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JP2011176261A - 太陽電池封止シート及び太陽電池モジュール - Google Patents

太陽電池封止シート及び太陽電池モジュール Download PDF

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JP2011176261A JP2010141014A JP2010141014A JP2011176261A JP 2011176261 A JP2011176261 A JP 2011176261A JP 2010141014 A JP2010141014 A JP 2010141014A JP 2010141014 A JP2010141014 A JP 2010141014A JP 2011176261 A JP2011176261 A JP 2011176261A
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政彦 川島
Masaaki Kanao
雅彰 金尾
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Abstract

【課題】太陽電池モジュールとした際のエネルギー効率を向上することができ、水蒸気バリア性、発電セル等の金属等の耐腐食性に優れ、さらには生産性に優れた太陽電池封止シート、及びそれを用いた太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む樹脂層と、着色剤と、を含有し、かつ有機過酸化物を実質的に含有しない、太陽電池封止シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池封止シート及びそれを用いた太陽電池モジュールに関する。
近年、世界的な温暖化現象により環境に対する意識が高まり、炭酸ガス等の温暖化ガスを発生しない新しいエネルギーシステムが関心を集めている。太陽電池発電によるエネルギーは炭酸ガス等の温暖化の原因となるガスを排出しないため、クリーンなエネルギーとして研究開発が行われており、産業用エネルギーとして注目されている。太陽電池の代表例としては、単結晶、多結晶のシリコンセル(結晶系シリコンセル)を用いたものや、アモルファスシリコン、化合物半導体を用いたもの(薄膜系セル)等が挙げられる。太陽電池は、長期間、屋外で風雨に曝されて使用されることが多く、発電部分をガラス板やバックシート等を貼り合わせてモジュール化し、外部からの水分の侵入を防止し、発電部分の保護、漏電防止等を図っていた。発電部分を保護する部材には、発電に必要な光透過を確保するために、光入射側に透明ガラスや透明樹脂を使用している。反対側の部材には、バックシートといわれるアルミ箔、フッ化ポリビニル樹脂(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やそのシリカ等のバリアーコート加工の積層シートを使用している。そして発電素子を樹脂封止シートで挟み込み、ガラスやバックシートでさらに外部を被覆して熱処理を施して樹脂封止シートを溶融し、全体を一体化封止(モジュール化)している。
上述した樹脂封止シートは、次の(1)〜(3)が特性として要求される。すなわち、(1)ガラス、発電素子、バックシートとの良好な接着性、(2)高温状態での樹脂封止シートの溶融に起因する発電素子の流動防止性(耐クリープ性)、(3)太陽光の入射を阻害しない透明性である。このような観点から、樹脂封止シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」とも略記される。)に、紫外線劣化対策として紫外線吸収剤、ガラスとの接着性向上のためカップリング剤、架橋のため有機過酸化物等の添加剤を配合し、カレンダー成形やTダイキャストにより製膜されている。長期に亘って太陽光に曝されることに鑑み、樹脂の劣化による光学特性の低下を防ぐために耐光剤等の各種添加剤が配合されている。これにより、透明性を長期に亘り維持している。
上述した樹脂封止シートにより太陽電池をモジュール化する方法として、ガラス/樹脂封止シート/結晶系シリコンセル等の発電素子/樹脂封止シート/バックシートの順で重ね合わせ、専用の真空ラミネーターを用いて、樹脂の溶融温度以上(例えば、EVAの場合は150℃程度の温度条件)で予熱する工程やプレス工程を行うことで、溶融した樹脂封止シートでモジュール化する方法が挙げられる。この方法では、先ず、予熱工程において樹脂封止シートの樹脂が溶融し、続くプレス工程において溶融樹脂が自らと接している部材と密着して真空ラミネートされる。このラミネートにおいて、樹脂封止シートに含有されている架橋剤が熱分解し、EVAの架橋が促進される。そして、樹脂封止シートに含有しているカップリング剤が接触している部材と共有結合する。これにより、ガラス、発電素子、バックシートに対して優れた接着性を発現できる。
特許文献1には、表面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に、接着フィルムを介して太陽電池用セルを封止してなる太陽電池であって、接着フィルムが着色剤を含むエチレン酢酸ビニル共重合体組成物を製膜してなる着色フィルムである、太陽電池が開示されている。
特開2003−258283号公報
しかしながら、従来のようにEVA等を用いた太陽電池封止シートは、水蒸気透過度が大きいため水分に弱いという問題がある。特に、太陽電池モジュールを多湿環境で用いる場合には、水蒸気が太陽電池モジュールの端部等から流入して発電素子等の発電部分に付着してしまうため、機能不良となる。
また、太陽電池封止シートの耐熱性を改善する目的で有機過酸化物を含有させる場合、シートを加熱した際の有機過酸化物の分解(開裂)を防止するために、シート製膜時やエンボス加工時におけるシート温度を十分に上げることができず、シートの生産性が低下するという問題がある。そして、長時間の熱キュア工程を行う必要がある。さらに、有機過酸化物の熱分解によりガスが発生し、その結果、真空ポンプの腐食ダメージ及びオイルの汚れが生じるという問題点がある。
また、着色したEVAフィルムを用いることで、光反射率の向上効果を高めて発電効率を向上させようとしても、水蒸気透過性が高いため水分の流入があり、セルの発電率の低下や機能障害を招くという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、太陽電池モジュールとした際のエネルギー効率を向上させることができ、水蒸気バリア性、発電セル等の金属等の耐腐食性に優れ、さらには生産性に優れた太陽電池封止シート、及びそれを用いた太陽電池モジュールを提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、着色剤と、を含む樹脂層を少なくとも有し、実質的に有機過酸化物を含有しない、太陽電池封止シートとすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、
着色剤と、
を含む樹脂層を少なくとも有し、かつ
有機過酸化物を実質的に含有しない、太陽電池封止シート。
〔2〕
前記樹脂層は、少なくともポリエチレン系樹脂を含有する、〔1〕に記載の太陽電池封止シート。
〔3〕
前記樹脂層は、密度0.92g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を含有する〔1〕又は〔2〕に記載の太陽電池封止シート。
〔4〕
前記着色剤は、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂をキャリア樹脂とするマスターバッチにより配合されている、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の太陽電池封止シート。
〔5〕
前記キャリア樹脂の160℃におけるメルトテンション(MT)が50g以下である、〔4〕に記載の太陽電池封止シート。
〔6〕
前記樹脂層は、電離性放射線照射により架橋処理が施された、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の太陽電池封止シート。
〔7〕
前記樹脂層の表面の少なくとも一部にエンボス加工が施された、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の太陽電池封止シート。
〔8〕
前記樹脂層に形成されたエンボス形状の深さが30μm以上である、〔7〕に記載の太陽電池封止シート。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の太陽電池封止シートを含む太陽電池モジュール。
本発明によれば、太陽電池モジュールとした際のエネルギー効率を向上することができ水蒸気バリア性、発電セル等の金属等の耐腐食性に優れ、さらには生産性に優れた太陽電池封止シート、及びそれを用いた太陽電池モジュールを提供できる。
本実施の形態における太陽電池封止シートの製造に用いる装置の一例を示す概略図である。 本実施の形態の太陽電池封止シートのエンボス形状の一例を示す概略図である。 図2のA−A’線に沿う断面図である。 本実施の形態の太陽電池封止シートのエンボス形状の別の一例を示す概略図である。 図4のB−B’線に沿う断面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施の形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施の形態の太陽電池封止シートは、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、着色剤と、を含む樹脂層を少なくとも有し、実質的に有機過酸化物を含有しない、太陽電池封止シートである。
樹脂層は、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取り扱い性を確保する観点から、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する。
従来から用いられているEVA等を用いた樹脂封止シートは、末端基としてカルボン酸基を有する樹脂を用いるため、水蒸気透過度が大きく水蒸気が流入し易く、水分に弱いという問題等がある。EVA等ではその側鎖部分が分解して脱離しやすい。また、側鎖部分は酸性基となりやすく、あるいは極性基となりやすいため、水分を保持しやすくなるという傾向がある。その結果、EVAを用いて太陽電池封止シートとした場合、耐電圧性や絶縁性の低下を引き起こしやすくなる。一方、本実施の形態の太陽電池封止シートは、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を用いるため、極性を抑えることができ、優れた絶縁性も得ることができる。そして、水蒸気バリア性に優れ、高温高湿下であっても被封止物(発電セル等)を確実に封止することができる。特に、架橋処理を施した場合、これらの利点はより顕著になる。かかる観点から、上記した樹脂のなかでもポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂を用いることで、本実施の形態の効果がより顕著となる。
エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族カルボン酸エステルから選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。
上記共重合は、高圧法、溶融法等の公知の方法により行うことができ、重合反応の触媒としてマルチサイト触媒やシングルサイト触媒等を用いることができる。また、上記共重合体において、各モノマーの結合形状は特に限定されず、ランダム結合、ブロック結合等の結合形状を有するポリマーを使用することができる。なお、光学特性の観点から、上記共重合体としては、高圧法を用いてランダム結合により重合した共重合体が好ましい。
上記脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸とメタノール、エタノール等の炭素数1〜8のアルコールとのエステル結合が好適に使用され、これらとエチレンとの共重合が挙げられる。これらの共重合体は、3成分以上のモノマーを共重合してなる多元共重合体であってもよい。
グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体とは、反応サイトとしてエポキシ基を有するグリシジルメタクリレートとのエチレンコポリマー及びエチレンターポリマーを示し、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。上記化合物は、グリシジルメタクリレートの反応性が高いため安定した接着性を発揮でき、また、ガラス転移温度が低く柔軟性が良好となる傾向にある。
ポリオレフィン系樹脂としては、腐食性、水蒸気バリア性の観点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリブテン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、コストの観点から、ポリエチレン系樹脂がより好ましい。ここでポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体又はエチレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。ポリブテン系樹脂とは、ブテンの単独重合体又はブテンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。
樹脂層は、密度0.92g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を含有することが好ましい。密度0.92g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を用いることで、透明性が大幅に向上できる。上記密度の下限値は、ポリエチレン系樹脂の製造性の観点から、0.86g/cm3以上であることが好ましく、0.87g/cm3以上であることがより好ましい。高密度のポリエチレン系樹脂を併用する場合には、低密度のポリエチレン系樹脂を、例えば30質量%程度の割合で、添加することにより、透明性を一層改善することもできる。
さらに、密度0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。線状低密度ポリエチレンを用いることで、極性をさらに抑えることができ、優れた絶縁性も得ることができる。そして、水蒸気バリア性に優れ、高温高湿下であっても被封止物を確実に封止できる。特に、架橋処理を施した場合、これらの利点はより顕著になる。
線状低密度ポリエチレンは、太陽電池封止シートの加工性の観点から、MFR(190℃、2.16kg)が0.5〜30g/10分であることが好ましく、0.8〜30g/10分であることがより好ましく、1.0〜25g/10分であることが更に好ましい。
線状低密度ポリエチレンは、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができるが、低分子成分の含有量を抑えることができ、低密度の樹脂を効率よく合成できる観点等から、シングルサイト系触媒を用いて重合することが好ましい。シングルサイト系触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、シクロペンタセン環を有する金属錯体等が挙げられる。これらは、市販品を用いることもできる。
樹脂層は、有機過酸化物を実質的に含有しない。そのため、シート製造時における温度の制約がないため、シートの製膜時や、後述するエンボス加工時等におけるシート温度を高温にすることができる。その結果、製膜速度やエンボス加工速度等を向上させることができ、生産性に優れる。ここで、有機過酸化物を実質的に含有しないとは、本実施の形態の効果を阻害しない範囲の含有量であり、具体的には、樹脂層中における含有量が0.5質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%、更に好ましくは0質量%である。有機過酸化物の含有量が多い場合、有機過酸化物から発生するガスによりバックシートが膨れる場合がある。このような有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。
太陽電池封止シートの樹脂層は架橋処理が施されていることが好ましい。これにより、長時間の熱キュア工程を別途行うことなく、良好な耐熱性をシートに付与できる。さらに、架橋処理は、電離性放射線を照射することにより施されることが好ましい。本実施の形態では、架橋処理のために有機過酸化物を用いる必要がないため、有機過酸化物の熱分解等によるガス発生が少なく、真空ポンプ等の腐食ダメージやオイルの汚れ等も抑制することができる。本実施の形態において「架橋処理」とは、樹脂を構成する高分子を物理的、又は化学的に架橋した結果、ゲル分率が好ましくは3質量%以上となった状態の樹脂層をいう。
本実施の形態における太陽電池封止シートは、電離性放射線の照射強度(加速電圧)と照射密度によって、シートの厚さ方向のゲル分率が適度に制御されている。照射強度(加速電圧)はシートの厚さ方向にどれだけ深く電子を届かせるかを示すものであり、照射密度は単位面積当たりにどれだけ多くの電子を照射するかを示すものである。電離性放射線を照射して架橋させる方法としては、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射して架橋させる方法が挙げられる。電離性放射線の加速電圧は、架橋処理を施す樹脂層に応じて適宜調節が可能であり、電離性放射線の照射線量は使用される樹脂によって異なるが、一般的に3kGy未満の場合、太陽電池封止シート全体を均一に架橋することが困難となる傾向にある。
ゲル分率は、好ましくは3〜70質量%であり、より好ましくは3〜60質量%、更に好ましくは3〜50質量%である。ゲル分率を上記範囲とすることにより、太陽電池セルや配線等の被封止物の段差を隙間なく封止する性能(隙間埋め性)をより向上することができ、かつ、耐クリープ性を発揮することができる。なお、太陽電池封止シートが後述する単層構造又は多層構造のいずれの構造を有する場合であっても、上記ゲル分率は、太陽電池封止シート全体の平均のゲル分率(全層ゲル分率)の値を意味する。
太陽電池封止シートのゲル分率は、沸騰p−キシレン中で太陽電池封止シートを12時間抽出し、不溶解部分の割合から下記式により求めることができる。

ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
本実施の形態における太陽電池封止シートを構成する樹脂層は、電離性放射線崩壊型樹脂をさらに含んでいてもよい。ここで、電離性放射線崩壊型樹脂とは、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射することにより崩壊する性質を有する樹脂をいう。
電離性放射線崩壊型樹脂としては、例えば、主鎖のC−C結合のα位に官能基が結合した崩壊型樹脂が挙げられる。上記官能基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいカルボキシル基、置換されていてもよいアミド基、及び置換されていてもよいアリール基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
ここで、上記アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、及びアリール基は、置換可能な位置に、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)等が挙げられる。
電離性放射線崩壊型樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリα−メチルスチレン、テトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルグリシジルメタクリレート、及びセルロースからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
太陽電池封止シートを構成する樹脂中には、架橋性を有する部位と崩壊性を有する部位の両方を有する電離性放射線架橋崩壊型樹脂が含まれていてもよい。そのような樹脂としては、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、ポリプロピレンを含むエチレン共重合体、メチルメタクリレートを含むエチレン共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、イソプレンゴムを含むエチレン共重合体、ブタジエンゴムを含むエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴムを含むエチレン共重合体等が挙げられる。
グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体とは、反応サイトとしてエポキシ基を有するグリシジルメタクリレートとのエチレンコポリマー及びエチレンターポリマーを示し、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。上記化合物は、グリシジルメタクリレートの反応性が高いため安定した接着性を発揮でき、ガラス転移温度が低く柔軟性が良好となる傾向にある。
本実施の形態の太陽電池封止シートは、単層構造、多層構造のいずれの構造を有していてもよい。以下、各構造について説明する。ここで、太陽電池封止シートが多層構造である場合、太陽電池封止シートの表面の層を「表面層」といい、それ以外を「内層」(3層以上の場合)という。即ち、太陽電池封止シートの両表面を形成する層が「表面層」である。例えば、2層からなる多層構造の場合は、2つの表面層から構成される構造となるが、一方の表面層と、他方の表面層が同じ成分であってもよいし、異なる成分であってもよい。
〔単層構造〕
太陽電池封止シートが単層構造を有する場合、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、着色剤と、を含む樹脂層である。
太陽電池封止シートを構成する樹脂層に、接着性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物が含有されている場合は、そのケン化度及び含有量は適宜調整でき、これにより被封止物との接着性を制御できる。接着性と光学特性の観点から、樹脂層中のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物の含有量は、3〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることが更に好ましい。
〔多層構造〕
太陽電池封止シートの樹脂層が多層構造である場合には、いずれかの層がエチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、着色剤とを含む樹脂層であればよい。
接着性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体ケン化物の少なくともいずれか1種を含有する樹脂層が、被封止物と接触する層(表面層の少なくとも1層)として形成されていることが好ましい。
表面層としては、上述したケン化物のみからなる層でもよいが、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、ケン化物と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂との混合樹脂からなる層であることが好ましい。表面層中における接着性樹脂の含有量は、特に限定されないが、接着性の観点から、5〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、5〜35質量%が更に好ましい。
エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸から選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体(以下、「EAA」とも略記される。)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下、「EMAA」とも略記される。)等が挙げられる。
エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。ここで、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メタノール、エタノール等の炭素数1〜8のアルコールとのエステルが好適に使用される。
これらの共重合体は、3成分以上のモノマーを共重合してなる多元共重合体であってもよい。上記多元共重合体としては、例えば、エチレン、脂肪族不飽和カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選択される少なくとも3種類のモノマーを共重合してなる共重合体が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、上記したポリオレフィン系樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂等が挙げられる。
太陽電池封止シートが多層構造を有する場合、上記電離性放射線崩壊型樹脂は、被封止物と接触する層(表面層の少なくとも1層)に含まれていることが好ましい。太陽電池封止シートの被封止物と接触する層に電離性放射線崩壊型樹脂が含まれていることにより、太陽電池セルや配線等の段差を隙間なく封止する性能(隙間埋め性)が良好となる傾向にある。
電離性放射線崩壊型樹脂が被封止物と接触する層に含まれている場合、被封止物と接触する層中の電離性放射線崩壊型樹脂の含有量は、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは7〜70質量%、更に好ましくは8〜60質量%である。
被封止物と接触する層が電離性放射線崩壊型樹脂を含む場合、被封止物と接触する層(表面層)のゲル分率は、好ましくは3質量%未満、より好ましくは2質量%以下0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以下0.1質量%以上である。被封止物と接触する層のゲル分率が3質量%未満であると隙間埋め性が良好となる傾向にあり、0.1質量%以上であると、夏場等の高温状態においても樹脂が融解して被封止物が流動することなく安定する傾向にある。
被封止物と接触する層の密度は、多層の場合、表面層に用いられる樹脂の密度は、ブロッキングの観点より、0.880g/cm3以上であることが好ましく、クッション性、透明性の観点より0.925g/cm3以下であることが好ましい。ブロッキング防止の方法として公知のエンボス方法にて表面の接触面積を少なくすることも効果的である。被封止物と接触する層の層比率は、良好な接着性を確保する観点から、太陽電池封止シートの全厚に対し、少なくとも5%以上の厚さを有していることが好ましい。厚さが5%以上であると、上述した単層構造の場合と同等の接着性が得られる傾向にある。
内層を構成する樹脂としては、特に限定されず、上述した表面層に含まれる樹脂に加えて、他のいかなる樹脂を用いてもよい。内層には、他の機能を付与することを目的として、樹脂材料、混合物、添加物等を適宜選定できる。例えば、新たにクッション性を付与する目的として、内層として熱可塑性樹脂を含有する層を設けてもよい。
内層として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩素系エチレンポリマー系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられ、生分解性を有するものや植物由来原料系のもの等も含まれる。上記の中でも、結晶性ポリプロピレン系樹脂との相溶性がよく、透明性が良好である観点から、水素添加ブロック共重合体樹脂、プロピレン系共重合体樹脂、エチレン系共重合体樹脂が好ましく、水素添加ブロック共重合体樹脂、プロピレン系共重合体樹脂がより好ましい。
水素添加ブロック共重合体樹脂としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体が好ましい。ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
プロピレン系共重合体樹脂としては、プロピレンとエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンとから得られる共重合体が好ましい。そのエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンの含有量は6〜30質量%が好ましい。この炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられる。
プロピレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒を用いて重合されたものでもよい。さらにポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したプロピレン系共重合体を使用できる。
エチレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒で重合されたものでもよい。また、ポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したエチレン系共重合体を使用できる。
内層の材料としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、ポリエチレン系樹脂の密度は、0.860〜0.925g/cm3であることが好ましい。透明性の観点から、0.925g/cm3以下が好ましく、ポリエチレン系樹脂の製造性の観点から、0.860g/cm3以上が好ましい。
太陽電池封止シートは、中央層の両面に、中央層に対して対称の配置となるように同一成分の層が1又は2以上積層された構造を有していてもよい。このような太陽電池封止シートとしては、例えば、2層の表面層(以下、「スキン層」と記載する場合がある。)と3層の内層からなる太陽電池封止シートであって、2層の表面層が同一成分からなり、表面層に隣接する2層の内層(以下、「ベース層」と記載する場合がある。)が同一成分からなる太陽電池封止シートが挙げられる。
上記構造を有する太陽電池封止シートにおいて、表面層の膜厚は、太陽電池封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましく、上記ベース層の膜厚は、太陽電池封止シート全体の膜厚に対して50〜90%であることが好ましく、ベース層に挟まれた内層(以下、「コア層」と記載する場合がある。)の膜厚は、太陽電池封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましい。
太陽電池封止シートを構成する樹脂のMFR(190℃、2.16kg)は、良好な加工性を確保する観点から、0.5〜30g/10分であることが好ましく、0.8〜30g/10分であることがより好ましく、1.0〜25g/10分であることが更に好ましい。太陽電池封止シートが2層以上の多層構造の場合、内層(ベース層やコア層)を構成する樹脂のMFRは、太陽電池封止シート加工性の観点から、表面層のMFRより低いことが好ましい。これにより太陽電池封止シートの加工性をより向上させることができる。
樹脂層は、さらに着色剤を含有する。これにより、太陽電池封止シートの光反射率を向上させることができる。着色剤としては、特に限定されず、樹脂層の材料として用いる樹脂と併用できる着色剤を用いることができる。着色剤としては、樹脂を着色できるものであればよく、その種類は特に限定されず、公知のものを用いることもできる。好ましい具体例としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ガラスビーズ、ウルトラマリン、フタロシアニン、及びアゾ化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上が挙げられる。これらの中でも、コスト、マスターバッチとの混練の観点から、酸化チタンが好ましい。
着色剤をはじめとする添加剤が多孔質物質を含む場合、従来使用されているEVA等を主成分とする樹脂封止シートであれば、多孔部分に樹脂の分解物である腐食性ガス(例えば、酢酸ガス等)がトラップされることで、太陽電池封止シート中に留まってしまう傾向がある。その結果、腐食がより進んでしまう。しかしながら、本実地の形態の太陽電池封止シートは、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、あるいはポリオレフィン系樹脂を使用するため、使用する着色剤等が多孔質物質を含むものであっても腐食性ガスが発生しないという利点を併せ持つ。この観点から、着色剤は多孔質物質を含むことが好ましい。かかる利点は、着色剤をはじめとする添加剤が多孔質物質を含む場合により顕著となる。
樹脂層中の着色剤の含有量は、特に限定されず、樹脂層の光透過性や光反射率等を考慮して適宜に選択できるが、混練り時の分散具合および着色具合の観点から、0.1〜10質量%であることが好ましい。
着色剤の添加方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、予め樹脂とマスターバッチ化された着色剤を用いることが好ましい。より具体的には、着色剤は、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂をキャリア樹脂(「キャリアレジン」等と呼ばれることもある。)とするマスターバッチにより配合されていることが好ましい。このようにマスターバッチ化した着色剤を用いることにより、着色剤の分散性をより向上させることができる。
上記したキャリア樹脂の160℃のメルトテンションは、50g以下であることがより好ましい。かかるメルトテンションの樹脂を用いることすることにより、着色剤と樹脂との混練性をより向上させることができる。
本実施の形態における太陽電池封止シートには、その特性を損なわない範囲で、各種添加剤、例えば、防曇剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、無機フィラー、架橋調整剤等を添加してもよい。
太陽電池封止シートには、安定した接着性を確保する目的でカップリング剤をさらに添加してもよい。上記カップリング剤の添加量及び種類は、所望の接着性の度合いや被接着物の種類によって適宜選択できる。上記カップリング剤の添加量としては、カップリング剤を添加する樹脂層の全質量基準で、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.03〜4質量%であることがより好ましく、0.05〜3質量%であることが更に好ましい。
カップリング剤の種類としては、太陽電池セルやガラスへの良好な接着性を樹脂層に付与する物質が好ましく、例えば、有機シラン化合物、有機シラン過酸化物、有機チタネート化合物等が挙げられる。また、これらのカップリング剤は、押出機内にて樹脂に注入混合する、押出機ホッパー内に混合して導入する、マスターバッチ化して混合して添加する等の公知の添加方法で添加することができる。ただし、押出機を経由する場合、押出機内の熱や圧力等によりカップリング剤の機能が阻害されることがあるため、カップリング剤の種類によっては添加量を適宜調整する必要がある。
カップリング剤の種類は、太陽電池封止シートの透明性や分散具合の観点、押出機への腐食や押出安定性の観点等を考慮して、適宜選択すればよい。好ましいカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラングリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和基やエポキシ基を有するものが挙げられる。
太陽電池封止シートには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することができる。特に長期に亘り透明性や接着性を維持する必要がある場合、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することが好ましい。これらの添加剤を樹脂に添加する場合、その添加量は、添加する樹脂の総量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、イオウ系、リン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系等の酸化防止剤が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等は太陽電池封止シートを構成する樹脂中に、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%を添加する。エチレン系樹脂に添加する場合、シラノール基を有する樹脂をマスターバッチ化して混合することで、さらに接着性を付与することもできる。添加方法としては、特に限定されず、液体の状態で溶融樹脂に添加する、直接対象とする樹脂層に練り込み添加する、シーティング後に塗布する等の方法が挙げられる。
太陽電池封止シートは、厚さが50〜1500μmであることが好ましく、100〜1000μmであることがより好ましく、150〜800μmであることが更に好ましい。厚さが50μm未満であると、構造的にクッション性が乏しい場合や、作業性の観点で、耐久性や強度に問題が生ずる傾向にある。一方、厚さが1500μmを超えると、生産性の低下や密着性の低下を招来するという問題が生じる傾向にある。
樹脂層にはエンボス加工を施すことが好ましい。エンボス加工を施すことで、ブロッキングを防止できる。
エンボス加工を行う方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることもできるが、樹脂をシート状に製膜した後一旦冷却固化させ、前記冷却固化した樹脂シートを加熱して軟質化した後、エンボス加工を施すことができる。
樹脂をシート状に製膜する方法としては、特に限定されず、例えば、Tダイ法、サーキュラーダイ法、カレンダー法が挙げられる。Tダイ法は、流動性の高い(メルトフローが高い)樹脂の製膜に適している。また、サーキュラーダイ法は、比較的低いメルトフローの樹脂を製膜できる点で優れている。上記の中でも、多層構造のシートを安定して製膜できる観点から、Tダイ法及びサーキュラーダイ法が好ましく、設備コストの観点から、サーキュラーダイ法がより好ましい。
具体的な製膜方法の一例としては、まず、太陽電池封止シートの原材料となる樹脂、及び必要に応じてその他の添加剤を、周知の混合装置(例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等)で予め混合する。次いで、一軸押出機、二軸押出機等のスクリュー押出機、ニーダー、ミキサー等により溶融混練した後、その混練物を、T型ダイやサーキュラーダイ、カレンダーダイ等からシート状に押出す。このとき、単層押出しであってもよいし、積層押出しであってもよい。
次に、上記シート状に押出された溶融物を一旦冷却固化する。冷却方法としては、冷風や冷却水等の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールやプレス機に接触させる方法等が挙げられるが、冷媒で冷却したロールやプレス機に接触させる方法が、膜厚制御に優れる点で好ましい。
冷却固化時の温度としては、特に制限はないが、シートの材料として用いられる樹脂の融点−5℃以下であることが好ましく、より好ましくは室温〜融点−5℃、更に好ましくは室温〜融点−10℃である。この際にシートの収縮率を抑える目的で、製膜時の流動配向を緩和させるためにゆっくりと冷却させること(徐冷)が好ましい。冷却方法としては直接水等の冷媒中に一気に浸して冷却する方法でもよいが、シートの収縮率低減の観点から、温調したロールにより徐々に冷却する方法や空冷で徐々に冷却する方法が好ましく、冷媒を使用する場合でも、ミスト状の霧を噴霧して徐冷する方法が好ましい。ここで、シートが多層構造を有する場合等、シートの材料として複数の樹脂を用いる場合の「融点」とは、シートを構成する樹脂のうち最も多く含まれる樹脂成分の融点を意味する。樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて測定することができる。
次いで、上記冷却固化した樹脂シートを加熱して軟質化した後、シート表面にエンボス加工を施す。ここで「軟質化」(以下、「軟化」ともいう。)とは、エンボスロールを押し付けて賦形できる状態のことをいい、通常、樹脂の融点よりも10℃程度高い温度で加熱されることで軟質化できる。
樹脂シートを軟質化するための加熱方法としては、特に限定されず、例えば、赤外線加熱、加熱ロール、熱風加熱等が挙げられる。中でも、赤外線加熱は、シートの中心まで効率よく加熱することができ、深いエンボスを入れ易い点で優れている。また、加熱ロール、熱風加熱は、エンボスを施す表面の温度を一気に上昇させることができ、シートの延伸を防止して収縮率を抑制しつつエンボス形状を賦形できる点で有利である。赤外線加熱としては、遠赤外、近赤外等が挙げられ、所望の温度にするための最適な赤外波長を選択すればよい。上記加熱方法は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂シートを加熱して軟質化する際の加熱温度としては、特に制限はないが、深いエンボスを入れる場合は、用いる樹脂の融点近傍であることが好ましい。浅いエンボスを入れる場合は、融点よりも3℃程度低いことが好ましい。収縮率を抑えるために残存応力を小さくする観点から、軟質化させるときに機械流れ方向にシートを引き伸ばさないことが重要であるが、加熱温度が融点+20℃を超える高温であると、シートが機械流れ方向に引き伸ばされる傾向にある。従って、軟質化する際の加熱温度としては、好ましくは融点−5℃〜融点+20℃、より好ましくは融点−3℃〜融点+20℃である。
加熱方法としては、まず、加熱ロール等に密着させて予熱した後、赤外線加熱等により本加熱してもよい。予熱した後に、より高い温度で本加熱することにより、十分にエンボスを賦形できる軟化状態を速やかに達成できるという利点を有する。予熱しない場合には、なかなか温度が上昇しないため、賦形し難かったり、温度が均一にならずに斑になったりするおそれがある。また、予熱は、シートの粘度が極端に落ちることがないため、シートが引き伸ばされて収縮率が高くなることを防ぐという利点がある。加熱方法としては、融点よりも比較的低温の加熱ロールにより予熱を施した後、エンボスロール直前に、熱風や特定の赤外線波長の加熱により表面を軟化させ、エンボスロールにて加圧プレスしてエンボス形状を賦形することが好ましい。予熱の温度としては、好ましくは樹脂の融点−20℃〜融点、より好ましくは融点−20℃〜融点−3℃である。
予熱ロールは、非粘着の表面であることが軟化したシートを引き剥がす際に伸びを生じ難くなり、低収縮率になる傾向にあるため好ましい。非粘着加工はフッ素系、シリコン系、ガラス系のコーティングや表面塗布により行うことができる。
予熱ロールとエンボスロールの長さは、より短い方が、シートの収縮率が低減する傾向にあるため好ましい。さらに、予熱ロールから軟質化したシートを引き剥がす際に細い回転ロール(引き離しロール)を設置することで、シートを引き伸ばさずに予熱ロールからシートを引き剥がすことができるため、収縮率がより低減する傾向にある。この際、引き離しロールも予熱ロールと同様に非粘着加工されていることが好ましい。
加熱することにより軟質化した樹脂シートの表面には、最終的に目的とする太陽電池封止シートの形態に応じてエンボス加工処理を施すことができる。例えば、両面にエンボス加工処理を行う場合には少なくとも1対以上の2本のエンボスロール間に、片面にエンボス加工処理を行う場合には少なくとも1対以上のエンボスロールとバックアップロールの間に、軟質化した樹脂シートを加圧状態で通過させることにより、エンボスロールの形状をシート表面に転写することができる。
エンボス加工部のエンボスの形状や大きさなどは特に限定されず、太陽電池封止シートの用途等に基づいて好適な条件を選択できる。エンボスの形状(模様)としては特に限定されないが、例えば、縞、布目、梨地、皮紋、ダイヤ格子、合成皮革様、しぼ模様、四角錘形状(いわゆるピラミッド模様;図2及び図3参照)、四角錘台形状(いわゆる台形カップ模様;図4及び図5参照)等が挙げられる。エンボス加工部は平面部が少ないことが好ましく、エンボス加工部の全面積におけるエンボスによる凸部の面積の比率は5〜50%であることがより好ましい。
エンボス加工は、太陽電池封止シートの少なくとも片面の一部に施されていればよいが、太陽電池封止シートの両面にエンボス加工が施されていてもよい。太陽電池封止シートの耐ブロッキング性の観点から、エンボス深さは5μm以上300μm以下であることが好ましく、30μm以上300μm以下であることがより好ましい。ここで、エンボス深さとは、エンボス形状の凸部から凹部までの深さをいう。例えば、図2及び図3に示す四角錘形状のエンボスである場合、D1がエンボス深さであり、図4及び図5に示す四角錘台形状のエンボスである場合、D2がエンボス深さである。
冷却固化した樹脂シートを加熱して軟質化する工程の前後に、軟質化した樹脂シートが延伸しないようにテンションコントロールされていてもよい。テンションコントロールを行うことにより、軟質化したシートの引き伸ばしが抑制され、収縮率を低くすることができる傾向にある。テンションコントールの際のテンションとしては、特に限定されないが、通常、シート幅1mに対して0.1〜80N、より好ましくは0.1〜70N、更に好ましくは0.1〜60Nである。
テンションコントロールの方法としては、例えば、冷却固化した樹脂シートを加熱して軟質化する工程の前後に、少なくとも1対以上のピンチロールと、少なくとも1対以上のバックアップロールとエンボスロールによりピンチして拘束する方法等が挙げられる。
図1は、本実施の形態における太陽電池封止シートの製造に用いる装置の一例を示す概略図である。冷却固化した樹脂シートを加熱して軟質化する工程、及びエンボス加工を施す工程における装置の一例を概念的に示したものである。図1に示す装置においては、冷却固化された樹脂シート1は蒸気加熱式の予熱ロール2に密着した状態で予熱され、さらに、赤外線ヒーター3により本加熱されて軟質化される。次いで、軟質化された樹脂シートはシリコンゴム製のバックアップロール5により加圧された状態で、金属製のエンボスロール6によりシート表面にエンボス加工が施される。樹脂シートを加熱して軟質化する工程の前後に、ピンチロール4と、バックアップロール5及びエンボスロール6により、軟質化した樹脂シートが延伸しないようにテンションコントロールされている。
さらに、エンボス加工が施された太陽電池封止シートには、後処理として、例えば、寸法安定化のためのヒートセット、コロナ処理、プラズマ処理、他種の太陽電池封止シート等とのラミネーション等を行ってもよい。
また、樹脂層に対する架橋処理(電離性放射線の照射等)は、それぞれの場合に応じてエンボス加工処理の前工程又は後工程として行うか選定することができる。
本実施の形態の太陽電池封止シートは、従来法により得られる太陽電池封止シートと比較して、残存応力が小さく収縮が起こり難いという特徴を有する。太陽電池封止シートの収縮率は、好ましくは30%以下、より好ましくは25%、更に好ましくは5%以下、特に好ましくは実質的に0%である。ここで、収縮率とは、太陽電池封止シートを70℃の温水に5分間浸した後、シートの機械流れ方向の長さの変化を定規で測定することにより求めた値である。
〔太陽電池封止シートの用途〕
本実施の形態における太陽電池封止シートは、太陽電池を構成する素子等の部材を保護するための太陽電池用の封止材として有用であり、太陽電池を構成するガラス板や、アクリルやポリカーボネート等の樹脂板に対しても安定的に強固な接着性を発揮する。本実施の形態における太陽電池封止シートを用いることにより、太陽電池用ガラス自身や各種配線や発電素子等、凹凸を有している各種部材を確実に隙間なく封止できる。特に、本実施形態における太陽電池封止シートは着色剤を含有しているので、バックシート側の封止シートとして好適である。これにより光反射率をより向上させることができるため、太陽電池モジュールのエネルギー効率を向上させることができる。
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。実施例及び比較例において用いた各材料は以下の通りである。
<樹脂>
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
ARUKEMA社製 2805
東ソー社製 751
(2)エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(EVA−GMA共重
合体)
住友化学社製 ボンドファースト7B
(3)線状超低密度ポリエチレン(VL)
ダウケミカル社製 エンゲージ EG8100
ダウケミカル社製 エンゲージ EG8200
ダウケミカル社製 アフィニティー PL1880G
ダウケミカル社製 アフィニティー PF1140G
ダウケミカル社製 アフィニティー KC8852
住友化学社製 VL200
三井化学社製 ウルトゼックス1020
(4)線状低密度ポリエチレン(LL)
住友化学社製 FZ201
住友化学社製 F208−3
<着色剤>
酸化チタン
石原産業社製 R−855(硫酸法酸化チタン(ルチル型)、平均粒径0.26μm)
<有機過酸化物>
アルケマ吉富社製 ルパゾール101
<透明基材>
(1)ガラス
AGC社製 太陽電池用ガラス 白板ガラスエンボス付き厚さ3.2mm
<バックシート>
三菱アルミパッケージング社製バックシート
ポリフッ化ビニル(商品名:テドラー)/PET/ポリフッ化ビニルの3層構造を有す
るバックシート
<発電素子>
E−TON社製 結晶性シリコンセル厚さ250μm
<ゲル分率>
ゲル分率については、沸騰p−キシレン中で、試料を12時間抽出し、不溶解部分の割
合を下記式により求めた。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
多層の場合は、あらかじめ同方法にて厚さ及び樹脂組成が同一のシートを採取し、そのシートに同条件で架橋処理を施したものをゲル分率の測定サンプルとして用いた。
<樹脂の密度>
JIS−K−7112に準拠して測定した。
<樹脂のメルトフローレート(MFR)およびメルトテンション(MT)>
MFR(190℃、2.16kg)は、JIS−K−7210に準拠して測定した。メルトテンションは、東洋精機製作所キャピログラフ1D(ノズル温度160℃)を用いて測定した。
<マスターバッチの作製>
樹脂(キャリア樹脂)および着色剤を所定の混合比でブレンドし、押出し機を用いて押出温度160℃で紡糸状(紡糸穴4mm)に押出し、これを冷水により冷却し、ストランドを作製した。得られたストランドを、ストランドカッターを用いて長さ3mm程度に切断してマスターバッチを得た。ストランドを形成した際に、安定してストランドを形成できた場合を良好とし、そうでない場合はマスターバッチ作製不可能と判断した。
<樹脂封止シートの作製>
各実施例の封止材の製造方法について示す。各表に示す材料及び組成比(単位は質量部)で樹脂封止シートを製造した。3台の押出機(表面層押出機、内層押出機、表面層押出機)を使用して樹脂を溶融し、その押出機に接続されたサーキュラーダイから樹脂をチューブ状に溶融押出し、溶融押出にて形成されたチューブを上向きのダイレクトインフレ方法により製膜し、溶融した樹脂シートを20℃の冷風を用いて冷却固化することにより樹脂シートを得た。なお、実施例18〜20については、3台の押出機のダイへの接続するポリマーパイプの経路を変更して表面層用押出機、内層用押出機、最内層用押出機として使用して5層のシートを得た。
次いで、図1に示した方法により、得られた樹脂シートから樹脂封止シートを作製した。すなわち、50℃に設定された予熱ロール2に密着させることで予熱し、さらに、シート温度が70℃に設定された赤外線ヒーター3により本加熱して軟質化した。次いで、軟質化された樹脂シートをバックアップロール5とエンボスロール6の間を通過させることによりエンボス加工を施した(図1参照)。エンボス加工として、図2及び図3に示すピラミッド模様(四角錘形状)のエンボス加工を施し、エンボス加工が施された樹脂封止シート(エンボスシート)を得た。樹脂シートを加熱して軟質化する工程の前後において、ピンチロールと、バックアップロール及びエンボスロールにより、軟質化した樹脂シートが延伸しないようにテンションコントロールを行った。なお、表中、表面層/内層/表面層の厚さ比率は、樹脂封止シート全体の厚さを100とした場合の、各層の厚さの比を示す。なお、実施例18〜20は、表面層/内層/最内層/内層/表面層の厚さ比率であり、樹脂封止シート全体の厚さを100とした場合の、各層の厚さの比を示す。得られた樹脂封止シート(エンボスシート)に、EPS−300又はEPS−800の電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製)を用いて、各表に示す加速電圧及び照射密度にて電子線処理を行った。
<太陽電池モジュールの作製>
得られた樹脂封止シートを用いて、各表に示す材料を用いて太陽電池モジュールを作製した。6インチ多結晶セルを6枚(2列×3枚)に配置し、透明基板/樹脂封止シート(a)/発電素子(250μm)/樹脂封止シート(b)/バックシートの順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて、各表に記載した条件で真空ラミネートすることで太陽電池モジュールを製造し、各評価試験を行った。製造条件及び評価結果を表2〜5に示す。なお、すべての封止材を透明なものを用いた場合の出力はいずれも20.5Wであり、これを標準出力値とした。この値より着色した封止材(着色封止材)を用いた場合の出力を測定し、標準の20.5Wからの向上が認められたときはプラスで表示し、その際の差異(効率アップ率)を%で表示した。なお、出力値の測定は、日清紡ソーラーシミュレーターPVS1116iによって行い、下記式に基づいて効率アップ率(%)を算出した。

効率アップ率(%)=(着色封止材を用いたときの出力値−標準出力値)/標準出力値
×100
<ラミネート後の外観>
作成した太陽電池モジュールのラミネート直後の外観を目視にて観察した。
そして、太陽電池モジュールを、試験温度85℃、相対湿度85%に保持した試験槽内に縦置きで設置し、2週間経過後の太陽電池モジュールの外観を目視にて観察した。発電素子等の部材のズレ等が観察されたものを外観異常と判断し、発電素子等の部材のズレ等が観察されなかったものを外観良好と判断した。
<銅板の変色試験>
各実施例において、発電素子の代わりに銅板(250μm)を同様の条件でラミネートして、ラミネートシートを得た。このラミネートシートを試験温度85℃、相対湿度85%に保持した試験槽内に縦置きで設置し、2週間経過後の銅板の変色の有無を観察した。水分等によるさびや変色等が確認されたものを腐食レベル(変色)と判断し、さびや変色等が確認されなかったものを良好と判断した。
<封止材の水蒸気透過率(WVTR)>
JIS−K7129に準拠して測定した。
マスターバッチの条件を表1に示し、各実施例及び各比較例の製造条件及び物性の評価結果を表2〜7に示す。
表2〜7に示すように、本実施例の太陽電池封止シートは、太陽電池モジュールとした際のエネルギー効率を向上させることができ、水蒸気バリア性及び耐腐食性に優れていることが確認された。さらに、本実施例の太陽電池封止シートは有機過酸化物を含有しないため、生産性も優れていることが確認された。
本発明に係る太陽電池封止シートは、太陽電池を構成する発電素子等の各種部材を封止する封止材等として産業上の利用可能性を有する。
1…樹脂シート、2…予熱ロール、3…赤外線ヒーター、4…ピンチロール、5…バックアップロール、6…エンボスロール

Claims (9)

  1. エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、
    着色剤と、
    を含む樹脂層を少なくとも有し、かつ
    有機過酸化物を実質的に含有しない、太陽電池封止シート。
  2. 前記樹脂層は、少なくともポリエチレン系樹脂を含有する、請求項1に記載の太陽電池封止シート。
  3. 前記樹脂層は、密度0.92g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を含有する請求項1又は2に記載の太陽電池封止シート。
  4. 前記着色剤は、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂をキャリア樹脂とするマスターバッチにより配合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池封止シート。
  5. 前記キャリア樹脂の160℃におけるメルトテンション(MT)が50g以下である、請求項4に記載の太陽電池封止シート。
  6. 前記樹脂層は、電離性放射線照射により架橋処理が施された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の太陽電池封止シート。
  7. 前記樹脂層の表面の少なくとも一部にエンボス加工が施された、請求項1〜6のいずれか一項に記載の太陽電池封止シート。
  8. 前記樹脂層に形成されたエンボス形状の深さが30μm以上である、請求項7に記載の太陽電池封止シート。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の太陽電池封止シートを含む太陽電池モジュール。
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