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JP2011160673A - 水素ガスの生産方法及びそのための微生物 - Google Patents

水素ガスの生産方法及びそのための微生物 Download PDF

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Abstract

【課題】水素ガスを生産する方法およびそのために用いられる微生物を提供する。
【解決手段】フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフェレドキシン/フラボドキシンを生産し、ピルピン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素の酵素活性を持つタンパク質の生産が増加するように遺伝子操作された微生物を、少なくとも1種の、微生物が吸収可能な炭水化物および吸収可能な窒素源を含む培養培地で培養する、水素ガスを生産する方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、水素ガスを生産する方法およびそのために使用する微生物に関する。
水素ガス(H)は、特にそのHからエネルギーへの変換による環境への影響が極小であるので、移動用及び定置用の両用途において、有望な次世代エネルギー媒体である。現在のHの全世界市場は、1600億米ドルに値すると見積られている。Hが移動用の用途(例えば、自動車、飛行機)の燃料として大規模に採用された場合、現市場はより大きくなると見込まれている。H生産およびその利用が、環境に影響を及ぼすのに十分な規模で石油代替物として商業的に成熟するためには、石油代替エタノールと比較して数多くの未解決の課題が、更なる研究開発を依然として必要としている。他の代替燃料と比較しての移動距離のコスト効果とともに、生産コストが大きな課題である。Hは、潜在的に、広い範囲の様々な再生不可能および再生可能な資源から得ることができる。植物由来のバイオマスは、潜在的な再生可能なエネルギー資源のひとつである。微生物による醗酵を通してバイオマスはHに変換され得る。しかし、その初期基質(糖)に対する収量は、エタノールと比較して、非常に悪い。バイオマス生産が、バイオマス由来燃料生産において、大きな経済的、環境的コスト(Hill et al., 2006)であるため、基質あたりの生産物の収量は、経済的、環境的に持続可能なH生産を可能にする重要な可変要因である。従って、微生物によるH生産の向上は、Hの工業的生産に必要である。
数多くの微生物が、多岐にわたる代謝経路において、様々なかたちでHを生産および消費する能力をもっている。水素を生産する微生物のほとんどは、ピルビン酸依存性H生産能力をもっている。典型的に、それは、原生生物または属によって、2つの極めて異なる経路の種類によって行われる。典型的に、クロストリジウム属(Clostridium)および始原細菌のいくつかの菌では、(Wahl et al., 1987; Pieulle et al., 1997; Ma et al., 1999)、ピルビン酸の酸化によって得られた電子は、フェレドキシンに受け渡され、次いで、フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼを還元するのに用いられる。
(クロストリジウム属) ピルビン酸−>フェレドキシン+アセチルCoA(PFOR)、次いで、フェレドキシン−>H(ヒドロゲナーゼHYDA)
大腸菌(E.coli)および他のエンテロバクター(Enterobacter)種において、主要なピルビン酸依存性H合成経路は、はじめに、ピルビン酸:ギ酸水素リアーゼ(PFL)によって触媒され、それが、ギ酸依存性水素リアーゼ(FHL)とともに、次の電子移動を効率的に触媒する(Sawers et al., 2005)。
(エンテロバクター) ピルビン酸−>ギ酸+アセチルCoA(PFL、ピルビン酸 ギ酸リアーゼ)、次に、ギ酸−>H(FDH)
細胞外のギ酸も、例えば、共生関係におけるメタン生成種と共に、H生産または種間電子伝達に直接用いられることができる。
ピルビン酸は、全てではないにしてもほとんどの微生物の代謝において、鍵となる中間体である。ピルビン酸の源および運命は、種および特定の種のその優勢な条件下における代謝に依存する。特に、酸素の有無は、大腸菌などの通性嫌気性生物におけるピルビン酸の運命に影響する(Causey et al., 2004)。大腸菌K−12種では、嫌気醗酵条件下においてピルビン酸生産は、NAD−再生成の役割が、種々の電子数をもつ還元排出代謝物に分散されている「混合醗酵」と呼ばれるプロセスによって制限される。従って、グルコースで生育した場合、エタノールだけではなく、コハク酸および乳酸も生成される(Alam and Clark, 1989)。しかし、後者2つの化合物の生成は、ピルビン酸形成の前に分岐するので、潜在的なピルビン酸の形成を減じる。
エタノール生産のみが、ピルビン酸分岐点の下流に位置し、ギ酸依存性H合成は、NAD−再生成に関して酸化還元中性である。従って、活性PFL/FHL経路の有無は、アセチルCoAの形成には影響するであろうが、NAD再生成には影響しない(Hasona et al., 2004)。AlamおよびClark(1989)は、遺伝子ldhAおよびfrdの削除が2つの前ピルビン酸生産物分岐を効果的に取り除き、その結果、乳酸(ldhAによってコードされるタンパク質によって触媒される反応)およびコハク酸(frdABCDによってコードされるタンパク質によって触媒される反応)を取り除くことを示した。しかし、排出されるピルビン酸、エタノールおよびギ酸の量は増加せず、かわりに酢酸の排出が高まった。しかし、Causeyらは(2003、2004)、同じ方法を用い、同様の条件下で酢酸形成の責任遺伝子をも削除し、その組み換え大腸菌株を用いて(これらの株は、そのプロセスが好気的条件下で行われるようさらに組み換え操作されたけれども)、ピルビン酸生産を効果的に高めた。従って、ldhAおよびfrdの削除は確立されており、大腸菌において、嫌気下でグルコースからピルビン酸への流れを増やすために必要な重要なプロセスである。
グルコース由来のギ酸依存性H生産の収量および合成速度は、ピルビン酸生産を高めると、すでに特徴づけられたものと同じ削除、すなわち、遺伝子frdおよびldhAの削除によって高められることが、近年、見出された(Yoshida et al., 2006)。
生産用の既存の株を用いるにあたって大きな問題点は、最も有望なH生産微生物は、(1)33%未満(グルコース中の水素原子1モル当たりのモルH)しか生産せず、(2)遺伝学的に扱いやすくない、または遺伝子操作しやすくない、および(3)一定の、限られた基質特異性を持つH経路を発現する。例えば、我々の知る限り、大腸菌K−12は、ギ酸依存性H合成のみ可能であり、潜在的なH生産は、わずか16%(グルコース中の水素原子1モル当たりのモルH)に完全に制約される。そのうえ、Sawers(2005)およびYoshidaら(2007)に記述されているように、大腸菌K−12でのPFL経路およびFHL経路の誘導は、特定環境条件に応じた、高度に複雑な制御の対象となっている。従って、大腸菌において、PFL/FHL経路を、多くのクロストリジウム属菌(Clostridium spp.)に存在するもののように、使用者が完全に制御するピルビン酸依存性H合成経路に置き換えることによって、生産コストが減少し、大腸菌によるバイオ水素の生産の全体的なプロセス速度が増加することが期待されている。
US 2004/0152159 A
Alam et al., J Bacteriol. 1989 November; 171(11): 6213-6217 Axley et al, 1990, J Biol Chem. 1990 Oct 25;265(30):18213-8 Blaschkowski et al. (1982) Eur. J. Biochem. 123, 563-569 Causey et al., Proc Natl Acad Sci USA. February 4, 2003, vol. 100, no. 3, 825-832 Causey et al., Proc Natl Acad Sci USA. February 24, 2004 vol. 101 no. 8 2235-2240 Hasona et al., JOURNAL OF BACTERIOLOGY Vol. 186, No. 22, Nov. 2004, p. 7593-7600 Ma et al (1997) Ma et al., Proc Natl Acad Sci USA. 1997 Sep 2;94(18): 9608-13 Pieulle et al., JOURNAL OF BACTERIOLOGY, Oct. 1997, p. 5684-5692 Sawers, Biochemical Society Transactions (2005) Volume 33, part 1, 42-46 Wagner et al, 1992; Proc Natl Acad Sci U S A. 1992 Feb 1;89(3):996-1000. Wahl et al., J Biol Chem. 1987 Aug 5;262(22):10489-96 Yoshida et al. APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY, Nov. 2005, p. 6762-6768 Yoshida et al., Appl Microbiol Biotechnol (2006) 73: 67-72 Yoshida et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. (2007) 74; 754-760 Akhtar, M. K., and Jones, P. R. (In Press) Engineering of a synthetic hydF-hydE-hydG-hydA operon for biohydrogen production, Anal Biochem. Baba, T., Ara, T., Hasegawa, M., Takai, Y., Okumura, Y., Baba, M., et al. (2006) Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-gene knockout mutants: the Keio collection, Mol Syst Biol 2: 2006 0008. Datsenko, K. A., and Wanner, B. L. (2000) One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products, Proc Natl Acad Sci U S A 97: 6640-6645. Miller, J. H. (1972) Experiments in Molecular Genetics. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.
従って、本発明の目的は、微生物による、Hの増加した生産の方法を提供することである。本発明の他の目的は、Hの増加した生産を有する微生物を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフェレドキシン/フラボドキシンを生産する微生物のH生産が、ピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素をコードする外来の遺伝子を導入することによって、増加することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、少なくとも1種の微生物を、吸収可能な炭水化物および吸収可能な窒素源を含む培養培地で培養し、それによって水素ガスを生成する工程であって、前記微生物は、フェレドキシン/フラボドキシン依存ヒドロゲナーゼおよびフェレドキシン/フラボドキシンを生産し、前記微生物は、ピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素の酵素活性を持つタンパク質の生産が増加するように遺伝子操作され、前記微生物は前記培養培地中の前記炭水化物を吸収すると同時に水素ガスを生成することができる工程;および生成した水素ガスを回収する工程を含む、水素ガスの生産方法を提供する。
本発明はまた、フェレドキシン/フラボドキシン依存ヒドロゲナーゼおよびフェレドキシン/フラボドキシンを生産する微生物であって、前記微生物は、ピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素の酵素活性を持つタンパク質の生産が増加するように遺伝子操作され、前記微生物は、培養培地中の炭水化物を吸収すると同時に水素ガスを生成することができる微生物を提供する。
本発明によって、Hの増加した生産を可能にする微生物によるH生産の新規な方法、およびそのために用いられる新規微生物が提供された。本発明の方法によって、H生産が高められるので、本発明は、環境への影響が最小限で、移動用及び定置用の両用途において有望な次世代エネルギー媒体であるHの生産に貢献するであろう。
図1は、実施例で用いたpCDF−FEGAFdxベクターの関連部分の構造を、水素が生産される代謝経路とともに示す。 図2は、実施例で調製した大腸菌BL21(DE3)形質転換体による、培養培地の上部の空間中のH濃度(v/v%)に換算した経時的なH生産を、対照形質転換体によるH生産とともに示す。 図3は、iscR遺伝子を欠損したものを含めた様々な微生物によって生産されたHの量を示す。
この明細書および添付の請求項において、単数形「a」および「an」、並びに「the」は、文脈上、そうでないことが明らかでない限り、複数形の照応も含むということに注意すべきである。従って、例えば、「a microorganism(微生物)」は、複数のそのような微生物を含む。また、「a nitrogen source(窒素源)」は、1つまたはそれ以上の窒素源を含む。
本発明は、フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフェレドキシン/フラボドキシンを生産する微生物のH生産が、ピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素の酵素活性を有するタンパク質の生産を増加することによって、増加するという知見に基づいている。
従って、本発明の方法で用いられる微生物は、ピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素の酵素活性を有するタンパク質の生産が増加するように遺伝子操作されたものであるということを特徴とする。そのタンパク質は、好ましくは、フェレドキシンまたはフラボドキシンの還元と共に同時に起こるピルビン酸の酸化によって定義される、ピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素の酵素活性を有する。本発明者らは、フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフェレドキシン/フラボドキシンを天然に生産し、培養培地中の炭水化物を吸収すると同時に水素ガスを生産することができる微生物、例えば、大腸菌(Escherichia coli)のH生産は、ピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素(以下、略して「YBDK」ともいう)の生産を増加することによって高められ得ることを見出した。「YBDKの酵素活性を有するタンパク質の生産を増加する」とは、微生物が遺伝子操作を施す以前は、そのタンパク質を生産しない場合、および、微生物が遺伝子操作を施す前から、そのタンパク質を生産し、遺伝子操作後、その生産が増加する場合を含む。
YBDKの酵素活性を有するタンパク質の生産を増加するための遺伝子操作は、タンパク質の生産を増加する遺伝子操作のいずれでもよい。好ましくは、遺伝子操作は、そのタンパク質をコードする遺伝子(外来性の遺伝子)を含む組み換えベクターの1個またはそれ以上のコピーを細胞に導入し、外来性の遺伝子を発現することによって実施される。YBDKのアミノ酸配列およびYBDKをコードする塩基配列は周知であるので、そのような遺伝子操作は、当業者ならば容易に実施し得る。
より具体的に、大腸菌のピルビン酸:フラボドキシン酸化還元酵素のアミノ酸配列およびその遺伝子の塩基配列は、ジェンバンク受託番号(GenBank accession No.)AAC74460に示されている。該アミノ酸配列および塩基配列は、また、配列表の配列番号1に示されている。クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、デスルホビブリオ・アフリカヌス(Desulfovibrio africanus)のピルビン酸:フラボドキシン・フェレドキシン酸化還元酵素のアミノ酸配列およびその遺伝子の塩基配列は、それぞれ、ジェンバンク受託番号CAC2499、CAC2229(同様に、クロストリジウム・アセトブチリクム(C. acetobutylicum)),X13109,X85171,Y09702に示されている。
宿主微生物の種にとって天然のYBDKをコードする遺伝子を導入することが好ましい。従って、例えば、宿主微生物が、大腸菌の場合、大腸菌のYBDKをコードする遺伝子、すなわち、配列番号1に示される塩基配列をもつ遺伝子を導入することが好ましい。しかし、YBDKの酵素活性を有するタンパク質をコードする(そのようなタンパク質は、便宜上、以下、「修飾YBDK」ともいう)、すなわち、フェレドキシンまたはフラボドキシンのいずれかを還元すると同時にピルビン酸の酸化を触媒することができる、いかなるタンパク質をコードするいかなる遺伝子を用いてもよい。そのようなタンパク質は、好ましくは、YBDKのアミノ酸配列に90%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するものがよく、より好ましくは95%以上の相同性を、さらに好ましくは98%以上の相同性をもつものがよい。よって、宿主微生物が大腸菌の場合、配列番号2に示されるアミノ酸配列に90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性をもつアミノ酸配列をコードする遺伝子を、コードされたタンパク質がYBDKの酵素活性をもつ限り、大腸菌細胞に好ましくは導入し得る。ここでアミノ酸配列の「相同性」という用語は、一致するアミノ酸残基の数が最大となるように(必要に応じてギャップを挿入する)、2つのアミノ酸配列を並べ、一致したアミノ酸残基の数を完全長の配列のアミノ酸残基(2つの配列間で全アミノ酸残基の数が異なる場合、長い方のアミノ酸残基)の数で除することよって求めた値を意味する。そのような相同性の計算は、BLASTのような周知のソフトウェアによって容易に入手し得る。
タンパク質が、ピルビン酸:フラボドキシン酸化還元酵素の酵素活性を有するか否かは、例えば、ピルビン酸:フェレドキシン/フラボドキシン酸化還元酵素、ピルビン酸、CoA、MgCl、チアミンピロ燐酸、適切なフェレドキシンまたはフラボドキシン、同一の電子の受容体/供与体(すなわち、フェレドキシンまたはフラボドキシン)に対する特異性をもつヒドロゲナーゼを、適切なバッファー中に、完全な嫌気条件下で含む、酵素アッセイによって決定され得る。最終反応混合物の上部の空間中を、H生産についてモニターする。または、ヒドロゲナーゼを除いて、前述と同じ反応混合物を用いて、酸化された電子受容体/供与体に対する還元された電子受容体/供与体の割合を、紫外分光光度法(各タンパク質によって決められた吸光度で)によりモニターしてもよく、レポーター分子であるメトロニダゾールを還元する能力(吸光度320nm)、若しくは、酸化されたメチルビオロゲンまたは酸化されたベンジルビオロゲンを、フェレドキシンおよびフラボドキシンの非存在下で還元することによって(吸光度604nm)モニターしてもよい。この酵素アッセイのより具体的な条件は、例えば、次の通りであり得る。(1〜5μgのpCDOPFEGA(後述)をもつBL21(DE3)の各粗溶解物、試験対象のタンパク質を発現するプラスミド、組み換えフェレドキシンまたはフラボドキシンを発現することができるプラスミド、100mM Tris−HCl(pH7.5)、20mM ピルビン酸、0.5mM CoA、0.5mM チアミンピロ燐酸、0.5mM MgClを含む反応混合物を、ブチルゴム栓で密閉した血清瓶に、完全嫌気条件下で、集める。反応を、37C(150rpm)で1〜4時間インキュベートし、後述のように、上部の空間をHについて分析する。
天然のタンパク質を構成する20種のアミノ酸は、同じ特性をもつグループにグループ分けされ得ることが知られている。すなわち、例えば、極性の低い側鎖をもつ中性アミノ酸(グリシン(Gly)、イソロイシン(Ile)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、アラニン(Ala)、メチオニン(Met)、プロリン(Pro))、親水性の側鎖をもつ中性アミノ酸(アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、トレオニン(Thr)、セリン(Ser)、チロシイ(Tyr)、システイン(Cys))、酸性アミノ酸(アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu))、塩基性アミノ酸(アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、ヒスチジン(His))および芳香族アミノ酸(フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp))である。アミノ酸を他のアミノ酸に置換するとき、タンパク質の特性は、アミノ酸が同じグループ内のアミノ酸に置換するならば、あまり変化しないことが多い。従って、修飾したYBDKをコードする遺伝子を微生物に導入する場合、修飾したYBDKは、好ましくは、1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換を有し、各置換が同じグループ内で行われたものがよい。
ybdK遺伝子の塩基配列は公知であり、ybdKk遺伝子の源は公知で入手可能であり、また、外来の遺伝子を微生物に導入するための発現ベクターは周知で、市販されているので、YBDK(遺伝子は、便宜上、以下「ybdK遺伝子」ともいう)または修飾YBDKをコードする遺伝子を含む組み換えベクターの構築は当業者ならば容易に実行し得る。より具体的に、組み換えベクターは、ybdk遺伝子を調製し、ybdk遺伝子を発現ベクターのマルチクローニングサイトに挿入することによって、構築され得る。ybdK遺伝子は、ybdK遺伝子を有する微生物のゲノムから単離し得る。必要に応じて、ybdK遺伝子は、ybdK遺伝子を有する微生物のゲノムを鋳型として用いて、PCRなどにより増幅し、増幅産物を、発現ベクターに挿入し得る。この場合、ybdK遺伝子の塩基配列は公知であるので、PCR用のプライマーは容易に調製し得る。
構築されたybdK遺伝子を含む組み換えベクターは、当分野では周知の方法、例えば塩化カルシウム法などによって、微生物細胞に導入し得る。発現ベクターのもつ選択マーカーを利用して選択した後、組み換えベクターが導入された微生物細胞が得られる。こうして得られた形質転換体から、YBDKを生産するものを選択し、クローンする。その後、クローンした微生物細胞を培養し、増幅した細胞を、本発明の方法に用い得る。
前述の遺伝子操作により、宿主微生物によるYBDKまたは修飾したYBDKの生産が増加し、次いで宿主微生物によるH生産が、向上する。
本発明の方法に用いられる微生物は、フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフェレドキシン/フラボドキシンを生産するものでもある。「フェレドキシン/フラボドキシン」という語は、フェレドキシンおよび/またはフラボドキシンを意味する。従って、「フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼ」という語は、「フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよび/またはフラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼ」を意味する。
フェレドキシンおよびフラボドキシンは、電子供与体として働く周知のタンパク質であり、そのアミノ酸配列およびそのタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列は公知である。例えば、クロストリジウム・パスツリアヌム(Clostridium pastuerianum)、クロストリジウム・アセトブチリクム、および大腸菌のフェレドキシンのアミノ酸配列およびフェレドキシンをコードする遺伝子の塩基配列は、ぞれぞれ、ジェンバンク受託番号M11214、CAC0075、CAC3621、CAC0105、CAC0303、CAC3527(CACが前に付く受託番号はすべてクロストリジウム・アセトブチリクムからである)、yfhL(NP_417057)、fdx(ECK2522)に示されている。クロストリジウム・アセトブチリクム、および大腸菌のフラボドキシンのアミノ酸配列およびフラボドキシンをコードする遺伝子の塩基配列は、それぞれ、ジェンバンク受託番号CAC0203、CAC0587、CAC2452、CAC3417(CACが前に付く受託番号はすべてクロストリジウム・アセトブチリクムからである)、fldA(B0684)、fldB (B2895)(fld前に付く受託番号はすべて大腸菌からである)に示されている。
フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼは、ヒドロゲナーゼとして働くとき、フェレドキシンおよび/またはフラボドキシンから電子を受け取るヒドロゲナーゼである。フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼも、また周知である。例えば、クロストリジウム・アセトブチリクム、クロストリジウム・パスツリアヌム、メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)およびサーモアナエロバクター・テングコンゲンシス(Thermoanaerobacter tengcongensis)のフェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼのアミノ酸配列およびフェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の塩基配列は、ぞれぞれ、ジェンバンク受託番号U15277(CAC3230)、AAA23248、Y16191、およびTTE0123とTTE0134の間の全ての遺伝子に示されている。
また、フェレドキシン/フラボドキシンは、天然フェレドキシン/フラボドキシン、組み換えフェレドキシン/フラボドキシンのいずれでもよい。組み換えフェレドキシン/フラボドキシンを生産する、遺伝子操作された微生物を用いる場合、そのような微生物は、それ自身が、当技術分野において周知である従来の遺伝子操作技術によって当業者ならば容易に調製することができる。前述のように、フェレドキシン/フラボドキシン遺伝子の塩基配列およびその遺伝子を天然に含む微生物は公知であり、外来の遺伝子を微生物宿主細胞に発現するための多くの発現ベクターが市販されているので、組み換えフェレドキシン/フラボドキシンは、フェレドキシン/フラボドキシンを発現ベクターに挿入し、得られた組み換えベクターを微生物宿主細胞に導入することによって生産し得る。
フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼもまた、天然のフェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼでもよく、または組み換えフェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼいずれでもよい。組み換えフェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼを生産する、遺伝子操作された微生物を用いる場合、そのような微生物は、それ自身が、当技術分野において周知である従来の遺伝子操作技術によって当業者ならば容易に調製することができる。前述のように、フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼ遺伝子の塩基配列およびその遺伝子を天然に含む微生物は、周知であり、外来の遺伝子を微生物宿主細胞に発現するための多くの発現ベクターが市販されているので、組み換えフェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼは、フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼを発現ベクターに挿入し、得られた組み換えベクターを微生物宿主細胞に導入することによって生産し得る。
フェレドキシン/フラボドキシンおよびフェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼに関して、上で説明したYBDKと同様に、フェレドキシン、フラボドキシン、フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼの活性を有する修飾タンパク質をそれぞれコードする遺伝子を用い得る。そのような修飾タンパク質は、好ましくは、相当する天然のタンパク質のアミノ酸配列に90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有する。「相同性」という語の定義は、修飾YBDKを説明するセクションで前述されているのと同様である。同様に、修飾YBDKを説明するセクションで前述されている、アミノ酸のグループ化およびアミノ酸の置換についての説明は、フェレドキシン/フラボドキシンおよびフェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼの修飾タンパク質にも、等しく適用される。
タンパク質が、フェレドキシンの予期される機能性を有するか否かは、例えば、ヒドロゲナーゼ活性アッセイによって決められ得る。このアッセイでは、嫌気条件下で、適切なバッファー中に、精製フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼ、亜ジチオン酸ナトリウム、フェレドキシンの予期される機能性を有する試験タンパク質を含む反応混合物を反応させ、閉じられた反応容器の気体上部空間を、H生産についてガスクロマトグラフィーによりモニターする。但し、亜ジチオン酸塩およびフェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼの還元は、亜ジチオン酸塩によるヒドロゲナーゼの直接還元と同等または大きいものとする。上記のアッセイにおいて、最終反応混合物中にフェレドキシンが含まれているか含まれていないかが、結果としてHの蓄積における統計的な有意差になるはずである。タンパク質が、フラボドキシンの機能性を有するか否かは、例えば、フラボドキシンに特異的なヒドロゲナーゼを用いることを除いて、フェレドキシンと同じ方法によって決められ得る。
このヒドロゲナーゼ活性アッセイのより具体的な条件は、例えば、次の通りである。組み換えヒスチジンタグ付きHydAを次のように発現する。一晩培養したスターター培養を使用して、抗生物質を2%(v/v)で添加したTB培地に播種する。pCDOPFEGHisA(後述)をもつBL21(DE3)を、OD600が0.5〜1に達するまで、好気的(37C、190〜200rpm)にバッチ培養する。培養細胞を、緩くキャップをした遠心管、蓋を閉じた(close−topped)血清瓶にそれぞれ移す。無酸素的に発現するためのOの除去は、99.9995%(v/v)Nを細胞培養に拡散することによって達成された。組み換えタンパク質発現は、IPTG(0.5mM)の添加によって始められる。細胞培養は、17〜21時間、30C/190−200rpmで行った。HydAおよびその成熟タンパク質の発現は、10−14%(v/v)変性SDS−PAGE(Tefco、日本)により、製造者の取扱説明書に従ってSYPRO(登録商標) Orange (Invitrogen、日本)で染色した後、タンパク質のバンドをFujifilm FLA-3000 scannerを用いて可視化し、確認された。
ヒスチジンタグ付きHydAは次のように精製する。無酸素状態を、すべての調製を、嫌気性チャンバー内(5% H(v/v)、5% CO(v/v)、90%(v/v) N)で行うこと、またはチャンバーの外で密閉血清瓶を用いることによって、維持した。採取された細胞は、Easylyseキット(Epicentre)を用いて溶解した。得られた溶解物を遠心し(10、000g、7分、25C)、150〜300mlの培養細胞から得られた溶解物質を、組み換えタンパク質の精製にために用いた。HydA精製のために、粗可溶化画分を、0.2ml Ni Sepharose(商標)6 Fast Flow (GE Healthcare、日本)を含む1mlのミニカラムに加えた。0.5ml 洗浄バッファー(0.7cmx2cm) (20mM イミダゾール、50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)で三回洗った。レジンは、短時間遠心(3500rpm、10秒、4C)し、洗浄バッファーを移した。HydAを500μLの溶出バッファー(0.4M イミダゾール、50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)で溶出した。精製したHydAの量を、変性10%(v/v)SDS−PAGE分析により、測定した。ヒドロゲナーゼアッセイは、次のように行う。50mM リン酸カリウムバッファーを含む血清管にNを拡散し、ブチルゴムセプタムで封をする。ヒスチジンタグの精製HydA(0.1〜2.8μg)、フェレドキシンまたはフラボドキシン(試験タンパク質)およびメチルビオローゲン(最終濃度 2mM)を、ガス拡散したバッファー、および予め37度に平衡化した溶液に加えた。亜ジチオン酸ナトリウム(最終濃度 25mM)の添加により反応を開始した後、容器上部空間の気体組成を、選択された各時点で後述のように分析した。
タンパク質が、フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼの活性を有するか否かは、例えば、ヒドロゲナーゼの有無もまたテストされることを除いて、フェレドキシンの機能性を決定するために用いた方法と同じ方法で決定し得る。タンパク質が、フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼの活性を有するか否かは、例えば、フラボドキシンに特異性をもつヒドロゲナーゼを用いることを除いて、フェレドキシン依存性ヒドロゲナーゼと同じ方法で決定し得る。
ybdk遺伝子およびフェレドキシン/フラボドキシンおよび/またはフェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、同じ組み換えベクターに含んでもよいし、または、それら遺伝子を、別々の組み換えベクターに含んで、宿主微生物に、別々の組み換えベクターを共トランスフェクションしてもよい。後者の場合に、3またはそれ以上の遺伝子を宿主に導入するならば、同じベクター中に含まれるべき遺伝子の組み合わせは、特に制限されない。また、3またはそれ以上のベクターも用いられ得る。
本発明の方法に用い得る微生物として、例えば、大腸菌属(Escherichia)、エンテロバクター属、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、サーモトガ属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)からなる群から選ばれる属に属するものが挙げられる。これら属のひとつに属する種として、大腸菌、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)が挙げられる。
生産をさらに向上する目的で、1つまたはそれ以上の遺伝子の削除または破壊のような、更なる遺伝子操作を、微生物に施してもよい。YBDKの生産を増加するための遺伝子操作が微生物に実施される限り、更なる遺伝子操作が施されるいかなる微生物も、本発明の範囲内である。
例えば、本発明者らにより、iscR遺伝子の削除が本発明の微生物によるH生産を高めることが見出された。従って、上記の微生物iscR遺伝子の削除が好ましい。iscR遺伝子は周知であり、大腸菌のその遺伝子は、ジェンバンク受託番号ECK2528(配列番号3および4)に示されている。iscR遺伝子の欠損変異体の構築は、従来の方法、例えば、DatsenkoおよびWannerにより記載されているプロトコール(Datsenko, K. A., and Wanner, B. L. (2000) One-step inactivation of chromosomal gene in Escherichia coli K-12 using PCR products,Proc Natl Acad Sci U S A 97: 6640-6645.)を用いてなされ得る。iscR遺伝子の欠損変異体の構築の詳細は、下記の実施例に述べられている。言うまでもなく、iscR遺伝子の削除と同じ効果が、例えば、機能するタンパク質が生産されるのを妨げる配列またはナンセンスコドンを挿入することで、iscR遺伝子を破壊することによって得られうる。代わりに、iscRのプロモーター領域を、その遺伝子の発現を抑制または減少するように、修飾してもよい。つまり、ここで好ましいのは、iscR遺伝子によってコードされる機能的なタンパク質が、実質的に生産されない状態を得ることである。「実質的に生産されない」とは、機能的なタンパク質が、全く生産されない、または微生物が正常なiscR遺伝子を有する場合と比較して、H生産が増加するように、減少した程度に生産されることを意味する。
本発明によるH生産は、遺伝子ldhA(例えば、配列番号5)、大腸菌のピルビン酸:ギ酸リアーゼ複合体の構造メンバーをコードする遺伝子のいずれか、例えばpflB(例えば、配列番号7)、および大腸菌のフマル酸還元酵素複合体の構造メンバーをコードする遺伝子のいずれか、例えば、frdA(例えば、配列番号9)またはfrdB(例えば、配列番号11)をまた削除または破壊した場合、また更に高められる可能性がある。その根拠は、これら遺伝子の削除が、ピルビン酸を他の代謝物に変換する還元反応によって、大腸菌においてピルビン酸生産を高めることがすでに示されている(Causey et al., 2004)という事実に基づいている。また、ldhAおよびfrdBの削除の大腸菌の醗酵バランスへの影響は、Alamらによってすでに示されている(Alam et al., 1989)。従って、そのような反応は、YDBKと同じ初期基質、即ち、ピルビン酸を競合し得る。ピルビン酸の競合を減じることによって、より多くの流れがYDBK依存性H生産経路を経ることが予測され、開始時の基質(糖)あたりのより多くのHの収量が可能となる。更なるiscRの削除もまた、前述のように、H生産速度および/またはH生産収量を高める可能性がある。よって、この遺伝子もまた削除することが、好ましい。本発明のHを生産する方法において、このようにして調製された微生物細胞は、吸収可能な炭水化物および吸収可能な窒素源を含む培養培地中で培養される。吸収可能な炭水化物として、グルコース、麦芽糖、果糖、キシロース、グリセロールが好ましく、グルコースが最も好ましい。炭水化物がグルコースである場合、培養培地中のグルコースの濃度は、通常、0.1w/v%から2.0w/v%であり、好ましくは、0.5w/v%から1.0w/v%であり得る。窒素源として、酵母抽出物が好ましいが、窒素源はこれに限定されず、微生物によって吸収される他の窒素源を用いてもよい。酵母抽出物を使用する場合、培養培地中の酵母抽出物の濃度は、通常、0.05w/v%から1.0w/v%、好ましくは0.1w/v%から0.3w/v%であり得る。培養培地は、さらに、各微生物用の従来の培養培地に一般に含まれる微量元素およびビタミンを、従来用いられる濃度で含む。大腸菌培養に用いる好ましい培養培地の具体的な組成は、実施例において後述される。
培養が行われる雰囲気は、好ましくは、H生産に最適な酸素濃度を有する。通常、雰囲気(空気)は、酸素濃度5%(v/v)またはそれ未満、好ましくは3.0から3.5%(v/v)である。他の培養条件は、従来用いられるものと同じでよい。すなわち、大腸菌の場合、培養は、通常、温度範囲18Cから47C、好ましくは30から37C程度で実施され得る。バッチ法、すなわち、微生物が、新鮮な細胞と交換されない方法において、培養は、通常、約2日から15日間ほど続けられ得る。すべてまたは一部の微生物細胞が、培養のあいだ、新鮮な細胞に、連続的または断続的に交換される、連続した方法において、培養時間は限定されず、培養は、連続的に実施してもよい。培養開始時の培養培地の細胞集団は、通常、培養培地1mlあたり100個の細胞から10,000,000個の細胞、好ましくは10,000細胞から1,000,000細胞がよい。
微生物の培養によって、水素ガスが生産され、培養培地の雰囲気に放出される。または、その放出は、培養の機械的動作および/またはガス拡散を含むが排除しない、それ自体が当業者に周知の方法によって、補助される。水素ガスは、培養容器内の上部空間に蓄積する。それは、ポンプによって生じる醗酵装置の内側と外側のあいだの負の圧力差によって補助促進してもよいししなくてもよい。二酸化炭素ガス(COガス)もまた、生産され、上部空間に蓄積する。上部空間の水素ガスは、それ自体が当業者に周知の方法によって、例えば、周知の水素分離膜を利用した方法、または、COの選択的な化学的結合を通して、回収され得る。必要なら、水素ガスを、例えば、HガスおよびCOガスの混合物といった、他の1種類またはそれ以上の種類の気体との混合物のかたちで収集してもよい。
本発明を、その実施例を用いて、より具体的に説明する。尚、実施例は、例示の目的だけであって、いかなる限定的な意味でも、限定されるものではない。
1.大腸菌ydbk遺伝子を含む組み換えベクターの構築
大腸菌ピルビン酸:フラボドキシン酸化還元酵素遺伝子(配列番号1)を次のように調製した。遺伝子ydbK(受託番号(accession #)AAC74460)のオープンリーディングフレームを、pET46-Ek/LIC(Novagen, Merck KGaA, ドイツ国Darmstadt)に、プライマー5'-gacgacgacaagatgattactattgacggtaatggcgcggと5'-gaggagaagcccggtttaatcggtgttgcttttttccgcttttccg、大腸菌JM109から、Qiagen DNAeasy kit (Qiagen Sciences, Maryland, USA)およびAccuprime PFX Polymerase(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用い、DNA抽出キットの製造者の取扱説明書に従って抽出したゲノムDNA、DNAポリメラーゼ、並びにプラスミドベクターを用いクローンし、組み換えベクターpET46−ybdKを構築した。リバースプライマーが、終止コドンを含むため、pET46−ybdKベクターは、N末端にのみヒスチジンタグをコードする融合タンパク質を生成することが予期された。
大腸菌BL21(DE3)細胞および大腸菌HMS174(DE3)細胞(Novagen)を、このようにして得られたpET46−ybdkおよび組み換えプラスミドベクターpCDOPFEGAFdxを、共に形質転換した。pCDOPFEGAFdxベクターは、市販のプラスミドベクターpCDF中に、クロストリジウム・アセトブチリクムHydAおよびクロストリジウム・パスツリアヌム[4Fe4S]−フェレドキシンの合成に必要な遺伝子を含んでいる。より具体的に、pCDOPFEGAFdxベクターは、クロストリジウム・アセトブチリクムhydF(ヒドロゲナーゼ成熟因子HydFをコードする、ジェンバンク受託番号NP_348277)、クロストリジウム・アセトブチリクムHydE(ヒドロゲナーゼ成熟因子HydEをコードする、ジェンバンク受託番号NP_348258)、クロストリジウム・アセトブチリクムhydG(ヒドロゲナーゼ成熟因子HydGをコードする、ジェンバンク受託番号NP_347984)、クロストリジウム・アセトブチリクムhydA(ヒドロゲナーゼHydAをコードする、ジェンバンク受託番号U15277)およびクロストリジウム・パスツリアヌムclofdx([4Fe4S]−フェレドキシンをコードする、ジェンバンク受託番号M11214)の遺伝子を上流からこの順番に含む。pCDF−FEGAFdxベクターの関連部分の構造を、Hが生産される代謝経路とともに図1に示す。図1において、「G6P」は、グルコース−6−リン酸を、「GAP」は、グリセルアルデヒド−3−リン酸を、「PYR」は、ピルビン酸を表す。
pCDOPFEGAFdxベクターを、次のように構築した。CpFdをコードする遺伝子(クロストリジウム・パスツリアヌム[4Fe4S]フェレドキシンをコードする(受託番号(accession number)M11214)を、プライマーFEGAFdx-for(ATAGGATCCGAATTTAAATAAAATGGCATATAAAATCGCTGATTCATG)およびFEGAFdx-rev(TACCTAGGAGGCCTCCTTTATTCTTGTACTGGTGCTCCAACTGGAC)のプライマーを用いて、pCDOPFEGAに加えることによって、プラスミドpCDOPFEGAFdxを構築した。pCDOPFEGAベクターおよびpCDOPFEGHisAベクターを、次のように構築した。HydE(受託番号CAC1631)、HydF(受託番号CAC1651)、HydG(受託番号CAC1356)およびHydA(受託番号U15277)をコードする遺伝子を、6つのヒスチジンをコードするN末端コドン付きまたはそれらヒスチジンコドン無しで、クロストリジウム・アセトブチリクムゲノムDNAから増幅した。クローニング工程(c)から(e)のために生成されたすべてのPCR産物(フォワードおよびリバースプライマーは角括弧に示す)は、内部にStuI制限酵素部位(AGGCCT)および6塩基のリボソーム結合部位配列(AGGAGG)を3末端に含んでいた。リボソーム結合部位は、上流の遺伝子終止コドン(TAA)の末端塩基対とTAAGGAGGのように重なるか、または、終止コドンから2塩基対下流にTAATCAGGAGGとして置かれるかのいずれかであった。さらに、工程(c)から(e)によるPCR産物は、また、8塩基対の任意の配列AAAATAAAを含み、リボソーム結合部位と挿入された遺伝子の最初の開始コドンとの間に十分なスペースを付与した。図1に示されている各々の工程;(a)最初に、pCDFDuet−1ベクター(Novagen, Carlsbad,USA)を制限酵素NcoI(CCATGG)およびEcoRV(GATATC、平滑末端を作る)で消化し、(b)NcoIで消化したhydFPCR産物と結合(5'-aatataccATGGATGAACTTAACTCAACACCCAAAGG-3'および5'-aggcctcctgaTTAGTTCCTACTCGATTGATTAAATATTCTATCAGC-3')して、プラスミドpFを生成する。(c)hydEPCR産物(5'-atataatatttaaataaaATGGATAATATAATAAAGTTAATTAATAAAGC-3'および5'-tacctaggaggcctcctgaTTAACCAATAGATTCTTTGTAGC-3')をSwaI(ATTTAAAT)およびAvrII(CCTAGG)で消化し、StuI/AvrII制限酵素処理したpFに結合して、プラスミドpFEを作成する。同様にして、hydG(5'-atataatatttaaataaaATGTATAATGTTAAATCTAAAGTTGCAACTG-3'および5'-tacctaggaggcctcctgaTTAGAATCTAAAATCTCTTTGTCCC-3')およびhydA(5'-atataatatttaaataaaATGAAAACAATAATCTTAAATGGCAATGAAG-3'および5'-tacctaggaggcctccTTATTCATGTTTTGAAACATTTTTATCTTTTGTG-3')を順にクローンして、d)pFEGプラスミドおよびe)pFEGAプラスミドをそれぞれ作成した。各段階で、個々の新しいインサートは、シーケンスにより確認した。
YBDK、クロストリジウム・アセトブチリクムHydAおよびクロストリジウム・パスツリアヌム[4Fe4S]−フェレドキシンを生産する形質転換体は、抗生物質アンピシリンおよびスペクチノマイシン(50μg/mL)に対する抗生質耐性により選択された。対照形質転換体も、プラスミドpET46−ybdkの代わりに、ピルビン酸:フラボドキシン酸化還元酵素遺伝子およびピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素遺伝子が挿入されていないことを除いてpET46−ybdkと同じ構造をもつプラスミドpET−Duetを用い、前述と同様の方法で調製した。
2.H生産
培養は、唯一の炭素源として1.5% グルコースを含み、カナマイシン(50mg/ml)、カルベニシリン(50mg/ml)またはスペクチノマイシン(50mg/ml)を添加したMOPS最少培地(Teknova, Hollister, CA)(5〜10ml)中で行った。前培養は、新鮮なLBプレートから播種し、30CでOD600が0.1〜0.5になるまで増殖させた。次に、前培養を用い、OD600約0.02で播種し、本培養(同じ培地に、0.05mMのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシドを添加)を行った。培養はすべて24から48時間増殖し、30Cで、ブチルゴムセプタムでキャップし、播種後99.9995%Nを5分間より長く拡散した120mL容の血清瓶で行った。気体試料は、Carboxen(商標)1010 PLOTキャピラリーカラム(30m x 0.32mm)(Supelco, Bellefonte, USA)を取り付けた6890Nガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)を用いて分析した。200μLガス試料は、血清瓶培養の上部空間からサンプルロック注射器(Hamilton, Reno, NV)を用いて取り出し、スプリット/スプリットレス試料導入口(室温、5:1プリット比)に直接注入した。試料は、均一濃度(35C、4〜5分)で溶出した。キャリアガスはN(17.6mL/分)とし、熱伝導度検出器(230C、2.0mL/min)を用いて、試料を検出した。〜3.3分で溶出したHおよび上部空間のH分圧(pH)を、0.25%および5% 標準Hガス試料(Kamimaru、横浜、日本)並びに100% H(GL Sciences、東京、日本)を用いて作成した検量線に対比することによって定量した。グルコースあたりのHの収量を推定するためには、液体培地中の残留グルコースの量もまた、Hが定量される最低でも2つのサンプルポイントで測定される必要がある。培地上清中のグルコース濃度は、Roche-Biopharm(ドイツ国Darmstadt)によるD−グルコースキットを用い、製造者の取扱説明書に従って測定した。
結果を図2に示す。図2は、培養培地の上部の空間中の%H(v/v)濃度に換算にした経時的な大腸菌BL21(DE3)形質転換体の水素の生産を示している。図2から明らかにわかるように、外来のピルビン酸:フラボドキシン酸化還元酵素遺伝子およびピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素遺伝子を含む大腸菌BL21(DE3)形質転換体によるH生産は、対照形質転換体より約15倍多かった。大腸菌HMS174(DE3)形質転換体を用いた場合にも、同様の結果が得られた。従って、本発明の方法が、微生物によるH生産を高めることが証明された。
1.iscR遺伝子欠損変異体の構築
iscR遺伝子欠損変異体を、次のように構築した。大腸菌MG1655におけるiscR遺伝子の削除は、DatsenkoおよびWannerの方法(Datsenko and Wanner, 2000)に従って、実施した。pKD13のカナマイシン耐性カセットに隣接するFRTを、プライマーiscR−forおよびiscR−revを用いて、PCRで増幅した。DpnIで処理および精製した後、削除カセット(deletion cassette)pKD46をもつMG1655WTに形質転換した。カナマイシン耐性クローンを選択し、その削除は、プライマーiscRDWF(CACTCCGGCCTGATTCTGAATTCTTTTTATTAAGCGCGTAACTTAACGTCATTCCGGGGATCCGTCGACC)およびiscRDWR(TACAATAAAAAACCCCGGGCAGGGGCGAGTTTGAGGTGAAGTAAGACATGTGTAGGCTGGAGCTGCTTCG)を用いて、PCRで検証した。得られた株を、MG1655ΔydbK::kanとし、BL21(DE3)(Novagen, Merck KGaA, ドイツ国Darmstadt)を受け手として、P1トランスダクションによりBL21(DE3)ΔydbKを生成する供与株として用いた(Miller, J. H. (1972) Experiments in Molecular Genetics. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)。P1トランスダクションの後、カナマイシン耐性遺伝子を、酵母リコンビナーゼをコードするpCP20(Datsenko and Wanner, 2000)を用いて取り除いた。代わりに、BL21(DE3)のΔiscR変異体を、MG1655ΔiscR株(University of Wisconsin, USA)およびBL21(DE3)(Novagen, Merck KGaA, ドイツ国Darmstadt)をそれぞれ供与株および受容株として用いP1トランスダクション(Miller, 1972)によって得た。
2.H生産
このように調製した変異体およびiscR遺伝子を含む元の微生物によるH生産を、前述と同じ方法で調べた。結果を図3に示す。図3に示されるように、本発明の実施例1で調製した微生物からiscR遺伝子を削除することにより、H生産は、約3倍増加した。従って、iscR遺伝子の削除により、本発明の微生物によるH生産が増加することが証明された。
前述のように、本発明によるH生産は、遺伝子ldhA(配列番号5)、大腸菌のピルビン酸:ギ酸リアーゼ複合体の構造メンバーをコードする遺伝子のいずれか、例えばpflB(配列番号7)、および大腸菌のフマル酸還元酵素複合体の構造メンバーをコードする遺伝子のいずれか、例えばfrdA(配列番号9)またはfrdB(配列番号11)をも削除した場合、さらに高まる可能性がある。その根拠は、これらの遺伝子の削除が、ピルビン酸を他の代謝物に変換する反応を減じることによって大腸菌におけるピルビン酸生産を高める(Causey et al., 2004)ことが、すでに示されていることに基づいている。ldhAおよびfrdB欠損の大腸菌の醗酵バランスへの影響もまた、Alamらによってすでに示されている(Alam et al.、 1989)。従って、そのような反応は、同じ初期基質すなわちピルビン酸を、YDBKと競合し得る。ピルビン酸のYDBKとの競合を減じることで、より多くの流れがYDBK依存性H生産経路を通ることが予期され、開始時の基質(糖)あたり、より多くの水素の収量が可能になる。iscRの更なる削除もまた、上に示したように、H生産速度および/または収量を高める可能性もある。従って、この遺伝子を削除することもまた好ましい。
遺伝子ldhA、pflB、frdAB、およびiscRの削除のピルビン酸依存性H生産への影響の実験的な証明は、次のように得ることができる。はじめに、遺伝子ldhA、pflBおよびfrdABを、MG1655において、削除する。これは、既報のように((Baba et al., 2006))遺伝子ldhA、pflB、およびfrdABに対して、それぞれ、プライマーldhADWF ctcccctggaatgcaggggagcggcaagattaaaccagttcgttcgggcaattccggggatccgtcgacc、ldhADWR tatttttagtagcttaaatgtgattcaacatcactggagaaagtcttatgtgtaggctggagctgcttcg、pflBDWF ttttactgtacgatttcagtcaaatctaattacatagattgagtgaaggtattccggggatccgtcgacc、pflBDWR cgaagtacgcagtaaataaaaaatccacttaagaaggtaggtgttacatgtgtaggctggagctgcttcg、frdBDWF gtttacgtttagtcgtcatgttgcactccttagcgtggtttcagggtcgcattccggggatccgtcgacc、frdADWR accctgaagtacgtggctgtgggataaaaacaatctggaggaatgtcgtgtgtaggctggagctgcttcg、を用いること除いて、前述のように行う。削除を、前述のようにP1トランスダクションより、ひとつずつBL21に移し、それぞれ前述のように抽出したゲノムDNAを用いてPCRによって確認される導入の成功後、次の削除を導入する前に、カナマイシン耐性遺伝子を、pCP20を用いて前述のように取り除く。iscR欠損を構築し、前述のように導入する。最終的に、これによって、BL21(DE3)ΔldhAΔpflBΔfrdABΔiscR株が生成されるであろう。この株に、プラスミドpCDOPFEGAFdxおよびpydbKを電気穿孔法で形質転換し、前述のようにH生産およびグルコース消費を調べる。

Claims (18)

  1. 少なくとも1種の微生物を、吸収可能な炭水化物および吸収可能な窒素源を含む培養培地で培養し、それによって水素ガスを生成する工程であって、前記微生物は、フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフェレドキシン/フラボドキシンを生産し、前記微生物は、ピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素の酵素活性を持つタンパク質の生産が増加するように遺伝子操作され、前記微生物は前記培養培地中の前記炭水化物を吸収すると同時に水素ガスを生成することができる工程、および
    生成した水素ガスを回収する工程、
    を含む、水素ガスの生産方法。
  2. 前記タンパク質が、前記微生物のピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素のアミノ酸配列に90%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記タンパク質が、前記微生物のピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素のアミノ酸配列を有する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記遺伝子操作が、前記微生物に、前記タンパク質をコードする外来性の遺伝子を導入することを含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記微生物が、iscR遺伝子にコードされる機能的なタンパク質を実質的に生産しない、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記微生物が、大腸菌属(Escherichia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、サーモトガ属(Thermotoga)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)からなる群から選択される属に属する少なくともひとつである、請求項1に記載の方法。
  7. 前記微生物が大腸菌(Escherichia coli)である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記炭水化物がグルコースである、請求項1に記載の方法。
  9. 前記培養が無酸素の雰囲気のもとで行われる、請求項1に記載の方法。
  10. フェレドキシン/フラボドキシン依存性ヒドロゲナーゼおよびフェレドキシン/フラボドキシンを生産する微生物であって、前記微生物は、ピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素の酵素活性を持つタンパク質の生産が増加するように遺伝子操作され、前記微生物は、培養培地中の炭水化物を吸収すると同時に水素ガスを生成することができる微生物。
  11. 前記タンパク質が、フェレドキシンまたはフラボドキシンを還元すると共に同時にピルビン酸を酸化することにより定義される、ピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素の酵素活性を有する、請求項10に記載の微生物。
  12. 前記タンパク質が、前記微生物のピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素のアミノ酸配列に90%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の微生物。
  13. 前記タンパク質が、前記微生物のピルビン酸:フラボドキシン/フェレドキシン酸化還元酵素のアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の微生物。
  14. 前記の増加した生産が、前記タンパク質をコードする外来性の遺伝子を、前記微生物に導入することによって得られる、請求項10ないし13のいずれか1項に記載の微生物。
  15. 前記微生物が、iscR遺伝子にコードされる機能的なタンパク質を実質的に生産しない、請求項10ないし13のいずれか1項に記載の微生物。
  16. 前記微生物が、大腸菌属、エンテロバクター属、サッカロマイセス属、サーモトガ属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属からなる群から選択される属に属する請求項10に記載の微生物。
  17. 前記微生物が大腸菌である、請求項16に記載の微生物。
  18. 前記炭水化物がグルコースである、請求項10に記載の微生物。
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