja) * | 2017-06-29 | 2020-08-27 | ザ ロイヤル インスティチューション フォー ジ アドヴァンスメント オブ ラーニング/マギル ユニヴァーシティ | 有害物質の安定化 |
JP7265267B2 (ja) | 2017-06-29 | 2023-04-26 | ザ ロイヤル インスティチューション フォー ジ アドヴァンスメント オブ ラーニング/マギル ユニヴァーシティ | 有害物質の安定化 |
JP7265267B6 (ja) | 2017-06-29 | 2023-05-19 | ザ ロイヤル インスティチューション フォー ジ アドヴァンスメント オブ ラーニング/マギル ユニヴァーシティ | 有害物質の安定化 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4185541B2 (ja) | 結晶性の良い鉄砒素化合物の製法 | |
JP4960686B2 (ja) | 砒素含有液の処理方法 | |
JP2011184266A (ja) | ヒ酸鉄粒子の処理方法 | |
JP2010285340A (ja) | スコロダイト型鉄砒素化合物粒子および製造方法並びに砒素含有固形物 | |
JP2021091606A (ja) | 金属酸化物粒子及びその生成方法 | |
WO2005038948A2 (en) | Nanosized silver oxide powder | |
JP6286155B2 (ja) | 5価の砒素を含有する溶液からの結晶性砒酸鉄の製造方法 | |
JP4971933B2 (ja) | 鉄砒素化合物の製造方法 | |
WO2008056744A1 (fr) | Procédé de fabrication d'un agent de revêtement présentant une activité photocatalytique et agent de revêtement obtenu par ce procédé | |
JP2008150658A (ja) | 砒素液の製法 | |
KR20150009701A (ko) | 나트륨이 제거된 패각을 이용한 침강성 탄산칼슘의 제조방법 | |
JP2008143741A (ja) | 鉄砒素化合物の製法 | |
JP5070525B2 (ja) | タリウム含有鉄・砒素化合物およびその製法並びに砒素・タリウム含有水溶液の処理方法 | |
JP2011177651A (ja) | ヒ素含有溶液の処理方法 | |
JP2009096681A (ja) | 酸化ジルコニウムナノ粒子の製造方法、酸化ジルコニウムナノ粒子および酸化ジルコニウムナノ粒子含有組成物 | |
JP6446229B2 (ja) | 5価の砒素を含有する溶液からの結晶性砒酸鉄の製造方法 | |
KR100840218B1 (ko) | NaCl이나 소금으로 코팅된 산화물을 볼밀링하여 13.9 ㎡/g 이상의 비표면적을 갖는 산화물의 제조방법 및 그 사용방법 | |
JPS60127240A (ja) | 酸化ジルコニウム微粉の製造方法 | |
JP2008174399A (ja) | 酸化インジウムを主成分とする粉末の製造方法 | |
JP2011195367A (ja) | ヒ酸鉄化合物の製造方法 | |
JP4939021B2 (ja) | 被覆水酸化マグネシウム、その製造方法及びそれを含む電子部品材料用樹脂組成物 | |
CN114836830B (zh) | 高长径比的α-半水硫酸钙晶须及其制备方法和应用 | |
CN115992323B (zh) | 一种界面修饰制备高强高塑石墨烯钛复合材料的制备方法 | |
JP5662036B2 (ja) | ヒ素を含有する溶液からの結晶性ヒ酸鉄の生成方法 | |
Kuo et al. | Development of biomineralization-inspired hybrids based on β-chitin and zinc hydroxide carbonate and their conversion into zinc oxide thin films |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20130110 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20140624 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20150106 |