JP2011144849A - 等速自在継手 - Google Patents
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Abstract
【課題】 信頼性の向上とコスト低減を図り得るレーザ接合を用いて、その接合部の剥離を抑止してブーツを確実に固定しシール性を確保する。
【解決手段】 一端に開口部を有する金属製の外側継手部材3と、外側継手部材3との間でボールを介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、外側継手部材3の開口部13を閉塞する樹脂製の蛇腹状ブーツ12の大径端部15を外側継手部材3の開口部13の外周面14に外嵌してレーザ接合により固定した等速自在継手であって、ブーツ12の大径端部15から蛇腹部18に向けて延びる端部隣接部位19を、外側継手部材3の開口部13の端面20に沿わせた形状とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 一端に開口部を有する金属製の外側継手部材3と、外側継手部材3との間でボールを介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、外側継手部材3の開口部13を閉塞する樹脂製の蛇腹状ブーツ12の大径端部15を外側継手部材3の開口部13の外周面14に外嵌してレーザ接合により固定した等速自在継手であって、ブーツ12の大径端部15から蛇腹部18に向けて延びる端部隣接部位19を、外側継手部材3の開口部13の端面20に沿わせた形状とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば自動車のドライブシャフトやプロペラシャフトに組み込まれ、継手外部からの異物侵入や継手内部からの潤滑剤漏洩を防止するブーツを備えた等速自在継手に関する。
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として使用される等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的にエンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手を中間シャフトで連結した構造を具備する。
これら摺動式等速自在継手あるいは固定式等速自在継手では、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、等速自在継手と中間シャフトとの間に樹脂製の蛇腹状ブーツを装着した構造が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
ブーツ104は、図9に示すように、等速自在継手の外側継手部材102の開口部103の外周面にブーツバンド105により締め付け固定された大径端部106と、内側継手部材(図示せず)から延びる中間シャフト107の外周面にブーツバンド108により締め付け固定された小径端部109と、大径端部106と小径端部109とを繋ぎ、その大径端部106から小径端部109へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部110とで構成されている。
図10は、外側継手部材102の開口部103とブーツ104の大径端部106とを接合した部分を示す拡大図である。同図に示すように、外側継手部材102の外周面に環状の凹溝111を形成し、ブーツバンド105による締め付けでもって凹溝111にブーツ104の大径端部106を食い込ませることにより、ブーツ104の大径端部106の位置決めとシール性の向上を図っている。
ところで、従来の等速自在継手において、ブーツバンド105による締め付け固定で安定したシール性を確保するには、ブーツ104を所定の締め代で確実に固定する必要があるが、ブーツ104の確実な固定を簡便にかつ個体間でのばらつきを生じさせることなく行うのは非常に困難である。
また、ブーツ104の位置決めとシール性の向上を図るため、外側継手部材102の開口部103の外周面に環状の凹溝111を形成し、ブーツバンド105による締め付けでもって凹溝111にブーツ104の大径端部106を食い込ませるようにしていることから、外側継手部材102の開口部103の外周面に凹溝加工を施す必要がある。
このように、ブーツバンド締め付けによりブーツ104を確実に固定することが困難である点、外側継手部材102の開口部103の外周面に凹溝加工を施さなければならない点、さらに、ブーツバンド105を使用することにより部品点数が増加する点などにより、等速自在継手における信頼性の低下およびコストアップを招くことになる。
この問題を解消するため、図11に示すように、樹脂製のブーツ114を金属製の外側継手部材112にレーザ接合により固定する手段がある。このレーザ接合を用いれば、図12に示すように、外側継手部材112の開口部113の外周面に凹溝111(図10参照)を形成する必要がなく、平坦な外周面121にブーツ114の大径端部116を接合することが可能である。また、ブーツバンド105(図10参照)も不要となり、ブーツ114の固定をブーツバンド105の締め付けに依存することなく、レーザ接合によりブーツ114を確実に固定することができる。
ここで、ブーツバンド締め付けによりブーツ104(図10参照)を固定する場合と異なり、レーザ接合によりブーツ114(図12参照)を固定する場合、ブーツ114の大径端部116が応力の作用により外側継手部材112の外周面121から剥離して位置ずれすることは、グリース等の潤滑剤の漏洩を引き起こす点で許されない。そのため、レーザ接合によるブーツ114の固定では、ブーツ114の大径端部116と外側継手部材112の開口部113との接合界面に作用する荷重を小さくする必要がある。
しかしながら、図12に示すように、ブーツ114の大径端部116から蛇腹部120に向けて延びる部位の形状が山部122を有することから、等速自在継手の中間シャフト117が作動角をとった場合(図13参照)、ブーツ114の蛇腹部120の収縮側では、図14に示すように、ブーツ114の大径端部116に隣接する山部122に、ブーツ114の大径端部116と外側継手部材112の外周面121との接合部を引き剥がす方向(図中矢印方向)へ向く応力が作用する。この応力の作用により、ブーツ114の大径端部116と外側継手部材112の外周面121との接合部が容易に剥離するという問題が生じる。
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、信頼性の向上とコスト低減を図り得るレーザ接合を用いて、その接合部の剥離を抑止してブーツを金属製の外側継手部材に確実に固定し、そのシール性を確保し得る等速自在継手を提供することにある。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、一端に開口部を有する金属製の外側継手部材と、前記外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、前記外側継手部材の開口部を閉塞する樹脂製の蛇腹状ブーツの端部を前記外側継手部材の開口部外周面に外嵌してレーザ接合により固定した等速自在継手であって、前記ブーツの端部から蛇腹部に向けて延びる端部隣接部位を、前記外側継手部材の開口部端面に沿わせた形状としたことを特徴とする。
本発明では、ブーツの端部から蛇腹部に向けて延びる端部隣接部位を、外側継手部材の開口部端面に沿わせた形状としたことにより、等速自在継手の中間シャフトが作動角をとった場合、ブーツの蛇腹部の収縮側では、ブーツの端部隣接部位が外側継手部材の開口部端面に押し当てられてガイドされるので、ブーツの大径端部と外側継手部材の外周面との接合部を引き剥がす方向(径方向外側方向)へ向く応力を緩和することができる。この応力緩和により、ブーツの大径端部と外側継手部材の外周面との接合部が剥離することを未然に抑止できる。
本発明における外側継手部材の開口部外周面は、前記ブーツの端部と接合する部位で平坦とすることが可能である。このようにブーツの端部と接合する部位で平坦とすれば、接合面積を稼ぐことができると共に外側継手部材の強度アップおよび小型化が図れ、さらに、従来のブーツバンド締め付けによるブーツの固定で外側継手部材の外周面に形成していた位置決め用凹溝の加工が不要となり、コスト低減が図れる。
本発明におけるブーツを構成する樹脂は、レーザ透過性を有する熱可塑性エラストマーであることが望ましい。レーザ透過性の樹脂に対してレーザ接合時にレーザ光を照射することによって、レーザ光が樹脂を透過して外側継手部材を加熱することができる。
本発明におけるブーツの端部と前記外側継手部材の開口部との締め代は、0.5mm以上3.0mm以下とすることが望ましい。このような範囲に締め代を設定することによって、最適な条件でもってレーザ接合を実現することができる。この締め代が0.5mmよりも小さいと、ブーツの端部と外側継手部材の開口部との外嵌状態が緩くなることから、良好なレーザ接合状態を得ることが困難となる。また、締め代が3.0mmより大きいと、ブーツの端部を外側継手部材の開口部に外嵌すること自体が困難となる。
本発明におけるレーザ接合は、半導体レーザあるいはファイバレーザにより行われることが望ましい。このようにレーザ接合に半導体レーザあるいはファイバレーザを採用すれば、既存のレーザ光照射装置を用いることができ、設備費の削減からコスト低減が図れる。また、レーザ接合でのレーザ光照射方式を連続式とすることが望ましい。このようにすれば、効率のよいレーザ光照射を行うことができ、レーザ接合での効率化が図れる。
本発明におけるレーザ接合で使用するレーザ光は、2mm以上の直径を有する円形のスポットサイズ、あるいは、2mm以上の長辺を有する矩形状のスポットサイズを持つことが望ましい。このようにすれば、レーザ接合時に接合部を安定して加熱することができる。なお、スポットサイズの直径あるいは長辺が2mmよりも小さいと、接合部の加熱が不安定となる。
本発明における外側継手部材は、内周面に軸方向に延びる複数の円弧状トラック溝が形成され、前記内側継手部材は、外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面に複数の円弧状トラック溝が形成され、前記トルク伝達部材は、外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に配されたケージにより保持された状態で、前記外側継手部材のトラック溝と前記内側継手部材のトラック溝との間に介在するボールである構成を具備する固定式等速自在継手、例えば、ツェッパ型等速自在継手に適用可能である。
また、本発明における外側継手部材は、内周面に軸方向に延びる複数の直線状トラック溝が形成され、前記内側継手部材は、外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面に複数の直線状トラック溝が形成され、前記トルク伝達部材は、外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に配されたケージにより保持された状態で、前記外側継手部材のトラック溝と前記内側継手部材のトラック溝との間に介在するボールである構成を具備する摺動式等速自在継手、例えば、ダブルオフセット型等速自在継手にも適用可能である。
本発明によれば、ブーツの端部から蛇腹部に向けて延びる端部隣接部位を、外側継手部材の開口部端面に沿わせた形状としたことにより、等速自在継手の中間シャフトが作動角をとった場合、ブーツの蛇腹部の収縮側では、ブーツの端部隣接部位が外側継手部材の開口部端面に押し当てられてガイドされるので、ブーツの大径端部と外側継手部材の外周面との接合部を引き剥がす方向(径方向外側方向)へ向く応力を緩和することができる。この応力緩和により、ブーツの大径端部と外側継手部材の外周面との接合部が剥離することを未然に抑止できる。
その結果、信頼性の向上とコスト低減を図り得るレーザ接合を用いて、その接合部の剥離を抑止してブーツを確実に固定しシール性を確保し得る等速自在継手を提供することができる。
本発明に係る等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、自動車のエンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手を中間シャフトで連結した構造を具備するドライブシャフトに組み込まれ、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達することができる構造を備えた固定式等速自在継手の一つであるツェッパ型等速自在継手を例示する。
図2および図3に示す実施形態のツェッパ型等速自在継手は、軸方向に延びる円弧状のトラック溝1が球面状内周面2の円周方向複数箇所に形成されたカップ状の外側継手部材3と、外側継手部材3のトラック溝1と対をなして軸方向に延びる円弧状のトラック溝4が球面状外周面5の円周方向複数箇所に形成された内側継手部材6と、外側継手部材3のトラック溝1と内側継手部材6のトラック溝4との間に介在してトルクを伝達する複数のトルク伝達部材であるボール7と、外側継手部材3の球面状内周面2と内側継手部材6の球面状外周面5との間に配され、円周方向等間隔に形成されたポケット8に収容したボール7を保持するケージ9とを主要な構成要素としている。
内側継手部材6の軸孔10には中間シャフト11の一端がスプライン嵌合により連結されている。なお、外側継手部材3は、例えばS53C等で代表される炭素鋼、また、中間シャフト11は、例えばS40C等に代表される炭素鋼で成形され、これら外側継手部材3および中間シャフト11の両者は、特に、高周波焼入れ等の焼入れ処理が施された炭素鋼で成形されている。さらに、外側継手部材3および中間シャフト11の表面は、防錆のためにリン酸塩処理を施してもよい。
この種の等速自在継手は、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材3と中間シャフト11との間に樹脂製の蛇腹状ブーツ12を装着した構造を具備する。このように、外側継手部材3およびブーツ12の内部空間に潤滑剤を封入することにより、外側継手部材3に対して中間シャフト11が作動角をとりながら回転する動作時において、継手内部の摺動部位、つまり、外側継手部材3、内側継手部材6、ボール7およびケージ9で構成される摺動部位での潤滑性を確保するようにしている。
図1に示すように、外側継手部材3の開口部13の外周面14をブーツ12の大径端部15と接合する部位で平坦としている。このようにブーツ12の大径端部15と接合する部位で平坦とすることにより、接合面積を稼ぐことができると共に外側継手部材3の強度アップおよび小型化が図れ、さらに、従来のブーツバンド締め付けによるブーツ104(図10参照)の固定で外側継手部材102の外周面に形成していた位置決め用凹溝111の加工が不要となり、コスト低減が図れる。
ブーツ12は、図2に示すように、外側継手部材3の開口部13の外周面14に後述のレーザ接合により固定された大径端部15と、内側継手部材6から延びる中間シャフト11の外周面16にレーザ接合により固定された小径端部17と、大径端部15と小径端部17とを繋ぎ、その大径端部15から小径端部17へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部18とで構成されている。
この実施形態における等速自在継手では、図1に示すように、ブーツ12の大径端部15から蛇腹部18に向けて延びる端部隣接部位19を、外側継手部材3の開口部端面20に沿わせた形状としている(図12と比較)。つまり、ブーツ12の大径端部15の蛇腹部側を径方向内側に向けて略90°に屈曲させ、その屈曲部21の内径側を変曲させて谷部22を形成した形状としている。なお、この谷部22の蛇腹部側は山部23を形成し、このように谷部と山部とを縮径しながら繰り返し形成することにより蛇腹部18を構成して小径端部17(図2参照)に至る。
このブーツ12を構成する樹脂としては、レーザ透過性を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーが好適である。この熱可塑性ポリエステルエラストマーは、高融点結晶性ポリエステル重合体セグメント(a)と低融点重合体セグメント(b)からなるポリエステルブロック共重合体を主体とするものである。このようにレーザ透過性のものを使用すれば、この樹脂に対してレーザ接合時にレーザ光を照射することによって、レーザ光が透過して接合部を加熱することができる。なお、このブーツ12は、例えば、押出ブロー、射出ブロー、プレスブローなどの各種ブロー成形法や射出成形法などにより製作することが可能であるが、その製造方法については特に限定されるものではない。
熱可塑性ポリエステルエラストマーを構成するポリエステルブロック共重合体の高融点結晶性ポリエステル重合体セグメント(a)は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールから形成されるポリエステルであり、好ましくはテレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートである。この他に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシ−p−タ−フェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオ−タ−フェニルなどの芳香族ジオールなどから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を二種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、アジピン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸を共重合しても良い。さらに、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分および多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
熱可塑性ポリエステルエラストマーを構成するポリエステルブロック共重合体の低融点重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリカプロラクトン、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかで、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。ポリエステルブロック共重合体における低融点重合体セグメント(b)の共重合量は、好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは15〜75重量%である。
このブーツ12を構成する熱可塑性ポリエステルエラストマーには、公知の酸化防止剤、耐光剤、耐加水分解防止剤、染料などの着色剤、難燃剤などの各種添加剤を任意に含有させることができる。但し、擦過音を抑制するための添加剤はレーザ接合時のレーザ光照射により素材表面に添加剤の膜を形成して接合強度を低下させることになる。そのため、擦過音抑制効果を発揮する添加剤として、一般的に潤滑作用を発揮し得るものであればよく、例えば、パラフィンワックス、ミクロクロスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸アミド、エステル系ワックス、脂肪アルコール、アルコールエステル、脂肪酸エステル、ポリエーテル化合物、鉱油、合成油、植物油など、ゴムや樹脂などに広く利用されているものや、その他の用途、例えば、潤滑油関連等に使用されているものなどが挙げられる。
以上で述べたブーツ12の大径端部15を外側継手部材3の開口部13の外周面14にレーザ接合により固定する要領は次のとおりである。
まず、ブーツ12の大径端部15を外側継手部材3の開口部13の外周面14に外嵌する。この時、ブーツ12の大径端部15と外側継手部材3の開口部13との締め代は、0.5mm以上3.0mm以下とする。このような範囲に締め代を設定することによって、最適な条件でもってレーザ接合を実現することができる。この締め代が0.5mmよりも小さいと、ブーツ12の大径端部15と外側継手部材3の開口部13との外嵌状態が緩くなることから、良好なレーザ接合状態を得ることが困難となる。また、締め代が3.0mmより大きいと、ブーツ12の大径端部15を外側継手部材3の開口部13に外嵌すること自体が困難となる。
このブーツ12の大径端部15と外側継手部材3の開口部13の外周面14とのレーザ接合は、図4および図5に示すようなレーザ照射機24を用いる。このレーザ照射機24は、半導体レーザ(波長:808nm+904nm)やファイバレーザなどの励起源を備え、ブーツ12の大径端部15と外側継手部材3の開口部13の外周面14との接合界面を焦点としたレーザ光L(出力:800W)を照射する照射部25を有する。このようにレーザ接合に半導体レーザあるいはファイバレーザを採用することにより、既存のレーザ照射機を用いることができ、設備費の削減からコスト低減が図れる。
また、レーザ照射機24によるレーザ光Lの照射は連続式とする。この連続式のレーザ光照射により、効率のよいレーザ光照射を行うことができ、レーザ接合での効率化が図れる。なお、レーザ光Lの照射方式は連続式が好ましいが、レーザ光を間欠的(パルス的)に照射する間欠式であってもよい。さらに、レーザ光Lは、2mm以上の直径を有する円形のスポットサイズ、あるいは、2mm以上の長辺を有する矩形状のスポットサイズを持つ。これにより、レーザ接合時に接合部を安定して加熱することができる。なお、スポットサイズの直径あるいは長辺が2mmよりも小さいと、接合部の加熱が不安定となる。
このレーザ照射機24によるレーザ光Lは、ブーツ12の大径端部15を透過してその大径端部15と外側継手部材3の開口部13の外周面14との接合界面で焦点を結ぶ状態でその接合界面を加熱する。このレーザ光Lは、継手軸方向(図4のM矢印方向)の所定範囲で照射され、固定配置のレーザ照射機24の照射部25に対して、ブーツ12が外嵌された状態の外側継手部材3を軸中心に図5のN矢印方向に回転させるか、あるいは、固定配置の外側継手部材3に対して、レーザ照射機24の照射部25をブーツ12の周方向に移動させることにより、継手軸方向の所定範囲で周方向全周に亘って、ブーツ12の大径端部15と外側継手部材3の開口部13の外周面14とが接合される。なお、図示では、レーザ照射機24の照射部25をブーツ12の外方に配置して外側(ブーツ側)からレーザ光を照射する場合を例示しているが、照射部25を外側継手部材3の内部に配置して内側(外側継手部材側)からレーザ光を照射することも可能である。
このレーザ照射機24は、金属を局所的に十分に加熱できる高パワー密度を有するレーザ光Lを、ブーツ12の大径端部15に照射する。レーザ光Lはブーツ12を構成する樹脂を透過して、外側継手部材3の開口部13の外周面14を構成する金属を選択的に加熱する。加熱された金属と接している樹脂は、金属からの熱によって分解温度以上に急速に加熱されて部分的に溶融する。その分解によって発生する泡、泡周辺部の高温の融液および熱せられた金属によって、高温・高圧の条件が実現され、ミクロンオーダでの分子間力(ファンデルワールス力)により金属と樹脂が接合した接合部が得られる。
この実施形態における等速自在継手では、ブーツ12の大径端部15から蛇腹部18に向けて延びる端部隣接部位19を、外側継手部材3の開口部13の端面20に沿わせた形状、つまり、ブーツ12の大径端部15の蛇腹部側を径方向内側に向けて略90°に屈曲させ、その屈曲部21の内径側を変曲させて谷部22を形成した形状としている(図1参照)。
このように、ブーツ12の大径端部15から蛇腹部18に向けて延びる端部隣接部位19を、外側継手部材3の開口部13の端面20に沿わせた形状としたことにより、等速自在継手の中間シャフト11が作動角をとった場合(図6参照)、ブーツ12の蛇腹部18の収縮側では、図7に示すように、ブーツ12の端部隣接部位19が外側継手部材3の開口部13の端面20に押し当てられてガイドされるので(図中矢印参照)、ブーツ12の大径端部15と外側継手部材3の外周面14との接合部を引き剥がす方向(径方向外側方向)へ向く応力を緩和することができる。この応力緩和により、ブーツ12の大径端部15と外側継手部材3の外周面14との接合部が剥離することを未然に抑止できる。
以上では、ブーツ12の大径端部15と外側継手部材3の開口部13の外周面14とのレーザ接合について説明したが、このブーツ12の大径端部15と同様、ブーツ12の小径端部17も中間シャフト11の外周面16にレーザ接合により固定する(図2参照)。そのレーザ接合の要領は、ブーツ12の大径端部15の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
なお、以上で述べた実施形態では、ツェッパ型等速自在継手に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し、しかも、軸方向の相対変位をも許容することができる構造を備えた摺動式等速自在継手の一つであるダブルオフセット型等速自在継手にも適用可能である。
図8は、他の実施形態としてのダブルオフセット型等速自在継手を示す。この等速自在継手は、軸線に平行な複数の直線状トラック溝31が円筒状内周面32に円周方向等間隔で形成された円筒形状の外側継手部材33と、その外側継手部材33のトラック溝31と対応させて軸線に平行な複数の直線状トラック溝34が球面状外周面35に形成された内側継手部材36と、外側継手部材33のトラック溝31と内側継手部材36のトラック溝34との間に介在してトルクを伝達する複数のトルク伝達部材であるボール37と、外側継手部材33の内周面32と内側継手部材36の外周面35との間に配され、円周方向等間隔に形成されたポケット38に収容したボール37を保持するケージ39とを主要な構成要素としている。なお、内側継手部材36の軸孔40には軸部材である中間シャフト41の一端がスプライン嵌合により連結されている。
この等速自在継手において、外側継手部材10と中間シャフト41との間に樹脂製の蛇腹状ブーツ42を装着する。このブーツ42は、外側継手部材33の開口部43の外周面44にレーザ接合により固定された大径端部45と、内側継手部材36から延びる中間シャフト41の外周面46にレーザ接合により固定された小径端部47と、大径端部45と小径端部47とを繋ぎ、その大径端部45から小径端部47へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部48とで構成されている。
この実施形態における等速自在継手でも、ブーツ42の大径端部45から蛇腹部48に向けて延びる端部隣接部位49を、外側継手部材33の開口部43の端面50に沿わせた形状、つまり、ブーツ42の大径端部45の蛇腹部側を径方向内側に向けて略90°に屈曲させ、その屈曲部51の内径側を変曲させて谷部52を形成した形状としている(図1参照)。このブーツ42の素材、形状およびレーザ接合の要領については、前述したダブルオフセット型等速自在継手の場合と同様であるため、その構成および作用効果についての重複説明は省略する。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 円弧状トラック溝
2 球面状内周面
3 外側継手部材
4 円弧状トラック溝
5 球面状外周面
6 内側継手部材
7 トルク伝達部材(ボール)
9 ケージ
12 ブーツ
13 外側継手部材の開口部
14 開口部の外周面
15 ブーツの端部(大径端部)
18 ブーツの蛇腹部
19 端部隣接部位
20 開口部端面
31 直線状トラック溝
32 円筒状内周面
33 外側継手部材
34 直線状トラック溝
35 球面状外周面
36 内側継手部材
37 トルク伝達部材(ボール)
39 ケージ
42 ブーツ
43 外側継手部材の開口部
44 開口部の外周面
45 ブーツの端部(大径端部)
48 ブーツの蛇腹部
49 端部隣接部位
50 開口部端面
2 球面状内周面
3 外側継手部材
4 円弧状トラック溝
5 球面状外周面
6 内側継手部材
7 トルク伝達部材(ボール)
9 ケージ
12 ブーツ
13 外側継手部材の開口部
14 開口部の外周面
15 ブーツの端部(大径端部)
18 ブーツの蛇腹部
19 端部隣接部位
20 開口部端面
31 直線状トラック溝
32 円筒状内周面
33 外側継手部材
34 直線状トラック溝
35 球面状外周面
36 内側継手部材
37 トルク伝達部材(ボール)
39 ケージ
42 ブーツ
43 外側継手部材の開口部
44 開口部の外周面
45 ブーツの端部(大径端部)
48 ブーツの蛇腹部
49 端部隣接部位
50 開口部端面
Claims (10)
- 一端に開口部を有する金属製の外側継手部材と、前記外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、前記外側継手部材の開口部を閉塞する樹脂製の蛇腹状ブーツの端部を前記外側継手部材の開口部外周面に外嵌してレーザ接合により固定した等速自在継手であって、
前記ブーツの端部から蛇腹部に向けて延びる端部隣接部位を、前記外側継手部材の開口部端面に沿わせた形状としたことを特徴とする等速自在継手。 - 前記外側継手部材の開口部外周面は、前記ブーツの端部と接合する部位で平坦とした請求項1に記載の等速自在継手。
- 前記ブーツを構成する樹脂は、レーザ透過性を有する熱可塑性エラストマーである請求項1又は2に記載の等速自在継手。
- 前記ブーツの端部と前記外側継手部材の開口部との締め代は、0.5mm以上3.0mm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の等速自在継手。
- 前記レーザ接合は、半導体レーザあるいはファイバレーザにより行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の等速自在継手。
- 前記レーザ接合でのレーザ光照射方式を連続式とした請求項1〜5のいずれか一項に記載の等速自在継手。
- 前記レーザ接合で使用するレーザ光は、2mm以上の直径を有する円形のスポットサイズを持つ請求項1〜6のいずれか一項に記載の等速自在継手。
- 前記レーザ接合で使用するレーザ光は、2mm以上の長辺を有する矩形状のスポットサイズを持つ請求項1〜6のいずれか一項に記載の等速自在継手。
- 前記外側継手部材は、球面状内周面に軸方向に延びる複数の円弧状トラック溝が形成され、前記内側継手部材は、外側継手部材のトラック溝と対をなして球面状外周面に複数の円弧状トラック溝が形成され、前記トルク伝達部材は、外側継手部材の球面状内周面と内側継手部材の球面状外周面との間に配されたケージにより保持された状態で、前記外側継手部材のトラック溝と前記内側継手部材のトラック溝との間に介在するボールである請求項1〜8のいずれか一項に記載の等速自在継手。
- 前記外側継手部材は、円筒状内周面に軸方向に延びる複数の直線状トラック溝が形成され、前記内側継手部材は、外側継手部材のトラック溝と対をなして球面状外周面に複数の直線状トラック溝が形成され、前記トルク伝達部材は、外側継手部材の円筒状内周面と内側継手部材の球面状外周面との間に配されたケージにより保持された状態で、前記外側継手部材のトラック溝と前記内側継手部材のトラック溝との間に介在するボールである請求項1〜8のいずれか一項に記載の等速自在継手。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010004698A JP2011144849A (ja) | 2010-01-13 | 2010-01-13 | 等速自在継手 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010004698A JP2011144849A (ja) | 2010-01-13 | 2010-01-13 | 等速自在継手 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011144849A true JP2011144849A (ja) | 2011-07-28 |
Family
ID=44459883
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010004698A Pending JP2011144849A (ja) | 2010-01-13 | 2010-01-13 | 等速自在継手 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2011144849A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2016103385A1 (ja) * | 2014-12-25 | 2017-07-06 | 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 | 表面改質基材の製造方法 |
-
2010
- 2010-01-13 JP JP2010004698A patent/JP2011144849A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2016103385A1 (ja) * | 2014-12-25 | 2017-07-06 | 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 | 表面改質基材の製造方法 |
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