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JP2011010380A - 直流電力変換装置 - Google Patents

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JP2011010380A
JP2011010380A JP2009148534A JP2009148534A JP2011010380A JP 2011010380 A JP2011010380 A JP 2011010380A JP 2009148534 A JP2009148534 A JP 2009148534A JP 2009148534 A JP2009148534 A JP 2009148534A JP 2011010380 A JP2011010380 A JP 2011010380A
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Norio Tomitani
典生 冨谷
Tokuo Kawamura
篤男 河村
Yukinori Tsuruta
幸憲 弦田
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Yokohama National University NUC
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Aisin AW Co Ltd
Yokohama National University NUC
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Abstract

【課題】電力変換の開始時などの動作モードの切り換え時において生じる過渡電流を抑制する直流電力変換装置の提供。
【解決手段】上段側主スイッチ31及び下段側主スイッチ32のそれぞれに対して、スナバコンデンサ6とスナバダイオード7との直列回路が並列して設けられ、補助スイッチ8がスナバコンデンサ6とスナバダイオード7との接続点と直流電源1との間にリアクトル21を介して接続される上段側スナバ回路51及び下段側スナバ回路52の内、一方のスナバ回路5のスナバコンデンサ6の端子間電圧が直流電力変換装置の出力電圧であり、他方のスナバ回路5のスナバコンデンサ6の端子間電圧がゼロである状態から、一方の主スイッチが周期的にスイッチングされる際に、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数でスイッチングが開始される。
【選択図】図1

Description

本発明は、直流と直流との間で電力を変換する直流電力変換装置に関する。
電動機(モータ)として機能する回転電機は、磁界と電流とによって力(トルク)を発生させる原理に基づいて動作する。しかし、モータが回転中には、磁界の中で力が作用することにもなるので、回転電機が発電機としても機能し、いわゆる逆起電力が生じる。逆起電力は、トルクを発生させる電流の流れを妨げる方向に生じる。モータの回転数が上がるに従って逆起電力も増加するため、回転数がある値に達すると逆起電力により生じる電流が駆動電流に達してしまい、モータが制御できなくなる。この対策として、しばしば、磁界を発生させている界磁の力を弱め、逆起電力の発生を抑制する「弱め界磁制御」が行われる。但し、界磁の力を弱めるために磁界の強さも低下し、得られる最大トルクは低下することになる。特開平10−66383号公報(特許文献1)には、昇圧回路(コンバータ)によりバッテリの電圧を昇圧させて、モータを駆動する電圧を高くすることで、弱め界磁制御に移行する回転数をより高い回転数へと移行させる技術が提案されている。
一般的にコンバータは、リアクトルと、当該リアクトルと負電源側との間に接続されたスイッチング素子とを有して構成される。当該スイッチング素子は、例えばPWM(pulse width modulation)制御などによって間欠駆動される。スイッチング素子に電圧が掛かり、又は電流が流れる状況でのスイッチングはハードスイッチングと称される。ハードスイッチングによるコンバータは、構成が簡単であるが、スイッチングの際に過渡応答を生じる。この過渡応答は、大きなスイッチングノイズやスイッチング損失を生じさせる。汎用的なPWM制御では、単位時間当たりのスイッチング回数も多く、これに伴ってスイッチングノイズやスイッチング損失も増加する。ハードスイッチングに対して、スイッチング素子に掛かる電圧や流れる電流がほぼゼロの状態でスイッチングさせるソフトスイッチングと称される方式がある。ソフトスイッチングの基本的な構成は、スイッチング素子の外部に、LC共振回路を設けるものである。スイッチング素子のスイッチングタイミングの制御によりLC共振回路に共振を発生させて、スイッチングの際の電圧や電流をゼロの状態とする。これにより、スイッチングに伴うスイッチングノイズやスイッチング損失が、ハードスイッチングに比べて大きく低減される。国際公開第WO2006/098376号(特許文献2)には、このようなソフトスイッチング方式の昇圧コンバータの技術が開示されている。
特開平10−66383号公報(第3〜12段落、図1、2等) 国際公開第2006/098376号(第60〜67段落、図7、8等)
ところで、近年、化石燃料を燃焼させる内燃機関により駆動される自動車と比べて環境負荷が小さい自動車が提案されている。回転電機であるモータにより駆動される電気自動車や、内燃機関及びモータにより駆動されるハイブリッド自動車は、その一例である。電気自動車やハイブリッド自動車においては、制動や内燃機関による回転電機への力の印加により、回転電機が発電機として機能し、その発電電力がバッテリへ回生される。このため、コンバータは双方向型の構成となる。つまり、特許文献1の図1に示された昇圧回路(24)のように、リアクトルが中点に接続され、相補的にスイッチング可能に出力側の正負電源間に直列接続される2つのスイッチング素子(主スイッチ)を備えて構成される。このコンバータをソフトスイッチングさせるためには、特許文献2の図1に示されたような補助スイッチ(S)、スナバダイオード(D)、スナバコンデンサ(C)を備えたスナバ回路が、それぞれのスイッチング素子に対して設けられる。
昇圧が必要ではなく、コンバータが単にバッテリ電圧を出力する直結モードで動作している際には、主スイッチとしての2つのスイッチング素子は、スイッチングされない。コンバータは、出力ダイオードとして機能する上段側のスイッチング素子のフライホイールダイオードを介してバッテリ電圧を出力する。この時、フライホイールダイオードによって上段側のスイッチング素子が導通状態と等価な状態であることから、このスイッチング素子のスナバ回路のスナバコンデンサの端子間電圧もほぼゼロとなる。ここで、コンバータが昇圧を開始する場合、1つの例として以下のような課題が生じる。例えば、昇圧のために下段側のスイッチング素子がスイッチングを開始することにより、上段側のスナバコンデンサの両端に電位差が生じて大きな過渡電流を生じる。そして、この過渡電流が、下段側のスイッチング素子に流れ込むため、スイッチングに伴うスイッチングノイズやスイッチング損失が増加する。また、この過渡電流に対する耐性を持たせるために、スイッチング素子やコンバータの電流容量を大きくする必要が生じ、コンバータを大型化させる。これに類似した問題は、コンバータの動作モードが力行動作と回生動作との間で切り替わる際にも生じる可能性がある。
上記課題に鑑み、電力変換の開始時などの動作モードの切り換え時において生じる過渡電流が抑制された直流電力変換装置の提供が望まれる。
上記課題に鑑みて創案された本発明に係る直流電力変換装置の特徴構成は、
回転電機と前記回転電機に電力を供給する直流電源との間に介在されるインバータと前記直流電源との間に備えられる直流電力変換装置であって、
第1リアクトル及び第2リアクトルが直列接続されることによって1つのリアクトルと等価的に構成され、一方の端子が前記直流電源の正極に接続される主リアクトルと、
前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の正極出力端とを接続する上段側主スイッチと、
前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の負極出力端とを接続する下段側主スイッチと、
スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記上段側主スイッチに対して並列して設けられ、上段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる上段側スナバ回路と、
スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記下段側主スイッチに対して並列して設けられ、下段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる下段側スナバ回路と、を備え、
前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの内の一方に対する前記スナバ回路の前記スナバコンデンサの端子間電圧が当該直流電力変換装置の出力電圧であり、他方の前記スナバ回路の前記スナバコンデンサの端子間電圧がゼロである状態から、当該一方の主スイッチが周期的にスイッチングされる際に、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数でスイッチングが開始される点にある。
この構成によれば、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数で主スイッチのスイッチングが開始されるので、実質的にオン・デューティーが低くなる。従って、スイッチングの開始前に端子間電圧がゼロであったスナバコンデンサは徐々に充電されることになる。充電電流もそれに応じて徐々に発生するので、過渡電流を抑制することができる。
また、本発明に係る直流電力変換装置は、前記一方の主スイッチが前記起動時周波数でスイッチングされる際の1周期におけるオン状態の期間が、前記所定のスイッチング周波数で当該主スイッチがスイッチングされる際の1周期におけるオン状態の期間に設定されると好適である。
上記構成によれば、周期的にスイッチングされる際のオン期間がスイッチング周波数に拘わらず、定常状態における所定のスイッチング周波数に応じた値となる。従って、従来のスイッチング制御の回路構成やプログラムなどを大きく変更する必要がない。また、オン期間を維持してスイッチング周期だけが変動するので、簡単な回路構成やプログラムによって実質的にオン・デューティーを変更することができる。
また、本発明に係る直流電力変換装置の前記一方の主スイッチをスイッチングする周波数は、他方の主スイッチに対する前記スナバ回路の前記スナバコンデンサの端子間電圧が、当該直流電力変換装置の出力電圧となった際に、前記起動時周波数から前記所定のスイッチング周波数に変更されると好適である。
当該スナバコンデンサの端子間電圧が当該直流電力変換装置の出力電圧となれば、それ以上充電電流が生じることはない。従って、過渡電流も生じることはなく、所定のスイッチング周波数でスイッチングを行うべくスイッチング周波数を変更することで、早期に直流電力変換装置の本来の機能を発揮させることができる。
また、本発明に係る直流電力変換装置の前記一方の主スイッチをスイッチングする周波数は、当該一方の主スイッチのスイッチングが開始された後、所定時間経過後に前記起動時周波数から前記所定のスイッチング周波数に変更されると好適である。
直流電力変換装置の回路定数や、直流電源の定格電圧は既知であるから、問題となるスナバコンデンサが充分に充電され、充電電流に問題が無くなるまでの時間を見積もることができる。スナバコンデンサの端子間電圧を測定する必要もないので、簡単に直流電力変換装置を構成することができる。
また、本発明に係る直流電力変換装置は、前記一方の主スイッチをスイッチングする周波数が、前記起動時周波数から前記所定のスイッチング周波数まで、段階的又は連続的に高い周波数に変更されると好適である。
所定のスイッチング周波数を2倍、4倍とするなど、段階的に起動時周波数を設定すると、回路構成やプログラムを簡潔にすることができる。また、起動時周波数から所定のスイッチング周波数まで、連続的にスイッチング周波数を変更すると、円滑な遷移が可能となる。
また、本発明に係る直流電力変換装置は、前記定常状態における所定のスイッチング周波数が、パルス幅変調制御における変調周波数であると好適である。
一般的に、直流電力変換装置などにおいては、パルス幅変調制御が実施される。パルス幅変調制御では、所定の変調周波数に応じた変調周期中のデューティーによって制御が実施される。起動時周波数から所定のスイッチング周波数へと遷移した結果、変調周波数となると、円滑に定常的な制御状態へと遷移させることができる。また、スイッチング周期中におけるオン状態の期間を維持して、スイッチング周期のみを変動させるような場合には、オン状態の期間に関しては、定常的な制御と同様の回路やプログラムにより演算することができる。従って、直流電力変換装置を簡単に構成することができ、定常的な制御状態へも円滑に移行させることができる。
また、本発明に係る直流電力変換装置の別の特徴構成は、
回転電機と前記回転電機に電力を供給する直流電源との間に介在されるインバータと前記直流電源との間に備えられる直流電力変換装置であって、
第1リアクトル及び第2リアクトルが直列接続されることによって1つのリアクトルと等価的に構成され、一方の端子が前記直流電源の正極に接続される主リアクトルと、
前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の正極出力端とを接続する上段側主スイッチと、
前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の負極出力端とを接続する下段側主スイッチと、
スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記上段側主スイッチに対して並列して設けられ、上段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる上段側スナバ回路と、
スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記下段側主スイッチに対して並列して設けられ、下段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる下段側スナバ回路と、を備え、
前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチが共にオフ状態であり、前記上段側主スイッチに並列接続されるフライホイールダイオードが出力ダイオードとして機能して、前記直流電源の出力電圧が当該直流電力変換装置の出力電圧として出力される直結モードから、前記下段側主スイッチが周期的にスイッチングされて前記直流電源の出力電圧が昇圧されて当該直流電力変換装置の出力電圧として出力される昇圧モードに遷移する際に、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数でスイッチングが開始される点にある。
この構成によれば、直結モードから昇圧モードへと動作モードが切り換わる際に、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数でスイッチングが開始される。つまり、昇圧開始時に、実質的にオン・デューティーが低くなるので、スイッチングの開始前に端子間電圧がゼロであった上段側スナバ回路のスナバコンデンサは徐々に充電される。充電電流もそれに応じて徐々に発生するので、過渡電流を抑制することができる。
また、本発明に係る直流電力変換装置のさらに別の特徴構成は、
回転電機と前記回転電機に電力を供給する直流電源との間に介在されるインバータと前記直流電源との間に備えられる直流電力変換装置であって、
第1リアクトル及び第2リアクトルが直列接続されることによって1つのリアクトルと等価的に構成され、一方の端子が前記直流電源の正極に接続される主リアクトルと、
前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の正極出力端とを接続する上段側主スイッチと、
前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の負極出力端とを接続する下段側主スイッチと、
スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記上段側主スイッチに対して並列して設けられ、上段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる上段側スナバ回路と、
スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記下段側主スイッチに対して並列して設けられ、下段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる下段側スナバ回路と、を備え、
前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの一方がオフ状態であり、他方が周期的にスイッチングされる状態である2つの動作モードである力行モードと回生モードとの間で動作モードが切り換わる際に、前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの内、オフ状態から周期的にスイッチングされる状態となる何れか一方の主スイッチのスイッチングが、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数で開始される点にある。
力行モードと回生モードとの間で動作モードが切り換わる際にも、過渡電流が生じる可能性があるが、所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数でスイッチングが開始されることにより、過渡電流が抑制される。
また、本発明に係る直流電力変換装置は、前記力行モードと前記回生モードとの間で動作モードが切り換わる際に、前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの内、前記動作モードの切り換わりによってオフ状態となる何れか一方の主スイッチが、前記所定のスイッチング周波数から前記起動時周波数によるスイッチングを経てオフ状態とされると好適である。
力行モードと回生モードとの間での動作モードが切り換わりは、ある程度予想が可能である。従って、周期的にスイッチングを実施している主スイッチのスイッチング周波数を起動時周波数に低下させて、実質的にオン・デューティーを低下させることで、円滑に当該主スイッチをオフ状態に導くことができる。
ここで、前記力行モードにおける電力及び前記回生モードにおける電力がそれぞれの電力の潮流方向において所定のしきい値電力以下となった際に、前記動作モードを切り換える移行期となり、この移行期において、前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの双方が周期的にスイッチングされる相補制御が実行されると好適である。
動作モードが切り換わる際には消費電力及び発電電力の大きさが小さくなり、ゼロを経由する。従って、電力の大きさに基づいて移行期が容易に設定可能である。電力の符号、即ち力行と回生とを区別しない場合には、電力の絶対値を用いることにより、それぞれの電力の潮流方向において移行期の設定が可能である。移行期に実行される相補制御は、入力電圧と出力電圧とがある状態に確定している状態で、負荷が変動したり、電力の潮流方向が変化したりした場合でも、電力の潮流方向に従って自然に通流するスイッチが切り替わる。つまり、主リアクトルを流れる電流の極性を判定する必要がなく、主スイッチは一定の状態を保っていればよいので、制御が非常に容易である。また、動作モードの切り換わりに際して、安定した制御が可能となる。動作モードの切り換わりに際しては、オフ状態から周期的にスイッチングされる状態となる何れか一方の主スイッチのスイッチングが、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数で開始され、切り換わりによってオフ状態となる他方の主スイッチが、所定のスイッチング周波数から起動時周波数によるスイッチングを経てオフ状態とされる。従って、移行期においては、上段側及び下段側の主スイッチは、双方、起動時周波数によってスイッチングされる。両方の主スイッチが、共に所定のスイッチング周波数よりも低い周波数でスイッチングされることとなるので、改めてデッドタイムを設けることもなく、円滑に力行と回生とを切り換えることが可能となる。デットタイムには回生される電力が直流電力変換装置の出力コンデンサに蓄えられ、当該出力コンデンサやインバータなどが過電圧となる可能性を有する。しかし、スイッチング制御中に両方の主スイッチが共にオフ状態となる期間が出現し、デッドタイムを設ける必要がなくなるので、早期にスイッチング制御を開始することができ、上記過電圧の問題も抑制される。尚、電力に基づく判定には、電力値(ワット)を用いても良いし、電流値(アンペア)用いてもよい。
また、本発明に係る直流電力変換装置は、前記回転電機として、主に発電機として機能する第1回転電機と、主に電動機として機能する第2回転電機とを有し、
前記第1回転電機による発電電力と、前記第2回転電機による消費電力との差が前記所定のしきい値電力以下となった際に、前記移行期となると好適である。
発電機として機能する回転電機と電動機として機能する回転電機との2つの回転電機が当該直流電力変換装置に接続されている場合、両回転電機の動作状態を監視することによって、全体として力行状態にあるか回生状態にあるかを判定し、また、何れの状態に向かって変化しているか等を予測することができる。つまり、発電機として機能する回転電機の発電電力と、電動機として機能する回転電機の消費電力とを比較することにより、現在の状態の判定や変化している状態の予測が可能である。発電電力と消費電力との差が所定のしきい値電力以下である場合には、力行と回生とが反転する可能性が高いので、この反転に備えて、移行期へと遷移すると好適である。
また、前記移行期において、前記起動時周波数は、前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチのそれぞれに対して、電力の潮流方向と電力の大きさとに基づいて設定されると好適である。
起動時周波数は、1つの周波数に限らず、段階的又は連続的に変化してもよい。電力の潮流方向や電力の大きさによって、力行と回生との切り換えが発生する可能性を推定することができる。つまり、電力の大きさが小さければ、切り換えが発生する可能性が高く、大きければ簡単には切り換わらないと推定することができる。例えば、切り換えが発生する可能性が低ければ、所定のスイッチング周波数に近い高い周波数でスイッチングさせてもよく、切り換えが発生する可能性が高ければ、所定のスイッチング周波数よりも大幅に低い周波数でスイッチングさせた方がよい。電力の潮流方向と電力の大きさとに基づけば、このような起動時周波数の設定を的確に実施することができる。
直流電力変換装置を含む回転電機制御装置の一例を模式的に示すブロック図 直結モード時の直流電力変換装置の動作を示す説明図 昇圧モードが始動される際の直流電力変換装置の動作を示す説明図 コンバータの出力電圧及びリアクトル電流の始動時の様子を概念的に示す波形図 昇圧モードが始動される際のスイッチングのシーケンスを示す波形図 段階的に周波数を変更する制御例を示す波形図 連続的に周波数を変更する制御例を示す波形図 力行時の昇圧制御の様子を模式的に示す説明図 力行時の相補制御の様子を模式的に示す説明図 回生時の相補制御の様子を模式的に示す説明図 回生時の降圧制御の様子を模式的に示す説明図 力行から回生へと動作状態が遷移する際の上段側及び下段側IGBTのゲート駆動信号の一例を模式的に示すタイミングチャート 回転電機制御装置の別の構成例を模式的に示すブロック図
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両の駆動源となるモータ(回転電機)を制御する制御装置に適用されるコンバータ(直流電力変換装置)を例として説明する。図1は、そのようなモータ30の制御装置のシステム構成の一例を模式的に示すブロック図である。モータ30は、インバータ20を介してバッテリ1や、バッテリ1の出力電圧を昇圧するコンバータ10などに電気的に接続され、電力の供給を受けて駆動力を発生する。尚、本実施形態では、説明を簡略化するために、1つの回転電機を制御するシステムを例示して説明する。しかし、例えば、図13に示すように、1つのコンバータ10に2つのインバータ20(20A及び20B)が接続され、それぞれのインバータ20A及び20Bに1つずつ回転電機30(30A及び30B)が接続される構成であってもよい。
インバータ20は、図1及び図13に示すように、複数のスイッチング素子を有して構成される。スイッチング素子には、IGBT(insulated gate bipolar transistor)やMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)を適用すると好適である。本例では、スイッチング素子としてIGBTを用いる。インバータ20は、よく知られているように3相のブリッジ回路により構成される。インバータ20の直流プラス側と直流マイナス側との間に2つのIGBTが直列に接続され、この直列回路が3回線並列接続される。つまり、モータ30のu相、v相、w相に対応するステータコイルのそれぞれに一組の直列回路が対応したブリッジ回路が構成される。各相の上段側のIGBTのコレクタはインバータ20の直流プラス側に接続され、エミッタは各相の下段側のIGBTのコレクタに接続される。また、各相の下段側のIGBTのエミッタは、インバータ20の直流マイナス側(例えば、グラウンド)に接続される。対となる各相のIGBTによる直列回路の中間点、つまり、IGBTの接続点は、モータ30の各相のステータコイルにそれぞれ接続される。
図1及び図13に示すように、IGBTには、それぞれフライホイールダイオード(回生ダイオード)が並列に接続される。フライホイールダイオードは、カソード端子がIGBTのコレクタ端子に接続され、アノード端子がIGBTのエミッタ端子に接続される形で、IGBTに対して並列に接続される。各IGBTのゲートは、ドライバ回路40を介して車両に搭載されたECU(electronic control unit)の1つであるTCU(trans-axle control unit)50に接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。TCU50は、マイクロコンピュータなどの論理回路を中核として構成される。図1及び図13に示すように、モータ30の各相を流れる電流は、電流センサ35により検出されており、回転数などの回転状態は、レゾルバなどの回転センサ37により検出されている。TCU50は、これらのセンサの検出結果に基づいて、フィードバック制御を行い、各IGBTをスイッチングするための駆動信号を生成する。高電圧をスイッチングするIGBTやMOSFETのゲートに入力される駆動信号は、マイクロコンピュータなどの一般的な電子回路の駆動電圧よりも高い電圧を必要とするため、ドライバ回路40を介して昇圧された後、インバータ20に入力される。
コンバータ10は、主リアクトル2、相補的に直列接続された上下一対のスイッチング素子(主スイッチ)3(31及び32)、放電抵抗11、出力コンデンサ12、入力コンデンサ13、スイッチング素子3に対応する上下一対のスナバ回路5(51及び52)を有して構成されている。スイッチング素子3としては、インバータ20と同様に、IGBTや、MOSFETを適用すると好適である。本実施形態では、IGBTを用いて構成される場合を例として図示している。出力コンデンサ12、入力コンデンサ13は、共に平滑コンデンサである。出力、入力の呼称は、コンバータ10が力行する場合に対応している。
主リアクトル2は、直列接続されることによって、1つのリアクトルと等価的に構成される第1リアクトル21と第2リアクトル22とにより構成される。1つのリアクトルとしての主リアクトル2の一方の端子は、バッテリ1(直流電源)のプラス側(正極出力端)に接続される。上段側のIGBT31(上段側主スイッチ)のエミッタは下段側のIGBT32(下段側主スイッチ)のコレクタに接続されるとともに、リアクトル2を介してバッテリ1のプラス側に接続されている。上段側のIGBT31のコレクタは、インバータ20の直流プラス側に接続される。下段側のIGBT32のエミッタはバッテリ1のマイナス側(負極出力端)、及びインバータ20の直流マイナス側と接続される。
コンバータ10の上段側のIGBT31及び下段側のIGBT32のゲートは、ドライバ回路40を介してTCU50に接続される。IGBT31及び32は、TCU50により制御され、バッテリ1の出力を必要に応じて昇圧してインバータ20に供給する。また、モータ30が発電機として機能する際には、インバータ20を介して供給される発電電力を必要に応じて降圧して、バッテリ1へ回生させる。TCU50は、モータ30の目標トルクに応じて設定される指令値に基づいて、IGBT31及びIGBT32を制御する。
具体的には、TCU50は、上段側のIGBT31をOFF状態にし、下段側のIGBT32を例えばPWM制御などにより所定の周波数でスイッチングすることによって、バッテリ1の電圧を昇圧してインバータ20に出力する(昇圧モード)。昇圧が不要な場合には、両IGBT3が共にオフ状態に制御されることにより、上段側のIGBT31のフライホイールダイオード41を介して、バッテリ1の出力がインバータ20へ出力される(直結モード)。ここでは、昇圧モードと直結モードとを総称して力行モードと称する。
モータ30が回生運転する場合には、TCU50は、下段側のIGBT32をOFF状態にし、上段側のIGBT31を所定の周波数でスイッチングすることによって、発電電力を降圧してバッテリ1へ回生する(降圧回生モード)。降圧が不要な場合には、下段側のIGBT32をOFF状態にし、上段側のIGBT32をON状態に制御することによって、電力を回生させる(直結回生モード)。ここでは、降圧回生モードと直結回生モードとを総称して回生モードと称する。
図1及び図13に示すように、コンバータ10は、上段側のIGBT31、下段側のIGB32をそれぞれソフトスイッチングさせるために、それぞれスナバ回路5を有して構成される。上段側のIGBT31に対するスナバ回路5は、上段側スナバ回路51であり、下段側のIGBT32に対するスナバ回路5は、下段側スナバ回路52である。上段側スナバ回路51と下段側スナバ回路52とは、極性が異なるのみで、その構成や機能は等価であるから、特に区別を要する場合を除いて、以下、両者を単にスナバ回路5と称して説明する。また、特に区別を要する場合を除いて、何れか一方のスナバ回路5を代表して説明を加える。
スナバ回路5は、スナバコンデンサ6(61、62)と、スナバダイオード7(71、72)と、スイッチング素子(補助スイッチ)8(81、82)と、整流ダイオード9(91、92)とを備えて構成される。スイッチング素子8は、IGBTや、MOSFETを適用すると好適である。本実施形態では、IGBTを用いて構成される場合を例として図示している。図1に示すように、スナバコンデンサ6とスナバダイオード7との直列回路は、主スイッチとしてのIGBT3に対して並列して設けられる。補助スイッチとしてのIGBT8は、当該スナバコンデンサ6と当該スナバダイオード7との接続点と第1リアクトル21と第2リアクトル22との接続点との間に設けられる。IGBT81及び82には、それぞれフライホイールダイオード8a及び8bが並列に接続される。上段側のIGBT31、下段側のIGBT32のそれぞれをソフトスイッチングさせるために、上段側スナバ回路51と下段側スナバ回路52とが備えられる。
ソフトスイッチングについては、特許文献2等に記載されているように、公知の技術であるので、ここでは最小限の説明に留める。例えば、コンバータ10が昇圧モードで動作する際、上述したように、上段側のIGBT31がオフ状態に維持され、下段側のIGBT32がPWM制御によりスイッチングされる。上段側のIGBT31のフライホイールダイオード41は、コンバータ10の出力ダイオードとして機能する。下段側スナバ回路52のスナバコンデンサ62は充電され、その端子間電圧は、ほぼバッテリ1の出力電圧となる。
主スイッチであるIGBT32がターンオンされる前に、下段側スナバ回路52の補助スイッチであるIGBT82がターンオンされる。出力ダイオードとしてのフライホイールダイオード41に蓄積されていた電荷は、IGBT82を介して、第1リアクトル21へと流れる。フライホイールダイオード41の電荷が消滅すると、フライホイールダイオード41は逆回復して非導通状態となる。ここで、スナバコンデンサ62は、共振を起こし、蓄積していた電荷を放電する。電荷を全て放電すると、スナバコンデンサ62の端子間電圧はゼロとなり、このタイミングで主スイッチであるIGBT32がオン制御され、ゼロ電圧でターンオンする。共振による回生電流は、IGBT32の電流を打ち消す方向に流れるため、IGBT32はゼロ電流からターンオンする。このように、ゼロ電圧ゼロ電流によるソフトスイッチングが実現される。
主リアクトル2は、第1リアクトル21と第2リアクトル22とが直列接続されることによって等価的に1つのリアクトルとして構成される。出力ダイオード(フライホイールダイオード41)に蓄積される電荷は、2つの主リアクトルの内のバッテリ1側の第1リアクトル21に対して、主リアクトル2の主電流とは逆方向に通流され、バッテリ1に回生される。これにより、出力ダイオード(フライホイールダイオード41)の逆回復による過電圧が抑制されると共に、主リアクトル2で生じる熱損失も低減される。第1リアクトル21に相当するリアクトルが大きいと出力ダイオードの蓄積電荷を消滅することができず、逆回復時に大きなサージ電圧を生じる。しかし、主リアクトル2を第1リアクトル21と第2リアクトル22との直列接続によって構成することによって、主リアクトル2の大きさを維持しつつ、第1リアクトル21の値を適正に設定することが可能となる。
ここで、コンバータ10がバッテリ1の出力をそのままインバータ20へ出力する直結モードから、昇圧モードを始動する場合を考える。直結モードでの動作時には、図2に示すように、上段側のフライホイールダイオード41が出力ダイオードとして機能し、バッテリ1の出力電圧Eをほぼそのままインバータ20へと出力する。この時、コンバータ10の主スイッチであるIGBT31及びIGBT32、補助スイッチであるIGBT81及びIGBT82は、破線で示すように全てオフ状態である。図中、G31、G32、G81、G82は、それぞれIGBT31、IGBT32、IGBT81、IGBT82のゲート駆動信号を示す。
下段側スナバ回路52において、スナバコンデンサ62はスナバダイオード72を介して充電され、スナバコンデンサ62の端子間電圧V2は、ほぼバッテリ1の出力電圧Eとなる。また、直結モードであるから出力コンデンサ12の端子間電圧V3もほぼバッテリ1の出力電圧Eである。上段側スナバ回路51においては、スナバダイオード71及びフライホイールダイオード41が共に順方向に接続されていることから、スナバコンデンサ61は充電されず、その端子間電圧V1は、ほぼゼロである。
直結モードから昇圧モードが始動される場合、以下の2通りのケースが存在する。第1のケースは、車両が停止したアイドリング状態である。このとき、インバータ20及びモータ30は、ほぼ無負荷状態のため、コンバータ10の出力電力が非常に小さい軽負荷のままで、直結モードから昇圧モードが始動される。第2のケースは、車両がモータ30の駆動力によって、いわゆるEV走行モードで既に動き出しており、加速のために直結モードから昇圧モードが始動されるケースである。
これら2つのケースに共通して、特許文献2のような原理に基づくゼロ電圧ゼロ電流によるソフトスイッチング動作を伴う相補制御を行なうと、大きな電流がIGBT32に流れることになる。つまり、相補制御により上段側の補助スイッチであるIGBT81が毎回スイッチングすると、その都度、上段側のスナバコンデンサ61の充電電圧が放電する。これにより、スイッチング毎に大きな充電電流がスナバコンデンサ61、スナバダイオード71を介して、IGBT32に流れてしまう(図3参照)。このため、始動時にはゼロ電圧ゼロ電流によるソフトスイッチング動作を伴う相補制御を行なうことができないという第1の課題が生じる。
次に、上記第1のケースにおいて車両が停止中の場合、インバータ20及びモータ30が無負荷状態であるために第2の課題が生じる。図4(b)は、出力電圧が正しく制御された場合の出力電圧Voutとリアクトル22の電流I22の始動時の波形変化を概念的に示している。コンバータ10の出力電圧Voutは入力電圧Eから設定値V0へ制御されて柔軟に立ち上がる。いわゆるソフトスタートにより起動される。しかし、インバータ20及びモータ30が無負荷状態である場合には、主スイッチであるIGBT32のゲート駆動信号G32は最小オン幅(最小オン・デューティー)に設定された状態で固定される。このため、図4(a)に示すように、出力電圧Voutは適切に制御されず、出力電圧Voutは過電圧であるVpまで上昇する。これにより、出力コンデンサ12の過大な充電電流がIGBT32に流れることになる。
上記第2のケースにおいて車両が、EV走行モードですでに動き出している場合は、インバータ20及びモータ30が一定の負荷状態にある。従って、出力電圧が正しく制御された状態で直結から昇圧モードへの始動が可能となる場合と、出力電圧が正しく制御されず、第1のケース(第2の課題)と同様に出力電圧が過電圧であるVpとなってしまう場合とがある。
以上説明したように、直結モードから昇圧モードが始動される時には、ソフトスタートに関する3つの課題が存在する。つまり、始動時には相補制御ができないという無負荷状態と負荷状態とに共通する第1の課題、無負荷で起動する際の第2の課題、一定の負荷で起動する際の第3の課題の3つの課題がある。
そこで、TCU50は、直結モードから昇圧モードを始動するに際して、図5に示すように、所定のスイッチング周波数(PWM制御の変調周波数)よりも低い起動時周波数でIGBT32をスイッチングする。上述したように、主スイッチであるIGBT32に先だって、補助スイッチであるIGBT82がターンオンする。従って、ゲート駆動信号G32よりもゲート駆動信号G82が先に有効となる。図中の符号T38は、この先行する時間差を示す。TCU50は、昇圧の指令値に基づいて、所定のスイッチング周波数である変調周波数F30においてPWM制御によりバッテリ1の出力を昇圧するためのパルス幅T3を演算する。PWM制御時におけるスイッチングの周期T30は、変調周波数の逆数の1/F30である。
TCU50は、昇圧モード運転の始動に際して、有効期間のパルス幅T3を維持したままで、変調周波数F30よりも低い起動時周波数(F31及びF32)でゲート駆動信号G32及びG82を生成する。ここで、パルス幅T3は、昇圧モードの定常運転時のPWM制御におけるパルス幅としては、昇圧率が低い場合に相当する絞り込まれたパルス幅である。ゲート駆動信号G32とG82とは、同期しているので、以下、代表してゲート駆動信号G32について説明する。図5においては、起動時周波数から所定のスイッチング周波数である変調周波数F30まで、段階的に高い周波数に切り換えられる場合を例示している。ここでは、起動時周波数として、第1起動時周波数F31と第2起動時周波数F32との2段階を有している場合を例示している。図5において、第2起動時周波数F32は所定のスイッチング周波数F30の1/2の周波数であり、第1起動時周波数F31は所定のスイッチング周波数F30の1/4の周波数である。尚、起動時周波数は、2段階に限らず、1段階であっても3段階以上であってもよい。
図5に示すように、変調周波数F30で、スイッチングされる場合のオン・デューティーは、T3/T30である。第1起動時周波数F31でスイッチングされる場合のオン・デューティーは、T3/T31である。第1起動時周波数F31は、変調周波数F30の1/4であるから、T31はT30の4倍の期間である。従って、第1起動時周波数F31でスイッチングされる場合のオン・デューティーは、変調周波数F30でスイッチングされる場合と比べて、実質的に1/4となる。また、第2起動時周波数F32でスイッチングされる場合のオン・デューティーは、T3/T32である。第2起動時周波数F32は、変調周波数F30の1/2であるから、T32はT30の2倍の期間である。従って、第2起動時周波数F32でスイッチングされる場合のオン・デューティーは、変調周波数F30でスイッチングされる場合と比べて、実質的に1/2となる。
変調周波数F30でスイッチングされる際でも、起動時周波数F31及びF32でスイッチングされる際でも、1回のスイッチングにおいてIGBT32がオン状態となる時間はT3で変わりはない。しかし、1回のスイッチング周期においてオン状態となる割合が減少することから、実質的にオン・デューティーが低下する。その結果、単位時間当たりにIGBT32に流入するスナバコンデンサ61の充電電流(過渡電流)が減少する。昇圧の指令値及び変調周波数に基づいて演算されるPWM制御のパルス幅T3は変動しないため、これまでのコンバータ10の構成やプログラムなどを大きく変更することなく、昇圧モードの始動時の問題を抑制することが可能となる。換言すれば、パルス幅T3を維持した状態で、スイッチングの周波数を変更しているので、起動時周波数による制御時はパルス周波数変調を行っているとも言える。
尚、補助スイッチとしてのIGBT82をスイッチングするゲート駆動信号G82についても同様である。図5において、T80はT30と一致し、T81はT31と一致し、T82はT32と一致する。ゲート駆動信号G82の有効期間のパルス幅T8は、スナバ回路52を含めたコンバータ10の回路定数や、IGBT32のオン時間T3に応じて設定される。また、上述したように、IGBT32がターンオンする前に、スナバ回路52のIGBT82がターンオンするが、その時間差T38は、動作状態によって定められた所定の値となる。本実施形態では、始動時周波数から変調周波数へとスイッチング周波数が切り換えられる途上において、時間差T38は同一の値である。つまり、スイッチング周波数が切り換えられる途上において、ゲート駆動信号G32とゲート駆動信号G82とは、その位相関係を保って出力される。
TCU50が、始動時周波数から変調周波数へとスイッチング周波数を切り換えるに際しては、図5に示したような段階的に高い周波数に切り換える手法や、連続的に高い周波数に切り換える手法がある。まず、図6を利用して、TCU50が、段階的にスイッチング周波数を切り換える場合の制御例について説明する。
上述したように、TCU50は、マイクロコンピュータやASIC(application specific integrated circuit)などによって構成される。これらの電子回路は、一般的に、システムクロックを最小制御単位として動作する。ここでは、図6に示すように、周波数100MHzのクロックcpをシステムクロックとする。TCU50は、クロックcpによって動作するカウンタ又はタイマを有しており、例えばリセットRSTのタイミングを基準として、カウントが開始される。
ここで、所定のスイッチング周波数である変調周波数F30が200kHzであるとする。クロックcpの500ケ分に相当する信号cp500が生成され、信号cp500がPWM制御の基準となる。変調周波数F30の1/4の周波数である第1起動時周波数F31は、50kHzとなる。そこで、クロックcpの2000ケ分に相当する信号cp2000が生成される。同様に、第2起動時周波数F32は、100kHzとなるので、クロックcpの1000ケ分に相当する信号cp1000が生成される。
これら、cp500、cp1000、cp2000の各信号は、周期的にそれぞれの信号を生成するためにカウンタを一時クリアするタイミングを示す。従って、変調周波数F30でスイッチングを実施する場合には、1〜500(0〜499)のカウンタ値、第1起動時周波数でスイッチングを実施する場合には、1〜2000(0〜1999)のカウンタ値、第2起動時周波数でスイッチングを実施する場合には、1〜1000(0〜999)のカウンタ値を用いてゲート駆動信号G32、G82が生成される。図6では、それぞれ、一時クリアされる前のカウンタ値である475、1975、975において生成される信号cp475、cp1975、cp975を基準としてゲート駆動信号G32、G82が生成される場合を例示している。
直結モードから昇圧モードが始動される際には、昇圧モード信号stが有効状態となる。この信号stは、最も遅い周波数の信号cp1975に同期して有効となる。昇圧モードを終了して直結モードに移る際や、力行と回生との間でモードを切り換える際も、信号cp1975など、切り換えの際の最も遅い周波数の基準信号に同期して変化すると好適である。昇圧モード信号stとゲート駆動信号(G32、G82等)との同期を取る方法は、この他にも多数の方法を採用することが可能である。当業者であれば、本実施形態とは異なる論理回路やプログラムによって実現できるであろう。ここで、大切であるのは、昇圧モード信号stなどのステータス信号とゲート駆動信号とが同期する点である。仮に、両信号が非同期に生成された後、単純に組み合わせ回路を経由して出力されると、ゲート駆動信号のパルス幅が乱れたり、主スイッチと補助スイッチとの一方のみのゲート駆動信号が出力されたりする可能性が生じる。両信号が同期して生成され、出力されることによって、起動時も停止時も、安定したスイッチングが可能となる。
昇圧モード信号stの有効期間内において、まず、信号cp1975を基準として、ゲート駆動信号G82及びG32が生成される(時刻t10)。補助スイッチであるIGBT82のゲート駆動信号G82は、信号cp1975を基準としてクロックcpの20周期後に立ち上がり、クロックcpの100周期に亘って有効となる。主スイッチであるIGBT32のゲート駆動信号G32は、信号cp1975を基準としてクロックcpの50周期後に立ち上がり、クロックcpの150周期に亘って有効となる。このようにして、まず、第1起動時周波数F31でスイッチングが開始される。
起動開始後、つまり、第1起動時周波数F31でのスイッチングの開始後、所定の条件を満たすと、スイッチング周波数が、第1起動時周波数F31から第2起動時周波数F32へと切り換えられる(時刻t20)。所定の条件とは、起動開始後に所定時間が経過したことや、上段側スナバ回路51のスナバコンデンサ61の端子間電圧が所定の電圧まで上昇したことである。所定時間や所定の電圧は、バッテリ1の定格電圧や、スナバコンデンサ61の容量などに基づいて設定される。第1起動時周波数F31から第2起動時周波数F32への切り換えに際しては、信号cp975に同期すると好ましい。本例においては、第2起動時周波数F32は第1起動時周波数F31の2倍の周波数であり、リセットRSTのタイミングを基準として、カウントが開始されているので、信号cp1975に同期して切り換えれば、信号cp975に同期して切り換えることになる。
ここで、スイッチング周波数の切り換えとは、ゲート駆動信号G32、G82の生成の基準となる信号を変更することに相当する。第1起動時周波数F31によるスイッチングの際には信号cp1975を基準としていたが、スイッチング周波数の切り換え後には信号cp975を基準としてゲート駆動信号G32、G82が生成される。但し、図に示すように、基準信号に対するゲート駆動信号G32、G82の生成タイミングには変わりはない。即ち、基準信号の変更前と同様に、補助スイッチであるIGBT82のゲート駆動信号G82は、信号cp975を基準としてクロックcpの20周期後に立ち上がり、クロックcpの100周期に亘って有効となる。主スイッチであるIGBT32のゲート駆動信号G32は、信号cp975を基準としてクロックcpの50周期後に立ち上がり、クロックcpの150周期に亘って有効となる。
第2起動時周波数F32によるスイッチングの開始後、あるいは起動開始後、所定の条件を満たすと、スイッチング周波数が、第2起動時周波数F32から定常状態のスイッチング周波数である変調周波数F30へと切り換えられる(時刻t30)。所定の条件とは、上述したように、起動開始後に所定時間が経過したことや、上段側スナバ回路51のスナバコンデンサ61の端子間電圧が所定の電圧まで上昇したことである。所定時間は、バッテリ1の定格電圧や、スナバコンデンサ61の容量などに基づいて設定される。所定の電圧は、上段側スナバ回路51のスナバコンデンサ61が充分に充電された状態の電圧であるコンバータ10の出力電圧とほぼ等価であると好適である。スイッチング周波数の切り換えに際しては、上記と同様に信号cp475に同期すると好ましい。本例においては、変調周波数F30は第2起動時周波数F32の2倍の周波数であり、リセットRSTのタイミングを基準として、カウントが開始されているので、信号cp975に同期して切り換えれば、信号cp475に同期して切り換えることにもなる。
第1起動時周波数F31から第2起動時周波数F32への切り換えと同様に、スイッチング周波数の切り換えとは、ゲート駆動信号G32、G82の生成の基準となる信号を変更することに相当する。変更後には、信号cp975に代わり、信号cp475を基準としてゲート駆動信号G32、G82が生成される。この場合も、基準信号に対する生成タイミングには変わりはない。つまり、補助スイッチであるIGBT82のゲート駆動信号G82は、信号cp475を基準としてクロックcpの20周期後に立ち上がり、クロックcpの100周期に亘って有効となる。主スイッチであるIGBT32のゲート駆動信号G32は、信号cp475を基準としてクロックcpの50周期後に立ち上がり、クロックcpの150周期に亘って有効となる。
上述したように、ゲート駆動信号G32、G82の有効パルス幅T3及びT8や、両信号の関係(時間差T38)などについては、スイッチング周波数には依存されない。昇圧の指令値と定常状態のスイッチング周波数である変調周波数とに基づいて設定される値が用いられる。従って、TCU50の構成やプログラムなどを大きく変更することなく、昇圧モードの始動時の問題を良好に抑制することが可能となる。
尚、上記においては、起動時周波数から所定のスイッチング周波数まで、段階的に高い周波数に切り換えられる場合について例示した。しかし、これに限らず、起動時周波数から所定のスイッチング周波数まで、連続的に高い周波数に切り換えられてもよい。以下、図7を利用して、TCU50が、連続的にスイッチング周波数を切り換える場合の制御例について説明する。
図6に基づいて上述した例では、段階的に周波数を切り換えるために、カウンタを一時クリアするための信号cp500、cp1000、cp2000を生成した。本例では、連続的に高い周波数に切り換えるために、クリア信号のカウント値が変動する信号cpxを用いる。信号cpxのカウント値は、別のダウンカウンタxによって設定される。ここでは、変化を明示するために、250ずつカウント値が減少してカウント値500で固定されるダウンカウンタxを例示している。ダウンカウンタxにより指定される値に応じて生成された信号cpxを上述した信号cp975やcp1000と同様に基準信号として用いることによって、起動時周波数から変調周波数まで、連続的に高い周波数に変化させることが可能である。図7においては、250ずつカウント値が減少してカウント値500で固定されるダウンカウンタxに対応して、信号cpxとして、cp2250、cp2000、cp1750、cp1500、cp1250、cp1000、cp750、cp500が生成される例を示している。当然ながら、図7に示した例に限定されることなく、ダウンカウンタxの減少幅を適宜設定することによって、より連続性を高めることができることが可能であることは容易に理解されよう。例えば、図7に示した例においては、周期が一定の値ΔT(=250)だけ変化する例を示した。これに限らず、周波数が一定の値Δfだけ変化するように構成されてもよい。
ところで、回転電機としてのモータ30は発電機としても機能し、その発電電力はバッテリ1へ回生される。例えば、図1に示したシステムでは、車両が制動する場合にモータ30が発電機として機能し、発電電力がバッテリ1へ回生される。また、図13に示したようにモータ30を複数有するシステムでは、一方のモータ30A(第1回転電機)を内燃機関などにより機械的に回転させて発電機として機能させ、その発電電力とバッテリ1の電力とを用いて他方のモータ30B(第2回転電機)を駆動させることがある。モータ30Bの消費電力がモータ30Aによる発電電力を下回るような場合には、余った電力がバッテリ1へ回生される。
コンバータ10が昇圧を開始する際に限らず、コンバータ10がバッテリ1からインバータ20へと電力を供給する力行モードと、インバータ20からバッテリ1へと電力を回生する回生モードとの間で相互に切り換わる際にも、スナバコンデンサ6に大きな過渡電流が発生する可能性がある。従って、力行モードと回生モードとの切り換えに際しても、起動時周波数を用いたスイッチング周波数の変更を行い、パルス周波数変調を行うと好適である。
例えば、力行モードと回生モードとの切り換わりに際して、上段側の主スイッチであるIGBT31及び下段側の主スイッチであるIGBT32の一方を力行及び回生のモードに応じてターンオフさせる。そして、他方のIGBTのスイッチング制御を上述した昇圧モードの始動時と同様に起動時周波数から開始させる。
また、切り換わりに際してターンオフする側のIGBTのターンオフに際して、起動時とは逆のシーケンスで変調周波数から起動時周波数へと変化させ、連続したオフ状態へと移行させてもよい。例えば、図13に示したように、回転電機を複数備え、一方が発電機、他方が電動機として機能する場合、発電機の発電電力と電動機の消費電力との差が所定のしきい値電力以下となった場合に、始動時とは逆のシーケンスで、所定のスイッチング周波数から起動時周波数へと変化させると好適である。尚、この「所定のしきい値」は、後述する電流の定格値Ithを利用すると好適である。図13に示すように、モータ30の各相を流れる電流は、電流センサ35により検出されており、回転数などの回転状態は、レゾルバなどの回転センサ37により検出されている。TCU50は、これらのセンサの検出結果に基づいて、発電電力や消費電力を演算する。スイッチング周波数を連続的に変化させる際には、図7に示したダウンカウンタxをアップカウンタとすればよい。
一般的に、力行モードと回生モードとの切り換え時には、主スイッチとして相補的に直列接続されたIGBT31とIGBT32とが同時にオン状態となってコンバータ10の出力が短絡しないように、両IGBT3が共にオフ状態となるデットタイムが設けられる。但し、デットタイムには回生される電力が出力コンデンサ12に蓄えられ、出力コンデンサ12やインバータ20などが過電圧となる可能性を有する。起動時周波数によるパルス周波数変調では、実質的にオン・デューティーが低くなることから、改めてデットタイムを設定しなくとも、両IGBT3が共にオフ状態となる期間をスイッチング制御中に設けることが可能となる。デッドタイムにおいて回生電流が出力コンデンサ12に滞留して、出力コンデンサ12の電位が急上昇するような減少を抑制すると共に、早期にスイッチング制御を開始することができる。
尚、力行モードと回生モードとの切り換え時や、直結モードから昇圧モードの開始時以外、例えば、昇圧モードや降圧回生モードでの動作中に、PWM制御からパルス周波数変調へ制御方法を切り換えてもよい。変調周波数が一定で、PWM制御におけるオン・デューティーが低下すると、IGBT3のゲート駆動信号のオン時間が短くなる。それに応じて、スナバ回路5のIGBT8のゲート駆動信号のオン時間も調整する必要がある。但し、スナバ回路のIGBT8のオン時間が短くなり過ぎると、ソフトスイッチングの効果が限定的となる可能性が生じる。そこで、オン・デューティーが所定の下限デューティー以下となった場合には、ゲート駆動信号G32(G31)、G82(G81)のオン時間T3(T8)を固定して、変調周波数を起動時周波数に変更し、実質的にオン・デューティーを低下させると好適である。
また、主スイッチであるIGBT41とIGBT42とに対して、相補制御と称される制御を実施すると、コンバータ10の動作モードが変わる際の制御を容易にすることができる。以下、力行モードから回生モードへ切り替わる際に、相補制御を実施する例について説明する。図8〜図11においては、ゲート駆動信号の単パルス又は2〜3パルス分に相当する期間に焦点を当てて説明するので、PWMや、パルス周波数変調などの変調方式については具体的に言及しない。図12を用いた補足説明を参照すれば、相補制御の際にパルス周波数変調を適用することによって実質的にデッドタイムを設定することなく、デッドタイムを設けたことと同様の効果を得られることが容易に理解されよう。また、力行制御から相補制御への移行時及びその逆の移行時、相補制御から回生制御への移行時及びその逆の移行時において、上述したようにパルス周波数変調が適用可能であることも勿論である。
図8(a)は、昇圧モード(力行モード)時の運転状態を示しており、中抜き矢印は、電力の潮流方向を示している。上述したように、IGBT32のゲート駆動信号G32と、IGBT82のゲート駆動信号G82とは、所定の位相差T38を有して与えられ、コンバータ10は、ソフトスイッチングにより高効率に動作する。図8(b)に示す波形V22は第2リアクトル22の端子間電圧を示し、波形I22は第2リアクトル22に流れる電流を示している。符号Ithは、電流I22の正の定格値(正の所定値)である。電流I22がこの正の定格値Ithよりも正側に大きい場合に、コンバータ10はソフトスイッチングを伴う昇圧モードで動作する。
図9(a)は、力行の消費電力が減少し、回生側へと移行しつつある時の運転状態を示している。中抜き矢印は電力の潮流方向を示しており、この時点では、まだ、力行の状態である。但し、図9(b)に示すように、電流I22は、正の定格値Ithを下回っており、コンバータ10は、相補制御により動作する。相補制御とは、図9(b)に示すように、上段側の主スイッチであるIGBT32と下段側の主スイッチであるIGBT31とを交互に、つまり相補的にスイッチングする制御である。この際、IGBT32とIGBT31とが同時にオン状態とならないように、デッドタイムdtが設けられる。ここで、上述したようにパルス周波数変調を適用すれば、実質的にデッドタイムdtを設定することなく、デッドタイムdtを設けたことと同様の効果を得ることができる。尚、図9(b)に示すように、リアクトル22を流れる電流I22は小さいので、IGBT31及びIGBT32の遮断電流も小さい。従って、ハードスイッチングを行っても、損失は小さく、この相補制御の際には、スナバ回路5は停止される。
相補制御では、入力電圧と出力電圧とがある状態に確定している状態で、負荷が変動したり、電力の潮流方向が変化したりした場合でも、電力の潮流方向に従って自然に通流するスイッチが切り替わる。つまり、リアクトル22を流れる電流I22の極性を判定する必要がなく、IGBT31及びIGBT32のゲート駆動信号G31及びG32は、図9(b)の状態を保っていればよいので、制御が非常に容易である。
図10は、リアクトル22の電流I22の極性が反転した状態を示している。中抜き矢印は電力の潮流方向を示しており、力行から回生の状態となっている。但し、図10(b)に示すように、電流I22は、負の定格値Ithを下回っている(定格値−Ithを上回っている。)。従って、コンバータ10は、引き続き相補制御により動作する。図9及び図10の状態は、力行の消費電力が減少し、回生へ移行し、回生電力がまだ少ない状態や、回生電力が少ない状態から、力行へ移行し、力行の消費電力がまだ小さい状態など、力行と回生との状態が入れ替わり易い状態である。この際、相補制御が実行されるので、力行と回生との状態に関わりなく同じ制御を継続することができる。
図11は、降圧モード(回生モード)時の運転状態を示しており、中抜き矢印は、電力の潮流方向を示している。電流I22は、負の定格値Ithを上回っている(定格値−Ithを下回っている。)ので、相補制御ではなく、下段側のIGBT32はオフ状態に維持され、上段側のIGBT31がソフトスイッチングによりスイッチングされる。力行時における下段側の制御と同様に、IGBT31のゲート駆動信号G31と、IGBT81のゲート駆動信号G81とは、所定の位相差T38を有して与えられる。コンバータ10は、ソフトスイッチングを伴う降圧モードで高効率に動作する。
図8〜図11では、理解を容易にするために、図1と同様に回転電機が1つの場合を例として説明した。しかし、例えば、図13に示したように、回転電機を複数備え、一方が発電機、他方が電動機として機能する場合でも、コンバータ10の運転状態が力行と回生との間で切り替わる際に、相補制御が実行されると好適である。図13のような構成の場合、コンバータ10の電力の潮流方向は、発電機の発電電力と電動機の消費電力との差によって定まる。従って、この消費電力の差が、所定のしきい値以下となった場合に、相補制御を実行すると好適である。この所定のしきい値は、電力値(ワット)でも電流値(アンペア)でもよく、例えば、正負の定格値Ithを利用することも当然可能である。
以下、力行から回生へと動作状態が遷移する際の上段側のIGBT32と、下段側のIGBT31とのゲート駆動信号G32及びG31の一例を模式的に示したタイミングチャートである図12を用いて補足する。上述した「所定のしきい値」は1つの値に限らず、例えば2段階以上の複数段階、設定されてもよい。本例では、正負それぞれ2段階設定されている場合を示す。移行期に入る前の力行時には、下段側のIGBT32のみがスイッチング制御される下段制御が実行される。電力の潮流方向が図8及び図9に示す力行方向であり、リアクトル22の電流I22が定格値Ithよりも大きい第1しきい値よりも大きい時には、ゲート駆動信号G32は、所定のスイッチング周波数であるPWM変調周波数で出力される。
リアクトル22の電流I22が減少して第1しきい値以下となると、力行から回生へ動作モードが切り替わる可能性がある移行期となる。ゲート駆動信号G32は、所定のスイッチング周波数であるPWM変調周波数ではなく、第2起動周波数で出力される。さらに、リアクトル22の電流I22が減少して正の定格値Ith(第2しきい値)以下となると、ゲート駆動信号G32は、さらに低い周波数である第1起動周波数で出力される。さらに、上段側のIGBT31のゲート駆動信号G31も、第1起動周波数により出力されはじめる。この時、上段側及び下段側のIGBT31、32の双方がスイッチング制御される相補制御となる。図12に示すように、ゲート駆動信号G31、G32のハイ期間のパルス幅は一定であるが、出力の周期が長くなることで、実質的にオフ期間が長くなる。これにより、改めて設定する必要なく、デッドタイムdtが自動的に設定される。
図9及び図10に基づいて上述したように、リアクトル22の電流I22の絶対値が、正負の定格値Ith(第2しきい値)の絶対値以下の時には、相補制御が実行される。この間、電力の潮流方向が、力行と回生との間でハンチングを生じたとしても、良好に力行動作及び回生動作が維持される。電力の潮流方向が切り換わり、リアクトル22の電流I22が回生電流となり、負の定格値Ith(第2しきい値)を上回る(−Ithを下回る)と、下段側のIGBT32のスイッチングが停止される。上段側のIGBT31のゲート駆動信号G31は、第1起動周波数よりも高い周波数である第2起動周波数で出力される。つまり、相補制御から上段制御(回生)へと推移する。さらに回生電流が多くなり、リアクトル22の電流I22が負方向に第1しきい値を上回ると、移行期が完了する。ゲート駆動信号G31は、所定のスイッチング周波数であるPWM変調周波数で出力される。
このように、移行期において、起動時周波数が、上段側主スイッチ及び下段側主スイッチのそれぞれに対して、電力の潮流方向と電力の大きさとに基づいて設定されると好適である。尚、電力の潮流方向及び、電力の大きさは、上記の例のように、電力値(ワット)でも電流値(アンペア)でもよい。また、図12には、起動時周波数が段階的に変化する場合を例示したが、当然ながら連続的に変化する形態であってもよい。
本発明の直流電力変換装置は、電気自動車やハイブリッド自動車などの回転電機制御装置において、直流電源とインバータとの間で直流電力を変換するために用いることができる。
1:バッテリ(直流電源)
2:主リアクトル
3:主スイッチ
4:フライホイールダイオード
5:スナバ回路
6:スナバコンデンサ
7:スナバダイオード
8:補助スイッチ
21:第1リアクトル
22:第2リアクトル
31:上段側IGBT(上段側主スイッチ)
32:下段側IGBT(上段側主スイッチ)
41:上段側フライホイールダイオード
42:下段側フライホイールダイオード
51:上段側スナバ回路
52:下段側スナバ回路
61:上段側スナバコンデンサ
62:下段側スナバコンデンサ
71:上段側スナバダイオード
72:下段側スナバダイオード
81:上段側補助スイッチ
82:下段側補助スイッチ
10:コンバータ(直流電力変換装置)
20:インバータ
30:モータ(回転電機)
30A:モータ(第1回転電機)
30B:モータ(第2回転電機)

Claims (12)

  1. 回転電機と前記回転電機に電力を供給する直流電源との間に介在されるインバータと前記直流電源との間に備えられる直流電力変換装置であって、
    第1リアクトル及び第2リアクトルが直列接続されることによって1つのリアクトルと等価的に構成され、一方の端子が前記直流電源の正極に接続される主リアクトルと、
    前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の正極出力端とを接続する上段側主スイッチと、
    前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の負極出力端とを接続する下段側主スイッチと、
    スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記上段側主スイッチに対して並列して設けられ、上段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる上段側スナバ回路と、
    スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記下段側主スイッチに対して並列して設けられ、下段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる下段側スナバ回路と、を備え、
    前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの内の一方に対する前記スナバ回路の前記スナバコンデンサの端子間電圧が当該直流電力変換装置の出力電圧であり、他方の前記スナバ回路の前記スナバコンデンサの端子間電圧がゼロである状態から、当該一方の主スイッチが周期的にスイッチングされる際に、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数でスイッチングが開始される直流電力変換装置。
  2. 前記一方の主スイッチが前記起動時周波数でスイッチングされる際の1周期におけるオン状態の期間は、前記所定のスイッチング周波数で当該主スイッチがスイッチングされる際の1周期におけるオン状態の期間に設定される請求項1に記載の直流電力変換装置。
  3. 前記一方の主スイッチをスイッチングする周波数は、他方の主スイッチに対する前記スナバ回路の前記スナバコンデンサの端子間電圧が、当該直流電力変換装置の出力電圧となった際に、前記起動時周波数から前記所定のスイッチング周波数に変更される請求項1又は2に記載の直流電力変換装置。
  4. 前記一方の主スイッチをスイッチングする周波数は、当該一方の主スイッチのスイッチングが開始された後、所定時間経過後に前記起動時周波数から前記所定のスイッチング周波数に変更される請求項1〜3の何れか一項に記載の直流電力変換装置。
  5. 前記一方の主スイッチをスイッチングする周波数は、前記起動時周波数から前記所定のスイッチング周波数まで、段階的又は連続的に高い周波数に変更される請求項1〜4の何れか一項に記載の直流電力変換装置。
  6. 前記定常状態における所定のスイッチング周波数は、パルス幅変調制御における変調周波数である請求項1〜5の何れか一項に記載の直流電力変換装置。
  7. 回転電機と前記回転電機に電力を供給する直流電源との間に介在されるインバータと前記直流電源との間に備えられる直流電力変換装置であって、
    第1リアクトル及び第2リアクトルが直列接続されることによって1つのリアクトルと等価的に構成され、一方の端子が前記直流電源の正極に接続される主リアクトルと、
    前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の正極出力端とを接続する上段側主スイッチと、
    前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の負極出力端とを接続する下段側主スイッチと、
    スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記上段側主スイッチに対して並列して設けられ、上段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる上段側スナバ回路と、
    スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記下段側主スイッチに対して並列して設けられ、下段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる下段側スナバ回路と、を備え、
    前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチが共にオフ状態であり、前記上段側主スイッチに並列接続されるフライホイールダイオードが出力ダイオードとして機能して、前記直流電源の出力電圧が当該直流電力変換装置の出力電圧として出力される直結モードから、前記下段側主スイッチが周期的にスイッチングされて前記直流電源の出力電圧が昇圧されて当該直流電力変換装置の出力電圧として出力される昇圧モードに遷移する際に、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数でスイッチングが開始される直流電力変換装置。
  8. 回転電機と前記回転電機に電力を供給する直流電源との間に介在されるインバータと前記直流電源との間に備えられる直流電力変換装置であって、
    第1リアクトル及び第2リアクトルが直列接続されることによって1つのリアクトルと等価的に構成され、一方の端子が前記直流電源の正極に接続される主リアクトルと、
    前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の正極出力端とを接続する上段側主スイッチと、
    前記主リアクトルの他方の端子と当該直流電力変換装置の負極出力端とを接続する下段側主スイッチと、
    スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記上段側主スイッチに対して並列して設けられ、上段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる上段側スナバ回路と、
    スナバコンデンサとスナバダイオードとの直列回路が前記下段側主スイッチに対して並列して設けられ、下段側補助スイッチが当該スナバコンデンサと当該スナバダイオードとの接続点と前記第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点との間に設けられる下段側スナバ回路と、を備え、
    前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの一方がオフ状態であり、他方が周期的にスイッチングされる状態である2つの動作モードである力行モードと回生モードとの間で動作モードが切り換わる際に、前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの内、オフ状態から周期的にスイッチングされる状態となる何れか一方の主スイッチのスイッチングが、定常状態における所定のスイッチング周波数よりも低い起動時周波数で開始される直流電力変換装置。
  9. 前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの内、前記動作モードの切り換わりによってオフ状態となる何れか一方の主スイッチは、前記所定のスイッチング周波数から前記起動時周波数によるスイッチングを経てオフ状態とされる請求項8に記載の直流電力変換装置。
  10. 前記力行モードにおける電力及び前記回生モードにおける電力がそれぞれの電力の潮流方向において所定のしきい値電力以下となった際に、前記動作モードを切り換える移行期となり、
    前記移行期において、前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチの双方が周期的にスイッチングされる相補制御が実行される請求項8又は9に記載の直流電力変換装置。
  11. 前記回転電機として、主に発電機として機能する第1回転電機と、主に電動機として機能する第2回転電機とを有し、
    前記第1回転電機による発電電力と、前記第2回転電機による消費電力との差が前記所定のしきい値電力以下となった際に、前記移行期となる請求項10に記載の直流電力変換装置。
  12. 前記移行期において、前記起動時周波数は、前記上段側主スイッチ及び前記下段側主スイッチのそれぞれに対して、電力の潮流方向と電力の大きさとに基づいて設定される請求項10又は11に記載の直流電力変換装置。
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