JP2011004884A - 消火剤及び消火性ガス含有可燃性液 - Google Patents
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Abstract
【課題】消火性の気体が液体中に高密度で長期間に亘って安定に存在する消火剤及び消火性ガス含有可燃性液を提供する。
【解決手段】消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって液体に混合されて成る構成の消火剤とする。また、消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって可燃性の液体に混合されて成る構成の消火性ガス含有可燃性液とする。好ましくは、液体が水素結合を形成する分子からなる液体であり、液体の気泡との界面に存在する分子の水素結合の距離が、該液体が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短い。
【選択図】図1
【解決手段】消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって液体に混合されて成る構成の消火剤とする。また、消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって可燃性の液体に混合されて成る構成の消火性ガス含有可燃性液とする。好ましくは、液体が水素結合を形成する分子からなる液体であり、液体の気泡との界面に存在する分子の水素結合の距離が、該液体が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短い。
【選択図】図1
Description
本発明は、火災の際に火を消火するために用いる消火剤、及び可燃性の液体の火災を消火する消火性ガス含有可燃性液に関するものである。
従来、火災を消火するために消火器、消火栓、スプリンクラー、消防車などの消火装置が用いられている。消火装置は水や消火性物質などを噴きつけて消火するものであり、消火性能を高めるために水を単に噴射するだけではなく、消火剤を用いて消火することが広く行われている。しかし、消火性の粉体を用いた消火剤では、飛散した粉体が消火後に残り後始末が大変になるという問題があった。また、消火性ガスのような気体を用いた消火剤では、気体が放散してしまって火元に消火剤を効率よく与えることができないおそれがあった。また、水を用いた消火では消火に当たって大量の水が必要になり、消火の効率がよくなかった。特に、油など、可燃性の液体に対しては水を消火に用いることが危険なため効率よく消火することが難しかった。
特許文献1には、不活性ガスのマイクロバブルを発生させた水で消火する消火設備が開示されている。この方法によれば、不活性ガスと水の二つの作用により消火でき、水のみの場合よりも消火性能を向上することができるものと推測される。
しかし、マイクロバブルは短時間で気体として放出されて消滅してしまうので、消火器などに用いる充填式の消火剤には使用することができなかった。また、マイクロバブル水に含まれる気体の量は多くなく、通常の消火剤に比べて消火性能を十分に向上することは難しかった。
また、可燃性の液体は火災の被害が増大しやすいことに加え、水をかけて消火することが危険な場合が多く、特殊な消火薬剤を多量に用いて消火しなければならないといった問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、消火性の気体が液体中に高密度で長期間に亘って安定に存在する消火剤及び消火性ガス含有可燃性液を提供することを目的とするものである。
請求項1の発明は、消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって液体に混合されて成ることを特徴とする消火剤である。
この発明によれば、消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって安定に液体中に存在するので、長期に亘って消火性ガスを液体中に保持することができ、充填型や取り置き型の消火装置の消火剤として用いることができるものである。また、消火性ガスはナノサイズの気泡となって液体中に存在しているので、消火性ガスを効率よく火に接触させることができ、少ない量で効率よく消火することができるものである。また、特別な消火性薬剤を用いる必要がなく、消火性ガスを液体に含有することにより簡単に消火剤を得ることができるものである。また、特別な薬剤や粉体を用いることなく消火を行うことができると共に消火に用いる水などの液体量を少なくすることができるので、消火後の後処理が容易になるものである。
請求項2の発明は、上記消火剤において、液体が水素結合を形成する分子からなる液体であり、液体の気泡との界面に存在する分子の水素結合の距離が、該液体が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする消火剤である。
この発明によれば、気泡界面における水素結合の距離が短くなることにより、気泡の周囲を強固な水素結合を形成した液体分子で取り囲むことができ、この水素結合を形成した液体分子は強固な殻となって気泡を包み込むので、気泡同士が衝突しても崩壊することがないのと共に液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗でき、消火性ガスを含有した気泡を液体中で消滅させたり合体させたりすることなく安定に存在させることができるものである。そして、この水素結合は長期間に亘って安定であるので、消火性ガスを含有した気泡が安定に存在した消火剤を長期間に亘って利用することが可能となるものである。また、ナノオーダーサイズの消火ガスの気泡を、従来レベルより遙かに超えた密度で生成し液体に安定して存在させることが可能となるものである。
請求項3の発明は、上記消火剤において、消火性ガスの単位体積当たりの重量が、窒素の単位体積当たりの重量以上であることを特徴とする消火剤である。
この発明によれば、消火性ガスの重量が空気の重量とほぼ等しいかそれ以上になることによって、消火の際に、消火性ガスが火に接触する前に浮上してしまったり飛散してしまったりすることなく、重量の重い消火性ガスを滞留又は沈降させて火元に供給することができ、消火効率を向上させることができるものである。
請求項4の発明は、上記消火剤において、液体が水であることを特徴とする消火剤である。
この発明によれば、特別な液体を用いることなく簡単に消火剤を得ることができるものであり、また、水の消火効果と消火性ガスの消火効果との相乗効果により消火することができ、消火効率をさらに向上させることができるものである。また、水分子は、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に強固な結合を形成するので、気泡界面における水素結合が強固になって気泡をより安定化させることができるものである。
請求項5の発明は、上記消火剤において、液体に含有されている消火性ガスの濃度が、液体に対する消火性ガスの飽和溶解濃度以上であることを特徴とする消火剤である。
この発明によれば、飽和溶解量又はそれを超える多量の消火性ガスを液体中に保持することにより、液体中に含有された高濃度の消火性ガスを消火に利用することができ、消火効率をさらに向上することができるものである。
請求項6の発明は、上記消火剤において、気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする消火剤である。
この発明によれば、気泡が高い内部圧で維持されることによってより強固な界面構造を形成することができ、より多くの気体分子を閉じ込めることができる。また静置状態においては安定な気泡を形成すると共に、一旦、衝撃が加えられると、内部圧の力により気泡の界面構造が崩壊して、気泡が合体して発泡し消火性ガスを外部に放出するため、この発泡を消火に利用することができるものである。
請求項7の発明は、上記消火剤において、シャーベット状であることを特徴とする消火剤である。
この発明によれば、気泡がシャーベット状の消火剤に混合されているので、火に接触する前に周囲の熱で消火性ガスが発生して離散してしまうことを防ぎ、閉じ込めた消火性ガスを火元で発生させて火に接触させることが可能となり、消火効率を向上することができるものである。また、シャーベット状であるので噴射等によって火元に確実に供給することができ、さらにシャーベットの冷却効果を用いて効率よく消火することができるものである。
請求項8の発明は、上記消火剤において、増粘剤が液体に含有されていることを特徴とする消火剤である。
この発明によれば、気泡が増粘剤を含む液体に混合されていることにより、粘度により気泡を保持して消火性ガスが火に接触する前に発生して離散してしまうことを防ぐので、閉じ込めた消火性ガスを火元で発生させて火に接触させることが可能となり、また液体の粘性が高くなったり粘着力が付与されたりして火元で消火剤を接着・付着させて消火性ガスを放出することができるので、消火効率を向上することができるものである。
請求項9の発明は、消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって可燃性の液体に混合されて成ることを特徴とする消火性ガス含有可燃性液である。
この発明によれば、消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって安定に可燃性の液体中に存在するので、長期に亘って消火性ガスを液体中に保持することができるものである。また、消火性ガスはナノサイズの気泡となって液体中に存在していることにより、可燃性の液体が発火や引火して火災が発生した場合でも、火災の発生源となる燃料に消火性ガスが含まれているので、火元に直接的に消火性ガスを接触させて消火することができ、安全な燃料を得ることができるものである。また、特別な薬剤や粉体を用いることなく消火を行うことができ、たとえ薬剤や粉体を用いたとしても薬剤や粉体量を少なくすることができるので、消火後の後処理が容易になるものである。また、可燃性の液体を利用する際には、消火性ガスを発生させて放出すればよく、液体の特性を低下させることなく消火性を付与することができるものである。
本発明によれば、消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって安定に液体中に存在するので、長期に亘って消火性ガスを液体中に保持することができ、充填型や取り置き型の消火装置の消火剤として用いることができるものであり、また消火性のある安全な可燃性の液体を得ることができるものである。また、消火性ガスはナノサイズの気泡となって液体中に存在しているので、消火性ガスを効率よく火に接触させることができ、少ない量で効率よく消火することができるものである。また、特別な薬剤や粉体を用いることなく消火を行うことができると共に消火に用いる液体量を少なくすることができるので、消火後の後処理が容易になるものである。
以下、発明を実施するための形態について説明する。
本発明の消火剤及び消火性ガス含有可燃性液は、消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって液体に混合されているものである。この消火性ガスを含有する気体は、ナノサイズの気泡となって安定に液体中に存在しており、気体が放出されて消火性ガスが抜け出てしまうことがない。そのため、長期に亘って消火性ガスを液体中に保持することができ、消火剤としては充填型や取り置き型の消火装置の消火剤として用いることができるものであり、可燃性液の貯蔵にあたっては、取り扱いの安全な可燃性の液体を得ることができるものである。
消火性ガスとしては、特に限定されるものではなく、不活性ガスなど、種々の消火性のガス(気体)を用いることが可能である。例えば、二酸化炭素や窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウムなどの希ガスといった消火性ガスを単一で又は混合して用いることができる。また、消火性ガスとしてハロゲン化物のガスを用いることも好ましい。ハロゲン化物のガスとしては、例えば、常温常圧で気体である、ハロン1301(ブロモトリフルオロメタン)、ハロン1211(ブロモクロロジフロロメタン)、HFC−227ea(ヘプタフルオロプロパン)、HFC−23(トリフルオロメタン)などを用いることができる。また、常温常圧で液体であるハロン2402(ジブロモテトラフルオロエタン)を加温状態で気体にして、用いることもできる。
気泡を形成する消火性ガスを含む気体としては、この消火性ガスからなる気体をそのまま用いてもよく、消火性ガスを一部に含有した気体を用いて気泡を形成してもよい。消火性ガスを他の気体と共に用いる場合、併用する気体としては可燃性のない又は可燃性が弱い気体であることが好ましく、例えば不活性ガスや空気などが挙げられ、この場合、消火性を損ねない範囲で含有すればよい。
また、消火性ガスの単位体積当たりの重量は、窒素の単位体積当たりの重量以上であることが好ましい。消火性ガスの重量が空気に比べて重いと、消火の際に、消火性ガスが火に接触する前に浮上してしまったり飛散してしまったりするおそれがあるが、消火性ガスの重量が窒素(分子量28)以上の重量となって空気の重量(空気の平均分子量28.8)とほぼ等しいかそれ以上になることによって、重量の重い消火性ガスを滞留又は沈降させて火元に供給することができ、消火効率を向上させることができる。このような消火性ガスとしては、具体的には、窒素の他、アルゴン、二酸化炭素や、上記のハロゲン化物などが挙げられる。
液体としては、水素結合を形成する分子からなる液体を用いることが好ましく、その場合、液体の気泡との界面に存在する分子の水素結合の距離が、該液体が常温常圧(25℃、1気圧(0.1013MPa))であるときの水素結合の距離よりも短いことが好ましい。水素結合とは、電気陰性度の大きい原子と水素原子とを有している分子において、水素原子が他の分子の電気陰性度の大きい原子に接近し、系が安定化する結合のことである。このように、消火剤が常温常圧の条件で存在する場合において、消火性ガスの気泡界面における水素結合の距離が常温常圧での通常の水素結合の距離よりも短くなることにより、気泡の周囲を強固な水素結合を形成した液体分子で取り囲むことになる。そして、この水素結合を形成した液体分子は強固な殻となって気泡を包み込む。それによって、気泡同士が衝突しても崩壊することがなくなり、また、液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗できるので、消火性ガスを含む気泡を液体中で消滅させたり合体させたりすることなく保持することができるものである。つまり、従来の表面張力で安定している気泡とは異なるものである。
気泡との界面における液体分子の水素結合の距離としては、用いる液体により適宜設定され得るものであるが、常温常圧での水素結合の距離を100%とした場合に、99%以下であることが好ましい。水素結合の距離がこの範囲になることにより、気泡を水素結合の硬い殻で取り囲んで安定化させることができるものである。水素結合の距離がこれより長いと気泡を安定化させて存在させることができなくなるおそれがある。原子間距離を考慮すると、水素結合の距離の下限は95%である。消火剤中の気泡界面における水素結合の距離は、例えば、後述の実施例で示すように、気泡が混合された液体の赤外吸収スペクトル(IR)を解析することにより算出することができる。
ところで、水素結合の距離が上記の距離にある液体は、通常、氷のように固体やハイドレート結晶構造になるものであるが、上記の液体においては、気泡界面において局所的に距離の短い水素結合を形成し、それ以外の液体中は通常の水素結合を形成している。すなわち、気泡界面では距離の短い水素結合により液体分子の硬い殻を形成して、気泡同士が合体することや消滅することを防止すると共に、気泡界面以外では通常の状態で液体が存在して常温常圧では流動性を確保しており、安定な気泡が存在している液体を利用しやすくするものである。
液体に含まれる気泡はナノサイズの気泡であり、具体的には直径1〜1000nmの気泡(いわゆるナノバブル)である。気泡がナノサイズとなり微細なものになることで強固な気泡界面の構造を形成することができ、高濃度の気体を液体中に保持することができるものである。また、ナノオーダーサイズの気泡には浮力が働かないため、気泡が上昇して液体から分離することがないので気泡を長期に亘って安定に存在させることができるものである。この範囲より気泡が小さくても大きくても気泡を安定化させることができなくなるおそれがある。なお、気泡の大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができ、気泡の平均粒径は、測定によって得た気泡の粒径を平均して求めることができる。ところで、マイクロバブルが混合された液体は白濁するため目視により判別可能であるが、ナノバブルが混合された液体は無色透明(あるいは液体が有色の場合は液体の色)になり目視では判別することができない。よって、ナノサイズの気泡の判別はSEMや密度測定などによって行うこととなる。
液体として好ましく用いられるものの一つは水である。この場合、水の消火効果と消火性ガスの消火効果との相乗効果により消火することができ、消火効率を向上させることができる。さらに、水分子は、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に水素結合を形成するものであり、消火剤の液体として水を用いると、気泡界面において液体中のこの水素結合が強固になって、消火性ガスの気泡をより安定化させることができる。また、水は、供給源が豊富で安定して得ることができるので特別な液体を用いることなく消火剤を簡単に得ることができるものである。すなわち、消火剤に用いる水としては純度の高い水に限られることはなく、上下水道、池、海水などをはじめ、あらゆる水を使用することが可能である。つまり、液体として水を含むものであれば良い。
また、液体が、O−H結合、N−H結合、F−H結合やCl−H結合などの(ハロゲン)−H結合、S−H結合のいずれか一種以上を有する分子からなる液体であることも好ましい。これらの結合は、水素原子に対して電気陰性度が十分に大きい原子と水素原子との結合であり、O−H…O、N−H…N、F−H…FやCl−H…Clなどの(ハロゲン)−H…(ハロゲン)、S−H…Sといった強い水素結合を形成し、この水素結合により気泡を取り囲んで気泡を安定化させることができるものである。O−H結合を有する代表的な液体は水であるが、その他、過酸化水素やメタノール、エタノールなどのアルコール、グリセリンなどを例示することができる。また、N−H結合を有する液体としては、アンモニアなどを例示することができる。また、(ハロゲン)−H結合を有するものとしては、F−H結合を有するHF(フッ化水素)、Cl−H結合を有するHCl(塩化水素)を挙げることができる。また、S−H結合を有するものとしてはH2S(硫化水素)を挙げることができる。
液体がカルボキシル基を有する分子からなる液体であることも好ましい。カルボキシル基には、電気陰性度が大きいカルボニルの酸素原子が存在しており、あるカルボキシル基中のカルボニルの酸素原子と他のカルボキシル基中の水素原子とが強い水素結合を形成して気泡を取り囲むので、安定に気泡が存在した消火剤を得ることができるものである。カルボキシル基を有する分子からなる液体としては、ギ酸、酢酸などのカルボン酸などを例示することができる。
消火性ガス含有可燃性液にあっては、液体として可燃性の液体を用いる。可燃性の液体は、発火又は引火しやすく危険なため、その取り扱いに注意する必要があるが、消火性ガスを可燃性液中に安定に存在させることにより、火災が発生した場合でも、火元ですぐに消火することができるものである。可燃性の液体としては、燃料や有機物(有機溶媒)などが挙げられる。具体的には、可燃性の液体として、メタノール、エタノールなどのアルコールが水素結合を有する燃料又は有機物として挙げられ、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、アニリン、グリコールなどが水素結合を有する有機溶媒として挙げられる。また、燃料として、ガソリン、灯油、軽油などが挙げられ、危険物として、二硫化炭素、ジエチルエーテル、アセトアルデヒド、酸化プロピレンなど、特殊引火物が挙げられる。このうち、液体として水素結合を有する液体を好適に用いることができる。なお、液体として燃料(液体燃料)を用いた場合、後述する自己消火型の燃料を得ることが可能となる。
液体に含有されている消火性ガスの濃度は、液体に対する消火性ガスの飽和溶解濃度以上であることが好ましい。飽和溶解量又はそれを超える多量の消火性ガスを液体中に保持することにより、液体中に含有された高濃度の消火性ガスを消火に利用することができ、消火効率をさらに向上することができるものである。さらに好ましくは、液体中には飽和溶解量の消火性ガスが溶解しており、その飽和溶解液に消火性ガスの気泡が存在しているものである。飽和溶解量で消火性ガスが溶解していれば、気泡となった消火性ガスを溶解させることなく安定化して気泡として液体中に保持することがより可能となるものである。すなわち、飽和溶解量以上に気体が存在する液体は、液体中に飽和濃度で消火性ガスが溶解しており、気泡が崩壊したり溶解したりすることがなく、より安定に消火性ガスの気泡を液体中に存在させることができるものである。また、さらに消火性ガスの溶解濃度が、飽和溶解濃度であることが好ましい。このように消火性ガスの濃度が高くなると、水素結合の距離を短くした状態で気泡を安定化することができ、この安定化された気泡が熱や衝撃が加えられた際に消火性ガスの気体となって放出されるので消火効率をさらに向上することができるものである。液体中の気体量は、後述の実施例で示すように液体から気体を分離し、質量変化量から算出することができる。
気泡を形成している気体の圧力、すなわち気泡の内圧は0.12MPa以上であることが好ましく、さらにヤングラプラスの式(次式)で与えられる気泡の内圧より高い圧力であることが好ましい。
ヤングラプラスの式
ΔP=2σ/r
[ΔP:気泡内部の上昇圧力、 σ:表面張力、 r:気泡半径]
気泡の内圧がこのような圧力になると気泡が高い内部圧で維持されることになり、より強固な界面構造を形成することができるので、静置状態において安定な気泡を形成することができる。一方、一旦、液体に衝撃が加えられると、内部圧の力により気泡の界面構造が崩壊して、気泡が合体して発泡し消火性ガスを外部に放出するため、この発泡を消火に利用することができるものである。気泡の内圧は、後述の実施例で示すように液体中の気体総量と密度から計算した気体容量とを気体の状態方程式に当てはめることにより算出することができる。
ΔP=2σ/r
[ΔP:気泡内部の上昇圧力、 σ:表面張力、 r:気泡半径]
気泡の内圧がこのような圧力になると気泡が高い内部圧で維持されることになり、より強固な界面構造を形成することができるので、静置状態において安定な気泡を形成することができる。一方、一旦、液体に衝撃が加えられると、内部圧の力により気泡の界面構造が崩壊して、気泡が合体して発泡し消火性ガスを外部に放出するため、この発泡を消火に利用することができるものである。気泡の内圧は、後述の実施例で示すように液体中の気体総量と密度から計算した気体容量とを気体の状態方程式に当てはめることにより算出することができる。
なお、ナノサイズの気泡が混合された液体は、液体として水を用いた場合、ゼータ電位がマイナスとなり、体積1cm3中に存在する気泡界面の面積は0.6m2程度となる。
消火剤にあっては、液体状のものを用いることができるが、シャーベット状であることも好ましい。すなわち、消火性ガスの気泡が混合された液体が気泡を含んだまま冷却されて多数の固体の粒となった状態である。この場合、気泡がシャーベット状の消火剤に混合されているので、火に接触する前に周囲の熱で消火性ガスが発生して離散してしまうことが防止される。したがって、閉じ込めた消火性ガスを火元で発生させて火に接触させることが可能となり、消火効率を向上することができるものである。また、シャーベット状であるので流れ出たりすることがなく、固体の粒として噴射等によって火元に確実に供給することができるものである。さらにシャーベットで火元を冷却しながら消火をすることができ、効率よく消火することができるものである。なお、シャーベット状とは固体の粒が含まれているものであればよく、固体の粒と液体とが混合した状態になっていてもよい。個体の粒の大きさや形状としては、特に限定されないが、例えば体積1mm3〜10cm3程度にすれば、噴射等が行いやすくなり火に接触させることが容易になるので好ましい。
また、消火剤にあっては、増粘剤が液体に含有されていることも好ましい。この場合、増粘剤が溶解された液体に気泡が混合されていることにより、液体の粘性が高くなって液体中に気泡を保持することができる。したがって、消火性ガスが火に接触する前に発生して離散してしまうことが防止され、閉じ込めた消火性ガスを火元で発生させて火に接触させることが可能となる。また増粘剤が含有されていれば、液体の粘性が高くなったり粘着力が付与されたりして火元で消火剤を接着・付着させて消火性ガスを放出することができ、消火効率を高めることができる。
増粘剤としては液体を増粘させるものであれば、特に限定されるものではないが、液体が水である場合は水溶性増粘剤を好適に用いることができる。増粘剤の濃度や粘度は適宜調整されるものであるが、例えば、消火剤の粘度を、消火剤を噴射等して火に接触させることを妨げることなく、気泡を強固に保持すると共に火に接触した際には消火性ガスを放出することができる程度の粘度に調整することが好ましい。
増粘剤としては、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC)やメチルセルロース(MC)などのセンイ素(セルロース)系およびその誘導体や、アルブミン(卵白成分)、カゼイン(牛乳成分)、ペクチンなどの蛋白質系や、アルギン酸、カラギナン、キサンタンガム、グアガム、寒天、澱粉、アルギン酸ナトリウム、多糖類などをはじめとする天然系の増粘剤や、ビニル系、ビニリデン系化合物およびこれらを組み合わせた化合物や、ポリエステル系化合物、ポリアミド系化合物、ポリエーテル系化合物、ポリグリコール系化合物、ポリビニルアルコール系化合物、ポリアルキレンオキサイド系化合物、ポリアクリル酸系化合物といった高分子化合物をはじめとする合成系の増粘剤を挙げることができる。
本発明の消火剤は、消火装置・設備に用いる種々の消火剤として用いることが可能であり、例えば、消火器、消火栓、スプリンクラー、消防車、消火用タンク等の消火剤として使用することができる。具体的には、消火器においては、充填式の消火剤として利用したり、消防車等のタンクに充填したりして用いることができる。特に、消火器などの充填型や取り置き型の消火装置においては、消火性ガスが気泡となって長期に亘って安定に存在するので、消火性能が低下することのない消火装置を得ることができる。
火災の消火にあたっては、上記の消火剤を噴射、降下、投げ込むなどして火に接触させることにより消火を行うことができる。このとき、消火性ガスはナノサイズの気泡となって液体中に存在しているので、消火性ガスが火に接触する前に放出されて飛散するようなことがなく、消火性ガスを効率よく火に接触させることができ、少ない量で効率よく消火することができる。また、特別な薬剤や粉体を用いることなく消火を行うことができると共に消火に用いる水などの液体量を少なくすることができる。したがって、消火後に粉末や薬剤が火災現場周辺に多量に残ったり火災現場周辺が水浸しになってしまったりすることがなく、消火後の後処理を容易にすることができる。
また、上記の消火剤を容器に封入し、火元になる可能性のある所、例えば、燃料保管庫、危険物保管庫、ガス設備、台所等に載置する消火用具にすることもできる。その場合、通常の状態では気泡となって液体中に保持されている消火性ガスが、火災による急激な温度上昇で所定の温度以上になると液体から放出し、火元に近接した場所で消火を行うことができるので、効率よく消火することができるものである。
図1は、本発明の消火剤を利用して可燃物を保管する様子の概略を示す斜視図である。可燃物Fは円筒状の容器101に入れられ、その容器の円中心に消火剤Aが封入された円筒状の消火剤容器102が配置されている。すなわち、消火剤Aに密接して可燃物Fが保管されている。可燃物Fは、液体、固体、気体のいずれであってもよい。このような可燃物Fの保管にあっては、可燃物Fと密接して消火剤Aが配置されているので、可燃物Fに引火して火災が発生した場合でも、消火剤Aから消火性のガスが発生して火元で火災を消火することができ、消火効率が向上するとともに、可燃物Fを安全に保管・貯蔵することができる。また、この状態で容器101を輸送すれば、可燃物Fを安全に輸送することができる。
消火性ガス含有可燃性液は、消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって可燃性の液に混合されているものである。したがって、この消火性ガスが、燃料や有機溶媒などの可燃性の液体が引火して火災が発生した場合に消火剤として働き、消火を行うものである。このような可燃性液にあっては、着火や引火して火災が発生した場合でも、火災の発生源となる液体自体に消火剤が含まれているので、火元に直接的に消火性ガスを接触させて消火することができるものである。したがって、火災が広がるのを防止して安全な可燃性液を得ることができる。
ところで、消火性ガス含有可燃性液を、例えば燃料として使用する際には、燃料成分が燃焼するのを消火性ガスが妨げるおそれがある。しかし、上記のように消火性ガスがナノサイズの気泡となって混合された液体であれば、燃料に振動を与えたり、火災が発生しない程度に燃料を加温したりすることにより消火性ガスを気体として発生させて放出することができ、燃料特性が低下することはない。よって、消火性と燃料性とを両立させることができる。このように上記の燃料にあっては、自己消火型燃料とすることが可能となるものである。
上記のような消火性ガス含有可燃性液によれば、可燃性液の安全な貯蔵をすることが可能となる。つまり、上記の液体を可燃性液の貯蔵方法に利用することができる。この貯蔵方法によれば、可燃性の液体が発火や引火した場合でも、火元に消火性ガスがあるためにすぐに消火をすることができ、消火効率を高めて安全に可燃性液を貯蔵することができるものである。
次に、本発明の消火剤及び消火性ガス含有可燃性液の製造について説明する。消火剤及び消火性ガス含有可燃性液はいずれも、消火性ガスを含有する気体と液体とを混合して気液混合液を製造することにより得ることができる。以下、この気液混合液の製造を説明する。
図2は、気液混合液の製造方法の一例を示す概略図であり、気液混合液を生成する装置(気液混合液製造装置)の一例が図示されている。
この気液混合液製造装置は、液体を圧送して連続的に気液混合液を製造する装置であり、液体貯留槽12から大気圧(0.1MPa)で保持されている液体を取り出し圧送して加圧する加圧部1と、加圧された液体に消火性ガスを含有する気体を供給する気体供給部2と、供給された気体を微細な気泡にして液体と混合させる気液混合部3と、気液混合部3中の液体に存在する大きな気泡を除去する脱気泡部4と、脱気泡部4により大きな気泡が取り除かれた液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させる減圧部5と、減圧された液体を吐出する吐出部7とを備え、各部は流路6に接続して設けられている。
加圧部1は気液混合部3に液体を圧送するものであり、例えば、この装置のように、液体貯留槽12から液体を吸い上げるポンプ11などで構成できるが、水道配管や燃料配管等、液体を加圧して送り出す配管などで構成することもできる。
気体供給部2は、流路6に接続されることにより液体に消火性ガスを含有する気体を供給するものである。例えば、消火性ガスとして、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガスを供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを流路6に接続して気体供給部2を形成することができる。また、キャリア気体のボンベを流路6に接続するとともに、キャリア気体のボンベと流路6との間の気体流路に消火性ガスのボンベを接続することにより気体供給部2を形成してもよい。流路6への気体供給部2の接続位置は、気液混合部3よりも上流側の位置であればよく、この装置のように加圧部1より上流側の流路6に接続するようにしても、あるいは加圧部1より下流側の流路6に接続するようにしてもいずれでもよい。
気液混合部3は圧送された液体とこの液体に注入された気体とを混合し、加圧により気体を微細な気泡にして液体中に分散・混合させるものである。気液混合部3としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路6を流れているのであれば単に流路6で構成することもできる。この装置のように気体供給部2が加圧部1より上流側の流路6にある場合は、ポンプ11などで構成された加圧部1を気液混合部3と兼用してもよい。気液の加圧及び混合をポンプ11により行った場合、液体を急激に加圧・混合することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液を確実に生成することができる。また、気液混合部3をベンチュリ管で構成することも好ましい。その場合、簡単な構成で液体を急激に加圧・混合することができる。
気液混合部3内においては液体と気体が高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲に強固な界面構造が形成され、この強固な界面構造の殻で気泡を覆うことができ、気体を微細な気泡として安定化することができるものである。
上記のような加圧部1及び気液混合部3により、気体が注入された液体に急激に強力な圧力が加わって、液体中に存在している気泡は微細なナノサイズの気泡へと細分されて液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧になった気泡の界面には液体分子により強固な界面構造が形成される。その際、加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、気泡を細分化させて微細なナノサイズの気泡を生成することができ、気液混合部3から脱気泡部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.15MPa以上になることにより、気泡の界面が強固な構造となったナノサイズの気泡を生成することができるものである。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP1/tの上限は167MPa/secであり、加圧された気液混合液の圧力の上限は50MPaである。
図2(b)は、ポンプ11の具体的な形態の一例を示す要部の概略図である。このポンプ11aは回転体21の回転により液体を加圧するものであり、回転体21に取り付けられた回転翼22が連続的に回転してポンプ入口26からポンプ流路室23を介してポンプ出口27への流れ方向へ液体を送り出し加圧するものである。図において白抜き矢印は液体の流れ方向を示し、実線矢印は回転体21の回転方向を示している。このポンプ11aでは4枚の回転翼22が備えられている。また回転体21の回転軸25は、円筒状に形成されたポンプ壁24の円筒中心よりもポンプ出口27側に偏って配置され、偏心軸となって設けられている。そして、回転軸21の偏心によりポンプ流路室23の第二流路室23bの容積は、第一流路室23aの容積よりも小さく形成されており、液体の流れ方向に沿ってポンプ流路室23の容積が順次小さくなっている。
そして、ポンプ流路室23に送り出された液体は、回転翼22で送り出され加圧され、急激な圧力変化により大きな気泡BBが細分化されて微細なナノサイズの気泡BNが生成される。すなわち、回転体21の回転と共に第一流路室23aから第二流路室23bに送られた液体は、ポンプ流路室23の容積が小さくなることにより急速に圧縮されて加圧され、この加圧力によりナノサイズの気泡BNが生成される。また、図示のポンプ11aでは、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間を液体が通過するときに剪断力が与えられて、液体をクリアランスで剪断しながら加圧する。このとき、液体に混合されている気体(大きな気泡BB)は液体に与えられた剪断力によって剪断されて、より微細なナノサイズの気泡(BN)になる。ここで、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間の最も狭くなる部分の距離、すなわちクリアランス距離LCは、5μm〜2mmであることが好ましい。このように、回転体21を用いたポンプ11aによれば、回転体21で急激に強い力で加圧すると共に液体に注入された気体を剪断してナノサイズの気泡を形成することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液をより確実に生成することができるものである。
ポンプ11の回転体21の回転数は100rpm以上であることが好ましい。このとき、0.3秒に1/2回転以上となる。このような回転数となることにより、飽和溶解濃度以上の気体を液体に注入させて水素結合距離が短縮したナノサイズの気泡を確実に生成することができるものである。
加圧部1及び気液混合部3による加圧は、加圧部1又は気液混合部3を複数設けて、複数回加圧することができる。液体を送りながら複数回加圧することにより、加圧を複数のポンプ11やベンチュリ管によって行うことができ、液体を強力に加圧して、気泡界面の構造が強固な気液混合液を生成することができるものである。具体的には、加圧部1を図2のようにポンプ11で構成すると共に、気液混合部3を一つ又は二つ以上のポンプ11又はベンチュリ管で構成することができるものである。
脱気泡部4は上記のようにして気体が混合された液体から、ナノサイズを超える気泡、すなわち直径1μmを超える気泡を取り除くものであり、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにした管体などで構成することができる。取り除かれた気泡は気体となって上部に集積するので、この除去された気体を気体除去部8により取り除くことができる。直径1μmを超えるサイズの気泡(マイクロサイズの気泡)は、浮力により上昇するので、このような比較的大きい気泡が取り除かれて微細な気泡であるナノサイズの気泡が液体中に存在することにより、界面構造が強固で安定な気液混合液を得ることができるものである。
脱気泡部4としては、具体的には、図3のような構成にすることができる。(a)は、気液混合部3と連続して地表面に略水平(重力方向に対して略垂直な平面上)になるように形成し、液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(b)は、気液混合部3と連続すると共に気液混合部3と合わせた形状が正面視逆L字型になるように形成し、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(c)は、気液混合部3とは別体にし、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。
減圧部5は気体が混合された液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧により気体と混合された液体は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、気液混合液中の気泡が合体して気体になって液体から排出されるおそれがあり、またキャビテーションが発生することがある。そこで、減圧部5を設け、加圧された状態の気液混合液を送り出す際に、減圧部5で大気圧まで徐々に減圧をした後に吐出するようにしているものである。減圧部5は、気体が混合された液体を送りながら配管全域での減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして減圧するように構成されている。それにより、強固な気泡界面の構造を維持させたまま、ナノサイズの気泡を消滅させたり合体させたりすることなく気液混合液を取り出すことができるものである。
減圧部5としては、図4のような構成にすることができ、具体的には、(a)のように流路断面積が段階的に徐々に小さくなる流路6や、(b)のように流路断面積が連続的に徐々に小さくなる流路6や、(c)のように加圧された液体が流路6内を流れる圧力損失により高圧状態(P1)の気液混合液の圧力を徐々に低下させて(P2、P3、・・・)大気圧(Pn)まで減圧するように流路長さ(L)が調整された流路6や、(d)のように流路6に設けられた複数の圧力調整弁9などにより構成することができる。
例えば図4(a)又は(b)のような減圧部5を用いた場合、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmにし、減圧部5を、流路長さが約1cm〜10mで、内径が20mmから4mmにまで徐々に小さくなることにより流路断面積が小さくなる管体により構成することができる。なお、減圧部5は、入口内径/出口内径=2〜10程度に設定したり、1cmあたりの内径減少値を1〜20mm程度に設定したりすることができる。このとき、減圧部5に気液混合液を流速4×10−6m/s以上で送ると、減圧速度2000MPa/sec以下で、ナノサイズの気泡を消滅させることなく1.0MPa減圧することができ、気液混合液を大気圧にまで減圧することができるものである。
吐出部7は、減圧された液体を吐出するものである。なお、図5のように、この吐出部7と減圧部5との間に、加圧部1における液体の押し込み圧を十分に確保するために延長流路10を設けることもできる。すなわち、減圧部5を含めた全体の圧力損失を算出し、加圧部1からの押し込み圧によって気液混合部3内で液体と気体を加圧するのに必要な圧力と、全体の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じるように流路長さを調整した延長流路10を流路6に付加するようにしてもよい。押し込み圧の確保には絞り部などを設けることも考えられるが、絞り部などで押し込み圧を調整すると急激な圧力変化により気泡が崩壊するおそれがある。しかし、このように延長流路10を設ければ気泡を安定化させたまま気液混合液を吐出することができるものである。
上記のように構成された気液混合液製造装置にあっては、加圧部1で液体を圧送し、気体供給部2により圧送された液体に消火性ガスを含有する気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、加圧部1及び気液混合部3によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部3から脱気泡部4へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、脱気泡部4で気液混合液中のナノサイズを越える気泡を取り除いた後、該液体を減圧部5及び下流側の流路6に送りながら最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、ナノサイズの気泡が安定に存在した気液混合液を生成することができるものである。
なお、気液混合部3よりも下流側の流路6は内径2〜50mm程度の管体などに形成することができる。それにより、比較的太い流路断面積で気液混合液を吐出することができ、細路により流路6を構成する場合のような配管の詰まりを防止して、気液混合液を利用しやすくすることができる。
図6は、気液混合液を製造する方法の他の一例であり、気液混合液製造装置の他の一例を示す概略図が図示されている。この気液混合液製造装置は、加圧部1と気液混合部3とが兼用されて気液混合槽13として構成されており、この気液混合槽13において消火性ガスを含有する気体が注入された液体を、0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧して、液体の圧力を0.15MPa以上にすることにより界面構造の強固な気泡の気液混合液をバッチ式で生成し、この気液混合液から大きな気泡を脱気泡部4で取り除いた後、この気液混合液を減圧部5に送り出してその圧力を最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で大気圧まで減圧し、吐出部7から気液混合液を吐出するようにしたものである。閉鎖系である気液混合槽13にはバッチ式で液体と気体とが送り出されて加圧されるとともに、気液混合槽13に設けられた撹拌翼14などにより撹拌されて液体Lqと気体とが高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲の界面構造を強固なものにすることができ、気体をナノサイズの気泡として安定化することができるものである。そして、生成した気液混合液を図2の装置と同じように構成された脱気泡部4、減圧部5及び吐出部7に送り出すことにより、ナノサイズの気泡が混合された気液混合液を得ることができるものである。
このようにして得られた気液混合液は、消火剤又は消火性ガス含有可燃性液として利用することができるものである。
消火剤として利用するにあたっては、気液混合液として得られた消火剤を容器やタンクに封入することにより消火装置や消火用具にすることができ、また消火器容器に充填することにより消火器を得ることができる。その際、密閉容器であることが好ましい。密閉することによって消火性ガスが大きい気泡となって消火剤から放出されることを防止することができ、長期間に亘って消火性能を維持することができるものである。
また消火性ガス含有可燃性液として利用するにあたっては、気液混合液として得られた消火性ガス含有可燃性液をタンクや容器に密封して貯蔵や輸送をすることができる。また液体が燃料である場合、燃料として使用する際には、振動を加えたり、火災が発生しない程度に加熱したりして消火性ガスを燃料から放出することにより、消火性ガス含有燃料を燃料特性を低下させることなく利用することができるものである。
ここで、シャーベット状の消火剤を得るためには、上記のようにして得た気液混合液を冷却することにより得ることができる。
図7は、シャーベット状の消火剤を得る方法の一例を示しており、気液混合液製造装置の一部を図示している。
図7(a)の装置は、図2又は図6の装置の構成に加えて、吐出口7の先端に接続された冷却部15を備えているものである。冷却部15は、例えば上面が開放された容器で形成してあり、冷媒を通すジャケットなどで形成される冷却用熱交換器16が設けてある。
この装置にあっては、気液混合液が冷却部15に供給されると、冷却部15に設けられた冷却用熱交換器16で気液混合液が冷却され、シャーベット状の気液混合液が生成されるものである。ここで、消火性ガスはナノサイズの気泡となって液体に含有されており、この消火性ガスは逃げない状態で冷却部15に供給されて液体が冷却されるので、多量の消火性ガスを含むシャーベット状の消火剤を効率よく製造することができるものである。
冷却部15における気液混合液の冷却温度は、特に制限されるものではなく、例えば−15〜3℃程度の温度で冷却すると、水中に消火性ガスが分散されたシャーベット状の消火剤を得ることができるものである。なお、シャーベット状にするためには撹拌しながら冷却することが好ましい。
また、図7(b)の装置は、図2又は図6の装置の構成に加えて、減圧部5から吐出口7に至るまでの流路6に冷却部15が設けられている。この冷却部15としては、例えば、流路6を形成する管の外周に冷却用熱交換器16を巻き付けて取り付けるなどして形成することができる。
そしてこの装置にあっては、上記と同様にして製造された気液混合液が連続的に流路6を通して冷却部15に送られ、冷却部15を通過する際に冷却されてシャーベット状の消火剤が製造される。気液混合液はこのように冷却部15を連続して通過する際に冷却されるため、連続的にシャーベット状の消火剤を製造することができるものであり、消火剤の生産効率を高めることができるものである。この場合、消火剤は冷却部15を通過する際や通過したあとも流動状態であることが必要であるので、流動性を有するようなシャーベットとして生成されるようにするのが望ましい。冷却部15を通過して生成された消火剤は回収容器に回収されるようにしてもよいし、この消火剤を直接火に噴射して消火に用いてもよい。
また、増粘剤が含有された消火剤を得るためには、上記のようにして得た気液混合液に所望量の増粘剤を添加して分散・溶解させることにより消火剤を得ることができる。また、液体にあらかじめ増粘剤を添加し、粘性のある液体を用いて気液混合液を得ることにより消火剤を製造してもよい。その際、増粘剤として加温された場合に粘性が低下するものを用いると共に液体を加温して気液混合液を製造すれば、製造時の液体の粘度が低下して製造が容易となる。
図8は、増粘剤を液体に溶解した後、この液体を用いて気液混合液を生成して消火剤を製造する方法の一例を示している。この装置は、液体貯留槽12が撹拌容器17として備えられており、撹拌容器17には、撹拌翼など液体を撹拌するための撹拌手段18及び、撹拌容器17を加熱するための加熱手段19が設けられている。増粘剤は撹拌容器17で液体に分散・溶解され、撹拌容器17において粘性のある液体が調製される。その際、加熱手段19が液体を加熱することによって、増粘剤を溶解しやすくすると共に、液体の粘度を低下させて加圧部1に送り出しやすくしている。そして増粘剤が含有された液体は、上記と同様に加圧部1、気液混合部3、脱気泡部4、減圧部5へと順次送られることによって粘性のある気液混合液が消火剤として得られるものである。
また、図6の装置の気液混合槽13を撹拌容器17として用いて、この気液混合槽13で液体と増粘剤とを撹拌して粘性のある液体を調製し、その後、上記と同様に気液混合液を調製するようにしてもよい。その際、増粘剤を溶解させたり液体の粘性を低下させたりするために気液混合槽13を加熱してもよい。
以下、本発明を実施例により説明する。
[実施例1]
図2の装置を用いて、液体として純水を用い、気体として後述する各種の消火性ガスを用い、気液混合液(消火剤)を製造した。なお、同様の方法で液体として可燃性の液体を用いれば、消火性ガス可燃性液を得ることが可能である。
図2の装置を用いて、液体として純水を用い、気体として後述する各種の消火性ガスを用い、気液混合液(消火剤)を製造した。なお、同様の方法で液体として可燃性の液体を用いれば、消火性ガス可燃性液を得ることが可能である。
製造装置としては、加圧部1と気液混合部3とがポンプ11で兼用されて構成されたものを用いた。ポンプ11としては回転体21により加圧する図2(b)のようなポンプ11aを用いた。
気体と液体の比(液体に対する気体の注入量)は、容量比(体積比)で1:1に設定した。また、ポンプ11の回転体21の回転数は1700rpmに設定した。この条件により大気圧(0.1MPa)の水に気体が注入された後、加圧速度ΔP1/t=28.3MPa/secで加圧されて、気液混合部3から脱気泡部4に送り出される際の液体の圧力が0.6MPaになった。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されて水素結合距離が短くなり強固な気泡界面の構造が形成されるものと考えられる。この条件(加圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
また、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmのものにした。減圧部5としては図4(a)のような、3段階で内径が徐々に小さくなるものを用い、具体的には、内径が14mm、8mm、4mmで長さが各約3.3mm(減圧部5の全長として約1cm)の三つの流路管部からなるものを用いた。また、減圧部5よりも下流側の流路6及び延長流路10として、内径4mm(外径6mm)のホースを用い、下流側の流路6と延長流路10とを合わせた長さが2mとなるように設定した。この条件により、減圧部5において、最高減圧速度60MPa/sec、時間0.0025秒で気体が混合された液体を減圧し、さらに、下流側の流路6及び延長流路10において、1MPa/sec、時間0.5秒で気体が混合された液体を減圧し、ホース先端部である吐出部7から、大気圧(0.1MPa)まで減圧された気液混合液が得られた。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されると共に水素結合距離が短くなり気泡界面の構造が強固になった気液混合液を安定して生成することができるものと考えられる。この条件(減圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
[物性]
次に、実施例1の気液混合液(消火剤)の物性について説明する。
次に、実施例1の気液混合液(消火剤)の物性について説明する。
[水素結合の距離]
図9は、気体として窒素を用い、液体として純水を用いた気液混合液(窒素混合水)と、窒素が純水に飽和溶解濃度で溶解した窒素飽和水との赤外吸収スペクトルとの差分を示すグラフである。水のOH収縮振動による赤外吸収帯としては通常3400cm−1付近に吸収極大があることが知られているが、グラフに示されるように気液混合液はOH収縮振動の吸収極大が3200cm−1付近にずれている。吸収極大が3400cm−1にある場合、水素結合の距離は0.285nmである。一方、吸収極大が3200cm−1にある場合、水素結合の距離は0.277nmであることが知られており、常温常圧下における通常の水素結合の距離よりも短くなり構造化された氷またはハイドレートに近い水と結論づけられた。
図9は、気体として窒素を用い、液体として純水を用いた気液混合液(窒素混合水)と、窒素が純水に飽和溶解濃度で溶解した窒素飽和水との赤外吸収スペクトルとの差分を示すグラフである。水のOH収縮振動による赤外吸収帯としては通常3400cm−1付近に吸収極大があることが知られているが、グラフに示されるように気液混合液はOH収縮振動の吸収極大が3200cm−1付近にずれている。吸収極大が3400cm−1にある場合、水素結合の距離は0.285nmである。一方、吸収極大が3200cm−1にある場合、水素結合の距離は0.277nmであることが知られており、常温常圧下における通常の水素結合の距離よりも短くなり構造化された氷またはハイドレートに近い水と結論づけられた。
[気体量]
液体として純水を、気体として窒素、アルゴン、二酸化炭素のいずれかを用いた気液混合液中に気泡として存在する気体量を次の方法により測定した。
(1)25℃、導電率0.1μS/cmの純水に、各種の気体を混合させ気液混合液を得た。
(2)直径1μm以上の大きな気泡を水から分離するために、気液混合液を25℃で1日静置した。なお、静置時間について、ストークスの法則から
気泡上昇速度: V=d2×g/(18×γ)
(d:気泡直径、g:重力加速度、γ:動粘性係数)
の式が成立し、この式より1μmの気泡の上昇速度は約2.4×10−4m/sであるので、例えば静置時の容器の水深が50mmの場合、1日静置すれば気泡を除去することができる。
(3)最小測定値1mgの分析天秤で気液混合液の質量を測定した。
(4)ガス透過度及び透湿度の低いPE+ナイロン樹脂製のビニル袋に気液混合液とスタラーの撹拌子を入れ、空気を追い出して袋に空気が無い状態でシーラーにてビニル袋を密封した。
(5)密封直後に、分析天秤で気液混合液が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(6)ホットスタラーにより25℃の気液混合液が密封されたビニル袋を45℃に昇温して気液混合液を約5時間撹拌した。この昇温と撹拌により、微細気泡や、45℃の飽和溶解濃度以上で溶解していた気体が気液混合液から分離されビニル袋の上部に集まった。
(7)室温25℃の条件でホットスタラーの設定温度を25℃にし、25℃の飽和溶解度の液体になるよう数時間撹拌を行った。
(8)分析天秤で、気体と液体が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(9)計3回の質量測定から気液混合液の質量と、昇温および撹拌によって気液混合液から分離された気体による浮力によって生じる液体の質量変化量とを得た。質量変化量は、気液混合液から分離された気体容積と同容積の空気の質量と同じであり、この値から分離された気体の容量と質量を算出することができる。
液体として純水を、気体として窒素、アルゴン、二酸化炭素のいずれかを用いた気液混合液中に気泡として存在する気体量を次の方法により測定した。
(1)25℃、導電率0.1μS/cmの純水に、各種の気体を混合させ気液混合液を得た。
(2)直径1μm以上の大きな気泡を水から分離するために、気液混合液を25℃で1日静置した。なお、静置時間について、ストークスの法則から
気泡上昇速度: V=d2×g/(18×γ)
(d:気泡直径、g:重力加速度、γ:動粘性係数)
の式が成立し、この式より1μmの気泡の上昇速度は約2.4×10−4m/sであるので、例えば静置時の容器の水深が50mmの場合、1日静置すれば気泡を除去することができる。
(3)最小測定値1mgの分析天秤で気液混合液の質量を測定した。
(4)ガス透過度及び透湿度の低いPE+ナイロン樹脂製のビニル袋に気液混合液とスタラーの撹拌子を入れ、空気を追い出して袋に空気が無い状態でシーラーにてビニル袋を密封した。
(5)密封直後に、分析天秤で気液混合液が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(6)ホットスタラーにより25℃の気液混合液が密封されたビニル袋を45℃に昇温して気液混合液を約5時間撹拌した。この昇温と撹拌により、微細気泡や、45℃の飽和溶解濃度以上で溶解していた気体が気液混合液から分離されビニル袋の上部に集まった。
(7)室温25℃の条件でホットスタラーの設定温度を25℃にし、25℃の飽和溶解度の液体になるよう数時間撹拌を行った。
(8)分析天秤で、気体と液体が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(9)計3回の質量測定から気液混合液の質量と、昇温および撹拌によって気液混合液から分離された気体による浮力によって生じる液体の質量変化量とを得た。質量変化量は、気液混合液から分離された気体容積と同容積の空気の質量と同じであり、この値から分離された気体の容量と質量を算出することができる。
図10は、このようにして測定された気体容量を示すグラフである。各棒グラフの下部領域は、測定された気泡として存在していた気体の量であり、上部領域はヘンリー則に従う気体の飽和溶解量である。グラフに示すように、飽和溶解量に対して気液混合液に含有する気体量は、窒素では36倍、アルゴンでは16倍、二酸化炭素では1.9倍であった。このように、気液混合液として得られる消火剤や消火性ガス含有可燃性液は、飽和溶解濃度以上の高濃度で消火性ガスを液体中に保持することが可能であり、この高濃度で消火性ガスが含有された消火剤や消火性ガス含有可燃性液を消火に利用することができるものである。
[気泡のサイズ]
上記と同様にして製造した気液混合液を瞬間凍結し、真空中においてカッターで割断し、その割断面にメタン・エチレンを流し放電させ、凹凸を転写した炭化水素膜(レプリカ膜)を作製した。このレプリカ膜に導電性オスミウム薄膜を張り、十分乾燥させて、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した。
上記と同様にして製造した気液混合液を瞬間凍結し、真空中においてカッターで割断し、その割断面にメタン・エチレンを流し放電させ、凹凸を転写した炭化水素膜(レプリカ膜)を作製した。このレプリカ膜に導電性オスミウム薄膜を張り、十分乾燥させて、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した。
図11は、窒素と純水の気液混合液について、SEMにより観測された写真の一例である。同様に写真観察することにより、気体として窒素、アルゴン、二酸化炭素を用いた場合、いずれも気液混合液の気泡サイズは、直径の分布ピークが100nmであることが確認された。なお、上記の気体と純水の気液混合液の気泡はレーザーを用いた動的散乱法等の粒子径分布測定装置では正確な検知ができなかった。
[気泡の内圧]
気液混合液中の気体総量から気泡内部の圧力を算出した。表1は、窒素又はアルゴンと25℃の純水との気液混合液における、気体総量と、気体総量から算出した気泡の内圧を示している。
気液混合液中の気体総量から気泡内部の圧力を算出した。表1は、窒素又はアルゴンと25℃の純水との気液混合液における、気体総量と、気体総量から算出した気泡の内圧を示している。
気泡における気体の内部圧力は次の方法で算出される。
気体の状態方程式は、
PV/T=(const)
(P:内部圧力、V:容積、T:内部温度)
で表され、Tが一定の場合、特に
PV=(const)
で表される。
気体の状態方程式は、
PV/T=(const)
(P:内部圧力、V:容積、T:内部温度)
で表され、Tが一定の場合、特に
PV=(const)
で表される。
そして、気液混合液の密度から気液混合液中の気泡の容積が計算でき、上式から、
大気圧 × 気体総体積量 = 気泡の内圧 × 液中の気体総体積量
の関係が成立し、この関係式に上記で測定した気体量を当てはめて気泡における気体の内圧が計算され、表1のような圧力値となる。
大気圧 × 気体総体積量 = 気泡の内圧 × 液中の気体総体積量
の関係が成立し、この関係式に上記で測定した気体量を当てはめて気泡における気体の内圧が計算され、表1のような圧力値となる。
例えば気体が窒素の場合、
気液混合液1リットル中における、水体積がw1リットル、水中での気体体積がw2リットルであると仮定すると、
体積については次の関係式が成り立つ。
気液混合液1リットル中における、水体積がw1リットル、水中での気体体積がw2リットルであると仮定すると、
体積については次の関係式が成り立つ。
w1 + w2 =1リットル (式A)
また、質量については次の関係式が成り立つ。
また、質量については次の関係式が成り立つ。
w1 × 水の密度 + w2÷22.4(リットル)×28(分子量)=測定質量 (式B)
水の密度 :常温常圧の純水では997.1g/L
22.4リットル :気体1モルの体積
測定質量 :表1の値で988.3
上記の2式(式A,B)の方程式を解くと、
w2=8.84×10^(-3) が算出されるので、
気体の内圧=大気圧 × 気体総体積量 ÷ 液中の気体総体積量
=0.1×(表1の値)÷w2
=0.1×0.56÷(8.84×10^(-3))
=6.3MPa
となる。
水の密度 :常温常圧の純水では997.1g/L
22.4リットル :気体1モルの体積
測定質量 :表1の値で988.3
上記の2式(式A,B)の方程式を解くと、
w2=8.84×10^(-3) が算出されるので、
気体の内圧=大気圧 × 気体総体積量 ÷ 液中の気体総体積量
=0.1×(表1の値)÷w2
=0.1×0.56÷(8.84×10^(-3))
=6.3MPa
となる。
なお、上記の計算では、気泡の内部温度が一定(常温)であるとして考えたが、実際の気泡の内部温度は大気の温度(常温)よりも高いことも予想され、その場合、気泡の内部圧は上記算出結果より更に高いことが気体の状態方程式から予測できる。
ところで、一般には、気泡の内圧は次のようにして算出される。気泡は気液相界面間の界面張力により加圧され、この界面張力はヤングラプラスの式(下記式)で導かれる。
ΔP=2σ/r
(ΔP:上昇圧力、σ:表面張力、r:気泡半径)
この式によれば、例えば、直径100nmのサイズの気泡の場合、気泡内部圧力は3MPaになる。
(ΔP:上昇圧力、σ:表面張力、r:気泡半径)
この式によれば、例えば、直径100nmのサイズの気泡の場合、気泡内部圧力は3MPaになる。
一方、気液混合液中の内部圧力は、表1の通り、例えば窒素の場合6.3MPaであり、この気液混合液はSEM写真にて示されるように直径100nmサイズの気泡が分散しているものであることから、気液混合液の気泡は、ヤングラプラスの式から算出される値の約2倍以上の内部圧力を有していることが確認された。したがって、気液混合液においては、より強固な界面構造が気泡界面において形成されていると結論づけられた。
[気泡の分布量]
気液混合液の気泡の分布量(個数)は表1から算出した。
気液混合液の気泡の分布量(個数)は表1から算出した。
気体が窒素の場合、大気中(0.1MPa)に戻した気泡総量が0.56Lであり、気泡の内圧が6.3MPaであるので、水中での気泡総体積量V1は、等温変化と仮定し、PV=constより
V1=0.56×0.1÷6.3
となる。
V1=0.56×0.1÷6.3
となる。
また、気泡は半径r=50nmの球体であるから、気泡1個当たりの体積V2は
V2=4/3×π×r^3
となる。
V2=4/3×π×r^3
となる。
以上より、水1L当たりの気泡の個数n=V1÷V2=1.7×10^16個と算出される。
同じように水1L当たりの気泡の個数は、気体がアルゴンの場合は1.7×10^16個と算出される。
[安定性]
図13は、二酸化炭素を純水に混合させて生成した気液混合液について、ガラスビンに密封し一定温度で保管した場合の、飽和溶解濃度に対する気液混合液中の気体存在量比を過飽和度として表示するグラフである。グラフから、過飽和度は400時間経過しても6であり、ほとんど変化していないことが分かる。よって、気液混合液中の気泡が安定に存在することが確認された。
図13は、二酸化炭素を純水に混合させて生成した気液混合液について、ガラスビンに密封し一定温度で保管した場合の、飽和溶解濃度に対する気液混合液中の気体存在量比を過飽和度として表示するグラフである。グラフから、過飽和度は400時間経過しても6であり、ほとんど変化していないことが分かる。よって、気液混合液中の気泡が安定に存在することが確認された。
[実施例2]
シャーベット状の消火剤
図2の装置を用いて、液体として水を、気体として二酸化炭素を用い、気液混合液を作製した。次に、図7(a)の装置を用いて気液混合液を−10℃で冷却した。充分に冷えてからゆっくりと攪拌することで、ナノバブルを含有する流動性を持ったシャーベット状の消火剤を製造した。
シャーベット状の消火剤
図2の装置を用いて、液体として水を、気体として二酸化炭素を用い、気液混合液を作製した。次に、図7(a)の装置を用いて気液混合液を−10℃で冷却した。充分に冷えてからゆっくりと攪拌することで、ナノバブルを含有する流動性を持ったシャーベット状の消火剤を製造した。
[実施例3]
増粘剤含有消火剤
図2の装置を用いて、液体として1wt%のカルボキシルメチルセルロースナトリウム水溶液の50℃に加温したものを用い、気体として二酸化炭素を用い、粘性のある気液混合液(消火剤)を製造した。
増粘剤含有消火剤
図2の装置を用いて、液体として1wt%のカルボキシルメチルセルロースナトリウム水溶液の50℃に加温したものを用い、気体として二酸化炭素を用い、粘性のある気液混合液(消火剤)を製造した。
[実施例4]
自己消火型燃料
図2の装置を用いて、液体としてメタノールを用い、気体として二酸化炭素を用い、気液混合液(消火性燃料)を製造した。
自己消火型燃料
図2の装置を用いて、液体としてメタノールを用い、気体として二酸化炭素を用い、気液混合液(消火性燃料)を製造した。
A 消火剤
1 加圧部
2 気体供給部
3 気液混合部
4 脱気泡部
5 減圧部
6 流路
7 吐出部
8 気体除去部
11 ポンプ
21 回転体
1 加圧部
2 気体供給部
3 気液混合部
4 脱気泡部
5 減圧部
6 流路
7 吐出部
8 気体除去部
11 ポンプ
21 回転体
Claims (9)
- 消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって液体に混合されて成ることを特徴とする消火剤。
- 液体が水素結合を形成する分子からなる液体であり、液体の気泡との界面に存在する分子の水素結合の距離が、該液体が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の消火剤。
- 消火性ガスの単位体積当たりの重量が、窒素の単位体積当たりの重量以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火剤。
- 液体が水であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の消火剤。
- 液体に含有されている消火性ガスの濃度が、液体に対する消火性ガスの飽和溶解濃度以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の消火剤。
- 気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の消火剤。
- シャーベット状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の消火剤。
- 増粘剤が液体に含有されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の消火剤。
- 消火性ガスを含有する気体がナノサイズの気泡となって可燃性の液体に混合されて成ることを特徴とする消火性ガス含有可燃性液。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009150162A JP2011004884A (ja) | 2009-06-24 | 2009-06-24 | 消火剤及び消火性ガス含有可燃性液 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2009150162A Withdrawn JP2011004884A (ja) | 2009-06-24 | 2009-06-24 | 消火剤及び消火性ガス含有可燃性液 |
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Country | Link |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5822155B1 (ja) * | 2015-01-22 | 2015-11-24 | 株式会社悠心 | ガス及び液状物の充填包装方法 |
CN113939345A (zh) * | 2020-05-13 | 2022-01-14 | 一先系统有限公司 | 搭载火灾预测功能的灭火装置 |
-
2009
- 2009-06-24 JP JP2009150162A patent/JP2011004884A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
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WO2015186373A1 (ja) * | 2015-01-22 | 2015-12-10 | 株式会社悠心 | ガス及び液状物の充填包装方法 |
US9950820B2 (en) | 2015-01-22 | 2018-04-24 | Yushin Co., Ltd. | Method for filling and packing gas and liquid material |
CN113939345A (zh) * | 2020-05-13 | 2022-01-14 | 一先系统有限公司 | 搭载火灾预测功能的灭火装置 |
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