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JP2011172464A - 回転電機の固定子 - Google Patents

回転電機の固定子 Download PDF

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JP2011172464A JP2010207537A JP2010207537A JP2011172464A JP 2011172464 A JP2011172464 A JP 2011172464A JP 2010207537 A JP2010207537 A JP 2010207537A JP 2010207537 A JP2010207537 A JP 2010207537A JP 2011172464 A JP2011172464 A JP 2011172464A
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Abstract

【課題】固定子巻線の発熱による回転電機の性能の低下が抑えられた回転電機の固定子を提供すること。
【解決手段】本発明の回転電機の固定子は、固定子コア30と、スロット収容部43を有する固定子巻線4と、を有する回転電機1の固定子3であって、固定子巻線4は、スロット収容部43のうち少なくとも一方の軸方向の端部において、スロット31内で径方向に対向する一対の対向面43a,43b同士が非平行の状態で配置されていることを特徴とする。
【選択図】図7

Description

本発明は、回転電機の固定子に関し、詳しくは、固定子巻線の放熱性に優れた回転電機の固定子に関する。
従来より、回転電機の固定子として、周方向に複数のスロットを有する円環状の固定子コアと、固定子コアに巻回される複数の導線からなる固定子巻線と、を備えたものが一般的に知られている。
そして、スロット内に配置される導線の占積率を向上させるために、軸線に対して垂直方向の断面形状が矩形形状であるとともに、展開したときの全体形状がクランク状に蛇行した形状の各相巻線(U相導体、V相導体、W相導体)により、固定子巻線を構成する技術が開示されている。この場合、固定子巻線を構成する各相巻線は、所定の回数、渦巻き状に巻回して円筒状に形成された構造になっている。
そして、上記の固定子巻線は、断面略四角形状のコイル素線(導線)を、スロット収容部がスロット内に径方向に並んだ状態で収容されるものとなっている。スロット収容部は、図12に示すように、スロット内では、固定子巻線の占積率をあげるために密な状態で収容されている。たとえば、特許文献1に記載のように、断面略四角形状のコイル素線(導線)を、スロット内で、隣接する導線同士が対向面の全面で密着するように設けられている。
回転電機の固定子においては、固定子巻線の発熱により、磁気特性が低下するという問題があった。固定子巻線において生じた熱は、固定子巻線から固定子コアに伝導し、放熱されるが、固定子巻線の放熱(固定子コアへの熱伝導)が不十分になると、固定子巻線自身の温度が上昇する。固定子巻線の温度が上昇すると、固定子巻線の導線の熱による電気抵抗が増加し、この抵抗の増加により、さらに発熱を生じる。
そして、上記の特許文献1に記載の回転電機及び図12に示した構成では、隣接する導線同士が対向面の全面で密着する、あるいは隣接する導線(スロット収容部)同士がほとんど隙間がない近接した状態で配置されており、固定子巻線において発生した熱が流れず(スロット収容部からの熱が伝達しようとしても、隣接するスロット収容部が位置することで伝熱が阻害され)、十分に放熱することが困難となっていた。
特開2009−195004号公報
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、固定子巻線の発熱による回転電機の性能低下が抑えられた回転電機の固定子を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、周方向に複数のスロットを有する固定子コアと、スロットに収容されるスロット収容部を有する固定子巻線と、を有する回転電機の固定子であって、固定子巻線は、図11に示すように、スロット収容部のうち少なくとも一方の軸方向の端部において、スロット内で径方向に対向する一対の対向面同士が非平行の状態で配置されていることを特徴とする。なお、スロット収容部の一対の対向面同士の非平行とは、断面において対向面が非平行である状態を示す。ここで、断面は、軸方向に沿った方向であっても、軸方向に交差する方向(垂直な方向)であってもよい。
請求項1に記載の発明によれば、図11に示すように、スロット収容部のスロット内で径方向に対向する一対の対向面が非平行の状態で配置されることで、この対向面間には、スロット収容部が位置しない空隙が維持される。すなわち、対向面が非平行な状態で配されたスロット収容部が、径方向に変移しても、対向面が密着しない状態となり、空隙が維持される。この空隙は、スロット収容部が位置しない(存在しない)ことから、回転電機の使用時(固定子巻線に通電された時)に、発熱しない(熱源とならない)。つまり、スロットに収容されているスロット収容部からの熱が伝導し、スロット収容部の放熱に寄与する。このため、固定子巻線の温度上昇を防ぎ、抵抗値が増大することを抑制できる。
スロット収容部の一対の対向面が非平行の状態で配置された状態では、一対の対向面間の距離が一定でなくなる。つまり、一対の対向面間の距離が長い部分は、短い部分に比べて、スロット収容部からの熱が拡散される。そして、スロットを区画する固定子コアにこの熱が伝達して、固定子コアにおいて拡散して放熱する。このように、本発明によれば、図11に破線の矢印で示したように、熱が流れることで、より高い冷却性能を発揮する。
また、スロット収容部の一対の対向面同士の間に空隙が維持される(形成される)ことで、固定子巻線に通電したときに発生するローレンツ力に起因するスロット収容部の振動が発生しても、スロット収容部の隙間がこの振動を許容することができる。この結果、スロット収容部の振動による導線の損傷を抑えることができる。
さらに、スロット収容部の間に空隙が維持される(形成される)ことで、スロット収容部同士で伝導する熱量が低減されている。このため、固定子巻線に熱が篭ることを抑制することができる。これによって、固定子巻線の温度上昇を防ぎ、抵抗値が増大することを抑制できる。
請求項2に記載の発明は、固定子巻線は、対向面同士の間隔が、スロットの周方向の一方側と他方側において異なることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、軸方向に垂直な断面において、一対の対向面が非平行の状態で配置される。このような構成となることで、少なくとも一方の軸方向の端部において、周方向の一方側と他方側のいずれかに空隙が維持される(形成される)。この結果、固定子巻線の温度上昇を抑えることができる。
請求項3に記載の発明は、固定子巻線は、スロットの周方向一方側における対向面同士の間隔が周方向他方側における対向面同士の間隔より大きい箇所と、スロットの周方向一方側における対向面同士の間隔が周方向他方側における対向面同士の間隔より小さい箇所とが、スロットの深さ方向において交互に設けられていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、スロットの周方向一方側における対向面同士の間隔が周方向他方側における対向面同士の間隔より大きい箇所には大きな空隙が形成され、スロットの周方向一方側における対向面同士の間隔が周方向他方側における対向面同士の間隔より小さい箇所には小さい空隙が形成される。そして、大きい空隙と小さい空隙とが径方向で交互にもうけられる。これにより、固定子コアの温度分布の集中を抑えることができる。具体的には、大きい空隙は、小さい空隙よりも高い放熱性を有しており、周方向の一方側に大きい空隙または小さい空隙が多く位置すると、空隙に基づいて放熱できる熱量に偏りが生じることとなる。そして、この熱の偏りは、固定子コアの温度分布を不均一にする。温度分布の不均一は、より高温となっている部分の電気抵抗(磁気抵抗)を増加させる。つまり、固定子コアが、部分的に電気抵抗(磁気抵抗)が増加する。
請求項4に記載の発明は、固定子巻線は、スロット内で径方向に対向する一対のスロット収容部が、軸方向の一方側において対向面同士の間隔が周方向一方側よりも周方向他方側が大きく、軸方向の他方側において対向面同士の間隔が周方向他方側よりも周方向一方側が大きく設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、一対のスロット収容部の対向面の間隔が、軸方向の両端部において、対称になっている。つまり、軸方向にのびるスロット収容部がねじれを生じることとなる。スロット収容部にねじれを生じると、スロット収容部がスロット内で軸方向に変移する(ずれる)ことが抑えられる。つまり、固定子巻線と固定子コアの位置精度の低下を抑えることができる。
請求項5に記載の発明は、固定子巻線は、スロット収容部の軸方向の中央部において、対向面同士が平行の状態で配置されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、スロット収容部の中央部において対向面が互いに平行をなすように形成されており、ローレンツ力に起因するスロット収容部の振動を緩衝することができる空間を確保することができる。その結果、スロット収容部の振動による導線の損傷を抑えることができる。
請求項6に記載の発明は、スロットとスロット収容部との間に、含浸材が配されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、スロットとスロット収容部の間に含浸材が配されていることで、スロット収容部からの熱が含浸材に伝導し、スロット収容部の放熱に寄与する。このため、固定子巻線の温度上昇を防ぎ、抵抗値が増大することを抑制できる。
また、ローレンツ力に起因するスロット収容部の振動を緩衝することができ、スロット収容部の振動による固定子巻線を構成する導線の損傷を抑えることができる。
請求項7に記載の発明は、含浸材は、熱伝導率が空気よりも大きいことを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、含浸材の熱伝導率が空気よりも大きくなっているため、固定子巻線の熱をより放熱できる。
請求項8に記載の発明は、スロットは、バックコア部とバックコア部から径方向に伸びる一対のティース部とにより区画され、対向面同士の距離は、ティース部の基端側での距離よりも先端側の距離が大きいことを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、スロット収容部の一対の対向面の間隔を内径側で大きくすることで、固定子巻線の熱をより放熱できる。具体的には、固定子巻線のスロット収容部で発生した熱は、固定子コアのティース部に伝導し、放熱される。ティース部の基端側(バックコア部に近接した部分)は、固定子巻線から伝導した熱がバックコア部にも伝導して放熱される。しかし、ティース部の先端側は、固定子巻線から伝導した熱が、バックコア部に伝導されにくくなっている。つまり、ティース部の先端側は、放熱性が低い。このため、請求項8に記載の発明によれば、固定子巻線からの熱を、固定子コアに伝導させるだけでなく、スロット収容部の間の隙間も用いて放熱する。これにより、放熱性の低いティース部の先端側においても、より高い放熱性を確保することができる。
請求項9に記載の発明は、固定子巻線は、周方向の異なるスロットに配置されているスロット収容部同士をスロットの外部で接続するターン部を有し、スロットに径方向に並んで配置されたスロット収容部に接続するターン部は、スロットの深さ方向において交互に周方向逆向きにのびていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明によれば、スロット収容部に接続する一対のターン部が周方向で逆方向にのびていることで、固定子巻線を成形するときに、スロット収容部の一対の対向面を非平行とすることができる。
請求項10に記載の発明は、ターン部の少なくとも一つは、分割した固定子巻線を接合していることを特徴とする。
請求項10記載の発明によれば、ターン部が分割した固定子巻線を接合する構成となることで、固定子巻線の放熱性が向上する。具体的には、分割した固定子巻線を接合する為には、図8に示すように、回転電機の固定子の軸方向に固定子巻線が伸長され、この伸長された部分が放熱フィンの役割をする。この結果、さらに放熱性が向上する。なお、この接合部は、固定子の両側のコイルエンド部にあってもよい。
請求項11に記載の発明は、固定子巻線は、矩形断面を有していることを特徴とする。なお、矩形断面とは、固定子巻線(を構成する導線)ののびる方向に垂直な断面での断面形状が矩形をなしていることを示す。また、矩形断面においては、略矩形断面を含む。
請求項11に記載の発明によれば、固定子巻線を構成する導線が矩形断面を有することで、固定子巻線を成形するときに、スロット収容部の一対の対向面を簡単に非平行とすることができる。
実施形態に係る回転電機の構成を示す断面図である。 実施形態に係る回転電機の固定子の構成を示す平面図である。 実施形態に係る固定子コアの平面図である。 実施形態に係る分割コアの平面図である。 (A)(B)実施形態において用いられる導線の断面図である。 実施形態に係る固定子巻線の斜視図である。 実施形態における固定子の軸方向の端部及び中央部の断面を模式的に示した模式図である。 第一変形形態に係る固定子巻線の斜視図である。 第二変形形態に係る固定子の軸方向の断面を模式的に示した模式図である。 第二変形形態に係る固定子の軸方向の断面を模式的に示した模式図である。 実施形態に係る固定子の軸方向の断面を模式的に示した模式図である。 従来の回転電機に係る固定子の軸方法の断面を模式的に示した模式図である。
以下、本発明の回転電機の固定子を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明の一実施形態の回転電機1の構成を示す断面図である。
本実施形態の回転電機1は、略有底筒状の一対のハウジング部材100,101とが開口部同士で接合されてなるハウジング10と、ハウジング10に軸受け110,111を介して回転自在に支承される回転軸20に固定された回転子2と、ハウジング10の内部で回転子2を包囲する位置でハウジング10に固定された固定子3と、を備えている。
回転子2は、永久磁石により周方向に交互に異なる磁極を、固定子3の内周側と向き合う外周側に複数形成している。回転子2の磁極の数は、回転電機により異なるため限定されるものではない。本実施形態においては、8極(N極:4、S極:4)の回転子が用いられている。
固定子3は、図2に示したように、固定子コア30と、複数の各相巻線から形成される三相の固定子巻線4と、固定子コア30と固定子巻線4との間に配された絶縁紙5と、を備えた構成を有している。
固定子コア30は、図3に示したように、内周に複数のスロット31が形成された円環状を有している。複数のスロット31は、その深さ方向が径方向と一致するように形成されている。固定子コア30に形成されたスロット31の数は、回転子2の磁極数に対し、固定子巻線4の一相あたり2個の割合で形成されている。すなわち、8×3×2=48個のスロット31が形成されている。
固定子コア30は、図4に示した分割コア32を24個、周方向に配設して形成されている。分割コア32は、一つのスロット31を区画するとともに、周方向で隣接する分割コア32との間で一つのスロット31を区画する形状を呈している。具体的には、分割コア32は、径方向内方に伸びる一対のティース部320と、ティース部320を径方向外方で連結するバックコア部321とを有している。
固定子コア30を構成する分割コア32は、電磁鋼板を積層させて形成されている。なお、固定子コア30は、この電磁鋼板の積層体からだけでなく、従来公知の金属薄板および絶縁薄膜を用いて形成してもよい。
固定子巻線4は、複数の導線40を所定の巻回方法で巻回してなる。固定子巻線4を構成する導線40は、図5(A)に示したように、矩形断面を備え、銅製の導体41と、導体41の外周を覆い導体41を絶縁する内層420及び外層421からなる絶縁皮膜42とから形成されている。内層420および外層421を合わせた絶縁皮膜42の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層420および外層421からなる絶縁皮膜42の厚みが厚いので、導線40同士を絶縁するために導線40同士の間に絶縁紙等を挟み込んで絶縁する必要がなくなっているが、図2に示したように、線材同士を絶縁するために絶縁紙5を配してもよい。
さらに、固定子巻線4の導線40は、図5(B)に示したように、内層420および外層421からなる絶縁皮膜42の外周をエポキシ樹脂等からなる融着材48で被覆してもよい。これにより、回転電機に発生する熱により融着材48は絶縁皮膜42よりも早く溶融するので、同じスロット31に設置されている複数の導線40同士が融着材48同士により熱接着する。
固定子巻線4は、図6に示したように、複数の導線40を所定の形状に巻回してなる。固定子巻線4を構成する導線40は、固定子コア30の内周側で周方向にそって波巻きされている。そして、固定子コア30に形成されたスロット31に収容される直線状のスロット収容部43と、異なるスロットに収容されたスロット収容部43同士を接続するターン部44と、を備えている。スロット収容部43は、所定のスロット数(本実施形態では3相×2個=6個)ごとのスロット31に収容されている。ターン部44は、固定子コア30の軸方向の端面から突出して形成されている。
ターン部44は、図6に示したように、軸方向に複数段の階段状に成形されている。また、ターン部44は、周方向での中央部において、径方向での位置を変移させるクランク部が形成されている。
固定子巻線4は、図7に示したように、径方向に並んだ複数のスロット収容部43が、スロット31内で径方向(スロット31の深さ方向)に並んだ状態で収容され、固定子3を形成する。
固定子3を形成したときに、固定子コア3のスロット31内には、少なくともスロット収容部43とスロット31の内周面との間に、含浸材6が配されている。本実施形態において、含浸材6は、エポキシ系樹脂よりなり、スロット31内に充填されている。
図7は、スロット収容部43のスロット31内での配置状態を模式的に示した図である。図7(A)は固定子コア30の軸方向の一方側の端部における配置状態を断面概略図で示し、図7(B)は固定子コア30の軸方向の中央部における配置状態を断面概略図で示し、図7(C)は固定子コア30の軸方向の他方側の端部における配置状態を断面概略図で示している。なお、図7(A)〜(C)は同一のスロット31内におけるスロット収容部43を示している。また、図7(A)〜(C)は、固定子コア30の軸方向に垂直な断面におけるスロット収容部43の配置状態を一方の端部側から見た場合を示している。
図7に示したように、固定子巻線4は、径方向に並んだ複数のスロット収容部43が、軸方向の両端部(図7(A),(C))で、スロット31内で径方向に対向する一対の対向面43a,43b同士が非平行の状態となっている。
具体的には、図7(A)に示したように、固定子巻線4の複数のスロット収容部43のうち、最内径側に位置するスロット収容部43Aは周方向の一方側の端部が、他方側の端部より径方向外方に位置している。最内径側に位置するスロット収容部43Aの外径側で隣接するスロット収容部43Bは、周方向の他方側の端部が、一方側の端部より径方向外方に位置している。スロット収容部43Aの外径側の対向面43Aaと、スロット収容部43Bの内径側の対向面43Bbと、の間隔は、周方向の一方の端部側で短く、他方の端部側で長くなっている。そして、スロット収容部43Bの外径側の対向面43Baと、スロット収容部43Cの内径側の対向面43Cbと、との間隔は、周方向の他方の端部側で短く、一方の端部側で長くなっている。固定子巻線4は、このスロット収容部43の外径側の対向面43aと内径側の対向面43bとの間隔が、周方向の一方の端部側と他方の端部側とで異なり、かつ径方向で交互になるように形成されている。
そして、固定子巻線4は、図7(A),(C)に示したように、軸方向の一方の端部側と他方の端部側とでは、外径側の対向面43aと内径側の対向面43bとの間隔が、対称な状態となっている。
具体的には、図7(C)に示したように、固定子巻線4の複数のスロット収容部43のうち、最内径側に位置するスロット収容部43Aは周方向の他方側の端部が、一方側の端部より径方向外方に位置している。最内径側に位置するスロット収容部43Aの外径側で隣接するスロット収容部43Bは、周方向の一方側の端部が、他方側の端部より径方向外方に位置している。スロット収容部43Aの外径側の対向面43Aaと、スロット収容部43Bの内径側の対向面43Bbと、の間隔は、周方向の他方の端部側で短く、一方の端部側で長くなっている。そして、スロット収容部43Bの外径側の対向面43Baと、スロット収容部43Cの内径側の対向面43Cbと、との間隔は、周方向の一方の端部側で短く、他方の端部側で長くなっている。固定子巻線4は、このスロット収容部43の外径側の対向面43aと内径側の対向面43bとの間隔が、周方向の一方の端部側と他方の端部側とで異なり、かつ径方向で交互になるように形成されている。
さらに、固定子巻線4は、図7(B)に示したように、軸方向の中央部では、スロット収容部43の外径側の対向面43aと内径側の対向面43bは、平行な状態でもうけられている。
すなわち、本実施形態において、固定子巻線4のスロット収容部43は、軸方向の両端部が逆方向にねじれている。
さらに、固定子巻線4は、スロット収容部43の外径側の対向面43aと内径側の対向面43bとの間隔は、径方向の外径側では短く、内径側では長くなるようにもうけられている。具体的には、図7(A)において、スロット収容部43Aの対向面43Aaとスロット収容部43Bの対向面43Bbとの周方向の他方の端部側での間隔と、スロット収容部43Eの対向面43Eaとスロット収容部43Fの対向面43Fbとの周方向の他方の端部側での間隔と、を比較すると、前者の方が長くなっている。
本実施形態は、回転電機1の固定子3が上記の構成を形成できる方法であれば、その製造方法が限定されるものではない。たとえば、導線40を波状に成形し、その成形体を周方向にそって巻回して固定子巻線4を成形し、外径側から分割コア32を組み付けて固定子3を形成する方法をあげることができる。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、スロット収容部43のうち少なくとも一方の軸方向の端部において、スロット31内で径方向に対向する一対の対向面43a,43b同士が非平行の状態で配置されている。この構成によると、一対の対向面43a,43b間には、スロット収容部43が位置しない空隙が形成されている。対向面43a,43bが非平行な状態で配されたスロット収容部43が径方向に変移したときに、対向面43a,43b同士が全面で密着しない状態となっている。つまり、対向面43a,43b間の空隙が維持される。この空隙は、スロット収容部43が位置しない(存在しない)ことから、回転電機1の使用時(固定子巻線4に通電された時)に、発熱しない(熱源とならない)。そして、スロット31に収容されているスロット収容部43からの熱が空隙に伝導することで、空隙は、スロット収容部43の放熱に寄与する。このため、固定子巻線4のスロット収容部43の温度上昇を防ぎ、抵抗値が増大することを抑制できる。
また、スロット収容部43の一対の対向面43a,43b同士の間に空隙が維持される(形成される)ことで、固定子巻線4に通電したときに発生するローレンツ力に起因するスロット収容部43の振動が発生しても、スロット収容部43の隙間がこの振動を許容することができ、導線40の損傷を抑えることができる。
さらに、スロット収容部43の間に空隙が維持される(形成される)ことで、スロット収容部43同士で伝導する熱量が低減されている。このため、固定子巻線4に熱が篭ることを抑制することができる。これによって、固定子巻線4の温度上昇を防ぎ、抵抗値が増大することを抑制できる。
なお、本実施形態では、スロット31内の固定子コア30とスロット収容部43の間に空気よりも熱伝導率の大きなエポキシ系樹脂よりなる含浸材6が配されている。つまり、スロット収容部43の間の空隙には、含浸材6が充填している。含浸材6は、スロット収容部43からの熱を固定子コア30に伝導する。含浸材6は、大きな熱伝導率を有しており、スロット収容部43からのより多くの熱を固定子コア30に伝導する。この結果、固定子巻線4の温度上昇が防止でき、抵抗値が増大することを抑制できる。
さらに、ローレンツ力に起因するスロット収容部43の振動を含浸材6が緩衝することができ、スロット収容部43が振動したときに、スロット収容部43同士が接触することを阻害する。この結果、固定子巻線4を構成する導線40の損傷が抑えられる。
本実施形態では、図7(A),(C)に示したように、スロット収容部43の外径側の対向面43aと内径側の対向面43bとの間隔が、周方向の一方の端部側と他方の端部側とで異なり、かつ径方向で交互になるように形成されている。これにより、固定子コア30の温度分布の集中を抑えることができる。具体的には、一対の対向面43a,43b同士の間隔が大きい箇所は、小さい箇所よりも近接するスロット収容部43からの熱の影響を受けにくいため、高い放熱性を有している。そして、周方向の一方の端部側又は他方の端部側に間隔の大きい箇所が多く位置すると、放熱できる熱量に周方向で偏りが生じることとなる。そして、この熱の偏りは、固定子コア30の温度分布を不均一にする。この温度分布の不均一は、より高温となっている部分の電気抵抗(磁気抵抗)を増加させる。
本実施形態では、図7(A),(C)で示されたように、固定子巻線4は、図7(A),(C)に示したように、軸方向の一方の端部側と他方の端部側とでは、外径側の対向面43aと内径側の対向面43bとの間隔が、対称な状態となっている。すなわち、スロット31内で径方向に対向する一対のスロット収容部43が、軸方向の一方側において対向面43a,43b同士の間隔が周方向一方側よりも周方向他方側が大きく、軸方向の他方側において対向面43a,43b同士の間隔が周方向他方側よりも周方向一方側が大きく設けられている。
この構成によると、一対のスロット収容部43の対向面43a,43bの間隔が、軸方向の両端部において、対称になっている。つまり、軸方向にのびるスロット収容部がねじれを生じている。スロット収容部43にねじれを生じると、スロット収容部43がスロット31内で軸方向に変移する(ずれる)ことが抑えられる。つまり、固定子巻線4と固定子コア30の位置精度の低下を抑えることができる。
本実施形態では、図7(B)で示されたように、スロット収容部43の軸方向の中央部において、対向面43a,43b同士が平行の状態で配置されている。このような構成となることで、ローレンツ力に起因するスロット収容部43の振動(径方向の振動)を緩衝することができる空間を確保することができる。その結果、スロット収容部43の振動による導線40の損傷を抑えることができる。
本実施形態では、スロット31に収容されたスロット収容部43の対向面43a,43b同士の間隔は、内径側での距離が外径側での距離よりも大きく形成されている。スロット収容部43の一対の対向面43a,43bの間隔を内径側で大きくすることで、固定子巻線4の熱をより放熱できる。具体的には、固定子巻線4のスロット収容部43で発生した熱は、固定子コア30のティース部320に伝導し、放熱される。ティース部320の基端側(バックコア部321に近接した部分)は、固定子巻線4から伝導した熱がバックコア部321にも伝導して放熱される。しかし、ティース部320の先端側は、固定子巻線4から伝導した熱が、バックコア部321に伝導されにくくなっている。つまり、ティース部320の先端側は、放熱性が低い。このため、固定子巻線4からの熱を、固定子コア30に伝導させるだけでなく、スロット収容部31の間の隙間も用いて放熱する。これにより、放熱性の低いティース部320の先端側においても、より高い放熱性を確保することができる。
本実施形態では、周方向の異なるスロット31に配置されているスロット収容部43同士をスロット31の外部で接続するターン部44を有し、スロット31に径方向に並んで配置されたスロット収容部43に接続するターン部44は、スロット31の深さ方向において交互に周方向逆向きにのびている。これによると、スロット収容部43に接続する一対のターン部44が周方向で逆方向にのびていることで、固定子巻線4を成形するときに、スロット収容部43の一対の対向面43a,43bを非平行とすることができる。
本実施形態では、固定子巻線4を構成する導線40は、図5に示したように、矩形断面を有していることで、固定子巻線4を成形するときに、スロット収容部43の一対の対向面を簡単に非平行とすることができる。
上記の実施形態では固定子巻線4が図6に示した構成の固定子巻線を用いているが、本発明の固定子巻線はこの構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の固定子巻線4は、複数のスロット収容部43が径方向で並んだ状態の固定子巻線であれば、導線40の巻回形態が限定されるものではない。
(第一変形形態)
本形態の固定子巻線4は、図8に示したように、固定子巻線4の軸方向の端部に位置するコイルエンド部で、分割された巻線(セグメント)を接合して形成している。固定子巻線4を形成するためのセグメントの接合は、コイルエンド部で行われている。そして、セグメントの接合される端部は、固定子巻線4の軸方向に伸長している。またセグメントの端部同士の接合は、端部同士が側面で当接した状態で接合される。
本形態においては、この伸長して形成された部分が、放熱フィンと同様に機能することで、スロット収容部の導線の放熱性がさらに向上する。
なお、本形態においては、固定子巻線4の軸方向の一方の端部(図8に示した端部)に、全てのセグメントの端部が位置し、それぞれが接合されているが、全てのセグメントの端部が一方に位置していなくてもよい。すなわち、図示されない他方の端部側に一部のセグメントの接合部が位置してもよい。
(第二変形形態)
本形態の固定子巻線4は、図9に示したように、スロット31内に収容されたスロット収容部43A〜Fが周方向に交互にずれている。本形態の構成を示す図9は、図7(A)〜(C)と同様に軸方向の両端部及び中央部での断面図である。
本形態の固定子巻線4は、図9(A)に示したように、具体的には、スロット収容部43Aに隣接するスロット収容部43Bが、スロット収容部43Aに対して周方向の他方側にずれている。そして、スロット収容部43Bに隣接するスロット収容部43Cが、スロット収容部43Bに対して周方向の一方側にずれている。このように、スロット収容部43A,C,Eに対して、スロット収容部43B,D,Fは、周方向の他方側に(相対的に)ずれている。この構成では、対向面43Aaの一方側の端部は、対向面43Bbの一方側の端部よりも、径方向の外径側に位置している。対向面43Baの他方側の端部は、対向面43Cbの一他方側の端部よりも、径方向の外径側に位置している。
本形態の固定子巻線4は、図9(C)に示したように、スロット収容部43Aに隣接するスロット収容部43Bが、スロット収容部43Aに対して周方向の一方側にずれている。そして、スロット収容部43Bに隣接するスロット収容部43Cが、スロット収容部43Bに対して周方向の他方側にずれている。このように、スロット収容部43A,C,Eに対して、スロット収容部43B,D,Fは、周方向の一方側に(相対的に)ずれている。この構成では、対向面43Aaの他方側の端部は、対向面43Bbの他方側の端部よりも、径方向の外径側に位置している。対向面43Baの他方側の端部は、対向面43Cbの一他方側の端部よりも、径方向の外径側に位置している。
本形態の固定子巻線4は、図9(B)に示したように、スロット収容部43A〜Fが、スロット31内でより近接した状態で形成されている。これは、図9(A),(C)に示したように、スロット収容部43A〜Fの端部同士の径方向での間隔がより短く形成されていることによる。
本形態の固定子巻線4は、図9に示したように、径方向にならんだスロット収容部43A〜Fの端部が、交互にずれて形成されており、スロット31内でのスロット収容部43A〜Fの径方向の積層厚さ(径方向距離)を、さらに短くすることができる。より具体的には、図10に示したように、より短くすることができる。なお、この図10(A)は、図7(A)と同様の構成を、図10(B)には9(A)と同様の構成を示した。これにより、回転子2−最内側固定子巻線43A間の距離を大きくすることが可能となり、固定子巻線4の渦電流損失が減少する。この結果、固定子巻線4の発熱量が低下し、放熱させる熱量が減少することで、放熱性が向上する。
(その他の変形形態)
さらに、上記の各形態では、一つのスロット収容部43の両端に接続する一対のターン部44が、最内径に位置するスロット収容部43に接続する一対のターン部44が周方向で同じ方向にのびた状態で、それ以外のスロット収容部43に接続する一対のターン部44が周方向で反対方向にのびた状態で固定子巻線4が形成されている。そして、この形態だけではなく、スロット収容部43に接続する一対のターン部44のそれぞれが全て周方向で反対方向にのびた状態で固定子巻線4が形成されていてもよい。
また、上記の各形態では、導線40の両端40a,40bが固定子巻線4の外径側に位置するように巻回しているが、導線40の両端が固定子巻線4の内径側と外径側のそれぞれに位置するように巻回してもよい。
1:回転電機 10:ハウジング
110,111:軸受け
2:回転子 20:回転軸
3:固定子 30:固定子コア
31:スロット 32:分割コア
4:固定子巻線 40:導線
41:導体 42:絶縁皮膜
43:スロット収容部 44:ターン部
5:絶縁紙
6:含浸材

Claims (11)

  1. 周方向に複数のスロットを有する固定子コアと、前記スロットに収容されるスロット収容部を有する固定子巻線と、を有する回転電機の固定子であって、
    前記固定子巻線は、前記スロット収容部のうち少なくとも一方の軸方向の端部において、前記スロット内で径方向に対向する一対の対向面同士が非平行の状態で配置されていることを特徴とする回転電機の固定子。
  2. 前記固定子巻線は、前記対向面同士の間隔が、前記スロットの周方向の一方側と他方側において異なることを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子。
  3. 前記固定子巻線は、前記スロットの周方向一方側における前記対向面同士の間隔が周方向他方側における前記対向面同士の間隔より大きい箇所と、前記スロットの周方向一方側における前記対向面同士の間隔が周方向他方側における前記対向面同士の間隔より小さい箇所とが、前記スロットの深さ方向において交互に設けられていることを特徴とする請求項2記載の回転電機の固定子。
  4. 前記固定子巻線は、前記スロット内で径方向に対向する一対の前記スロット収容部が、軸方向の一方側において前記対向面同士の間隔が周方向一方側よりも周方向他方側が大きく、軸方向の他方側において前記対向面同士の間隔が周方向他方側よりも周方向一方側が大きく設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転電機の固定子。
  5. 前記固定子巻線は、前記スロット収容部の軸方向の中央部において、前記対向面同士が平行の状態で配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の回転電機の固定子。
  6. 前記スロットと前記スロット収容部との間に、含浸材が配されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の回転電機の固定子。
  7. 前記含浸材は、熱伝導率が空気よりも大きいことを特徴とする請求項6記載の回転電機の固定子。
  8. 前記スロットは、バックコア部と該バックコア部から径方向に伸びる一対のティース部とにより区画され、前記対向面同士の距離は、該ティース部の基端側での距離よりも先端側の距離が大きいことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の回転電機の固定子。
  9. 前記固定子巻線は、周方向の異なる前記スロットに配置されている前記スロット収容部同士を前記スロットの外部で接続するターン部を有し、前記スロットに径方向に並んで配置された前記スロット収容部に接続する前記ターン部は、前記スロットの深さ方向において交互に周方向逆向きにのびていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の回転電機の固定子。
  10. 前記ターン部の少なくとも一つは、分割した固定子巻線を接合していることを特徴とする請求項9記載の回転電機の固定子。
  11. 前記固定子巻線は、矩形断面を有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の回転電機の固定子。
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