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JP2011173205A - 光学レンズの製造方法 - Google Patents

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JP2011173205A JP2010038552A JP2010038552A JP2011173205A JP 2011173205 A JP2011173205 A JP 2011173205A JP 2010038552 A JP2010038552 A JP 2010038552A JP 2010038552 A JP2010038552 A JP 2010038552A JP 2011173205 A JP2011173205 A JP 2011173205A
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Abstract

【課題】各種面形状の被研磨面を面内での研磨量の大きなばらつきなく研磨することにより、所望の光学面を有する光学レンズを得るための手段を提供すること。
【解決手段】弾性材料からなる凸部を有する研磨治具と凹面を有するレンズ形状に成形された成形体とを、研磨治具の凸部と成形体の凹面との間に研磨剤を供給しながら相対的に移動させることにより、上記凹面を研磨することを含む光学レンズの製造方法。前記研磨治具として、凸部表面に平均曲率が異なる互いに垂直な2つの軸方向を有する研磨治具であって、研磨治具凸部を研磨対象である成形体の凹面と嵌合させると、前記2つの軸方向において中心部で接触するが周縁部で離間する形状を有する研磨治具を使用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学レンズの製造方法に関するものであり、詳しくは、凹面を研磨することにより光学面を創成することを含む、光学レンズの製造方法に関するものである。
眼鏡レンズ等の光学レンズの製造工程では、仕上がり寸法よりも肉厚のレンズ(セミフィニッシュ品)を量産保管しておき、受注を受けた後にユーザーのニーズに応じて所望の光学特性を有する製品レンズ(フィニッシュ品)に仕上げることが広く行われている。通常、このセミフィニッシュ品は、物体側表面は注型重合中にモールド表面が転写されることにより光学面に仕上げられる。他方、眼球側表面(凹面)は機械加工(研削ないしは切削)によりレンズ処方に応じた所望の面形状に加工される。ただし、そのままの状態では凹面上に機械加工痕が残存しているため光学レンズとして使用することはできない。そこで通常、上記機械加工後には、研磨加工が行われる。この研磨加工を経て、両面が所望の光学面に仕上げられた製品レンズを得ることができる。
従来、上記研磨加工では、被研磨面(凹面)と一致する凸面を有する金属製の研磨皿を用いた摺り合わせ研磨が行われていた。金属製の研磨皿による摺り合わせ研磨は、形状精度がよいため切削加工で形成した面形状を損なうことなく光学面を容易に得ることができるという利点はあるものの、レンズ処方毎にレンズ処方に対応した面形状の研磨皿を用意する必要があり、また、被研磨面が乱視成分や累進要素を含む複雑な面形状を有する場合には、これに対応可能な研磨皿を金属材料から加工することが困難であるといった課題があった。
これに対し近年、金属製の研磨皿に代えて、凸状の研磨部を有する弾性研磨体を被研磨面に押し付けた状態で、研磨体と被研磨面との間に研磨剤を介在させ摺動させることにより被研磨面を研磨することが、広く行われている(例えば特許文献1および2参照)。
特開2004−261954号公報 特開2008−183714号公報
上記方法は、被研磨面に押し付ける際に弾性研磨体が若干変形するため研磨治具の凸形状が被研磨面の凹面形状に完全に対応していない場合であっても研磨を行うことができる。したがって、1つの研磨体により対応可能なアイテム数が増えるため金属製の研磨皿を用いる方法と比べて用意すべき研磨治具の数を大きく減らすことができる。
しかし本願発明者の検討により、上記の弾性研磨体を用いる方法では、面内で研磨量にばらつきがあることが明らかとなった。特に、乱視レンズの乱視軸上で、周縁部の磨き残しが多く研磨量に大きなばらつきがあることが判明した。
上記の通り、従来の研磨方法では面内に研磨量のばらつきが見られるが、機械加工により所望の面形状に形成された面においては、研磨量のばらつきが大きいほど最終的に得られる光学面の設計値からのずれが大きくなるため、研磨量の面内での均一性は高めることが望ましい。
そこで本発明の目的は、各種面形状の被研磨面を面内での研磨量の大きなばらつきなく研磨することにより、所望の光学面を有する光学レンズを得るための手段を提供することにある。
本願発明者は、上記目的を達成するために被研磨面における研磨量の分布について検討したところ、通常の研磨工程においては中心部での研磨量が大きく、周縁部での研磨量が小さいという傾向が見られた。これは凸状の研磨部を有する弾性研磨体は被研磨面に対して押し付けた状態で摺動させると圧力が中心部に集中する傾向にあるからである。
そこでこの対策として、研磨面の曲率を被研磨面に対して大きくすることにより研磨面の周縁部を中心部に優先して被研磨面に接触させる(以下、この状態を「外あたり」という)ことが考えられる。この状態の概略図が、図1(a)である。この外あたりの状態であれば、中心部の研磨量の低減および周縁部の研磨量の増加により、結果的に被研磨面の面内の研磨量のばらつきが低減されると予想される。しかし本願発明者の検討によれば、予想に反し面内の研磨量のばらつきを低減することはできなかった。
以上の知見に基づき本願発明者は更なる検討を重ねた結果、以下の新たな知見を得るに至った。
(1)弾性研磨体として、研磨面の曲率が被研磨面に対して小さく被研磨面と嵌合させると中心部で接触し周縁部が離間する状態(以下、この状態を「中あたり」という)となる研磨体を使用することにより被研磨面の面内各部での研磨量のばらつきを低減することができる。この中あたりの状態の概略図が、図1(b)である。このように中あたりとすることにより研磨量の均一化が達成される理由は、ある程度隙間を存在させ研磨剤の移動しやすさを確保することが、研磨治具と被研磨面との間に介在する研磨剤による研磨効率を高めることに寄与しているからと推察される。従来、研磨治具の表面は、弾性研磨体を使用する場合でも被研磨面の曲率と略一致させていたところ、敢えて周縁部に隙間を形成することにより研磨量のばらつき低減が可能となることは、本願発明者により見出された新たな事実である。
(2)ただし各種形状の被研磨面に対してそれぞれ中あたりの状態を実現し得る研磨治具の表面形状を、何らの指標なく決定するには相当な試行錯誤を伴う。そこで本願発明者は、ベースとなる面形状をトーリック面やアトーリック面のように、面内で平均曲率が異なる互いに垂直な2つの軸方向を有する面形状としたうえで、このベース形状に基づき上記2つの軸方向を基準として被研磨面の形状に応じて使用する研磨治具の形状を決定することとした。これにより大きな試行錯誤を伴うことなく、面内で研磨量の大きなばらつきなく研磨を行うことができる研磨治具を選択することが可能となる。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]弾性材料からなる凸部を有する研磨治具と凹面を有するレンズ形状に成形された成形体とを、研磨治具の凸部と成形体の凹面との間に研磨剤を供給しながら相対的に移動させることにより、上記凹面を研磨することを含む光学レンズの製造方法であって、
前記研磨治具として、凸部表面に平均曲率が異なる互いに垂直な2つの軸方向を有する研磨治具であって、研磨治具凸部を研磨対象である成形体の凹面と嵌合させると、前記2つの軸方向において中心部で接触するが周縁部で離間する形状を有する研磨治具を使用することを特徴とする、光学レンズの製造方法。
[2]前記凸部表面はトーリック面またはアトーリック面である、[1]に記載の光学レンズの製造方法。
[3]前記成形体の凹面はトーリック面である、[1]または[2]に記載の光学レンズの製造方法。
[4]前記相対的な移動を、研磨治具凸部表面の平均曲率が小さい軸方向がトーリック面の最小曲率方向と略平行にある状態で行う、[3]に記載の光学レンズの製造方法。
本発明によれば、各種面形状の被研磨面において、面内における研磨量のばらつきを低減することができる。これにより機械加工により形成した面形状を維持した状態で光学面を形成することができる。また、研磨における形状維持精度が高いことにより、研磨による光学性能への影響を低減することもできる。これにより度数不良の発生を抑制することが可能となる。
また、面内で研磨量のばらつきが多い場合には、磨き残された部分を選択的に研磨するために研磨条件を変更した研磨を改めて行う必要が生じるが、本発明によれば研磨量のばらつきを低減することができるため、研磨段数の低減が可能となり作業効率を大幅に改善することができる。
被研磨面と研磨治具との配置例を示す概略図である。図1(a)は、中あたりの状態、図1(b)は外あたりの状態を示す。 本発明において使用可能な研磨装置の概略構成図である。 研磨対象のレンズをレンズ保持体に取り付けた状態を示す断面図である。 揺動装置と研磨治具の首振り旋回運動の説明図である。 研磨治具の一例を示す平面図である。 図5に示す研磨治具に研磨パッドを取り付けた状態を示す平面図である。 研磨治具の一例を示す底面図である。 図6のXII-XII線断面図である。 研磨対象のレンズの移動軌跡の一例を示す図である。 実施例の評価結果を示す。
本発明は、弾性材料からなる凸部を有する研磨治具と凹面を有するレンズ形状に成形された成形体とを、研磨治具の凸部と成形体の凹面との間に研磨剤を供給しながら相対的に移動させることにより、上記凹面を研磨することを含む光学レンズの製造方法に関する。本発明の光学レンズの製造方法では、研磨に使用する研磨治具として、凸部表面に平均曲率が異なる互いに垂直な2つの軸方向を有する研磨治具であって、研磨治具凸部を研磨対象である成形体の凹面と嵌合させると、前記2つの軸方向において中心部で接触するが周縁部で離間する形状を有する研磨治具を使用する。本発明によれば、被研磨面との間で上記関係を満たす研磨治具を使用することにより、面内での研磨量のばらつきを抑えることができ、これにより機械加工により形成した面形状を維持し所望の光学面を有する光学レンズを得ることが可能となる。
以下、本発明の光学レンズの製造方法について、更に詳細に説明する。
研磨治具
本発明において使用される研磨治具は、弾性材料からなる凸部を有するものである。先に説明したように、弾性材料からなる研磨治具を使用することは、金属製の研磨皿を使用する研磨方法と比べて用意すべき研磨治具の数を大幅に低減できるためコスト面および生産効率の点できわめて有利である。
上記研磨治具としては、凸部全体が弾性材料からなるものを用いることができ、または、凸部が内部に空洞(中空構造)を有するバルーン部材であり、この空洞に流体を供給することによりバルーン部材に張りを与えながら研磨を行うことができる研磨治具を用いることもできる。後者の研磨治具は、流体により加える圧力によっても研磨条件を制御することができるため、形状精度を高めるうえで有利である。
弾性材料としては、弾性体としての性質を有し、JIS k 6253(デュロメータタイプAまたはタイプE)により定義される硬さ5〜70程度のものが好ましい。具体例としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびシリコンゴムなどの合成ゴム等を挙げることができる。前記バルーン部材としては、弾性材料部分の厚さが1〜10mm程度のものが好適である。このバルーン部材に供給される流体としては、通常、圧縮空気、窒素、水等の液体が使用される。バルーン部材を含む研磨治具の具体的構成については、例えば特開2004−261954号公報段落[0033]〜[0037]、特開2008−283714号公報段落[0036]〜[0057]等を参照できる。
研磨治具凸部は、その表面に平均曲率が異なる互いに垂直な2つの軸方向を有する。そのような表面としては、トーリック面またはアトーリック面を挙げることができる。
また、凸部表面は、被研磨面よりも大面積とすることが研磨効率が高く好ましい。
前述のように、本発明では「中あたり」の状態で研磨を行うことが可能な表面形状を有する研磨治具を選択するための基準軸を、上記2つの軸方向に設定する。ここで一態様としては、これら2つの基準軸方向が、被研磨面のどの部分と対向しても中心部が接触し周縁部で離間することを、研磨治具の選択基準とすることができる。または他の態様としては、研磨工程において上記2つの軸方向と対向配置される被研磨面上の軸方向との関係で、中心部で接触し周縁部で離間する関係が保たれているか否かを、研磨治具の選択基準とすることができる。
研磨時には通常、研磨治具の凸部上に研磨パッドが配置される。この研磨パッドは、研磨剤を保持し研磨効率を高める役割を果たすものである。研磨パッドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、発泡ポリウレタン、フェルト、不織布、羊毛等の繊維性の布、合成樹脂等を材料とするものを用いることができる。本発明では被研磨面との間に所定の隙間が形成される研磨治具を選択して使用するため、その形状の対応関係が研磨パッドにより大きく損なわれない範囲の厚さの研磨パッドを使用することが好ましい。具体的には、研磨パッドの厚さは0.5〜3.0mm程度とすることが好適である。また、研磨パッドの形状および配置方法については、例えば特開2004−261954号公報段落[0034]、特開2008−183714号公報段落[0026]〜[0027]、[0058]〜[0061]等を参照できる。
研磨対象物
研磨対象である成形体は、凹面を有するレンズ形状に成形されたものであり、いわゆるセミフィニッシュ品であることができる。上記成形体は、注型重合法等の公知の成形法により得ることができる。素材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン系、エピチオ系、ポリカーボネート系、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR39)等のプラスチックレンズに通常使用される各種樹脂を挙げることができる。
先に説明した通りセミフィニッシュ品の凹面には、レンズ処方に応じて機械加工が施される。この機械加工により、球面、非球面、トーリック面、アトーリック面、累進要素もしくは累進面を含む自由曲面、またはこれらを合成した曲面等が形成される。上記機械加工は、公知の研削および/または切削により行うことができる。一例としては、三次元NC制御を行うカーブジェネレータによる切削加工を挙げることができる。本発明によれば、上記いずれの形状の被研磨面であっても良好な研磨を行うことが可能である。本発明において使用される研磨治具とのフィッティングの点からは、被研磨面はトーリック面またはアトーリック面であることが好ましい。
研磨治具の選択
本発明では、研磨に使用する研磨治具として、被研磨面の形状との間で、前記関係を満たす研磨治具を選択する。ある研磨治具が前記関係を満たすか否かは、研磨治具と研磨対象である成形体とを実際に組み合わせることにより目視によって確認することができ、または、成形体および研磨治具それぞれの設計値から確認することができる。
研磨治具凸部表面と被成形面とが前記軸方向において接触する中心部とは、例えば被研磨面および凸部表面の幾何中心またはその近傍であることができる。従来の研磨方法では、この部分の研磨量が周縁部に比べて多いことが、面内の研磨量のばらつきの一因となっていた。これに対し本発明によれば、中あたりの関係を実現する研磨治具と被研磨面との組み合わせで研磨を行うことにより、中心部と周縁部の研磨量のばらつきを低減することができる。前記研磨治具凸部表面の軸方向と研磨時に対向配置する部分は、被研磨面上の、従来の方法では研磨量のばらつきが大きい軸方向とすることが好ましく、この軸方向との関係において研磨治具を選択することがより好ましい。この軸方向において中あたりの関係を実現する研磨治具により研磨を行うことによって、研磨量のばらつきを低減することができるからである。なお、従来の方法では研磨量のばらつきが大きい軸方向については後述する。
ただし、周縁部における離間距離を過度に大きくすると周縁部を研磨することが困難となる場合がある。そのような場合には予備実験を行い研磨可能な離間距離を予め把握し、許容範囲内の離間距離で被研磨面と離間する研磨治具を選択することが好ましい。許容可能な離間距離は、被研磨面と研磨治具表面との組み合わせにより定まるものであり上記の通り予備実験により設定することが好ましいが、一般的な研磨条件においては、例えば1mm〜11mm程度、更には1〜8mm程度が離間距離の許容範囲となり得る。
前記した後者の選択基準により研磨治具を選択する態様では、研磨治具の基準軸方向と対向配置する部分を、従来の研磨方法では研磨量のばらつきが大きい軸方向に設定することが、研磨量の面内均一性を高める上で好ましい。本願発明者の検討によれば、従来の研磨方法では、被研磨面が面内で曲率分布を有する場合、平均曲率が小さい軸方向ほど周縁部の研磨量が少なく面内で研磨量のばらつきが生じやすい傾向が見られた。例えばトーリック面からなる凹面を有する乱視レンズにおいては、該凹面上の、いわゆるベース方向と呼ばれる方向(乱視軸方向)は面内で平均曲率が最小となる軸方向(最小曲率方向)であり、従来はこの軸方向において研磨量のばらつきが大きく、特に、周縁部の磨き残しが生じやすい傾向があった。また、累進屈折力レンズにおいても加入度数の差が大きい場合には遠用部と近用部との曲率差が大きいため、面内で平均曲率が最小となる軸方向において、周縁部に磨き残しが生じやすい傾向があった。そこで本発明では、被研磨面上の基準軸方向は、上記の通り研磨量のばらつきが大きい、面内で平均曲率が最小となる軸方向に設定することが好ましい。例えば、乱視レンズにおいては、ベース方向は面内で平均曲率が最小となる軸方向(最小曲率方向)であり、これと直交する、いわゆるクロス方向と呼ばれる方向は面内で平均曲率が最大となる軸方向(最大曲率方向)となる。そこで乱視レンズに対しては、研磨治具の平均曲率が小さい軸方向を乱視レンズのベース方向との関係を規定する基準軸方向とし、平均曲率が大きい軸方向を乱視レンズのクロス方向との関係を規定する基準軸方向とすることが好ましい。また、累進屈折力レンズにおいては、面内で平均曲率が最小となる軸方向を、研磨治具凸部表面の平均曲率が小さい軸方向との関係を規定する基準軸方向とし、これと直交する軸方向を、研磨治具凸部表面の平均曲率が大きい軸方向との関係を規定する基準軸方向とすることが好ましい。上記組み合わせとすると、研磨治具と被研磨面とのフィッティングが良好であり高い研磨効率を実現できるため好ましい。なお、ある面上の各軸方向における平均曲率は、レンズ処方値や研磨治具の設計値に基づき決定することができる。または特許第4199723号明細書段落[0023]〜[0059]に記載の方法もしくはこれに準じた方法によって、ある面上の各軸方向における平均曲率を決定することもできる。
研磨方法
次に、研磨対象である成形体の凹面(被研磨面)の形状に対して上記関係を満たす研磨治具を用いて、被研磨面を研磨する方法について説明する。
研磨時には、前述の通り、通常研磨治具凸部上に研磨パッドを配置した状態で、研磨治具凸部を被研磨面に押し付けた状態で両面を相対的に移動(摺動)させることにより、被研磨面を研磨する。ここで研磨時には、研磨治具の凸部と成形体の凹面との間に研磨剤が供給される。研磨剤としては、研磨処理に通常使用される市販のスラリーを使用することができる。または、アルミナ、ダイヤモンドパウダー等の研磨砥粒を水または水系溶媒に分散させることにより調製したスラリーを使用することもできる。
研磨時の研磨治具、研磨対象である成形体の動作は、通常の研磨工程と同様とすることもできるが、研磨治具の選択時に規定した中あたりの関係を実際の研磨工程において正確に実現するためには、研磨治具選択において基準とした軸方向同士の対向関係を維持した状態で研磨を行うことが好ましく、具体的には、基準軸方向同士が略平行となるように、研磨治具、研磨対象の成形体の一方または両方を前後または左右に往復運動させることが好ましい。そのような動作を行うためには、研磨治具と研磨対象の成形体を、基準軸方向同士が対向するように研磨装置に設置した後、研磨治具凸部を被研磨面(凹面)に押し付けた状態で、研磨治具凸部を首振り旋回運動させ、成形体を凹面の基準とした軸方向に往復運動させることにより、研磨の軌跡が1周毎に少しずつずれる無軌道研磨軌跡で被研磨面を研磨することが好ましい。
上記動作が可能な研磨装置の一例を、以下に図面に基づき説明する。
図2は本発明において使用可能な係る研磨方法に用いられる研磨装置の概略構成図である。
同図において、全体を符号30で示す研磨装置は、床面に設置された装置本体32と、この装置本体32に紙面において左右方向(矢印X方向)に移動自在でかつ水平な軸33を中心として紙面と直交する方向(矢印AB方向)に回動自在に配設されたアーム34と、このアーム34を左右方向に往復移動させるとともに紙面と直交する方向に回動させる図示しない駆動装置と、前記アーム34に設けられレンズ1の凸面2aをレンズ保持体37を介して保持するレンズ取付部36と、このレンズ取付部36の下方に位置するように前記装置本体32に配設され、図示しない駆動装置により垂直な軸線Kを中心として首振り旋回運動(自転はしない)を行う揺動装置38等を備えている。また、前記揺動装置38上に着脱自在に設けられた研磨治具39、この研磨治具39に着脱自在に取付けられた研磨パッド40、前記レンズ取付部36を昇降させる昇降装置41等を備えている。このような研磨装置30は、例えば特開2008−183714号公報に記載されている。
被研磨面2bは、予め3次元NC制御を行うカーブジェネレータ等によって所定の面形状に機械加工されている。
図3は前記レンズをレンズ保持体37に取付けた状態を示す断面図である。
同図において、レンズ1を保持するレンズ保持体37は、金属製(工具鋼等)のヤトイ44と、このヤトイ44とレンズ1を接合する接着剤45とで構成されている。ヤトイ44の背面側には、前記レンズ取付部36に対して嵌合する嵌合凹部47が形成されている。この嵌合凹部47は、ハメアイの方向性を有している。接着剤45としては、通常低融点のアロイ(例えば、Bi,Pb,Sn,In,Gaの合金、融点約49℃)が用いられる。レンズ1の凸面2aと接着剤45との間には、傷防止用の保護フィルム46が介在されている。接着剤45によってレンズ1をヤトイ44に接合するには、例えばLOH社製のレイアウトブロッカーと呼ばれる装置が用いられる。また、レンズ1は、前述の基準軸の位置を考慮してヤトイ44に取付けられる。具体的には、ヤトイ44をレンズ取付部36に取付けたとき、被研磨面2bの基準軸方向が研磨治具39の基準軸と一致するように、レンズ1をヤトイ44に取付ける。なお、ヤトイ44は、レンズ1の度数、外径、凸面2aの曲率に応じて大きさの異なるものが用いられる。
図2において、前記揺動装置38は、垂直な回転軸21の上端に垂直方向に所要角度(α)傾斜して取付けられており、上端面に前記研磨治具39が着脱可能に設置されている。回転軸48は研磨時に軸線周りに回転する。揺動装置38は回転軸48が回転すると、回転軸48の軸線周りを首振り旋回運動するように構成されている。回転軸48に対する揺動装置38の傾斜角度αは、例えば、5°である。図4は揺動装置38と研磨治具39の首振り旋回運動の軌跡50を示す。揺動装置38は、首振り旋回運動において回転軸48の周りを公転するだけで自転はしない。
図5〜図8において、前記研磨治具39は、弾性材料によってカップ状に形成された下面側が開放するバルーン部材51と、このバルーン部材51の下面側開口部を閉塞し内部を気密に保持する固定具52と、前記バルーン部材51の内部に圧縮空気を供給するバルブ53とで構成されている。
前記バルーン部材51は、ドーム部51Aと、このドーム部51Aの外周より下方に向かって一体に延設された略楕円形の筒部51Bと、この筒部51Bの下端に一体に延設された環状の内フランジ51Cとで構成されている。
前記固定具52は、内側固定具55と外側固定具56の2部材からなり、これらによってバルーン部材51の内フランジ51Cを内側と外側から挟持することにより、バルーン部材51の下面側開口部を気密に封止している。このため、バルーン部材51の内部は、密閉空間57を形成している。内側固定具55は、バルーン部材51の筒部51Bの内側の形状と略同一の大きさの楕円板からなり、下面外周部に前記内フランジ51Cが嵌合する環状溝58が形成されている。
前記外側固定具56は、上方が開放するカップ状に形成されていることにより、円板状の底板56Aと、この底板56Aの上面外周に一体に突設された円筒部56Bとからなり、この円筒部56B内に前記内側固定具55が前記バルーン部材51の筒部51Bとともに嵌挿される。円筒部56Bは、外形が円形で、内形がバルーン部材51の筒部51Bの外形と略同一の大きさの楕円形に形成されている。そして、外側固定具56は、内側固定具55が複数個の止めねじ60によって一体的に結合された後、前記揺動装置38の上面に、前記バルーン部材51の基準軸方向(図5の矢印F方向)を、被研磨面2bの基準軸方向である、前記アーム34の往復移動方向(図2のX方向)と一致させて取付けられる。
前記バルブ53は逆止弁からなり、前記内側固定具55に取付けられている。
前記ドーム部材51の密閉空間57に圧縮空気を前記バルブ53を介して供給すると、ドーム部51Aは上方に膨張し、ドーム部51Aの中心軸を含む断面の平均曲率が短軸方向(図5の矢印G方向)で最大、長軸方向(矢印F方向)で最小なトーリック面となる。この場合、ドーム部51Aの曲率は、ドーム部51Aの中央高さ(頂点高さ)に対応して変化するため、適宜な装置によってドーム中央の高さを測定し調整することにより、ドーム部51Aの曲率を所望の曲率とすることができる。
研磨パッド40は、前記締付部材76によって前記研磨治具39に着脱自在に取付けられる。前記締付部材76は、適宜な太さの線ばねをリング状に塑性変形させて両端部を重ね合わせたもので、自然状態では前記外側固定具56の外径より小さい直径を有し、両端部76a,76bが外側にそれぞれ略直角に折り曲げられている。
前記研磨パッド40を研磨治具39に取付けるには、先ず圧縮空気の供給によってバルーン部材51のドーム部51Aを所定のドーム形状に膨張させた後、その上に研磨パッド40の研磨部70を載置する。次に、締付部材76の両端部76a,76bを指先で挟んでその間隔を弾性に抗して狭めることにより締付部材76を拡径化し、この状態で締付部材76を研磨パッド40の固定片71に上方から押しつけてこれらの固定片71を下方に折り曲げ外側固定具56の外周に接触させる。そして、両端部76a,76bから指先を離すと、締付部材76は元の形状に復帰して固定片71を外側固定具56の外周に締付け固定し、もって研磨パッド40の取付けが終了する。
このような構造からなる研磨装置30によるレンズ1の研磨は、以下の手順によって行われる。
先ず、アーム34のレンズ取付部36にレンズ1をレンズ保持体37を介して装着する。次に、揺動装置38の上面に研磨パッド40が取付けられた研磨治具39を設置する。レンズ取付部36にレンズ1を取付ける際には、レンズ1の被研磨面2bの基準軸軸方向がアーム34の往復移動方向(図2の矢印X方向)と一致するように取付ける。研磨治具39を揺動装置38に設置する際には、バルーン部材51の基準軸方向(F方向)をアーム34の往復移動方向(矢印X方向)と一致させて設置する。
レンズ1がレンズ取付部36に取付けられると、昇降装置41によってレンズ1を下降させ、凹面2bを研磨パッド40の表面に押し付ける。この状態で研磨剤を研磨パッド40の表面に供給し、アーム34を左右方向に往復移動させるとともに軸33を中心として前後方向に回動させる。このようなアーム34の動きによるレンズ1の移動軌跡を図9に示す。
また、回転軸21の回転によって揺動装置38を図4に示すように首振り旋回運動させる。このようなレンズ1と揺動装置38の運動により、研磨の軌跡が1周毎に少しずつずれる無軌道研磨軌跡でレンズ1の凹面2bを前記研磨パッド40と研磨剤によって研磨し、所望のトーリック面に仕上げる。
なお、2つの基準軸を設定する場合には、アーム34の左右方向(矢印X方向)への移動に加えて、アーム34の水平な軸33を中心とした紙面と直交する方向(矢印AB方向)への回動を利用することにより、凸部表面上の2つの基準軸と、凹面上の2つの基準軸との軸同士の方向を、それぞれの方向で一定に維持した状態で研磨を行うことができる。
成形体の凹面の研磨は1段階の研磨で行ってもよく、2段階以上の研磨で行ってもよい。カーブジェネレータによって切削加工された凹面には、NC制御によるバックラッシュ等に起因する加工段差が含まれている場合があるので、その場合には光学面を得るために加工段差を研磨によって除去する必要がある。したがって、その場合には、凹面の研磨工程を荒研磨と仕上げ研磨の2段階研磨とすることが好ましい。例えば、荒研磨においては、研磨砥粒の平均粒径が1.6〜1.8μmのものを用い、温度を8〜14℃に制御して研磨することができる。また、研磨時間は2〜6分、研磨圧は5〜400ミリバール、回転速度は400〜1000rpmとすることができる。
次に、仕上げ研磨においては、例えば、研磨砥粒の平均粒径が0.8μm程度のものを用いて研磨することができる。研磨時間は30秒〜1分程度、研磨圧は5〜400ミリバール、回転速度は400〜1000rpmとすることができる。このように研磨条件を変えて研磨することにより、加工段差を確実に取り除くことができる。
以上説明した本発明によれば、各種形状の被研磨面において、面内における研磨量のばらつきを低減することができるため、機械加工により形成された面形状を維持した状態で研磨を行うことができる。これにより本発明によれば、所望の光学面を有する光学レンズを得ることができる。
以下に、本発明を実施例により更に説明する。ただし本発明は、実施例に示す態様に限定されるものではない。
1.研磨対象レンズ(乱視レンズ)の成形
注型重合法により、一方が凸面、他方が凹面のポリカーボネート製のφ75mmのセミフィニッシュレンズを成形した。凹面はトーリック面であり、ベース方向(乱視軸方向)が面内で平均曲率が最小となる方向、これと直交するクロス方向が面内で平均曲率が最大となる方向である。成形したレンズ凹面のベース方向(乱視軸方向)の曲率半径は120.188mm、これと直交するクロス方向の曲率半径は91.891mmであった。
2.凹面の機械加工
上記1.で成形したセミフィニッシュレンズの凹面を、3次元NC制御を行うカーブジェネレータによって所定の面形状に切削加工した(加工精度3μm以内、表面粗さRy0.3〜0.5μm)。
3.研磨治具の作製
テスト研磨治具として、図5〜図8に示す構成の研磨治具であって、ドーム部51Aがトーリック面でありベース方向、クロス方向高さ(sag.値)が異なるものを複数種作製した。バルーン部材としては、外径90φmm、JIS k 6253(デュロメータタイプE)で定義される硬度50、素材厚み約3mmのSBRを使用した。
4.研磨加工の実施
上記2.で研削加工を施したレンズと上記3.で作製した研磨治具を、図2〜4に示す研磨装置に取り付けて、研磨時間5分、研磨圧200ミリバール、回転速度530rpm、研磨剤として平均粒径0.8μmのアルミナを水に分散させたスラリーを使用して研磨加工を行った。研磨装置への取り付けは、被研磨面のベース方向とドーム部表面のベース方向、被研磨面のクロス方向とドーム部表面のクロス方向が一致するように行い、研磨時の動作は前記の通りベース方向同士、クロス方向同士の略一致した関係が位置されるようにして研磨を行った。研磨パッドとしては厚さ約2mmの羊毛製の研磨パッドを使用した。
5.研磨後のレンズの評価
上記4.で研磨加工を施した凹面の表面性状、研磨取り代、光学性能を、以下の方法で評価した。
(1)表面性状(面内研磨量のばらつき)
目視による反射光および透過光の観察と、高輝度ランプによる透過検査とを併用し、表面性状(面内研磨量のばらつきに起因する表面性状の低下有無)を評価した。
(2)研磨取り代
研磨前後の中心部部分の肉厚変化量を測定した。本実施例では、測定される肉厚変化量が5μm以下である場合、研磨取り代の評価結果良好と判断した。
(3)光学性能
眼鏡用光学測定装置(レンズメーター)によって、各種光学測定点における設計値(S度数、C度数、プリズム)からの誤差の有無および程度を評価した。
6.評価結果
上記において評価した研磨治具とレンズとの組み合わせにおいては、被研磨面である凹面とドーム部表面が基準軸上の中心部(幾何中心)で接触し周縁部で離間する場合、研磨治具のドーム部表面のφ75mmの位置が、離間距離が最大となる位置である。そこでドーム部表面のφ75mmの位置において、ベース方向およびクロス方向における凹面との離間距離を設計値から求めた。図10に示す数値は、こうして求めた離間距離であり、例えば右上カラムの(8−0)とは、ベース方向の離間距離が8mm、クロス方向の離間距離は0mm(=密着)であることを示す。他のカラムについても同様である。またカラム中、数値がマイナスになっているものは、周縁部が中心部に優先して離間する形状、即ち外あたりの状態であることを示す。(0−0)のカラムは凹面とドーム部表面の形状が一致している状態であり、この状態でのsag.値はベース方向で2mm、クロス方向で4mmであった。上記5.における評価結果と最大離間距離との対応関係を確認したところ、以下の結果が得られた。
ベース方向、クロス方向において研磨治具凸部表面と被研磨面との関係が外あたりになる組み合わせでは、被研磨面の外周部2〜4mm程度の領域に磨き残しが生じたため周縁部に比べて中心部の研磨量が多くなり、その結果表面性状の評価結果は劣っていた。
これに対しベース方向、クロス方向において研磨治具凸部表面と被研磨面との関係が中あたりになる組み合わせでは、上記外あたりの関係と比べて被研磨面のベース方向、クロス方向における軸上の研磨量のばらつきは小さく均一な研磨が可能であった。特にベース方向、クロス方向のいずれにおいても最大離間距離が2〜5mmの範囲内(図10中の太枠内)のものは、表面性状、研磨取り代、光学性能のいずれにおいても評価結果が良好であった。
以上の結果から、ベース方向、クロス方向のいずれにおいても最大離間距離が2〜5mmの範囲内であれば適切な研磨取り代で、表面性状、光学性能とも良好な、所望の光学面を形成することができることが確認できる。したがって本評価により、被研磨面と中あたりの関係にあり被研磨面とドーム部表面の最大離間距離が2〜5mmの範囲内となるものを選択することにより、適切な研磨取り代で所望の光学面が得られることが確認された。
これとは別に、研磨対象のレンズのトーリック面形状を変更して同様の評価を行ったところ、以下の結果が得られた。
(1)ドーム部表面のトーリック面のsag.値がベース方向で8mm、クロス方向で10mmにおいて凹面とドーム部表面の形状が一致する態様においては、被研磨面と中あたりの関係にあり被研磨面とドーム部表面の最大離間距離が2〜5mmの範囲内において適切な研磨取り代で所望の光学面が得られた。
(2)ドーム部表面のトーリック面のsag.値がベース方向で10mm、クロス方向で12mmにおいて凹面とドーム部表面の形状が一致する態様においては、被研磨面と中あたりの関係にあり被研磨面とドーム部表面の最大離間距離が2〜6mmの範囲内において適切な研磨取り代で所望の光学面が得られた。
(3)ドーム部表面のトーリック面のsag.値がベース方向で12mm、クロス方向で16mmにおいて凹面とドーム部表面の形状が一致する態様においては、被研磨面と中あたりの関係にあり被研磨面とドーム部表面の最大離間距離が1〜6mmの範囲内において適切な研磨取り代で所望の光学面が得られた。
(4)ドーム部表面のトーリック面のsag.値がベース方向で14mm、クロス方向で18mmにおいて凹面とドーム部表面の形状が一致する態様においては、被研磨面と中あたりの関係にあり被研磨面とドーム部表面の最大離間距離が2〜7mmの範囲内において適切な研磨取り代で所望の光学面が得られた。
(5)ドーム部表面のトーリック面のsag.値がベース方向で18mm、クロス方向で20mmにおいて凹面とドーム部表面の形状が一致する態様においては、被研磨面と中あたりの関係にあり被研磨面とドーム部表面の最大離間距離が2〜8mmの範囲内において適切な研磨取り代で所望の光学面が得られた。
(6)ドーム部表面のトーリック面のsag.値がベース方向で8mm、クロス方向で12mmにおいて凹面とドーム部表面の形状が一致する態様においては、被研磨面と中あたりの関係にあり被研磨面とドーム部表面の最大離間距離が2〜5mmの範囲内において適切な研磨取り代で所望の光学面が得られた。
(7)ドーム部表面のトーリック面のsag.値がベース方向で8mm、クロス方向で18mmにおいて凹面とドーム部表面の形状が一致する態様においては、被研磨面と中あたりの関係にあり被研磨面とドーム部表面の最大離間距離が2〜5mmの範囲内において適切な研磨取り代で所望の光学面が得られた。
(8)バルーン部材の外径を80φmmとした場合、ドーム部表面のトーリック面のsag.値がベース方向で10mm、クロス方向で20mmにおいて凹面とドーム部表面の形状が一致する態様においては、被研磨面と中あたりの関係にあり被研磨面とドーム部表面の最大離間距離が2〜6mmの範囲内において適切な研磨取り代で所望の光学面が得られた。
以上の結果から、中あたりの状態を実現する研磨治具を選択することにより、研磨量の面内均一性を高め所望の光学面が得られることが示された。本発明によれば、被研磨面の形状に対する研磨治具形状の許容範囲が広がるため、従来の弾性研磨体を使用する研磨方法と比べて1つの研磨治具により対応可能なアイテム数を増やすことができる。例えば数千個のアイテムを数十個の研磨治具を使い分けることにより研磨することが可能となる。
本発明は、眼鏡レンズの製造分野に有用である。

Claims (4)

  1. 弾性材料からなる凸部を有する研磨治具と凹面を有するレンズ形状に成形された成形体とを、研磨治具の凸部と成形体の凹面との間に研磨剤を供給しながら相対的に移動させることにより、上記凹面を研磨することを含む光学レンズの製造方法であって、
    前記研磨治具として、凸部表面に平均曲率が異なる互いに垂直な2つの軸方向を有する研磨治具であって、研磨治具凸部を研磨対象である成形体の凹面と嵌合させると、前記2つの軸方向において中心部で接触するが周縁部で離間する形状を有する研磨治具を使用することを特徴とする、光学レンズの製造方法。
  2. 前記凸部表面はトーリック面またはアトーリック面である、請求項1に記載の光学レンズの製造方法。
  3. 前記成形体の凹面はトーリック面である、請求項1または2に記載の光学レンズの製造方法。
  4. 前記相対的な移動を、研磨治具凸部表面の平均曲率が小さい軸方向がトーリック面の最小曲率方向と略平行にある状態で行う、請求項3に記載の光学レンズの製造方法。
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